(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134407
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】液晶レンズ、メガネ、電子製品及び液晶レンズの駆動方法
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1343 20060101AFI20230920BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20230920BHJP
G02B 3/14 20060101ALI20230920BHJP
G02B 3/08 20060101ALI20230920BHJP
G02C 7/06 20060101ALI20230920BHJP
G02C 11/00 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
G02F1/1343
G02F1/13 505
G02B3/14
G02B3/08
G02C7/06
G02C11/00
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039710
(22)【出願日】2023-03-14
(31)【優先権主張番号】202210247667.6
(32)【優先日】2022-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】523093675
【氏名又は名称】成都耶塔科技有限責任公司
【氏名又は名称原語表記】CHENGDU YETA TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No. 16, 19th Floor, Building 2, No. 88 Jitai 5th Road, Hi-tech Zone, Chengdu, Sichuan 610000, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】馮 文斌
(72)【発明者】
【氏名】劉 志強
(72)【発明者】
【氏名】王 濱
【テーマコード(参考)】
2H006
2H088
2H092
【Fターム(参考)】
2H006BD03
2H006CA00
2H088EA08
2H088EA42
2H088HA01
2H088HA02
2H088HA06
2H088MA16
2H092GA03
2H092GA13
2H092GA28
2H092HA04
2H092NA27
2H092PA01
2H092PA06
2H092RA03
(57)【要約】 (修正有)
【解決手段】本発明は、液晶レンズの技術分野に属し、具体的には液晶レンズ、駆動方法、メガネ、電子製品である。本発明の液晶レンズは、液晶層、第1の電極層、第2の電極層、第1の透明基板及び第2の透明基板を含み、前記第2の電極層は、複数の電極ユニットを含み、前記複数の電極ユニットは、第2の電極層の中心に近い位置から第2の電極層の中心から離れた位置へ順に配列され、各前記電極ユニットは、少なくとも1本の導線を含み、前記導線は、電極ユニットの第1の位置から電極ユニットの第2の位置まで延伸し、前記第2の位置と第2の電極層の中心との間の距離は、第1の位置と第2の電極層の中心との間の距離よりも大きく、隣接する前記導線の間のピッチは100μm以下である。
【効果】本発明の液晶レンズは、駆動方法が簡単であり、理想的な電位分布を得ることができ、高抵抗膜の特性の変化による影響を受けない。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶層、第1の電極層、第2の電極層、第1の透明基板及び第2の透明基板を含む液晶レンズであって、前記第1の電極層及び第2の電極層は、それぞれ液晶層の対向する両側に位置し、前記第1の透明基板は、第1の電極層の液晶層に背く側に位置し、前記第2の透明基板は、第2の電極層の液晶層に背く側に位置し、
前記第2の電極層は、複数の電極ユニットを含み、前記複数の電極ユニットは、第2の電極層の中心に近い位置から第2の電極層の中心から離れた位置へ順に配列され、各前記電極ユニットは、少なくとも1本の導線を含み、前記導線は、電極ユニットの第1の位置から電極ユニットの第2の位置まで延伸し、前記第2の位置と第2の電極層の中心との間の距離は、第1の位置と第2の電極層の中心との間の距離よりも大きく、隣接する前記導線の間のピッチは100μm以下であり、前記導線は、一端が第1の駆動電圧によって駆動され、対向する他端が第2の駆動電圧によって駆動されることを特徴とする液晶レンズ。
【請求項2】
前記複数の電極ユニットは、第1の駆動電圧及び第2の駆動電圧の作用下で前記液晶層における液晶がフレネルレンズと等価の位相分布を形成するように配置されることを特徴とする請求項1に記載の液晶レンズ。
【請求項3】
前記電極ユニットの導線は1本であり、前記導線は、複数の中間接続セグメント及び複数の同心円環を含み、前記隣接する同心円環の間は、中間接続セグメントによって接続されることを特徴とする請求項1に記載の液晶レンズ。
【請求項4】
電極リード群を更に含み、前記電極リード群は、第1の電極リード及び第2の電極リードを含み、前記電極ユニットの導線は、内側から外側へ配列された複数の曲線セグメントを含み、各曲線セグメントは、電極リード群の所で分断され、最外周に位置する曲線セグメントは、一端が第2の電極リードに電気的に接続され、対向する他端が隣接する曲線セグメントと電極リード群の同一側で接続され、最内側の曲線セグメントは、一端が第1の電極リードに電気的に接続され、対向する他端が隣接する曲線セグメントと電極リード群の同一側で接続され、残りの曲線セグメントは、一端が隣接する曲線セグメントの一方と電極リード群の同一側で接続され、対向する他端が隣接する曲線セグメントの他方と電極リード群の同一側で接続されることを特徴とする請求項1に記載の液晶レンズ。
【請求項5】
前記曲線セグメントは円弧であり、且つ隣接する前記導線の間のピッチは同じであることを特徴とする請求項4に記載の液晶レンズ。
