(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023013441
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】自動運転システム
(51)【国際特許分類】
G05D 1/02 20200101AFI20230119BHJP
【FI】
G05D1/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021117625
(22)【出願日】2021-07-16
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】中居 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】若山 真則
(72)【発明者】
【氏名】小森 聡
(72)【発明者】
【氏名】田中 真由子
(72)【発明者】
【氏名】加藤 亮大
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA03
5H301AA10
5H301BB03
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD07
5H301DD15
5H301GG07
5H301GG08
5H301GG12
5H301GG17
(57)【要約】
【課題】トンネル坑内での自動運転が可能である自動運転システムを提供する。
【解決手段】トンネル2内を移動する建設機械3による自動運転システム1であって、建設機械3に設けられ、周囲の物体の形状に関する第1情報を検出する第1センサとしてのLiDAR34dと、建設機械3の移動部32に設けられ、移動量に関する第2情報を検出する第2センサとしてのエンコーダ34aと、制御部35と、を備え、前記制御部35は、前記第1情報を用い、SLAMによる位置の算出により第1推定位置を求めるSLAM処理部と、前記第2情報を用い、オドメトリによる位置の算出により第2推定位置を求めるオドメトリ処理部と、前記第1推定位置および前記第2推定位置に基づいて第3推定位置を求める重み付け処理部とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル内を移動する建設機械による自動運転システムであって、
前記建設機械に設けられ、周囲の物体の形状に関する第1情報を検出する第1センサと、
前記建設機械の移動部に設けられ、移動量に関する第2情報を検出する第2センサと、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記第1情報を用い、SLAM(Simultaneous Localization And Mapping)による位置の算出により第1推定位置を求めるSLAM処理部と、
前記第2情報を用い、オドメトリによる位置の算出により第2推定位置を求めるオドメトリ処理部と、
前記第1推定位置および前記第2推定位置に基づいて第3推定位置を求める重み付け処理部と、を有する、
ことを特徴とする自動運転システム。
【請求項2】
前記重み付け処理部は、前記第1推定位置および前記第2推定位置に重み付けを行い、統計的手法を用いた計算によって重み付け後の値に基づいて前記第3推定位置を求める、
ことを特徴とする請求項1に記載の自動運転システム。
【請求項3】
前記建設機械に設けられ、角速度および加速度に関する第3情報を検出する第3センサをさらに備え、
前記SLAM処理部および前記オドメトリ処理部の少なくとも何れか一方は、前記第3情報を用いて補正を行って前記第1推定位置または前記第2推定位置を求める、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の自動運転システム。
【請求項4】
前記SLAMで用いる環境地図を記憶するサーバをさらに備え、
前記SLAM処理部は、自動運転にともなって取得した新たな環境地図を前記サーバに送信し、
前記サーバは、前記新たな環境地図によって記憶していた前記環境地図を更新、または前記新たな環境地図を累積して記憶する、
ことを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れか一項に記載の自動運転システム。
【請求項5】
測位用衛星から送信される第4情報を受信する受信部をさらに備え、
前記制御部は、トンネル内にいるか否を判断する判断部を有し、トンネル外においては前記第4情報を用いて推定位置を求める、
ことを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れか一項に記載の自動運転システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動運転システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の自動運転技術の開発が盛んである(例えば、特許文献1ないし特許文献3を参照)。自動運転技術では、車両の位置を何らかの方法で特定し、特定した車両の位置に基づいて制御を行う。
特許文献1に記載の技術は、工事現場内のダンプトラックの自動運転を可能にするものである。特許文献1に記載の技術では、ダンプトラックに交信手段を搭載し、該ダンプトラックの交信手段とGPS(Global Positioning System)間の交信によりダンプトラックの位置を特定している。
