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特開2023-134377システム、システムを制御する方法、およびシステムを備えた車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134377
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】システム、システムを制御する方法、およびシステムを備えた車両
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04746 20160101AFI20230920BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20230920BHJP
   H01M 8/249 20160101ALI20230920BHJP
   H01M 8/04537 20160101ALI20230920BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20230920BHJP
   B60L 50/70 20190101ALI20230920BHJP
   B60L 58/30 20190101ALI20230920BHJP
   B60L 7/22 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
H01M8/04746
H01M8/00 Z
H01M8/249
H01M8/04537
H01M8/04 Z
B60L50/70
B60L58/30
B60L7/22 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023027481
(22)【出願日】2023-02-24
(31)【優先権主張番号】22161677.4
(32)【優先日】2022-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】512272672
【氏名又は名称】ボルボトラックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【弁理士】
【氏名又は名称】網屋 美湖
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(72)【発明者】
【氏名】プラナフ・アーリヤ
(72)【発明者】
【氏名】ヨハン・リンドバーグ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】少なくとも1つの燃料電池システムを備えた電気自動車の動作中に生成される任意の過剰エネルギーを管理するためのエネルギー管理システムを提供する。
【解決手段】第1の燃料電池システムが、圧縮機32からの圧縮空気を少なくとも1つの燃料電池のいずれか1つに案内するように構成された制御可能な流量制御弁33と、圧縮空気装置および排気口のいずれか一方に接続可能な別個の流体管路39とをさらに備え、第2の燃料電池システムが、圧縮機32からの圧縮空気を少なくとも1つの対応する燃料電池のいずれか1つに案内するように構成された制御可能な流量制御弁43と、圧縮空気装置および排気口のいずれか一方に接続可能な別個の流体管路49とをさらに備えたシステム。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(10)用のシステム(20)であり、少なくとも第1の燃料電池システム(30)および第2の燃料電池システム(40)を備えたシステム(20)であって、
前記第1の燃料電池システムが、少なくとも1つの燃料電池(37)と、当該第1の燃料電池システムのカソード側に配設され、前記少なくとも1つの燃料電池の上流に配置された圧縮機(32)とを有し、前記第1の燃料電池システムが、前記圧縮機から前記少なくとも1つの燃料電池のいずれか1つへの圧縮空気の供給を制御するように構成された制御可能な流量制御弁(33)と、圧縮空気装置および排気口のいずれか一方に接続可能な別個の流体管路(39)とを備え、
前記第2の燃料電池システムが、少なくとも1つの対応する燃料電池(47)と、当該第2の燃料電池システムのカソード側に配設され、前記少なくとも1つの対応する燃料電池の上流に配置された対応する圧縮機(42)とを有し、前記第2の燃料電池システムが、前記対応する圧縮機から前記少なくとも1つの対応する燃料電池のいずれか1つへの圧縮空気の供給を制御するように構成された対応する制御可能な流量制御弁(43)と、前記圧縮空気装置および前記排気口のいずれか一方に接続可能な対応する別個の流体管路(49)とを備え、
前記制御可能な流量制御弁および前記対応する制御可能な流量制御弁が、前記第1の燃料電池システムおよび前記第2の燃料電池システムのいずれか一方の動作状態に応じて動作可能であり、
前記制御可能な流量制御弁および前記対応する制御可能な流量制御弁が、電気エネルギーの消散に対する決定された必要性に応じて、前記別個の流体管路および前記対応する別個の流体管路への圧縮空気の供給をそれぞれ制御するようにさらに動作可能である、システム。
【請求項2】
前記制御可能な流量制御弁および前記対応する制御可能な流量制御弁が、前記第1の燃料電池システムの前記少なくとも1つの燃料電池の負荷もしくは電力レベルならびに前記第2の燃料電池システムの前記少なくとも1つの対応する燃料電池の負荷もしくは電力レベルのいずれか一方の変化に応じて動作可能である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記制御可能な流量制御弁および前記対応する制御可能な流量制御弁が、前記第1の燃料電池システムの前記少なくとも1つの燃料電池および前記第2の燃料電池システムの前記少なくとも1つの対応する燃料電池が電力を前記車両に送達するように動作する場合に、前記少なくとも1つの燃料電池および前記少なくとも1つの対応する燃料電池への圧縮空気の供給をそれぞれ制御するように動作可能である、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1の電池システムの前記少なくとも1つの燃料電池および前記第2の燃料電池システムの前記少なくとも1つの対応する燃料電池がいずれも、電力を前記車両に送達するように動作する場合、前記制御可能な流量制御弁および前記対応する制御可能な流量制御弁が、前記第1の燃料電池システムおよび前記第2の燃料電池システムが閾値レベルを下回る電力レベルで動作する場合に、前記別個の流体管路および前記対応する別個の流体管路への圧縮空気の供給を制御するようにさらに動作可能である、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記第1の電池システムの前記少なくとも1つの燃料電池が非動作状態で動作し、前記第2の燃料電池システムの前記少なくとも1つの対応する燃料電池が電力を前記車両に送達するように動作する場合、前記制御可能な流量制御弁が、前記別個の流体管路への圧縮空気の供給を制御するように動作可能である一方、前記対応する制御可能な流量制御弁が、前記少なくとも1つの対応する燃料電池への圧縮空気の供給を制御するように動作可能である、請求項1から4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記第1の電池システムの前記少なくとも1つの燃料電池および前記第2の燃料電池システムの前記少なくとも1つの対応する燃料電池が対応する非動作状態で動作する場合に、前記制御可能な流量制御弁および前記対応する制御可能な流量制御弁が、前記別個の流体管路および前記対応する別個の流体管路への圧縮空気の供給をそれぞれ制御するように動作可能である、請求項1から5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記別個の流体管路および前記対応する別個の流体管路の少なくとも一方が、制動抵抗器の形態の圧縮空気装置に接続されている、請求項1から6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
前記別個の流体管路および前記対応する別個の流体管路の少なくとも一方が、圧縮空気貯蔵タンクの形態の圧縮空気装置に接続されている、請求項1から7のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
前記制御可能な流量制御弁および前記対応する制御可能な流量制御弁が、制御可能な分岐型三方流量制御弁である、請求項1から8のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
前記制御可能な流量制御弁および前記対応する制御可能な流量制御弁がそれぞれ、圧縮空気を前記少なくとも1つの燃料電池または前記別個の流体管路へと選択的に案内するように構成された制御可能な選択弁ならびに圧縮空気を前記少なくとも1つの対応する燃料電池または前記対応する別個の流体管路へと選択的に案内するように構成された対応する制御可能な選択弁である、請求項1から8のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
車両(10)用のシステム(20)を制御する方法であって、前記システムは少なくとも第1の燃料電池システム(30)および第2の燃料電池システム(40)を備え、前記第1の燃料電池システムが、少なくとも1つの燃料電池(37)と、当該第1の燃料電池システムのカソード側に配設され、前記少なくとも1つの燃料電池の上流に配置された圧縮機(32)とを有し、前記第1の燃料電池システムが、前記圧縮機から前記少なくとも1つの燃料電池のいずれか1つへの圧縮空気の供給を制御するように構成された制御可能な流量制御弁(33)と、圧縮空気装置および排気口のいずれか一方に接続可能な別個の流体管路(39)とをさらに備え、前記第2の燃料電池システムが、少なくとも1つの対応する燃料電池(47)と、当該第2の燃料電池システムのカソード側に配設され、前記少なくとも1つの対応する燃料電池の上流に配置された対応する圧縮機(42)とを有し、前記第2の燃料電池システムが、前記対応する圧縮機から前記少なくとも1つの対応する燃料電池のいずれか1つへの圧縮空気の供給を制御するように構成された対応する制御可能な流量制御弁(43)と、前記圧縮空気装置および前記排気口のいずれか一方に接続可能な対応する別個の流体管路(49)とをさらに備えており、
前記方法は、
前記第1の燃料電池システムおよび前記第2の燃料電池システムのいずれか一方の動作状態を示す制御信号を受信するステップと、
前記第1の燃料電池システムおよび前記第2の燃料電池システムのいずれか一方の動作状態を示す受信した前記制御信号に応じて、前記制御可能な流量制御弁および前記対応する制御可能な流量制御弁を動作させるステップと、
電気エネルギーの消散に対する決定された必要性に応じて、前記別個の流体管路および前記対応する別個の流体管路への圧縮空気の供給をそれぞれ制御するように前記制御可能な流量制御弁および前記対応する制御可能な流量制御弁を動作させるステップと
を含む、方法。
【請求項12】
コンピュータ上で実行された場合に、請求項11に記載の方法のステップを実行するプログラムコード手段を含むコンピュータプログラム。
【請求項13】
コンピュータ上で実行された場合に、請求項11に記載の方法のステップを実行するプログラム手段を含むコンピュータプログラムを搬送するコンピュータ可読媒体。
【請求項14】
請求項1から10のいずれか1項に記載のシステムを備えた車両(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、少なくとも第1の燃料電池システムおよび第2の燃料電池システムを有する車両用システムに関する。また、本開示は、システムを制御する方法およびこのようなシステムを備えた車両に関する。本開示は主として、電動トラクションモータに対する電力を生成するためのバッテリシステムおよび燃料電池システムのいずれか一方を使用するトラックの形態の車両を対象とするが、電力を生成するための燃料電池システムを使用する他種の車両(たとえば、推進用の電気機械および内燃機関を備えたハイブリッド車等)にも適用可能と考えられる。
【背景技術】
【0002】
車両の推進システムは、市場からの要求を満たすため、継続的に開発されている。車両推進システムの特定の技術分野は、環境に有害な排気ガスの排出に関連する。このため、従来の内燃機関よりも環境に優しい他の代替手段が評価され、車両に実装されている。このような代替手段の一例が車両駆動用の1つまたは複数の電気機械の使用であり、少なくとも1つの燃料電池システムによって、1つまたは複数の電気機械に対する電力が生成される。
【0003】
電気自動車のより重要な特徴の1つは、制動から運動エネルギーを取り込み、電気的に変換してバッテリシステムに蓄え、推進力の提供または補助電気システムの基本的なエネルギー需要に対して使用する能力に関する。
【0004】
内燃機関(ICE)のみで駆動する車両と比較して、燃料電池システムならびに1つもしくは複数の電気機械を動力とする車両は、適切な補助制動を得るのが困難となる場合がある。ICE駆動の車両の場合、補助制動は、リターダまたはいわゆるエンジンブレーキにより提供され得る。ただし、電気自動車の場合、補助制動機能は、車両のパワートレインシステムを構成するコンポーネント、特に、パワートレインシステムの冷却システムの寸法規定因子となる場合がある。これは少なくとも、冷却システムの冷却容量による。
