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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134180
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】顔料分散液及びコーティング剤
(51)【国際特許分類】
   C09D 17/00 20060101AFI20230920BHJP
   C09D 7/41 20180101ALI20230920BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20230920BHJP
   C09K 23/32 20220101ALI20230920BHJP
【FI】
C09D17/00
C09D7/41
C09D7/63
B01F17/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022039552
(22)【出願日】2022-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002820
【氏名又は名称】大日精化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100168033
【弁理士】
【氏名又は名称】竹山 圭太
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 薫
(72)【発明者】
【氏名】尾迫 秀和
(72)【発明者】
【氏名】村上 亮
(72)【発明者】
【氏名】荒井 一孝
【テーマコード(参考)】
4D077
4J037
4J038
【Fターム(参考)】
4D077AB03
4D077AC05
4D077DC39X
4D077DC39Y
4D077DC64X
4J037AA30
4J037CB19
4J037CB21
4J037DD23
4J037EE02
4J037EE28
4J037EE29
4J037FF23
4J038EA011
4J038KA08
4J038NA26
4J038PA06
4J038PB01
4J038PB05
4J038PB08
4J038PB09
4J038PB11
4J038PC02
4J038PC03
4J038PC04
4J038PC06
4J038PC08
4J038PC10
(57)【要約】
【課題】より簡便に、C.I.ピグメントオレンジ43の凝集を抑制することが可能であり、長期間の保存安定性が良好な顔料分散液を提供する。
【解決手段】液媒体と、C.I.ピグメントオレンジ43と、分散剤と、を含有する顔料分散液である。前記分散剤は、下記一般式(1)で表される化合物、並びにその金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩、及び有機第4級アンモニウム化合物の塩からなる群より選ばれる少なくとも1種のベンゾチアゾール誘導体を含む。
(前記一般式(1)中、Rは、置換基を有してもよいアリール基を表す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液媒体と、C.I.ピグメントオレンジ43と、分散剤と、を含有し、
前記分散剤は、下記一般式(1)で表される化合物、並びにその金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩、及び有機第4級アンモニウム化合物の塩からなる群より選ばれる少なくとも1種のベンゾチアゾール誘導体を含む顔料分散液。
(前記一般式(1)中、Rは、置換基を有してもよいアリール基を表す。)
【請求項2】
前記顔料分散液中の前記C.I.ピグメントオレンジ43の含有量は、前記顔料分散液の全質量に対して、1質量%以上90質量%以下である請求項1に記載の顔料分散液。
【請求項3】
前記顔料分散液中の前記ベンゾチアゾール誘導体の含有量は、前記顔料分散液中の前記C.I.ピグメントオレンジ43の含有量に対して、0.05質量%以上40質量%以下である請求項1又は2に記載の顔料分散液。
【請求項4】
前記液媒体は、有機溶剤及び重合性化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む請求項1~3のいずれか1項に記載の顔料分散液。
【請求項5】
活性エネルギー線硬化性インクジェットインキ用着色剤、グラビアインキ用着色剤、塗料用着色剤、又はカラーフィルター用着色剤である請求項1~4のいずれか1項に記載の顔料分散液。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の顔料分散液を含有するコーティング剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料分散液及びコーティング剤に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に顔料を塗料、グラビアインキ、オフセットインキ、筆記具用インキ、及びインクジェットインキ等のビヒクルに混合分散させる際には、顔料を安定してビヒクル中に分散させることが難しく、分散させた微細な顔料粒子はビヒクル中で凝集する傾向がある。その結果、粘度の上昇や、着色力及びグロスの低下等の問題が生じることがある。
【0003】
