(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134264
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】ランプシステム、ランプ制御方法、ランプ制御プログラム、および、車両
(51)【国際特許分類】
B60Q 1/14 20060101AFI20230920BHJP
【FI】
B60Q1/14 H
B60Q1/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022039712
(22)【出願日】2022-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】弁理士法人山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大束 英雄
【テーマコード(参考)】
3K339
【Fターム(参考)】
3K339AA02
3K339BA01
3K339BA02
3K339BA21
3K339CA01
3K339DA01
3K339GB01
3K339HA01
3K339HA03
3K339HA05
3K339KA02
3K339KA07
3K339KA09
3K339KA29
3K339LA06
3K339LA26
3K339LA31
3K339LA34
3K339MA01
3K339MC01
3K339MC03
3K339MC04
3K339MC13
3K339MC26
3K339MC39
3K339MC90
(57)【要約】
【課題】ヘッドライトからの光が、路面で拡散反射されて、対向車に到達するのを防止する。
【解決手段】光を所定の範囲に投影するランプユニットと、ランプユニットの光の投影範囲を所定の単位でオンオフまたは減光させるドライバとを有するランプの制御方法である。ランプユニットから投影された光が、路面で正反射および拡散反射されて、対向車または先行車の運転者に到達する路面上の反射領域を求めるステップと、ランプユニットから反射領域への光の投影を消灯または減光させるよう前記ドライバを制御するステップとを有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を所定の範囲に投影するランプユニットと、前記ランプユニットの光の投影範囲を所定の単位でオンオフまたは減光させるドライバと、前記ドライバを制御する制御部とを有し、
前記制御部は、前記ランプユニットから投影された光が、路面で正反射および拡散反射されて、対向車または先行車の運転者に到達する路面上の反射領域を求め、前記ランプユニットから前記反射領域への光の投影を消灯または減光させるよう前記ドライバを制御することを特徴とするランプシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のランプシステムであって、前記制御部は、前記対向車または前記先行車を撮影した画像を処理して、前記対向車の前輪の接地位置または前記先行車の後輪の接地位置を求め、前記接地位置から路面上で所定の範囲を前記反射領域として、前記ランプユニットから前記反射領域への光の投影を消灯または減光させることを特徴とするランプシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のランプシステムであって、前記制御部は、前記ランプユニットを搭載した自車両から、前記対向車または前記先行車を撮影した画像を処理して、高輝度点を求め、前記高輝度点に基づいて路面上の前記反射領域を求め、前記ランプユニットから前記反射領域への光の投影を消灯または減光させることを特徴とするランプシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のランプシステムであって、前記ランプユニットは、縦横にマトリクス状に配列された発光素子を含み、前記マトリクス状の発光素子は、ハイビームを出射する複数の発光素子の領域と、ロービームを出射する複数の発光素子の領域とを有し、
前記ロービームを出射する複数の発光素子の領域には、1列に縦に並んだ複数の発光素子を含むエリアが、列ごとに設定され、
前記ドライバは、前記エリアを前記単位として、光の投影範囲をオンオフまたは減光させることを特徴とするランプシステム。
【請求項5】