【請求項6】
前記曲線セグメントは円弧であり、隣接する前記曲線セグメントの少なくとも一部の間のピッチは等しくないことを特徴とする請求項4に記載の液晶レンズ。
【請求項7】
隣接する各前記曲線セグメントの間のピッチは、液晶レンズにより形成された電位分布が球面分布又は円錐面分布であることを満たすことを特徴とする請求項6に記載の液晶レンズ。
【請求項8】
前記導線の形状は螺旋であることを特徴とする請求項1に記載の液晶レンズ。
【請求項9】
前記導線の形状は、第1の螺旋方程式から得られた螺旋、又は第2の螺旋方程式から得られた螺旋、又は第3の螺旋方程式から得られた螺旋、又は第4の螺旋方程式から得られた螺旋であり、前記第1の螺旋方程式は、
【請求項10】
第2の電極層と前記液晶層の間に高抵抗膜が設けられ、又は第2の電極層と液晶層の間に絶縁層が設けられ、又は第2の電極層と液晶層の間に絶縁層が設けられると共に、絶縁層と液晶層の間に高抵抗膜が設けられることを特徴とする請求項1に記載の液晶レンズ。
【請求項11】
前記液晶レンズは、第2の電極層への投影が隣接する電極ユニットの境界に位置し、第3の駆動電圧を受けるための導電部材を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の液晶レンズ。
【請求項12】
請求項1~11の何れか1項に記載の液晶レンズを含むことを特徴とするメガネ。
【請求項13】
制御回路及び請求項1~11の何れか1項に記載の液晶レンズを含む電子製品であって、前記制御回路は、前記液晶レンズに電気的に接続されることを特徴とする電子製品。
【請求項14】
請求項1~11の何れか1項に記載の液晶レンズを駆動するための液晶レンズの駆動方法であって、第1の駆動電圧をV1とし、第2の駆動電圧をV2とし、
S1、液晶レンズの液晶線形応答電圧区間を取得するステップと、
S2、前記液晶線形応答電圧区間に基づいて液晶線形動作区間内の最小電圧Vmin及び最大電圧Vmaxを取得するステップと、
S3、液晶レンズの焦点屈折力を調整し、及び/又は液晶レンズの状態を正レンズと負レンズの間で切り替えるために、最小電圧Vmin及び最大電圧Vmaxに基づいてV1(Vmin≦V1≦Vmax)とV2(Vmin≦V2≦Vmax)の電圧差を調整するステップと、を含むことを特徴とする液晶レンズの駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶レンズの技術分野に属し、具体的には液晶レンズ、メガネ、電子製品及び液晶レンズの駆動方法である。
【背景技術】
【0002】
適用シーンによって、レンズの焦点距離を容易に調節できるようにする必要があり、例えば近視及び老眼の両方になったユーザは、その近視を矯正可能な焦点距離とその老眼を矯正可能な焦点距離の間で速やかで容易に切り替える必要がある。また、例えば、現在、仮想現実(VR)及び拡張現実(AR)の製品は、メガネ、ヘルメットを主とする。また、異なるユーザによって近視又は老眼の度数が異なるため、ユーザがVR/ARメガネ又はヘルメットを着用した後、画面を明瞭に見ることを実現できるために、レンズを手動で交換する必要があり、使用時に非常に不便である。
【0003】
また、VR/ARメガネ又はヘルメットのレンズにより提供可能な度数のレンズの種類が限られるため、近視のユーザは、近視メガネ及びVR/ARメガネ又はヘルメットを同時に着用する必要があり、遠視のユーザは、遠視メガネ及びVR/ARメガネ又はヘルメットを同時に着用する必要があり、このようにユーザへの圧迫感が強く、快適感が低い。
【0004】
現在、一部のフレネル液晶レンズは、レンズに使用されることが考慮されており、これらの液晶レンズは、個別に制御される複数の同心円電極によって電圧分布が制御され、位相分布が制御される。これらの同心円電極は、導線を介して外部から電圧を印加し、これらの導線は、同心円電極と異なる電極層に分布する必要があり、このような多層設計によって、レンズのコストが大幅に増加する。外部から印加される電圧信号の数が限られるため、このようなフレネルレンズの位相分布の平滑度が非常に低い。更に、複数の電圧源を必要とするため、レンズの駆動方法が非常に複雑になり、理想的な位相分布を得ることが非常に困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これに鑑み、本発明は、従来技術においてレンズの焦点距離を調整する時に個別に駆動する必要のある電極の数が多く、制御方法が複雑であるという技術的問題を解決するために、液晶レンズ、メガネ、電子製品及び液晶レンズの駆動方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明において採用される技術的解決手段は、以下の通りである。
【0007】
第1の態様において、本発明は、液晶層、第1の電極層、第2の電極層、第1の透明基板及び第2の透明基板を含む液晶レンズであって、前記第1の電極層及び第2の電極層は、それぞれ液晶層の対向する両側に位置し、前記第1の透明基板は、第1の電極層の液晶層に背く側に位置し、前記第2の透明基板は、第2の電極層の液晶層に背く側に位置し、
前記第2の電極層は、複数の電極ユニットを含み、前記複数の電極ユニットは、第2の電極層の中心に近い位置から第2の電極層の中心から離れた位置へ順に配列され、各前記電極ユニットは、少なくとも1本の導線を含み、前記導線は、電極ユニットの第1の位置から電極ユニットの第2の位置まで延伸し、前記第2の位置と第2の電極層の中心との間の距離は、第1の位置と第2の電極層の中心との間の距離よりも大きく、隣接する前記導線の間のピッチは100μm以下であり、前記導線は、一端が第1の駆動電圧によって駆動され、対向する他端が第2の駆動電圧によって駆動される液晶レンズを提供する。
【0008】
第2の態様において、本発明は、第1の態様に記載の液晶レンズを含むメガネを提供する。
【0009】
第3の態様において、本発明は、制御回路及び第1の態様に記載の液晶レンズを含む電子製品であって、前記制御回路は、前記液晶レンズに電気的に接続される電子製品を提供する。
【0010】
