(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134211
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】コイル装置
(51)【国際特許分類】
H01F 27/29 20060101AFI20230920BHJP
H01F 27/06 20060101ALI20230920BHJP
H01F 27/28 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
H01F27/29 G
H01F27/29 125
H01F27/06 103
H01F27/28 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022039605
(22)【出願日】2022-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】渡部 汰一
(72)【発明者】
【氏名】東田 啓吾
(72)【発明者】
【氏名】吉野 花子
【テーマコード(参考)】
5E043
5E070
【Fターム(参考)】
5E043BA01
5E070AB03
5E070BA03
5E070CA15
5E070DB02
5E070EA02
(57)【要約】
【課題】浮遊容量を低減したコイル装置を提供すること。
【解決手段】第1ワイヤ60と、第2ワイヤ79と、第1ワイヤ60および第2ワイヤ70が巻回してある巻芯部30を有するドラムコア20と、を有するコイル装置1である。ドラムコアは、巻芯部の第1軸に沿った一端に形成された第1鍔部40と、巻芯部の第1軸に沿った他端に形成された第2鍔部50と、を有する。第1鍔部には、第1ワイヤと接続する第1端子81および第2端子82が形成してあり、第2鍔部には、第2ワイヤと接続する第3端子91および第4端子92が形成してある。第1ワイヤは巻芯部に巻回してある巻幅W1の第1コイル部を有し、第2ワイヤは巻芯部に巻回してある巻幅W2の第2コイル部を有する。第1コイル部は、第2コイル部から離間距離W3だけ離れて第1鍔部40側に配置してあり、W3>W1またはW3>W2の関係を満たす。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ワイヤと、第2ワイヤと、前記第1ワイヤおよび前記第2ワイヤが巻回してある巻芯部を有するドラムコアと、を有するコイル装置であって、
前記ドラムコアは、前記巻芯部の第1軸に沿った一端に形成された第1鍔部と、前記巻芯部の前記第1軸に沿った他端に形成された第2鍔部と、を有し、
前記第1鍔部には、前記第1ワイヤと接続する第1端子および第2端子が形成してあり、
前記第2鍔部には、前記第2ワイヤと接続する第3端子および第4端子が形成してあり、
前記第1ワイヤは、前記巻芯部に向かって押さえつけられるように巻回してある第1コイル部を有し、
前記第1コイル部は、前記第1コイル部において、前記第1鍔部に最も近い第1外側巻線部分と前記第1鍔部に最も遠い第1内側巻線部分との距離の前記第1軸に沿う方向の成分によって規定される第1巻幅W1を有し、
前記第2ワイヤは、前記巻芯部に向かって押さえつけられるように巻回してある第2コイル部を有し、
前記第2コイル部は、前記第2コイル部において、前記第2鍔部に最も近い第2外側巻線部分と前記第2鍔部に最も遠い第2内側巻線部分との距離の前記第1軸に沿う方向の成分によって規定される第2巻幅W2を有し、
前記第1コイル部は、前記第1内側巻線部分と前記第2内側巻線部分との距離の前記第1軸に沿う方向の成分によって規定される離間距離W3だけ前記第2コイル部から離して前記第1鍔部の近くに配置してあり、
W3>W1またはW3>W2の関係を満たすことを特徴とするコイル装置。
【請求項2】
前記第1端子の前記第1ワイヤと接続する第1接続位置および前記第2端子の前記第1ワイヤと接続する第2接続位置は、前記第1鍔部の前記第1軸に直交する第2軸に沿った第1方向側に配置してあり、
前記第3端子の前記第2ワイヤと接続する第3接続位置および前記第4端子の前記第2ワイヤと接続する第4接続位置は、前記第2鍔部の前記第2軸に沿った前記第1方向側に配置してある請求項1に記載のコイル装置。
【請求項3】
前記第1接続位置は、前記第1鍔部が前記巻芯部と接続する接続部分を前記第1軸および前記第2軸に垂直な第3軸方向に挟んで前記第2接続位置とは反対側に配置してあり、
前記第3接続位置は、前記第2鍔部が前記巻芯部と接続する接続部分を前記第3軸方向に挟んで前記第4接続位置とは反対側に配置してある請求項2に記載のコイル装置。
【請求項4】
前記第1ワイヤは、前記第1コイル部の一方の端部である第1巻端部において、前記第1コイル部から離間するように前記第1接続位置に向けて屈曲しており、
前記第1ワイヤは、前記第1コイル部の他方の端部である第2巻端部において、前記第1コイル部から離間するように前記第2接続位置に向けて屈曲しており、
前記第2ワイヤは、前記第2コイル部の一方の端部である第3巻端部において、前記第2コイル部から離間するように前記第3接続位置に向けて屈曲しており、
前記第2ワイヤは、前記第2コイル部の他方の端部である第4巻端部において、前記第2コイル部から離間するように前記第4接続位置に向けて屈曲している請求項2または3に記載のコイル装置。
【請求項5】
前記第1端子は、
前記第2軸に直交する平面を有する第1端子第1部分と、前記第1鍔部を前記第2軸方向に挟んで前記第1端子第1部分とは反対側に配置してあり、前記第1端子第1部分と平行な平面を有する第1端子第2部分と、
前記第1端子第1部分および前記第1端子第2部分を接続する第1連結部と、を有し、
前記第2端子は、
前記第2軸に直交する平面を有する第2端子第1部分と、前記第1鍔部を前記第2軸方向に挟んで前記第2端子第1部分とは反対側に配置してあり、前記第2端子第1部分と平行な平面を有する第2端子第2部分と、
前記第2端子第1部分および前記第2端子第2部分を接続する第2連結部と、を有し、
前記第3端子は、
前記第2軸に直交する平面を有する第3端子第1部分と、前記第2鍔部を前記第3軸方向に挟んで前記第3端子第1部分とは反対側に配置してあり、前記第3端子第1部分と平行な平面を有する第3端子第2部分と、
前記第3端子第1部分および前記第3端子第2部分を接続する第3連結部と、を有し、
前記第4端子は、
前記第2軸に直交する平面を有する第4端子第1部分と、前記第2鍔部を前記第2軸方向に挟んで前記第4端子第1部分とは反対側に配置してあり、前記第4端子第1部分と平行な平面を有する第4端子第2部分と、
