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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134295
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】撹拌装置
(51)【国際特許分類】
   B01F 35/10 20220101AFI20230920BHJP
   B01F 27/91 20220101ALI20230920BHJP
   B01F 35/41 20220101ALI20230920BHJP
   B01F 35/31 20220101ALI20230920BHJP
   B01F 27/2121 20220101ALI20230920BHJP
   B01F 27/213 20220101ALI20230920BHJP
【FI】
B01F35/10
B01F27/91
B01F35/41
B01F35/31
B01F27/2121
B01F27/213
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022039749
(22)【出願日】2022-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】細濱 嗣彦
【テーマコード(参考)】
4G037
4G078
【Fターム(参考)】
4G037DA05
4G037DA23
4G037DA30
4G037EA04
4G078AA16
4G078AA18
4G078AA30
4G078BA05
4G078CA01
4G078CA12
4G078CA15
4G078DA19
4G078DB08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】メカニカルシールの交換時に撹拌翼が落下することを防ぐことができる撹拌装置を提供する。
【解決手段】撹拌翼がシャフト12に設けられた撹拌部材と、撹拌翼を収容可能であって撹拌対象を貯留する内部空間を有し、シャフト12を内部空間から外部へと挿通させるシャフト挿通部(平坦面)23を有するタンク2と、攪拌部材に設けられ、シャフト挿通部23に固定された状態でシャフト12を回転可能に把持するメカニカルシール部13と、を備える撹拌装置であって、シャフト12には撹拌部材の鉛直方向の移動を規制する移動規制部15が設けられており、移動規制部15を係止させるシャフト支持部材をさらに備えることにより、メンテナンス時、メカニカルシール部13をシャフト挿通部23から離間して鉛直方向上向きに移動した状態においても、攪拌部材のメンテナンスの位置が保持される撹拌装置とする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転することにより撹拌対象を撹拌する撹拌翼がシャフトに設けられた撹拌部材と、
前記撹拌翼を収容可能であって撹拌対象を貯留する内部空間を有するとともに、前記シャフトを前記内部空間から外部へと挿通させるシャフト挿通部を有するタンクと、
前記攪拌部材に設けられ、前記シャフト挿通部に固定された状態で前記シャフトを回転可能に把持するメカニカルシール部と、
を備える撹拌装置であって、
前記シャフトには、前記攪拌部材の鉛直方向の移動を規制する移動規制部が設けられており、
前記移動規制部を係止させるシャフト側係止部と、前記シャフト挿通部により支持される挿通部側被支持部とを備えるシャフト支持部材をさらに備え、
前記メカニカルシール部が前記シャフト挿通部から離間して前記攪拌部材が鉛直方向上向きに移動したメンテナンス位置に位置した状態において、前記シャフト支持部材が前記移動規制部と前記シャフト挿通部との間に位置することにより、前記移動規制部が前記シャフト支持部材の前記シャフト側係止部に当接し、前記挿通部側被支持部が前記シャフト挿通部により支持されることによって、前記攪拌部材が前記メンテナンス位置に位置した状態が保持されることを特徴とする、攪拌装置。
【請求項2】
前記移動規制部は、前記シャフトの外周面に設けられた突出部であり、前記シャフト支持部材は、当該突出部の下端部と当接することを特徴とする、請求項1に記載の撹拌装置。
【請求項3】
前記移動規制部は、前記シャフトの外周面に設けられた凹部であり、前記シャフト支持部材は、当該凹部に差し込まれることを特徴とする、請求項1もしくは2に記載の撹拌装置。
【請求項4】
前記シャフト支持部材は各々締結可能な複数の分割部材から構成され、これら分割部材が前記シャフトを挟んだ状態で締結されることによって前記移動規制部と当接することを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の撹拌装置。
【請求項5】