第4の態様において、本発明は、第1の態様に記載の液晶レンズを駆動するための液晶レンズの駆動方法であって、第1の駆動電圧をV1とし、第2の駆動電圧をV2とし、
S1、液晶レンズの液晶線形応答電圧区間を取得するステップと、
S2、前記液晶線形応答電圧区間に基づいて液晶線形動作区間内の最小電圧Vmin及び最大電圧Vmaxを取得するステップと、
S3、液晶レンズの焦点屈折力を調整し、及び/又は液晶レンズの状態を正レンズと負レンズの間で切り替えるために、最小電圧Vmin及び最大電圧Vmaxに基づいてV1(Vmin≦V1≦Vmax)とV2(Vmin≦V2≦Vmax)の電圧差を調整するステップと、を含む液晶レンズの駆動方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
有益な効果は、以下の通りである。本発明の液晶レンズ、メガネ、電子製品及び液晶レンズの駆動方法は、ピッチが100μm以下で第2の電極層の中心に近い位置から第2の電極層の中心から離れた位置まで延伸する導線を利用して電極ユニットを形成し、各電極ユニットを第2の電極層の中心に近い位置から第2の電極層の中心から離れた位置へ順に配列する。各電極ユニットに前述したように導線が設けられた後、各電極ユニットは、対応する輪帯領域の電位分布を正確に制御すると共に、対応する輪帯領域の電位を平滑に変化させることができる。複数の電極ユニットが第2の電極層の中心に近い位置から第2の電極層の中心から離れた位置へ順に配列されるため、各電極に対応する輪帯領域も液晶レンズの中心より内側から外側へ順に配列され、これらの輪帯領域は、組み合わせられて共に液晶レンズの動作領域を構成する。本発明は、各電極ユニットにおける導線の両端にそれぞれ印加された第1の駆動電圧及び第2の駆動電圧を統括的に制御するだけで、液晶層の電位分布を正確に制御することができ、制御方法が簡単であり、液晶レンズの効果も顕著に向上する。なお、本発明は、前述したようにした後、高抵抗膜を必要とすることなく輪帯領域の正確な電位分布を実現することができ、電位分布の制御精度が高抵抗膜の特性の変化による影響を受けないため、液晶レンズの安定性がより高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明の実施例の技術的解決手段をより明瞭に説明するために、以下、本発明の実施例に使用される必要のある図面を簡単に紹介し、当業者にとって、創造的な労働をすることなく、更にこれらの図面に基づいて他の図面を得ることができ、これらは全て本発明の保護範囲内にある。
【
図1】本発明の液晶レンズの3次元構造概略図である。
【
図2】本発明の第1の構造形態を有する第2の電極層の構造概略図である。
【
図3】本発明の第1の構造形態を有する電極ユニットの構造概略図である。
【
図4】本発明の液晶レンズの径方向における電位分布の概略図である。
【
図5】本発明の第2の構造形態を有する第2の電極層の構造概略図である。
【
図6】本発明の第2の構造形態を有する電極ユニットの構造概略図である。
【
図8】本発明の異なるパラメータを採用した最適曲線の概略図である。
【
図9】本発明の第3の構造形態を有する第2の電極層の構造概略図である。
【
図10】本発明の第3の構造形態を有する電極ユニットの構造概略図である。
【
図11】本発明において採用される液晶レンズの駆動方法のフローチャートである。
【
図12】本発明において採用される液晶レンズの駆動機器の構造概略図である。
【
図13】導電部材によって第3の駆動電圧が導入されていない場合における2つの電極の電圧境界付近の電位分布図である。
【
図14】隣接する2つの電極ユニットの境界に導電部材が設けられた場合の構造概略図である。
【
図15】隣接する2つの電極ユニットの境界に導電部材が設けられた場合の局所的拡大図である。
【
図16】導電部材を第2の基板に向かう側に設け且つ第3の駆動電圧を印加した場合における2つの電極の電圧境界付近の電位分布図である。
【
図17】導電部材を第2の基板に背く側に設け且つ第3の駆動電圧を印加した場合における2つの電極の電圧境界付近の電位分布図である。
【
図18】本発明の電極ユニットに同心円弧構造が採用されたフレネル液晶レンズが正レンズ状態にある場合の干渉縞図である。
【
図19】本発明の電極ユニットに同心円弧構造が採用されたフレネル液晶レンズが負レンズ状態にある場合の干渉縞図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施例1
図1に示すように、本実施例は、液晶レンズを提供し、前記液晶レンズは、液晶層30、第1の電極層20、第2の電極層40、第1の透明基板10及び第2の透明基板50を含み、前記第1の電極層20及び第2の電極層40は、それぞれ液晶層30の対向する両側に位置し、前記第1の透明基板10は、第1の電極層20の液晶層30に背く側に位置し、前記第2の透明基板50は、第2の電極層40の液晶層30に背く側に位置する。
【0014】
本実施例における液晶レンズは、層状構造を採用することができる。前記第1の透明基板10、第1の電極層20、液晶層30、第2の電極層40及び第2の透明基板50は、それぞれ異なる層に位置し、前記各層は、液晶レンズの光透過方向、即ち各層の法線方向に沿って積層して配列される。配列方法は、
図1を参照することができ、
図1において、液晶レンズの光透過方向に沿って下から上へ順に第1の透明基板10、第1の電極層20、液晶層30、第2の電極層40及び第2の透明基板50である。第1の透明基板10及び第2の透明基板50は、例えばガラス基板、プラスチック基板などの一定の強度と剛性を有する透明材料で製造されたものであってよい。第1の基板は、液晶レンズを支持する役割を果たすことができる。第1の透明基板10は、第1の電極層20の担持体とすることができ、第1の電極層20は、第1の基板にめっきすることができる。第2の基板も、支持する役割を果たし、更に第2の電極層40の担持体とすることができ、第2の電極層40は、第2の透明基板50にめっきすることができる。
【0015】
図2、
図5及び
