(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134273
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、及び情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20120101AFI20230920BHJP
H02S 50/10 20140101ALI20230920BHJP
G06Q 10/04 20230101ALI20230920BHJP
【FI】
G06Q50/06
H02S50/10
G06Q10/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022039721
(22)【出願日】2022-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 凌輔
(72)【発明者】
【氏名】稲冨 裕司
(72)【発明者】
【氏名】塩田 剛史
【テーマコード(参考)】
5F151
5F251
5L049
【Fターム(参考)】
5F151KA02
5F251KA02
5L049AA04
5L049CC06
(57)【要約】
【課題】期待発電量の総和を算出する期間が長くなるほど、期待発電量の総和の算出精度が低くなるのを抑制することができる。
【解決手段】情報処理装置は、太陽光を受けて電気を発電する太陽光発電機器が設置された複数の発電所における過去の日射量に関する日射量データを各々取得する日射量データ取得部と、前記複数の発電所の各々について、前記日射量データに基づいて、前記太陽光発電機器の期待発電量を算出する期待発電量算出部と、前記複数の発電所の各々について算出した期待発電量の偏差を算出する偏差算出部と、前記複数の発電所の各々について算出した前記期待発電量及び偏差に基づいて、前記複数の発電所の期待発電量の総和を算出する総和算出部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光を受けて電気を発電する太陽光発電機器が設置された複数の発電所における過去の日射量に関する日射量データを各々取得する日射量データ取得部と、
前記複数の発電所の各々について、前記日射量データに基づいて、前記太陽光発電機器の期待発電量を算出する期待発電量算出部と、
前記複数の発電所の各々について算出した期待発電量の偏差を算出する偏差算出部と、
前記複数の発電所の各々について算出した前記期待発電量及び偏差に基づいて、前記複数の発電所の期待発電量の総和を算出する総和算出部と、
を備えた情報処理装置。
【請求項2】
前記偏差算出部は、前記複数の発電所の太陽光発電機器の発電容量を重みとして、前記複数の発電所の期待発電量の加重平均を算出し、算出した加重平均に基づいて前記偏差を算出する
請求項1記載の情報処理装置。
【請求項3】
コンピュータが、
太陽光を受けて電気を発電する太陽光発電機器が設置された複数の発電所における過去の日射量に関する日射量データを各々取得し、
前記複数の発電所の各々について、前記日射量データに基づいて、前記太陽光発電機器の期待発電量を算出し、
前記複数の発電所の各々について算出した期待発電量の偏差を算出し、
前記複数の発電所の各々について算出した前記期待発電量及び偏差に基づいて、前記複数の発電所の期待発電量の総和を算出する
処理を実行する情報処理方法。
【請求項4】
コンピュータに、
太陽光を受けて電気を発電する太陽光発電機器が設置された複数の発電所における過去の日射量に関する日射量データを各々取得し、
前記複数の発電所の各々について、前記日射量データに基づいて、前記太陽光発電機器の期待発電量を算出し、
前記複数の発電所の各々について算出した期待発電量の偏差を算出し、
前記複数の発電所の各々について算出した前記期待発電量及び偏差に基づいて、前記複数の発電所の期待発電量の総和を算出する
処理を実行させる情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法、及び情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電機器の設置を検討する場合、太陽光発電機器が設置される地域における期待発電量を予測することが重要である。
【0003】
