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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134464
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】治療不応性うつ病の治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20230920BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20230920BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230920BHJP
   A61K 31/19 20060101ALN20230920BHJP
   A61K 31/704 20060101ALN20230920BHJP
   A61K 36/484 20060101ALN20230920BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P25/24
A61P43/00 111
A61K31/19
A61K31/704
A61K36/484
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023100442
(22)【出願日】2023-06-20
(62)【分割の表示】P 2020541338の分割
【原出願日】2018-09-20
(31)【優先権主張番号】16/129,020
(32)【優先日】2018-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/568,001
(32)【優先日】2017-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520119574
【氏名又は名称】ハラルド・ムルク
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100183379
【弁理士】
【氏名又は名称】藤代 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】ハラルド・ムルク
(57)【要約】      (修正有)
【課題】治療不応性うつ病を治療する方法を提供する。
【解決手段】治療する方法は、11-ベータ-HSD-2阻害活性を有する第1の化合物を含む調製物を対象に投与することを含む。前記方法は、治療不応性うつ病の患者を治療するが、標準的な抗うつ薬治療の補助として、または単独療法として治療するものである。これらの患者は、十分な用量および十分な期間にわたる少なくとも1つの薬理学的抗うつ薬治療に対する無反応によって特定されるであろう。さらに、この方法の一実施形態は、応答の可能性を最大にするために、治療の開始から標準抗うつ薬と記載された化合物との組み合わせから恩恵を受けるであろう患者を特定する手順を含む。方法の別の実施形態は、化合物の長期の寛容性の問題を克服するために、記載された化合物をマグネシウム塩の形態と組み合わせる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
11-ベータ-HSD-2阻害活性を有する第1の化合物を含む調製物を対象に投与する工程を含む、治療不応性うつ病を治療する方法。
【請求項2】
前記第1の化合物が、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸(GZA)、グリチルレチン酸(GLA)、およびカルベノキソロンからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記調製物が、脳脊髄液の産生を減少させるように作用する第2の化合物をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
第2の化合物が、アセタゾラミン、アンジオテンシンII受容体拮抗薬、V1A型のバソプレシン受容体の拮抗薬、ミネラルコルチコイド受容体の拮抗薬、カンナビノイド受容体CB1のリガンド、ドーパミン受容体D1のリガンド、および5-HT2c型のセロトニン受容体のリガンドからなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記調製物が、少なくとも1%のGLAまたはGZAまたはカルベノキソロンまたはその代謝産物を含む組成物をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記調製物が、GLAまたはGZAを1日あたり5mg~500mgの割合で投与される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記調製物が、GLAまたはGZAを1日あたり5mg~500mgの割合で投与される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記調製物が、マグネシウム化合物と組み合わせて使用される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記調製物が、マグネシウム化合物と組み合わせて使用される、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記調製物が、マグネシウム化合物と組み合わせて使用される、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記調製物が、マグネシウム化合物と組み合わせて使用される、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
