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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134529
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】新規の最小UTR配列
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/11 20060101AFI20230920BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230920BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230920BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230920BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230920BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230920BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20230920BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20230920BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20230920BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20230920BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
C12N15/11 Z ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/02 C
A61K31/7088
A61K31/7105
A61K35/76
A61K48/00
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023105810
(22)【出願日】2023-06-28
(62)【分割の表示】P 2021135004の分割
【原出願日】2017-03-30
(31)【優先権主張番号】16163264.1
(32)【優先日】2016-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】16177094.6
(32)【優先日】2016-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
2.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】512024886
【氏名又は名称】エスリス ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】ethris GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181847
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 かおり
(72)【発明者】
【氏名】クリスチャン プランク
(72)【発明者】
【氏名】カルステン ルドルフ
(72)【発明者】
【氏名】マニッシュ クマール アネージャ
(72)【発明者】
【氏名】ラディック ウェイス
(57)【要約】      (修正有)
【課題】極度に短く、同時にRNA分子の高い翻訳効率を可能にするUTR配列を有する、RNA分子を提供する。
【解決手段】(a)その5´末端に開始コドンを含み、ポリペプチドをコードするコード領域と、(b)前記コード配列のすぐ上流にある、以下の(b1)からなる群から選択されるUTRとを含むRNA分子である。
(b1)は、配列R-CGCCACCのUTR、または前記配列の一部が置換された配列のUTRであり、Rは、DNA依存性RNAポリメラーゼがRNA合成を開始するヌクレオチドで始まるプロモーター領域の一部に相当するRNA配列であり、Rは、特定の(i)~(iv)の配列群から選択され、3´末端にはポリAテールを含み、Rが(i)もしくは(ii)である場合、UTRの最大長さは14ヌクレオチドであり、または、Rが(iii)もしくは(iv)である場合、UTRの最大長さは12ヌクレオチドである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
mRNAに転写され得るDNA分子であって、以下のエレメント:
(a)その5´末端に開始コドンを含み、ポリペプチドをコードするコード領域と;
(b)前記コード配列のすぐ上流にある、以下の(b1)および(b2)からなる群から選択される配列とを有する一本の鎖を含むか;または相補鎖を含み、
(b1)は、R-CGCCACC(SEQ ID NO:1)か;または、
前記配列において、SEQ ID NO:1の位置6のCがAに置換され、SEQ ID
NO:1の位置7のCがGに置換され;および/もしくはSEQ ID NO:1の位置5のAがGに置換されている配列であり;
(b2)は、R-CNGCCACC(SEQ ID NO:2)であって、SEQ ID NO:2の位置2のヌクレオチドNがT、G、C、もしくはAから成る群から選択されるヌクレオチドである、配列か;または、
前記配列において、SEQ ID NO:2の位置7のCがAに置換され、SEQ ID
NO:2の位置8のCがGに置換され;および/もしくはSEQ ID NO:2の位置6のAがGに置換されている配列であり、
は、DNA依存性RNAポリメラーゼにより認識されるプロモーターであり、
DNA依存性RNAポリメラーゼにより認識される前記プロモーターは:
(i)T7DNA依存性RNAポリメラーゼにより認識されるTAATACGACTCACTATAGGGAGA(SEQ ID NO:3);
(ii)T3DNA依存性RNAポリメラーゼにより認識されるAATTAACCCTCACTAAAGGGAGA(SEQ ID NO:4);
(iii)SP6DNA依存性RNAポリメラーゼにより認識されるATTTAGGTGACACTATAGAAG(SEQ ID NO:5);および、
(iv)K11DNA依存性RNAポリメラーゼにより認識されるAATTAGGGCACACTATAGGGA(SEQ ID NO:6)からなる群から選択される、DNA分子。
【請求項2】
SEQ ID NO:2の位置2の前記ヌクレオチドNがT、G、またはCからなる群から選択されるヌクレオチドであり、ヌクレオチドNはAではない、請求項1に記載のDNA分子。
【請求項3】
SEQ ID NO:2の位置2の前記ヌクレオチドNがTである、請求項2に記載のDNA分子。
【請求項4】
請求項3のDNA分子を含むベクター。
【請求項5】
請求項4のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項6】
請求項1~3の何れか一項に記載のDNA分子、請求項4に記載のベクター、または請求項5に記載の宿主細胞を含む、組成物。
【請求項7】
(a)その5´末端に開始コドンを含み、ポリペプチドをコードするコード領域と;
(b)前記コード配列のすぐ上流にある、以下の(b1)および(b2)からなる群から選択されるUTRとを含むRNA分子であって、
(b1)は、配列R-CGCCACC(SEQ ID NO:1)のUTRか、または前記UTR配列において、SEQ ID NO:1の位置6のCがAに置換され、SEQ ID NO:1の位置7のCがGに置換され;および/もしくはSEQ ID NO:1の位置5のAがGに置換されている配列のUTRであり;
(b2)は、配列R-CNGCCACC(SEQ ID NO:2)であって、S
EQ ID NO:2の位置2のヌクレオチドNがU、G、C、もしくはAからなる群から選択されるヌクレオチドである配列のUTRか、または前記UTR配列において、SEQ ID NO:2の位置7のCがAに置換され、SEQ ID NO:2の位置8のCがGに置換され;および/もしくはSEQ ID NO:2の位置6のAがGに置換されている配列のUTRであり、
は、DNA依存性RNAポリメラーゼがRNA合成を開始するヌクレオチドで始まるプロモーター領域の一部に相当するRNA配列であり、
は、
(i)GGGAGA(SEQ ID NO:7);
(ii)GGGAGA(SEQ ID NO:8);
(iii)GAAG(SEQ ID NO:9);および
(iv)GGGA(SEQ ID NO:10)からなる群から選択され、
3´末端にはポリAテールを含む、RNA分子。
【請求項8】
SEQ ID NO:2の位置2の前記ヌクレオチドNがU、G、またはCからなる群から選択されるヌクレオチドであり、ヌクレオチドNはAではない、請求項7に記載のRNA分子。
【請求項9】
SEQ ID NO:2の位置2の前記ヌクレオチドNがUである、請求項8に記載のRNA分子。
【請求項10】
前記ポリAテールの長さは少なくとも120ヌクレオチドである、請求項7~9の何れか一項に記載のRNA分子。
【請求項11】
請求項7~10の何れか一項に記載のRNA分子をコードする核酸分子。
【請求項12】
請求項11の核酸分子を含むベクター。
【請求項13】
請求項12のベクターを含む宿主細胞。
【請求項14】
請求項7~10の何れか一項に記載のRNA分子、請求項11に記載の核酸分子、請求項12に記載のベクター、または請求項13に記載の宿主細胞と、任意選択的に医薬的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
【請求項15】
RNAベースの治療で使用される、請求項14の医薬組成物。
【請求項16】
請求項1~3の何れか一項に記載のDNA分子、請求項7~10の何れか一項に記載のRNA分子、請求項11に記載の核酸分子、請求項4もしくは12に記載のベクター、または、請求項5もしくは13に記載の宿主細胞を含む、キット。
【請求項17】
RNA分子のコード領域を、前記コード領域にコードされたポリペプチドまたはタンパク質に翻訳するための、請求項7の(b)で定義したUTRの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規のUTR配列を宿すmRNAに転写され得るDNA分子であって、前記UTR配列は極度に短く、同時に該UTR配列を含有するRNA分子の高い翻訳効率を可能にするという利点を組み合わせている、DNA分子に関する。さらに、本発明は、斯かるDNA分子を含むベクターと、斯かるベクターを含む宿主細胞に関する。さらに、本発明は、斯かるUTRを含有する対応RNA分子に関する。さらに、本発明は、上記のRNA分子とオプションとして医薬的に許容される担体とを含む医薬組成物、および、RNA分子のコード領域を、前記コード領域によりコードされるポリペプチドまたはタンパク質へ翻訳するために上記UTRを使用することに関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、メッセンジャーRNA(mRNA)が、新規の薬物実体としてますます重要になってきている。DNAベースの遺伝子療法とは対照的に、mRNAは核に輸送される必要がなく、細胞質においてタンパク質に直接翻訳される(J Control Release, 2011, 150:238-247, and Eur J Pharm Biopharm, 2009, 71:484-489)。これにより、DNA遺伝子薬の持つ可能性は低いが実在するリスクである潜在的な挿入変異を避けるのに、mRNAがより安全となる。結果として、mRNA療法は、広範な種々の医学的徴候における遺伝子およびタンパク質補充療法の有望な代替として浮上しつつある(J Control Release,
2011, 150:238-247; Eur J Pharm Biopharm, 2009, 71:484-489; Nat Biotech, 2011, 29:154-157, and Nat Rev Genet, 2011, 12:861-874)。しかしながら、mRNAの臨床的応用性をさらに確立するためには、従来のmRNAの強い免疫原性と限定的な安定性を克服しなければならない。これに関しては、mRNAの安定性および特にmRNAの翻訳速度が、想定される医療用途に必須のパラメータとなる。これは、mRNAの翻訳速度が、mRNA薬の投与量および投与間隔を決定するからである。
【0003】
いくつかの戦略が、安定性を高め、細胞または生物に投与されたmRNAにより引き起こされる免疫原性応答を低減させることの両方において、成功することが分かっている。これには、化学修飾されたヌクレオチドが含まれている;Current Opinion in Drug Discovery and Development, 2007, 10:523。Kormannらは、ウリジンおよびシチジン残基のわずか25%を2-チオウリジンおよび5-メチル-シチジンで置換するだけでmRNAの安定性を高め、in vitroで、外部投与されたmRNAにより引き起こされる自然免疫の活性化を低減させるのに十分であることを示した(国際公開第2012/0195936A1号;同2007024708A2号)。
【0004】
また、mRNAの非翻訳領域(UTR)がmRNAの安定性およびmRNA翻訳の両方の制御に中心的な役割を果たすことが報告されている。UTRは、RNA結合タンパク質との相互作用を介して、翻訳開始、伸長、および終結、ならびに、mRNAの安定化および細胞内局在に影響を与えることが知られている(Briefings in Bioinformatics, 2000,
1:236-249 and Cold Spring Harbor Monograph Archive, 2007, 48:87-128)。UTR内の特定のモチーフに応じて、UTRはmRNAの代謝回転を高めることも低減させることも可能である(Cell. Mol. Life Sci., 2012, 69:3613-3634; Nucleic Acids Research, 2005, 33:D141-D146; Science, 2005, 309:1514-1518 and Current Protein & Peptide Science, 2012, 13:294-304)。近年、mRNAの半減期と、対応するUTR配列についてのデータが公開されている(Nucleic Acids Research, 2011, 39:556-566 and Nucleic acids research, 37, e115)。
【0005】
UTRは、mRNAの開始コドンの上流かつ終止コドンの下流にある、mRNA分子の
区域であり、つまり、翻訳されない配列である。これらの領域はコード領域と共に転写され、したがって、該領域は成熟mRNAに存在するエキソンである。mRNAの開始コドンの上流のUTRは、5´UTRと呼ばれ、いったん転写されると、特に、プロモーターの(残留した3´の)一部に相当する配列およびいわゆるコザック配列を宿す。
【0006】
コザックコンセンサス配列、コザックコンセンサス、またはコザック配列は、真核生物のmRNAで生じることが知られている配列で、コンセンサス(gcc)gccRccAUGGを有する。コザックコンセンサス配列は、翻訳プロセスの開始において主要な役割を果たす。配列は、それを有名にした人物、Marilyn Kozakにちなんで名付けられた。m
RNA分子中のこの配列は翻訳開始部位のリボソームにより認識され、ここからタンパク質がそのmRNA分子にコードされている。リボソームは、翻訳を開始するために、この配列かまたは可能性のあるその変種を必要とする。配列は、記号(gcc)gccRccAUGGにより特定され、これは、以下のように、幅広いソース(全部で約699個)からコザックにより解析されたデータを要約するものである:小文字は、ある位置での最も一般的な塩基を表示し(そうは言っても塩基は変わり得るが);大文字は、高度に保存された塩基を示し、つまり、「AUGG」配列は一定で、変わることがあったとしてもまれであり、Rはプリン(アデニンまたはグアニン)が常にその位置で観察されることを示し(コザックはアデニンがより高頻度であると主張する);括弧内の配列((gcc))は、異議不明である。
【0007】