図9に示すように、前記第2の電極層40は、複数の電極ユニット430を含み、前記複数の電極ユニット430は、第2の電極層40の中心に近い位置から第2の電極層40の中心から離れた位置へ順に配列され、各前記電極ユニット430は、少なくとも1本の導線431を含み、前記導線431は、位置が規制されながら電極ユニット430の第1の位置から電極ユニット430の第2の位置まで延伸し、前記第2の位置と第2の電極層40の中心との間の距離は、第1の位置と第2の電極層40の中心との間の距離よりも大きく、隣接する前記導線431の間のピッチは100μm以下である。
図2に示すように、図中のdは、隣接する導線431の間のピッチである。本実施例において、前記導線は、一端が第1の駆動電圧によって駆動され、対向する他端が第2の駆動電圧によって駆動される。第1の位置は、当該電極ユニット430の第2の電極層40の中心に最も近い位置であってよく、第2の位置は、当該電極ユニット430の第2の電極層40の中心から最も離れた位置であってよい。
【0016】
各電極ユニット430は、それぞれ1つの輪帯領域に対応し、各電極ユニット430は、当該輪帯領域の電位分布を制御するために用いられる。複数の電極ユニット430が第2の電極層40の中心に近い位置から第2の電極層40の中心から離れた位置へ順に配列されるため、対応する各輪帯領域も液晶レンズの中心より内側から外側へ順に配列され、これらの輪帯領域は、組み合わせられて共に液晶レンズの動作領域を構成する。具体的に実施する時、電源により提供される第1の駆動電圧が電極リードを介して導線431の一端に印加されるように、各電極ユニット430の導線431の一端を電極リードによって第1の駆動電圧を提供する電源に接続し、その後、電源により提供される第2の駆動電圧が電極リードを介して導線431の他端に印加されるように、導線431の他端を電極リードによって第2の駆動電圧を提供する電源に接続することができる。
【0017】
本実施例では、一定の抵抗値を有する導線431は、電極ユニット430の第2の電極層40の中心に近い位置から電極ユニット430の第2の電極層40の中心から離れた位置まで徐々に延伸する。導線431の長さがその幅と厚さよりも大きいため、導線431は線状である。導線431の数は、1本であってもよく、2本以上であってもよい。本実施例において、前記第1の電極層20は、共通電圧を受けるために用いられ、各電極ユニット430における導線431は、一端が第1の駆動電圧を受け、他端が第2の駆動電圧を受ける。
【0018】
図4に示すように、1つの電極ユニット430に対して、前述したように電圧を印加した後、導線431が一定の長さを有するため、導線431の電圧は、導線431の長さ・位置に応じて徐々に変化する。また、導線431が第1の位置から第2の位置まで延伸する過程で内側から外側へ輪帯領域の各位置を経由するため、導線431が第1の位置から第2の位置まで延伸するにつれて、導線431が経由した空間付近の電位も勾配変化を示し、当該電極ユニット430が液晶層30において形成した電界も径方向に沿う勾配分布を呈する。例えば、電極ユニット430に対応する輪帯領域における液晶層30の電位の径方向に沿う変化傾向は、第1の位置から第2の位置まで電位が徐々に増加し、第2の位置で電位が最大となることであってもよい。また、例えば、電極ユニット430の輪帯領域における液晶層30の電位の径方向に沿う変化傾向は、第1の位置から第2の位置まで電位が徐々に減少し、第2の位置で電位が最小となることであってもよい。本実施例は、各電極ユニット430の径方向の幅を設定することで電極ユニット430における径方向の電位分布状況を調整することができるため、本実施例において、各電極ユニット430の径方向の幅は、必要に応じて設定することができ、ここで限定されない。液晶ダイレクタ配列が電気的に制御されるように調節可能であり、不均一な電界において異なる屈折率勾配分布を呈するため、一定の勾配分布を有する電圧を印加すれば、液晶ダイレクタが不均一な分布を形成し、液晶層30を介して伝搬される出射光が特定の位相分布を呈するように誘導することができる。従って、本実施例は、第1の駆動電圧及び第2の駆動電圧を調整することで各電極ユニット430に対応する輪帯領域の電位分布を調整し、液晶レンズ全体の電位分布を調整し、液晶レンズの焦点距離を調整する。本実施例において複数の導線431を有するが、2つの駆動電圧を必要とするだけで液晶レンズが動作するように駆動することができる。また、各導線を個別に制御することなく、この2つの駆動電圧のうちの一方を調整するか又は両方を同時に調整するだけで液晶レンズの焦点屈折力に対する制御を実現することができるため、制御方法も非常に簡単であり、必要とされる電極引き出し線が少なく、そのコストがより低い。
【0019】
本実施例は、各電極ユニット430における導線431の形状を設定することで単位電極に対応する輪帯領域の電位分布を制御することができる。電極ユニット430に対応する輪帯領域の電位分布をより正確に制御するために、導線431の周囲に高抵抗膜又は高誘電率材料を充填する方法を採用する場合が多い。しかしながら、高抵抗膜及び高誘電率材料には特性が安定的ではないという特徴があるため、高抵抗膜又は高誘電率材料を採用することで電位分布の制御精度を向上させることができるが、その安定性を保証することができない。本実施例は、導線431の形状を設定し、導線431の間のピッチを100μm以内に設定することで、高精度の電位分布を実現し、高抵抗膜を使用することなく対応する輪帯領域において理想的な電位分布を形成すると共に、高抵抗膜又は高誘電率材料の安定性が低いことによって液晶レンズの効果が影響されることを克服する。
【0020】
