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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134500
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】食品用容器および紙製品
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/42 20060101AFI20230920BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20230920BHJP
   B32B 9/02 20060101ALI20230920BHJP
   B32B 9/06 20060101ALI20230920BHJP
   B32B 29/00 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
B65D65/42 C BRH
B65D65/40 D
B32B9/02
B32B9/06
B32B29/00
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023102617
(22)【出願日】2023-06-22
(62)【分割の表示】P 2022501397の分割
【原出願日】2020-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】516278171
【氏名又は名称】株式会社マーケットヴィジョン
(71)【出願人】
【識別番号】522220603
【氏名又は名称】佐藤 敏彦
(74)【代理人】
【識別番号】100122574
【弁理士】
【氏名又は名称】吉永 貴大
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 敏彦
(57)【要約】      (修正有)
【課題】耐水性、耐油性およびリサイクル可能な食品用容器および紙製品を提供することを目的とする。
【解決手段】原紙と、前記原紙に形成された被膜とからなる紙製品であって、前記被膜が、水とコンニャクマンナンとアルカリとを混合、撹拌することでアセチル基を遊離させて膨潤抑制した変性マンナンについて、中和によって変性マンナンの膨潤抑制を解除して得た中性または酸性の変性マンナンをゾル化またはゲル化させ、ゾル化させたマンナンゾルまたはゲル化させたマンナンゲルを、前記原紙に塗布して乾燥させた、食品用容器である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原紙と、前記原紙に形成された被膜とからなる食品用容器であって、
前記被膜が、水とコンニャクマンナンとアルカリとを混合、撹拌することでアセチル基を遊離させて膨潤抑制した変性マンナンに中和剤を加え、膨潤した中性または酸性のマンナンゾルを、前記原紙に塗布して乾燥させたものである
ことを特徴とする食品用容器。
【請求項2】
前記被膜が
前記マンナンゾルを、少なくとも50μm以上の厚さで塗布して乾燥させたものである
請求項1に記載の食品用容器。
【請求項3】
前記被膜が
前記マンナンゾルを、少なくとも100μm以上の厚さで塗布して乾燥させたものである、
請求項1に記載の食品用容器。
【請求項4】
前記被膜が
前記マンナンゾルを、少なくとも200μm以上の厚さで塗布して乾燥させたものである、
請求項1に記載の食品用容器。
【請求項5】
原紙と、前記原紙に形成された被膜とからなる紙製品であって、
前記被膜が、水とコンニャクマンナンとアルカリとを混合、撹拌することでアセチル基を遊離させて膨潤抑制したマンナンに中和剤を加え、膨潤した中性または酸性のマンナンゾルを、前記原紙に塗布して乾燥させたものである
ことを特徴とする紙製品。
【請求項6】
前記紙製品は、
食品用に用いる紙製品である、
請求項5に記載の紙製品。
【請求項7】
前記紙製品は、
スプーン、フォーク、箸、ストロー、マドラー、袋、飲料用パック、食品用の包装用紙のいずれか一以上を含む、
請求項6に記載の紙製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐水性、耐油性およびリサイクル可能な食品用容器および紙製品に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、さまざまな場面でプラスチック製の食品用容器やストローなどが使用されている。それらは耐水性、耐油性に優れており、さまざまな食品や飲料に対応することができるため利便性が高い。その一方、プラスチック製の食品用容器やストローには、その廃棄についての環境問題が指摘されている。
【0003】
たとえばアメリカではブラスチック性の廃棄物は、これまで土壌に埋められていた。しかし、プラスチック製の廃棄物の多くは自然分解しないため、土壌に蓄積されてしまう。一方、発展途上国ではプラスチック製の廃棄物が川や海にそのまま投棄されるケースが増え、海の生態系に大きな悪影響をもたらしている。
