(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134387
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】農薬乳化性組成物
(51)【国際特許分類】
A01N 25/04 20060101AFI20230920BHJP
A01N 43/58 20060101ALI20230920BHJP
A01N 43/56 20060101ALI20230920BHJP
A01P 7/04 20060101ALI20230920BHJP
A01N 47/30 20060101ALI20230920BHJP
A01N 43/36 20060101ALI20230920BHJP
A01N 47/02 20060101ALI20230920BHJP
A01N 53/08 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
A01N25/04 101
A01N43/58 B
A01N43/56 C
A01P7/04
A01N47/30 E
A01N43/36 A
A01N47/02
A01N53/08 125
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035138
(22)【出願日】2023-03-08
(31)【優先権主張番号】P 2022038929
(32)【優先日】2022-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 孝典
(72)【発明者】
【氏名】小林 武
(72)【発明者】
【氏名】村本 大輝
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AA01
4H011AB01
4H011AB03
4H011AC01
4H011AC04
4H011BA01
4H011BB09
4H011BB11
4H011BB14
4H011BB15
4H011BC03
4H011BC05
4H011BC06
4H011BC07
4H011BC19
4H011DA16
4H011DH03
(57)【要約】
【課題】
難水溶性の農薬有効成分を用いた乳化性製剤において、環境負荷の少ない製剤用添加剤を使用して製造可能であり、乳化安定性に優れ、且つ十分な効力を発揮し得る乳化性組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】
農薬有効成分としてオクタノール-水分配係数(LogPow)が4.0以上の農薬殺虫成分を含有し、溶剤として脂肪酸アミド及び/又は脂肪酸メチルエステルを用い、乳化剤としてアニオン性界面活性剤とノニオン性界面活性剤を含有する、農薬乳化性組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
農薬有効成分(A)としてオクタノール-水分配係数(LogPow)が4.0以上の農薬有効成分、溶剤(B)として(b1)脂肪酸メチルエステル及び/又は(b2)脂肪酸アミド、並びに、乳化剤(C)として(c1)アニオン性界面活性剤及び(c2)ノニオン性界面活性剤、を含むことを特徴とする農薬乳化性組成物。
【請求項2】
農薬有効成分(A)が、カルボスルファン、ベンフラカルブ、カズサホス、クロルピリホス、プロチオホス、プロフェノホス、ジエノクロル、フィプロニル、フルキサメタミド、ブロフラニリド、アクリナトリン、アレスリン、エトフェンプロックス、シハロトリン、シフルトリン、シペルメトリン、シラフルオフェン、テフルトリン、トラロメトリン、ビフェントリン、ペレトリン、フェンバレレート、フェンプロパトリン、フルシトリネート、フルバリネート、ペルメトリン、インドキサカルブ、メタフルミゾン、アバメクチン、エマメクチン安息香酸塩、ミルベクチン、レピメクチン、アシノナピル、アミトラズ、フルベンジアミド、テブフェンピラド、トルフェンピラド、ピリダベン、フェナザキン、ピリミジフェン、フェンピロキシメート、シエノピラフェン、シフルメトフェン、ピフルブミド、アセキノシル、フルアクリピリム、ジアフェンチウロン、プロバルギット、テトラジホン、クロルフェナピル、ピリプロキシフェン、テブフェノジド、クロルフルアズロン、テフルベンズロン、ノバルロン、フルフェノクスロン、ルフェヌロン、クロフェンテジン、エトキサゾール、ブプロフェジン、スピロジクロフェン、スピロメシフェン、及びピリダリルからなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載の農薬乳化性組成物。
【請求項3】
農薬有効成分(A)が、ピリダベン、トルフェンピラド、ジアフェンチウロン、クロルフェナピル、フィプロニル、及びシペルメトリンからなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載の農薬乳化性組成物。
【請求項4】
農薬有効成分(A)が1~20質量部、溶剤(B)が50~95質量部、並びに乳化剤(C)が1~30質量部で含有する、請求項1~3の何れか一項に記載の農薬乳化性組成物。
【請求項5】
乳化剤(C)における、(c1)アニオン性界面活性剤が、アルキルベンゼンスルホン酸塩であり、(c2)ノニオン性界面活性剤が、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンポリアリールフェニルエーテル、及びポリオキシアルキレンポリアリールフェニルエーテルのホルムアルデヒド縮合物からなる群から選択される1種以上である、請求項1~3の何れか一項に記載の農薬乳化性組成物。
【請求項6】
溶剤(B)が、(b1)脂肪酸メチルエステル及び(b2)脂肪酸アミドである、請求項1~3の何れか一項に記載の農薬乳化性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オクタノール-水分配係数(LogPow)が4.0以上の農薬有効成分、脂肪酸アミド及び/又は脂肪酸エステルを配合してなり、乳化安定性に優れ、速効性を付与された農薬乳化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、農薬は、農作物の品質を保つために必要不可欠な物である一方で、経済的な観点や環境負荷の観点から使用量の低減が求められている。農薬の剤型の一つである乳剤は、混合工程のみで製造することができ、製造費が安価であるため非常に有用な製剤である。しかし乳剤は、農薬殺虫成分の他に、キシレンやエチルベンゼン等の芳香族系溶剤が使用されていることが多く、有機溶剤の影響を勘案して特に使用量の低減が望まれている。そのため、毒性の低い溶剤を使用して製造することができ、従来の農薬製剤より使用量の低減ができる農薬乳剤が望まれている。
【0003】
芳香族系溶剤の使用を回避した農薬乳剤としては、特許文献1には、農薬殺虫成分としてエトキサゾールを使用し、溶剤として天然物である植物油を使用した乳剤が開示されている。しかし、溶解性の面から薬剤が限定されるものであり、効力については不明である。また、溶剤として脂肪酸誘導体を用いる農薬乳剤として、特許文献2には、脂肪酸アミド、脂肪酸アルキルエステル、トリグリセリド脂肪酸エステルを含有する組成物が開示されている。しかし、この組成物に適用できる活性成分が除草活性成分に限定されているうえ、散布時のドリフトの抑制のみを謳っており、効力については何ら言及されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-148756号公報
【特許文献2】特表2015-512391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
