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特開2023-134337高電子移動度トランジスタ構造及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134337
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】高電子移動度トランジスタ構造及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/338 20060101AFI20230920BHJP
   H01L 21/20 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
H01L29/80 H
H01L21/20
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170771
(22)【出願日】2022-10-25
(31)【優先権主張番号】111109214
(32)【優先日】2022-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】515124783
【氏名又は名称】環球晶圓股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】林伯融
(72)【発明者】
【氏名】劉嘉哲
【テーマコード(参考)】
5F102
5F152
【Fターム(参考)】
5F102GJ02
5F102GJ03
5F102GJ10
5F102GK04
5F102GL04
5F102GM04
5F102GQ01
5F102HC01
5F152LM08
5F152LN19
5F152MM05
5F152NN03
5F152NN05
5F152NN13
5F152NP09
5F152NQ09
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、ドーパントによるチャネル層のシート抵抗値への影響を低減し、良好な性能を有する高電子移動度トランジスタを提供可能な高電子移動度トランジスタ構造及びその製造方法を提供することにある。
【解決手段】高電子移動度トランジスタ改良構造は、基板と、核生成層と、バッファ層と、チャネル層と、バリア層とを順に含み、前記バッファ層は、ドーパントを含み、前記チャネル層は、前記バッファ層よりも、低い前記ドーパントのドープ濃度を有し、前記バリア層は、二次元電子ガスが前記チャネル層と前記バリア層との間の界面に沿って前記チャネル層に形成され、前記チャネル層は、前記バリア層との間の界面における前記ドーパントのドープ濃度が、1×1015cm-3以上である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電子移動度トランジスタ改良構造であって、
基板と、
核生成層と、
ドーパントを含むバッファ層と、
前記バッファ層よりも、低い前記ドーパントのドープ濃度を有するチャネル層と、
バリア層であって、二次元電子ガスが前記チャネル層と前記バリア層との間の界面に沿って前記チャネル層に形成されるバリア層とを順に含み、
前記チャネル層は、前記バリア層との間の界面における前記ドーパントのドープ濃度が、1×1015cm-3以上である、高電子移動度トランジスタ改良構造。
【請求項2】
前記ドーパントは、鉄である、請求項1に記載の高電子移動度トランジスタ改良構造。
【請求項3】
前記チャネル層は、前記バリア層との間の界面における前記ドーパントのドープ濃度が、1×1016cm-3以上2×1017cm-3以下である、請求項1に記載の高電子移動度トランジスタ改良構造。
【請求項4】
前記チャネル層における鉄原子濃度は、前記バッファ層と前記チャネル層との境界から、前記チャネル層と前記バリア層との間の界面の方向に向かって漸減する、請求項1に記載の高電子移動度トランジスタ改良構造。
【請求項5】
前記バッファ層における前記ドーパントのドープ濃度は、2×1017cm-3以上である、請求項1に記載の高電子移動度トランジスタ改良構造。
【請求項6】
前記チャネル層は、窒化アルミニウムガリウム又は窒化ガリウムである、請求項1に記載の高電子移動度トランジスタ改良構造。
【請求項7】
前記核生成層は、窒化アルミニウム(AlN)又は窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)である、請求項1に記載の高電子移動度トランジスタ改良構造。
【請求項8】
前記基板は、抵抗率が1000Ω/cm以上の基板である、請求項1に記載の高電子移動度トランジスタ改良構造。
【請求項9】
前記バッファ層と前記チャネル層との合計厚さは、2ミクロン以下である、請求項1に記載の高電子移動度トランジスタ改良構造。
