(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134384
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】中空繊維の製造方法
(51)【国際特許分類】
D01F 6/04 20060101AFI20230920BHJP
D01F 6/00 20060101ALI20230920BHJP
D01F 6/62 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
D01F6/04 C
D01F6/00 B
D01F6/62 303E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033577
(22)【出願日】2023-03-06
(31)【優先権主張番号】P 2022039149
(32)【優先日】2022-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000178675
【氏名又は名称】ヤマシンフィルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100170070
【弁理士】
【氏名又は名称】坂田 ゆかり
(72)【発明者】
【氏名】宝田 亘
(72)【発明者】
【氏名】陳 力浩
【テーマコード(参考)】
4L035
【Fターム(参考)】
4L035AA05
4L035AA09
4L035BB31
4L035BB33
4L035BB34
4L035BB36
4L035DD03
4L035HH10
(57)【要約】
【課題】単一樹脂で捲縮した中空繊維を製造することができる。
【解決手段】ポリエチレン又はポリプロピレンを溶融させた溶融樹脂を中空筒状の樹脂ノズルを介して鉛直方向下向きに押し出す第1工程と、ノズルから押し出された溶融樹脂を、圧縮空気をエアノズルから鉛直方向下向きに吐出させることで生成された空気流により延伸させて溶融樹脂を繊維状にする第2工程と、を含む。溶融樹脂は260℃以上に加熱されており、溶融樹脂のメルトフローレートは6.88g/10分以上であり、圧縮空気の圧力は0.0098MPa以上である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレン又はポリプロピレンを溶融させた溶融樹脂を中空筒状の樹脂ノズルを介して鉛直方向下向きに押し出す第1工程と、
前記樹脂ノズルから押し出された前記溶融樹脂を、圧縮空気をエアノズルから鉛直方向下向きに吐出させることで生成された空気流により延伸させて前記溶融樹脂を繊維状にする第2工程と、
を含み、
前記溶融樹脂は260℃以上に加熱されており、
前記溶融樹脂のメルトフローレートが6.88g/10分以上であり、
前記圧縮空気の圧力は、0.0098MPa以上である
ことを特徴とする中空繊維の製造方法。
【請求項2】
前記溶融樹脂はポリブチレンテレフタレートであり、
前記溶融樹脂のメルトフローレートが12.4g/10分以上である
ことを特徴とする請求項1に記載の中空繊維の製造方法。
【請求項3】
前記溶融樹脂は270℃に加熱されている
ことを特徴とする請求項2に記載の中空繊維の製造方法。
【請求項4】
前記溶融樹脂はポリエチレンテレフタレートであり、
前記溶融樹脂は290℃に加熱されており、
前記圧縮空気の圧力は、0.0588MPa以上である
ことを特徴とする請求項1に記載の中空繊維の製造方法。
【請求項5】
前記溶融樹脂はポリプロピレンであり、
前記溶融樹脂のメルトフローレート30g/10分である
ことを特徴とする請求項1に記載の中空繊維の製造方法。
【請求項6】
ポリエチレン又はポリプロピレンを溶融させた溶融樹脂を中空筒状の樹脂ノズルを介して鉛直方向下向きに押し出す第1工程と、
前記樹脂ノズルから押し出された前記溶融樹脂を回転するローラで巻き取ることで、前記溶融樹脂を繊維状にする第2工程と、
を含み、
前記溶融樹脂は260℃以上に加熱されており、
前記溶融樹脂のメルトフローレートが6.88g/10分以上であり、
前記ローラの回転による前記溶融樹脂の巻取り速度は、1000m/分以上である
ことを特徴とする中空繊維の製造方法。
【請求項7】
前記溶融樹脂はポリブチレンテレフタレートであり、
前記溶融樹脂のメルトフローレートが12.4g/10分以上である
ことを特徴とする請求項6に記載の中空繊維の製造方法。
【請求項8】
前記溶融樹脂はポリエチレンテレフタレートであり、
前記溶融樹脂は280℃以上 に加熱されており、
前記ローラの回転による前記溶融樹脂の巻取り速度は、4000m/分以上である
ことを特徴とする請求項6に記載の中空繊維の製造方法。
【請求項9】
前記溶融樹脂はポリプロピレンであり、
前記溶融樹脂のメルトフローレートが30g/10分であり、
前記ローラの回転による前記溶融樹脂の巻取り速度は、4000m/分以上である
