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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134175
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】体水分保持剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/125 20160101AFI20230920BHJP
   A61K 31/7016 20060101ALI20230920BHJP
   A61K 33/14 20060101ALI20230920BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20230920BHJP
   A61K 31/047 20060101ALI20230920BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20230920BHJP
   A23L 2/60 20060101ALI20230920BHJP
   A61K 47/26 20060101ALN20230920BHJP
   A61K 47/10 20170101ALN20230920BHJP
   A61K 47/02 20060101ALN20230920BHJP
【FI】
A23L33/125
A61K31/7016
A61K33/14
A61P3/00
A61K31/047
A23L2/00 F
A23L2/60
A61K47/26
A61K47/10
A61K47/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022039544
(22)【出願日】2022-03-14
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和3年3月15日 ARIHHP Human High Performance Forum 2021(オンライン集会(Zoom))における公開(ウェブサイト https://www.arihhp-forum2021.jp/) 〔刊行物等〕 令和3年5月27日 刊行物「International Journal of Environmental Research and Public Health」(ウェブサイト https://www.mdpi.com/1660-4601/18/11/5760)による公開 〔刊行物等〕 令和3年6月15日 刊行物「European Journal of Nutrition」(ウェブサイト https://doi.org/10.1007/s00394-021-02614-z)による公開 〔刊行物等〕 令和3年8月26日 ウェブサイト「https://www.right-stuff.biz/jspfsm76/」による公開 〔刊行物等〕 令和3年9月17日~30日 第76回日本体力医学会大会(オンライン集会/ウェブサイト(https://www.right-stuff.biz/jspfsm76/)における公開 〔刊行物等〕 令和3年8月26日 ウェブサイト「https://www.right-stuff.biz/jspfsm76/」による公開 〔刊行物等〕 令和3年9月17日~30日 第76回日本体力医学会大会(オンライン集会/ウェブサイト(https://www.right-stuff.biz/jspfsm76/)における公開 〔刊行物等〕 令和3年9月16日 ウェブサイト「https://zoom.us/s/98086767607」による公開 〔刊行物等〕 令和3年9月16日 第35回運動と体温の研究会(オンライン集会/ウェブサイト(https://zoom.us/s/98086767607)における公開 〔刊行物等〕 令和3年9月16日 ウェブサイト「https://zoom.us/s/98086767607」による公開 〔刊行物等〕 令和3年9月16日 第35回運動と体温の研究会(オンライン集会/ウェブサイト(https://zoom.us/s/98086767607)における公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 〔刊行物等〕 令和3年11月14日 第32回日本臨床スポーツ医学会学術集会(オンライン集会/ウェブサイト(https://us06web.zoom.us/w/88544702462?tk=On9AbGW7VDPmRGEQcGZuUhWzGUEzKKyMmP19AtQD3bE.DQMAAAAUnazv_hY4bGdrMjlWX1M1cWJaTXNOSWQzZXlnAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA)における公開 〔刊行物等〕 令和4年3月2日 刊行物 「Physiology&Behavior、249巻、113770」 (ウェブサイト https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0031938422000774)による公開
(71)【出願人】
【識別番号】591096303
【氏名又は名称】株式会社ブルボン
(71)【出願人】
【識別番号】304027279