コザックコンセンサス配列は、元々、プレプロインスリン遺伝子の翻訳における開始コドン(AUG、Aは本文脈では位置+1を定義する)の周りの点変異の解析により、ACCAUGGとして定義された。699個の脊椎動物のmRNAのより詳細な変異原性により、AUG開始コドンの上流の位置-3のAが、Gでもあり得る、コンセンサス配列GCCGCCACCAUGGが生じた(Nucleic Acids Res., 1987, 15 (20):8125-8148)。
真核細胞におけるプレプロインスリンおよびアルファグロビン翻訳についての研究により、位置-3のプリン(通常はA)が効率的な翻訳開始に必須であり、このプリンがない場合、位置+4のGが必須であることが明らかになった(J. Cell Biol., 1989, 108:229-41)。mRNA分子から合成されるタンパク質量は、コザックエレメントの配列に強く左
右され:タンパク質のN末端メチオニンをコードしているAUG開始コドンが最も重要である。強いコンセンサスのためには、位置+4(G)および-3(AまたはG)のヌクレオチドが、両方ともコンセンサスと一致しなければならない。十分なコンセンサス配列は、これらの2つの部位の一つのみを有する一方、弱いコンセンサス配列は、位置+4でも-3でも要件を満たさない。-1および-2の2つのシチジン残基は、それほど保存されておらず(Cell, 1986, 44 (2):283-92)、一方、位置-6のGは翻訳開始のために重要
である(Br. J. Haematol., 2004, 124 (2):224-31)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
先行技術では、mRNAの安定性を高め、細胞または生物に投与されたmRNAにより引き起こされる免疫原性応答を低減させ、発現効率(つまり、転写効率および/または翻訳効率)を高める手段および方法がすでに説明されているが、発現効率が、例えばmRNA薬の投与量および投与間隔を決定し、最終的に、最終生成物、つまりコードされたペプチドまたはタンパク質のバイオアベイラビリティを決定するため、発現効率が想定される医療用途に必須のパラメータとなることから、特に、発現効率(つまり、転写効率および/または翻訳効率)を高めるさらなるまたは代わりの手段に関して、なお改善のニーズがある。同時に、さらに、mRNA薬を生成するコストを低減させ、生成されるmRNA分子の収率を高め、実際の導入遺伝子、つまり、所望のポリペプチドをコードするコード領域に利用可能なスペースを、生成されたmRNA分子において増大させることに対する一定のニーズが存在する。
【0009】
本出願は、請求項で定義するような実施形態を提供することにより、このニーズに対応する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
特に、本出願は、驚くべきことに、UTR配列のサイズを「最小UTR」配列まで縮小し、それにより、mRNA薬の生成コストを低減させ、生成されるmRNA分子の収率を高め、実際の導入遺伝子、つまり、所望のポリペプチドをコードするコード領域に利用可能なスペースを、生成されたmRNA分子において増大させることが可能であることを見出した。さらに、同時に、この最小UTR配列は、驚くべきことに、従来のUTR配列と比較して、発現率を維持し、さらには改善する一方、この最小UTR配列における修飾がmRNA分子の発現率さえ高めることを見出した。
【0011】
この発見は、請求項で特徴付けられる実施形態の提供、特に、斯かる「最小UTR」配列を宿すRNA分子の生成を可能にするDNA分子の提供および対応のRNA分子の提供につながる。
【0012】
第1態様では、対応する分子をDNAレベルで記載する一方、さらに以下では、第2態様において、対応する分子をRNAレベルで記載する。
【0013】
したがって、第1態様では、本発明は、mRNAに転写され得るDNA分子であって、以下のエレメント:
(a)その5´末端に開始コドンを含み、ポリペプチドをコードするコード領域と;
(b)前記コード配列のすぐ上流にある、以下の(b1)および(b2)からなる群から選択される配列とを有する一本の鎖を含むか;または相補鎖を含み、
(b1)は、R-CGCCACC(SEQ ID NO:1)か;または、
前記配列において、SEQ ID NO:1の位置6のCがAに置換され、SEQ ID
NO:1の位置7のCがGに置換され;および/もしくはSEQ ID NO:1の位置5のAがGに置換されている配列であり;
(b2)は、R-CNGCCACC(SEQ ID NO:2)であって、SEQ ID NO:2の位置2のヌクレオチドNがT、G、C、もしくはAから成る群から選択されるヌクレオチドである、配列か;または、
前記配列において、SEQ ID NO:2の位置7のCがAに置換され、SEQ ID
NO:2の位置8のCがGに置換され;および/もしくはSEQ ID NO:2の位置6のAがGに置換されている配列であり、
は、DNA依存性RNAポリメラーゼにより認識されるプロモーターである、DNA分子に関する。
【0014】
DNA配列は、その配列が、タンパク質に翻訳されるメッセンジャーRNAコピーの配列と同じである場合、「センス」と呼ばれる。反対の、相補的な鎖の配列は、「アンチセンス」配列と呼ばれる。本発明のDNA分子は、センス鎖を参照することにより、上記の(a)および(b)で定義される一方、対応する相補的なアンチセンス鎖は、塩基対合ルールを考慮すれば、当業者により容易に決定され得る。
【0015】
本発明のDNA分子は、mRNA分子に転写され得るDNA分子である。転写は遺伝子発現の第1ステップであり、ここで、DNA分子の特定のセグメントが酵素RNAポリメラーゼによりmRNA分子にコピーされる。転写時にDNA配列がRNAポリメラーゼにより読み取られ、一次転写生成物と呼ばれる、相補的で非平行なRNA鎖が生成される。
【0016】
二本のDNA鎖のうち一つのみが、転写の鋳型として機能する。DNAのアンチセンス
鎖は、DNA依存性RNAポリメラーゼにより、転写時に3´末端から5´末端へ読み取られる(3´→5´)。相補的RNAが反対側に5´→3´方向で作られ、これは、ウラシルがチミンにスイッチされることを除き、センス鎖の配列と一致している。この方向性は、RNAポリメラーゼが、成長するmRNA鎖の3´末端にヌクレオチドを加えることだけ可能であるからである。DNAの非鋳型センス鎖は、その配列が、新しく作られるRNA転写物と(ウラシルのチミンへの置換を除き)同じであることから、コード鎖と呼ばれる。これは、DNA配列を提示する本発明の文脈において、慣習により使用される鎖である。
【0017】
本発明のDNA分子は、二本鎖か、一本鎖か、または部分的に二本鎖で部分的に一本鎖であり得る。
【0018】
本発明のDNA分子は、2つの主なモジュール(「項目」ともいう)、つまり、(a)ポリペプチドをコードし、その5´末端に開始コドンを含むコード領域と、(b)前記コード領域のすぐ上流にある、本明細書の上記の(b1)または(b2)で定義される配列とを含む。斯かるDNA分子は、転写された場合に、上記の利点を提供する極めて短いUTR配列を有するmRNAをもたらす。
【0019】
さらに、本発明のDNA分子は、好適には、mRNAに転写された場合にコード領域の下流にUTRを生じさせる配列を含む。したがって、本発明のDNA分子は、好適には、コード領域と、転写時に生成されるmRNA分子に(5´および3´の)非翻訳領域(UTR)を生じさせる配列とを宿す。
【0020】
本発明に従って使用する場合、用語「その5´末端に開始コドンを含むコード領域」は、コドンから構成されるDNA配列に関するものであり、前記コドンはDNA依存性RNAポリメラーゼによりmRNA分子に転写され、対応するmRNA分子は「遺伝コード」により提供される情報に従って解読され、リボソームによりタンパク質に翻訳され得る。コード領域は、一般に、その5´末端において開始コドンで始まり、終止コドンで終わる。概して、開始コドンはATGトリプレット(RNAレベルでのAUGトリプレットに相当する)であり、終止コドンは、TAA、TAG、またはTGA(RNAでベルでのUAA、UAG、またはUGAに相当する)である。コード領域部分は、タンパク質をコードしていることに加え、エキソンスプライシングエンハンサーまたはエキソンスプライシングサイレンサーとして、プレmRNAの制御配列として機能し得る。本発明に従って使用するポリペプチドまたはタンパク質をコードする遺伝子のコード領域は、また、コード配列またはCDS(coding DNA sequenceに由来する)としても知られており、遺伝子のD
NAまたはRNAの一部であり、エキソンからなり、ポリペプチドまたはタンパク質をコードする。mRNAのコード領域は、エキソンの一部でもある5´非翻訳領域(5´UTR)と3´非翻訳領域(3´UTR)に隣接している。さらに、mRNA分子は、いわゆる5´キャップとポリAテールをさらに含み得る。5´キャップ、5´UTR、3´UTR、およびポリAテールは、タンパク質に翻訳されないmRNA分子の領域である。
【0021】
本発明に従って用いる場合、用語「非翻訳領域」または「UTR」は、翻訳されない開始コドンの上流および終止コドン下流のmRNA区域に関し、そのため、それぞれ、5プライム非翻訳領域(5´UTR)および3プライム非翻訳領域(3´UTR)と称される。これらの領域はコード領域と共に転写され、したがって、該領域は、成熟mRNAに存在することから、エキソンである。
【0022】
本発明で使用する場合、3´非翻訳領域(3´UTR)は、翻訳終止コドンのすぐ後に続くメッセンジャーRNA(mRNA)区域に関する。3´UTRは、3´非翻訳領域内にポリアデニル化およびmRNAの安定性に影響を与えることが知られている調節領域を
含み得る。多くの3´UTRは、また、AUリッチエレメント(ARE)を含有する。さらに、3´UTRは、好適には、ポリ(A)テールと呼ばれる数百のアデニン残基を、mRNA転写物の末端に付加することを指示する配列AAUAAAを含有し得る。
【0023】
5´非翻訳領域(5´UTR)(リーダー配列またはリーダーRNAとしても知られている)は、開始コドンのすぐ上流にあるmRNA領域である。5´UTRは転写開始部位で始まり、コード領域の開始コドン(通常はmRNAのAUG)の1ヌクレオチド(nt)前で終わる。真核生物では、5´UTRの長さは概して100~数千ヌクレオチド長であるが、時には、より短いUTRが真核生物で生じる場合がある。
【0024】
本発明では、プロモーターとコード領域(上記(b1)または(b2)で定義されるような)の間の配列は極めて短く、転写時に、非常に短い「最小の」UTR配列を有するmRNA分子をもたらす。
【0025】
DNA分子の一モジュール、つまり、「その5´末端に開始コドンを含み、ポリペプチドをコードするコード領域」(モジュール(a))は、特に限定されず、所与の細胞で発現する任意の所望のコード領域であり得る。したがって、このモジュールは、所望のポリペプチド、つまり所望の最終生成物をコードするコード領域であり得る。本発明は、「その5´末端に開始コドンを含み、ポリペプチドをコードするコード領域」に関して限定されない。これは、コード領域の性質は、細胞で生成される所望の生成物に左右されるからである。斯かるコード領域は、また、既知の天然配列とは異なり、変異(つまり、点変異、挿入変異、欠失、およびその組み合わせ)を含有するヌクレオチド配列であり得る。さらに、斯かるコード領域は、部分的にまたは十分に、モジュール(a)として使用される、天然配列に由来するコドン最適化配列であり得る。コドン最適化は、対象遺伝子に由来するmRNAの翻訳効率を高めることにより、タンパク質発現を最大化する技法である。天然遺伝子は、利用可能なコドンをランダムに使用せず、同じアミノ酸については特定のコドンに対しある特定の嗜好性を示すことが知られている。したがって、遺伝コードの縮重-1つのアミノ酸がいくつかのコドンによりコードされ得ること-により、対象遺伝子のヌクレオチド配列は、同じまたは別の種の好適なコドンセットに形質転換される。
【0026】
言及したように、モジュール(a)は特に限定されず、所与の細胞で発現する任意の所望のコード領域であり得る。従って、本発明の文脈では、「コード領域」は、細胞に導入された場合に、ポリペプチド/タンパク質またはその断片に翻訳可能であるmRNA分子に転写され得る、任意のポリ-デゾキシリボヌクレオチド分子を意味すると理解されたい。用語「ポリペプチド」および「タンパク質」には、ここでは、任意の種類のアミノ酸配列、つまり、ペプチド結合を介して互いに連結し、ペプチドおよび融合タンパク質も含む、2つ以上のアミノ酸鎖が包含される。
【発明を実施するための形態】
【0027】
好適な実施形態では、「その5´末端に開始コドンを含み、ポリペプチドをコードするコード領域」は、細胞または細胞近傍でその機能が必要とされるか、または有益であるポリペプチド/タンパク質またはその断片、例えば、その欠陥型もしくは欠損型が疾患もしくは疾病のトリガーとなるか、その提供が疾患もしくは疾病を軽減もしくは予防し得るタンパク質か、または、身体にとって有益なプロセスを細胞またはその近傍で促進し得るタンパク質をコードするデゾキシリボヌクレオチド配列を含有する。コード領域は、完全タンパク質またはその機能性変異体の配列を含有し得る。さらに、コード領域のデゾキシリボヌクレオチド配列は、因子、誘導因子、制御因子、刺激因子、もしくは酵素として作用するタンパク質、またはその機能性断片をコードし得、この場合、このタンパク質は、障害、特に代謝障害を治療するため、または、新生血管、組織などの形成といった、in vivoのプロセスを開始するためにその機能が必要なものである。ここでは、機能性変
異体は、細胞においてその機能が必要であるか、または、その欠陥型または欠損型が病原性であるタンパク質の機能を細胞において担う断片を意味することを理解されたい。
【0028】
好適な実施形態では、「その5´末端に開始コドンを含み、ポリペプチドをコードするコード領域」は、治療効果もしくは予防効果を有する、治療的または医療的に活性なポリペプチドまたはタンパク質をコードする。したがって、前記「その5´末端に開始コドンを含み、ポリペプチドをコードするコード領域」を含み、mRNAに転写され得る本発明のDNA分子は、核酸療法および関連用途で使用することができる。本文脈では、本発明に従い、本発明のDNA分子のmRNAへの転写、さらには、ポリペプチドもしくはタンパク質への翻訳は、特に、内因性遺伝子が欠損しているかもしくはサイレントで、遺伝子発現の生成物をもたらさないか、または、不十分なもしくは欠陥のあるもしくは機能不全の生成物をもたらす場合に、例えば、いくつか例を挙げると、嚢胞性線維症、血友病、または筋ジストロフィーのような多くの代謝疾患および遺伝疾患の場合などにおいて、内因性遺伝子発現を補償するか、または、補完することを目的とし得る。本発明のDNA分子のmRNAへの転写、さらにはポリペプチドまたはタンパク質への翻訳は、また、遺伝子発現の制御、シグナル伝達、および他の細胞プロセスなどの任意の内因性細胞プロセスと、発現生成物を、相互作用させるかまたは干渉させることも意図し得る。本発明のDNA分子のmRNAへの転写、さらにはポリペプチドまたはタンパク質への翻訳は、また、遺伝子導入されたまたは形質導入された細胞が存在するかまたは存在するように作られた生物において、免疫応答を引き起こすことも意図し得る。例は、ワクチン接種のための抗原を提示させるために、樹状細胞などの抗原提示細胞を遺伝子修飾することである。別の例は、本発明のDNA分子を、mRNAへ転写し、さらにはポリペプチドまたはタンパク質へ翻訳することであり、ここにおいて、前記コード領域はサイトカインをコードする。これは、例えば、腫瘍特異的免疫応答を誘発するために、腫瘍において望ましい場合がある。さらに、本発明のDNA分子のmRNAへの転写、さらにはポリペプチドまたはタンパク質への翻訳は、また、再生医療のために、修飾T細胞または前駆体または幹細胞または他の細胞などの、細胞療法用に一時的に遺伝子修飾された細胞をin vivoでまたはex vivoで生成することも意図し得る。
【0029】
他の好適な実施形態では、「その5´末端に開始コドンを含み、ポリペプチドをコードするコード領域」は、成長プロセスおよび血管新生において役割を果たすタンパク質をコードし得、これは、例えば、再生の制御に必要であり、そのため、本発明のRNA分子の導入により特異的に形成することが可能である。これは、例えば、成長プロセスまたは骨異常、組織異常の処置のために、埋め込みおよび移植において有用であり得る。
【0030】
言及したように、DNA分子、および、特に、対応して転写される、「その5´末端に開始コドンを含み、ポリペプチドをコードするコード領域」を含む本発明のRNA分子は、体内に天然に存在するはずであるが、遺伝子欠損または疾患のために存在しないかまたは欠陥型で存在するかまたは量が非常に少ないポリペプチドまたはタンパク質を、身体に提供しなければならない場合に、適切に使用することが可能である。その欠乏または欠損が疾患と関連するタンパク質およびそれをコードする遺伝子は、既知である。インタクトなポリペプチドまたはタンパク質をコードするコード領域のそれぞれのインタクトバージョンを、本発明に従って使用することが可能である。
