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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134252
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】椅子
(51)【国際特許分類】
   A47C 7/56 20060101AFI20230920BHJP
   A47C 3/04 20060101ALN20230920BHJP
【FI】
A47C7/56
A47C3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022039668
(22)【出願日】2022-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000561
【氏名又は名称】株式会社オカムラ
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(72)【発明者】
【氏名】早乙女 弘志
【テーマコード(参考)】
3B091
【Fターム(参考)】
3B091BA04
(57)【要約】
【課題】脚体側の構造を簡素化することができ、かつ、座体が使用姿勢のときに座体側と脚体側の当接部の間に衣服が挟み込まれるのを抑制することができる椅子を提供する。
【解決手段】椅子は座体3と脚体2を備える。脚体は、座体を使用姿勢と収納姿勢とに切り換え可能とされる。脚体は、椅子幅方向に離間した各一対の前脚と後脚を有する。椅子幅方向の一側の前脚と後脚が相互に連結されて一側の前後脚対を構成し、椅子幅方向の他側の前脚と後脚が相互に連結されて他側の前後脚対を構成する。座体は、一対の支持アーム部32と、横梁部33と、を有する。一対の支持アーム部は、椅子幅方向の両側部の、座体の回動軸心から離間した位置から座面の着座側と逆側に突出する。横梁部は、椅子幅方向に延出して一対の支持アーム部同士を連結するとともに、座体が使用姿勢の状態で、椅子幅方向両側の前後脚対の上面に当接する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座者が着座する座面を有する座体と、
前記座体の前部または後部が椅子幅方向に沿う軸心回りに回動可能に連結され、前記座体を、前記座面が上方を向く使用姿勢と、前記座面が後方または前方を向く収納姿勢とに切り換え可能に支持する脚体と、を備え、
前記脚体は、
椅子幅方向に離間して配置された一対の前脚と、
前記前脚の後方側で椅子幅方向に離間して配置された一対の後脚と、を有し、
椅子幅方向の一側の前記前脚と前記後脚が相互に連結されて一側の前後脚対を構成するとともに、椅子幅方向の他側の前記前脚と前記後脚が相互に連結されて他側の前後脚対を構成しており、
前記座体は、
椅子幅方向の両側部の前記軸心から離間した位置から前記座面の着座側と逆側に突出する一対の支持アーム部と、
椅子幅方向に延出して一対の前記支持アーム部同士を連結するとともに、前記座体が前記使用姿勢の状態で、椅子幅方向の両側の前記前後脚対の上面に当接する横梁部と、を有することを特徴とする椅子。
【請求項2】
椅子幅方向の同じ側の前記前脚と前記後脚の少なくとも一方には、前後方向に延出して前記前脚と前記後脚を連結する一体、若しくは、別体の前後延出部が設けられ、
前記横梁部は、前記座体が前記使用姿勢の状態で、一対の前記前後延出部の上面に当接することを特徴とする請求項1に記載の椅子。
【請求項3】
前記座体は、椅子幅方向の両側部に前後方向に沿って延びる一対の側部フレームを備え、
前記脚体の一対の前記前後延出部は、前記一対の側部フレームよりも椅子幅方向内側に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の椅子。
【請求項4】
一対の前記支持アーム部は、前記座体の前記逆側に向かって椅子幅方向内側に傾斜していることを特徴とする請求項3に記載の椅子。
【請求項5】
一対の前記前脚の前端部側の椅子幅方向の外側の端部間の離間幅は、一対の前記後脚の後端部側の椅子幅方向の内側の端部間の離間幅よりも狭くなっていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の椅子。