【氏名又は名称】国立大学法人 新潟大学
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100136249
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 貴光
(72)【発明者】
【氏名】天野 達郎
(72)【発明者】
【氏名】榎 康明
【テーマコード(参考)】
4B018
4B117
4C076
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018MD29
4B018ME14
4B117LC04
4B117LK01
4B117LK06
4B117LK12
4C076AA09
4C076AA12
4C076BB01
4C076BB17
4C076CC21
4C076CC40
4C076DD23
4C076DD38
4C076DD67
4C076FF12
4C076FF14
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA01
4C086HA02
4C086HA04
4C086HA24
4C086MA03
4C086MA06
4C086MA17
4C086MA28
4C086MA52
4C086MA66
4C086NA12
4C086ZC21
4C086ZC51
4C086ZC52
4C086ZC54
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA05
4C206MA03
4C206MA06
4C206MA37
4C206MA48
4C206MA72
4C206MA86
4C206NA14
4C206ZC21
4C206ZC51
4C206ZC52
4C206ZC54
(57)【要約】
【課題】水分補給後の体水分保持性を向上する手段を提供する。
【解決手段】水分補給を、イソマルチュロース、電解質及びグリセロールと共に行なう。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と、有効成分としてのイソマルチュロース、電解質及びグリセロールとを含有する、対象のための体水分保持剤であって、
対象が、体水分保持剤を1Lの飲料として摂取してから3時間後の飲料水分補給指数(BHI)が2.0~5.0である、体水分保持剤。
【請求項2】
水と、有効成分としてのイソマルチュロース、電解質及びグリセロールとを含有する、対象のための体水分保持剤であって、
当該体水分保持剤の総質量を基準として、
イソマルチュロースを2~10質量%含む、及び/又は
電解質を0.1~1.0質量%含む、及び/又は
グリセロールを2~10質量%含むことを特徴とする、体水分保持剤。
【請求項3】
電解質がナトリウムである、請求項1又は2に記載の体水分保持剤。
【請求項4】
対象が、脱水状態にある、請求項1~3のいずれか一項に記載の体水分保持剤。
【請求項5】
対象が、体水分正常状態にある、請求項1~3のいずれか一項に記載の体水分保持剤。
【請求項6】
飲食品である、請求項1~5のいずれか一項に記載の体水分保持剤。
【請求項7】
水と、有効成分としてのイソマルチュロース及び電解質とを含有する、体水分正常状態にある対象のための体水分保持剤であって、
対象が、体水分保持剤を1Lの飲料として摂取してから2時間後の飲料水分補給指数(BHI)が1.2~3.0である、体水分保持剤。
【請求項8】
水と、有効成分としてのイソマルチュロース及び電解質とを含有する、体水分正常状態にある対象のための体水分保持剤であって、
当該体水分保持剤の総質量を基準として、
イソマルチュロースを2~10質量%含む、及び/又は
電解質を0.1~2.0質量%含むことを特徴とする、体水分保持剤。
【請求項9】
電解質が、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム及びカリウムからなる群より選ばれる一種以上である、請求項7又は8に記載の体水分保持剤。
【請求項10】
対象が、小児又は高齢者である、請求項7~9のいずれか一項に記載の体水分保持剤。
【請求項11】
脱水症又は熱中症の予防のために用いる、請求項7~10のいずれか一項に記載の体水分保持剤。
【請求項12】
飲食品である、請求項7~11のいずれか一項に記載の体水分保持剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体水分保持剤に関する。
【背景技術】
【0002】
運動時には、脱水(発汗等)による運動パフォーマンス低下が起こる。そこで、運動開始前に、イソマルチュロースと共に水分補給を行い、運動パフォーマンスを向上させる試みが報告されている(非特許文献1)。
また、運動後に、イソマルチュロースと共に水分補給を行い、運動で生じた脱水状態からの回復を促進させる試みが報告されている(非特許文献2及び3)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Nutrients 2016, 8, 390; doi:10.3390/nu8070390
【非特許文献2】Experimental Physiology. 2019; 1-11; DOI: 10.1113/EP087843
【非特許文献3】第74回日本体力医学会大会プログラム・予稿集,令和元年9月2日発行,p.321,P-3-55