特許文献2に記載の技術は、コンテナヤード内のトレーラの自律走行を可能にするものである。特許文献2に記載の技術では、トレーラに周囲の3次元形状を検出するレーザファインダを搭載する。レーザファインダで検出した周囲の3次元形状から周囲の3次元地図を作成し、作成した3次元地図と模擬地図とのマッチングによりトレーラの位置を推定している。
特許文献3に記載の技術には、LiDAR(Light Detection and Ranging)システムを用いた位置推定方法が記載されている。LiDARは、光パルスを使用して、各光パルスの飛行時間(TOF)に基づいてオブジェクトまでの距離を測定する。LiDARとしては、平面全体を効果的にスキャンするために、例えば回転ミラーを組み込んだ単一のレーザーエミッター/検出器の組合せが用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-044141号公報
【特許文献2】特開2017-228198号公報
【特許文献3】特表2020-533601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術は、トンネル坑内の環境を考慮していないので、トンネル坑内の建設機械の自動運転に用いることが難しかった。
例えば、トンネル坑内にはGPS衛星からの電波が届かないので、特許文献1に記載の技術をトンネル坑内の建設機械に適用することは難しい。
また、トンネル自体は、断面形状が同じ円筒状を呈するので、トンネル坑内は、進行方向に同じ景色が連続しており特徴物が少ない特性を有する。その為、トンネル坑内で検出した3次元形状を用いたスキャンマッチングのみで位置を推定することが難しく、特許文献2,3に記載の技術では、トンネル坑内の建設機械の位置推定の精度が十分ではない。
また、施工中は、掘進の進捗や覆工の進捗に伴いトンネル坑内の環境が常に変化していく。その為、3次元環境地図の使いまわしが出来ず、常に更新が必要となる。
このような観点から、本発明は、トンネル坑内での自動運転が可能である自動運転システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る自動運転システムは、トンネル内を移動する建設機械による自動運転システムである。この自動運転システムは、前記建設機械に設けられ、周囲の物体の形状に関する第1情報を検出する第1センサと、前記建設機械の移動部に設けられ、移動量に関する第2情報を検出する第2センサと、制御部とを備える。
前記制御部は、SLAM処理部と、オドメトリ処理部と、重み付け処理部とを有する。SLAM処理部は、前記第1情報を用い、SLAM(Simultaneous Localization And Mapping)による位置の算出により第1推定位置を求める。オドメトリ処理部は、前記第2情報を用い、オドメトリによる位置の算出により第2推定位置を求める。重み付け処理部は、前記第1推定位置および前記第2推定位置に基づいて第3推定位置を求める。
前記重み付け処理部は、例えば、前記第1推定位置および前記第2推定位置に重み付けを行い、統計的手法を用いた計算によって重み付け後の値に基づいて前記第3推定位置を求める。
本発明に係る自動運転システムにおいては、SLAMによる位置推定に加えてオドメトリによる位置推定を行う。その為、特徴点の少ないトンネル坑内であっても自己位置の推定を行うことが可能であり、その結果トンネル坑内での自動運転を行える。
前記建設機械に設けられ、角速度および加速度に関する第3情報を検出する第3センサをさらに備えてもよい。その場合、前記SLAM処理部および前記オドメトリ処理部の少なくとも何れか一方は、前記第3情報を用いて補正を行って前記第1推定位置または前記第2推定位置を求めるのがよい。このようにすると、推定位置の精度が向上する。
【0006】
前記SLAMで用いる環境地図を記憶するサーバをさらに備えてもよい。その場合、前記SLAM処理部は、自動運転にともなって取得した新たな環境地図を前記サーバに送信し、前記サーバは、前記新たな環境地図によって記憶していた前記環境地図を更新、または前記新たな環境地図を累積して記憶するのがよい。
このようにすると、トンネル坑内の変化(例えば、覆工の進捗、物の移動、掘進距離の延長など)に対応することできる。
測位用衛星から送信される第4情報を受信する受信部をさらに備えてもよい。その場合、前記制御部は、トンネル内にいるか否を判断する判断部を有し、トンネル外においては前記第4情報を用いて推定位置を求めるのがよい。
このようにすると、トンネルの出入りに伴い自己位置の推定方法を適切なものに切り替えることができるので、トンネル内外を含めて精度の高い自動運転が可能である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、トンネル坑内での自動運転を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る自動運転システムの概略構成図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る自動運転システムにおける自動運転の仕組みのイメージ図である。
【
図3】スキャンマッチングを用いた位置推定技術を説明するための図である。
【
図4】LiDARを説明するための図であり、(a)は設置された状態を示す斜視図であり、(b)は側面図であり、(c)は平面図である。