近年、インクジェット画像形成方法においてその簡易かつ安価な特徴から、商業用印刷機器や産業用印刷機器の開発が行われるようになってきている。例えば、屋外の看板等のいわゆるサイン用途がこれにあたる。この場合、屋外での高い耐候性と広い色再現性が求められる。これらを実現するために、イエロー、マゼンタ、シアン、及びブラックの各色のインクに加え、特色として比較的高い耐候性を有するC.I.ピグメントオレンジ43を含有するインクを用いたインクセットが提案されている(特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-173853号公報
【特許文献2】特開2004-70048号公報
【特許文献3】特開2020-2365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
C.I.ピグメントオレンジ43についてもビヒクル中での凝集傾向が確認されている。そのため、C.I.ピグメントオレンジ43を含有する分散液は保存安定性が低く、その分散液を長期間にわたって保管すると、分散液の増粘や異物発生等が確認される。これらは、上記分散液を含有するインク等のコーティング剤を吐出するノズルの目詰まりを引き起こし、ノズル抜け等の不具合を誘発する。この解決手段として、特許文献3には、引火点が70℃以下のグリコールエーテルをインクに含有させることが提案されている。特許文献3の記載によれば、上記グリコールエーテルは、インクの長期保管中の水分上昇を抑制できるために、C.I.ピグメントオレンジ43の凝集が抑制されると推測されている。しかし、この手法では、予め溶剤等を脱水しなければならず、また、インクを製造する工程においても吸湿に注意する必要があった。
【0006】
本発明は、上述のような従来技術に鑑み、脱水工程を経ずにより簡便に、C.I.ピグメントオレンジ43の凝集を抑制することが可能であり、長期間の保存安定性が良好な顔料分散液を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、液媒体と、C.I.ピグメントオレンジ43と、分散剤と、を含有し、前記分散剤は、下記一般式(1)で表されるベンゾチアゾール誘導体、並びにその金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩、及び有機第4級アンモニウム化合物の塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む顔料分散液が提供される。
【0008】
(前記一般式(1)中、Rは、置換基を有してもよいアリール基を表す。)
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、C.I.ピグメントオレンジ43の凝集を抑制することが可能であり、長期間の保存安定性が良好な顔料分散液を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0011】
<顔料分散液>
本発明の一実施形態の顔料分散液は、液媒体、C.I.ピグメントオレンジ43、及び分散剤を含有する。顔料分散液に含有される分散剤は、下記一般式(1)で表される化合物、並びにその金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩、及び有機第4級アンモニウム化合物の塩からなる群より選ばれる少なくとも1種のベンゾチアゾール誘導体を含む。
【0012】
(一般式(1)中のRは、置換基を有してもよいアリール基を表す。)
【0013】
本実施形態の顔料分散液は、特定のベンゾチアゾール誘導体を含有するため、C.I.ピグメントオレンジ43の凝集を抑制することが可能であり、かつ、長期間の保存安定性が良好である。これらの効果が得られる観点から、顔料分散液の好ましい構成等について以下に説明する。
【0014】
(C.I.ピグメントオレンジ43)
本実施形態の顔料分散液は、C.I.ピグメントオレンジ43(以下、「PO43」と記載することがある。)を含有する。顔料分散液において、PO43は、後述する分散剤により、液媒体に分散している形態をとり得る。
【0015】
PO43は、CAS登録番号4424-06-0の顔料である。PO43の化学名は、ビスベンゾイミダゾ[2,1-b:2’,1’-i]ベンゾ[lmn][3,8]フェナントロリン-8,17-ジオン、又は、1,8-(1H-ベンゾイミダゾール-2,1-ジイルカルボニル)-5,4-(1H-ベンゾイミダゾール-2,1-ジイルカルボニル)ナフタレンである。C.I.ピグメントオレンジ43はペノリン構造を有し、色相としては鮮やかな赤味のオレンジである。
【0016】
顔料分散液に含有されるC.I.ピグメントオレンジ43の体積平均粒子径は、80nm以上400nm以下であることが好ましく、90nm以上350nm以下であることがより好ましく、100nm以上300nm以下であることがさらに好ましい。体積平均粒子径の異なるPO43を混合して使用する場合においても、各PO43の体積平均粒子径は上記範囲内であることが好ましい。PO43の体積平均粒子径が上記範囲内であることにより、分散安定性が良好であり、また、顔料分散液をインキ等のコーティング剤に含有させた場合の吐出性や塗膜の耐候性がより良好となりやすい。保存安定性の観点から、PO43の体積平均粒子径は80nm以上であることが好ましく、90nm以上であることがより好ましく、100nm以上であることがさらに好ましい。一方、ノズルの目詰まり等を抑制する観点、すなわち、吐出性の観点から、PO43の体積平均粒子径は400nm以下であることが好ましく、350nm以下であることがより好ましく、300nm以下であることがさらに好ましい。
【0017】
本明細書において、PO43の体積平均粒子径は、動的光散乱法により測定される体積基準の粒度分布における累積50%となる粒子径(メジアン径;D50)を意味する。PO43の体積平均粒子径の測定には、動的光散乱法を利用した粒度分布測定装置(例えば、大塚電子株式会社製の商品名「FPAR-1000」)を用いることができる。