請求項1に記載のランプシステムであって、前記ランプユニットは、縦横にマトリクス状に配列された発光素子を含み、前記マトリクス状の発光素子は、ハイビームを出射する複数の発光素子の領域と、ロービームを出射する複数の縦長の発光素子の領域とを有し、
前記ロービームを出射する複数の発光素子の領域には、1列に縦長の発光素子を含むエリアが、列ごとに設定され、
前記ドライバは、前記エリアを前記単位として、光の投影範囲をオンオフまたは減光させることを特徴とするランプシステム。
【請求項6】
請求項1に記載のランプシステムであって、前記ランプユニットは、縦横にシームレスにレーザー光を走査されて蛍光発光する蛍光体を含み、前記蛍光体は、ハイビームを出射する蛍光体の領域と、ロービームを出射する蛍光体の領域とを有し、
前記ロービームを出射する蛍光体の領域には、1列に縦に並んだ複数の発光を実現するエリアが、列ごとに設定され
前記ドライバは、前記エリアを前記単位として、光の投影範囲をオンオフまたは減光させることを特徴とするランプシステム。
【請求項7】
請求項1に記載のランプシステムであって、前記ランプユニットは、縦横にマトリクス状に配列された液晶素子を含み、前記マトリクス状の液晶素子は、ハイビームを出射する複数の液晶素子の領域と、ロービームを出射する複数の液晶素子の領域とを有し、
前記ロービームを出射する複数の液晶素子の領域には、1列に縦に並んだ複数の液晶素子を含むエリアが、列ごとに設定され、
前記ドライバは、前記エリアを前記単位として、光の投影範囲をオンオフまたは減光させることを特徴とするランプシステム。
【請求項8】
請求項1に記載のランプシステムであって、前記制御部は、前記路面が濡れている場合に、前記ランプユニットから前記反射領域への光の投影を消灯または減光させることを特徴とするランプシステム。
【請求項9】
請求項2に記載のランプシステムであって、前記制御部は、前記対向車の前輪の接地位置のうち、前記対向車の運転者に近い片側の前輪の接地位置から路面上で所定の範囲を、前記反射領域することを特徴とするランプシステム。
【請求項10】
請求項2に記載のランプシステムであって、前記制御部は、前記対向車の2つの前輪の接地位置のそれぞれの前記反射領域に加えて、前記反射領域の間の領域についても、前記光の投影を消灯または減光させることを特徴とするランプシステム。
【請求項11】
光を所定の範囲に投影するランプユニットと、前記ランプユニットの光の投影範囲を所定の単位でオンオフまたは減光させるドライバとを有するランプの制御方法であって、
前記ランプユニットから投影された光が、路面で正反射および拡散反射されて、対向車または先行車の運転者に到達する路面上の反射領域を求めるステップと、
前記ランプユニットから前記反射領域への光の投影を消灯または減光させるよう前記ドライバを制御するステップと
を有することを特徴とするランプ制御方法。
【請求項12】
コンピュータに、
ランプユニットから投影された光が、路面で正反射および拡散反射されて、対向車または先行車の運転者に到達する路面上の反射領域を求めるステップと、
前記ランプユニットから前記反射領域への光の投影を消灯または減光させるよう前記ランプユニットのドライバを制御するステップと
を実行させるランプ制御プログラム。
【請求項13】
請求項1ないし10のいずれか1項に記載のランプシステムを搭載した車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のランプシステムに関し、特にヘッドランプシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、対向車の位置を検出し、自車両のヘッドライトの光が対向車の運転者に対して照射されないように、ヘッドライトを部分的に消灯するADB(Adaptive Driving Beam)技術が用いられている。これにより、対向車の運転者が眩惑されるのを防止することができる。
【0003】
また、特許文献1には、対向車へ直接照射される光を消灯するだけでなく、雨や雪等で路面が鏡面状態の際の路面で正反射される光が対向車へ照射されないようにする技術が開示されている。具体的には、路面が雨や雪等で鏡面状態か否かを判定し、鏡面状態の場合には、路面の自車両と対向車を結ぶ直線上に複数の高輝点があるかどうかを検出し、複数の高輝点がある場合、路面で正反射した光が対向車に到達するため、路面の反射領域へ光を照射しないように消灯する。これにより、雨や雪等で路面が鏡面になっている場合の対向車の運転者のグレア感を抑制することができるため、対向車に直接照射される領域だけを消灯する場合に比べて、よりグレア感を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
