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特開2023-134363半導体電界効果トランジスタ、それを含む電力増幅器、およびその製造方法
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  • 特開-半導体電界効果トランジスタ、それを含む電力増幅器、およびその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134363
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】半導体電界効果トランジスタ、それを含む電力増幅器、およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/338 20060101AFI20230920BHJP
【FI】
H01L29/80 H
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013661
(22)【出願日】2023-01-31
(31)【優先権主張番号】111109266
(32)【優先日】2022-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】523034852
【氏名又は名称】超赫科技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ 展興
【テーマコード(参考)】
5F102
【Fターム(参考)】
5F102GB01
5F102GC01
5F102GD01
5F102GJ02
5F102GJ03
5F102GJ04
5F102GJ05
5F102GJ06
5F102GJ10
5F102GK04
5F102GK08
5F102GL04
5F102GL07
5F102GL08
5F102GL15
5F102GL17
5F102GM04
5F102GM07
5F102GM08
5F102GQ01
5F102GQ09
5F102GR07
5F102GT01
5F102GV08
5F102HC01
5F102HC15
(57)【要約】      (修正有)
【課題】電荷を調整することによって閾値電圧を制御できるだけでなく、接触抵抗や直列抵抗をさらに低減することにより、様々な半導体電界効果トランジスタの本来の利点を保持するだけでなく、優れた線形性を有し、高周波電力増幅器の関連分野に適用される本発明の潜在的価値をさらに高める。
【解決手段】GaNベースの化合物半導体電界効果トランジスタを含む半導体装置200A、それを含む電力増幅器およびその製造方法であって、トランジスタは、基板210、バッファ層220、チャネルブロック230、ソース電極240、ゲート電極250およびドレイン電極260を含み、チャネルブロック230内の二次元電子ガス領域232Gの境界寄りの位置にn型ドープ層234が設けられ、n型ドープ層234がトランジスタ内の電子濃度の空間分布を変更し、コンポーネント全体のRF線形性を改善する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体電界効果トランジスタであって、
チャネル層と、
該チャネル層の上方に設けられるバリア層と、
該バリア層の上方に設けられるゲートと、
それぞれ該ゲートの両端に設けられるソースおよびドレインとを、含み、
該チャネル層および該バリア層が異なる材料からなり、該チャネル層の該バリア層寄り位置に二次元電子ガス領域が設けられ、
該チャネル層が、該二次元電子ガス領域の境界に設けられるn型ドープ層をさらに含む、半導体電界効果トランジスタ。
【請求項2】
該n型ドープ層は、シリコンドーパントを含む、請求項1に記載の半導体電界効果トランジスタ。
【請求項3】
該n型ドープ層は、1.5*1012~6*1012 ns*cm-2の電子面積濃度を有し、該n型ドープ層は、電子濃度が1.5*1019~3*1019 ns*cm-3の高濃度電子群を含む、請求項1に記載の半導体電界効果トランジスタ。
【請求項4】
該n型ドープ層と、該チャネル層および該バリア層の接触面との間の距離は、60~100オングストロームである、請求項1に記載の半導体電界効果トランジスタ。
【請求項5】
該チャネル層は非意図的にドープされたかまたはドープされていないGaNからなり、該バリア層は非意図的にドープされたかまたはドープされていないAlGaNからなる、請求項1に記載の半導体電界効果トランジスタ。
【請求項6】
該バリア層に設けられるパッシベーション層をさらに含み、かつ該パッシベーション層が該ソース、該ゲートおよび該ドレインのそれぞれの上面の少なくとも一部を覆う、請求項1に記載の半導体電界効果トランジスタ。
【請求項7】
該チャネル層の下方に設けられるバッファ層をさらに含む、請求項1に記載の半導体電界効果トランジスタ。
【請求項8】
変調ドープ電界効果トランジスタ(Modulation-Doped Field-Effect Transistor、MODFET)、高電子移動度トランジスタ(High Electron Mobility Transistor、HEMT)、金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor、MOSFET)、金属半導体電界効果トランジスタ(Metal Epitaxial-Semiconductor Field-Effect Transistor、MESFET)または金属絶縁体半導体電界効果トランジスタ(Metal-Insulator-Semiconductor Field-Effect Transistor、MISFET)である、請求項1~7のいずれか一項に記載の半導体電界効果トランジスタ。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか一項に記載の半導体電界効果トランジスタを含む、電力増幅器。
【請求項10】
基板の上方にバッファ層を形成するステップと、
該バッファ層の上方にチャネル層を形成して、該チャネル層内にn型ドープ層を形成するステップと、
該チャネル層の上方にバリア層を形成するステップと、
該バリア層の上方にゲートを形成して、該ゲートの両端にそれぞれソースとドレインを形成されるステップとを、含む、半導体電界効果トランジスタの製造方法。
【請求項11】
該n型ドープ層は、シリコンドーパントでドープすることによって形成される、請求項10に記載の半導体電界効果トランジスタの製造方法。
【請求項12】