【請求項10】
前記バッファ層における前記ドーパントのドープ濃度は、同じ厚さ位置での分布が均一であり、前記チャネル層における前記ドーパントのドープ濃度は、同じ厚さ位置での分布が均一である、請求項1に記載の高電子移動度トランジスタ改良構造。
【請求項11】
高電子移動度トランジスタ構造の製造方法であって、
基板を用意するステップと、
前記基板の上方に核生成層を形成するステップと、
前記核生成層の上方にバッファ層を形成すると同時に、ドーピング工程を行うステップと、
前記バッファ層の上方にチャネル層を形成するステップと、
前記チャネル層の上方にバリア層を形成するステップであって、二次元電子ガスが前記チャネル層と前記バリア層との間の界面に沿って前記チャネル層に形成されるステップとを含み、
前記チャネル層は、前記バリア層との間の界面におけるドーパントのドープ濃度が、1×1015cm-3以上である、高電子移動度トランジスタ構造の製造方法。
【請求項12】
前記ドーピング工程において、鉄がドーピングされる、請求項11に記載の高電子移動度トランジスタ構造の製造方法。
【請求項13】
前記チャネル層は、前記バリア層との間の界面における前記ドーパントのドープ濃度が、1×1016cm-3以上2×1017cm-3以下である、請求項11に記載の高電子移動度トランジスタ構造の製造方法。
【請求項14】
前記チャネル層における鉄原子濃度は、前記バッファ層と前記チャネル層との境界から、前記チャネル層と前記バリア層との間の界面の方向に向かって漸減する、請求項11に記載の高電子移動度トランジスタ構造の製造方法。
【請求項15】
前記バッファ層は、前記ドーピング工程におけるドーパントのドープ濃度が、2×1017cm-3以上である、請求項11に記載の高電子移動度トランジスタ構造の製造方法。
【請求項16】
前記チャネル層は、窒化アルミニウムガリウム又は窒化ガリウムである、請求項11に記載の高電子移動度トランジスタ構造の製造方法。
【請求項17】
前記核生成層は、窒化アルミニウム(AlN)又は窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)である、請求項11に記載の高電子移動度トランジスタ構造の製造方法。
【請求項18】
前記基板は、抵抗率が1000Ω/cm以上の基板である、請求項11に記載の高電子移動度トランジスタ構造の製造方法。
【請求項19】
前記バッファ層と前記チャネル層との合計厚さは、2ミクロン以下である、請求項11に記載の高電子移動度トランジスタ構造の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体技術に関するものであり、特に、高電子移動度トランジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
高電子移動度トランジスタ(High Electron Mobility Transistor,HEMT)は、二次元電子ガス(two dimensional electron gas,2-DEG)を有するトランジスタとして知られ、その二次元電子ガスが、エネルギーギャップの異なる2種類の材料間のヘテロ接合面に隣接しており、高電子移動度トランジスタが、トランジスタのキャリアチャネルとしてドープ領域を使用するのではなく、高い電子移動性を有する二次元電子ガスを使用しているため、高電子移動度トランジスタは、高耐電圧、高電子移動度、低オン抵抗及び低入力容量等の特性を持っており、高出力半導体裝置に広く適用可能である。
【0003】
一般的に、性能を向上させるためには、高電子移動度トランジスタのバッファ層にドーピングされることが多いが、バッファ層におけるドーパントがチャネル層に透過拡散して析出されることで、例えばチャネル層のシート抵抗値が上昇する等の問題に繋がってしまう。そのため、如何にドーパントによるチャネル層のシート抵抗値への影響を低減し、良好な性能を有する高電子移動度トランジスタを提供するかは、早急に解決すべき問題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これに鑑みて、本発明の目的は、ドーパントによるチャネル層のシート抵抗値への影響を低減し、良好な性能を有する高電子移動度トランジスタを提供可能な高電子移動度トランジスタ構造及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明による高電子移動度トランジスタ改良構造は、基板と、核生成層と、バッファ層と、チャネル層と、バリア層とを順に含み、前記バッファ層は、ドーパントを含み、前記チャネル層は、前記バッファ層よりも、低い前記ドーパントのドープ濃度を有し、前記バリア層は、二次元電子ガスが前記チャネル層と前記バリア層との間の界面に沿って前記チャネル層に形成され、前記チャネル層は、前記バリア層との間の界面における前記ドーパントのドープ濃度が、1×1015cm-3以上である。
