(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134378
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】油性化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/37 20060101AFI20230920BHJP
A61K 8/891 20060101ALI20230920BHJP
A61K 8/29 20060101ALI20230920BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20230920BHJP
A61K 8/25 20060101ALI20230920BHJP
A61Q 1/12 20060101ALI20230920BHJP
A61Q 1/08 20060101ALI20230920BHJP
A61Q 1/04 20060101ALI20230920BHJP
A61Q 1/10 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
A61K8/37
A61K8/891
A61K8/29
A61K8/19
A61K8/25
A61Q1/12
A61Q1/08
A61Q1/04
A61Q1/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028263
(22)【出願日】2023-02-27
(31)【優先権主張番号】P 2022038805
(32)【優先日】2022-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】591147339
【氏名又は名称】株式会社トキワ
(72)【発明者】
【氏名】河野 隼人
(72)【発明者】
【氏名】阿部山 早紀
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA082
4C083AA122
4C083AB171
4C083AB172
4C083AB211
4C083AB212
4C083AB231
4C083AB232
4C083AB241
4C083AB242
4C083AB332
4C083AB431
4C083AB432
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC242
4C083AC302
4C083AC342
4C083AC371
4C083AC372
4C083AC392
4C083AC402
4C083AC422
4C083AC441
4C083AC442
4C083AC661
4C083AC662
4C083AC862
4C083AD022
4C083AD042
4C083AD151
4C083AD152
4C083AD161
4C083AD162
4C083AD242
4C083BB04
4C083BB14
4C083BB21
4C083CC11
4C083CC12
4C083CC13
4C083CC14
4C083DD30
4C083DD32
4C083EE01
4C083EE06
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】 分岐状、または、鎖状の揮発性シリコーン油を含みつつ、保存安定性がよく、沈降しても再び分散しやすく、速乾性に優れ、べたつきのない使用感を得ることができる油性化粧料を提供すること。
【解決手段】 本発明の油性化粧料は、(A)分岐状、または、鎖状の揮発性シリコーン油、(B)リンゴ酸ジイソステアリル、及び(C)顔料、を含み、(B)成分の含有量が、油性化粧料を基準として、1~40質量%である。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)分岐状、または、鎖状の揮発性シリコーン油、(B)リンゴ酸ジイソステアリル、(C)粉体、を含む油性化粧料であって、
前記(B)成分の含有量が、油性化粧料の全量を基準として、1~40質量%である、油性化粧料。
【請求項2】
前記(A)成分として、メチルトリメチコンを含む、請求項1に記載の油性化粧料。
【請求項3】
(D)HLB8未満の非イオン性界面活性剤をさらに含む、請求項1または2に記載の油性化粧料。
【請求項4】
前記(C)成分として、(C1)紫外線散乱剤を含み、
前記(D)成分として、(D1)分岐状ポリエーテル変性シリコーンを含む、請求項1または2に記載の油性化粧料。
【請求項5】
(A)分岐状、または、鎖状の揮発性シリコーン油、(B)リンゴ酸ジイソステアリル、(C)粉体、及び(E)水、を含む、油性化粧料であって、
