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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134191
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】電気式ヒータ
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/03 20060101AFI20230920BHJP
   H05B 3/02 20060101ALI20230920BHJP
   H05B 3/06 20060101ALI20230920BHJP
   H05B 3/14 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
H05B3/03
H05B3/02 B
H05B3/06 B
H05B3/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022039565
(22)【出願日】2022-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】599161580
【氏名又は名称】株式会社デンソートリム
(74)【代理人】
【識別番号】100096998
【弁理士】
【氏名又は名称】碓氷 裕彦
(72)【発明者】
【氏名】新西 祥次
【テーマコード(参考)】
3K092
【Fターム(参考)】
3K092PP15
3K092QA05
3K092QB21
3K092QB49
3K092QC19
3K092QC22
3K092SS17
3K092SS20
(57)【要約】
【課題】発熱素子と対向する電極板を廃止し、プラス電極及びマイナス電極を放熱フィンに導電が必要な部位で導電性良く、絶縁が必要な部位で絶縁性良く結合する。
【解決手段】平板状の発熱素子と、この発熱素子を板面方向である第1方向に複数保持するとともに第1方向と直交する第2方向には発熱素子の両面を露出させる非導電性材料製の保持プレートと、空気通路に配置されて発熱素子の熱を空気通路に伝熱し発熱素子と第2方向で接する導電性材料製の放熱フィンとを備える。プラス電極及びマイナス電極は、放熱フィンが発熱素子と接する位置より第1方向の外方で放熱フィン及び保持プレートと接する。放熱フィンと接触しているので、放熱フィンを利用してプラス電極及びマイナス電極と発熱素子とを電気接続することができ、電極板を設置する必要がなくなる。保持プレートによりプラス電極及びマイナス電極が発熱素子と短絡することを防ぐことができる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電を受けて発熱する平板状の発熱素子と、
発熱素子を平板状の板面方向である第1方向に複数保持するとともに、前記第1方向と直交する第2方向には前記発熱素子の両面を露出させる非導電性材料製の保持プレートと、
空気通路に配置されて前記発熱素子の熱を空気通路に伝熱し、前記発熱素子と前記第2方向で接する導電性材料製の放熱フィンと、
電源と接続するプラス電極、及びマイナス電極と、
前記放熱フィン及び前記保持プレートの前記第2方向の両外側に配置され、前記放熱フィン及び前記保持プレートを挟持する一対のフレームと、
前記放熱フィン及び前記保持プレートの前記第1方向の両外側に配置され、前記フレームを前記第2方向の内側に向けて押圧する一対のスプリングとを備え、
前記プラス電極及び前記マイナス電極は、前記放熱フィンが前記発熱素子と接する位置より前記第1方向の外方で、前記放熱フィン及び前記保持プレートと接する
ことを特徴とする電気式ヒータ。
【請求項2】
前記プラス電極及び前記マイナス電極は、前記スプリングより前記第1方向の内側で前記放熱フィンに接し、
前記プラス電極及び前記マイナス電極は、自身の弾性力及び前記スプリングの弾性力により前記放熱フィン及び前記保持プレート間に挟持される
ことを特徴とする請求項1に記載の電気式ヒータ。
【請求項3】
前記放熱フィンは、一対となる第1板部材及び第2板部材と、前記第1板部材と前記第2板部材との間に配置されるフィン部材とを備え、
前記保持プレートは、隣接する前記放熱フィンの前記第1板部材と前記第2板部材とに挟持され、
前記プラス電極及び前記マイナス電極は、前記第1板部材と前記保持プレートとに挟持される
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電気式ヒータ。