【0005】
一例として、大型の電気自動車は、道路の下り坂を走行中、長時間にわたる制動/リターディングの頻度が高くなる可能性がある。電気自動車において、この制動/リターディングは一般的に、発電後に車両のバッテリを充電する電気機械を用いた制動により実行され得る。制動/リターディングの時間が長く延びると、やがてバッテリがフル充電となり、必要な制動力を提供できなくなる。このような場合、制動システムは、バッテリがフル充電となった場合に過剰な生成熱を処理するように構成された制動抵抗器を作動または動作させ得る。抵抗器は、電気機械により生成された電力で発熱する。熱管理上の理由から、車両の動作中には、制動抵抗器を冷却することが必要となる。
【0006】
結果として、車両の如何なる補助制動によっても、一般的に、車両の冷却システムが高レベルの過剰エネルギーを処理することになり得る。
【0007】
1つまたは複数の電気機械に給電するための少なくとも1つの燃料電池システムを備えた電気自動車の動作中に生成される任意の過剰エネルギーを管理するための改良されたエネルギー管理システムを提供するのが望ましいであろう。
【発明の概要】
【0008】
したがって、本開示の目的は、上述の欠陥を少なくとも部分的に克服することである。この目的は、請求項1に記載のシステムにより達成される。また、この目的は、その他の独立請求項により達成される。従属請求項は、本開示の有利な実施形態を対象とする。
【0009】
第1の態様によれば、車両用のシステムが提供される。このシステムは、少なくとも第1の燃料電池システムおよび第2の燃料電池システムを備える。第1の燃料電池システムは、少なくとも1つの燃料電池と、当該第1の燃料電池システムのカソード側に配設された圧縮機とを備える。圧縮機は、少なくとも1つの燃料電池の上流に配置されている。第1の燃料電池システムは、圧縮機から少なくとも1つの燃料電池のいずれか1つへの圧縮空気の供給を制御するように構成された制御可能な流量制御弁と、圧縮空気装置および排気口のいずれか一方に接続可能な別個の流体管路とをさらに備える。第2の燃料電池システムは、少なくとも1つの対応する燃料電池と、当該第2の燃料電池システムのカソード側に配設された対応する圧縮機とを備える。第2の圧縮機は、少なくとも1つの対応する燃料電池の上流に配置されている。第2の燃料電池システムは、対応する圧縮機から少なくとも1つの対応する燃料電池のいずれか1つへの圧縮空気の供給を制御するように構成された対応する制御可能な流量制御弁と、圧縮空気装置および排気口のいずれか一方に接続可能な対応する別個の流体管路とをさらに備える。さらに、制御可能な流量制御弁および対応する制御可能な流量制御弁が、第1の燃料電池システムおよび第2の燃料電池システムのいずれか一方の動作状態に応じて動作可能である。
【0010】
このように、流量制御弁は、圧縮機から(一般的に、対応する燃料電池スタックを構成する)対応する燃料電池セルならびに/または圧縮空気装置および排気口のいずれか一方への圧縮空気の配送を調節するように配置および構成される。特に、これらの弁によれば、このシステムは、燃料電池および圧縮空気装置/排気口への圧縮空気の割合を制御することも可能になる。通常、制御可能な流量制御弁および対応する制御可能な流量制御弁は、第1の燃料電池システムおよび第2の燃料電池システムのいずれか一方の動作状態に応じて一体的に動作可能である。これらの弁は、一体的な制御によって、制御ユニットによる協調制御が行われるように配置および構成されており、このような制御としては、燃料電池システムの動作状態(たとえば、負荷および/または電力レベル)に基づく弁の同時制御、弁の可変制御、弁の逐次制御、および弁の選択制御が挙げられるが、これらに限定されない。
【0011】
また、提案のシステムは、たとえば車両の制動要求および/または車両の動作による燃料電池負荷の変化に応じて、車両の動作中に生成されるエネルギーの消散を管理するための動的でありながら効率的かつ汎用的な方法にも寄与する。これにより、デュアル燃料電池システムの圧縮機を制御することによって、たとえば進行中の制動事象または予測される制動事象を含む制動要求時に、車両の動作状態に基づく改善された汎用的な電力吸収を提供可能となるため、制動プロセスに役立つ。このため、提案のシステムは、燃料電池電気自動車の制動能力の向上のほか、燃料電池電気自動車における燃料電池システムの耐久性/寿命の改善をもたらす。
【0012】
したがって、弁を備えたシステムは、圧縮機から、たとえば制動抵抗器または空気貯蔵タンクの形態の圧縮空気装置に圧縮空気を分配する動的制御への寄与によって、各燃料電池システムの燃料電池の適切な動作を保証しつつ、過剰なエネルギーをより良好に管理することも可能である。これは、燃料電池システムの予測される負荷および/または現在の負荷に基づいて、圧縮空気を燃料電池に供給することにより、少なくとも部分的に提供される。
【0013】
特に、第1の燃料電池システムおよび第2の燃料電池システムのいずれか一方の動作状態に基づいて弁を動作させることにより、対応する圧縮機のうちの1つが圧縮空気を対応する燃料電池に供給し、別の圧縮機が圧縮空気を圧縮空気装置および排気口のいずれか一方に供給するように、制御可能な弁が圧縮空気の供給を制御可能となる。このため、提案のシステムは、燃料電池システムの動作に基づく制御された様態で圧縮空気の供給が実行され得るような保護も可能にする。
【0014】
動作状態は、第1の燃料電池システムおよび第2の燃料電池システムのいずれか一方の燃料電池システム負荷を示し得る。燃料電池システムの燃料電池システム負荷は一般的に、燃料電池システムの電力レベルに対応するか、または、電力レベルを反映する。このデータは、燃料電池システムのいずれか一方の現在の燃料電池システム負荷および予測される燃料電池システム負荷のいずれか一方を表し得る。燃料電池システムのさまざまな状態、電力レベル、および負荷(高負荷、中負荷、低負荷、および無負荷等)は一般的に、閾値レベルを使用することにより決定され得る。このような閾値レベルとしては、予め定められた閾値も可能であるし、動的に規定された閾値も可能である。一例として、このような閾値レベルは、制御ユニットのメモリに格納されたルックアップテーブルから導出可能となり得る。また、車両、システム、および制御ユニットの種類に応じて、他の選択肢も考えられる。
【0015】
提案のシステムは、車両の制動事象による過剰なエネルギーを吸収する必要がある場合に、特に有用である。この背景において、燃料電池電気自動車は一般的に、下り坂を走行中に生成される制動エネルギーを吸収するため、付加的な装置(リターダ等)または十分に寸法規定されたバッテリを必要とすることが分かっている。リターダは、エネルギーの浪費につながることが多く、一方、大型のバッテリでは車両重量が増加して、1つの要件を満たすだけでもエネルギー貯蔵システムのサイズが大きくなってしまう可能性がある。
【0016】
また、提案のシステムによれば、車両のバッテリ/エネルギー貯蔵システムのサイズを大きくすることなく、エネルギーをより効率的に回収可能となり得る。通常は、車両の回生制動事象において電気エネルギーを生成する発電機モードで車両の電動トラクション機械を動作させることにより、過剰な電気エネルギーが生成される場合がある。従来の電気機械は、トラクションモードおよび発電機モードの両者において動作可能となり得る。
【0017】
このため、対応する圧縮機を有する少なくとも2つの燃料電池システムを備えたシステムは、制動事象においてまたはこれから起きる制動事象の準備において等、制動要求において発電機モードで動作する電動トラクション機械において生成される回収エネルギーを管理する車両の能力の向上にも使用可能である。したがって、圧縮機を駆動するモータへの電気エネルギーの給電により、上記のような過剰なエネルギーが圧縮機による空気の圧縮に使用され得る一方、車両のシステムは、燃料電池および圧縮空気装置(または、排気管)への圧縮空気の分配の制御によって、システムの全般的な効率を向上可能である。
【0018】
制動要求は一般的に、予測される制動動作または現行の制動動作により生成される過剰なエネルギーを管理する必要がある場合のエネルギー消散の状況を表す。そこで、制動要求という用語は、現在の制動要求および予測される制動要求のいずれか一方を表し得る。このため、少なくとも1つの実施形態によれば、圧縮機は、制動事象による制動エネルギーの回収によって動作するように構成されている。このため、圧縮機は、制動事象により生成されたエネルギーを吸収するように構成されている。
【0019】
対応する圧縮機を備えた少なくとも2つの燃料電池システムを有するシステムの利点として、エネルギーを吸収する車両の能力を拡張可能である。また、このようなシステムは、より大きなサイズの制動抵抗器等の圧縮空気装置の使用を可能にし得る。特に、対応する燃料電池システムの対応する空気入口管路に配設され、対応する燃料電池および圧縮空気装置と流体連通した対応する圧縮機を有する少なくとも2つの燃料電池システムを備えたシステムを提供することにより、システムの自由度および柔軟性を向上させることができる。一例として、一方の燃料電池システムの燃料電池を車両への給電に使用する一方、他方の燃料電池システムの燃料電池を非動作モードに設定することにより、他方の燃料電池システムの圧縮機の動作/使用によって、たとえば制動要求により車両で生成された過剰な電気エネルギーまたは車両から生成された過剰な電気エネルギーを消散可能である。したがって、停止された燃料電池システムすなわち燃料電池が非動作モードに設定された燃料電池システムは、エネルギー吸収モード(圧縮機のみが動作していることを意味する)で動作するため、その対応する制御弁の制御によって、圧縮空気を完全に圧縮空気装置または排気管へと案内することができる。
【0020】
圧縮機はそれぞれ、複数の異なる構成にて提供されていてもよい。通常は、圧縮機がそれぞれ、電気的に動作する圧縮機であってもよい。一例として、圧縮機はそれぞれ、対応する電気モータに駆動接続されている。したがって、圧縮機は、電気モータにより給電される。電気モータは、制動による回収エネルギー、バッテリシステムからの電気エネルギー、ならびに1つもしくは複数の燃料電池からの電気エネルギーを含む任意の電気エネルギー源により動作可能である。
【0021】
制御可能な流量制御弁および対応する制御可能な流量制御弁は、第1の燃料電池システムの少なくとも1つの燃料電池の負荷もしくは電力レベルならびに第2の燃料電池システムの少なくとも1つの対応する燃料電池の負荷もしくは電力レベルのいずれか一方の変化に応じて動作可能であってもよい。
【0022】
制御可能な流量制御弁および対応する制御可能な流量制御弁は、第1の燃料電池システムの少なくとも1つの燃料電池および第2の燃料電池システムの少なくとも1つの対応する燃料電池が電力を車両に送達するように動作する場合に、少なくとも1つの燃料電池および少なくとも1つの対応する燃料電池への圧縮空気の供給をそれぞれ制御するように動作可能であってもよい。これにより、燃料電池システムが電力を送達している場合は、燃料電池への空気の供給に同じ圧縮機を使用可能であり、また、電気エネルギーの消散(たとえば、制動事象において生成された過剰な電気エネルギーの吸収)に同じ圧縮機を使用可能である。
【0023】
さらに、第1の燃料電池システムの少なくとも1つの燃料電池および第2の燃料電池システムの少なくとも1つの対応する燃料電池がいずれも、電力を車両に送達するように動作する場合、制御可能な流量制御弁および対応する制御可能な流量制御弁は、第1の燃料電池システムおよび第2の燃料電池システムが閾値レベルを下回る電力レベルで動作する場合に、別個の流体管路および対応する別個の流体管路への圧縮空気の供給を制御するようにさらに動作可能であってもよい。閾値レベルの一例は、最小電力レベルであってもよい。これにより、燃料電池の劣化を最小限に抑えることができる。さらに、このような構成によれば、燃料電池システムの負荷変動ひいては劣化を抑えることが可能となり得る。
【0024】
通常、第1の燃料電池システムの少なくとも1つの燃料電池が非動作状態で動作し、第2の燃料電池システムの少なくとも1つの対応する燃料電池が電力を車両に送達するように動作する場合、制御可能な流量制御弁は、別個の流体管路に圧縮空気を供給するように制御され得る一方、対応する制御可能な流量制御弁は、少なくとも1つの対応する燃料電池への圧縮空気の供給を制御するように動作可能であってもよい。このようなシステムの制御によれば、システムの自由度および柔軟性をさらに向上させることができる。
【0025】
制御可能な流量制御弁および対応する制御可能な流量制御弁は、第1の燃料電池システムの少なくとも1つの燃料電池および第2の燃料電池システムの少なくとも1つの対応する燃料電池が対応する非動作状態で動作する場合に、別個の流体管路および対応する別個の流体管路への圧縮空気の供給をそれぞれ制御するように動作可能であってもよい。これにより、このシステムは、両圧縮機を使用して、最大電力を消費するとともに、空気流を対応する燃料電池から遠ざけるように動作可能である。
【0026】
制御可能な流量制御弁および対応する制御可能な流量制御弁は、電気エネルギーの消散に対する決定された必要性に応じて、別個の流体管路および対応する別個の流体管路への圧縮空気の供給をそれぞれ制御するように動作可能であってもよい。