難水溶性の農薬殺虫成分を有効成分として、環境負荷の少ない製剤用添加剤で製造可能であり、乳化安定性に優れ、且つ十分な効力を発揮し得る乳化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、オクタノール-水分配係数(LogPow)が4.0以上の農薬成分を有効成分とし、溶剤として、脂肪酸アミド及び/又は脂肪酸メチルエステルを用い、これとアニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤を組み合わせた処方とすることにより、上記課題を解決できることを見出した。
【0007】
即ち、本発明は以下の発明を含む。
[発明1] 農薬有効成分(A)としてオクタノール-水分配係数(LogPow)が4.0以上の農薬有効成分、溶剤(B)として(b1)脂肪酸メチルエステル及び/又は(b2)脂肪酸アミド、並びに、乳化剤(C)として(c1)アニオン性界面活性剤及び(c2)ノニオン性界面活性剤、を含むことを特徴とする農薬乳化性組成物。
[発明2] 農薬有効成分(A)が、カルボスルファン、ベンフラカルブ、カズサホス、クロルピリホス、プロチオホス、プロフェノホス、ジエノクロル、フィプロニル、フルキサメタミド、ブロフラニリド、アクリナトリン、アレスリン、エトフェンプロックス、シハロトリン、シフルトリン、シペルメトリン、シラフルオフェン、テフルトリン、トラロメトリン、ビフェントリン、ペレトリン、フェンバレレート、フェンプロパトリン、フルシトリネート、フルバリネート、ペルメトリン、インドキサカルブ、メタフルミゾン、アバメクチン、エマメクチン安息香酸塩、ミルベクチン、レピメクチン、アシノナピル、アミトラズ、フルベンジアミド、テブフェンピラド、トルフェンピラド、ピリダベン、フェナザキン、ピリミジフェン、フェンピロキシメート、シエノピラフェン、シフルメトフェン、ピフルブミド、アセキノシル、フルアクリピリム、ジアフェンチウロン、プロバルギット、テトラジホン、クロルフェナピル、ピリプロキシフェン、テブフェノジド、クロルフルアズロン、テフルベンズロン、ノバルロン、フルフェノクスロン、ルフェヌロン、クロフェンテジン、エトキサゾール、ブプロフェジン、スピロジクロフェン、スピロメシフェン、及びピリダリルからなる群から選択される1種以上である、前記[発明1]に記載の農薬乳化性組成物。
[発明3] 農薬有効成分(A)が、ピリダベン、トルフェンピラド、ジアフェンチウロン、クロルフェナピル、フィプロニル、及びシペルメトリンからなる群から選択される1種以上である、前記[発明1]または[発明2]に記載の農薬乳化性組成物。
[発明4] 農薬有効成分(A)が1~20質量部、溶剤(B)が50~95質量部、並びに乳化剤(C)が1~30質量部で含有する、前記[発明1]~[発明3]の何れか一項に記載の農薬乳化性組成物。
[発明5] 乳化剤(C)における、(c1)アニオン性界面活性剤が、アルキルベンゼンスルホン酸塩であり、(c2)ノニオン性界面活性剤が、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンポリアリールフェニルエーテル、及びポリオキシアルキレンポリアリールフェニルエーテルのホルムアルデヒド縮合物からなる群から選択される1種以上である、前記[発明1]~[発明4]の何れか一項に記載の農薬乳化性組成物。
[発明6] 溶剤(B)が、(b1)脂肪酸メチルエステル及び(b2)脂肪酸アミドである、前記[発明1]~[発明5]の何れか一項に記載の農薬乳化性組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明の農薬乳化性組成物は、低毒性かつ環境負荷の低い脂肪酸アミド及び/又は脂肪酸メチルエステルを溶剤としており、水と混和して調製される乳化分散液は優れた乳化性並びに乳化安定性を有するものである。尚且つ、本発明の乳化性組成物は、十分な効果を発揮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の農薬乳化性組成物は、農薬有効成分(A)としてオクタノール-水分配係数(LogPow)が4.0以上の農薬成分を適用する。
LogPowはオクタノール-水分配係数による物性値であり、本発明では、フラスコ振とう法(OECD Test Guidline 107)またはHPLC法(OECD Test Guidline 117)により測定される数値である。
すなわち、本発明は、LogPowが4.0以上の難水溶性の農薬有効成分を適用することを要旨とする。好ましくはLogPowが4.0以上であり、25℃における水溶解度が1.0mg/mL以下の農薬有効成分が挙げられる。より好ましくは、LogPowが4.0以上であり、水溶解度が0.8mg/mL以下の農薬有効成分を適用することができる。
【0010】
本発明の農薬乳化性組成物に適用できる農薬有効成分(A)としては、例えば、以下の農薬有効成分を挙げることができる。なお、農薬有効成分名の後の括弧内数値はLogPow値、及び水溶解度を示す。
カルボスルファン(5.45、3.0×10-3mg/mL(25℃))、ベンフラカルブ(4.22(フラスコ振とう法)、8×10-3mg/mL(20℃))、カズサホス(4.08(HPLC法)、241×10-3mg/mL(20℃))、クロルピリホス(4.70(フラスコ振とう法)、0.941×10-3mg/mL(25℃))、プロチオホス(5.67(フラスコ振とう法)、0.07×10-3mg/mL(20℃))、プロフェノホス(4.435、28×10-3mg/mL(22℃))、ジエノクロル(7.2、2.6×10-5mg/mL(25℃))、フィプロニル(4.0(フラスコ振とう法)、3.78×10-3mg/mL(20℃))、フルキサメタミド(5.0(HPLC法)、5.4×10-5mg/mL(20℃))、ブロフラニリド(5.2(フラスコ振とう法)、0.71×10-3mg/mL(20℃))、アクリナトリン(5.6(フラスコ振とう法)、6×10-7mg/mL(25℃))、アレスリン(4.96、0.987×10-3mg/mL(25℃))、エトフェンプロックス(6.9(HPLC法)、22.5×10-6mg/mL(20℃))、シハロトリン(6.9、4.2×10-6mg/mL(20℃))、シフルトリン(6.00、2.0×10-6mg/mL(20℃))、シペルメトリン(6.3、0.9×10-5mg/mL(20℃))、シラフルオフェン(8.2、1×10-6mg/mL(20℃))、テフルトリン(6.4、1.6×10-5mg/mL(20℃))、トラロメトリン(5.05(フラスコ振とう法)、8×10-5mg/mL(25℃))、ビフェントリン(6.6(HPLC法)、<1×10-7mg/mL(20-25℃))、ピレトリン(5.6、9×10-3mg/mL)、フェンバレレート(6.53、<1×10-5mg/mL(25℃))、フェンプロパトリン(6.00(フラスコ振とう法)、1.03×10-5mg/mL(25℃))、フルシトリネート(4.74、9.6×10-5mg/mL(20℃))、フルバリネート(4.26(フラスコ振とう法)、1.12×10-6mg/mL(20℃))、ペルメトリン(6.36(フラスコ振とう法)、0.2×10-3mg/mL(20℃))、インドキサカルブ(4.65(フラスコ振とう法)、0.2×10-3mg/mL(25℃))、メタフルミゾン(E体:5.1(HPLC法)、1.07×10-6mg/mL(20℃)、Z体:4.4(HPLC法)、1.87×10-6mg/mL(20℃))、アバメクチン(4.4±0.3(フラスコ振とう法)、1.21×10-3mg/mL(25℃))、エマメクチン安息香酸塩(5.7、0.024mg/mL(25℃))、ミルベメクチン(M.A3:>4.94(フラスコ振とう法)、0.88×10-3mg/mL(20℃)、M.A4:>5.06(フラスコ振とう法)、7.2×10-3mg/mL(20℃))、レピメクチン(6.5(HPLC法)、103.47×10