【0006】
本発明による高電子移動度トランジスタ構造の製造方法は、基板を用意するステップと、前記基板の上方に核生成層を形成するステップと、前記核生成層の上方にバッファ層を形成すると同時に、ドーピング工程を行うステップと、前記バッファ層の上方にチャネル層を形成するステップと、前記チャネル層の上方にバリア層を形成するステップであって、二次元電子ガスが前記チャネル層と前記バリア層との間の界面に沿って前記チャネル層に形成されるステップとを含み、前記チャネル層は、前記バリア層との間の界面における前記ドーパントのドープ濃度が、1×1015cm-3以上である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の効果としては、前記チャネル層と前記バリア層との間の界面における前記ドーパントのドープ濃度が、1×1015cm-3以上であるように設計することで、前記金属ドーパントによる前記窒化物チャネル層のシート抵抗値への影響を低減し、良好な性能を有する高電子移動度トランジスタ改良構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の1つの好ましい実施例に係る高電子移動度トランジスタ改良構造の模式図である。
図2図2は、本発明に係る1つの好ましい実施例における高電子移動度トランジスタ構造の製造方法のフローチャートである。
図3図3は、本発明に係る1つの好ましい実施例における高電子移動度トランジスタ構造における窒化物チャネル層の厚さと金属ドープ濃度とを最適化する製造方法のフローチャートである。
図4図4は、本発明に係る1つの好ましい実施例における鉄原子ドープ濃度と厚さとの関係図である。
図5図5は、本発明に係る1つの好ましい実施例におけるシート抵抗値と鉄原子ドープ濃度との関係図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明をより明確に説明できるように、好ましい実施例を挙げ、図面を参照して以下に詳しく説明する。
【0010】
図1に示すように、本発明に係る1つの好ましい実施例における高電子移動度トランジスタ改良構造1は、基板10、核生成層20、バッファ層30、チャネル層40及びバリア層50を順に含み、本発明に係る高電子移動度トランジスタ改良構造は、金属有機化学気相堆積法(MOCVD)によって前記基板上に形成されてもよい。
【0011】
更に説明すれば、前記基板10は、抵抗率が1000Ω/cm以上の基板であり、例えば、前記基板は、SiC基板、サファイア基板又はSi基板であってもよい。
【0012】
前記核生成層20は、窒化アルミニウム(AlN)又は窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)となる窒化物核生成層であり、且つ前記基板10と前記バッファ層30との間に位置する。
【0013】
前記バッファ層30は、ドーパントを含み、本実施例において、前記バッファ層30は、例えば窒化ガリウムとなる窒化物バッファ層であり、前記ドーパントは、金属ドーパントであり、前記金属ドーパントが鉄を例にして説明され、前記バッファ層30における前記ドーパントのドープ濃度は、2×1017cm-3以上であり、前記バッファ層30と前記チャネル層40との境界における金属ドープ濃度は、2×1017cm-3以上である。
【0014】
前記チャネル層40は、例えば窒化アルミニウムガリウム又は窒化ガリウムとなる窒化物チャネル層であり、二次元電子ガスが前記チャネル層40と前記バリア層50との間の界面に沿って前記チャネル層40に形成される。一実施例において、前記バッファ層30と、前記チャネル層40とは、同じ窒化物であって、均一に分布する窒化物からなり、前記チャネル層40の厚さYは、0.6~1.2ミクロンであり、前記バッファ層30と前記チャネル層40との合計厚さTは、2ミクロン以下であり、且つ、前記チャネル層40は、前記バッファ層30よりも、低い前記ドーパントのドープ濃度を有し、前記チャネル層40における金属ドープ濃度、つまり鉄原子濃度は、前記バッファ層30と前記チャネル層40との境界から、前記チャネル層40と前記バリア層50との間の界面の方向に向かって漸減し、他の実施例において、かかる鉄原子濃度は、他の形態で前記バッファ層30及び前記チャネル層40に分布してもよい。
【0015】