形成された後の該n型ドープ層は、1.5*1012~6*1012 ns*cm-2の電子面積濃度を有し、該n型ドープ層は、電子濃度が1.5*1019~3*1019 ns*cm-3の高濃度電子群を含む、請求項10または11に記載の半導体電界効果トランジスタの製造方法。
【請求項13】
該n型ドープ層の形成位置と、該チャネル層および該バリア層の接触面との間の距離は、約60~100オングストロームである、請求項10または11に記載の半導体電界効果トランジスタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に半導体装置に関するが、これに限定されるものではなく、特に半導体電界効果トランジスタ、それを含む電力増幅器、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤレス通信システムおよびモバイルデバイスの活発な開発と普及に伴い、無線周波数(Radio Frequency、 RF)パワーコンポーネントに対する業界の需要が徐々に増加している。特に5Gインフラストラクチャの応用市場では、コストを削減し、効率を改善し、帯域幅を拡大するために、優れた無線周波数コンポーネントが不可欠な役割を果たしている。
【0003】
半導体電界効果トランジスタのうち、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)/窒化ガリウム(GaN)高電子移動度トランジスタ(high electron mobility transistors、 HEMTs)は、オン抵抗が低く、電流密度が高く、ブレークダウン電圧が大きいという利点があるため、無線周波数パワーコンポーネントの一般的な技術オプションと見なされている。上記の優れた特性は、主に、広いバンドギャップ(bandgap)、高い臨界電界(critical electric field)、高い電子飽和速度(saturation velocity)など、GaNの優れた材料特性によるものである。さらに、GaNの自発分極効果により、ドープなしでAlGaN/GaNの異種構造の界面ブロックに二次元電子ガス(two dimensional electron gases、 2DEG)が誘起される。これにより、AlGaN/GaN HEMTsは、非常に低いオン抵抗で高電流を出力して動作できる。
【0004】
一方で、電力増幅器の線形性(linearity)も無線通信の関連分野では非常に重要な指標である。改善された線形性により、パワーコンポーネントの異なる周波数信号間の相互変調歪み(intermodulation distortion)、特に3次相互変調歪み(third-order intermodulation distortion)を低減可能であり、さらに通信システムのノイズを低減することができる。研究によると、ゲート-ソース間電圧(Vgs)に対するコンポーネントのトランスコンダクタンス(transconductance、 g)の数値分布がより滑らか/均一であるほどか、または、

の値が小さいほど、そのコンポーネントの線形性が優れている。
【発明の概要】
【0005】
発明の概要は、本発明の簡略化された要約を提供して、読者に本発明の基本的な理解を提供することを目的とする。この発明の概要は、本発明の網羅的な概観ではなく、本発明の実施例の重要または主要なコンポーネントを特定すること、または本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0006】
本発明者らは、従来の半導体電界効果トランジスタが、Vgs値の特定の範囲内でgmの少なくとも一部の顕著なピークを示すことが多く、線形性が低いという懸念につながることを発見した。本発明者らはさらに、トランジスタ内の電子濃度の空間分布が、Vgsに対するgmの数値分布と高い相関関係を持っていることを発見した。前記トランジスタ内の電子は、特に、次のようなチャネル層内の電子群を指し、ポテンシャルエネルギー井戸に閉じ込められた二次元電子ガス(two dimensional electron gases、 2DEG)またはドープによって形成されたドープチャネル(doped channel)などがある。本発明者らは、前記電子群の分布を調整することによって、ゲート-ソース間電圧に対するコンポーネントのトランスコンダクタンスの数値分布を効果的に調整することができ、それによってコンポーネントの線形性をさらに改善できると考えている。これを考慮して、本発明は、半導体電界効果トランジスタを提供し、そのチャネル層には、n型ドープ層が設けられ、前記n型ドープ層が、トランジスタ内の電子濃度の空間分布を変更させるために使用され、それによってコンポーネント全体のRF線形性を改善し、それにより製造された半導体電界効果トランジスタは、電荷を調整することによって閾値電圧を制御できるだけでなく、その抵抗を低減することもできる。
【0007】
具体的には、本発明は、チャネル層、バリア層、ゲート、ソースおよびドレインを含む半導体電界効果トランジスタを提供する。該バリア層は、該チャネル層の上方に設けられ、かつ該チャネル層および該バリア層が異なる材料からなり、該チャネル層の該バリア層寄り位置に二次元電子ガス領域があり、該ゲートが該バリア層の上方に設けられ、該ソースおよび該ドレインがそれぞれ該ゲートの両端に設けられ、該チャネル層が、該二次元電子ガス領域の境界に設けられるn型ドープ層をさらに含む。
【0008】
本発明の一実施例によれば、該n型ドープ層は、シリコンドーパントを含む。
【0009】
本発明の一実施例によれば、該n型ドープ層は、1.5*1012~6*1012 ns*cm-2の電子面積濃度を有し、該n型ドープ層は、電子濃度が1.5*1019~3*1019 ns*cm-3の高濃度電子群を含む。
【0010】
本発明の一実施例によれば、該n型ドープ層と、該チャネル層および該バリア層の接触面との間の距離は、60~100オングストロームである。
【0011】
本発明の一実施例によれば、該チャネル層は、非意図的にドープされたかまたはドープされていないGaNからなり、該バリア層は、非意図的にドープされたかまたはドープされていないAlGaNからなる。
【0012】
本発明の一実施例によれば、前記半導体電界効果トランジスタは、該バリア層に設けられるパッシベーション層をさらに含み、かつ該パッシベーション層が該ソース、該ゲートおよび該ドレインのそれぞれの上面の少なくとも一部を覆う。
【0013】
本発明の一実施例によれば、前記半導体電界効果トランジスタは、該チャネル層の下方に設けられるバッファ層をさらに含む。
【0014】