【請求項4】
前記放熱フィン及び前記保持プレートの前記第1方向の外側には非導電性材料製のケースが配置され、
前記プラス電極及び前記マイナス電極は、前記ケースより前記第1方向の内側で前記放熱フィンに接し、
前記プラス電極及び前記マイナス電極は、自身の弾性力により前記放熱フィン及び前記ケースに挟持される
ことを特徴とする請求項1に記載の電気式ヒータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気の加熱を行う電気式ヒータに関し、例えば、自動車の車室内暖気に用いて好適である。
【背景技術】
【0002】
電気式ヒータでは、発熱素子の板面方向である第1方向の両側にフレームを配置し、このフレームをヒータ部側に押圧して、ヒータ部での発熱素子、放熱フィン、電極板を圧着させる構造が知られている。そして、特許文献1ではフレームをヒータ部側に押圧するのに、スプリングを用いている。
【0003】
ただ、特許文献1では、電極板が熱抵抗となり、放熱効率が悪化するおそれがある。また、特許文献1では、発熱素子を複数並列配置するため、電極板が長尺になり製造コストが悪化する恐れもあった。
【0004】
一方、特許文献2では、電極板を用いることなく、放熱フィンを介してプラス電極からの電源を直接発熱素子に供給している。かつ、発熱素子からの接地にも放熱フィンを用いている。
【0005】
ただ、特許文献2では、発熱素子と放熱フィンとの間に、熱及び電気伝導性弾性体を配置する必要がある。そのため、発熱素子と放熱フィンとの接続に、グラファイトフィラー層の焼き付けという特別な工程が必要となる。特許文献1に示すようなスプリングの押圧による電気式ヒータの形成に利用することは可能であるが、グラファイトフィラー層の焼き付け工程が余分となり、実用的でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005-85696号公報
【特許文献2】特開昭62-107261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は上記点に鑑み、スプリングを用いてフレームをヒータ部側に押圧する構成を基本として、発熱素子と対向する電極板を廃止する。その上で、プラス電極及びマイナス電極を放熱フィンに導電が必要な部位では導電性良く、絶縁が必要な部位では絶縁性良く結合することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の第1は、通電を受けて発熱する平板状の発熱素子と、この発熱素子を平板状の板面方向である第1方向に複数保持するとともに、第1方向と直交する第2方向には発熱素子の両面を露出させる非導電性材料製の保持プレートと、空気通路に配置されて発熱素子の熱を空気通路に伝熱し、発熱素子と第2方向で接する導電性材料製の放熱フィンと、電源と接続するプラス電極、及びマイナス電極とを備える電気式ヒータである。
【0009】
また、本開示の第1の電気式ヒータは、放熱フィン及び保持プレートの第2方向の両外側に配置され、放熱フィン及び保持プレートを挟持する一対のフレームと、放熱フィン及び保持プレートの第1方向の両外側に配置され、フレームを第2方向の内側に向けて押圧する一対のスプリングとも備えている。そして、本開示の第1の電気式ヒータは、プラス電極及びマイナス電極が、放熱フィンが発熱素子と接する位置より第1方向の外方で、放熱フィン及び保持プレートと接する構造となっている。
【0010】
本開示の第1の電気式ヒータは、プラス電極及びマイナス電極が、放熱フィンが発熱素子と接する位置より第1方向の外方で放熱フィンと接触しているので、放熱フィンを利用してプラス電極及びマイナス電極と発熱素子とを電気接続することができる。これにより、電極板を特別に設置する必要がなくなる。
【0011】
また、本開示の第1の電気式ヒータは、プラス電極及びマイナス電極が、放熱フィンが発熱素子と接する位置より第1方向の外方で、保持プレートとも接している。保持プレートは非導電性の材料であるので、保持プレートによりプラス電極及びマイナス電極が発熱素子と短絡することを防ぐことができる。本開示の第1の電気式ヒータは、発熱素子を保持する保持プレートを有効に活用して電気絶縁を達成している。
【0012】