前記第4端子第1部分および前記第4端子第2部分を接続する第4連結部と、を有する請求項2~4のいずれかに記載のコイル装置。
【請求項6】
第1端子第2部分、第2端子第2部分、第3端子第2部分および第4端子第2部分は、前記第2軸に沿った前記第1方向とは反対側の第2方向側であり前記第2軸に対して垂直な同一平面上に配置してあり、実装可能に構成している請求項2~5のいずれかに記載のコイル装置。
【請求項7】
前記巻芯部は、前記第2軸に沿った前記第1方向側に平坦面を有する請求項2~6のいずれかに記載のコイル装置。
【請求項8】
前記第1鍔部と前記第2鍔部を磁気的に繋ぐ板コアを有する請求項1~7のいずれかに記載のコイル装置。
【請求項9】
前記板コアは、前記巻芯部と対向する平坦な板コア底面を有する請求項8に記載のコイル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえばノイズフィルタとして使用可能なコイル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コアの巻芯部に2つのコイルを有するノイズフィルタが開示されている(特許文献1)。このノイズフィルタでは、それぞれのコイルは、巻芯部の異なる巻回部に巻回されることで、それぞれのコイルの経路長を等しくすることを容易にし、2つのコイルの特性を均等にすることを可能にしている。
【0003】
しかしながら、このようなノイズフィルタにおいては、一方のコイルからの引出線が、他方のコイルに近づく構造を有しており、余分な浮遊容量が生じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の実情を鑑みてなされ、その目的は、浮遊容量を低減したコイル装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るコイル装置は、
第1ワイヤと、第2ワイヤと、前記第1ワイヤおよび前記第2ワイヤが巻回してある巻芯部を有するドラムコアと、を有するコイル装置であって、
前記ドラムコアは、前記巻芯部の第1軸に沿った一端に形成された第1鍔部と、前記巻芯部の前記第1軸に沿った他端に形成された第2鍔部と、を有し、
前記第1鍔部には、前記第1ワイヤと接続する第1端子および第2端子が形成してあり、
前記第2鍔部には、前記第2ワイヤと接続する第3端子および第4端子が形成してあり、
前記第1ワイヤは、前記巻芯部に向かって押さえつけられるように巻回してある第1コイル部を有し、
前記第1コイル部は、前記第1コイル部において、前記第1鍔部に最も近い第1外側巻線部分と前記第1鍔部に最も遠い第1内側巻線部分との距離の前記第1軸に沿う方向の成分によって規定される第1巻幅W1を有し、
前記第2ワイヤは、前記巻芯部に向かって押さえつけられるように巻回してある第2コイル部を有し、
前記第2コイル部は、前記第2コイル部において、前記第2鍔部に最も近い第2外側巻線部分と前記第2鍔部に最も遠い第2内側巻線部分との距離の前記第1軸に沿う方向の成分によって規定される第2巻幅W2を有し、
前記第1コイル部は、前記第1内側巻線部分と前記第2内側巻線部分との距離の前記第1軸に沿う方向の成分によって規定される離間距離W3だけ前記第2コイル部から離して前記第1鍔部の近くに配置してあり、
W3>W1またはW3>W2の関係を満たすことを特徴とする。
【0007】
このように構成することで、それぞれのワイヤの両端は、コイル部に近い鍔部に配置した端子と接続しており、それぞれのワイヤは、他方のワイヤが形成するコイル部と十分な距離を保って引き出される。また、コイル部同士の離間距離が十分に確保されている。このように、一方のワイヤが他方のワイヤと十分な距離を確保することで、コイル装置の浮遊容量を低減することが可能にしている。
【0008】
好ましくは、前記第1端子の前記第1ワイヤと接続する第1接続位置および前記第2端子の前記第1ワイヤと接続する第2接続位置は、前記第1鍔部の前記第1軸に直交する第2軸に沿った第1方向側に配置してあり、前記第3端子の前記第2ワイヤと接続する第3接続位置および前記第4端子の前記第2ワイヤと接続する第4接続位置は、前記第2鍔部の前記第2軸に沿った前記第1方向側に配置してある。
【0009】
このようにワイヤと端子の接続位置を第2軸に沿った一方向に配置することで、基板などへの実装を行いやすくなると共に、板コアなどを用いて閉磁路を形成する構成を採用することも容易になる。
【0010】
好ましくは、前記第1接続位置は、前記第1鍔部が前記巻芯部と接続する接続部分を前記第1軸および前記第2軸に垂直な第3軸方向に挟んで前記第2接続位置とは反対側に配置してあり、前記第3接続位置は、前記第2鍔部が前記巻芯部と接続する接続部分を前記第3軸方向に挟んで前記第4接続位置とは反対側に配置してある。
【0011】
このように構成することで、各ワイヤの両端を巻芯部に形成してあるコイル部から第3軸方向の両側に離れるように引き出すことができる。そのため、各コイル部での浮遊容量を低減することが可能になる。
【0012】
好ましくは、前記第1ワイヤは、前記第1コイル部の一方の端部である第1巻端部において、前記第1コイル部から離間するように前記第1接続位置に向けて屈曲しており、前記第1ワイヤは、前記第1コイル部の他方の端部である第2巻端部において、前記第1コイル部から離間するように前記第2接続位置に向けて屈曲しており、前記第2ワイヤは、前記第2コイル部の一方の端部である第3巻端部において、前記第2コイル部から離間するように前記第3接続位置に向けて屈曲しており、前記第2ワイヤは、前記第2コイル部の他方の端部である第4巻端部において、前記第2コイル部から離間するように前記第4接続位置に向けて屈曲している。
【0013】
このようにワイヤを巻端部で屈曲してコイル部から離間するように引き出すことで、引出部とコイル部との距離を十分に保つことができ、浮遊容量を低減することが可能になる。
【0014】
好ましくは、前記第1端子は、
前記第2軸に直交する平面を有する第1端子第1部分と、前記第1鍔部を前記第2軸方向に挟んで前記第1端子第1部分とは反対側に配置してあり、前記第1端子第1部分と平行な平面を有する第1端子第2部分と、
前記第1端子第1部分および前記第1端子第2部分を接続する第1連結部と、を有し、
前記第2端子は、
前記第2軸に直交する平面を有する第2端子第1部分と、前記第1鍔部を前記第2軸方向に挟んで前記第2端子第1部分とは反対側に配置してあり、前記第2端子第1部分と平行な平面を有する第2端子第2部分と、
前記第2端子第1部分および前記第2端子第2部分を接続する第2連結部と、を有し、
前記第3端子は、