A)うつ、不安、身体化、認知機能障害、記憶障害、歩行障害、及び膀胱機能障害を含む1以上の臨床上の兆候と、B)低収縮期血圧、起立性低血圧、低血漿ナトリウム濃度、高血漿カリウム濃度、高血漿マグネシウム濃度、高血漿または唾液アルドステロン濃度、高血漿または唾液アルドステロン/コルチゾール比、高血漿または唾液バソプレシン濃度、脳室の大容積、脈絡叢大容積、および眼圧の上昇を含む1つ以上のバイオマーカー徴候とに基づいて、前記調製物での治療から治療上の利益を受けやすいうつ病を患っている患者を同定するための工程をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
A)うつ、不安、身体化、認知機能障害、記憶障害、歩行障害、及び膀胱機能障害を含む1つ以上の臨床上の兆候と、B)低収縮期血圧、起立性低血圧、低血漿ナトリウム濃度、高血漿カリウム濃度、高血漿マグネシウム濃度、高血漿または唾液アルドステロン濃度、高血漿または唾液アルドステロン/コルチゾール比、高血漿または唾液バソプレシン濃度、脳室の大容積、脈絡叢大容積、および眼圧の上昇を含む1つ以上のバイオマーカー徴候とに基づいて、前記調製物での治療から治療上の利益を受けやすいうつ病を患っている患者を同定するための工程をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項14】
A)うつ、不安、身体化、認知機能障害、記憶障害、歩行障害、及び膀胱機能障害を含む1つ以上の臨床上の兆候と、B)低収縮期血圧、起立性低血圧、低血漿ナトリウム濃度、高血漿カリウム濃度、高血漿マグネシウム濃度、高血漿または唾液アルドステロン濃度、高血漿または唾液アルドステロン/コルチゾール比、高血漿または唾液バソプレシン濃度、脳室の大容積、脈絡叢大容積、および眼圧の上昇を含む1つ以上のバイオマーカー徴候とに基づいて、前記調製物での治療から治療上の利益を受けやすいうつ病を患っている患者を同定するための工程をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項15】
A)うつ、不安、身体化、認知機能障害、記憶障害、歩行障害、及び膀胱機能障害を含む1つ以上の臨床上の兆候と、B)低収縮期血圧、起立性低血圧、低血漿ナトリウム濃度、高血漿カリウム濃度、高血漿マグネシウム濃度、高血漿または唾液アルドステロン濃度、高血漿または唾液アルドステロン/コルチゾール比、高血漿または唾液バソプレシン濃度、脳室の大容積、脈絡叢大容積、および眼圧の上昇を含む1つ以上のバイオマーカー徴候とに基づいて、前記調製物での治療から治療上の利益を受けやすいうつ病を患っている患者を同定するための工程をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項16】
A)うつ、不安、身体化、認知機能障害、記憶障害、歩行障害、及び膀胱機能障害を含む1つ以上の臨床上の兆候と、B)低収縮期血圧、起立性低血圧、低血漿ナトリウム濃度、高血漿カリウム濃度、高血漿マグネシウム濃度、高血漿または唾液アルドステロン濃度、高血漿または唾液アルドステロン/コルチゾール比、高血漿または唾液バソプレシン濃度、脳室の大容積、脈絡叢大容積、および眼圧の上昇を含む1つ以上のバイオマーカー徴候とに基づいて、前記調製物での治療から治療上の利益を受けやすいうつ病を患っている患者を同定するための工程をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項17】
A)うつ、不安、身体化、認知機能障害、記憶障害、歩行障害、及び膀胱機能障害を含む1つ以上の臨床上の兆候と、B)低収縮期血圧、起立性低血圧、低血漿ナトリウム濃度、高血漿カリウム濃度、高血漿マグネシウム濃度、高血漿または唾液アルドステロン濃度、高血漿または唾液アルドステロン/コルチゾール比、高血漿または唾液バソプレシン濃度、脳室の大容積、脈絡叢大容積、および眼圧の上昇を含む1つ以上のバイオマーカー徴候とに基づいて、前記調製物での治療から治療上の利益を受けやすいうつ病を患っている患者を同定するための工程をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項18】
A)うつ、不安、身体化、認知機能障害、記憶障害、歩行障害、及び膀胱機能障害を含む1つ以上の臨床上の兆候と、B)低収縮期血圧、起立性低血圧、低血漿ナトリウム濃度、高血漿カリウム濃度、高血漿マグネシウム濃度、高血漿または唾液アルドステロン濃度、高血漿または唾液アルドステロン/コルチゾール比、高血漿または唾液バソプレシン濃度、脳室の大容積、脈絡叢大容積、および眼圧の上昇を含む1つ以上のバイオマーカー徴候とに基づいて、前記調製物での治療から治療上の利益を受けやすいうつ病を患っている患者を同定するための工程をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
A)うつ、不安、身体化、認知機能障害、記憶障害、歩行障害、及び膀胱機能障害を含む1つ以上の臨床上の兆候と、B)低収縮期血圧、起立性低血圧、低血漿ナトリウム濃度、高血漿カリウム濃度、高血漿マグネシウム濃度、高血漿または唾液アルドステロン濃度、高血漿または唾液アルドステロン/コルチゾール比、高血漿または唾液バソプレシン濃度、脳室の大容積、脈絡叢大容積、および眼圧の上昇を含む1つ以上のバイオマーカー徴候とに基づいて、前記調製物での治療から治療上の利益を受けやすいうつ病を患っている患者を同定するための工程をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
抗うつ薬と共に、11-ベータ-HSD-2またはその代謝産物の阻害剤を同時投与する工程を含む、治療不応性うつ病を治療する方法。
【請求項21】
単剤療法として11-ベータ-HSD-2またはその代謝産物の阻害剤を同時投与する工程を含む、治療不応性うつ病を治療する方法。
【請求項22】
11-ベータ-HSD-2またはその代謝物の阻害剤と抗うつ薬が、単一の製剤中に存在する、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
