IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 有限会社善徳丸建設の特許一覧

特開2023-134354捨石マウンド均しシステム、および捨石マウンド均し方法
<>
  • 特開-捨石マウンド均しシステム、および捨石マウンド均し方法 図1
  • 特開-捨石マウンド均しシステム、および捨石マウンド均し方法 図2
  • 特開-捨石マウンド均しシステム、および捨石マウンド均し方法 図3
  • 特開-捨石マウンド均しシステム、および捨石マウンド均し方法 図4
  • 特開-捨石マウンド均しシステム、および捨石マウンド均し方法 図5
  • 特開-捨石マウンド均しシステム、および捨石マウンド均し方法 図6
  • 特開-捨石マウンド均しシステム、および捨石マウンド均し方法 図7
  • 特開-捨石マウンド均しシステム、および捨石マウンド均し方法 図8
  • 特開-捨石マウンド均しシステム、および捨石マウンド均し方法 図9
  • 特開-捨石マウンド均しシステム、および捨石マウンド均し方法 図10
  • 特開-捨石マウンド均しシステム、および捨石マウンド均し方法 図11
  • 特開-捨石マウンド均しシステム、および捨石マウンド均し方法 図12
  • 特開-捨石マウンド均しシステム、および捨石マウンド均し方法 図13
  • 特開-捨石マウンド均しシステム、および捨石マウンド均し方法 図14
  • 特開-捨石マウンド均しシステム、および捨石マウンド均し方法 図15
  • 特開-捨石マウンド均しシステム、および捨石マウンド均し方法 図16
  • 特開-捨石マウンド均しシステム、および捨石マウンド均し方法 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134354
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】捨石マウンド均しシステム、および捨石マウンド均し方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 15/10 20060101AFI20230920BHJP
【FI】
E02D15/10
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002054
(22)【出願日】2023-01-11
(62)【分割の表示】P 2022035748の分割
【原出願日】2022-03-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-09-19
(71)【出願人】
【識別番号】592177649
【氏名又は名称】有限会社善徳丸建設
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野田 昌幸
【テーマコード(参考)】
2D045
【Fターム(参考)】
2D045AA04
2D045BA02
2D045CA01
2D045CA36
(57)【要約】
【課題】捨石マウンドのあら均し工程を、潜水士に頼らずに行える技術を提供する。
【解決手段】起重機船のクレーンのワイヤに吊るされた均し部材と、クレーンのワイヤに取り付けられ、高度をセンシングする高度センサと、クレーンのジブポイントの位置を測位する測位センサと、高度センサによってセンシングされた高度と、構築する捨石基礎の設計高さとに応じてクレーンのワイヤの繰出量を制御し、また測位センサによって測位された位置と、捨石基礎を構築する位置とに応じてクレーンのジブポイントの移動を制御するクレーン制御部と、を備えている。高度センサは、均し部材の下端の高さを、捨石基礎の設計高さに合わせたときに、海面よりも上方に位置する場所に取り付けられている。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海底に堆積させた捨石マウンドの高さを均す捨石マウンド均しシステムであって、
起重機船のクレーンのワイヤに吊るされた均し部材と、
前記クレーンのワイヤに取り付けられ、高度をセンシングする高度センサと、
前記クレーンのジブポイントの位置を測位する測位センサと、
前記高度センサによってセンシングされた高度と、構築する捨石基礎の設計高さとに応じて前記クレーンのワイヤの繰出量を制御し、また前記測位センサによって測位された位置と、前記捨石基礎を構築する位置とに応じて前記クレーンのジブポイントの移動を制御するクレーン制御部と、を備え、
前記高度センサは、前記均し部材の下端の高さを、前記捨石基礎の設計高さに合わせたときに、海面よりも上方に位置する場所に取り付けられている、
捨石マウンド均しシステム。
【請求項2】
前記クレーン制御部は、前記クレーンのワイヤの繰出量の制御、および前記クレーンのジブポイントの移動の制御によって前記均し部材を移動させ、前記捨石マウンドにおいて、前記捨石基礎の設計高さよりも高く堆積している場所の前記捨石を、別の場所に移動させる、
請求項1に記載の捨石マウンド均しシステム。
【請求項3】
前記均し部材は、グラブバケットであり、
前記クレーン制御部は、
前記グラブバケットの下端の高さを、前記捨石基礎の設計高さに応じた高さに調整した状態で、前記グラブバケットを開状態から閉状態に移行させ、
閉状態を維持して、前記グラブバケットを閉状態に移行させた位置とは異なる位置に移動させた後、前記グラブバケットを閉状態から開状態に移行させる、
請求項1、または2に記載の捨石マウンド均しシステム。
【請求項4】
前記均し部材は、グラブバケットであり、
前記クレーン制御部は、