ことを特徴とする請求項6に記載の中空繊維の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空繊維の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、プロピレン・ポリマーを含む第1成分と、第1成分とは異なり、高溶融流量ポリプロピレン、低多分散性ポリプロピレン、アモルファス・ポリプロピレン、及び、エラストマー・ポリプロピレンから成るグループから選択されたプロピレン・ポリマーを含む第2成分とを含む、捲縮可能な断面形態を持つ連続多成分繊維を形成する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の発明では、第1成分及び第2成分という2つの異なる樹脂が必須である。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、単一樹脂で捲縮した中空繊維を製造することができる中空繊維の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る中空繊維の製造方法は、例えば、ポリエチレン又はポリプロピレンを溶融させた溶融樹脂を中空筒状の樹脂ノズルを介して鉛直方向下向きに押し出す第1工程と、前記樹脂ノズルから押し出された前記溶融樹脂を、圧縮空気をエアノズルから鉛直方向下向きに吐出させることで生成された空気流により延伸させて前記溶融樹脂を繊維状にする第2工程と、を含み、前記溶融樹脂は260℃以上に加熱されており、前記溶融樹脂のメルトフローレートが6.88g/10分以上であり、前記圧縮空気の圧力は、0.0098MPa以上であることを特徴とする。これにより、単一樹脂で捲縮した中空繊維を製造することができる。
【0007】
前記溶融樹脂はポリブチレンテレフタレートであり、前記溶融樹脂のメルトフローレートが12.4g/10分以上であってもよい。また、前記溶融樹脂は270℃に加熱されていてもよい。これにより、捲縮度を高くすることができる。
【0008】
前記溶融樹脂はポリエチレンテレフタレートであり、前記溶融樹脂は290℃に加熱されており、前記圧縮空気の圧力は、0.0588MPa以上であってもよい。また、前記溶融樹脂はポリプロピレンであり、前記溶融樹脂のメルトフローレート30g/10分であってもよい。
【0009】
本発明の他態様に係る中空繊維の製造方法は、例えば、ポリエチレン又はポリプロピレンを溶融させた溶融樹脂を中空筒状の樹脂ノズルを介して鉛直方向下向きに押し出す第1工程と、前記樹脂ノズルから押し出された前記溶融樹脂を回転するローラで巻き取ることで、前記溶融樹脂を繊維状にする第2工程と、を含み、前記溶融樹脂は260℃以上に加熱されており、前記溶融樹脂のメルトフローレートが6.88g/10分以上であり、前記ローラの回転による前記溶融樹脂の巻取り速度は、1000m/分以上であることを特徴とする。これにより、単一樹脂で捲縮した中空繊維を製造することができる。
【0010】
前記溶融樹脂はポリブチレンテレフタレートであり、前記溶融樹脂のメルトフローレートが12.4g/10分以上であってもよい。また、前記溶融樹脂はポリエチレンテレフタレートであり、前記溶融樹脂は280℃に加熱されており、前記ローラの回転による前記溶融樹脂の巻取り速度は、4000m/分以上であってもよい。また、前記溶融樹脂はポリプロピレンであり、前記溶融樹脂のメルトフローレートが30g/10分であり、前記ローラの回転による前記溶融樹脂の巻取り速度は、4000m/分以上であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、単一樹脂で捲縮した中空繊維を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施の形態にかかる中空繊維の製造方法で用いる製造装置1の概略を示す模式図である。
【
図2】本実施の形態にかかる中空性の製造方法で用いる製造装置2の概略を示す模式図である。
【
図3】樹脂ノズル14の概略を示す図であり、(A)は3分割されたC型の樹脂ノズル14aの一例であり、(B)は1分割されたC型の樹脂ノズル14bの一例である。
【
図4】実施例1~10及び31~33についての圧縮空気の圧力と捲縮度との関係を示すグラフである。
【
図5】実施例11~25についての巻取り速度と捲縮度との関係を示すグラフである。
【
図6】実施例11~28、34~42についての巻取り速度と捲縮度との関係を示すグラフである。
【
図7】製造装置1を用いて製造された中空繊維の拡大写真の一例を示す図であり、(A)は繊維の外観画像であり、(B)は繊維の横断面である。
【
図8】エアノズル出口近傍における風速を算出する基となるグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。本発明は、単一樹脂で捲縮した中空繊維を製造する中空繊維の製造方法に関するものである。
【0014】
<製造装置>
図1は、本実施の形態にかかる中空繊維の製造方法で用いる製造装置1の概略を示す模式図である。製造装置1は、溶融樹脂を風で延伸させて(いわゆるメルトブロー法)中空繊維を製造する製造装置である。製造装置1は、主として、樹脂供給部10と、空気流発生部20と、捕集部30とを有する。
【0015】
樹脂供給部10は、主として、ホッパ11と、押出機12と、ダイ13と、樹脂ノズル14と、を有する。熱可塑性プラスチック樹脂の原料チップをホッパ11に投入し、押出機12に備えられた図示しないヒータで加熱して熱可塑性プラスチック樹脂を溶融し、溶融樹脂を得る。押出機12は、溶融樹脂をダイ13へと押し出す。
【0016】
樹脂ノズル14は、ダイ13に設けられており、溶融樹脂を吐出する。樹脂ノズル14からは、溶融樹脂が鉛直方向下向きに連続的に押し出される。
【0017】
空気流発生部20は、主として、圧縮空気を生成するコンプレッサ21と、圧縮空気がコンプレッサ21から供給されるエアノズル22とを有する。エアノズル22からは、圧縮空気が鉛直方向下向きに吐出される。エアノズル22から吐出された圧縮空気によって生成された空気流により、樹脂ノズル14aから吐出された溶融樹脂が延伸され、かつ捲縮されて、中空繊維となる。
【0018】
捕集部30は、主として、コンベア31と、捕集部32とを有する。空気流発生部20により延伸及び捲縮された中空繊維は、コンベア31に吹きつけられる。コンベア31上に堆積された中空繊維は、綿状となって捕集部32で捕集される。
【0019】