【0018】
顔料分散液中のC.I.ピグメントオレンジ43の含有量は、顔料分散液の全質量に対して、1質量%以上90質量%以下であることが好ましい。PO43の含有量が上記範囲内であることにより、十分な発色性が得られやすく、また、分散安定性が高まりやすい。発色性の観点から、PO43の上記含有量は、1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましく、15質量%以上であることがよりさらに好ましい。一方、分散安定性の観点から、PO43の上記含有量は、90質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることがさらに好ましく、30質量%以下であることがよりさらに好ましい。
【0019】
顔料分散液は、PO43以外の顔料等の着色剤を含有してもよいが、着色剤の合計質量に対するPO43の割合は50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。このようにPO43を着色剤の主成分として用い、顔料分散液をオレンジ色顔料分散液として用いることが好ましい。
【0020】
(ベンゾチアゾール誘導体)
本実施形態の顔料分散液は、下記一般式(1)で表される化合物、並びにその金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩、及び有機第4級アンモニウム化合物の塩(以下、各種塩をまとめて単に「塩類」と記載することがある。)からなる群より選ばれる少なくとも1種のベンゾチアゾール誘導体(以下、単に「ベンゾチアゾール誘導体」と記載することがある。)を含有する。顔料分散液において、ベンゾチアゾール誘導体は、液媒体にC.I.ピグメントオレンジ43を分散させる分散剤としての役割を有する。
【0021】
【0022】
一般式(1)中のRは、置換基を有してもよいアリール基を表す。アリール基としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、及びビフェニリル基等を挙げることができる。これらのなかでも、フェニル基が好ましい。
【0023】
置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、及び臭素原子等のハロゲン原子、メチル基、エチル基、及びプロピル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、及びプロポキシ基等のアルコキシ基、並びにヒドロキシ基、アミノ基、ニトロ基、カルバモイル基、スルファモイル基、カルボン酸基、スルホン酸基、及びホスホン酸基等を挙げることができる。置換基の数は1つでもよいし、2つ以上でもよい。置換基のなかでも、ハロゲン原子、及びアルキル基が好ましい。また、一般式(1)中のRは、無置換のフェニル基、又は、ハロゲン原子若しくはアルキル基で置換されたフェニル基を表すことがより好ましい。
【0024】
一般式(1)で表される化合物(ベンゾチアゾール誘導体)としては、一般式(1)中のアゾ基(N=N)と結合する構造として、例えば、以下に示す構造式で表される構造を有する化合物を挙げることができる。なお、以下に示す構造式において、*は一般式(1)中のアゾ基との結合部位を表す。
【0025】
【0026】
本発明者らが鋭意検討した結果、一般式(1)で表される化合物のなかでも、下記の化学式(1-1)、(1-2)、(1-3)で表される化合物(ベンゾチアゾール誘導体)が、C.I.ピグメントオレンジ43の分散安定化にさらに効果的であることがわかった。そのため、顔料分散液は、下記の化学式(1-1)~(1-3)でそれぞれ表される化合物、並びにそれらの塩類からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
ベンゾチアゾール誘導体は、上述した一般式(1)で表される化合物の金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩、及び有機第四級アンモニウム化合物の塩であってもよい。金属塩を構成する金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、及びカリウム等のアルカリ金属を挙げることができる。有機アミン塩を構成する有機アミンとしては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルアミノエタノール、及びトリエタノールアミン等を挙げることができる。有機第4級アンモニウム化合物の塩を構成する第4級アンモニウムとしては、例えば、テトラメチルアンモニウム、及びテトラエチルアンモニウム等を挙げることができる。
【0031】
一般式(1)で表される化合物(ベンゾチアゾール誘導体)は、2-(4-アミノフェニル)-6-メチルベンゾチアゾール-7-スルホン酸を常法によりジアゾ化して得られるジアゾニウム化合物(ジアゾニウム塩)と、下記一般式(A)で表される化合物とをカップリング反応させることにより、得ることができる。また例えば、得られた一般式(1)で表される化合物を単離及び精製する際に、上述の塩類を構成する塩を用いた塩析法により、一般式(1)で表される化合物の塩類を得ることもできる。
【0032】
(一般式(A)中のRは、一般式(1)中のRと同義である。)
【0033】