例えば特許文献1には、太陽光発電システムの発電量を地域別および天候別に予測する方法であって、大気透過率と直達日射強度と散乱日射強度とから求める全天日射強度と、該全天日射強度と気象台による地域別日最低気温とから求める太陽電池動作温度と、該太陽電池動作温度から求める太陽電池の動作温度発電量と、該動作温度発電量から求める直流発電量と、該直流発電量から求める交流発電量とを用い、発電量を任意の時間間隔毎に予測することを特徴とする太陽光発電システムの発電量予測方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、太陽光発電システム予測装置において太陽光発電システムの発電量を予測する方法であって、日射量予測式導出手段が、太陽光発電システムの設置地域において過去に観測された天気現象と、該地域において過去に計測された日射量とを基に日射量予測式を導出するステップと、日射量予測計算手段が、該地域に対する予測対象日または予測対象時間帯についての天気予報と、予測対象日の予測実施時刻前に該地域において計測された日射量とを前記日射量予測式に入力することにより、該地域における日射量を予測するステップと、発電量予測計算手段が、予測された日射量と、前記地域に対する予測対象日または予測対象時間帯についての気温予報とを、日射量と気温の情報から発電量を計算することが可能な太陽光発電システムモデルに入力することにより、前記太陽光発電システムの発電量を予測するステップとを有する太陽光発電システムの発電量予測方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10-108486号公報
【特許文献2】特開2006-33908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、例えば小規模の複数の発電所に設置された太陽光発電機器の期待発電量の総和に基づいて、複数の発電所をまとめて評価したい場合がある。この場合、過去の日射量のデータを統計処理することによって発電所毎に期待発電量を算出し、これらの単純和を評価に用いる場合がある。
【0007】
月単位等の比較的短い単位で算出した期待発電量の単純和と実際の発電量の実測値の単純和とを比較した場合、その差は比較的小さいが、例えば10年単位等の比較的長い単位で期待発電量の単純和と実際の発電量の実測値の単純和とを比較した場合、その差は比較的大きくなる、という問題があった。すなわち、期待発電量の総和を算出する期間が長くなるほど、期待発電量の総和の算出精度が低くなる場合がある、という問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、期待発電量の総和を算出する期間が長くなるほど、期待発電量の総和の算出精度が低くなるのを抑制することができる情報処理装置、情報処理方法、及び情報処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様の情報処理装置は、太陽光を受けて電気を発電する太陽光発電機器が設置された複数の発電所における過去の日射量に関する日射量データを各々取得する日射量データ取得部と、前記複数の発電所の各々について、前記日射量データに基づいて、前記太陽光発電機器の期待発電量を算出する期待発電量算出部と、前記複数の発電所の各々について算出した期待発電量の偏差を算出する偏差算出部と、前記複数の発電所の各々について算出した前記期待発電量及び偏差に基づいて、前記複数の発電所の期待発電量の総和を算出する総和算出部と、を備える。
【0010】
第2の態様の情報処理装置は、第1の態様の情報処理装置であって、前記複数の発電所の太陽光発電機器の発電容量を重みとして、前記複数の発電所の期待発電量の加重平均を算出し、算出した加重平均に基づいて前記偏差を算出する。
【0011】
第3の態様の情報処理方法は、コンピュータが、太陽光を受けて電気を発電する太陽光発電機器が設置された複数の発電所における過去の日射量に関する日射量データを各々取得し、前記複数の発電所の各々について、前記日射量データに基づいて、前記太陽光発電機器の期待発電量を算出し、前記複数の発電所の各々について算出した期待発電量の偏差を算出し、前記複数の発電所の各々について算出した前記期待発電量及び偏差に基づいて、前記複数の発電所の期待発電量の総和を算出する。
【0012】