11-ベータ-HSD-2またはその代謝物の阻害剤と抗うつ薬が、別個の製剤中に存在する、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
脳脊髄液(CSF)の分泌速度を低下させるための組成物の同時投与を含む、治療不応性うつ病、記憶障害、認知機能障害、不安、身体化、うつ病、無気力症候群、肥満、睡眠障害、疼痛障害、および身体表現性の痛みと頭痛、並びに歩行障害及び膀胱機能障害を治療する方法。
【請求項25】
前記組成物が、アセタゾラミン、またはその代謝産物若しくは前駆体、またはV1A型のバソプレシン受容体の拮抗薬、またはカンナビノイド受容体CB1のリキッド、またはドーパミン受容体D1のリキッド、または5-HT2c型のセロトニン受容体のリキッドである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
11-ベータ-HSD-2の阻害剤または脳脊髄液(CSF)の生産の阻害剤による治療が、1つ以上のうつ病以外のCNS症状を標的化し、CNS症状が行動の関連メカニズムを有し、前記CNS症状が不安、認知機能障害、記憶喪失、無気力、睡眠障害、疼痛障害、および身体表現性の痛みと頭痛、並びに肥満、歩行障害及び膀胱機能障害を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2017年10月4日に出願の米国仮出願番号62/568001、及び2018年9月12日に出願の米国非仮出願第16/129020の出願日の利益を主張し、その両方が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、治療不応性うつ病に苦しむ患者の治療方法の分野、およびそのような治療から恩恵を受けるうつ病患者を特定する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
うつ病は、世界中の何百万もの人々に影響を与えている深刻で複雑な疾患である。
【0004】
近年、承認されたすべての医薬は、モノアミン作動系の操作に基づいている。しかしながら、うつ病の症状と神経生物学的根拠はかなり異なることが知られている。
【0005】
現在承認されている医薬、主に臨床症候群の患者で機能するようであり、少なくとも24のハミルトンうつ病評価尺度(HAMD)の評価によって反映されている(Kirsch等(2008)PLoS Med 5 (2):e45) 。しかしながら、この特徴付けは、うつ病の特定の神経生物学的メカニズムを指し示すものではない。第一線の抗うつ薬治療による寛解率は全体としてわずか30%程度である(Trivedi等(2006)Am J Psychiatry 163(1):28-40)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Kirsch等(2008)PLoS Med 5(2):e45
【非特許文献2】Trivedi等(2006)Am J Psychiatry 163(1):28-40
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
我々は、標準的な抗うつ病治療に次ぐ、または単一の治療としての、治療抵抗性うつ病および関連障害のある患者を治療する方法を記載する。これらの患者は、十分な用量で、十分な期間(6週間)にわたって、少なくとも1回の薬理学的抗うつ薬治療に対する無反応によって特定されるであろう。さらに、この方法の一実施形態は、応答の可能性を最大化するために、治療の開始から標準抗うつ薬と記載された化合物との組み合わせから恩恵を受けるであろう患者を特定する手順を含む。
【0008】
本方法の別の実施形態は、本発明の中心にある化合物のより長期の寛容性の問題を克服するために、記載された化合物をマグネシウム塩の形態と組み合わせる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
標準的な抗うつ薬に対する無反応の生物学的マーカーは学術文献に記載されているが、特定の種類のうつ病の診断にはまだ含まれておらず、規制当局にも取り上げられていない。これらには、不安または身体化(明確な体性相関のない身体的愁訴)の存在などの臨床的徴候を含み、且つ低コルチゾールレベル、高体重または高肥満度指数などの生物学的マーカー、並びにインスリン抵抗性を含むメタボリックシンドロームの兆候を含む(Buttner等(2015) Psychiatr Res 66-67:24-37)。したがって、現在使用されている抗うつ薬にできるだけ早く反応しない患者を特定し、差別化された治療戦略を適用する必要性が存在する。
【0010】
上記は、本発明の一般的な設計の特徴を要約している。以下のセクションでは、本発明の特定の実施形態をある程度詳細に説明する。これらの特定の実施形態は、上述の一般的な設計特徴に従って本発明を実施する実現可能性を実証することを意図している。したがって、これらの実施形態の詳細な説明は、説明および例示のみを目的として提供されており、前述の概要説明または以下の特許請求の範囲のいずれかを限定することを意図していない。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1つの実施形態において、本発明は、酵素11-ベータヒドロキシ-ステロイド-デヒドロゲナーゼ2(11-ベータ-HSD2)の末梢および/または中枢作用阻害剤の単剤療法としてまたは現在使用されている抗うつ薬への併用療法としての投与からなるこれらの患者の治療を含む。
【0012】
このクラスの化合物の例は、グリチルリチン酸(グリチルリチンまたはグリチルリチン酸としても知られる)(GZA)またはその代謝産物のグリチルレチン酸(GLA)またはカルベノキソロンである。GLAまたはGZAは、単離した化合物として投与することができ、または例えばスペインカンゾウおよび11-ベータ-HSD1を更に阻害するかまたは阻害せずに11-ベータ-HSD2を阻害する活性を有する物質を含む関連または非関連の植物由来の、天然ハーブ抽出物の一部であることもできる。