更に説明すれば、一実施例において、前記バッファ層30における前記ドーパントのドープ濃度は、同じ厚さ位置での分布が均一であり、前記チャネル層40における前記ドーパントのドープ濃度は、同じ厚さ位置での分布が均一であり、前記バッファ層30の厚さとは、前記バッファ層30が、前記バッファ層30と前記核生成層20との境界から、前記バッファ層の上面まで至る距離又は前記チャネル層40に近づく方向へ延在する距離を指し、前記チャネル層40の厚さとは、前記チャネル層40が、前記バッファ層30と前記チャネル層40との境界から、前記チャネル層40の上面まで至る距離又は前記バリア層50に近づく方向へ延在する距離を指し、好ましくは、前記バッファ層30は、同じ厚さ位置で、(金属ドーパント濃度の最大値-金属ドーパント濃度の最小値)/金属ドーパント濃度の最大値≦0.2という条件を満たし、前記チャネル層は、同じ厚さ位置で、(金属ドーパント濃度の最大値-金属ドーパント濃度の最小値)/金属ドーパント濃度の最大値≦0.2を満たす。
【0016】
前記チャネル層40は、前記バリア層50との間の界面における前記ドーパントのドープ濃度が、1×1015cm-3以上であり、別の実施例において、前記チャネル層40は、前記バリア層50との間の界面における前記ドーパントのドープ濃度が、1×1016cm-3以上2×1017cm-3以下である。
【0017】
前記窒化物バッファ層30と前記窒化物チャネル層40との境界における金属ドープ濃度Xは、1立方センチ当たりの金属原子数として定義され、前記窒化物チャネル層40の厚さYの単位は、ミクロン(μm)であり、前記窒化物チャネル層40の厚さYは、Y≦(0.2171)ln(X)-8.34という条件を満たし、好ましくは、前記窒化物チャネル層40の厚さYは、(0.2171)ln(X)-8.54≦Yという条件を満たす。これにより、前記金属ドーパントによる前記窒化物チャネル層40のシート抵抗値への影響を低減し、良好な性能を有する高電子移動度トランジスタ改良構造を提供することができ、金属ドープ濃度Xが一定値の場合、前記窒化物チャネル層40の厚さYの最大値を推定でき、逆に、前記窒化物チャネル層40の厚さYが一定値の場合、金属ドープ濃度Xの最小値を推定でき、金属ドープ濃度に対応する最適化された窒化物チャネル層40の厚さの数値範囲、又は窒化物チャネル層40の厚さに対応する最適化された金属ドープ濃度の数値範囲が得られる。
【0018】
図2には、本発明に係る1つの好ましい実施例における高電子移動度トランジスタ構造の製造方法のフローチャートが示されており、本発明に係る高電子移動度トランジスタ構造は、金属有機化学気相堆積法(MOCVD)によって基板上に形成されてもよく、前記高電子移動度トランジスタ構造の製造方法は、以下のステップS02~S10を含む。
【0019】
ステップS02は、基板10を用意するステップであり、前記基板10は、抵抗率が1000Ω/cm以上の基板であり、例えば、前記基板10は、SiC基板、サファイア基板又はSi基板であってもよい。
【0020】
ステップS04は、前記基板10の上方に核生成層20を形成するステップであり、前記核生成層20は、窒化アルミニウム(AlN)又は窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)である。
【0021】
ステップS06は、前記核生成層20の上方にバッファ層30を形成すると同時に、ドーピング工程を行うステップであり、前記バッファ層30は、窒化物バッファ層であり、前記窒化物バッファ層のエピタキシャル成長条件は、温度が1030~1070℃であり、圧力が150~250torrであり、V/III比が200~1500であることを満たし、前記ドーピング工程におけるドーパントのドープ濃度は、2×1017cm-3以上であり、前記ドーピング工程は、金属ドーピング工程であり、前記金属ドーピング工程でドーピングされる金属は、鉄であり、前記金属ドーピング工程は、Cp2Fe(ビスクロペンタジエニル鉄)の流量を一定値に制御することを含み、更に、ドーパントのドープ濃度の分布が同じ厚さ位置で均一となる前記バッファ層が得られ、好ましくは、前記バッファ層30は、同じ厚さ位置で、(金属ドーパント濃度の最大値-金属ドーパント濃度の最小値)/金属ドーパント濃度の最大値≦0.2という条件を満たす。
【0022】
ステップS08は、前記バッファ層30の上方にチャネル層40を形成するステップであり、前記チャネル層40は、窒化物チャネル層40であり、前記窒化物チャネル層40のエピタキシャル成長条件は、温度が1030~1070℃であり、圧力が150~250torrであり、V/III比が200~1500であることを満たし、前記窒化物バッファ層30と前記窒化物チャネル層40との境界における金属ドープ濃度は、2×1017cm-3以上であり、本実施例において、前記ステップS08は、前記金属ドーピング工程を停止するとともに、前記バッファ層30の上方にYミクロン(μm)の厚さとなる前記チャネル層40を形成することを含み、かかる厚さとは、前記チャネル層40が、前記バッファ層30と前記チャネル層40との境界から前記チャネル層40の上面まで至る距離を指す。前記バッファ層30と前記チャネル層40との合計厚さは、2ミクロン以下であり、かかる合計厚さとは、前記バッファ層30が、前記バッファ層30と前記核生成層20との境界から前記チャネル層40の上面まで至る距離を指す。前記バッファ層30における鉄原子は、前記バッファ層30とチャネル層40との境界から前記チャネル層40へ拡散されることで、前記チャネル層40における鉄原子濃度は、前記バッファ層30とチャネル層40との境界から、前記チャネル層40の表面の方向に向かって漸減する。