第4の態様の情報処理プログラムは、コンピュータに、太陽光を受けて電気を発電する太陽光発電機器が設置された複数の発電所における過去の日射量に関する日射量データを各々取得し、前記複数の発電所の各々について、前記日射量データに基づいて、前記太陽光発電機器の期待発電量を算出し、前記複数の発電所の各々について算出した期待発電量の偏差を算出し、前記複数の発電所の各々について算出した前記期待発電量及び偏差に基づいて、前記複数の発電所の期待発電量の総和を算出する処理を実行させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、期待発電量の総和を算出する期間が長くなるほど、期待発電量の総和の算出精度が低くなるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態に係る情報処理システムの概略構成を示す図である。
【
図2】本実施形態に係る情報処理装置及び発電所端末のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図3】本実施形態に係る情報処理装置の記憶部の構成を示すブロック図である。
【
図4】本実施形態に係る情報処理装置の機能構成の例を示すブロック図である。
【
図5】本実施形態に係る情報処理装置により行われる期待発電量の総和算出処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】複数の発電所の発電量の総和の実測値、偏差加重平均を用いて算出した期待発電量の総和、単純偏差を用いて算出した期待発電量の総和、単純和を用いて算出した期待発電量の総和についての月別適合率及び10年間の期待発電量の総和を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本実施形態に係る情報処理システム10について説明する。
【0016】
本実施形態に係る情報処理システム10は、複数の発電所に設置された太陽光発電機器の期待発電量の総和を算出するためのシステムである。
【0017】
本実施形態では、太陽光発電機器は、低圧連系の発電設備であるがこれに限定されない。つまり、太陽光発電機器は、発電所の設備容量が50kW未満である低圧連系の発電設備であってもよいし、発電所の設備容量が50kW以上である高圧連系の発電設備であってもよい。
【0018】
図1は、情報処理システム10の概略構成を示す図である。
【0019】
図1に示すように、情報処理システム10は、情報処理装置20及び複数の発電所端末30を含む。各発電所端末30には、太陽光発電機器40が接続されている。複数の発電所端末30及び太陽光発電機器40は、互いに異なる地域に設置される。
【0020】
情報処理装置20及び複数の発電所端末30は、ネットワークNを介して接続され、互いに通信可能となっている。
【0021】
情報処理装置20は、所定の事業者が保有するサーバコンピュータである。情報処理装置20は、太陽光を受けて電気を発電する太陽光発電機器40が設置された複数の発電所における過去の日射量に関する日射量データを各々取得し、複数の発電所の各々について、日射量データに基づいて、太陽光発電機器40が発電する期待発電量を算出し、複数の発電所の各々について算出した期待発電量の偏差を算出し、複数の発電所の各々について算出した期待発電量及び偏差に基づいて、複数の発電所の期待発電量の総和を算出する。
【0022】
発電所端末30は、太陽光発電機器40が設置された発電所が保有する端末である。発電所端末30は、太陽光発電機器40が設置された場所の過去の日射量データを情報処理装置20に送信する。
【0023】
次に、情報処理装置20及び発電所端末30のハードウェア構成を説明する。
図2は、情報処理装置20及び発電所端末30のハードウェア構成を示すブロック図である。なお、情報処理装置20及び発電所端末30は、基本的には一般的なコンピュータ構成であるため、情報処理装置20を代表して説明する。
【0024】
図2に示すように、情報処理装置20は、CPU21(Central Processing Unit)、ROM22(Read Only Memory)、RAM23(Random Access Memory)、記憶部24、入力部25、表示部26、及び通信部27を備えている。各構成は、バス28を介して相互に通信可能に接続されている。
【0025】
CPU21は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU21は、ROM22又は記憶部24からプログラムを読み出し、RAM23を作業領域としてプログラムを実行する。CPU21は、ROM22又は記憶部24に記録されているプログラムにしたがって、上記各構成の制御及び各種の演算処理を行う。
【0026】