図2は、本実施の形態にかかる中空繊維の製造方法で用いる製造装置2の概略を示す模式図である。製造装置2は、溶融樹脂を回転するドラムに巻きつけて延伸させる(いわゆるメルトスピニング法)ことで中空繊維を製造する製造装置である。製造装置2は、主として、樹脂供給部10と、巻取部40とを有する。
【0020】
巻取部40は、主として、ローラ41と、図示しない駆動部とを有する。ローラ41は、駆動部により回転される。
【0021】
樹脂ノズル14から鉛直方向下向きに連続的に押し出された溶融樹脂sは、太い糸状であり、重力により自由落下する。糸状の溶融樹脂sは一端が巻取部40に設けられており、溶融樹脂を回転するローラ41で巻き取ることで、溶融樹脂sが延伸され、かつ捲縮されて、中空繊維となる。
【0022】
製造装置1、2では、熱可塑性プラスチック樹脂として、ポリエステル、具体的にはポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリプロピレン(PP)が用いられるが、これに限定されるものではない。
【0023】
図3は、樹脂ノズル14の概略を示す図であり、(A)は3分割されたC型の樹脂ノズル14aの一例であり、(B)は1分割されたC型の樹脂ノズル14bの一例である。製造装置1、2では、樹脂ノズル14a及び樹脂ノズル14bのいずれかが用いられる。
【実施例0024】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例について、中空繊維の物性の評価は以下の方法で行った。
【0025】
(1)メルトフローレート(MFR)
メルトフローレート(以下、MFRという)は、溶融樹脂の流動性を示す指標である。MFRは、JIS K7210-1に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgfで測定した。
【0026】
(2)捲縮度
捲縮度は、繊維の捲縮の程度を示す指標である。捲縮度は、JIS L 1015(2010) 8.12に準拠して測定した。
【0027】
(3)中空率
中空率は、繊維横断面拡大写真によって、中空部分を含めた繊維断面の全面積に対する中空部分の面積の割合を算出して%で表示した。
【0028】
<製造装置1により製造された中空繊維>
製造装置1を用いて、いわゆるメルトブロー法により製造された中空繊維(実施例1~10及び比較例1~4)について表1に示す。具体的には、熱可塑性プラスチック樹脂(ポリエステル(PET及びPBT)、ポリプロピレン)を溶融させた溶融樹脂を樹脂ノズル14を介して鉛直方向下向きに押し出し(第1工程)、樹脂ノズル14から押し出された溶融樹脂を、エアノズル22から鉛直方向下向きに圧縮空気を吐出させることで生成された空気流により延伸させて溶融樹脂を繊維状にする(第2工程)。なお、実施例1~11及び比較例1~3では、3分割されたC型、直径2mmの樹脂ノズル14aと、出口直径が4mmのエアノズル22を用い、エアノズル22とコンベア31との距離l2は2mとしたが、樹脂ノズル14a及びエアノズル22の形態や距離l2はこれに限られない。
【0029】
【0030】
[実施例1]
MFRが18.1g/10分であるポリブチレンテレフタレートを押出機12内で270℃に加熱し、樹脂ノズル14aから溶融樹脂を鉛直方向下向きに連続的に押し出し、エアノズル22から1kgf/cm2(0.0098MPa)に圧縮された圧縮空気を鉛直方向下向きに吐出して樹脂ノズル14aから吐出された溶融樹脂を延伸して中空繊維を製造した。なお、圧縮空気の圧力は、大気圧を基準とするゲージ圧で表記している。
【0031】
[実施例2]
MFRが18.1g/10分であるポリブチレンテレフタレートを押出機12内で270℃に加熱し、樹脂ノズル14aから溶融樹脂を鉛直方向下向きに連続的に押し出し、エアノズル22から2kgf/cm2(0.0196MPa)に圧縮された圧縮空気を鉛直方向下向きに吐出して樹脂ノズル14aから吐出された溶融樹脂を延伸して中空繊維を製造した。
【0032】
[実施例3]
MFRが18.1g/10分であるポリブチレンテレフタレートを押出機12内で270℃に加熱し、樹脂ノズル14aから溶融樹脂を鉛直方向下向きに連続的に押し出し、エアノズル22から3kgf/cm2(0.0294MPa)に圧縮された圧縮空気を鉛直方向下向きに吐出して樹脂ノズル14aから吐出された溶融樹脂を延伸して中空繊維を製造した。
【0033】
[実施例4]
MFRが18.1g/10分であるポリブチレンテレフタレートを押出機12内で270℃に加熱し、樹脂ノズル14aから溶融樹脂を鉛直方向下向きに連続的に押し出し、エアノズル22から4kgf/cm2(0.0392MPa)に圧縮された圧縮空気を鉛直方向下向きに吐出して樹脂ノズル14aから吐出された溶融樹脂を延伸して中空繊維を製造した。
【0034】
[実施例5]
MFRが18.1g/10分であるポリブチレンテレフタレートを押出機12内で270℃に加熱し、樹脂ノズル14aから溶融樹脂を鉛直方向下向きに連続的に押し出し、エアノズル22から5kgf/cm2(0.049MPa)に圧縮された圧縮空気を鉛直方向下向きに吐出して樹脂ノズル14aから吐出された溶融樹脂を延伸して中空繊維を製造した。
【0035】
[実施例6]
MFRが18.1g/10分であるポリブチレンテレフタレートを押出機12内で270℃に加熱し、樹脂ノズル14aから溶融樹脂を鉛直方向下向きに連続的に押し出し、エアノズル22から6kgf/cm2(0.0588MPa)に圧縮された圧縮空気を鉛直方向下向きに吐出して樹脂ノズル14aから吐出された溶融樹脂を延伸して中空繊維を製造した。
【0036】
[実施例7]