-6mg/mL(25℃))、アシノナピル(6.5、8.89×10-7mg/mL(20℃))、アミトラズ(5.5、9.4×10-5mg/mL(25℃))、フルベンジアミド(4.20(フラスコ振とう法)、2.99×10-5mg/mL(20℃))、テブフェンピラド(4.93(フラスコ振とう法)、2.61×10-3mg/mL(25℃))、トルフェンピラド(5.6(フラスコ振とう法)、8.7×10-5mg/mL(25℃))、ピリダベン(6.4(フラスコ振とう法)、1.2×10-5mg/mL(24℃))、フェナザキン(5.71、1.02×10-5mg/mL)、ピリミジフェン(4.59(フラスコ振とう法)、2.17×10-3mg/mL(25℃))、フェンピロキシメート(5.01(フラスコ振とう法)、1.5×10-5mg/mL(20℃))、シエノピラフェン(5.6(HPLC法)、0.3×10-3mg/mL(20℃))、シフルメトフェン(4.3(HPLC法)、2.81×10-5mg/mL(20℃))、ピフルブミド(5.34(フラスコ振とう法)、2.7×10-4mg/mL(20℃))、アセキノシル(>6.2(HPLC法)、6.7×10-6mg/mL(25℃))、フルアクリピリム(4.64(フラスコ振とう法)、3.44×10-4mg/mL(20℃))、ジアフェンチウロン(5.8、6.2×10-5mg/mL(25℃))、プロバルギット(5.7、0.63×10-3mg/mL(25℃))、テトラジホン(4.6(HPLC法)、6×10-5mg/mL(20℃))、クロルフェナピル(4.8(フラスコ振とう法)、0.12×10-3mg/mL(25℃))、ピリプロキシフェン(5.37(フラスコ振とう法)、3.67×10-4mg/mL(25℃))、テブフェノジド(4.25(フラスコ振とう法)、0.83×10-3mg/mL(25℃))、クロルフルアズロン(5.9(HPLC法)、1.2×10-5mg/mL(20℃))、テフルベンズロン(>4.3(フラスコ振とう法)、5.0×10-5mg/mL(20℃))、ノバルロン(4.3(HPLC法)、3×10-6mg/mL(20℃))、フルフェノクスロン(4.01(フラスコ振とう法)、4.3×10-6mg/mL(25℃))、ルフェヌロン(5.12(HPLC法)、<6.0×10-5mg/mL(25℃))、クロフェンテジン(4.1(HPLC法)、2.52×10-6mg/mL(22℃))、エトキサゾール(5.52±0.58、7.04×10-5mg/mL(20℃))、ブプロフェジン(4.80(HPLC法)、3.87×10-5mg/mL(20℃))、スピロジクロフェン(5.83(フラスコ振とう法)、5×10-5mg/mL(20℃))、スピロメシフェン(4.55(HPLC法)、0.13×10-3mg/mL(20℃))、ピリダリル(8.1(HPLC法)、1.5×10-7mg/mL(25℃)
【0011】
本発明に適用される農薬有効成分(A)として、好ましくは、アクリナトリン、アレスリン、エトフェンプロックス、シハロトリン、シフルトリン、シペルメトリン、シラフルオフェン、テフルトリン、トラロメトリン、ビフェントリン、ピレトリン、フェンバレレート、フェンプロパトリン、フルシトリネート、フルバリネート、ペルメトリン等のピレスロイド系殺虫有効成分、テブフェンピラド、トルフェンピラドフェンピロキシメート等のピラゾールカルボキサミド系殺虫有効成分、ジアフェンチウロン、クロルフルアズロン、テフルベンズロン、ノバルロン、フルフェノクスロン、ルフェヌロン等のベンゾイルウレア系殺虫有効成分、クロルフェナピル、フィプロニル、ピリダベンが挙げられる。より好ましくは、農薬有効成分(A)は、トルフェンピラド、ピリダベン、ジアフェンチウロン、クロルフェナピル、フィプロニル、シペルメトリンである。なお、本願組成物において、例外的にはフロメトキンは除かれる態様であっても良い。
本発明において、農薬有効成分(A)は、農薬有効成分として適切な純度のものを用いることが好ましく、高速液体クロマトグラフィー法(面積比)により純度80%以上、好ましくは90%以上の農薬有効成分を用いれば良い。
【0012】
本発明の農薬乳化性組成物において、農薬殺虫成分(A)の含有量は好ましくは1~20質量%であり、より好ましくは1~15質量%である。
【0013】
本発明の農薬乳化性組成物は、溶剤(B)を含有する。本発明において溶剤(B)は常温(15℃)において液状であり、1気圧において温度20℃で同容量の純水と緩やかに混合した際に、流動が収まった後も混合液が不均一な外観をしているものである。
本発明の農薬乳化性組成物は、溶剤として脂肪酸メチルエステル(b1)及び/又は脂肪酸アミド(b2)を含有する。脂肪酸メチルエステル(b1)及び脂肪酸ミド(b2)は、植物または動物源から誘導して作製することができるため、低毒性かつ揮発性有機化合物の含有率が非常に低い溶剤であり、使用者への毒性及び環境負荷が少ない溶剤として知られている。
【0014】
脂肪酸メチルエステル(b1)は、炭素数6~30の飽和脂肪酸もしくは不飽和脂肪酸のメチルエステルが好ましく、より好ましくは炭素数8~24の飽和脂肪酸もしくは不飽和脂肪酸のメチルエステルである。例えば、カプリル酸メチル、カプリン酸メチル、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸メチル、パルミチン酸メチル、オレイン酸メチル、エルカ酸メチルや、菜種脂肪酸メチル、ヤシ脂肪酸メチル等を挙げることができる。特にヤシ脂肪酸メチルが好ましい。これらを単独または混合物で用いても良い。
脂肪酸メチルエステル(b1)としては市販品を用いても良く、例えばStepan C-25(商品名 カプリル酸メチル及びカプリン酸メチルの混合物、Stepan)、Stepan C-42(商品名 ラウリン酸メチル及びミリスチン酸メチルの混合物、Stepan)、TOENOL♯2008-95(商品名 カプリル酸メチル、東栄ケミカル)、TOENOL♯2010-95(商品名 カプリン酸メチル、東栄ケミカル)、TOENIL♯2012-95(商品名 ラウリン酸メチル、東栄ケミカル)、TOENOL♯2220-90(商品名 エルカ酸メチルエステル、東栄ケミカル)、TOENOL♯3050(商品名 牛脂脂肪酸メチル、東栄ケミカル)、TOENOL♯3120(商品名 菜種脂肪酸メチル、東栄ケミカル)、エキセパールMC(商品名 ヤシ脂肪酸メチル、花王)、エキセパールML-85(商品名 ラウリン酸メチル、花王)、エキセパールM-OL(商品名 オレイン酸メチル、花王)、等の市販品が挙げられ、エキセパールMC(商品名 ヤシ脂肪酸メチル、花王)が特に望ましい。
【0015】
脂肪酸アミド(b2)は、炭素数6~20の飽和脂肪酸もしくは不飽和脂肪酸のアミド溶剤が好ましく、より好ましくは炭素数8~16の飽和脂肪酸もしくは不飽和脂肪酸のアミド溶剤である。アミド部分はジアルキルアミドであることが好ましい。例えば、N,N-ジメチルオクタンアミド、N,N-ジメチルデカンアミド、N,N-ジメチルドデカンアミド、N,N-ジメチル9-デセンアミド、N,N-ジメチル9-ドデセンアミド、N,N-ジメチルテトラデカンアミド等を挙げることができる。特にN,N-ジメチルデカンアミドが好ましい。これらを単独または混合物で用いても良い。
脂肪酸アミド(b2)は、市販品を用いても良く、例えばHallcomid M-8-10(商品名 N,N-ジメチルオクタンアミド及びN,N-ジメチルデカンアミドの混合物、Stepan)、Hallcomid M-10(商品名 N,N-ジメチルデカンアミド、Stepan)、Hallcomid M-12-14(商品名 N,N-ジメチルドデカンアミド及びN,N-ジメチルテトラデカンアミドの混合物、Stepan)、Hallcomid 1025(商品名 N,N-ジメチル9-デセンアミド、Stepan)、Hallcomid 1225(商品名 N,N-ジメチル9-ドデセンアミド、Stepan)、Rhodiasolv ADMA810(商品名 N,N-ジメチルオクタンアミド及びN,N-ジメチルデカンアミドの混合物、ソルベイ)、Rhodiasolv ADMA10(商品名 N,N-ジメチルデカンアミド、ソルベイ)、等が挙げられる。Hallcomid M-10(商品名 N,N-ジメチルデカンアミド、Stepan)またはRhodiasolv ADMA10(商品名 N,N-ジメチルデカンアミド、ソルベイ)が特に望ましい。
