IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人東京工業大学の特許一覧 ▶ 東芝エネルギーシステムズ株式会社の特許一覧

特開2023-134242ハイブリッド蓄熱システム、化学蓄熱ブロック、化学蓄熱装置、並びに化学蓄熱及び放熱方法
<>
  • 特開-ハイブリッド蓄熱システム、化学蓄熱ブロック、化学蓄熱装置、並びに化学蓄熱及び放熱方法 図1
  • 特開-ハイブリッド蓄熱システム、化学蓄熱ブロック、化学蓄熱装置、並びに化学蓄熱及び放熱方法 図2
  • 特開-ハイブリッド蓄熱システム、化学蓄熱ブロック、化学蓄熱装置、並びに化学蓄熱及び放熱方法 図3
  • 特開-ハイブリッド蓄熱システム、化学蓄熱ブロック、化学蓄熱装置、並びに化学蓄熱及び放熱方法 図4
  • 特開-ハイブリッド蓄熱システム、化学蓄熱ブロック、化学蓄熱装置、並びに化学蓄熱及び放熱方法 図5
  • 特開-ハイブリッド蓄熱システム、化学蓄熱ブロック、化学蓄熱装置、並びに化学蓄熱及び放熱方法 図6
  • 特開-ハイブリッド蓄熱システム、化学蓄熱ブロック、化学蓄熱装置、並びに化学蓄熱及び放熱方法 図7
  • 特開-ハイブリッド蓄熱システム、化学蓄熱ブロック、化学蓄熱装置、並びに化学蓄熱及び放熱方法 図8
  • 特開-ハイブリッド蓄熱システム、化学蓄熱ブロック、化学蓄熱装置、並びに化学蓄熱及び放熱方法 図9
  • 特開-ハイブリッド蓄熱システム、化学蓄熱ブロック、化学蓄熱装置、並びに化学蓄熱及び放熱方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134242
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】ハイブリッド蓄熱システム、化学蓄熱ブロック、化学蓄熱装置、並びに化学蓄熱及び放熱方法
(51)【国際特許分類】
   F28D 20/00 20060101AFI20230920BHJP
   F22B 3/02 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
F28D20/00 G
F28D20/00 Z
F22B3/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022039655
(22)【出願日】2022-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】加藤 之貴
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼須 大輝
(72)【発明者】
【氏名】舩山 成彦
(72)【発明者】
【氏名】加藤 敬
(72)【発明者】
【氏名】玉野 聡一朗
(57)【要約】
【課題】新規なハイブリッド蓄熱システムを提供する。
【解決手段】本発明のハイブリッド蓄熱システムは、化学蓄熱装置10及び顕熱蓄熱装置20を有し、蓄熱段階においては、熱源によって顕熱蓄熱装置の熱媒体を加熱し、化学蓄熱装置の化学蓄熱媒体を加熱して、第1の圧力の反応媒体の蒸気を生成させ、かつ放熱段階においては、化学蓄熱媒体に第2の圧力の反応媒体の蒸気を供給して、発熱した化学蓄熱媒体によって、熱媒体の少なくとも一部を再加熱し、ここで、第2の圧力が、第1の圧力よりも高圧であり、かつ放熱段階において化学蓄熱媒体によって再加熱された熱媒体の温度が、蓄熱段階において熱源によって加熱された熱媒体の温度よりも高い。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学蓄熱装置及び顕熱蓄熱装置を有するハイブリッド蓄熱システムであって、
蓄熱段階においては、熱源によって、前記顕熱蓄熱装置の熱媒体を加熱して、加熱された前記熱媒体を得、加熱された前記熱媒体の少なくとも一部によって、前記化学蓄熱装置の化学蓄熱媒体を加熱して吸熱反応を行わせ、前記化学蓄熱媒体から反応媒体を分離及び除去して、前記反応媒体を除去された前記化学蓄熱媒体及び第1の圧力の前記反応媒体の蒸気を生成させ、かつ前記化学蓄熱媒体を加熱して低温となった前記熱媒体を、前記顕熱蓄熱装置に貯蔵し、
放熱段階においては、前記化学蓄熱装置の前記化学蓄熱媒体に第2の圧力の前記反応媒体の蒸気を供給して、前記化学蓄熱媒体と発熱反応させ、発熱した前記化学蓄熱媒体によって、前記顕熱蓄熱装置に貯蔵された前記熱媒体の少なくとも一部を再加熱して、再加熱された前記熱媒体を得、
前記第2の圧力が、前記第1の圧力よりも高圧であり、かつ