雨や雪等で路面が鏡面になっている場合には、特許文献1の技術により、対向車のグレア感を抑制することはできるが、実際の環境では、雨や雪により路面が鏡面になることは稀である。例えば、降雨量が少ないときには、路面自体の凹凸や、路面で降雨の水が跳ね返ることにより、路面が平坦ではなくなり、荒れた状態になるため、自車両のヘッドライトから照射された光は、路面の凹凸で拡散反射される。そのため、路面で正反射された場合に対向車に到達する領域のみならず、その周辺の領域で拡散反射された光も、対向車に到達し、対向車の運転者を眩惑するという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、ヘッドライトからの光が、路面で拡散反射されて、対向車に到達するのを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明によれば、光を所定の範囲に投影するランプユニットと、ランプユニットの光の投影範囲を所定の単位でオンオフまたは減光させるドライバと、ドライバを制御する制御部とを有するランプシステムが提供される。制御部は、ランプユニットから投影された光が、路面で正反射および拡散反射されて、対向車または先行車の運転者に到達する路面上の反射領域を求め、ランプユニットから反射領域への光の投影を消灯または減光させるようドライバを制御する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ヘッドライトからの光が、路面で拡散反射されて、対向車に到達するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態1のランプシステム100および車両200のブロック図。
【
図2】(a)実施形態1のランプシステム100の縦横にマトリクス状に配列されたLED13を示す図、(b)マトリクス状に配列されたLED13に設定されたエリア130a,130bを示す図。
【
図3】実施形態1のランプシステム100の動作を示すフローチャート。
【
図4】(a)実施形態1のランプシステム100の消灯・減光された光と、対向車2との位置関係を示す図、(b)対向車2から見た反射領域3を示す図。
【
図5】(a)少ない降雨量の際に路面で生じる正反射と拡散反射を説明する図、(b)対向車のフロントガラスに到達する正反射光と拡散反射光が反射される反射領域3を説明する図、(c)対向車のタイヤの接地位置18と反射領域3との位置関係を示す図。
【
図6】(a)比較例として、対向車のフロントガラスに到達する正反射光の反射領域4を示す図、(b)比較例の正反射光の反射領域4を消灯した状態を示す図。
【
図7】実施形態2のランプシステム100の動作を示すフローチャート。
【
図8】(a)実施形態3のランプシステム100において、マトリクス状に配列されたLED13の消灯・減光領域を説明する図、(b)左側ヘッドランプ10の配光パターンを示す図、(b)右側ヘッドランプ20の配光パターンを示す図。
【
図9】実施形態4のランプシステム100において、マトリクス状に配列されたLED13の消灯・減光領域を説明する図。
【
図10】(a)実施形態5のランプシステム100において、マトリクス状に配列されたLED13の消灯・減光領域を説明する図、(b)左側ヘッドランプ10の配光パターンを示す図、(b)右側ヘッドランプ20の配光パターンを示す図。
【
図11】実施形態7のランプシステムのMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラーを用いる配光システムの蛍光体の形状を示す説明図。
【
図12】実施形態8のランプシステムのLCD(Liquid Crystal Display)ヘッドライトシステムの液晶素子を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態について図面を用いて以下に説明する。
【0011】
<<<実施形態1>>>
実施形態1のランプシステム100について説明する。
【0012】
ランプシステム100は、ヘッドランプシステムである。ランプシステム100は、