MFRが18.1g/10分であるポリブチレンテレフタレートを押出機12内で270℃に加熱し、樹脂ノズル14aから溶融樹脂を鉛直方向下向きに連続的に押し出し、エアノズル22から6.25kgf/cm2(0.06125MPa)に圧縮された圧縮空気を鉛直方向下向きに吐出して樹脂ノズル14aから吐出された溶融樹脂を延伸して中空繊維を製造した。
【0037】
[実施例8]
MFRが12.4g/10分であるポリブチレンテレフタレートを押出機12内で260℃に加熱し、樹脂ノズル14aから溶融樹脂を鉛直方向下向きに連続的に押し出し、エアノズル22から1kgf/cm2(0.0098MPa)に圧縮された圧縮空気を鉛直方向下向きに吐出して樹脂ノズル14aから吐出された溶融樹脂を延伸して中空繊維を製造した。
【0038】
[実施例9]
MFRが12.4g/10分であるポリブチレンテレフタレートを押出機12内で260℃に加熱し、樹脂ノズル14aから溶融樹脂を鉛直方向下向きに連続的に押し出し、エアノズル22から1.5kgf/cm2(0.0147MPa)に圧縮された圧縮空気を鉛直方向下向きに吐出して樹脂ノズル14aから吐出された溶融樹脂を延伸して中空繊維を製造した。
【0039】
[実施例10]
MFRが12.4g/10分であるポリブチレンテレフタレートを押出機12内で260℃に加熱し、樹脂ノズル14aから溶融樹脂を鉛直方向下向きに連続的に押し出し、エアノズル22から2kgf/cm2(0.0196MPa)に圧縮された圧縮空気を鉛直方向下向きに吐出して樹脂ノズル14aから吐出された溶融樹脂を延伸して中空繊維を製造した。
【0040】
[実施例31]
MFRが6.88g/10分であるポリエチレンテレフタレートを押出機12内で290℃に加熱し、樹脂ノズル14aから溶融樹脂を鉛直方向下向きに連続的に押し出し、エアノズル22から6kgf/cm2(0.0588MPa)に圧縮された圧縮空気を鉛直方向下向きに吐出して樹脂ノズル14aから吐出された溶融樹脂を延伸して中空繊維を製造した。実施例31では、ポリエチレンテレフタレートとしてバイオマスPET樹脂を用いる。バイオマスPET樹脂とは、テレフタル酸(重量構成比70%)とモノエチレングリコール(重量構成比30%)のうち、モノエチレングリコールをさとうきび由来の植物性原料に替えて製造したPET樹脂である。
【0041】
[実施例32]
MFRが8.6g/10分であるポリエチレンテレフタレートを押出機12内で290℃に加熱し、樹脂ノズル14aから溶融樹脂を鉛直方向下向きに連続的に押し出し、エアノズル22から6kgf/cm2(0.0588MPa)に圧縮された圧縮空気を鉛直方向下向きに吐出して樹脂ノズル14aから吐出された溶融樹脂を延伸して中空繊維を製造した。実施例31では、ポリエチレンテレフタレートとしてリサイクルPET樹脂を用いる。リサイクルPET樹脂とは、使用済みのPET樹脂を原料にして製造されたPET樹脂である。
【0042】
[実施例33]
MFRが30g/10分であるポリプロピレンを押出機12内で260℃に加熱し、樹脂ノズル14aから溶融樹脂を鉛直方向下向きに連続的に押し出し、エアノズル22から6kgf/cm2(0.0588MPa)に圧縮された圧縮空気を鉛直方向下向きに吐出して樹脂ノズル14aから吐出された溶融樹脂を延伸して中空繊維を製造した。
【0043】
[比較例1]
MFRが32.9g/10分であるポリブチレンテレフタレートを押出機12内で260℃に加熱し、樹脂ノズル14aから溶融樹脂を鉛直方向下向きに連続的に押し出して中空繊維を製造した。エアノズル22から圧縮空気を吐出していないため、溶融樹脂はコンベア31に自由落下する。
【0044】
[比較例2]
MFRが12.4g/10分であるポリブチレンテレフタレートを押出機12内で260℃に加熱し、樹脂ノズル14aから溶融樹脂を鉛直方向下向きに連続的に押し出して中空繊維を製造した。
【0045】
[比較例3]
MFRが9.8g/10分であるポリエチレンテレフタレートを押出機12内で290℃に加熱し、樹脂ノズル14aから溶融樹脂を鉛直方向下向きに連続的に押し出して中空繊維を製造した。
【0046】
[比較例4]
MFRが18.1g/10分であるポリブチレンテレフタレートを押出機12内で270℃に加熱し、樹脂ノズル14aから溶融樹脂を鉛直方向下向きに連続的に押し出し、エアノズル22から0.5kgf/cm2(0.0049MPa)に圧縮された圧縮空気を鉛直方向下向きに吐出して樹脂ノズル14aから吐出された溶融樹脂を延伸して中空繊維を製造した。
【0047】
なお、表1における圧縮空気の風速は、風速計(株式会社テストー製 testo 512)を用いて、圧縮空気の圧力が0.5kgf/cm
2、1kgf/cm
2、1.5kgf/cm
2、2kgf/cm
2、3kgf/cm
2、4kgf/cm
2、5kgf/cm
2、6kgf/cm
2、6.25kgf/cm
2のそれぞれの場合において、エアノズル22から吐出された圧縮空気の風速をエアノズル22の出口から0.05m、0.1m、0.2m、0.4m、0.8mの位置で測定した結果に基づいて、エアノズル22から0.01mにおける風速を算出した結果である。具体的には、
図8に示すように、エアノズル22の出口から0.05m、0.1m、0.2m、0.4m、0.8mの位置で測定した風速の対数と距離の対数をグラフにプロットし、測定値を線形近似した直線から0.01mにおける風速を算出した。すなわち、表1における圧縮空気の風速は、エアノズル22の出口近傍の風速である。
【0048】
表1に示すように、溶融樹脂がポリブチレンテレフタレートであり、メルトフローレートが12.4g/10分以上であり、圧縮空気の圧力が0.0098MPa以上である場合に、捲縮が発生した。また、溶融樹脂がポリエチレンテレフタレートであり、メルトフローレートが6.88g/10分以上であり、圧縮空気の圧力が0.0588MPa以上である場合に、捲縮が発生した。さらに、溶融樹脂がポリプロピレンであり、メルトフローレートが30g/10分であり、圧縮空気の圧力が0.0588MPa以上である場合に、捲縮が発生した。
