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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134318
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】充放電装置及び充放電制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02H 7/18 20060101AFI20230920BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20230920BHJP
   H02H 9/02 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
H02H7/18
H02J7/00 P
H02J7/00 S
H02H9/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083259
(22)【出願日】2022-05-20
(31)【優先権主張番号】P 2022039312
(32)【優先日】2022-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003355
【氏名又は名称】株式会社椿本チエイン
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】小山 晋吾
(72)【発明者】
【氏名】岡田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】植平 眞
【テーマコード(参考)】
5G013
5G053
5G503
【Fターム(参考)】
5G013AA02
5G013BA01
5G013CA05
5G053AA05
5G053BA04
5G053CA04
5G053FA05
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA11
5G503FA06
5G503FA14
(57)【要約】
【課題】多様な車両を対象として充放電が可能な充放電装置及び充放電制御方法を提供する。
【解決手段】充放電装置は、車両に設けられた直流電源となる蓄電池に接続され、前記蓄電池と、交流電源又は負荷との間で充放電を制御する充放電装置であって、交流電圧の直流電圧への変換と、直流電圧の交流電圧への変換と、直流電圧から直流電圧への変換とのいずれかを切り替え可能に実行する電力変換器と、前記電力変換器の直流側と、前記蓄電池との間の電力の授受のON及びOFFを切り替えるスイッチ回路と、前記スイッチ回路のON及びOFFを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記スイッチ回路をONとする前に、前記電力変換器の直流側の電圧を、前記蓄電池以外の電源を用いて所定値まで上昇させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられた直流電源となる蓄電池に接続され、前記蓄電池と、電源又は負荷との間で充放電を制御する充放電装置であって、
交流電圧の直流電圧への変換と、直流電圧の交流電圧への変換と、直流電圧から直流電圧への変換とのいずれかを切り替え可能に実行する電力変換器と、
前記電力変換器の直流側と、前記蓄電池との間の電力の授受のON及びOFFを切り替えるスイッチ回路と、
前記スイッチ回路のON及びOFFを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記スイッチ回路をONとする前に、前記電力変換器の直流側の電圧を、前記蓄電池以外の電源を用いて所定値まで上昇させる
充放電装置。
【請求項2】
前記所定値は、前記車両内で前記蓄電池における充放電を制御する車載制御装置から送信される充電上限電圧値である
請求項1に記載の充放電装置。
【請求項3】
前記所定値は、前記蓄電池の電圧値である
請求項1に記載の充放電装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記電圧を前記所定値に向けて上昇させつつ、前記電圧が前記蓄電池の電圧値又は充電上限電圧値に達する前に、前記車両へ運転準備完了通知を送信し、
前記電圧が前記所定値に達した場合に、前記スイッチ回路をONとする
請求項2又は3に記載の充放電装置。
【請求項5】
前記スイッチ回路は、前記蓄電池から前記電力変換器への電流を防止する防止回路、及び、前記防止回路の迂回路を含み、
前記制御部は、
前記蓄電池が充電対象である場合、前記迂回路を遮断して前記防止回路をONとさせた状態で前記スイッチ回路をONとし、
前記電力変換器の直流側の電圧を、前記蓄電池以外の電源を用いて所定速度以下で上昇させる
請求項1に記載の充放電装置。
【請求項6】
前記スイッチ回路は、
電力線の正側及び負側の少なくとも一方に設けられたリレーと、
所定の抵抗を前記リレーに並列接続して構成される突入電流防止回路とを含む
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の充放電装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記電力変換器の直流側の電圧を上昇させるに際し、前記リレーをOFFとし、
前記電圧が前記所定値に達した場合に、前記リレーをONとする
請求項6に記載の充放電装置。
【請求項8】
車両に設けられた直流電源となる蓄電池に接続され、前記蓄電池と、電源又は負荷との間で充放電を制御する充放電装置であって、
車両と接続された場合、交流電圧の直流電圧への変換と、直流電圧の交流電圧への変換と、直流電圧から直流電圧への変換とのいずれかを切り替え可能に実行する電力変換器の直流側の電圧を、前記車両の蓄電池以外の電源を用いて所定値を上限として上昇させ、
前記直流側の電圧が前記所定値に達してから、前記電力変換器の直流側と、前記蓄電池との間の電力の授受のON及びOFFを切り替えるスイッチ回路をONとする
充放電制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に設けられた蓄電池に対する充放電を制御する充放電装置及び充放電制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車に備えられている蓄電池の電池容量は比較的大容量である。これらの車両の蓄えられた電力を、電気自動車の駆動以外に、例えば家庭内の負荷へ供給することを可能とするV2H(Vehicle to Home )を実現する技術が提案されている。V2Hに限らず、より規模の大きい建物への電力供給を可能とするV2B(Vehicle to Building )、電力網への供給を可能とするV2G(Vehicle to Grid )を含むV2Xを実現する技術が提案されている。これらの技術により、災害発生によって停電状態となったとしても、移動が可能な電気自動車に蓄えられた電力を供給して生活を維持したり、工場の稼働を維持したりすることが期待できる。
【0003】