前記捨石基礎の天端面をマトリクス状に分割した複数の矩形領域の中から第1矩形領域、および第2矩形領域を定め、
前記第1矩形領域に合わせられた前記グラブバケットの下端の高さを、前記捨石基礎の設計高さに応じた高さに調整した状態で、前記グラブバケットを開状態から閉状態に移行させ、
閉状態を維持して、前記グラブバケットを、前記第2矩形領域に合わせた後、前記グラブバケットを閉状態から開状態に移行させる、
請求項1、または2に記載の捨石マウンド均しシステム。
【請求項5】
前記捨石基礎の天端面において、前記第1矩形領域と、前記第2矩形領域とは、隣接している、
請求項4に記載の捨石マウンド均しシステム。
【請求項6】
前記クレーン制御部は、
前記捨石基礎の天端面をマトリクス状に分割した複数の矩形領域を順番に前記第1矩形領域に定める、
請求項4、または5に記載の捨石マウンド均しシステム。
【請求項7】
前記クレーン制御部は、
前記グラブバケットを閉状態から開状態に移行させると、今回の前記第2矩形領域を次回の前記第1矩形領域に定めるとともに、次回の前記第2矩形領域を今回の前記第1矩形領域、および前記第2矩形領域とは異なる矩形領域の中から定める、
請求項4~6のいずれかに記載の捨石マウンド均しシステム。
【請求項8】
海底に堆積させた捨石マウンドの高さを均す捨石マウンド均し方法であって、
起重機船のクレーンのワイヤに取り付けられ、高度をセンシングする高度センサによってセンシングされた高度と、構築する捨石基礎の設計高さとに応じて前記クレーンのワイヤの繰出量を制御する高さ調整処理と、
前記測位センサによって測位された前記クレーンのジブポイントの位置と、前記捨石基礎を構築する位置とに応じて前記クレーンのジブポイントの移動を制御する移動調整処理と、を行い、
前記高度センサは、前記均し部材の下端の高さを、前記捨石基礎の設計高さに合わせたときに、海面よりも上方に位置する場所に取り付けている、
捨石マウンド均し方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、洋上風車、防波堤等の港湾構造物の捨石基礎の基になる捨石マウンドを海底に構築する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、洋上風車、防波堤等の港湾構造物の捨石基礎は、
(1)海上側から投入した捨石を海底に堆積させた捨石マウンドを形成し、
(2)捨石マウンドにおいて、捨石基礎の設計高さよりも高く堆積している部分の捨石を取り除き、捨石基礎の設計高さまで堆積していない部分に捨石を追加する捨石マウンドのあら均しを行い、
(3)捨石マウンドの天端面、および法面を突き固める、
ことによって、構築している。
【0003】
例えば、特許文献1には、捨石マウンドを形成する工程(上記(1)にかかる工程)を行うシステムが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、捨石マウンドの天端面、および法面を突き固める工程(上記(3)にかかる工程)を行うシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-161673号公報
【特許文献2】特開2021-161674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記(2)にかかる捨石マウンドのあら均し工程は、潜水士による人力で行われていた。具体的には、潜水士が、海底で、捨石基礎の設計高さよりも高く堆積している部分と、捨石基礎の設計高さまで堆積していない部分とを目視によって確認し、捨石基礎の設計高さよりも高く堆積している部分の捨石を、捨石基礎の設計高さまで堆積していない部分に手作業で移動させていた。
【0007】
また、最近では、捨石基礎を水深の深い場所に構築するケースが増加している。
【0008】
潜水士の安全を確保する観点から、上記した(2)にかかる捨石マウンドのあら均し工程を、潜水士に頼らずに行える技術が望まれている。特に、水深が深い場所での捨石マウンドのあら均し工程が、潜水士に頼らずに行える技術が望まれている。
【0009】
この発明の目的は、捨石マウンドのあら均し工程を、潜水士に頼らずに行える技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の捨石マウンド均しシステムは、上記課題を解決し、その目的を達するために、以下のように構成している。
【0011】
捨石マウンド均しシステムは、海底に堆積させた捨石マウンドの高さを均す。
【0012】
均し部材は、起重機船のクレーンのワイヤに吊るされている。高度センサは、クレーンのワイヤに取り付けられ、高度をセンシングする。測位センサは、クレーンのジブポイントの位置を測位する。クレーン制御部は、高度センサによってセンシングされた高度と、構築する捨石基礎の設計高さとに応じてクレーンのワイヤの繰出量を制御し、また測位センサによって測位された位置と、捨石基礎を構築する位置とに応じてクレーンのジブポイントの移動を制御する。
【0013】
さらに、高度センサは、均し部材の下端の高さを、前記捨石基礎の設計高さに合わせたときに、海面よりも上方に位置する場所に取り付けられている。
【0014】
この構成によれば、クレーン制御部が、クレーンのワイヤの繰出量の制御、およびクレーンのジブポイントの移動の制御によって均し部材を移動させ、捨石マウンドにおいて、捨石基礎の設計高さよりも高く堆積している場所の捨石を、別の場所に移動させることができる。したがって、捨石マウンドのあら均し工程を、潜水士に頼らずに行える。
【0015】