【0023】
前記窒化物バッファ層30と前記窒化物チャネル層40との境界における金属ドープ濃度Xは、1立方センチ当たりにX個の金属原子があるとして定義され、前記窒化物チャネル層40の厚さYは、Y≦(0.2171)ln(X)-8.34を満たし、好ましくは、前記窒化物チャネル層40の厚さYは、(0.2171)ln(X)-8.54≦Yを満たす。
【0024】
ステップS10は、前記チャネル層40の上方にバリア層50を形成するステップであり、二次元電子ガスが前記チャネル層40と前記バリア層50との間の界面に沿って前記チャネル層40に形成され、前記チャネル層40は、前記バリア層50との間の界面における前記ドーパントのドープ濃度が、1×1015cm-3以上であり、好ましくは、前記チャネル層40は、前記バリア層50との間の前記界面における前記ドーパントのドープ濃度が、1×1016cm-3以上2×1017cm-3以下である。
【0025】
更に説明すれば、本実施例において、前記バッファ層30及び前記チャネル層40は、何れも、均一に分布する窒化ガリウムからなり、且つ、前記バッファ層30における前記ドーパントのドープ濃度は、同じ厚さ位置での分布が均一であり、前記チャネル層40における前記ドーパントのドープ濃度は、同じ厚さ位置での分布が均一であり、前記バッファ層30の厚さとは、前記バッファ層30が、前記バッファ層30と前記核生成層20との境界から、前記バッファ層の上面まで至る距離又は前記チャネル層40に近づく方向へ延在する距離を指し、前記チャネル層40の厚さとは、前記チャネル層40が、前記バッファ層30と前記チャネル層40との境界から、前記チャネル層40の上面まで至る距離又は前記バリア層50に近づく方向へ延在する距離を指し、好ましくは、前記バッファ層30は、同じ厚さ位置で、(金属ドーパント濃度の最大値-金属ドーパント濃度の最小値)/金属ドーパント濃度の最大値≦0.2という条件を満たし、前記チャネル層は、同じ厚さ位置で、(金属ドーパント濃度の最大値-金属ドーパント濃度の最小値)/金属ドーパント濃度の最大値≦0.2を満たす。
【0026】
図3に示すように、本発明に係る1つの好ましい実施例における高電子移動度トランジスタ構造における窒化物チャネル層の厚さと金属ドープ濃度とを最適化する製造方法は、以下のステップS202~S210を含む。
【0027】
ステップS202は、基板10を用意し、前記基板10の上方に窒化物核生成層20を形成するステップである。
【0028】
ステップS204は、前記窒化物核生成層20の上方に窒化物バッファ層30を形成すると同時に、金属原子ドーピング工程を行うステップである。
【0029】
ステップS206は、前記金属ドーピング工程を停止するとともに、前記窒化物バッファ層30の上方に窒化物チャネル層40を形成するステップである。
【0030】
ステップS208は、前記窒化物バッファ層30における前記窒化物チャネル層40との境界にて金属の濃度を測定し、前記窒化物チャネル層40の表面及び異なる厚さ位置にて金属原子の濃度を測定して、金属ドープ濃度の数値を複数得て、これらの金属ドープ濃度の数値及び対応する前記窒化物チャネル層40の厚さ位置から、前記窒化物チャネル層における単位厚さ当たりの金属ドープ濃度の変化量をCとして推定するステップである。
【0031】
ステップS210は、これらの金属ドープ濃度の数値のうち、X1とX2との間にあるように金属ドープ濃度の数値を限定するステップであり、これにより、前記窒化物バッファ層30における前記窒化物チャネル層40との境界での金属ドープ濃度をXとし、前記窒化物チャネル層の厚さをYとした場合、X1≦X-C*Y≦X2が満たされ、最適化された金属ドープ濃度の値及び対応する窒化物チャネル層の厚さの値が得られ、前記ステップS208は、前記窒化物チャネル層の異なる厚さ位置にてシート抵抗及び対応する金属ドープ濃度を測定して、シート抵抗値及び対応する金属ドープ濃度の数値を複数ずつ得て、これらのシート抵抗値のうち、異なる2つのシート抵抗値を取得して、対応する2つの金属ドープ濃度の数値X1、X2を得ることを更に含む。
【0032】