【0027】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、別個の流体管路および対応する別個の流体管路の少なくとも一方が、制動抵抗器の形態の圧縮空気装置に接続されていてもよい。これにより、このシステムでは、車両の制動事象において、第1の燃料電池システムおよび第2の燃料電池システムの圧縮機からの圧縮空気により制動抵抗器を冷却可能となり得る。
【0028】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、別個の流体管路および対応する別個の流体管路の少なくとも一方が、圧縮空気貯蔵タンクの形態の圧縮空気装置に接続されている。これにより、より多くの圧縮空気を要する別の動作状況に対して、圧縮機からの圧縮空気の一部を空気貯蔵タンクに配送して貯蔵することができる。また、圧縮機の下流における空気貯蔵タンクの配置は、制動事象におけるある一定のエネルギーおよび電力を吸収して貯蔵する車両の能力の向上にも寄与し得る。一例として、燃料電池システムを高高度で動作させる場合には、空気貯蔵タンクに配送・貯蔵された圧縮空気の使用によって、燃料電池が十分な電力を供給可能となり得る可能性が高くなる。
【0029】
制御可能な流量制御弁および対応する制御可能な流量制御弁はそれぞれ、圧縮空気を少なくとも1つの燃料電池または別個の流体管路へと選択的に案内するように構成された制御可能な選択弁ならびに圧縮空気を少なくとも1つの対応する燃料電池または対応する別個の流体管路へと選択的に案内するように構成された対応する制御可能な選択弁であってもよい。
【0030】
制御可能な流量制御弁および対応する制御可能な流量制御弁はそれぞれ、対応する圧縮機から供給される圧縮空気の流量および圧力のいずれか一方を調節するように構成されていてもよい。
【0031】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、制御可能な流量制御弁および対応する制御可能な流量制御弁はそれぞれ、三方流量制御弁装置である。三方流量制御弁装置は、圧縮機に流体接続された入口ポート、第1の管路に流体接続された第1の出口ポート、および第2の管路に流体接続された第2の出口ポートを備える。一例として、制御可能な流量制御弁および対応する制御可能な流量制御弁は、制御可能な分岐型三方流量制御弁であってもよい。
【0032】
このシステムは、燃料電池システムと連通するとともに、燃料電池システムのいずれか一つの燃料電池システム負荷を示すデータをさらに含む制御信号に応じて弁それぞれを制御することにより、少なくとも1つの燃料電池ならびに圧縮空気装置および排気管のいずれか1つへの圧縮空気の分配を制御するようにさらに構成された制御ユニットを備えていてもよい。このデータは、燃料電池システムのいずれか一つの現在の燃料電池システム負荷および予測される燃料電池システム負荷のいずれか一つを表し得る。
【0033】
車両の制動要求による過剰な電気エネルギーの消散に対する必要性は、複数の異なる様態で決定または推定可能である。一例として、制御ユニットは、車両の回生制動事象により発生し得る過剰な電気エネルギーの量を決定することにより、車両の制動要求による過剰な電気エネルギーの消散に対する必要性を決定するように構成されている。通常、厳密には要求されないものの、車両の制動事象により発生し得る過剰な電気エネルギーの量の決定は、回生制動事象においてなされる。ただし、本明細書に記載の通り、1つまたは複数の動作パラメータに基づいて、車両のこれから起きる制動事象により発生し得る過剰な電気エネルギーを前もって予測しておくことも可能となり得る。
【0034】
一例として、発生し得る過剰な電気エネルギーの量は、車両の総電気エネルギー貯蔵レベルを推定することにより別途決定されるようになっていてもよい。車両の総電気エネルギーレベルには、車両の種類に応じた異なるデータセットを含んでいてもよい。一例として、総電気エネルギーレベルには、エネルギー貯蔵システムの充電状態(SOC)(任意のバッテリシステムのSOCを含む)を示すデータを含む。この追加または代替として、総電気エネルギーレベルには、車両の補機類への給電のための現在の電気エネルギー必要量および所与の期間にわたる車両の予測される将来電気エネルギー必要量を含んでいてもよい。このようなデータは、当技術分野において通常知られるように、さまざまなセンサおよび制御システムにより収集可能である。このため、車両の総電気エネルギーレベルは、エネルギー貯蔵システムの現行のSOCに対応し得る一方、所与の期間にわたる車両の予測電気エネルギー需要量を含む。
【0035】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、車両の制動事象により発生し得る過剰なエネルギーの量は、車両の動作パラメータに基づいて決定される。一例として、動作パラメータは、下り坂および上り坂等の今後の車両経路に関するデータ、車速の変化に関するデータ、加速度の変化に関するデータ、ESSの充電状態(SOC)に関するデータ、燃料電池の寿命に関するデータ、電気機械の特性、車両の重量に関するデータ、車両の種類を示すデータ等のデータのいずれか1つを含む。
【0036】
制御ユニットは、過剰な電気エネルギーの消散に対する必要性に応じて、弁それぞれの制御により、第1の燃料電池システムおよび第2の燃料電池システムの燃料電池ならびに圧縮空気装置/排気管に圧縮空気を案内するように構成されるとともに、燃料電池システムのいずれか一方の燃料電池システム負荷の変化に応じて、燃料電池への圧縮空気の分配のレベルを変更するようにさらに構成されていてもよい。このように、制御ユニットは、燃料電池システムのいずれか一方の燃料電池負荷が変化した場合に、燃料電池システムのいずれか一方の燃料電池への圧縮空気のレベルを微調整しつつ、圧縮空気装置/排気管への圧縮空気の制御を可能にする。
【0037】
制御ユニットは、制御信号が非制動要求および燃料電池システム無負荷を示す場合に、圧縮機および対応する圧縮機のいずれ一方を停止させるように構成されていてもよい。
【0038】
制御ユニットは、圧縮機および対応する圧縮機と連通するとともに、制御可能な弁とさらに連通するように構成されていてもよい。制御ユニットは、処理回路を備えていてもよい。また、制御ユニットは、データを受信して格納するメモリを備えていてもよい。
【0039】
制御可能な流量制御弁および対応する制御可能な流量制御弁の制御に関して、2つの圧縮機、燃料電池、および圧縮空気装置/排気管間の実際の空気流は、車両の他の動作データとの連携によりさらに制御され得ることが容易に理解されよう。このようなデータは一般的に、電子制御ユニット(ECU)等の制御ユニットに格納されていてもよい。したがって、制御ユニットは、制御可能な流量制御弁および対応する制御可能な流量制御弁と連通することにより、車両の動作状態を示す制御信号に基づいて弁を制御するように構成されていてもよい。制御ユニットは、処理回路を具備していてもよい。
【0040】
制御ユニットは、当技術分野において通常知られるように、制御可能な流量制御弁および対応する制御可能な流量制御弁を空気圧または電気で作動させるようにしてもよい。制御可能な流量制御弁および対応する制御可能な流量制御弁はそれぞれ、スイッチアクチュエータを含んでいてもよい。一例として、スイッチアクチュエータは、所与の制御可能な流量制御弁および対応する制御可能な流量制御弁の一部を移動させて、入口ポートの開度を調節するとともに入口ポートを開閉するように動作可能な電磁アクチュエータを有していてもよい。通常、制御可能な流量制御弁および対応する制御可能な流量制御弁はそれぞれ、制御ユニットからの入口信号に応じて制御可能な関連するスイッチアクチュエータを備える。これにより、スイッチアクチュエータは、制御ユニットからの制御命令に基づいて、制御可能な流量制御弁を動作させるように構成されていてもよい。
【0041】
第2の態様によれば、車両のシステムを制御する方法が提供される。このシステムは、少なくとも第1の燃料電池システムおよび第2の燃料電池システムを備える。第1の燃料電池システムは、少なくとも1つの燃料電池と、当該第1の燃料電池システムのカソード側に配設され、少なくとも1つの燃料電池の上流に配置された圧縮機とを有する。第1の燃料電池システムは、圧縮機から少なくとも1つの燃料電池のいずれか1つへの圧縮空気の供給を制御するように構成された制御可能な流量制御弁と、圧縮空気装置および排気口のいずれか一方に接続可能な別個の流体管路とをさらに備える。第2の燃料電池システムは、少なくとも1つの対応する燃料電池と、当該第2の燃料電池システムのカソード側に配設され、少なくとも1つの対応する燃料電池の上流に配置された対応する圧縮機とを備える。第2の燃料電池システムは、対応する圧縮機から少なくとも1つの対応する燃料電池のいずれか1つへの圧縮空気の供給を制御するように構成された対応する制御可能な流量制御弁と、圧縮空気装置および排気口のいずれか一方に接続可能な対応する別個の流体管路とをさらに備える。この方法は、第1の燃料電池システムおよび第2の燃料電池システムのいずれか一方の動作状態を示す制御信号を受信するステップと、第1の燃料電池システムおよび第2の燃料電池システムのいずれか一方の動作状態を示す受信制御信号に応じて、制御可能な流量制御弁および対応する制御可能な流量制御弁を動作させるステップとを含む。
【0042】
第2の態様の効果および特徴は、第1の態様に関して上述したものと略同様である。
【0043】
この方法は通常、当該方法のステップを実行するように構成された処理回路を備えた制御ユニットにより実現されるようになっていてもよい。
【0044】
第3の態様によれば、コンピュータ上で実行された場合に、第1の態様に関して上述した実施形態のいずれか1つに記載のステップを実行するプログラムコード手段を含むコンピュータプログラムが提供される。第4の態様によれば、コンピュータ上で実行された場合に、第1の態様に関して上述した実施形態のいずれか1つに記載のステップを実行するプログラム手段を含むコンピュータプログラムを搬送するコンピュータ可読媒体が提供される。第5の態様によれば、第1の態様に関して上述した実施形態のいずれか1つに記載のシステムを備えた車両が提供される。
【0045】
第3、第4、および第5の態様の効果および特徴は、第1および第2の態様に関して上述したものと略同様である。
【0046】
この車両は、燃料電池システムに対して電気的に接続された電気機械によって少なくとも部分的に駆動されるようになっていてもよい。このため、少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、この車両は、当該車両を駆動するとともに、当該車両の回生制動時に電力を制御可能に回生するように構成された電動トラクション機械を備える。この電気機械は、圧縮機に接続されて、電気エネルギーを圧縮機に給電するようにしてもよい。この車両は一般的に、電気機械と電気接続した電気エネルギー貯蔵システムを備えていてもよい。電気エネルギー貯蔵システムは、電力の受電および供給を行うように構成されたバッテリシステムであってもよく、電気機械は、バッテリシステムから受電した電力によって動作する。
【0047】
バッテリシステムはさらに、電動トラクション機械に対して電気的に接続され、回生制動時に電力を受電するように構成されていてもよい。
【0048】
一実施形態によれば、電気エネルギー貯蔵システムは、回生制動時の電力による充電、または、たとえば電気機械への電力の供給による複数の圧縮機すなわち圧縮機および対応する圧縮機の動作を可能にするバッテリシステムである。したがって、電気エネルギー貯蔵システムは、満たされる前に受電し得る利用可能な電力に対応する充電容量を有する。また、充電容量は、たとえば電気エネルギー貯蔵システムの温度、充電状態(SOC)等に基づいていてもよい。したがって、電気エネルギー貯蔵システムは、その最大許容充電状態レベルに達した場合、一般的には、それ以上の電力を受電し得ない。また、制御ユニットは通常、電気エネルギー貯蔵システムに接続されていてもよい。
【0049】
制御ユニットは、車両に対する回生制動リクエストを示す信号を受信することと、車両の回生制動時に電動トラクション機械により生成される電力のレベルを決定することと、電気エネルギー貯蔵システムの現在の充電容量を示す信号を受信することと、回生制動時に生成される電力のレベルを電気エネルギー貯蔵システムの現在の充電容量と比較することと、回生制動時に生成される電力のレベルが電気エネルギー貯蔵システムの現在の充電容量よりも大きい場合、回生制動時に電力を電気機械に供給するように電気エネルギー貯蔵システムを制御することとを行うように構成された処理回路を備えていてもよい。そして、電気機械は、圧縮機および対応する圧縮機に接続され、これらの圧縮機に給電するように構成されていてもよい。また、電気機械は、制動事象により生成された電力を圧縮機に給電するようにしてもよく、これにより電気機械は、発電機として動作するとともに、電力を圧縮機に供給するように制御される。
【0050】
他の特徴および利点については、添付の特許請求の範囲および以下の説明を習得した場合に明らかとなるであろう。当業者であれば、異なる特徴の組み合わせによって、本開示の範囲から逸脱することなく、以下に記載する以外の実施形態を生成可能であることが認識されよう。
【0051】