電気自動車に備えられた蓄電池を電力源としたV2Xを実現しつつ電気自動車の普及を進めるために、電気自動車の所有者やディーラが、その電気自動車専用の充放電装置を用意するのみならず、汎用的充電ステーションの充実が求められる。このような広く使用される汎用的な充電ステーションでは、多様な車両に対して充放電が可能な充放電装置が必要になる。
【0004】
電気自動車への充電、及び電気自動車からの放電の制御は、 CHAdeMO(登録商標)等の一定の規格に従って行なわれるものの車両メーカ、及び車種によって、少しずつふるまいが異なる。そこで、汎用的に使用される充放電装置においては、車種に応じた充放電制御が行なわれている(特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6737390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
汎用的に使用される充放電装置は、1台で、電気自動車からの放電、及び、充電専用車(放電不可)を含む多様な電気自動車への充電が広く可能な構成が望ましい。
【0007】
本発明は、多様な車両を対象として充放電が可能な充放電装置及び充放電制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一実施形態の充放電装置は、車両に設けられた直流電源となる蓄電池に接続され、前記蓄電池と、電源又は負荷との間で充放電を制御する充放電装置であって、交流電圧の直流電圧への変換と、直流電圧の交流電圧への変換と、直流電圧から直流電圧への変換とのいずれかを切り替え可能に実行する電力変換器と、前記電力変換器の直流側と、前記蓄電池との間の電力の授受のON及びOFFを切り替えるスイッチ回路と、前記スイッチ回路のON及びOFFを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記スイッチ回路をONとする前に、前記電力変換器の直流側の電圧を、前記蓄電池以外の電源を用いて所定値まで上昇させる。
【0009】
本開示の一実施形態の充放電制御方法は、車両に設けられた直流電源となる蓄電池に接続され、前記蓄電池と、電源又は負荷との間で充放電を制御する充放電装置であって、車両と接続された場合、交流電圧の直流電圧への変換と、直流電圧の交流電圧への変換と、直流電圧から直流電圧への変換とのいずれかを切り替え可能に実行する電力変換器の直流側の電圧を、前記車両の蓄電池以外の電源を用いて所定値を上限として上昇させ、前記直流側の電圧が前記所定値に達してから、前記電力変換器の直流側と、前記蓄電池との間の電力の授受のON及びOFFを切り替えるスイッチ回路をONとする。
【0010】
本開示の充放電装置、及び充放電制御方法では、接続される車両に備えられる蓄電池に対して充放電のいずれについても1つの装置で実現が可能なように、交流電圧の直流電圧への変換と、直流電圧の交流電圧への変換と、直流電圧から電圧値が異なる直流電圧への変換とのいずれかを切り替え可能に実行する電力変換器を用いる。電力変換器と蓄電池との間は、充放電の両方に対応するために一方向のみに電気が流れる構成としない。蓄電池と充放電装置との間の電力ラインを閉塞したときに、蓄電池と電力変換器との間に大きな突入電流が流れないように、スイッチ回路をONとする前に、直流電源となる蓄電池とほぼ同様の電圧値へ電力変換器の直流側の電圧を上昇させておく必要がある。直流電源となる蓄電池を電源として電力変換器の直流側の電圧を上昇させることもできるが、充電専用車が接続される場合があるため、接続される車両の蓄電池以外を電源として、上昇させる。車両の蓄電池以外の電源としては、電力系統、連系機器、その他、充放電装置内に設けられた充電用回路等が用いられる。
【0011】
これにより、充電専用車を含む多様な構成の蓄電池周りの回路を有する車両それぞれを対象として充放電のいずれも実現可能となる。
【0012】
本開示の一実施形態の充放電装置では、前記所定値は、前記車両内で前記蓄電池における充放電を制御する車載制御装置から送信される充電上限電圧値である。
【0013】
本開示の充放電装置では、車両の蓄電池以外を電源として、電力変換器の直流側の電圧が、充電上限電圧値まで上昇する。これにより、接続された車両が充電専用車であって車両の蓄電池から充放電装置へ向けての電流が阻止されても、電力変換器の電圧が、車両の蓄電池の電圧よりも高い状態にすることでスムーズに充電を開始可能である。
【0014】
本開示の一実施形態の充放電装置では、前記所定値は、前記蓄電池の電圧値である。
【0015】
本開示の充放電装置では、車両の蓄電池以外を電源として、電力変換器の直流側の電圧が、車両の蓄電池の電圧まで上昇する。これにより、接続された車両が充電専用車であって車両の蓄電池から充放電装置へ向けての電流が阻止されても、充放電装置の電力変換器と車両の蓄電池との間で、電圧が平衡状態となってスムーズに充電を開始可能である。なお、ここでいう平衡状態は完全に等しくなることを意味せず、誤差の範囲で略平衡な状態も含む。
【0016】
本開示の一実施形態の充放電装置では、前記制御部は、前記電圧を前記所定値に向けて上昇させつつ、前記電圧が前記蓄電池の電圧値又は充電上限電圧値に達する前に、前記車両へ運転準備完了通知を送信し、前記電圧が前記所定値に達した場合に、前記スイッチ回路をONとする。
【0017】
本開示の充放電装置では、充放電装置の電力変換器と車両の蓄電池との間で、電圧が平衡状態に達する前に、充放電装置と、車載制御装置との間で充放電開始の準備を完了させる所定のシーケンスを進めることが可能である。
【0018】
本開示の一実施形態の充放電装置では、前記スイッチ回路は、前記蓄電池から前記電力変換器への電流を防止する防止回路、及び、前記防止回路の迂回路を含み、前記制御部は、前記蓄電池が充電対象である場合、前記迂回路を遮断して前記防止回路をONとさせた状態で前記スイッチ回路をONとし、前記電力変換器の直流側の電圧を、前記蓄電池以外の電源を用いて所定速度以下で上昇させる。
【0019】
本開示の充放電装置では、充電専用車両である場合には、前記蓄電池から前記電力変換器への電流を防止する防止回路をONとしつつ、充放電の両方が可能な車両を対象に、その防止回路を迂回できる迂回路が設けられている。防止回路を設けることにより、車両に設けられた高電圧の蓄電池から充放電装置側への流れを防止しつつ、車両の蓄電池の電圧が不明であっても、電力変換器の直流側の電圧を徐々に上昇させて平衡状態とさせることができる。
【0020】
本開示の一実施形態の充放電装置では、前記スイッチ回路は、電力線の正側及び負側の少なくとも一方に設けられたリレーと、所定の抵抗を前記リレーに並列接続して構成される突入電流防止回路とを含む。
【0021】
本開示の充放電装置では、充放電の両方に対応するために、スイッチ回路において、高電圧となる直流電源の車両の蓄電池から電力変換器に大きな電流が突入しないように、電力変換器の直流側に、抵抗付きのリレーで構成される突入電流防止回路が設けられる。これにより、車両に設けられた直流電源の蓄電池から充放電装置側への大きな電流が突入することを防止しつつ、充放電装置の電力変換器と車両の蓄電池との間の電圧を平衡とさせてスムーズに充放電を開始可能である。
【0022】
本開示の一実施形態の充放電装置では、前記制御部は、前記電力変換器の直流側の電圧を上昇させるに際し、前記リレーをOFFとし、前記電圧が前記所定値に達した場合に、前記リレーをONとする。