前記放熱段階において前記化学蓄熱媒体によって再加熱された前記熱媒体の温度が、前記蓄熱段階において前記熱源によって加熱された前記熱媒体の温度よりも高い、
ハイブリッド蓄熱システム。
【請求項2】
蒸気タービンを更に有し、かつ
前記蓄熱段階において生成した第1の圧力の前記反応媒体の蒸気を、前記蒸気タービンに供給して発電を行わせる、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
熱交換器を更に有し、かつ
前記蓄熱段階において、前記化学蓄熱装置の化学蓄熱媒体を加熱することによって温度が低下した前記熱媒体の少なくとも一部を、前記熱交換器において、前記熱源からの熱媒体と熱交換させて再加熱して、再加熱された前記熱媒体を得、再加熱された前記熱媒体を前記顕熱蓄熱装置に貯蔵する、
請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記顕熱蓄熱装置が、サーモクライン蓄熱装置である、請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記化学蓄熱媒体が水酸化カルシウムであり、かつ前記反応媒体が水である、請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
連通気孔を有する多孔質基材、及び前記多孔質基材の連通気孔内に充填された化学蓄熱媒体を有し、
前記化学蓄熱媒体が、反応媒体と反応したときに発熱し、かつ前記反応媒体と分離したときに吸熱するものであり、かつ
前記多孔質基材が、前記反応媒体の蒸気を流通させるための貫通流路を有する、
化学蓄熱ブロック。
【請求項7】
内側流路及び外側流路を有する二重管容器、並びに
前記内側流路に配置されている1又は複数の請求項6に記載の化学蓄熱ブロック、
を有し、
前記外側流路に熱媒体を流通させ、
前記内側流路において、前記反応媒体の蒸気を、前記化学蓄熱ブロックの前記貫通流路、及び前記内側流路の内壁と前記化学蓄熱ブロックとの間に流通させる、
化学蓄熱装置。
【請求項8】
複数の前記内側流路が、1つの前記外側流路内に配置されている、請求項7に記載の化学蓄熱装置。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の化学蓄熱装置を用いる化学蓄熱及び放熱方法であって、
蓄熱段階においては、前記熱媒体を前記外側流路に流通させ、それによって前記化学蓄熱ブロックの前記化学蓄熱媒体を加熱して前記反応媒体を除去して、前記反応媒体を除去された前記化学蓄熱ブロック及び第1の圧力の前記反応媒体の蒸気を生成させ、
放熱段階においては、前記熱媒体を前記外側流路に流通させ、かつ第2の圧力の前記反応媒体の蒸気を前記内側流路に流通させて、前記化学蓄熱ブロックを発熱させ、発熱した前記化学蓄熱ブロックによって、前記外側流路に供給された前記熱媒体を再加熱して、加熱された前記熱媒体を得、
前記第2の圧力が、前記第1の圧力よりも高圧であり、かつ
前記放熱段階において前記化学蓄熱媒体によって再加熱された前記熱媒体の温度が、前記蓄熱段階において前記化学蓄熱媒体を加熱する前記熱媒体の温度よりも高い、
化学蓄熱及び放熱方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド蓄熱システム、化学蓄熱ブロック、この化学蓄熱ブロックを用いる化学蓄熱装置、並びにこの化学蓄熱装置を用いる化学蓄熱及び放熱方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギー貯蔵手段として様々な蓄熱装置が用いられている。
【0003】
このような蓄熱装置としては、化学蓄熱装置及び顕熱蓄熱装置が知られている。
【0004】
化学蓄熱装置は、高温の熱エネルギーを蓄積でき、また、反応圧力を調整することによって、発生する熱の温度を蓄熱した熱の温度よりも高くするケミカルヒートポンプ運転ができる。蓄熱は高温の方がエネルギーの質(エクセルギー)が高く、熱力学的な価値が高いので、これらの観点において化学蓄熱装置は好ましい。他方で、化学蓄熱装置は、構成が複雑なため、コストが高いという問題がある。
【0005】