1882年に、フランスの物理学者Augustin Jean Fresnelは、光学イメージングにおいて光学表面曲率がイメージング特性を決定するという原理により、光学レンズの設計においてその表面曲率が変わらないように維持できるが、加工中にその表面の厚さを減少させ、このように設計されたレンズでも光線を集束させる役割を果たすことができ、その表面に入射した光線を焦点に集めることができると提案した。レンズの実際の加工及び適用において、球面レンズを複数の非連続的な別体と見なし、別体間の余分な部分を除去することができるが、加工中にその表面の元の曲率が変わらないように維持すれば、光線の偏向に影響を与えることはない。フレネルレンズは、このような原理に基づいて設計されて加工されたものであり、前述した複数の非連続的な別体の機能は、フレネルレンズにおける一連の同心輪帯によって実現される。本実施例は、液晶レンズを利用して前記フレネルレンズと等価の効果を達成することもでき、これに対して、本実施例において、前記複数の電極ユニット430は、第1の駆動電圧及び第2の駆動電圧の作用下で前記液晶層30における液晶がフレネルレンズと等価の位相分布を形成するように配置される。前記液晶層30における液晶がフレネルレンズと等価の位相分布を形成することは、光線が液晶層を通過した後の位相分布が、光線がフレネルレンズを通過した後の位相分布と同じであることを意味する。
【0021】
図4に示すように、各電極ユニット430は、それぞれ1つのフレネルレンズの輪帯に対応する。任意の1つの電極ユニット430に第1の駆動電圧及び第2の駆動電圧が印加された後、この電極ユニット430が形成した電界により、液晶層30における関連領域の液晶が特定の位相分布を形成する。この特定の位相分布により、液晶層30の光線に対する変調効果が対応するフレネルレンズにおけるフレネル輪帯の光線に対する変調効果と等価になる。全ての電極ユニット430を組み合わせると、1つのフレネルレンズ全体と等価になる。本実施例は、更に第1の駆動電圧及び第2の駆動電圧を調整することでフレネルレンズと等価の液晶レンズの焦点距離を調整することができる。本実施例において、各電極ユニット430の導線431は、いずれも透明な導電材料で製造することができ、前記透明な導電材料は、ITO電極、IZO電極、FTO電極、AZO電極、IGZO電極などを含むが、これら限定されない。
【0022】
本実施例は、更に各電極ユニット430に印加される第1の駆動電圧と第2の駆動電圧の大小関係を変更することで液晶レンズの焦点屈折力の正負の変化を実現し、液晶レンズが負レンズから正レンズに変化するか又は正レンズから負レンズに変化することを実現することができる。例えば、導線431の電極の中心に近い一端に印加される第1の駆動電圧が導線431の電極の中心から離れた一端に印加される第2の駆動電圧よりも小さい場合、本実施例の液晶レンズは、凸レンズの特性を有し、この場合、本実施例の液晶レンズで製造されたメガネは、老眼メガネとして使用することができ、第1の駆動電圧と第2の駆動電圧の大小関係を変更することで導線431の電極の中心に近い一端に印加される第1の駆動電圧を導線431の電極の中心から離れた一端に印加される第2の駆動電圧より大きくする場合、本実施例の液晶レンズは、凹レンズの特性を有し、この場合、本実施例の液晶レンズで製造されたメガネは、近視メガネとして使用することができる。
【0023】
1つの実施形態として、1つの電極ユニット430の導線431の本数が2以上である場合、当該電極ユニット430の導線431は、第2の電極層40の一点を中心として回転対称となる。前記回転対称の分布とは、導線431により形成された全ての図形を同時に第2の電極層40の1つの定点を中心に所定の角度だけ回転させた後、導線431により形成された新しい画像が前の画像と完全に重なることを意味する。導線431が第2の電極層40の一点を中心に回転対称となる場合、電位も回転対称の分布を形成する。
【0024】
導線431の数が2本以上である場合、前記電極ユニット430は、第1の電気コネクタ及び第2の電気コネクタを更に含み、前記第1の電気コネクタは、それに電気的に接続される各導線431の端部に同じ第1の駆動電圧を提供するために用いられる。前記第2の電気コネクタは、それに電気的に接続された各導線431の端部に同じ第2の駆動電圧を提供するために用いられる。好ましい一実施形態として、本実施例において、隣接する導線431の間のピッチは同じである。別の好ましい実施形態として、本実施例において、導線431の各箇所の幅は同じである。なお、本実施例において、隣接する導線431の間のピッチが100μm以下である場合、各電極ユニット430は、1本の導線431のみを利用して比較的理想的な電位分布を得ることもできる。
【0025】
1つの実施形態として、電極ユニット430の導線431が1本である場合、前記導線431は、複数の中間接続セグメント4321及び複数の同心円環4322を含み、前記隣接する同心円環4322の間は、中間接続セグメント4321によって接続される。
図2及び
図3に示すように、理解を容易にするために、図面では、異なる断面線で異なる電極ユニット430を示しており、そのうちの何れか1つの電極ユニット430にとって、導線431は、複数の同心円環4322で構成され、これらの同心円環4322は、内側から外側へ電極ユニット430に充填され、隣接する同心円環4322の間は、中間接続セグメント4321の端部同士が接続された後に完全な導線431を形成する。前述した構造を採用する時、第2の電極層40の下方、又は上方から駆動電圧が各電極ユニット430まで流れるための電極リードを接続することができる。
【0026】
本実施例において、電極ユニット430の導線は、規則的な同心円環構造を採用し、且つ導線の間のピッチを変化させる必要がない。隣接する導線の間のピッチが同じである場合、放物線形状の電位分布を形成することができ、構造の複雑さが低いため、製造コストも低い。
【0027】
図5及び
図6に示すように、1つの実施形態として、本実施例において、前記導線431の形状は螺旋である。螺旋の始点は、電極ユニット430における第2の電極層40の中心に最も近い位置であってもよい。前記螺旋は、始点位置から周方向に沿って第2の電極層40の縁部位置へ円を描くように延伸し、螺旋が第2の電極層40の中心に近い位置から第2の電極層40の縁部位置まで延伸する過程で、電極ユニット430の大部分の領域が螺旋で充填され、電極ユニット430の電位も螺旋の延伸に伴って徐々に変化するため、隣接する前記導線の間のピッチが100μm以下である場合でも比較的理想的な電位分布を得ることができる。
【0028】