【0023】
本開示の充放電装置では、突入電流防止回路を用いつつ充放電装置の電力変換器と車両の蓄電池との間の電圧が平衡となってから、スムーズに充放電のいずれかを開始可能である。
【発明の効果】
【0024】
本開示によれば、接続される充電専用車を含む多様な車両を対象として、適宜充放電が
可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】第1実施形態における充放電装置の構成を示すブロック図である。
図2】第1実施形態の充放電装置のスイッチ回路と車両のスイッチ回路の回路構成を示す図である。
図3】第1実施形態の充放電装置における処理手順の一例を示すフローチャートである。
図4】第1実施形態の変形例における処理手順の一例を示すフローチャートである。
図5】第2実施形態の充放電装置における処理手順の一例を示すフローチャートである。
図6】第3実施形態の充放電装置のスイッチ回路と車両のスイッチ回路の回路構成を示す図である。
図7】第3実施形態の充放電装置における処理手順の一例を示すフローチャートである。
図8】第4実施形態の充放電装置における処理手順の一例を示すフローチャートである。
図9】第5実施形態の充放電装置のスイッチ回路と車両のスイッチ回路の回路構成を示す図である。
図10】第5実施形態の充放電装置における処理手順の一例を示すフローチャートである。
図11】第5実施形態の充放電装置における処理手順の一例を示すフローチャートである。
図12】第6実施形態の充放電装置のスイッチ回路と車両のスイッチ回路の回路構成を示す図である。
図13】第7実施形態の充放電装置のスイッチ回路と車両のスイッチ回路の回路構成を示す図である。
図14】スイッチ回路の変形例を示す図である。
図15】スイッチ回路の変形例を示す図である。
図16】スイッチ回路の変形例を示す図である。
図17】スイッチ回路の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本開示をその実施の形態を示す図面を参照して具体的に説明する。
【0027】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態における充放電装置1の構成を示すブロック図である。図1は、充放電装置1のみならず、接続される車両Vとの接続構成及び車両V内の構成も示す。
【0028】
車両Vは、電気自動車(EV:Electric Vehicle)、ハイブリッド電気自動車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)、プラグインハイブリッド車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、又は燃料電池自動車(FCV:Fuel Cell Vehicle )である。
【0029】
車両Vは、その駆動に用いることが可能な大容量の蓄電装置30を備える。車両Vは、蓄電装置30に接続される電力線VPLへのコネクタ35と、蓄電装置30における充放電を制御する車載制御装置32とを備える。電力線VPLには、車両V側の充放電回路に含まれるスイッチ回路33が介装されており、車載制御装置32がスイッチ回路33のON及びOFFを制御する。コネクタ35には車載制御装置32と通信接続するための通信端子が含まれている。
【0030】
充放電装置1は、電力系統Eからの電力を用いて車両Vの蓄電装置30を充電し、且つ、蓄電装置30に蓄えられている電力を必要な電力負荷群へ適宜放電させ、停電時には、蓄電装置30を定電圧電源として機能させる装置である。充放電装置1は、電力系統E、電力負荷群及び連系機器群と接続する分電盤2に電力線PLを介して接続されており、車両Vとも電力線PLを介して接続可能である。
【0031】
充放電装置1は、充放電回路10、制御部11、車両通信部12、電源部13、操作部14、及び上位通信部16を備える。充放電回路10は、双方向インバータ、各種リレー等の多様な回路素子を含む。充放電回路10は、車両Vと接続するコネクタ15と接続されるスイッチ回路10aと、電力系統E及び負荷と分電盤2を介して接続される電力線PLに介装されたスイッチ回路10bとを含む。充放電回路10は、スイッチ回路10aを介して車両V側のコネクタ15と電力線PLによって接続される。
【0032】
制御部11は、充放電回路10に含まれる回路素子を制御し、車両Vの蓄電装置30に対する充放電の切り替え、電流量、及び電圧量を制御する。制御部11はCPU(Central Processing Unit)及び不揮発性メモリを含み、CPUは不揮発性メモリに記憶されたコンピュータプログラム1Pに基づく制御処理を実行して充放電回路10を制御する。
【0033】
制御部11の不揮発性メモリに記憶されているコンピュータプログラム1Pは、コンピュータから読み取り可能な記憶媒体9に記憶されていたコンピュータプログラム9PをCPUが読み出してメモリに記憶したものであってもよい。
【0034】
車両通信部12は、コネクタ15及びコネクタ35を介して車載制御装置32と通信接続が可能である。車両通信部12の通信接続のプロトコルは車両V、コネクタ15,35に対応する充放電方式(例えば、CHAdeMO )に準拠していればよく、異なる充放電方式に適用するように複数のプロトコルに対応していずれかを選択的に実行できてもよい。本開示では車両通信部12は、CAN(Controller Area Network)によって車載制御装置32と通信する。PLCによって通信が実現されてもよい。
【0035】
電源部13は、UPS(Uninterruptible Power Systems)回路及び起動用蓄電池を含み、制御部11へ電力を供給する。電源部13は、停電時には起動用蓄電池から充放電装置1の起動に必要な電力を供給する。電源部13は、電力系統E、連系機器又は車両Vからの電力を起動用蓄電池に充電してもよい。
【0036】
操作部14は、ディスプレイ、ディスプレイ内蔵タッチパネル、及び物理ボタンを含み、充放電装置1の外装に露出してユーザからのSTART(起動)及びSTOP(終了)を含む操作を受け付ける。操作部14は、充放電装置1の本体とは隔離された構成としてよく、例えば、建物内のリモートコントーラとして構成されてもよい。操作部14は、ユーザ(又は管理者)が所持するスマートフォン又はタブレット端末等の通信端末の操作インタフェースで受け付けた操作情報を、無線通信を介して受け付ける構成であってもよい。制御部11は、操作部14にて受け付けられた操作に基づいて充放電回路10を制御してもよい。操作部14は、ランプを含み、状態に応じた色又はパターンで点灯するように制御部11によって制御される。
【0037】
上位通信部16は、図示しない上位装置と通信線CLを介して通信を実現する。上位通信部16は例えば、Ethernet(登録商標)に準拠した通信線CLに対応する通信モジュールであってもよいし、ECHONET /ECHONETLite (登録商標)対応の通信線CLに対応する通信モジュールであってもよい。上位通信部16は、PLCにより通信を実現してもよい。上位通信部16は、WiFi(登録商標)、 Bluetooth(登録商標)又はキャリア通信に対応する無線通信モジュールであってもよい。なお上位通信部16は、本開示の充放電装置1では必須ではない。
【0038】