【0031】
単一遺伝子の変異により引き起こされる多数の遺伝障害が既知であり、mRNA治療アプローチの候補である。嚢胞性線維症、血友病、および他多数の単一遺伝子変異により引き起こされる障害は、ある形質が子孫に現れる可能性に関し、優勢の場合も劣性の場合もある。優勢対立遺伝子は、該対立遺伝子の1コピーのみを有する個体において表現型を表すが、劣性対立遺伝子が顕性になるには、固体は、それぞれの親から1つずつ、2つのコピーを有さなければならない。対称的に、多遺伝子性障害は、2つ以上の遺伝子により引
き起こされ、それぞれの疾患の発現はしばしば流動的で、環境因子に関係する。多遺伝子性障害の例は高血圧、コレステロール値の上昇、がん、神経変性障害、精神疾患、および他である。また、これらの場合、これらの遺伝子の1つまたは複数を表す治療用mRNAが、その患者にとって有益であり得る。さらに、遺伝障害は、両親の遺伝子から受け継がれていないはずであっても、新たな変異によっても引き起こされ得る。これらの場合も、正しい遺伝子配列を表す治療用mRNAが、患者にとって有益であり得る。
【0032】
目下、22,993件のヒト遺伝子遺伝子障害のエントリーを、それぞれの遺伝子およびその表現型についての説明と共に含むオンラインカタログが、ONIM(Online Mendelian Inheritance in Man)ウェブページ(http://onim.org)で利用可能であり;それぞれの配列はUniprotデータベース(http://www.uniprot.org)より利用可能である。非限定的な例として、以下の表1は、いくつかの先天的疾患と対応する遺伝子を列挙するものである。細胞シグナル伝達経路の相互作用度が高いため、ある遺伝子の変異は、病原症状の多重化を引き起こし、そのうち特徴的なものだけを表1に列挙する。
【0033】
本発明の一部の実施形態では、治療用タンパク質は、表1に列挙する細胞タンパク質から選択される。したがって、本発明のDNA分子は、治療用細胞タンパク質をコードし得、コードされた治療用タンパク質は、表1に列挙するものか、またはその相同体である。
【0034】
本発明の別の実施形態では、治療用タンパク質は、表1に列挙する分泌タンパク質から選択される。従って、本発明のDNA分子は、治療用融合タンパク質をコードし得、コードされる治療用タンパク質またはその相同体は表1に列挙するものであり、第2タンパク質は、治療用タンパク質の分泌を可能にするシグナルペプチドである。シグナルペプチドは、短い、典型的には5-30アミノ酸長の、前記治療用タンパク質のN末端に存在するアミノ酸配列であり、それはある小器官(つまり、小胞体、ゴルジ体、またはエンドソーム)を介して細胞分泌経路に融合タンパク質を導く。従って、斯かる融合タンパク質は細胞もしくは細胞小器官から分泌されるか、または、細胞区画もしくは細胞表面の細胞膜(例えば、マルチスパン膜貫通タンパク質)に挿入される。
【0035】
したがって、本発明の好適な実施形態では、「その5´末端に開始コドンを含み、ポリペプチドをコードするコード領域」(モジュール(a))は、限定するわけではないが、疾患を引き起こす、疾患にかかりやすくする、または疾患から守る以下の遺伝子をコードし得る。処置(または予防)できる斯かる障害の非限定的例としては、前記ポリペプチド、タンパク質、またはペプチドが、以下の表1に略述するものからなる群から選択されるものが挙げられる。
【0036】
一部の実施形態では、「その5´末端に開始コドンを含み、ポリペプチドをコードするコード領域」は、天然タンパク質と同じかまたはそれ以上のレベルの細胞活性を含む部分長または完全長のタンパク質に、転写および翻訳され得る。一部の実施形態では、「その5´末端に開始コドンを含み、ポリペプチドをコードするコード領域」は、治療効果または予防効果を有する、治療的または医薬的に活性なポリペプチド、タンパク質またはペプチドをコードし、前記ポリペプチド、タンパク質、またはペプチドは、以下の表1に概説するものからなる群から選択される。「その5´末端に開始コドンを含み、ポリペプチドをコードするコード領域」を使用して、天然タンパク質と同じまたはそれ以下のレベルの細胞活性を有する部分長または全長タンパク質を発現させることができる。これは、RNA分子の投与が指示され得る疾患の処置を可能にし得る。
【0037】
ヒト遺伝子および遺伝障害の非限定的例
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
【表1-10】
【表1-11】
【0038】
上記表1は、その欠損が、本発明のDNA分子から転写されたRNA分子で処置することが可能な疾患につながる遺伝子の例を示し、前記DNA分子(および対応して転写されるRNA分子)は、上記に開示した欠損遺伝子のタンパク質のインタクトバージョンまたはその機能的断片をコードする、「その5´末端に開始コドンを含み、ポリペプチドをコードするコード領域」を含む。特に好適な実施形態では、以下の遺伝性疾患が言及され得る:例えば、SPB(サーファクタントタンパク質B)欠乏症、ABCA3欠乏症、嚢胞性線維症、およびα1-アンチトリプシン欠乏症などの肺に影響を与える遺伝疾患、または、血漿タンパク質に影響を与える遺伝性疾患(例えば、先天的ヘモクロマトーシス(ヘプシジン欠乏症)、血栓性血小板減少性紫斑病(TPP、ADAMTS13欠乏症)、凝固障害(例えば、血友病aおよびb)および補体欠損症(例えば、タンパク質C欠乏症)を引き起こす遺伝性疾患、免疫欠如、例えばSCID(RAG1、RAG2、JAK3、IL7R、CD45、CD3δ、CD3εなどの異なる遺伝子における変異によって引き起こされる)または例えばアデノシンデアミナーゼの不足よる欠乏による(ADA-SCID)、敗血性肉芽腫症(例えば、gp-91-phox遺伝子、p47-phox遺伝子、p67-phox遺伝子、またはp33-phox遺伝子の変異によって引き起こされる)ならびに、ならびにゴーシェ病、ファブリー病、クラッベ病、MPS I、MPS
II(ハンター症候群)、MPS VI、糖原病II型またはムコ多糖症などの蓄積症。
【0039】
「その5´末端に開始コドンを含み、ペプチドをコードするコード領域」を含む本発明が有用であり得る他の障害には以下の障害が含まれる:SMN1関連脊髄性筋萎縮症(SMA);筋萎縮性側索硬化症(ALS);GALT関連ガラクトース血症;嚢胞性線維症(CF);シスチン尿症を含むSLC3A1関連障害;アルポート症候群を含むCOL4A5関連障害;ガラクトセレブロシダーゼ欠乏症;X連鎖副腎白質ジストロフィーおよび副腎脊髄神経症;フリードライヒ失調症;ペリツェウス・メルツバッハー病;TSC1およびTSC2関連結節硬化症;サンフィリッポB症候群(MPS IIIB);CTNS関連シスチン症;脆弱性X症候群、脆弱性X関連性振戦/失調症候群および脆弱性X早発卵巣不全症候群を含むFMR1関連障害;プラダー・ウィリー症候群;遺伝性出血性毛細血管拡張症(AT);ニーマン・ピック病C1型;若年性ニューロンセロイドリポフスチン症(JNCL)、青年バッテン病、サンタヴォリ・ハルチア病、ジャンスキー・ビール
スコフスキー病、ならびにPTT-1およびTPP1欠乏症を含むニューロンセロイドリポフスチン関連疾患;EIF2B1、EIF2B2、EIF2B3、EIF2B4およびEIF2B5が関連する中枢神経系の髄鞘形成不全/白質消失を伴う小児運動失調;CACNA1AおよびCACNB4が関連する一過性運動失調2型;クラシックレット症候群、MECP2関連重症新生児脳症およびPPM-X症候群を含むMECP2関連障害;CDKL5関連非定型レット症候群;ケネディ病(SBMA);Notch-3関連の皮質梗塞および白質脳症を伴う常染色体優性遺伝性脳動脈症(CADASIL);SCN1AおよびSCN1Bが関連する発作障害;アルパーズ・フッテンロッハー症候群、POLG関連感覚性運動失調性神経障害、構音障害および眼麻痺、およびミトコンドリアDNA欠失を伴う常染色体優性および劣性進行性外眼筋麻痺を含むポリメラーゼG関連障害;X連鎖副腎低形成;X連鎖無ガンマグロブリン血症;ファブリー病;ならびにウィルソン病。
【0040】
全てのこれらの疾患において、タンパク質、例えば酵素が欠損しているが、それは本発明のDNA分子から転写されたRNAでの処置によって処置され、欠損遺伝子にコードされるタンパク質またはその機能的断片が利用可能となり得る。転写物補充療法/酸素補充療法は、根底にある遺伝子欠損に影響を与えず、患者に欠乏している酵素の濃度を高める。例として、ポンペ病では、転写物補充療法/酵素補充療法により、欠乏しているリソソーム酵素酸アルファ-グルコシダーゼ(GAA)が補充される。
【0041】
したがって、本発明のモジュール(a)の「その5´末端に開始コドンを含み、ポリペプチドをコードするコード領域」によってコードされ得るタンパク質の非限定的例は、エリスロポエチン(EPO)、成長ホルモン(ソマトトロピン、hGH)、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)、GM-SCF、G-CSF、MPS、タンパク質C、ヘプシジン、ABCA3およびサーファクタントタンパク質Bなどの成長因子である。本発明のRNAで処置可能な疾患のさらなる例は、血友病A/B、ファブリー病、CGD、ADAMTS13、ハーラー病、X染色体媒介性A-γ-グロブリン血症、アデノシンデアミナーゼ関連免疫不全症およびSP-Bと関連する新生児の呼吸窮迫症候群である。特に好適には、本発明のDNA分子の「その5´末端に開始コドンを含み、ポリペプチドをコードするコード領域」は、サーファクタントタンパク質B(SP-B)またはエリスロポエチンの配列を含有する。本発明のDNA分子の「その5´末端に開始コドンを含み、ポリペプチドをコードするコード領域」によってコードされ得るタンパク質のさらなる例は、ヒト成長ホルモンhGH、BMP-2または血管新生因子などの成長因子である。
【0042】
あるいは、核酸は、全長抗体またはより小さい抗体(例えば、重鎖および軽鎖の両方)をコードして、対象に免疫を付与し得る。別の実施形態では、「その5´末端に開始コドンを含み、ポリペプチドをコードするコード領域」は、機能的なモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体をコードし得、これは、生物学的標的(例えば、腫瘍壊死因子などの刺激性サイトカイン)を標的とするおよび/または不活性化するために有用であり得る。同様に、「その5´末端に開始コドンを含み、ポリペプチドをコードするコード領域」は、例えば、膜性増殖性糸球体腎炎II型もしくは急性溶血性尿毒症症候群の処置に有用な機能性抗ネフローゼ因子抗体をコードする場合もあるし、がんなどの抗血管内皮成長因子(VEGF)媒介性疾患の治療に有用なVEGF抗体をコードする場合もある。
【0043】
モジュール(a)、つまり「その5´末端に開始コドンを含み、ポリペプチドをコード
するコード領域」は、ゲノム編集技術において使用され得るポリペプチドまたはタンパク質をコードするコード領域であり得る。ゲノム編集は、ヌクレアーゼを使用して生物のゲノムにDNAを挿入し、欠落させ、または置換する遺伝子工学の一種である。これらのヌクレアーゼは、ゲノムの所望の位置に部位特異的二本鎖切断(DSB)を生じさせる。誘導された二本鎖切断は、非相同末端結合または相同組換えによって修復され、ゲノムに標
的変異をもたらし、それによりゲノムを「編集する」。異なるポリペプチドまたはタンパク質を利用する多数のゲノム編集システム、つまり、例えばCRISPR-Casシステム、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)および転写活性化因子様エフェクターベースヌクレアーゼ(TALEN)が当該技術分野で既知である。ゲノム工学の方法は、Biotechnology, 2013, 31 (7), 397-405に概説されている。
【0044】
したがって、好適な実施形態では、「その5´末端に開始コドンを含み、ポリペプチドをコードするコード領域」は、Cas(CRISPR関連タンパク質)タンパク質ファミリーのポリペプチドまたはタンパク質、好ましくはCas9(CRISPR関連タンパク質9)をコードするデゾキシリボヌクレオチド配列を含有する。Casタンパク質ファミリーのタンパク質、好適にはCas9は、CRISPR/Cas9をベースにした方法および/またはCRISPR/Cas9ゲノム編集技術において使用され得る。ゲノムの編集、制御および標的化のためのCRISPR-Casシステムは、Nat. Biotechnol., 2014, 32(4):347-355に概説されている。
【0045】
別の好適な実施形態では、「その5´末端に開始コドンを含み、ポリペプチドをコードするコード領域」は、メガヌクレアーゼをコードするデゾキシリボヌクレオチド配列を含有する。メガヌクレアーゼは、「従来の」エンドデオキシリボヌクレアーゼとは対照的に、大きい認識部位(例えば、12~40塩基対の二本鎖DNA配列)を認識するエンドデオキシリボヌクレアーゼである。結果として、それぞれの部位は、数回のみ、好適には1回のみ、任意の所与のゲノムに生じる。そのため、メガヌクレアーゼは、最も特異的な天然に存在する制限酵素であると考えられ、したがって、ゲノム編集技術における適切なツールである。
【0046】
別の好ましい実施形態では、「その5´末端に開始コドンを含み、ポリペプチドをコードするコード領域」は、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)をコードするデゾキシリボヌクレオチド配列を含有する。ZFNは、ジンクフィンガーDNA結合ドメインをDNA切断ドメインに融合することによって生成される人工制限酵素である。ジンクフィンガードメインを操作して、特定の所望のDNA配列を標的することが可能であり、これによりジンクフィンガーヌクレアーゼは、複雑なゲノム内の特有の配列を標的することが可能になる。内因性DNA修復機構を利用することにより、ZFNを使用して高等生物のゲノムを正確に改変することができ、そのため、ZFNはゲノム編集技術に適したツールである。
【0047】
別の好適な実施形態では、「その5´末端に開始コドンを含み、ポリペプチドをコードするコード領域」は、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)をコードするデゾキシリボヌクレオチド配列を含有する。TALENは、DNAの特定の配列を切断するように操作することが可能な制限酵素である。TALENは、TALエフェクターDNA結合ドメインがヌクレアーゼのDNA切断ドメインに融合している融合タンパク質である。転写活性化因子様エフェクター(TALE)を操作して、実際に任意の所望のDNA配列に結合させることが可能である。したがって、ヌクレアーゼと組み合わせた場合、特定の所望の場所でDNAを切断することが可能である。
【0048】
本発明のDNAモジュールは、第2のモジュール(b)として、コード配列のすぐ上流に位置する配列を含む。
【0049】
より具体的には、本発明のDNAモジュールは、前記コード配列のすぐ上流にモジュール(b)を含み、前記モジュール(b)は、以下の(b1)および(b2)からなる群から選択される配列であり、
(b1)は、R-CGCCACC(SEQ ID NO:1)か;または、
前記配列において、SEQ ID NO:1の位置6のCがAに置換され、SEQ ID
NO:1の位置7のCがGに置換され;および/もしくはSEQ ID NO:1の位置5のAがGに置換されている配列であり;
(b2)は、R-CNGCCACC(SEQ ID NO:2)であって、SEQ
ID NO:2の位置2のヌクレオチドNが、T、G、C、もしくはAから成る群から選択されるヌクレオチドである、配列か;または、
前記配列において、SEQ ID NO:2の位置7のCがAに置換され、SEQ ID
NO:2の位置8のCがGに置換され;および/もしくはSEQ ID NO:2の位置6のAがGに置換されている配列であり、
は、DNA依存性RNAポリメラーゼにより認識されるプロモーターである。
【0050】