前記シャフト支持部材は、前記タンクと別体であり、前記メカニカルシール部が前記シャフト挿通部に固定されている際には、前記タンクから取り外されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の撹拌装置。
【請求項6】
前記シャフトは、前記メカニカルシール部に把持される第1のシャフトと、前記撹拌翼が設けられた第2のシャフトと、前記第1のシャフトと前記第2のシャフトとを連結するカップリング部と、を有し、前記移動規制部は、前記第1のシャフトに設けられていることを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の撹拌装置。
【請求項7】
前記回転用開口は前記タンクの外側から前記内部空間側に向かって断面積が大きくなる形状を有することを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載の撹拌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンク内で撹拌翼を回転駆動させることにより撹拌対象を撹拌する撹拌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば化学プラントなどにおいて、モータで回転軸を回転駆動させることにより、回転軸に設けられた撹拌翼でタンクの内部に収容された溶液やスラリー状の液体、粉体などを撹拌する撹拌装置が広く使われている。このような撹拌装置では、モータはタンクの外部に設けられており、タンクの端部に設けられた開口を介してモータと連結される回転軸がタンクの外部から内部へ挿通されている。この回転軸のタンク内に位置する部分に撹拌翼が設けられている。
【0003】
また、タンクの端部の開口を覆うようにメカニカルシールが配置されており、メカニカルシールが回転軸の周囲を囲うように、また、回転軸が回転可能であるように把持する。このメカニカルシールにより、回転軸をぶれさせずに低発塵で回転させる。このような構成の撹拌装置は、モータが駆動して回転軸を回転させ、回転軸の撹拌翼によって、タンク内の撹拌対象の撹拌を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平02-117026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のメカニカルシールはいわゆる消耗品であり、定期的な交換が必要である。メカニカルシール部を交換する際には、メカニカルシールとタンクとの固定を解除するとともに、メカニカルシールによる回転軸の把持を解除する。このとき、回転軸はフリーとなるため、特に回転軸が上下方向にタンクへ挿通される場合には回転軸がタンク内に落下してタンクや回転軸、撹拌翼が破損するおそれがあった。それを避けるために仮に回転軸を上端部を吊っておくことにすれば回転軸をメカニカルシールから抜き去る際に邪魔となり、また、仮に回転軸全体をタンクから取り外してから回転軸をメカニカルシールから抜き去ることにすれば、回転軸を取り外しうるだけの空間的な余裕をタンクの上方に確保する必要があるという問題があった。
【0006】
本願発明は、上記問題点を鑑み、メカニカルシールの交換時に撹拌翼が落下することを防ぐことができる撹拌装置ことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明の撹拌装置は、回転することにより撹拌対象を撹拌する撹拌翼がシャフトに設けられた撹拌部材と、前記撹拌翼を収容可能であって撹拌対象を貯留する内部空間を有するとともに、前記シャフトを前記内部空間から外部へと挿通させるシャフト挿通部を有するタンクと、前記攪拌部材に設けられ、前記シャフト挿通部に固定された状態で前記シャフトを回転可能に把持するメカニカルシール部と、を備える撹拌装置であって、前記シャフトには、前記攪拌部材の鉛直方向の移動を規制する移動規制部が設けられており、前記移動規制部を係止させるシャフト側係止部と、前記シャフト挿通部により支持される挿通部側被支持部とを備えるシャフト支持部材をさらに備え、前記メカニカルシール部が前記シャフト挿通部から離間して前記攪拌部材が鉛直方向上向きに移動したメンテナンス位置に位置した状態において、前記シャフト支持部材が前記移動規制部と前記シャフト挿通部との間に位置することにより、前記移動規制部が前記シャフト支持部材の前記シャフト側係止部に当接し、前記挿通部側被支持部が前記シャフト挿通部により支持されることによって、前記攪拌部材が前記メンテナンス位置に位置した状態が保持されることを特徴としている。
【0008】
この撹拌装置により、メカニカルシール部をシャフトから取り外す際にシャフト支持部材により撹拌部材がメンテナンス位置に位置した状態が保持されることにより、シャフトおよび撹拌翼のタンク内への落下を防ぐことができる。
【0009】