【0013】
11-ベータ-HSD2の末梢阻害の結果として、いくつかの生理学的影響が発生する:コルチゾールは、さもなければ迅速にコルチゾールを代謝し、MRでその作用を阻害する腎、内皮、および恐らく下垂体細胞におけるミネラルコルチコイド受容体(MR)により大きな度合いで接近することができる。結果として、アルドステロンの放出の減少が起こる。これは、腎臓でのナトリウム(Na+)再吸収の増加、動脈血圧の増加、および下垂体からの副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)分泌の減少に関連している可能性がある。これらの変化は、生理学的リガンドであるアルドステロンに加えて、および/または代替的に、コルチゾールによるMR受容体活性化の増加の結果として発生する。
【0014】
レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)の活性の低下、特にアルドステロンの濃度および/またはアルドステロンとコルチゾールの濃度の比率の低下は、孤束核、海馬および扁桃体を含む特定のアルドステロン感受性の脳領域に影響を及ぼす(Buttner等2015;Murck等(2014)Nephron Physiol 128(1-2):17-25)。更なる潜在的な影響は、脳における脳脊髄液(CSF)の生成の減少である(Weber(2003)J Lab Clin Med 42(2):71-82)。したがって、MRの活性化の低下は、脳の領域に加えて、脳脊髄液の産生に特定の作用をもたらす。どちらも並行して、または独立して、標準的な抗うつ薬に対する治療不応のリスクを軽減できる。
【0015】
したがって、拡張すると、脳脊髄液の産生を減少させることができる化合物も、治療抵抗性うつ病を克服すると考えられる。これらは、例えば、アセタゾラミドを含む炭酸脱水酵素の活性を阻害する化合物、およびアンジオテンシンII受容体拮抗薬、カルシウムチャネル遮断薬およびMR拮抗薬を含む炭酸脱水酵素活性に対して二次活性を有する化合物である(Puscas等(1999)Res Commun Mol Pathol Pharmacol 105(3):213-36;Puscas等(2001)Drugs Exp Clin Res 27(2):53-60;Puscas等(2000)Int J Clin Lab Res 30(3):119- 25)。さらに、RAASの活性化、すなわちアンジオテンシンII受容体の活性の増加は、バソプレシン(AVP)放出の増加につながる。バソプレシンは、双方向で頭蓋内圧(ICP)の増加に関連している。それはCSFで増加し(Sorensen等(1984)Ann Neurol 15(5):435-40);Widmayer等(2010)Neurol Res 32(10):1021-6)およびICPが増加した状況での血漿(Id)で増加する。他方で、AVPの静脈内注射はICPの増加につながり(Saladin等(1993)Neurol Res 15(3):198-203)、その一方で、脳室内(ICV)投与は一部の動物モデルでICPを増加させ(Seckl等(1991)Exp Brain Res 84(1):173-6;Sorensen等(1990)Neurol Res 12(2):83-8)、ある動物では増加しない(Saladin等1993 )。逆に、バソプレシン拮抗薬、特にV1A受容体を標的とするものは、脳浮腫および頭蓋内圧の低下につながる(Krieg等(2015)N Neurotrauma 32(4):221-7)。したがって、アルドステロンの活性を低下させる方法に加えて、特にV1Aタイプからの、バソプレシン受容体の活性化を低下させる下流の活性が有益な場合がある。
【0016】
脳脊髄液産生に関与する追加のメカニズムも、関与する受容体系を特異的に標的とすることにより脈絡叢および脳室容積の増加量を低減できるという仮定の下で包含される。これらは、カンナビノイド受容体CB1(アストン等(2004)Neuroscience Letter 364: 40-42)、ドーパミンD1受容体(BoysonとAlexander(1990)Ann Neurol 27: 631-635)、および5-HT2c受容体(Palacios等(2017)Psychopharmacology 234:1395-1418)を制限することなく含む。
【0017】
本発明の別の実施形態は、潜在的な寛容性の問題またはうつ病および他のCNS関連障害に対する有益な効果を逆転させるメカニズムを克服するために、指定された化合物とマグネシウム塩との組み合わせを投与する。マグネシウムの添加は、内皮MR活性化の末梢効果、特に身体からのマグネシウム塩の減少を防ぐために有益である。したがって、指定された化合物またはそれらを含有する調製物は、単独で、または好ましくはクエン酸マグネシウム、オレイン酸マグネシウム、トレオン酸マグネシウム、酸化マグネシウムまたは他の調製物を含むマグネシウム調製物と組み合わせて使用することができる。これは、単一の製剤として、またはいくつかの製剤を組み合わせた治療法として投与することができる。これらの調製物は、固形錠剤の形態、または溶液もしくは他の調製物であり得る。
【0018】
本発明の別の実施形態は、標準的な抗うつ薬治療に応答する可能性が低く、記載された調製物から恩恵を受ける可能性が最も高い患者を識別する方法を提供する。特に末梢MR活動の低下または中枢MR活動の増加の兆候は、標準的な抗うつ薬治療に対する反応の悪化に関連している。これらは、以下を含むがこれに限定されない臨床徴候のリストからのものである可能性がある。
【0019】
リストA
・収縮期血圧が低い、起立性低血圧
・血漿ナトリウム濃度が低い
・血漿カリウム濃度が高い
・血漿マグネシウム濃度が高い
・体液(例えば、血漿、血清、または唾液)中アルドステロンレベルが高い
・体液中アルドステロン/コルチゾール濃度の比が高い
・体液中のコルチゾールの濃度が低い
・心拍変動が低い
・徐波睡眠(SWS)が高い
・塩の渇望
・塩味のしきい値が高い