本明細書の上記の項目(b)で定義した配列は、上記の特定の配列に特に限定されるわけではなく、斯かる配列と比較してヌクレオチド付加を示す配列とも関連し、前記付加ヌクレオチドは、上記配列のRの5´末端に付加され得る。付加ヌクレオチドには、最大0(変化なし)、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10ヌクレオチドの、好適には、最大20ヌクレオチドのポリヌクレオチド鎖が含まれる。より好適には、11、12、13、14、15、16、18、または19のヌクレオチドが5´末端に付加される。さらにより好適には、最大30ヌクレオチドが5´末端に付加される。
【0051】
プロモーターRの上流のヌクレオチド付加が、本発明のUTRの上記機能的特性を変えることはないため、ヌクレオチドの付加の長さは、最大で40、50、60、70、80、90、またはさらには100ヌクレオチド、またはさらには、最大で200、300、400、もしくは500ヌクレオチドでもあり得る。
【0052】
上記のように、二本鎖DNA分子は、2つの逆平行鎖を含み、一方の鎖は、その配列が、タンパク質に翻訳されるメッセンジャーRNAコピーの配列と同じであれば、「センス」鎖と呼ばれる。反対の、相補鎖の配列は、「アンチセンス」配列と呼ばれる。したがって、本発明のDNA分子は、上記エレメント(a)および(b)を有する一本の鎖を含む、mRNAに対応する上記DNA分子に関するだけでなく、相補鎖、つまり、mRNAに転写され得るアンチセンス鎖を含むDNA分子にも関する。本発明のDNA分子のこの相補鎖は、塩基対合ルールを与えられると容易に決定することが可能であるアンチセンス鎖を参照することにより、定義される。
【0053】
本発明のDNA分子は、また、モジュール(b)内に、DNA依存性RNAポリメラーゼにより認識されるプロモーターRを含む。好適には、前記プロモーターRは、項目(b1)または(b2)で定義した残りの配列に直接的に、つまり、任意の介在ヌクレオチドの発生なしに、結合する。
【0054】
DNA依存性RNAポリメラーゼにより認識されるプロモーターRの性質は、特に限定されない。対応するDNA依存性RNAポリメラーゼがそれぞれの配列を認識することが可能である限り、任意のプロモーター(およびその変異体)を使用することが可能である。多数のRNAポリメラーゼ(DNA依存性RNAポリメラーゼとしても知られ、しばしば、RNAPまたはRNApolと省略される)が、当技術分野で既知である。これらの酵素は、一次転写物RNAを生成することが可能である。上記で概説したように、DNA依存性RNAポリメラーゼは、転写と呼ばれるプロセスにおいて、DNAを鋳型として使用して、RNA鎖を合成することが可能である。DNA依存性RNAポリメラーゼは、プロモーターとして知られる特定のDNA配列において、転写を開始する。次に、DNA依存性RNAポリメラーゼは、鋳型DNA鎖に対し相補的なRNA鎖を生成する。RNA鎖にヌクレオチドを付加するプロセスは、伸長反応として知られている。つまり、本発明の文脈では、用語「認識する」は、好適には、DNA依存性RNAポリメラーゼが、その
対応するプロモーター配列Rを特異的に検出/結合することが可能であることだけを意味するわけではない。この用語は、また、DNA依存性RNAポリメラーゼが転写を開始し、次に、伸長反応時にRNA分子を生成できることも指す。
【0055】
当業者は、当技術分野で既知の方法により、所与のDNA依存性RNAポリメラーゼが、それぞれのプロモーターを認識できるか否かを決定することが可能である。さらに、タンパク質/DNA相互作用を評価する周知の方法を使用することにより、所与のDNA依存性RNAポリメラーゼの、対応する(未知の)プロモーター配列Rを特定することが可能であり、逆もまた同じである。
【0056】
したがって、DNA依存性RNAポリメラーゼの、そのプロモーターRを認識/結合する能力、および、好適には、転写を開始する能力は、例えばJournal of Biological Chemistry, 1993, 268(26):19299-19304 に記載されているような当技術分野で既知の方法
により決定され得、一方、多数のDNA依存性RNAポリメラーゼの発見が、Journal of
Biological Chemistry, 2005, 280(52): 42477-42485)に概説されている。
【0057】
好適な実施形態では、DNA依存性RNAポリメラーゼにより認識されるプロモーターRは、バクテリオファージプロモーターである。
【0058】
単なる例として、当技術分野では、T7DNA依存性RNAポリメラーゼは、配列TAATACGACTCACTATAGGGAGA(SEQ ID NO:3)を認識し、T3DNA依存性RNAポリメラーゼは配列AATTAACCCTCACTAAAGGGAGA(SEQ ID NO:4)を認識し、SP6DNA依存性RNAポリメラーゼは、配列ATTTAGGTGACACTATAGAAG(SEQ ID NO:5)を認識し、K11DNA依存性RNAポリメラーゼは、配列AATTAGGGCACACTATAGGGA(SEQ ID NO:6)を認識することが知られている。しかしながら、これらの例は、本発明がこれらのプロモーターおよび対応するDNA依存性RNAポリメラーゼに限定されるわけではないことから、単なる例示を目的として提供するものである。実際には、対応するDNA依存性RNAポリメラーゼ、好適にはバクテリオファージDNA依存性RNAポリメラーゼがそれぞれの配列を認識することが可能である限り、任意のプロモーター(およびその変異体)を使用することが可能である。
【0059】
好適な実施形態では、Rは:
(i)TAATACGACTCACTATAGGGAGA(SEQ ID NO:3)、または、SEQ ID NO:3と比較して1~6個の置換を示し、T7DNA依存性RNAポリメラーゼにより認識される配列;
(ii)AATTAACCCTCACTAAAGGGAGA(SEQ ID NO:4)、または、SEQ ID NO:4と比較し1~6個の置換を示し、T3DNA依存性RNAポリメラーゼにより認識される配列;
(iii)ATTTAGGTGACACTATAGAAG(SEQ ID NO:5)、またはSEQ ID NO:5と比較して1~6個の置換を示し、SP6DNA依存性RNAポリメラーゼにより認識される配列;および、
(iv)AATTAGGGCACACTATAGGGA(SEQ ID NO:6)、またはSEQ ID NO:6と比較して1~6個の置換を示し、K11DNA依存性RNAポリメラーゼにより認識される配列からなる群から選択される。
【0060】
別の好適な実施形態では、配列は、1~3個、4個、または5個の置換を示す配列であり得る。ただし、対応する配列がなお、T7、T3、SP6、およびK11DNA依存性RNAポリメラーゼそれぞれにより認識され得る場合に限る。さらに好適な実施形態では、配列は、1~2個の置換を示す配列であり得る。ただし、対応する配列がなお、T7、
T3、SP6、およびK11DNA依存性RNAポリメラーゼそれぞれにより認識され得る場合に限る。最も好適には、配列は、1個の置換を示す配列であり得る。ただし、対応する配列がなお、T7、T3、SP6、およびK11DNA依存性RNAポリメラーゼそれぞれにより認識され得る場合に限る。
【0061】
他の実施形態では、DNA依存性RNAポリメラーゼにより認識されるプロモーター配列Rは、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、またはSEQ ID NO:6の配列、または、それらと比較して1~6個の置換を示す配列の何れかに特に限定されるわけではなく、1~7個、8個、9個、10個、11個、または12個の置換を示す配列でもよい。ただし、対応する配列が、T7、T3,SP6、およびK11DNA依存性RNAポリメラーゼそれぞれにより、なお認識され得る場合に限る。
【0062】
好適な実施形態では、TAATACGACTCACTATAGGGAGA(SEQ ID NO:3)、AATTAACCCTCACTAAAGGGAGA(SEQ ID NO:4)、ATTTAGGTGACACTATAGAAG(SEQ ID NO:5)、またはAATTAGGGCACACTATAGGGA(SEQ ID NO:6)の配列における上記置換から、SEQ ID NO:3~6の上記配列の位置11~12での5ヌクレオチド「CACTA」での置換は除外される、これは、これら5つのヌクレオチドが4つの配列間で保存されるためである。
【0063】
別の好適な実施形態では、SEQ ID NO:3~6の配列における上記置換から、SEQ ID NO:3~6の上記配列の位置4におけるヌクレオチド「T」の置換は除外される。これは、このヌクレオチドが、4つの配列間で保存されるためである。
【0064】
別の好適な実施形態では、SEQ ID NO:3~6の配列における上記置換から、SEQ ID NO:3~6の上記配列の位置5におけるヌクレオチド「A」の置換は除外される。これは、このヌクレオチドが、4つの配列間で保存されるためである。
【0065】
別の好適な実施形態では、SEQ ID NO:3~6の配列における上記置換から、SEQ ID NO:3~6の上記配列の位置18におけるヌクレオチド「G」の置換は除外される。これは、このヌクレオチドが、4つの配列間で保存されるためである。
【0066】
T7、T3、SP6、およびK11DNA依存性RNAポリメラーゼの、そのプロモーターRを認識/結合する能力は、上記で概略したように、当技術分野で既知の方法により決定され得る。
【0067】
より好適な実施形態では、本発明のDNA分子は、前記コード配列のすぐ上流にモジュール(b1)を含むDNA分子であって、前記モジュール(b1)において、SEQ ID NO:2の位置2のヌクレオチドNはT、G、またはCからなる群から選択されるヌクレオチドであり、ヌクレオチドNはAではない、DNA分子である。
【0068】
さらにより好適な実施形態では、SEQ ID NO:2の位置の前記ヌクレオチドNはTである。
【0069】
好適な実施形態では、本発明のDNA分子は、開始コドンの直ぐ下流に続くヌクレオチドがヌクレオチドGではない、DNA分子である。別の好適な実施形態では、本発明のDNA分子は、開始コドンのすぐ下流に続くヌクレオチドがA、T、およびCからなる群から選択される、ヌクレオチドである、DNA分子である。
【0070】
さらにより好適な実施形態では、本発明のDNA分子は、上記で定義するモジュール(b1)を含むDNA分子であって、前記モジュール(b1)は、SEQ ID NO:1の位置6のCがAに置換され、SEQ ID NO:1の位置7のCがGに置換され;および/またはSEQ ID NO:1の位置5のAがGに置換されており、開始コドンの直ぐ下流に続くヌクレオチドがA、T、およびCからなる群から選択されるヌクレオチドである、配列である、DNA分子である。
【0071】
別のさらにより好適な実施形態では、本発明のDNA分子は、上記で定義するモジュール(b2)を含むDNA分子であって、前記モジュール(b2)は、SEQ ID NO:2の位置7のCがAに置換され、SEQ ID NO:2の位置8のCがGに置換され;および/またはSEQ ID NO:2の位置6のAがGに置換されており、開始コドンの直ぐ下流に続くヌクレオチドがA、T、およびCからなる群から選択されるヌクレオチドである、配列である、DNA分子である。
【0072】
分子生物学および遺伝学において、上流および下流は両方とも、DNA分子の相対的位置を指す。本発明の文脈において、上流はDNA分子のセンス鎖の5´末端に向かい、下流は分子の3´末端に向かう。
【0073】
したがって、本発明において、上記の項目(b)で定義する配列は、項目(a)のコード領域のすぐ上流、より具体的には、コード領域の開始コドンのすぐ上流に位置する。したがって、本文脈における「すぐ上流」は、項目(b)で定義する配列と、開始コドンで始まるコード配列の間にさらなるヌクレオチドがないことを意味する。したがって、開始コードで始まるコード領域は、本明細書の上記の項目(b)で定義する配列と直接隣接している。
【0074】
本発明のDNA分子は、当業者に既知の方法により、組換え的に(例えば、in vivoもしくはin vitro系において)または合成的に(例えば、PCR反応によりもしくは化学反応において)、生成/合成することができる。
【0075】
本発明のDNA分子は、好適には、組換え核酸分子であり、つまり、本発明のDNA分子は、この組み合わせでは天然には生じないエレメントからなる。本発明の核酸分子は、合成または半合成であり得る。
【0076】
DNA分子は、モジュール(a)および(b)(上記の項目(a)および(b)それぞれで定義される)の融合DNA配列の形態で、つまり、前記モジュールを含有する少なくとも2つのヌクレオチド配列を組み合わせることによって形成される(融合)DNA分子の形態で存在し得る。典型的には、以下でさらにより詳細に説明するように、これは、RNA分子への転写を可能にする発現ベクターにcDNAをクローン化することにより達成することが可能である。したがって、本発明のDNA分子は、融合DNA配列、つまり、あるヌクレオチドから別のヌクレオチドの3´炭素に結合したリン酸基を介して2つ以上のポリヌクレオチドを連結し、あるモジュールの各末端と、別のモジュールの末端の間にホスホジエステル結合を形成することにより形成されるキメラ分子であり得る。このように、前記少なくとも2つのモジュールを含有するDNA分子は、DNA分子の形態で連結し合う。斯かる組換えDNA分子は、フレームにおいていったんクローニングされると、次に、前記タンパク質、ポリペプチド、または酵素分子をコードする、それの対応するRNA核酸配列に転写され得る。
【0077】
本発明のDNA分子は、標準的な分子生物学的技法により、ベクター、好適には発現ベクターに導入することができる(例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning, A laboratory manual, 2nd Ed, 1989を参照)。本発明の意味では、「発現ベクター」または「
クローニングベクター」などの用語「ベクター」は、染色体DNAから独立して細胞内で自己複製し、遺伝物質を細胞に運ぶ媒体として使用され、細胞内で遺伝物質は複製されおよび/または発現する(つまり、RNAに転写され、アミノ酸配列に翻訳される)、環状二本鎖DNAユニットとして理解される。外来性DNAを含有するベクターを、組換えDNAという。ベクター自体は、概して、典型的には、挿入物(例えば、本発明の核酸分子/DNA分子)と、ベクターの「骨格」として機能するより大きい配列からなるDNA配列である。本発明の意味でのプラスミドは、細菌で最も頻繁に見られ、細胞間で遺伝子を転移する組換えDNA研究に使用され、それ自体は本発明の意味で使用される「ベクター」の亜集団である。
【0078】
本発明のDNA分子にさらなる制御配列が付加され得ることは、当業者にとって明らかである。例えば、誘導性発現を可能にする転写エンハンサーおよび/または配列を利用することができる。適切な誘導系は、例えば、Gossen and Bujard, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89 (1992), 5547-5551)およびGossen, Trends Biotech. 12 (1994), 58-62等に記
載されるようなテトラサイクリン制御遺伝子発現、またはCrook, EMBO J. 8 (1989), 513-519等に記載されるようなデキサメタゾン誘導遺伝子発現系である。
【0079】
本発明は、また、本発明のDNA分子を含むベクター、好適には発現ベクターにも関する。
【0080】
本発明のベクターは、例えば、プラスミド、コスミド、ウイルス、バクテリオファージまたは例えば遺伝子工学において従来使用されている別のベクターであり得、適切な宿主細胞中でおよび適切な条件下で前記ベクターの選択を可能にするマーカー遺伝子などのさらなる遺伝子を含んでいてもよい。
【0081】
本発明のDNA分子は、好適には、また、ポリAテールの付加により転写の終了と転写物の安定化を確実にするポリAシグナルも含有する。
【0082】
本発明のDNA分子とベクターは、細胞への直接導入、または、リポソーム、ウイルスベクター(例えば、アデノウイルス、レトロウイルス)エレクトロポレーション、バリスティック(例えば、遺伝子銃)、もしくは他の送達系を介した導入向けに設計することができる。さらに、バキュロウイルス系を、本発明の核酸分子の真核生物発現系として使用することが可能である。
【0083】