前記(B)成分の含有量が、油性化粧料中の油相成分の全量を基準として、1~40質量%である、油性化粧料。
【請求項6】
前記(A)成分として、メチルトリメチコンを含む、請求項5に記載の油性化粧料。
【請求項7】
(D)HLB8未満の非イオン性界面活性剤をさらに含む、請求項5または6に記載の油性化粧料。
【請求項8】
前記(C)成分として、(C1)紫外線散乱剤を含み、
前記(D)成分として、(D1)分岐状ポリエーテル変性シリコーンを含む、請求項5または6に記載の油性化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油性化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
液状のチーク、ファンデーション、ハイライター等の油性化粧料は、密着感がある一方で、油性成分中の不揮発性油によるべたつき感がある。そこで揮発性シリコーン油を油性化粧料に配合すると、軽い感触が得られることから、揮発性シリコーン油は多くの化粧料に用いられている。
【0003】
揮発性シリコーン油は、デカメチルシクロペンタシロキサン等の環状構造や、メチルトリメチコン等の分岐状構造、ジメチルポリシロキサン等の鎖状構造がある。中でも環状構造のジメチルシロキサンはなめらかで軽やかな感触を実現する揮発性の油で、従来から多用されている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-201701号公報
【特許文献2】特開2004-300095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、環状構造の揮発性シリコーン油は環境下で分解されず環境への影響が懸念されている。そこで分岐構造や鎖状構造の揮発性シリコーン油への期待が高まっているが、これらは環状構造より分子量が小さいため、比重が小さく、揮発速度が早いことから、顔料や紫外線散乱剤等の粉体を含む化粧料において、分離しやすい、あるいは分離沈降した粉体の再分散が困難であるといった課題があった。低粘度の化粧料ではその傾向がより顕著である。
【0006】
そこで本発明は、分岐状、または、鎖状の揮発性シリコーン油を配合した油性化粧料において、保存安定性がよく、沈降しても再び分散しやすく、速乾性に優れ、べたつきのない使用感を得ることができる油性化粧料の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、(A)分岐状、または、鎖状の揮発性シリコーン油、(B)リンゴ酸ジイソステアリル、(C)粉体、を含む油性化粧料であって、(B)成分の含有量が、油性化粧料の全量を基準として、1~40質量%である、油性化粧料を提供する。
【0008】
また、本発明は、(A)分岐状、または、鎖状の揮発性シリコーン油、(B)リンゴ酸ジイソステアリル、(C)粉体、及び(E)水、を含む、油性化粧料であって、前記(B)成分の含有量が、油性化粧料中の油相成分の全量を基準として、1~40質量%である、油性化粧料を提供する。
【0009】
本発明の油性化粧料は、上記構成を有することにより、保存安定性がよく、沈降や分離しても再分散しやすく、速乾性に優れ、べたつきのない使用感を得ることができる。
【0010】
本発明の油性化粧料は、前記(A)がメチルトリメチコンであってもよい。
【0011】
本発明の油性化粧料は、(D)HLB8未満の界面活性剤を含んでいてもよい。
【0012】
本発明の油性化粧料は、(C)成分として、(C1)紫外線散乱剤を含み、(D)成分として、(D1)分岐状ポリエーテル変性シリコーンを含んでいてもよい。
【0013】
本発明の油性化粧料は、(E)水を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、保存安定性がよく、沈降しても再分散しやすく、速乾性に優れ、べたつきのない使用性を得ることができる油性化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の第一の実施形態の油性化粧料は、(A)分岐状、または、鎖状の揮発性シリコーン油(以下、(A)成分という場合もある)と、(B)リンゴ酸ジイソステアリル(以下、(B)成分という場合もある)と、(C)粉体(以下、(C)成分という場合もある)と、を含む。
【0016】
本発明の第二の実施形態の油性化粧料は、(A)成分と、(B)成分と、(C)成分と、(E)水(以下、(E)成分という場合もある)とを含む。
【0017】
本発明において、揮発性とは、1気圧(101.325kPa)における沸点が250℃以下の油剤を意味する。
【0018】