上述のように構成される充放電装置1の充放電回路10は、図1に示すように、コネクタ15が車両Vのコネクタ35と接続された状態において、スイッチ回路10a及び車両V側のスイッチ回路33を介して車両Vの蓄電装置30と電力線PLにより接続されている。充放電回路10は、図1に示すように、スイッチ回路10b及び分電盤2を介して電力系統E、電力負荷群及び連系機器と電力線PLによって接続されている。充放電装置1は、電力系統Eと、車両Vの蓄電装置30、電力負荷群、及び連系機器との間の電力の授受を制御する。充放電回路10は、スイッチ回路10b、スイッチ回路10a、及びスイッチ回路33が全てONの状態の場合に、電力線PLを介して蓄電装置30の負荷群への放電、又は、連系機器又は電力系統Eからの蓄電装置30への充電を実施できる。
【0039】
図2は、第1実施形態の充放電装置1のスイッチ回路10aと車両Vのスイッチ回路33の回路構成を示す図である。充放電装置1のスイッチ回路10aは、図2に示すように、正(P)側と負(N)側との1対のリレー102,103と、突入電流防止回路104と、電圧検知部105とを含んで構成されている。車両Vのスイッチ回路33も、正(P)側と負(N)側との1対のリレー331,332で構成されている。なお、図2では、車両V側のスイッチ回路33以外の構成は、個々の車両Vによって異なるため、スイッチ回路33前後の不確定な充放電回路の構成について破線のブロックで示している。充放電装置1は、対象とする車両Vの構成は問わない。
【0040】
双方向インバータ101の直流出力(車両)側にはコンデンサC1が設けられている。スイッチ回路10aは後述するように、1対のリレー102,103をいずれもONとする前に、交流側の電力を双方向インバータ101で直流に変換し、コンデンサC1を緩やかに充電するように、正側の電圧が徐々に上がるように制御部11によって制御される。「緩やかに」は、メモリに記憶してある所定速度に対応する。なお、双方向インバータ101で直流に変換する電力は、電力系統Eでもよいし、電力系統Eに相当する直流電源でもよい。
【0041】
充放電装置1のスイッチ回路10aにおける突入電流防止回路104は、正側のリレー102に対して並列に接続された抵抗R及びリレー106から構成されている。突入電流防止回路104を動作させる場合、上述のコンデンサC1の充電が完了した後、制御部11が、負側のリレー103及びリレー106をONとして突入電流防止回路104を動作させる。若しくは双方向インバータ101の直流側の電圧値を、蓄電装置30の電圧値以上にする。これにより、その後、正(P)側のリレー102と負(N)側のリレー103とが同時にONとなって、大容量の車両V側の蓄電装置30(直流電源)と直接的に接続されたとしても、蓄電装置30から双方向インバータ101へ大きな突入電流が流れることを防止できる。なおその後、リレー106をOFFすることで、突入電流が流れることを確実に防止できる。なお、上記において、抵抗R及びリレー106は、正側のリレー102に対して並列に接続された場合の説明をしたが、正側のリレー102ではなく、負側のリレー103に並列に接続されてもよく、正側のリレー102及び負側のリレー103の両方に並列に接続されていてもよい。また、リレー106はなく抵抗Rのみが並列に接続される構成としてもよい。
【0042】
このような構成の充放電装置1による車両Vの蓄電装置30への充放電開始までの処理について説明する。図3は、第1実施形態の充放電装置1における処理手順の一例を示すフローチャートである。制御部11は、操作部14のスタートボタンへの操作を受けて起動すると、以下の処理を開始する。制御部11はその他、上位装置からの起動の指示を受けた場合や、自身のスケジューラ機能により起動した場合に、以下の処理を開始してもよい。
【0043】
充放電装置1の制御部11は、コネクタ15及びコネクタ35の接続、即ち車両Vとの接続を確認すると(ステップS101)、コネクタ15及びコネクタ35のロックをONとする(ステップS102)。接続の確認は、所定の信号の授受が可能であるか否かの判断によって可能である。接続されていない場合は、エラーとなり開始処理を実行できない。
【0044】
制御部11は、車両通信部12によって車載制御装置32との通信接続を確立させる(ステップS103)。通信接続が確立されると制御部11は、車載制御装置32へ、充放電装置1側の設定情報を車両通信部12から送信する(ステップS104)。
【0045】
制御部11は、ステップS104の設定情報の送信に応じて、車載制御装置32から送信される充電上限電圧値を含む車両情報を受信したか否かを判断する(ステップS105)。車両情報を受信していないと判断された場合(S105:NO)、制御部11は、処理をステップS105に戻し、受信するまで待機する。
【0046】
車両情報を受信したと判断された場合(S105:YES)、制御部11は、受信した車両情報に含まれる充電上限電圧値に基づき、双方向インバータ101の直流側、即ちスイッチ回路10a側に、充電上限電圧値を上限として電圧を印加させる(ステップS106)。この時点で双方向インバータ101の運転(電力変換)は開始させない。
【0047】
接続される車両Vが充電専用車であるか、又は放電ができない状態であるケースでは、蓄電装置30と接続したとしてもコンデンサC1への電力を蓄電装置30からは得られない場合がある。ステップS106において制御部11は、双方向インバータ101あるいは電源部13を電源として印加できる。別途、充電用回路を設けてもよい。接続される車両VがV2Xに対応して放電も可能である場合は、コンデンサC1への電力を蓄電装置30から得て、コンデンサC1を充電して後述のように電圧を車両V側と平衡させるようにするとよい。
【0048】
制御部11は、車両V側のスイッチ回路33がONになったか否かを判断する(ステップS107)。ステップS107において制御部11は、直接的にスイッチ回路33がONになったか否かを判断してもよいし、スイッチ回路33のONの通知を車載制御装置32から受信したか否かを判断してもよい。
【0049】
車両V側のスイッチ回路33がONになっていないと判断された場合(S107:NO)、制御部11は処理をステップS107へ戻す。この場合、電圧の印加を開始したまま平衡状態となっていなくてもよい。
【0050】
車両V側のスイッチ回路33がONになったと判断された場合(S107:YES)、制御部11は、突入電流防止回路104のリレー106及び負側のリレー103をONとし(ステップS108)、運転開始手続きの完了を車載制御装置32へ通知する(ステップS109)。ステップS108において制御部11は、双方向インバータ101の直流側の電圧をステップS106で印加することにより、蓄電装置30の電圧以上であることを確認してもよい。制御部11は、双方向インバータ101の直流側の電圧と、車両V側の電圧とが平衡状態となることを待たずに処理を進める。
【0051】
制御部11は、車載制御装置32から運転開始手続きの完了通知を受信したか否かを判断する(ステップS110)。車載制御装置32から完了通知を受信していないと判断された場合(S110:NO)、制御部11は、処理をステップS110に戻す。この間、突入電流防止回路104のリレー106及び負側のリレー103のONを維持している。
【0052】