本発明は、本発明のベクターを含む宿主細胞にも関する。したがって、本発明は、本発明のベクターを遺伝子導入または形質転換した宿主または本発明のベクターを担持する非ヒト宿主、つまり、本発明のDNA分子または斯かるDNA分子を含むベクターで遺伝子組み換えした宿主細胞または宿主に関する。用語「遺伝子組み換えされた」は、宿主細胞または宿主が、その天然ゲノムに加えて、細胞もしくは宿主またはその先祖/親の1つに導入された本発明のDNA分子またはベクターを含むことを意味する。DNA分子またはベクターは、遺伝子組み換えされた宿主細胞または宿主中に、ゲノムの外側の独立した分子として、好ましくは複製可能な分子として存在する場合もあるし、宿主細胞もしくは宿主のゲノムに安定的に組み込まれる場合もある。本発明のベクターを用いた宿主細胞の形質転換は、例えば、Sambrook and Russell (2001), Molecular Cloning: A Laboratory Manual, CSH Press, Cold Spring Harbor, NY, USA; Methods in Yeast Genetics, A Laboratory Course Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1990に記載されるよう
な標準的方法によって行うことが可能である。宿主細胞は、特にpH値、温度、塩濃度、通気、抗生物質、ビタミン、微量元素等に関して、使用される特定の宿主細胞の要件を満たす栄養培地で培養される。
【0084】
本発明の宿主細胞は、任意の原核細胞または真核細胞であり得る。適切な原核細胞は、大腸菌または枯草菌のような、クローニングに概して使用されるものである。さらに、真核細胞には、例えば、真菌細胞または動物細胞が含まれる。適切な真菌細胞の例は、酵母細胞、好ましくはサッカロミセス属のもの、最も好ましくはサッカロミセス・セレビシエ種のものである。適切な動物細胞は、例えば、昆虫細胞、脊椎動物細胞、好ましくは哺乳動物細胞、例えば、HEK293、NSO、CHO、COS-7、MDCK、U2-OSHela、NIH3T3、MOLT-4、Jurkat、PC-12、PC-3、IMR、NT2N、Sk-n-sh、CaSki、C33Aなどである。当該技術分野で既知のさらに適切な細胞株は、例えば、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(DSMZ)またはAmerican Type Culture Collection(ATCC)のような
細胞株保管所から入手可能である。本発明によれば、初代細胞/細胞培養物は宿主細胞として機能し得ることがさらに想定される。前記細胞は、特に、昆虫(ショウジョウバエ種またはゴキブリ種の昆虫のような)または哺乳動物(ヒト、ブタ、マウスもしくはラットのような)に由来する。前記宿主細胞は、神経芽細胞腫細胞株のような細胞株からの細胞および/またはそれに由来する細胞も含み得る。上記の初代細胞は、当技術分野で周知であり、とりわけ、初代星状膠細胞、(混合)脊髄培養物または海馬培養物が含まれる。
【0085】
本発明は、本発明のDNA分子、本発明のベクターまたは本発明の宿主細胞を含む組成物にも関する。
【0086】
第2態様では、本発明は、
(a)その5´末端に開始コドンを含み、ポリペプチドをコードするコード領域と;
(b)前記コード配列のすぐ上流にある、以下の(b1)および(b2)からなる群から選択されるUTRとを含むRNA分子に関し、
(b1)は、配列R-CGCCACC(SEQ ID NO:1)のUTRか、または
前記UTR配列において、SEQ ID NO:1の位置6のCがAに置換され、SEQ
ID NO:1の位置7のCがGに置換され;および/もしくはSEQ ID NO:1の位置5のAがGに置換されている配列のUTRであり;
(b2)は、配列R-CNGCCACC(SEQ ID NO:2)であって、SEQ ID NO:2の位置2のヌクレオチドNがU、G、C、もしくはAからなる群から選択されるヌクレオチドである配列のUTRか、または前記UTR配列において、SEQ ID NO:2の位置7のCがAに置換され、SEQ ID NO:2の位置8のCがGに置換され;および/もしくはSEQ ID NO:2の位置6のAがGに置換されている配列のUTRであり、
は、DNA依存性RNAポリメラーゼがRNA合成を開始するヌクレオチドで始まるプロモーター領域の一部に相当するRNA配列である。
【0087】
本発明に従って使用するリボ核酸(RNA)分子は、G、A、U、およびCと呼ばれるヌクレオチドの鎖として集合したポリマー分子に関する。RNAの各ヌクレオチドは、1´~5´の番号が付けられた炭素を有するリボース糖を含有する。窒素塩基は、概して、アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、またはウラシル(U)の1´位置に結合する。ポリマーRNA分子では、リン酸基は、1つのリボースの3´位置および次の5´位置に結合する。したがって、ポリマーRNA分子のヌクレオチドは互いに共有結合し、一方のヌクレオチドからのリン酸基が、後続のヌクレオチドの3´炭素に結合し、それによってホスホジエステル結合を形成する。したがって、RNA鎖は5´末端および3´末端を有し、そのためリボース環上の炭素にちなんで命名される。慣例により、上流および下流は、RNA転写が起きる5´から3´方向に関する。好適には、RNA分子はメッセンジャーRNA(mRNA)分子である。mRNAは、遺伝情報をDNAから、遺伝子発現のタンパク質生成物のアミノ酸配列が特定されるリボソームへ伝達する大きなRN
A分子ファミリーである。RNAポリメラーゼによる一次転写物mRNA(プレmRNAとして知られる)の転写に続き、プロセシングされた成熟mRNAは、分子生物学のセントラルドグマに要約されるように、アミノ酸のポリマー:タンパク質に翻訳される。DNAの場合と同様に、mRNAの遺伝情報はヌクレオチド配列内にあり、それらは3つの塩基からそれぞれなるコドンに配列される。各コドンは、タンパク質合成を終結させる終止コドンを除き、特定のアミノ酸をコードする。
【0088】
本発明のRNA分子は、上記の項目(a)および(b)で定義した2つの主要モジュールを含む。さらに、本発明のRNA分子は、好適には、その3´末端にUTRを含む。したがって、本発明のRNA分子は、その構造に関して、天然に存在する「正常な」mRNA分子に似ており、コード領域ならびに(5´および3´)非翻訳領域(UTR)ならびに任意選択的にポリAテールを宿す。
【0089】
本発明に従って使用される用語「その5´末端に開始コドンを含むコード領域」は、遺伝コードによって提供される情報に従いリボソームによって解読され、タンパク質に翻訳されるコドンから構成される配列に関する。コード領域は、一般に、その5´末端の開始コドンで始まり、終止コドンで終わる。概して、開始コドンはAUGトリプレットであり、終止コドンはUAA、UAG、またはUGAである。タンパク質をコードしていることに加え、コード領域部分は、エキソンスプライシングエンハンサーまたはエキソンスプライシングサイレンサーとして、プレmRNAの制御配列として機能し得る。本発明に従って使用するポリペプチドまたはタンパク質をコードする遺伝子のコード領域は、また、コード配列またはCDS(coding DNA sequenceに由来)としても知られており、遺伝子の
DNAまたはRNAの一部であり、エキソンからなり、ポリペプチドまたはタンパク質をコードする。mRNAのコード領域は、エキソンの一部でもある5´非翻訳領域(5´UTR)と3´非翻訳領域(3´UTR)に隣接している。さらに、mRNA分子は、いわゆる5´キャップとポリAテールをさらに含み得る。5´キャップ、5´UTR、3´UTR、およびポリAテールは、タンパク質に翻訳されないmRNA分子の領域である。
【0090】
本発明に従って用いる場合、用語「非翻訳領域」または「UTR」は、翻訳されない開始コドンの上流および終止コドン下流のmRNA区域に関し、そのため、それぞれ、5プライム非翻訳領域(5´UTR)および3プライム非翻訳領域(3´UTR)と称される。これらの領域はコード領域と共に転写され、したがって、該領域は成熟mRNAに存在することからエキソンである。
【0091】
本発明で使用する場合、3´非翻訳領域(3´UTR)は、翻訳終止コドンのすぐ後に続くメッセンジャーRNA(mRNA)区域に関する。3´UTRは、ポリアデニル化およびmRNAの安定性に影響を与えることが知られている3´非翻訳領域内に、調節領域を含み得る。多くの3´UTRは、また、AUリッチエレメント(ARE)を含有する。さらに、3´UTRは、好適には、ポリ(A)テールと呼ばれる数百のアデニン残基をmRNA転写物の末端に付加することを指示する配列AAUAAAを含有し得る。
【0092】
本発明で使用する場合、5´非翻訳領域(5´UTR)(リーダー配列またはリーダーRNAとしても知られている)は、開始コドンのすぐ上流にあるmRNA領域である。5´UTRは転写開始部位で始まり、コーディング領域の開始コドン(通常はAUG)の1ヌクレオチド(nt)前で終わる。真核生物では、5´UTRの長さは概して100~数千ヌクレオチド長であるが、時には、より短いUTRが真核生物で生じる場合がある。
【0093】
本発明では、最小UTR配列を提供することが本発明の目的であることから、5´UTRは極めて短い。
【0094】
本発明のRNA分子は、また、ポリAテールを含有し得る。ポリAテールは、ポリアデニル化と呼ばれるプロセスによりプレmRNAの3´末端に付加される、アデニンヌクレオチド(しばしば数百)の長い配列である。このテールは、核外輸送および翻訳を促進し、mRNAを分解から守る。ポリアデニル化とは、ポリ(A)テールをメッセンジャーRNAへ付加することである。ポリ(A)テールは、多数のアデノシン一リン酸からなり;言い換えると、ポリ(A)テールは、アデニン塩基のみを有する一続きのRNAである。真核生物では、ポリアデニル化は、翻訳用の成熟メッセンジャーRNA(mRNA)を生成するプロセスの一部である。
【0095】
RNA分子の一モジュール、つまり、「その5´末端に開始コドンを含み、ポリペプチドをコードするコード領域」(モジュール(a))は、特に限定されず、所与の細胞に発現する任意の所望のコード領域であり得る。用語「その5´末端に開始コドンを含み、ポリペプチドをコードするコード領域」(モジュール(a))の好ましい実施形態に関しては、本発明のDNAの文脈において上で述べたのと同じものが、本発明のRNA分子に準用される。
【0096】
本発明のRNA分子は、前記コード配列のすぐ上流にモジュール(b)を含み、前記モジュール(b)は、以下の(b1)および(b2)からなる群から選択されるUTRであり:
(b1)は、配列R-CGCCACC(SEQ ID NO:1)のUTRか、または、
前記UTR配列において、SEQ ID NO:1の位置6のCがAにより置換され、SEQ ID NO:の位置7のCがGに置換され;および/もしくはSEQ ID NO:1の位置5のAがGに置換されている配列のUTRであり;
(b2)は、配列R-CNGCCACC(SEQ ID NO:2)であって、SEQ ID NO:2の位置2のヌクレオチドNがU、G、C、もしくはAからなる群から選択されるヌクレオチドである配列のUTRか、または前記UTR配列において、SEQ ID NO:2の位置7のCがAに置換され、SEQ ID NO:2の位置8のCがGに置換され;および/もしくはSEQ ID NO:2の位置6のAがGに置換されている配列のUTRであり
は、DNA依存性RNAポリメラーゼがRNA合成を開始するヌクレオチドで始まるプロモーター領域の一部に相当するRNA配列である。
【0097】
の性質は特に限定されない。DNA依存性RNAポリメラーゼがRNA合成を開始するヌクレオチドで始まるプロモーター領域の一部に相当する任意のRNA配列を、使用することが可能である。当業者は、DNA依存性RNAポリメラーゼがRNA合成を開始するヌクレオチドで始まるプロモーター領域の一部を、容易に決定できる立場にある。このRNA配列Rは、転写されるプロモーターの一部に相当するプロモーター配列であり、つまり、該配列は、いったん転写されると、転写物に実際に存在する。
【0098】
好適な実施形態では、プロモーターRは、バクテリオファージ由来のDNA依存性RNAポリメラーゼがRNA合成を開始するヌクレオチドで始まるプロモーター領域の一部に相当するRNA配列である。
【0099】
好適な実施形態では、プロモーターRは、T7DNA依存性RNAポリメラーゼ、T3DNA依存性RNAポリメラーゼ、SP6DNA依存性RNAポリメラーゼ、またはK11DNA依存性RNAポリメラーゼがRNA合成を開始するヌクレオチドで始まるプロモーター領域の一部に相当するRNA配列である。
【0100】
これを例示するため、非限定的例として、Rは、以下のTAATACGACTCAC
TATAGGGAGA(SEQ ID NO:3;つまり、T7DNA依存性RNAポリメラーゼにより認識されるプロモーター)、AATTAACCCTCACTAAAGGGAGA(SEQ ID NO:4;つまり、T3DNA依存性RNAポリメラーゼにより認識されるプロモーター)、ATTTAGGTGACACTATAGAAG(SEQ ID NO:5;つまり、SP6DNA依存性RNAポリメラーゼにより認識されるプロモーター)、およびAATTAGGGCACACTATAGGGA(SEQ ID NO:6;つまり、K11DNA依存性RNAポリメラーゼにより認識されるプロモーター)というプロモーター配列の、下線をひいた配列である。下線を引いた配列は、DNA依存性RNAポリメラーゼがRNA合成を開始する各プロモーターの一部に相当し、従って、該配列は、いったん転写されると、RNA分子に(つまり、転写物に)実際に存在する。
【0101】
配列R-CGCCACC(SEQ ID NO:1)のUTRと比較して、または配列R-CNGCCACC(SEQ ID NO:2)のUTRと比較して、上記置換の何れかを有するUTR配列は、配列R-CGCCACC(SEQ ID NO:1)のUTRを含むRNA分子および配列R-CNGCCACC(SEQ ID NO:2)のUTRを含むRNA分子それぞれと同じかまたは類似した、好適にはより高い翻訳効率を示すRNA分子をもたらし得る。本明細書に記載するUTRを含む所与のRNA分子の翻訳効率は、当技術分野で既知の方法および以下に記載する方法によって、当業者により決定され得る。
【0102】
翻訳効率とは、細胞内でのポリペプチドまたはタンパク質へのmRNA翻訳の速度である。所与のmRNAの翻訳効率は、時間単位当たりで、mRNA当たりで翻訳されるタンパク質またはポリペプチドの数として測定される。翻訳とは、細胞リボソームがタンパク質を生成するプロセスであり、これは当業者に周知である。簡潔に言えば、翻訳では、DNAからの転写によって生成されるメッセンジャーRNA(mRNA)がリボソームによって解読されて、特定のアミノ酸鎖またはポリペプチドもしくはタンパク質が生成される。
【0103】
したがって、上記の置換の何れかを有する修飾UTR配列を宿す所与のRNA分子の翻訳効率は、好適には、同じ所与のRNAで、上記で定義したR-CGCCACC(SEQ ID NO:1)またはR-CNGCCACC(SEQ ID NO:2)それぞれのUTRを有するRNAの翻訳効率と比較して、同じであるか、または高い。したがって、単位時間当たりで、RNA当たりで翻訳される、上記の置換の何れかを有する修飾UTR配列を宿すRNA分子のコード領域によりコードされるタンパク質またはポリペプチドの数は、単位時間当たりで、RNA当たりで翻訳される、上記で定義したR-CGCCACC(SEQ ID NO:1)またはR-CNGCCACC(SEQ ID NO:2)のUTRそれぞれを宿すRNA分子のコード領域によりコードされるタンパク質またはポリペプチドの数と少なくとも同じであるか、または、好適にはそれより多い。
【0104】
本発明の文脈では、翻訳効率は、好適には、ある時点において、細胞中で各タンパク質をコードするmRNAの量に対する、同じ時点で、前記細胞内でタンパク質に翻訳されたmRNAの割合である。したがって、翻訳効率は、ある時点において細胞内でタンパク質に翻訳されたmRNAと、各タンパク質をコードするmRNAの量の商である。両パラメータ、つまり、タンパク質に翻訳されたmRNAと各タンパク質をコードするmRNAの量は、当技術分野で既知の方法により求めることが可能である。非限定的例として、細胞内でタンパク質に翻訳されたmRNAの量は、例えば、フローサイトメトリー(FC)により求めるように求めることが可能である一方、各タンパク質をコードするmRNAの量は、例えば、qPCRにより測定することが可能である。
【0105】
本明細書の上記の項目(b)で定義するUTRは、上記の特定の配列に特に限定される