また、前記移動規制部は、前記シャフトの外周面に設けられた突出部であり、前記シャフト支持部材は、当該突出部の下端部と当接しても良い。
【0010】
こうすることにより、シャフトの強度を落とすことなく移動規制部を設けることができる。
【0011】
また、前記移動規制部は、前記シャフトの外周面に設けられた凹部であり、前記シャフト支持部材は、当該凹部に差し込まれても良い。
【0012】
こうすることにより、回転用開口の断面積を比較的小さくすることができる。
【0013】
また、前記シャフト支持部材は各々締結可能な複数の分割部材から構成され、これら分割部材が前記シャフトを挟んだ状態で締結されることによって前記移動規制部と当接すると良い。
【0014】
こうすることにより、シャフトがシャフト支持部材から脱落することを防ぐことができる。
【0015】
また、前記シャフト支持部材は、前記タンクと別体であり、前記メカニカルシール部が前記シャフト挿通部に固定されている際には、前記タンクから取り外されていると良い。
【0016】
こうすることにより、メカニカルシール部の取り外し時以外は必要最小限の構成で撹拌装置を構成することができる。
【0017】
また、前記シャフトは、前記メカニカルシール部に把持される第1のシャフトと、前記撹拌翼が設けられた第2のシャフトと、前記第1のシャフトと前記第2のシャフトとを連結するカップリング部と、を有し、前記移動規制部は、前記第1のシャフトに設けられていると良い。
【0018】
こうすることにより、カップリング部をタンクの外部に出さなくてもシャフトの固定ができるため、メカニカルシール部の取り外しをさらに容易にすることができる。
【0019】
また、前記回転用開口は前記タンクの外側から前記内部空間側に向かって断面積が大きくなる形状を有すると良い。
【0020】
こうすることにより、回転用開口付近において液が滞留することを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の撹拌装置により、メカニカルシールの交換時に撹拌翼が落下することを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態における撹拌装置を説明する図である。
図2】本実施形態の撹拌装置のメカニカルシール部の近傍部の拡大図である。
図3】本実施形態のシャフト支持部材を説明する図である。
図4】本実施形態の撹拌装置においてメカニカルシール部を取り外す過程を説明する図である。
図5】従来の撹拌装置を説明する図である。
図6】本発明の他の実施形態の撹拌装置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の一実施形態における撹拌装置について、図1を参照して説明する。また、図1における二点鎖線で囲んだ領域Aであってメカニカルシール部の近傍部の拡大図を図2に示す。
【0024】
撹拌装置1は、タンク2および撹拌翼3を有し、タンク2の内部で撹拌翼3が回転することにより、タンク2が貯留する液体、粉体などの形態の撹拌対象4を撹拌する。撹拌翼3は、タンク2の上部に設けられたモータ11などの回転駆動源により、シャフト12を介してタンク2の内部で回転駆動する。シャフト12は、タンク2の上端部に設けられた回転用開口21を通じてタンク2の内部から外部に伸び、図示しないカップリングなどを経てモータ11に接続される。また、回転用開口21のタンク2外側の端部には、回転用開口21を塞ぐようにメカニカルシール部13が配置されており、シャフト12を低発塵かつ回転が安定するよう保持している。
【0025】
タンク2は、たとえば化学プラントなどで使用される幅および高さが数メートルに及ぶ貯留空間を内部に有する大型の金属製の容器である。この貯留空間に撹拌翼3が収容され、撹拌対象4が貯留される。また、撹拌対象4は、タンク2と通ずる図示しない供給経路、排出経路を経てタンク2内に供給され、また、タンク2外へ排出される。
【0026】
また、タンク2には洗浄液を貯留空間に供給するための洗浄ノズルをタンク2外から挿通するためのノズル挿入部22が設けられている。撹拌対象4の種類を変更する際、定期的なタンク2の洗浄の際などにおいて、ノズル挿入部22を介して外部から洗浄ノズルを挿通し、この洗浄ノズルの先端部からから洗浄液を噴出させることにより、タンク2の内壁を洗浄する。なお、洗浄ノズルを挿通する際以外では、ノズル挿入部22は蓋がされている。
【0027】
また、タンク2には、メンテナンスの際に作業者がタンク2の貯留空間に出入りするための図示しない作業者出入り口が設けられている。
【0028】
