(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134526
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】張力ストランドを有するニット構成要素を組み込んだ履物製品
(51)【国際特許分類】
A43B 23/02 20060101AFI20230920BHJP
D04B 1/00 20060101ALI20230920BHJP
D04B 1/22 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
A43B23/02 101A
D04B1/00 B
D04B1/00 C
D04B1/22
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105647
(22)【出願日】2023-06-28
(62)【分割の表示】P 2021206837の分割
【原出願日】2014-02-28
(31)【優先権主張番号】13/783,782
(32)【優先日】2013-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514144250
【氏名又は名称】ナイキ イノベイト シーブイ
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ポッドハイニー,ダニエル,エイ.
(72)【発明者】
【氏名】チャン,チュン-ミン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ヤー-ファーン
(72)【発明者】
【氏名】スー,ペイ-ジュイ
(57)【要約】
【課題】張力ストランドを含む履物製品を提供する。
【解決手段】履物製品のアッパーは、ソールに接して配置されるベース部324を含むニット構成要素316を有する。ベース部324は、ニット構成要素316の内側面321および外側面323を規定し、前記内側面321と前記外側面323との間に、張力ストランド358通す前記ベース部経路362を確保している。張力ストランド358は、前記ベース部経路362の開口部397から部分的に露出している。
【選択図】
図24
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソール構造に接続されるように構成された履物製品のアッパーであって、
前記ソール構造に隣接して配設されるように構成されたベース部を有するニット構成要素であって、前記ベース部は、前記ベース部の内面を規定する前記ニット構成要素の第1の層と、前記ベース部の外面を規定する前記ニット構成要素の第2の層と、前記第1の層と前記第2の層との間に延びるとともに前記第1の層と前記第2の層との間に間隔を提供する複数のスペーサストランドとを有する、ニット構成要素と;
前記ベース部から延び、また前記ニット構成要素の前記内面及び前記外面を規定する外側部と;
前記ベース部から延び、また前記ニット構成要素の前記内面及び前記外面を規定する内側部と;を有し、
前記アッパーはさらに、経路であって、前記経路が、前記外側部、前記ベース部、及び前記複数のスペーサストランドの間に規定される前記内側部との間で途切れないように、前記外側部を部分的に横切って、前記ベース部を部分的に横切って、及び前記内側部を部分的に横切って延びる経路をさらに有し、
張力ストランドが、前記経路を通って連続的に延びる、
アッパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、履物製品に関し、より詳細には、張力ストランドを有するニット構成要素を組み込んだ履物製品に関する。
【背景技術】
【0002】
本項では、必ずしも先行技術ではない本開示に関連の背景情報を提供する。
【0003】
従来の履物製品は一般的に、アッパーおよびソール構造という2つの主要な要素を具備している。アッパーは、ソール構造に固定され、足を快適かつ確実に収容するための空洞を履物の内部に形成している。ソール構造は、アッパーの下側区域に固定されており、アッパーと地面との間に位置決めされている。たとえば、運動用履物において、ソール構造は、ミッドソールおよびアウトソールを具備していてもよい。ミッドソールは、地面反力を減衰して歩行、走行、および他の歩行活動中の足および脚へのストレスを軽減するポリマー発泡材料を含んでいる場合が多い。また、ミッドソールは、力をさらに減衰するか、安定性を向上させるか、または足の運動に影響を及ぼす液体充填チャンバ、プレート、モデレータ等の要素を具備していてもよい。アウトソールは、ミッドソールの下面に固定され、ゴム等の耐久性のある耐摩耗性の材料で構成されたソール構造の地面係合部を提供している。また、ソール構造は、空洞内で足の下面に近接して位置決めされ、履物の履き心地を向上させる中敷きを具備していてもよい。
【0004】
アッパーは一般的に、足の甲およびつま先区域から、足の内側側部および外側側部に沿って、足のかかと区域の周りに延びている。バスケットボール用シューズおよびブーツ等の一部の履物製品において、アッパーは、上方に足首の周りまで延びて、足首を支持または保護している場合がある。アッパーの内部の空洞へのアクセスは一般的に、履物のかかと領域の足首開口部によって可能となる。アッパーには、締めひもシステムが組み込まれ、アッパーのフィッティングを調整することにより、アッパーの空洞に対する足の出し入れを可能としている場合が多い。また、締めひもシステムによれば、着用者は、アッパーの特定の寸法、特に周長を変更することによって、様々な寸法の足に対応可能である。また、アッパーは、締めひもシステムの下側で延びた舌革を具備することによって、履物の調整機能を強化するようにしてもよく、ヒールカウンタを組み込むことによって、かかとの動きを制限するようにしてもよい。
【0005】
従来、アッパーの製造には、多様な材料要素(たとえば、織物、ポリマー発泡体、ポリマーシート、皮革、合成皮革)が利用されている。たとえば、運動用履物において、アッパーは、結合された多様な材料要素を含む複数の層を有していてもよい。例として、材料要素は、耐伸縮性、耐摩耗性、柔軟性、空気透過性、圧縮性、快適性、水分除去性をアッパーの異なる区域に与えるように選択されてもよい。これらの異なる特性をアッパーの異なる区域に与えるため、材料要素は、所望の形状に切断された後、通常は縫製または接着接合によって結合されている場合が多い。さらに、材料要素は、層状構成に結合されて、複数の特性を同じ区域に与えている場合が多い。アッパーに組み込まれる材料要素の数および種類が増えると、材料要素の輸送、仕入れ、切断、および結合に伴う時間および費用も増加する。また、アッパーに組み込まれる材料要素の数および種類が増えると、切断および縫製プロセスによる廃材も著しく堆積する。さらに、材料要素の数が多いアッパーは、より少ない種類および数の材料要素で構成されたアッパーよりもリサイクルが困難となる場合がある。したがって、アッパーに用いられる材料要素の数を減らすことにより、アッパーの製造効率およびリサイクル性を高めつつ、廃棄物を減らせる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0154256号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2012/0233882号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本項は、本開示の全般的な概要を提供しており、その全範囲またはその特徴のすべてを包括的に開示するものではない。
【0008】
ソール構造に接続されるように構成された履物製品のアッパーを開示する。このアッパーは、ソール構造に隣接して配設されるように構成されたベース部を有するニット構成要素を備えている。ベース部は、ニット構成要素の内側面および外側面を規定している。また、ベース部は、内側面と外側面との間にベース部経路を規定している。また、このアッパーは、ベース部経路を通って延びた張力ストランドを備えている。
【0009】
また、ソール構造に接続されるように構成された履物製品のアッパーを開示する。このアッパーは、ソール構造に隣接して配設されるように構成されたベース部を有するニット構成要素を備えている。ベース部は、当該ベース部の内側面を規定したニット材料の第1の層と、当該ベース部の外側面を規定したニット材料の第2の層と、第1の層と第2の層との間に延び、両者間に間隔を設ける複数のスペーサストランドとを有している。複数のスペーサストランド間には、ベース部経路が規定されている。さらに、ベース部経路を通って張力ストランドが延びている。
【0010】
その他の適用可能な分野については、本明細書で提供する説明から明らかとなるであろう。本概要の記述および具体例は、説明を目的としているに過ぎず、本開示の範囲を制限することを意図したものではない。
【0011】
本明細書に記載の図面は、すべての考え得る実施態様ではなく、選択された実施形態の説明を目的としているに過ぎず、本開示の範囲を制限することを意図したものではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の例示的な実施形態に係る、履物製品の斜視図である。
【
図2】クロージャー部材を除去した
図1の履物製品の斜視図である。
【
図4】