本発明のいくつかの実施例によれば、前記半導体電界効果トランジスタは、変調ドープ電界効果トランジスタ(Modulation-Doped Field-Effect Transistor、 MODFET)、高電子移動度トランジスタ(High Electron Mobility Transistor、 HEMT)、金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor、 MOSFET)、金属半導体電界効果トランジスタ(Metal-Semiconductor Field-Effect Transistor、 MESFET)または金属絶縁体半導体電界効果トランジスタ(Metal-Insulator-Semiconductor Field-Effect Transistor、 MISFET)である。
【0015】
本発明の別の態様は、上述の半導体電界効果トランジスタを含む電力増幅器を提供する。
【0016】
本発明のさらに別の態様は、半導体電界効果トランジスタの製造方法であって、基板の上方にバッファ層を形成するステップと、該バッファ層の上方にチャネル層を形成し、該チャネル層にn型ドープ層を形成するステップと、該チャネル層の上方にバリア層を形成するステップと、該バリア層の上方にゲートを形成し、該ゲートの両端にそれぞれソースとドレインを形成するステップとを、含む方法を提供する。
【0017】
本発明の一実施例によれば、該n型ドープ層は、シリコンドーパントでドープすることによって形成される。
【0018】
本発明の一実施例によれば、形成された後の該n型ドープ層は、1.5*1012~6*1012 ns*cm-2の電子面積濃度を有し、該n型ドープ層は、電子濃度が1.5*1019~3*1019 ns*cm-3の高濃度電子群を含む。
【0019】
本発明の一実施例によれば、該n型ドープ層の形成位置と、該チャネル層とおよび該バリア層の接触面との間の距離は、約60~100オングストロームである。
【0020】
本発明の別の態様は、本発明の半導体電界効果トランジスタを含む線形電力増幅器を提供する。
【0021】
本発明によって提供される半導体電界効果トランジスタおよびその製造方法の利点は、次のとおりである。チャネル層内に設けられるn型ドープ層を介して、トランジスタ内の電子分布を変え、例えば、二次元電子ガス周囲の空間の電子濃度を変えて、コンポーネントのRF線形性を実際に改善し、それにより、電荷の調整によって閾値電圧を制御し、その抵抗を下げることができる。したがって、本発明は、様々な半導体電界効果トランジスタの本来の利点を保持するだけでなく、優れた線形性を有し、高周波電力増幅器の関連分野に適用される本発明の潜在的価値をさらに高める。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明の上記および他の目的、特徴、利点、および実施例をより容易に理解させるために、添付図面の説明は以下のとおりである。
【0023】
図1】従来の半導体装置の層体断面図である。
図2a】従来の半導体装置による特性解析図である。
図2b】従来の半導体装置による特性解析図である。
図2c】従来の半導体装置による特性解析図である。
図2d】従来の半導体装置による特性解析図である。
図2e】従来の半導体装置による特性解析図である。
図3a】本発明の一実施例による特性解析図である。
図3b】本発明の一実施例による特性解析図である。
図3c】本発明の一実施例による特性解析図である。
図3d】本発明の一実施例による特性解析図である。
図4】本発明の様々な実施例による半導体装置の層体断面図である。
図5】本発明の様々な実施例による半導体装置の層体断面図である。
図6】本発明の様々な実施例による半導体装置の層体断面図である。
図7】本発明の様々な実施例による半導体装置の層体断面図である。
図8】本発明の様々な実施例による半導体電界効果トランジスタの製造を示すフローチャートである。
【0024】
図面中の様々な特徴およびコンポーネントは、一定の縮尺で描かれておらず、一般的な慣行に従って、本発明に関連する具体的な特徴およびコンポーネントを最もよく示すように描かれている。さらに、異なる図面間で類似のコンポーネントおよび部品を同一または類似の参照番号で示すことにする。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の説明をより詳細かつ完全なものにするために、以下では、本発明の実施形態および具体的な実施例について例示的な説明を提供するが、これは、本発明の具体的な実施例を実装または使用する唯一の形ではない。本明細書および添付の特許出願の範囲において、文脈上別段の指示がない限り、「一」および「該」は複数形と解釈することもできる。また、本明細書および添付の特許出願の範囲において、特に別段の指示がない限り、「何かに設けられる」とは、付着または他の形態によって何かの表面に直接的または間接的に接触するものと見なすことができ、該表面の定義は、明細書の文脈/段落の意味および本発明が属する分野の常識に従って判断されるべきである。
【0026】
本発明を定義するために使用される数値範囲およびパラメータは近似値であるにもかかわらず、具体的な実施例に示される数値は可能な限り正確に示されている。ただし、数値には、個々のテスト方法による標準偏差が本質的に含まれている。本明細書で使用される場合、「約」は一般に、実際の値が特定の値または範囲の±10%、5%、1%、または0.5%以内にあると意味する。あるいは、「約」という言葉は、本発明が属する分野の当業者によって決定されるように、実際の値が平均値の許容可能な標準誤差内にあることを意味する。したがって、特に断りのない限り、本明細書および添付の特許出願の範囲に開示されている数値パラメータは、おおよその数値であり、必要に応じて変更することができる。少なくとも、これらの数値パラメーターは、示されている有効桁数と、通常の丸めを適用して得られた数値を意味すると解釈する必要がある。
【0027】