・脳室容積が大きい
・脈絡叢が大容積
・眼圧が高い
・歩行障害
・膀胱機能障害
【0020】
アルドステロンの増加は、以下のものを非限定的に含む臨床的CNS効果にもつながる(Buttner等2015; Murck(2017)"Aldosterone Action on Brain and Behavior" Pp.20 159-79 D.W. PfaffとM. Joelsが編集したHormones, Brain, and Behavior 第3版:Oxford:Academic Press;Murck等2014):
【0021】
リストB
・記憶障害
・認知機能障害
・不安
・身体化
・うつ病
・無気力症候群
・肥満
【0022】
GZAまたはGLAまたは関連化合物は、標準化された抽出物として、スペインカンゾウまたは11-ベータ-HSD2活性を持つ化合物を含む他の植物の根の調製物として使用できる。あるいは、カルベノキソロンを使用することもできる。これらの化合物は、単離した化合物として、または併用療法の追加の化合物、たとえば、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、セロトニン-ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(SNRI)、モノアミン酸化酵素阻害剤(MAO阻害剤)およびセロトニン-ノルアドレナリンおよびドーパミン受容体のアゴニストまたはアンタゴニストと組み合わせて使用できる。
【0023】
調製物は、1%~100%のGZAまたはGLAが含まれている必要があります。カルベノキソロンの投与量は10~1000 mgですが、1日の投与量は5 mg~500 mg GLAまたはGZAである必要がある。併用療法を試みる場合のマグネシウム塩の用量は、50 mg~5000 mgのMg2+にする必要がある。アセタゾラミドの用量は、1日あたり50 mgから5000 mgの範囲であることが推奨される。CSF産生を減少させる代替化合物は、承認された範囲で、または最高および最低用量よりそれぞれ5倍高いまたは低い値で利用できる。開発中の化合物については、用量を定義する必要がある。
【0024】
本発明は、治療不応性うつ病を治療する方法を提供する。リストAのみ、リストBのみ、またはそれらの組み合わせからの臨床的兆候または症状を伴う難治性うつ病および未治療のうつ病は、好ましい標的集団である。
【0025】
したがって、本発明はさらに、三環系および関連抗うつ薬、ノルアドレナリン再取り込み阻害剤、セロトニン再取り込み阻害剤、モノアミンオキシダーゼ阻害剤、および非定型神経遮断薬のクラスの薬剤を含む抗うつ作用を有する標準的な薬物と11-ベータ-HSD2阻害製剤の、同じ製剤または同じパッケージを使用しての同時投与を含む、リストされた徴候および症状の治療における併用療法を提供する。同様の単剤療法または併用療法は、アセタゾラミド、カンナビノイド受容体CB1のリガンド、ドーパミン受容体D1のリガンド、セロトニン受容体5-HT2cのリガンドなどを制限することなく含む、脳脊髄液産生を減少させる代替化合物で行うことができる。
【0026】
本発明のさらなる特徴は、所与の患者の個々の用量を決定することである。疾患生物学には個人差があるため、臨床的および生理学的マーカーに基づいて用量レベルを監視および決定することは有益である。特に、心拍数の変動または呼吸洞調律不整脈(SRA)の増加は、治療の有益なCNS活動の兆候である。これらのマーカーの増加は常々監視する必要がある。投与量の減少は、心拍数の変動が減少した場合に発生する可能性があり、これは高すぎる投与量を示している可能性がある。臨床的利益を超える用量を示す代替マーカーには、SWSの増加と収縮期血圧の増加が含まれる。理想的には、収縮期血圧の高い正常範囲への上昇を達成する必要がある。しかしながら、収縮期血圧および血漿ナトリウムの増加、ならびに生理学的レベルを超える血漿カリウムまたはマグネシウムの減少は、用量の減少をもたらすはずである。
【実施例0027】
実施例1:入院しており、標準的な抗うつ薬による治療にある程度の抵抗を示した大うつ病患者の観察研究は、最大42日間観察された。目的は、ミネラルコルチコイド受容体(MR)の活動のマーカーが治療反応に関連しているという仮説を検証することであった。まだ進行中の研究の被験者のサブセットの結果は、仮説の支持を発見した:唾液アルドステロンと唾液コルチゾールの比率(Aldo/Cort-Ratio)が高いだけでなく、収縮期血圧も低いと、悪い結果と関連していた。両者の結果は、抹消MRの感度が、臨床転帰と相関しているという仮説(Buttner等2015)と一致していた。観察期間を完了するために46人の被験者を含む研究の延長の結果は、レスポンダーと非レスポンダーの違いを示した:抗うつ薬治療に対して非レスポンダーだけでなく、非レスポンダーでは、唾液コルチゾールレベルおよび収縮期血圧の間の有意な相関が観察された(ピアソン相関:レスポンダーではR = 0.43、p <0.05であるのに対し、非レスポンダーではR =-0.29、p >0.2)。この酵素が高レベルで、コルチゾールが血圧を含むMR関連パラメータに影響を与えるのを防ぐため、この効果は腎臓および他の末梢標的で発生すると仮定すると、この差は11-ベータ-HSD2の活性が低いことがレスポンダーでは存在するという仮定と一致する。この発見は、例えば上記の11-ベータ-HSD2阻害剤で11-ベータ-HSD2を阻害することによりシステムを操作する機会を提供する。この薬理学的に誘発される可能性のある阻害はまた、収縮期血圧の上昇とアルドステロン分泌の減少をもたらすはずであり、この集団に有益であることが示唆される。
【0028】