図1の履物製品のインレイストランドを備えたニット構成要素の斜視図である。
【
図6】足跡を疑似的に示した
図4のニット構成要素の底面図である。
【
図7】
図6の線7-7に沿うニット構成要素の断面図である。
【
図8】
図5の線8-8から見たニット構成要素のかかと部分の模式図である。
【
図9】
図6のニット構成要素の一部の詳細図である。
【
図10】ニット構成要素の底面図であり、非固定位置のクロージャー部材を示している。
【
図11】ニット構成要素の底面図であり、固定位置のクロージャー部材を示している。
【
図12】本開示の別の実施形態に係る、インレイストランドを備えたニット構成要素の底面図である。
【
図13】インレイストランドを備えた一体ニット構造の模式図である。
【
図14】インレイストランドを備えた一体ニット構造の模式図である。
【
図15】インレイストランドを備えた一体ニット構造の形成時を示した横編み機の部品の模式斜視図である。
【
図16】インレイストランドを備えた一体ニット構造の形成時を示した横編み機の部品の模式斜視図である。
【
図17】インレイストランドを備えた一体ニット構造の形成時を示した横編み機の部品の模式斜視図である。
【
図18】インレイストランドを備えた一体ニット構造の形成時を示した横編み機の部品の模式斜視図である。
【
図19】インレイストランドを備えた一体ニット構造の形成時を示した横編み機の部品の模式斜視図である。
【
図20】インレイストランドを備えた一体ニット構造の形成時を示した横編み機の部品の模式斜視図である。
【
図21】インレイストランドを備えた一体ニット構造の形成時を示した横編み機の部品の模式斜視図である。
【
図22】インレイストランドを備えた一体ニット構造の形成時を示した横編み機の部品の模式斜視図である。
【
図23】インレイストランドを備えた一体ニット構造の形成時を示した横編み機の部品の模式斜視図である。
【
図24】本開示の別の実施形態に係る、張力ストランドを備えたニット構成要素の底面図である。
【
図25】
図24の線25-25に沿うニット構成要素の断面図である。
【0013】
図面の一部にわたって、対応する参照番号は、対応する部品を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付の図面を参照して、例示的な実施形態をより詳しく説明する。
【0015】
履物製品の全体説明
まず、
図1~
図3には、例示的な実施形態に係る、履物製品100を示している。履物100は一般的に、ソール構造110およびアッパー120を具備可能である。
【0016】
ソール構造110は、アッパー120に固定され、履物100を着用した場合には、足と地面との間に延びている。ソール構造110は、互いに重ね合わされたミッドソール112およびアウトソール114を具備可能である。ミッドソール112は、弾性的に圧縮可能な材料、液体充填ブラダー等を具備可能である。このため、ミッドソール112は、着用者の足への衝撃を和らげるとともに、走行、ジャンプ等を行っている際の衝撃等の力を減衰することができる。アウトソール114は、ミッドソール112に固定可能であり、ゴム等の耐摩耗性材料を含むことができる。また、アウトソール114は、トレッド等の摩擦増強機構を具備可能である。
【0017】
さらに、アッパー120は、着用者の足を収容する空洞122を規定可能である。言い換えると、アッパー120は、空洞122を規定する内側面121を規定可能である。また、アッパー120は、内側面121と反対の方向を向いた外側面123を規定可能である。着用者の足が空洞122に収容されると、アッパー120は、着用者の足を少なくとも部分的に包み込んで覆うことができる。
【0018】
従来の多くの履物のアッパーは、たとえば縫製または接合により結合された複数の材料要素(たとえば、織物、ポリマー発泡体、ポリマーシート、皮革、合成皮革)で構成されている。これに対して、アッパー120の少なくとも一部は、一体ニット構造を有するニット構成要素116で構成されている。ニット構成要素116の外側境界は、
図5および
図6に示す周辺縁部199により規定可能である。後述の通り、ニット構成要素116は、アッパー120の空洞の少なくとも一部を規定可能である。また、ニット構成要素116は、アッパー120の外側面123および/または内側面121の少なくとも一部を規定可能である。
【0019】
一部の実施形態において、ニット構成要素116は、アッパー120の大部分を規定可能である。アッパー120の形成に用いられる材料要素の数を減らすことによって、アッパー120の製造効率およびリサイクル性を高めつつ、廃棄物を減らせる可能性がある。以下により詳しく論じるように、本開示のアッパー120のニット構成要素116は、廃棄物を減らすとともに、製造効率およびリサイクル性を高めることができる。また、アッパー120のニット構成要素116は、組み込む縫い目等の不連続部の数を減らすことによって、履物100の全体的な履き心地を向上させることができる。
【0020】
また、ニット構成要素116は、同じストランド、ヤーン(もしくは、同じ種類のヤーン)、または類似のニット構造で構成した場合に、共通の特性を有していてもよい。たとえば、ニット構成要素116の様々な部分に同じストランドを使用することによって、同様の耐久性、強度、伸縮性、耐摩耗性、生物分解性、熱特性、および疎水性を与えることができる。物理的特性のほか、ニット構成要素116の複数の部分に同じストランドを使用することによって、色、光沢、および質感等の共通の美的特性または触覚特性を与えることができる。また、ニット構成要素116の異なる部分全体で同じニット構造を使用することにより、共通の物理的特性および美的特性が与えられる可能性がある。
【0021】
ニット構成要素の構成
図4~
図6は、
図1~
図3の例示的な実施形態と同様に履物製品に組み込み可能なニット構成要素116の種々実施形態を示している。
図4~
図6に示すニット構成要素116は、履物100の残りの部分から分離した状態で示している。ただし、本明細書に記載のニット構成要素116の実施形態はそれぞれ、上述の履物100の要素と組み合わせることによって、ニット構成要素116を組み込んだ履物製品100を構成可能であることが了解される。
【0022】
ニット構成要素116は、「一体ニット構造」とすることができる。本明細書に規定するとともに特許請求の範囲で使用する用語「一体ニット構造」は、ニット構成要素116が編みプロセスにより1つの要素として形成されたことを意味する。すなわち、編みプロセスでは実質的に、大掛かりな追加製造工程またはプロセスなしに、ニット構成要素116の様々な特徴および構造を構成する。一体ニット構造を用いることによって、少なくとも1つのコースを共通に含む(すなわち、共通のストランドまたは共通のヤーンを共有する)ことおよび/またはニット構成要素116の各部間で実質的に連続する複数のコースを含むことを実現するように結合されたヤーン等のニット材料の1つまたは複数のコースを含む構造または要素を有するニット構成要素を形成するようにしてもよい。この構成により、一体ニット構造の1つの要素が提供される。
【0023】
編みプロセスの後にニット構成要素116の複数部分を互いに結合させてもよいが、ニット構成要素116は、1つのニット要素として構成されていることから、一体ニット構造で構成されたままとなる。さらに、ニット構成要素116は、編みプロセスの後に他の要素(たとえば、インレイストランド、クロージャー要素、ロゴ、商標、注意書きおよび材料情報を記載した札、ならびに他の構造的要素)が追加された場合にも、一体ニット構造で構成されたままとなる。
【0024】
図4~
図6は、履物製品100のアッパー120の大部分を規定するものとして、ニット構成要素116の例示的な実施形態を示している。図示のように、アッパー120のニット構成要素116は、ベース部124すなわちストローベル部または足下部を具備可能である。また、ニット構成要素116は、ベース部124から延びた1つまたは複数の側部126を具備可能である。ベース部124は、ソール構造110に隣接するように構成可能である。たとえば、ベース部124は、ソール構造110の上に位置するように、ソール構造110に直接的または間接的に取り付け可能である。別の実施形態においては、ベース部124の1つまたは複数の部品(たとえば、ベース部124の周辺)がソール構造110に取り付け可能である一方、他の部品は剥離または分離されたままである。また、ベース部124は、着用者の足の直下に延びるように構成可能である。側部126は、ベース部1242から延び、着用者の足を少なくとも部分的に覆うように構成可能である。また、ベース部124および側部126は、協働して、着用者の足を収容する空洞122を規定可能である。ここで再び、ベース部124および側部126は、上述の通り、一体ニット構造で構成可能である。
【0025】
図示の実施形態に示すように、ニット構成要素116の側部126は、かかと部128、外側部130、内側部132、足先部134、および舌革部136を具備可能であり、それぞれがベース部124と同じ一体ニット構造で構成されている。したがって、ニット構成要素116は、着用者の足に密接にフィットおよび一致可能である。また、この構造により、ニット構成要素116は、比較的迅速に形成可能であり、製造効率が高くなる。
【0026】
また、