【0004】
このような環境問題の指摘とともに、プラスチック製の食品用容器の使用を廃止する機運が世界的に高まっている。たとえば世界的に著名なコーヒーチェーン店やファストフード店では、プラスチック製ストローの使用の廃止を目標としている。また、日本のあるファミリーレストランでは、すでに、プラスチック製ストローの使用を原則として廃止し、自然分解可能なプラスチック素材や食品素材を使用した代替ストローの使用に切り替えるとともに、食品素材を使用した食品用容器の開発を積極的に進めている。
【0005】
従来のプラスチック製ストローや食品用容器の代替として、自然分解可能なプラスチック素材や食品素材を使用する方法がある。しかし、環境に与える負荷は軽減するものの、その製造単価は従来よりも大幅に高くなる。
【0006】
また、紙容器にポリエチレンフィルムのラミネート加工を施す方法もあるが、これも製造単価が従来よりも大幅に高くなるのみならず、紙製品であるにもかかわらず、ラミネート加工がされているためリサイクルをすることができない。そのため、ラミネート加工された紙容器は焼却処分に回さざるを得ず、環境負荷が大きい。
【0007】
このようにプラスチック製の食品用容器やストローの代替として考えられている自然分解可能なプラスチック素材や食品素材を使用する方法では、その製造単価が高額であるという課題がある。また紙容器にラミネート加工する方法の場合には、製造単価が高額になることに加え、リサイクルをすることができないという環境面からの課題もある。
【0008】
そこで、比較的安価な対応方法として、従来から耐水性があることが知られていたコンニャク糊を紙に塗布する、またはコンニャクフィルムやコンニャクラミネート等を活用することが考えられる。そして、紙容器にコンニャクフィルムを貼る技術として、下記特許文献1に記載の技術がある。
【0009】
また下記非特許文献1には、和紙を貼り合わせるための接着剤としてコンニャク糊を用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002-355918号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】ダイニック株式会社、”「まるふの生産」”、[online]、インターネット<URL:https://www.dynic.co.jp/company/80/chno3/ch03-3.html.>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1に記載の技術は、脱アセチル化をしたコンニャクフィルムを紙に貼付する技術である。これによって安価に、耐水性のある紙とすることができる。しかし、脱アセチル化したコンニャクフィルム自体がアルカリ性を有しているため、特許文献1に記載の技術によって製造された紙製品を食品用容器に用いた場合、コンニャク臭、エグミ、渋みなどが発生してしまう。そのため、特許文献1に記載の技術を用いた紙製品を食品用容器などに用いることができない。
【0013】
また、非特許文献1では、コンニャク糊をそのまま接着材料として用いているので、コンニャク臭が強いものである。そのため、特許文献1と同様に、食品用容器や紙製品として用いることはできない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は上記課題に鑑み、耐水性、耐油性およびリサイクル可能な食品用容器および紙製品を発明した。
【0015】
第1の発明は、水とコンニャクマンナンとアルカリとを混合、撹拌することでアセチル基を遊離させて膨潤抑制した変性マンナンに中和剤を加え、膨潤した中性または酸性のマンナンゾルを、紙製の食品用容器に塗布して乾燥させた、食品用容器である。
【0016】
本発明の食品用容器を用いることによって、コンニャク臭、エグミ、渋みなどの発生を抑えながら、耐水性がある食品用容器を得ることができる。また、ラミネート加工等がされた食品用容器とは異なり、本発明における食品用容器は自然分解可能なので、従来よりも環境負荷が低く、かつ安価に製造できる。また、水に離解するので、リサイクル可能でもある。
【0017】
上述の発明において、前記食品用容器は、前記マンナンゾルを、少なくとも50μm以上の厚さで塗布して乾燥させた、食品用容器のように構成することができる。
【0018】
ミネラルウォーターなどを容れるための食品用容器としての耐水性を確保するためには、本発明のように50μm以上の厚さで塗布することが好ましい。
【0019】
上述の発明において、前記食品用容器は、前記マンナンゾルを、少なくとも100μm以上の厚さで塗布して乾燥させた、食品用容器のように構成することができる。
【0020】
本発明のように100μm以上の厚さで塗布することは、収容可能な飲料の種類を増加させることができるので、さらに好ましい。