(A)成分の分岐状、または、鎖状の揮発性シリコーン油は、通常化粧料に用いられるものであれば、特に制限なく用いることができ、メチルトリメチコン等の分岐状シリコーンや、メチルポリシロキサン(0.65~5cs)等の鎖状シリコーンが挙げられる。その中でも、速乾性の観点から、メチルトリメチコンが好ましい。
【0019】
(A)成分の含有量は、油性化粧料全量を基準として、5~40質量%であってもよく、 7~30質量%であってもよく、速乾性と伸びの良さを両立する点から10~25質量%であってもよい。
【0020】
(B)成分のリンゴ酸ジイソステアリルは、リンゴ酸とイソステアリルアルコールとのジエステルである。市販品としては、コスモール222(日清オイリオグループ社製)、エステロールDISM(ナショナル美松社製)、ハイマレートDIS(高級アルコール工業社製)等が挙げられる。
【0021】
第一の実施形態の油性化粧料における(B)成分の含有量は、油性化粧料全量を基準として、1~40質量%であってもよく、保存安定性と使用性を両立する観点から、2~35質量%であってもよく、5~30質量%であってもよい。第二の実施形態の油性化粧料における(B)成分の含有量は、油性化粧料中の油相成分の全量を基準として、1~40質量%であってもよく、保存安定性と使用性を両立する観点から、2~35質量%であってもよく、5~30質量%であってもよい。これらの実施形態において、粘度の低い油性化粧料であっても、(B)成分を含むことにより粉体が沈降しにくく、沈降しても容易に再分散することができる。
【0022】
(C)成分の粉体は、通常、化粧料に用いられるものであれば、特に制限なく用いることができ、着色顔料、体質粉体、紫外線散乱剤等が挙げられる。粉末の形状についても特に限定されず、球状、板状、針状等の形状であってもよく、不定形、煙霧状、微粒子であってもよく、多孔質、無孔質等の粒子構造を有していてもよい。
【0023】
着色顔料としては、黒酸化鉄、ベンガラ、黄酸化鉄、酸化コバルト、酸化クロム、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック等の無機性着色顔料、赤色228号、赤色226号、青色404号、赤色202号、黄色4号アルミニウムレーキ等の有機性着色顔料、雲母チタン、魚鱗箔、オキシ塩化ビスマス、ガラス末等のパール顔料、カルミン、ベニバナ等の天然色素が挙げられる。
【0024】
体質粉体としては、無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、マイカ、合成マイカ、合成セリサイト、セリサイト、タルク、カオリン、炭化珪素、硫酸バリウム、アミノ酸系有機粉体等の体質顔料、架橋型ポリメチルメタクリレート、ナイロン、シリコーンエラストマー等の球状粉体等が挙げられる。
【0025】
本実施形態の油性化粧料は、(C)成分として、(C1)紫外線散乱剤(以下、(C1)成分ともいう)を含有することができる。(C1)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
紫外線散乱剤としては、一次粒子径が0.01~0.1μmである酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウムなどの微粒子金属酸化物や、それらの凝集物や複合粉体が挙げられるが、これらに限定されない。ただし、微粒子金属酸化物について、一次粒子径が150nm以上である着色顔料は除かれる。凝集物は微粒子金属酸化物を化学結合により凝集させた粉体を示す。複合粉体は、アルミナ、マイカ、セリサイト等の板状粉体、シリカ、ナイロン粉体等の球状粉体を基材として、基材粉体表面や内部にこれらの微粒子金属酸化物を付着させた粉体等が挙げられる。凝集物や複合粉体の平均粒子径は、100nm~20μmであってもよい。
【0027】
(C)成分は、使用性や分散性等の向上を目的として、表面処理が施されていてもよい。表面処理としては、金属石鹸、シリコーン化合物、フッ素化合物、高級脂肪酸、アミノ酸化合物等が挙げられる。その中でもシリコーン化合物や高級脂肪酸で処理されていることが好ましい。
【0028】
(C)成分の含有量は、保存安定性や分散性の観点から、油性化粧料全量を基準として、5~40質量%であってもよく、保存安定性や分散性と、伸びの良さやムラのなさを両立する観点から、7~30質量%であってもよく、10~25質量%であってもよい。
【0029】
(C1)成分の含有量は、油性化粧料全量を基準として、5~30質量%であってもよく、7~25質量%であってもよく、10~20質量%であってもよい。
【0030】
