(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134370
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】X線診断装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20060101AFI20230920BHJP
【FI】
A61B6/00 330Z
A61B6/00 320Z
A61B6/00 360B
A61B6/00 300D
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021145
(22)【出願日】2023-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2022039585
(32)【優先日】2022-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100196047
【弁理士】
【氏名又は名称】柳本 陽征
(74)【代理人】
【識別番号】100202429
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 信人
(72)【発明者】
【氏名】岩井 春樹
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA07
4C093AA12
4C093CA13
4C093EA18
4C093EB12
4C093EB13
4C093EB17
4C093EC22
4C093FA15
4C093FA55
4C093FF35
4C093FF37
(57)【要約】
【課題】X線診断装置で被検体に対して複数のX線撮影をする際に、TOD差異によるアーチファクトの影響を軽減し、寝台の下端までX線撮影できるようにする。
【解決手段】実施形態に係るX線診断装置は、被検体にX線を照射するX線管と、この照射されたX線を検出するX線検出器とを用いてX線撮影を行うことにより、X線画像を取得するX線画像取得部と、前記X線管のX線焦点から前記X線検出器までの距離である焦点検出器間距離と、前記X線検出器の位置と、X線を被検体に照射する角度とを制御して、複数のX線撮影において、X線焦点が同等の位置となるように、前記X線管と前記X線検出器とを制御する、撮影制御部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体にX線を照射するX線管と、この照射されたX線を検出するX線検出器とを用いてX線撮影を行うことにより、X線画像を取得するX線画像取得部と、
前記X線管のX線焦点から前記X線検出器までの距離である焦点検出器間距離と、前記X線検出器の位置と、X線を被検体に照射する角度とを制御して、複数のX線撮影において、X線焦点が同等の位置となるように、前記X線管と前記X線検出器とを制御する、撮影制御部と、
を備えるX線診断装置。
【請求項2】
前記撮影制御部は、前記X線管が照射するX線の範囲を絞るX線絞り器を制御して、複数のX線撮影における上端又は下端のX線画像をX線撮影する際の端部の領域を絞ることにより、被検体にX線を照射する範囲を調整する、請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項3】
X線焦点の位置と、X線を被検体に照射する角度とは、X線撮影の回数に基づいて固定的に定まっている、請求項2に記載のX線診断装置。
【請求項4】
固定的に定まっている、X線を被検体に照射する角度は、前記X線焦点の位置を挟んで上下対称である、請求項3に記載のX線診断装置。
【請求項5】
前記撮影制御部は、X線を被検体に照射する角度に応じて、前記焦点検出器間距離を調整して、複数のX線撮影において、前記X線管のX線焦点が同等の位置となるようにする、請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項6】
前記撮影制御部は、前記X線管が照射するX線の範囲を絞るX線絞り器を制御して、複数のX線撮影における上端又は下端のX線画像をX線撮影する際の上端部及び下端部の双方の領域を絞ることにより、被検体にX線を照射する範囲を調整する、請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項7】
前記撮影制御部は、前記X線管が照射するX線の範囲を絞るX線絞り器を制御して、複数のX線撮影における上端及び下端の少なくとも一方のX線画像を撮影する際の端部の領域を絞ることにより、被検体にX線を照射する範囲を調整する、請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項8】
前記撮影制御部は、長尺撮影の上端の位置と、X線撮影の回数とに応じて、前記X線管が照射するX線の範囲を絞るX線絞り器を制御して、前記複数のX線撮影における上端のX線画像をX線撮影する1回目のX線撮影における上端部を絞り、被検体にX線を照射する範囲を調整する、請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項9】
X線焦点の位置は、複数のX線撮影により被検体の撮影をすべき範囲の中央部分に設定される、請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項10】
X線焦点の位置は、前記被検体に対して行われる検査に関する検査情報に基づいて、設定される、請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項11】
X線焦点の位置は、X線焦点の位置の設定に関する入力操作を操作者から受け付けて、受け付けた入力操作に応じて、設定される、請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項12】
前記複数のX線撮影により取得された複数のX線画像を合成することにより前記被検体の長尺画像を生成する画像生成部をさらに備える、請求項1乃至請求項11のいずれかに記載のX線診断装置。
【請求項13】
前記撮影制御部は、前記X線を被検体に照射する角度が、前記X線検出器の中心軸上に位置する回転中心を中心として回動するように前記X線管を制御する、請求項1乃至請求項11のいずれかに記載のX線診断装置。
【請求項14】
前記撮影制御部は、前記X線を被検体に照射する角度が、前記X線管のX線焦点の位置を中心として回動するように前記X線管を制御する、請求項1乃至請求項11のいずれかに記載のX線診断装置。
【請求項15】
被検体にX線を照射するX線管と、この照射されたX線を検出するX線検出器とを用いてX線撮影を行うことにより、X線画像を取得する工程と、
前記X線管のX線焦点から前記X線検出器までの距離である焦点検出器間距離と、前記X線検出器の位置と、X線を被検体に照射する角度とを制御して、複数のX線撮影において、X線焦点が同等の位置となるように、前記X線管と前記X線検出器とを制御する工程と、
を備えるX線診断装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、X線診断装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
X線診断装置を用いて、被検体の体軸方向に沿って複数のX線撮影を行って複数のX線画像を収集し、これら収集した複数のX線画像を合成することにより、長尺画像を生成する長尺撮影が行われている。この長尺撮影では、TOD(Table to Object Distance)差異によるアーチファクトが発生する。すなわち、オブジェクトである被検体の撮影部位とテーブルである寝台との距離が、X線の入射角により異なることから、X線画像における撮影部位の大きさがX線の入射角に応じて変化してしまう。
【0003】
TOD差異によるアーチファクトの影響を軽減するために、長尺撮影にて複数のX線画像を撮影する際には、X線の照射をスリット上に絞ったスリット状撮影が行われている。しかし、このスリット状撮影では、X線検出器の中央部分しか使用できないため、X線検出器を下端まで移動させたとしても、被検体の足先までX線撮影できない。このため、長尺撮影の際には、被検者が寝台に乗る際に、被検者を踏み台で上方に移動させる必要がある。このような踏み台はお立ち台とも呼ばれており、被検者はお立ち台の上に立った状態でX線診断装置の寝台に乗り、被検体としてのX線撮影の位置を調整する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-240247号公報
【特許文献2】特願2021-020215号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、X線診断装置で被検体に対して複数のX線撮影をする際に、TOD差異によるアーチファクトの影響を軽減し、寝台の下端までX線撮影できるようにすることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記の課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係るX線診断装置は、被検体にX線を照射するX線管と、この照射されたX線を検出するX線検出器とを用いてX線撮影を行うことにより、X線画像を取得するX線画像取得部と、前記X線管のX線焦点から前記X線検出器までの距離である焦点検出器間距離と、前記X線検出器の位置と、X線を被検体に照射する角度とを制御して、複数のX線撮影において、X線焦点が同等の位置となるように、前記X線管と前記X線検出器とを制御する、撮影制御部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態に係るX線診断装置の全体構成を説明するブロック図である。
【
図2A】
図1のX線診断装置において斜入撮影を行う際のX線管保持装置の動作の一例を模式的に示す図である。
【
図2B】
図1のX線診断装置において斜入撮影を行う際のX線管保持装置の動作の他の例を模式的に示す図である。
【
図3】
図1のX線診断装置で実行されるX線撮影処理の内容を説明するフローチャートを示す図である。
【
図4】
図1のX線診断装置が備えるディスプレイに表示される位置合わせガイド画面の一例を示す図である。
【
図5】第1実施形態に係るX線診断装置で3回のX線撮影により長尺撮影を行う場合における、それぞれのX線撮影の際のX線照射の範囲を、側方から被検体を見た状態で説明する図(固定ストローク方式)である。
【
図6】第1実施形態に係るX線診断装置で2回のX線撮影により長尺撮影を行う場合における、それぞれのX線撮影の際のX線照射の範囲を、側方から被検体を見た状態で説明する図である。
【