本開示の第2の電気式ヒータは、プラス電極及びマイナス電極は、スプリングより第1方向の内側で放熱フィンに接している。そして、プラス電極及びマイナス電極は、自身の弾性力及びスプリングの弾性力により放熱フィン及び保持プレート間に挟持されている。本開示の第2の電気式ヒータのプラス電極及びマイナス電極は、弾性力によって保持されているので、プラス電極及びマイナス電極の組付けが容易となっている。
【0013】
本開示の第3では、放熱フィンが、一対となる第1板部材及び第2板部材と、第1板部材と第2板部材との間に配置されるフィン部材とを備えている。そして、保持プレートは隣接する放熱フィンの第1板部材と第2板部材とに挟持され、プラス電極及びマイナス電極は第1板部材と保持プレートとに挟持されている。本開示の第3の電気式ヒータのプラス電極及びマイナス電極は、第1板部材と保持プレートとに挟持されているので、プラス電極及びマイナス電極の組付けが容易となっている。
【0014】
本開示の第4の電気式ヒータは、放熱フィン及び保持プレートの第1方向の外側に、非導電性材料製のケースが配置されている。そして、プラス電極及びマイナス電極は、ケースより第1方向の内側で放熱フィンに接し、プラス電極及びマイナス電極は、自身の弾性力により放熱フィン及びケースに挟持されている。本開示の第4の電気式ヒータのプラス電極及びマイナス電極は、弾性力によって放熱フィン及びケースに挟持されているので、プラス電極及びマイナス電極の組付けが容易となっている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本開示の電気式ヒータの正面図である。
図2図2は、図1の電気式ヒータを分解した正面図である。
図3図3は、図1の電気式ヒータの発熱素子及び電極部分を拡大した断面図である。
図4図4は、放熱フィン、保持プレート及び電極を示す断面図である。
図5図5は、保持プレートを示す斜視図である。
図6図6は、放熱フィンを示す正面図である。
図7図7は、図6図示放熱フィンの側面図である。
図8図8は、ヒータ部の両端にフレームを配置した状態の正面図である。
図9図9は、電気式ヒータの他の例の発熱素子及び電極部分を拡大した断面図である。
図10図10は、図9のX-X線に沿う断面図である。
図11図11は、電気式ヒータの他の例の発熱素子及び電極部分を拡大した断面図である。
図12図12は、電気式ヒータの他の例に用いるハウジングを示す断面図である。
図13図13は、図12のXIII線方向から見た側面図である。
図14図14は、図11図示電気式ヒータに図12図示ハウジングを組み込んだ状態を示す断面図である。
図15図15は、ヒータ部にケース及び第2ケースを組付けた状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の一例を図に基づいて説明する。図1は、電気式ヒータ100の一例を示す正面図である。電気式ヒータ100は自動車用空調装置と共に用いられる。自動車用空調装置は、その暖房の熱源にエンジン冷却水を用いている。ただ、エンジンの始動直後では、エンジン冷却水が温まっていなく、暖房熱源が不足する。特に、自動車のハイブリッド化によりエンジンが小型化し、エンジンの稼働率が低下するとエンジン冷却水の熱量不足が顕著となる。
【0017】
電気式ヒータ100は、このような熱源不足を補うのに用いられる。自動車用空調装置のヒータコアの空気流れ下流に配置され、自動車用空調装置の送風ファンからの送られる空気の加熱を行う。図2は、この電気式ヒータ100の構成部品を分解して示す正面図である。
【0018】
符号110はPTC素子等の発熱素子で、通電により発熱する。PTC(Positive Temperature Coefficient)素子は、特定の温度以上で急速に電気抵抗が増大する性質をもった素子で、そのため通電により発熱するが、発熱する温度が所定の温度を越えると電気抵抗が高くなりすぎて電流が殆ど流れなくなり、ある程度の温度以上に発熱することがない。よって、この素子を用いることでヒータの過熱を防ぐことができる。
【0019】
この発熱素子110は、長さ35ミリメートル、幅7ミリメートル、厚さ1ミリメートル程度の長方形形状で、ナイロン等の非導電性の樹脂材料製の保持プレート120の保持部121内に保持されている。保持プレート120は、図5に示すように概略H形状の断面形状をしており、高さは1ミリメートルより多少高い程度である。保持プレート120の側壁122間に、発熱素子110を収容する空間となる保持部121と、隣り合う発熱素子110の間隔を維持するための底部123とが交互に形成される。
【0020】