顕熱蓄熱装置は、構成が単純なため、コストが低い。他方で、顕熱蓄熱装置は、容器の耐熱・断熱性等の点で、高温の熱エネルギーを蓄積・保持することが難しいという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明では、上記のような従来の化学蓄熱装置及び顕熱蓄熱装置の問題点を解消したハイブリッド蓄熱システムを提供する。また、本発明では、化学蓄熱装置において用いて効率的な化学蓄熱を行うことができ、特に本発明のハイブリッド蓄熱システムにおいて用いることができる化学蓄熱ブロックを提供する。また、本発明では、この化学蓄熱ブロックを用いる化学蓄熱装置、並びにこの化学蓄熱装置を用いる化学蓄熱及び放熱方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様としては、下記の態様を挙げることができる。
【0008】
〈態様1〉
化学蓄熱装置及び顕熱蓄熱装置を有するハイブリッド蓄熱システムであって、
蓄熱段階においては、熱源によって、前記顕熱蓄熱装置の熱媒体を加熱して、加熱された前記熱媒体を得、加熱された前記熱媒体の少なくとも一部によって、前記化学蓄熱装置の化学蓄熱媒体を加熱して吸熱反応を行わせ、前記化学蓄熱媒体から反応媒体を分離及び除去して、前記反応媒体を除去された前記化学蓄熱媒体及び第1の圧力の前記反応媒体の蒸気を生成させ、かつ前記化学蓄熱媒体を加熱して低温となった前記熱媒体を、前記顕熱蓄熱装置に貯蔵し、
放熱段階においては、前記化学蓄熱装置の前記化学蓄熱媒体に第2の圧力の前記反応媒体の蒸気を供給して、前記化学蓄熱媒体と発熱反応させ、発熱した前記化学蓄熱媒体によって、前記顕熱蓄熱装置に貯蔵された前記熱媒体の少なくとも一部を再加熱して、再加熱された前記熱媒体を得、
前記第2の圧力が、前記第1の圧力よりも高圧であり、かつ
前記放熱段階において前記化学蓄熱媒体によって再加熱された前記熱媒体の温度が、前記蓄熱段階において前記熱源によって加熱された前記熱媒体の温度よりも高い、
ハイブリッド蓄熱システム。
〈態様2〉
蒸気タービンを更に有し、かつ
前記蓄熱段階において生成した第1の圧力の前記反応媒体の蒸気を、前記蒸気タービンに供給して発電を行わせる、
態様1に記載のシステム。
〈態様3〉
熱交換器を更に有し、かつ
前記蓄熱段階において、前記化学蓄熱装置の化学蓄熱媒体を加熱することによって温度が低下した前記熱媒体の少なくとも一部を、前記熱交換器において、前記熱源からの熱媒体と熱交換させて再加熱して、再加熱された前記熱媒体を得、再加熱された前記熱媒体を前記顕熱蓄熱装置に貯蔵する、
態様1又は2に記載のシステム。
〈態様4〉
前記顕熱蓄熱装置が、サーモクライン蓄熱装置である、態様1~3のいずれか一項に記載のシステム。
〈態様5〉
前記化学蓄熱媒体が水酸化カルシウムであり、かつ前記反応媒体が水である、態様1~4のいずれか一項に記載のシステム。
〈態様6〉
連通気孔を有する多孔質基材、及び前記多孔質基材の連通気孔内に充填された化学蓄熱媒体を有し、
前記化学蓄熱媒体が、反応媒体と反応したときに発熱し、かつ前記反応媒体と分離したときに吸熱するものであり、かつ
前記多孔質基材が、前記反応媒体の蒸気を流通させるための貫通流路を有する、
化学蓄熱ブロック。
〈態様7〉
内側流路及び外側流路を有する二重管容器、並びに
前記内側流路に配置されている1又は複数の態様6に記載の化学蓄熱ブロック、
を有し、
前記外側流路に熱媒体を流通させ、
前記内側流路において、前記反応媒体の蒸気を、前記化学蓄熱ブロックの前記貫通流路、及び前記内側流路の内壁と前記化学蓄熱ブロックとの間に流通させる、
化学蓄熱装置。
〈態様8〉
複数の前記内側流路が、1つの前記外側流路内に配置されている、態様7に記載の化学蓄熱装置。
〈態様9〉
態様7又は8に記載の化学蓄熱装置を用いる化学蓄熱及び放熱方法であって、
蓄熱段階においては、前記熱媒体を前記外側流路に流通させ、それによって前記化学蓄熱ブロックの前記化学蓄熱媒体を加熱して前記反応媒体を除去して、前記反応媒体を除去された前記化学蓄熱ブロック及び第1の圧力の前記反応媒体の蒸気を生成させ、
放熱段階においては、前記熱媒体を前記外側流路に流通させ、かつ第2の圧力の前記反応媒体の蒸気を前記内側流路に流通させて、前記化学蓄熱ブロックを発熱させ、発熱した前記化学蓄熱ブロックによって、前記外側流路に供給された前記熱媒体を再加熱して、加熱された前記熱媒体を得、
前記第2の圧力が、前記第1の圧力よりも高圧であり、かつ
前記放熱段階において前記化学蓄熱媒体によって再加熱された前記熱媒体の温度が、前記蓄熱段階において前記化学蓄熱媒体を加熱する前記熱媒体の温度よりも高い、
化学蓄熱及び放熱方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明のハイブリッド蓄熱システムによれば、従来の化学蓄熱装置及び顕熱蓄熱装置の問題点を解消することができる。また、本発明の化学蓄熱ブロックは、化学蓄熱装置において用いて効率的な化学蓄熱を行うことができ、特に本発明のハイブリッド蓄熱システムにおいて用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明のハイブリッド蓄熱システムの第1の態様の(a)蓄熱段階及び(b)放熱段階を示す図である。