本実施例において、液晶レンズに対して、前記導線431の形状を設定するだけで、各種の液晶レンズの機能要件を満たす正確な電位分布を得ることができる。導線431の形状の具体的な設定方法は、以下の通りである。
【0029】
図7に示すように、本実施例において、前記導線431の形状は、第1の螺旋方程式から得られた螺旋であり、前記第1の螺旋方程式は、
【0030】
【0031】
本実施例において、前記導線431の形状は、第2の螺旋方程式から得られた螺旋であり、前記第2の螺旋方程式は、
【0032】
前述したように設けられた導線431を採用することにより、正確な球面分布を呈する電位を得ることができ、得られた液晶レンズの波面分布も正確な球面分布となる。球面波面を有するレンズは、イメージングにおいて最も理想的な効果を有するが、一般的なレンズは、プロセスが複雑で精細な外形加工が行われてはじめて近似球面波面分布を有するレンズを得ることができるが、ここの説明によれば、導線の形状が上記要件を満たすだけで正確な球面波面分布を有するレンズを得ることができる。複雑な加工を必要とすることなく高精度の球面波面分布を有するレンズを得ることができ、製品の製造コストが大幅に低下する。
【0033】
前記導線431の形状は、第3の螺旋方程式から得られた螺旋であり、前記第3の螺旋方程式は、
【0034】
前述したように設けられた導線431を採用することにより、正確な円錐面分布を呈する電位を得ることができ、得られた液晶レンズの波面分布も正確な円錐面分布となる。
【0035】
【0036】
【0037】
1つの実施形態として、本実施例において、前記導線431の形状はアルキメデス螺旋であり、この形状の数式は、
【0038】
アルキメデス螺旋は等距離螺旋であり、即ち、螺旋は等距離で外側へ広がる。螺旋パラメータ方程式において、kは螺旋が中心から縁部まで広がる周期を表す。
【0039】
1つの好ましい実施形態として、本実施例において、前記電極ユニット430の線形状はフェルマー螺旋であり、この形状の数式は、
【0040】
フェルマー螺旋は、アルキメデス螺旋に比べ、螺旋が外側へ広がるにつれて、螺旋の半径が非線形的に増加し、外側へ広がるほど、螺旋の半径の増加速度が遅くなる点で異なる。
図9及び
図10に示すように、
図9における第2の電極層には3つの電極ユニットが設けられ、内側から外側へそれぞれ第1の電極ユニット43-1、第2の電極ユニット43-2及び第3の電極ユニット43-3である。
【0041】
本実施例において、第2の電極層40は、電極リード群4110を更に含み、前記電極リード群4110は、第1の電極リード411及び第2の電極リード412を含む。第1の電極リード411は、電極ユニット430における導線431の電極の中心に近い一端に電気的に接続され、第2の電極リード412は、電極ユニット430における導線431の電極の中心から離れた一端に電気的に接続される。第1の電極線及び第2の電極線は、いずれも第2の電極層40の中心に近い位置から外へと引き出される。
【0042】
本実施例において、前記電極ユニット430の導線431は、内側から外側へ配列された複数の曲線セグメントを含む。本実施例において、1本の導線431は、端部同士が接続された複数の曲線セグメントで構成されると見なすことができる。前述した内側から外側への配列とは、液晶レンズの径方向に沿って第2の電極層40の中心に近い位置から第2の電極層40の中心から離れた位置へ分布することを意味する。第2の電極層40の中心に近い方向は内側とされ、第2の電極層40の中心から離れた方向は外側とされる。本実施例において、各曲線セグメントは、電極リード群4110との接触又は相互作用を回避するために、電極リード群4110の所で分断される。各曲線セグメントが電極リードの所で分断された後に2つの端部が形成され、この2つの端部は、それぞれ電極リードの両側に位置する。
【0043】
最外周に位置する曲線セグメント4311は、一端が第2の電極リード412に電気的に接続され、対向する他端が隣接する曲線セグメントと電極リード群4110の同一側で接続され、最内側の曲線セグメント4312は、一端が第1の電極リード411に電気的に接続され、対向する他端が隣接する曲線セグメントと電極リード群4110の同一側で接続され、残りの曲線セグメントは、一端が隣接する曲線セグメントの一方と電極リード群4110の同一側で接続され、対向する他端が隣接する曲線セグメントの他方と電極リード群4110の同一側で接続される。
【0044】
図10に示すように、導線431を構成する複数の曲線セグメントのうち2つの曲線セグメントが特別であり、一方は、電極ユニット430における最外周の曲線セグメント4311であり、即ち、電極ユニット430における第2の電極層40の中心から最も遠い曲線セグメントである。他方は、最内側の曲線セグメント4312であり、即ち、電極ユニット430における第2の電極層40の中心から最も近い曲線セグメントである。最外周の曲線セグメント4311は、一端が第2の電極リード412に電気的に接続され、他端が次の曲線セグメント(径方向に第2の電極層40の中心に一層近い曲線セグメント)に電気的に接続される。最内側の曲線セグメント4312は、一端が第1の電極リード411に電気的に接続され、他端が前の曲線セグメント(径方向に第2の電極層40の中心から一層離れた曲線セグメント)に接続される。導線431を構成する全ての曲線セグメントのうち、前述した2つの曲線セグメントを除き、残りの曲線セグメントの両端部は、いずれもそれに隣接する曲線セグメントに接続され、これらの曲線セグメントを説明しやすくするために、本明細書において中間曲線セグメント4313とも呼ぶ。これらの中間曲線セグメント4313は、一端が前の曲線セグメントに接続され、他端が次の曲線セグメントに接続される。このように、これらの曲線セグメントは、端部同士が接続されて電極ユニット430の第2の電極層40の中心に近い位置から第2の電極ユニット430の縁部位置まで連続的に延伸し且つ第2の電極層40に十分に充填される導線431を形成する一方、電極リード群4110を巧みに避け、電位の正確な分布を実現しながら電極リード群4110の影響を回避する。本実施例において、隣接する2つの曲線セグメントの端部の間は、連結セグメント4314によって接続されてもよい。即ち、連結セグメント4314は、一端が前の曲線セグメントに接続され、他端が次の曲線セグメントに接続される。第1の電極リード411及び第2の電極リード412は、直線を採用することができ、各連結セグメント4314も、第1の電極リード411又は第2の電極リード412に平行な直線を採用することができる。