図6に示すとともに以下に詳述する通り、ニット構成要素116は、当該ニット構成要素116の一体ニット構造と組み合わされた1つまたは複数の張力ストランド158を具備可能である。たとえば、張力ストランド158は、以下に論じる通り、ニット構成要素116のコースおよび/またはウェールに挿入することができる。また、ストランド158は、ニット構成要素116の内側面および/または外側面に取り付け可能である。
【0027】
ストランド158は、側部全体および/または着用者の足の下側に延びるようにアッパーに配設可能である。また、ストランド158は、靴ひも155等のクロージャー部材154に対して、動作可能に結合可能である。したがって、靴ひも155を引っ張ることにより、ストランド158を引っ張ることができる。その結果、ストランド158は、着用者の足を支持して、履き心地およびフィッティングを向上させることができる。
【0028】
アッパー120および履物100の図示の実施形態は、着用者の左足に着用するように構成されている。ただし、当然のことながら、履物100は、右足に着用するようにも構成可能であり、図示の実施形態と同様の特徴を含むことができる。
【0029】
また、履物100は、ランニングシューズとしても構成可能である。ただし、履物100は、たとえばベースボールシューズ、バスケットボールシューズ、サイクリングシューズ、フットボールシューズ、テニスシューズ、サッカーシューズ、トレーニングシューズ、ウォーキングシューズ、およびハイキングブーツ等、その他多様な種類の運動用履物にも適用可能である。また、これらの考え方は、ドレスシューズ、ローファ、サンダル、およびワークブーツ等、一般的に非運動用と考えられる種類の履物にも適用可能である。したがって、履物100に関して開示した考え方は、多種多様な種類の履物に当てはまる。
【0030】
ニット構成要素の例示的な特徴
図13に模式的に示す例示的な実施形態において、ニット構成要素116の主要な要素は、(たとえば、編み機による)操作によって、多様なコースおよびウェールを規定する複数の噛み合いループを構成する少なくとも1つのヤーン1138等のストランドで構成されていてもよい。ヤーン1138は、この構成のコースおよびウェールそれぞれを構成するが、別のヤーンによって、コースおよび/またはウェールのうちの1つまたは複数を構成するようにしてもよい。
【0031】
特定の種類のヤーンがニット構成要素の区域に与える特性は、ヤーンの様々なフィラメントおよび繊維を構成する材料によって一部が決まる。たとえば、綿は、ソフトな手触り、自然な美しさ、および生物分解性を提供する。エラステインおよび伸縮性ポリエステルはそれぞれ、相当な伸縮性および復元性を提供し、伸縮性ポリエステルはリサイクル性も提供する。レーヨンは、高い光沢および吸湿性を提供する。ウールも高い吸湿性を提供するほか、断熱性および生物分解性を提供する。ナイロンは、強度が比較的高く、耐久性のある耐摩耗性の材料である。ポリエステルは、同じく比較的高い耐久性を提供する疎水性の材料である。
【0032】
ニット構成要素116の一部の適当な構成の別の例を
図14に示す。この構成において、ニット構成要素116は、ヤーン1138および別のヤーン1139(すなわち、複数のストランド)を具備している。ヤーン1138および1139は、添え糸編みされており、協働して、複数の水平コースおよび垂直ウェールを規定する複数の噛み合いループを構成している。すなわち、ヤーン1138および1139は、互いに平行となっている。この構成の利点として、ヤーン1138および1139それぞれの特性は、ニット構成要素1130のこの区域に存在可能である。たとえば、ヤーン1138および1139は、異なる色を有し、ヤーン1138の色が主にニット要素1131の様々なステッチのある面上に存在し、ヤーン1139の色が主にニット要素1131の様々なステッチの反対側に存在していてもよい。別の例として、ヤーン1139は、ヤーン1138よりも柔らかくて足に心地良いヤーンで構成され、ヤーン1138が主に第1の面1136上に存在し、ヤーン1139が主に第2の面1137上に存在していてもよい。
【0033】
さらに、
図13および
図14に示すように、ニット構成要素116の一体ニット構造には、ストランド1132を組み込み可能である。ストランド1132は、ニット構成要素116を支持する張力ストランド要素とすることができる。言い換えると、ストランド1132内の張力によって、ニット構成要素116は、走行、ジャンプ、または着用者の足の他の動きに際して、変形、伸縮に耐えることができ、または他の形で着用者の足を支持することができる。また、当然のことながら、
図6のストランド158(上述するとともに以下に詳述する)は、
図13および
図14のストランド1132と同様に、ニット構成要素116に組み込み可能である。
【0034】
以下に論じる通り、ストランド1132は、編み機での編みプロセス中に組み込めるように、ニット構成要素116の一体ニット構造に組み込みまたは挿入可能である。たとえば、ストランド1132は、ニット構成要素116の
図13および
図14に示すコースおよび/またはウェールのうちの1つに沿って延びるように、一体ニット構造に挿入可能である。
図13および
図14に示すように、ストランド1132は、(a)ヤーン1138で構成されたループの後側と(b)ヤーン1138で構成されたループの前側とで交互に配置可能である。実際、挿入されたストランド1132は、ニット要素1131の一体ニット構造を縫うように進む。
【0035】
また、ニット構成要素は、熱硬化性ポリマー材料および天然繊維(たとえば、綿、ウール、絹)のうちの少なくとも一方で構成された1つまたは複数のストランドまたはヤーンを具備していてもよい。他のヤーンまたはストランドは、熱可塑性ポリマー材料で構成されていてもよい。一般的に、熱可塑性ポリマー材料は、加熱により溶融し、冷却により固体状態に戻る。より詳細に、熱可塑性ポリマー材料は、十分な熱に曝された場合に固体状態から軟化または液体状態に遷移し、十分に冷却された場合に軟化または液体状態から固体状態に遷移する。このため、熱可塑性ポリマー材料は、2つの物体または要素を結合するのに用いられる場合が多い。この場合は、ヤーンを利用して、たとえば(a)ヤーンの一部の、ヤーンの別の部分への結合、(b)ヤーンおよびインレイストランドの相互結合、または(c)別の要素(たとえば、ロゴ、商標、ならびに注意書きおよび材料情報を記載した札)のニット構成要素への結合を行うようにしてもよい。このため、ヤーンは、ニット構成要素の複数部分を互いに融着または他の形で結合することに使用可能であることを前提として、融着性のヤーンと考えてもよい。さらに、ヤーンは、一般的にニット構成要素の複数部分を互いに融着または他の形で結合可能である材料で構成されていないことを前提として、非融着性のヤーンと考えてもよい。すなわち、ヤーンが非融着性のヤーンである一方、他のヤーンは融着性のヤーンであってもよい。ニット構成要素の一部の構成において、ヤーン(すなわち、非融着性のヤーン)は実質的に、熱硬化性ポリエステル材料で構成されていてもよく、ヤーン(すなわち、融着性のヤーン)は、少なくとも一部が熱可塑性ポリエステル材料で構成されていてもよい。
【0036】
添え糸編みしたヤーンの使用は、ニット構成要素の利点となる場合がある。ヤーンが加熱されてヤーンおよびインレイストランドに融着される場合、このプロセスは、ニット構成要素の構造を強固または堅固にする効果を有していてもよい。さらに、(a)ヤーンの一部の、ヤーンの別の部分への結合または(b)ヤーンおよびインレイストランドの相互結合は、ヤーンおよびインレイストランドの相対位置を固定または係止する効果を有することによって、耐伸縮性および剛性を与える。すなわち、ヤーンの複数部分は、ヤーンと融着された場合に互いに摺動しないことで、ニット構造の相対移動に起因するニット要素のねじれまたは恒久的な伸張を防止するようになっていてもよい。別の利益として、ニット構成要素の一部が損傷した場合またはヤーンの1本が切れた場合にほどけることが抑えられる。したがって、ニット構成要素の区域は、ニット要素における融着性および非融着性の両者のヤーンの使用の利益を享受する場合がある。
【0037】
また、当然のことながら、ニット構成要素は、全体として一体ニット構造を構成する様々な領域を有することができる。たとえば、ニット構成要素は、平坦なニットゾーン、筒状のニットゾーン、1×1メッシュのニットゾーン、2×2メッシュのニットゾーン、3×2メッシュのニットゾーン、1×1モックメッシュのニットゾーン、2×2モックメッシュのニットゾーン、2×2ハイブリッドのニットゾーン、フルゲージのニットゾーン、1/2ゲージのニットゾーン等のうちの少なくとも2つの組み合わせを具備可能である。したがって、ニット構成要素116およびアッパー120は、2012年9月20日に公開された米国特許公開第2012/0233882号の教示に従って構成可能であり、そのすべての内容を本明細書中に参考として援用する。
【0038】
アッパーおよびニット構成要素の実施形態
以下、アッパー120およびニット構成要素116の種々実施形態について、より詳しく論じる。図示のように、アッパー120は、長手方向125、横方向127、および垂直方向129を規定可能であり、これらは、以下の説明でアッパー120の様々な特徴に言及する際に使用する。
【0039】