【0021】
上述の発明において、前記食品用容器は、前記マンナンゾルを、少なくとも200μm以上の厚さで塗布して乾燥させた、食品用容器のように構成することができる。
【0022】
200μm以上の厚さで塗布することで、耐水性に加えて耐油性も確保することができる。
【0023】
第5の発明は、水とコンニャクマンナンとアルカリとを混合、撹拌することでアセチル基を遊離させて膨潤抑制したマンナンに中和剤を加え、膨潤した中性または酸性のマンナンゾルを、紙に塗布して乾燥させた、紙製品である。
【0024】
耐水性、耐油性が求められる器具は、食品用容器に限られない。広く紙製品に適用することもできる。
【0025】
上述の発明において、前記紙製品は、食品用に用いる紙製品である、紙製品のように構成することができる。
【0026】
本発明が特に効果を発揮するのは、コンニャク臭、エグミ、渋みなどの発生させずに、耐水性、耐油性を確保し、またリサイクル可能である点である。そのため特に食品用に用いる紙製品であることが好ましい。
【0027】
上述の発明において、前記紙製品は、スプーン、フォーク、箸、ストロー、マドラー、袋、飲料用パック、食品の包装用紙のいずれか一以上を含む、紙製品のように構成することができる。
【0028】
食品用に用いる紙製品としては本発明のような製品が一例として上げられる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によって、コンニャク臭、エグミ、渋みなどの発生を抑えながら、耐水性、耐油性がある食品用容器または紙製品とすることができる。また、本発明における食品用容器または紙製品は自然分解可能なので、従来よりも環境負荷が低く、かつ安価に製造できる。さらに本発明における食品用容器または紙製品は水に離解するので、リサイクル可能でもある。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】吸水度試験の結果を示す表である。
図2】高温、冷温による影響の有無を確認するための吸水度試験の結果を示す表である。
図3】官能テストの結果を示す表である。
図4】リサイクル可能性の確認テストにおいて、ちぎったテスト紙を水が入った容器に投入し、24時間放置させた状態を示す写真である。
図5】24時間水につけたテスト紙をパルプ離解機に投入した状態を示す写真である。
図6】テスト紙が離解した状態を示す写真である。
図7】水とテスト紙が混合した混合液をシートマシーンに投入した状態を示す写真である。
図8】シートマシーンで紙をすいた状態を示す写真である。
図9】すいた紙をプレス機に掛けた状態を示す写真である。
図10】プレス後に乾燥機に投入した状態を示す写真である。
図11】リサイクルした紙が乾燥機から排出された状態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
まず、本発明の食品用容器または紙製品に塗布するためのマンナンゾルまたはマンナンゲル(コンニャクゾルまたはコンニャクゲル)は、特許第6089308号に開示されている製造方法により製造された変性マンナンを用いることができるが、それに限るものではなく、酸性から中性のpH領域でゲル化するマンナンゾルまたはマンナンゾルからゲル化するマンナンゲルであれば、いかなるものであってもよい。
【0032】
食品用容器または紙製品に塗布するための変性マンナンによるマンナンゾルまたはマンナンゲル(コンニャクゾルまたはコンニャクゲル)の製造方法を説明する。
【0033】
マンナンゾルは、コンニャクマンナンをアルカリ処理と中和処理とを行うことで得られる。水とアルカリとコンニャクマンナンとを混合し、1~100分間程度撹拌しながら膨潤抑制をしアセチル基を遊離する。中和処理で膨潤を解除し、マンナンが膨潤をしたときに撹拌を止める。そして十分に膨潤させることでマンナンゾルを得る。
【0034】
マンナンゲルは、マンナンゾルを加熱することで得られる。
【0035】
コンニャクマンナンはコンニャク芋を摩砕したもの、コンニャク粉、コンニャク粉をアルコール水溶液で洗浄したグルコマンナンの一つまたは二つ以上を混合したものを用いることができる。またコンニャク芋に品種の特定はなく、コンニャクマンナンを含有するサトイモ科コンニャク属であればどの品種でもよい。
【0036】
コンニャクマンナンとアルカリ溶液の割合は、コンニャクマンナン1部に対し、水10部から200部が好ましい。水温は摂氏60度以下が好ましい。
【0037】