図1にその構成を示したように、左側ヘッドランプ10および右側ヘッドランプ20と、それらを制御するランプECU(エンジンコントロールユニット: engine control unit)30とを備えている。
【0013】
左側ヘッドランプ10は、光を所定の範囲に投影するヘッドランプユニット11と、ヘッドランプユニット11内の複数のLED(発光素子)13を個別に制御し、ランプユニット11の光の投影範囲を所定の単位でオンオフまたは減光させるLEDドライバ12を含む。同様に、右側ヘッドランプ20は、ヘッドランプユニット21と、ヘッドランプユニット21内の複数のLED13を個別に制御するLEDドライバ22を含む。
【0014】
図2(a)に示したように、左側ヘッドランプ10のLED13は、縦横にマトリクス状に配列され、マトリクス状のLED13から照射される光が、不図示の光学レンズにより車両の前方に投影される。マトリクス状のLED13には、水平方向に予め定めた形状のカットオフライン14が設定され、カットオフライン14よりも上方のLED13aがハイビームを投影する。カットオフライン14よりも下方のLED13bがロービームを投影する。
【0015】
LEDドライバ12は、ロービームのLED13b、ハイビームのLED13aともに、所定のエリアごとにオンオフまたは減光可能である。オンオフまたは減光可能な領域の大きさは、個々のLED13ごとであってもよいし、
図2(b)に示すように、複数のLED13で構成された定めたエリア単位であってもよい。
【0016】
本実施形態では、
図2(b)のように、ロービーム用のマトリクス状のLED13bには、1列に縦に並んだ複数のLED13bを含むエリア130bが、列ごとに設定され、LEDドライバ12は、列ごとにLED13bをオンオフ可能な構成である。また、ロービームのLED13bとして、縦長のLEDを用い、一つのエリア130bを一つのLED13bにより構成してもよい。
【0017】
ハイビーム用のマトリクス状のLED13aには、複数列のLED13aを含むエリア130aが、複数設定され、LEDドライバ12は、複数列の単位でLED13aをオンオフ可能な構成である。
【0018】
左側ヘッドランプ10のLED23も、左側ヘッドランプ10のLED13と同様の構成である。LEDドライバ22は、LEDドライバ12と同様の構成である。
【0019】
ランプECU30は、ランプユニットから投影された光が、路面で正反射および拡散反射されて、対向車の運転者に到達する路面上の反射領域3を求め、ランプユニット11,21から反射領域3への光の投影を消灯または減光させるようLEDドライバ12,22を制御する。
【0020】
具体的には、ランプECU30は、車両200の各種センサ、車載カメラ、ワイパースイッチ、雨滴認識装置等を含むセンサ40に接続されており、センサ40の出力を受け取る。ランプECU30は、受け取ったセンサ40の出力に基づいて、LEDドライバ12,22を制御する。すなわち、車載カメラ等で検出された対向車の位置情報をもとに、対向車の運転者に眩惑を与えないように、LED13a、13bをエリア130a,130bの単位で消灯または減光し、アダプティブドライビングビーム(ADB)への付加機能を実現する。
【0021】
なお、ヘッドランプユニット11,21は、ロービームおよびハイビームの投影領域を部分的に消灯・減光可能な構成であればよく、上述のように、マトリクス状に配置されたLED13を備える構成に限定されるものではない。横方向にのみ配置されたLEDを点消灯し、レンズで縦方向に拡大して投影するLEDセグメント方式ADBシステム、LEDを光源として液晶素子によりエリアごとに光の通過をON/OFFして配光を形成するLCD(Liquid Crystal Display)ヘッドランプシステムや、レーザー光源の光をMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラーによりスキャニングしながら光学レンズにより投影し配光形成するシステム、多数の微小鏡面(マイクロミラー)を可動させるDMD(Digital Micromirror Device)を使ってLEDを光源の光を投影し配光形成するシステム、などを用いることが可能である。
【0022】
以下、ランプECU30が左側ヘッドランプ10および右側ヘッドランプ20を制御する処理について
図3のフローを用いて説明する。
【0023】