図2図2は、本発明のハイブリッド蓄熱システムの第2の態様の(a)蓄熱段階及び(b)放熱段階を示す図である。
図3図3は、本発明の化学蓄熱ブロックの第1の態様を示す(a)斜視図、(b)側面断面図、及び(c)上面図である。
図4図4は、本発明の化学蓄熱ブロックの第2の態様を示す(a)斜視図、(b)側面断面図、及び(c)上面図である。
図5図5は、炭化ケイ素系多孔質基材(写真左)、及びこの炭化ケイ素系多孔質基材を用いて製造した本発明の化学蓄熱ブロック(写真右)を示す写真である。
図6図6は、本発明の化学蓄熱装置の第1の態様を示す(a)斜視透視図、(b)側面断面図、及び(c)上面図である。
図7図7は、本発明の化学蓄熱装置の第2の態様を示す(a)斜視透視図、(b)側面断面図、及び(c)上面図である。
図8図8は、本発明の化学蓄熱装置の(a)第3の態様、(b)第4の態様、(c)第5、(c)第6、及び(c)第7の態様を示す上面図である。
図9図9は、本発明の化学蓄熱及び放熱方法の(a)蓄熱段階及び(b)放熱段階を説明するための図である。
図10図10は、本発明の化学蓄熱ブロックを用いる化学蓄熱及び放熱方法の放熱段階における内側流路の圧力と温度の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下では図面を参照して具体的な態様に基づいて本発明を説明するが、本発明はこれらの態様に限定されるものではない。また、図面は説明のためのものであり、実際の寸法の比を表すものではない。
【0012】
《ハイブリッド蓄熱システム》
以下では、化学蓄熱装置の化学蓄熱媒体及び反応媒体としてそれぞれ水酸化カルシウム(又は酸化カルシウム)及び水を用い、かつ顕熱蓄熱装置としてサーモクライン蓄熱装置を用いる態様に基づいて、本発明のハイブリッド蓄熱システムを特に説明する。ただし、当然に、本発明のハイブリッド蓄熱システムでは、他の化学蓄熱媒体及び反応媒体の組み合わせ、及び他の顕熱蓄熱装置を用いることもできる。
【0013】
〈第1の態様〉
本発明のハイブリッド蓄熱システムの第1の態様は、図1を参照して示されるように、化学蓄熱装置及び顕熱蓄熱装置を有する。なお、図1に記載の温度は、本発明のハイブリッド蓄熱システムを運転する際の温度を例示するものであり、必ずしも実際の温度を示すものではない。
【0014】
(蓄熱段階)
このハイブリッド蓄熱システムの蓄熱段階においては、図1(a)を参照して示されるように、熱源(30)によって、顕熱蓄熱装置(20)の熱媒体を加熱して、加熱された熱媒体を得る。加熱された熱媒体の少なくとも一部を、分岐バルブ(91)を介して化学蓄熱装置(10)に供給し、それによって、化学蓄熱装置(10)の化学蓄熱媒体(Ca(OH))を加熱して吸熱反応を行わせる。この吸熱反応によって、化学蓄熱媒体(Ca(OH))から反応媒体としての水(HO)を分離及び除去して、反応媒体(HO)を除去された化学蓄熱媒体(CaO)及び第1の圧力の反応媒体の蒸気(HO)を生成させる。また、化学蓄熱媒体(Ca(OH))を加熱して低温となった熱媒体を、顕熱蓄熱装置(20)に貯蔵する。第1の圧力の反応媒体の蒸気(HO)は、随意に、冷却水との熱交換によって冷却して、液体として、反応媒体貯留部(50)に貯留することができる。この際に、顕熱蓄熱装置(20)の低温側から排出させた熱媒体は、分岐バルブ(92)を介して熱源(30)に供給し、それによって熱源(30)で加熱することができる。
【0015】
なお、図1(a)において、点線は、蓄熱段階においては用いられていない流路を示している。ただし、図1(a)においては示していないが、当然に、熱源(30)の熱は、蓄熱のために用いるだけでなく、発電設備等の熱利用設備(40)においても使用できる。
【0016】
(放熱段階)
このハイブリッド蓄熱システムの放熱段階においては、図1(b)を参照して示されるように、化学蓄熱装置(10)の化学蓄熱媒体(CaO)に第2の圧力の反応媒体(HO)の蒸気を供給して、化学蓄熱媒体(CaO)と発熱反応させる。また、これによって発熱した化学蓄熱媒体(CaO)によって、顕熱蓄熱装置(20)に貯蔵された熱媒体の少なくとも一部を再加熱して、再加熱された熱媒体を得る。
【0017】