図7】第1実施形態に係るX線診断装置で3回のX線撮影により長尺撮影を行う場合における、1回目のX線撮影の際のX線管保持装置12の位置と角度を、側方から被検体を見た状態で説明する図である。
【
図8】第1実施形態に係るX線診断装置で3回のX線撮影により長尺撮影を行う場合における、2回目のX線撮影の際のX線管保持装置12の位置と角度を、側方から被検体を見た状態で説明する図である。
【
図9】第1実施形態に係るX線診断装置で3回のX線撮影により長尺撮影を行う場合における、3回目のX線撮影の際のX線管保持装置12の位置と角度を、側方から被検体を見た状態で説明する図である。
【
図10】第2実施形態に係るX線診断装置で3回のX線撮影により長尺撮影を行う場合における、それぞれのX線撮影の際のX線照射の範囲を、側方から被検体を見た状態で説明する図(固定ストローク方式)である。
【
図11】第3実施形態に係るX線診断装置で3回のX線撮影により長尺撮影を行う場合における、それぞれのX線撮影の際のX線照射の範囲を、側方から被検体を見た状態で説明する図(ストローク自在方式)である。
【
図12】1回目のX線撮影におけるX線照射の絞りは全開で、2回目のX線撮影におけるX線照射は上側が絞られている状態を、X線照射の範囲を分離して説明する図である。
【
図13】
図12に示した2回のX線撮影を実際に行った場合のX線照射の範囲の重なりを表す図である。
【
図14】1回目のX線撮影におけるX線照射は下側が絞られており、2回目のX線撮影におけるX線照射の絞りは全開である状態を、X線照射の範囲を分離して説明する図である。
【
図15】
図14に示した2回のX線撮影を実際に行った場合のX線照射の範囲の重なりを表す図である。
【
図16】第4実施形態に係るX線診断装置で3回のX線撮影により長尺撮影を行う場合における、それぞれのX線撮影の際のX線照射の範囲を、側方から被検体を見た状態で説明する図(固定ストローク方式)である。
【
図17】第4実施形態に係るX線診断装置で3回のX線撮影により長尺撮影を行う場合における、それぞれのX線撮影の際のX線照射の範囲を、側方から被検体を見た状態で説明する図(ストローク自在方式)である。
【
図18】第1実施形態の変形例に係るX線診断装置で3回のX線撮影により長尺撮影を行う場合における、それぞれのX線撮影の際のX線照射の範囲を、側方から被検体を見た状態で説明する図(固定ストローク方式)である。
【
図19】第3実施形態の変形例に係るX線診断装置で3回のX線撮影により長尺撮影を行う場合における、それぞれのX線撮影の際のX線照射の範囲を、側方から被検体を見た状態で説明する図(ストローク自在方式)である。
【
図20】変形例に係るX線診断装置において、X線焦点の位置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、X線診断装置及びその制御方法の実施形態について説明する。なお、以下の説明において実質的に同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行うこととする。
【0009】
〔第1実施形態〕
図1は、第1実施形態に係るX線診断装置1の全体構成を説明するブロック図である。この
図1に示すX線診断装置1は、主として、寝台10と、X線管保持装置12と、高電圧発生器14と、X線検出器16と、処理回路18と、ディスプレイ20と、入力回路22と、記憶回路24と、備えて構成されている。また、本実施形態に係るX線管保持装置12は、X線管12aと、X線絞り器12bとを、備えて構成されている。
【0010】
寝台10には、被検体Pが位置する。被検体Pは、立位や仰臥位など、任意の体勢でよい。以下の説明においては、例えば、被検体Pが立位である場合を例に、本実施形態に係るX線診断装置1を説明する。本実施形態に係るX線診断装置1では、X線検出器16と、X線管保持装置12のX線管12aとを用いた1回のX線撮影で、立位の被検体Pを部分的に撮像することが可能である。このため、X線検出器16はX線管保持装置12と連動して、上下に移動可能に構成されており、異なる複数の配置でX線撮像を行って、異なる複数の配置によるX線画像が生成可能である。すなわち、本実施形態に係るX線診断装置1では、複数の配置によるX線画像を合成して、長尺のX線画像の生成が可能となる。
【0011】
X線管保持装置12のX線管12aは、処理回路18の制御の下、高電圧発生器14から高電圧とフィラメント電流とが供給され、これらに基づいて、X線を発生する。X線管保持装置12のX線絞り器12bは、X線管12aが発生したX線の絞りを行い、被検体Pに照射するX線の範囲を制御する。すなわち、X線絞り器12bの絞りを絞ることにより、X線の照射範囲を狭くすることができ、逆に、X線絞り器12bの絞りを開くことにより、X線の照射範囲を広くすることができる。X線絞り器12bの絞り具合は、例えば、操作者からの指示に基づいて、処理回路18からの制御信号により制御される。
【0012】
高電圧発生器14は、処理回路18からの制御指示に基づいて、X線条件に応じた高電圧とフィラメント電流とを発生させて、X線管保持装置12のX線管12aに供給し、X線管12aにX線を発生させる。
【0013】
X線検出器16は、例えば、2次元に配列された複数の画素を有する平面検出器(FPD:Flat Panel Detector)から構成されており、各画素は、被検体Pを透過したX線管12aからのX線を検出し、この検出されたX線を電気信号に変換する。さらに、この電気信号は、デジタル信号に変換されて、処理回路18に出力される。
【0014】
処理回路18は、このX線診断装置1の全体的な制御を行う制御回路であり、また、各種の演算を行う演算回路でもある。例えば、本実施形態に係る処理回路18は、X線画像取得機能18aと、撮影制御機能18bと、画像生成機能18cとを含んでいる。X線画像取得機能18aは、本実施形態におけるX線画像取得部に相当しており、撮影制御機能18bは、本実施形態における撮影制御部に相当しており、画像生成機能18cは、本実施形態における画像生成部に相当している。
【0015】
図1における実施形態では、X線画像取得機能18aと、撮影制御機能18bと、画像生成機能18cとにて行われる各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路24のプログラム記憶回路24aに格納されている。処理回路18はプログラムを記憶回路24のプログラム記憶回路24aから読み出し、実行することで、各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路は、
図1の処理回路18内に示された各機能を有することとなる。なお、
図1においては単一の処理回路18にて、X線画像取得機能18aと、撮影制御機能18bと、画像生成機能18cとが実現されるものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路18を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより、これらの機能を実現するものとしても構わない。
【0016】
ディスプレイ20は、各種の画像や情報を表示する。例えば、ディスプレイ20は、処理回路18によって生成された医用画像(X線画像)や、操作者からの各種操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)等を表示する。特に本実施形態においては、処理回路18の画像生成機能18cで生成された長尺のX線画像である長尺画像を表示する。本実施形態においては、ディスプレイ20は、例えば、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ等によって構成される。
【0017】
入力回路22は、操作者からの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路18に出力する。例えば、入力回路22は、マウスやキーボード、トラックボール、手動スイッチ、フットスイッチ、ボタン、ジョイスティック等により実現される。また、ディスプレイ20がタッチパネル機能を備えている場合には、ディスプレイ20が入力回路22の役割を果たすことができる。
【0018】
記憶回路24は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。本実施形態に係る記憶回路24は、例えば、プログラム記憶回路24aと、画像記憶回路24bとを備えて構成されている。プログラム記憶回路24aは、上述したように、処理回路18等で実行される各種のプログラムが格納されている。画像記憶回路24bには、各種の画像に関するデータが格納される。本実施形態においては、画像記憶回路24bには、例えば、X線検出器16で検出されたX線に基づいて生成されたX線画像が格納される。
【0019】
上述したように、本実施形態においては、処理回路18は、例えば、プロセッサにより構成される。ここで、プロセッサという文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及び、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは、記憶回路24のプログラム記憶回路24aに保存されたプログラムを読み出して実行することにより機能を実現する。なお、記憶回路24のプログラム記憶回路24aにプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成して構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、プロセッサは、プロセッサ単一の回路として構成されている場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて、1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、
図1における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合して、その機能を実現するようにしてもよい。
【0020】
移動機構26は、寝台10と、X線検出器16と、X線管保持装置12とを任意に移動させる機構である。移動機構26は、被検体Pを複数の撮影位置からX線撮影を行い、本実施形態における長尺撮影を実現させる。移動機構26は、例えば、寝台10、X線検出器16及びX線管保持装置12を機械的に支持しつつ移動を実現するための駆動部などによって構成される。また、移動機構26は、各軸にポテンショメータやエンコーダなどの状態検出器を備える。この状態検出器が検出した検出信号は、処理回路18に出力される。
【0021】
次に、
図2Aに基づいて、本実施形態に係るX線診断装置1におけるX線管保持装置12の動作について説明する。