【0049】
また、溶融樹脂がポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンいずれの場合にも、圧縮空気の圧力が0.0588MPa以上である場合に、捲縮が発生した。また、メルトフローレートは捲縮の発生に関係しないことが分かった。
【0050】
それに対し、比較例1~4に示すように、溶融樹脂がポリブチレンテレフタレートであり、圧縮空気の圧力が0.0049MPa以下の場合(圧縮空気を吐出しない場合(圧縮空気の圧力が0)を含む)には、捲縮が発生しなかった。
【0051】
図4は、実施例1~10及び31~33についての圧縮空気の圧力と捲縮度との関係を示すグラフである。なお、
図4では、表1において捲縮度に幅があるときには、中央値でプロットしている。また、
図4には、複数種類の樹脂のデータが含まれる。
【0052】
図4に示すように、押出機12内で溶融樹脂を加熱する温度に関わらず、エアノズル22から吐出する圧縮空気の圧力が高くなればなるほど、捲縮度が高くなることが分かった。また、
図4に示すように、押出機12内でポリブチレンテレフタレートを270℃に加熱した場合は、押出機12内でポリブチレンテレフタレートを260℃に加熱した場合に比べて捲縮の発生度合いが高かった。したがって、中空繊維の捲縮度を高くするためには、ポリブチレンテレフタレートを270℃に加熱することが望ましい。
【0053】
また、
図4において、260℃のプロットにはポリブチレンテレフタレート及びプロプロピレンのデータが含まれているが、樹脂の種類によらず同様の捲縮の発生度合いであることが分かった(
図4の点線参照)。さらに、270度に加熱した場合(
図4の二点鎖線参照)は、260℃又は290℃に加熱した場合よりも捲縮の発生度合いが高い。したがって、中空繊維の捲縮度を高くするためには、270℃に加熱することが望ましい。
【0054】
<製造装置2により製造された中空繊維>
製造装置2を用いて、いわゆるメルトスピニング法により製造された中空繊維(実施例11~28及び比較例5~8)について表2に示す。具体的には、熱可塑性プラスチック樹脂(ポリエステル(PET及びPBT)、ポリプロピレン)を溶融させた溶融樹脂を樹脂ノズル14を介して鉛直方向下向きに押し出し(第1工程)、樹脂ノズル14から押し出された溶融樹脂を回転するローラで巻き取ることで、溶融樹脂を繊維状にする(第2工程)。なお、実施例11~22、26~28、34~42及び比較例5~8では3分割されたC型、直径2mmの樹脂ノズル14aを用い、実施例23~25では1分割されたC型、直径1.2mmの樹脂ノズル14bを用いたが、樹脂ノズル14a、14bの形態はこれに限られない。
【0055】
【0056】
[実施例11]
MFRが32.9g/10分であるポリブチレンテレフタレートを押出機12内で260℃に加熱し、樹脂ノズル14aから3g/分の吐出量で溶融樹脂を鉛直方向下向きに連続的に押し出し、樹脂ノズル14aから吐出された溶融樹脂の一端をローラ41に設け、巻取り速度が1000m/分となるようにローラ41を回転させて溶融樹脂を延伸して中空繊維を製造した。
【0057】
[実施例12]
MFRが32.9g/10分であるポリブチレンテレフタレートを押出機12内で260℃に加熱し、樹脂ノズル14aから3g/分の吐出量で溶融樹脂を鉛直方向下向きに連続的に押し出し、樹脂ノズル14aから吐出された溶融樹脂の一端をローラ41に設け、巻取り速度が4000m/分となるようにローラ41を回転させて溶融樹脂を延伸して中空繊維を製造した。
【0058】
[実施例13]
MFRが12.4g/10分であるポリブチレンテレフタレートを押出機12内で260℃に加熱し、樹脂ノズル14aから3g/分の吐出量で溶融樹脂を鉛直方向下向きに連続的に押し出し、樹脂ノズル14aから吐出された溶融樹脂の一端をローラ41に設け、巻取り速度が1000m/分となるようにローラ41を回転させて溶融樹脂を延伸して中空繊維を製造した。
【0059】
[実施例14]
MFRが12.4g/10分であるポリブチレンテレフタレートを押出機12内で260℃に加熱し、樹脂ノズル14aから3g/分の吐出量で溶融樹脂を鉛直方向下向きに連続的に押し出し、樹脂ノズル14aから吐出された溶融樹脂の一端をローラ41に設け、巻取り速度が4000m/分となるようにローラ41を回転させて溶融樹脂を延伸して中空繊維を製造した。
【0060】
[実施例15]
MFRが12.4g/10分であるポリブチレンテレフタレートを押出機12内で260℃に加熱し、樹脂ノズル14aから3g/分の吐出量で溶融樹脂を鉛直方向下向きに連続的に押し出し、樹脂ノズル14aから吐出された溶融樹脂の一端をローラ41に設け、巻取り速度が1000m/分となるようにローラ41を回転させて溶融樹脂を延伸して中空繊維を製造した。
【0061】
[実施例16]
MFRが12.4g/10分であるポリブチレンテレフタレートを押出機12内で260℃に加熱し、樹脂ノズル14aから3g/分の吐出量で溶融樹脂を鉛直方向下向きに連続的に押し出し、樹脂ノズル14aから吐出された溶融樹脂の一端をローラ41に設け、巻取り速度が1300m/分となるようにローラ41を回転させて溶融樹脂を延伸して中空繊維を製造した。
【0062】
[実施例17]
MFRが12.4g/10分であるポリブチレンテレフタレートを押出機12内で260℃に加熱し、樹脂ノズル14aから3g/分の吐出量で溶融樹脂を鉛直方向下向きに連続的に押し出し、樹脂ノズル14aから吐出された溶融樹脂の一端をローラ41に設け、巻取り速度が1500m/分となるようにローラ41を回転させて溶融樹脂を延伸して中空繊維を製造した。