【0016】
本発明の農薬乳化性組成物における溶剤(B)の含有量は、農薬乳化性組成物の総質量に対して、好ましくは50~95質量%であり、より好ましくは60~90質量%である。
溶剤(B)は、脂肪酸メチルエステル(b1)及び脂肪酸アミド(b2)を単独で用いても良く、混用して用いても良い。
本発明の農薬乳化性組成物において、脂肪酸メチルエステル(b1)または脂肪酸アミド(b2)は、それぞれ、農薬乳化性組成物の総質量に対して、5~80質量%で用いることが好ましく、5~70質量%がより好ましく、5~60質量%で用いることが更に好ましい。脂肪酸メチルエステル(b1)は、脂肪酸アミド(b2)との混合溶剤として用いることが好ましい。その場合、脂肪酸メチルエステル(b1)は、農薬乳化性組成物の総質量に対して、10~70質量%で用い、(b2)を農薬乳化性組成物の総質量に対して、10~70質量%で適用することが好ましい。
【0017】
本発明の農薬乳化性組成物は、乳化剤(C)として、アニオン性界面活性剤(c1)及びノニオン性界面活性剤(c2)の組み合わせ乳化剤を含むことを特徴とする。
アニオン性界面活性剤と(c1)しては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩等のアルキルアリールスルホン酸塩、ジオクチルスルホコハク酸塩等のジアルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル硫酸エステル等のポリオキシエチレン(ポリ)アリールアリールエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテルリン酸エステル等のポリオキシエチレン(ポリ)アリールアリールエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールリン酸エステル等のポリオキシアルキレンアルキルアリールリン酸エステルの塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル等のポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステルの塩が挙げられる。これらを単独または混合物で用いても良い。好ましくはアルキルアリールスルホン酸塩であり、ドデシル(直鎖)ベンゼンスルホン酸塩、アルキル(C11~13、分岐鎖)ベンゼンスルホン酸塩が挙げられる。
アニオン性界面活性剤(c1)のスルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩におけるカチオン成分は、ナトリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩、イソプロピルアミン塩が挙げられる。
【0018】
アルキルベンゼンスルホン酸塩としては、市販品を用いても良く、例えばNINATE 401A(商品名 分岐アルキル(C11~13)ベンゼンスルホン酸カルシウム、Stepan)、NINATE 411(商品名 分岐アルキル(C9~17)ベンゼンスルホン酸イソプロピルアミン塩、Stepan)、NINATE 50H(商品名 直鎖ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム、Stepan)、NINATE 50H-M(商品名 直鎖ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム、Stepan)、NINAET 50H-ME(商品名 直鎖ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム、Stepan)、NINATE 60E(商品名 直鎖ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム、Stepan)、NINATE 60L(商品名 直鎖ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム、Stepan)、NINATE 70B(商品名 直鎖ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム、Stepan)、等が使用できる。ジオクチルスルホコハク酸塩としては、ニューカルゲンEP-60P(商品名 竹本油脂)等が使用できる。ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル硫酸としては、ソルポール7556(商品名 東邦化学)等が使用できる。
【0019】
ノニオン性界面活性剤(c2)としては、例えば、ポリオキシエチレンひまし油等のポリオキシアルキレンひまし油、ポリオキシエチレン硬化ひまし油等のポリオキシアルキレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー等のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー型界面活性剤、ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテルやポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレン(ポリ)アリールフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルのホルムアルデヒド縮合物等のポリオキシアルキレン(ポリ)アリールフェニルエーテルのホルムアルデヒド縮合物、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等のポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等のポリオキシアルキレン糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレントリスチリルフェニルフォスフェートジエステル等のポリオキシアルキレン(ポリ)アリールアリールリン酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルが挙げられる。
ノニオン性界面活性剤(c2)としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンひまし油、ポリオキシアルキレン(ポリ)アリールフェニルエーテル、ポリオキシアルキレン(ポリ)アリールフェニルエーテルのホルムアルデヒド縮合物、ポリオキシアルキレン糖脂肪酸エステルからなる群から選択される1種以上を用いることが好ましい。さらに好ましくは、ポリオキシエチレンアリキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンひまし油、ポリオキシアルキレン(ポリ)スチリルフェニルエーテル、及びポリオキシエチレン-ポリアリールフェニルエーテルのホルムアルデヒド縮合物からなる群から選択される1種以上のノニオン性界面活性剤である。
【0020】