【請求項6】
椅子幅方向の同じ側の前記前脚と前記後脚の少なくとも一方には、前後方向に延出して前記前脚と前記後脚を連結する一体、若しくは、別体の前後延出部が設けられ、
前記脚体の一対の前記前後延出部の椅子幅方向の離間幅は、前方に向かって狭まっていることを特徴とする請求項5に記載の椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座体の跳ね上げが可能な椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
不使用時に収納スペースをよりコンパクトにするために、座体を脚体に対して跳ね上げ可能にした椅子が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の椅子は、着座者が着座する座体と、座体の後部を椅子幅方向に沿う軸線回りに回動可能に支持する脚体と、を備えている。座体は、椅子幅方向に沿う軸心を中心とした回動により、座体を、座面が上方を向く使用姿勢と、座面が後方を向く収納姿勢とに切り換え可能とされている。脚体は、椅子幅方向に離間して配置される一対の前脚と、前脚の後方側で椅子幅方向に離間して配置される一対の後脚と、を備えている。各前脚と左右の対応する後脚とは、前後方向に延出する一対の前後延出部によって連結されている。左右の前後延出部の前部側領域には、左右の前後延出部から上方側に膨出するブリッジ構造部が架設されている。また、座体の下面側には、座体の左右の側部フレーム同士を連結する連結杆が設けられている。
この椅子の場合、座体が使用姿勢のときに、座体側の連結杆が脚体側のブリッジ構造部の上面に当接することにより、座体に入力された着座荷重が脚体によって受け止められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-065591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の椅子は、座体が使用姿勢であるときに、座体側の入力荷重を受け止めるブリッジ構造部が、脚体側の左右の前後延出部から上方に膨出するように架設されている。このため、座体が跳ね上げられた状態での簡素化が望まれる脚体が、ブリッジ構造部によって複雑化されてしまう。
【0006】
また、特許文献1に記載の椅子は、座体が使用姿勢であるときに、座体の座面に近接した下方位置で座体側の連結杆と脚体側のブリッジ構造部が相互に当接することになる。このため、座体の座面に着座した着座者の衣服が座面の側部から下方に垂れ下がったときに、その衣服の下端が座体側の連結杆と脚体側のブリッジ構造部の間に挟み込まれることが懸念される。
【0007】
そこで本発明は、脚体側の構造を簡素化することができ、かつ、座体が使用姿勢のときに座体側と脚体側の当接部の間に衣服が挟み込まれるのを抑制することができる椅子を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る椅子は、上記課題を解決するために、以下の構成を採用した。
即ち、本発明に係る椅子は、着座者が着座する座面を有する座体と、前記座体の前部または後部が椅子幅方向に沿う軸心回りに回動可能に連結され、前記座体を、前記座面が上方を向く使用姿勢と、前記座面が後方または前方を向く収納姿勢とに切り換え可能に支持する脚体と、を備え、前記脚体は、椅子幅方向に離間して配置された一対の前脚と、前記前脚の後方側で椅子幅方向に離間して配置された一対の後脚と、を有し、椅子幅方向の一側の前記前脚と前記後脚が相互に連結されて一側の前後脚対を構成するとともに、椅子幅方向の他側の前記前脚と前記後脚が相互に連結されて他側の前後脚対を構成しており、前記座体は、椅子幅方向の両側部の前記軸心から離間した位置から前記座面の着座側と逆側に突出する一対の支持アーム部と、椅子幅方向に延出して一対の前記支持アーム部同士を連結するとともに、前記座体が前記使用姿勢の状態で、椅子幅方向の両側の前記前後脚対の上面に当接する横梁部と、を有することを特徴とする。
【0009】
上記の構成により、座体が使用姿勢のときには、座体の下方に配置された横梁部が脚体の左右の前後脚対の上面に当接することにより、座体に入力される着座荷重が横梁部を通して脚体に支持されることになる。