顔料分散液中のベンゾチアゾール誘導体の含有量は、顔料分散液中のC.I.ピグメントオレンジ43の含有量に対して、0.05質量%以上40質量%以下であることが好ましい。PO43の含有量に対するベンゾチアゾール誘導体の含有量が上記範囲内にあることにより、耐候性が良好であり、かつ、保存安定性がさらに良好な顔料分散液を得やすくなる。これらの観点から、PO43の含有量に対するベンゾチアゾール誘導体の含有量は、0.1質量%以上30質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以上20質量%以下であることがさらに好ましく、1質量%以上10質量%以下であることがよりさらに好ましい。PO43の含有量に対するベンゾチアゾール誘導体の含有量は、顔料分散液中のPO43の含有量P及びベンゾチアゾール誘導体の含有量Bから、[B/P]×100(質量%)で求めることができる。
【0034】
PO43の含有量に対するベンゾチアゾール誘導体の含有量が上記範囲内であれば、顔料分散液の全質量に対するベンゾチアゾール誘導体の含有量は、特に限定されない。ベンゾチアゾール誘導体の含有量は、顔料分散液の全質量に対して、0.0005質量%以上36質量%以下であることが好ましい。顔料分散液の全質量に対するベンゾチアゾール誘導体の含有量は、0.0025質量%以上であることがより好ましく、0.005質量%以上であることがさらに好ましく、0.0075質量%以上であることがよりさらに好ましい。一方、顔料分散液の全質量に対するベンゾチアゾール誘導体の含有量は、28質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましく、12質量%以下であることがよりさらに好ましい。
【0035】
(液媒体)
本実施形態の顔料分散液は、液媒体を含有する。顔料分散液において、液媒体は、C.I.ピグメントオレンジ43の分散媒としての役割を有する。液媒体には、常温(20℃±15℃)において、液体の形態をとるものを用いることができる。
【0036】
液媒体は特に限定されず、顔料分散液が用いられる用途に応じて適当な液媒体を選択して用いうる。例えば、顔料分散液が、グラビアインキ用着色剤、塗料用着色剤、及びカラーフィルター用着色剤等として、溶剤型インキ(油性インキ)に用いられる場合、液媒体として有機溶剤を好適に用いることができる。また、顔料分散液が、活性エネルギー線硬化性インクジェットインキ用着色剤等として、紫外線硬化性インキ及び電子線硬化性インキ等の活性エネルギー線硬化性インキに用いられる場合、液媒体として重合性化合物を好適に用いることができる。液媒体は、有機溶剤及び重合性化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。液媒体を有機溶剤及び/又は重合性化合物とすることで、非水系である油性顔料分散液を得ることができる。
【0037】
有機溶剤には、例えば油性インキに従来から用いられているものを用いることができる。有機溶剤としては、例えば、ケトン系溶剤、炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、及びアルコール系溶剤等を挙げることができ、それらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
ケトン系溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、及びジアセトンアルコール等を挙げることができる。炭化水素系溶剤としては、例えば、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素系溶剤;n-ヘキサン、n-ヘプタン、及びn-オクタン等の脂肪族炭化水素系溶剤;並びにシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、及びシクロオクタン等の脂環族炭化水素系溶剤等を挙げることができる。エステル系溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸n-ブチル、及び酢酸イソブチル等を挙げることができる。エーテル系溶剤としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、及びメチルエチルエーテル等を挙げることができる。グリコールエーテル系溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、及びプロピレングリコールモノメチルエーテル等を挙げることができる。アルコール系溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、及びn-ブタノール等の1価アルコール;並びにエチレングリコール、プロピレングリコール、及びグリセリン等の多価アルコール等を挙げることができる。
【0039】
重合性化合物には、例えば活性エネルギー線硬化性インキに従来から用いられているものを用いることができる。重合性化合物としては、例えば、単官能モノマー、多官能モノマー、光硬化性オリゴマー、及び光硬化性ポリマー等を挙げることができ、それらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」との文言には、「アクリル」及び「メタクリル」の両方の文言が含まれることを意味する。同様に、「(メタ)アクリレート」との文言には、「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方の文言が含まれることを意味する。
【0040】
単官能モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、アダマンチルメチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニロキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、無水フタル酸と2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの付加物、アクリロイルモルホリン、及びN-ビニルカプロラクタム等を挙げることができる。