なお、ランプECU30は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサーと、メモリとを備えたコンピュータ等によって構成され、プロセッサーが、メモリに格納されたプログラムを読み込んで実行することにより、ランプECU30の機能を実現する。なお、ランプECU30の一部または全部をハードウエアにより構成することもできる。例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)のようなカスタムICや、FPGA(Field-Programmable Gate Array)のようなプログラマブルICを用いて、ランプECU30の機能を実現するように回路設計を行えばよい。
【0024】
(ステップ101)
まず、ランプECU30は、車両200のセンサ40のうち車載カメラから画像を取り込む。
【0025】
(ステップ102)
ランプECU30は、ステップ101で取り込んだ画像の輝度が所定値以下である場合、夜間であると判断する。なお、ランプECU30は、時刻から夜間であるかどうかを判断してもよい。
【0026】
(ステップ103)
ランプECU30は、ステップ102で夜間であると判断した場合、LEDドライバ12、22に前照灯スイッチオンを指示する。
【0027】
(ステップ104)
LEDドライバ12、22は、ヘッドランプユニット11,21のすべてのLED13に電力を供給し、ハイビームのLED13aとロービームのLED13bを点灯させる。
【0028】
(ステップ105)
ランプECU30は、車載カメラから画像を取り込んで画像処理し、画像に対向車2が含まれているかどうか、すなわち、対向車2が存在するかどうかを判定する。
(ステップ106)
対向車2が存在する場合、ランプECU30は、車載カメラから画像を取り込んだ画像を処理し、対向車2のヘッドランプ(前照灯)16の位置を検出する。
【0029】
(ステップ107)
対向車2のヘッドランプ16の位置から予め定めた距離だけ上方の所定の範囲がフロントガラスの範囲17であるので、ランプECU30は、フロントガラスの範囲17を消灯または減光させるように、LEDドライバ12、22に指示する。LEDドライバ12,22は、フロントガラスの範囲17が含まれるエリア130aのLED13aを消灯または減光させる(
図4(a)、(b)参照)。これにより、自車両1のハイビームの光が対向車2のフロントガラスの範囲17に直接照射されるのを防ぎ、対向車2の運転者に眩惑を与えないようにすることができる。
【0030】
(ステップ108)
つぎに、ランプECU30は、センサ40のうちワイパースイッチのオンかオフかの出力、および/または、フロントガラスに雨滴があるかどうかを認識する雨滴認識装置の出力を受け取る。ランプECU30は、ワイパースイッチがオン、または、雨滴認識装置からフロントガラスに雨滴がある場合、路面がぬれていると判定する。路面が濡れていない場合、ステップ105に戻る。
【0031】
(ステップ109)
ランプECU30は、ステップ108で路面が濡れていると判定した場合、ランプECU30は、車載カメラから画像を取り込んで画像処理し、対向車2のヘッドランプ(前照灯)16の位置を検出する。
【0032】
(ステップ110)
ランプECU30は、ステップ109で検出した2つのヘッドランプ(前照灯)間の距離から車両サイズを算出し、予め定めておいた数式等を用いて車両サイズから対向車2のタイヤ(前輪)の接地位置18を算出する。
【0033】
(ステップ111)
ランプECU30は、ステップ110で算出したタイヤ接地位置に対応するLED13bから下方の1列のエリア130bのLED13bをすべて消灯または減光させるようにLEDドライバ12、22に指示する。これにより、LEDドライバ12,22は、
図2(a),(b)のようにタイヤ接地位置18に対応するLED13より下方のエリア130bの1列のLED13bを消灯または減光させる(
図4(a))。
【0034】
降雨量が少ない雨の場合、
図5(a)のように、自車両1から路面に照射された光は、路面で正反射されるだけでなく、路面の凹凸により拡散反射される。そのため、自車両1から路面に照射された光が、正反射および拡散反射により対向車2のフロントガラスに到達する路面の反射領域3は、
図6(a)に示すように、正反射のみの場合の反射領域4よりも長く、路面に尾を引いたような領域となる。そのため、正反射のみの反射領域4に対応するLED13bを消灯した場合には、