わけではなく、斯かる配列と比較してヌクレオチド付加を示す配列を含むUTR配列とも関連し、前記付加ヌクレオチドは、上記UTRの5´末端に付加され得る。付加ヌクレオチドは、最大0(変化なし)、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10ヌクレオチドの、好適には、最大20ヌクレオチドのポリヌクレオチド鎖を含む。より好適には、11、12、13、14、15、16、17、18、または19ヌクレオチドが5´末端に付加される。さらにより好適には、最大30ヌクレオチドが5´末端に付加される。
【0106】
ヌクレオチドの付加は各UTRの上記機能的特性を変えない可能性が高いという理由に照らして、ヌクレオチドの付加の長さは、これらの配列が、本明細書の項目(b)で定義するUTRと(上記の翻訳効率の点で)同様の機能を有する限り、最大40、50、60、70、80、90、もしくは100ヌクレオチドか、またはさらには、200、300、400、もしくは500ヌクレオチドであってもよい。
【0107】
好適な実施形態では、本明細書の上記の項目(b1)で定義するUTRの最大長さは、11、12、または13ヌクレオチドである。好適には、本明細書の上記の項目(b1)で定義するUTRの最大長さは、RがGGGAGA(SEQ ID NO:7)またはGGGAGA(SEQ ID NO:8)である場合、13ヌクレオチドである。
【0108】
好適には、本明細書の上記の項目(b1)で定義するUTRの最大長さは、RがGAAG(SEQ ID NO:9)またはGGGA(SEQ ID NO:10)である場合、11ヌクレオチドである。
【0109】
別の好適な実施形態では、本明細書の上記の項目(b2)で定義するUTRの最大長さは、12、13、または14ヌクレオチドである。好適には、本明細書の上記の項目(b2)で定義するUTRの最大長さは、RがGGGAGA(SEQ ID NO:7)またはGGGAGA(SEQ ID NO:8)である場合、14ヌクレオチドである。
【0110】
好適には、本明細書の上記の項目(b2)で定義するUTRの最大長さは、RがGAAG(SEQ ID NO:9)またはGGGA(SEQ ID NO:10)である場合、12ヌクレオチドである。
【0111】
上記UTRを含有する本発明のRNA分子は、当業者に既知の方法により、組み換え的に(例えば、in vivoまたはin vitro系で)または合成的に生成/合成することができる。
【0112】
RNAのin vitro転写は、通常、DNA依存性RNAポリメラーゼが結合しRNA合成を開始する、二本鎖プロモーター領域を含有する線形DNA鋳型を要する一方、コード領域は二本鎖である場合も、一本鎖である場合もある。線形DNA鋳型が一本鎖コード領域を含有する場合、コード領域のアンチセンス鎖(つまり、DNA依存性ポリメラーゼにより読み取られる鎖)は鋳型の一部である。共通のDNA依存性RNAポリメラーゼは、T7ポリメラーゼ、T3ポリメラーゼ、SP6ポリメラーゼ、およびK11ポリメラーゼである。その各プロモーターの完全配列はSEQ ID NO:3~6に示す。
【0113】
in vitro転写のための転写鋳型としては、例えば、RNA前駆体から合成されたcDNA鋳型、PCRにより生成された鋳型、化学的に合成されたオリゴヌクレオチド、およびプラスミド構成体が挙げられる。多く広く使用されているプラスミドクローニングベクターには、多数のクローニング部位の各側でファージポリメラーゼプロモーターが位置して、多数のクローニング部位に挿入されたヌクレオチド配列鎖の何れかの転写を可能にする。一般に使用されるクローニングベクターとしては、例えば、Invitrogen社のpCRII、Promega社のpGEM、およびStratagene社のB
luescriptベクターが挙げられる。Ambion社のベクターのpTRIPLEscriptファミリーは、直列した3つのファージポリメラーゼプロモーターを全て(多数のクローニング部位の同じ側に)含有し、3つのポリメラーゼ、SP6、T7、またはT3をいずれも使用可能にする。
【0114】
本発明のRNA分子は、当業者に既知の方法により、in vivo系において組換え的に生成することができる。
【0115】
あるいは、本発明のRNA分子は、in vitro系において、例えば、in vitro転写系を使用して生成することができる。in vitro転写系は、一般に既知であり、通常、RNA分子を「コードしている」DNA配列を含有する精製された線形DNA鋳型を必要とし、前記DNA配列は、適切なプロモーターの制御下にある。さらに、in vitro転写系は、また、一般に、リボヌクレオチド三リン酸、DTTおよびマグネシウムイオンを含む緩衝系、ならびに、DNA配列を本発明の対応するRNA分子にin vitro転写するための酵素活性を提供する適切なRNAポリメラーゼを必要とする。
【0116】
さらに、RNA分子は、例えば、固相支持体および標準技法を使用する自動化ヌクレオチド配列合成装置において、従来の化学合成により、または、個々のDNA配列の化学的合成およびそれに続く該DNA配列のin vitroもしくはin vivo転写により、化学的に合成され得る。
【0117】
上記によれば、本発明は、RNA分子/ポリリボ核酸分子、好適には修飾ポリリボ核酸分子を提供し、前記RNA分子の一モジュール、つまり「その5´末端に開始コドンを含むコード領域」(モジュール(a))は、ポリペプチドをコードする。用語核酸およびポリヌクレオチドは区別なく使用され、ヌクレオチドのポリマーを含む任意の化合物および/または物質を含む。用語ヌクレオチドは、デオキシヌクレオチドおよびリボヌクレオチドを含む。用語リボ核酸およびポリリボヌクレオチドは区別なく使用され、ある実施形態では、ヌクレオチドの50%超がリボヌクレオチドであるヌクレオチドのポリマーを含む任意の化合物および/または物質を含む。ある実施形態では、ポリリボヌクレオチドは、ヌクレオチドの60%、70%、75%、80%、90%超、95%超、99%超または100%がリボヌクレオチドであるヌクレオチドポリマーを含む。1つまたは複数のヌクレオチドが修飾ヌクレオチドであるポリリボヌクレオチドは、修飾ポリリボヌクレオチドと称され得る。しかしながら、用語ポリリボヌクレオチドは、修飾ポリリボヌクレオチドを含み得る。
【0118】
RNA分子/ポリリボヌクレオチドの配列は、例えば、対象の遺伝子の遺伝情報を含む任意の適切な核酸に由来し得る。核酸の例としては、対象の遺伝子を含む任意の細菌または古細菌細胞由来のゲノムDNA、RNA、またはcDNAが挙げられる。ポリヌクレオチドは、変異遺伝子および遺伝子多型を担持する核酸に由来し得る。本発明のRNA分子/ポリリボヌクレオチドは、特に限定されないが、モジュールAとして、所与の細胞で発現する任意の所望のコード領域を含み得る配列を含む。好適な実施形態では、前記配列は、上記で概説した所望のポリペプチド/タンパク質をコードするコード領域であり得る。好適には、上記に従って、RNA分子/ポリリボヌクレオチドは、モジュールAの開始コドンの上流(5´)に位置する非翻訳配列、モジュールAの終止コドンの下流(3´)に位置する非翻訳配列、またはモジュールAの開始コドンの上流(5´)に位置する非翻訳配列とモジュールAの終止コドンの下流(3´)に位置する非翻訳配列の両方をさらに含む。好適な実施形態では、本発明のRNA分子/ポリリボヌクレオチドは、修飾RNA分子/ポリリボヌクレオチドであり得る。
【0119】
4つの古典的リボヌクレオチド、つまり、アデノシン、グアノシン、シチジン、およびウリジンに加えて、これらの核酸塩基の各々の類似体が多数存在する。場合によっては、文献を通しておよび文献中で、これらの類似体、またはこれら類似体の1つまたは複数を含むRNA分子/ポリリボヌクレオチドは、修飾されている(例えば、修飾ヌクレオチドまたは修飾リボヌクレオチド)と言われる。いくつかの類似体は、上記の標準的な核酸塩基とは異なるが、自然界に存在し得る。他の類似体は天然に存在しない。いずれのタイプの類似体についても考える。
【0120】
ある実施形態では、本発明のRNA分子/ポリリボヌクレオチドは、ヌクレオチド類似体を含む(例えば、ポリリボヌクレオチドは、修飾ポリリボヌクレオチドを含む)。例示的なヌクレオチド類似体を以下に提供する(例えば、Uの類似体;Cの類似体;Aの類似体;Gの類似体)。さらに、ある実施形態では、本開示のRNA分子/ポリリボヌクレオチドまたは他の核酸は、ホスホジエステル骨格または核酸塩基間の結合において(付加的または代替的に)修飾を含む場合がある。本開示のRNA分子/ポリリボヌクレオチドの一部または全てを形成することが可能な例示的な核酸には、限定されないが、リボ核酸(RNA)、デオキシリボ核酸(DNA)、トレオース核酸(TNA)、グリコール核酸(GNA)、ペプチド核酸(PNA)、ロックされた核酸(ベータ-D-リボ立体配置を有するLNA、アルファ-L-リボ立体配置を有するアルファ-LNA(LNAのジアステレオマー)、2´-アミノ官能化を有する2´-アミノ-LNA、および2´-アミノ官能化を有する2´-アミノ-アルファ-LNAを含むLNA)またはそれらのハイブリッドが挙げられる。
【0121】
ある実施形態では、修飾は、1つまたは複数のヌクレオシドまたは核酸/ポリヌクレオチド分子の骨格上にあり得る。ある実施形態では、修飾は、ヌクレオシドおよび骨格結合の両方にあり得る。ある実施形態では、修飾は、in vitroでポリヌクレオチド内に導入され得る。ある実施形態では、修飾リボヌクレオチド/ヌクレオチドは、また、古典的な/天然のリボヌクレオチド/ヌクレオチドの共有結合修飾によって、転写後に合成され得る。
【0122】
本発明のRNA分子/ポリリボヌクレオチドは、修飾RNA分子/ポリリボヌクレオチドであり得、ある実施形態では、プリンの類似体および/またはピリミジンの類似体を含み得る。特定の実施形態では、本発明の修飾RNA分子/ポリリボヌクレオチドは、ウリジンの類似体および/またはシチジンの類似体などのピリミジン類似体を含む。ある実施形態では、本発明の修飾RNA分子/ポリリボヌクレオチドは、ウリジンの類似体およびシチジンの類似体を含む。ある実施形態では、修飾RNA分子/ポリリボヌクレオチドは、アデノシンの類似体および/またはグアノシンの類似体を含まない。ある実施形態では、RNA分子/ポリリボヌクレオチドは、ウリジンの単一タイプの類似体およびシチジンの単一タイプの類似体を含む(例えば、単一タイプの類似体であって、単一分子の類似体ではない-単一の類似体は、本明細書に記載のいくつかのパーセンテージのいずれかで存在し得る)。他の実施形態では、RNA分子/ポリリボヌクレオチドは、ウリジンおよび/またはシチジンの2つ以上のタイプの類似体、ならびに任意選択的に、存在する場合には、アデノシンおよび/またはグアノシンの1つまたは複数(つまり何れか一方はないか、または両方)の類似体を含む。
【0123】
一部の場合では、修飾ウリジン(例えば、ウリジンの類似体)は、2-チオウリジン、5´-メチルウリジン、シュードウリジン、5-ヨードウリジン(I5U)、4-チオウリジン(S4U)、5-ブロモウリジン(Br5U)、2´-メチル-2´-デオキシウリジン(U2´m)、2´-アミノ-2´-デオキシウリジン(U2´NH)、2´-アジド-2´-デオキシウリジン(U2´N)、および2´-フルオロ-2´-デオキシウリジン(U2´F)から選択される。一部の場合では、修飾シチジン(例えば、シチ
ジンの類似体)は、5-メチルシチジン、3-メチルシチジン、2-チオ-シチジン、2´-メチル-2´-デオキシシチジン(C2´m)、2´-アミノ-2´-デオキシシチジン(C2´NH2)、2´-フルオロ-2´-デオキシシチジン(C2´F)、5-ヨードシチジン(I5C)、5-ブロモシチジン(Br5C)および2´-アジド-2´-デオキシシチジン(C2´N3)から選択される。類似体に言及する場合、上記は、それらの5´三リン酸型の類似体も指すことに留意されたい。ある実施形態では、シチジン類似体は5-ヨードシチジンであり、ウリジン類似体は5-ヨードウリジンである。
【0124】
いくつかの実施形態では、RNA分子/ポリリボヌクレオチドは修飾RNA分子/ポリリボヌクレオチドである。一部の場合では、修飾RNA分子/ポリリボヌクレオチドは、非修飾(または無修飾)RNA分子/ポリリボヌクレオチドと比較して、少なくとも25%、より安定している。一部の場合では、修飾RNA分子/ポリリボヌクレオチドは、非修飾RNA分子/ポリリボヌクレオチドと比較し、少なくとも30%より安定、少なくとも35%より安定、少なくとも40%より安定、少なくとも45%より安定、少なくとも50%より安定、少なくとも55%より安定、少なくとも60%より安定、少なくとも65%より安定、少なくとも70%より安定、少なくとも75%より安定、少なくとも80%より安定、少なくとも85%より安定、少なくとも90%より安定、少なくとも95%より安定であり得る。ある実施形態では、安定性はin vivoで測定される。特定の実施形態では、安定性はin vitroで測定される。ある実施形態では、安定性は、ポリリボヌクレオチドの半減期を測定することによって定量化される。
【0125】
本発明のRNA分子/ポリリボヌクレオチドは、同じ形態で修飾されたヌクレオチド、または異なる修飾ヌクレオチドの混合物を有し得る。修飾ヌクレオチドは、メッセンジャーRNAにおいて天然に存在するか、または天然に存在しない修飾を有し得る。種々の修飾ヌクレオチドの混合物を使用することが可能である。例えば、RNA分子/ポリリボヌクレオチド内の1つまたは複数の修飾ヌクレオチドは天然の修飾を有し得、別の部分はmRNAに天然に見られない修飾を有する。さらに、いくつかの修飾ヌクレオチドは塩基修飾を有し得る一方、他の修飾ヌクレオチドは糖修飾を有する。同様に、全ての修飾が塩基修飾であるか、または全ての修飾が糖修飾であるか、またはそれらの任意の適切な混合物である可能性がある。一部の場合では、修飾RNA分子/ポリリボヌクレオチドの安定性を、修飾ポリリボヌクレオチド内の修飾塩基の性質を変えることによって選択的に最適化することが可能である。
【0126】
Uの類似体の非限定的例
【表2】
【0127】
Cの類似体の非限定的例
【表3-1】
【表3-2】
【0128】
Aの類似体の非限定的例
【表4-1】
【表4-2】
【0129】
Gの類似体の非限定的例
【表5】
【0130】
ある実施形態では、類似体(例えば、修飾ヌクレオチド)は、以下を含む群から選択することが可能である:ピリジン-4-オンリボヌクレオシド、5-ヨードウリジン、5-ヨードシチジン、5-アザ-ウリジン、2´-アミノ-2´-デオキシシチジン、2´-フルオロ-2´-デオキシシチジン、2-チオ-5-アザ-ウリジン、2-チオウリジン
、4-チオ-シュードウリジン、2-チオ-シュードウリジン、5-ヒドロキシウリジン、3-メチルウリジン、5-カルボキシメチル-ウリジン、1-カルボキシメチル-シュードウリジン、5-プロピニル-ウリジン、1-プロピニル-シュードウリジン、5-タウリノメチルウリジン、1-タウリノメチル-シュードウリジン、5-タウリノメチル-2-チオ-ウリジン、1-タウリノメチル-4-チオ-ウリジン、5-メチル-ウリジン、1-メチル-シュードウリジン、4-チオ-l-メチル-シュードウリジン、2-チオ-l-メチル-シュードウリジン、1-メチル-l-デアザ-シュードウリジン、2-チオ-1-メチル-l-デアザ-シュードウリジン、ジヒドロウリジン、ジヒドロシュードウリジン、2-チオ-ジヒドロウリジン、2-チオ-ジヒドロシュードウリジン、2-メトキシウリジン、2-メトキシ-4-チオ-ウリジン、4-メトキシ-シュードウリジン、4-メトキシ-2-チオ-シュードウリジン、5-アザ-シチジン、シュードイソシチジン、3-メチル-シチジン、N4-アセチルシチジン、5-ホルミルシチジン、5-メチルシチジン、N4-メチルシチジン、5-ヒドロキシメチルシチジン、1-メチル-シュードイソシチジン、ピロロ-シチジン、ピロロ-シュードイソシチジン、2-チオ-シチジン、2-チオ-5-メチル-シチジン、4-チオ-シュードイソシチジン、4-チオ-l-メチル-シュードイソシチジン、4-チオ-l-メチル-1-デアザ-シュードイソシチジン、1-メチル-l-デアザ-シュードイソシチジン、ゼブラリン、5-アザ-ゼブラリン、5-メチル-ゼブラリン、5-アザ-2-チオ-ゼブラリン、2-チオ-ゼブラリン、2-メトキシ-シチジン、2-メトキシ-5-メチル-シチジン、4-メトキシ-シュードイソシチジン、4-メトキシ-l-メチル-シュードイソシチジン、2-アミノプリン、2,6-ジアミノプリン、7-デアザ-アデニン、7-デアザ-8-アザ-アデニン、7-デアザ-2-アミノプリン、7-デアザ-8-アザ-2-アミノプリン、7-デアザ-2,6-ジアミノプリン、7-デアザ-8-アザ-2,6-ジアミノプリン、1-メチルアデノシン、N6-メチルアデノシン、N6-イソペンテニルアデノシン、N6-(シス-ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン、2-メチルチオ-N6-(シス-ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン、N6-グリシニルカルバモイルアデノシン、N6-トレオニルカルバモイルアデノシン、2-メチルチオ-N6-トレオニルカルバモイルアデノシン、N6,N6-ジメチルアデノシン、7-メチルアデニン、2-メチルチオ-アデニン、2-メトキシ-アデニン、イノシン、1-メチル-イノシン、ワイオシン、ワイブトシン、7-デアザ-グアノシン、7-デアザ-8-アザ-グアノシン、6-チオ-グアノシン、6-チオ-7-デアザ-グアノシン、6-チオ-7-デアザ-8-アザ-グアノシン、7-メチル-グアノシン、6-チオ-7-メチル-グアノシン、7-メチルイノシン、6-メトキシ-グアノシン、1-メチルグアノシン、N2-メチルグアノシン、N2,N2-ジメチルグアノシン、8-オキソ-グアノシン、7-メチル-8-オキソ-グアノシン、1-メチル-6-チオ-グアノシン、N2-メチル-6-チオ-グアノシン、およびN2,N2-ジメチル-6-チオ-グアノシン。