本実施形態の油性化粧料は、上記(A)、(B)成分以外の油性成分として、通常、化粧料に用いられる油剤であれば、固形油、液状油、ペースト状油など、特に限定なく用いることができる。その他の油性成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
固形油としては、例えば、パラフィンワックス、セレシンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレン等の炭化水素類、硬化ヒマシ油(水添ヒマシ油)、水添ホホバ油、ヒマワリワックス、ライスワックス等の植物由来ワックス、ミツロウ、鯨蝋等の動物由来ワックス、トリベヘン酸グリセリル、コレステロール脂肪酸エステル等のエステル類、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール類、ステアリン酸、パルミチン酸等の高級脂肪酸類などが挙げられる。
【0032】
液状油としては、例えば、エチルヘキサン酸セチル、パルミチン酸エチルヘキシル、トリエチルヘキサノイン、イソノナン酸イソトリデシル、イソステアリン酸イソステアリル、ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジイソステアリン酸プロパンジオール、トリエチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、ミリスチン酸オクチルドデシル、ステアロイルオキシステアリン酸オクチルドデシル、トリイソステアリン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン等のエステル油類、ジメチコン、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコーン油類、流動パラフィン、オレフィンオリゴマー、スクワラン、水添ポリイソブテン等の炭化水素油類、ヒマワリ種子油、ホホバ種子油、オリーブ油、ヒマシ油等の植物油類、ステアリン酸、パルミチン酸、イソステアリン酸等の高級脂肪酸類、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、オレイルアルコール等の高級アルコール類等が挙げられる。
【0033】
ペースト状油としては、例えば、ワセリン、ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル、テトラ(ヒドロキシステアリン酸/イソステアリン酸)ジペンタエリスリチル、ペンタイソステアリン酸ジペンタエリスリチル、ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、トリ(カプリル酸/カプリン酸/ミリスチン酸/ステアリン酸)グリセリル、イソステアリン酸水添ヒマシ油、オレイン酸フィトステリル、ヘキサ(オレイン酸/パルミチン酸/ステアリン酸)スクロース、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルビス(ベヘニル/イソステアリル/フィトステリル)、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、ダイマージリノール酸水添ヒマシ油、マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリル、ビスジグリセリルポリアシルアジペート-2等が挙げられる。
【0034】
本実施形態の油性化粧料は、油性増粘剤を用いてもよい。油性増粘剤としては、ジメチコンクロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ジメチコン/フェニルビニルジメチコン)クロスポリマー、(ビニルジメチコン/ラウリルジメチコン)クロスポリマー、(ジメチコン/ビニルトリメチルシロキシケイ酸)クロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー等の部分架橋型オルガノポリシロキサン類、パルミチン酸デキストリン、(パルミチン酸/エチルヘキサン酸)デキストリン、ステアリン酸デキストリン、(パルミチン酸/ステアリン酸)デキストリン、オレイン酸デキストリン、イソパルミチン酸デキストリン、イソステアリン酸デキストリン等のデキストリン脂肪酸エステル類、ステアリン酸スクロース、酢酸ステアリン酸スクロース等のショ糖脂肪酸エステル、イヌリンステアレート、デンプン脂肪酸エステル、イソステアリン酸アルミニウム、ヒドロキシステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、ミリスチン酸アルミニウム、ミリスチン酸マグネシウム等の金属石鹸類、ジブチルエチルヘキサノイルグルタミド、ジブチルラウロイルグルタミドなどの油ゲル化剤や、モンモリロナイト、サポナイト、ベントナイト、およびヘクトライト等の天然又は合成モンモリロナイト群、およびジステアルジモニウムヘクトライト等の有機変性粘土鉱物が挙げられる。これらを1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