【
図5】制御部が有する機能を説明するためのブロック図である。
【
図6】SLAM(Simultaneous Localization And Mapping)技術の概要を示すイメージ図である。
【
図7】特徴点がある場合のLiDARを用いた自己位置推定のイメージ図である。
【
図8】特徴点がない場合のLiDARを用いた自己位置推定のイメージ図である。
【
図9】オドメトリに用いる計算式を説明するための図であり、(a)はクローラを備える建設機械の模式図であり、(b)は対向2輪車モデルを示した図である。
【
図10】自己位置推定部の処理の流れを示すフロー図である。
【
図11】経路(Waypoint)の生成処理を示すシーケンス図の例示である。
【
図12】自動運転に関連する一連の処理を示すシーケンス図の例示である。
【
図13】本発明の第2実施形態に係る自動運転システムの概略構成図である。
【
図14】3次元地図情報の自動更新処理を示すフローチャートの例示である。
【
図15】本発明の第3実施形態に係る自動運転システムの概略構成図である。
【
図16】地図情報切り替え処理を示すフローチャートの例示である。
【
図17】地図情報切り替え処理を示すフローチャートの例示である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施をするための形態を、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。なお、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
[第1実施形態]
<第1実施形態に係る自動運転システムの構成について>
図1を参照して、第1実施形態に係る自動運転システム1の構成について説明する。
図1は、自動運転システム1の概略構成図である。自動運転システム1は、他のシステムの一部を構成するものであってよく、例えばトンネル工事の施工に関する施工システムの一部をなすものであってよい。
図1に示す自動運転システム1は、トンネル内を自動運転によって建設機械3が移動するシステムである。自動運転システム1は、トンネルの種類を限定せずに様々な種類のトンネルに用いることができる。また、建設機械3の種類や建設機械3が移動する目的などは限定されない。
【0010】
最初に、
図2を参照して、自動運転システム1における自動運転の仕組みの概要を説明する。
図2は、自動運転システム1における自動運転の仕組みのイメージ図である。
図2に示すように、自動運転システム1では、建設機械3が移動する経路8をトンネル2内に予め設定しておき、その経路8上を建設機械3がなぞるようにして移動する。経路8は、複数のWaypoint9によって構成されている。Waypoint9は、自動運転時に建設機械3が通過する地点である。Waypoint9は、所定の間隔(例えば1m間隔)に設定されており、各々のWaypoint9には、位置情報(座標情報)と速度情報とが対応づけられている。建設機械3は、自己の位置を推定しながらWaypoint9を順番に通過することで、自動運転を実現する。
本実施形態では、自動運転の準備工程として、建設機械3を人間が経路8に沿って運転してWaypoint9の情報を登録する。例えば、トンネル坑内に人間が認識できる方法で経路8を描き、描かれた経路8に従って建設機械3を運転してWaypoint9の情報を登録する。トンネル坑外であれば、全球測位衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)で使用される測位用衛星から送信される情報を用いて自己の位置を推定することが可能であるので、Waypoint9の登録時の自己位置の推定および自動運転時の自己位置の推定を容易に行える。しかしながら、トンネル坑内には測位用衛星からの電波が届かず、GNSSを用いた自己位置の推定を行えない。その為、本実施形態ではスキャンマッチングを用いた位置推定技術(
図3参照)と、オドメトリを用いた位置推定技術とを組合わせて、Waypoint9の登録時における建設機械3の位置推定および自動運転時における建設機械3の位置推定を行う。
図3は、スキャンマッチングを用いた位置推定技術を説明するための図である。
図3に示すように、事前に取得した環境地図(
図3(a)参照)と、現在位置で取得した環境地図(
図3(b)参照)とを照らし合わせることで自己位置を推定する。
【0011】
図1に示す自動運転システム1は、主に、建設機械3と、管理用PC(Personal Computer)4とを備える。建設機械3はトンネル2の内部(トンネル坑内)に配置される。管理用PC4の設置場所は特に限定されず、例えば監視室に設置される。管理用PC4には、遠隔操作用のコントローラ41が接続されており、操作者がコントローラ41を用いて建設機械3を遠隔操作することが可能である。監視者は、例えば、自動運転中にエラーが発生したときなどの特別な場合に建設機械3を遠隔操作する。つまり、建設機械3の遠隔操作は補助的な機能であり、自動運転システム1に必須の機能ではない。コントローラ41は、HMI(Human Machine Interface)の一例である。なお、建設機械3は、人間が搭乗して運転することも可能である。
【0012】
図1に示す建設機械3は、トンネル工事に利用される車両であり、トンネル坑内を移動可能である。本実施形態では、建設機械3としてクローラダンプを想定する。建設機械3は、主に、車体部31と、移動部32と、通信部33と、センサ部34と、制御部35と、を備える。なお、