図2Aは、本実施形態に係るX線診断装置1において、斜入撮影を行う場合のX線管保持装置12の動作を模式的に示す図である。
【0022】
この
図2Aから分かるように、斜入撮影とは、X線管保持装置12のX線管12aからのX線照射の中心軸C1を斜めにして、被検体の撮影部位に斜めにX線を照射する撮影法である。このため、X線検出器16にも、斜めにX線が入射される。
【0023】
X線管保持装置12のX線管12aからX線検出器16に垂直にX線が入射される場合、X線管保持装置12は
図2Aの実線の位置にある。このため、X線管保持装置12のX線管12aから照射された中心軸C1にあるX線は、X線検出器16の中心C2に垂直に入射される。本実施形態においては、このような通常のX線撮影を、斜入撮影と区別するために、適宜、垂直撮影ということとする。この
図2Aに示すように、垂直撮影が行われる場合において、X線管保持装置12のX線管12aからのX線照射の中心軸C1と、X線検出器16の中心軸C3とは一致するように設計されている。
【0024】
一方で、斜入撮影を行う場合、例えば、X線管保持装置12は、X線検出器16の中心軸C3上に位置する回転中心であるX線検出器16の中央部分を中心として、
図2Aにおける時計回り方向及び反時計回り方向に回動する。
図2Aにおいて反時計回りにX線管保持装置12が回動したときの姿勢を12’として示している。すなわち、X線管保持装置12は、X線検出器16の中央部分を中心として、上方に回動する。このため、X線照射の中心軸C1にあるX線も斜め上方からX線検出器16の中心C2に入射される。
【0025】
これとは反対に、X線管保持装置12がX線検出器16の中央部分を中心として、
図2Aにおける時計回りに回動した場合、X線管保持装置12は12’’として示している姿勢となる。すなわち、X線管保持装置12は、X線検出器16の中心軸C3上に位置する回転中心であるX線検出器16の中央部分を中心として、下方に回動する。このため、X線照射の中心軸C1にあるX線も斜め下方からX線検出器16の中心C2に入射される。
【0026】
このため、本実施形態に係るX線診断装置1においては、X線管12aからX線を被検体Pに照射する角度が、X線検出器16の中央部分を中心として回動するように、X線管12aを制御する。すなわち、X線管12aの位置と向きを調整することにより、
図2Aに示したような様々なX線の照射角度の斜入撮影を実現する。なお、これの説明から分かるように、「回動」とは、一定の中心角の範囲という制限の下で、その中心角の中心を、部分的な回転動作の中心として回る動きを意味している。
【0027】
なお、上述した本実施形態に係るX線診断装置1においては、例えば、X線管保持装置12は、X線検出器16の中央部分を中心として、時計回り方向及び反時計回り方向に回動することとしたが、X線管保持装置12の回転中心は、X線検出器16の中央部分である場合に限られない。X線管保持装置12の回転中心と、X線検出器16の中央部分とは、X線検出器16の中心軸C3上の異なる位置に位置してもよい。
図2Bは、
図1のX線診断装置において斜入撮影を行う際のX線管保持装置12の動作の他の例を模式的に示す図であり、
図2Aに対応する図である。以下、上述した
図2Aとは異なる部分を説明する。
【0028】
図2Bに示すように、本実施形態に係るX線診断装置1において、
図2Aに示されるX線診断装置1と比較して、X線検出器16は、寝台10及びX線管保持装置12から離間する方向に平行移動して配置される。そして、X線管保持装置12の回転中心は、X線検出器16の中心軸C3上におけるX線検出器16の中央部分からオフセットされた位置であるオフセット位置C4である。
【0029】
そのため、X線管保持装置12のX線管12aからX線検出器16に垂直にX線が入射される場合、X線管保持装置12は
図2Bの実線の位置にある。このため、X線管保持装置12のX線管12aから照射された中心軸C1にあるX線は、X線検出器16の中心軸C3上に位置する回転中心であるオフセット位置C4を通過して、X線検出器16の中心C2に垂直に入射される。
【0030】
一方で、斜入撮影を行う場合、例えば、X線管保持装置12は、X線検出器16の中心軸C3上に位置する回転中心であるオフセット位置C4を中心として、
図2Bにおける時計回り方向及び反時計回り方向に回動する。
図2Bにおいて反時計回りにX線管保持装置12が回動したときの姿勢を12’として示している。すなわち、X線管保持装置12は、オフセット位置C4を中心として、上方に回動する。このため、X線照射の中心軸C1にあるX線は、オフセット位置C4を通過して、斜め上方からX線検出器16に入射される。
【0031】
これとは反対に、X線検出器16の中心軸C3上に位置する回転中心であるオフセット位置C4を中心として、
図2Bにおける時計回りに回動した場合、X線管保持装置12は、12’’として示している姿勢となる。すなわち、X線管保持装置12は、オフセット位置C4を中心として、下方に回動する。このため、X線照射の中心軸C1にあるX線は、オフセット位置C4を通過して、斜め下方からX線検出器16に入射される。
【0032】
図2A及び
図2Bに示すように、X線管保持装置12の回転中心は、X線検出器16の中心軸C3上にあれば、X線検出器16の中央部分であってもよく、X線検出器16の中央部分からオフセットされた位置であるオフセット位置C4であってもよい。以下の説明では、
図2Aに示すような、X線管保持装置12の回転中心がX線検出器16の中央部分である場合を例として、詳細を説明する。
【0033】
本実施形態に係るX線診断装置1においては、この斜入撮影を行うためのX線管保持装置12の動作を利用して、長尺撮影を行う。すなわち、X線管保持装置12を移動させて、複数のX線撮影を行うが、その際に、それぞれのX線撮影において、X線管12aの焦点が同等の位置になるように、X線管保持装置12を制御する。ここで、同等の位置とは、物理的に同じ位置であってもよく、TOD差異が発生しない程度の実質的に同じ位置であってもよい。以下の説明では、X線診断装置1においては、X線管保持装置12を移動させて、複数のX線撮影を行う際に、それぞれのX線撮影において、X線管12aの焦点が物理的に同じ位置になるように、X線管保持装置12を制御する。つまり、複数のX線撮影により長尺撮影を行っても、仮想的に、X線管12aのX線焦点の位置は、1つになる。
【0034】
図3は、本実施形態に係るX線診断装置1において、この長尺撮影を行うためのX線撮影処理を説明するためのフローチャートを示す図である。上述したように、
図3に示すX線撮影処理は、記憶回路24におけるプログラム記憶回路24aに記憶されているプログラムを、処理回路18が読み出して実行することにより実現される処理である。
【0035】
図3に示すように、X線診断装置1は、操作者に長尺撮影の上端の位置合わせを行わせる(ステップS10)。本実施形態においては、処理回路18における撮影制御機能18bが、長尺撮影の上端の位置合わせを、操作者に行わせる。例えば、撮影制御機能18bは、ディスプレイ20に、位置合わせガイド画面を表示して、操作者に位置合わせを行わせる。
【0036】
図4は、本実施形態に係るX線診断装置1のディスプレイ20に表示される位置合わせガイド画面W10の一例を示す図である。この
図4に示すように、位置合わせガイド画面W10には、被検体Pの透視画像に重畳して、位置マーカーM10が表示される。本実施形態においては、この位置マーカーM10は、長尺撮影の上端を指し示す横向きのラインにより形成されている。
【0037】
このガイド画面W10を表示させるために、例えば、撮影制御機能18bは、処理回路18におけるX線画像取得機能18aを動作させて、被検体Pの透視撮影を行って透視画像を取得させ、ディスプレイ20に表示させる。例えば、X線画像取得機能18aは、低線量のX線を被検体Pに連続的に照射して、被検体Pの体内の動画を透視画像として取得する。そして、撮影制御機能18bは、この透視画像に重ねて、位置マーカーM10を表示する。
【0038】
この透視撮影は、上述した
図2Aの通常撮影(垂直撮影)の状態で行われる。すなわち、X線管保持装置12は、
図2Aの実線の位置にある。このため、X線管保持装置12のX線管12aから照射された中心軸C1にある透視撮影用のX線は、X線検出器16の中心C2に垂直に入射され、これにより透視画像が取得される。
【0039】
本実施形態においては、例えば、操作者が入力回路22を操作することにより、X線管保持装置12とX線検出器16との位置を、上下に移動させることが可能である。このときのX線管保持装置12の姿勢は、
図2Aにおける実勢で示されている状態である。すなわち、X線管保持装置12のX線管12aから、被検体Pに向けて垂直にX線が照射される。そして、操作者が長尺撮影を行おうとしている上端位置の近傍で、透視撮影を行う。これにより、長尺撮影の上端位置の近傍における透視画像が取得され、ディスプレイ20に表示される。
【0040】
この位置合わせガイド画面W10において、操作者は入力回路22を操作することにより、位置合わせガイド画面W10に表示されている位置マーカーM10の位置を移動させることが可能である。
図4の例では、操作者は、位置マーカーM10を上下方向に移動可能である。つまり、操作者は、この位置合わせガイド画面W10で、位置マーカーM10を上下方向に移動させることにより、長尺撮影の上端を指定して、X線診断装置1に入力する。これにより、操作者は、X線診断装置1に対して、長尺撮影の上端の位置合わせを行うことができる。
【0041】
次に、
図3に示すように、X線診断装置1は、長尺画像を生成するための画像収集方法を決定する(ステップS12)。本実施形態においては、処理回路18における撮影制御機能18bが、画像収集方法を決定する。概略的には、撮影制御機能18bは、ステップS10で位置マーカーM10により定まった上端の位置が、長尺撮影の上端となるような撮影枚数を決定し、上端となるX線画像を撮影する際にはX線絞り器12bの上側を絞ってX線画像を撮影し、それ以外のX線画像を撮影する際にはX線絞り器12bを全開にしてX線画像を撮影する。また、複数のX線画像を撮影する際に、X線管12aのX線焦点の位置が、1箇所に固定されるように、上述した斜入撮影のためのX線管保持装置12の動作とX線検出器16との動作とを組み合わせる。
【0042】
このステップS12において、X線診断装置1が画像収集方法を決定する手順を、
図5を用いて詳細に説明する。この
図5は、被検体Pと寝台10とを側方から見た状態で、複数回のX線撮影のX線照射を説明する模式図である。
図5の例では、3回のX線撮影により3枚のX線画像が取得される。
【0043】