ここで、第2の圧力、すなわち放熱段階において化学蓄熱装置(10)の化学蓄熱媒体(CaO)に反応媒体(HO)の蒸気を供給する際の圧力は、第1の圧力、すなわち蓄熱段階において化学蓄熱装置(10)の化学蓄熱媒体(Ca(OH))から反応媒体(HO)を分離及び除去する際の圧力よりも高圧である。具体的には、第2の圧力は、第1の圧力の1.1倍以上、1.3倍以上、1.5倍以上、2.0倍以上、3.0倍以上、4.0倍以上、又は5.0倍以上であってよく、また20.0倍以下、10.0倍以下、8.0倍以下、6.0倍以下、又は5.0倍以下であってよい。
【0018】
このように、第2の圧力を第1の圧力よりも高圧にすることによって、放熱段階において化学蓄熱媒体によって再加熱された熱媒体の温度を、蓄熱段階において熱源によって加熱された熱媒体の温度よりも高くすることができる。具体的には、この温度差は、1℃以上、3℃以上、5℃以上、又は10℃以上であってよく、また200℃以下、150℃以下、100℃以下、50℃以下、30℃以下、20℃以下、又は10℃以下であってよい。
【0019】
これは、吸熱反応によって、化学蓄熱媒体から反応媒体を分離及び除去して、反応媒体を除去された化学蓄熱媒体及び反応媒体の蒸気を生成させる反応、例えば下記で示す水酸化カルシウムの分解の反応では、反応圧力が高くなると平行が左辺側(発熱反応側)に移動し、かつ反応温度が高くなると平行が右辺側(吸熱反応側)に移動するので、反応圧力が高い場合には熱力学的平衡温度が高くなることによる:
Ca(OH)(固体)+吸熱 → CaO(固体)+HO(気体)
【0020】
具体的には、上記で示す水酸化カルシウムの分解の反応では、水蒸気圧が0.1MPa(1.0気圧)においては熱力学的平衡温度が約507℃であるのに対して、水蒸気圧が0.47MPa(4.7気圧)においては熱力学的平衡温度が約600℃になる。
【0021】
放熱段階において得られた高温の熱は、随意に、発電設備等の熱利用設備(40)において使用できる。
【0022】
なお、図1(b)において、点線は、蓄熱段階においては用いられていない流路を示している。
【0023】
このような本発明のハイブリッド蓄熱システムによれば、低温の熱エネルギーの蓄積は、低コストの顕熱蓄熱装置で行い、かつ高温の熱エネルギーの蓄積は、化学蓄熱装置で行うことによって、放熱段階においては、ケミカルヒートポンプ操作で蓄熱温度より高い温度の熱出力を行うことができる。
【0024】
本発明で使用できる顕熱蓄熱装置としては、溶融塩蓄熱装置を使用でき、したがって熱媒体としては溶融塩を使用できる。顕熱蓄熱装置としては、特に、サーモクライン蓄熱(温度躍層型顕熱蓄熱)装置、低温の熱媒体のためのタンクと高温の熱媒体のためのタンクを用いる直接又は間接二槽蓄熱装置等を挙げることができる。
【0025】
使用可能な溶融塩としては、炭酸塩系溶融塩、塩化物系溶融塩、硝酸塩系溶融塩、フッ化物系を挙げることができる。
【0026】
具体的には、炭酸塩系溶融塩としては、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、又は任意のそれらの組み合わせを含有するもの挙げることができる。塩化物系溶融塩としては、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化バリウム、塩化亜鉛、又は任意のそれらの組み合わせを含有するものを挙げることができる。硝酸塩系溶融塩としては、硝酸リチウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、硝酸バリウム、又は任意のそれらの組み合わせを含有するものを挙げることができる。フッ化物溶融塩としては、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、又は任意のそれらの組み合わせを含有するものを挙げることができる。
【0027】
また、本発明で使用できる化学蓄熱媒体及び反応媒体の組み合わせとしては、金属水酸化物(及び金属酸化物)と水との組み合わせ、又は金属塩水和物(及び金属塩無水物)と水との組み合わせを挙げることができる。
【0028】
具体的には、金属水酸化物(及び金属酸化物)と水との組み合わせは、水酸化カルシウム(及び酸化カルシウム)と水との組み合わせ、水酸化マグネシウム(及び酸化マグネシウム)と水との組み合わせ、水酸化ストロンチウム(及び酸化ストロンチウム)と水との組み合わせ、水酸化バリウム(及び酸化バリウム)と水との組み合わせであってよい。
【0029】
また、金属塩水和物及び金属塩無水物と水との組み合わせは、硫酸カルシウム水和物(及び無水硫酸カルシウム)と水の組み合わせ、塩化カルシウム水和物(及び無水塩化カルシウム)と水の組み合わせであってよい。