上述の通り、アッパー120のニット構成要素116は、着用者の足の直下に配設されるように構成されたベース部124を具備可能である。
図6には、ベース部124が着用者の足に対して少なくとも大略的に規定されるように、着用者の足の輪郭を示している。このように、ベース部124は、着用者の足のかかと、足底、つま先、アーチ、および/または他の下面のうちの1つまたは複数の部分の直下で連続的に延びることができる。別の実施形態において、ベース部124は、着用者の足の下側で部分的または不連続に延びるように、開口部を具備可能である。
【0040】
また、ニット構成要素116は、ベース部124から周辺に延びた様々な側部126を具備可能である。側部126は、着用者の足の少なくとも一部を覆い、対向して位置するように構成可能である。図示の実施形態において、ニット構成要素116の側部126は、ベース部124を実質的に囲むことができる。また、当然のことながら、ベース部124および側部126は全体として、ニット構成要素116の内側面121のほか、ニット構成要素116の外側面123を規定可能である。
【0041】
たとえば、側部126は、ベース部124の一端に配設されたかかと部128を具備可能である。また、かかと部128は、
図4に示すように、ベース部124から垂直方向129に上方へ延びることができる。かかと部128は、着用者の足のかかとおよび/または足首区域を覆うように構成可能である。
【0042】
また、ニット構成要素116の側部126は、
図4に示すように、かかと部128の前方に配設され、ベース部124の外側側部から上方に延びることができる外側部130を具備可能である。外側部130は、着用者の足の外側区域を覆い、対向して位置するように構成可能である。
【0043】
さらに、ニット構成要素116の側部126は、外側部130に対してベース部124の反対側で、かかと部128の前方に配設された内側部132を具備可能である。内側部132は、
図4に示すように、ベース部124から垂直方向129に上方へさらに延びることができる。内側部132は、横方向127において、ベース部124の反対側に配設可能である。内側部132は、着用者の足の内側区域または甲を覆い、対向して位置するように構成可能である。
【0044】
かかと部128、外側部130、および内側部132は全体として、アッパー120の蹄鉄状カラー133を規定可能である。カラー133は、アッパー120の空洞122の内外へのアクセスを可能とする。さらに、外側部130の外側縁部135および内側部132の内側縁部137は全体として、アッパー120のスロート131を規定可能である。スロート131は、長手方向125と実質的に平行に延びることができるか、または長手方向125に対してある角度で配設可能である。また、
図4の実施形態において、スロート131は、ベース部124の上で実質的に中心となっているが、横方向127においてベース部124の一方側に配設可能である。以下に論じる通り、スロート131の幅は、クロージャー部材154により選択的に変更することによって、外側縁部135および内側縁部137を互いに近づけたり遠ざけたりすることができる。その結果、履物100は、着用者の足に対して選択的に締め付けたり緩めたりすることができる。
【0045】
また、ニット構成要素116の側部126は、足先部134を具備可能である。足先部134は、
図1に示すように、長手方向125において、かかと部128に対してベース部124の反対端で、外側および内側部130,132の前方に配設可能である。また、足先部134は、外側部130または内側部132に対して一体的に接続可能であり、他方から間隔を空けることができる。たとえば、図示の実施形態において、足先部134は、外側部130に対して一体的に接続されるとともに、内側部132から間隔を空けている。したがって、
図4に示すように、アッパー120が分解された状態の場合には、足先部134と内側部132との間にギャップ139を規定可能である。
【0046】
さらに、ニット構成要素116の側部126は、舌革部136を具備可能である。
図4に示すように、舌革部136は、湾曲領域143および長手方向領域145を具備可能である。
図4に示すように、アッパー120が分解されている場合、舌革部136は、ベース部124から大略前方に延びることができ、湾曲領域143は、内側部と足先部との間でギャップ139内に配設可能である。また、湾曲領域143は、
図4に示すように、長手方向領域145が大略後方に、内側部132に対してある角度143で延びるように湾曲可能である。湾曲領域143の曲率は、
図5に示すように、共通区域151から実質的に放射状に延びたニットコースを有することによって実現可能である。共通区域151は、図示のように、舌革部136と内側部132との間で湾曲領域143の周辺から間隔を空けた仮想点とすることができる。または、共通区域151は、他の場所に配設可能である。また、アッパー120が組み立てられている場合、湾曲領域143は、上方に巻き上がって、ギャップ139の少なくとも一部を塞ぐことができ、また、舌革部136の長手方向領域145は、アッパーのスロート131内に配設され、外側部130と内側部132との間で着用者の足を覆うことができる。さらに、アッパー120が組み立てられている場合、舌革部136の長手方向領域145は、
図3に示すように、外側および/または内側部130,132から剥離および分離可能である。
【0047】
図4、
図5、および
図6に示すように、ベース部124およびかかと部128は、着用者の足のかかとを収容するように構成されたかかとキャビティ148を規定可能である(
図6参照)。かかとキャビティ148は、3次元曲率の内側面および/または外側面を有することができる。また、かかとキャビティ148は、凸状外面を有することができる。したがって、かかと部128は、ベース部124から垂直方向129に延びていることから、長手方向125において、前方にわずかに湾曲可能である。また、かかと部128は、横方向127に延びていることから、長手方向125において、その両側が前方に湾曲して外側および内側部130,132に結合可能である。このため、かかとキャビティ148は、着用者のかかとおよび足首の形状に一致するとともに略対応可能である。
【0048】
さらに、
図4、
図5、および
図6に示すように、ベース部124および足先部134は、着用者の足のつま先等の足先領域を収容するように構成された足先キャビティ150を規定可能である(
図6参照)。足先キャビティ150は、3次元曲率の内側面および/または外側面を有することができる。また、足先キャビティ150は、凸状外面を有することができる。したがって、足先部134は、ベース部124から垂直方向129に延びていることから、長手方向125において、後方に湾曲可能である。また、足先部134は、横方向127に延びていることから、長手方向125において、後方に湾曲して外側部130に結合可能である。
【0049】
かかとキャビティ148および/または足先キャビティ150の3次元曲率は、ニット構成要素116の一体ニット構造により構成可能である。たとえば、
図8に示すように、かかと部128は、少なくとも2つのテーパー状区域170,171を具備可能である。テーパー状区域170,171は、破線で示すように、大略横方向127に先細りする境界173を有することができる。テーパー状区域170,171はそれぞれ、複数のコースまたはステッチの列を有するが、連続するコースは異なる長さを有することによって、境界173のテーパー形状を提供可能である。このように、テーパー状区域170,171は、目の形状、2点を摘んだ卵型の形状、両凸の形状、または三日月の形状を有することができる。
【0050】
また、一体ニット構造において、テーパー状区域170の境界173は、テーパー状区域171の境界173に結合されることによって、ニット構成要素116に3次元曲率を与えている。これにより、結合された境界173に沿って、視覚的に明らかな歪みがもたらされる。この歪みは、ニット構成要素116の結合された境界173に沿って延びた、いわゆるフルファッションマークとすることができる。
【0051】
図8の実施形態においては、テーパー状区域がカラー133からベース部124に延びるとともにかかと部128の大部分がこれらのテーパー状区域を含むように各境界に沿って結合された複数のテーパー状区域が存在する。したがって、かかと部128の大部分は、3次元曲率を有することができる。ただし、当然のことながら、ニット構成要素116は、その任意の部分に任意数のテーパー状区域170,171を具備することによって、3次元曲率を有することができる。また、テーパー状区域170,171は、ニット構成要素116上で任意適当な方向に配向可能である。たとえば、足先部134も同様に、テーパー状区域を具備可能である。ただし、例示的な実施形態において、このようなテーパー状区域は、垂直方向129に先細ることができる。
【0052】
また、舌革部136の湾曲領域143は、当該湾曲領域143に曲率を与える複数のテーパー状区域を具備可能である。たとえば、湾曲領域143は、一体的に編まれ、境界197に沿って結合されたテーパー状区域193,195を具備可能である。これにより、結合された境界197に沿って、視覚的に明らかな歪みがもたらされる。この歪みは、ニット構成要素116の結合された境界197に沿って延びた、いわゆるフルファッションマークとすることができる。また、上述の通り、湾曲領域143内のコースは、共通区域151から放射状に延びて、2次元曲率を与えることができる。