図6(b)のように、正反射および拡散反射を含む反射領域3の一部のみしか消灯できない。これに対し、本実施形態では、タイヤ接地位置18に対応するLED13より下方のエリア130bの1列のLED13bを消灯させることにより、正反射および拡散反射を含む反射領域3に光を照射しないようにすることができるため、対向車2の運転者からは、
図4(a)、(b)のように、路面からの正反射光も拡散反射光も見えず、全体的に消灯したように見えるため、眩惑が生じない。
【0035】
(ステップ112)
ランプECU30は、再び車載カメラから画像を取り込んで画像処理することにより、対向車が存在するかどうか判定し、対向車が存在する場合、ステップ108に戻ってステップ108~111を繰り返す。これにより、自車両1に近づいてくる対向車2のヘッドライトを検出して、タイヤ接地位置18に対応するLED13より下方のエリア130bの1列のLED13bを消灯させる。よって、接近してくる対向車2の大きさや位置の変化に合わせて、正反射および拡散反射を含む反射領域3に光を照射しないようにすることができ、対向車2の運転者を、路面の正反射光および拡散反射光で眩惑させないようにすることができる。
【0036】
ランプECU30は、対向車が存在しない(すれ違った)と判定した場合には、ステップ113に進む。
【0037】
(ステップ113)
ランプECU30は、まだ夜間であるかどうかステップ102と同様に判定し、まだ夜間である場合は、ステップ105に戻って、ステップ105~112を繰り返す。夜間ではなくなった(夜が明けた)場合、ステップ114に進む。
【0038】
(ステップ114)
ランプECU30は、ヘッドライトを消灯するようにLEDドライバ12,22に指示する。LEDドライバ12,13は、ランプユニット11,12の全体を消灯する。
【0039】
このように、実施形態1によれば、降雨時に、対向車2のタイヤ接地位置18よりも自車両1寄りのライン状の反射領域3に光を照射しないようにすることができる。これにより、正反射光のみならず、路面の凹凸により拡散反射された光が対向車2の運転者に到達するのを防ぐことができるため、対向車2の運転者を眩惑させない。
【0040】
<<<実施形態2>>>
実施形態2のランプシステム100について説明する。
【0041】
実施形態2のランプシステム100は、対向車2のヘッドランプが照射された路面の高輝度反射領域を自車両1の車載カメラにより検出することにより、正反射および拡散反射による反射領域3を検出する。反射領域3に対応するLED13をランプECU30の命令により消灯する。他の構成及び処理は、実施形態1と同様であるので、実施形態1と異なる処理のみ
図7のフローを用いて説明する。
【0042】
(ステップ101~108)
ステップ101~108は、実施形態1の
図3のフローのステップ101~108と同じであり、ランプECU30は、夜間に前照灯を点灯し、対向車のフロントガラスに直接入射する光を出射するLED13aのエリア130aを消灯する。また、ランプECU30は、路面が濡れているかどうか判定し、濡れている場合には、ステップ209に進む。
【0043】
(ステップ209)
ランプECU30は、車載カメラの画像を時系列に取り込み、画像処理することにより、対向車2の移動に追従する輝点を抽出する。
【0044】
(ステップ210)
ランプECU30は、ステップ209により抽出した輝点の範囲を正反射および拡散反射による反射領域3と推定する。
【0045】
なお、ステップ209において、対向車2の移動に追従する輝点を抽出することにより、街灯など光が路面反射することにより生じた輝点を排除し、対向車2のヘッドライトの光が路面で正反射および拡散反射される反射領域3を抽出することができる。
【0046】
(ステップ211)
ランプECU30は、ステップ210で推定した反射領域3に対応するエリア130bのLED13bを消灯させるようにLEDドライバ12,22に指示する。LEDドライバ12,13は、ランプユニット11,12のエリア130bのLED13bを消灯させる。
【0047】
なお、エリア130bが個々のLED13bごとに設定されている場合には、反射領域3に対応するLED13bを消灯させる。この場合、消灯個所を直接ランプECU30からLEDドライバ12,22に指示しても良いし、LEDドライバ12,22がランプECU30から作動指示を受けて、反射領域3に対応するLED13bを演算処理により割り出し、消灯しても良い。
【0048】