前記第2軸に直交する平面を有する第3端子第1部分と、前記第2鍔部を前記第3軸方向に挟んで前記第3端子第1部分とは反対側に配置してあり、前記第3端子第1部分と平行な平面を有する第3端子第2部分と、
前記第3端子第1部分および前記第3端子第2部分を接続する第3連結部と、を有し、
前記第4端子は、
前記第2軸に直交する平面を有する第4端子第1部分と、前記第2鍔部を前記第2軸方向に挟んで前記第4端子第1部分とは反対側に配置してあり、前記第4端子第1部分と平行な平面を有する第4端子第2部分と、
前記第4端子第1部分および前記第4端子第2部分を接続する第4連結部と、を有する。
【0015】
このように構成することで、端子が鍔部を第2軸方向の両側から把持することが可能になり、コイル装置の組み立ても容易であり、頑丈なコイル装置を製造することができる。
【0016】
好ましくは、第1端子第2部分、第2端子第2部分、第3端子第2部分および第4端子第2部分は、前記第2軸に沿った前記第1方向とは反対側の第2方向側であり前記第2軸に対して垂直な同一平面上に配置してあり、実装可能に構成している。
【0017】
このように構成することで、第2軸に沿った第2方向側を基板などへ接地させて容易に実装することができる。また、鍔部を挟んで実装面とは反対側に接続位置が配置されることになり、基板などへの実装が安定する。
【0018】
好ましくは、前記巻芯部は、前記第2軸に沿った前記第1方向側に平坦面を有する。このように巻芯部には、各コイル部を分離する中間鍔部などが形成されていないため、各コイル部の間に回り込む磁束の影響を低減することができる。
【0019】
好ましくは、前記第1鍔部と前記第2鍔部を磁気的に繋ぐ板コアを有する。このように構成することで、ドラムコアと板コアによる閉磁路を形成することができる。
【0020】
好ましくは、前記板コアは、前記巻芯部と対向する平坦な板コア底面を有する。このように板コアの底面が平坦であることで、各コイル部の間に回り込む磁束の影響を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は本発明の一実施形態に係るコイル装置の構成を示す概略斜視図である。
【
図4】
図4は
図1に示すコイル装置の一部分の構成を示す概略斜視図である。
【
図5A】
図5Aは本発明の他の実施形態に係るコイル装置の平面図である。
【
図6】
図6は実施例および比較例に係るコイル装置のコイル部間での浮遊容量と印加電圧の振動数との関係を示すグラフである。
【
図7】
図7は実施例および比較例に係るコイル装置の装置全体に関する浮遊容量と印加電圧の振動数との関係を示すグラフである。
【
図8】
図8は実施例に係るコイル装置の一方のコイル部に関する浮遊容量と印加電圧の振動数との関係を示すグラフである。
【
図9】
図9は実施例に係るコイル装置の他方のコイル部に関する浮遊容量と印加電圧の振動数との関係を示すグラフである。
【
図10】
図10は実施例に係るコイル装置の装置全体に関する浮遊容量と印加電圧の振動数との関係を示すグラフである。
【
図11】
図11は実施例および比較例に係るコイル装置のコイル部間での浮遊容量と印加電圧の振動数との関係を示すグラフである。
【
図12】
図12は実施例および比較例に係るコイル装置の装置全体に関する浮遊容量と印加電圧の振動数との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0023】
第1実施形態
(コイル装置の全体構成)
本実施形態に係るコイル装置の一実施形態として、たとえばノイズフィルタとしての機能を有するディファレンシャルモードインダクタの全体構成について説明する。
【0024】
図1に示すように、本実施形態に係るコイル装置1は、全体として略直方体形状を有し、第1ワイヤ60と、第2ワイヤ70と、第1ワイヤ60および第2ワイヤ70が巻回してある巻芯部30を有するドラムコア20と、板コア10と、を有する。
【0025】
コイル装置1は、その外形寸法が、たとえばX軸方向長さ4.3~4.7mm×Z軸方向高さ2.6~3.0mm×Y軸方向幅3.0~3.4mmであるが、コイル装置1のサイズはこれに限定されない。
【0026】
ドラムコア20は、Y軸に沿って延在する巻芯部30と、巻芯部30の一端側に設けられた第1鍔部40と巻芯部30の他端側に設けられた第2鍔部50とを備えている。本明細書では、巻芯部30において第2鍔部50から第1鍔部40に向かう方向をY軸の正方向と称し、その反対に向かう方向を負方向と称することがある。なお、図面において、X軸、Y軸およびZ軸は、相互に略垂直である。本実施形態では、第1軸がY軸に対応し、第2軸がZ軸に対応している。
【0027】
図3に示すように、巻芯部30は、YZ断面が略長方形であり、
図1に示すように、巻芯部30は、その外面に平坦面30a、第1側面30b、第2側面30c、底面30dを有する直方体形状である。第1側面30bと第2側面30cがX軸の両側の外面を形成している。本明細書では、第2側面30cから第1側面30bに向かう方向をX軸の正方向と称し、その反対に向かう方向を負方向と称することがある。また、平坦面30aと底面30dがZ軸の両側の外面を形成している。本明細書では、底面30dから平坦面30aに向かう方向をZ軸の正方向と称し、その反対に向かう方向を負方向と称することがある。本実施形態では、Z軸の第1方向が正方向、第2方向が負方向となっている。
【0028】
図2Aに示すように、第1鍔部40と第2鍔部50とは、略同じ形状であって、巻芯部30を挟んで対称な形状に成形されている。第1鍔部40は、巻芯部30と接続している第1主胴部41と、主胴部41からX軸方向の正方向に延出されている第1副胴部42と、主胴部41からX軸方向の負方向に延出されている第2副胴部43と、から構成されている。
【0029】
図1に示すように、第1主胴部41は、Z軸方向を高さ方向、X軸方向を幅方向、Y軸方向を奥行方向とする略直方体形状である。第1主胴部41は、巻芯部30と略同一の幅に形成されている。第1主胴部41の第1主胴部頂面41aは、巻芯部30の平坦面30aより突出してXY平面と略平行であり、第1主胴部41の第1主胴部底面41fは、第1主胴部頂面41aに対向しXY平面と略平行である。第1主胴部頂面41aおよび第1主胴部底面41fは、Y軸の正方向に配置される第1主胴部正面41bと略直交ししている。また、
図2Aに示すように、第1主胴部41の第1主胴部背面41cは、巻芯部30に連結されている。第1主胴部41の第1側面41dは、第1副胴部42の延出基端部となっており、第1主胴部第2側面41eは、第2副胴部43の延出基部となっている。
【0030】