【0041】
多官能モノマー及び光硬化性オリゴマーとしては、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリ(n=2以上)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(n=2以上)ジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコール(n=2以上)ジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、トリメチロールプロパンジアクリレート、ビス(2-(メタ)アクリロキシエチル)-ヒドロキシエチル-イソシアヌレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型ジエポキシと(メタ)アクリル酸とを反応させたエポキシジ(メタ)アクリレート等のエポキシポリ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体に2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを反応させたウレタントリ(メタ)アクリレート、イソホロンジイソシアネートと2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートとを反応させたウレタンジ(メタ)アクリレート、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートとを反応させたウレタンヘキサ(メタ)アクリレート、ジシクロヘキシルジイソシアネートと2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとを反応させたウレタンジ(メタ)アクリレート、ジシクロヘキシルジイソシアネートとポリ(n=6~15)テトラメチレングリコールとのウレタン化反応物に2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとを反応させたウレタンジ(メタ)アクリレート等のウレタンポリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンとコハク酸及び(メタ)アクリル酸とを反応させたポリエステル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンとコハク酸、エチレングリコール、及び(メタ)アクリル酸を反応させたポリエステル(メタ)アクリレート等のポリエステルポリ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0042】
光硬化性ポリマーとしては、ポリ(メタ)アクリレート、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエポキシ樹脂等のポリマーの末端や側鎖に、ラジカル重合性を示す複数の(メタ)アクリロイルオキシ基が導入されたポリマー等を挙げることができる。さらに、カルボキシ基等を有する、アルカリ現像性の光硬化性ポリマーを用いることもできる。
【0043】
顔料分散液中の液媒体の含有量は、顔料分散液の全質量に対して、9質量%以上98質量%以下であることが好ましい。液媒体の上記含有量は、29質量%以上であることがより好ましく、49質量%以上であることがさらに好ましい。また、液媒体の上記含有量は、94質量%以下であることがより好ましく、89質量%以下であることがさらに好ましい。
【0044】
(その他の成分)
顔料分散液には、PO43、ベンゾチアゾール誘導体、及び液媒体のほかに、その他の成分を含有させてもよい。その他の成分としては、例えば、PO43以外の着色剤、ベンゾチアゾール誘導体以外の分散剤(例えば、ポリウレタン樹脂、アクリル系樹脂、スチレン-アクリル酸共重合体、ポリエステルポリアミド樹脂等)、界面活性剤、光安定剤、紫外線吸収剤、レベリング剤、及び消泡剤等を挙げることができ、それらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0045】
(顔料分散液の製造方法)
顔料分散液の製造方法には特に制限はなく、C.I.ピグメントオレンジ43、ベンゾチアゾール誘導体、及び液媒体、並びに必要に応じてその他の成分を混合して分散することによって、顔料分散液を製造することができる。
【0046】
分散安定性を高める観点から、ベンゾチアゾール誘導体を含む分散剤をC.I.ピグメントオレンジ43に吸着させることが好ましい。その吸着方法としては、例えば、ソルトミリング工程や乾式粉砕工程等の顔料(PO43)微細化中に行う方法や、それぞれの粉末同士を混合する方法、スラリー同士を混合する方法、又は分散剤を使用しての顔料等の分散工程中に行う方法等が挙げられる。これらのなかでも、顔料(PO43)の粒子表面にベンゾチアゾール誘導体を含む分散剤の均一な吸着処理を行うためには、分散工程中に行うことが好ましい。
【0047】
顔料分散液を製造する際に、ベンゾチアゾール誘導体を含む分散剤、PO43、及び液媒体、並びに必要に応じてその他の成分を混合撹拌し、分散機を用いて、PO43を分散させることが好ましい。
【0048】