タンク2の上端部には、回転用開口21を取り囲む平面であってメカニカルシール部13を載置するための平坦面23があり、この平坦面23とタンク2の貯留空間とが回転用開口21によって連通されている。回転用開口21は、少なくとも後述の移動規制部15が通過することが可能な断面積を有しており、本実施形態では図2に示す通り上端部の断面は直径R2の円形となっており、途中から断面積は広がり、下端部の断面は直径がR2より大きいR4の円形となっている。なお、回転用開口21の上端部の直径R2は、メカニカルシール部13の下端部にある円盤状の突出部131を回転用開口21に嵌め込むことが可能な径となっている。
【0029】
ここで、本説明では、回転用開口21と平坦面23とを合わせてシャフト挿通部とも呼ぶ。
【0030】
メカニカルシール部13は、公知のメカニカルシールであり、中央部を貫通する棒状体(本実施形態ではシャフト12)を囲うように把持する。このメカニカルシール部13が棒状体を把持した形態では、メカニカルシール部13が固定された状態であってもこの棒状体は自身の中心線を回転軸としてぶれること無く低発塵で回転可能な状態となる。
【0031】
このメカニカルシール部13は、タンク2の平坦面23と接する載置面を有し、タンク2と接離可能であって、通常時はこの載置面がタンク2の上端部に接した状態でタンク2のシャフト挿通部に固定される。この状態において、メカニカルシール部13およびメカニカルシール部13を貫通してメカニカルシール部13と連結されるシャフト12とで回転用開口21を塞いでいる。
【0032】
このメカニカルシール部13は、いわゆる消耗品であり、たとえばシール不良といった不具合を生じる前に定期的に交換される必要がある。本実施形態では、たとえば1年ごとにメカニカルシール部13は新品へ交換される。なお、このメカニカルシール部13の交換にあたり、持ち上げる部材の重量はメカニカルシール部13を含み約200kg~500kgにおよび、交換の際はクレーンなどにより吊り上げる必要がある。
【0033】
撹拌翼3は、本実施形態ではシャフト12の下端部に設けられたたとえばプロペラ状の金属製部品である。タンク2内に撹拌対象4が供給された状態において撹拌翼3は撹拌対象4の内部に位置し、この状態において撹拌翼3が駆動することにより、撹拌対象4が流動し、撹拌される。なお、撹拌翼3は本実施形態のようにシャフト12の下端部に設けられるだけでなく、複数段にわたって設けられていても良い。
【0034】
この撹拌翼3の駆動源は、上記の通りタンク2よりも上方に位置するモータ11であり、シャフト12などを介して撹拌翼3とモータ11とが連結され、モータ11における回転駆動が撹拌翼3へ伝達される。
【0035】
また、回転用開口21の径はこの撹拌翼3の幅方向寸法W1を特に考慮する必要性は無く、撹拌翼3の幅方向寸法W1が回転用開口21の径よりも大きくても良い。その形態においてメンテナンス時に撹拌翼3をタンク2外に出す場合は、作業者がタンク2内に入った上で撹拌翼3を分解し、作業者出入り口や回転用開口21から持ち出せば良い。
【0036】
シャフト12は、モータ11と撹拌翼3とを連結するための棒状体であり、一部を除いて均一な断面積の円柱状の形態を有している。本実施形態では、シャフト12の直径は図2に示すように寸法R1であり、回転用開口21の最小径(本実施形態では寸法R2)は、この寸法R1より大きい。
【0037】
また、本実施形態のシャフト12は、上方に位置する第1のシャフト12aと下方に位置する第2のシャフト12bとに分割されており、カップリング部14を介して第1のシャフト12aと第2のシャフト12bとが連結されている。カップリング部14は公知のカップリングであり、モータ11の回転軸と第2のシャフト12bの回転軸とを一致させるための調節機構である。また、撹拌翼3は第2のシャフト12bに設けられている。また、本説明では、シャフト12と撹拌翼3と上記のメカニカルシール部13とを合わせて撹拌部材とも呼ぶ。
【0038】
なお、後述の通り回転用開口21の径はカップリング部14の幅方向寸法W2を特に考慮する必要性は無く、カップリング部14の幅方向寸法W2が回転用開口21の径よりも大きくても良い。
【0039】
ここで、本発明では第1のシャフト12aの一部には、移動規制部15が設けられている。移動規制部15は、攪拌部材の鉛直方向、特に下方向の移動を規制するためのものである。本実施形態では第1のシャフト12aの外周面に設けられた突出部であり、図2に示すように幅方向の最大寸法は寸法R3となっている。この寸法R3は、シャフト12の径である寸法R1より大きく、回転用開口21の最小径である寸法R2より小さい。
【0040】
本実施形態のシャフト支持部材を図3に示す。図3(a)、図3(b)はシャフト支持部材16の上面図、図3(c)はシャフト支持部材16の正面図である。
【0041】
シャフト支持部材16は、タンク2とは別体である治具であり、メカニカルシール部13を交換する時のみに用いられる。そのため、撹拌装置1の通常運転時、すなわち、メカニカルシール部13がタンク2に固定されて回転用開口21を塞いでいる間は、シャフト支持部材16はタンク2から取り外されて別場所に保管されている。