このように、ステップ211では、正反射および拡散反射を含む反射領域3に光を照射しないようにすることができるため、対向車2の運転者からは、路面からの正反射光も拡散反射光も見えず、全体的に消灯したように見えるため、眩惑が生じない。
【0049】
(ステップ112~114)
ステップ112~114は、実施形態1と同様の処理であるので、説明を省略する。
【0050】
上述したように、実施形態2では、対向車2の反射光の輝度が高い輝度点を車載カメラで検出することで、自車両1のヘッドライトの照射光が路面に反射して対向車にとってグレアとなる反射領域3を求めている。自車両1と対向車2は、立場が異なるが路面状況がほぼ均質であると見なせるため、対向車2の照射した光の高輝度点を検出することで、自車両1の反射領域3を推定できる。
【0051】
<<<実施形態3>>>
実施形態3のランプシステムについて説明する。
【0052】
実施形態1では、対向車2の2つのタイヤ(前輪)の接地位置18に基づいて、反射領域3に対応する2つのエリア130bを消灯していたが、実施形態3では、運転者に近い片側のみを消灯する。
【0053】
具体的には、
図8(a)のように、実施形態3では、対向車2および自車両1が右ハンドルである場合、対向車2の運転者に反射光が届いて眩惑される対向車2の右側のタイヤ(前輪)の接地位置18の下方の反射領域3に対応する一つのエリア130bを消灯する。実施形態3は、日本のように左側通行の国の場合、右ハンドルの車両が多いため対向車2の右側タイヤ(前輪)の下方のエリア130bを消灯するのがグレア防止に有効だが、欧米のように右側通行の国の場合、左ハンドルの車両が多くなるために、対向車2の左側タイヤ(前輪)の下方のエリア130bを消灯するように制御を切り替えた方が、対向車2の運転手のグレア防止には有効となる。もしくは、対向車の中央車線寄りのタイヤの下方のエリア130bを消灯するように制御すれば、左側通行または右側通行に限らず、概ね運転手にグレア光を与えないようにすることができる。
【0054】
これにより、消灯され、ヘッドライトが照射されない領域が、実施形態1よりも小さくなるため、自車両1の運転者は車両手前の道路状況を視認できるようになり運転しやすくなる。
【0055】
なお、
図8(b)は、左側ヘッドランプ10の配光パターンであり、
図8(c)は、右側ヘッドランプ20の配光パターンである。
図8(b)の配光パターンと
図8(c)の配光パターンの照射領域は、重なり合っているので、
図8(a)の配光パターンが得られる。しかし、実際には、左右それぞれのランプの位置の違いによる影響で、対象に対する配光パターンは完全に一致せず、その分角度が左右方向で異なる。その場合、車両正面方向に対して、左右それぞれのランプ位置から対向車の位置をそれぞれ正しく特定し、両者を重ね合わせるようにすれば、
図8(a)の配光パターンと同様のものが得られる。
【0056】
<<<実施形態4>>>
実施形態4のランプシステムについて
図9を用いて説明する。
【0057】
実施形態1では、対向車2の2つのタイヤ(前輪)の接地位置18に基づいて、反射領域3に対応する2つのエリア130bを消灯していたが、実施形態4では
図9のように2つのエリア130bの間のエリア130bも含めて消灯する。
図9の例では、3つのエリア130bを消灯している。
【0058】
これにより、対向車2の運転者の顔の位置がずれた場合や、フロントガラスから入ってくるグレア光がほぼなくなるため、対向車2の搭乗者全員に対して、眩惑を防止できる。
<<<実施形態5>>>
実施形態5のランプシステムについて
図10を用いて説明する。
【0059】
実施形態5において、消灯するエリアは、実施形態1と同様である。
【0060】
ただし、
図10(b)に示した左側ヘッドランプ10の配光パターンと、
図10(c)に示した右側ヘッドランプ20の配光パターンは、中央寄りの領域のみが重なり合うように投影され、
図10(a)のように左右方向に広範囲にヘッドライトを照射する構成である。
【0061】
このため、
図10(b)のように左側ヘッドランプでは消灯位置は右寄りになり、
図10(c)の右側ヘッドランプでは消灯位置は左寄りになる。
【0062】
このように、左右のヘッドライトの配光パターンを一部のみが重なり合わせて、全体の配光パターンを生成する場合でも、消灯位置を対向車の位置に従って左右のヘッドライトでそれぞれ調整することにより、実施例1と同様なグレア対策を実施することができる。