本発明は、半導体電界効果トランジスタ(semiconductor field effect transistor)およびその製造方法に関し、該半導体電界効果トランジスタは、好ましくは化合物半導体電界効果トランジスタであり、より好ましくは窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)/窒化ガリウム(GaN)高電子移動度トランジスタ(high electron mobility transistors、 HEMTs)である。ただし、異なる実施例によって、該半導体電界効果トランジスタは、変調ドープ電界効果トランジスタ(Modulation-Doped Field-Effect Transistor、 MODFET)、金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor、 MOSFET)、金属半導体電界効果トランジスタ(Metal-Semiconductor Field-Effect Transistor、 MESFET)または金属絶縁体半導体電界効果トランジスタ(Metal-Insulator-Semiconductor Field-Effect Transistor、 MISFET)であっても良い。具体的には、本明細書のいわゆる金属酸化物半導体電界効果トランジスタは、n型またはp型のシリコン金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(Si-MOSFET)あるいはn型またはp型炭化ケイ素金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(SiC-MOSFET)であってもよく、該半導体電界効果トランジスタは平面トランジスタまたは非平面トランジスタであり、例えば、フィン電界効果トランジスタ(Fin Field-Effect Transistor、FinFET)、または、ゲートオールアラウンド電界効果トランジスタ(Gate-All-Around Field-Effect Transistor、GAAFET)であってもよい。該半導体電界効果トランジスタは、チャネル層およびバリア層を含み、かつ該チャネル層および該バリア層が異なる材料からなるため、両者の間に異種接触面が設けられ、該異種接触面のブロックに二次元電子ガス(two dimensional electron gases、2DEG)領域が誘起される。さらに、本発明によって提供される化合物半導体電界効果トランジスタは、チャネル層内の二次元電子ガス領域の境界寄り位置にn型材料層が設けられ、二次元電子ガスの周囲空間の電子濃度を実質的に変え、それによってコンポーネントの線形性を改善させた。
【0028】
本明細書で使用される「二次元電子ガス領域の境界」という用語は、二次元電子ガス領域の電子濃度がゼロに近づくチャネル層内の位置を指す。一般的には、該二次元電子ガス領域の境界と、該チャネル層および該バリア層の接触面との間の距離は、異なる材料によって異なる可能性があり、本発明の好ましい実施例によれば、その距離は60~100オングストロームであって、例えば、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100である。
【0029】
具体的には、本発明の「高電子移動度トランジスタ」は、負の閾値電圧を有するノーマリオン(normally ON)構造であってもよく、正の閾値電圧を有するノーマリオフ(normally OFF)構造に変換することもできる。一方、本発明に記載の「半導体材料」には、化学周期表の異なる族の1つ以上の元素に属する、GaNを含むがこれに限定されない様々な元素の化合物が含まれる。これらの化合物は、第13族(即ち、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、およびタリウム(Tl)を含むグループ)の元素および第15族(即ち、窒素(N)、リン(P)、砒素(As)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)含むグループ)の元素からなるペア、あるいは、炭化ケイ素(SiC)やシリコンゲルマニウム合金などの、第14族(即ち、炭素(C)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)などの元素を含むグループ)の元素からなるペアを含んでもよい。周期表の前記第13~15族は、それぞれ第III族、第IV族、および第V族と呼ぶことができる。
【0030】
本発明の別の態様は、半導体電界効果トランジスタの製造方法に関する。一般に、本明細書に記載される層体、ドープ、遮蔽、および装置構造などの関連するものは、そのような層体、ドープ、遮蔽、および装置構造を形成するための任意の適切な技術(例えば、堆積、成長、パターニング、またはエッチング)を利用して形成されている。
【0031】
また、本発明によって提供される半導体電界効果トランジスタは、電力増幅器内に配置することができる。
【0032】
実施例
【0033】
図1は、従来の半導体装置100に従って描かれた層体の断面図である。図1を参照すると、該従来の半導体装置100は、実質的に、窒化アルミニウムガリウム/窒化ガリウム高電子移動度トランジスタに基づく半導体装置であり、かつエピタキシャル成長された層体である。該従来の半導体装置100は、基板110、バッファ層120、チャネルブロック130、ソース電極140、ゲート電極150およびドレイン電極160を含む。
【0034】
該チャネルブロック130は、該バッファ層120の表面に設けられ、さらに、チャネル層131およびバリア層133を含む。該チャネル層131と該バリア層133との間には、異種材料界面の接触面132が設けられ、該チャネル層131内の該接触面132寄り位置に二次元電子ガス領域132Gが形成され、該ソース電極140と該ドレイン電極160とを電気的に結合する目的などを達成するために、該二次元電子ガス領域132Gは、バイアス電圧が印加されるとき、自由電子の伝導チャネルを形成することができる。具体的には、該チャネル層131の化合物半導体材料は、ドープされていないかまたは非意図的にドープされたGaNであり、該バリア層133の化合物半導体材料は、ドープされていないかまたは非意図的にドープされたAlGa1-xNであり、xは約0.1~約1である。
【0035】
図2a~図2dは、上述した従来の半導体装置100の特性を解析したものであり、図1~2dを併せて参照されたい。図2aは、該従来の半導体装置100による、チャネル層の空間に対する電子濃度の変化を示すグラフであり、縦軸が電子濃度(ns*cm-3)を表し、横軸が該チャネル層131の内部と該接触面132との間の距離(オングストローム)を表す。図2aから分かるように、該チャネル層131の該接触面132寄り位置の電子濃度は鐘形(bell shaped)に成し、つまり該二次元電子ガス領域132Gの電子濃度の分布である。より具体的には、該チャネル層131において、該接触面132まで150オングストロームの距離内で、その電子面積濃度は1.1*1013ns*cm-2である。
【0036】
図2bは、従来の半導体装置100による単位面積当たりの電子数に対する電子飽和速度の変化を示すグラフであり、縦軸が電子飽和速度(10cm/s)を表し、横軸が電子面積濃度(ns*cm-2)を表す。図2cは、従来の半導体装置100によるゲート-ソース間電圧(Vgs)に対するトランスコンダクタンス(transconductance、g)の変化を示すグラフであり、縦軸がトランスダクション(mS)を表し、横軸がゲート-ソース間電圧(V)を表す。本明細書で使用される「トランスコンダクタンス」という用語は、ソース出力電流の変化量とゲート-ソース間電圧の変化量との比を指し、ソース出力電流に対する、コンポーネントのゲート-ソース間電圧の制御能力を測定するために使用することができる。トランスコンダクタンスの単位は、通常ジーメンス(S)であり、本発明では、ミリジーメンス(mS)を使用する。