図1に示すように、第1副胴部42は、Z軸方向を高さ方向として、X軸方向を幅方向として、Y軸方向を奥行方向とする略直方体形状である。
図2Aに示すように、第1副胴部42は、そのX軸の負方向が、第1主胴部第1側面41dに連結している。第1副胴部42の第1副胴部頂面42aは、第1主胴部頂面41aよりもZ軸の負方向に凹んでいる。第1副胴部42の第1副胴部頂面42aに対抗する第1副胴部底面42fは、第1主胴部底面41fと同一平面上にある。第1副胴部42のY軸の正方向の外面を構成する第1副胴部正面42bは、第1主胴部正面41bと略平行に配置されており、第1主胴部41の第1主胴部第1主胴部第1側面41d41bに対して凹んだ位置に設けられている。第1副胴部42の第1副胴部背面42cは、第1主胴部背面41cと同一平面にある。第1副胴部42の第1副胴部側面42dは、第1副胴部頂面42aと第1副胴部底面と第1副胴部正面42bと第1副胴部背面42cとに交差して、第1主胴部第1側面41dと平行に配置されている。
【0031】
第2副胴部43は、Z軸方向を高さ方向として、X軸方向を幅方向として、Y軸方向を奥行方向とする略直方体形状である。第2副胴部43は、そのX軸の正方向が、第1主胴部第2側面41eに連結しており、第1副胴部42と面対称な構成を有する。第2副胴部43は、第1副胴部頂面42aに対応する第2副胴部頂面43aと、第1副胴部底面42fに対応する第2副胴部底面と、第1副胴部正面42bおよび第1副胴部背面42cに対応する第2副胴部正面43bおよび第2副胴部背面43cと、第1副胴部側面42dに対応する第2副胴部側面43eとを備えて構成されている。
【0032】
また、
図2Aに示すように、第3鍔部50においても、巻芯部30をY軸方向に挟んで第2主胴部41とは反対方向に第2主胴部51と、第1副胴部42と同じX軸の正方向に延出されている第3副胴部52と、第2副胴部43と同じX軸の負方向に延出されている第4副胴部53とから構成されている。第2主胴部51は、第2主胴部頂面51aと第2主胴部正面51bと第2主胴部背面51cと第2主胴部第1側面51dと第2主胴部第2側面51eと第2主胴部底面51f(
図1)とから構成されている。第3副胴部52は、第3副胴部頂面52aと第3副胴部正面52bと第3副胴部背面52cと第3副胴部側面52dと第3副胴部底面52f(
図3)とから構成されている。第4副胴部53は第4副胴部頂面53aと第4副胴部正面53bと第4副胴部背面53cと第4副胴部側面53eと第3副胴部底面52fに対応する第4副胴部底面53f(
図1)とから構成されている。
【0033】
図1に示すように、第1鍔部40には、第1端子81および第2端子82が形成してある。第1端子81は、第1副胴部42に配置され、第2端子82は、第2副胴部43に配置されている。第2鍔部50には、第3端子91および第4端子92が形成してある。第3端子91は、第3副胴部52に配置され、第4端子92は、第4副胴部53に配置されている。第1端子81と第2端子82は第1主胴部41をX軸方向に挟んで面対称に構成されており、第1端子81と第3端子91とは巻芯部30をY軸方向に挟んで面対称に構成されている。また、第2端子82と第4端子91とは巻芯部30をY軸方向に挟んで面対称に構成されている。
【0034】
図4に示すように、第1端子81は略U字形状であり、U字形状の一対の腕部分となる第1端子第1部分81aと、第1端子第2部分81fと、一対の腕部分を連結する第1連結部81bと、により構成されている。第1端子第1部分81aは、Z軸に直交する平面を有している。第1端子第2部分81fは、第1端子第1部分81aと平行な平面を有し、
図3に示す第1鍔部40をZ軸に挟んで第1端子第1部分81aとは反対側に配置してある。これら、第1端子第1部分81a、第1端子第2部分81fおよび第1連結部81bは、一枚の金属板が折り曲げ加工されて形成されている。第1端子81は、第1端子第1部分81aと第1端子第2部分81fとで
図3に示す第1副胴部42の第1副胴部頂面42aと第1副胴部底面42fとを狭持し、第1連結部81b内面が第1副胴部正面42bに当接した状態で第1副胴部42に固定される。なお、端子と鍔部とは非導電性の接着剤を用いて接着してあってもよい。
【0035】
また、
図2Aに示すように、第1端子81の第1端子第1部分81aは、第1主胴部第1側面41dと対峙する側部分に、第1保持片81cおよび第2保持片81dを有する。
図4に示すように、第1保持片81cおよび第2保持片81dは、第1端子第1部分81aとの連接部分で、第1端子第1部分81aの外面と当接するように折り曲げ加工されている。
【0036】
図2Aに示すように、本実施形態では、第1端子81は、第1引出部61の第1継線部63を、第1保持片81cおよび第2保持片81dと第1端子第1部分81aとで挟むことで、第1ワイヤ60と接続している。
【0037】
第2端子82も、第1端子81と同様に、第1端子第1部分81aに対応する第2端子第1部分82aと、第1端子第2部分82fに対応する第2端子第2部分82fと、一対の腕部分を連結する第1連結部81bに対応する第2連結部82bと、によりU字形状に構成されている。第2副胴部43に固定されており、第2継線部64と接続している。
【0038】
図4に示すように、第3端子91も、第1端子81と同様に、第1端子第1部分81aに対応する第3端子第1部分91aと、第1端子第2部分81fに対応する第3端子第2部分91fと、第1連結部81bに対応する第3連結部91bと、によりU字形状に形成されている。
図3に示すように、第3端子91は、第3副胴部52の第3副胴部頂面52aと第3副胴部底面52fとを狭持した状態で第3副胴部52に固定されている。
図2Aに示すように、第3端子91も第1端子81と同様に、第2ワイヤ60の第3継線部73と接続している。
【0039】
第4端子92も、第3端子と同様に、第1端子第1部分81aに対応する第4端子第1部分92aと、第1端子第2部分81fに対応する第4端子第2部分92fと、第1連結部81bに対応する第4連結部92bと、によりU字形状に形成されている。第2副胴部53に固定されており、第4継線部74と接続している。
【0040】
本実施形態では、第1端子81の第1継線部63と接続している部分を、第1接続位置と称する。また、第2端子82、第3端子91、第4端子92も、第1端子81と同様に、第2継線部64、第3継線部73、第4継線部74と接続している部分を、それぞれ第2接続位置、第3接続位置、第4接続位置と称する。
【0041】