制御部11は、完了通知を受信したと判断された場合(S110:YES)、双方向インバータ101の直流側の電圧と、電圧検知部105で検知できる車両Vの電圧とが平衡状態となったか否かを判断する(ステップS111)。平衡状態となっていないと判断された場合(S111:NO)、制御部11は、処理をステップS111へ戻し、平衡状態となるまで待機する。ステップS111において制御部11は、電流が流れていないか否か、即ち電流値が所定値よりも小さいか否かを判断してもよい。
【0053】
平衡状態となったと判断された場合(S111:YES)、制御部11は、突入電流防止回路104のリレー106をOFFとして正側のリレー102をONとする(ステップS112)。これにより双方向インバータ101の運転は開始され、充放電の準備が完了する。スイッチ回路10bがONとなれば、充放電が開始される。
【0054】
図3のフローチャートに示した処理手順において、制御部11は、通信接続を開始して車両Vが充電専用車であると判断された場合に限り、ステップS106以降の手順による双方向インバータ101の直流側の電圧上昇の処理を実行してもよい。
【0055】
これにより、車両V側のスイッチ回路33の前後の構成に関わらず、蓄電装置30を電源とすることなしに、突入電流防止回路104を用いて双方向インバータ101への突入電流を防ぐ処理も実施しながら充放電の準備を完了させることができる。
【0056】
(変形例)
第1実施形態の充放電開始までの処理は、下記の手順に置き換えられてもよい。図4は、第1実施形態の変形例における処理手順の一例を示すフローチャートである。図4のフローチャートに示す処理手順のうち、第1実施形態の図3のフローチャートに示した処理手順については、同一のステップ番号を付して詳細な説明を省略する。変形例で充放電装置1は、双方向インバータ101と蓄電装置30との間の電流を検出する電流検出部を備えて用いる。なお、変形例の処理手順は、以下の第2実施形態から第7実施形態においても採用可能である。
【0057】
変形例において制御部11は、車両情報を受信したと判断した場合(S105:YES)、双方向インバータ101の直流側への電圧の印加を行なうことなしに、車両V側のスイッチ回路33がONになったか否かを判断する(S107)。
【0058】
そして制御部11は、突入電流防止回路104のリレー106及び負側のリレー103をONとすると(S108)、突入電流を検出したか否かを判断する(ステップS201)。突入電流を検出しないと判断した場合、即ち蓄電装置30とコンデンサC1の電圧(双方向インバータ101の直流側の電圧)が平衡状態である場合(S201:NO)、制御部11は、運転開始手続きの完了を車載制御装置32へ通知する(S109)。制御部11は、車載制御装置32から運転開始手続きの完了通知を受信したか否かを判断する(S110)。車載制御装置32から完了通知を受信していないと判断された場合(S110:NO)、制御部11は、処理をステップS110に戻す。
【0059】
制御部11は、完了通知を受信したと判断された場合(S110:YES)、双方向インバータ101の直流側の電圧と、車両Vの電圧との平衡状態を待つことなしに、突入電流防止回路104のリレー106をOFFとして正側のリレー102をONとする(S112)。双方向インバータ101の直流側の電圧と、車両Vの電圧との平衡状態を待つことがないのは、突入電流が流れない、つまり電圧は平衡状態にあると判断できるからである。制御部11は処理を終了する。
【0060】
突入電流を検出したと判断された場合(S201:YES)、制御部11は、運転開始手続きの完了を車載制御装置32へ通知し(ステップS202)、車載制御装置32から運転開始手続きの完了通知を受信したか否かを判断する(ステップS203)。この場合、制御部11は、完了通知を受信していないと判断された場合(S203:NO)、処理をステップS203に戻す。
【0061】
ステップS203で完了通知を受信したと判断された場合(S203:YES)、制御部11は、双方向インバータ101の直流側の電圧と、電圧検知部105で検知できる車両Vの電圧とが平衡状態となったか否かを判断する(S111)。そして制御部11は、平衡状態となっていないと判断された場合(S111:NO)、処理をステップS111へ戻す。平衡状態となったと判断された場合(S111:YES)、制御部11は処理をステップS112へ進める。
【0062】
(第2実施形態)
第2実施形態の充放電装置1の構成は、第1実施形態の充放電装置1と同様であり、処理手順のみ異なる。以下、第2実施形態の充放電装置1の構成のうち、第1実施形態の充放電装置1と共通の構成については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0063】
図5は、第2実施形態の充放電装置1における処理手順の一例を示すフローチャートである。図5のフローチャートに示す処理手順のうち、第1実施形態の図3のフローチャートに示した処理手順は、同一のステップ番号を付して詳細な説明を省略する。
【0064】
第2実施形態において充放電装置1の制御部11は、ステップS104で設定情報を送信した後(S104)、車両情報の受信を待たずに、車両V側のスイッチ回路33がONになったか否かを判断する(ステップS125)。ステップS125において制御部11は、直接的にスイッチ回路33がONになったか否かを判断してもよいし、スイッチ回路33のONの通知を車載制御装置32から受信したか否かを判断してもよい。この間、制御部11は、車載制御装置32から送信される車両情報を受信する。
【0065】
車両V側のスイッチ回路33がONになっていないと判断された場合(S125:NO)、制御部11は処理をステップS125へ戻す。この間、制御部11は車載制御装置32との間で情報の授受をしてもよい。
【0066】
車両V側のスイッチ回路33がONになったと判断された場合(S125:YES)、制御部11は、電圧検知部105で車両Vと接続される正側の電圧を測定する(ステップS126)。制御部11は、ステップS126で得られる車両V側の電圧を上限として、双方向インバータ101の直流側、即ちスイッチ回路10a側に、電圧を印加させ(ステップS127)、処理をステップS108へ進める。制御部11は、双方向インバータ101の直流側の電圧と、車両V側の電圧とが平衡状態となってから処理を進めてもよい。
【0067】
第2実施形態では、ステップS125にて車両V側のスイッチ回路33がONになったか否かを判断しているため、制御部11は、運転開始手続きの完了を車載制御装置32へ通知した後(S109)、平衡状態となったか否かを判断する(S111)。制御部11は、平衡状態となったと判断された場合(S111:YES)、突入電流防止回路104のリレー106をOFFとして正側のリレー102をONとする(S112)。
【0068】
ステップS127において、接続される車両Vが充電専用車であるか、又は放電ができない状態であるケースでは、蓄電装置30と接続したとしてもコンデンサC1への電力を蓄電装置30からは得られない場合、制御部11は電力系統E、あるいは電源部13を電源として印加できる。接続される車両VがV2Xに対応して放電も可能である場合は、コンデンサC1への電力を蓄電装置30から得て、コンデンサC1を充電して後述のように電圧を車両V側と平衡させるようにするとよい。