【0037】
本願の発明者らはさらに解析して、特定の理論に限定されるものではないが、電子面積濃度に対するコンポーネントの電子飽和速度の変化(図2bに示すように)に基づいて、相対空間の電子濃度の分布(図2aに示す結果)により、ゲート-ソース間電圧に対するトランスコンダクタンスの変化関係(図2cに示す結果)が得られることを分かった。上記の例を取り上げると、該従来の半導体装置100は、電子濃度の空間分布(図2aに示すように)の条件下で、ゲート-ソース間電圧に対するトランスコンダクタンスの変化において、少なくともトランスコンダクタンスの顕著なピーク期間(図2cに示すように)が示され、それにより、該従来の半導体装置100の線形性(linearity)が不十分であることを意味する。一方、本実施例は図2aおよび図2bに従って、該従来の半導体装置100のゲート-ソース間電圧に対するトランスコンダクタンスの一次元シミュレーション(one dimensional simulation)を行い(図2dに示すように)、その試験結果は図2eに示される。図2dおよび図2eによれば、いずれも縦軸は、単位長さあたりのトランスコンダクタンス値(mS/mm)を表し、横軸は、ゲート-ソース間電圧(V)を表し、それから見ると、該従来の半導体装置100がその電子濃度分布の条件(即ち、図2aに示されるもの)下で、ゲート-ソース間電圧に対するトランスコンダクタンスのグラフに不均一な数値パターンが示されることが分かる。
【0038】
上記の例によって提示された内容を考慮して、特定の理論によって制限されることなく、本願の発明者らは、電子面積濃度に対するコンポーネントの電子飽和速度の変化関係に基づいて、相対空間の電子濃度の分布からゲート-ソース間電圧に対するコンポーネントのトランスダクションの状態を導き出すことができる。そこで、本発明者らは、本実施例を提案し、トランジスタのチャネル層内の二次元電子ガス領域のエッジ付近に電子群を注入して、半導体装置の二次元電子ガス領域の周囲空間における電子濃度の分布を調整し、ゲート-ソース間電圧に対するトランスダクションの変化におけるコンポーネントの性能を改善し、それによってトランジスタの線形性を改善する。具体的には、本実施例は、チャネル層の空間に対する電子濃度の変化を示すグラフ(図3a)を提供し、縦軸が電子濃度(ns*cm-3)を表し、横軸がトランジスタのチャネル層およびバリア層の接触面までの距離(オングストローム)を表す。チャネル層内の接触面から150オングストローム以内の距離では、その元の電子面積濃度は1.1*1013ns*cm-2である。前記電子群はチャネル層内の接触面まで約60~100オングストロームの位置に注入され、その電子面積濃度は1.92*1012ns*cm-2であり、前記電子群は急激に立ち上がる高濃度電子群を含み、その電子濃度は約1.5*1019ns*cm-3である。本実施例はまた、図3aに対応する、ゲート-ソース間電圧に対するトランスダクションの一次元シミュレーション図(図3b)および試験結果図(図3c)を提供し、これら2つの縦軸が単位当たりのトランスダクション値(mS/mm)を表し、横軸がゲート-ソース間電圧(V)を表す。図3a~3cから、トランジスタのチャネル層の二次元電子ガス領域の境界付近に電子群が注入され、特に該電子群には急激に立ち上がる高濃度の電子群が含まれる場合、トランジスタ内の電子濃度の空間分布が調整されたため、トランジスタのゲート-ソース間電圧に対するトランスダクションの変化に緩やかな数値パターンが示され、それはトランジスタの線形性が向上されたことを意味する。
【0039】
異なる実施例によれば、注入された電子群の電子面積濃度が増加すると、トランジスタのゲート-ソース間電圧に対するトランスダクションの変化により緩やかな数値パターンが示されることに役立つ。具体的には、本発明の一実施例によれば、前記注入された電子群の電子面積濃度は、上記実施例の濃度の2倍になり、即ち4.0*1012ns*cm-2であり、同様の分布パターンで、それに含まれる高濃度電子群の電子濃度は、3*1019ns*cm-3である。図3dは、ゲート-ソース間電圧に対するトランスダクションの測定結果図であり、縦軸では実線で単位長さあたりのトランスダクション値(mS/mm)を表し、点線でドレイン-ソース電流値(mA/mm)を表し、横軸がゲート-ソース間電圧(V)を表す。図3dから分かるように、より高い濃度の電子群が注入されると、トランジスタ内の電子濃度の空間分布はさらに調整され、トランジスタの線形性も向上される。
【0040】
異なる実施例によれば、前記注入された電子群の電子面積濃度は6.0*1012ns*cm-2に達することができ、その具体的な濃度値は、本願が属する分野の当業者によって、コンポーネントの具体的なパラメータに従って調整することができる。しかしながら、その濃度値の範囲は、好ましくは1.5*1012~6*1012ns*cm-2である。
【0041】
上記電子群の電子面積濃度に影響を与えることなく、その上記高濃度電子群の分布領域のサイズは、ユーザーのニーズに合わせて調整することができる。本発明の一実施例によれば、その高濃度電子群は、幅のある波形を呈し、その具体的な分布領域(幅)は、30オングストローム以下であり、好ましくは10~30オングストロームであり、例えば、10、15、20オングストローム、25または30オングストロームである。
【0042】
以上の実施例の内容に鑑み、本願の発明者らは、二次元電子ガス領域の境界の周りに電子群を注入することにより、二次元電子ガス領域を有するトランジスタにおける電子濃度の分布を効果的に調整し、トランジスタの線形性をさらに改善することを分かった。トランジスタ自体の材料または構造特性に応じて、本発明が属する分野の当業者は、個々のコンポーネントの電子面積濃度に対する電子飽和速度の変化状況、および二次元電子ガス領域の電子面積濃度またはその分布領域のサイズなどの要因に従って、それぞれ、注入される電子群の電子面積濃度または注入位置を調整することができ、本発明の概念と矛盾しないことに基づいて、本発明が属する分野の当業者は、その詳細な定義を適切に調整することができ、本発明の範囲を超えると見なされるべきではないことを理解されたい。
【0043】