本構成では、座体の荷重を受け止めるために、脚体側の左右の前後脚対から上方に突出するブリッジ構造を設ける必要がない。このため、脚体側の構造が大幅に簡素化される。また、本構成では、脚体側に当接する座体側の横梁部が左右の支持アーム部を介して座体の座面と逆側に突出しているため、座体が使用姿勢であるときにおける座体側と脚体側の当接部が座面から下方に充分に離間した位置となる。このため、座体に着座した着座者の衣服が座体の側部から下方に垂れ下がることがあっても、座体側と脚体側の当接部の間に衣服が挟み込まれにくくなる。
さらに、本構成では、椅子幅方向の両側の支持アーム部が椅子幅方向に延びる横梁部によって連結されているため、座体側の荷重を左右バランス良く、かつ、高い剛性を持って脚体側に支持させることができる。
【0010】
椅子幅方向の同じ側の前記前脚と前記後脚の少なくとも一方には、前後方向に延出して前記前脚と前記後脚を連結する一体、若しくは、別体の前後延出部が設けられ、前記横梁部は、前記座体が前記使用姿勢の状態で、一対の前記前後延出部の上面に当接するようにしても良い。
【0011】
この場合、座体が使用姿勢の状態では、前後方向に延びる左右の前後延出部の上面に座体側の横梁部が当接することになるため、座体側の着座荷重が脚体に安定して支持されるようになる。
【0012】
前記座体は、椅子幅方向の両側部に前後方向に沿って延びる一対の側部フレームを備え、前記脚体の一対の前記前後延出部は、前記一対の側部フレームよりも椅子幅方向内側に配置されるようにしても良い。
【0013】
この場合、座体側の横梁部と脚体側の前後延出部との当接部が座体の側部フレームよりも椅子幅方向内側に位置されることになる。このため、着座者が座体に着座したときに、着座者の衣服が座体の側部から下方に垂れ下がっても、その衣服が側部フレームに阻まれて当接部の方向に変位し難くなる。このため、座体側の横梁部と脚体側の前後延出部との当接部に着座者の衣服が挟み込まれるのをより確実に抑制することが可能になる。
【0014】
一対の前記支持アーム部は、前記座体の前記逆側に向かって椅子幅方向内側に傾斜するようにしても良い。
【0015】
この場合、座体が使用姿勢の状態ときに座体を側部上方から見た場合に、支持アーム部が外部から見え難くなる。このため、本構成を採用した場合には、外部からの見栄えが良好となる。
【0016】
一対の前記前脚の前端部側の椅子幅方向の外側の端部間の離間幅は、一対の前記後脚の後端部側の椅子幅方向の内側の端部間の離間幅よりも狭くすることが望ましい。
【0017】
この場合、座体を収納姿勢にして複数の椅子を前後に重ねるときに、前側の椅子の左右の後脚の間に後の椅子の左右の前脚を挿入することができる。このため、複数の椅子を前後にコンパクトに重ねて配置することが可能になる。
【0018】
椅子幅方向の同じ側の前記前脚と前記後脚の少なくとも一方には、前後方向に延出して前記前脚と前記後脚を連結する一体、若しくは、別体の前後延出部が設けられ、前記脚体の一対の前記前後延出部の椅子幅方向の離間幅は、前方に向かって狭まるようにしても良い。
【0019】
この場合、座体を収納姿勢にして複数の椅子を前後に重ねるときに、前側の椅子の左右の後脚の間に後の椅子をより深く挿入して前後に重ねることができる。したがって、本構成を採用した場合には、複数の椅子を前後によりコンパクトに重ねて配置することが可能になる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る椅子は、座体が使用姿勢のときに、座体の下方に配置された横梁部が脚体の左右の前後脚対の上面に当接する構造とされているため、脚体側の構造を簡素化することができる。さらに、本発明に係る椅子は、脚体側の前後脚対に当接する座体側の横梁部が左右の支持アーム部を介して座体の座面と逆側に突出しているため、座体が使用姿勢であるときに、座体に着座した着座者の衣服が座体側と脚体側の当接部の間に挟み込まれるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、実施形態の椅子の斜視図である。
図2図2は、実施形態の椅子の座体が使用姿勢であるときの側面図である。
図3図3は、実施形態の椅子の座体の骨格部の平面図である。
図4図4は、実施形態の椅子の座体が収納姿勢であるときの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