【0069】
第2実施形態においても、車両V側のスイッチ回路33の前後の構成に関わらず、蓄電装置30を電源とすることなしに、突入電流防止回路104を用いて双方向インバータ101と蓄電装置30間の突入電流を防ぐ処理も実施しつつ、充放電の準備を完了させることができる。
【0070】
(第3実施形態)
図6は、第3実施形態の充放電装置1のスイッチ回路10aと車両Vのスイッチ回路33の回路構成を示す図である。スイッチ回路10aの構成の一部、及び詳細な処理手順を除き、第3実施形態の充放電装置1の構成は第1実施形態の充放電装置1と同様であるため、第1実施形態の充放電装置1の構成と共通する部分には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0071】
第3実施形態の充放電装置1のスイッチ回路10aは、図6に示すように、一対のリレー102,103、及び電圧検知部105に加え、車両V寄りに、逆流防止回路(ダイオード)107及び、ショート回路108が設けられている。第3実施形態では、突入電流防止回路104が設けられていない。図6においても、車両V側のスイッチ回路33以外の構成は、個々の車両Vによって異なるため、スイッチ回路33前後の不確定な充放電回路の構成について破線のブロックで示している。充放電装置1は、対象とする車両Vの構成は問わない。
【0072】
逆流防止回路107は、図6に示すようにダイオードであって、車両Vの蓄電装置30を充電する場合のみの回路である。逆流防止回路107は、電圧検知部105とコネクタ15との間に介装されている。ショート回路108は、逆流防止回路107に並列に接続されており、逆流防止回路107を通らずに電圧検知部105とコネクタ15との間の直接接続をON及びOFFする回路である。
【0073】
図7は、第3実施形態の充放電装置1における処理手順の一例を示すフローチャートである。図7のフローチャートに示す処理手順のうち、第1実施形態の図3のフローチャートに示した処理手順は、同一のステップ番号を付して詳細な説明を省略する。
【0074】
第3実施形態において制御部11は、車載制御装置32と通信接続を確立させると(S103)、逆流防止回路107をON(有効)とする(ステップS131)。ステップS131において制御部11はつまり、ショート回路108をOFFとする。
【0075】
制御部11は、車両側のスイッチ回路33がONになったか否かを判断する(ステップS132)。ステップS132において制御部11は、直接的にスイッチ回路33がONになったか否かを判断してもよいし、スイッチ回路33のONの通知を車載制御装置32から受信したか否かを判断してもよい。
【0076】
車両側のスイッチ回路33がONになっていないと判断された場合(S132:NO)、制御部11は処理をステップS132へ戻す。
【0077】
車両側のスイッチ回路33がONになったと判断された場合(S132:YES)、制御部11は、充放電装置1側の運転開始手続きの完了を車載制御装置32へ通知し(ステップS133)、車載制御装置32から運転開始手続きの完了通知を受信したか否かを判断する(ステップS134)。車載制御装置32から完了通知を受信していないと判断された場合(S134:NO)、制御部11は、処理をステップS134に戻す。この間、逆流防止回路107の有効のONが維持されている。
【0078】
制御部11は、完了通知を受信したと判断された場合(S134:YES)、リレー102,103をONとする(ステップS135)。
【0079】
ステップS135において制御部11は、双方向インバータ101の直流出力側の電圧と蓄電装置30の電圧とが一致している場合は、逆流防止回路107をONのままとしてもよいし、ショート回路108をONとして逆流防止回路107をショートさせてもよい。ショート回路108をONとした場合、ダイオードで電力が損失されることを回避することができる。
【0080】
制御部11は、双方向インバータ101をソフトスタート(0Vから開始)させる(ステップS136)。制御部11は、接続された車両Vが充電専用車であるか否かを判断する(ステップS137)。ステップS137において制御部11は、設定情報及び車両情報の送受信(S104、S105)を実行して得られた情報によって判断してもよい。
【0081】
ステップS135,S136において制御部11は、双方向インバータ101の直流出力側の電圧を、蓄電装置30の電圧以下とするように制御してもよい。
【0082】
充電専用車であると判断された場合(S137:YES)、制御部11は、充電の準備を完了させる。以後、徐々に出力電圧を上げていく双方向インバータ101の直流側と、車両V側とで電圧が平衡状態になり、充電が開始される。
【0083】
充電専用車でないと判断された場合(S137:NO)、制御部11は、ショート回路108をON(有効)として逆流防止回路107を迂回し(ステップS138)、処理を終了する。
【0084】
ステップS103において車載制御装置との通信接続を確立後の処理としては、第1実施形態又は第2実施形態で示したような受信された車両情報に基づく双方向インバータ101の直流側の電圧の上昇や、車載制御装置32との間の情報の送受信に基づく処理が実行される。ステップS131において充電専用車でないと判断された場合の処理は、第1実施形態又は第2実施形態に示した処理手順に限らず、車両Vの蓄電装置30を電源としてコンデンサC1を充電して、平衡状態としてからリレー102,103をONとする処理であってもよい。
【0085】
第3実施形態において制御部11は、双方向インバータ101を停止させるたびに、コンデンサC1を放電させて電圧を下げる。これにより、双方向インバータ101の直流側の電圧が高いままの状態が維持されて、車両V側へ突入電流が流れてしまうことを防止できる。
【0086】
逆流防止回路107を使用した構成により、充電専用車である車両Vが接続された場合に、ダイオードを挿入した状態で、車両Vの蓄電装置30と、充放電装置1側とで電圧が平衡状態となるようにし、トラブルなく充放電が可能である。
【0087】
(第4実施形態)
第4実施形態の充放電装置1の構成は、第3実施形態の充放電装置1と同様であり、処理手順のみ異なる。以下、第4実施形態の充放電装置1の構成のうち、第3実施形態の充放電装置1と共通の構成については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0088】
図8は、第4実施形態の充放電装置1における処理手順の一例を示すフローチャートである。図8のフローチャートに示す処理手順のうち、第1実施形態の図3のフローチャートに示した処理手順は、同一のステップ番号を付して詳細な説明を省略する。
【0089】
第4実施形態において制御部11は、双方向インバータ101をソフトスタートさせた後(S136)、操作部14によって、充電スタートの操作を受けたか否かを判断する(ステップS141)。
【0090】
充電スタートの操作を受けたと判断された場合(S141:YES)、制御部11は、充電スタートであるとして、ショート回路108をONとすることなしに、そのまま準備処理を終了する。
【0091】