詳細には、前記電子群は、トランジスタのチャネル層とバリア層との接触面から60~100オングストロームで離れた位置に設けられ、好ましくは、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79または80オングストロームなどの、65~80オングストロームで離れた位置に設けられる。
【0044】
同じ概念で、本発明が属する分野の当業者は、要件に応じて、上記の実施例のキャリアを電子から正孔に変更することもでき、したがって、ユーザーは、上記注入された電子群を正孔群に合理的に変更することもできる。
【0045】
次に、本発明は、上記概念を適用したトランジスタを含む半導体装置である、別の実施例をさらに提案する。図4は、本実施例による層体断面図である。図4を参照すると、本実施例は、GaNベースの半導体装置200Aであって、GaNベースの化合物半導体電界効果トランジスタを含む半導体装置200Aを提供するが、該半導体装置に他の適切な単結晶シリコン化合物半導体材料を使用することもできる。該半導体装置構造200Aは、エピタキシャル成長による層体であってもよく、具体的に基板210、バッファ層220、チャネルブロック230、ソース電極240、ゲート電極250およびドレイン電極260を含む。
【0046】
該基板210はウェーハを含み、絶縁にする必要があり、例えば、サファイア、GaN、GaAs、シリコン結晶、またはSiの炭化ケイ素(SiC)の任意の多形(ウルツ鉱を含む)、AlN、InP、または半導体用の同様の基板材料などの、高品質の単結晶シリコン半導体材料でウェーハを作製する。
【0047】
該バッファ層220は、該基板210の表面に設けられ、該基板210と他の層体との間の不整合を補償するために、適切な格子構造および/または熱膨張係数を有することができる。該バッファ層220は、ドープされていないか、または、非意図的にドープ(unintentionally doping、UID)されたか、または炭素ドープ(carbon doping、 C doping)されたGaNまたはAlNなどの化合物半導体材料を含み、その材料はエピタキシャル成長によって形成されるか、または化学気相堆積などの他の薄膜形成技術によって薄膜構造に形成することができる。パラメータに関しては、該バッファ層220の厚さは約150~250nmであり、好ましくは200nmである。
【0048】
該チャネルブロック230は、該バッファ層220の表面に設けられ、チャネル層231およびバリア層233をさらに含む。該チャネル層231と該バリア層233との間に接触面232が設けられ、該チャネル層231および該バリア層233が異なる材料からなり、該接触面232が異種材料界面であり、該チャネル層231の該接触面232寄り位置に二次元電子ガス領域232Gが設けられ、該二次元電子ガス領域232Gは、ソース電極240とドレイン電極260とを電気的に結合する目的などを達成するために、バイアス電圧が印加されるとき、自由電子の伝導チャネルを形成することができる。具体的には、該チャネル層231の化合物半導体材料は、ドープされていないかまたは非意図的にドープされたGaNであり、該バリア層233の化合物半導体材料は、ドープされていないかまたは非意図的にドープされたAlGa1-xNであり、xが約0.1~約1の範囲内にあり、いくつかの実施例によれば、xが0.15~1であり、異なる実施例によれば、xが0.20~0.25であり、例えば、0.20、0.21、0.22、0.23、0.24または0.25である。一方、該チャネル層231の厚さは約150~500nmの範囲内にあり、好ましくは150~250nmであり、該バリア層233の厚さは約1.5~25nmの範囲内にあり、好ましくは1.5~20nmであり、該厚さはxの値によって調整できる。
【0049】
なお、該チャネル層231の該接触面232寄り位置(同様に、即ち該二次元電子ガス領域232G寄り位置)には、n型ドーパントを含むが、好ましくはシリコンドーパントを含むn型ドープ層234が設けられる。具体的には、該n型ドープ層234の配置位置は、該接触面232までの距離が約60~100オングストロームであり、好ましくは、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79または80オングストロームなど、65~80オングストロームである。一方、該n型ドープ層234は、1.5*1012、2*1012、2.5*1012、3*1012、3.5*1012、4*1012、4.5*1012、5*1012、5.5*1012または6*1012 ns*cm-2などの、1.5*1012~6*1012 ns*cm-2の電子面積濃度を有し、該n型ドープ層は、電子濃度が1.5*1019~3*1019 ns*cm-3であり、例えば、1.5*1019、2*1019、2.5*1019または3*1019 ns*cm-3である高濃度電子群を含む。
【0050】
同じ概念で、本発明が属する分野の当業者は、要件に応じて上記の実施例のキャリアを電子から正孔に変更することもでき、したがって、ユーザーは、上記に設定されたn型ドープ層をp型ドープ層に合理的に変更することもできる。
【0051】
該ゲート電極250は該バリア層233の上方に設けられ、該ソース電極240および該ドレイン電極260がそれぞれ該ゲート電極250の両側に設けられる。具体的には、該ゲート電極250は、半導体装置200Aにバイアス電圧を印加するか、または半導体装置200Aを制御できる任意の導電性材料であってもよく、本発明で使用される化合物半導体材料がより大きな価電子帯ギャップを有することを考慮すると、好ましくはニッケル(Ni)/金(Au)またはジルコニウム(Zr)/金(Au)である。該ソース電極240および該ドレイン電極260は、該二次元電子ガス領域232Gとオーム接触または他の導電性界面を形成することができる任意の適切な導電性材料、好ましくはチタン(Ti)/アルミニウム(Al)/ニッケル(Ni)/金(Au)であってもよく、より好ましくは、ニッケルに加えて、タンタル(Ta)またはモリブデン(Mo)などの高融点金属(refractory metal)も、アルミニウムと金の間の拡散バリア層(Diffusion barrier)として使用することができる。
【0052】
図5は、本発明の一実施例による半導体装置200Bの層体断面図である。図4図5を併せて参照すると、両者の構造は基本的に類似しており、両方とも、GaNベースの化合物半導体電界効果トランジスタを含むGaNベースの半導体装置であってもよい。相違点は、該半導体装置200Bにおいて、該バリア層233の上方にパッシベーション層270がさらに設けられ、該パッシベーション層270が、該ソース電極240、該ゲート電極250および該ドレイン電極260のそれぞれの上面の少なくとも一部を覆い、該パッシベーション層270が、ゲート酸化物層または窒化シリコン(Si3N4)材料であってもよいことである。