分散機としては、例えば、ニーダー、二本ロール、三本ロール、SS5(商品名、エムテクニック株式会社)、ミラクルKCK(商品名、浅田鉄鋼株式会社)といった混練機や超音波分散機、高圧ホモジナイザーである、マイクロフルイダイザー(商品名、みずほ工業株式会社)、ナノマイザー(商品名、吉田機械興業株式会社)、スターバースト(商品名、スギノマシン株式会社)、G-スマッシャー(商品名、リックス株式会社)、ペイントシェイカー、ボールミル、アトライター、及びサンドミル等が挙げられる。また、ガラス、ジルコン、及びジルコニア等のビーズメディアを使用したものでは、ペイントシェイカー、ボールミル、アトライター、サンドミル、横型メディアミル分散機、及びコロイドミル等を使用することができる。ビーズメディアとしては、例えば、直径0.5mm以上1mm以下程度のビーズメディアを用いるのがよい。カラーフィルター用着色剤の分散においては、ビーズ径を変えて2回分散を行うのが好ましく、2回目の分散においては1回目の分散に用いたビーズの直径よりも小さい直径のビーズを使用することで、顔料(PO43)をより微細化させることができる。また、得られた顔料分散液はそのままでもよいが、遠心分離機、超遠心分離機、又はろ過機を用いて、僅かに存在する可能性のある粗大粒子を除去することが好ましい。
【0049】
以上詳述した本実施形態の顔料分散液は、液媒体、PO43、及び前述の特定のベンゾチアゾール誘導体を含有するため、より簡便に、C.I.ピグメントオレンジ43の凝集を抑制することが可能であり、かつ、長期間の保存安定性が良好である。そのため、この顔料分散液を用いることで、長期間の保存安定性が良好であり、かつ、PO43が凝集し難いコーティング剤を提供することが可能である。したがって、顔料分散液は、活性エネルギー線硬化性インクジェットインキ用着色剤、グラビアインキ用着色剤、又は塗料用着色剤等として、好適に用いることができる。また、本実施形態の顔料分散液は、耐候性が良好であるため、サインディスプレイ等の屋外用途や、カラーフィルター用着色剤等として好適である。次に、コーティング剤について説明する。
【0050】
<コーティング剤>
本発明の一実施形態のコーティング剤は、前述の顔料分散液を含有する。顔料分散液は、前述の通り、好ましくは非水系である油性顔料分散液であることから、コーティング剤についても、非水系である油性コーティング剤が好ましい。
【0051】
コーティング剤は、物品等の表面に定着し、物品等の表面の少なくとも一部を被覆する作用を示す剤である。このため、コーティング剤は、このような作用を示す様々な用途に適用することができる。具体的には、塗料、文具、電子材料、グラビアインキ、オフセットインキ、インクジェットインキ、活性エネルギー線硬化性インキ、カラーフィルター、トナー、化粧品、捺染、接着剤、粘着剤、フォトレジスト材料、及び医療用材料等を挙げることができる。これらのなかでも、コーティング剤は、塗料、グラビアインキ、インクジェットインキ、又は活性エネルギー線硬化性インキであることが好ましく、グラビアインキ、又は活性エネルギー線硬化性インクジェットインキであることがより好ましい。
【0052】
コーティング剤中のC.I.ピグメントオレンジ43の含有量は、コーティング剤の全質量に対して、0.1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上10質量%以下であることがさらに好ましい。
【0053】
コーティング剤は、前述の顔料分散液のほか、顔料分散液に含有されている液媒体の説明で述べた有機溶剤及び重合性化合物、顔料分散液の説明で述べたその他の成分、並びにその他の添加剤等を含有することができる。これらの任意成分と前述の顔料分散液とを混合することにより、コーティング剤を得ることができる。その他の添加剤としては、例えば、バインダー樹脂、光重合開始剤、光重合禁止剤、スリップ剤、及び酸化防止剤等を挙げることができる。これらは、顔料分散液を調製する際の分散時に加えてもよいが、インク化工程の際に添加することが好ましい。
【0054】
本実施形態のコーティング剤を様々な物品である基材に塗布し、コーティング剤の乾燥及び/又は反応により、塗膜を形成することができる。コーティング剤を塗布する方法は、特に限定されない。例えば、スピンコート法、グラビアコート法、インクジェット法、スクリーン印刷法、バーコート法、ドクターブレード法、ロールコート法、ディップ法、スプレー法、フレキソ印刷法、及びリバースロールコーター法等により、コーティング剤を基材に塗布することができる。
【0055】
コーティング剤が塗布される基材としては、特に限定されず、例えば、光学材料分野、電気材料分野、建築材料分野、記録材料分野、表示材料分野、及び医療材料分野等に使用される基材を挙げることができる。それらの分野における物品の表面コーティング剤や表面処理剤として、コーティング剤を好適に使用することができる。基材の材質としては、特に制限されず、例えば、ステンレス及び銅等の金属、ガラス、セラミック、無機酸化物、シリコン、木材、紙、プラスチック材料等が挙げられる。
【0056】
以上の通り、本実施形態では、以下の構成を採りうる。
[1]液媒体と、C.I.ピグメントオレンジ43と、分散剤と、を含有し、前記分散剤は、上記一般式(1)で表される化合物、並びにその金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩、及び有機第4級アンモニウム化合物の塩からなる群より選ばれる少なくとも1種のベンゾチアゾール誘導体を含む顔料分散液。
[2]前記顔料分散液中の前記C.I.ピグメントオレンジ43の含有量は、前記顔料分散液の全質量に対して、1質量%以上90質量%以下である上記[1]に記載の顔料分散液。
[3]前記顔料分散液中の前記ベンゾチアゾール誘導体の含有量は、前記顔料分散液中の前記C.I.ピグメントオレンジ43の含有量に対して、0.05質量%以上40質量%以下である上記[1]又は[2]に記載の顔料分散液。