また、高度センサは、均し部材の下端の高さを、捨石基礎の設計高さに合わせたときに、海面よりも上方に位置する場所に取り付けられている。したがって、高度センサは、水中使用を目的にした特殊な構成のものでなくてよい。
【0016】
また、例えば、均し部材をグラブバケットとし、クレーン制御部が、グラブバケットの下端の高さを、捨石基礎の設計高さに応じた高さに調整した状態で、グラブバケットを開状態から閉状態に移行させ、この閉状態を維持して、グラブバケットを閉状態に移行させた位置とは異なる位置に移動させた後、グラブバケットを閉状態から開状態に移行させる制御をおこなってもよい。
【0017】
また、例えば、均し部材をグラブバケットとし、クレーン制御部が、捨石基礎の天端面をマトリクス状に分割した複数の矩形領域の中から第1矩形領域、および第2矩形領域を定め、この第1矩形領域に合わせられたグラブバケットの下端の高さを、捨石基礎の設計高さに応じた高さに調整した状態で、グラブバケットを開状態から閉状態に移行させ、この閉状態を維持して、グラブバケットを第2矩形領域に合わせた後、グラブバケットを閉状態から開状態に移行させる構成にしてもよい。
【0018】
なお、捨石基礎の天端面において、第1矩形領域と、第2矩形領域とは、隣接していてもよいし、隣接していなくてもよい。
【0019】
また、例えば、クレーン制御部は、捨石基礎の天端面をマトリクス状に分割した複数の矩形領域を順番に第1矩形領域に定める構成にしてもよい。
【0020】
また、例えば、クレーン制御部は、グラブバケットを閉状態から開状態に移行させると、今回の第2矩形領域を次回の第1矩形領域に定めるとともに、次回の第2矩形領域を今回の第1矩形領域、および第2矩形領域とは異なる矩形領域の中から定める構成にしてもよい。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、捨石マウンドの均し工程を、潜水士に頼らずに行える。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】この例にかかる捨石基礎構築システムを示す概略図である。
図2】この例にかかる捨石基礎構築システムを示す概略図である。
図3図3(A)、(B)は、捨石投下台船を示す図である。
図4】捨石投下台船に搭載されている台船側制御システムを示すブロック図である。
図5】起重機船に搭載されている起重機船側制御システムを示すブロック図である。
図6図6(A)は、捨石基礎を構築する工事区域を示す水平方向の平面図であり、図6(B)は、捨石基礎を構築する工事区域を示す鉛直方向の平面図である。
図7】捨石マウンドを形成する工程を示すフローチャートである。
図8】捨石マウンド形成工程で形成された捨石マウンドを示す図である。
図9】捨石マウンドのあら均し工程を示すフローチャートである。
図10】捨石マウンドのあら均し工程における天端面の領域の分割例を示す図である。
図11】捨石マウンドのあら均し工程を説明する図である。
図12】捨石マウンドのあら均し工程を説明する図である。
図13】捨石マウンドのあら均し工程においてバケットを移動させる経路を説明する図である。
図14】捨石マウンドの天端面を突き固める工程を説明する図である。
図15】捨石マウンドの法面を突き固める工程を説明する図である。
図16】変形例の捨石マウンドのあら均し工程を説明する図である。
図17図17(A)、(B)は、捨石マウンドのあら均し工程で用いる鋼板を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、この発明の実施形態について説明する。
【0024】
図1、および図2は、この例にかかる捨石基礎構築システムを示す概略図である。図1は、水平方向の平面図であり、図2は、鉛直方向の平面図である。この例の捨石基礎構築システムは、捨石投下台船1と、起重機船5とを備えている。捨石投下台船1には、開口部2が設けられている。起重機船5には、クレーン51が搭載されているとともに、捨石6が積載されている。
【0025】
捨石基礎は、
(1)海上側から投入した捨石6を海底に堆積させ、捨石マウンドを形成する工程、
(2)捨石マウンドにおいて、捨石基礎の設計高さよりも高く堆積している部分の捨石を取り除き、捨石基礎の設計高さまで堆積していない部分に捨石を追加する捨石マウンドのあら均し工程、
(3)捨石マウンドの天端面、および法面を突き固める工程、
をこの順に行って構築される。
【0026】
捨石投下台船1は、上記(1)にかかる工程で使用され、(2)、および(3)にかかる工程で使用されない。起重機船5は、上記(1)、(2)、および(3)にかかる工程で使用される。
【0027】
捨石投下台船1の開口部2は、海上側の開口面と、海底側の開口面との大きさが略同じである角柱型や円筒型の形状であってもよいし、海底側の開口面を海上側の開口面に比べて小さくしたホッパ型の形状であってもよいし、その他の形状であってもよい。開口部2は、海上側から投入された捨石6が海底に投下される形状であればどのような形状であってもよい。
【0028】
また、捨石投下台船1には、汚濁水拡散防止フェンス11が取り付けられている。この汚濁水拡散防止フェンス11は、海底に向かって垂れ下がるように、捨石投下台船1に吊り下げて取り付けている。汚濁水拡散防止フェンス11は、開口部2の周囲を囲んでいる。海上側から開口部2に投入された捨石6は、海底に投下されるときに、汚濁水拡散防止フェンス11の内側(汚濁水拡散防止フェンス11によって囲まれている空間)を通る。汚濁水拡散防止フェンス11は、開口部2に投入された捨石6が潮流によって流されるのを防止し、周辺海域の水質汚濁を抑制する。
【0029】