図1に示す建設機械3の構成はあくまで例示である。建設機械3は、例えば有人で運転するものを自動運転ができるように改良したものであってよい。
車体部31は、運転を行う運転室を有する。運転室には、遠隔操作用のカメラが設置されており、当該カメラは、建設機械3の前方を撮影している。車体部31は、鉛直方向を旋回軸として旋回可能である。
移動部32は、建設機械3を移動させるための機構であり、車体部31の下部に設置される。移動部32は、車輪32aと、車輪32aを取り囲むクローラ32bとからなる。なお、移動部32は、
図1に示すクローラ式のものでなく、ホイール式のものであってもよい。
通信部33は、管理用PC4との間での無線通信を実現する装置である。通信部33は、例えばアンテナやその周辺機器などからなる。建設機械3(特に、制御部35)は、通信部33を介して、自動運転に必要な情報を管理用PC4と送受信する。
【0013】
センサ部34は、建設機械3自身の情報や、建設機械3が置かれている環境に関する情報(例えば、周囲の情報)を取得する装置である。センサ部34により検出された情報は、自動運転の制御や監視に利用される。センサ部34は、検出した情報を制御部35に送信する。本実施形態でのセンサ部34は、主に、クローラ用のエンコーダ34aと、車体旋回用のエンコーダ34bと、IMU(慣性計測装置:Inertial Measurement Unit)34cと、LiDAR(Light Detection and Ranging)34dとを含んで構成される。LiDAR34dの数は一つに限定されず、複数個であってもよい。
クローラ用のエンコーダ34aは、車輪32aを駆動するモータの出力軸に取り付けられ、出力軸の角度を検出する。エンコーダ34aが検出した情報は、オドメトリを用いた位置推定に使用される。
車体旋回用のエンコーダ34bは、車体部31を旋回させる軸に取り付けられ、車体部31が旋回する角度を検出する。エンコーダ34bが検出した情報は、オドメトリを用いた位置推定に使用される。
IMU34cは、例えば3軸のジャイロセンサおよび3方向の加速度計を備え、3次元の角速度と加速度を算出する。IMU34cは、車体31の前面に設置された板状の台座31aの下面に設置されている。IMU34cにより、建設機械3の傾きや、振動を計測することができる。IMU34cが検出した情報は、オドメトリを用いた位置推定の補正や、LiDAR34dのブレ補正に使用される。
【0014】
LiDAR34dは、レーザセンサ(距離センサ)の技術を用いて周囲の物体の形状を検出する装置である。LiDAR34dは、周囲に多数のレーザ光を照射し、物体に当たって反射したレーザ光を受光する。これにより、LiDAR34dは、周囲の物体の表面の形状を、表面を覆い尽くすような点の座標の集合(点群データ)として取得する。点群データは、例えば相対座標(LiDAR34dの設置位置を原点としたローカル座標)である。LiDAR34dによって検出された周辺の物体の点群データ(形状や距離)は、その測定時刻に対応付けられる。
図4を参照して、本実施形態におけるLiDAR34dを説明する。
図4は、LiDAR34dを説明するための図であり、(a)は設置された状態を示す斜視図であり、(b)は側面図であり、(c)は平面図である。
図4(a)に示すように、LiDAR34dは、車体31の前面に設置された板状の台座31aの上面に設置される。LiDAR34dの設置位置は、例えば地面から「1m~1.5m」である。
図4(b),(c)に示すように、LiDAR34dは、n本(「n」は複数であり、例えば十数本)のレーザが360度回転し、毎秒m点(「m」は例えば数十万点)の情報(座標、距離)を取得する。
【0015】
制御部35は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等により構成される。制御部35は、建設機械3に予め内蔵されたものであってもよいし、後から接続されたもの(例えば、PC(Personal Computer))であってもよい。
図5に示すように、制御部35は、主に、センシング処理部35aと、自己位置推定部35bと、経路生成部35cと、車両制御部35dとを備える。
図5は、制御部35が有する機能を説明するためのブロック図である。制御部35は、例えば図示しない記憶部に記憶される自動運転ソフトウェアを実行することで、これらの機能を実現する。自動運転ソフトウェアは、自動運転に関する処理が記載されたアプリケーションプログラムであり、管理用PC4にも同様または対応するソフトウェアが格納されている。なお、
図2では、自動運転に関する機能のみを記している。
【0016】
センシング処理部35aは、建設機械3の周囲(特に進行方向)に存在する物体(例えば障害物)を特定する機能である。センシング処理部35aには、LiDAR34dが検出した情報が入力される。センシング処理部35aにより特定された物体の情報は、経路生成部35cに出力される。