本実施形態の油性化粧料は、さらに、(D)HLB(親水親油バランス値)8未満の非イオン性界面活性剤(以下、(D)成分という場合もある)を含有することができる。(D)成分は、通常、化粧料に用いられるものであれば、特に限定なく用いることができ、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
(D)成分としては、例えば、ステアリン酸グリセリル(HLB3.0)等のグリセリン脂肪酸エステル、パルミチン酸ソルビタン(HLB6.7)、ステアリン酸ソルビタン(HLB4.7)、セスキステアリン酸ソルビタン(HLB4.2)、イソステアリン酸ソルビタン(HLB5.0)等のソルビタン脂肪酸エステル、ステアリン酸PEG-2(HLB4)、ジオレイン酸PEG-2~8(HLB3~6)等のポリエチレングリコール脂肪酸エステル、PEG-3~10ジメチコン(HLB4.5)、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(HLB4.0)、ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(HLB3.0)等のポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリル-3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(HLB4.5)等のポリグリセリン変性シリコーン等が挙げられる。
【0037】
本実施形態の油性化粧料は、(C1)成分の紫外線散乱剤の分散性をよくする観点から、(D)成分として、(D1)分岐状ポリエーテル変性シリコーン(以下、(D1)成分ともいう)を含有することができる。(D1)成分を含むと、低粘度領域の油性化粧料でも、保存安定性や再分散性、速乾性に優れ、ムラの無さやべたつきがない使用感を高水準で両立することができる。ここで、低粘度領域とは、後述する粘度測定において、100~10,000mPa・sの粘度を示す。
【0038】
(D1)成分としては、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(HLB4.0)、ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(HLB3.0)等が挙げられる。
【0039】
(D)成分は、HLBが1以上7未満であってもよく、2~6であってもよく、3~5であってもよい。
【0040】
HLB値は、「乳化・可溶化の技術」工学図書(株)(昭59-5-20)8~12頁に記載の計算式に基づいて求めることができる。また市販品のカタログ値を採用することもできる。
【0041】
(D)成分の含有量は、油性化粧料全量を基準として、1~10質量%であってもよく、3~6質量%であってもよい。また(D1)成分の含有量は、油性化粧料全量を基準として、1~4質量%であってもよい。
【0042】
本実施形態の油性化粧料は、さらに、(D)成分と(E)成分を含有して、油中水型乳化化粧料とすることができる。ここで油性とは、油中水型の乳化を含む。乳化化粧料にすることにより、べたつきをさらに軽減し、伸びをよくすることができる。
【0043】
(E)成分の含有量は、べたつきのなさの点から、化粧料全量を基準として、10~50質量%が好ましい。さらに、保存安定性や使用性の観点から、10~40質量%が好ましい。
【0044】
本実施形態の油性化粧料には、上記成分の他に目的に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で上記以外の成分を配合することができる。上記以外の粉体、(D)以外の界面活性剤、染料、保湿剤や低級アルコールなどの水性成分、防腐剤、酸化防止剤、増粘剤、pH調整剤、香料、保湿剤、皮膜剤などを使用目的に応じて適宜選択添加することができる。またこれら任意の成分はそれぞれ1種又は2種以上を選択して配合することが可能である。
【0045】
皮膜剤としては、例えば、トリメチルシロキシケイ酸、ポリアルキルシルセスキオキサン等が挙げられる。皮膜剤と粉体を含む油性化粧料は保存安定性が得られない場合があるが、本発明の(A)成分、(B)成分、(D)成分を組み合わせることにより、べたつかず化粧持ちをよくすることができ、保存安定性が好な油性化粧料を得ることができる。