以下の説明においては、椅子1に正規姿勢で着座した人の正面が向く図中矢印FRの指す向きを「前」と呼び、それと逆側の向きを「後」と呼ぶものとする。また、「上」,「下」と「左」,「右」については、椅子1に正規姿勢で着座した人の上側の図中矢印UPの指す向きを「上」、それと逆側の向きを「下」と呼び、椅子1に正規姿勢で着座した人の左側の図中矢印LHの指す向きを「左」、それと逆側の向きを「右」と呼ぶものとする。また、椅子1の左右に向く方向を「椅子幅方向」と呼ぶものとする。
【0023】
図1は、本実施形態の椅子1を前部左斜め上方から見た斜視図である。また、図2は、椅子1を左側方から見た側面図である。なお、図2では、一部の部材(クッション体30)が省力されている。
これらの図に示すように、椅子1は、脚体2と、座体3と、背凭れ4と、肘掛け5と、を備えている。
【0024】
脚体2は、椅子幅方向に離間して配置された一対の前脚21と、前脚21の後方側で椅子幅方向に離間して配置された一対の後脚22と、を備えている。前脚21と後脚22の各下端には、接地面上を転動可能なキャスター15が取り付けられている。左右の各前脚21には、下端から上方に起立する起立部の上端部から後方側に向かって前後方向に延びる前後延出部23が一体に形成されている。各前後延出部23の後端部は、左右の対応する後脚22の上下方向の略中央部に連結されている。また、左右の前後延出部23同士は、椅子幅方向に沿って延出する連結杆24F,24Rによって相互に連結されている。一方の連結杆24Fは、左右の前後延出部23の前部寄り部分同士を連結しており、他方の連結杆24Rは、左右の前後延出部23の後部寄り部分同士を連結している。
椅子幅方向の一側の前脚21と後脚22は、前後延出部23を通して相互に連結されることにより、一側の前後脚対を構成している。同様に、椅子幅方向の他側の前脚21と後脚22は、前後延出部23を通して相互に連結されることにより、他側の前後脚対を構成している。一側の前後脚対と他側の前後脚対は、前後延出部23の前部寄り部分と後部寄り部分が夫々連結杆24F,24Rによって連結されている。
【0025】
左右の前脚21の前端部側の椅子幅方向外側の端部間の離間幅は、左右の後脚22の後端部側の椅子幅方向内側の端部間の離間幅よりも狭くなっている。前後延出部23は、後脚22の上下方向の略中央部と左右の対応する前脚21の上端部とを連結している。前後延出部23は、後脚22の椅子幅方向の内側面に結合され、後脚22の椅子幅方向の内側面から前方側に湾曲した後に前方に向かって延出している。また、前後延出部23は、後脚22側から前脚21側に向かって椅子幅方向内側と下方側に傾斜している。したがって、左右の前後延出部23の椅子幅方向の離間幅は、前方側に向かって狭まっている。
本実施形態の椅子1は、脚体2のこの構成により、不使用時に、前側の椅子1の左右の後脚22の間に後側の椅子1の左右の前脚21を挿入し得るように(ネスティング可能に)なっている。
【0026】
また、左右の後脚22は、キャスター15の取り付けられる下端から上方側に向かって前方側に所定角度で傾斜している。左右の後脚22の前後延出部23との連結位置よりも上方側には、座体3の後部を回動可能に支持するための枢支アーム25が設けられている。枢支アーム25は、後脚22から前方側に向かって延出している。枢支アーム25には、椅子幅方向に延びる図示しない回動軸が支持されている。回動軸は、座体3の後部を回動可能に支持する。座体3は、枢支アーム25の回動軸の軸心を中心として跳ね上げ回動可能とされている。
【0027】
左右の後脚22の上端部には、背凭れ4と肘掛け5が取り付けられる取付座26が形成されている。取付座26には、背凭れ4の左右の側部を支持する支持突起27が突設されている。背凭れ4は、左右の側部が支持突起27に嵌合された状態でボルト締結等によって取付座26に固定されている。肘掛け5は、背凭れ5の側部下端に接した状態において、取付座26にボルト締結等によって固定されている。肘掛け5は、後脚22の上端部から前方側に向かって延出している。
【0028】
図1に示すように、座体3は、平面視が矩形枠状の枠状フレーム29と、枠状フレーム29に支持されるクッション体30と、を備えている。枠状フレーム29は、金属や硬質樹脂等によって形成されている。クッション体30は、例えば、矩形状の座板の上面にウレタン等のクッション材が載置され、クッション材の上面と周域が表皮材に覆われて構成されている。