自己位置推定部35bは、建設機械3の位置を推定する機能である。建設機械3の位置は、建設機械3に設定される基準点の位置であってよく、例えば建設機械3の中心、重心、代表点であってよい。自己位置推定部35bには、エンコーダ34a,34b、IMU34cおよびLiDAR34dが検出した情報が入力される。前述した通り、本実施形態ではスキャンマッチングを用いた位置推定技術と、オドメトリを用いた位置推定技術とを組合わせて建設機械3の位置推定を行う。その為、自己位置推定部35bは、スキャンマッチングを用いた位置推定に関するSLAM(Simultaneous Localization And Mapping)処理部35eと、オドメトリを用いた位置推定に関するオドメトリ処理部35fとを有する。また、自己位置推定部35bは、SLAM処理部35eによって算出された推定位置と、オドメトリ処理部35fによって算出された推定位置とに重み付けを行い、最終的な推定位置を算出する重み付け処理部35gを有する。自己位置推定部35bの詳細については後述する。自己位置推定部35bにより推定された位置情報は、経路生成部35cに出力される。
【0017】
経路生成部35cは、自動運転時における建設機械3の経路を生成する。例えば、経路生成部35cは、次のWaypoint9までの経路を生成する。経路生成部35cには、センシング処理部35aから特定された物体の情報や、自己位置推定部35bから推定された位置情報が入力される。
図2に示すように、例えば進行方向に障害物があった場合には、回避経路を生成する。経路生成部35cにより生成された経路情報は、車両制御部35dに出力される。
車両制御部35dは、自動運転に関する制御信号を建設機械3の各部に送信する。車両制御部35dには、経路生成部35cから生成された経路情報や推定された位置情報が入力される。車両制御部35dは、経路情報や位置情報に基づいて、油圧バルブ操作量などを算出し、算出した操作量などを制御信号として建設機械3の各部に出力する。
【0018】
(自己位置の推定に関して)
図6を参照して、SLAM処理部35eについて説明する。
図6は、SLAM技術の概要を示すイメージ図である。SLAM技術は、自己位置推定と環境地図作成を同時に行う技術であり、移動体が「センシングによって得た計測値」と「移動することで得た計測値」を照らし合わせ、その誤差を収束計算することで、作成した地図上に自己位置を推定する。
図6に示すように、SLAM技術では、主に(1)~(4)の処理を行う。処理(1)では、自己位置を「0」として周囲の環境地図を取得し、処理(2)では、最初に取得した環境地図と照らし合わせて進んだ自己位置を推定する。続いて、処理(3)で、処理(2)で推定した位置と既存地図に、新たに所得できた環境地図を重ね合わせ、また、処理(4)で、処理(3)で取得した地図に照らし合わせて、進んだ自己位置を推定する。そして、処理(3),(4)を繰り返すことで、連続した「環境地図のデータ」と「自己位置の座標データ」を作成していく。
【0019】
ここで、LiDAR34dを用いた自己位置推定のイメージを
図7および
図8に示す。
図7は、特徴点(例えば、障害物)がある場合のLiDAR34dを用いた自己位置推定のイメージ図である。
図8は、特徴点(例えば、障害物)がない場合のLiDAR34dを用いた自己位置推定のイメージ図である。
点群データのマッチング処理では、共通の特徴点の数が最大となるように異なる時刻の点群データをマッチング(重ね合わせ)する。例えば、
図7(a)に示すように、時刻t1で得られた点群データと時刻t2で得られた点群データとをマッチングし、
図7(b)に示すように、一致する点群が多い重ね合わせ位置を正解の重ね合わせ位置とする。この際、特徴点があるとマッチングの処理が早いので(つまり、正解の重ね合わせ位置を早く求めることができるので)、建設機械3の挙動が安定する。
図7では、トンネル2内に障害物7があることで、障害物7が明確な特徴点となるので正解の重ね合わせ位置を早く求めることができる。一方、
図8(a)に示すように、点群データに特徴点となる障害物の情報が含まれていない場合、
図8(b)に示すように、正解に近い重ね合わせ位置が複数求められる。したがって、正解の重ね合わせ位置を求めるのが難しくなるのでマッチングの処理が遅くなり、建設機械3の挙動が不安定となる。その為、SLAMで自己位置推定を行う際に、オドメトリによる位置算出を平行して行い、自己位置推定の処理速度および精度を向上させる。ここでのオドメトリは、建設機械3の左右両方のクローラ32bの回転量から建設機械3の相対的な位置を算出する処理である。
【0020】
図9を参照して、オドメトリ処理部35fについて説明する。
図9は、オドメトリに用いる計算式を説明するための図であり、(a)はクローラ32bを備える建設機械3の模式図であり、(b)は対向2輪車モデルを示した図である。本実施形態では、
図9(a)に示す建設機械3を、
図9(b)に示す対向2輪車モデルとみなしてオドメトリの計算を行う。
オドメトリの計算には、例えば以下の式(1)~(5)を用いる。
(V,ωの計算式)
V=(V
R+V
L)/2 ・・式(1)
ω=(V
R-V
L)/2d ・・式(2)
(座標)
θ
a=θ
a-1+ω ・・式(3)
X
a=X
a-1+Vcosθ
a ・・式(4)
Y
a=Y
a-1+Vsinθ
a ・・式(5)
【0021】
図10を参照して、自己位置推定部35bの処理について説明する。
図10は、自己位置推定部35bの処理の流れを示すフロー図である。
SLAM処理部35eは、LiDAR34dが検出した点群データ(周囲の物体の形状に関する第1情報)を用い、SLAMによる位置の算出により第1推定位置を求める。