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水分補給の効果は、補給された体水分の保持性に影響される。そこで、水分補給後の体水分保持性の向上を課題として設定した。
体水分の保持は、運動中や運動後以外の状況でも重要である。例えば、脱水症予防を目的とする水分補給は、体水分が正常な状態で行なわれるが、補給された体水分の保持性は予防効果に影響する。そこで、体水分正常状態で水分補給を行なったときの体水分保持性の向上も課題として設定した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の課題を鋭意検討した結果、本発明者らは、(1)イソマルチュロース、電解質及びグリセロールと共に水分補給を行なうと、体水分保持性が向上すること、並びに、(2)体水分正常状態にある対象者において、イソマルチュロース及び電解質と共に水分補給を行なうと、体水分保持性が向上することを見いだした。本発明は、これらの知見に基づいてなされたものである。
【0006】
すなわち、本発明は下記〔1〕~〔12〕に関するものである。
〔1〕水と、有効成分としてのイソマルチュロース、電解質及びグリセロールとを含有する、対象のための体水分保持剤であって、
対象が、体水分保持剤を1Lの飲料として摂取してから3時間後の飲料水分補給指数(BHI)が2.0~5.0である、体水分保持剤。
〔2〕水と、有効成分としてのイソマルチュロース、電解質及びグリセロールとを含有する、対象のための体水分保持剤であって、
当該体水分保持剤の総質量を基準として、
イソマルチュロースを2~10質量%含む、及び/又は
電解質を0.1~1.0質量%含む、及び/又は
グリセロールを2~10質量%含むことを特徴とする、体水分保持剤。
〔3〕電解質がナトリウムである、前記〔1〕又は〔2〕に記載の体水分保持剤。
〔4〕対象が、脱水状態にある、前記〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の体水分保持剤。
〔5〕対象が、体水分正常状態にある、前記〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の体水分保持剤。
〔6〕飲食品である、前記〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載の体水分保持剤。
〔7〕水と、有効成分としてのイソマルチュロース及び電解質とを含有する、体水分正常状態にある対象のための体水分保持剤であって、
対象が、体水分保持剤を1Lの飲料として摂取してから2時間後の飲料水分補給指数(BHI)が1.2~3.0である、体水分保持剤。
〔8〕水と、有効成分としてのイソマルチュロース及び電解質とを含有する、体水分正常状態にある対象のための体水分保持剤であって、
当該体水分保持剤の総質量を基準として、
イソマルチュロースを2~10質量%含む、及び/又は
電解質を0.1~2.0質量%含むことを特徴とする、体水分保持剤。
〔9〕電解質が、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム及びカリウムからなる群より選ばれる一種以上である、前記〔7〕又は〔8〕に記載の体水分保持剤。
〔10〕対象が、小児又は高齢者である、前記〔7〕~〔9〕のいずれか一項に記載の体水分保持剤。
〔11〕脱水症又は熱中症の予防のために用いる、前記〔7〕~〔10〕のいずれか一項に記載の体水分保持剤。
〔12〕飲食品である、前記〔7〕~〔11〕のいずれか一項に記載の体水分保持剤。
【発明の効果】
【0007】
後述の実施例に示されるように、本発明は、水分補給から長時間経過後でも高い体水分保持性を提供し、水分補給の効果を高めることができる。この高い水分保持性は、体水分正常状態でも得られるので、本発明は、脱水症等の予防効果を高めることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施例1の試験飲料摂取から3時間後におけるBHIを示す。
図2図2は、実施例2の積算尿量の経時変化を示す。
図3図3は、実施例2の試験飲料摂取から2時間後におけるBHIを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
はじめに、本発明の特定に用いる主な用語の意味を説明する。
なお、本明細書における「~」を用いた数値範囲の記載は、「~」の前後に記載された数値が当該数値範囲に含まれることを意味する。例えば、「2.0~5.0」という記載は、数値範囲の下限値が2.0であり、上限値が5.0であることを意味する。
【0010】
〔体水分保持〕
体水分保持とは、水分補給がなされた対象において、増加した体水分(量)を保持することをいう。当該技術分野で用いられている体水分保持性の指標として、飲料水分補給指数(BHI: beverage hydration index)がある。本発明の体水分保持剤のBHIは、以下の式に従い算出できる。
BHI=1Lの水のみを摂取した対象の積算尿量/体水分保持剤を1Lの飲料として摂取した対象の積算尿量
BHIが1より大きい場合、体水分保持性があるといえる。
【0011】
〔対象〕
本発明は、体水分保持を必要とする動物へ制限なく適用できる。対象は、好ましくは哺乳動物(ヒト及び非ヒト哺乳動物(例えば、牛や豚等の家畜、犬や猫等の愛玩動物等))であり、より好ましくはヒトである。