添加するアルカリは強アルカリ性であればよく、水酸化カルシウム、貝殻焼成カルシウム、卵殻カルシウムなどがその一例としてあげられる。アルカリ量はコンニャクマンナンのアセチル基を遊離し膨潤抑制できる量が必要で通常のコンニャクを製造するときに使用するアルカリ量よりも多い。水酸化カルシウムの場合はコンニャクマンナン重量の7.6%以上が好ましい。アルカリ溶液のpHは11.7以上が好ましい。pHが低すぎると膨潤抑制ができない。品種、精製度によりpHが高すぎると膨潤抑制を解除できない場合がある。膨潤抑制とは、コンニャクマンナンが本来持っている膨潤しようとする能力(スピードや粘度等)を抑えることである。たとえば品種がKONJACの日本産の特等コンニャクマンナンを用いて通常のコンニャクを製造する場合には、コンニャクマンナン重量の3~6%程度の水酸化カルシウムを使用するが、それと比較して、膨潤のスピードが遅く、または粘度が低くなるような量の水酸化カルシウムなどを用いることで、その膨潤が抑制される。
【0038】
アルカリ処理でコンニャクマンナンのアセチル基を遊離し、膨潤抑制した変性マンナンが混合された水とアルカリの混合液に食品を用いて膨潤抑制を解除することで、膨潤させてマンナンゾルを得る。用いる食品は膨潤抑制を解除させる物質であればよく、pHを低下させる食品が好ましい。添加後、撹拌すると数秒~60分で膨潤し、マンナンゾルを得る。
【0039】
マンナンゲルを製造する場合には、マンナンゾルを加熱すればよい。
【0040】
以上のように製造したマンナンゾルまたはマンナンゲルを紙に塗布して乾燥させる。この際には熱風乾燥させることが好ましいが、自然乾燥、真空乾燥などのほかの乾燥方法を用いてもよい。
【0041】
そして乾燥後の紙(変性マンナンを用いたマンナンゾルまたはマンナンゲルを塗布して乾燥した紙)を、所望の食品用容器の形状に成形する。これによって、皿、コップ、丼、箱などの任意の形状の、耐水性、耐油性のある食品用容器を得ることができる。また、立方体、直方体、略三角錐などの形状に形成することで、牛乳などの飲料を収納する飲料用パックを得ることができる。さらに、袋状に形成することで、レジ袋の代替としての紙袋とすることができる。加えて、乾燥後の紙をスプーン、フォーク、箸、ストロー、マドラーなどの任意の形状に成形することもできる。このように所望の形状に成形することで、食品に用いる各種の紙製品を得ることができる。さらに、ハンバーガーなどの食品の包装用紙としても用いることができる。なお、上記方法により製造されたマンナンゾルまたはマンナンゲルを塗布された紙は、耐水性、耐油性があるので、耐水性、耐油性が求められる目的であれば食品用容器以外の目的にも使用することができる。
【実施例0042】
つぎに、上述の変性マンナンを用いたマンナンゾルまたはマンナンゲルを、水に対して希釈率が100倍として紙に塗布し、耐水性、耐油性があるかを確認した。
【0043】
ここで用いた変性マンナンを用いたマンナンゾルは、品種がKONJACの日本産コンニャクマンナン0.91gと水酸化カルシウム0.09gとを、12℃の水100ccに加え、その混合液を10分撹拌させる。その後、中和剤のクエン酸0.15gを加え、膨潤したところで撹拌を止めてから60~120分放置してマンナンゾルを作成する。そして作成したマンナンゾルを紙に塗布して乾燥させる。なお、中性のマンナンゾルを作成する場合には中和剤としてクエン酸0.15gを加えるが、酸性のマンナンゾルを作成する場合には0.25gのクエン酸を加えることとなる。
【0044】
耐水性の確認にあたっては、吸水度試験器を用いた吸水度試験を行った。吸水度試験器には、熊谷理機工業株式会社製のガーレコブサイズテスター(標準型)を用いた。そして、テスト紙としては、原紙、原紙に中性(およそpH7.0前後)または酸性(およそpH4.5前後)に調整したマンナンゾルを塗布して乾燥させたものを用いた。また、マンナンゾルを原紙に塗布する場合、熊谷理機工業株式会社製のコーティングロッドの22番若しくは44番を用いて50.3μm(22番の場合)若しくは100.6μm(44番の場合)の厚さに塗布した。また、コーティングロッド44番で1回塗布して自然乾燥させ、再度、コーティングロッド44番で1回塗布して自然乾燥させた2回塗り(200.12μm=100.6μm×2回塗り)のテスト紙も用いた。
【0045】
吸水度試験器に上述の各テスト紙を載置し、試料となる各液体を24時間接触させ、24時間後にテスト紙の裏面への浸出があるかを確認することで耐水性、耐油性の確認をした。
【0046】
試料となる液体としては、ミネラルウォーター(pH7.0)、コーヒー飲料(pH3.70)、100%オレンジジュース(pH3.46)、家庭用油(pH6.5)、日本酒(pH3.71)、コーラ(pH2.20)を用いた。
【0047】
その結果、図1の表に示すような結果となった。図1の表によれば、原紙におよそ50μm以上の変性マンナンを用いたマンナンゾルを塗布して自然乾燥をすれば、耐水性を確保した被膜が形成され、それによって耐水性を得られることが分かる。また、原紙におよそ100μm以上の変性マンナンを用いたマンナンゾルを塗布して自然乾燥をすれば、多くの場合に耐水性を得ることができる。さらに、原紙におよそ200μm以上の変性マンナンを用いたマンナンゾルを塗布して自然乾燥をすれば、耐水性のほか、耐油性を確保することもできる。
【0048】