本明細書に使用の専門用語は、特定の例の説明を目的としているに過ぎず、本開示を制限する意図はない。本明細書における使用の通り、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上の明示的な別段の指定のない限り、複数形も同様に含む意図がある。本明細書に使用の場合の用語「備える(compriseおよび/もしくはcomprising)」ならびに/または「含む(includeおよび/もしくはincluding)」は、記載の特徴、整数、ステップ、動作、要素、および/または構成要素の存在を特定する一方、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、および/またはこれらの群の存在または追加を除外するものではないことがさらに了解される。
【0052】
別段の定めのない限り、本明細書に使用のすべての用語(技術用語および科学用語を含む)は、本開示が属する技術分野の当業者が通常理解するものと同じ意味を有する。本明細書に使用の用語は、本明細書および関連する技術の背景におけるそれぞれの意味と矛盾しない意味を有するものと解釈されるべきであり、本明細書におけるその旨の明示的な定めのない限り、理想化された意味または過度に形式的な意味で解釈されるものではないことがさらに了解される。
【0053】
上記および追加の目的、特徴、および利点については、例示的な実施形態に関する以下の説明的かつ非限定的な詳細記述を通してより深く理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】トラックの形態の車両の例示的な一実施形態を示した側面図である。
図2】デュアル燃料電池システムが排気口と流体連通したシステムを備えたシステムの例示的な一実施形態の模式図である。
図3】デュアル燃料電池システムが制動抵抗器と流体連通したシステムを備えたシステムの別の例示的な実施形態の模式図である。
図4】デュアル燃料電池システムが空気貯蔵タンクと流体連通したシステムを備えたシステムの別の例示的な実施形態の模式図である。
図5】例示的な一実施形態に係る、システムを制御する方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下、例示的な実施形態を示す添付の図面を参照して、本開示をより詳しく説明する。ただし、本開示は、多くの異なる形態にて具現化可能であり、本明細書に記載の実施形態に限定されるものと解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、徹底的かつ完全なものとなるように提供される。本明細書の全体を通して、同じ参照文字は同じ要素を表す。
【0056】
特に図1を参照して、この図は、トラックの形態の車両10を示している。車両10は、本明細書において別途説明するようなシステム20と、好ましくは以下の例に従ってシステム20を制御するための制御ユニット90とを備える。システム20は、電気自動車等の車両10に内蔵可能である。この種の用途において、システム20は一般的に、車両10の電動パワートレインシステム(図示せず)の一部に対応する。
【0057】
システム20についてより詳しく説明するため図2を参照するが、これは、例示的な一実施形態に係る、システムの模式図である。システム20は、第1の燃料電池システム30および第2の燃料電池システム40を備える。図2ならびにその他の図3および図4においては、点線が電気的接続を大略示す一方、実線が流体媒体接続を示す。制御ユニット90とシステム20との間の破線は、通信接続を示す。
【0058】
図2に示すように、システム20は、第1の燃料電池システム30および第2の燃料電池システム40と連通した制御ユニット90を備える。制御ユニット90は、システム20ならびに第1および第2の燃料電池システム30、40を制御するように構成された処理回路92を備えるのが好ましい。
【0059】
また、図2において、システム20は、車両10の一組または複数組の車輪84を駆動するトラクション機械82を備える。ここで、トラクション機械82は、バッテリシステム80または以下により詳しく説明する1つもしくは複数の燃料電池システム30、40から直接、電力を受電するように構成された電気機械の形態で設けられている。このように、システム20は、第1の燃料電池システム30、第2の燃料電池システム40、バッテリシステム80、および電動トラクション機械82を備えており、燃料電池システム30、40およびバッテリシステム80は、たとえば連結ユニット70によって選択的に電動トラクション機械82に接続可能である。このため、車両10が備えるシステム20は、車両10に推進力を与える電動パワートレインシステムの一体部分を構成するのが好ましい。
【0060】
図2に示すように、第1の燃料電池システム30は、少なくとも1つの燃料電池37を備える。少なくとも1つの燃料電池37は一般的に、2つの燃料電池または複数の燃料電池等、2つ以上の燃料電池で構成されていてもよい。このため、少なくとも1つの燃料電池37は、いわゆる燃料電池スタックを構成する。これにより、少なくとも1つの燃料電池37は、第1の燃料電池スタックと称する場合もある。燃料電池は同様に、それぞれ複数の燃料電池がスタック構成にて配置された複数の燃料電池スタックにおいて配置されていてもよい。第1の燃料電池システム30の第1の燃料電池スタック37に関して、第1の燃料電池スタック30を構成する燃料電池はそれぞれ一般的に、燃料成分として水素を受容するアノード側と、酸化成分として圧縮空気を受容するカソード側とを備える。燃料電池には、使用する電解質の種類によって主に区別される複数の異なる種類があり、いわゆるプロトン交換膜(PEM)燃料電池は、図1の車両10のような大型の車両での使用に特に適している。したがって、燃料電池37は、ここではPEM燃料電池スタックである。
【0061】
図2を参照して、この図は第1の燃料電池37を模式的に示したものであるが、カソード側しか示していない。すなわち、図示の簡略化のため、アノード側を省略している。第1の燃料電池システムには、燃料電池システムの分野において通常使用されるようなバランスオブプラントコンポーネント等の他の構成要素を具備することも可能である。
【0062】
第1の燃料電池システム30は、燃料電池37のカソード側の入口端36に接続された空気入口管路31をさらに備える。入口管路31は、空気をカソード側に供給するように構成されている。図2に示すように、入口管路31は、周囲環境21と流体連通した入口31aを有する。また、第1の燃料電池システム30は、燃料電池37のカソード側の出口端(図示せず)に接続された出口管路(図示せず)を備える。これにより、排気流が燃料電池37の出口端から出口管路に供給される。
【0063】
また、第1の燃料電池システム30は、空気圧縮機32を備えるが、これは圧縮機として示す場合もある。図2に示すように、空気圧縮機32は、入口管路31に配設されている。特に、空気圧縮機32は、入口管路31において、燃料電池37の上流に配置されている。図2に示すように、空気圧縮機32は、カソード側と流体連通して配置されている。
【0064】
さらに、空気圧縮機32は一般的に、入口管路31の入口31aの下流に配置されている。
【0065】
空気圧縮機32は、電気圧縮機である。言い換えると、空気圧縮機は、電気駆動圧縮機である。このため、第1の燃料電池システム30は、第1の電気モータ32aを備える。第1の電気モータ32aは、空気圧縮機32を動作させるように構成されている。第1の電気モータ32aとしては、電気圧縮機32の一体部分とすることも可能であるし、圧縮機32と電気接続した別個の構成要素とすることも可能である。以下に別途説明する通り、圧縮機32は、電気モータ32aに駆動接続されており、さらに、制動による回収エネルギーを含む任意の電気エネルギー源によって動作可能である。
【0066】
圧縮機32は、車両が制動時ではなくても、任意の種類の走行状況において動作するように構成されている。圧縮機32は一般的に、少なくとも車両が制動時ではない場合に動作して、空気を燃料電池システム30に供給する。圧縮機32は、燃料電池に適したレベルまで吸気の圧力レベルを高くするように動作する。空気の好適なレベルは、一般的には予め定められ、制御ユニット90に格納されている。このようなレベルは、ルックアップテーブル等に由来し得る。吸気の圧力レベルを高くすることにより、吸気の温度レベルも高くなる。
【0067】
また、明示的には示していないものの、第1の燃料電池システム30は、膨張機を備えていてもよい。膨張機は、タービンであってもよい。一例として、空気圧縮機32、膨張機、および第1の電気モータ32aは、圧縮機シャフトによって互いに結合されている。膨張機の目的は、電気モータ32aを補助することにより、圧縮機32に必要な電気エネルギー/電力の一部が膨張機により供給され、残りが電気モータ32aから送達されるようにすることである。
【0068】
図2において、空気圧縮機32は、バッテリシステム80および電動トラクション機械82のほか、燃料電池等の1つまたは複数の電気エネルギー源から電力を受電する電気モータ32aを動力とする電気圧縮機である。このため、図2に示すように、空気圧縮機32は、連結ユニット70を介して、バッテリシステム80、電動トラクション機械82、および燃料電池と電気接続している。特に、図2に示すように、空気圧縮機32は、電気接続部71を介して連結ユニット70と電気接続している。このため、図2に示すように、圧縮機32用の電気モータ32aは、電気接続部71を介して連結ユニット70と電気接続している。電気モータ32aは、空気圧縮機32と連結ユニット70との間に配置されている。したがって、電気モータ32aは、空気圧縮機32および連結ユニット70と電気接続している。
【0069】
空気圧縮機32は、周囲空気122を受容して圧縮することにより、圧縮空気123を得るように構成されている。図2に示すように、周囲空気は、空気フィルタ50を介して空気圧縮機32に供給される。圧縮された周囲空気(圧縮空気123)はその後、入口管路31を通って燃料電池37の入口端36に供給される。図2に示すように、空気フィルタ50は、空気圧縮機32の上流に配置されている。また、空気フィルタ50は、空気入口管路31の入口31aに配置されている。このように、第1の燃料電池システム30は、周囲環境21から空気を受容するように構成された空気フィルタ50を備える。空気圧縮機、空気フィルタ、および膨張機は、燃料電池システムにおいて通常知られる構成要素であるため、本明細書においては詳述しない。
【0070】
図2に示す例示的な実施形態によって、周囲空気122は、フィルタ50を介して、空気圧縮機32に受容される。空気圧縮機32が空気を加圧し、加圧空気を燃料電池37の入口端36に向かって供給することにより、電力が生成される。燃料電池37は、カソードの排気を出口端から出口管路へと排出する。排気流は任意選択として、空気を膨張させて膨張空気を排気管に供給する膨張機へとさらに案内されるようになっていてもよい。
【0071】
図2を再び参照して、第1の燃料電池システム30は、圧縮空気123を制御して燃料電池37へと案内するように構成された制御可能な流量制御弁33をさらに備える。制御可能な流量制御弁33は、カソード側の入口管路31に配設されている。
【0072】
また、図2に示すように、制御可能な流量制御弁33は、圧縮空気123を別個の流体管路39へと案内するように構成されている。別個の流体管路39は、排気口60に接続されている。ここで、排気口60は、マフラーを備える。図2に示すように、排気口60は、圧縮空気123を周囲大気22へと配送するように構成されている。このように、第1の燃料電池システム30は一般的に、別個の流体管路39を備える。制御可能な流量制御弁33によって、圧縮機32は、少なくとも1つの燃料電池および別個の流体管路39と流体連通している。流体管路31および別個の流体管路39はそれぞれ、圧縮空気123を移送するように構成されている。特に、空気入口管路31は、圧縮空気を燃料電池37へと移送するように構成されている。一方、別個の流体管路39は、圧縮空気を排気口60および周囲大気22へと移送するように構成されている。
【0073】
このように、空気圧縮機32は、空気入口管路31に配設され、空気入口管路31を介して燃料電池のカソード側と流体連通している。同様に、排気口60は、別個の流体管路39の端部に配設されている。したがって、排気口60は、別個の流体管路39を介して、空気圧縮機32と流体連通して配置されている。ここで、別個の流体管路39は、燃料電池システム30の一体部分である。ただし、別個の流体管路39は同様に、弁33を介して空気入口管路31に接続された別個の管路であってもよい。
【0074】
図2において、制御可能な流量制御弁33は、三方流量制御弁装置である。一例として、制御可能な流量制御弁33は、いわゆる分岐型三方弁である。このような分岐型三方弁33は、1つの入口ポートおよび2つの個々の出口ポートを備える。分岐型三方弁は、入口ポートへの流体媒体を受容し、受容した流体媒体を出口ポートのいずれか一方へと分配するように構成されている。図2の制御可能な流量制御弁33においては、1つの入口ポートが空気圧縮機32に流体接続され、一方の出口ポートが第1の管路31を介して燃料電池37に流体接続され、別の出口ポートが別個の流体管路39を介して排気口60に流体接続されている。
【0075】