【0045】
図10に示すように、1つの好ましい実施形態として、本実施例において、前記曲線セグメントは円弧であり、且つ隣接する前記導線の間のピッチは同じである。前述したようにすれば、正確な放物線分布の電位を得ることができるだけでなく、更に簡単な構造形態を利用して製造コストを削減することもできる。この構造を採用したフレネル液晶レンズの効果は、
図18及び
図19を参照することができ、
図18及び
図19は、単一の曲線セグメントが円弧である時に、液晶レンズが正レンズ及び負レンズの動作状態にある場合の干渉縞図であり、図面から分かるように、このような構造のフレネル液晶レンズの電位は良好な放物線分布を呈する。
【0046】
別の実施形態として、本実施例において、隣接する前記曲線セグメントの少なくとも一部の間のピッチは等しくない。本実施例は、曲線セグメントの間のピッチを設定することで電極ユニット430の電位分布を制御し、それにより液晶レンズの光に対する変調効果を制御することもできる。
【0047】
隣接する各前記曲線セグメントの間のピッチは、液晶レンズにより形成された電位分布が球面分布であることを満たす。隣接する各前記曲線セグメントの間のピッチが前述した要件を満たす場合、得られた液晶レンズの波面分布は球面になる。球面波面を有するレンズは、イメージングにおいて最も理想的な効果を有するが、一般的なレンズは、プロセスが複雑で精細な外形加工が行われてはじめて近似球面波面分布を有するレンズを得ることができるが、ここの説明によれば、隣接する前記曲線セグメントの間のピッチが前述した要件を満たすだけで正確な球面波面分布を有するレンズを得ることができる。隣接する各前記曲線セグメントの間のピッチは、液晶レンズにより形成された電位分布が円錐面分布であることを満たす。隣接する各前記曲線セグメントの間のピッチが前述した要件を満たす場合、得られた液晶レンズの波面分布は円錐面になる。1つの好ましい形態として、本実施例において、第2の電極層40と液晶層30の間に高抵抗膜が設けられる。現在主に高抵抗膜を利用して液晶レンズの電位分布を誘導することと異なり、本実施例において、主に導線431付近の電界の空間における変化を減少させるために、隣接する前記導線431の間に高抵抗膜が設けられている。隣接する前記導線431の間のピッチが100μm以下であり、電位分布が主に導線431によって決定されるため、本実施例における高抵抗膜の特性の変化による電位分布への影響が無視されてもよい。
【0048】
更に、第2の電極層40と液晶層30の間に絶縁層を設け、又は第2の電極層40と液晶層30の間に絶縁層を設けると共に、絶縁層と液晶層30の間に高抵抗膜を設けることで、導線431付近の電界の空間における変化を減少させてもよい。
図13に示すように、隣接する2つの電極ユニットの境界において電圧が第1の駆動電圧から第2の駆動電圧にジャンプするため、この領域の電圧が突然に変化し、他の領域よりも強い電界が生じ、この電界は、境界における一定範囲内の電位分布に影響を与えるため、液晶レンズのイメージング品質を低下させる。これに対して、
図14に示すように、本実施例において、前記液晶レンズは、導電部材を更に含み、前記導電部材の第2の電極層への投影は、隣接する電極ユニットの境界に位置し、前記導電部材は、第3の駆動電圧を受けるために用いられる。
【0049】
図15に示すように、
図15は、
図14の円環内の任意の小さい部分を取って拡大した後の概略図であり、図中のa及びbは、2つの電極ユニットの導線のうちそれぞれ別の電極ユニットに隣接する部分をそれぞれ示し、各電極ユニットが導線で構成されるため、隣接する電極ユニットの境界は、2つの電極ユニットの導線のうちそれぞれ別の電極ユニットに隣接する部分、及び隣接する2つの部分の間に位置する領域、即ち図中のa部分、b部分、及びa部分とb部分の間にあるc部分を含む。導電部材の第2の電極層への投影は、隣接する2つの電極ユニットの間に位置してもよく、2つの電極ユニットの導線のうちそれぞれ別の電極ユニットに隣接する部分を部分的に覆ってもよい。導電部材は、第2の電極層の第2の基板に向かう側に位置してもよく、第2の電極層の第2の基板に背く側に位置してもよい。本実施例において、導電部材と第2の電極層の間に絶縁層を更に含む。本実施例は、相互作用を回避するために、絶縁層によって導電部材と第2の電極層を分離する。
図16及び
図17に示すように、前述した導電部材に第3の駆動電圧V3を印加することにより、隣接する2つの電極ユニットの境界における強電界による影響範囲を小さくし、液晶レンズのイメージング品質を向上させることができる。
【0050】
実施例2
本実施例は、実施例1に記載の液晶レンズを駆動するための液晶レンズの駆動方法を提供し、第1の電気コネクタと第1の電極層20の間に印加される電圧をV1とし、第2の電気コネクタと第1の電極層20の間に印加される電圧をV2とし、
図11に示すように、前記方法は、以下のステップS1~S3を含む。
【0051】
S1において、液晶レンズの液晶線形応答電圧区間を取得する。
液晶線形動作区間とは、液晶位相遅延量と駆動電圧が線形関係を呈する電圧区間を指す。
【0052】
S2において、前記液晶線形応答電圧区間に基づいて液晶線形動作区間内の最小電圧Vmin及び最大電圧Vmaxを取得する。
【0053】
S3において、液晶レンズの焦点屈折力を調整するために、最小電圧Vmin及び最大電圧Vmaxに基づいてV1(Vmin≦V1≦Vmax)とV2(Vmin≦V2≦Vmax)の電圧差を調整する。
【0054】