例えば、使用者は、ステップS202を実行して、SiC基板を用意し、金属有機化学気相堆積法(MOCVD)によって前記基板上に窒化アルミニウム核生成層を形成することが可能である。
【0033】
次に、ステップS204を実行して、金属有機化学気相堆積法(MOCVD)によって、温度が1030~1070℃であり、圧力が150~250torrであり、V/III比が200~1500であるというエピタキシャル成長条件を満たすように前記窒化アルミニウム核生成層の上方に窒化ガリウムバッファ層を形成すると同時に、鉄原子ドーピング工程を行いながら、Cp2Fe(ビスクロペンタジエニル鉄)の流量を一定値に制御して、前記窒化ガリウムバッファ層における前記鉄原子のドープ濃度を一定値である5×1018cm-3にする。
【0034】
続いて、ステップS206を実行して、前記鉄原子ドーピング工程を停止するとともに、金属有機化学気相堆積法(MOCVD)によって、温度が1030~1070℃であり、圧力が150~250torrであり、V/III比が200~1500であるというエピタキシャル成長条件を満たすように前記窒化ガリウムバッファ層の上方に0.6~1.2ミクロンの厚さとなる窒化ガリウムチャネル層を形成し、前記窒化ガリウムバッファ層と前記窒化ガリウムチャネル層との合計厚さは、2ミクロン以下となる。
【0035】
続いて、ステップS208を実行して、図4に示すように、前記窒化ガリウムチャネル層の異なる厚さ位置T1、T2及びT3にて、それぞれ、対応する鉄原子ドープ濃度の数値C1、C2及びC3を取得して、前記窒化物チャネル層における単位厚さ当たりの金属ドープ濃度の変化量をCとして推定し、本実施例において、C=1/0.2171である。
【0036】
続いて、ステップS210を実行して、前記窒化ガリウムチャネル層の異なる厚さ位置T1、T2及びT3にて、それぞれ、対応するシート抵抗値R1、R2及びR3を取得して、図5に示すように、シート抵抗値をY軸とし、鉄原子ドープ濃度の数値をX軸としてプロットして回帰曲線を得て、前記回帰曲線によって、鉄原子ドープ濃度の数値が固定数値C4よりも小さくなると、鉄原子ドープ濃度の数値に伴って降下する時のシート抵抗値の変化量が0に近くなることを判断した上で、前記固定数値C4の近くで、対応する2つの異なる鉄原子ドープ濃度の数値である5×1016cm-3、1×1017cm-3を取得して、2つの異なる鉄原子ドープ濃度の数値である5×1016cm-3と1×1017cm-3との間にあるように鉄原子ドープ濃度の数値を限定すれば、前記窒化ガリウムバッファ層における前記窒化ガリウムチャネル層との境界での金属ドープ濃度をXとし、前記窒化ガリウムチャネル層の厚さをYとした場合、5×1016≦X-C*Y≦1×1017が満たされ、これにより、(0.2171)ln(X)-8.54≦Y≦(0.2171)ln(X)-8.34が導き出される。ここで、異なる厚さ位置の値、鉄原子ドープ濃度の数値及びシート抵抗値を3つとした例について説明したが、他の実施例において、厚さ位置の値、鉄原子ドープ濃度の数値及びシート抵抗値を3つ以上取得することを排除しない。
【0037】
上記を纏めて、本発明に係る高電子移動度トランジスタ改良構造は、Y≦(0.2171)ln(X)-8.34を満たすことで、前記金属ドーパントによる前記窒化物チャネル層のシート抵抗値への影響を低減し、良好な性能を有する高電子移動度トランジスタ改良構造を提供することができ、金属ドープ濃度Xが一定値の場合、前記窒化物チャネル層の厚さYの最大値を推定でき、逆に、前記窒化物チャネル層の厚さYが一定値の場合、金属ドープ濃度Xの最小値を推定でき、それにより、金属ドープ濃度に対応する最適化された窒化物チャネル層の厚さの数値範囲、又は窒化物チャネル層の厚さに対応する最適化された金属ドープ濃度の数値範囲を得ることができ、更に、本発明に係る高電子移動度トランジスタ改良構造において、前記チャネル層は、前記バリア層との間の界面における前記ドーパントのドープ濃度が、1×1015cm-3以上であるという技術的特徴によれば、前記金属ドーパントによる前記窒化物チャネル層のシート抵抗値への影響を低減し、良好な性能を有する高電子移動度トランジスタ改良構造を提供することができる。
【0038】
上述したのは、本発明の好ましい可能な実施例に過ぎず、本発明の明細書及び特許請求の範囲を利用してなされた同等バリエーションは、何れも本発明の特許範囲内に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0039】
1:高電子移動度トランジスタ改良構造
10:基板
20:核生成層
30:バッファ層
40:チャネル層
50:バリア層
S02、S04、S06、S08、S10:ステップ
S202、S204、S206、S208、S210:ステップ
T、Y:厚さ
図1
図2
図3
図4
図5