【0046】
保湿剤としては、例えば、1,3-ブチレングリコール(BG)、ジプロピレングリコ
ール(DPG)、グリセリン、1,2-ペンタンジオール、ソルビトール、マンニトール
等の多価アルコールが挙げられる。
【0047】
低級アルコールとしては、例えば、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルア
ルコール、イソブチルアルコール等が挙げられる。
【0048】
本実施形態の油性化粧料は、通常の方法により製造することができ、その剤型としては、液状、固形状、半固形状、ゲル状等のいずれであってもよい。
【0049】
本実施形態の油性化粧料は、液状の場合、25℃における粘度が100~300,000mPa・sであってもよく、1000~200,000mPa・sであってもよく、2000~100,000mPa・sであってもよい。
【0050】
上記の粘度は、25℃の試料について、ブルックフィールド型粘度計(BM型)又はブ
ルックフィールド型粘度計(BH型)を用いて、下記の条件で測定した値を意味する。
50~500mPa・s:BM型、ローターNo.1、回転数12rpm
250~2,500mPa・s:BM型、ローターNo.2、回転数12rpm
1,000~10,000mPa・s:BM型、ローターNo.3、回転数12rpm
5,000~50,000mPa・s:BM型、ローターNo.4、回転数12rpm
50,000~400,000mPa・s:BH型、ローターNo.7、回転数10rpm
【0051】
本実施形態の油性化粧料は、油剤を連続相とする化粧料であり、用途としては、チーク、アイシャドウ、ファンデーション、口紅、コンシーラー、ハイライター、化粧下地、アイライナー、アイブロウマスカラ、マスカラなどのメークアップ化粧料、サンスクリーン(日焼け止め)などの身体用化粧料、ヘアワックス、ヘアカラーなどのヘアケア化粧料が挙げられる。
【実施例0052】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。また、表中の「微量」とは1質量%以下を意味する。
【0053】
実施例に先立ち、各実施例で採用した評価方法を説明する。
【0054】
[使用性]
速乾性、べたつきのなさ、伸びの良さ、ムラの無さの評価項目それぞれについて、10人の専門パネルによる使用性テストを行い、1~5点の5段階評価(1点が最も不良で、5点が最も良好である)の平均点を求め、下記評価基準に基づいて判定した。
<評価基準>
◎:平均点4.5点以上
○:平均点3.5点以上、4.5点未満
△:平均点1.5点以上、3.5点未満
×:平均点1.5点未満
【0055】
[保存安定性]
化粧料を室温で1ヶ月間保管した。保管後の化粧料の状態を目視にて確認し、下記の判
定基準に従って保存安定性を評価した。
<判定基準>
◎:変化なし
○:沈降や分離が見られるが、再分散が容易で保管前の状態と同等
×:不良(ケーキング等)
【0056】
[油性化粧料の粘度]
25℃の試料について、25℃の試料について、ブルックフィールド型粘度計(BM型)又はブルックフィールド型粘度計(BH型)を用いて、以下の条件で粘度を測定した。なお、測定時間は1分間とした。
50~500mPa・s:BM型、ローターNo.1、回転数12rpm
250~2,500mPa・s:BM型、ローターNo.2、回転数12rpm
1,000~10,000mPa・s:BM型、ローターNo.3、回転数12rpm
5,000~50,000mPa・s:BM型、ローターNo.4、回転数12rpm
50,000~400,000mPa・s:BH型、ローターNo.7、回転数10rpm
【0057】
(実施例1~3、比較例1、2)
<製法>
表1に示される(A)成分以外の成分を、同表中に示す割合(質量%)で、90~100℃で加熱溶解し、ディスパーにて混合した後、(A)成分を添加混合し、脱気して、油性化粧料をそれぞれ得た。
【0058】
(実施例4~7)
<製法>
表2に示される成分を同表中に示す割合(質量%)で、油相成分と水相成分をそれぞれディスパーにて混合した後、水相成分を、予め80~90℃に加温しておいた油相成分に添加し乳化を行い、油性化粧料(油中水型)をそれぞれ得た。
【0059】
なお、表1、2に示される各成分の詳細は、下記のとおりである。
部分架橋型オルガノポリシロキサン:「KSG-16」(商品名、信越化学工業社製)
微粒子酸化チタン-シリカ複合粉体:「SUNSIL-Tin50」(商品名、リンデン社製、粒径4μm、酸化チタン粒子内包シリカ)
ジメチコン処理微粒子亜鉛-セリサイト複合粉体:「SA-Powder La Vie」(商品名、三好化成社製、粒径10μm、シリコーン処理酸化亜鉛・ヒドロキシアパタイト被覆セリサイト)