【0063】
[実施例18]
MFRが12.4g/10分であるポリブチレンテレフタレートを押出機12内で260℃に加熱し、樹脂ノズル14aから3g/分の吐出量で溶融樹脂を鉛直方向下向きに連続的に押し出し、樹脂ノズル14aから吐出された溶融樹脂の一端をローラ41に設け、巻取り速度が1600m/分となるようにローラ41を回転させて溶融樹脂を延伸して中空繊維を製造した。
【0064】
[実施例19]
MFRが12.4g/10分であるポリブチレンテレフタレートを押出機12内で260℃に加熱し、樹脂ノズル14aから3g/分の吐出量で溶融樹脂を鉛直方向下向きに連続的に押し出し、樹脂ノズル14aから吐出された溶融樹脂の一端をローラ41に設け、巻取り速度が1800m/分となるようにローラ41を回転させて溶融樹脂を延伸して中空繊維を製造した。
【0065】
[実施例20]
MFRが12.4g/10分であるポリブチレンテレフタレートを押出機12内で260℃に加熱し、樹脂ノズル14aから3g/分の吐出量で溶融樹脂を鉛直方向下向きに連続的に押し出し、樹脂ノズル14aから吐出された溶融樹脂の一端をローラ41に設け、巻取り速度が1900m/分となるようにローラ41を回転させて溶融樹脂を延伸して中空繊維を製造した。
【0066】
[実施例21]
MFRが12.4g/10分であるポリブチレンテレフタレートを押出機12内で260℃に加熱し、樹脂ノズル14aから3g/分の吐出量で溶融樹脂を鉛直方向下向きに連続的に押し出し、樹脂ノズル14aから吐出された溶融樹脂の一端をローラ41に設け、巻取り速度が2000m/分となるようにローラ41を回転させて溶融樹脂を延伸して中空繊維を製造した。
【0067】
[実施例22]
MFRが12.4g/10分であるポリブチレンテレフタレートを押出機12内で260℃に加熱し、樹脂ノズル14aから3g/分の吐出量で溶融樹脂を鉛直方向下向きに連続的に押し出し、樹脂ノズル14aから吐出された溶融樹脂の一端をローラ41に設け、巻取り速度が3000m/分となるようにローラ41を回転させて溶融樹脂を延伸して中空繊維を製造した。
【0068】
[実施例23]
MFRが12.4g/10分であるポリブチレンテレフタレートを押出機12内で260℃に加熱し、樹脂ノズル14bから0.52g/分の吐出量で溶融樹脂を鉛直方向下向きに連続的に押し出し、樹脂ノズル14bから吐出された溶融樹脂の一端をローラ41に設け、巻取り速度が3500m/分となるようにローラ41を回転させて溶融樹脂を延伸して中空繊維を製造した。
【0069】
[実施例24]
MFRが12.4g/10分であるポリブチレンテレフタレートを押出機12内で260℃に加熱し、樹脂ノズル14bから0.78g/分の吐出量で溶融樹脂を鉛直方向下向きに連続的に押し出し、樹脂ノズル14bから吐出された溶融樹脂の一端をローラ41に設け、巻取り速度が3500m/分となるようにローラ41を回転させて溶融樹脂を延伸して中空繊維を製造した。
【0070】
[実施例25]
MFRが12.4g/10分であるポリブチレンテレフタレートを押出機12内で260℃に加熱し、樹脂ノズル14bから1.04g/分の吐出量で溶融樹脂を鉛直方向下向きに連続的に押し出し、樹脂ノズル14bから吐出された溶融樹脂の一端をローラ41に設け、巻取り速度が3500m/分となるようにローラ41を回転させて溶融樹脂を延伸して中空繊維を製造した。
【0071】
[実施例26]
MFRが9.8g/10分であるポリエチレンテレフタレートを押出機12内で290℃に加熱し、樹脂ノズル14aから1.5g/分の吐出量で溶融樹脂を鉛直方向下向きに連続的に押し出し、樹脂ノズル14aから吐出された溶融樹脂の一端をローラ41に設け、巻取り速度が6000m/分となるようにローラ41を回転させて溶融樹脂を延伸して中空繊維を製造した。
【0072】
[実施例27]
MFRが9.8g/10分であるポリエチレンテレフタレートを押出機12内で290℃に加熱し、樹脂ノズル14aから1.5g/分の吐出量で溶融樹脂を鉛直方向下向きに連続的に押し出し、樹脂ノズル14aから吐出された溶融樹脂の一端をローラ41に設け、巻取り速度が7000m/分となるようにローラ41を回転させて溶融樹脂を延伸して中空繊維を製造した。
【0073】
[実施例28]
MFRが7.1g/10分であるポリエチレンテレフタレートを押出機12内で280℃に加熱し、樹脂ノズル14aから1.5g/分の吐出量で溶融樹脂を鉛直方向下向きに連続的に押し出し、樹脂ノズル14aから吐出された溶融樹脂の一端をローラ41に設け、巻取り速度が6000m/分となるようにローラ41を回転させて溶融樹脂を延伸して中空繊維を製造した。
【0074】
[実施例34]
MFRが6.88g/10分であるポリエチレンテレフタレートを押出機12内で290℃に加熱し、樹脂ノズル14aから3g/分の吐出量で溶融樹脂を鉛直方向下向きに連続的に押し出し、樹脂ノズル14aから吐出された溶融樹脂の一端をローラ41に設け、巻取り速度が5000m/分となるようにローラ41を回転させて溶融樹脂を延伸して中空繊維を製造した。実施例34では、ポリエチレンテレフタレートとしてバイオマスPET樹脂を用いる。
【0075】
[実施例35]
MFRが6.88g/10分であるポリエチレンテレフタレートを押出機12内で290℃に加熱し、樹脂ノズル14aから3g/分の吐出量で溶融樹脂を鉛直方向下向きに連続的に押し出し、樹脂ノズル14aから吐出された溶融樹脂の一端をローラ41に設け、巻取り速度が6000m/分となるようにローラ41を回転させて溶融樹脂を延伸して中空繊維を製造した。実施例35では、ポリエチレンテレフタレートとしてバイオマスPET樹脂を用いる。
【0076】
[実施例36]