より具体的には、長尺撮影の上端ULを撮影範囲に含む1回目のX線照射の範囲AR1のX線撮影と、その下側の2回目のX線照射の範囲AR2のX線撮影と、さらにその下側の3回目のX線照射の範囲AR3のX線撮影とにより、長尺撮影が行われる。1回目のX線撮影では、X線照射の範囲AR1が、操作者が指定した長尺撮影の上端ULを包含している。しかし、1回目のX線撮影で、X線照射の範囲AR1のすべてにX線を照射すると、長尺撮影の上端ULよりも上側までX線が照射される。これは、被検体Pにとっては不要被曝となる。
【0044】
このため、本実施形態においては、複数のX線撮影における上端のX線画像を撮影する際に、長尺撮影の上端ULに合わせて、X線絞り器12bにより上端部を絞り、被検体PにX線が照射される範囲を調整する。
図5の例では、1回目のX線撮影のX線照射の範囲AR1のうち、上端部AR1aは、X線絞り器12bにより絞られて、X線が照射されない範囲となる。一方で、1回目のX線撮影のX線照射の範囲AR1のうち、下端部AR1bは、X線絞り器12bにより絞られずに、X線が照射される範囲となる。このため、下端部AR1bの領域については、X線撮影が行われて、1回目のX線撮影における撮影範囲R1のX線画像が取得される。
【0045】
本実施形態においては、長尺撮影の上端ULは、このX線画像が取得される領域に含まれて、その上端ULの上方も僅かではあるがX線が照射される範囲となっている。これは、操作者が被検体Pに対して興味のある領域の上端近傍を位置マーカーM10により指定している可能性があり、その興味のある領域の近傍までが、X線撮影される領域に含まれるようにするためである。但し、操作者が位置マーカーM10により指定した上端ULが、1回目のX線撮影のX線照射の範囲AR1における上端部AR1aと下端部AR1bの境界となるように設計することも可能である。
【0046】
また、本実施形態においては、X線照射の範囲AR2における2回目のX線撮影が行われることにより、2回目のX線撮影における撮影範囲R2のX線画像が取得される。また、本実施形態において、X線照射の範囲AR3における3回目のX線撮影が行われることにより、3回目のX線撮影における撮影範囲R3のX線画像が取得される。
【0047】
また、本実施形態においては、1回目のX線撮影のX線照射の範囲AR1、より具体的には、下端部AR1bの領域には、2回目のX線撮影のX線照射の範囲AR2と重複してX線が照射される領域である重複領域OV1が含まれる。また、2回目のX線撮影のX線照射の範囲AR2には、1回目のX線撮影のX線照射の範囲AR1との重複領域OV1と、3回目のX線撮影のX線照射の範囲AR3と重複してX線が照射される領域である重複領域OV2とが含まれる。さらに、3回目のX線撮影のX線照射の範囲AR3には、2回目のX線撮影のX線照射の範囲AR2との重複領域OV2が含まれる。このように、X線診断装置1は、重複領域OV1、OV2が形成されることにより、1回目のX線撮影における撮影範囲R1のX線画像と、2回目のX線撮影における撮影範囲R2のX線画像と、3回目のX線撮影における撮影範囲R3のX線画像とを合成することができ、長尺画像を生成することができる。
【0048】
なお、本実施形態において、1回目のX線撮影のX線照射の範囲AR1と、2回目のX線撮影のX線照射の範囲AR2と、3回目のX線撮影のX線照射の範囲AR3とは、重複領域OV1及び重複領域OV2のそれぞれの領域が可能な限り小さくなるように、設定されることも可能である。これにより、被検体Pに対する不要被爆をより抑えることが可能である。
【0049】
1回目のX線撮影においては、X線管保持装置12は斜入撮影の姿勢となる。つまり、X線照射の中心軸C1にあるX線は、斜め下方からX線検出器16の中心C2に入射される。2回目のX線撮影においては、X線管保持装置12は通常撮影(垂直撮影)の姿勢となる。つまり、X線照射の中心軸C1にあるX線は、垂直にX線検出器16の中心C2に入射される。3回目のX線撮影においては、X線管保持装置12は斜入撮影の姿勢となる。つまり、X線照射の中心軸C1にあるX線は、斜め上方からX線検出器16の中心C2に入射される。
【0050】
また、
図5から分かるように、3回のX線撮影におけるX線管12aのX線焦点の位置FCは、1回目のX線撮影の絞り範囲にかかわらず固定的に定まっている。すなわち、本実施形態に係るX線診断装置1においては、1回目のX線撮影で、X線絞り器12bによりX線を絞る範囲は、長尺撮影の上端ULの位置により変動するが、X線管12aのX線焦点の位置FCは、変動しない。
【0051】
さらに、3回のX線撮影におけるX線管保持装置12の姿勢も、1回目のX線撮影の絞り範囲にかかわらず固定である。すなわち、本実施形態に係るX線診断装置1においては、1回目のX線撮影で、X線絞り器12bによりX線を絞る範囲は、長尺撮影の上端ULの位置により変動するが、X線管保持装置12の姿勢、つまりX線を被検体Pに照射する角度は、変動しない。
【0052】
このように、X線撮影の回数が3回と定まった以上、3回のX線撮影におけるX線管12aのX線焦点の位置FCを固定とし、X線管保持装置12の姿勢を固定とすることにより、複雑なX線焦点の位置の計算やX線管保持装置12の姿勢の再計算を実行する必要がなくなり、X線診断装置1において長尺撮影を行う際の計算負荷を軽減している。このような長尺撮影のための複数回のX線撮影の態様を、本実施形態では固定ストローク方式ということとする。すなわち、3回行われるX線撮影のストロークは、固定であると捉えることができる。
【0053】
図5に示すような、3回のX線撮影により、例えば、約90cmから約110cmの長さで長尺撮影をすることができる。このため、
図5のように、被検体Pの下半身を撮影する場合は、足先より約90cmから約110cmの高さまで、長尺撮影することができる。長尺撮影の範囲が約90cmよりも短い場合は、3回のX線撮影は不要であり、2回のX線撮影で足りる。
【0054】
図6は、
図3に示すX線撮影処理におけるステップS12で画像収集方法を決定する際に、2回のX線撮影により長尺撮影のX線画像を収集する例を説明する図である。この
図6は、上述した
図5と同様に、被検体Pと寝台10とを側方から見た状態で、2回のX線撮影のX線照射を説明する模式図である。
【0055】
この
図6に示すように、例えば、約70cmから約90cmの長さの長尺撮影では、2回のX線撮影により長尺撮影を行うことができる。この場合、長尺撮影の上端ULを撮影範囲に含む1回目のX線照射の範囲AR1のX線撮影と、その下側の2回目のX線照射の範囲AR2のX線撮影とにより、長尺撮影が行われる。
【0056】
図5の説明と同様に、1回目のX線撮影のX線照射の範囲AR1のうち、上端部AR1aは、X線絞り器12bにより絞られて、X線が照射されない範囲となる。一方で、1回目のX線撮影のX線照射の範囲AR1のうち、下端部AR1bは、X線絞り器12bにより絞られずに、X線が照射される範囲となる。このため、下端部AR1bの領域については、X線撮影が行われて、1回目のX線撮影における撮影範囲R1のX線画像が取得される。つまり、1回目のX線撮影の際に、X線絞り器12bの上側の絞りを調整して、X線が照射されない上端部AR1aの領域を調整することにより、長尺撮影の長さが調整される。また、本実施形態においては、2回目のX線撮影において、X線照射の範囲AR2のX線撮影が行われることにより、2回目のX線撮影における撮影範囲R2のX線画像が取得される。
【0057】
また、1回目のX線撮影のX線照射の範囲AR1、より具体的には、下端部AR1bの領域には、2回目のX線撮影のX線照射の範囲AR2との重複領域OV1が含まれる。また、2回目のX線撮影のX線照射の範囲AR2には、1回目のX線撮影のX線照射の範囲AR1との重複領域OV1が含まれる。このように、X線診断装置1は、重複領域OV1が設定されることにより、1回目のX線撮影における撮影範囲R1のX線画像と、2回目のX線撮影における撮影範囲R2のX線画像とを合成することができ、長尺画像を生成することができる。
【0058】
なお、本実施形態において、1回目のX線撮影のX線照射の範囲AR1と、2回目のX線撮影のX線照射の範囲AR2と、は、重複領域OV1の領域が可能な限り小さくなるように、設定されることも可能である。これにより、被検体Pに対する不要被爆をより抑えることが可能である。
【0059】
1回目のX線撮影においては、X線管保持装置12は斜入撮影の姿勢となる。つまり、X線照射の中心軸C1にあるX線は、斜め下方からX線検出器16の中心C2に入射される。2回目のX線撮影においても、X線管保持装置12は斜入撮影の姿勢となる。つまり、X線照射の中心軸C1にあるX線は、斜め上方からX線検出器16の中心C2に入射される。
【0060】
また、
図6に示すように、2回のX線撮影においても、X線撮影の回数が2回と定まった以上、長尺撮影の上端ULの位置にかかわらず、それぞれのX線撮影におけるX線管12aのX線焦点の位置FCは固定であり、X線管保持装置12の姿勢も固定である。これにより、複雑なX線焦点の位置の再計算やX線管保持装置12の姿勢の再計算を実行する必要がなくなる。
【0061】
図5及び
図6に示すように、固定的に定まっているX線の照射範囲とX線を照射する角度は、X線焦点の位置FCを挟んで上下対称である。換言すれば、X線撮影をする際のストロークは、X線焦点の位置FCを通る寝台10に垂直な線を挟んで、線対称である。
【0062】
より詳細には、これら
図5及び
図6を比較すると分かるように、
図6に示したような、2回のX線撮影で長尺撮影を行う場合、1回目のX線撮影を行うX線管保持装置12の姿勢と、2回目のX線撮影を行うX線管保持装置12の姿勢は、X線管12aのX線焦点の位置FCを挟んで、対称となる。このため、1回目のX線撮影のためのX線照射と、2回目のX線撮影のためのX線照射は、X線管12aのX線焦点の位置FCを挟んで、対称となる。一方で、X線管保持装置12が通常撮影(垂直撮影)の姿勢で、X線撮影をすることはない。これらの点は、2回のX線撮影で長尺撮影を行う場合のみならず、4回、6回といった、偶数の撮影回数でX線撮影を行うことにより、長尺撮影する場合にも、当てはまることである。
【0063】
一方、
図5に示したような、3回のX線撮影で長尺撮影を行う場合、1回目のX線撮影を行うX線管保持装置12の姿勢と、3回目のX線撮影を行うX線管保持装置12の姿勢は、X線管12aのX線焦点の位置FCを挟んで、対称となる。このため、1回目のX線撮影のためのX線照射と、3回目のX線撮影のためのX線照射は、X線管12aのX線焦点の位置FCを挟んで、対称となる。2回目のX線撮影を行うX線管保持装置12の姿勢は、通常撮影(垂直撮影)をする姿勢であるので、必然的に、X線管12aのX線焦点の位置FCを挟んで、対称となる。これらの点は、3回のX線撮影で長尺撮影を行う場合のみならず、5回、7回といった、奇数の撮影回数でX線撮影を行うことにより、長尺撮影する場合にも、当てはまることである。