ノニオン性界面活性剤(c2)は、HLB値が5~20のものを適用することが好ましく、より好ましくは、HLB値が6~17のものである。ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンひまし油、ポリオキシアルキレン(ポリ)アリールフェニルエーテル、ポリオキシアルキレン(ポリ)アリールフェニルエーテルのホルムアルデヒド縮合物の好ましいHLB値は6~15であり、より好ましくは6~11である。ポリオキシアルキレン糖脂肪酸エステルは、好ましいHLB値は10~20であり、より好ましくはHLB値が11~17のものである。
【0021】
ノニオン性界面活性剤(c2)は、市販品を用いても良い。
ポリオキシアルキレン(ポリ)アリールフェニルエーテルとしては、例えば、ニューカルゲンCP-50(商品名 ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアリールフェニルエーテル、竹本油脂)、ニューカルゲンCP-120(商品名 ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアリールフェニルエーテル、竹本油脂)、ソルポールT-10(商品名 ポリオキシエチレン(9)トリスチリルフェニルエーテル、東邦化学)、ソルポールT-15(商品名 ポリオキシエチレン(14)トリスチリルフェニルエーテル、東邦化学)、ソルポールT-20(商品名 ポリオキシエチレン(19)トリスチリルフェニルエーテル、東邦化学)、ニューカルゲンC-120(商品名 ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル、竹本油脂)、ニューカルゲンC-150(商品名 ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル、竹本油脂)、ニューカルゲンC-173(商品名 ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル、竹本油脂)、パイオニンD-6112(商品名 ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル、竹本油脂)、パイオニンD-6115(商品名 ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル、竹本油脂)、パイオニンD-6120(商品名 ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル、竹本油脂)、パイオニンD-6512(商品名 ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル、竹本油脂)、パイオニンD-6413(商品名 ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル、竹本油脂)、DTD-51(商品名 ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル、竹本油脂)、タケサーフD-7010(商品名 ポリオキシエチレンクミルフェニルエーテル、竹本油脂)、等を市販の界面活性剤として挙げることができる。
【0022】
ポリオキシアルキレン(ポリ)アリールフェニルエーテルのホルムアルデヒド縮合物としては、例えば、ソルポールF-15(商品名 ポリオキシエチレン(21)ジスチリルフェニルエーテルのホルムアルデヒド縮合物、東邦化学)、ソルポールF-19(商品名 ポリオキシエチレン(26)ジスチリルフェニルエーテルのホルムアルデヒド縮合物、東邦化学)、ソルポールF-24(商品名 ポリオキシエチレン(34)ジスチリルフェニルエーテルのホルムアルデヒド縮合物、東邦化学)、パイオニンD-6310(商品名 ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテルのホルムアルデヒド縮合物、竹本油脂)、パイオニンD-6320(商品名 ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテルのホルムアルデヒド縮合物、竹本油脂)、等を市販の界面活性剤として挙げることができる。
【0023】
ポリオキシアルキレンひまし油としては、例えば、パイオニンD-212(商品名 ポリオキシエチレン化ヒマシ油、竹本油脂)、パイオニンD-220(商品名 ポリオキシエチレン化ヒマシ油、竹本油脂)、パイオニンD-225(商品名 ポリオキシエチレン化ヒマシ油、竹本油脂)、パイオニンD-230(商品名 ポリオキシエチレン化ヒマシ油、竹本油脂)、ニューカルゲンD-220(商品名 ポリオキシエチレン化ヒマシ油、竹本油脂)、ソルポールCA-15(商品名 ポリオキシエチレン(15)化ヒマシ油、東邦化学)、ソルポールCA-20(商品名 ポリオキシエチレン(20)化ヒマシ油、東邦化学)、ソルポールCA-30(商品名 ポリオキシエチレン(30)化ヒマシ油、東邦化学)、ソルポールCA-42(商品名 ポリオキシエチレン(42)化ヒマシ油、東邦化学)、ソルポールCA-50(商品名 ポリオキシエチレン(50)化ヒマシ油、東邦化学)、等を市販の界面活性剤として挙げることができる。
【0024】
ポリオキシアルキレン糖脂肪酸エステルとしては、例えば、ソルボンT-20(商品名 ポリオキシエチレンソルビタンラウリン酸エステル、東邦化学)、ソルボンT-40(商品名 ポリオキシエチレンソルビタンパルミチン酸エステル、東邦化学)、ソルボンT-60(商品名 ポリオキシエチレンソルビタンステアリン酸エステル、東邦化学)、ソルボンT-80(商品名 ポリオキシエチレンソルビタンオレイン酸エステル、東邦化学)、ニューカルゲンD-941(商品名 ポリオキシエチレンソルビタンラウリン酸エステル、竹本油脂)、ニューカルゲンD-945(商品名 ポリオキシエチレンソルビタンオレイン酸エステル、竹本油脂)、ニューカルゲンD-945E(商品名 ポリオキシエチレンソルビタンオレイン酸エステル、竹本油脂)、ニューカルゲンD-945T(商品名 ポリオキシエチレンソルビタンオレイン酸エステル、竹本油脂)、パイオニンD-941(商品名 ポリオキシエチレンソルビタンラウリン酸エステル、竹本油脂)、パイオニンD-945(商品名 ポリオキシエチレンソルビタンモノオレイン酸エステル、竹本油脂)、パイオニンD-945-T(商品名 ポリオキシエチレンソルビタントリオレイン酸エステル、竹本油脂)、等を市販の界面活性剤として挙げることができる。
【0025】
乳化剤(C)として、アニオン性界面活性剤(c1)とノニオン性界面活性剤(c2)の混合製品を用いても良い。例えばソルポール3005X(商品名 ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルのホルムアルデヒド縮合物、ドデシルベンゼンスルホン酸塩の混合物、東邦化学)、ソルポール3005XH(商品名 ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルのホルムアルデヒド縮合物、ドデシルベンゼンスルホン酸塩の混合物、東邦化学)、ソルポール3005XL(商品名 ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルのホルムアルデヒド縮合物、ドデシルベンゼンスルホン酸塩の混合物、東邦化学)、ソルポール3080(商品名 ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルのホルムアルデヒド縮合物、ドデシルベンゼンスルホン酸塩の混合物、東邦化学)、ソルポール355(商品名 ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル、ドデシルベンゼンスルホン酸塩の混合物、東邦化学)、ソルポール355H(ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル、ドデシルベンゼンスルホン酸塩の混合物、東邦化学)、ソルポール355L(商品名 ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル、ドデシルベンゼンスルホン酸塩の混合物、東邦化学)、ソルポールSM‐100PW(商品名 ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルのホルムアルデヒド縮合物、ドデシルベンゼンスルホン酸塩の混合物、東邦化学)、22106TX(ポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテルとアルキルベンゼンスルホン酸塩と脂肪酸エステル溶剤の混合物、竹本油脂)、ソルポール4326H(ポリオキシエチレンひまし油、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ドデシルベンゼンスルホン酸塩の混合物、東邦化学)、ソルポール4326L(ポリオキシエチレンひまし油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ドデシルベンゼンスルホン酸塩の混合物、東邦化学)等の市販の界面活性剤が使用できる。