MFRが8.6g/10分であるポリエチレンテレフタレートを押出機12内で290℃に加熱し、樹脂ノズル14aから3g/分の吐出量で溶融樹脂を鉛直方向下向きに連続的に押し出し、樹脂ノズル14aから吐出された溶融樹脂の一端をローラ41に設け、巻取り速度が4000m/分となるようにローラ41を回転させて溶融樹脂を延伸して中空繊維を製造した。実施例36では、ポリエチレンテレフタレートとしてリサイクルPET樹脂を用いる。
【0077】
[実施例37]
MFRが8.6g/10分であるポリエチレンテレフタレートを押出機12内で290℃に加熱し、樹脂ノズル14aから3g/分の吐出量で溶融樹脂を鉛直方向下向きに連続的に押し出し、樹脂ノズル14aから吐出された溶融樹脂の一端をローラ41に設け、巻取り速度が5000m/分となるようにローラ41を回転させて溶融樹脂を延伸して中空繊維を製造した。実施例37では、ポリエチレンテレフタレートとしてリサイクルPET樹脂を用いる。
【0078】
[実施例38]
MFRが87.5g/10分であるポリエチレンテレフタレートを押出機12内で290℃に加熱し、樹脂ノズル14aから3g/分の吐出量で溶融樹脂を鉛直方向下向きに連続的に押し出し、樹脂ノズル14aから吐出された溶融樹脂の一端をローラ41に設け、巻取り速度が4000m/分となるようにローラ41を回転させて溶融樹脂を延伸して中空繊維を製造した。実施例36では、ポリエチレンテレフタレートとしてリサイクルPET樹脂を用いる。
【0079】
[実施例39]
MFRが87.5g/10分であるポリエチレンテレフタレートを押出機12内で290℃に加熱し、樹脂ノズル14aから3g/分の吐出量で溶融樹脂を鉛直方向下向きに連続的に押し出し、樹脂ノズル14aから吐出された溶融樹脂の一端をローラ41に設け、巻取り速度が5000m/分となるようにローラ41を回転させて溶融樹脂を延伸して中空繊維を製造した。実施例39では、ポリエチレンテレフタレートとしてリサイクルPET樹脂を用いる。
【0080】
[実施例40]
MFRが30g/10分であるポリプロピレンを押出機12内で260℃に加熱し、樹脂ノズル14aから3g/分の吐出量で溶融樹脂を鉛直方向下向きに連続的に押し出し、樹脂ノズル14aから吐出された溶融樹脂の一端をローラ41に設け、巻取り速度が4000m/分となるようにローラ41を回転させて溶融樹脂を延伸して中空繊維を製造した。
【0081】
[実施例41]
MFRが30g/10分であるポリプロピレンを押出機12内で260℃に加熱し、樹脂ノズル14aから3g/分の吐出量で溶融樹脂を鉛直方向下向きに連続的に押し出し、樹脂ノズル14aから吐出された溶融樹脂の一端をローラ41に設け、巻取り速度が5000m/分となるようにローラ41を回転させて溶融樹脂を延伸して中空繊維を製造した。
【0082】
[実施例42]
MFRが30g/10分であるポリプロピレンを押出機12内で260℃に加熱し、樹脂ノズル14aから3g/分の吐出量で溶融樹脂を鉛直方向下向きに連続的に押し出し、樹脂ノズル14aから吐出された溶融樹脂の一端をローラ41に設け、巻取り速度が6000m/分となるようにローラ41を回転させて溶融樹脂を延伸して中空繊維を製造した。
【0083】
[比較例5]
MFRが9.8g/10分であるポリエチレンテレフタレートを押出機12内で290℃に加熱し、樹脂ノズル14aから1.5g/分の吐出量で溶融樹脂を鉛直方向下向きに連続的に押し出し、樹脂ノズル14aから吐出された溶融樹脂の一端をローラ41に設け、巻取り速度が1000m/分となるようにローラ41を回転させて溶融樹脂を延伸して中空繊維を製造した。
【0084】
[比較例6]
MFRが9.8g/10分であるポリエチレンテレフタレートを押出機12内で290℃に加熱し、樹脂ノズル14aから1.5g/分の吐出量で溶融樹脂を鉛直方向下向きに連続的に押し出し、樹脂ノズル14aから吐出された溶融樹脂の一端をローラ41に設け、巻取り速度が3000m/分となるようにローラ41を回転させて溶融樹脂を延伸して中空繊維を製造した。
【0085】
[比較例7]
MFRが9.8g/10分であるポリエチレンテレフタレートを押出機12内で290℃に加熱し、樹脂ノズル14aから1.5g/分の吐出量で溶融樹脂を鉛直方向下向きに連続的に押し出し、樹脂ノズル14aから吐出された溶融樹脂の一端をローラ41に設け、巻取り速度が5000m/分となるようにローラ41を回転させて溶融樹脂を延伸して中空繊維を製造した。
【0086】
[比較例8]
MFRが7.1g/10分であるポリエチレンテレフタレートを押出機12内で280℃に加熱し、樹脂ノズル14aから1.5g/分の吐出量で溶融樹脂を鉛直方向下向きに連続的に押し出し、樹脂ノズル14aから吐出された溶融樹脂の一端をローラ41に設け、巻取り速度が5000m/分となるようにローラ41を回転させて溶融樹脂を延伸して中空繊維を製造した。
【0087】
[比較例9]
MFRが6.88g/10分であるポリエチレンテレフタレートを押出機12内で290℃に加熱し、樹脂ノズル14aから3g/分の吐出量で溶融樹脂を鉛直方向下向きに連続的に押し出し、樹脂ノズル14aから吐出された溶融樹脂の一端をローラ41に設け、巻取り速度が4000m/分となるようにローラ41を回転させて溶融樹脂を延伸して中空繊維を製造した。比較例9では、ポリエチレンテレフタレートとしてバイオマスPET樹脂を用いる。
【0088】
[比較例10]
MFRが8.6g/10分であるポリエチレンテレフタレートを押出機12内で290℃に加熱し、樹脂ノズル14aから3g/分の吐出量で溶融樹脂を鉛直方向下向きに連続的に押し出し、樹脂ノズル14aから吐出された溶融樹脂の一端をローラ41に設け、巻取り速度が3000m/分となるようにローラ41を回転させて溶融樹脂を延伸して中空繊維を製造した。比較例10では、ポリエチレンテレフタレートとしてリサイクルPET樹脂を用いる。