【0064】
なお、一般的には、X線絞り器12bの構造上、X線撮影のX線照射の範囲AR1の半分までしかX線を絞ることができない。このため、3回のX線撮影により撮影できる長尺撮影の長さと、2回のX線撮影により撮影できる長尺撮影の長さとが、撮影範囲として連続的となるようにする必要がある。例えば、斜入撮影におけるX線の斜入角を調整したり、X線管12aのX線焦点の位置FCを調整したりして、長尺撮影の長さの連続性を確保する。
【0065】
次に、
図3に示すように、X線診断装置1は、長尺撮影の開始位置に、X線管保持装置12及びX線検出器16を移動する(ステップS14)。本実施形態においては、処理回路18における撮影制御機能18bが、長尺撮影を行うのに必要な、これらの初期移動を行う。例えば、本実施形態においては、入力回路22の1つとして、自動ポジショニングボタンが設けられており、この自動ポジショニングボタンを操作者が押下することがトリガーとなり、長尺撮影の開始位置への移動が行われる。
【0066】
図7乃至
図9は、3回のX線撮影で長尺撮影を行う場合を例として、X線管保持装置12とX線検出器16との動作を説明する図である。
図7は1回目のX線撮影、
図8は2回目のX線撮影、
図9は3回目のX線撮影における、X線管保持装置12とX線検出器16との位置関係を、それぞれ示している。以下の説明においては、
図3のX線撮影処理におけるステップS12で、
図5に示すような、3回のX線撮影により長尺撮影を行うと決定した場合を例として、X線診断装置1の動作を説明する。
【0067】
図3のX線撮影処理におけるステップS14では、撮影制御機能18bは、
図7に示す位置に、X線管保持装置12とX線検出器16とを移動する。すなわち、長尺撮影の1回目のX線撮影を行える位置に、X線管保持装置12とX線検出器16とを移動する。なお、このステップS14では、これらX線管保持装置12やX線検出器16以外でも、長尺撮影を行う上で必要な初期移動を、撮影制御機能18bは行う。例えば、撮影制御機能18bは、必要に応じて、寝台10の初期移動も行い、操作者が指定した被検体Pのポジショニングを実現する。
【0068】
また、この
図7から分かるように、長尺撮影における1回目のX線撮影を行うためのX線管保持装置12位置及び姿勢は、ステップS10で長尺撮影の上端の位置合わせをしたX線管保持装置12の位置及び姿勢と、大きく異なっている。これは、ステップS10における上端の位置合わせでは、X線管保持装置12は、
図2Aの実線で示した通常撮影(垂直撮影)の姿勢にあり、ステップS14におけるX線管保持装置12の移動では、X線管保持装置12は、
図2Aの斜入撮影の姿勢にあるからである。
【0069】
次に、
図3に示すように、X線診断装置1は、長尺撮影を実行する(ステップS16)。本実施形態においては、処理回路18における撮影制御機能18bが、X線画像取得機能18aを制御して実行させ、長尺撮影を行う。具体的には、
図7乃至
図9に示すX線撮影を行うことにより、長尺撮影を実現する。例えば、本実施形態においては、入力回路22の1つとして、X線診断装置1に撮影ボタンが設けられており、ステップS14の初期位置への移動が終了した後に、この撮影ボタンを操作者が押下することがトリガーとなり、長尺撮影が実行される。
【0070】
長尺撮影を実行するにあたっては、まず、
図7に示すように、処理回路18におけるX線画像取得機能18a及び撮影制御機能18bは、協働して、1回目のX線撮影を行って、1枚目のX線画像を取得する。上述したように、1回目のX線撮影では、X線照射の範囲AR1のうち、X線撮影すべき領域である下端部AR1bに、被検体Pの下方からX線が斜めに照射されて、X線画像が取得される。この1回目のX線撮影時のX線絞り器12bは、上端部AR1aの領域には、X線が照射されないように絞られる。このときのX線管12aのX線焦点の位置FCからX線検出器16までの距離L1は、SID(Source to Image receptor Distance)と呼ばれており、本実施形態においては、このSIDを焦点検出器間距離ということとする。
【0071】
次に、
図8に示すように、処理回路18におけるX線画像取得機能18a及び撮影制御機能18bは、協働して、2回目のX線撮影を行って、2枚目のX線画像を取得する。上述したように、2回目のX線撮影では、X線照射の範囲AR2全体に、被検体Pの正面からX線が垂直に照射されて、X線画像が取得される。すなわち、X線照射の中心軸C1を通るX線は、X線検出器16の中心C2に垂直に入射される。また、この2回目のX線撮影時のX線絞り器12bの絞りは、全開である。
【0072】
このとき、
図8に示すように、撮影制御機能18bは、X線焦点の位置が位置FCとなるように、焦点検出器間距離を調整する。より詳細には、
図2Aを用いて説明したように、本実施形態に係るX線診断装置1のX線管保持装置12は、X線検出器16の中央部分を中心として回動する。すなわち、X線管保持装置12の中心軸C1を通るX線が、X線検出器16の中心C2を通るように、X線管保持装置12が回動動作をする。このため、
図2Aに示すような通常の回動動作をすると、X線管保持装置12のX線管12aのX線焦点の位置は、FCnで示す位置となる。つまり、焦点検出器間距離は、回動動作の半径である距離L1となり、X線管12aのX線焦点の位置が、
図7に示したX線焦点の位置FCからずれてしまう。
【0073】
そこで、処理回路18における撮影制御機能18bは、X線管保持装置12の位置を調整して、X線管12aのX線焦点が位置FCとなるようにX線管保持装置12の回動動作を制御する。つまり、撮影制御機能18bは、焦点検出器間距離と、X線検出器16の位置と、X線を被検体Pに照射する角度とを制御して、X線焦点の位置が同じ位置FCとなるようにする。この焦点検出器間距離と、X線検出器16の位置と、X線を被検体Pに照射する角度との制御は、撮影制御機能18bが状態検出器の検出信号に基づいて移動機構26の各軸の現在位置に関する現在位置情報を取得することにより、行われる。例えば、
図8に示す例においては、焦点検出器間距離の距離L2は、距離L1よりも短いため、撮影制御機能18bは、状態検出器の検出信号に基づいて、移動機構26の各軸の現在位置情報を取得して、焦点検出器間の距離L1が焦点検出器間距離の距離L2になるように、X線管保持装置12を制御する。このように、撮影制御機能18bが、X線を被検体Pに照射する角度に応じて、焦点検出器間距離を調整することにより、X線撮影を複数回行っても、X線焦点が同じ位置FCとなり、
図5に示した固定ストローク方式のX線撮影が実現される。
【0074】
なお、
図6に示すように、2回のX線撮影により長尺撮影を行う場合は、1回目のX線撮影における焦点検出器間距離と、2回目のX線撮影における焦点検出器間距離は、X線管保持装置12が回動動作をするだけで、同じになる。このため、処理回路18における撮影制御機能18bは、X線管12aのX線焦点が同じ位置FCとなるようにX線管保持装置12の回動動作を調整する際に、焦点検出器間距離の調整は必要ない。
【0075】
次に、
図9に示すように、処理回路18におけるX線画像取得機能18a及び撮影制御機能18bは、協働して、3回目のX線撮影を行って、3枚目のX線画像を取得する。上述したように、3回目のX線撮影では、X線照射の範囲AR3全体に、被検体Pの斜め上方からX線が照射されて、X線画像が取得される。このときの焦点検出器間距離は、距離L1であり、1回目のX線撮影と同じである。つまり、3回のX線撮影において、X線管12aのX線焦点の位置FCは、1回目及び2回目のX線撮影と同じ位置である。また、この3回目のX線撮影時のX線絞り器12bの絞りは、全開である。この3回目のX線撮影により、
図5に示した固定ストローク方式のX線撮影が終了する。つまり、
図3に示すX線撮影処理のステップS16における長尺撮影が終了する。
【0076】
なお、このような複数のX線撮影のそれぞれにおいて、撮影制御機能18bは、X線管12aの焦点が同等の位置になっているか否かを、移動機構26の各軸の現在位置情報取得して判断するようにしてもよい。具体的には、例えば、
図7乃至
図9に示す例において、撮影制御機能18bは、1回目から3回目のX線撮影のそれぞれにおいて、状態検出器の検出信号に基づいて、移動機構26の各軸の現在位置情報を取得する。そして、撮影制御機能18bは、複数のX線撮影のそれぞれにおいて、移動機構26の各軸の現在位置情報に基づいて、焦点検出器間距離と、X線検出器16の位置と、X線を被検体Pに照射する角度とを算出することにより、1回目から3回目のX線撮影のそれぞれにおけるX線管12aの焦点の位置が同等の位置になっているか否かを判断するようにしてもよい。
【0077】
また、複数のX線撮影のそれぞれにおいて、X線管12aの焦点が同等の位置になっていないと判断された場合において、撮影制御機能18bは、移動機構26の各軸の現在位置情報に基づく焦点検出器間距離と、X線検出器16の位置と、X線を被検体Pに照射する角度との算出結果に基づいて、X線管12aの焦点が同等の位置となるように、X線管保持装置12の位置を補正してもよい。これにより、X線診断装置1において、重力の負荷によるX線管保持装置12等のダレが発生し、制御上のX線管12aの焦点の位置と実際のX線管12aの焦点の位置とがずれた場合であっても、X線管12aの焦点が同等の位置となるようにすることができる。
【0078】
次に、
図3に示すように、X線診断装置1は、ステップS16で取得した複数のX線画像を合成することにより、被検体Pの長尺画像を生成する(ステップS18)。本実施形態においては、処理回路18における画像生成機能18cが、複数のX線画像の合成を行って、長尺画像を生成する。例えば、ステップS16で撮影された複数のX線画像は、それぞれ、記憶回路24の画像記憶回路24bに格納される。このため、画像生成機能18cは、画像記憶回路24bから、格納されている複数のX線画像を読み出して、この読み出したX線画像に基づいて、長尺画像を生成する。
【0079】
ステップS16の説明の例では、3回のX線撮影により、3枚のX線画像が取得され、画像記憶回路24bに格納されている。
図5を用いて説明したように、1回目のX線撮影により撮影されたX線画像は、上端部AR1aはX線が照射されていないことから、何も撮影されていない状態になっている。このため、画像生成機能18cは、1枚目のX線画像の上端部AR1aに対応するX線画像の領域を、トリミングにより除去する必要がある。
【0080】
そして、画像生成機能18cは、上端部AR1aに対応する領域を除去した1枚目のX線画像と、2枚目及び3枚目のX線画像とを、合成して、長尺画像を生成する。この合成の際には、1枚目のX線画像と2枚目のX線画像の間、及び、2枚目のX線画像と3枚目のX線画像との間には、それぞれ、重複領域が設定されているので、画像生成機能18cは、このX線画像の重複領域を利用して、複数の画像の貼り合わせを行い、長尺画像を生成する。