図1では、グラブバケット52を、クレーン51のワイヤ53に吊り下げた状態を示している。クレーン51は、起重機船5に積載されている捨石6をグラブバケット52で掴み取る。クレーン51は、このグラブバケット52で掴んでいる捨石6を、海上側から捨石投下台船1の開口部2に投入する。
【0030】
なお、ワイヤ53に吊り下げられる部材は、グラブバケット52に限らない。
【0031】
この例の捨石マウンド構築システムでは、捨石投下台船1を、捨石マウンドを構築する位置(捨石6を投下する位置)の略真上に係船する。この例では、捨石投下台船1は、4本のワイヤ21(21a~21d)によって海上に係船される。ワイヤ21毎に、そのワイヤ21の一端を連結するウインチ(不図示)が搭載されている。起重機船5は、クレーン51で捨石6を捨石投下台船1の開口部2に投入する。このとき、起重機船5は、捨石投下台船1に接舷していない状態で、捨石6の投入を行う。例えば、起重機船5は、捨石投下台船1から10m~30m程度離れた場所に係船され、クレーン51で捨石6を捨石投下台船1の開口部2に投入する。
【0032】
図3(A)、(B)は、捨石投下台船を示す図である。図3(A)は、水平方向の平面図であり、図3(B)は、鉛直方向の平面図である。図4は、捨石投下台船に搭載されている台船側制御システムを示すブロック図である。
【0033】
捨石投下台船1に搭載されている台船側制御システムは、台船情報処理装置30と、測位ユニット31と、形状検知ユニット32と、ウインチ制御ユニット33と、無線通信ユニット34とを備えている。
【0034】
台船情報処理装置30は、測位ユニット31、形状検知ユニット32、ウインチ制御ユニット33、および無線通信ユニット34を制御する。台船情報処理装置30は、例えば、パーソナルコンピュータを用いればよい。
【0035】
測位ユニット31は、GPS(Global Positioning System)を利用して、捨石投下台船1の位置を測位する。測位ユニット31は、GPSを利用して現在位置を測位するセンサ(GPSセンサ)を用いればよい。測位ユニット31は、自船(捨石投下台船1)に取り付けられたGPSセンサ(不図示)を用いて捨石投下台船1の位置を測位する。測位ユニット31は、定期的に捨石投下台船1の位置を測位し、測位した位置を台船情報処理装置30に出力する。
【0036】
形状検知ユニット32は、探査波として音波を利用し、その反射波を検出することにより、海底に形成されている捨石マウンドの形状を検知する。形状検知ユニット32は、音波の照射、および反射波の検知を行うセンサ部32aを有している。形状検知ユニット32は、例えば、ソナー装置を用いればよい。形状検知ユニット32は、定期的に海底に形成されている捨石マウンドの形状を検知し、検知した捨石マウンドの形状を台船情報処理装置30に出力する。
【0037】
捨石投下台船1は、上記したように、4本のワイヤ21(21a~21d)によって海上に係船される。捨石投下台船1には、ワイヤ21毎に、そのワイヤ21の一端を連結するウインチ22(22a~22d)が搭載されている。図3に示す例では、ワイヤ21aがウインチ22aに連結され、ワイヤ21bがウインチ22bに連結され、ワイヤ21cがウインチ22cに連結され、ワイヤ21dがウインチ22dに連結されている。
【0038】
各ワイヤ21は、ウインチ22に連結されていない側の端部を海底に沈めたアンカ(不図示)に連結している。各ワイヤ21が連結されているアンカは異なる。この例では、図3に示すように、船首側に設けたウインチ22a、22bに連結されているワイヤ21a、21bは、交差(クロス)させている。また、船尾側に設けたウインチ22c、22dに連結されているワイヤ21c、21dも、交差させている。言い換えれば、ワイヤ21a、21bが交差するように、ワイヤ21a、21bを連結するアンカを海底に沈めている。同様に、ワイヤ21c、21dが交差するように、ワイヤ21c、21dを連結するアンカを海底に沈めている。このように、この例では、ワイヤ21a、21bを交差させ、ワイヤ21c、21dを交差させているので、各ウインチ22a~22dで連結されているワイヤ21a~21dの巻取量、または繰出量を調整することで、捨石投下台船1を係船する位置を、この捨石投下台船1の長さ方向、および幅方向の2軸で調整できる。
【0039】
なお、この例では、4つのウインチ22a~22dを、捨石投下台船1の4角に1つずつ設けているが、捨石投下台船1の長さ方向の任意の位置に、幅方向の両側に2つずつ並べて設けてもよい。
【0040】
ウインチ制御ユニット33は、ウインチ22毎に、そのウインチ22に連結されているワイヤ21の巻き取り、または繰り出しを制御する。
【0041】
無線通信ユニット34は、無線通信を行う。
【0042】
図5は、起重機船に搭載されている起重機船側制御システムを示すブロック図である。起重機船5に搭載されている起重機船側制御システムは、演算装置60と、測位ユニット61と、クレーン制御ユニット62と、無線通信ユニット63と、高さ計測ユニット64とを備えている。
【0043】
演算装置60は、測位ユニット61、クレーン制御ユニット62、無線通信ユニット63、および高さ計測ユニット64を制御する。また、演算装置60は、クレーン51による捨石6の投入量を算出する演算、捨石投下台船1に設けられているウインチ22a~22d毎に、そのウインチ22a~22dに連結されているワイヤ21a~21dの巻取量、または繰出量を算出する。演算装置60は、例えば、パーソナルコンピュータを用いればよい。
【0044】