【0053】
また、一部の実施形態において、足先部134は、足先部134の曲率の増大に役立つように配置された複数の開口部152を具備可能である。図示の実施形態において、複数の開口部152は、1列または複数列のスルーホールを具備可能である。開口部152によって、足先部134の当該区域におけるニット材料の量が抑えられるため、足先部134は、かかと部128に向かって後方に、容易に湾曲可能となる。
【0054】
また、ニット構成要素116は、アッパー120の組み立て時に結合されるように構成された少なくとも2つの縁部140,142を具備可能である。当然のことながら、第1の縁部140は、
図5および
図6に示すニット構成要素116のより大きな周辺縁部199の第1の縦断面とすることができる。また、当然のことながら、第2の縁部142は、周辺縁部199の第2の縦断面とすることができる。縁部140,142は、周辺縁部199に沿った任意適当な位置および/またはニット構成要素116上の任意の位置に規定可能である。
図5および
図6に示すように、第1の縁部140は、舌革部136の湾曲領域143に沿って延びることができるとともに、足先部134に隣接し、横方向127にベース部124を部分的に貫通するように延びることができる。第2の縁部142は、大略横方向127において、足先部134に沿って湾曲可能であるとともに、足先部134に沿って垂直方向129の下方に延びることによって、ギャップ139の一部を規定可能である。また、第1の縁部140および第2の縁部142は、
図4に示すように、ベース部124内に規定された切り欠き部141で合流可能である。
【0055】
上述の通り、履物100は、
図1に示すクロージャー部材154をさらに具備可能である。クロージャー部材154は、着用者の足にアッパー120を選択的に固定するとともに、着用者の足からアッパー120を選択的に解放することができる。
【0056】
図1に示すように、クロージャー部材154は、靴ひも155とすることができる。このため、外側部130は、外側縁部135に沿って延びた列に配設されたスルーホール等の1つまたは複数の外側クロージャー開口部156を具備可能である。内側部132は、内側縁部137に沿って延びた列に配設された同様の内側クロージャー開口部157を具備可能である。開口部156,157は、外側および内側部130,132間で十字形、ジグザグ、および交互となるように靴ひも155を収容可能である。
【0057】
当然のことながら、開口部156,157は、
図1に示すスルーホールとは異なる構成とすることも可能である。たとえば、開口部156,157は、クロージャー部材を収容するように構成されるとともに、ニット構成要素116に組み込まれるか、またはニット構成要素116に対して着脱可能に取り付けられたフープ、ハトメ、フック等の適当な機構により規定することも可能である。
【0058】
また、当然のことながら、クロージャー部材154は、本開示の範囲から逸脱することなく、靴ひも155以外の構造を含むことも可能である。たとえば、クロージャー部材154は、ストラップ、バックル、パイルテープ等の適当なクロージャー部材とすることも可能である。
【0059】
さらに、
図6に示すように、アッパー120は、ベース部124および/または側部126に結合された少なくとも1つの張力ストランド158を具備可能である。ストランド158は、ベース部124および/または側部126の任意の部分に結合可能である。また、ストランド158は、任意適当な方法でベース部124および/または側部126に結合可能である。たとえば、ストランド158は、以下に論じる通り、ベース部124および側部126の一体ニット構造のコースおよび/またはウェールに挿入することができる。したがって、ストランド153は、上述するとともに
図13および
図14に示すストランド1132に対応可能である。また、ストランド158は、ベース部124および/または側部126の内側面121または外側面123に接着、締結、貫通、または他の形で結合可能である。
【0060】
ストランド158、ニット構成要素116、およびアッパー120は、2008年12月18日に出願され、2010年6月24日に特許文献1として公開されたDuaらの共同所有米国特許出願第12/338,726号「Article of Footwear Having An Upper Incorporating A Knitted Component」および2011年3月15日に出願され、2012年9月20日に特許文献2として公開されたHuffaらの米国特許出願第13/048,514号「Article Of Footwear Incorporating A Knitted Component」のうちの1つまたは複数の教示を援用可能であり、これら両出願のすべての内容を本明細書中に参考として援用する(本明細書においては、「インレイストランド案件」と総称する)。
【0061】
ストランド158は、細長かつ柔軟とすることができる。また、ストランド158は、少なくとも1つのヤーン、ケーブル、ワイヤ、糸、より糸、フィラメント、繊維、スレッド、ロープ等を具備可能である。また、ストランド158は、レーヨン、ナイロン、ポリエステル、ポリアクリル、絹、綿、カーボン、ガラス、アラミド(たとえば、パラアラミド繊維およびメタアラミド繊維)、超高分子量ポリエチレン、液晶ポリマー、銅、アルミニウム、鋼等の適当な材料で構成可能である。ストランド158に用いられる個別のフィラメントは、単一の材料(すなわち、単一成分フィラメント)または複数の材料(すなわち、複合フィラメント)で構成されていてもよい。同様に、異なるフィラメントが異なる材料で構成されていてもよい。一例として、ストランド158として用いられるヤーンは、共通の材料で構成されたフィラメントを含んでいてもよいし、2つ以上の異なる材料で構成されたフィラメントを含んでいてもよいし、2つ以上の異なる材料で構成されたフィラメントを含んでいてもよい。同様の考え方は、スレッド、ケーブル、ロープ等にも当てはまる。ストランド158の厚さ(直径)は、たとえば、およそ0.03mm~5mmの範囲内とすることができる。また、ストランド158は、実質的に円形の断面、卵形の断面、または他の任意適当な形状の断面を有することができる。
【0062】
一例として、ストランド158は、破壊強度または引張強度が3.1kgで重量が45texのボンデッドナイロン6.6で構成されていてもよい。また、ストランド158は、破壊強度または引張強度が6.2kgで45texのボンデッドナイロン6.6で構成可能である。別の例として、ストランド158は、内側コアを覆って保護する外側シースを有していてもよい。
【0063】
一部の実施形態において、ストランド158は、固定長を有することができる(たとえば、延伸不可能とすることができる)。また、一部の実施形態において、ストランド158は、弾性的に延伸可能とすることができる。
【0064】
また、一部の実施形態において、ストランド158は、アッパー120のベース部124および/または側部126を接着、接合、または融着するように構成された熱可塑性材料を含むことができる。たとえば、熱を選択的に印加することによって、ストランド158の材料は、ベース部124および/または側部126の材料に融着可能である。したがって、ストランド158は、2012年9月20日に公開された特許文献2の教示に従って含まれる可能性があり、そのすべての内容を本明細書中に参考として援用する。
【0065】
図6の実施形態に示すように、アッパー120は、内側部132、ベース部124、および外側部130の間で連続的に延びた単一のストランド158を具備可能である。また、ストランド158は、1つまたは複数のターン159,160を具備可能である。ターン159,160は、180°以上のターンとすることができる。具体的に、ストランド158は、外側縁部135に沿った列に配置された複数の外側ターン159を具備可能であるとともに、内側縁部137に沿った列に配置された複数の内側ターンを具備可能である。また、ストランド158は、複数対のターン159,160間で直線的に延びることができる。また、ストランド158は、かかと部128に隣接して配設された第1の末端部164を具備可能であるとともに、足先部134に隣接して配設された第2の末端部166を具備可能である。また、ストランド158は、外側および内側部130,132間で交互に延びてジグザグ構成とすることができる。
【0066】
さらに、
図6および
図7に示すように、ニット構成要素116は、内側面121と外側面123との間に経路162を規定可能である。経路162は、任意適当な方法で規定可能である。たとえば、ストランド158がニット構成要素116に挿入された実施形態において、経路162は、ニット構成要素116の1つまたは複数のコースまたはウェールを通して規定可能である。また、一部の実施形態において、内側面121は、ニット材料の層により規定可能であり、外側面123は、ニット材料の別個の層により規定可能であり、これらの層間では、複数のストランド、フィラメント、または単一成分フィラメントが延びて間隔を与えることができる(たとえば、いわゆる「スペーサニット材料」)。これらの実施形態において、経路162は、ニット材料の層間および複数のスペーサストランド間において規定可能である。別の実施形態において、内側面121および外側面123は、相互接続された縫製面とすることができ、経路162は、これらの面間に規定可能である。