【0060】
【0061】
【0062】
(実施例8:ハイライター(油中水型))
(成分) (配合割合(質量%))
1.メチルトリメチコン 12.5
2.リンゴ酸ジイソステアリル 10.0
3.PEG-10ジメチコン(HLB4.0) 4.0
4.部分架橋型オルガノポリシロキサン 10.0
5.ジメチコン処理黄酸化鉄 0.2
6.ジメチコン処理ベンガラ 0.2
7.ジメチコン処理雲母チタン 10.0
8.ジメチコン処理シリカ 6.0
9.ジメチコン処理マイカ 0.2
10.酸化防止剤 微量
11.1,3-ブチレングリコール 8.0
12.塩化Na 1.2
13.クエン酸Na 0.2
14.水 37.0
15.防腐剤 0.5
上記成分4の詳細は、すでに上述したものと同様である。
【0063】
<製法>
成分1~10の油相成分をディスパーにて混合し、成分11~15の水相成分をディスパーにて混合した後、水相成分を、予め80~90℃に加温しておいた油相成分に添加し乳化を行い、ハイライター(油中水型)を得た。
【0064】
<評価>
得られたハイライターについて、上記同様の評価を行ったところ、速乾性については「◎」、べたつきのなさについては「○」、伸びの良さについては「◎」、ムラの無さについては「◎」、保存安定性については「○」、粘度は6,500mPa・sの評価であった。
【0065】
(実施例9:口紅(油中水型))
(成分) (配合割合(質量%))
1.メチルトリメチコン 12.0
2.リンゴ酸ジイソステアリル 9.5
3.イソステアリン酸ソルビタン(HLB5.0) 0.8
4.PEG-10ジメチコン(HLB4.0) 3.5
5.ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール 1.0
6.部分架橋型オルガノポリシロキサン 12.0
7.ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 3.0
8.ジステアルジモニウムヘクトライト 0.8
9.ジメチコン処理黄酸化鉄 1.5
10.ジメチコン処理酸化チタン 0.1
11.ジメチコン処理シリカ 2.5
12.赤226 0.8
13.ラウロイルリシン 4.5
14.酸化防止剤 微量
15.1,3-ブチレングリコール 5.0
16.グリセリン 2.0
17.塩化Na 0.5
18.水 40.0
19.防腐剤 0.5
上記成分6の詳細は、すでに上述したものと同様である。
【0066】
<製法>
成分1~14の油相成分をディスパーにて混合し、成分15~19の水相成分をディスパーにて混合した後、水相成分を、予め80~90℃に加温しておいた油相成分に添加し乳化を行い、口紅(油中水型)を得た。
【0067】
<評価>
得られた口紅について、上記同様の評価を行ったところ、速乾性については「◎」、べたつきのなさについては「○」、伸びの良さについては「○」、ムラの無さについては「◎」、保存安定性については「◎」、粘度は20,000mPa・sの評価であった。
【0068】
(実施例10:アイシャドウ(油中水型))
(成分) (配合割合(質量%))
1.メチルトリメチコン 9.5
2.リンゴ酸ジイソステアリル 7.5
3.イソステアリン酸ソルビタン(HLB5.0) 0.8
4.PEG-10ジメチコン(HLB4.0) 4.0
5.ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール 2.5
6.部分架橋型オルガノポリシロキサン 2.0
7.ジメチコン(6cs) 2.0
8.ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 3.0
9.ジステアルジモニウムヘクトライト 0.8
10.ジメチコン処理黒酸化鉄 1.7
11.ジメチコン処理黄酸化鉄 0.3
12.ジメチコン処理ベンガラ 0.4
13.ジメチコン処理雲母チタン 14.0
14.ジメチコン処理シリカ 1.0
15.ラウロイルリシン 4.5
16.酸化防止剤 微量
17.1,3-ブチレングリコール 4.0
18.グリセリン 3.0
19.塩化Na 0.5
20.水 38.0
21.防腐剤 0.5
上記成分6の詳細は、すでに上述したものと同様である。
【0069】
<製法>
成分1~16の油相成分をディスパーにて混合し、成分17~21の水相成分をディスパーにて混合した後、水相成分を、予め80~90℃に加温しておいた油相成分に添加し乳化を行い、アイシャドウ(油中水型)を得た。
【0070】
<評価>
得られたアイシャドウについて、上記同様の評価を行ったところ、速乾性については「◎」、べたつきのなさについては「◎」、伸びの良さについては「◎」、ムラの無さについては「◎」、保存安定性については「◎」、粘度は25,000mPa・sの評価であった。