【0030】
上記の化学蓄熱媒体と反応媒体との反応式は、具体的には下記のようなものである。
Ca(OH)(固体)+吸熱 → CaO(固体)+HO(気体)
Mg(OH)(固体)+吸熱 → MgO(固体)+HO(気体)
Sr(OH)(固体)+吸熱 → SrO(固体)+HO(気体)
Ba(OH)(固体)+吸熱 → BaO(固体)+HO(気体)
CaSO・0.5HO(固体)+吸熱
→ CaSO(固体)+0.5HO(気体)
CaCl・0.5HO(固体)+吸熱
→ CaCl(固体)+0.5HO(気体)
【0031】
〈第2の態様〉
本発明のハイブリッド蓄熱システムの第2の態様は、第1の態様の機器に加えて、蒸気タービン(60)及び熱交換器(70)を更に有する。
【0032】
このハイブリッド蓄熱システムでは、蓄熱段階において、生成した第1の圧力の反応媒体の蒸気(HO)を、蒸気タービン(60)に供給して発電を行わせる。これによれば、生成した第1の圧力の反応媒体の蒸気のエネルギーを、電力に変換して効率的に利用できる。
【0033】
また、このハイブリッド蓄熱システムでは、蓄熱段階において、化学蓄熱装置(10)の化学蓄熱媒体(Ca(OH))を加熱することによって温度が低下した熱媒体の少なくとも一部を、熱交換器(70)において、熱源(30)からの熱媒体と熱交換させて、再加熱して、再加熱された熱媒体を得、再加熱されたこの熱媒体を顕熱蓄熱装置(20)に貯蔵する。これによれば、顕熱蓄熱装置(20)に貯蔵される熱媒体の温度を高め、それによって顕熱蓄熱装置(20)に貯蔵されるエネルギー量を増加させることができる。
【0034】
《化学蓄熱ブロック》
図3を参照して示されるように、本発明の化学蓄熱ブロック(110)は、連通気孔を有する多孔質基材(111)、及び多孔質基材の連通気孔内に充填された化学蓄熱媒体を有し、かつ多孔質基材(111)が、反応媒体の蒸気を流通させるための貫通流路(112)を有する。また、ここで、化学蓄熱媒体は、反応媒体と反応したときに発熱し、かつ反応媒体と分離したときに吸熱するものである。
【0035】
ここで、この貫通流路の断面積は、使用する多孔質基材の通気性、化学蓄熱媒体の種類及び量、意図する蒸気の流速等に応じて任意に決定することができ、例えば貫通流路の流路に垂直な断面について見たときに、多孔質基材の1%以上、2%以上、3%以上、4%以上、又は5%以上であってよく、また多孔質基材の30%以下、20%以下、10%以下、9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、又は5%以下であってよい。また、図4を参照して示されるように、本発明の化学蓄熱ブロック(120)は、2又はそれよりも多くの貫通流路(122)を有することもできる。
【0036】
このような本発明の化学蓄熱ブロック(110、120)によれば、化学蓄熱媒体が、多孔質基材の連通気孔内に充填されており、かつ多孔質基材(111、121)が、反応媒体の蒸気を流通させるための貫通流路(112、122)を有することによって、化学蓄熱媒体と反応媒体の蒸気との分離及び反応を効率的に行うことができる。
【0037】
また、特に、このような本発明の化学蓄熱ブロックによれば、化学蓄熱装置の効率的な運用、特に化学蓄熱装置のケミカルヒートポンプ運転を可能にでき、またこのような本発明の化学蓄熱ブロックを用いた化学蓄熱装置によれば、放熱時に反応圧力を高めることによって、蓄熱温度より高温を出力するケミカルヒートポンプ操作ができる。
【0038】
このような本発明の化学蓄熱ブロックでは、多孔質基材として、酸化ケイ素、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ベリリウム、及びこれらの混合物からなる群より選択される物質を含有する多孔質基材を用いることができる。多孔質基材は例えば、発泡構造体であってよい。
【0039】
本発明の化学蓄熱ブロックでは、化学蓄熱媒体及び反応媒体の組み合わせとして、本発明のハイブリッド蓄熱システムに関して説明した組み合わせを用いることができる。
【0040】
本発明の化学蓄熱ブロックの製造においては、上記のような多孔質基材に、化学蓄熱媒体の粉末を含有するスラリーをコートし、乾燥させ、必要に応じて焼成することができる。
【0041】
具体的には例えば、化学蓄熱媒体として水酸化カルシウム(又は酸化カルシウム)を用いる場合、石灰石を反応釜内で焼成して酸化カルシウムを得、得られた酸化カルシウムに水を添加して水化反応させ、水酸化カルシウムスラリーを得、この水酸化カルシウムスラリーを加圧ろ過機により脱水して、固形分濃度を高め、得られた水酸化カルシウムスラリーに、分散剤を添加し、水を適宜加えて、固形分濃度を調整し、水酸化カルシウムスラリーを得る。