オドメトリ処理部35fは、クローラ用のエンコーダ34aが検出したモータの出力軸の角度(移動量に関する第2情報)を用い、オドメトリによる位置の算出により第2推定位置を求める。オドメトリ処理部35fは、例えば、モータの出力軸の角度に基づいて移動距離や速度を算出し、そこから相対位置を算出する。IMU34cが検出した情報(角速度や加速度)を用いて滑り補正を行ってよい。
重み付け処理部35gは、SLAM処理部35eにより求められた第1推定位置と、オドメトリ処理部35fにより求められた第2推定位置と、から第3推定位置を求める。重み付け処理部35gは、例えば第1推定位置および第2推定位置に重み付けを行い、統計的手法を用いた計算によって重み付け後の値に基づいて第3推定位置を求める。重み付け処理部35gは、例えばSLAMで得た距離・方向と、オドメトリで得た距離・方向を重み付けにて按分し、合成した位置を第3推定位置とする。建設機械3の状況や周囲の状況に応じて、第1推定位置、第2推定位置に対する重み付けを設定するのがよい。例えば、滑りやすい路面を建設機械3が走行する場合、オドメトリによる位置推定の精度が低下することが考えられるので、オドメトリ処理部35fにより求められた第2推定位置への重み付けを第1推定位置への重み付けに対して低くするのがよい(つまり、SLAMによる位置推定に比べてオドメトリによる位置推定の影響を低くするのがよい)。
【0022】
<第1実施形態に係る自動運転システムの動作について>
図11および
図12を参照して(適宜、
図1ないし
図10参照)、本実施形態に係る自動運転システム1の動作について説明する。ここでは、第一工程として、有人によるマニュアル運転で経路8(Waypoint9)の生成処理を行い、第二工程として、生成された経路8に沿って自動運転を行う場合を説明する。
図11は、経路(Waypoint)の生成処理を示すシーケンス図の例示である。
図12は、自動運転に関連する一連の処理を示すシーケンス図の例示である。なお、経路8(Waypoint9)の生成処理をコンピュータ上で行うことも可能である。また、建設機械3の制御部35を除いた構成要素(例えば、車体部31、移動部32など)をまとめて「実機部」と呼ぶ場合がある。
【0023】
(経路(Waypoint)の生成処理)
図11を参照して、経路8の生成処理について説明する。ここでの経路8は、スタート地点から出発して折り返し地点まで行き、ゴール地点として再びスタート地点に戻るものを想定する。最初に、管理者は、建設機械3の制御部35に格納される自動運転ソフトウェアを起動させ(ステップS1)、また、運転手は、建設機械3の運転室に入室し、油圧ロックレバーを解除する(ステップS2)。これで、建設機械3を走行させる準備が完了する。
次に、管理者は、建設機械3の制御部35に対してSLAM処理の開始を指示し(ステップS3)、続けて、建設機械3の制御部35に対して往路のWaypoint9の記録の開始を指示する(ステップS4)。運転者は、建設機械3を操縦してマニュアル走行させる(ステップS5)。建設機械3がトンネル坑内を走行して折り返し地点に到達した場合に、管理者は、建設機械3の制御部35に対して往路のWaypoint9の記録の終了を指示する(ステップS6)。これで、往路のWaypoint9の記録が終了する。
【0024】
続けて、往路と同様の手順により復路のWaypoint9の記録を行う。運転者は、建設機械3の車体部31を「180°」旋回させ、車体部31をゴール位置(スタート位置と同じ)に向ける(ステップS7)。次に、管理者は、建設機械3の制御部35に対して復路のWaypoint9の記録の開始を指示する(ステップS8)。運転者は、建設機械3を操縦してマニュアル走行させる(ステップS9)。建設機械3がトンネル坑内を走行してゴール地点に到達した場合に、管理者は、建設機械3の制御部35に対して復路のWaypoint9の記録の終了を指示する(ステップS10)。これで、復路のWaypoint9の記録が終了する。
管理者は、建設機械3がゴール位置で停止されていることを確認した後で、3D地図の生成の終了を建設機械3の制御部35に対して指示する(ステップS11)。管理者は、生成された3D地図および自己位置の軌跡を確認し(ステップS12)、これらの情報が正しく生成させていた場合に、生成された3D地図および自己位置の軌跡に基づいてシナリオを生成する(ステップS13)。シナリオの生成は、例えば「走行」、「ピボットターン」、「ダンプアップ」、「ダンプダウン」、「上部旋回」の動作を作業毎に並べ、一連の施工動作の順にすることである。
【0025】
(自動運転処理)
図12を参照して、自動運転処理について説明する。最初に、管理者は、管理用PC4に格納される自動運転ソフトウェアを起動させ(ステップT1)、また、建設機械3の油圧ロックレバーを解除する(ステップT2)。これで、建設機械3を走行させる準備が完了する。
次に、管理者は、管理用PC4に対して自動運転の開始操作を行い(ステップT3)、管理用PC4は、自動運転の開始指示を建設機械3の制御部35に対して送信する(ステップT4)。これにより、建設機械3の自動運転が開始する。制御部35は、自動運転を行っている期間に、車体部31や移動部32など(実機部)に制御指示を送り(ステップT5)、実機部は、自動運転中に検出した実機部に関するデータ(実機データ)を制御部35に送る(ステップT6)。ステップT5の制御指示およびステップT6の実機データの送信は、周期的に行われる。制御部35は、管理用PC4に所定のタイミングで自動運転の状態を通知する(ステップT7)。
【0026】