ROM22は、各種プログラム及び各種データを格納する。RAM23は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。
【0027】
記憶部24は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)又はフラッシュメモリ等の記憶装置により構成され、各種プログラム、及び各種データを格納する。
【0028】
入力部25は、マウス等のポインティングデバイス、キーボード、マイク、及びカメラ等を含み、各種の入力を行うために使用される。
【0029】
表示部26は、例えば、液晶ディスプレイであり、種々の情報を表示する。表示部26は、タッチパネル方式を採用して、入力部25として機能してもよい。
【0030】
通信部27は、他の機器と通信するためのインターフェースである。当該通信には、例えば、イーサネット(登録商標)若しくはFDDI等の有線通信の規格、又は、4G、5G、若しくはWi-Fi(登録商標)等の無線通信の規格が用いられる。
【0031】
図3は、情報処理装置20の記憶部24の構成を示すブロック図である。
【0032】
図3に示すように、記憶部24には、情報処理装置20のCPU21を後述する
図4に示す機能構成として機能させるための情報処理プログラム24Aが格納されている。当該情報処理プログラム24Aを実行する際に、情報処理装置20は、
図2に示すハードウェア資源を用いて、当該情報処理プログラム24Aに基づく処理を実行する。
【0033】
次に、情報処理装置20の機能構成について説明する。
【0034】
図4は、情報処理装置20の機能構成の例を示すブロック図である。
【0035】
図4に示すように、情報処理装置20のCPU21は、機能構成として、日射量データ取得部21A、期待発電量算出部21B、偏差算出部21C、及び総和算出部21Dを有する。各機能構成は、CPU21が記憶部24に記憶された情報処理プログラム24Aを読み出し、実行することにより実現される。
【0036】
日射量データ取得部21Aは、太陽光を受けて電気を発電する太陽光発電機器40が設置された複数の発電所における過去の日射量に関する日射量データを各々取得する。すなわち、各発電所の発電所端末30に過去の日射量データを送信するよう要求する。各発電所端末30は、情報処理装置20からの要求に応じて、太陽光発電機器40が設置された場所の過去の日射量データ、例えば過去10年以上の日射量データを情報処理装置20に送信する。過去の日射量データは、例えば発電所の最寄りの気象庁観測所のデータベースにアクセスして取得するようにしてもよい。
【0037】
期待発電量算出部21Bは、複数の発電所の各々について、日射量データに基づいて、太陽光発電機器が発電する期待発電量を算出する。具体的には、例えば1月~12月までの月毎の期待発電量を算出する。
【0038】
偏差算出部21Cは、複数の発電所の各々について算出した期待発電量の偏差を算出する。例えば、複数の発電所の各々について算出した月毎の期待発電量の平均値を算出し、算出した月毎の期待発電量の平均値と、複数の発電所の各々について算出した期待発電量の各々との差を、発電所毎の偏差(単純偏差)として算出する。なお、複数の発電所の各々について算出した1月~12月までの月毎の期待発電量の総和、すなわち1年の期待発電量を算出し、算出した1年の期待発電量の偏差を発電所毎に算出してもよい。
【0039】
また、偏差算出部21Cは、複数の発電所の太陽光発電機器40の発電容量を重みとして、複数の発電所の期待発電量の加重平均を算出し、算出した加重平均に基づいて偏差(加重平均偏差)を算出するようにしてもよい。
【0040】
総和算出部21Dは、複数の発電所の各々について算出した期待発電量及び偏差に基づいて、複数の発電所の期待発電量の総和を算出する。例えば、予め定めた超過確率、例えば99%(P99)、95%(P95)、90%(P90)、85%(P85)、75%(P75)、50%(P50)等の超過確率における期待発電量の総和を算出する。
【0041】
ここで、超過確率とは、実際の発電量が一定の発電量(日射量)以上となる確率をいう。例えばP90は、90%の確率で期待発電量以上の発電量(日射量)となることを表す。従って、P90の期待発電量は、P50の期待発電量と比較して低い値となる。
【0042】
なお、予め定めた超過確率における期待発電量の総和の算出方法は、公知の手法を用いることができる。
【0043】