実施例2:患者は、MRの末梢性脱感作およびMRにおける中枢性過活動を示すバイオマーカーに基づいて、標準的な抗うつ薬に対して非レスポンダーであることが確認されていた。末梢MR脱感作はアルドステロンの増加に関連しているため、MR機能の中枢マーカーは過活動を示す。つまり、末梢活動低下のマーカーと中枢過活動のマーカーがこの患者集団を特徴付ける。末梢活動低下のマーカーは、収縮期血圧の低下、血漿または血清または他の体液中の低末梢ナトリウム(Na+)濃度、これらの体液中の高カリウム(K+)および/または高マグネシウム(Mg2+)濃度である(Buttner等2015)。この集団では、アルドステロンのレベルの上昇、コルチゾールのレベルの低下、および/またはアルド/コートの比率が高いことが観察される。MRでのアルドステロン濃度の増加の結果としての中心的なメカニズムは、徐波睡眠の長期化、心拍数の変動の低下、塩分嗜好性の向上、および味覚テストでの塩味感受性の低下につながる(Murck等2014)。これらのマーカーの一部またはすべては、標準的な抗うつ薬に対して非レスポンダーである可能性が高く、11-ベータ-HSD2酵素の阻害剤から利益を得る可能性が最も高い患者の選択を操作可能にするために使用される。
【0029】
実施例3:特定のニューロン活動に対する高アルドステロンまたは低コルチゾールの影響に加えて、両方のホルモンが脳脊髄液の分泌に影響を与える:高アルドステロン症の患者は、脳室容積の増加を示す(McGeeney等(2014)Headache 54(3):445-58; Sheldon等(2015)Pediatr Res 77(2):282-9)。したがって、より高いアルドステロンレベルまたはより高いアルド/コルト比を有する対象、すなわちより多くの治療不応性うつ病を有する対象において、心室容積の増加が存在する可能性があると仮定することができる。我々は、うつ病患者を調査したサブスタディで、心室容積の増加はうつ病患者の反応の悪化に関連していることを実証した。これは、周囲の解剖学的領域、特に脳梁(CC)の異なる領域のより小さなボリュームにおける頭蓋内圧の増加の兆候と関連していた。この領域は、唾液のアルドステロン濃度と負の相関があり(傾向:p <0.06)、アルドステロンレベルが高くなると特定のCC領域に圧力がかかるという仮定と一致する。
【0030】
実施例4:うつ病の入院患者を対象とした観察的臨床研究では、無反応のいくつかの予測マーカーが上記に説明されている(実施例1)。さらに、我々は、標準的な抗うつ薬治療に反応した患者と反応しなかった患者のバイオマーカーの変化に違いを観察した。特に、非レスポンダーは、治療の過程で血漿バソプレシンの有意な増加を示し(p <0.05)、これはレスポンダーでは観察されなかった。上記の概要のメカニズムと一致して、バソプレシンの増加は、潜在的にバソプレシンV1A関連のメカニズムを介して、臨床的改善を妨げる可能性がある。したがって、標準的な抗うつ薬と組み合わせて、または単剤療法としてのバソプレシンV1A拮抗薬は、うつ病を治療する治療上の可能性を秘めている可能性がある。
【0031】
本発明の好ましい実施形態を例示の目的で開示したが、当業者は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲および精神から逸脱することなく、多くの追加、修正、および置換が可能であることを理解するであろう。
【0032】
実施例5:バイオマーカーと臨床上の兆候を特徴付けるクエン酸マグネシウム(1日2回の活性化合物150 mg)と組み合わせた、スペインカンゾウの抽出物(1日2回の活性化合物約70 mgのグリチルリチン)によるオープンラベル介入は、次の患者で特徴付けられました:15歳でエピソード期間が6か月で入院した最初のうつ病を持つ45歳の女性患者。患者は、介入を開始する前に十分な時間、セロトニン再取り込み阻害薬で治療された。いくつかの徴候およびバイオマーカーパラメータが、我々の以前の観察に基づいて、応答特徴付け介入なしで、非応答の予測として考慮された(Buettner等2015)。女性の被験者には、収縮期血圧とアルドステロン/コルチゾールの唾液濃度の比率という2つのマーカーが確認されていた。この被験者では、以前に報告された127.5 mmHg以上の反応の閾値と比較して、116 mmHgの低収縮期血圧がベースラインで観察され、アルドステロン/コルチゾール比は12.5であり、非応答(閾値0.9以上で非応答を定義する)の強力なリスクを示していた。患者は、介入の開始時にハミルトンうつ病スコア(21項目バージョン(HAMD-21))が35でHAMD-6スコアが19であった。2週間後、これらのスコアはそれぞれ29と14に低下し、それぞれ6ポイントと5ポイントまで低下した。HAMD-6はうつ病の中核症状を特定するので、この文脈ではより関連性が高いと考慮される。同じ方法で取得されたBuettner等(2015)のデータと比較すると、予測されるHAMD-6の低下は、(レスポンダーおよび非レスポンダーを含む)全グループについて2ポイントであった。介入の2週間以内に患者の改善はかなり予想以上であった。並行して、収縮期血圧は125 mmHgのレベルまで上昇し(正常範囲内)、唾液アルドステロン濃度が37.5 pg/mlから22.0 pg/mlまで低下した。これは機能的目標の達成、すなわち11-ベータ-HSD2の阻害を示している。彼女の全体的な改善は、彼女に、適度な改善状態の早い段階で病院で治療を受けることと、彼女自身が組織したフォローアップ治療を継続することを決めさせた。
【0033】
実施例6:スペインカンゾウの抽出物を使用するオープンラベルの介入(活性化合物約70 mgのグリチルリチン、一日二回)を、バイオマーカーと臨床的兆候を特徴付けるクエン酸マグネシウム(一日二回の活性化合物150 mg)と組み合わせ、以下の患者において特徴づけた。
【0034】