【0089】
[比較例11]
MFRが87.5g/10分であるポリエチレンテレフタレートを押出機12内で290℃に加熱し、樹脂ノズル14aから3g/分の吐出量で溶融樹脂を鉛直方向下向きに連続的に押し出し、樹脂ノズル14aから吐出された溶融樹脂の一端をローラ41に設け、巻取り速度が3000m/分となるようにローラ41を回転させて溶融樹脂を延伸して中空繊維を製造した。比較例11では、ポリエチレンテレフタレートとしてリサイクルPET樹脂を用いる。
【0090】
[比較例12]
MFRが30g/10分であるポリプロピレンを押出機12内で260℃に加熱し、樹脂ノズル14aから3g/分の吐出量で溶融樹脂を鉛直方向下向きに連続的に押し出し、樹脂ノズル14aから吐出された溶融樹脂の一端をローラ41に設け、巻取り速度が3000m/分となるようにローラ41を回転させて溶融樹脂を延伸して中空繊維を製造した。
【0091】
表2に示すように、溶融樹脂がポリブチレンテレフタレートである場合(実施例11~25)には、メルトフローレートが12.4g/10分以上であり、巻取り速度が1000m/分以上である場合に、捲縮が発生した。また、距離l3は捲縮の発生の有無への影響は小さいことが分かった。
【0092】
溶融樹脂がポリエチレンテレフタレートである場合(実施例26~28、34~39)には、メルトフローレート6.88g/10分以上であり、巻取り速度が6000m/分以上である場合、又は、メルトフローレート87.5g/10分以上であり、巻取り速度が4000m/分以上である場合に、捲縮が発生した。溶融樹脂がポリプロピレンである場合(実施例40~42)には、メルトフローレートが30g/10分であり、巻取り速度が4000m/分以上である場合に、捲縮が発生した。
【0093】
また、溶融樹脂がポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンいずれの場合にも、メルトフローレートが6.88g/10分以上であり、巻取り速度が6000m/分以上である場合に、捲縮が発生した。
【0094】
図5は、実施例11~25についての巻取り速度と捲縮度との関係を示すグラフである。なお、
図5では、表1において捲縮度に幅がある場合には、中央値でプロットしている。樹脂ノズル14の形状に関わらず、巻取り速度が速くなればなるほど、捲縮度が高くなることが分かった。
【0095】
図6は、実施例11~28、34~42についての巻取り速度と捲縮度との関係を示すグラフである。
図6には複数種類の樹脂のデータが含まれる。各メルトフローレートにおいて、巻取り速度が早くなるほど捲縮が発生しやすいことが分かった。また、メルトフローレートは捲縮の発生度合いに関係しないことが分かった。
【0096】
図7は、製造装置1を用いて製造された中空繊維の拡大写真の一例を示す図であり、(A)は繊維の外観画像であり、(B)は繊維の横断面である。第1工程、第2工程の2つの工程により、中空部分を有する捲縮繊維が製造された。また、
図7(A)に示すように、十分に捲縮しており、空気を含みやすく中綿に適した繊維が製造された。
【0097】
<効果>
(1)ポリエチレン又はポリプロピレンを溶融させた溶融樹脂(メルトフローレートが16.88g/10分以上)を中空筒状の樹脂ノズルを介して鉛直方向下向きに押し出す第1工程と、ノズルから押し出された溶融樹脂をエアノズルから圧縮空気(0.0588MPa以上)を鉛直方向下向きに吐出させることで生成された空気流により延伸させて溶融樹脂を繊維状にする第2工程と、を含む製造方法により、単一樹脂で捲縮した中空繊維を製造することができる。なお、溶融樹脂がポリブチレンテレフタレートの場合には、溶融樹脂を270℃に加熱することで、捲縮度を高くすることができる。
(2)ポリエチレン又はポリプロピレンを溶融させた溶融樹脂(メルトフローレートが16.88g/10分以上)を中空筒状の樹脂ノズルを介して鉛直方向下向きに押し出す第1工程と、樹脂ノズルから押し出された溶融樹脂を回転するローラで巻き取る(巻取り速度が6000m/分以上)ことで溶融樹脂を繊維状にする第2工程と、を含む製造方法により、単一樹脂で捲縮した中空繊維を製造することができる。
【0098】
また、上記(1)~(2)では2工程のみで捲縮した中空繊維を製造することができ、後工程(例えば、繊維をプリーツ加工する)は必要なく、また、冷却風を横から吹き付ける等により繊維を不均一に冷却したり、中空繊維を偏心させたりするといった複雑な工程は必要ない。したがって、単一樹脂で捲縮した中空繊維を単純な工程で製造することができ、生産性が高い。
【0099】
以上、この発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、上記の実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、実施形態の構成に他の構成の追加、削除、置換等をすることが可能である。
【0100】
また、本発明において、「略」とは、厳密に同一である場合のみでなく、同一性を失わない程度の誤差や変形を含む概念である。例えば、「略鉛直方向」とは、厳密に鉛直方向の場合には限られず、例えば数度程度の誤差を含む概念である。また、例えば、単に直交、平行、一致等と表現する場合において、厳密に直交、平行、一致等の場合のみでなく、略平行、略直交、略一致等の場合を含むものとする。
【0101】
また、本発明において「近傍」とは、基準となる位置の近くのある範囲(任意に定めることができる)の領域を含むことを意味する。例えば、端近傍という場合に、端の近くのある範囲の領域であって、端を含んでもいても含んでいなくてもよいことを示す概念である。