【0012】
〔脱水状態〕
体水分保持が求められる状況として、脱水状態(脱水症とも称される)が挙げられる。ヒトの場合、一般的に、体重の1質量%以上の水分が失われると脱水症状が現れる(公益財団法人日本スポーツ協会ホームページ。URL:https://www.japan-sports.or.jp/Portals/0/data/ikusei/doc/k1-5.pdf)。
体水分の恒常性は水分の摂取と排泄のバランスにより制御されている。脱水状態は、水分摂取量の減少及び/又は水分喪失量の増加により、排泄が優勢となったときに起こる。
水分摂取量の減少は、意識的な水分摂取が困難な小児(例えば、0~15歳)、高齢者(例えば、65歳以上)や、病人等で起こりやすい。
水分喪失量の増加は、暑熱環境下(例えば、暑さ指数(WBGT)28℃以上)での行動、持久系スポーツの練習や競技、建築現場等の重作業や疾患(下痢、嘔吐、糖尿病性ケトアシドーシス等)等で起こりやすい。
脱水状態は、熱中症や水分喪失量の増加を伴う疾患(下痢、嘔吐、糖尿病性ケトアシドーシス等)で症状の一つとして現れる。
脱水状態が運動中に起こると、運動パフォーマンス(特に、持久力)が低下する。運動競技者にとって、運動パフォーマンスの維持は重要である。
脱水状態にある対象へ本発明を適用すると、体水分保持性が向上するので、脱水状態からの回復(ひいては、脱水状態を伴う症状や運動パフォーマンス低下からの回復)が促進される。
【0013】
〔体水分正常状態〕
脱水状態以外で体水分保持が求められる状況として、体水分正常状態が挙げられる。
体水分正常状態(euhydrated state)とは、前述した脱水(ヒトでいえば、体重の1質量%以上の水分喪失)が起きていない状態をいう。
体水分正常状態にある対象へ本発明を適用すると、体水分保持性が向上するので、脱水状態(ひいては、脱水状態を伴う症状や運動パフォーマンス低下)の発生が抑制(予防)される。
脱水状態の抑制は、意識的な水分摂取が困難な小児や高齢者、肉体労働者、マラソン等の持続的運動を行う者等で特に重要である。
【0014】
〔水〕
対象が摂取できる飲用水を、特に制限なく使用できる。
【0015】
〔有効成分〕
有効成分とは、水分補給による体水分保持性の向上に必要とされる成分をいう。
「有効成分として含有する」とは、体水分保持剤が、所望の体水分保持性向上効果を発揮するのに十分な量(すなわち、有効量)の有効成分を含有することをいう。
【0016】
〔イソマルチュロース〕
イソマルチュロース(isomaltulose)(イソマルツロースとも称される」)は、グルコースとフルクトースから構成される二糖である。
イソマルチュロースは公知物質であり、市場で容易に入手可能である。市販品としては、パラチノース(登録商標)(三井製糖株式会社)が挙げられる。
【0017】
〔電解質〕
電解質としては、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム及びリン等が挙げられる。なかでも、体液の浸透圧調整の観点から、ナトリウム及びカリウムが好ましい。
電解質は公知物質であり、市場で容易に入手可能である。
電解質は単一種類を使用してもよく、複数種類を併用してもよい。
【0018】
〔グリセロール〕
グリセロール(グリセリン)は公知物質であり、市場で容易に入手可能である。
【0019】
〔追加の有効成分〕
体水分保持剤は、前述した有効成分以外の、体水分保持効果を奏することが知られている成分(例えば、グルコースや果糖等の単糖、ショ糖やトレハロース等の二糖、デキストリン等の多糖)を更に含んでいてもよい。
体水分保持剤は、好ましくは、追加の有効成分を含まない。
【0020】
〔任意成分〕
体水分保持剤は、その効果が損なわれない限り、任意成分を含んでいてもよい。
任意成分としては、飲食品や医薬品に使用されている添加剤(例えば、ビタミン類、pH調整剤、酸化防止剤、乳化剤、香料、甘味料、着色料、保存料、安定剤、賦形剤等)等が挙げられる。
【0021】
以下、本発明に従う「グリセロールを有効成分の一つとして含む体水分保持剤(体水分保持剤A)」と「体水分正常状態にある対象のための体水分保持剤(体水分保持剤B)」を説明する。
【0022】
〔体水分保持剤A〕
体水分保持剤Aは、水に加えて、有効成分としてイソマルチュロース、電解質及びグリセロールを含有する。
【0023】
電解質としては、ナトリウムが好ましい。
【0024】
イソマルチュロースの含量は、体水分保持剤Aの総質量を基準として、好ましくは2~10質量%、より好ましくは5~9質量%である。
電解質の含量は、体水分保持剤Aの総質量を基準として、好ましくは0.1~1.0質量%、より好ましくは0.3~0.7質量%である。
グリセロールの含量は、体水分保持剤Aの総質量を基準として、好ましくは2~10質量%、より好ましくは5~9質量%である。
【0025】
対象者(特に、ヒト)が、体水分保持剤Aを1Lの飲料として摂取してから3時間後の飲料水分補給指数(BHI)は、好ましくは2.0~5.0、より好ましくは3.0~4.0である。
【0026】
体水分保持剤Aの対象者は、脱水状態及び体水分正常状態のいずれでもよい。
【0027】
〔体水分保持剤B〕
体水分保持剤Bは、水に加えて、有効成分としてイソマルチュロース及び電解質を含有する。
【0028】