大うつ病の罹患期間が4年間、エピソード期間が1年間の45歳の患者が病院に収容された。男性の被験者では、追加のバイオマーカーがレスポンダーと非レスポンダーを区別した。つまり、収縮期血圧とアルドステロン/コルチゾールの唾液濃度比に加えて、次のマーカーが意味を持っていた:心拍数変動、塩味強度、塩嗜好、徐波睡眠時間。ベースライン時のアルドステロン/コルチゾールの彼の唾液濃度比は9.9であり、したがって無反応を予測した。ただし、彼の収縮期血圧は123 mmHg、SWS 35分、HRV 35であった。これらはすべて、比較母集団の中央値に近く、レスポンダーと非レスポンダーを区別するため、意味がなかった。塩味の強さは7で、塩の好みは3であった。これらの値はどちらも、介入なしの応答の可能性が高いことを示していた。したがって、結果予測に関するデータは混合されていた。入院時のHAMD-21は42で、HAMD-6スコアは15であった。患者はセロトニン-ノルアドレナリン再取り込み阻害薬で治療された。6週間の治療で、HAMD-21は13のスコアに低下し、HAMD-6は5のスコアに低下した。どちらも応答を示していた。同時に、収縮時血圧は123 mmHgと同じままであったが、血漿ナトリウム濃度は、ベースライン時の140から6週間後の143までわずかに上昇した(正常範囲内)。さらに、唾液アルドステロン濃度は、6週間の観察期間にわたって27.8 pg/mlから21.9 pg/mlへの予想される低下を示した。この観察結果は、予測的反応マーカーのパターンが不明確な被験者の臨床反応に悪影響を与えることなく、期待されるバイオマーカーの変化に、介入が部分的につながることを示している。
【0035】
実施例7:52歳の高齢健常者は数週間の介入を開始し、捕捉HRVのウェアラブルデバイスで決定されるように、HRVを観察することによってその効果を特徴付けた。パラメータは「ストレスレベル」として表され、HRV測定とは逆になる。パラメータは数分間隔で取得されるが、この目的のためには、週ごとのこのパラメータの平均で十分である。全体的なストレスレベルは、介入の開始の2ヶ月に亘り53と54として計算された。平均ストレスレベルの最初の4週間は49で、介入の約4週間後に急速に低下し、翌月の値は24になった。介入レベルの2か月後の中止後で、少なくとも次の4週間は28で低いままであり、記録を終えた。これらの調査結果は、介入による中枢MR活性化の予想される減少と一致している。
【手続補正書】
【提出日】2023-07-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
11-ベータ-HSD-2阻害活性を有する第1の化合物を含む調製物を対象に投与する工程を含む、治療不応性うつ病を治療する方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0035
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0035】
実施例7:52歳の高齢健常者は数週間の介入を開始し、捕捉HRVのウェアラブルデバイスで決定されるように、HRVを観察することによってその効果を特徴付けた。パラメータは「ストレスレベル」として表され、HRV測定とは逆になる。パラメータは数分間隔で取得されるが、この目的のためには、週ごとのこのパラメータの平均で十分である。全体的なストレスレベルは、介入の開始の2ヶ月に亘り53と54として計算された。平均ストレスレベルの最初の4週間は49で、介入の約4週間後に急速に低下し、翌月の値は24になった。介入レベルの2か月後の中止後で、少なくとも次の4週間は28で低いままであり、記録を終えた。これらの調査結果は、介入による中枢MR活性化の予想される減少と一致している。
本発明の好ましい態様は、下記の通りである。
〔1〕11-ベータ-HSD-2阻害活性を有する第1の化合物を含む調製物を対象に投与する工程を含む、治療不応性うつ病を治療する方法。
〔2〕前記第1の化合物が、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸(GZA)、グリチルレチン酸(GLA)、およびカルベノキソロンからなる群から選択される、前記〔1〕に記載の方法。
〔3〕前記調製物が、脳脊髄液の産生を減少させるように作用する第2の化合物をさらに含む、前記〔1〕に記載の方法。
〔4〕第2の化合物が、アセタゾラミン、アンジオテンシンII受容体拮抗薬、V1A型のバソプレシン受容体の拮抗薬、ミネラルコルチコイド受容体の拮抗薬、カンナビノイド受容体CB1のリガンド、ドーパミン受容体D1のリガンド、および5-HT2c型のセロトニン受容体のリガンドからなる群から選択される、前記〔3〕に記載の方法。
〔5〕前記調製物が、少なくとも1%のGLAまたはGZAまたはカルベノキソロンまたはその代謝産物を含む組成物をさらに含む、前記〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の方法。
〔6〕前記調製物が、GLAまたはGZAを1日あたり5mg~500mgの割合で投与される、前記〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の方法。
〔7〕前記調製物が、GLAまたはGZAを1日あたり5mg~500mgの割合で投与される、前記〔5〕に記載の方法。
〔8〕前記調製物が、マグネシウム化合物と組み合わせて使用される、前記〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の方法。
〔9〕前記調製物が、マグネシウム化合物と組み合わせて使用される、前記〔5〕に記載の方法。
〔10〕前記調製物が、マグネシウム化合物と組み合わせて使用される、前記〔6〕に記載の方法。
〔11〕前記調製物が、マグネシウム化合物と組み合わせて使用される、前記〔7〕に記載の方法。
〔12〕A)うつ、不安、身体化、認知機能障害、記憶障害、歩行障害、及び膀胱機能障害を含む1以上の臨床上の兆候と、B)低収縮期血圧、起立性低血圧、低血漿ナトリウム濃度、高血漿カリウム濃度、高血漿マグネシウム濃度、高血漿または唾液アルドステロン濃度、高血漿または唾液アルドステロン/コルチゾール比、高血漿または唾液バソプレシン濃度、脳室の大容積、脈絡叢大容積、および眼圧の上昇を含む1つ以上のバイオマーカー徴候とに基づいて、前記調製物での治療から治療上の利益を受けやすいうつ病を患っている患者を同定するための工程をさらに含む、前記〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の方法。