【0042】
シャフト支持部材16は、本実施形態では各々締結可能な複数の分割部材により構成されている。具体的には、図3(a)に示すように分割部材16aおよび分割部材16bから構成されており、それぞれは図3(c)に示すように正面視において略長方形であり、図3(a)に示すように上面視において中央に湾曲部を有した略「Ω」状の形状を有する。
【0043】
これら分割部材16aと分割部材16bとを向かい合わせ、図示しないボルトなどで締結することにより、図3(b)に示すように中央部に円形の貫通穴16cが形成される。この貫通穴16cの直径R5は、シャフト12の径である寸法R1より大きく、移動規制部15の最大寸法である寸法R3より小さい。そのため、図3(b)に示すようにシャフト12は貫通穴16cを通ることができるが、図3(c)に示すように移動規制部15は貫通穴16cを通ることができない。
【0044】
また、図3(c)に示すシャフト支持部材16の幅方向寸法d2は、回転用開口21の上端部の径R2よりも大きい。
【0045】
本実施形態の撹拌装置1において作業者がメカニカルシール部13を取り外す過程を、図4を用いて説明する。なお、メカニカルシール部13を取り外すにあたり、モータ11、モータ11と第1のシャフト12aを連結する図示しないカップリングなどのメカニカルシール部13よりも上部に取り付けられている部材は、予め取り外されている。
【0046】
まず、メカニカルシール部13のタンク2への固定が解除された後、図4(a)に示すようにクレーンなどを利用してメカニカルシール部13が上方に吊り上げられ、メカニカルシール部13がシャフト挿通部から離間する。このとき、メカニカルシール部13は第1のシャフト12aを把持した状態を継続しており、撹拌部材全体が吊り上げられる。
【0047】
メカニカルシール部13および撹拌部材の吊り上げが続けられると、移動規制部15が回転用開口21を通過してタンク2の上端面よりも上方に位置するようになる。このとき、図4(a)に示す移動規制部15の下端部とタンク2の上端面との距離d3が図3(c)に示すシャフト支持部材16の高さ寸法d1程度となるまでメカニカルシール部13および撹拌部材が吊り上げられる。なお、このようにメカニカルシール部13を含む撹拌部材が吊り上げられて、移動規制部15がタンク2よりもシャフト支持部材16の高さ寸法d1程度上方となるような位置を、本実施形態におけるメンテナンス位置と呼ぶ。
【0048】
上記の通りメンテナンス位置となるまで撹拌部材が吊り上げられた後、移動規制部15の下端部とタンク2のシャフト挿通部との間の位置において分割部材16aと分割部材16bとで第1のシャフト12aを挟みこみ、両者を締結する。
【0049】
こうすることにより、撹拌部材の位置がメンテナンス位置となる状態が保持される。すなわち、撹拌部材の吊り上げを解除したとしても、図4(b)に示すようにシャフト支持部材16がストッパとなって移動規制部15はシャフト支持部材16が下方から当接、支持する状態となる位置に係止される。そして、それより下方には撹拌部材は下降しなくなる。また、シャフト支持部材16の幅方向寸法d2は回転用開口21の上端部の径d2よりも大きいため、シャフト支持部材16はタンク2の内部へ落ちることなくタンク2のシャフト挿通部(平坦面23)に支持される形態をとる。
【0050】
また、本実施形態のようにシャフト支持部材16が複数の分割部材(分割部材16a、分割部材16b)から構成され、これらがシャフト12を挟んだ状態で締結されることによって移動規制部15と当接する場合、シャフト12がシャフト支持部材16から脱落することを防ぐことができる。
【0051】
図4(b)の通り移動規制部15がシャフト支持部材16に係止された状態になった後、メカニカルシール部13の第1のシャフト12aの把持状態が解除され、メカニカルシール部13が第1のシャフト12aから取り外される。そして、新品のメカニカルシール部13が第1のシャフト12aに取り付けられ、メカニカルシール部13が第1のシャフト12aを把持する状態とされることにより、メカニカルシール部13の交換が完了する。
【0052】
その後、メカニカルシール部13および撹拌部材をクレーンで吊ってシャフト支持部材16を取り外す工程、メカニカルシール部13がタンク2の上端面と接触する状態となるまでメカニカルシール部13および撹拌部材を徐々に下降させる工程、メカニカルシール部13がタンク2の上端面と接触した後、メカニカルシール部13とタンク2とを固定する工程、そして、第1のシャフト12aとモータ11とを再連結させる工程を経て、撹拌装置1の復旧が完了する。
【0053】
上記の通りシャフト支持部材16を用いて移動規制部15を支持することにより、メカニカルシール部13の交換時に撹拌翼3およびシャフト12が不意に落下してタンク2および撹拌翼3が破損することを防ぐことができる。