充電スタートの操作を受けていないと判断された場合(S141:NO)、放電スタートであるとして、制御部11は、ショート回路108をON(有効)とし逆流防止回路107を迂回し(S138)、準備処理を終了する。なお、充電スタートの操作を受けていない場合とは、充電スタート操作を受けていない、即ち、運転の指示がない待機状態であるか、若しくは、放電スタートの操作を受けている場合である。
【0092】
第4実施形態においても、制御部11は、双方向インバータ101を停止させるたびに、コンデンサC1を放電させて電圧を下げる。
【0093】
第3実施形態及び第4実施形態における図5の回路構成の突入電流防止回路104を使用しない場合、リレー102,103をONとする前に、停電時等、双方向インバータ101の直流電力側の電圧を上昇させる電源が蓄電装置30以外にないと、自立運転(蓄電装置30から電力負荷群への放電)の実施は困難である。この場合、充放電装置1内に専用の充電用回路を電源部13内に備えておき、これにより双方向インバータ101の直流電力側の電圧を上昇させてもよい。
【0094】
(第5実施形態)
図9は、第5実施形態の充放電装置1のスイッチ回路10aと車両Vのスイッチ回路33の回路構成を示す図である。スイッチ回路10aの構成の一部、及び詳細な処理手順を除き、第5実施形態の充放電装置1の構成は第1及び第3実施形態の充放電装置1と同様であるため、第1及び第3実施形態の充放電装置1の構成と共通する部分には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0095】
第5実施形態の充放電装置1のスイッチ回路10aは、リレー102に並列に設けられる突入電流防止回路104と、車両V側に逆流防止回路107及びショート回路108とをいずれも備える。各々の機能は、第1実施形態及び第3実施形態で説明した通りであるから、詳細な説明を省略する。
【0096】
図10及び図11は、第5実施形態の充放電装置1における処理手順の一例を示すフローチャートである。図10及び図11のフローチャートに示す処理手順のうち、第1実施形態の図3のフローチャートに示した処理手順は、同一のステップ番号を付して詳細な説明を省略する。
【0097】
第3実施形態において制御部11は、車載制御装置32と通信接続を確立させると(S103)、制御部11は、車載制御装置32へ、充放電装置1側の設定情報を車両通信部12から送信する(S104)。
【0098】
制御部11は、設定情報の送信に応じて、車載制御装置32から送信される充電上限電圧値を含む車両情報を受信し(ステップS151)、接続された車両Vが充電専用車であるか否かを判断する(ステップS152)。
【0099】
充電専用車であると判断された場合(S152:YES)、逆流防止回路107をON(有効)とする(ステップS153)。ステップS153において制御部11はつまり、ショート回路108をOFFとする。
【0100】
制御部11は、受信した車両情報に含まれる充電上限電圧値に基づき、双方向インバータ101の直流側、即ちスイッチ回路10a側に、充電上限電圧値を上限として電圧を印加させる(ステップS154)。このとき制御部11は、電力系統E、あるいは電源部13を電源として電圧を印加し、コンデンサC1を充電する。
【0101】
制御部11は、車両側のスイッチ回路33がONになったか否かを判断する(ステップS155)。ステップS155において制御部11は、直接的にスイッチ回路33がONになったか否かを判断してもよいし、スイッチ回路33のONの通知を車載制御装置32から受信したか否かを判断してもよい。
【0102】
車両側のスイッチ回路33がONになっていないと判断された場合(S155:NO)、制御部11は処理をステップS155へ戻す。この場合、電圧の印加を開始したまま平衡状態となっていなくてもよい。
【0103】
車両側のスイッチ回路33がONになったと判断された場合(S155:YES)、制御部11は、突入電流防止回路104のリレー106及び負側のリレー103をONとし(ステップS156)、ショート回路108をONとする(ステップS157)。
【0104】
制御部11は、運転開始手続きの完了を車載制御装置32へ通知する(ステップS158)。制御部11は、双方向インバータ101の直流側の電圧と、車両V側の電圧とが平衡となることを待たずに処理を進める。
【0105】
制御部11は、車載制御装置32から運転開始手続きの完了通知を受信したか否かを判断する(ステップS159)。車載制御装置32から完了通知を受信していないと判断された場合(S159:NO)、制御部11は、処理をステップS159に戻す。この間、突入電流防止回路104のリレー106及び負側のリレー103のONを維持している。
【0106】
制御部11は、完了通知を受信したと判断された場合(S159:YES)、双方向インバータ101の直流側の電圧と、電圧検知部105で検知できる車両Vの電圧とが平衡状態となったか否かを判断する(ステップS160)。平衡状態となっていないと判断された場合(S160:NO)、制御部11は、処理をステップS160へ戻し、平衡状態となるまで待機する。
【0107】
平衡状態となったと判断された場合(S160:YES)、制御部11は、突入電流防止回路104のリレー106をOFFとして正側のリレー102をONとする(ステップS161)。制御部11は、ショート回路108をOFFとし(ステップS162)、充放電の準備が完了する。スイッチ回路10bがONとなれば、充電が開始される。ここで制御部11は、双方向インバータ101をソフトスタートさせなくてもよい。ステップS162のショート回路108のOFFの処理は省略されてもよい。
【0108】
ステップS152において充電専用車でないと判断された場合(S152:NO)、制御部11は、充放電対応の車両V用の処理を実行し(ステップ163)、準備の処理を完了する。ステップS163における処理は、車両Vの蓄電装置30を電源としてコンデンサC1を充電して、平衡状態としてからリレー102,103をONとする処理であってもよい。
【0109】
なお、図10及び図11のフローチャートに示した処理手順は一例である。充電専用車である場合には(S152:YES)、制御部11は、第3及び第4実施形態で示したように、逆流防止回路107をONとして双方向インバータ101をソフトスタートさせる処理を実行し、突入電流防止回路104を使用した事前の電圧上昇をさせなくてもよい。充電専用車でないと判断された場合に(S152:NO)、ステップS153-S163の処理を実行することとしてもよい。
【0110】
(第6実施形態)
図12は、第6実施形態の充放電装置1のスイッチ回路10aと車両Vのスイッチ回路33の回路構成を示す図である。スイッチ回路10aの構成の一部、及び詳細な処理手順を除き、第6実施形態の充放電装置1の構成は第1及び第5実施形態の充放電装置1と同様であるため、第1及び第5実施形態の充放電装置1の構成と共通する部分には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0111】
第6実施形態のスイッチ回路10aは、正(P)側と負(N)側との1対のリレー102,103と、突入電流防止回路104と、電圧検知部105と、逆流防止回路107とを含んで構成されている。突入電流防止回路104は、正側のリレー102に並列に接続されるリレー106及び抵抗Rで構成される。逆流防止回路107は、リレー102に対して並列に接続されるダイオードである。