本ステップは、V1-V2の値を調整することで液晶レンズの焦点屈折力を調整することができる。具体的に調整する時にV1が変わらないように維持しながらV2の大きさを調整してもよく、V2が変わらないように維持しながらV1の大きさを調整してもよく、V1及びV2の大きさを同時に変更してもよい。V1が変わらないように維持しながらV2の大きさを調整する場合、V1=Vmin又はV1=Vmaxとし、V2の大きさを調整することができ、V2が変わらないように維持しながらV1の大きさを調整する場合、V2=Vmin又はV2=Vmaxとし、V1の大きさを調整することができる。なお、本実施例は、更にV1とV2の大小関係を変更することで液晶レンズの正レンズと負レンズの状態を切り替えることができる。
【0055】
実施例3
また、
図11を参照しながら説明した本発明における上記実施例の液晶レンズの駆動方法は、本実施例の液晶レンズの駆動機器によって実現することができる。
図12は、本発明の実施例により提供される液晶レンズの駆動機器のハードウェア構造概略図である。本実施例の液晶レンズの駆動機器は、プロセッサ1及びコンピュータプログラム命令が記憶されたメモリ2を含む。
【0056】
実施例4
また、上記実施例における液晶レンズの駆動方法を参照し、本発明の実施例は、コンピュータ可読記憶媒体を提供することができる。当該コンピュータ可読記憶媒体にコンピュータプログラム命令が記憶されており、当該コンピュータプログラム命令がプロセッサにより実行される時に上記実施例の何れ1つの液晶レンズの駆動方法を実現する。
【0057】
実施例5
本実施例は、実施例1に記載の液晶レンズを含むメガネである。前記メガネは、左眼用レンズ及び右眼用レンズを含み、前記左眼用レンズ及び右眼用レンズにはそれぞれ実施例1に係る液晶レンズが設けられている。前記メガネは、制御回路を更に含み、前記制御回路は、左眼用レンズにおける液晶レンズに電気的に接続され、左眼用レンズにおける液晶レンズの焦点屈折力を調整するための第1の焦点調整回路と、右眼用レンズにおける液晶レンズに電気的に接続され、右眼用レンズにおける液晶レンズの焦点屈折力を調整するための第2の焦点調整回路と、を含む。
【0058】
実施例6
本実施例は、制御回路及び実施例1の何れか1つの実施形態に記載の液晶レンズを含む電子製品を提供し、前記制御回路は、前記液晶レンズに電気的に接続される。前記電子製品は、イメージング装置、表示装置、携帯電話、ウェアラブル機器などを含むが、これらに限定されない。
【0059】
実施例7
本実施例は、実施例1に記載の液晶レンズを含むAR機器を提供する。なお、前記AR機器は、第1のレンズアセンブリ及び第2のレンズアセンブリを含み、前記第1のレンズアセンブリには実施例1に記載の少なくとも1つの液晶レンズが含まれ、前記第2のレンズアセンブリには実施例1に記載の少なくとも1つの液晶レンズが含まれ、AR機器は、第1のレンズアセンブリにおける液晶レンズに電気的に接続され、第1のレンズアセンブリにおける液晶レンズの焦点屈折力を調整するための第1の焦点調整回路と、第2のレンズアセンブリにおける液晶レンズに電気的に接続され、第2のレンズアセンブリにおける液晶レンズの焦点屈折力を調整するための第2の焦点調整回路と、を更に含み、本実施例において、第1のレンズアセンブリは、ユーザの左眼に対応し、第2のレンズアセンブリは、ユーザの右眼に対応する。
【0060】
AR機器において、左眼及び右眼がそれぞれ異なるスクリーンに対応するため、左眼及び右眼にそれぞれ対応する2組のレンズアセンブリをも有し、異なる利用者の両眼の瞳孔間距離がそれぞれ異なるため、レンズアセンブリの焦点距離が一定であると、必然的に一部の利用者がARメガネを着用する時の体験感が良くなくなる。異なる消費者の顔型や五官が異なるため、本実施例におけるARメガネは、実施例1に係る液晶レンズによって焦点距離を調節する機能を達成することができる。瞳孔間距離及び焦点距離をいずれも合理的な位置に調節し、画像が網膜に正確に位置するようにし、明瞭な画像が得られ、ユーザにより良好な使用体験をもたらす。
【0061】
実施例8
本実施例は、実施例1に記載の液晶レンズを含むVR機器を提供する。前記VR機器は、第3のレンズアセンブリ及び第4のレンズアセンブリを含み、前記第3のレンズアセンブリには実施例1に記載の少なくとも1つの液晶レンズが含まれ、前記第4のレンズアセンブリには実施例1に記載の少なくとも1つの液晶レンズが含まれ、VR機器は、第3のレンズアセンブリにおける液晶レンズに電気的に接続され、第3のレンズアセンブリにおける液晶レンズの焦点屈折力を調整するための第3の焦点調整回路と、第4のレンズアセンブリにおける液晶レンズに電気的に接続され、第4のレンズアセンブリにおける液晶レンズの焦点屈折力を調整するための第4の焦点調整回路と、を更に含み、本実施例において、第3のレンズアセンブリは、ユーザの左眼に対応し、第4のレンズアセンブリは、ユーザの右眼に対応する。
【0062】
VR機器において、左眼及び右眼がそれぞれ異なるスクリーンに対応するため、左眼及び右眼にそれぞれ対応する2組のレンズアセンブリをも有し、異なる利用者の両眼の瞳孔間距離がそれぞれ異なるため、レンズアセンブリの焦点距離が一定であると、必然的に一部の利用者がVRメガネを着用する時の体験感が良くなくなる。異なる消費者の顔型や五官が異なるため、本実施例におけるVRメガネは、実施例1に係る液晶レンズによって焦点距離を調節する機能を達成することができる。瞳孔間距離及び焦点距離をいずれも合理的な位置に調節し、画像が網膜に正確に位置するようにし、明瞭な画像が得られ、ユーザにより良好な使用体験をもたらす。
【0063】
以上をもって、本発明の実施例により提供される液晶レンズの駆動方法、装置、機器及び記憶媒体を詳細に説明した。
【符号の説明】
【0064】
10 第1の透明基板
20 第1の電極層
30 液晶層
40 第2の電極層
430 電極ユニット
43-1 第1の電極ユニット
43-2 第2の電極ユニット
43-3 第3の電極ユニット
431 導線
4311 最外周の曲線セグメント
4312 最内側の曲線セグメント
4313 中間曲線セグメント
4314 連結セグメント
4321 中間接続セグメント
4322 同心円環
4110 電極リード群
411 第1の電極リード
412 第2の電極リード
50 第2の透明基板