【0026】
本発明の農薬乳化性組成物において、乳化剤(C)は、農薬乳化性組成物の総質量に対して、1~30質量%で含有することが好ましい。より好ましくは、5~25質量%である。
アニオン性界面活性剤(c1)の含有量は、農薬乳化性組成物の総質量に対して、0.5~10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.5~8質量%である。
ノニオン性界面活性剤(c2)の含有量は、農薬乳化性組成物の総質量に対して、5~25質量%であることが好ましく、より好ましくは8~20質量%である。
【0027】
本発明の農薬乳化性組成物は、農薬有効成分(A)、脂肪酸メチルエステル(b1)及び/又は脂肪酸ミド(b2)である溶剤(B)、アニオン性界面活性剤(c1)及びノニオン性界面活性剤(c2)である乳化剤(C)の他に、必要によりその他の添加剤等を含有していてもよい。
その他の添加剤として、任意の溶剤を用いても良い。シクロヘキサノンやメタノール等の極性溶剤、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン、イコサン、スクワランやこれらの混合物等のパラフィン系炭化水素溶剤、シクロペンタン、シクロヘキサン等の1分子中に少なくとも1個の飽和環を含む炭化水素であるナフテン系炭化水素溶剤、ソルベントナフサ、キシレン、トリメチルベンゼン等のアルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ジフェニルエタン、フェニルキシリルエタン等の1分子中に少なくとも1個の芳香族環を含む炭化水素溶剤である芳香族系炭化水素溶剤、等が挙げられる。
また、溶剤として脂肪酸エステルを用いても良く、炭素数6~30の飽和脂肪酸もしくは不飽和脂肪酸の炭素数2~10のアルキルエステルを適用しても良い。例えば、炭素数6~30の飽和脂肪酸もしくは不飽和脂肪酸のブチルエステルやオクチルエステルが挙げられ、例えば、TOENOL♯4115(商品名 菜種脂肪酸n-ブチル、東栄ケミカル)、TOENOL♯4100-I(商品名 菜種脂肪酸i-ブチル、東栄ケミカル)、TOENOL♯5001(商品名 パルミチン酸オクチル、東栄ケミカル)、TOENOL♯5016(商品名 パルミチン酸オクチル、東栄ケミカル)、TOENOL♯5168(商品名 パルミチン酸オクチル、東栄ケミカル)、TOENOL♯5090(商品名 菜種脂肪酸2-エチルヘキシル、東栄ケミカル)、等の市販品を用いても良い。
また、その他の添加剤として、エポキシ化植物油等の安定化剤、プロピレングリコール等の凍結防止剤、1,2-ベンゾイソチアゾール-3(2H)-オン等の防腐剤、ラウリン酸アミドプロピルベタインやヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン等の両性界面活性剤、塩化ラウリルトリメチルアンモニウムやベンザルコニウム塩化物液等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。
【0028】
本発明の農薬乳化性組成物は、農薬有効成分が溶剤に完全に溶解した溶液状製剤である。製剤形態としては、乳剤が好ましい。もしくは、オクタノール-水分配係数(LogPow)が4.0以上の農薬有効成分(A)、前記溶剤(B)、並びに前記乳化剤(C)を含む溶液状乳化性組成物に水を添加し、ホモジナイザー等で所望の乳化粒子径まで細かくする等をしてエマルジョン製剤としても良い。
本発明の農薬乳化性組成物は、例えば、オクタノール-水分配係数(LogPow)が4.0以上の農薬有効成分(A)、溶剤(B)及び乳化剤(C)に、任意の添加剤を加えて、必要に応じて加熱し、均一になるまで攪拌する。また、必要に応じて濾過工程を追加しても良い。そのような工程を経て製造することができる。
【0029】
本発明の農薬乳化性組成物は、通常水で10~5000倍に希釈して、農作物に対する有害生物が発生する場所及び発生する可能性がある場所に散布することで、有害生物を防除できる。その際に使用される水は、一般に硬水でも軟水でもよく、また、必要により、展着剤等の補助剤を添加してもよい。
【実施例0030】
以下に製造例及び実施例により本発明を更に詳細に説明する。
【0031】
実施例1
ピリダベン原体(LogPow 6.37,純度 98.7%)5.1質量部、N,N-ジメチルデカンアミド(Rhodiasolv ADMA10(商品名)、ソルベイ)39.9質量部、ヤシ脂肪酸メチル(エキセパールMC(商品名)、花王)40質量部、ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテルとポリオキシエチレンジスリルフェニルエーテルのホルムアルデヒド縮合物とドデシルベンゼンスルホン酸塩の混合物(ソルポールSM-100PW(商品名)、東邦化学)15質量部を混合し、ピリダベン乳化性組成物を調製した。
【0032】
実施例2
実施例1において、N,N-ジメチルデカンアミド(Rhodiasolv ADMA10(商品名)、ソルベイ)39.9質量部から59.9質量部に、ヤシ脂肪酸メチル(エキセパールMC(商品名)、花王)40質量部から20質量部に変更した以外は同様にして、ピリダベン乳化性組成物を調製した。
【0033】
実施例3
実施例1において、N,N-ジメチルデカンアミド(Rhodiasolv ADMA10(商品名)、ソルベイ)39.9質量部から19.9質量部に、ヤシ脂肪酸メチル(エキセパールMC(商品名)、花王)40質量部から60質量部に変更した以外は同様にして、ピリダベン乳化性組成物を調製した。
【0034】
実施例4
実施例1において、ヤシ脂肪酸メチル(エキセパールMC(商品名)、花王)40質量部を、カプリル酸メチル(TOENOL ♯2008-95(商品名)、東栄ケミカル)40質量部に変更した以外は同様にして、ピリダベン乳化性組成物を調製した。
【0035】
実施例5
実施例1において、ヤシ脂肪酸メチル(エキセパールMC(商品名)、花王)40質量部を、オレイン酸メチル(関東化学)40質量部に変更した以外は同様にして、ピリダベン乳化性組成物を調製した。
【0036】
実施例6
ピリダベン原体(LogPow 6.37,純度 98.7%)10.2質量部、N,N-ジメチルデカンアミド(Rhodiasolv ADMA10(商品名)、ソルベイ)37.3質量部、ヤシ脂肪酸メチル(エキセパールMC(商品名)、花王)37.5質量部、ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテルとポリオキシエチレンジスリルフェニルエーテルのホルムアルデヒド縮合物とドデシルベンゼンスルホン酸塩の混合物(ソルポールSM-100PW(商品名)、東邦化学)15質量部を混合し、ピリダベン乳化性組成物を調製した。