底部123の肉厚は1ミリメートル程度で、発熱素子110の肉厚とほぼ同等で若干量小さく設定されている。そのため、保持プレート120の保持部121に発熱素子110が収納された状態では、発熱素子110の一方面111及び他方面112は確実に露出している。なお、底部123には、発熱素子110の他方面112が対向することとなる。
【0021】
ここで、保持プレート120のうち、発熱素子110の板面方向で、発熱素子110が複数並ぶ方向を第1方向とする(図1図示)。また、第1方向と直交する方向を第2方向とする。そして、保持プレート120の側壁122間には、放熱フィン130が第2方向の両側に配置されている。その為、発熱素子110の一方面111及び他方面112は、隣接する放熱フィン130と第2方向で接合している。図5では、側壁122を強調して示しているが、放熱フィン130はできる限り空気と触れるように配置されている。側壁122は発熱素子110の脱落防止や、放熱フィン130の組付けを容易とする位置決めとして機能している。従って、放熱フィン130が保持プレート120内に深く嵌り込んでいる訳ではない。
【0022】
図6及び図7に示すように、放熱フィン130は、第1板部材132と第2板部材133との間にフィン部材131が挟持されて成形される。フィン部材131はマンガンを含むアルミニウム合金製で、多数回折り曲げ成形されている。第1板部材132及び第2板部材133もアルミニウム合金製で、端部が略直角に屈曲してL字形状をしている。第1板部材132及び第2板部材133の厚さ方向が保持プレート120の側壁122と係合している。放熱フィン130は、第1板部材132及び第2板部材133の厚みで側壁122と係合する程度であるので、空気との接触が保持プレート120によって阻害されることは無い。
【0023】
フィン部材131と第1板部材132及び第2板部材133とは一体ろう付けされている。この放熱フィン130は高さが10ミリメートル、幅が7ミリメートルで程度である。放熱フィン130の長さは電気式ヒータ100に要求される能力に応じで異なるが、180~280ミリメートル程度である。
【0024】
保持プレート120には、第1方向の端部に電極140を保持する電極保持部124が形成されている。電極保持部124は、図4及び図5に示すように、放熱フィン130の第1板部材132側に向けて開口しており、第2板部材133とは離隔している。そのため、電極140は、電極保持部124に収納された状態で、第1板部材132と接触して電気接続できる。かつ、第2板部材133とは電極保持部124が樹脂材料製であるため電気的に絶縁される。後述するが、発熱素子110の一方面111及び他方面112と電極140とは、隣り合う放熱フィン130を介して導通する。
【0025】
特に、図4に示すように、電極140は第1板部材132側に凸となるように屈曲する弾性変形部143を形成しているので、電極140自身の弾性力により、第1板部材132と確実に接する構造となっている。なお、図4は弾性変形部143の形状が分かるよう、電極140の自由状態での形状を示している。電極140が第1板部材132と接触している状態では、図3に示すように、電極140の弾性変形部143は第1板部材132に押し付けられて、第1板部材132の形状に沿うように潰れる弾性変形をしている。
【0026】
電極140は、図示しないバッテリから電力の供給を受けるプラス電極142と、マイナス電極141とがある。図1ないし図3の例では、放熱フィン130は5層積層配置されている。そして、この放熱フィン130の間に発熱素子110と電極140を保持する保持プレート120が4層配置されている。図の最下方には電極140のみを保持する保持プレート120が1層配置されている。従って、電極140は5層配置され、プラス電極142とマイナス電極141とが交互に配置されている。なお、図の最下方の保持プレート120は、発熱素子110を保持しないが、保持部121は形成している。これにより、保持プレート120の形状を全て揃えることができ、生産性を向上させている。
【0027】
このように、放熱フィン130、保持プレート120および電極140が複数段積層されてヒータ部150が構成される。なお、配置方向で上述の第1方向は、積層方向と直交する方向(図1の左右方向)となる。第1方向と直交する積層方向(図1の上下方向)は、第2方向となる。
【0028】
また、図1及び図2の例では、保持プレート120のうち、図の上から1番目と4番目の保持プレート120には、発熱素子110が第2方向両端に2カ所に配置されている。上から2番目の保持プレート120と3番目の保持プレート120では、発熱素子110を端部と中央よりの2カ所配置している。そして、最下方の保持プレート120には、上述の通り、発熱素子110は配置されていない。