【0131】
ある実施形態では、本発明の修飾RNA分子/ポリリボヌクレオチドは、シュードウリジンを含まない。ある実施形態では、本発明の修飾RNA分子/ポリリボヌクレオチドは、5-メチルシチジンを含まない。ある実施形態では、本発明の修飾RNA分子/ポリリボヌクレオチドは、5-メチルウリジンを含まない。ある実施形態では、本発明の修飾RNA分子/ポリリボヌクレオチドは、Uの類似体およびCの類似体を含み、斯かるUの類似体は全て同じ類似体であっても、異なる類似体(例えば、複数のタイプの類似体)であってもよく、斯かるCの類似体は全て同じ類似体であっても、異なる類似体(例えば、複数のタイプの類似体)であってもよい。ある実施形態では、本発明の修飾RNA分子/ポリリボヌクレオチドは、アデノシンの類似体およびグアノシンの類似体を含まない。
【0132】
本明細書で詳細に記載するように、RNA分子/ポリリボヌクレオチドが修飾ポリリボヌクレオチドを含む場合、類似体は、化合物中でヌクレオチドの特定の割合として存在し得る(例えば、所与の核酸塩基の所与のパーセンテージは、本明細書に記載するように、
類似体であってもよい)。
【0133】
少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含むRNA分子/ポリリボヌクレオチドは、修飾RNA分子/ポリリボヌクレオチドである。ある実施形態では、修飾RNA分子/ポリリボヌクレオチドの少なくとも約5%は、本明細書に記載の類似体クレオチドなどの、修飾されたまたは天然に存在しない(例えば、類似体もしくは修飾された)アデノシン、シチジン、グアノシン、またはウリジンを含む。一部の場合では、修飾RNA分子/ポリリボヌクレオチドの少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、45%、50%は、修飾または天然に存在しない(例えば、類似体もしくは修飾された)、アデノシン、シチジン、グアノシン、またはウリジンを含む。一部の例では、修飾RNA分子/ポリリボヌクレオチドの多くとも約50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、5%は、修飾または天然に存在しない、アデノシン、シチジン、グアノシン、またはウリジンを含む。
【0134】
好適な実施形態では、本発明のRNA分子は、修飾ヌクレオチドと非修飾ヌクレオチドの組み合わせを含有する。好ましくは、本発明のRNA分子は、国際公開第2011/012316号に記載されているように、修飾および非修飾のヌクレオチドの組み合わせを含有する。斯かるRNA分子は既知であり、「SNIM(登録商標)-RNA」として商業化もされている。国際公開第2011/012316号に記載のRNA分子は、安定性の増大および免疫原性の減少を示すことが報告されている。好適な実施形態では、斯かる修飾RNA分子において、シチジンヌクレオチドの5~50%およびウリジンヌクレオチドの5~50%が修飾される。アデノシンおよびグアノシンを含有するヌクレオチドは非修飾でもよい。アデノシンヌクレオチドおよびグアノシンヌクレオチドは非修飾でも部分修飾でもよく、好適には非修飾型で存在する。好適には、シチジンヌクレオチドおよびウリジンヌクレオチドの10~35%が修飾され、特に好適には修飾シチジンヌクレオチドの含有量は7.5~25%の範囲にあり、修飾ウリジンヌクレオチドの含有量は7.5~25%の範囲にある。実際、比較的低い含有量、例えば、それぞれわずか10%の修飾シチジンおよびウリジンヌクレオチドが所望の特性を達成可能であることが発見されている。修飾シチジンヌクレオチドが5-メチルシチジン残基であり、修飾ウリジンヌクレオチドが2-チオウリジン残基であることが特に好ましい。最も好適には、修飾シチジンヌクレオチドの含有量および修飾ウリジンヌクレオチドの含有量は、それぞれ25%である。
【0135】
ある他の実施形態では、斯かる修飾RNA分子/ポリリボヌクレオチド分子において、シチジンの5~50%がCの類似体であり、ウリジンの5~50%がUの類似体である。ある実施形態では、斯かる修飾ポリリボヌクレオチド分子において、シチジンの5~40%がCの類似体であり、ウリジンの5~40%がUの類似体である。ある実施形態では、斯かる修飾RNA分子/ポリリボヌクレオチド分子において、シチジンの5~30%がCの類似体であり、ウリジンの5~30%がUの類似体である。ある実施形態では、斯かる修飾RNA分子/ポリリボヌクレオチド分子において、シチジンの10~30%がCの類似体であり、ウリジンの10~30%がUの類似体である。ある実施形態では、斯かる修飾ポリリボヌクレオチド分子において、シチジンの5~20%がCの類似体であり、ウリジンの5~20%がUの類似体である。ある実施形態では、斯かる修飾RNA分子/ポリリボヌクレオチド分子において、シチジンヌクレオチドの5~10%およびウリジンヌクレオチドの5~10%が修飾される。ある実施形態では、斯かる修飾RNA分子/ポリリボヌクレオチド分子において、シチジンヌクレオチドの25%およびウリジンヌクレオチドの25%が修飾される。ある実施形態では、アデノシンおよびグアノシンを含有するヌクレオチドは非修飾でもよい。ある実施形態では、アデノシンヌクレオチドおよびグアノシンヌクレオチドは非修飾でも部分修飾でもよく、好適には非修飾型で存在する。
【0136】
上記のように、ある実施形態では、Uの類似体は、Uの単一タイプの類似体を指す。あ
る実施形態では、Uの類似体は、Uの2つ以上のタイプの類似体を指す。ある実施形態では、Cの類似体は、Cの単一タイプの類似体を指す。ある実施形態では、Cの類似体は、Cの2つ以上のタイプの類似体を指す。
【0137】
ある実施形態では、シチジンの類似体であるRNA分子/ポリリボヌクレオチドにおけるシチジンのパーセンテージは、ウリジンの類似体であるRNA分子/ポリリボヌクレオチドにおけるウリジンのパーセンテージと同じではない。ある実施形態では、シチジンの類似体のパーセンテージは、ウリジンの類似体のパーセンテージよりも低い。上記のように、これは、アデノシンおよびグアノシンの類似体が存在する場合も存在しない場合もあり得るが、ある実施形態では、アデノシン類似体もグアノシン類似体も存在しない。特定の実施形態では、本開示のポリリボヌクレオチドは、15%未満、10%未満、5%未満、または2%未満のアデノシン類似体、グアノシン類似体、またはその両方を含む。
【0138】
ある実施形態では、本発明のRNA分子/ポリリボヌクレオチドは、シチジンの類似体およびウリジンの類似体を含み、シチジンの5~20%がシチジンの類似体であり、ウリジンの25~45%がウリジンの類似体である。言い換えれば、RNA分子/ポリリボヌクレオチドは、修飾および非修飾シチジンならびに修飾および非修飾ウリジンを含み、シチジンの5~20%はシチジンの類似体を含む一方、ウリジンの25~45%はウリジンの類似体を含む。他の実施形態では、RNA分子/ポリリボヌクレオチドは、5~10%のシチジン類似体および30~40%のウリジン類似体を含み、例えば約7、7.5、または8%などの7~9%のシチジン類似体、および例えば約33、34、35、36%などの32~38%のウリジン類似体を含む。
【0139】
ある実施形態では、本明細書に記載のウリジン類似体およびシチジン類似体の何れかを使用することができ、任意選択的にシュードウリジンは除く。ある実施形態では、シチジンの類似体は5-ヨードシチジンを含むか、または5-ヨードシチジンからなり(例えば、からなる場合、使用されているのは単一の類似体タイプである)、ウリジンの類似体は5-ヨードウリジンを含むか、または5-ヨードウリジンからなる(例えば、からなる場合、使用されているのは単一の類似体タイプである)。
【0140】
上記の何れかのある実施形態では、所与のヌクレオチドの類似体のパーセンテージは、投入パーセンテージ(例えば、in vitro転写反応の開始などの開始反応における類似体のパーセンテージ)を指す。上記の何れかのある実施形態の何れかでは、所与のヌクレオチドの類似体のパーセンテージは、アウトプット(例えば、合成または転写された化合物におけるパーセンテージ)を指す。
【0141】
本発明のRNA分子/ポリリボヌクレオチド分子は、以下により詳細に記載する当業者に既知の方法によって、in vivo系で組み換え的に生成することができる。
【0142】
あるいは、本発明の修飾ポリリボヌクレオチド分子は、in vitro系において、例えば、以下により詳細に記載するin vitro転写系を用いて生成することができる。RNA分子/ポリリボヌクレオチドを生成することができるin vitro転写系は、本発明の所望の特性を有する修飾RNA分子/ポリリボヌクレオチドを生成するために、修飾および非修飾のヌクレオシド三リン酸の投入混合物を必要とする。ある実施形態では、斯かる投入混合物においてシチジンの5~50%がシチジン類似体であり、斯かる投入混合物においてウリジンの5~50%がウリジン類似体である。ある実施形態では、斯かる投入混合物においてシチジンの5~40%がシチジン類似体であり、斯かる投入混合物においてウリジンの5~40%がウリジン類似体である。ある実施形態では、斯かる混合物においてシチジンの5~30%がシチジン類似体であり、斯かる混合物においてウリジンの5~30%がウリジン類似体である。ある実施形態では、斯かる混合物において
シチジンの5~30%がシチジン類似体であり、斯かる混合物においてウリジンの10~30%がウリジン類似体である。ある実施形態では、斯かる混合物においてシチジンの5~20%がシチジン類似体であり、斯かる混合物においてウリジンの5~20%がウリジン類似体である。ある実施形態では、斯かる混合物においてシチジンの5~10%がシチジン類似体であり、斯かる混合物においてウリジンの5~10%がウリジン類似体である。ある実施形態では、斯かる混合物においてシチジンの25%がシチジン類似体であり、斯かる混合物においてウリジンの25%がウリジン類似体である。ある実施形態では、投入混合物は、アデノシンおよび/またはグアノシンの類似体を含まない。他の実施形態では、任意選択的に、投入混合物は、1つまたは複数のアデノシンおよび/またはグアノシン(つまり何れか一方はないか、または両方)の類似体を含む。
【0143】
ある実施形態では、投入混合物におけるシチジン類似体であるシチジンのパーセンテージは、投入混合物におけるウリジン類似体であるウリジンのパーセンテージと同じではない。ある実施形態では、投入混合物におけるシチジン類似体のパーセンテージは、投入混合物におけるウリジン類似体のパーセンテージよりも低い。上記のように、これは、投入混合物にアデノシンおよびグアノシンの類似体が存在する場合も存在しない場合もあり得るが、ある実施形態では、投入混合物においてアデノシンの類似体もグアノシンの類似体も存在しない。
【0144】
ある実施形態では、本発明のRNA分子/ポリリボヌクレオチドを生成するin vitro転写系用のヌクレオチド投入混合物は、シチジン類似体およびウリジン類似体を含み、投入混合物のシチジンの5~20%がシチジン類似体であり、投入混合物のウリジンの25~45%はウリジン類似体である。言い換えれば、投入混合物は、修飾および非修飾シチジンならびに修飾および非修飾ウリジンを含み、投入混合物のシチジンの5~20%がシチジン類似体を含む一方、投入混合物のウリジンの25~45%がウリジン類似体を含む。他の実施形態では、投入混合物は、5~10%のシチジン類似体および30~40%のウリジン類似体を含み、例えば約7、7.5または8%などの7~9%のシチジン類似体、および例えば約33、34、35、36%などの32~38%のウリジン類似体を含む。
【0145】
ある実施形態では、任意選択的にシュードウリジンを除き、本明細書に記載のウリジン類似体およびシチジン類似体の何れかを使用することができる。ある実施形態では、シチジン類似体は5-ヨードシチジンを含むか、または5-ヨードシチジンからなり(例えば、使用されているのが単一のC類似体タイプである)、ウリジン類似体は5-ヨードウリジンを含むか、またはそれからなる(例えば、使用されているのが単一のU類似体タイプである)。
【0146】
例示的な類似体を上記の表に記載する。所望のポリペプチド(モジュール(a))をコードする修飾ポリリボヌクレオチドについて、類似体および修飾レベルは、別段の指示がない限り、5´および3´非翻訳領域を含む所望のポリペプチド(モジュール(a))をコードするポリリボヌクレオチド全体にわたって考慮される(例えば、修飾レベルは、転写位置に類似体が組み込まれ得るようなin vitro転写反応における類似体の投入比に基づく)。
【0147】
さらに、修飾RNA分子/ポリリボヌクレオチド分子は、例えば、固相支持体および標準技術を使用する自動ヌクレオチド配列合成装置において、従来の化学合成によって、または個々のDNA配列の化学合成および後に続くそのin vitroもしくはin vivo転写によって、化学的に合成され得る。
【0148】
分子生物学および遺伝学において、上流および下流は、両方ともRNA分子における相
対位置を指す。本発明の文脈において、上流はRNA分子の5´末端に向かい、下流は分子の3´末端に向かう。
【0149】
したがって、本発明において、上記の項目(b)で定義するUTRは、項目(a)のコード領域のすぐ上流、より具体的には、コード領域の開始コドンのすぐ上流に位置する。したがって、本文脈における「すぐ上流」は、項目(b)で定義するUTRと、開始コドンで始まるコード配列の間にさらなるヌクレオチドがないことを意味する。したがって、開始コードで始まるコード領域は、前記UTR配列に直接隣接している。
【0150】
RNA分子は、モジュール(a)および(b)(それぞれ、上記の項目(a)および(b)で定義される)の融合RNA配列の形態で、つまり、前記モジュールをコードする少なくとも2つのヌクレオチド配列を組み合わせることによって作成されるハイブリッド遺伝子の発現により形成される(融合)DNA分子の形態で存在し得る。典型的には、以下でさらにより詳細に説明するように、これは、RNA分子への転写を可能にする発現ベクターにcDNAをクローン化することにより達成することが可能である。したがって、本発明のRNA分子をコードするDNA分子は、融合DNA配列、つまり、あるヌクレオチドから別のヌクレオチドの3´炭素に結合したリン酸基を介して2つ以上のポリヌクレオチドを連結し、あるモジュールの各末端と別のモジュールの末端の間にホスホジエステル結合を形成することにより形成される、キメラ分子であり得る。このように、前記少なくとも2つのモジュールをコードする上記DNA分子は、DNA分子の形態で連結し合う。斯かる組換えDNA分子は、次に、それの対応するRNA核酸配列に転写される。
【0151】
好適な一実施形態では、Rは:
(i)GGGAGA(SEQ ID NO:7);
(ii)GGGAGA(SEQ ID NO:8);
(iii)GAAG(SEQ ID NO:9);および
(iv)GGGA(SEQ ID NO:10)からなる群から選択される。
【0152】
好適な実施形態では、配列R-CNGCCACC(SEQ ID NO:2)を含むRNA分子がRNA分子であり、SEQ ID NO:2の位置2のヌクレオチドNはU、G、またはCからなる群から選択されるヌクレオチドであり、ヌクレオチドNはAではない。
【0153】
別の好適な実施形態では、SEQ ID NO:2の位置2の前記ヌクレオチドNはUである。
【0154】