【0037】
実施例7
トルフェンピラド原体(LogPow 5.61,純度 92.6%)5.4質量部、N,N-ジメチルデカンアミド(Rhodiasolv ADMA10(商品名)、ソルベイ)39.6質量部、ヤシ脂肪酸メチル(エキセパールMC(商品名)、花王)40質量部、ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテルとポリオキシエチレンジスリルフェニルエーテルのホルムアルデヒド縮合物とドデシルベンゼンスルホン酸塩の混合物(ソルポールSM-100PW(商品名)、東邦化学)15質量部を混合し、トルフェンピラド乳化性組成物を調製した。
【0038】
実施例8
実施例7において、N,N-ジメチルデカンアミド(Rhodiasolv ADMA10(商品名)、ソルベイ)39.6質量部を59.6質量部に、ヤシ脂肪酸メチル(エキセパールMC(商品名)、花王)40質量部を20質量部に変更した以外は同様にして、トルフェンピラド乳化性組成物を調製した。
【0039】
実施例9
実施例7において、N,N-ジメチルデカンアミド(Rhodiasolv ADMA10(商品名)、ソルベイ)39.6質量部を19.6質量部に、ヤシ脂肪酸メチル(エキセパールMC(商品名)、花王)40質量部を60質量部に変更した以外は同様にして、トルフェンピラド乳化性組成物を調製した。
【0040】
実施例10
実施例7において、N,N-ジメチルデカンアミド(Rhodiasolv ADMA10(商品名)、ソルベイ)39.6質量部を、N,N-ジメチルオクタンアミドとN,N-ジメチルデカンアミドの混合物(Hallcomid M-8-10(商品名)、Stepan)39.6質量部に変更した以外は同様にして、トルフェンピラド乳化性組成物を調製した。
【0041】
実施例11
実施例7において、N,N-ジメチルデカンアミド(Rhodiasolv ADMA10(商品名)、ソルベイ)39.6質量部を、N,N-ジメチルドデカンアミドとN,N-ジメチルテトラデカンアミドの混合物(Hallcomid M-12-14(商品名)、Stepan)39.6質量部に変更した以外は同様にして、トルフェンピラド乳化性組成物を調製した。
【0042】
実施例12
実施例7において、N,N-ジメチルデカンアミド(Rhodiasolv ADMA10(商品名)、ソルベイ)39.6質量部を、N,N-ジメチル9-デセンアミド(Hallcomid 1025(商品名)、Stepan)39.6質量部に変更した以外は同様にして、トルフェンピラド乳化性組成物を調製した。
【0043】
実施例13
実施例7において、N,N-ジメチルデカンアミド(Rhodiasolv ADMA10(商品名)、ソルベイ)39.6質量部を、N,N-ジメチル9-ドデセンアミド(Hallcomid 1225(商品名)、Stepan)39.6質量部に変更した以外は同様にして、トルフェンピラド乳化性組成物を調製した。
【0044】
実施例14
ジアフェンチウロン原体(LogPow 5.76,純度 92.6%)5.1質量部、N,N-ジメチルデカンアミド(Rhodiasolv ADMA10(商品名)、ソルベイ)39.9質量部、ヤシ脂肪酸メチル(エキセパールMC(商品名)、花王)40質量部、ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテルとポリオキシエチレンジスリルフェニルエーテルのホルムアルデヒド縮合物とドデシルベンゼンスルホン酸塩の混合物(ソルポールSM-100PW(商品名)、東邦化学)15質量部を混合し、ジアフェンチウロン乳化性組成物を調製した。
【0045】
実施例15
クロルフェナピル原体(LogPow 4.83,純度 94.8%)5.3質量部、N,N-ジメチルデカンアミド(Rhodiasolv ADMA10(商品名)、ソルベイ)39.7質量部、ヤシ脂肪酸メチル(エキセパールMC(商品名)、花王)40質量部、ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテルとポリオキシエチレンジスリルフェニルエーテルのホルムアルデヒド縮合物とドデシルベンゼンスルホン酸塩の混合物(ソルポールSM-100PW(商品名)、東邦化学)15質量部を混合し、クロルフェナピル乳化性組成物を調製した。
【0046】
実施例16
実施例15において、N,N-ジメチルデカンアミド(Rhodiasolv ADMA10(商品名)、ソルベイ)39.6質量部を59.6質量部に、ヤシ脂肪酸メチル(エキセパールMC(商品名)、花王)40質量部を20質量部に変更した以外は同様にして、クロルフェナピル乳化性組成物を調製した。
【0047】
実施例17
実施例15において、N,N-ジメチルデカンアミド(Rhodiasolv ADMA10(商品名)、ソルベイ)39.6質量部を19.6質量部に、ヤシ脂肪酸メチル(エキセパールMC(商品名)、花王)40質量部を60質量部に変更した以外は同様にして、クロルフェナピル乳化性組成物を調製した。
【0048】
実施例18
フィプロニル原体(LogPow 4.00,純度96.0%)5.1質量部、N,N-ジメチルデカンアミド(Rhodiasolv ADMA10(商品名)、ソルベイ)39.9質量部、ヤシ脂肪酸メチル(エキセパールMC(商品名)、花王)40質量部、ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテルとポリオキシエチレンジスリルフェニルエーテルのホルムアルデヒド縮合物とドデシルベンゼンスルホン酸塩の混合物(ソルポールSM-100PW(商品名)、東邦化学)15質量部を混合し、フィプロニル乳化性組成物を調製した。
【0049】
実施例19
実施例18において、N,N-ジメチルデカンアミド(Rhodiasolv ADMA10(商品名)、ソルベイ)39.9質量部を59.9質量部に、ヤシ脂肪酸メチル(エキセパールMC(商品名)、花王)40質量部を20質量部に変更した以外は同様にして、フィプロニル乳化性組成物を調製した。
【0050】
実施例20
実施例18において、N,N-ジメチルデカンアミド(Rhodiasolv ADMA10(商品名)、ソルベイ)39.9質量部を19.9質量部に、ヤシ脂肪酸メチル(エキセパールMC(商品名)、花王)40質量部を60質量部に変更した以外は同様にして、フィプロニル乳化性組成物を調製した。
【0051】
実施例21
α-シペルメトリン原体(LogPow 6.33,純度 99.6%)5質量部、N,N-ジメチルデカンアミド(Rhodiasolv ADMA10(商品名)、ソルベイ)40量部、ヤシ脂肪酸メチル(エキセパールMC(商品名)、花王)40質量部、ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテルとポリオキシエチレンジスリルフェニルエーテルのホルムアルデヒド縮合物とドデシルベンゼンスルホン酸塩の混合物(ソルポールSM-100PW(商品名)、東邦化学)15質量部を混合し、α-シペルメトリン乳化性組成物を調製した。
【0052】
比較例1
スピノサド原体(LogPow 3.9,純度 90.4%) 5.6質量部、N,N-ジメチルデカンアミド(Rhodiasolv ADMA10(商品名)、ソルベイ)39.4質量部、ヤシ脂肪酸メチル(エキセパールMC(商品名)、花王)40質量部、ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテルとポリオキシエチレンジスリルフェニルエーテルのホルムアルデヒド縮合物とドデシルベンゼンスルホン酸塩の混合物(ソルポールSM-100PW(商品名)、東邦化学)15質量部を混合し、スピノサド乳化組成物を調製した。しかしながら、均一な組成物は得られなかった。
【0053】
比較例2