【0112】
第6実施形態において制御部11は、第1実施形態の図3のフローチャートに示した処理、第2実施形態の図4のフローチャートに示した処理を実行する。制御部11は、第5実施形態の図10及び図11のフローチャートに示した処理手順と同様の手順を実行してもよい。なお、第6実施形態におけるスイッチ回路10aは、ショート回路108を含まず、逆流防止回路107は、リレー102に並列に接続されているため、図10及び図11のフローチャートに示した処理手順の内のショート回路108に対するON及びOFFの処理手順については、突入電流防止回路104のON及びOFFに代替される。
【0113】
第6実施形態の充放電装置1の構成により、充放電のいずれにも対応する車両であっても、充電専用車両であっても、双方向インバータ101の直流側の電圧を充放電の開始に必要な電圧まで上昇させ、車両Vと充放電装置1との間の規定に基づく所定のシーケンスを実行できる。
【0114】
なお第6実施形態では、図10及び図11のフローチャートにおいてステップS156,S157の処理において、双方向インバータ101の直流側の電圧を蓄電装置30の電圧よりも高くなるまでは充電しないように制御する。
【0115】
(第7実施形態)
図13は、第7実施形態の充放電装置1のスイッチ回路10aと車両Vのスイッチ回路33の回路構成を示す図である。スイッチ回路10aの構成の一部、及び詳細な処理手順を除き、第7実施形態の充放電装置1の構成は第1及び第5実施形態の充放電装置1と同様であるため、第1及び第5実施形態の充放電装置1の構成と共通する部分には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0116】
第7実施形態のスイッチ回路10aは、正(P)側と負(N)側との1対のリレー102,103と、突入電流防止回路104と、電圧検知部105と、逆流防止回路107とを含んで構成されている。突入電流防止回路104は、正側のリレー102に並列に接続されるリレー106及び抵抗Rで構成される。逆流防止回路107は、リレー102に対して並列に接続されるリレー109及びダイオードで構成される。
【0117】
第7実施形態において制御部11は、第5実施形態の図9及び図10のフローチャートに示した処理手順と同様の手順を実行する。なお、第7実施形態におけるスイッチ回路10aは、ショート回路108を含まないため、図10及び図11のフローチャートに示した処理手順の内のショート回路108に対するON及びOFFの処理手順については、突入電流防止回路104のON及びOFFに代替される。
【0118】
第7実施形態の充放電装置1の構成により、充放電のいずれにも対応する車両であっても、充電専用車両であっても、双方向インバータ101の直流側の電圧を充放電の開始に必要な電圧まで上昇させ、車両Vと充放電装置1との間の規定に基づく所定のシーケンスを実行できる。
【0119】
第7実施形態においても、図10及び図11のフローチャートにおいてステップS156,S157の処理において、双方向インバータ101の直流側の電圧を蓄電装置30の電圧よりも高くなるまでは充電しないように制御する。
【0120】
第5から第7実施形態において、突入電流防止回路104及び逆流防止回路107を併用する場合、停電時の自立運転(蓄電装置30から電力負荷群への放電)を実施する際には、突入電流防止回路104を使用して、蓄電装置30からの電力によってコンデンサC1を充電させてもよい。
【0121】
第1から第7実施形態において、スイッチ回路10aは、一対のリレー102,103を備え、少なくとも一方をOFFとして充放電を待機し、双方をONとして充放電を開始させるものとして説明した。しかしながら、スイッチ回路10aは、電力線の正(P)側及び負(N)側の少なくとも一方に設けられたリレー102(103)を含んで構成される。そして、突入電流防止回路104は、そのリレー102(103)の少なくとも一方に接続されるとよい。図14図17は、スイッチ回路10aの変形例を示す図である。
【0122】
図14に示すスイッチ回路10aは、図2に示した第1実施形態のスイッチ回路10aと比較すると明確であるように、負(N)側のリレー103が存在しない。図14に示すスイッチ回路10aでは、突入電流防止回路104は、抵抗Rと直列に接続されたリレー106から構成され、正(P)側のリレー102に並列に接続してある。図14に示すスイッチ回路10aにおいても、制御部11は、第1実施形態、その変形例、又は第2実施形態に示した処理手順を実行する。
【0123】
図15に示すスイッチ回路10aは、図2に示した第1実施形態のスイッチ回路10aと比較すると明確であるように、正(P)側のリレー102が存在しない。図15に示すスイッチ回路10aでは、突入電流防止回路104は、抵抗Rと直列に接続されたリレー106から構成され、負(N)側のリレー103に並列に接続してある。図15に示すスイッチ回路10aにおいて制御部11は、第1実施形態、その変形例、第2実施形態に示した処理手順を、リレー102とリレー103とを代替して読み替えて実行する。
【0124】
図16に示すスイッチ回路10aは、図2に示した第1実施形態のスイッチ回路10aと比較すると明確であるように、一対のリレー102,103を含むが、突入電流防止回路104は、負(N)側のリレー103に並列に接続してある。図16に示すスイッチ回路10aにおいて制御部11は、第1実施形態、その変形例、第2実施形態に示した処理手順を、リレー102とリレー103とを代替して読み替えて実行する。
【0125】
図17に示すスイッチ回路10aは、図2に示した第1実施形態のスイッチ回路10aと比較すると明確であるように、一対のリレー102,103を含むが、突入電流防止回路104は、正(P)側のリレー102及び負(N)側のリレー103の両者に並列に接続してある。スイッチ回路10aは、図17に示す構成であってもよい。
【0126】
図14図17に示したスイッチ回路10aそれぞれにおけるリレー102(103)の構成は、変形例及び第2から第7実施形態のスイッチ回路10aにも適用可能である。突入電流防止回路104又は逆流防止回路107は、そのリレー102(103)の少なくとも一方に接続されるとよい。そして図14図17に示したスイッチ回路10aそれぞれにおける突入電流防止回路104の接続形態は、第5実施形態の図9に示したスイッチ回路10a、図12に示したスイッチ回路10a、図12に示したスイッチ回路10aにも適用可能である。
【0127】
上述のように開示された実施の形態は全ての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0128】
1 充放電装置
11 制御部
10 充放電回路
10a,10b スイッチ回路
101 双方向インバータ(電力変換器)
102,103,106 リレー
104 突入電流防止回路
105 電圧検知部
107 逆流防止回路(ダイオード)
108 ショート回路
1P コンピュータプログラム
V 車両
30 蓄電装置
32 車載制御装置
33 スイッチ回路
331,332 リレー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17