【0053】
図6は、本発明の一実施例による半導体装置200Cの層体断面図である。図5および図6を併せて参照すると、両者によって示される構造は基本的に類似しており、両方とも、GaNベースの化合物半導体電界効果トランジスタを含むGaNベースの半導体装置であってもよい。相違点は、該半導体装置200Cが超格子層(superlattice layer)213および核生成層(nucleation layer)211をさらに含み、これらが該基板110と該バッファ層120との間に配置されることである。本明細書で使用されるように、いわゆる超格子層は、複数の格子の重ね合わせにより、基本単位格子よりも周期構造が長い格子層を含む。
【0054】
具体的には、該超格子層213は、第1超格子サブ層213Aおよび第2超格子サブ層213Bをさらに含む。該第1超格子サブ層213Aは、ドープされていないかまたは非意図的にドープされたAlNを含み、その厚さは約4~5nmで、好ましくは4.5nmであり、該第2超格子サブ層213Bはドープされていないかまたは非意図的にドープされたGaNを含み、その厚さは約10~30nm、好ましくは20nmである。該超格子層213は、約40個周期を有するので、その合計厚さは約560~1400nm、好ましくは980nmである。一方、該核生成層211は、ドープされていないかまたは非意図的にドープされたAlN化合物を含み、その厚さは約100nmである。
【0055】
図7は、本発明の一実施例による半導体装置200Dの層体断面図である。本実施例と前述の半導体装置200A~200Cとは、構造が基本的に同様であり、いずれもGaNベースの半導体装置であり、GaNベースの化合物半導体電界効果トランジスタを含む。相違点は、本実施例の半導体装置200Dでは、該チャネルブロック230と該基板210との間に核生成層211のみが設けられ、該バッファ層220が設けられていないことであり、本実施例の設定条件に基づいて製造された半導体装置200Dは、より高いブレークダウン電圧および電力密度を有し、熱抵抗、電流破壊、メモリー効果を効果的に低減することができる。
【0056】
本発明のいくつかの実施例によれば、上記半導体装置の該バリア層233の上方には、キャップ層(cap layer)がさらに設けられてもよく、該キャップ層は、ドープされていないかまたは非意図的にドープされた化合物半導体材料を含み、好ましくはドープされていないかまたは非意図的にドープされたGaNを含む。
【0057】
さらに、本発明が属する分野の当業者は、本発明の概念を、内部に電子群の分布が発生する他のトランジスタにも適用できるはずである。具体的には、本発明のトランジスタが適用される半導体装置は、シリコン金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(Si-MOSFET)または炭化ケイ素金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(SiC-MOSFET)を使用してもよい。言い換えれば、上記の実施例におけるチャネルブロックおよび基板などの層体構造は、全体としてシリコンまたは炭化ケイ素基板であってもよく、ゲートにバイアス電圧が印加されると、バリア層の下方に電荷が引き寄せられて、チャネル層と見なされる電荷チャネルが発生する。しかしながら、トランジスタ自体の材料または構造特性に応じて、本発明が属する分野の当業者は、個々のコンポーネントの電子面積濃度に対する電子飽和速度の変化状況、二次元電子ガス領域内の電子面積濃度またはその分布領域のサイズなどの要因に従って、前記n型ドープ層の電子面積濃度または配置位置をそれぞれ調整することができることを理解されたい。本発明の概念と矛盾しないことに基づいて、本発明が属する分野の当業者は、詳細な定義を適切に調整することができ、本発明の範囲を超えると見なされるべきではない。
【0058】
製造方法
【0059】
図8は、本発明の各実施例による半導体電界効果トランジスタの製造を示すフローチャートである。図8を参照すると、本発明の実施例による半導体電界効果トランジスタの製造方法は、基板の上方にバッファ層を形成するステップ1001と、該バッファ層の上方にチャネル層を形成して、該チャネル層内にn型ドープ層を形成するステップ1002と、該チャネル層の上方にバリア層を形成するステップ1003と、ソース電極、ゲート電極およびドレイン電極を形成するステップ1004とを含む。なお、本明細書に記載された方法のステップは、本発明者の概念に従って例示されているにすぎず、本発明が属する分野の当業者は、同じまたは類似の概念に従って上記方法の内容をわずかに置き換えることができ、および上記のステップの順序を変更することさえでき、そのような置換または変更は、依然として本発明の概念の範囲内にある。
【0060】
本発明に記載の「適切なエピタキシャル成長または堆積プロセス」は、化学気相堆積法(chemical vapor deposition、CVD)、低圧化学気相堆積法(low pressure CVD、LPCVD)、大気圧化学気相堆積法(atmospheric pressure CVD、APCVD)、超高真空化学気相堆積法(ultrahigh vacuum CVD、UHVCVD)、原子層堆積法(atomic layer deposition、ALD)、分子層堆積法(molecular layer deposition、MLD)、プラズマ化学気相堆積法(plasma enhanced CVD、PECVD)、有機金属化学気相堆積法(metal-organic CVD、MOCVD)、分子線エピタキシー(molecular beam epitaxy、MBE)、スパッタリングなど、またはそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されない。
【0061】
ステップ1001において、該基板は、前の製造プロセスからのものであってもよいか、または、1つまたは複数の基板成長および処理技術に従って製造されてもよい。該基板は、サファイア、GaN、GaAs、Siの炭化ケイ素(SiC)の任意の多形(ウルツ鉱を含む)、AlN、InPまたは半導体用の同様の基板材料などの、高品質単結晶シリコン半導体材料で製造されたウェーハを含み、該バッファ層は、ドープされていないか、非意図的にドープされたか、または炭素ドープされたGaNなどの、化合物半導体材料を含み、該バッファ層は、適切なエピタキシャル成長または堆積プロセスによって形成された薄膜であり、その厚さは約150~250nm、好ましくは200nmである。