測位ユニット61は、GPS(Global Positioning System)を利用して、起重機船5の位置、およびクレーン51のジブポイントの位置を測位する。測位ユニット61は、上記した測位ユニット31と同様に、GPSを利用して現在位置を測位するセンサ(GPSセンサ)を用いればよい。測位ユニット61は、自船(起重機船5)に取り付けられたGPSセンサ(不図示)を用いて起重機船5の位置を測位する。また、測位ユニット61は、ジブのジブポイント近傍に取り付けられたGPSセンサ61a(図1参照)を用いてジブポイントの位置を測位する。測位ユニット61は、定期的に起重機船5の位置を測位し、測位した位置を演算装置60に出力する。また、測位ユニット61は、必要に応じてジブポイントの位置を測位し、測位した位置を演算装置60に出力する。
【0045】
クレーン制御ユニット62は、クレーン51を運転操作するハンドル、レバー、ペダル等の操作量を検出する操作量検出部(不図示)を有し、検出したハンドル、レバー、ペダル等の操作量に応じてクレーン51の動きを制御する。操作者(運転者)は、ハンドル、レバー、ペダル等を操作してクレーン51を操縦する。また、クレーン制御ユニット62は、台船情報処理装置30からの指示にしたがって、クレーン51を自動運転する自動運転機能も備えていてもよい。
【0046】
無線通信ユニット63は、無線通信を行う。捨石投下台船1と起重機船5との間における各種データの送受信は、無線通信ユニット34と無線通信ユニット63との間における無線通信で行われる。
【0047】
高さ計測ユニット64は、ワイヤ53に取り付けた高度センサ64a(図1参照)により、ワイヤ53に吊り下げられている、グラブバケット52、あら均し部材、重錘等の下端の高さを計測する。
【0048】
以下、この例にかかる捨石基礎構築システムで、捨て石基礎を海底に構築する工程について説明する。上記した通り、捨石基礎は、
(1)海上側から投入した捨石を海底に堆積させた捨石マウンドを形成する工程、
(2)捨石マウンドにおいて、捨石基礎の設計高さよりも高く堆積している部分の捨石を取り除き、捨石基礎の設計高さまで堆積していない部分に捨石を追加する捨石マウンドのあら均し工程、
(3)捨石マウンドの天端面、および法面を突き固める工程、
をこの順に行って構築される。
【0049】
まず、捨石マウンドを形成する工程(上記(1)にかかる工程)について説明する。
【0050】
図6(A)は、捨石基礎を構築する工事区域を示す水平方向の平面図であり、図6(B)は、捨石基礎を構築する工事区域を示す鉛直方向の平面図である。なお、図6(A)、(B)では、起重機船5の図示を省略している。
【0051】
図7は、捨石マウンドを形成する工程(捨石マウンド形成工程)の概略を示すフローチャートである。演算装置60が、捨石6を投下する位置に基づき、捨石投下台船1を係船する係船位置を決定する(s1)。捨石6を投下する位置は、工事区域内におけるその時点の捨石マウンド100の形状(捨石6の堆積状態)に基づいて判断される。
【0052】
形状検知ユニット32が、定期的に、工事区域内における捨石マウンド100の形状を検知している。また、測位ユニット31が、定期的に捨石投下台船1の位置を測位している。台船情報処理装置30は、形状検知ユニット32において検知された捨石マウンド100の形状、および測位ユニット31において測位された捨石投下台船1の位置を、無線通信ユニット34を使用して、起重機船5に送信する。起重機船5は、無線通信ユニット63で、形状検知ユニット32において検知された捨石マウンド100の形状、および測位ユニット31において測位された捨石投下台船1の位置を受信する。
【0053】
演算装置60は、s1では、工事区域内に形成されているその時点の捨石マウンド100の形状から、捨石6を投下する必要がある位置を判断することにより、捨石投下台船1を係船する係船位置を決定する。演算装置60は、捨石投下台船1の位置を受信しているので、この位置を用いることで、捨石マウンド100の絶対位置(緯度、経度)を特定できる。ここで決定される捨石投下台船1を係船する係船位置は、捨石6を投下する必要がある位置である。
【0054】
演算装置60は、無線通信ユニット63において、s1で決定した捨石投下台船1の係船位置を捨石投下台船1に送信する。捨石投下台船1は、無線通信ユニット34で、自船の係船位置を受信する。
【0055】
台船情報処理装置30は、捨石投下台船1を、s1で決定された自船の係船位置に移動する(s2)。s2では、台船情報処理装置30が、捨石投下台船1の現在位置(測位ユニット31で測位されている位置)と、s1で受信した自船の係船位置とに基づき、ワイヤ21a~21d毎に、巻取量、または繰出量を算出する。台船情報処理装置30は、ウインチ制御ユニット33に対して、各ワイヤ21a~21dの巻取量、または繰出量を指示する。ウインチ制御ユニット33は、この指示にしたがって、各ウインチ22a~22dの駆動を制御し、ワイヤ21a~21d毎に、指示された巻取量の巻き取り、または指示された繰出量の繰り出しを行う。
【0056】
演算装置60は、この後、捨石投下台船1の現在位置(測位ユニット31で測位されている位置)と、s1で受信した自船の係船位置とのずれを調整する調整処理を行う。この調整処理は、測位ユニット31で測位されている捨石投下台船1の位置が、s1で受信した自船の係船位置になるように調整する処理である。台船情報処理装置30は、この調整処理においても、ワイヤ21a~21d毎に、巻取量、または繰出量を算出し、これをウインチ制御ユニット33に指示する。
【0057】
捨石投下台船1が、s1で決定した係船位置に係船されると、捨石6の投入を開始する(s3)。s3では、クレーン51のグラブバケット52で、起重機船5に積載されている捨石6を掴み取り、海上側から捨石投下台船1の開口部2に投入する工程を開始する。このとき、起重機船5は、捨石投下台船1からある程度(10m~30m程度)離れた場所に係船している。