図5は、情報処理装置20により行われる情報処理としての期待発電量の総和算出処理の流れを示すフローチャートである。CPU21が記憶部24から情報処理プログラム24Aを読み出して、RAM23に展開して実行することにより、期待発電量の総和算出処理が行われる。
【0044】
図5に示すステップS100では、CPU21は、太陽光発電機器40が設置された複数の発電所における過去の日射量に関する日射量データ、例えば過去10年~30年分の日射量データを各々取得する。日射量は、発電量とほぼ連動するため、日射量データから期待発電量を算出することができる。また、日射量は太陽光発電機器40が設置された地域によって異なる。例えば北海道、関西、九州等のように各地域における日射量は異なるため、各地域に設置された太陽光発電機器40の過去の日射量データを送信するよう各発電所端末30に要求し、取得する。
【0045】
ステップS101では、CPU21は、複数の発電所の各々について、日射量データに基づいて、太陽光発電機器が発電する期待発電量を1月~12月までの月毎に算出する。
【0046】
具体的には、期待発電量をEPとして、例えば下記(1)式により期待発電量EPを算出することができる。
【0047】
EP=PAS×HAS×KT×K×KM×R ・・・(1)
【0048】
ここで、PASは、標準状態における太陽光発電機器40の太陽光パネルの公称最大出力×太陽光パネルの枚数で算出される値である。なお、標準状態とは、太陽光が地上に届くまでに通過する大気の量であるエアマスが1.5、日射強度が1kW/m2、太陽光パネル内の発電素子である電池セルの温度が25度の状態をいう。
【0049】
HASは、傾斜面日射量であり、各発電所から取得した過去の日射量データから得られる。
【0050】
KTは、温度補正係数であり、下記(2)式により算出することができる。
【0051】
KT=1-0.01×T1(t-25) ・・・(2)
【0052】
ここで、T1は太陽光パネルの温度係数である。また、tは太陽光パネルの温度である。
【0053】
Kは、温度補正係数であり、下記(3)式により算出することができる。
【0054】
K=Kst×Ksh ・・・(3)
【0055】
ここで、Kstは、システム損失補正係数である。また、Kshは、影及び積雪損失補正係数である。なお、システム損失補正係数Kstは、太陽光パネルの汚れ、太陽光パネルの経年劣化、PCS(パワーコンディショニングシステム)の直流/交流の変換効率、及びシステムロス(直流回路損失、最大電力点のずれ等)等の複数の損失要因を1つにまとめた係数である。これは、複数の損失要因の各々について係数を個別に設定して乗算すると、期待発電量EPと発電量の実測値との乖離が大きくなってしまうためである。
【0056】
KMは、発電所の出力低下係数である。
【0057】
Rは、発電所の稼働率である。標準の稼働率は一例として0.995である。これは、保守点検及び突発的な事故等により、発電所が1年間(晴天時)に10時間未満の範囲で停止すると仮定した値である。
【0058】
なお、ピークカットを考慮し、上記(1)式により算出された期待発電量EPが、力率を考慮したシステム容量を超える場合は、力率を考慮したシステム容量を期待発電量EPとする。
【0059】
ステップS102では、CPU21は、ステップS101において複数の発電所の各々について算出した期待発電量の偏差(単純偏差)を月毎に算出する。具体的には、発電所の数をn(2≦n)とした場合、n箇所の発電所の太陽光発電機器40における期待発電量EPi(i=1、2、・・・、n)を上記(1)式により算出する。次に、期待発電量EPiの平均値を算出し、算出した平均値と期待発電量EPiとの差を偏差Diとして各々算出する。偏差Diの算出は月毎に行う。なお、年間の期待発電量の総和に基づく偏差を算出し、算出した偏差を各月の偏差Diに適用して良い。年毎に偏差を算出する場合は、年毎の偏差の平均値を各月の偏差Diに適用してもよい。
【0060】
ステップS103では、CPU21は、ステップS101において複数の発電所の各々について算出した月毎の期待発電量EPiと、ステップS102において複数の発電所の各々について算出した月毎の偏差Diと、に基づいて、予め定めた超過確率における複数の発電所の期待発電量の総和を月毎に算出し、記憶部24に記憶する。具体的には、偏差Diに基づいて標準偏差Sを算出する。そして、期待発電量EPi、標準偏差S、及び超過確率Pに基づいて、超過確率Pにおける期待発電量の総和Tを下記(4)式により1~12月の月毎に算出する。CPU21は、算出した月毎の期待発電量の総和Tを記憶部24に記憶する。
【0061】