【0054】
また、本説明では、シャフト支持部材16において移動規制部15を係止させる働きを有する部分をシャフト側係止部と呼び、また、シャフト挿通部により支持される部分を挿通部側被支持部と呼ぶ。本実施形態の場合、シャフト支持部材16の上端部がシャフト側支持部であり、シャフト支持部材16の下端部が挿通部側被支持部である。
【0055】
また、本実施形態では、上述の通り移動規制部15は(第2のシャフト12bでなく)第1のシャフト12aに設けられている。すなわち、移動規制部15はメカニカルシール部13とカップリング部14との間に設けられている。そのため、図4(a)のように移動規制部15がタンク2より上方に位置するまで吊り上げた場合であってもカップリング部14は依然として回転用開口21よりも下方に位置する。そのため、仮にカップリング部14の幅方向寸法W2(図1参照)が回転用開口21の径R2よりも大きかった場合であっても、問題無くメカニカルシール部13の交換作業を実施することができる。また、メカニカルシール部13の交換の際にタンク2の内部でカップリング部14を取り外す作業も不要である。
【0056】
本発明の撹拌装置1の比較例として、従来の撹拌部材落下防止機構を図5に示す。
【0057】
図5に示す撹拌装置90では、上記実施形態と同様にシャフト12に突出部91を設けている。そして、シャフト12およびシャフト12の先端部に設けられた図示しない撹拌翼の落下を防止するためのストッパ92が回転用開口21の下端側に設けられており、シャフト12および撹拌翼が自由落下した際に突出部91がストッパ92に当たることにより、それ以上の落下が防がれる。
【0058】
このような構成の撹拌装置90では、ストッパ92に設けられたシャフト12を挿通させるための穴の断面積は回転用開口21の断面積より小さい。この場合、仮にタンク2の内部に洗浄液を噴射して回転用開口21の方に洗浄液が入り込んだ場合、ストッパ92によって洗浄液が流れ出にくくなって図5にドットで示すように洗浄液が回転用開口21で滞留するおそれがある。この洗浄液が撹拌動作中に流れ落ちて撹拌対象4に入り込んだ場合、撹拌対象4の品質に不具合が生じる可能性がある。
【0059】
これに対し、図1乃至図4に示した本発明の撹拌装置1では、シャフト12の落下を防止する機構がメンテナンス時のみ、しかもタンク2の外側に設けられるため、回転用開口21の近傍で液体を滞留させるような構成を無くすことができる。
【0060】
さらに、図2にて寸法R2と寸法R4とで表した通り、本実施形態のように回転用開口21がタンクの外部から内部空間に向かって断面積が大きくなる形状を有することによって、液体はさらに流れ落ちやすくなり、タンク2内部の洗浄性が向上する。
【0061】
また、このとき、図2に示したように移動規制部15の上部にもテーパ加工などの傾斜が設けられていれば、移動規制部15の上部に液体が残留することを防ぐことが可能である。
【0062】
以上の撹拌装置により、メカニカルシールの交換時に撹拌翼が落下することを防ぐことが可能である。
【0063】
ここで、本発明の撹拌装置は、以上で説明した形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。たとえば、移動規制部は必ずしも突出した形態である必要は無く、シャフト外周面に設けられた凹部であっても良い。
【0064】
図6は、移動規制部が凹部である実施例であり、シャフト12は設けられた貫通穴状の移動規制部25を有している。この場合、メカニカルシール部13およびシャフト12が吊り上げられて移動規制部25がタンク2の上端面より上方に位置したときに、移動規制部25の穴径よりも径が小さく長さ寸法が回転用開口21の径よりも長い棒状のシャフト支持部材26が移動規制部25を貫通することにより、シャフト支持部材26がタンク2の上端面と当たる位置より下方にはメカニカルシール部13およびシャフト12が下降しなくなる。このように移動規制部25が凹部であった場合、回転用開口21の断面積はシャフト12の断面積よりも少し大きい程度でも良いため、回転用開口21の断面積を比較的小さくすることが可能である。一方、移動規制部を凹部とすることによりシャフト自体の強度に懸念がある場合は、図1などに示したように突出した形状の移動規制部であると良い。
【符号の説明】
【0065】
1 撹拌装置
2 タンク
3 撹拌翼
4 撹拌対象
11 モータ
12 シャフト
12a 第1のシャフト
12b 第2のシャフト
13 メカニカルシール部
131 突出部
14 カップリング部
15 移動規制部
16 シャフト支持部材
16a 分割部材
16b 分割部材
21 回転用開口
22 ノズル挿入部
23 平坦面
25 移動規制部
26 シャフト支持部材
90 撹拌装置
91 突出部
92 ストッパ
図1
図2
図3
図4
図5
図6