【0042】
その後、この水酸化カルシウムスラリーを、担持基材としての多孔質材料に真空含浸して塗布する。ここで、真空含浸は、水酸化カルシウムスラリーを塗布した担持基材をデシケータに入れ、真空ポンプで減圧して、担持基材に水酸化カルシウムスラリーを含浸させることによって行うことができる。その後、水酸化カルシウムスラリーを含浸させた担持基材をオーブンに入れて乾燥させて、本発明の化学蓄熱ブロックを得ることができる。
【0043】
図5の写真は、炭化ケイ素系多孔質基材(写真左)、及びこの炭化ケイ素系多孔質基材を用いて上記のようにして製造した本発明の化学蓄熱ブロック(写真右)を示している。
【0044】
なお、図3~5では、本発明の化学蓄熱ブロックとして円筒状の化学蓄熱ブロックを示しているが、発明の化学蓄熱ブロックは当然に円筒状に限定されるものではない。したがって、本発明の化学蓄熱ブロックは、他の形状、例えば四角柱状、六角柱状であってよい。本発明の化学蓄熱ブロックが四角柱状又は六角柱状であることは、複数の化学蓄熱ブロックを密に充填して配置するために好ましい。
【0045】
本発明の化学蓄熱ブロックは化学蓄熱装置で用いることができる。
【0046】
《化学蓄熱装置》
図6で示すように、本発明の化学蓄熱ブロック(110)を用いる本発明の化学蓄熱装置(200)は、
内側流路(210)及び外側流路(220)を有する二重管容器、並びに
内側流路(210)に配置されている1又は複数の本発明の化学蓄熱ブロック(110)、
を有する。
【0047】
このような化学蓄熱装置(200)では、
黒矢印で示すように、外側流路(220)に熱媒体を流通させ、
白矢印で示すように、内側流路(210)において、反応媒体の蒸気を、化学蓄熱ブロック(110)の貫通流路(112)、及び内側流路(210)内壁と化学蓄熱ブロック(110)との間に流通させる。
【0048】
このような化学蓄熱装置(200)では、化学蓄熱ブロック(110)の化学蓄熱媒体と反応媒体との分離及び反応が促進され、また熱媒体と化学蓄熱ブロック(110)との熱交換が促進されるので、化学蓄熱を効率的に行うことができる。また、このような化学蓄熱装置(200)では、化学蓄熱ブロック(110)数を変更することによって、必要な蓄熱容量を容易に達成することができる。
【0049】
なお、図6では、内側流路(210)内壁と化学蓄熱ブロック(110)との間の間隔が比較的広く示されているが、これは説明のためのものであり、実際には、この間隔が狭いことが、外側流路の熱媒体と化学蓄熱ブロックとの間の熱交換を促進するための好ましい。
【0050】
また、図6では、本発明の化学蓄熱装置として、円筒状の化学蓄熱ブロックを有する円筒状の化学蓄熱装置を示しているが、上記のとおり発明の化学蓄熱ブロックは円筒状に限定されるものではない。したがって、本発明の化学蓄熱装置は、他の形状の化学蓄熱ブロックを有する他の形状の化学蓄熱装置、例えば四角柱状の化学蓄熱ブロックを有する四角柱状の化学蓄熱装置、又は六角柱状の化学蓄熱ブロックを有する六角柱状の化学蓄熱装置であってもよい。
【0051】
また、例えば、図7で示すように、本発明の化学蓄熱装置(300)では、複数の内側流路(310)が、1つの外側流路(320)内に配置されていてもよい。ここでは、黒矢印で示すように、外側流路(320)に熱媒体を流通させ、かつ白矢印で示すように、内側流路(310)において、反応媒体の蒸気を流通させる。この場合には、外側流路(320)内に配置する内側流路(310)の数を変更することによって、必要な蓄熱容量を容易に達成することができる。
【0052】
なお、複数の内側流路が、1つの外側流路内に配置されている場合、内側流路の数、及び外側流路の形状は任意に決定することができる。したがって、例えば、図8(a)で示すように、四角形の外側流路(420)内に12個の内側流路(410)が配置されている化学蓄熱装置(400)、図8(b)で示すように、円形の外側流路(520)内に7個の内側流路(510)が配置されている化学蓄熱装置(500)、図8(c)で示すように、六角形の外側流路(620)内に7個の内側流路(610)が配置されている化学蓄熱装置(600)、図8(d)で示すように、四角形の外側流路(720)内に12個の内側流路(710)が配置されている化学蓄熱装置(700)、図8(e)で示すように、六角形の外側流路(820)内に7個の内側流路(810)が配置されている化学蓄熱装置(800)が実施可能である。