T=f(EPi、S、P) ・・・(4)
【0062】
ここで、f(EPi、S、P)は、期待発電量EPi、標準偏差S、及び超過確率Pをパラメータとして期待発電量の総和Tを算出するための計算式を表し、公知の計算式を用いることができる。
【0063】
そして、1~12月の月毎に算出した超過確率Pにおける期待発電量の総和を全て加算することにより、1年の期待発電量の総和を算出する。CPU21は、算出した1年の期待発電量の総和を記憶部24に記憶する。
【0064】
このように、本実施形態では、複数の発電所の各々について算出した期待発電量及び偏差に基づいて、複数の発電所の期待発電量の総和を算出する。これにより、単純和により複数の発電所の期待発電量の総和を算出する場合と比較して、期待発電量の総和を算出する期間が長くなるほど、期待発電量の総和の算出精度が低くなるのを抑制することができる。
【0065】
なお、ステップS102において、複数の発電所の太陽光発電機器40の発電容量を重みとして、複数の発電所の期待発電量EPiの加重平均を算出し、算出した加重平均に基づいて偏差(偏差加重平均)を算出するようにしてもよい。具体的には、発電容量が大きいほど重みを大きく設定して、複数の発電所の期待発電量EPiの加重平均を算出する。そして、算出した平均値と期待発電量EPiとの差を偏差Diとして各々算出する。これにより、太陽光発電機器40の発電容量が大きいほど偏差Diも大きくなり、発電容量が考慮された期待発電量の総和が算出される。
【0066】
図6には、北海道、関西、九州の3つの地域の発電所に設置された太陽光発電機器40の2012年~2021年の過去10年間の発電量の総和の実測値(kWh)、本実施形態で説明した偏差加重平均を用いて算出した期待発電量の総和(kWh)、本実施形態で説明した単純偏差を用いて算出した期待発電量の総和(kWh)、偏差を用いずに単純和として算出した期待発電量の総和(kWh)、発電量の総和の実測値と偏差加重平均を用いて算出した期待発電量の総和との月別の適合率、発電量の総和の実測値と単純偏差を用いて算出した期待発電量の総和との月別の適合率、発電量の総和の実測値と単純和を用いて算出した期待発電量の総和との月別の適合率を示した。
【0067】
なお、算出した期待発電量の総和は、何れも超過確率が99%(P99)の期待発電量の総和である。また、偏差加重平均を用いて期待発電量の総和を算出する際の重みは、発電容量に応じて設定され、北海道の発電所については0.463、関西の発電所については0.138、九州の発電所については0.399とした。
【0068】
図6に示すように、月別適合率では、単純和を用いて算出した期待発電量の総和が最も実測値に近いが、10年の期待発電量の総和については、偏差加重平均を用いて算出した期待発電量の総和が最も実測値に近かった。このように、月単位で実測値と期待発電量の総和とを比較すると、単純和の期待発電量の総和が実測値に最も近くなるが、10年という長い期間で実測値と期待発電量の総和とを比較すると、偏差加重平均の期待発電量の総和が実測値に最も近くなった。従って、期待発電量の総和を算出する期間が長くなるほど、期待発電量の総和の算出精度が低くなるのを抑制することができることが判った。
【0069】
なお、上記実施形態でCPU21がソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した情報処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、情報処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0070】
また、上記実施形態では、情報処理プログラム24Aが記憶部24に予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、これに限定されない。情報処理プログラム24Aは、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、情報処理プログラム24Aは、ネットワークNを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【符号の説明】
【0071】
10 情報処理システム
20 情報処理装置
21A 日射量データ取得部
21B 期待発電量算出部
21C 偏差算出部
21D 総和算出部
24 記憶部
24A 情報処理プログラム
25 入力部
26 表示部
27 通信部
28 バス
30 発電所端末
40 太陽光発電機器