【0081】
なお、1回目のX線撮影で取得したX線画像が、X線絞り器12bの絞りが全開で撮影されている場合、つまり、1枚目のX線画像には、X線が照射された下端部AR1bに対応する領域しか含まれていない場合には、1枚目のX線画像をトリミングする処理は不要である。つまり、画像生成機能18cは、1枚目のX線画像のトリミングをすることなく、取得した1枚目から3枚目のX線画像の合成を行い、長尺画像を生成する。
【0082】
1枚目のX線画像からトリミングすべき領域、つまり、X線が照射されていない上端部AR1aに対応する領域は、例えば、X線絞り器12bの絞りの開度に関する情報に基づいて特定することができる。すなわち、1枚目のX線画像を撮影した際のX線絞り器12bの絞りの開度に関する情報を、1枚目のX線画像とともに、記憶回路24の画像記憶回路24bに格納しておく。そして、画像生成機能18cが、この絞りの開度に関する情報を画像記憶回路24bから読み出して、トリミングすべき領域を特定すればよい。あるいは、1枚目のX線画像の画像解析を行い、例えば、輝度変化のない領域をX線が照射されていない領域と判定し、トリミングすべき領域として特定するようにしてもよい。
【0083】
ステップS18で生成された長尺画像は、例えば、ディスプレイ20に表示されたり、記憶回路24の画像記憶回路24bに記憶されたりする。これにより、
図3に示した本実施形態に係るX線撮影処理が終了する。
【0084】
以上のように、本実施形態に係るX線診断装置1によれば、処理回路18における撮影制御機能18bが、焦点検出器間距離と、X線検出器16の位置と、X線を被検体Pに照射する角度とを制御して、複数のX線撮影において、X線管12aのX線焦点の位置FCが同等の位置となるようにしたので、TOD差異によるアーチファクトの発生を抑制し、寝台10の下端までX線を照射してX線撮影を行うことができる。このため、被検者をお立ち台に立たせる必要がなくなり、被検者の負担を軽減することができる。また、寝台10を用いたX線の照射範囲を広く確保することができ、X線撮影の範囲を広げることができる。
【0085】
さらに、
図5や
図6に示したような固定ストローク方式で複数のX線撮影を行うこととしたので、複数のX線撮影ごとに異なるX線照射の範囲や角度を設定する撮影方式と比べて、長尺撮影を行う際の撮影条件の設定がシンプルになる。このため、X線診断装置1における長尺撮影を行うための準備処理を、軽減することができる。
【0086】
なお、上述した説明では、複数のX線撮影における上端のX線画像を撮影する際に、その上端部AR1aの領域を絞ることにより、被検体PにX線を照射する範囲を調整することしたが、下端のX線画像を撮影する際に、その下端部AR1bの領域を絞ることにより、被検体PにX線を照射する範囲を調整するようにしてもよい。すなわち、本実施形態に係るX線診断装置1においては、撮影制御機能18bが、X線管12aが照射するX線の範囲を絞るX線絞り器12bを制御して、複数のX線撮影における上端又は下端のX線画像を撮影する際の端部の領域を絞ることにより、被検体PにX線を照射する範囲を調整すればよい。
【0087】
また、上述した説明では、上端のX線画像を1回目に撮影し、その後、下に向けて順にX線画像の撮影を行うこととしたが、その撮影順序は任意である。例えば、下から上に向けて順番にX線画像を撮影するようにしてもいし、順不同で、任意の位置のX線画像を撮影するようにしてもよい。
【0088】
〔第2実施形態〕
上述した第1実施形態に係るX線診断装置1では、上端のX線画像を撮影する際の上端部AR1aの領域を絞り、あるいは、下端の画像のX線画像を撮影する際の下端部AR1bの領域を絞るようにしたが、第2実施形態に係るX線診断装置1では、上端又は下端のX線画像を撮影する際に、上端部と下端部の双方を絞って、X線照射の範囲を調整する。以下、上述した第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0089】
図10は、上端のX線画像を撮影する際に、X線撮影のX線照射の範囲AR1のうち、上端部AR1cと下端部AR1eを絞り、中間部AR1dにX線が照射される例を示す図であり、上述した第1実施形態における
図5に対応する図である。この
図10の例では、複数のX線撮影のうち、1回目のX線撮影の際に、長尺撮影におけるX線照射の範囲を調整している。上端部AR1cと下端部AR1eの絞り量は、同等でも、同等でなくてもよい。上端部AR1cと下端部AR1eの絞り量を同等にするためには、X線絞り器12bの上羽根と下羽根も、上下対称に絞られる。本実施形態においては、このようなX線の絞り方を、対称制御絞りということとする。
【0090】
このような対称制御絞りでは、中間部AR1dが長尺撮影の上端ULを包含している。本実施形態においては、1回目のX線の照射範囲である中間部AR1dのX線画像と、2回目のX線照射の範囲AR2のX線画像と、3回目のX線照射の範囲AR3のX線画像とを合成することにより、長尺画像が生成される。すなわち、X線診断装置1は、中間部AR1dにおける1回目のX線撮影が行われることにより取得される撮影範囲R1のX線画像と、X線照射の範囲AR2における2回目のX線撮影が行われることにより取得される撮影範囲R2のX線画像と、X線照射の範囲AR3における3回目のX線撮影が行われることにより取得される撮影範囲R3のX線画像とを合成することにより、長尺画像を生成する。このため、
図10に示すように、各撮影範囲のX線画像を生成するために、1回目のX線の照射範囲である中間部AR1dと、2回目のX線照射の範囲AR2とが重複する領域である重複領域OV1が形成され、2回目のX線照射の範囲AR2と、3回目のX線照射の範囲AR3とが重複する領域である重複領域OV2が形成される。
【0091】
一方で、上端部AR1cと下端部AR1eの絞り量が、同等でない場合には、例えば、1回目のX線撮影において、X線絞り器12bの上羽根の絞り量を長尺撮影の上限ULに応じて調整し、下羽根の絞り量は固定としてもよい。この場合、X線絞り器12bの上羽根は、長尺撮影の上端ULが中間部AR1dに含まれる範囲内で、絞ることが可能となる。本実施形態においては、このようなX線の絞り方を、非対称制御絞りということとする。
【0092】
第2実施形態においては、
図3に示したX線撮影処理におけるステップS12では、処理回路18における撮影制御機能18bが、この
図10に示す対称制御絞り又は非対称制御絞りにより、操作者が指定した上端ULまでの長尺撮影を行うための画像収集方法を決定する。そして、ステップS16では、処理回路18における撮影制御機能18bが、この決定された画像収集方法に従って、長尺撮影を実行する。それ以外の点は、上述した第1実施形態のX線診断装置1と同様である。
【0093】
以上のように、本実施形態に係るX線診断装置1によれば、対称制御絞り又は非対称制御絞りで、上端のX線画像を撮影する際のX線の照射範囲を調整しつつ、処理回路18における撮影制御機能18bが、焦点検出器間距離と、X線検出器16の位置と、X線を被検体Pに照射する角度とを制御して、複数のX線撮影において、X線管12aのX線焦点の位置FCが同等の位置となるようにした。このため、このようなX線の照射範囲の絞り方でも、TOD差異によるアーチファクトの発生を抑制し、寝台10の下端までX線を照射してX線撮影を行うことができる。
【0094】
なお、本実施形態においても、上述した第1実施形態と同様に、複数のX線撮影における下端のX線画像を撮影する際に、X線の照射範囲の上端部AR1cと下端部AR1eの双方を絞ることにより、被検体PにX線を照射する範囲を調整するようにしてもよい。すなわち、本実施形態に係るX線診断装置1においては、撮影制御機能18bが、X線管12aが照射するX線の範囲を絞るX線絞り器12bを制御して、複数のX線撮影における上端又は下端のX線画像をX線撮影する際の上端部及び下端部の双方の領域を絞ることにより、被検体PにX線を照射する範囲を調整すればよい。
【0095】
また、上述した
図10の説明では、上端のX線画像を1回目に撮影し、その後、下に向けて順にX画像の撮影を行うこととしたが、その撮影順序は任意である。例えば、下から上に向けて順番にX線画像を撮影するようにしてもいし、順不同で、任意の位置のX線画像を撮影するようにしてもよい。
【0096】
〔第3実施形態〕
上述した第1実施形態及び第2実施形態に係るX線診断装置1においては、固定ストローク方式として、X線撮影をする位置と、X線を被検体に照射する角度は、その撮影回数に応じて固定的に定まっていた。すなわち、X線撮影の回数に応じて、X線焦点の位置FCは、長尺撮影の長さにかかわらず固定的に定まっていた。しかし、X線焦点の位置FCを、長尺撮影の中央部分に設定し、X線撮影をする位置と、X線を照射する角度を、この設定したX線焦点の位置FCに応じて調整することもできる。このような撮影方式を、本実施形態においては、ストローク自在方式ということとする。以下、このストローク自在方式を採用したX線診断装置1の構成と動作に関して、上述した第1実施形態及び第2実施形態と異なる部分を説明する。
【0097】
図11は、ストローク自在方式で3回のX線撮影により長尺撮影をする場合のX線の照射範囲の例を示す図である。ストローク自在方式では、複数のX線撮影により被検体Pを撮影すべき範囲の中央部分に、X線焦点の位置FCが仮想的に設定される。つまり、長尺撮影の長さに応じて、X線焦点の位置FCの高さが変動する。
図11の例では、3回のX線撮影により長尺撮影が行われるため、2回目のX線撮影における中央部分に、仮想的に、X線焦点の位置FCが設定される。つまり、長尺撮影の長さXLにおいて、上側の長さL1と下側の長さL2とが同じになる高さに、X線焦点の位置FCが設定される。
【0098】
何回のX線撮影が必要になるかは、長尺撮影の長さXLにより定まる。すなわち、上述したX線撮影処理のステップS12において、処理回路18における撮影制御機能18bが画像収集方法を決定する際に、操作者が指定した長尺撮影の上端ULに基づいて、撮影枚数を決定する。具体的には、X線絞り器12bの絞りを全開にした状態でX線撮影をする場合の撮影範囲が、最も長い撮影長となる。例えば、X線絞り器12bの絞りを全開にして、2回のX線撮影をしたとしても、操作者が指定した上端ULを包含する撮影長に足りなければ、3回のX線撮影が必要となる。
【0099】
撮影回数が決定されると、処理回路18における撮影制御機能18bは、それぞれのX線撮影におけるX線絞り器12bの絞りを調整して、X線の照射範囲を調整する。この際、撮影制御機能18bは、複数のX線撮影において、X線の焦点の位置FCが同じになるという前提が維持されるように、X線管12aの位置とX線の照射角度を調整する。