図2Aに示すように、第1ワイヤ60は、巻芯部30に向かって押さえつけられるように巻回してある第1コイル部60aを構成している。具体的には、第1コイル部60aの第1巻端部65aが、巻芯部30の平坦面30aと第1側面30bとの境界となる角部分に配置される。第1コイル部60aでは、第1巻端部65aから、第1側面30b、底面、第2側面30c、平坦面30aの順に、巻芯部30の外面に沿って第1鍔部40近傍から第2鍔部50側に向かって巻回され、第1コイル部60aの第2巻端部66aが、平坦面30aと第2側面30cとの境界となる角部分に配置される。
図3に示すように、第1コイル部60aは、巻芯部30の中央位置33よりも第1鍔部40側に配置されている。
【0042】
図2Aに示すように、第1ワイヤ60は、第1巻端部65aと第1継線部63との間に第1引出部61を有する。第1ワイヤ60は、第1巻端部65aにおいて、屈曲して第1コイル部60aから第1接続位置81a1に向けて引き出されている。本実施形態では、第1巻端部65aが、第1コイル部60aにおいて、第1端子81の第1ワイヤ60との第1接続位置81a1に最も近い第1外側巻線部分65に配置されている。
【0043】
第1ワイヤ60は、第2巻端部66aと第2継線部64との間に第2引出部62を有する。第1ワイヤ60は、第2巻端部66aにおいて、屈曲して第1コイル部60aから第2接続位置82a1に向けて引き出されている。本実施形態では、第2巻端部66aが、第1コイル部60aにおいて、第2端子82の第1ワイヤ60との第2接続位置82a1に最も遠い第1内側巻線部分66に配置されている。
【0044】
図2Aに示すように、第2ワイヤ70は、巻芯部30に向かって押さえつけられるように巻回してある第2コイル部70aを構成している。具体的には、第2コイル部70aの第4巻端部76aが、巻芯部30の平坦面30aと第2側面30cとの境界となる角部分に配置される。第2コイル部70aでは、第4巻端部76aから、平坦面30a、第1側面30b、底面、第2側面30cの順に、巻芯部30の外面に沿って第2鍔部50近傍から第1鍔部40側に向かって巻回され、第2コイル部70aの第3巻端部75aが、平坦面30aと第1側面30bとの境界となる角部分に配置される。
図3に示すように、第2コイル部70aは、中央位置33よりも第2鍔部50側に配置されている。
【0045】
図2Aに示すように、第2ワイヤ70は、第4巻端部76aと第4継線部74との間に第4引出部72を有する。第2ワイヤ70は、第4巻端部76aにおいて、屈曲して第2コイル部70aから第4接続位置92a1に向けて引き出されている。本実施形態では、第4巻端部76aが、第2コイル部70aにおいて、第4端子92の第2ワイヤ70との第4接続位置92a1に最も近い第2外側巻線部分76に配置されている。
【0046】
第2ワイヤ70は、第3巻端部75aと第3継線部73との間に第3引出部71を有する。第2ワイヤ70は、第3巻端部75aにおいて、屈曲して第2コイル部70aから第3接続位置91a1に向けて引き出されている。本実施形態では、第3巻端部75aが、第2コイル部70aにおいて、第3端子91の第2ワイヤ70との第3接続位置91a1に最も近い第2内側巻線部分75に配置されている。
【0047】
図2Bに示すように、第1コイル部60aの第1巻幅W1は、第1コイル部60aにおいて、第1鍔部40に最も近い第1外側巻線部分65と第1鍔部40に最も遠い第1内側巻線部分66との距離のY軸に沿う方向の成分によって規定される。また、第2コイル部70aの第2巻幅W2は、第2コイル部70aにおいて、第2鍔部50に最も近い第2外側巻線部分76と第2鍔部50に最も遠い第2内側巻線部分75との距離のY軸に沿う方向の成分によって規定される。
【0048】
図3に示すように、本実施形態では、第1コイル部60aおよび第2コイル部70aはそれぞれ1層の巻線で形成してある。
図2Bに示すように、第1巻端部65aが第1外側巻線部分65に配置され、第2巻端部66aが第1内側巻線部分66に配置される。また、第3巻端部75aが第2内側巻線部分75に配置され、第4巻端部76aが第2外側巻線部分76に配置される。
【0049】
なお、第1コイル部60aおよび第2コイル部70aは、複数層の巻線を積層して形成してあってもよい。第1コイル部が偶数層の巻線で形成する場合には、たとえば第1巻端部65aおよび第2巻端部66aが、第1外側巻線部分に位置し、第1コイル部の第1層と第2層との折り返し部分が第1外側巻線部分に位置する。
【0050】
また、本実施形態では、巻端部と巻芯部30の外面との間に隙間があってもよいが、巻端部が巻芯部の外面に接触していることが好ましい。コイル部が複数層の巻線で形成されている場合には、巻端部は、巻芯部に近い層の外側に配置される。この場合には、巻端部は巻芯部に近い層に接触していることが好ましい。
【0051】
図2Bに示すように、本実施形態では、第1コイル部60aと第2コイル部70aとの離間距離W3は、第1内側巻線部分66と第2内側巻線部分75との距離のY軸に沿う方向の成分によって規定される。第1コイル部60aは、離間距離W3だけ第2コイル部70aから離して第1鍔部40の近くに配置してある。
【0052】
本実施形態では、W3>W1およびW3>W2の関係を満たすように、第1コイル部60aと第2コイル部70aが離間して配置してある。このように、一方のワイヤが他方のワイヤと十分な距離を確保することで、第1コイル部60aと第2コイル部との間の浮遊容量が低減し、コイル装置1の浮遊容量の低減を可能にしている。W1,W2,W3の長さは、このような関係を満たせば限定されないが、たとえば、W1は0.74~0.78mm、W2は0.73~0.75mm、W3は1.14~1.18mmとすることができる。なお、W3>W1、W3>W2の関係は、いずれかを満たせば足りるが、いずれの関係をも満たすことで、第1コイル部60aと第2コイル部70aの特性を揃えることが容易になり、コモンモードフィルタとして好適なコイル装置を容易に製造することができる。
【0053】
本実施形態では、第1コイル部と第2コイル部の巻回数が略同じであるが、用途によっては異ならせても良い。なお、第1コイル部と第2コイル部の巻回数が略同じとは、これらの巻回数の比が0.75~1/0.75の範囲内であり、好ましくは1である。
【0054】
本実施形態では、第1引出部、第2引出部、第3引出部および第4引出部の長さは、巻芯部、第1鍔部および第2鍔部の形状および寸法によって異なるが、短く引き出されることが好ましい。また、各引出部と各コイル部との距離は離れていることが好ましい。
【0055】