【0053】
なお、図8(a)~(c)では、円筒状の蓄熱ブロックをそれぞれ四角形、円形、及び六角形の外側流路内に配置しているのに対して、図8(d)では、四角形の蓄熱ブロックを四角形の外側流路内に配置しており、図8(e)では、六角形の蓄熱ブロックを六角形の外側流路内に配置している。
【0054】
《化学蓄熱及び放熱方法》
本発明の化学蓄熱及び放熱方法では、本発明の化学蓄熱装置を用いる。
【0055】
図9(a)を参照して示されるように、この方法の蓄熱段階においては、黒矢印で示すように、熱媒体を外側流路(220)に流通させ、それによって化学蓄熱ブロック(110)の化学蓄熱媒体を加熱して反応媒体を除去して、反応媒体を除去された化学蓄熱ブロック(110)及び第1の圧力の反応媒体の蒸気を生成させ、白矢印で示すように、この反応媒体の蒸気を取り出す。
【0056】
また、図9(b)を参照して示されるように、この方法の放熱段階においては、熱媒体を外側流路(220)に流通させ、かつ第2の圧力の反応媒体の蒸気を内側流路(210)に流通させて、化学蓄熱ブロック(110)を発熱させ、発熱した化学蓄熱ブロック(110)によって、黒矢印で示されるように外側流路に供給された熱媒体を再加熱して、再加熱された熱媒体を得る。
【0057】
ここで、第2の圧力、すなわち放熱段階において内側流路に流通させる反応媒体の蒸気の圧力は、第1の圧力、すなわち蓄熱段階において化学蓄熱媒体から除去される反応媒体の圧力よりも高圧である。このように第2の圧力を第1の圧力よりも高圧にすることによって、放熱段階において化学蓄熱媒体によって再加熱された熱媒体の温度を、蓄熱段階において化学蓄熱媒体を加熱する熱媒体の温度よりも高くすることができる。
【0058】
なお、第2の圧力と第1の圧力との関係、放熱段階において化学蓄熱媒体によって再加熱された熱媒体の温度と蓄熱段階において化学蓄熱媒体を加熱する熱媒体の温度との差、圧力と熱力学的平衡温度との関係等については、本発明のハイブリッド蓄熱システムに関する記載を参照できる。
【実施例0059】
図6で示すような化学蓄熱装置を用いて、化学蓄熱及び放熱方法を実施した。
【0060】
具体的には、軸方向の中心に貫通孔を有する円柱状の炭化ケイ素発泡構造体(直径55mm、高さ50mm)に水酸化カルシウムを含有しているスラリーをコートし、乾燥させて、図3及び図5で示すような化学蓄熱ブロックを得た。このようにして得た化学蓄熱ブロックを20個積み重ねて、図6に示すように、縦置きされているステンレス製二重管容器の内側流路に入れた。二重管容器内の水酸化カルシウムの総量は約1.7kgであった。
【0061】
蓄熱段階においては、550℃の溶融塩を、上部から下部に向かって、400分間にわたって、二重管容器の外側流路に流通させて、化学蓄熱ブロックの水酸化カルシウムを酸化カルシウムと水蒸気(約0.01MPa(約10kPa))に分解して、水を回収した。蓄熱段階の完了後の回収水の量から、水酸化カルシウムから酸化カルシウムへの反応転化率は約77%であると推定された。
【0062】
放熱段階においては、0.76MPa(760kPa)の水蒸気を、下部から上部に向かって、初期温度400℃の二重管容器の内側流路に流通させて、発熱反応を開始させた。ここで、この水蒸気は、二重管容器の内側流路において、化学蓄熱ブロックの周囲及び貫通流路を流通するようにした。
【0063】
反応開始後、圧力は0.5MPaまで減少したが、約30分後に初期圧力まで回復した。圧力の回復過程において圧力が最大となるのとほぼ同じタイミングで、この最大圧力に対応する平衡温度にほぼ一致する最高温度630℃が観測された。
【0064】
放熱段階における二重管容器の内側流路の下部から1番目の化学蓄熱ブロックと2番目の化学蓄熱ブロックとの間における温度及び二重管容器の内側流路の水蒸気圧力を、図10に示している。
【符号の説明】
【0065】
10 化学蓄熱装置
20 顕熱蓄熱装置
30 熱源
40 熱利用設備
50 反応媒体貯留部
60 蒸気タービン
70 熱交換器
91、92 分岐バルブ
110、120 化学蓄熱ブロック
111、121 多孔質基材
112、122 貫通流路
200 、300、400、500、600、700、800 化学蓄熱装置
210、310、410、510、610、710、810 内側流路
220、320、420、520、620、720、820 外側流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10