[4]前記液媒体は、有機溶剤及び重合性化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む上記[1]~[3]のいずれかに記載の顔料分散液。
[5]活性エネルギー線硬化性インクジェットインキ用着色剤、グラビアインキ用着色剤、塗料用着色剤、又はカラーフィルター用着色剤である上記[1]~[4]のいずれかに記載の顔料分散液。
[6]上記[1]~[5]のいずれかに記載の顔料分散液を含有するコーティング剤。
【実施例0057】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0058】
<材料の用意>
以下に示す顔料、分散剤、重合性化合物、光重合開始剤、光重合禁止剤、及びスリップ剤を用意した。
【0059】
(顔料)
・C.I.ピグメントオレンジ43(商品名「PV Gast Orange GRL」、クラリアント社製;以下、「PO43」と記す場合がある。)
【0060】
(分散剤)
・ソルスパース 37500(ルーブリゾール社製の商品名;ポリエステルポリアミド樹脂)
【0061】
(重合性化合物〉
・アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル(日本触媒社製;以下、「VEEA」と記す場合がある。)
・イソボルニルアクリレート(大阪有機化学工業社製;以下、「IBXA」と記す場合がある。)
・N-ビニルカプロラクタム(ISPジャパン社製;以下、「V-CAP」と記す場合がある。)
・フェノキシエチルアクリレート(Sartomer社製の商品名「SR339A」;以下、「PEA」と記す場合がある。)
【0062】
(光重合開始剤)
・IRGACURE 819(BASF社製のビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイドの商品名)
・DAROCURE TPO(BASF社製の2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイドの商品名)
【0063】
(光重合禁止剤)
・p-メトキシフェノール(関東化学社製)
【0064】
(スリップ剤)
・BYK-UV3500(BYK社製の商品名;ポリエーテル変性アクリル基を有するポリジメチルシロキサン)
【0065】
<ベンゾチアゾール誘導体の製造>
以下に示す手順にしたがってベンゾチアゾール誘導体(1-1)~(1-3)を製造した。分子量の測定及び構造の同定には、マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析計(MALDI-TOF MS(以下、単に「MALDI」と記載する。;商品名「autoflex maX」、BRUKER社製)を用いた。
【0066】
(合成例1)ベンゾチアゾール誘導体(1-1)の製造
2-(4-アミノフェニル)―6-メチルベンゾチアゾール-7-スルホン酸9.61部を常法によりジアゾ化してジアゾニウム塩の溶液を得た。一方、3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン5.23部及び水酸化ナトリウム4.8部を水450部に溶解させて溶液を調製した。この溶液に上記のジアゾニウム塩の溶液を加え、室温で3時間カップリング反応させた。ろ過及び水洗した後、乾燥して、前掲の化学式(1-1)で表されるベンゾチアゾール誘導体(1-1)11.7部を得た。MALDIによる質量分析を行ったところ、分子量506のピークが検出された。
【0067】
(合成例2)ベンゾチアゾール誘導体(1-2)の製造
合成例1で使用した3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン5.23部に代えて、3-メチル-1-p-トリル-2-ピラゾリン-5-オン5.65部を用いて合成したこと以外は、合成例1と同様にして、前掲の化学式(1-2)で表されるベンゾチアゾール誘導体(1-2)12.3部を得た。MALDIによる質量分析を行ったところ、分子量519のピークが検出された。
【0068】
(合成例3)ベンゾチアゾール誘導体(1-3)の製造
合成例1で使用した3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン5.23部に代えて、3-メチル-1-クロロフェニル-2-ピラゾリン-5-オン6.26部を用いて合成したこと以外は、合成例1と同様にして、前掲の化学式(1-3)で表されるベンゾチアゾール誘導体(1-3)16.0部を得た。MALDIによる質量分析を行ったところ、分子量540のピークが検出された。
【0069】
<顔料分散液の調製>
(実施例1)オレンジ色顔料分散液(1-1)の調製
PEA73.0部に、分散剤(ソルスパース 37500)を12部溶解させ、PO43を14.5部、合成例1のベンゾチアゾール誘導体(1-1)を0.5部加え、ペイントシェイカーで、直径1mmのジルコニアビーズを用いて、体積平均粒子径(メジアン径;D50)が200nm以下となるように分散し、実施例1のオレンジ色顔料分散液(1-1)を調製した。
【0070】
(実施例2)オレンジ色顔料分散液(1-2)の調製
実施例1で使用したベンゾチアゾール誘導体(1-1)の代わりに、ベンゾチアゾール誘導体(1-2)を0.5部使用したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2のオレンジ色顔料分散液(1-2)を調製した。
【0071】
(実施例3)オレンジ色顔料分散液(1-3)の調製