図2Aに示すように、本実施形態では、第1ワイヤ60の第1引出部61が、第1コイル部60aの第1巻端部65aから第1端子81が配置してある第1鍔部40の第1副胴部42の方向に引き出されている。また、第1ワイヤ60の第2引出部62が、第1コイル部60aの第2巻端部66aから第2端子82が配置してある第1鍔部40の第2副胴部43の方向に引き出されている。さらに、第1コイル部60aは、Y軸に沿って第1鍔部40の近くに第2コイル部70aと離間して配置してある。したがって、第1引出部61および第2引出部62は、第2コイル部70aを跨がずに引き出されることになり、第1引出部61および第2引出部62と第2コイル部70aとの間に生じる浮遊容量を低減することが可能になる。
【0056】
図2Aに示すように、本実施形態では、第2ワイヤ70の第3引出部71が、第2コイル部70aの第3巻端部75aから第3端子91が配置してある第2鍔部50の第1副胴部52の方向に引き出されている。また、第2ワイヤ70の第4引出部72が、第2コイル部70aの第4巻端部76aから第4端子92が配置してある第2鍔部50の第2副胴部53の方向に引き出されている。さらに、第2コイル部70aは、Y軸に沿って第2鍔部50の近くに第1コイル部60aと離間して配置してある。したがって、第3引出部71および第4引出部72は、第1コイル部60aを跨がずに引き出されることになり、第3引出部71および第4引出部72と第1コイル部60aとの間に生じる浮遊容量を低減することが可能になる。
【0057】
図2Aに示すように、本実施形態では、第1継線部63が第1接続位置81a1に配置され、第2継線部64が第2接続位置82a1に配置されている。第1接続位置81a1および第2接続位置82a1は、いずれも第1鍔部40のZ軸に沿った正方向側(第1方向側)に配置してある。また、第3継線部73が第3接続位置91a1に配置され、第4継線部74が第4接続位置92a1に配置されている。第3接続位置91a1および第4接続位置92a1は、いずれもZ軸に沿った正方向側(第1方向側)に配置してある。第1接続位置81a1~第4接続位置92a1は、Z軸に垂直な同一平面上に配置してある。
【0058】
このように、すべての接続位置をZ軸に沿った正方向側に配置することで、負方向側を実装面として基板などへの実装を行いやすくなる。さらに、板コア10を用いて閉磁路を形成する構成を採用することも容易になる。
【0059】
図2Aに示すように、本実施形態では、第1接続位置81a1は、第1鍔部40が巻芯部30と接続する接続部分41c1をX軸方向に挟んで第2接続位置82a1とは反対側に配置してある。第3接続位置91a1は、第2鍔部50が巻芯部30と接続する接続部分51c1をX軸方向に挟んで第4接続位置92a1の反対側に配置してある。
【0060】
すなわち、本実施形態では、各ワイヤの両端を巻芯部30に形成してあるコイル部からX軸方向の両側に離れるように引き出すことができるようになっている。そのため、ワイヤにおいて、コイル部と引出部との間に生じる浮遊容量を低減することが可能になる。
【0061】
図2Aに示すように、本実施形態では、第1巻端部65aは、巻芯部30の平坦面30aと側面30bとの境目となる角に配置してある。すなわち、巻芯部30の各面同士の境目となる4つ角の内、第1端子81の第1接続位置81a1に最も近い角に配置してある。第1ワイヤ60は、第1巻端部65aにおいて屈曲し、第1コイル部60aから離間するように第1接続位置81a1に向けて引き出されている。このようにワイヤを引き出すことにより、第1引出部61を短くすることが可能になり、第1コイル部60aと第1引出部61との間に生じる浮遊容量を低減することができる。
【0062】
図2Aに示すように、本実施形態では、第2巻端部66aは、巻芯部30の平坦面30aと側面30cとの境目となる角に配置してある。すなわち、巻芯部30の各面同士の境目となる4つ角の内、第2端子82の第2接続位置82a1に最も近い角に配置してある。第1ワイヤ60は、第2巻端部66aにおいて屈曲し、第1コイル部60aから離間するように第2接続位置82a1に向けて引き出されている。このようにワイヤを引き出すことにより、第2引出部62を短くすることが可能になり、第1コイル部60aと第2引出部62との間に生じる浮遊容量を低減することができる。
【0063】
図2Aに示すように、本実施形態では、第3巻端部75aは、巻芯部30の平坦面30aと側面30bとの境目となる角に配置してある。すなわち、巻芯部30の各面同士の境目となる4つ角の内、第3端子91の第3接続位置91a1に最も近い角に配置してある。第2ワイヤ70は、第3巻端部75aにおいて屈曲し、第2コイル部70aから離間するように第3端子91の第3接続位置91a1に向けて引き出されている。このようにワイヤを引き出すことにより、第3引出部71を短くすることが可能になり、第2コイル部70aと第3引出部71との間に生じる浮遊容量を低減することができる。
【0064】
図2Aに示すように、本実施形態では、第4巻端部76aは、巻芯部30の平坦面30aと側面30cとの境目となる角に配置してある。すなわち、巻芯部30の各面同士の境目となる4つ角の内、第4端子92の第4接続位置92a1に最も近い角に配置してある。第2ワイヤ70は、第4巻端部76aにおいて屈曲し、第2コイル部70aから離間するように第4端子92の第4接続位置92a1に向けて引き出されている。このようにワイヤを引き出すことにより、第4引出部72を短くすることが可能になり、第2コイル部70aと第4引出部72との間に生じる浮遊容量を低減することができる。
【0065】
本実施形態では、巻芯部は、Y軸に垂直な断面は略正方形の略直方体形状を有しているが、これに限定されない。たとえば、巻芯部のY軸に垂直な断面が、円形または四角形以外の多角形であってもよい。巻芯部のY軸に垂直な断面が正方形でない場合であっても、ワイヤは、各引出部の距離が短くなるように巻端部を配置して、端子の接続位置に向けて引き出されていることが好ましい。
【0066】
図4に示すように、本実施形態では、第1端子81は、第1端子第1部分81aと、第1端子第2部分81fと、第1端子第1部分81aおよび第1端子第2部分81fを接続する第1連結部81bと、を有するU字形状である。また、第2端子82、第3端子91および第4端子92の構造は、第1端子81と同様の構成を有する。これらの端子は、
図1に示すように、第1鍔部40または第2鍔部50をZ軸方向の両側から挟んで取り付けることが可能である。したがって、端子を容易かつ強固に鍔部に取り付けることが可能となり、コイル装置の強度を向上させることができる。
【0067】