【0058】
演算装置60は、捨石投下台船1の形状検知ユニット32において検知された捨石マウンド100の形状を定期的に受信し、その時点における捨石投下台船1の係船位置における捨石マウンド100の高さが設計高さに達したと判定すると、s3で開始した捨石6の投入を停止する(s4、s5)。
【0059】
演算装置60は、捨石投下台船1の形状検知ユニット32において検知された捨石マウンド100の形状に基づき、捨石マウンド100が形成できたかどうかを判定する(s6)。演算装置60は、捨石マウンド100が形成できていないと判定すると、s1に戻って、上記処理を繰り返す。
【0060】
また、演算装置60は、捨石マウンド100が形成できたと判定すると、本処理を終了する。
【0061】
上記した工程で形成された捨石マウンド100は、多くの場合、図8に示すように、設計高さHよりも捨石6が高く積み重なった部分A1、A2や、設計高さHに達する高さまで捨石6が積み重なっていない部分B1、B2が生じている。
【0062】
なお、捨石マウンドは、上記した工程ではなく、他の工程で形成してもよい。すなわち、上記した工程は、捨石マウンド100を形成する一例である。
【0063】
この例にかかる捨石基礎構築システムは、上記した捨石マウンド形成工程で形成した捨石マウンド100に対して、捨石基礎の設計高さよりも高く堆積している部分の捨石6を取り除き、捨石基礎の設計高さまで堆積していない部分に捨石6を追加する捨石マウンド100のあら均し工程を行う。この捨石マウンドのあら均し工程では、捨石投下台船1を使用しない。また、このあら均し工程では、基本的に、捨石基礎の設計高さよりも高く堆積している部分の捨石6を、捨石基礎の設計高さまで堆積していない部分に追加する(移動させる)。
【0064】
この例のあら均し工程では、グラブバケット52を、クレーン51のワイヤ53に吊り下げている。図9は、このあら均し工程を示すフローチャートである。
【0065】
このあら均し工程では、例えば、捨石基礎の天面領域を、図10に示すように、n×m個の矩形領域に区切っている。矩形領域の大きさは、グラブバケット52の大きさに応じて定めている。
【0066】
クレーン制御ユニット62によって、グラブバケット52の位置を初期位置に合わせる(s11)。初期位置は、例えば図10に示す矩形領域1-1である。s11では、測位ユニット61がGPSセンサ61aによって測位しているジブポイントの位置を基にしてグラブバケット52の位置合わせを行う。また、クレーン制御ユニット62によって、グラブバケット52を開する(s12)。
【0067】
クレーン制御ユニット62によって、グラブバケット52の高さを調整する(s13)。s13では、高さ計測ユニット64が高度センサ64aで計測している高度を基に、グラブバケット52の下端を捨石基礎の天端面の設計高さに合わせる。図11、および図12に示すように、高度センサ64aは、グラブバケット52を吊り下げているワイヤに取り付けており、海面よりも上方に位置させている。
【0068】
クレーン制御ユニット62によって、グラブバケット52を閉する(s14)。図11に示すように、グラブバケット52を合わせている位置が、設計高さよりも捨石6が高く積み重なった部分であれば、余分に積み重なっている捨石6がグラブバケット52に掴み取られる。また、図12に示すように、グラブバケット52を合わせている位置が、設計高さまで捨石6が高く積み重なっていない部分であれば、捨石6がグラブバケット52によって掴み取られることはない。
【0069】
クレーン制御ユニット62によって、グラブバケット52の位置を移動する(s15)。例えば、s15では、その時点において、グラブバケット52を合わせている矩形領域に、隣接する矩形領域に移動する。例えば、図13に矢示する方向に、グラブバケット52を移動させる。すなわち、捨石基礎の天端面を走査するように、グラブバケット52を移動させる。また、s15では、グラブバケット52の高さを数十cm~数m程度上げて、グラブバケット52の位置を移動する。
【0070】
s15にかかるグラブバケット52の移動が完了すると、クレーン制御ユニット62によって、グラブバケット52を開する(s16)。これにより、s14でグラブバケット52が掴み取った捨石6が、s15でグラブバケット52を移動させた位置に投入される。s15でグラブバケット52を移動させた位置が、捨石6が設計高さまで積み重なっていない部分であれば、s14でグラブバケット52が掴み取った捨石6を追加投入される。
【0071】
クレーン制御ユニット62によって、グラブバケット52の高さを調整する(s17)。s17は、上記したs13と同じであり、高さ計測ユニット64が高度センサ64aで計測している高度を基に、グラブバケット52の下端を捨石基礎の天端面の設計高さに合わせる。クレーン制御ユニット62によって、グラブバケット52を閉する(s18)。s18は、上記したs14と同じである。このs18を行うことによって、s16でグラブバケット52を開したときに、グラブバケット52が掴み取っていた捨石6が追加投入されたことによって、設計高さよりも高く積み重なった捨石6をグラブバケット52で掴み取ることができる。
【0072】
その時点におけるグラブバケット52の位置が走査の終了位置であるかどうかを判定する(s19)。終了位置は、例えば図13に示す例では、矩形領域n-mである。グラブバケット52の位置が走査の終了位置でなければ、s15に戻って上記処理を繰り返す。また、グラブバケット52の位置が走査の終了位置であれば、s11~s19にかかる処理を設定回数繰り返したかどうかを判定する(s20)。具体的には、グラブバケット52の移動による、捨石基礎の天端面の走査を設定回数行ったかどうかを判定する。