【0029】
そのため、ヒータ部150の全体として発熱素子110の配置は、ヒータ部150の第1方向、第2方向共にバランスが取れた配置としている。これにより、電気式ヒータ100を通過した空気は均質な温度となり、自動車用空調装置の温度制御に寄与している。ヒータ部150の第1方向の長さ、及び第2方向の長さは自動車用空調装置のダクトに応じて設定される。本開示では、第1方向の幅は200ミリメートル程度から300ミリメートル程度であり、第2方向の幅は50ミリメートル程度から100ミリメートル程度である。
【0030】
発熱素子110の発熱量の制御は、通電するプラス電極142の数を変えることで行う。最大の発熱量を得るときには、全てのプラス電極142に通電する。この時、上から1番目の保持プレート120に配置された発熱素子110の他方面112には、下方の放熱フィン130の第2板部材133が接触している。そのため、発熱素子110の他方面112は、下方に位置する放熱フィン130の第1板部材132からフィン部材131及び第2板部材133を介してマイナス電極141と導通する。そして、上から1番目の保持プレート120に配置された発熱素子110の一方面111は、上方に位置する放熱フィン130の第1板部材132を介してプラス電極142の電圧が印加される。
【0031】
同様に、上から2番目の保持プレート120に配置された発熱素子110の一方面111は、上方に位置する放熱フィン130の第1板部材132を介してマイナス電極141と導通する。そして、発熱素子110の他方面112は下方に位置する放熱フィン130の第2板部材133と接しているので、第2板部材133からフィン部材131及び第1板部材132を介して、下方に配置されるプラス電極142からの電圧が印加される。
【0032】
このように、各発熱素子110は、プラス電極142が接する側の放熱フィン130から電圧の印加を受け、マイナス電極141が接する側の放熱フィン130に導通する。換言すれば、各発熱素子110は一方面111が放熱フィン130の第1板部材132と接触しており、他方面112が第2板部材133と接触している。そして、プラス電極142及びマイナス電極141は第1板部材132と接触している。そのため、プラス電極142からの電圧は、第1板部材132が接触している発熱素子110には第1板部材132より一方面111に印加され、第2板部材133が接触している発熱素子110には第1板部材132及びフィン部材131を介して第2板部材133から他方面112に印加される。
【0033】
これは、マイナス電極141でも同様である。マイナス電極141に第1板部材132が接触している発熱素子110では、第1板部材132を通して一方面111より導通する。また、第2板部材133が接触している発熱素子110では、第1板部材132及びフィン部材131を介して第2板部材133を通して他方面112に導通される。
【0034】
そして、電極140はプラス電極142もマイナス電極141も保持プレート120の電極保持部124に収納されているので、絶縁に関しては良好に保たれている。即ち、電極140は、放熱フィン130の第1板部材132とのみ接触し、第2板部材133とは保持プレート120によって、隔離されている。その為、第2板部材133より発熱素子110に短絡することは無い。
【0035】
ヒータ部150の発熱量制御には、通電するプラス電極142の数を増減させればよい。3つのプラス電極142のうち、上方のプラス電極142を第1プラス電極1420とし、中央のプラス電極142を第2プラス電極1421とし、下方のプラス電極142を第3プラス電極1422とする。また、2つのマイナス電極141のうち、上方のマイナス電極141を第1マイナス電極1410とし、下方のマイナス電極141を第2マイナス電極1411とする。第1プラス電極1420は第1マイナス電極1410と導通し、第2プラス電極1421は第1マイナス電極1410と第2マイナス電極1411と導通する。そして、第3プラス電極1422は第2マイナス電極1411と導通している。
【0036】
第1プラス電極1420からの電圧は、上から1番目の2個の発熱素子110に印加される。一方で、第2プラス電極1421からの電圧は、上から2番目と3番目の4個の発熱素子110に印加される。そして、第3プラス電極1422からの電圧は上から4番目の2個の発熱素子110に印加される。電圧としては、例えば、第1プラス電極1420と第3プラス電極1422に150ワット印加し、第2プラス電極1421には300ワット印加する。