実施例1で使用したベンゾチアゾール誘導体(1-1)の代わりに、ベンゾチアゾール誘導体(1-3)を0.5部使用したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3のオレンジ色顔料分散液(1-3)を調製した。
【0072】
(実施例4)オレンジ色顔料分散液(1-4)の調製
実施例1におけるPO43の使用量14.5部及びベンゾチアゾール誘導体(1-1)の使用量0.5部を、それぞれ、14.95部及び0.05部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例4のオレンジ色顔料分散液(1-4)を調製した。
【0073】
(実施例5)オレンジ色顔料分散液(1-5)の調製
実施例1におけるPO43の使用量14.5部及びベンゾチアゾール誘導体(1-1)の使用量0.5部を、それぞれ、11.0部及び4.0部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例5のオレンジ色顔料分散液(1-5)を調製した。
【0074】
(比較例1)オレンジ色顔料分散液(2)の調製
実施例1で使用したベンゾチアゾール誘導体(1-1)の代わりに、ダイレクトイエロー8を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1のオレンジ色顔料分散液(2)を調製した。比較例1では、一般式(1)で表される化合物(ベンゾチアゾール誘導体)の化学構造と共通の構造部を有するダイレクトイエロー8を比較のために使用した。
【0075】
(比較例2)オレンジ色顔料分散液(3)の調製
実施例1において、ベンゾチアゾール誘導体(1-1)を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2のオレンジ色顔料分散液(3)を調製した。
【0076】
<顔料分散液の評価>
(体積平均粒子径)
調製した各オレンジ色顔料分散液について、動的光散乱法を利用した粒度分布測定装置(商品名「FPAR-1000」、大塚電子株式会社製)を用いて、顔料分散液中のPO43の体積平均粒子径(D50)を測定した。
【0077】
(保存安定性)
各実施例及び比較例で調製した直後のオレンジ色顔料分散液をガラス瓶に収容後、ガラス瓶を密封し、60℃で2週間保存した。保存前後のオレンジ色顔料分散液の25℃での粘度を、E型粘度計(製品名「TV33-L」、東機産業株式会社製)で測定した。そして、保存前のオレンジ色顔料分散液の粘度に対して保存後のオレンジ色顔料分散液の粘度が何%上昇したか、すなわち何%増粘したかを算出した。その結果に基づいて、下記の評価基準にしたがって、顔料分散液の保存安定性を評価した。増粘が小さいほど、オレンジ色顔料分散液の保存安定性が良好であったことを表す。下記の評価基準の「A」及び「B」は許容できるレベル、「C」は許容できないレベルである。
A:増粘が5%未満である。
B:増粘が5%以上10%未満である。
C:増粘が10%以上である。
【0078】
(顔料凝集)
各実施例及び比較例で調製した直後のオレンジ色顔料分散液を、濾紙(アドバンテック社製、No.5A)を用いて濾過した後に、濾紙上に残存した異物を目視にて観察した。観察結果に基づいて、下記の評価基準にしたがって、顔料分散液中の顔料(C.I.ピグメントオレンジ43)の凝集の程度を評価した。異物が確認されないか少ないほど、オレンジ色顔料分散液中のPO43が凝集し難かったことを表す。下記の評価基準の「A」及び「B」は許容できるレベル、「C」は許容できないレベルである。
A:異物が認められない。
B:若干の異物が認められる。
C:多くの異物が認められる。
【0079】
実施例1~5、並びに比較例1及び2のオレンジ色顔料分散液の組成(単位:部)と評価結果を表1(表1-1及び表1-2)に示す。
【0080】
【0081】
【0082】
<インクジェットインキの調製>
(実施例6~8、並びに比較例3及び4)
実施例1~3、並びに比較例1及び2で得られたオレンジ色顔料分散液に、重合性化合物、光重合開始剤、光重合禁止剤、及びスリップ剤を、下記表2に示す組成となるようにそれぞれ配合し、非水系のオレンジ色インキであって、活性エネルギー線硬化性のインクジェットインキ(以下、単に「インキ」と記載することがある。)を調製した。
【0083】
<インクジェットインキの評価>
(保存安定性)
各実施例及び比較例で調製した直後のインキをガラス瓶に収容後、ガラス瓶を密封し、60℃で2週間保存した。保存前後のインキの25℃での粘度を、E型粘度計(製品名「TV33-L」、東機産業株式会社製)にて測定し、保存前のインキの粘度に対して保存後のインキの粘度が何%上昇したか、すなわち何%増粘したかを算出した。その結果に基づいて、下記の評価基準にしたがって、インキの保存安定性を評価した。増粘が小さいほど、インキの保存安定性が良好であったことを表す。下記の評価基準の「A」及び「B」は許容できるレベル、「C」は許容できないレベルである。
A:増粘が5%未満である。
B:増粘が5%以上10%未満である。
C:増粘が10%以上である。
【0084】
(顔料凝集)
各実施例及び比較例で調製した直後のインキを、濾紙(アドバンテック社製、No.5A)を用いて濾過した後に、濾紙上に残存した異物を目視にて観察した。観察結果に基づいて、下記の評価基準にしたがって、インキ中の顔料(C.I.ピグメントオレンジ43)の凝集の程度を評価した。異物が確認されないか少ないほど、インキ中のPO43が凝集し難かったことを表す。下記の評価基準の「A」及び「B」は許容できるレベル、「C」は許容できないレベルである。
A:異物が認められない。
B:若干の異物が認められる。
C:多くの異物が認められる。
【0085】
実施例6~8、並びに比較例3及び4のインクジェットインキの組成(単位:%)と評価結果を表2に示す。
【0086】