【0063】
<<<実施形態6>>>
実施形態1~5では、対向車2の運転者を眩惑させない構成について説明したが、先行車に対しても、適用することができる。
【0064】
具体的には、ランプECU30は、実施形態1のように、車載カメラの画像から先行車のリアランプを検知し、先行車のタイヤ(後輪)の接地位置を算出し、実施形態1と同様に、エリア130bを消灯する。
【0065】
もしくは、ランプECU30は、実施形態2のように、リアランプの路面への映り込み領域を、車載カメラなど画像の輝度点をもとに推定し、対応するエリア130bを消灯する。
【0066】
このように、実施形態6の構成は、先行車の運転者がルームミラー越しに見る後方路面において、後続車のヘッドランプの光が、正反射および拡散反射して先行車の運転者を眩惑するのを防ぐことができる。
【0067】
<<<実施形態7>>>
実施形態7のランプシステムについて
図11を用いて説明する。
【0068】
実施形態7のランプシステムは、実施形態1~6のマトリクス状のLED13に替えて、レーザー光源からの光をMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラーによりスキャニングしながら蛍光体に照射し、蛍光体が発した蛍光を光学レンズにより投影し、配光形成するシステムを用いる。他の構成は、実施形態1~6と同様である。
【0069】
図11に、レーザー光源からの光をMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラーによりスキャニングしながら光学レンズにより投影し配光形成するシステムで使う矩形の板状または層状の蛍光体を示す。
図11の蛍光体は、実施形態1~6のマトリックス状の発光素子(LED13)と違い、発光素子毎のような区画分けされていない一様な板状または層状の蛍光体であるため、レーザー光が照射されれば途切れなく発光するため、シームレスな路面描画が可能になる。
【0070】
実施形態7のランプシステムにおいて、消灯・減光する領域は、実施形態1~6と同様である。本実施形態のMEMSミラーを用いる配光システムの場合、反射領域3およびフロントガラスの範囲17の領域は、レーザー光源をオフまたは減光する。これにより、実施形態1と同様に正反射光のみならず、路面の凹凸により拡散反射された光が対向車2の運転者に到達するのを防ぐことができるため、対向車2の運転者を眩惑させない。
【0071】
本実施形態7のMEMSミラーを用いたランプシステムにより、実施形態2~6の反射領域も再現することは可能である。
【0072】
<<実施形態8>>
実施形態8のランプシステムについて
図12を用いて説明する。
【0073】
実施形態8のランプシステムは、実施形態1~6のマトリクス状のLED13に替えて、LEDを光源として、液晶素子によりエリアごとに光の通過をON/OFFして配光を形成するLCDヘッドランプシステムを用いる。他の構成は、実施形態1~6と同様である。
【0074】
図12に、LEDを光源として、液晶素子によりエリアごとに光の通過をON/OFFして配光を形成するLCDヘッドランプシステムにおける液晶素子を示す。実施形態1のマトリックス状の発光素子と同様に液晶素子を分割している。
【0075】
実施形態8のランプシステムにおいて、消灯・減光する領域は、実施形態1~6と同様である。本実施形態のLCDヘッドランプの場合、反射領域3およびフロントガラスの範囲17の領域は液晶をオフまたは液晶素子への印加電圧を下げることで減光する。これにより、実施形態1と同様に正反射光のみならず、路面の凹凸により拡散反射された光が対向車2の運転者に到達するのを防ぐことができるため、対向車2の運転者を眩惑させない。
【0076】
本実施形態7のLCDヘッドランプシステムにより、実施形態2~6の反射領域も再現することは可能である。
【0077】
<<<製品への適用>>>
本実施形態のランプシステムは、自動車用ヘッドランプに用いることができる。
【符号の説明】
【0078】
1 自車両
2 対向車
3 反射領域
4 反射領域
10 左側ヘッドランプ
11 ランプユニット
12 LEDドライバ
14 カットオフライン
16 ヘッドランプ
17 範囲
18 タイヤ接地位置
20 右側ヘッドランプ
21 ヘッドランプユニット
22 LEDドライバ
30 ランプECU
40 センサ
100 ランプシステム
130a エリア
130b エリア
200 車両