【0067】
経路162は、アッパー120の任意の部分を横切って延びることができる。たとえば、
図6の破線で示すように、アッパー120は、複数の経路162を規定可能であり、各経路162は、外側部130、ベース部124、および内側部132の間で連続的に延びることができる。図示の実施形態において、各経路162は、外側部130、ベース部124、および内側部132の間で連続となるように、外側部130の一部を横切って延び(外側経路)、ベース部124の一部を横切って延び(ベース部経路)、内側部132の一部を横切って延びている(内側経路)。ただし、当然のことながら、アッパー120の任意の部分において、1つまたは複数の経路162を局在および隔絶可能である。
【0068】
図7に示すように、ストランド158は、経路162のうちの1つまたは複数に収容されて長手方向に延びることにより、外側部130、ベース部124、および内側部132の間で延びることができる。また、ストランド158のターン159,160を経路162から露出可能である。
【0069】
外側ターン159は、外側クロージャー開口部156それぞれの周りで少なくとも部分的に延びることができ、内側ターン160は、内側クロージャー開口部157それぞれの周りで少なくとも部分的に延びることができる。さらに、
図1に示すように、靴ひも155は、外側クロージャー開口部156および外側ターン159の各対に収容可能であるとともに、内側クロージャー開口部157および内側ターン160の各対に収容可能である。言い換えると、外側ターン159および外側クロージャー開口部156の各対は、靴ひも155を協働して収容および支持可能であり、内側ターン160および内側クロージャー開口部157の各対もまた、靴ひも155を収容および支持可能である。
【0070】
一部の実施形態において、ストランド158は、各経路162に緩く移動可能に収容可能である。たとえば、ストランド158は、経路162を長手方向に摺動可能である。したがって、
図9に示すように、ターン159,160は、各クロージャー開口部156,157の近くへと引っ張ることができる。別の実施形態においては、ストランド158の第1の末端部164および/または第2の末端部166がベース部124に固定(たとえば、融着)可能である一方、ストランド158の残りの部分は、ベース部124、外側部130、および内側部132に対して移動可能なままとすることができる。さらに別の実施形態において、ストランド158の末端部164,166間の部分は、ベース部124、外側部130、および内側部132に融着または他の形で固定可能である。
【0071】
以上から、靴ひも155を引っ張ることにより、ストランド158の張力を増すことができる。たとえば、
図10に示すように、靴ひも155が緩められて非固定位置にある場合、ストランド158の張力は、相対的に低くなる可能性があるため、アッパー120を着用者の足に緩くフィットさせることができる。ただし、矢印174,175で示すように、靴ひも155は、引っ張られて張力が加えられると、ターン159,160でたぐり寄せられて、ストランド158の張力を増大可能である。その結果、ストランド158は、
図11の矢印176、177,178,179で示すように、アッパー120を引っ張って、着用者の足に緩く一致させることができる。
【0072】
当然のことながら、
図10および
図11に示す実施形態において、ストランド158は、着用者の足底の様々な区域を支持可能である。たとえば、ストランド158は、着用者の足のアーチの直下に配設されるように構成されたアーチ領域164に配設可能である。したがって、アーチ領域164のストランド158は、特に靴ひも155によって引っ張られている場合に、着用者のアーチを支持可能である。
【0073】
また、当然のことながら、図示の実施形態において、アッパー120は、上記のように足を支持可能な連続したストランド158を1つだけ具備可能である。したがって、アッパー120の部品数が相対的に少なくなるため、アッパー120を効率的に構成可能となる。
【0074】
履物の組み立て
以下、例示的な実施形態に係る、履物100、ニット構成要素116、およびアッパー120の組み立てについて論じる。明瞭化のため、ニット構成要素116およびストランド158は、
図5および
図6に示す分解状態に構成されているものと仮定する。
【0075】
アッパー120の組み立ての例示的な実施形態を始めるにあたり、外側および内側部130,132は、
図4に示す位置へと上方に移動(折り返し)可能である。そして、舌革部136は、湾曲領域143がギャップ139を実質的に塞ぐとともに長手方向領域145がスロート131を実質的に塞ぐように、上方に巻き上げ可能である。このため、第1の縁部140および第2の縁部142は、互いに直接隣接して配設可能である。そして、第1の縁部140および第2の縁部142は、縫い目144で結合可能である。
【0076】
第1の縁部140および第2の縁部142は、任意適当な方法により、縫い目144で結合可能である。たとえば、第1の縁部140および第2の縁部142は、縫製、接着剤、テープ、ボンディング、溶接、締結具等の適当な取り付け装置で結合可能である。
【0077】
一部の実施形態において、縫い目144は、
図1~
図3に示すように、縫製146で縁部140,142を縫い合わせることによって形成可能である。上述の通り、アッパー120は、複数のステッチを有するニット要素とすることができるが、当然のことながら、縫製146は、ニット構成要素116のステッチから独立させることができる。言い換えると、縫製146は、ニット構成要素116を編んだ後に取り付けられた1つまたは複数のスレッド、ヤーン、ケーブル等のストランドを用いて形成可能である。また、縫製146は、ジグザグ縫い等の適当なステッチとすることができる。また、縁部140,142は、縫い目144で隣接可能である。たとえば、縁部140,142は、突き合わせ継手を構成可能である。または、縁部140,142は、一部が重なり合って縫い目144を構成可能である。また、縁部140,142は、縫い目144における両者間の接着ビード等の材料により、当該縫い目144においてわずかに離間可能である。
【0078】
さらに、縫い目144は、ニット構成要素116の任意適当な部分を横切って延びることができる。たとえば、
図3の実施形態において、縫い目144は、足先部134に隣接して、ベース部124に配設された第1の末端部147を具備可能である。また、縫い目144は、外側縁部135、足先部134、および舌革部136の結合部に第2の末端部149を具備可能である。また、縫い目144は、一部の実施形態において、第1の末端部147および第2の末端部149間で連続して延びることができる。たとえば、縫い目144は、大略横方向127に第1の末端部147から内側部132へとベース部124を横切って延びた第1の部分181を具備可能である。また、縫い目144は、大略垂直方向129に内側部132を横切り、足先部134に隣接して延びた第2の部分183を具備可能である。さらに、縫い目144は、大略横方向に外側部130へと延び、第2の末端部149に向かって後方に湾曲した第3の部分185を具備可能である。このように、縫い目144は、端部147,149間で連続して延びることにより、着用者の足の下側から、着用者の足先の内側区域を周って、着用者の足先の上側の区域まで延びることができる。
【0079】
また、ニット構成要素116の縫い目144は、任意の数だけ存在可能である。たとえば、
図3の実施形態に示すように、
図1~
図3に示す3次元形状をアッパー120のニット構成要素116に与えるのに必要な孤立した縫い目144が1つだけ存在可能である。これにより、製造が容易化され、アッパー120の組み立て時間を短縮可能である。
【0080】
また、縫い目144は、かかと部128の縫い目がなくなるように、かかと部128から間隔を空けることができる。したがって、かかと部128が着用者のかかとに掛かっても、比較的滑らかで縫い目のないかかと部128は、着用者のかかとに擦れて着用者に不快感を与える可能性が低い。
【0081】
その後、上述の通り、外側開口部156および内側開口部157ならびに外側および内側ターン159,160に靴ひも155を通すことができる。次に、ソール構造110をアッパー120に取り付け可能である。具体的には、ミッドソール112をベース部124の外側面123に取り付け可能であり、アウトソール114をミッドソール112に取り付け可能である。別の実施形態においては、ベース部124の内側面121上に付加的な中敷きを挿入および/または取り付け可能である。
【0082】
ニット構成要素およびアッパーの別の実施形態
アッパー220のニット構成要素116の別の実施形態を
図12に示す。ニット構成要素116およびアッパー220は、以下の記述を除いて、上述のニット構成要素116およびアッパー120と実質的に類似したものとすることができる。
【0083】
アッパー220は、上述の実施形態と同様に、内側部232、ベース部224、および外側部230を横切って交互に延びたストランド258を具備可能である。また、ストランド258は、1つまたは複数の経路262を通って延びることができる。ただし、経路262は、内側部132および外側部130において規定可能であり、ベース部224から離間可能である。