なお、座体3の構造は、これに限定されない。座体3は、例えば、枠状フレーム29の上面側に張材を張設した構造であっても良い。
【0029】
図3は、座体3の骨格部を示す平面図である。なお、図3では、図示の都合上、脚体2の前脚21の一部と後脚22が省略されている。また、図3では、脚体2の左右の前後延出部23が仮想線で示されている。
枠状フレーム29は、座体3の前辺に沿う前部支持杆29fと、座体3の後辺に沿う後部支持杆29rと、座体3の左右の各側辺に沿う一対の側部支持杆29s(側部フレーム)と、を有する。左右の側部支持杆29sの後部には、上方側に向かって山形状に膨出する支持片31(図1図2参照)が一体に形成されている。左右の各支持片31は、脚体2側の左右の枢支アーム25の間に配置され、枢支アーム25の各軸に回動可能に支持されている。
【0030】
図4は、座体3が枢支アーム25の軸の軸心を中心として上方に跳ね上げられた状態を示す椅子1の側面図である。
座体3は、枢支アーム25の軸の軸心を中心とした座体3の回動により、座面3aが上方を向く使用姿勢(図2参照)と、座面3aが後方を向く収納姿勢と、に切り換え可能とされている。座体3は、使用姿勢のときには略水平に維持され、収納姿勢のときには前部側が背凭れ4の方向に跳ね上げられる。
【0031】
枠状フレーム29の左右の側部支持杆29sの前部寄りの下面には、使用姿勢の座体3の下方側に向かって(座体3の座面3aと逆側に向かって)突出する支持アーム部32が突設されている。左右の支持アーム部32の下端部同士は、椅子幅方向に延出する横梁部33によって相互に連結されている。
左右の各支持アーム部32は、使用姿勢の座体3の下方側に向かって(座体3の座面3aと逆側に向かって)椅子幅方向内側に傾斜している。また、各支持アーム部32は、側部支持杆29sの前部寄りの下面に配置されているため、枢支アーム25の軸心(座体3の回動中心となる軸心)に対して前方側に所定距離離間している。
【0032】
横梁部33は、図2に示すように、座体3が使用姿勢の状態のときに、脚体2側の一対の前後延出部23の上面に対して当接可能とされている。座体3は、横梁部33が前後延出部23の上面に当接することにより、座面3aが略水平に維持されるとともに、座面3aに入力された着座荷重が横梁部33を通して脚体2側に支持される。
【0033】
ここで、脚体2の一対の前後延出部23は、図3に示すように、座体3の枠状フレーム29の左右の側部支持杆29sよりも椅子幅方向内側に配置されている。また、一対の前後延出部23は、少なくとも横梁部33との当接部と、その前方側の椅子幅方向の幅が、座体3側の横梁部33の椅子幅方向の幅よりも狭まっている。
【0034】
本実施形態の椅子1に着座者が実際に着座する場合には、座体3を、図1図2に示すような使用姿勢にし、座体3の下方の横梁部33を脚体2側の一対の前後延出部23の上面に当接させる。この状態で着座者が座面3aに着座すると、着座荷重が横梁部33を通して脚体2の左右の前後延出部23によって支持される。このとき、横梁部33と一対の前後延出部23との当接部は、座体3の座面3aから充分に下方に離間し、かつ、座体3の側部(側部支持杆29s)よりも椅子幅方向内側にオフセットした位置に配置されている。
【0035】
また、複数の椅子1を纏めて収納スペースに収納する場合には、各椅子1の座体3を、図4に示すように上方に跳ね上げて収納姿勢にする。次にこの状態において、前側の椅子1の左右の後脚22の間に後側の椅子の前脚21を後方側から挿入し、後側の椅子1の左右の前後延出部23を前側の椅子1の左右の前後延出部23の間に挿入する。こうして前側の椅子1の後部に後側の椅子を重ね合わせると、全体の前後幅が狭まり、収納スペースにコンパクトに配置することが可能になる。なお、椅子1は、三つ以上でも、同様にして前後に重ね合わせることができる。
【0036】
以上のように、本実施形態の椅子1は、座体3が使用姿勢のときに、座体3の下方に配置された横梁部33が脚体2の左右の前後脚対(前後延出部23)の上面に当接する構造とされている。このため、脚体2の左右の前後延出部23から上方に突出するブリッジ構造を設ける場合に比較して、脚体2側の構造を大幅に簡素化することができる。