【0100】
図11に示す例では、X線照射の範囲AR1における1回目のX線撮影が行われることにより、1回目のX線撮影における撮影範囲R1のX線画像が取得される。また、
図11に示す例では、X線照射の範囲AR2における2回目のX線撮影が行われることにより、2回目のX線撮影における撮影範囲R2のX線画像が取得される。さらに、本実施形態において、X線照射の範囲AR3における3回目のX線撮影が行われることにより、3回目のX線撮影における撮影範囲R3のX線画像が取得される。
【0101】
また、複数のX線撮影におけるX線の照射範囲は、長尺画像を合成するために、重複領域が必要とされる。
図11に示すように、例えば、3回のX線撮影により長尺撮影が行われる場合、1回目のX線撮影のX線照射の範囲AR1と1回目のX線撮影のX線照射の範囲AR2との重複領域OV1が形成されている。また、2回目のX線撮影のX線照射の範囲AR2と3回目のX線撮影のX線照射の範囲AR3との重複領域OV2が形成されている。この重複領域OV1、OV2は、不要被曝を回避するために可能な限り小さい方がよい。このため、撮影制御機能18bは、これらの条件が満たされるように、焦点検出器間距離と、X線検出器16の位置と、X線を被検体Pに照射する角度とを決定する。
【0102】
図12は、1回目のX線照射の範囲AR1と、2回目のX線照射の範囲AR2とを、分離して示す図であり、2回目のX線照射の範囲AR2の上端部AR2aをX線絞り器12bで絞る例を示している。すなわち、1回目のX線照射の範囲AR1では、X線絞り器12bは全開である。そして、2回目のX線照射の範囲AR2では、X線絞り器12bにより上側が絞られて、X線照射の範囲AR2の下端部AR2bにX線が照射される。これにより、X線が重複して照射される領域を可能な限り少なくしている。実際にX線が照射されてX線撮影がされると、
図13に示すようなX線の照射範囲となる。すなわち、1回目のX線撮影における撮影範囲R1のX線画像と、2回目のX線撮影における撮影範囲R2のX線画像を合成するために、X線照射が重なる重複領域OV1が形成されるが、その面積は最小限に抑えられている。
【0103】
図14は、1回目のX線照射の範囲AR1と、2回目のX線照射の範囲AR2とを、分離して示す図であり、1回目のX線照射の範囲AR1の下端部AR1bをX線絞り器12bで絞る例を示している。すなわち、1回目のX線照射の範囲AR1では、X線絞り器12bにより下側が絞られて、上端部AR1aにX線が照射される。2回目のX線照射の範囲AR2では、X線絞り器12bは全開である。そして、これにより、X線が重複して照射される領域を可能な限り少なくしている。実際にX線が照射されてX線撮影がされると、
図15に示すようなX線の照射範囲となる。すなわち、1回目のX線撮影における撮影範囲R1のX線画像と、2回目のX線撮影における撮影範囲R2のX線画像を合成するために、X線照射が重なる重複領域OV1が形成されるが、その面積は最小限に抑えられている。
【0104】
なお、このストローク自在方式においては、X線照射の範囲の上端部と下端部の双方をX線絞り器12bで絞るようにしてもよい。すなわち、処理回路18における撮影制御機能18bは、X線管12aが照射するX線の範囲を絞るX線絞り器12bを制御して、複数のX線撮影における上端及び下端の少なくとも一方のX線画像を撮影する際の端部の領域を絞ることにより、被検体PにX線を照射する範囲を調整すればよい。
【0105】
また、
図12乃至
図15に示す例においては、1回目のX線照射の範囲AR1と、2回目のX線照射の範囲AR2とについて説明したが、3回のX線撮影により長尺撮影が行われる場合、2回目のX線撮影のX線照射の範囲AR2と3回目のX線撮影のX線照射の範囲AR3との重複領域OV2についても、1回目のX線照射の範囲AR1と、2回目のX線照射の範囲AR2との重複領域OV1と同様に、2回目のX線照射の範囲AR2の下端部をX線絞り器12bで絞ることにより、及び/又は、3回目のX線照射の範囲AR3の上端部をX線絞り器12bで絞ることにより、X線が重複して照射される領域を可能な限り小さくするようにしてもよい。
【0106】
X線撮影処理におけるステップS18では、ステップS16で撮影された複数のX線画像を合成する際に、X線絞り器12bにより絞られてX線が照射されなかった領域は、画像の合成時にトリミングされて使用しないようにする。これにより、操作者がステップS10で指定した長尺撮影の上端ULから下側の被検体Pの長尺画像を取得することができる。
【0107】
以上のように、本実施形態に係るX線診断装置1によれば、処理回路18における撮影制御機能18bが、ストローク自在方式によりX線の照射範囲を決定するとともに、焦点検出器間距離と、X線検出器16の位置と、X線を被検体Pに照射する角度とを制御して、複数のX線撮影において、X線管12aのX線焦点の位置FCが同等の位置となるようにした。このため、ストローク自在方式でも、TOD差異によるアーチファクトの発生を抑制し、寝台10の下端までX線を照射してX線撮影を行うことができる。
【0108】
なお、上述した
図11の説明では、上端のX線画像を1回目に撮影し、その後、下に向けて順にX画像の撮影を行うこととしたが、その撮影順序は任意である。例えば、下から上に向けて順番にX線画像を撮影するようにしてもいし、順不同で、任意の位置のX線画像を撮影するようにしてもよい。
【0109】
〔第4実施形態〕
上述した第1実施形態乃至第3実施形態に係るX線診断装置1においては、X線管12a及びX線管保持装置12が、X線検出器16の中心C2を回動の中心として、回動動作を行うことにより、X線を被検体Pに照射する角度がX線検出器16の中心C2を中心に回動するようにして、長尺撮影を行うようにした。しかし、X線管12aがX線管12aのX線焦点の位置を中心として、首振り運動することにより、X線を被検体Pに照射する角度がX線管12aの焦点位置を中心に回動するようにして、長尺撮影を行うようにしてもよい。以下、X線管12aが首振り運動するX線診断装置1を、第4実施形態に係るX線診断装置1として、上述した第1実施形態乃至第3実施形態と異なる部分を説明する。
【0110】
図16は、本実施形態に係るX線診断装置1におけるX線管12aの首振り動作を説明する複数のX線撮影におけるX線照射を示す図であり、上述した第1実施形態における
図5に対応する図である。この
図16に示すように、本実施形態においては、X線管12aを保持するX線管保持装置12が首振り動作をすることにより、X線管12aの首振り動作が実現される。
【0111】
すなわち、X線管12aのX線焦点の位置FCが中心となってX線管12aが回動するように、X線管保持装置12は、X線管12aとX線絞り器12bを保持した状態で回動する。換言すれば、処理回路18における撮影制御機能18bは、X線を被検体Pに照射する角度が、X線管12aのX線焦点の位置FCを中心として回動するように、X線管保持装置12を回動する。このため、必然的に、複数のX線撮影において、X線焦点の位置FCは、同等の位置となる。X線管12aのX線焦点の位置FCからX線検出器16までの距離である焦点検出器間距離に関しては、複数のX線撮影において特別な調整は不要となる。
【0112】
上述した
図5の例と同様に、
図16の例では、1回目のX線撮影の際に、上端部AR1aはX線絞り器12bにより絞られて、X線が照射されない。一方で、下端部AR1bは、X線絞り器12bにより絞られずに、X線が照射される。すなわち、下端部AR1bの領域については、X線撮影が行われて、1回目のX線撮影における撮影範囲R1のX線画像が取得される。また、2回目及び3回目のX線撮影の際には、X線絞り器12bの絞りは全開となり、それぞれ、X線の照射範囲は範囲AR2及び範囲AR3となる。すなわち、2回目及び3回目のX線撮影が行われることにより、撮影範囲R2及び撮影範囲R3のX線画像が取得される。
【0113】
また、上述した
図5に示す例と同様に、
図16に示す例では、各撮影範囲のX線画像を合成するために、1回目のX線の照射範囲である下端部AR1bと、2回目のX線照射の範囲AR2とが重複する領域である重複領域OV1が形成され、2回目のX線照射の範囲AR2と、3回目のX線照射の範囲AR3とが重複する領域である重複領域OV2が形成される。このように、首振り運動をするX線管12aを備えるX線診断装置1においても、上述した第1実施形態及び第2実施形態のような固定ストローク方式の複数のX線撮影により、長尺撮影を実現することができる。
【0114】
図17は、本実施形態に係るX線診断装置1におけるX線管12aの首振り動作を説明する複数のX線撮影におけるX線照射を示す図であり、上述した第3実施形態における
図11に対応する図である。この
図17の例においては、長尺撮影により撮影されるべき範囲の中央部分に、X線焦点の位置FCが設定される。
【0115】
すなわち、長尺撮影の上側の長さL1と下側の長さL2とが同じになる高さに、X線管12aのX線焦点の位置FCが設定され、このX線焦点の位置FCが中心となってX線管12aが回動するように、X線管保持装置12は、X線管12aとX線絞り器12bを保持した状態で回動する。換言すれば、処理回路18における撮影制御機能18bは、X線を被検体Pに照射する角度が、X線管12aのX線焦点の位置FCを中心として回動するように、X線管12aを回動する。このため、必然的に、複数のX線撮影において、X線焦点の位置FCは、同等の位置となる。
【0116】
上述した第3実施形態と同様に、
図17の例では、処理回路18における撮影制御機能18bは、X線管12aが照射するX線の範囲を絞るX線絞り器12bを制御して、複数のX線撮影における上端及び下端の少なくとも一方のX線画像を撮影する際の端部の領域を絞ることにより、被検体PにX線を照射する範囲が調整される。すなわち、
図17に示す例では、X線照射の範囲AR1における1回目のX線撮影、X線照射の範囲AR2における2回目のX線撮影、及び、X線照射の範囲AR3における3回目のX線撮影が行われることにより、1回目のX線撮影、2回目のX線撮影及び3回目のX線撮影における撮影範囲R1、撮影範囲R2及び撮影範囲R3のX線画像が取得される。
【0117】
上述した第3実施形態と同様に、
図17に示す例では、各撮影範囲のX線画像を合成するために、1回目のX線照射の範囲AR1と、2回目のX線照射の範囲AR2とが重複する領域である重複領域OV1が形成され、2回目のX線照射の範囲AR2と、3回目のX線照射の範囲AR3とが重複する領域である重複領域OV2が形成される。このように、首振り運動をするX線管12aを備えるX線診断装置1においても、上述した第3実施形態のようなストローク自在方式の複数のX線撮影により、長尺撮影を実現することができる。
【0118】