【0073】
s20で設定回数繰り返していないと判定すると、s11に戻って、上記処理を繰り返す。s20で設定回数繰り返したと判定すると、このあら均し工程を終了する。
【0074】
このあら均し工程では、上記した捨石マウンドの形成工程で、捨石6が設計高さよりも高く積み重なった部分については、余分な捨石6をグラブバケット52で掴み取り、グラブバケット52で掴み取った捨石6を、上記した捨石マウンドの形成工程で、捨石6が設計高さに達していない部分に追加投入される。
【0075】
また、このあら均し工程では、s11~s19にかかる処理を設定回数繰り返しているので、捨石マウンドの天端面の高さを略均一に均すことができる。
【0076】
なお、このあら均し工程では、クレーン51は、作業者によって運転されてもよいし、自動運転機能で運転されてもよい。
【0077】
この例にかかる捨石基礎構築システムは、上記した捨石マウンドのあら均し工程で天端面のあら均しを行った捨石マウンドの天端面、および法面を突き固める突き固め工程を行う。まず、捨石マウンドの天端面を突き固めて均す天端面均し工程について説明する。この天端面均し工程では、図14に示すように、クレーン51のワイヤ53にグラブバケット52ではなく、下端面が平面である重錘55を吊り下げる。
【0078】
捨石マウンドの天端面を突き固める工程は、クレーン51で、重錘55を吊り上げ、捨石マウンドの天端面に落下させる手順を繰り返す工程である。
【0079】
作業者は、捨石マウンドの天端面を突き固める範囲を決定する。ここで決定する天端面を突き固める範囲は、落下させた重錘55の下端面を当接させて転圧する範囲である。すなわち、ここで決定する天端面を突き固める範囲は、重錘55の下端面の底面の大きさである。捨石マウンドの天端面を突き固める工程では、天端面の均し範囲を変更しながら、捨石マウンドの天端面全体を突き固める。
【0080】
具体的には、作業者は、クレーン51を操作して、重錘55の下端面を、決定した天端面を突き固める範囲に合わせる。このとき、作業者は、重錘55の下端面の中心が、決定した天端面を突き固める範囲の中心位置の真上に位置するようにクレーン51を運転する。作業者は、測位ユニット61がGPSセンサ61aによって測位しているジブポイントの位置を基にして重錘55の位置合わせを行う。そして、作業者は、重錘55の下端面が捨石マウンドの天端面に当接し、載置された状態になるまで、クレーン51のワイヤ53に吊り下げている重錘55を下げる。
【0081】
高さ計測ユニット64がクレーンの51のワイヤ53に取り付けた高度センサ64aで計測している高度、高度センサ64aの取付位置から重錘55の吊り下げ位置までのワイヤ53の長さ、重錘55の高さから、現時点での捨石マウンドの天端面の高さ(現在高さ)、天端面の現在高さと設計高さとの差(残調整高さ)、および重錘55の吊り上げ高さをコンピュータ(不図示)で演算し、クレーン51の運転操作を行っている作業者に通知する。
【0082】
作業者は、通知された現在高さ、残調整高さ、吊り上げ高さを確認し、重錘55を吊り上げ、天端面に落下させる。捨石マウンドの天端面は、落下させた重錘55の底面によって転圧された箇所が突き固められる。
【0083】
なお、クレーン51の運転操作を行っている作業者は、コンピュータによって演算された残調整高さや、吊り上げ高さを目安にして、重錘55を吊り上げている。クレーン51が、重錘55を吊り上げた実際の高さは、クレーン51から、コンピュータに入力される。また、クレーン51は、吊り上げた重錘55を落下させると、その旨をコンピュータに入力している。したがって、コンピュータは、クレーン51が吊り上げた重錘55を落下させたタイミングを判断できる。
【0084】
クレーン51の運転操作を行っている作業者は、重錘55の吊り上げ、落下を繰り返し、捨石マウンドの天端面の現在高さが、設計高さになったと判断すると、この範囲に対する天端面の突き固めを完了する。また、クレーン51の運転操作を行っている作業者は、捨石マウンドの天端面において、まだ突き固めていない領域(未処理領域)が存在すれば、その未処理領域内に、突き固める範囲を決定し、上記した手順の処理を行う。クレーン51の運転操作を行っている作業者は、未処理領域が無いと判断した時点で、捨石マウンドの天端面を突き固める工程が完了したと判断する。
【0085】
この捨石マウンドの天端面を突き固める工程においても、高度センサ64aは、常に、海面よりも上方に位置するようにクレーンの51のワイヤ53に取り付けている。
【0086】
ここで、コンピュータにおける、重錘55の吊り上げ高さの演算方法について簡単に説明しておく。
【0087】
コンピュータは、重錘55を落下させると、今回重錘55を落下させた前後における、天端面の高さの差(以下、今回調整高さと言う。)を算出する。また、コンピュータは、上述したように、クレーン51側から、今回重錘55を実際に吊り上げた高さが入力されている。
【0088】
また、コンピュータは、重錘55を落下させた後における、捨石マウンドの天端面の現在高さと、施工高さとの差である残調整高さを算出する。
【0089】
コンピュータは、重錘55を吊り上げ高さを、今回調整高さA、前回の吊り上げ高さB、残調整高さCを用い、
重錘55の吊り上げ高さ=(A×C)/B