【0037】
そのため、第1プラス電極1420、第2プラス電極1421及び第3プラス電極1422の全てに通電した状態が最も発熱量が多い。次いで、第2プラス電極1421と第1プラス電極1420か第3プラス電極1422のいずれかに通電した状態の発熱量が多い。その次は、第2プラス電極1421のみに通電した状態か、第1プラス電極1420と第3プラス電極1422の双方に通電した状態の発熱量が多くなる。そして、第1プラス電極1420か第3プラス電極1422のみに通電した状態が最も発熱量が少なくなる。このいずれの発熱の状態であっても、ヒータ部150の中で発熱素子110は第1方向、第2方向共にバランス良く配置されている。そのため、自動車用空調装置に搭載された際に、空気を均一に加熱することができる。
【0038】
本開示では、上述の通り、発熱素子110は、一方面111が放熱フィン130の第1板部材132と接触しており、他方面112が第2板部材133と接触している。その為、発熱素子110からの熱は直接放熱フィン130に伝達され、発熱素子110の熱を効率よく利用することができている。また、放熱フィン130は第1板部材132及び第2板部材133を含めて、できる限り多くの面で空気と接触するようにしているので、空気との熱交換効率が良い。
【0039】
ヒータ部150の第2方向の両側には、ヒータ部150を挟持するステンレス製のフレーム160が配置されている。このフレーム160の第1方向の長さは放熱フィン130と同等かやや長くなっている。また、フレーム160は断面コ字形状(U字形状)となっており、第2方向への剛性を高めている。また、フレーム160は、自由状態では第2方向の内側に凸となっている(図8図示)。フレーム160の幅はヒータ部150の厚さと同じく8ミリメートル程度であり、フレーム160の高さは10ミリメートル程度である。また、フレーム160の厚さは1ミリメートル程度である。
【0040】
フレーム160の第1方向の両側には、図2に示すように、スプリング170がそれぞれ配置されている。スプリング170は、直径が4ミリメートル程度のステンレス製棒材である。そして、スプリング170は、ヒータ部150の第2方向端部に沿う直線部171と、その直線部の第2方向両端に形成された屈曲部172と、フレーム160をヒータ部150側に押圧する押圧部173とを備えている。スプリング170は、屈曲部172によりバネ性を有し、50から190ニュートン程度の力でフレーム160をヒータ部150側(第2方向内側)に押圧している。なお、後述するように、スプリング170は、ポリブチレンテレフタレートPBT製のケース180に収納されている。
【0041】
ヒータ部150の電極140、放熱フィン130、保持プレート120との間、及びヒータ部150とフレーム160との間の接合は、専らこのスプリング170の押圧力によって維持されている。換言すれば、電極140、放熱フィン130、保持プレート120、及びフレーム160との間は機械的組付けで、ろう付けや溶接等による固着はなされていない。
【0042】
その為、電極140は保持プレート120の電極保持部124と放熱フィン130の第1板部材132との間で第2方向に機械的に挟持されることとなる。この挟持の状態は、電極140の弾性変形部143の第2方向の外向きに作用する弾性力とスプリング170の第2方向の内向きに作用する弾性力とによって維持される。電極140の固定用に、ハンダ固定等特別な固定作業を用いる必要がなくなり、組付け性が良くなっている。
【0043】
また、電極140が保持プレート120の電極保持部124と放熱フィン130の第1板部材132との間で機械的に挟持される結果、電極140が発熱素子110にまで延びることもなくなっている。これにより、ヒータ部150の第2方向高さを抑えることができている。かつ、上述の通り、発熱素子110の熱は電極140には伝わらず、直接放熱フィン130に伝わるので、伝熱効率も良くなっている。なお、第1方向で電極140と発熱素子110との間には、保持プレート120の底部123が介在するので、発熱素子110と電気的に短絡することもない。
【0044】