図4に示すように、本実施形態では、第1端子第2部分81f,第2端子第2部分82f,第3端子第2部分91f,第4端子第2部分92fは、いずれもZ軸に沿った負方向側に配置してある。また、第1端子第2部分81f,第2端子第2部分82f,第3端子第2部分91f,第4端子第2部分92fは、いずれも同一のXY平面に配置してある。第1端子第2部分81f,第2端子第2部分82f,第3端子第2部分91f,第4端子第2部分92fのZ軸に沿った負方向側は、平面になっており、基板などへ容易に実装可能に構成されている。また、実装面が、鍔部をZ軸方向に挟んで端子のワイヤとの接続位置とは反対側に配置してあることで、基板などへの実装が安定する。
【0068】
図2Bに示すように、本実施形態では、巻芯部30のZ軸に沿った正方向側が平坦面30aとなっている。すなわち、巻芯部30において、第1コイル部60aが配置してある部分から第2コイル部70aが配置してある部分にかけて、外面が同一平面上にあり、第1コイル部60aと第2コイル部70aとの間には、第1コイル部60aと第2コイル部70aとを分離する中間鍔等が形成されていない。このように、巻芯部30のZ軸の正方向は平坦面30aとなっているため、第1コイル部60aと第2コイル部70aとの間に、磁束が入り込みにくくコイル装置の特性に与える磁束の影響を低減することができる。
【0069】
図1に示すように、本実施形態では、板コア10が、ドラムコア20のZ軸に沿った正方向側に配置してある。板コア10の板コア底面10aは、第1鍔部40の第1主胴部41の第1主胴部頂面41aおよび第2鍔部50の第2主胴部51の第2主胴部頂面51aに接着されている。板コア10が、第1鍔部40と第2鍔部50とを磁気的に繋いでいる。第1鍔部40、巻芯部30、第2鍔部50、板コア10による閉磁路が形成されることで、磁気的損失を低減することが可能になる。
【0070】
また、
図1に示すように、本実施形態では、板コア10の板コア底面10aは、巻芯部30と対向する平坦な面になっている。すなわり、本実施形態では、第1コイル部60aと第2コイル部70aとの間に磁束を回り込ませるような突起が形成されていない。このように板コア10の板コア底面10aが平坦であることで、第1コイル部60aと第2コイル部70aとの間に、磁束が入り込みにくくコイル装置の特性に与える磁束の影響を低減することができる。
【0071】
(コイル装置1の製造方法)
次に、本発明の一実施形態としてのコイル装置1の製造方法について具体的に説明する。
【0072】
コイル装置1の製造では、まず、ドラムコア20と板状部材10と第1ワイヤ60および第2ワイヤ70と端子81,82,91,92を準備する。ドラムコア20および板コア10は、それぞれ別々の磁性体部材で構成されるが、これらの材質は、同じであることが好ましいが、別々の磁性体材料で構成されていても良い。
【0073】
磁性体材料としては、たとえば、比較的透磁率の高い磁性材料、たとえばNi-Zn系フェライトや、Mn-Zn系フェライト、あるいは金属磁性体などが例示され、これらの磁性材料の粉体を、成型および焼結することにより、ドラムコアおよび板コアが作製される。
図1に示すドラムコア20には、巻芯部30と第1鍔部40と、第2鍔部50とが一体に成形される。
【0074】
次に、第1鍔部40に第1端子81および第2端子82を装着する。また、第2鍔部50に第3端子91および第4端子92を装着する。この時、端子と鍔部との間に非導電性の接着剤を介在させ接着させてあってもよい。
【0075】
端子は、リン青銅、真鍮などの銅合金、リン、銅、スズ、鉄、亜鉛等を主成分とする帯状の金属板に対して、曲げ加工を施すことにより
図4に示す形状に形成される。さらに、端子において、鍔部とは反対側の表面にニッケル、スズなどの公知のメッキ層が形成してあってもよい。なお、端子は、金属板に限定されず、金属ペーストを鍔部に塗布して焼き付けて形成してあってもよい。
【0076】
次に、
図1に示すように、第1ワイヤ60を巻芯部30に巻回し、第1コイル部60aを形成する。ワイヤの巻回は、たとえば自動巻線装置での巻回や手動での巻回など公知の方法で行うことができる。
【0077】
図2Aに示すように、第1ワイヤ60の第1巻端部65aを平坦面30aと第1側面30bとの境界となる所定の角に押し当て、第1引出部61を第1端子81の第1端子第1部分81aに向けて屈曲させて引き出す。第1引出部61のワイヤ端にあたる第1継線部63を、第1端子第1部分81aに接続する。
【0078】
第1ワイヤ60の第2巻端部66aを平坦面30aと第2側面30cとの境界となる所定の角に押し当て、第2引出部62を第2端子82の第1挟持部82aに向けて屈曲させて引き出す。第2引出部62のワイヤ端にあたる第2継線部64を、第1挟持部82aに接続する。
【0079】
第1ワイヤ60と同様に、第2ワイヤ70を巻芯部30に巻回し、第2コイル部70aを形成する。
【0080】
第2ワイヤ70の第4巻端部76aを平坦面30aと第2側面30cとの境界となる所定の角に押し当て、第4引出部71を第4端子92の第1挟持部92aに向けて屈曲させて引き出す。第4引出部71のワイヤ端にあたる第4継線部74を、第4端子92の第1挟持部92aに接続する。
【0081】
第2ワイヤ70の第3巻端部75aを平坦面30aと第1側面30bとの境界となる所定の角に押し当て、第3引出部71を第3端子91の第1挟持部91aに向けて屈曲させて引き出す。第3引出部71のワイヤ端にあたる第3継線部73を、第1挟持部91aに接続する。
【0082】
ワイヤと端子の接続のための方法は、特に限定されないが、たとえば、継線部を第1保持片および第2保持片と第1挟持部で挟むようにして、ヒータチップ等を押し当てるなどの方法で、継線部を挟持部に熱圧着してワイヤと端子を接続することができる。なお、ワイヤの芯線を被覆している絶縁材料については、熱圧着時の熱で溶融するため、ワイヤに被膜除去を施さなくてもよい。ワイヤと端子との接続は、たとえば、第1継線部を第1保持片に絡げて接続してもよく、ハンダなどの接合部材やレーザ溶接等によって接続してもよい。
【0083】
第2実施形態
本実施形態に係るコイル装置1aは、巻端部の配置が第1実施形態と異なるのみであり、共通する部分の説明は省略し、以下、異なる部分について主として詳細に説明する。以下において説明しない部分は、第1実施形態の説明と同様である。
【0084】
図5Aに示すように、本実施形態では、第1巻端部65aが、巻芯部30の第1側面30bと底面との境界となる角に配置されている。第1引出部61は、第1巻端部65aで屈曲し、第1端子81の第1継線部63との第1接続位置81a1に向けて引き出されている。
【0085】
図5Bに示すように、第2巻端部66aが、巻芯部30の第2側面30cと底面30dとの境界となる角に配置されている。第2引出部62は、第2巻端部62で屈曲し、第2端子82の第2継線部64との第2接続位置82a1に向けて引き出されている。このため、第2引出部62は、第1コイル部60aのX軸の負方向で跨ぐようにして引き出されている。