【0084】
したがって、ベース部224を横切って延びたストランド258の長手部は、経路262から露出可能である。また、ストランド258のこれらの部分は、ベース部224から剥離および分離可能である。このように、一部の実施形態において、ストランド258のこれらの部分は、ソール構造110に対して自由に直接取り付け可能である。
【0085】
さらに、
図12に示すように、一部の実施形態においては、上記
図1~
図6に示す露出ターン159,160と異なり、ストランド258のターンが経路262に埋め込まれて包み込まれるように、経路262をV字状とすることができる。
【0086】
ニット構成要素316およびアッパー320のさらに別の実施形態を
図24および
図25に示す。ニット構成要素316およびアッパー320は、以下の記述を除いて、上述のニット構成要素116およびアッパー120と実質的に類似したものとすることができる。
【0087】
図24に示すように、ニット構成要素316は、ベース部324と、当該ベース部324から延びた側部326とを具備可能である。一部の実施形態において、側部326は、ベース部324を実質的に囲むことができる。たとえば、側部326は、かかと部328、外側部330、内側部332、および足先部334を規定可能である。
【0088】
また、アッパー320は、それぞれ個別に一体ニット構造を有する複数の部品329,331を具備可能であり、これらの部品329,331は、
図24に示すように、1つまたは複数の縫い目333,335,337で結合可能である。このように、部品329,331は、足を収容する空洞を協働して規定可能である。当然のことながら、アッパー320は、任意適当な数の部品329,331および任意数の縫い目333,335,337を具備可能である。
【0089】
各部品329,331は、一体ニット構造を有する材料で構成可能である。たとえば、
図25に示すように、部品329,331は、ニットシート材料の第1の層381および第2の層383で構成可能であり、層381,383間では、複数のスペーサストランド385が横方向に延びることができる。スペーサストランド385は、単一成分フィラメント等の適当な材料で作製可能であるとともに、層381,383間で実質的に垂直に延びることができる。また、スペーサストランド385は、層381,383間において、90°以外の角度で延びることができるとともに、一部の実施形態においては、層381,383間でジグザグ構成とすることができる。スペーサストランド385は、層381,383間で結合して間隔を空けることができる。したがって、部品329,331は、いわゆる「スペーサニット材料」で作製可能であり、2008年12月18日に出願され、特許文献1として2012年6月24日に公開された米国特許出願第12/388,726号に開示の材料を含むことができ、そのすべての内容を参考として援用する。
【0090】
また、
図25に示すように、第1の層381は、アッパー320の外側面323を規定可能である。また、第2の層383は、アッパー320の内側面321を規定可能である。
【0091】
また、層381,383の一方または両方は、1つまたは複数の開口部397を具備可能である。開口部397は、任意の数だけ存在可能であり、任意の形状を有することができるとともに、任意適当な方法で配置可能である。たとえば、図示の実施形態に示すように、第1の層381は、内側部332と外側部330との間で横方向327にベース部324を横切って延びた列に配置された複数の丸型開口部397を具備可能である。これに対して、第2の層383は、実質的に連続して、開口部397がないものとすることができる。
【0092】
第1の部品329は、アッパー320の外側部330と、かかと部328および足先部334の外側区域とを規定可能である。これに対して、第2の部品331は、内側部332と、かかと部328および足先部334の内側区域とを規定可能である。
【0093】
部品329,331は、アッパー320の足収容空洞を協働して規定するように、縫い目333,335,337で結合可能である。縫い目333,335,337は、アッパー320上の任意適当な位置に規定可能である。
【0094】
具体的に、
図24に示す実施形態において、縫い目333は、ベース部324上で実質的に中心となっており、長手方向325に延びている。また、足先縫い目335は、足先部334の下側で延びるとともに、大略横方向327に延びている。さらに、かかと縫い目337は、かかと部328の下側で延びるとともに、大略横方向327に延びている。
【0095】
縫い目333,335,337は、スレッド、ヤーン等のストランド、または接着剤、締結具、テープ等の適当な取り付け器具等の任意適当な方法で固定可能である。たとえば、スレッド、ヤーン、ケーブル、または他の種類のストランドを用いることによって、縫い目333,335,337を固定することができる。当然のことながら、縫い目333,335,337を固定するこれらのストランドは、部品329,331の一体ニット構造から独立させることができる。
【0096】
また、
図24に示すようにアッパー320の長手方向で、
図25に示すように内側面321および外側面323間で放射状に1つまたは複数の経路362を規定可能である。したがって、経路362は、
図25に示すように、複数のスペーサストランド385間で規定可能である。
【0097】
経路362は、アッパー320の任意の部分を横切って延びることができる。たとえば、経路362は、ベース部324の少なくとも一部を横切って延びることができる。図示の例示的な実施形態において、経路362は、内側部332とベース部324との間および/または外側部330とベース部324との間で連続して延びている。また、一部の実施形態において、第1の部品329の経路362は、第2の部品331の経路362と長手方向で実質的に一致可能である。
【0098】
図24および
図25に示すように、張力ストランド358は、経路362それぞれを通って延びることができる。張力ストランド358は、アッパー320上の任意適当な位置を横切って延びることができる。たとえば、ストランド358は、外側部330、ベース部324、および内側部322の間で連続して延びることができる。別の実施形態において、ストランド358は、ベース部324上に局在可能である。また、ストランド358は、他の方法でも同様に、ニット構成要素316を通ってルーティング可能である。
【0099】
図24および
図25に示すように、ストランド358の長手部は、開口部397によって外部に露出可能である。これにより、ストランド358の操作が必要な場合のストランドへのアクセスが提供される。また、ストランド358は、層381と対照的な色とすることによって、美的魅力を増進することができる。さらに、異なるストランド358が互いに異なる色を有することによって、美的魅力を増進することができる。
【0100】
以上から、上述するとともに
図1~
図6に示す実施形態と同様に、靴ひも等のクロージャー要素が締め付けられた場合に、張力ストランド358の張力を増大可能である。これにより、足に対してアッパー320が引き寄せられてアッパー320が足の形状に一致し、快適性を向上可能である。また、ストランド358の張力によって、足をさらに支持可能である。
【0101】
ニット構成要素およびアッパーを形成する例示的な編みプロセス
ニット構成要素116は、任意適当な方向に編むことができる。たとえば、ニット構成要素116は、カラー133において、かかと部128から形成可能であるとともに、足先部134に向かって大略長手方向125に大きくなるように形成可能である。足先キャビティ150は、舌革部136の前に形成可能である。舌革部136は、それに続いて形成可能である。また、ストランド158は、この編みプロセス中に挿入することができる。また、当然のことながら、ニット構成要素116の3次元湾曲キャビティおよび2次元湾曲部(かかとキャビティ148、足先キャビティ150、湾曲領域143、および/または他の区域等)についても、編みプロセス中に一体的に形成可能である。具体的に、境界173,197におけるステッチは、後続のステッチのコースの追加時に各針で保持可能であり、境界173,197で保持されたステッチは、境界173,197を横切って各ステッチに編み込み可能である。また、このプロセスは、横編み機等の任意適当な機械上で完結可能である。
【0102】
ここで
図15~
図23を参照して、ストランド158を備えたニット構成要素116を形成する例示的な自動編みプロセスについて論じる。説明のため、横編プロセスおよび横編み機について論じるが、ニット構成要素116およびストランド158は、本開示の範囲から逸脱することなく、別の方法でも形成可能である。したがって、ニット構成要素116およびストランド158は、2012年9月20日に公開された特許文献2の教示に従って形成可能であり、そのすべての内容を本明細書中に参考として援用する。
【0103】