【0062】
異なる実施形態によれば、ステップ1001において、適切なエピタキシャル成長または堆積プロセスによって該基板の上方に核形成層および超格子層が形成されてもよい。該核形成層は、ドープされていないかまたは非意図的にドープされたAlN化合物で形成され、その厚さは約100nmである。該超格子層を形成する場合、第1超格子サブ層および第2超格子サブ層を形成することをさらに含み、該第1超格子サブ層は、ドープされていないかまたは非意図的にドープされたAlNでできており、その厚さは約4~5nm、好ましくは4.5nmであり、該第2超格子サブ層は、ドープされていないかまたは非意図的にドープされたGaNでできており、その厚さは約10~30nm、好ましくは20nmであり、該超格子層は約40個周期で形成されるため、超格子層の合計厚さは約560~1400nm、好ましくは980nmである。
【0063】
ステップ1002において、該チャネル層は、ドープされていないかまたは非意図的にドープされたGaNを形成材料として、適切なエピタキシャル成長または堆積プロセスによって製造され、該チャネル層の厚さは、約150~500nmであり、好ましくは150nm~400nmである。該n型ドープ層では、適切なエピタキシャル成長または堆積プロセスによって、ドーパントを該チャネル層内にドープすることができ、該ドーパントがシリコンドーパントであり、具体的には、該チャネル層の形成中にドーパントを注入することができる。該n型ドープ層が形成された後、1.5*1012、2*1012、2.5*1012、3*1012、3.5*1012、4*1012、4.5*1012、5*1012、5.5*1012または6*1012 ns*cm-2などの、1.5*1012~6*1012ns*cm-2の電子面積濃度を有し、該n型ドープ層は、1.5*1019、2*1019、2.5*1019または3*1019 ns*cm-3など、即ち、1.5*1019~3*1019 ns*cm-3の電子濃度を有する高濃度電子群を含む。
【0064】
同じ概念で、本発明が属する分野の当業者は、要件に応じて上記の実施例のキャリアを電子から正孔に変更することもでき、したがって、ユーザーは、上記に設定されたn型ドープ層をp型ドープ層に合理的に変更して、それによりp型ドーパントを注入することができる。
【0065】
ステップ1003において、バリア層は、ドープされていないかまたは非意図的にドープされたAlGa1-xNから形成され、xは、約0.1~約1の範囲内にあり、いくつかの実施例によれば、xは、0.15~1の範囲内にあり、異なる実施例によれば、xは0.20~0.25であり、適切なエピタキシャル成長または堆積プロセスによって製造され、該バリア層の厚さは約5~20nm、好ましくは10nm~15nmである。
【0066】
ステップ1004は、必要に応じて、メサ分離(mesa isolation)製造などの事前準備プロセスを含むことができ、エッチングプロセスなどのプロセスをさらに含む。該エッチングプロセスは、ドライエッチングまたはウェットエッチングであってもよく、好ましくはドライエッチングであり、例えば、反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching、RIE)、誘導結合およびプラズマエッチング(Inductively Coupled Plasma、 ICP)などの物理的衝撃法である。次に、ゲートは、半導体装置に対してバイアス電圧の印加または制御を行い可能な任意の導電性材料からなり、好ましくはニッケル(Ni)/金(Au)またはジルコニウム(Zr)/金(Au)を使用して、適切なエピタキシャル成長または堆積プロセスによって該p型材料層上に形成することができ、ソースおよびドレインは、オーミック接触または他の導電性接触面を形成可能な任意の適切な導電性材料で作ることができ、好ましくは、チタン(Ti)/アルミニウム(Al)/ニッケル(Ni)/タンタル(Ta)/モリブデン(Mo)/金(Au)を使用して、適切なエピタキシャル成長または堆積プロセスによって該ゲート電極の両端に形成することができる。さらに、いくつかの実施例において、ステップ1004はパッシベーションプロセスをさらに含むことができ、該パッシベーションプロセスではパッシベーション層を準備し、該パッシベーション層が、該ソース電極、該ゲート電極および該ドレイン電極のそれぞれの上面の少なくとも一部を覆うように、適切なエピタキシャル成長または堆積プロセスによって形成することができる。該パッシベーション層が、ゲート酸化物層または窒化ケイ素(Si)材料で形成することもできる。
【0067】
上記の製造方法に関して、該n型ドープ層の具体的な形成位置と、該チャネル層および該バリア層の接触面との間の距離は、約60~100オングストロームで、好ましくは65~80オングストロームであり、例えば、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79または80オングストロームである。
【0068】
以上をまとめると、従来技術と比較して、本発明で解決される技術的課題は、トランジスタにおける二次元電子ガス領域の周囲空間における電子濃度の分布と、コンポーネントの線形性との関連性に基づいて、本発明によって提供される半導体電界効果トランジスタのチャネル層において、二次元電子ガス領域の境界に特定の電子面積濃度を有するn型ドープ層が設けられ、前記n型ドープ層が、トランジスタの二次元電子ガス領域の周囲空間の電子濃度分布を変更するために使用され、これにより、コンポーネント全体の線形性を改善する。
【0069】
以上、本発明を詳細に説明したが、上述したものは本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明の実施範囲を限定するものではなく、即ち、本発明の特許出願の範囲に従って行われたすべての同等の変更および修正は、依然として本発明の特許の範囲内にあるはずである。
【符号の説明】
【0070】
100、200A、200B、200C、200D:半導体装置
1001~1004:ステップ
110、210:基板
120、220:バッファ層
130、230:チャネルブロック
131、231:チャネル層
132、232:接触面
132G、232G:二次元電子ガス領域
133、233:バリア層
140、240:ソース電極
150、250:ゲート電極
160、260:ドレイン電極
211:核形成層
213:超格子層
213A:第1超格子サブ層
213B:第2超格子サブ層
234:n型ドープ層
270:パッシベーション層
図1
図2a
図2b
図2c
図2d
図2e
図3a
図3b
図3c
図3d
図4
図5
図6
図7
図8