以上のように、本実施形態に係るX線診断装置1によれば、処理回路18における撮影制御機能18bが、X線管12aを備えるX線管保持装置12を、X線管12aの焦点位置を中心として、X線を被検体Pに照射する角度が回動するように制御して、複数のX線画像を撮影し、長尺画像を生成することができる。
【0119】
〔第1、第2及び第4実施形態の変形例〕
また、上述した第1、第2及び第4実施形態において、固定ストローク方式でX線撮影が行われる場合、固定的に定まっているX線の照射範囲とX線を照射する角度は、X線焦点の位置FCを挟んで上下対称であることとしたが、固定的に定まっているX線の照射範囲とX線を照射する角度は、X線焦点の位置FCを挟んで非対称であってもよい。例えば、
図18に示すように、3回のX線撮影で長尺撮影を行う場合、1回目のX線撮影における固定的に定まっているX線の照射範囲とX線を照射する角度と、3回目のX線撮影における固定的に定まっているX線の照射範囲とX線を照射する角度とは、X線焦点の位置FCを挟んで非対称であってもよい。そのため、1回目のX線撮影を行うX線管保持装置12の姿勢と、3回目のX線撮影を行うX線管保持装置12の姿勢とは、X線管12aのX線焦点の位置FCを挟んで、非対称であってもよい。そして、X線診断装置1は、複数のX線撮影において、X線焦点が同じ位置FCとなるように、X線を被検体Pに照射する角度に応じて、焦点検出器間距離を調整するようにしてもよい。
【0120】
なお、上述した第1、第2及び第4実施形態において、3回のX線撮影で長尺撮影を行う場合と同様に、2回のX線撮影で長尺撮影を行う場合、1回目のX線撮影を行うX線管保持装置12の姿勢と、2回目のX線撮影を行うX線管保持装置12の姿勢とは、X線管12aのX線焦点の位置FCを挟んで、非対称であってもよい。
【0121】
〔第3及び第4実施形態の変形例〕
上述した第3及び第4実施形態において、ストローク自在方式でX線撮影が行われる場合、X線焦点の位置FCは、長尺撮影の中央部分に設定したが、X線焦点の位置FCは、長尺撮影の中央部分と異なる位置に設定されてもよい。例えば、
図19に示すように、長尺撮影の長さXLにおいて、上側の長さL1と下側の長さL2とが異なる高さに、X線焦点の位置FCが設定されてもよい。つまり、X線焦点の位置FCは、長尺撮影の長さと、上側の長さL1と下側の長さL2とに応じて、X線焦点の位置FCの高さが変動する。そして、X線診断装置1は、撮影回数と、この設定されたX線焦点の位置FCとに応じて、複数のX線撮影において、X線の焦点の位置FCが同じになるように、X線撮影をする位置と、X線を照射する角度とを調整するようにしてもよい。
【0122】
〔各実施形態共通の変形例〕
なお、上述した各実施形態においては、X線焦点の位置FCは、被検体Pに対して行われる検査に関する検査情報に基づいて、設定されるようにしてもよい。ここで、検査情報とは、被検体Pに対して行われる検査に関する情報であり、少なくとも被検体Pの検査部位に関する情報を含んでいる。そのため、X線診断装置1は、検査部位に関する情報に基づいて、X線焦点の位置FCが被検体Pの検査部位の正面に設定されるようにしてもよい。より具体的には、例えば、検査情報に検査部位として「足首」の情報を含んでいる場合、
図20に示すように、X線診断装置1は、X線管保持装置12を制御して、X線焦点の位置FCが被検体Pの足首の正面に設定されるようにしてもよい。このように、X線焦点の位置FCが、検査情報に基づいて設定されることにより、被検体Pの検査部位の画像が、歪曲の少ない画像となるため、読影に適した画像を得ることができる。
【0123】
また、上述した各実施形態においては、X線焦点の位置FCは、X線焦点の位置FCに関する入力操作を受け付けて、受け付けた入力操作に応じて、設定されるようにしてもよい。具体的には、X線診断装置1は、入力回路22を介して、例えば、臨床目的に応じて、被検体Pの注目部位を指定する入力操作を受け付けて、受け付けた入力操作に応じて、X線焦点の位置FCが、指定した被検体Pの注目部位の正面に設定されるようにしてもよい。より具体的には、例えば、X線診断装置1が、入力回路22を介して、被検体Pの注目部位として「足首」を指定する入力操作を受け付けた場合、
図20に示すように、X線診断装置1は、X線管保持装置12を制御して、X線焦点の位置FCが被検体Pの足首の正面に設定されるようにしてもよい。この場合においても、指定した被検体Pの注目部位の画像が、歪曲の少ない画像となるため、読影に適した画像を得ることができる。
【0124】
なお、上述した各実施形態においては、被検体Pが立位の状態で長尺撮影を行う場合を例としてX線診断装置1の構成と動作を説明したが、上述した各実施形態に係るX線診断装置1は、被検体Pの体位は立位に限らず、任意の体位で長尺撮影を実現することができる。例えば、X線診断装置1は、被検体Pが寝台10上で仰臥位となった状態で、被検体の全部又は一部を長尺撮影することも可能である。
【0125】
被検体Pが寝台10上で仰臥位となった場合、上述した各実施形態における上端、上端部、及び、上側などの文言は、被検体Pの頭部のある方向を意味しており、下端、下端部、及び、下側などの文言は、被検体Pの足先の方向を意味している。但し、これらの文言は、各実施形態に係るX線診断装置1を説明するための便宜上のものである。例えば、上端、上端部、及び、上側という文言は、それぞれ、右端、右端部、及び、右側と読み替えることができ、下端、下端部、及び、下側という文言は、それぞれ、左端、左端部、及び、左側と読み替えることができる。換言すれば、これらの文言は、被検体Pのある部分を中心として反対の2つの方向を指し示しているともいえる。
【0126】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規な装置及び方法は、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明した装置及び方法の形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲及びこれに均等な範囲は、発明の範囲や要旨に含まれるこのような形態や変形例を含むように意図されている。
以上の実施形態に関し、発明の一側面及び選択的な特徴として以下の付記を開示する。
(付記1)
被検体にX線を照射するX線管と、この照射されたX線を検出するX線検出器とを用いてX線撮影を行うことにより、X線画像を取得するX線画像取得部と、
前記X線管のX線焦点から前記X線検出器までの距離である焦点検出器間距離と、前記X線検出器の位置と、X線を被検体に照射する角度とを制御して、複数のX線撮影において、X線焦点が同等の位置となるように、前記X線管と前記X線検出器とを制御する、撮影制御部と、
を備えるX線診断装置。
(付記2)
前記撮影制御部は、前記X線管が照射するX線の範囲を絞るX線絞り器を制御して、複数のX線撮影における上端又は下端のX線画像をX線撮影する際の端部の領域を絞ることにより、被検体にX線を照射する範囲を調整してもよい。
(付記3)
X線焦点の位置と、X線を被検体に照射する角度とは、X線撮影の回数に基づいて固定的に定まっていてもよい。
(付記4)
固定的に定まっている、X線を被検体に照射する角度は、前記X線焦点の位置を挟んで上下対称であってもよい。
(付記5)
前記撮影制御部は、X線を被検体に照射する角度に応じて、前記焦点検出器間距離を調整して、複数のX線撮影において、前記X線管のX線焦点が同等の位置となるようにしてもよい。
(付記6)
前記撮影制御部は、前記X線管が照射するX線の範囲を絞るX線絞り器を制御して、複数のX線撮影における上端又は下端のX線画像をX線撮影する際の上端部及び下端部の双方の領域を絞ることにより、被検体にX線を照射する範囲を調整してもよい。
(付記7)
前記撮影制御部は、前記X線管が照射するX線の範囲を絞るX線絞り器を制御して、複数のX線撮影における上端及び下端の少なくとも一方のX線画像を撮影する際の端部の領域を絞ることにより、被検体にX線を照射する範囲を調整してもよい。
(付記8)
前記撮影制御部は、長尺撮影の上端の位置と、X線撮影の回数とに応じて、前記X線管が照射するX線の範囲を絞るX線絞り器を制御して、前記複数のX線撮影における上端のX線画像をX線撮影する1回目のX線撮影における上端部を絞り、被検体にX線を照射する範囲を調整してもよい。
(付記9)
X線焦点の位置は、複数のX線撮影により被検体の撮影をすべき範囲の中央部分に設定されてもよい。
(付記10)
X線焦点の位置は、前記被検体に対して行われる検査に関する検査情報に基づいて、設定されてもよい。
(付記11)
X線焦点の位置は、X線焦点の位置の設定に関する入力操作を操作者から受け付けて、受け付けた入力操作に応じて、設定されてもよい。
(付記12)
前記複数のX線撮影により取得された複数のX線画像を合成することにより前記被検体の長尺画像を生成する画像生成部をさらに備えてもよい。
(付記13)
前記撮影制御部は、前記X線を被検体に照射する角度が、前記X線検出器の中心軸上に位置する回転中心を中心として回動するように前記X線管を制御してもよい。
(付記14)
前記撮影制御部は、前記X線を被検体に照射する角度が、前記X線管のX線焦点の位置を中心として回動するように前記X線管を制御してもよい。
(付記15)
被検体にX線を照射するX線管と、この照射されたX線を検出するX線検出器とを用いてX線撮影を行うことにより、X線画像を取得する工程と、
前記X線管のX線焦点から前記X線検出器までの距離である焦点検出器間距離と、前記X線検出器の位置と、X線を被検体に照射する角度とを制御して、複数のX線撮影において、X線焦点が同等の位置となるように、前記X線管と前記X線検出器とを制御する工程と、
を備えるX線診断装置の制御方法。
(付記16)
同等の位置とは、物理的に同じ位置又はTOD差異が発生しない程度の実質的に同じ位置であってもよい。
(付記17)
固定的に定まっている、X線を被検体に照射する角度は、前記X線焦点の位置を挟んで上下非対称であってもよい。
(付記18)
X線焦点の位置は、複数のX線撮影により被検体の撮影をすべき範囲の中央部分と異なる位置に設定されてもよい。
(付記19)
X線検出器の中心軸上に位置する回転中心は、X線検出器の中央部分であってもよい。
(付記20)
X線検出器の中心軸上に位置する回転中心は、X線検出器の中心軸上におけるX線検出器の中央部分からオフセットされた位置であるオフセット位置であってもよい。
【符号の説明】
【0127】
1…X線診断装置、10…寝台、12…X線管保持装置、12a…X線管、12b…X線絞り器、14…高電圧発生器、16…X線検出器、18…処理回路、18a…X線画像取得機能、18b…撮影制御機能、18c…画像生成機能、20…ディスプレイ、22…入力回路、24…記憶回路、24a…プログラム記憶回路、24b…画像記憶回路、26…移動機構、FC…X線焦点の位置、P…被検体