イミダクロプリド原体(LogPow 0.57,純度 96.2%)5.3質量部、N,N-ジメチルデカンアミド(Rhodiasolv ADMA10(商品名)、ソルベイ)39.7質量部、ヤシ脂肪酸メチル(エキセパールMC(商品名)、花王)40質量部、ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテルとポリオキシエチレンジスリルフェニルエーテルのホルムアルデヒド縮合物とドデシルベンゼンスルホン酸塩の混合物(ソルポールSM-100PW(商品名)、東邦化学)15質量部を混合し、イミダクロプリド乳化性組成物を調製した。しかしながら、均一な組成物は得られなかった。
【0054】
比較例3
アセタミプリド原体(LogPow 0.8,純度 98.3%)5.1質量部、N,N-ジメチルデカンアミド(Rhodiasolv ADMA10(商品名)、ソルベイ)39.9質量部、ヤシ脂肪酸メチル(エキセパールMC(商品名)、花王)40質量部、ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテルとポリオキシエチレンジスリルフェニルエーテルのホルムアルデヒド縮合物とドデシルベンゼンスルホン酸塩の混合物(ソルポールSM-100PW(商品名)、東邦化学)15質量部を混合し、アセタミプリド乳化性組成物を調製した。しかしながら、均一な組成物は得られなかった。
【0055】
比較例4
シアントラニリプロール原体(LogPow 1.94,純度 93.1%)5.4質量部、N,N-ジメチルデカンアミド(Rhodiasolv ADMA10(商品名)、ソルベイ)39.6質量部、ヤシ脂肪酸メチル(エキセパールMC(商品名)、花王)40質量部、ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテルとポリオキシエチレンジスリルフェニルエーテルのホルムアルデヒド縮合物とドデシルベンゼンスルホン酸塩の混合物(ソルポールSM-100PW(商品名)、東邦化学)15質量部を混合し、シアントラニリプロール乳化性組成物を調製した。しかしながら、均一な組成物は得られなかった。
【0056】
比較例5
ピリダベン原体(LogPow 6.37,純度 98.7%)5.1質量部、N,N-ジメチルデカンアミド(Rhodiasolv ADMA10(商品名)、ソルベイ)39.9質量部、ヤシ脂肪酸メチル(エキセパールMC(商品名)、花王)40質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸塩(ソルポールEX-15(商品名)、東邦化学社製)15質量部を混合し、ピリダベン乳化性組成物を調製した。
【0057】
比較例6
ピリダベン原体(LogPow 6.37,純度 98.7%)5.1質量部、N,N-ジメチルデカンアミド(Rhodiasolv ADMA10(商品名)、ソルベイ)39.9質量部、ヤシ脂肪酸メチル(エキセパールMC(商品名)、花王)40質量部、ポリオキシエチレン(9)トリスチリルフェニルエーテル(ソルポールT-10(商品名)、東邦化学社製)15質量部を混合し、ピリダベン乳化性組成物を調製した。しかしながら、均一な組成物は得られなかった。
【0058】
試験例1(生物効果試験)
実施例に係る農薬乳化性組成物について、同じ農薬有効成分の市販製剤を比較対照薬として、タバココナジラミ成虫への効力試験を実施した。
径7cmのキュウリのリーフディスクを、水で十分に湿らせた脱脂綿の上に葉裏を上にして置き、その脱脂綿をガラスシャーレ上に置いた。リーフディスクの上にタバココナジラミ成虫約30-50頭を放虫し、成虫の定着を確認した後、高さ50cmの地点から薬剤の希釈液385μLまたは770μL(展着剤は無加用)をエアブラシ(SPRAY‐WORK BASIC AIRBRRUSH,株式会社タミヤ製)で散布した。散布後、プラスチックカップ(高さ125mm、径100mm、容量350mL)の上にリーフディスクがカップ内面に向くようガラスシャーレを乗せて、タバココナジラミの成虫の逃亡を防いだ。一定時間経過後に正常個体、死亡した個体、異常症状を示す個体を計数し、ノックダウン率を測定した。異常症状とは生存しているが、飛翔できずに落下して苦悶する個体、もしくは葉面上で苦悶症状を示す個体として定義し、ノックダウン率とは供試虫の合計虫数に占める死亡虫数と異常虫数の割合を示すものとして定義した。
供試薬剤は、ピリダベン乳化性組成物(実施例1)に対して、比較対照薬剤としてピリダベンのフロアブル製剤(サンマイトフロアブル(商品名) 日産化学)、トルフェンピラド乳化性組成物(実施例7)に対して、比較対象薬剤としてトルフェンピラドの乳剤(ハチハチ乳剤(商品名) OATアグリオ)、ジアフェンチウロン乳化性組成物(実施例14)に対して、比較対照薬剤としてジアフェンチウロンの水和剤(ガンバ水和剤(商品名) シンジェンタジャパン)、クロルフェナピル乳化性組成物(実施例15)に対して、比較対照薬剤としてクロルフェナピルのフロアブル製剤(コテツフロアブル(商品名) BASFジャパン)、フィプロニル乳化性組成物(実施例18)に対して、比較対照薬剤としてフィプロニルのフロアブル製剤(プリンスフロアブル(商品名) BASFジャパン)、シペルメトリン乳化性組成物(実施例21)に対して、比較対照薬剤としてシペルメトリンの乳剤(アグロスリン乳剤(商品名) 住友化学)を使用した。
生物試験結果を表1~表6にまとめた。
【0059】
[表1]ピリダベン乳化性組成物(実施例1)の生物効果試験結果
【0060】
[表2]トルフェンピラド乳化性組成物(実施例7)の生物効果試験結果
【0061】
[表3]ジアフェンチウロン乳化性組成物(実施例14)の生物効果試験結果
【0062】
[表4]クロルフェナピル乳化性組成物(実施例15)の生物効果試験結果
【0063】
[表5]フィプロニル乳化性組成物(実施例18)の生物効果試験結果
【0064】
[表6]シペルメトリン乳化性組成物(実施例21)の生物効果試験結果
【0065】
実施例の乳化性製剤は、いずれも比較対照薬剤より速効的に作用し、防除効果も高い値を示した。そのため、本発明の農薬乳化性組成物を使用することで実際の使用場面では、防除に使用する農薬を減らすことが可能であることが示された。
【0066】
試験例2(乳化安定性試験)
本発明の農薬乳化性組成物について、乳化性について評価した。
実施例及び比較例の組成物について、15mLの水を入れた15mLのガラス製試験管を用意した。そこに1000倍希釈相当になるように、実施例及び比較例の農薬乳化性組成物15μLを添加し、10回振とうを行い、初期の乳化状態を確認した(初期評価)。その後、30分間静置し、再びその乳化状態を確認した(30分後の評価)。初期評価並びに30分後評価の基準は以下の通りである。
試験結果を表7にまとめた。
評価基準
〇:均一な乳化状態
△:均一になるが粗い粒子が確認される。
×:クリーミングまたは分離の発生が見られる。
【0067】
【0068】
実施例の組成物は全体として均一な乳化状態を容易に形成し、長時間均一な乳化状態を維持できていた。一方、比較例の製剤では乳化状態を形成した直後から粗い粒子が見られるうえ、クリーミングや分離の発生が見られた。農薬乳化性組成物は、通常水で希釈し乳化状態を形成した後に散布されるうえ、散布するまでに時間を要する場合もある。そのため、均一な乳化状態を形成できず、クリーミング等の発生が見られると作物への薬剤散布の状態が均一とならず、効果の低下や薬害の発生へとつながる恐れがあるが、実施例の製剤では均一な乳化状態を形成し、長時間均一な乳化状態を保つことができるため、そのような懸念はないと考えられる。
【0069】
本発明の農薬乳化性組成物は、水希釈時の乳化状態も良好であるうえ、既存の農薬製品と比較して、殺虫効力向上及び/または殺虫効果の速効性が発揮されるため、新たな農薬殺虫製剤として有用である。