制御可能な流量制御弁33は、第1の管路31および管路39への圧縮空気の流量を変更可能となるように、その弁位置を変更するように構成されている。
【0076】
また、第1の燃料電池システム30は、カソード側の湿度を管理して移送するように構成された加湿器35、入口管路31に配置された給気インタークーラ等の給気冷却器34等、付加的な従来のシステム構成要素を備えていてもよい。これらの種類の構成要素は、複数の異なる方法で提供されていてもよいが、このような構成要素は本明細書に記載の機能に関連しないと考えられるため、これ以上は説明しない。
【0077】
ここで再び図2において、第2の燃料電池システム40を参照する。第2の燃料電池システム40は、第1の燃料電池システム30と同様に設けられているのが好ましい。第2の燃料電池システム40は、少なくとも1つの対応する燃料電池47を備える。少なくとも1つの対応する燃料電池47は一般的に、2つの燃料電池または複数の燃料電池等、2つ以上の燃料電池で構成されていてもよい。このため、少なくとも1つの対応する燃料電池47は、いわゆる燃料電池スタックを構成する。これにより、少なくとも1つの対応する燃料電池47は、第2の燃料電池スタックと称する場合もある。燃料電池は同様に、それぞれ複数の燃料電池がスタック構成にて配置された複数の燃料電池スタックにおいて配置されていてもよい。第2の燃料電池システム40の第2の燃料電池スタック47に関して、第2の燃料電池スタック40を構成する燃料電池はそれぞれ一般的に、燃料成分として水素を受容するアノード側と、酸化成分として圧縮空気を受容するカソード側とを備える。燃料電池には、使用する電解質の種類によって主に区別される複数の異なる種類があり、いわゆるプロトン交換膜(PEM)燃料電池は、図1の車両10のような大型の車両での使用に特に適している。したがって、燃料電池47は、ここではPEM燃料電池スタックである。
【0078】
図2において、この図は第2の燃料電池47を模式的に示したものであるが、カソード側しか示していない。すなわち、図示の簡略化のため、アノード側を省略している。第2の燃料電池システムには、燃料電池システムの分野において通常使用されるようなバランスオブプラントコンポーネント等の他の構成要素を具備することも可能である。
【0079】
第2の燃料電池システム40は、燃料電池47のカソード側の入口端46に接続された空気入口管路41をさらに備える。入口管路41は、空気をカソード側に供給するように構成されている。図2に示すように、入口管路41は、周囲環境21と流体連通した入口41aを有する。また、第2の燃料電池システム40は、燃料電池47のカソード側の出口端(図示せず)に接続された出口管路(図示せず)を備える。これにより、排気流が燃料電池47の出口端から出口管路に供給される。
【0080】
また、第2の燃料電池システム40は、空気圧縮機42を備えるが、これは圧縮機として示す場合もある。図2に示すように、空気圧縮機42は、入口管路41に配設されている。特に、空気圧縮機42は、入口管路41において、燃料電池47の上流に配置されている。図2に示すように、空気圧縮機42は、カソード側と流体連通して配置されている。
【0081】
さらに、空気圧縮機42は一般的に、入口管路41の入口41aの下流に配置されている。
【0082】
空気圧縮機42は、電気圧縮機である。言い換えると、空気圧縮機は、電気駆動圧縮機である。このため、第2の燃料電池システム40は、対応する第2の電気モータ42aを備える。対応する第2の電気モータ42aは、空気圧縮機42を動作させるように構成されている。対応する第2の電気モータ42aとしては、電気圧縮機42の一体部分とすることも可能であるし、圧縮機42と電気接続した別個の構成要素とすることも可能である。以下に別途説明する通り、圧縮機42は、電気モータ42aに駆動接続されており、さらに、制動による回収エネルギーを含む任意の電気エネルギー源によって動作可能である。
【0083】
圧縮機42は、車両が制動時ではなくても、任意の種類の走行状況において動作するように構成されている。圧縮機42は一般的に、少なくとも車両が制動時ではない場合に動作して、空気を燃料電池システム40に供給する。圧縮機42は、燃料電池に適したレベルまで吸気の圧力レベルを高くするように動作する。空気の好適なレベルは、一般的には予め定められ、制御ユニット90に格納されている。このようなレベルは、ルックアップテーブル等に由来し得る。吸気の圧力レベルを高くすることにより、吸気の温度レベルも高くなる。
【0084】
また、明示的には示していないものの、第2の燃料電池システム40は、膨張機を備えていてもよい。膨張機は、タービンであってもよい。一例として、空気圧縮機42、膨張機、および対応する第2の電気モータ42aは、圧縮機シャフトによって互いに結合されている。膨張機の目的は、対応する第2の電気モータ42aを補助することにより、圧縮機42に必要な電気エネルギー/電力の一部が膨張機により供給され、残りが対応する第2の電気モータ42aから送達されるようにすることである。
【0085】
図2において、空気圧縮機42は、バッテリシステム80および電動トラクション機械82のほか、燃料電池等の1つまたは複数の電気エネルギー源から電力を受電する対応する第2の電気モータ42aを動力とする電気圧縮機である。このため、図2に示すように、空気圧縮機42は、連結ユニット70を介して、バッテリシステム80、電動トラクション機械82、および燃料電池と電気接続している。特に、図2に示すように、空気圧縮機42は、電気接続部72を介して連結ユニット70と電気接続している。このため、図2に示すように、圧縮機42用の対応する第2の電気モータ42aは、電気接続部72を介して連結ユニット70と電気接続している。対応する第2の電気モータ42aは、空気圧縮機42と連結ユニット70との間に配置されている。したがって、電気モータ42aは、空気圧縮機42および連結ユニット70と電気接続している。
【0086】
空気圧縮機42は、周囲空気122を受容して圧縮することにより、圧縮空気123を得るように構成されている。図2に示すように、周囲空気は、空気フィルタ50を介して空気圧縮機42に供給される。圧縮された周囲空気(圧縮空気123)はその後、入口管路41を通って燃料電池47の入口端46に供給される。図2に示すように、空気フィルタ50は、空気圧縮機42の上流に配置されている。また、空気フィルタ50は、空気入口管路41の入口41aに配置されている。このように、第2の燃料電池システム40は、周囲環境21から空気を受容するように構成された空気フィルタ50を備える。空気圧縮機、空気フィルタ、および膨張機は、燃料電池システムにおいて通常知られる構成要素であるため、本明細書においては詳述しない。
【0087】
圧縮機32、42への周囲空気の供給は、2つのシステム30、40に関して周囲への別個の接続部を備えた2つの別個の空気フィルタを有することによっても実行可能であることに留意されたい。一つのフィルタが管路31に接続され、一つのフィルタが管路41に接続されている。したがって、各空気フィルタは、周囲空気との接続部をそれ自体で有することになる。
【0088】
図2に示す例示的な実施形態によって、周囲空気122は、フィルタ50を介して、空気圧縮機42に受容される。空気圧縮機42が空気を加圧し、加圧空気を燃料電池47の入口端46に向かって供給することにより、電力が生成される。燃料電池47は、カソードの排気を出口端から出口管路へと排出する。排気流は任意選択として、空気を膨張させて膨張空気を排気管に供給する膨張機へとさらに案内されるようになっていてもよい。
【0089】
図2を再び参照して、第2の燃料電池システム40は、圧縮空気123を制御して燃料電池47へと案内するように構成された対応する制御可能な流量制御弁43をさらに備える。対応する制御可能な流量制御弁43は、カソード側の入口管路41に配設されている。対応する制御可能な流量制御弁43は一般的に、制御可能な流量制御弁33と同じ種類である。
【0090】
また、図2に示すように、対応する制御可能な流量制御弁43は、圧縮空気123を別個の流体管路49へと案内するように構成されている。別個の流体管路49は、排気口60に接続されている。ここで、排気口60は、マフラーを備える。図2に示すように、排気口60は、圧縮空気123を周囲大気22へと配送するように構成されている。このように、第2の燃料電池システム40は一般的に、別個の流体管路49を備える。制御可能な流量制御弁43によって、圧縮機42は、少なくとも1つの燃料電池および別個の流体管路49と流体連通している。流体管路41および別個の流体管路49はそれぞれ、圧縮空気123を移送するように構成されている。特に、空気入口管路41は、圧縮空気を燃料電池47へと移送するように構成されている。一方、別個の流体管路49は、圧縮空気を排気口60および周囲大気22へと移送するように構成されている。
【0091】
このように、空気圧縮機42は、空気入口管路41に配設され、空気入口管路41を介して燃料電池のカソード側と流体連通している。同様に、排気口60は、別個の流体管路49の端部に配設されている。したがって、排気口60は、別個の流体管路49を介して、空気圧縮機42と流体連通して配置されている。ここで、別個の流体管路49は、燃料電池システム40の一体部分である。ただし、別個の流体管路49は同様に、弁43を介して空気入口管路41に接続された別個の管路であってもよい。
【0092】
図2において、制御可能な流量制御弁43は、三方流量制御弁装置である。一例として、制御可能な流量制御弁43は、いわゆる分岐型三方弁である。このような分岐型三方弁43は、1つの入口ポートおよび2つの個々の出口ポートを備える。分岐型三方弁は、入口ポートへの流体媒体を受容し、受容した流体媒体を出口ポートのいずれか一方へと分配するように構成されている。図2の制御可能な流量制御弁43においては、1つの入口ポートが空気圧縮機42に流体接続され、一方の出口ポートが空気入口管路41を介して燃料電池47に流体接続され、別の出口ポートが別個の流体管路49を介して排気口60に流体接続されている。一般的に、分岐型三方流量制御弁装置は、圧縮空気を出口ポートに供給する可変制御を提供するように構成されている。このため、制御可能な流量制御弁43は、管路41および管路49への圧縮空気の流量を変更可能となるように、その弁位置を変更するように構成されている。
【0093】
また、第2の燃料電池システム40は、カソード側の湿度を管理して移送するように構成された加湿器45、入口管路41に配置された給気インタークーラ等の給気冷却器44等、付加的な従来のシステム構成要素を備えていてもよい。これらの種類の構成要素は、複数の異なる方法で提供されていてもよいが、このような構成要素は本明細書に記載の機能に関連しないと考えられるため、これ以上は説明しない。
【0094】
以下、第1および第2の燃料電池システム30、40の前述の弁33および43をそれぞれ制御する1つまたは複数の例を説明する。
【0095】
図2に示す例示的な実施形態において、制御可能な流量制御弁33および対応する制御可能な流量制御弁43は、第1および第2の燃料電池システム30、40のいずれか一方の動作状態に基づいて一体的に動作可能である。本例において、動作状態は、所与の燃料電池システムの電力レベルである。
【0096】
一例として、制御可能な流量制御弁33および対応する制御可能な流量制御弁43は、第1の電池システム30の少なくとも1つの燃料電池37および第2の燃料電池システム40の少なくとも1つの対応する燃料電池47が電力を車両10に送達するように動作する場合に、少なくとも1つの燃料電池37および少なくとも1つの対応する燃料電池47に圧縮空気123を供給するようにそれぞれ制御される。
【0097】
この追加または代替として、制御可能な流量制御弁33および対応する制御可能な流量制御弁43は、第1の燃料電池システム30の少なくとも1つの燃料電池37の動作状態および第2の燃料電池システム40の少なくとも1つの対応する燃料電池47の動作状態のいずれか一方の変化に応じて一体的に動作可能である。本例において、動作状態の変化は、燃料電池37の電力レベルの変化および/または燃料電池47の電力レベルの変化に対応する。
【0098】
第1の燃料電池システム30の少なくとも1つの燃料電池37および第2の燃料電池システム40の少なくとも1つの対応する燃料電池47がいずれも、電力を車両10に送達するように動作する場合、制御可能な流量制御弁33および対応する制御可能な流量制御弁43は、第1および第2の燃料電池システム30、40が好適な閾値レベルにより規定された低い電力レベルで動作する場合に、別個の流体管路39および対応する別個の流体管路49に圧縮空気123を供給するようにさらに制御されるのが好ましい。このような閾値レベルとしては、予め定められたレベルも可能であるし、動的な閾値レベルも可能である。閾値レベルの一例は、最小電力レベルであってもよい。好適な閾値レベルは、一般的には予め定められ、制御ユニットに格納されている。このようなレベルは、ルックアップテーブル等に由来し得る。ただし、閾値レベルは、燃料電池システムからの動作データに基づいてレベルを更新することにより、動的に設定されるようになっていてもよい。
【0099】