また、高温、冷温による影響の有無を確認するため、試料として98度の高温コーヒー飲料、98度の高温お茶、バニラアイス、常温のお茶を用いて、同様の耐水性、耐油性の確認をした。その結果、図2の表に示すような結果となった。
【0049】
図2の表によれば、この場合であっても、およそ50μm以上の変性マンナンを用いたマンナンゾルを塗布して自然乾燥をすれば、耐水性を得ることができ、100μm以上の変性マンナンを用いたマンナンゾルを塗布して自然乾燥をすれば、多くの場合に耐水性を得ることができる。
【0050】
さらに原紙に変性マンナンを用いたマンナンゾルを塗布したことによって、コンニャク臭、エグミ、渋みなどが食品に写るかなどを官能テストで確認をした。この官能テストでは、中性(pH7.0)に調整した変性マンナンを用いたマンナンゾルを塗布して3日間自然乾燥させた紙製の食品用容器、酸性(pH4.09)に調整した変性マンナンを用いたマンナンゾルを塗布して3日間自然乾燥させた紙製の食品用容器、何も塗布していない紙製の食品用容器の3種類の食品用容器に、ミネラルウォーターを入れ、渋み、苦み、臭気、味に変化があるかを官能テスト協力者が確認した。官能テスト協力者は女性12名(20代1名、30代6名、40代2名、50代3名)、男性3名(20代1名、30代2名)である。
【0051】
官能テストの結果を図3の表に示す。図3の表によれば、中性に調整した変性マンナンを用いたマンナンゾルを塗布して乾燥させた食品用容器では80%の官能テスト協力者がミネラルウォーターとの差がないことを回答しており、何も塗布していない紙製の食品用容器(約67%)よりも影響が少ないことがわかる。また酸性に調整した変性マンナンを用いたマンナンゾルを塗布して乾燥させた食品用容器でも約53%の官能テスト協力者がミネラルウウォーターとの差がないことを回答している。
【0052】
したがって、コンニャク臭、エグミ、渋みなどの発生が抑止されていることが明らかであって、とくに中性の変性マンナンを用いた場合には、何も塗布していない場合よりも高い効果を発揮している。
【0053】
さらに、変性マンナンを用いたマンナンゾルを塗布した紙(テスト紙)のリサイクルができるかを確認するためのテストを行った。このテストでは、テスト紙として、一般的なコピー用紙10枚および厚紙(280mg/m)3枚に、コーティングロッド22番により50.3μmの厚さで中性(pH7.0)に調整した変性マンナンを用いたマンナンゾルをそれぞれの片面に塗布した。
【0054】
そしてテスト紙を手でちぎり、それらを水が入った一つの容器に投入し、24時間経過させた。これを示すのが図4である。ここでテスト紙としてのコピー用紙および厚紙は一つの容器に混ぜて投入されているが、これは実際のリサイクルにおいて様々な種類の紙が水の入った一つの容器に混ぜて投入されることを再現したものである。
【0055】
24時間水に漬けられたテスト紙を容器から取り出し、軽く絞った後、50gのテスト紙(ちぎられた状態で水につけられたテスト紙)を2Lの水とともに、パルプ離解機に投入して3分間離解させた。パルプ離解機に投入された状態を示すのが図5である。パルプ離解機としては、熊谷理機工業株式会社製のパルプ離解機(無段変速機付き)を用いた。
【0056】
離解機にテスト紙が投入され、テスト紙が2Lの水に離解した。そしてテスト紙が水に離解した液体に、さらに3Lの水を投入した。この状態を示すのが図6である。このように、5Lの水に離解したテスト紙が混合した液体から1L分の液体を取り出し、シートマシーンに投入した。この状態を示すのが図7である。シートマシーンとしては、熊谷理機工業株式会社製のシートマシーンを用いた。また、シートマシーンで紙をすいた状態を示すのが図8である。
【0057】
そしてすいた紙をプレス機にかけ、乾燥機に投入した。すいた紙をプレス機に掛けた状態を図9に、プレス後に乾燥機に投入した状態を図10に示す。プレス機としては、熊谷理機工業株式会社製のプレス機を用いた。また、乾燥機としては、熊谷理機工業株式会社製の乾燥機を用いた。
【0058】
リサイクルされた紙(再生紙)が乾燥機から排出された状態を図11に示す。リサイクルした紙(再生紙)を計量したところ、1枚が3.9gの重量であった。
【0059】
以上のような結果から、変性マンナンを用いたマンナンゾルを紙に塗布した場合であってもそれをリサイクルすることは十分に可能であることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明によって、コンニャク臭、エグミ、渋みなどの発生を抑えながら、耐水性、耐油性がある食品用容器または紙製品とすることができる。また、本発明における食品用容器または紙製品は自然分解可能なので、従来よりも環境負荷が低く、かつ安価に製造できる。さらに本発明における食品用容器または紙製品は水に離解するので、リサイクル可能でもある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11