また、何らかの理由(例えば、建設機械3の不具合)によって建設機械3が待ち状態となった場合、管理者は、解除可能であるかを確認し、解除可能であるときには管理用PC4に対して待ち解除操作を行う(ステップT8)。管理用PC4は、自動運転の待ち解除の指示を建設機械3の制御部35に対して送信する(ステップT9)。これにより、建設機械3の自動運転が再開する。自動運転の再開に伴い、制御部35は、車体部31や移動部32など(実機部)に制御指示を送り(ステップT10)、実機部は、自動運転中に検出した実機部に関するデータ(実機データ)を制御部35に送る(ステップT11)。制御部35は、管理用PC4に所定のタイミングで自動運転の状態を通知する(ステップT12)。
【0027】
自動運転を終了する場合に、管理者は、管理用PC4に停止指示を送り(ステップT14)、管理用PC4は、停止指示を建設機械3の制御部35に対して送信する(ステップT15)。停止指示を受けた制御部35は、停止処理を実行し(ステップT16)、車体部31や移動部32など(実機部)に停止指示を送信する(ステップT17)。そして、制御部35は、管理用PC4に自動運転の中断を通知する(ステップT18)。
また、建設機械3の制御部35が何らかのエラーを検出した場合(ステップT19)、制御部35は、停止処理を実行し(ステップT20)、車体部31や移動部32など(実機部)に停止指示を送信する(ステップT21)。そして、制御部35は、管理用PC4に自動運転でエラーが発生してことを通知する(ステップT22)。
以上のように、第1実施形態に係る自動運転システム1においては、SLAMによる位置推定に加えてオドメトリによる位置推定を行う。その為、特徴点の少ないトンネル坑内であっても自己位置の推定を行うことが可能であり、その結果トンネル坑内での自動運転を行える。
【0028】
[第2実施形態]
第1実施形態では、自動運転を繰り返し行う場合を想定していなかった。第2実施形態では、自動運転を繰り返し行う場合の制御について説明する。なお、繰り返し行う自動運転には、一台の建設機械3が複数回の自動運転を繰り返し行う場合や、複数台の建設機械3が自動運転を順番に行う場合が含まれる。第2実施形態では、自動運転を行うたびに、3次元地図情報を自動更新させる。
<第2実施形態に係る自動運転システムの構成について>
図13を参照して、第2実施形態に係る自動運転システム101の構成について説明する。
図13は、自動運転システム101の概略構成図である。
図13に示すように、自動運転システム101は、クラウドシステムを構成するサーバ5を備える。
サーバ5には、SLAMで用いる環境地図が記憶される。建設機械3のSLAM処理部35eは、自動運転にともなって取得した新たな環境地図をサーバ5に送信し、サーバ5は、新たな環境地図によって記憶していた環境地図を更新、または新たな環境地図を累積して記憶する。
【0029】
<第2実施形態に係る自動運転システムによる3次元地図情報の自動更新方法>
図14を参照して、第2実施形態に係る自動運転システム101による3次元地図情報の自動更新方法について説明する。
図14は、3次元地図情報の自動更新処理を示すフローチャートの例示である。3次元地図情報の自動更新処理は、主に、4つの工程(工程(A)~工程(D))で構成される。
・工程(A)では、建設機械3を走行させる。
・工程(B)では、建設機械3を走行させたことで得た環境地図とWaypointデータをサーバに保存する。
・工程(C)では、前回の走行の環境地図とWaypointデータをサーバから取得する。
・工程(D)では、建設機械3を新たに走行させ、前回の走行の環境地図とWaypointデータと、今回の走行の環境地図とWaypointデータとをマッチングする。
1走目(1台目)では、工程(A)~工程(B)を行い、2走目(2台目)以降では、工程(B)~(D)を行う。
【0030】
図14を参照して、1走目(1台目)~2走目(3台目)までの走行における3次元地図情報の自動更新処理を説明する。
(1走目(1台目)の処理(ステップU10))
1走目(1台目)の建設機械3(車両)が走行し(工程(A))、1走目で得た環境地図およびWaypointデータをサーバに保存する(工程(B))。
(2走目(2台目)の処理(ステップU20))
2走目(2台目)の建設機械3(車両)は、ステップU10で保存された1走目(1台目)の環境地図およびWaypointデータをサーバから取得する(工程(C))。2走目(2台目)の建設機械3(車両)は、サーバから取得した1走目の環境地図およびWaypointデータと、2走目(現走行)で得た環境地図およびWaypointデータとをマッチングする(工程(D))。また、2走目で得た環境地図およびWaypointデータを最新データとしてサーバに保存する(工程(B))。
(3走目(3台目)の処理(ステップU30))
3走目(3台目)の建設機械3(車両)は、ステップU20で保存された2走目(2台目)の環境地図およびWaypointデータをサーバから取得する(工程(C))。3走目(3台目)の建設機械3(車両)は、サーバから取得した2走目の環境地図およびWaypointデータと、3走目(現走行)で得た環境地図およびWaypointデータとをマッチングする(工程(D))。また、3走目で得た環境地図およびWaypointデータを最新データとしてサーバに保存する(工程(B))。以降、4走目(4台目)以降の処理を繰り返し行う。