上記の追加または代替として、第1の電池システム10の少なくとも1つの燃料電池37が非動作状態で動作し、第2の燃料電池システム40の少なくとも1つの対応する燃料電池47が電力を車両10に送達するように動作する場合、非動作状態の燃料電池システムの制御可能な流量制御弁33は、別個の流体管路39に圧縮空気123を供給するように制御される一方、動作状態の燃料電池システムの対応する制御可能な流量制御弁43は、第2の燃料電池システム40の少なくとも1つの対応する燃料電池47に圧縮空気123を供給するように制御される。上記に係るシステムの制御は、反対の動作状況すなわちシステム40が動作せず、システム30が動作する場合にも実行可能である。
【0100】
任意選択として、制御可能な流量制御弁33および対応する制御可能な流量制御弁43は、第1の燃料電池システム30の少なくとも1つの燃料電池37および第2の燃料電池システム40の少なくとも1つの対応する燃料電池47が対応する非動作状態で動作する場合に、別個の流体管路39および対応する別個の流体管路49に圧縮空気123を供給するようにそれぞれ制御される。言い換えると、制御可能な流量制御弁33および対応する制御可能な流量制御弁43は、第1および第2の燃料電池システム30、40がそれぞれ非動作状態の場合(たとえば、第1および第2の燃料電池システム30、40が停止されている場合)に、圧縮空気123が燃料電池37、47に供給されないように制御される。
【0101】
制御可能な流量制御弁33および対応する制御可能な流量制御弁43は、必ずしも完全可変流量制御弁として提供されるわけではなく、従来の選択弁(いわゆる選択可能弁)としても提供され得る。そこで、弁の別の設計において、制御可能な流量制御弁33および対応する制御可能な流量制御弁43はそれぞれ、制御可能な選択弁である。このため、制御可能な選択弁33は、少なくとも1つの燃料電池37または排気口60に接続された別個の流体管路39へと圧縮空気123を選択的に案内するように構成される一方、対応する制御可能な選択弁43は、少なくとも1つの対応する燃料電池47または排気口60に接続された対応する別個の流体管路49へと圧縮空気123を選択的に案内するように構成されている。
【0102】
図2には、第1および第2の燃料電池システムそれぞれの燃料電池37および対応する燃料電池47がFCEVのその他の部品に対して電気的に接続されることにより、車両10の1つまたは複数の車輪84を介して牽引動力(トラクションパワー)が与えられる様子も示している。図1および図2に示すFCEV10は、(第1の燃料電池スタックを構成する)燃料電池37および(第2の燃料電池スタックを構成する)対応する燃料電池47がバッテリシステム80と対になった直列ハイブリッド設計にて構成されている。また、第1の燃料電池システム30は、燃料電池37の共通の電力出口38と電気的に接続して配置されたDC/DCコンバータ34を備える。同様に、第2の燃料電池システム40は、対応する燃料電池47の共通の電力出口48と電気的に接続して配置された対応するDC/DCコンバータ44を備える。
【0103】
DC/DCコンバータ34、44の機能は、トラクション/バッテリシステムに対する望ましい電圧で第1および第2の燃料電池システム30、40それぞれの燃料電池37、47から電力を提供(供給)することである。また、システム20は、連結ユニット70を具備する。連結ユニット70は、電気配線の共用集合スポットとして機能するハウジングであり、さまざまな構成要素に電流/電力を振り向けることになる。言い換えると、連結ユニット70は、第1および第2の燃料電池システム30、40それぞれの燃料電池37、47をバッテリシステム80および電動トラクション機械82に接続するように構成されている。車輪80への牽引動力は、バッテリシステム80、電動トラクション機械、ならびに第1および第2の燃料電池システム30、40それぞれの燃料電池37、47のいずれか1つにより送達される。
【0104】
たとえば図2に示すように、第1および第2の燃料電池システム30、40の燃料電池37、47はそれぞれ、第1および第2の電気出力接続部73、74を介して、連結ユニット70に対して電気的に接続されている。
【0105】
また、連結ユニット70は、第1および第2の燃料電池システム30、40それぞれの燃料電池37、47を第1および第2の圧縮機32、42に接続するように構成されている。図2に示すように、電気接続部は、電気接続部73、74および電気接続部71、72により提供されている。
【0106】
バッテリシステム80は、電気接続部75によって連結ユニット70に接続されている。一例として、FCEVの分野において通常知られるように、バッテリシステム80は、連結ユニット70を介して、牽引動力を車両に与える電動トラクション機械82に接続されている。一方、第1および第2の燃料電池システム30、40の燃料電池37、47は、DC/DCコンバータ34、44および連結ユニット70を介して、電動トラクション機械82への電気エネルギーの供給および/またはバッテリシステム80への電力の送達を行う。言い換えると、通常のFCEVでは、トラクションバッテリもしくはキャパシタ、インバータ、ならびに電気モータを用いて、牽引動力を車両に与えることができる。
【0107】
制動事象におけるシステムの回生モードにおいて、電動トラクション機械82が発電機として動作する場合は、電動トラクション機械82からの電力が電気モータ32a、42aそれぞれに移送されて、第1および第2の圧縮機32、42を駆動する。このため、連結ユニット70は、バッテリシステム80および電動トラクション機械82を第1および第2の圧縮機32、42に対して電気的に接続するように構成されている。このように、生成された過剰な電気エネルギーおよび/または電動トラクション機械82からの回収エネルギーを第1および第2の圧縮機32、42それぞれの駆動に向けることができる。
【0108】
一例として、電動トラクション機械82から100kWが移送された場合、連結ユニット70は、50kWが第1および第2の圧縮機32、42それぞれに移送され、50kWがバッテリシステム80に移送されるように電力量を分割するようにしてもよい。このような連結ユニット70からの電力移送の制御は、ECU等の制御ユニットにより決定されるようになっていてもよく、一方、実際の電力配送は、連結ユニットにより処理されることになる。
【0109】
図1および図2に示すFCEV10およびシステム20の構成は、システム20とともに使用されるFCEVの多くの好適な構成のうちの1つに過ぎないことに留意されたい。一例として、このシステムは、バッテリシステムと並列構成に配置された複数の燃料電池システムを具備していてもよい。また、バッテリシステムは、複数のバッテリパックを具備していてもよい。この追加または代替として、バッテリシステムは、燃料電池システムの一体部分であってもよい。さらに、システム20は、外部電源からの電気エネルギーの受電および外部電源への電気エネルギーの供給の両者を行い得る双方向充電ポートを具備していてもよいし、双方向充電ポートに接続されていてもよい。このような外部電源は、たとえば電力網に接続された充電ステーション、バッテリ、または別の車両であってもよい。システム20は、車両の1つまたは複数の車輪84に対して直接または伝達機構(図示せず)を介して接続された1つまたは複数の電動トラクションモータを備えるものと考えられる。この車両は、車両推進用の内燃機関(図示せず)をさらに備えていてもよく、内燃機関、バッテリ、および燃料電池システムの一体制御によって、動力を車両に対して効率的に与えることができる。
【0110】
図3は、システム20の別の例示的な実施形態を模式的に示している。システム20は概して、図2に関して記載のような構成要素および特徴を含む。図3のシステムと図2のシステムとの間の差異として、別個の流体管路39および対応する別個の流体管路49が制動抵抗器62に接続されている。ここで、制動抵抗器は、圧縮空気123により冷却されるように構成された構成要素である。したがって、制動抵抗器62は一般的に、空冷式制動抵抗器としても示され得る。
【0111】
このため、空冷式制動抵抗器62は、別個の流体管路39および対応する別個の流体管路49の下流に配置されている。空冷式制動抵抗器62は、当該空冷式制動抵抗器62の共通入口62aを介して、別個の流体管路39および対応する別個の流体管路49に流体接続されていてもよい。この設計代替案において、別個の流体管路39および対応する別個の流体管路49は、当該管路39,49を空冷式制動抵抗器62の入口62aに接続する共通管路に交差する。システム20の別の構成において、空冷式制動抵抗器62は、別個の流体管路39および対応する別個の流体管路49を当該空冷式制動抵抗器62に接続するための2つの入口62aを有する(ただし、図示せず)。
【0112】
したがって、空冷式制動抵抗器62は、別個の流体管路39および制御可能な流量制御弁33を介して、空気圧縮機32と流体連通して配置されている。同様に、空冷式制動抵抗器62は、対応する別個の流体管路49および対応する制御可能な流量制御弁43を介して、対応する空気圧縮機42と流体連通して配置されている。
【0113】
図3において、空冷式制動抵抗器62は、空気圧縮機32、42のいずれか一方から供給された圧縮空気123により冷却されるように構成されている。言い換えると、空冷式制動抵抗器62は、空気圧縮機32、42と下流で流体連通した空冷式制動抵抗器である。また、各管路39、49に対応する給気冷却器(図示せず)が配設され、対応する圧縮機の下流の空気の温度を調節し得るのが好ましい。
【0114】
また、空冷式制動抵抗器は、一般的には電動制動抵抗器である。これは、空冷式電気制動抵抗器62が電動トラクション機械82等の電気エネルギー源と電気接続して動作し得るように構成されていることを意味する。図3において、制動抵抗器62は、電気接続部76によって連結ユニット70に接続されている。したがって、制動抵抗器62は、連結ユニット70を介して電動トラクション機械82に接続されている。
【0115】
このように、空冷式電気制動抵抗器62は、電力を消費するものとして構成されている。空冷式電気制動抵抗器62が電動トラクション機械82から電力を受電した場合は、空気圧縮機32、42からの圧縮空気123が制動抵抗器によって加熱される。その後、加熱された圧縮空気は、周囲環境へと案内される。空冷式電気制動抵抗器62からの空気は、制動装置のマフラー(図示せず)に案内されるのが好ましい。マフラーは、ノイズを低減するように構成されており、また、空気を減圧可能である。
【0116】
空冷式電気制動抵抗器62は、過剰な加熱を避けるため、空気圧縮機32、42からの圧縮空気123により冷却されるように構成されている。このため、空冷式電気制動抵抗器62は、空気冷却システムに接続されており、圧縮機32、42からの圧縮空気123によって冷却可能である。
【0117】
車両10の動作時、すなわち、電動トラクション機械82が発電機として動作することにより車速を制御する場合すなわち車両10が回生制動モードで動作する場合は、電動トラクション機械82からバッテリシステム80に電力が送られる。たとえば現在の充電容量、すなわち、バッテリシステム80のフル充電またはその最大許容充電状態レベルまでに受電可能な電力レベルのため、バッテリシステム80が電動トラクション機械82により生成された電力の全部または一部を受電できない場合、好ましくは過剰な電力を消散させるものとする。この場合、バッテリシステム80は、制御ユニット90による制御によって、第1および第2の燃料電池システム30、40の電気モータ32a、42aに電力を供給する。この追加または代替として、発電機モードで動作して電気エネルギーを生成している電動トラクション機械82が電気モータ32a、42aに直接、電気エネルギーを供給して、圧縮機32および42それぞれへの給電ひいては稼働により空気を圧縮させるようにしてもよい。言い換えると、圧縮機32および42には、連結ユニット70に接続されてバッテリシステム80、電動トラクション機械82、および/または燃料電池37、47から電力を受電する対応する電気モータ32a、42aが設けられている(これらは、圧縮機の一体部分であってもよい)。
【0118】
このように、電気モータ32a、42aは、バッテリシステム80、燃料電池37、47、および/または電動トラクション機械82から受電した電力によって、空気圧縮機32,42の動力となっている。その後、空気圧縮機32、42がそれぞれ空気122を圧縮し、さらに入口管路31、41それぞれを通じて圧縮空気123を燃料電池37、47に供給するとともに、各管路39、49を介して空冷式電気制動抵抗器62に供給する。このため、空気圧縮機32、42は概して、周囲空気を一定のレベルまで加圧して安定した空気流を生成するように構成されており、この空気流を使用して、燃料電池37、47を適正に機能させるとともに、空冷式電気制動抵抗器62を冷却する圧縮空気123を供給することができる。
【0119】
以上から、空気圧縮機32、42は、対応する電気モータ32a、42aにより動作可能である。電気モータ32a、42aは、発電機モードで動作するように構成された電動トラクション機械82により給電される。この追加または代替として、電気モータ32a、42aは、燃料電池のいずれか一方からの電力および/またはバッテリシステムにより稼働/給電される。また、車両の種類に応じて、他の選択肢も考えられる。
【0120】