により算出する。前回の吊り上げ高さBは、重錘55の落下により捨石マウンドに与えた(捨石マウンドの天端面を転圧した)エネルギ量に比例する。また、今回調整高さAは、重錘55の落下により与えられたエネルギ量に対して、転圧された捨石マウンドの天端面が低下した高さである。すなわち、A/Bは、重錘55の単位吊り上げ高さに対して、転圧された捨石マウンドの天端面が低下した高さである。
【0090】
また、重錘55の落下による転圧を繰り返す毎に、捨石マウンドの天端面が突き固められていくので、天端面に加えられた単位エネルギあたりの、天端面の押し下げ量(低下量)が小さくなる。そこで、重錘55の吊り上げ高さの算出に、比例定数α(α>1)を用いる構成としてもよい。具体的には、
重錘55の吊り上げ高さ=α×(A×C)/B
による演算で算出してもよい。上述したように、Aは今回調整高さ、Bは前回の吊り上げ高さ、Cは残調整高さである。
【0091】
また、αは、捨石マウンドの形成に用いた石材の硬度や、捨石マウンドを形成した海底の土壌の状態等によって異なるので、この比例定数αについては、固定値とせず、初期値(例えば、α=1.1程度)を定めておき、今回調整高さAと、前回の吊り上げ高さBと、を用いて変化させてもよい。
【0092】
また、算出する吊り上げ高さについては、その上限値を定めておけばよい。例えば、上限値は、50cmと定めておけばよい。また、決定した天端面の均し範囲に対して、最初に重錘55を落下させるときの吊り上げ高さも、この上限値にすればよい。
【0093】
なお、上記の説明から明らかなように、コンピュータで演算される重錘55の吊り上げ高さは、あくまでも、クレーン51の運転操作を行っている作業者に対して、その目安を認識させるものであり、クレーン51による重錘55の吊り上げ高さを制限するものではない。
【0094】
このように、この例では、天端面均し工程において、作業者が重錘55を天端面に落下させる毎に、天端面の現在高さと残調整高さとを、クレーン51の運転操作を行っている作業者に確認させるまでに要する時間を効率的に低減できる。
【0095】
上記した天端面均し工程により、捨石マウンドの天端面は、突き固められる。一方で、捨石マウンドの法面については、この時点では、突き固められていないので、引き続き、この法面を突き固める工程を行う。
【0096】
この法面均し工程では、図15に示すように、クレーン51のワイヤ53に、下端面が傾斜面である重錘56を吊り下げる。この重錘56の下端面の傾斜は、捨石マウンドの法面の傾斜と同じである。捨石マウンドの法面を突き固める工程は、クレーン51で、重錘56を吊り上げ、捨石マウンドの法面に落下させる手順を繰り返す工程である。
【0097】
この捨石マウンドの法面を突き固める工程は、上記した捨石マウンドの天端面を突き固める工程とほぼ同じであり、異なる点は、下端面が傾斜面である重錘56を用いる点、および重錘56を落下させる位置が捨石マウンドの法面である点である。
【0098】
このように、この例の捨石基礎構築システムによれば、捨石マウンドのあら均し工程を、潜水士に頼らずに行える。また、捨石マウンドの法面を突き固めた後に、捨石マウンドの天端面を突き固めてもよい。
【0099】
・変形例
上記の例では、捨石マウンドのあら均し工程を、クレーン51のワイヤ53に吊り下げたグラブバケット52を用いて行うとしたが、クレーン51のワイヤ53に鋼板58を吊り下げて行ってもよい。例えば、図16に示すように、鋼板58の下端部を捨石マウンドの設計高さに合わせた後、クレーン51で鋼板58を捨石マウンドの天端面に対して水平方向に移動させてもよい。
【0100】
この場合には、クレーン51で鋼板58を捨石マウンドの天端面に対して水平方向に移動させるという簡単な工法で、捨石マウンドのあら均しが行える。
【0101】
また、鋼板58は、ある程度の厚み(数cm~数十cm)が板状のものであってもよいし、図17(A)に示すように、厚さ方向に貫通している溝58aを鋼板58の外周辺に形成したものであってもよいし、厚さ方向に貫通している複数の孔58bを鋼板58の内側に形成したものであってもよい。図17(A)、(B)に示した鋼板58を用いる場合、クレーン51で鋼板58を捨石マウンドの天端面に対して水平方向に移動させるときに生じる水の抵抗を抑えることができる。
【0102】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0103】
1…捨石投下台船
5…起重機船
51…クレーン
52…グラブバケット
53…ワイヤ
58…鋼板
58a…溝
58b…孔
60…演算装置
61…測位ユニット
61a…GPSセンサ
62…クレーン制御ユニット
63…無線通信ユニット
64…高さ計測ユニット
64a…高度センサ
100…捨石マウンド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【手続補正書】
【提出日】2023-07-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項8
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項8】
海底に堆積させた捨石マウンドの高さを均す捨石マウンド均し方法であって、
起重機船のクレーンのワイヤに取り付けられ、高度をセンシングする高度センサによってセンシングされた高度と、構築する捨石基礎の設計高さとに応じて前記クレーンのワイヤの繰出量を制御する高さ調整処理と、
位センサによって測位された前記クレーンのジブポイントの位置と、前記捨石基礎を構築する位置とに応じて前記クレーンのジブポイントの移動を制御する移動調整処理と、を行い、
前記高度センサは、前記均し部材の下端の高さを、前記捨石基礎の設計高さに合わせたときに、海面よりも上方に位置する場所に取り付けている、
捨石マウンド均し方法。