図15には、様々な針1202、レール1203、標準フィーダー1204、およびコンビネーションフィーダー1220を具備した編み機1200の一部を示す。コンビネーションフィーダー1220がレール1203の前側に固定されている一方、標準フィーダー1204は、レール1203の後側に固定されている。ヤーン1206は、コンビネーションフィーダー1220を通過し、その端部が給糸先端部1246から外方に延びている。ヤーン1206を図示しているが、その他任意のストランド(たとえば、フィラメント、スレッド、ロープ、帯、ケーブル、鎖、またはヤーン)がコンビネーションフィーダー1220を通過していてもよい。また、別のヤーン1211が標準フィーダー1204を通過してニット構成要素1260の一部を構成し、ニット構成要素1260の最上コースを構成するヤーン1211のループが針1202の端部に配置されたフックによって保持されている。
【0104】
本明細書に記載の編みプロセスは、ニット構成要素1260またはニット構成要素1260の一部の形成に関する。したがって、ニット構成要素1260の当該部分は、
図1~
図6に関して上述したベース部124、かかと部128、外側部130、内側部132、足先部134、および/または舌革部136に対応可能である。説明のため、図面には、ニット構成要素1260の比較的小さな部分のみを示すことによって、ニット構造の図示を可能としている。さらに、編み機1200およびニット構成要素1260の様々な要素の縮尺または比率は、編みプロセスをより良く図示するために高くしている場合がある。
【0105】
ここで
図16を参照して、標準フィーダー1204は、レール1203に沿って移動し、ニット構成要素1260には、ヤーン1211から新たなコースが形成されている。より詳細に、針1202は、先行コースのループを通してヤーン1211の部分を引っ張ることにより、新たなコースを形成している。このため、針1202に沿って標準フィーダー1204を移動させることにより、ニット構成要素1260にコースが追加されることで、針1202はヤーン1211を操作可能であるとともに、ヤーン1211から別のループを形成可能である。
【0106】
編みプロセスを継続して、フィーダーアーム1240は、
図17に示すように、後退位置から延伸位置に平行移動する。延伸位置において、フィーダーアーム1240は、キャリア1230から下方に延びて、(a)針1202間の中心かつ(b)針床の交差部の下方である位置に給糸先端部1246を位置決めする。
【0107】
ここで
図18を参照して、コンビネーションフィーダー1220がレール1203に沿って移動することで、ヤーン1206がニット構成要素1260のループ間に配置される。すなわち、ヤーン1206は、一部のループの前および他のループの後ろに配置されて、交互パターンとなる。さらに、ヤーン1206は、一方の針床1201から、針1202が保持しているループの前に配置され、他方の針床から、針1202が保持しているループの後ろに配置される。なお、フィーダーアーム1240は、延伸位置に残って、針床の交差部の下方の区域にヤーン1206を挿入する。これにより、
図16の標準フィーダー1204が最後に形成したコース内にヤーン1206が効果的に配置される。
【0108】
ニット構成要素1260へのヤーン1206の挿入を完結するため、標準フィーダー1204は、
図19に示すように、レール1203に沿って移動することにより、ヤーン1211から新たなコースを形成する。この新たなコースを形成することによって、ヤーン1206は、ニット構成要素1260の構造内に効果的に編み込みまたは他の形で組み込みされる。また、この段階で、フィーダーアーム1240は、延伸位置から後退位置に平行移動してもよい。
【0109】
図18および
図19は、レール1203に沿ったフィーダー1204および1220の別個の移動を示している。すなわち、
図18は、レール1203に沿ったコンビネーションフィーダー1220の第1の移動を示し、
図19は、レール1203に沿った標準フィーダー1204の第2の後続移動を示している。多くの編みプロセスにおいて、フィーダー1204および1220は、同時に効果的に移動することによって、ヤーン1206の挿入およびヤーン1211からの新たなコースの形成を行うようにしてもよい。ただし、コンビネーションフィーダー1220は、標準フィーダー1204の前または前方に移動することによって、ヤーン1211からの新たなコースの形成の前にヤーン1206を位置決めする。
【0110】
上記説明において概説した一般的な編みプロセスは、
図1~
図6のストランド158をベース部124、アッパー120の外側部130、および/または内側部132に配置可能な様態の一例を提供している。より詳細には、フィーダーアーム1240の往復動作により、ストランド158は、新たなコースの形成に先立って、形成済みのコース内に配置されるようになっていてもよい。
【0111】
編みプロセスを継続して、フィーダーアーム1240は、
図20に示すように、後退位置から延伸位置に平行移動する。そして、
図21に示すように、コンビネーションフィーダー1220がレール1203に沿って移動することで、ヤーン1206がニット構成要素1260のループ間に配置される。これにより、
図19の標準フィーダー1204が形成したコース内にヤーン1206が効果的に配置される。ニット構成要素1260へのヤーン1206の挿入を完結するため、標準フィーダー1204は、
図22に示すように、レール1203に沿って移動することにより、ヤーン1211から新たなコースを形成する。この新たなコースを形成することによって、ヤーン1206は、ニット構成要素1260の構造内に効果的に編み込みまたは他の形で組み込みされる。また、この段階で、フィーダーアーム1240は、延伸位置から後退位置に平行移動してもよい。
【0112】
図22を参照して、ヤーン1206は、2つの挿入部分の間にループ1214を形成している。
図1~
図6のターン159,160の説明においては、ストランド158が経路162を出た後、別の経路162に入ることによって、ターン159,160を形成することに言及した。ループ1214も同様に形成可能である。すなわち、ループ1214は、ヤーン1206がニット構成要素1260のニット構造を出た後、当該ニット構造に再び入ることによって、形成可能である。
【0113】
図23を参照して、コンビネーションフィーダー1220は、後退位置にある状態でレール1203に沿って移動し、後退位置にある状態でニット構成要素1260のコースを形成する。したがって、後退位置と延伸位置との間でフィーダーアーム1240を往復させることにより、コンビネーションフィーダー1220は、ヤーン1206を供給して、編み、タック編み、浮き編み、および挿入を行うようにしてもよい。
【0114】
以下の説明および添付の図面は、ニット構成要素およびニット構成要素の製造に関する多様な考え方を開示している。ニット構成要素は、多様な製品に利用可能であるが、以下では、これらニット構成要素のうちの1つを組み込んだ履物製品を一例として開示する。
【0115】
実施形態に関する上記記述は、図示および説明を目的として提供しており、網羅的であることまたは本開示を制限することを意図したものではない。特定の実施形態の個々の要素または特徴は一般的に、当該特定の実施形態に限定されないが、具体的な図示または説明がなくても、必要に応じて置き換え可能であるとともに、選択された実施形態において使用可能である。また、このことは、様々に変化してもよい。このような変形例は、本開示からの逸脱と見なされるべきものではなく、このようなすべての変更は、本開示の範囲内に含まれるものと意図される。
【手続補正書】
【提出日】2023-07-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
履物製品であって、
ソールに結合されたニット構成要素であって、前記ニット構成要素は、足先領域、前記足先領域内の湾曲領域、及びスロート内の共通区域を少なくとも有する、ニット構成要素を有し、
前記湾曲領域は、前記共通区域から実質的に放射状に延びた複数のニットコースを含む、
履物製品。
【請求項2】
前記湾曲領域は、一体的に編まれ、結合されたテーパー状区域を含む、
請求項1に記載の履物製品。
【請求項3】
前記ニット構成要素は、1つまたは複数のインレイストランドを含む、
請求項1に記載の履物製品。
【請求項4】
前記1つまたは複数のインレイストランドは、前記ニット構成要素の内側面又は外側面に結合される、
請求項3に記載の履物製品。
【請求項5】
前記1つまたは複数のインレイストランドは、前記ニット構成要素のニット材料の第1の層とニット材料の第2の層との間に形成された経路内に位置決めされる、
請求項3に記載の履物製品。
【請求項6】
前記足先領域は1つまたは複数の開口部を含む、
請求項1に記載の履物製品。
【請求項7】
舌革部をさらに有し、前記湾曲領域は前記舌革部を部分的に含む、
請求項1に記載の履物製品。
【請求項8】
少なくとも2つのテーパー状区域を持つかかと部をさらに有する、
請求項1に記載の履物製品。
【請求項9】
前記少なくとも2つのテーパー状区域は、複数のコースをそれぞれ有する、
請求項8に記載の履物製品。
【請求項10】
前記複数のコース内の各個々のコースは、長さが異なり、前記少なくとも2つのテーパー状区域の形状を形成する、
請求項9に記載の履物製品。
【請求項11】
前記ニット構成要素は、前記ニット構成要素の内側面を規定するニット材料の第1の層と前記ニット構成要素の外側面を規定するニット材料の第2の層をさらに有する、
請求項1に記載の履物製品。