図3において、制御可能な流量制御弁33および対応する制御可能な流量制御弁43は概して、図2の例示的な実施形態に関する記載と同様に制御される。このため、制御可能な流量制御弁33および対応する制御可能な流量制御弁43は、第1および第2の燃料電池システム30、40のいずれか一方の動作状態に基づいて一体的に動作可能である。また、図3のシステム20は、制御ユニット90により制御される。したがって、図2に関して前述した通り、制御ユニット90は、弁33、43を制御するように構成されている。
【0121】
以下、上述のシステム20の各空気圧縮機32、42から各燃料電池37、47および空冷式電気制動抵抗器62まで、制御可能な流量制御弁33および対応する制御可能な流量制御弁43を介した圧縮空気123の流れを制御する方法の別の例を説明する。
【0122】
図2に関して前述した通り、制御ユニット90は一般的に、空気圧縮機32、42と連通し、さらに弁33、43と連通してこれらを制御するように構成されている。制御可能な流量制御弁33および対応する制御可能な流量制御弁43はそれぞれ、各空気圧縮機32、42から各燃料電池37、47のいずれか一方および空冷式制動抵抗器62までの圧縮空気123の供給を制御するように配置および構成されている。一例として、制御可能な流量制御弁33は、空気圧縮機32から燃料電池37まで、空気流体管路31を介した圧縮空気123の一部の供給を制御するように配置および構成されている。また、制御可能な流量制御弁33は、空気圧縮機32から空冷式制動抵抗器62まで、別個の流体管路39を介した圧縮空気123の一部の供給を制御するように配置および構成されている。制御可能な流量制御弁33は、空気圧縮機32からの圧縮空気123の流量および圧力のいずれか一方を調節するように構成されている。同じく図2に関して説明した通り、対応する制御可能な流量制御弁43は、弁33と同様に配置および構成されている。
【0123】
いくつかの例においては、弁33、43が別個の管路39、49それぞれへの通路を開閉することにより、各空気圧縮機32、42から空冷式制動抵抗器62への供給を許可または制限するように構成されていれば十分と考えられる。
【0124】
ここで、制御可能な流量制御弁33および対応する制御可能な流量制御弁43はそれぞれ、車両10の制動要求による過剰な電気エネルギーの消散に対する必要性を示すデータを含む制御信号の受信に応じて、制御ユニット90により制御される。また、制御ユニット90は、車両10の制動要求による過剰な電気エネルギーの消散に対する必要性を示すデータを含む制御信号に応じて、弁33、43を制御するように構成されている。本明細書に記載の通り、制動要求があると、過剰に生成された電気エネルギーの管理を必要とするエネルギー消散の状況となる。このように過剰な電気エネルギーは、予測される制動動作または現行の制動動作により生成される場合がある。
【0125】
制御信号は一般的に、制御ユニット90において受信される。したがって、制御ユニット90は、車両の少なくとも1つの制動要求を示すデータを含む1つまたは複数の制御信号を受信するように構成されている。このデータには、たとえば所要制動力のデータを含む。受信した1つまたは複数の制御信号に応じて、制御ユニット90は、本明細書に別途記載の通り、空気圧縮機32、42および弁33、43を動作させるように構成されている。本明細書に記載の通り、システム10のその他の構成要素についても、1つまたは複数の制御信号に基づいて少なくとも部分的に動作するようになっていてもよい。
【0126】
ここでも、制御ユニット90は、燃料電池システム負荷および/または電力レベルを示すデータをさらに含む1つまたは複数の制御信号に応じて弁33、43を制御することにより、空冷式制動抵抗器62および燃料電池37、47への圧縮空気123の分配を制御するように構成されている。燃料電池システム負荷を示すデータは一般的に、現在の燃料電池システム負荷の尺度である。他の状況において、燃料電池システム負荷を示すデータは、予測される燃料電池システム負荷の尺度である。通常、制御ユニット90は、両燃料電池システム30、40の負荷および/または両燃料電池システム30、40の電力レベルに基づいて弁33、43を一体的に制御するように構成されている。
【0127】
車両10の制動要求による過剰な電気エネルギーの消散に対する必要性は、複数の異なる様態で決定または推定可能である。一例として、制御ユニット90は、制動要求により発生し得る過剰な電気エネルギーの量を決定することにより、車両10の制動要求による過剰な電気エネルギーの消散に対する必要性を決定するように構成されている。通常、厳密には要求されないものの、車両10の制動事象により発生し得る過剰な電気エネルギーの量の決定は、回生制動事象においてなされる。他の状況において、システムからの消散を要する過剰な電気エネルギーは、前述の通り、車両10のこれから起きる制動事象から、1つまたは複数の動作パラメータに基づいて制御ユニット90により前もって予測される。
【0128】
消散を必要とする車両10の制動事象により発生し得る過剰な電気エネルギーの量は、車両10の1つまたは複数の動作パラメータに基づいて決定されるのが好ましい。一例として、動作パラメータは、下り坂および上り坂等の今後の車両経路に関するデータ、車速の変化に関するデータ、加速度の変化に関するデータ、電気エネルギー貯蔵システムの充電状態(SOC)に関するデータ、燃料電池の寿命に関するデータ、電気機械の特性、車両10の重量に関するデータ、車両10の種類を示すデータ等のデータのいずれか1つを含む。
【0129】
一例として、発生し得る過剰な電気エネルギーの量は、車両10の総電気エネルギー貯蔵レベルを推定することにより決定される。ここで、車両10の総電気エネルギーレベルには、動作パラメータのうちの1つまたは複数を含む異なるデータセットを含む。一例として、総電気エネルギーレベルには、車両10のバッテリシステムの充電状態(SOC)を示すデータを含む。また、総電気エネルギー貯蔵レベルは、バッテリシステムの寿命および燃料電池の寿命に基づいて決定されるようになっていてもよい。この追加または代替として、総エネルギーレベルには、空調システムおよび圧縮空気装置等、車両の補機類への給電のための現在の電気エネルギー必要量を含んでいてもよい。この追加または代替として、総電気エネルギーレベルには、所与の期間にわたる車両10の予測される将来電気エネルギー必要量を含んでいてもよい。このようなデータは、当技術分野において通常知られるように、さまざまなセンサ(図示せず)および制御ユニット90により収集可能である。このため、車両10の総電気エネルギーレベルは、エネルギー貯蔵システムの現行のSOCに対応し得る一方、所与の期間にわたる車両の予測電気エネルギー需要量を含む。
【0130】
図4は、システム20の別の例示的な実施形態を模式的に示している。図4のシステム20は概して、図2に関して記載のような構成要素および特徴を含む。図4のシステムと図2および図3に記載のシステム20との間の差異として、別個の流体管路39および対応する別個の流体管路49が空気貯蔵タンク64に接続されている。空気貯蔵タンク62は、圧縮空気装置の別の例である。空気貯蔵タンク64は、高圧の圧縮空気を貯蔵するように構成されている。空気貯蔵タンク64は、圧縮機32、42から圧縮空気123を受容して貯蔵するように配置および構成されている。
【0131】
図4に示すように、空気貯蔵タンク64は、別個の流体管路39および対応する別個の流体管路49の下流に配置されている。空気貯蔵タンク64は、当該空気貯蔵タンク64の共通入口64aを介して、別個の流体管路39および対応する別個の流体管路49に接続されていてもよい。この設計代替案において、別個の流体管路39および対応する別個の流体管路49は、当該管路39,49を空気貯蔵タンク64の入口64aに接続する共通管路に交差する。システム20の別の構成において、空気貯蔵タンク64は、別個の流体管路39および対応する別個の流体管路49を当該空気貯蔵タンク64に接続するための2つの入口64aを有する(ただし、図示せず)。
【0132】
また、空気貯蔵タンク64は一般的に、圧縮空気123を受容してさらに移送するように構成されることが容易に理解されよう。このため、空気貯蔵タンク64は、対応する圧縮空気入口64aおよび圧縮空気出口64bを備える。圧縮空気の圧力は、車両および燃料電池システムごとに異なり得る。圧縮空気は、車両中の利用可能な空間および空気貯蔵タンク64のサイズ等に応じて、好適な圧力レベルで空気貯蔵タンク64に貯蔵されるようになっていてもよい。一般的に、システム20が高い圧力レベルの圧縮空気を貯蔵可能な場合は、このような貯蔵によって、空気貯蔵タンクのサイズの縮小またはより多くの圧縮空気の貯蔵が可能となり得る。
【0133】
したがって、空気貯蔵タンク64は、別個の流体管路39および制御可能な流量制御弁33を介して、空気圧縮機32と流体連通して配置されている。同様に、空気貯蔵タンク64は、対応する別個の流体管路49および対応する制御可能な流量制御弁43を介して、対応する空気圧縮機42と流体連通して配置されている。
【0134】
さらに、図4において、制御可能な流量制御弁33および対応する制御可能な流量制御弁43は概して、図2および図3の例示的な実施形態に関して記載の弁33、43と同様に制御される。このため、制御可能な流量制御弁33および対応する制御可能な流量制御弁43は、第1および第2の燃料電池システム30、40のいずれか一方の動作状態に基づいて一体的に動作可能である。また、図4のシステム20は、制御ユニット90により制御される。したがって、図2および図3に関して前述した通り、制御ユニット90は、弁33、43を制御するように構成されている。
【0135】
一例として、図示はしていないものの、空気貯蔵タンク64は、当該空気貯蔵タンク64に貯蔵された圧縮空気が高高度および/または大電力需要時において用いられ、当該空気貯蔵タンク64から圧縮機32、42へと案内され得るように、圧縮機32、42の入口31a、41aのいずれか一方と流体連通して配置されているのが好ましい。圧縮機32、42からの圧縮空気123は一般的に、空気貯蔵タンク64に送達されて貯蔵されることにより、たとえば燃料電池37、47からの大電力が要求される高高度において使用されるようになっていてもよい。したがって、空気貯蔵タンクの出口64bは、圧縮空気で動作し得る1つまたは複数の装置(図示せず)に接続されていてもよい。また、これにより、車両のバッテリ/エネルギー貯蔵システムのサイズを大きくすることなく、エネルギーをより効率的に回収可能となり得る。
【0136】
以上から、図2図4に示すように、図1の車両10用のシステム20が提供される。システム20は、少なくとも第1の燃料電池システム30および第2の燃料電池システム40を備える。第1の燃料電池システム30は、少なくとも1つの燃料電池37および空気圧縮機32を備える。空気圧縮機32は、第1の燃料電池システム30のカソード側に配設され、少なくとも1つの燃料電池37の上流に配置されている。さらに、第1の燃料電池システム30は、少なくとも1つの燃料電池のいずれか1つへの圧縮空気を制御するように構成された制御可能な流量制御弁33と、制動抵抗器62(図3)もしくは空気貯蔵タンク64(図4)等の圧縮空気装置ならびに排気口60(図2)のいずれか一方に接続された別個の流体管路39とを備える。
【0137】
さらに、第2の燃料電池システム40は、少なくとも1つの対応する燃料電池47および対応する空気圧縮機42を備える。対応する空気圧縮機42は、第2の燃料電池システム40のカソード側に配設され、少なくとも1つの対応する燃料電池47の上流に配置されている。第2の燃料電池システム40は、少なくとも1つの対応する燃料電池のいずれか1つへの圧縮空気を制御するように構成された対応する制御可能な流量制御弁43と、制動抵抗器62(図3)もしくは空気貯蔵タンク64(図4)等の圧縮空気装置ならびに排気口60(図2)のいずれか一方に接続された対応する別個の流体管路49とをさらに備える。この背景において、圧縮空気装置は、圧縮空気の利用および/または圧縮空気の貯蔵を行うように構成された構成要素またはシステムを表す。制動抵抗器は、圧縮空気を冷却目的で使用する。すなわち、圧縮空気は、動作時に制動抵抗器を冷却するために供給される。空気貯蔵タンクは、圧縮空気を貯蔵するように構成されている。空気圧装置等の他の圧縮空気装置も考えられる。
【0138】
また、制御可能な流量制御弁33および対応する制御可能な流量制御弁43は、第1および第2の燃料電池システム30、40のいずれか一方の動作状態に応じて動作可能である。
【0139】
図2図4には示していないものの、システム20は、制御ユニット90およびシステム20に対する別の制御データを提供する1つまたは複数の温度センサおよび圧力センサを備え得ることも容易に理解されよう。システム20におけるこのようなセンサの適用は一般的に、当技術分野において通常知られるように、燃料電池システムおよび車両の種類を考慮して提供および構成される。また、燃料電池システムは、燃料電池または燃料電池のハウジングに温度センサを含んでいてもよい。これにより、燃料電池の温度レベルを決定可能である。また、制動抵抗器の精密な冷却制御を可能にするため、抵抗器に温度センサが配置されていてもよい。
【0140】
図5に示すように、システム20の制御ユニット90は、以下の動作に従って方法300を実現するように構成されている。この方法は一般的に、制御ユニット90の処理回路により実現されるようになっていてもよい。そこで、以下では、たとえば車両10の回生制動事象により生成された過剰なエネルギーを消散させるための車両10に対する制動エネルギー管理手順(システム10に対する方法の多くの動作を含む)の一例を参照する。