【0071】
(実施例11:チーク(油中水型))
(成分) (配合割合(質量%))
1.メチルトリメチコン 10.0
2.リンゴ酸ジイソステアリル 1.0
3.セスキイソステアリン酸ソルビタン(HLB4.0) 1.5
4.PEG-10ジメチコン(HLB4.0) 4.0
5.ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール 3.5
6.ペンチレングリコール 1.5
7.部分架橋型オルガノポリシロキサン 3.5
8.ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 6.4
9.ジステアルジモニウムヘクトライト 1.3
10.ジメチコン処理雲母チタン 5.6
11.ジメチコン処理ベンガラ被覆雲母チタン 1.4
12.ジメチコン処理マイカ 0.8
13.PMMA 5.3
14.酸化防止剤 微量
15.1,3-ブチレングリコール 10.0
16.グリセリン 3.0
17.塩化Na 0.5
18.クエン酸Na 0.2
19.水 40.5
上記成分7の詳細は、すでに上述したものと同様である。
【0072】
<製法>
成分1~14の油相成分をディスパーにて混合し、成分15~19の水相成分をディスパーにて混合した後、水相成分を、予め80~90℃に加温しておいた油相成分に添加し乳化を行い、チーク(油中水型)を得た。
【0073】
<評価>
得られたチークについて、上記同様の評価を行ったところ、速乾性については「◎」、べたつきのなさについては「◎」、伸びの良さについては「◎」、ムラの無さについては「◎」、保存安定性については「◎」、粘度は25,000mPa・sの評価であった。
【0074】
(実施例12:コンシーラー(油中水型))
(成分) (配合割合(質量%))
1.メチルトリメチコン 7.0
2.リンゴ酸ジイソステアリル 6.0
3.イソステアリン酸ソルビタン(HLB5.0) 0.8
4.PEG-10ジメチコン(HLB4.0) 3.5
5.ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール 2.0
6.部分架橋型オルガノポリシロキサン 5.0
7.ジメチコン(6cs) 11.0
8.ジステアルジモニウムヘクトライト 1.0
9.ジメチコン処理黄酸化鉄 1.0
10.ジメチコン処理酸化チタン 8.0
11.ジメチコン処理ベンガラ 0.4
12.ジメチコン処理雲母チタン 8.0
13.ジメチコン処理シリカ 0.5
14.酸化防止剤 微量
15.1,3-ブチレングリコール 5.0
16.ジプロピレングリコール(DPG) 2.0
17.塩化Na 0.3
18.水 38.0
19.防腐剤 0.5
上記成分6の詳細は、すでに上述したものと同様である。
【0075】
<製法>
成分1~14の油相成分をディスパーにて混合し、成分15~19の水相成分をディスパーにて混合した後、水相成分を、予め80~90℃に加温しておいた油相成分に添加し乳化を行い、コンシーラー(油中水型)を得た。
【0076】
<評価>
得られたコンシーラーについて、上記同様の評価を行ったところ、速乾性については「◎」、べたつきのなさについては「◎」、伸びの良さについては「◎」、ムラの無さについては「◎」、保存安定性については「◎」、粘度は23,000mPa・sの評価であった。
【0077】
(実施例13:アイブロウマスカラ(固形状))
(成分) (配合割合(質量%))
1.メチルトリメチコン 39.0
2.リンゴ酸ジイソステアリル 10.0
3.トリメチルシロキシケイ酸 12.0
4.ポリエチレン 10.0
5.ミツロウ 5.0
6.イソステアリン酸ソルビタン(HLB5.0) 1.0
7.ジオレイン酸PEG-8(HLB6.0) 1.5
8.(パルミチン酸/エチルヘキサン酸)デキストリン 5.0
9.黒酸化鉄 1.0
10.黄酸化鉄 2.0
11.酸化チタン 1.5
12.ベンガラ 2.0
13.合成金雲母 6.0
14.ジステアルジモニウムヘクトライト 4.0
15.消泡剤 微量
16.酸化防止剤 微量
【0078】
<製法>
成分2~16を、90~100℃で加熱溶解し、ディスパーにて混合した後、成分1を添加混合し、脱気して、アイブロウマスカラを得た。また、表中の「微量」とは1質量%以下を意味する。
【0079】
<評価>
得られたアイブロウマスカラについて、上記同様の評価を行ったところ、速乾性については「◎」、べたつきのなさについては「○」、伸びの良さについては「○」、ムラの無さについては「◎」、保存安定性については「◎」の評価であった。