【0037】
なお、本発明に係る椅子は、明確に前後方向に延びる前後延出部23を持たない構造であっても良いが、本実施形態のように左右の前後脚対に夫々前後延出部23を設け、座体3が使用姿勢のときに、座体3側の横梁部33が左右の前後延出部23の上面に当接するようにした場合には、座体3に作用する着座荷重を、横梁部33を通して脚体2に安定して支持させることが可能になる。
【0038】
さらに、本実施形態の椅子1は、脚体2側の前後延出部23に当接する座体3側の横梁部33が、左右の支持アーム部32を介して座体3の下方側に(座面3aと逆側に)に離間して配置されている。このため、座体3が使用姿勢であるときに、座体3に着座した着座者の衣服が座体3の側部から下方に垂れ下がることがあっても、衣服が座体3側と脚体2側の当接部の間に挟み込まれるのを抑制することができる。
【0039】
また、本実施形態の椅子1は、椅子幅方向の両側の支持アーム部32が椅子幅方向に延びる横梁部33によって相互に連結されている。このため、座体3側の荷重を左右バランス良く、かつ、高い剛性を持って脚体側に支持させることができる。
【0040】
また、本実施形態の椅子1は、脚体2側の一対の前後延出部23が、座体3側の枠状フレーム29の側部支持杆29s(側部フレーム)よりも椅子幅方向内側に配置されている。このため、着座者が座体3に着座したときに、着座者の衣服が座体の側部から下方に垂れ下がっても、その衣服が側部支持杆29sに阻まれて横梁部33と前後延出部23の当接部の方向に変位し難くなる。したがって、本構成を採用した場合には、横梁部33と前後延出部23の当接部に、着座者の衣服が挟み込まれるのをより確実に抑制することが可能になる。
【0041】
さらに、本実施形態の椅子1では、横梁部33の両端部に連結される一対の支持アーム部32が、使用姿勢の座体3の下方に向かって(座面3aと離間する方向に向かって)椅子幅方向内側に傾斜している。このため、使用姿勢の座体3を側部上方から見た場合に、支持アーム部32が外部から見え難くなる。したがって、本構成を採用した場合には、外部からの見栄えを良好にすることができる。
【0042】
また、本実施形態の椅子1は、左右の前脚21の前端部側の椅子幅方向外側の端部間の離間幅が、左右の後脚22の後端部側の椅子幅方向の内側の端部間の離間幅よりも狭くなっている。このため、座体3を収納姿勢にして複数の椅子1を前後に重ねるときに、前側の椅子1の左右の後脚22の間に後の椅子1の左右の前脚21を挿入することができる。したがって、本構成を採用した場合には、複数の椅子1を前後にコンパクトに重ねて配置することができる。
【0043】
また、本実施形態の椅子1は、脚体2側の一対の前後延出部23の椅子幅方向の離間幅が、前方に向かって狭まっている。このため、座体3を収納姿勢にして複数の椅子1を前後に重ねるときに、前側の椅子1の左右の後脚22の間に後の椅子1をより深く挿入して前後に重ねることができる。したがって、本構成を採用した場合には、複数の椅子1を前後によりコンパクトに重ねて配置することができる。
【0044】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
例えば、上記の実施形態では、座体3の後部が、椅子幅方向に沿う軸心を中心として、脚体2に跳ね上げ回動自在に支持されているが、座体3の支持態様はこれに限定されない。座体3は、前端部側が、椅子幅方向に沿う軸心を中心として、脚体2に跳ね上げ回動自在に支持されるようにしても良い。この場合、座体3は、収納姿勢のときに、座面3aが前方側を向く。
さらに、上記の実施形態では、前脚21の起立部の上端部に前後延出部23が一体に形成されているが、前後延出部23は、後脚22に一体に形成するようにしても良い。また、前後延出部23は、前脚21と後脚22に夫々一体に形成し、前後の延出部23同士を相互に連結するようにしても良い。また、前後延出部23は、前脚21や後脚22と別体の部材によって形成し、前後延出部23の前後の端部を前脚21と後脚22に連結するようにしても良い。
【符号の説明】
【0045】
1…椅子
2…脚体
3…座体
3a…座面
21…前脚
22…後脚
23…前後延出部
29s…側部支持杆(側部フレーム)
32…支持アーム部
33…横梁部
図1
図2
図3
図4