【0141】
方法300は、車両10のシステム20の制御を意図する。この方法は、第1および第2の燃料電池システムのいずれか一方の動作状態を示す制御信号を受信するステップS10を含む。また、この方法は、第1および第2の燃料電池システムのいずれか一方の動作状態に基づいて制御可能な弁33および対応する制御可能な弁43を一体的に動作させるステップS20を含む。したがって、制御ユニット90は、制御可能な弁33および対応する制御可能な弁43と連通するように構成されている。
【0142】
この方法では、本明細書に記載の通り、制御ユニット90によって複数の異なる方法でシステム20および弁33、43を制御可能である。
【0143】
また、制御ユニット90は、車両10の燃料電池システム30、40、燃料電池37、47、圧縮機32、42、空冷式制動抵抗器および空気貯蔵タンク64等のその他任意の構成要素のような圧縮空気装置と連通していてもよい。一例として、制御ユニット90は、制御可能な弁33、43の1つもしくは複数の弁位置、燃料電池37、47のFC負荷、圧縮機32、42の速度、制動力、ならびに任意選択として空冷式制動抵抗器62の電流および温度等の圧縮空気装置を制御するように構成されている。
【0144】
制御ユニット90は同様に、車両の動作モードおよび車両10からの電力需要のいずれか一方に応じて、これらの構成要素を制御するように構成されていてもよい。
【0145】
また、制御ユニット90は、燃料電池システム30、40の作動状態を示す受信制御信号に応じて前述の弁33、43のいずれか一方を制御するように動作可能であってもよい。前述の弁はそれぞれ、車両の動作モードに応じた制御ユニット90による協調制御が可能であってもよい。そこで、制御ユニット90は、制御信号に基づいて制御可能な弁33、43を制御するように、制御可能な弁33、43と連通して構成されている場合、別の車両制御システムにも接続されて、たとえば車両の現在の動作モードを示す信号を受信するようにしてもよい。
【0146】
システム20の例示的な一動作によれば、制御ユニット90は、過剰な電気エネルギーの消散に対する決定された必要性に応じて、弁33、43の制御により、空冷式制動抵抗器62等の圧縮空気装置に圧縮空気を案内するように構成されており、さらに、燃料電池システム30、40のうちの1つまたは複数の燃料電池システム負荷の変化に応じて、弁33、43のうちの1つまたは複数を制御することにより、燃料電池37、47への圧縮空気の分配のレベルを変更するように構成されている。この背景において、燃料電池システム負荷の変化は、低負荷から中負荷、中負荷から高負荷、高負荷から中負荷、中負荷から低負荷、高負荷から低負荷、および/または低負荷から高負荷への変化を表し得る。
【0147】
一例として、車両10が制動動作を実行し、空冷式制動抵抗器62等の圧縮空気装置を介したエネルギーの消散または圧縮空気装置へのエネルギーの消散にシステム20が用いられる場合、燃料電池システム30、40の燃料電池37、47は通常、アイドル状態または最小電力を生成する状態で動作する。すなわち、燃料電池は一般的に、空気圧縮機32、42からの低流量および低圧力の需要しか受け得ない。同時に、すなわち、所与の制動動作においては一般的に、高流量および高圧の圧縮空気が抵抗器の冷却に望ましい。したがって、制御ユニット90は、弁33、43の一体制御により、所与の制動要求および燃料電池37、47の燃料電池負荷に従って圧縮空気を分配するように動作する。ただし、車両10の通常の動作においては、制動抵抗器62において電気エネルギーが消散されないため、空気圧縮機32、42から制動抵抗器62に圧縮空気123が流れる必要はない。上記は、制御ユニット90が弁33、43の制御によって、制動抵抗器62等の圧縮空気装置および燃料電池37、47に圧縮空気123を分配し得る方法に関する多くの選択肢のうちの一例に過ぎない。
【0148】
燃料電池システムそれぞれに必要な圧縮空気の量は、ルックアップテーブルおよび/または制御ユニット90に格納された他のモデルにより、たとえば電力需要(現在または予測)に基づいて決定される。所与の燃料電池システムに必要な圧縮空気の量を制動事象により生成される予測過剰エネルギーと比較することにより、制御ユニット90は、システムにおいて吸収する必要があるエネルギーのレベルを決定するように構成されている。
【0149】
その後、燃料電池システムに対して決定された圧縮空気の必要量および上記比較に基づいて、制御ユニット90は、過剰な電気エネルギーを用いることにより、圧縮機の一方(または、両方)を昇圧させるように制御する。圧縮機の昇圧により生成される過剰な空気流は、圧縮空気装置および排気へと案内可能である。このため、弁33、43は、燃料電池システムおよび圧縮空気装置への供給が必要な圧縮空気の推定所要量に応じて制御される。言い換えると、制御ユニット90は、燃料電池システムの現在/予測電力需要に基づくとともに、燃料電池システムの圧縮機による吸収が必要な制動エネルギーの量を考慮して、弁33、43を制御するように構成されている。
【0150】
制御ユニットは、燃料電池システム負荷を示すデータに基づいて、燃料電池37、47への圧縮空気123の分配を優先させるように構成されているのが好ましい。
【0151】
一例として、弁33、43は、燃料電池システム負荷が閾値を上回る(たとえば、中負荷を示す)場合に、生成された圧縮空気の相当量を燃料電池37、47に分配した後、残った生成圧縮空気123を空冷式制動抵抗器62または空気貯蔵タンク64等の圧縮空気装置に分配するように、制御ユニット90によって一体制御される。なお、圧縮空気123を空冷式制動抵抗器62に分配する必要性は一般的に、制動抵抗器が作動していて冷却を要する場合にのみ存在し得る。
【0152】
また、制御ユニット90は、空気圧縮機32、42の最大動作状態を決定し、空気圧縮機32、42がその最大動作状態に達した場合には、空冷式制動抵抗器62等の圧縮空気装置への圧縮空気123の分配を減らすように、弁33、43を一体制御するように構成されている。
【0153】
上記の追加または代替として、制御ユニット90は、制御信号が非制動要求ならびに予測もしくは現在の燃料電池システム負荷を示す場合に、圧縮空気123を燃料電池37、47のみに分配するように弁33、43を一体制御することによって、空冷式制動抵抗器62等の圧縮空気装置および燃料電池37、47への圧縮空気123の分配を制御するように構成されている。この状況において、空気圧縮機32、42は、決定された燃料電池システム負荷に基づいて、圧縮空気123を燃料電池37、47のみに分配するように動作する。
【0154】
上記の追加または代替として、制御ユニット90は、制御信号が制動要求および燃料電池システム30、40の無負荷を示す場合に、圧縮空気123を制動抵抗器62等の圧縮空気装置のみに分配するように弁33、43を制御することによって、空冷式制動抵抗器62等の圧縮空気装置および燃料電池37、47への圧縮空気123の分配を制御するように構成されている。この状況において、空気圧縮機は、決定された制動要求に基づいて、圧縮空気123を制動抵抗器62等の圧縮空気装置のみに分配するように動作する。
【0155】
また、制御ユニット90は、制御信号が非制動要求および燃料電池システム無負荷を示す場合に、空気圧縮機32、42を停止させるように構成されているのが好ましい。
【0156】
上記説明において、燃料電池システムのさまざまな状態および負荷すなわち高負荷、中負荷、低負荷、および無負荷は一般的に、閾値レベルの使用により決定されることに留意されたい。このような閾値レベルとしては、予め定められた閾値も可能であるし、動的に規定された閾値も可能である。一例として、このような閾値レベルは、制御ユニット90のメモリに格納されたルックアップテーブルから導出可能となり得る。また、車両、システム、および制御システムの種類に応じて、他の選択肢も考えられる。
【0157】
制御ユニット90は一般的に、処理回路92を備える。言い換えると、制御ユニット90の処理回路92は、車両10から制御信号を受信するように構成されている。制御信号は、車両の制動要求による電気エネルギーをシステム20から消散させるリクエストを示す。一例として、車両10の動作時、制御ユニット90の制御回路92は、制動時に発電機モードで動作する電動トラクション機械がそれ以上の電力をバッテリに供給するのに適していないと考えられることから、車両に対する電気エネルギー消散のレベルすなわち制動抵抗器から消散すべき電気エネルギーのレベルを決定する。したがって、電気エネルギー消散のレベルは、回生制動時に生成された電気エネルギーのレベルとバッテリの現在の充電容量との差と考えられる。電動トラクション機械82が電力消散のレベルに対応する電気エネルギーを処理可能すなわち受電して動作可能である場合は、過剰な全電力すなわちバッテリの充電用に供給されなかった生成電力が第1および第2の燃料電池システム30、40の電気モータ32a、42aに供給され得る。
【0158】
制御ユニット90は、たとえば車両10に備えられた電子制御ユニット(ECU)であってもよい。制御ユニット90は一般的に、処理回路、制御回路等を備える。ただし、制御ユニット90は同様に、多数の副制御ユニット(図示せず)により与えられていてもよく、制御ユニットはそれぞれ一般的に、対応する制御回路、プロセッサ等を備え得る。制御ユニット90は、データもしくは信号処理の実行またはメモリに格納されたコンピュータコードの実行のための1つまたは複数のハードウェアコンポーネントを具備していてもよい。メモリは、本明細書に記載のさまざまな方法の遂行または容易化のためのデータおよび/またはコンピュータコードを格納する1つまたは複数のデバイスであってもよい。メモリには、揮発性メモリまたは不揮発性メモリを含んでいてもよい。メモリには、データベースコンポーネント、オブジェクトコードコンポーネント、スクリプトコンポーネント、または本明細書のさまざまな動作を補助するためのその他任意の種類の情報構造を含んでいてもよい。例示的な一実施形態によれば、本明細書のシステムおよび方法には、任意の分散型またはローカルメモリデバイスが利用され得る。例示的な一実施形態によれば、メモリは、(たとえば、回路またはその他任意の有線、無線、もしくはネットワーク接続を介して)処理回路、制御回路、またはプロセッサに対して通信可能に接続されるとともに、本明細書に記載の1つまたは複数のプロセスを実行するためのコンピュータコードを含む。制御ユニット90は、当技術分野において通常知られるように、有線または無線ネットワークによって、たとえば弁33、43および圧縮機32、42を含むシステム20の構成要素と通信可能である。
【0159】
制御可能な弁33、43はそれぞれ、流体用の制御弁の分野において通常知られるように、弁アクチュエータに対応するソレノイドにより作動されるのが好ましい。ただし、制御ユニット90からの制御信号に応じた制御可能な弁の電気的、空気圧的、および油圧的な作動等、多くの種類の作動が利用可能である。
【0160】
上述のシステム20によれば、電気エネルギーの消散を管理するための動的でありながら効率的かつ汎用的な方法を提供可能となる。一例として、弁33、43を備えたシステム20は、圧縮機32、42から、圧縮空気装置62、64(たとえば、制動抵抗器および/もしくは空気貯蔵タンク)ならびに/または排気管60に圧縮空気123を分配する動的制御への寄与によって、各燃料電池システム30、40の燃料電池37、47の適切な動作を保証しつつ、過剰な電気エネルギーをより良好に管理する。これは、燃料電池システム30、40の予測される負荷および/または現在の負荷に基づいて、圧縮空気123を燃料電池37、47に供給することにより、少なくとも部分的に提供される。特に、第1および第2の燃料電池システムのいずれか一方の動作状態に基づいて弁33、43を動作させることにより、対応する圧縮機のうちの1つ(たとえば、圧縮機32)が圧縮空気123を対応する少なくとも1つの燃料電池(たとえば、燃料電池37)に供給し、別の圧縮機(たとえば、圧縮機42)が圧縮空気123を圧縮空気装置62、64/排気口60のいずれか一方に供給するように、制御可能な弁33、43が圧縮空気123の供給を制御可能となる。
【0161】
また、システム20によれば、車両のバッテリ/エネルギー貯蔵システムのサイズを大きくすることなく、エネルギーをより効率的に回収可能となり得る。このため、少なくとも1つの実施形態によれば、圧縮機32、42は、制動事象による制動エネルギーの回収によって動作するように構成されている。このため、圧縮機32、42はそれぞれ、制動事象により生成されたエネルギーを吸収するように構成されている。
【0162】
本開示は、上述するとともに図面に示した実施形態に限定されないことが了解されるものとする。むしろ、当業者であれば、添付の特許請求の範囲内において多くの変更および改良が可能であることが認識されよう。一例として、図面には、デュアル燃料電池システムを備えたシステムを示しているが、このシステムは、第1および第2の燃料電池システムの1つに係る付加的な燃料電池システムを具備していてもよく、燃料電池システムがそれぞれ、別個の管路、排気口、圧縮空気装置、制動抵抗器、空気貯蔵タンク、空気圧装置等に接続可能であってもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
【外国語明細書】