図9及び図10に弾性変形部143の他の形状を示す。この例では、電極140の端部145が、第1方向及び第2方向と直交する放熱フィン130の幅方向に幅広に形成されている。この端部145を放熱フィン130の第1板部材132側(第2方向)に屈曲して弾性変形部143を形成している。弾性変形部143がより多くの面積で放熱フィン130の第1板部材132と接触している。
【0045】
ただし、弾性変形部143は必ず必要な訳ではない。例えば、保持プレート120の電極保持部124に凸部を設けて、電極140を第1板部材132と接触するようにしても良い。または、電極保持部124の深さより電極140の厚さを大きくすることで、電極140が第1板部材132と接触できるようにしても良い。
【0046】
上述の通り、電極140の固定は電極保持部124と第1板部材132との挟持で行うが、電極140が第1方向の外方に移動しないようにずれ防止を形成することは望ましい。例えば、図9図10の例で幅広に形成された端部145を電極保持部124が係止して、第1方向の外方への抜け止めを行うようにしても良い。
【0047】
電極140の第1方向の外方への抜け止めに上述のケース180を利用することも可能である。例えば、図11に示すように、電極140の第1方向の端部145を第2方向に屈曲させて、端部145を放熱フィン130と対向するようにする。より具体的には、L字状に形成された第1板部材132の端面1320に対して、電極140の端部145が対向するようにする。そして、ケース180には、図12及び図13に示すように、端部145と当接する係止壁181と、電極140の貫通する貫通孔182とを形成する。
【0048】
図14に示すように、電極140を貫通孔182に通した状態で、ケース180を第1方向でヒータ部150の内側に向かう方向に移動させると、電極140の端部145は係止壁181により第1方向に押される。この押し付けにより、電極140の端部145は、放熱フィン130の第1板部材132の端面1320と接触する。図12に示すように、ケース180には係止穴188が形成されている。また、図15に示すように、フレーム160に打ち出し形成された凸部165が係止穴188とスナップフィット185に結合している。その為、この接触状態では電極140の第1方向外側への移動は係止壁181によって抑えられ、電極140の第1方向の抜け止めとなる。ケース180とフレーム160とは、スナップフィット185に代え、又は、スナップフィット185と共にボルト固定としても良い。
【0049】
なお、図12及び図14に示すように、ケース180には第1コネクタ部183及び第2コネクタ部184も形成されている。第1コネクタ部183にはプラス電極142(第1プラス電極1420及び第2プラス電極1421)とマイナス電極141(第1マイナス電極1410)が配置される。一方、第2コネクタ部184には、プラス電極142(第3プラス電極1422)とマイナス電極141(第2マイナス電極1411)が配置される。この状態で、プラス電極142及びマイナス電極141と対となる電極が嵌り合うこととなる。第1コネクタ部183及び第2コネクタ部184に、対となる電極が嵌り合うことによっても、プラス電極142及びマイナス電極141の抜け防止を図ることができる。
【0050】
なお、図15に示すように、ヒータ部150を挟んでケース180と第1方向の反対側にも第2ケース189が配置されている。この第2ケース189もポリブチレンテレフタレートPBT製でスプリング170を収納している。また、係止穴188を有し、フレーム160の凸部165とスナップフィット結合する点も、ケース180と同様である。
【0051】
また、上述の例は、本開示の望ましい対応であるが、本開示は種々に変更可能である。上述の材料や大きさは一例であり、要求される性能等に応じて変更可能である。保持プレート120内での発熱素子110の数や配置も種々に変更可能である。かつ、保持プレート120や放熱フィン130の数量も変更可能である。また、上述の例では、左右のスプリング170を同一形状としたが、一方側のスプリング170をフレーム160と一体に構成することも可能である。
【符号の説明】
【0052】
100 電気式ヒータ
110 発熱素子
120 保持プレート
130 放熱フィン
140 電極
141 プラス電極
142 マイナス電極
150 ヒータ部
160 フレーム
170 スプリング
180 ケース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10
図11
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図15