〔13〕A)うつ、不安、身体化、認知機能障害、記憶障害、歩行障害、及び膀胱機能障害を含む1つ以上の臨床上の兆候と、B)低収縮期血圧、起立性低血圧、低血漿ナトリウム濃度、高血漿カリウム濃度、高血漿マグネシウム濃度、高血漿または唾液アルドステロン濃度、高血漿または唾液アルドステロン/コルチゾール比、高血漿または唾液バソプレシン濃度、脳室の大容積、脈絡叢大容積、および眼圧の上昇を含む1つ以上のバイオマーカー徴候とに基づいて、前記調製物での治療から治療上の利益を受けやすいうつ病を患っている患者を同定するための工程をさらに含む、前記〔5〕に記載の方法。
〔14〕A)うつ、不安、身体化、認知機能障害、記憶障害、歩行障害、及び膀胱機能障害を含む1つ以上の臨床上の兆候と、B)低収縮期血圧、起立性低血圧、低血漿ナトリウム濃度、高血漿カリウム濃度、高血漿マグネシウム濃度、高血漿または唾液アルドステロン濃度、高血漿または唾液アルドステロン/コルチゾール比、高血漿または唾液バソプレシン濃度、脳室の大容積、脈絡叢大容積、および眼圧の上昇を含む1つ以上のバイオマーカー徴候とに基づいて、前記調製物での治療から治療上の利益を受けやすいうつ病を患っている患者を同定するための工程をさらに含む、前記〔6〕に記載の方法。
〔15〕A)うつ、不安、身体化、認知機能障害、記憶障害、歩行障害、及び膀胱機能障害を含む1つ以上の臨床上の兆候と、B)低収縮期血圧、起立性低血圧、低血漿ナトリウム濃度、高血漿カリウム濃度、高血漿マグネシウム濃度、高血漿または唾液アルドステロン濃度、高血漿または唾液アルドステロン/コルチゾール比、高血漿または唾液バソプレシン濃度、脳室の大容積、脈絡叢大容積、および眼圧の上昇を含む1つ以上のバイオマーカー徴候とに基づいて、前記調製物での治療から治療上の利益を受けやすいうつ病を患っている患者を同定するための工程をさらに含む、前記〔7〕に記載の方法。
〔16〕A)うつ、不安、身体化、認知機能障害、記憶障害、歩行障害、及び膀胱機能障害を含む1つ以上の臨床上の兆候と、B)低収縮期血圧、起立性低血圧、低血漿ナトリウム濃度、高血漿カリウム濃度、高血漿マグネシウム濃度、高血漿または唾液アルドステロン濃度、高血漿または唾液アルドステロン/コルチゾール比、高血漿または唾液バソプレシン濃度、脳室の大容積、脈絡叢大容積、および眼圧の上昇を含む1つ以上のバイオマーカー徴候とに基づいて、前記調製物での治療から治療上の利益を受けやすいうつ病を患っている患者を同定するための工程をさらに含む、前記〔8〕に記載の方法。
〔17〕A)うつ、不安、身体化、認知機能障害、記憶障害、歩行障害、及び膀胱機能障害を含む1つ以上の臨床上の兆候と、B)低収縮期血圧、起立性低血圧、低血漿ナトリウム濃度、高血漿カリウム濃度、高血漿マグネシウム濃度、高血漿または唾液アルドステロン濃度、高血漿または唾液アルドステロン/コルチゾール比、高血漿または唾液バソプレシン濃度、脳室の大容積、脈絡叢大容積、および眼圧の上昇を含む1つ以上のバイオマーカー徴候とに基づいて、前記調製物での治療から治療上の利益を受けやすいうつ病を患っている患者を同定するための工程をさらに含む、前記〔9〕に記載の方法。
〔18〕A)うつ、不安、身体化、認知機能障害、記憶障害、歩行障害、及び膀胱機能障害を含む1つ以上の臨床上の兆候と、B)低収縮期血圧、起立性低血圧、低血漿ナトリウム濃度、高血漿カリウム濃度、高血漿マグネシウム濃度、高血漿または唾液アルドステロン濃度、高血漿または唾液アルドステロン/コルチゾール比、高血漿または唾液バソプレシン濃度、脳室の大容積、脈絡叢大容積、および眼圧の上昇を含む1つ以上のバイオマーカー徴候とに基づいて、前記調製物での治療から治療上の利益を受けやすいうつ病を患っている患者を同定するための工程をさらに含む、前記〔10〕に記載の方法。
〔19〕A)うつ、不安、身体化、認知機能障害、記憶障害、歩行障害、及び膀胱機能障害を含む1つ以上の臨床上の兆候と、B)低収縮期血圧、起立性低血圧、低血漿ナトリウム濃度、高血漿カリウム濃度、高血漿マグネシウム濃度、高血漿または唾液アルドステロン濃度、高血漿または唾液アルドステロン/コルチゾール比、高血漿または唾液バソプレシン濃度、脳室の大容積、脈絡叢大容積、および眼圧の上昇を含む1つ以上のバイオマーカー徴候とに基づいて、前記調製物での治療から治療上の利益を受けやすいうつ病を患っている患者を同定するための工程をさらに含む、前記〔11〕に記載の方法。
〔20〕抗うつ薬と共に、11-ベータ-HSD-2またはその代謝産物の阻害剤を同時投与する工程を含む、治療不応性うつ病を治療する方法。
〔21〕単剤療法として11-ベータ-HSD-2またはその代謝産物の阻害剤を同時投与する工程を含む、治療不応性うつ病を治療する方法。
〔22〕11-ベータ-HSD-2またはその代謝物の阻害剤と抗うつ薬が、単一の製剤中に存在する、前記〔20〕に記載の方法。
〔23〕11-ベータ-HSD-2またはその代謝物の阻害剤と抗うつ薬が、別個の製剤中に存在する、前記〔21〕に記載の方法。
〔24〕脳脊髄液(CSF)の分泌速度を低下させるための組成物の同時投与を含む、治療不応性うつ病、記憶障害、認知機能障害、不安、身体化、うつ病、無気力症候群、肥満、睡眠障害、疼痛障害、および身体表現性の痛みと頭痛、並びに歩行障害及び膀胱機能障害を治療する方法。
〔25〕前記組成物が、アセタゾラミン、またはその代謝産物若しくは前駆体、またはV1A型のバソプレシン受容体の拮抗薬、またはカンナビノイド受容体CB1のリキッド、またはドーパミン受容体D1のリキッド、または5-HT2c型のセロトニン受容体のリキッドである、前記〔24〕に記載の方法。
〔26〕11-ベータ-HSD-2の阻害剤または脳脊髄液(CSF)の生産の阻害剤による治療が、1つ以上のうつ病以外のCNS症状を標的化し、CNS症状が行動の関連メカニズムを有し、前記CNS症状が不安、認知機能障害、記憶喪失、無気力、睡眠障害、疼痛障害、および身体表現性の痛みと頭痛、並びに肥満、歩行障害及び膀胱機能障害を含む、方法。
【外国語明細書】