以上のように、第2実施形態に係る自動運転システム101によれば、トンネル坑内の変化(例えば、覆工の進捗、物の移動、掘進距離の延長など)に対応することできる。
【0031】
[第3実施形態]
第1実施形態では、トンネル坑内のみの移動を想定していた。第3実施形態では、トンネル2の出入りを伴う場合の制御について説明する。
<第3実施形態に係る自動運転システムの構成について>
図15を参照して、第3実施形態に係る自動運転システム201の構成について説明する。
図15は、自動運転システム201の概略構成図である。
図15に示すように、自動運転システム201は、建設機械3が測位用衛星6からの電波を受信する機能(受信部)を備える。建設機械3の制御部35は、トンネル2内にいるか否を判断する判断部を有し、トンネル2外においては測位用衛星6から送信される情報(第4情報)を用いて推定位置を求める。
測位用衛星6は、全球測位衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)で使用される衛星であって、自身の位置情報(軌道位置情報)や時刻情報を、建設機械3に対して周期的に送信する。測位用衛星6は、例えば、GPS(Global Positioning System)衛星、GLONASS(Global Navigation Satellite System)衛星、Galileo衛星、準天頂衛星などであってよい。測位用衛星6から送信される情報(第4情報)は、建設機械3において、例えば、位置(緯度、経度、標高)の制御に使用される。
【0032】
<第3実施形態に係る自動運転システムによる地図情報切り替え処理>
図16および
図17を参照して、第3実施形態に係る自動運転システム201による地図情報切り替え処理について説明する。
図16,
図17は、地図情報切り替え処理を示すフローチャートの例示である。
(第1の地図情報切り替え処理)
図16に第1の地図情報切り替え処理を示す。建設機械3の制御部35は、GNSSによるWaypoint走行が終了位置(つまり、トンネルの入り口)まで到達したか否かを常に確認する(ステップV1)。Waypoint走行が終了位置まで到達した場合、制御部35は、SLAM用のWaypoint9を走行させる(ステップV3)。一方、Waypoint走行が終了位置まで到達していない場合、制御部35は、GNSS用のWaypoint9を走行させる(ステップV2)。第1の地図情報切り替え処理は、例えば次のような場面を想定している。例えば、トンネル外のGNSSによるWaypoint走行のタスクが終了してトンネル入り口まできたら、次のタスクとしてSLAMによるWaypoint走行が始まるようにシナリオを設定しておく。シナリオは、「走行」などの動作を作業毎に並べ、一連の施工動作の順にすることである。このようにシナリオを設定した場合において、GNSSによるWaypoint走行が終了位置(つまり、トンネルの入り口)まできた場合、GNSSによる走行タスクからSLAMによる走行タスクへと自動で遷移させる。つまり、GNSSによる走行タスクがトンネルの入り口で終了し、そこからはSLAMによる走行タスクへと予め設定されたシナリオに従い切り替えを行う。
【0033】
(第2の地図情報切り替え処理)
図17に第2の地図情報切り替え処理を示す。建設機械3の制御部35は、GNSSの電波を受信中であるかを常に確認する(ステップW1)。この処理は、例えばGNSSの電波の受信レベルが閾値を下回ったか否かを判定するものである。GNSSの電波を受信中でない場合、制御部35は、SLAM用のWaypoint9を走行させる(ステップW3)。一方、GNSSの電波を受信中である場合、制御部35は、GNSS用のWaypoint9を走行させる(ステップW2)。第2の地図情報切り替え処理は、例えば次のような場面を想定している。例えば、GNSSによる走行において高精度な環境地図下で走っているときに、GNSSの受信レベルが突如として閾値以下となった場合、その時点から高精度な環境地図を用いたSLAMによる走行へと自動的に切り替える。ここで、GNSSの受信レベルが閾値を下回った時の例としては、単純に受信できる衛星数が減った場合、準天頂衛星システム(QZSS)によるL1信号が取得できなくなった場合、RTK測位によるGNSSがFix解からFloat解になった場合などがある。つまり、総合してセンチメータ級測位が出来なくなったときである。
【0034】
以上のように、第3実施形態に係る自動運転システム201によれば、トンネル2の出入りに伴い自己位置の推定方法を適切なものに切り替えることができるので、トンネル内外を含めて精度の高い自動運転が可能である。
ここまで本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を変えない範囲で実施することができる。
【符号の説明】
【0035】
1,101,201 自動運転システム
2 トンネル
3 建設機械
4 管理用PC
5 サーバ
6 測位用衛星
8 経路
9 Waypoint
31 車体部
31a 台座
32 移動部
32a 車輪
32b クローラ
33 通信部
34 センサ部
34a エンコーダ(第2センサ)
34b エンコーダ
34c IMU(第3センサ)
34d LiDAR(第1センサ)
35 制御部
35a センシング処理部
35b 自己位置推定部
35c 経路生成部
35d 車両制御部
35e SLAM処理部
35f オドメトリ処理部
35g 重み付け処理部
41 コントローラ