【0086】
図5Aに示すように、第3巻端部75aが、巻芯部30の第1側面30bと平坦面30aとの境界となる角に配置されている。第3引出部71は、第3巻端部75aで屈曲し、第3端子91の第3継線部73との第3接続位置91a1に向けて引き出されている。このため、第3引出部71は、第2コイル部70aのZ軸の正方向で跨ぐようにして引き出されている。
【0087】
第4巻端部76aが、巻芯部30の第2側面30cと平坦面30aとの境界となる角に配置されている。第4引出部72は、第4巻端部72で屈曲し、第4端子92の第4継線部74との第4接続位置92a1に向けて引き出されている。
【0088】
本実施形態では、巻端部をこのような配置にすることにより、第1実施形態よりも、巻端部でのワイヤが屈曲する角度を小さくすることが可能になる。そのため、本実施形態のコイル装置1aでは、自動巻線装置による巻回を行いやすい形状となっている。
【0089】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【0090】
たとえば、巻端部の配置を、巻芯部の外面の角に配置せずに、外面の中腹部に配置してあってもよい。具体的には、
図2Aに示す第2ワイヤ70の第3巻端部75aを、巻芯部30の平坦面30aのX軸の中間に配置してもよい。また、第2ワイヤ70の第4巻端部76aを平坦面30aのX軸の中間に配置してもよい。
【実施例0091】
(引出部入れ替え試験)
図5Aに示す第2実施形態に係るコイル装置1aを実施例1とした。実施例1に係るコイル装置1aでは、第1巻幅W1は0.74mmであり、第2巻幅W2は0.73mmであり、コイル部の離間距離W3は1.18mmであった。従来のコイル装置を比較例1とした。比較例1に係るコイル装置は、第1引出部61と第4引出部72の引き出し位置が入れ替わっている以外は、実施例1と同様である。すなわち、比較例1においては、第1ワイヤ60の第1引出部61が第2鍔部50側の第4端子92に引き出され、第2ワイヤ70の第4引出部72が第1鍔部40側の第1端子81に引き出されている。比較例1のコイル装置では、第1巻幅W1は0.75mmであり、第2巻幅W2は0.71mmであり、コイル部の離間距離W3は1.18mmであった。
【0092】
実施例1に係るコイル装置および比較例1に係るコイル装置に関し、第1コイル部60aと第2コイル部70aとの間の静電容量(浮遊容量)を測定した。その結果を
図6に示す。
【0093】
また、同様の実施例1に係るコイル装置および比較例1に係るコイル装置を用いて、コイル装置全体の静電容量を測定した。その結果を
図7に示す。
【0094】
図6に示す第1コイル部と第2コイル部との間の浮遊容量は、印加電圧の周波数が1GHzである場合において、実施例1ではそれぞれのサンプルの平均で0.203pFであり、比較例1ではそれぞれのサンプルの平均で0.666pFであった。また、
図7に示すコイル装置全体の浮遊容量は、印加電圧の周波数が1GHzである場合において、実施例1ではそれぞれのサンプルの平均で0.257pFであり、比較例1ではそれぞれのサンプルの平均で0.294pFであった。
【0095】
これらの結果から、第1引出部61と第4引出部72の引き出し位置を入れ替えることで、コイル装置の浮遊容量を低減させることを可能にした。
【0096】
(巻端部変更試験)
図2Aに示す第1実施形態に係るコイル装置1を実施例2とした。実施例2に係るコイル装置1では、第1巻幅W1、第2巻幅W2およびコイル部の離間距離W3は実施例1に係るコイル装置と同様であった。実施例1に係るコイル装置の第1コイル部60aでの静電容量(浮遊容量)と、実施例2に係るコイル装置の第1コイル部60aでの静電容量(浮遊容量)を測定した。その結果を
図8に示す。
【0097】
また、実施例1に係るコイル装置の第1コイル部60bでの静電容量(浮遊容量)と、実施例2に係るコイル装置の第2コイル部60bの静電容量(浮遊容量)を測定した。その結果を
図9に示す。
【0098】
また、実施例1に係るコイル装置のコイル装置全体での静電容量(浮遊容量)と、実施例2に係るコイル装置のコイル装置全体での静電容量(浮遊容量)を測定した。その結果を
図10に示す。
【0099】
図8に示す第1コイル部での浮遊容量は、印加電圧の周波数が1GHzである場合において、実施例1ではそれぞれのサンプルの平均で0.257pFであり、実施例2ではそれぞれのサンプルの平均で0.251pFであった。また、
図9に示す第2コイル部での浮遊容量は、印加電圧の周波数が1GHzである場合において、実施例1ではそれぞれのサンプルの平均で0.263pFであり、実施例2ではそれぞれのサンプルの平均で0.256pFであった。また、
図10に示すように、コイル装置全体の浮遊容量は、印加電圧の周波数が1GHzである場合において、実施例1ではそれぞれのサンプルの平均で0.257pFであり、実施例2ではそれぞれのサンプルの平均で0.244pFであった。
【0100】
これらの結果から、第1巻端部、第2巻端部、第3巻端部、第4巻端部の配置を変更し引出部を短くすることで、コイル装置の浮遊容量を低減させることを可能にした。
【0101】
(コイル間距離変更試験)
図2Aに示す第1実施形態に係るコイル装置1について、第1巻幅W1を0.76mm、第2巻幅W2を0.75mm、コイル部の離間距離W3を1.16mmとしたコイル装置を比較例2とした。実施例2に係るコイル装置および比較例2に係るコイル装置に関し、第1コイル部60aと第2コイル部70aとの間の静電容量(浮遊容量)を測定した。その結果を
図11に示す。
【0102】
また、同様の実施例2に係るコイル装置および比較例2に係るコイル装置を用いて、コイル装置全体の静電容量を測定した。その結果を
図12に示す。
【0103】
図11に示すように、第1コイル部と第2コイル部との間の浮遊容量は、印加電圧の周波数が1GHzである場合において、実施例2ではそれぞれのサンプルの平均で0.203pFであり、比較例2ではそれぞれのサンプルの平均で0.457pFであった。また、
図12に示すように、コイル装置全体の浮遊容量は、印加電圧の周波数が1GHzである場合において、実施例2ではそれぞれのサンプルの平均で0.244pFであり、比較例2ではそれぞれのサンプルの平均で0.311pFであった。
【0104】
これらの結果から、コイル部の離間距離W3が、第1巻幅W1または第2巻幅W2よりも長くすることで、コイル装置の浮遊容量を低減させることを可能にした。