電解質としては、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム及びカリウムからなる群より選ばれる一種以上が好ましく、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム及びカリウムの併用がより好ましい。
【0029】
イソマルチュロースの含量は、体水分保持剤Bの総質量を基準として、好ましくは2~10質量%、より好ましくは4~8質量%である。
電解質の含量は、体水分保持剤Bの総質量を基準として、好ましくは0.1~2.0質量%、より好ましくは0.5~1.0質量%である。
【0030】
対象者(特に、ヒト)が、体水分保持剤Bを1Lの飲料として摂取してから2時間後の飲料水分補給指数(BHI)は、好ましくは1.2~3.0、より好ましくは1.5~2.5である
【0031】
体水分保持剤Bは、体水分正常状態にある対象者に適用され、補給された体水分を、体水分正常状態(換言すれば、運動中ではない)において保持する。
【0032】
〔体水分保持剤の使用態様〕
体水分保持剤は、飲食品又は医薬品として使用できる。
【0033】
〔飲食品〕
飲食品の形態は、経口摂取が可能なものである限り特に制限されない。具体例としては、液状の飲料や、ゲル状のゼリー飲料等が挙げられる。
飲食品には、健康食品、機能性食品、栄養補助食品、特定保健用食品、病者用食品、乳幼児用調整粉乳、妊産婦又は授乳婦用粉乳や、疾病リスク低減表示を付した飲食品等も含まれる。
飲食品としての体水分保持剤は、飲食品に使用されている添加剤を任意成分として含んでいてもよい。
液状の飲料の添加剤としては、pH調整剤、乳化剤、安定剤、香料や、甘味料等が挙げられる。
ゲル状のゼリー飲料の添加剤としては、ゲル化剤、乳化剤、安定剤、香料や、甘味料等が挙げられる。
【0034】
〔医薬品〕
医薬品の剤型は、経口投与又は点滴投与できるものが好ましい。具体例としては、液剤、ゼリー剤や、点滴剤(輸液)等が挙げられる。
医薬品としての体水分保持剤は、医薬品添加剤を任意成分として含んでいてもよい。医薬品添加剤としては、賦形剤、安定剤、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、滑沢剤、甘味料、着色料、香料、緩衝剤、酸化防止剤や、pH調整剤等が挙げられる。
【0035】
〔体水分保持剤の調製方法〕
体水分保持剤は、有効成分を水へ添加し、溶解させることで調製できる。電解質は、目的の電解質を水中で提供する化合物(例えば、塩化ナトリウムや塩化カリウム)として添加してもよい。
【0036】
〔体水分保持剤の使用方法〕
体水分保持剤の摂取(投与)タイミングは特に制限されない。
体水分正常状態にある対象(特に、運動競技者)が、運動パフォーマンス低下の予防を目的として摂取する場合、好ましくは運動開始前30~90分に摂取する。
【実施例0037】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0038】
〔実施例1:体水分保持剤A〕
表1に示す組成の試験飲料1~4を評価した。表中の数値は、試験飲料の総質量に対する各成分の含量(質量%)である。
試験飲料は、各成分を水へ添加し、攪拌して溶解させることにより調製した。ナトリウム供給源として塩化ナトリウムを使用した。
【0039】
表1
【0040】
体水分正常状態にある成人男女14名(男性11名、女性3名)に、1リットルの試験飲料を40分間かけて摂取させ、摂取から180分後までの尿量を測定した。測定値に基づき、摂取から3時間後における飲料水分補給指数(BHI)を算出した。
摂取から3時間後におけるBHIを図1に示す。
摂取から3時間後において、実施例に該当する試験飲料4(水、7質量%のイソマルチュロース、0.5質量%のナトリウム及び7質量%のグリセロールを含有)(BHI=3.52)は、試験飲料2(比較例)(BHI=2.50)及び試験飲料3(比較例)(BHI=2.64)よりも有意に高いBHI(すなわち、高い水分保持性)を有していた(図1)。
【0041】
〔実施例2:体水分保持剤B〕
表2に示す組成の試験飲料1~3を評価した。表中の数値は、試験飲料の総質量に対する各成分の含量(質量%)である。
試験飲料は、各成分を水へ添加し、攪拌して溶解させることにより調製した。ナトリウム供給源として塩化ナトリウムを使用した。カルシウム供給源として乳酸カルシウムを使用した。マグネシウム供給源として塩化マグネシウムを使用した。カリウム供給源として塩化カリウムを使用した。
【0042】
表2
【0043】
体水分正常状態にある成人男女13名(男性6名、女性7名)に、1リットルの試験飲料を15分間かけて摂取させ、摂取から180分後までの尿量を測定した。測定値に基づき、摂取から2時間後における飲料水分補給指数(BHI)を算出した。
積算尿量の経時変化を図2に示す。摂取から2時間後におけるBHIを図3に示す。
摂取から2時間後において、実施例に該当する試験飲料3(水、6.5質量%のイソマルチュロース及び0.07質量%の電解質)(BHI=2.02)は、試験飲料2(比較例)(BHI=1.37)よりも有意に高いBHI(すなわち、高い水分保持性)を有していた(図3)。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、水分補給が関わる分野で利用可能である。
図1
図2
図3