好適な実施形態では、本発明のRNA分子は、開始コドンのすぐ下流に続くヌクレオチドがヌクレオチドGではない、RNA分子である。別の好適な実施形態では、本発明のRNA分子は、開始コドンのすぐ下流に続くヌクレオチドがA、U、およびCからなる群から選択されるヌクレオチドである、RNA分子である。
【0155】
さらにより好適な実施形態では、本発明のRNA分子は、上記で定義するモジュール(b1)を含むRNA分子であり、前記モジュール(b1)は、SEQ ID NO:1の位置6のCがAにより置換され、SEQ ID NO:1の位置7のCがGに置換され;および/またはSEQ ID NO:1の位置5のAがGに置換されており、開始コドンのすぐ下流に続くヌクレオチドがA、U、およびCからなる群から選択されるヌクレオチドである、配列である。
【0156】
さらにより好適な別の実施形態では、本発明のRNA分子は、上記で定義するモジュール(b2)を含むRNA分子であり、前記モジュール(b2)は、SEQ ID NO:
2の位置7のCがAに置換され、SEQ ID NO:2の位置8のCがGに置換され;および/またはSEQ ID NO:2の位置6のAがGに置換されており、開始コドンのすぐ下流に続くヌクレオチドがA、U、およびCからなる群から選択されるヌクレオチドである、配列である。
【0157】
上記のように、コザックコンセンサス配列(gcc)gccRccAUGGはとりわけ、「R」で表される位置-3(つまり、開始コドンAUGから3ヌクレオチド上流)のヌクレオチドに関し、その位置がプリン(つまり、アデニンまたはグアニン)である限り、変異体であり得る。上記UTRでは、その位置に対応するヌクレオチドを「A」と定義する。しかしながら、本発明は、または、その位置で「G」を有する対応するUTRを含むRNA分子にも関する。
【0158】
したがって、好適な実施形態では、本発明のRNA分子は、上記の項目(b1)で定義したUTRを含有し、(b1)の前記UTR配列において、SEQ ID NO:1の位置5のAがGに置換されるか;または、(b2)の前記UTR配列において、SEQ ID NO:2の位置6のAがGに置換されている。
【0159】
上記のように、本発明のRNA分子は、また、ポリAテールを宿し得る。本明細書で使用する場合、ポリAテールは、RNAの3´末端に位置するアデニンヌクレオチドの配列に関する。ポリAテールは、一般に、ポリアデニル化と呼ばれるプロセスによりRNAの3´末端に付加される。したがって、本発明は上記RNAの何れかに関し、該RNA分子は、3´末端にポリAテールを含む。
【0160】
ポリAテールの長さは特に限定されない。しかし、好適な実施形態では、本発明のRNA分子は、3´末端にポリAテールを含み、該ポリAテールの長さは、少なくとも50、60、70、80、90、100、または110ヌクレオチドである。より好適な実施形態では、本発明のRNA分子は、3´末端にポリAテールを含み、該ポリAテールの長さは、少なくとも120ヌクレオチドである。他の好適な実施形態では、本発明のRNA分子は、3´末端にポリAテールを含み、該ポリAテールの長さは、少なくとも150、200、250、300、350、400、500、600、700、800、900、または1000ヌクレオチドである。
【0161】
本発明のRNA分子が、本明細書の以下にさらに記載するin vitro転写方法によって生成される場合、ポリAテールは、RNA分子の3´末端でUTRに隣接するRNAの3´末端に位置する一方、in vitroで転写されたRNA分子が前記ポリAテールを確実に含有するように、本発明のRNA分子を宿すプラスミドはポリAテールの下流でin vitro転写の前に線形化される。
【0162】
上記のように、本発明のRNA分子は、モジュール(a)および(b)の融合RNA配列の形態で、つまり、前記モジュールをコードする少なくとも2つのヌクレオチド配列を組み合わせることによって作成されるハイブリッド遺伝子の転写により形成される(融合)RNA分子の形態で存在し得る。典型的には、これは、全RNA分子の転写を可能にする発現ベクターにcDNAをクローン化することにより達成される。融合構成体を作成する種々の方法が既知であり、本発明のRNA分子を「コード」する合成二本鎖核酸分子を生成する核酸合成、ハイブリダイゼーション、および/または増幅が含まれる。斯かる二本鎖核酸分子(つまり、DNA分子)は、一方の鎖に(つまり、コード鎖またはセンス鎖に)、本発明のRNA分子に対応するDNA配列を宿し、従って、本発明のRNA分子を「コード」する。言い換えると、斯かる二本鎖核酸/DNA分子は、鎖の上に、本明細書の上記で定義する本発明の転写RNA分子に対応する遺伝情報を含む。本発明の文脈における用語「コード」または「コードする」は、その従来の意味、つまり、タンパク質をコ
ードする遺伝子のDNA(および、したがって、ポリペプチドまたはタンパク質のアミノ酸配列に翻訳され得る遺伝情報)に関して使用されるだけではない。むしろ、本発明の観点からいえば、モジュール(a)および(b)をコードする個々のDNA配列が単一の(キメラ)DNA分子に「融合」または連結されている構成体において、構成体は、タンパク質に翻訳されない成分(つまり、モジュール(b))も含む。それでもなお、モジュール(b)に対応するDNA配列は、UTRの構造の情報、つまり「コード」を提供し、したがって、本発明における用語「コードする」は、例えば、二本鎖核酸分子中に存在する場合に発現し得る、つまり、転写され得るUTRの遺伝情報にも関する。したがって、本発明の文脈における用語「コードする」は、一般にはタンパク質のコード/発現に関してのみ使用されるが、核酸分子が、タンパク質またはポリペプチドをコードする部分(つまり、モジュール(a))とUTRを「コード」する部分(つまり、モジュール(b))を宿す対応するRNA分子に転写され得ると理解するべきであり、ここで、UTRはタンパク質またはポリペプチドに翻訳されないため、後者は発現した場合の最終生成物を表す。斯かる二本鎖核酸は、標準的な分子生物学的技法(例えば、Sambrook et al., Molecular
Cloning, A laboratory manual, 2nd Ed, 1989を参照)によって、発現ベクターに挿入
され得る。本発明の意味における「発現ベクター」または「クローニングベクター」などの用語「ベクター」は、細胞内で染色体DNAとは独立して自己複製し、遺伝物質を細胞に運ぶための運搬体として使用され、そこで自己複製および/または発現し得る(つまり、RNAに転写され、アミノ酸配列に翻訳される)、環状二本鎖のDNAユニットとして理解される。外来性DNAを含有するベクターを、組換えDNAという。ベクター自体は、概して、典型的には、挿入物(つまり、タンパク質に翻訳されないモジュール(b)およびモジュール(a)コード領域)と、ベクターの「骨格」として機能するより大きい配列とからなるDNA配列である。本発明の意味でのプラスミドは、細菌で最も頻繁に見られ、細胞間で遺伝子を転移するための組換えDNA研究に使用され、それ自体は本発明の意味で使用される「ベクター」の亜集団である。
【0163】
したがって、本発明は、本発明のRNA分子をコードする核酸分子にも関する。
【0164】
核酸は、例えば、本発明のRNA分子の2つの主要モジュール(つまり、モジュール(a)およびモジュール(b))をコードするDNAである。本発明の上記核酸分子は、好ましくは、組換え核酸分子である。本発明の核酸分子は、合成または半合成であり得る。
【0165】
RNA分子をコードする本発明の核酸分子にさらなる制御配列を付加可能であることは、当業者にとって明らかである。例えば、誘導性発現を可能にする転写エンハンサーおよび/または配列を利用することができる。適切な誘導系は、例えば、Gossen and Bujard,
Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89 (1992), 5547-5551)およびGossen, Trends Biotech. 12 (1994), 58-62に記載されるようなテトラサイクリン制御遺伝子発現、またはCrook, EMBO J. 8 (1989), 513-519に記載されるようなデキサメタゾン誘導性遺伝子発現系である
【0166】
本発明は、また、本発明の核酸分子を含むベクター、好適には、発現ベクターに関する。
【0167】
本発明のRNA分子をコードする核酸分子を含むベクターに関しては、上記で定義した本発明のDNA分子を含むベクターの文脈において上で述べたのと同じものが準用される。
【0168】
本発明は、また、本発明のベクターを含む宿主細胞にも関する。したがって、本発明は、本発明のベクターを用いて遺伝子導入または形質転換した宿主または本発明のベクターを担持する非ヒト宿主、つまり、本発明の核酸分子または斯かる核酸分子を含むベクター
で遺伝子組み換えした、宿主細胞または宿主に関する。
【0169】
本発明のRNA分子をコードする核酸分子を含むベクターを含む宿主細胞に関しては、上記で定義した本発明のDNA分子を含むベクターを含む宿主細胞の文脈において上で述べたのと同じものが準用される。
【0170】
本発明は、また、本発明の個々のモジュールまたは本発明のRNA分子全体をコードする発現ベクターを宿す宿主細胞を、培養培地において培養し、RNA分子を宿主細胞または培養培地から回収することにより本発明のRNA分子を生成する方法にも関する。本発明は、また、本発明の宿主細胞を培養するステップと、任意選択的に培養物からRNA分子を回収するステップとを含む、本発明のRNA分子の生成方法にも関し得る。
【0171】
本発明のRNA分子を回収する方法および/またはその後に精製する方法は、当業者に既知である。
【0172】
本発明は、また、当業者に既知の方法によって本発明のRNA分子をin vitro反応で生成する方法にも関する。より具体的には、本発明のRNA分子は、in vitro転写系を使用してin vitroで生成され得る。in vitro転写系は一般に知られており、通常、上記で概説したように、モジュール(b)およびモジュール(a)を「コード」するDNA配列を含有する精製線形DNA鋳型を必要とし、前記DNA配列は適切なプロモーターの制御下にある。さらに、in vitro転写系は、また、一般に、リボヌクレオチド三リン酸、DTTおよびマグネシウムイオンを含む緩衝系、ならびにDNA配列の本発明のRNA分子へのin vitro転写のための酵素活性を提供する適切なRNAポリメラーゼも必要とする。
【0173】
in vitro転写を使用してRNA分子を生成するために一般に使用される方法は当業者に周知であり、例えば、Methods Mol. Biol. 703 (2011):29-41に記載されている
【0174】
上記のように、本発明のRNA分子が、本明細書において以下にさらに記載するようなin vitro転写方法によって生成される場合、上記ポリAテールは、本発明のRNA分子の一部であり得(必ずしもクローニングベクター上にもともと位置するとは限らない)、RNA分子の3´末端に、例えば、RNAの3´末端でUTRに隣接して位置する。本発明のRNA分子がin vitro転写方法によって生成される場合、in vitroで転写されたRNA分子が前記ポリAテールを確実に含有するように、本発明のRNA分子を宿すプラスミドは、ポリAテールの下流でin vitro転写の前に線形化される。
【0175】
あるいは、本発明のRNA分子は、また、例えば、固相支持体および標準技術を使用する自動ヌクレオチド配列合成装置において、従来の化学合成によって、化学的に合成され得る。
【0176】
本発明は、また、当業者に既知である、上記に概説した方法によって本発明のRNA分子をin vitro反応で生成し、RNA分子を反応から回収する方法にも関する。
【0177】
本発明のRNA分子を回収し、および/またはその後に精製する方法は、当業者に既知である。
【0178】
本発明のRNA分子は、モジュール(a)のコード領域によりコードされる任意の所望のポリペプチドまたはタンパク質の効率的な発現のために、当業者に既知のin vit
ro翻訳系において容易に使用することが可能である。
【0179】
in vitro翻訳系は、当技術分野で既知であり、本発明のRNA分子とともに直接的に使用することが可能である。あるいは、これらのin vitro翻訳系は、上記のin vitro転写系と組み合わせることが可能である。in vitro転写および/またはin vitro翻訳に対応する無細胞系は既知であり、利用可能である。これらのタンパク質合成用無細胞系(in-vitroタンパク質合成または略してCFPSとも呼ばれる)は、生細胞を使用することなく、生物学的機構を使用して、ポリペプチドまたはタンパク質の発現/生成を可能にする。これらの系において、in vitroタンパク質合成環境は、細胞生存能を維持するのに必要な細胞壁または恒常性条件に制限されず、タンパク質合成を研究するための、タンパク質生成の最適化、タンパク質複合体の最適化、非天然アミノ酸の組み込み、高スループットスクリーン、および合成生物学を含む、いくつかの用途に有利な直接的なアクセスおよび翻訳環境の制御を可能にする。無細胞反応の共通の構成要素としては、細胞抽出物、エネルギー源、アミノ酸供給、マグネシウムなどの補助因子、および所望のポリペプチドまたはタンパク質をコードするDNAまたはRNAが挙げられる。細胞抽出物は、対象の細胞を溶解し、細胞壁、DNAゲノム、および他のデブリを遠心分離することによって得ることができる。残りは、リボソーム、アミノアシル-tRNAシンテターゼ、翻訳開始および伸長因子、ヌクレアーゼなどを含む、必要な細胞機構である。DNAから始まるポリペプチドまたはタンパク質の合成のための無細胞系では(つまり、in vitro転写およびin vitro翻訳のステップを含む系では)、一般に、2種類のDNA、つまり、プラスミドまたは線形発現鋳型(LET)の何れかが使用される。RNAから始まるポリペプチドまたはタンパク質の合成のための無細胞系では(つまり、in vitro翻訳ステップのみを含む系では)、RNAが直接使用され得る。これらのin vitro無細胞反応では、必要なエネルギー源を含有する別の混合物により通常は提供されるエネルギー源を、反応のために抽出物に加えられるアミノ酸供給とともに必要とする。一般のエネルギー源は、ホスホエノールピルビン酸、アセチルリン酸、およびクレアチンリン酸である。一般的に使用される一般の細胞抽出物は、大腸菌(ECE)、ウサギ網状赤血球(RRL)、コムギ胚芽(WGE)、昆虫細胞(ICE)から作成される。これらの抽出物は全て、商業的に利用可能である。
【0180】
したがって、本発明は、また、本発明のRNA分子に含有されるコード領域によりコードされる所望のポリペプチドまたはタンパク質のin vitro翻訳のための、本発明のRNA分子の使用に関する。
【0181】
本発明のRNA分子の斯かる使用についての好適な実施形態に関しては、上記で定義したRNAの文脈において上で述べたのと同じものが準用される。
【0182】
上記で定義したRNA分子は、医療機関および特定の疾患の治療、特にRNAベースの治療において特に有用である。したがって、本発明は、また、本発明のRNA分子、本発明の核酸分子、本発明のベクター、または本発明の宿主細胞と、任意選択的に医薬的に許容される担体とを含む医薬組成物にも関する。
【0183】
用語「処置」などは、本明細書では、概して、所望の薬理学的および/または生理学的効果を得ることを意味するために使用する。したがって、本発明の治療は、特定の疾患の(急性)状態の処置に関し得るが、疾患またはその症状を完全にまたは部分的に予防する点で、予防的治療にも関し得る。好適には、用語「処置」は、疾患ならびに/または疾患に起因する有害作用および/もしくは症状を部分的にまたは完全に治すという点で、治療的であると理解するべきである。この点で、「急性」は、対象が疾患の症状を示すことを意味する。言い換えれば、治療される対象は処置を実際に必要としており、本発明の文脈
における用語「急性処置」は、疾患の発症または疾患の発生の後に疾患を実際に処置するためにとられる措置に関する。処置は、予防的または予防的処置、つまり、疾患の予防のために、例えば感染症および/または疾患の発症を予防するためにとられる措置であり得る。
【0184】
本発明の医薬組成物は、当業者に既知の広範囲の種類の投与形態により投与され得る。投与は、全身的、局所的、経口的、エアロゾル経由であり得、限定するわけではないが、錠剤、注射、吸入器の使用、クリーム、泡、ゲル、ローション、および軟膏が含まれる。
【0185】
上記のように、本発明は、有効量の上記の本発明のRNA分子(または核酸分子、ベクターまたは宿主細胞)と、少なくとも1つの医薬的に許容される賦形剤または担体とを含む、医薬組成物に関する。
【0186】
賦形剤または担体は、強力な活性成分を含有する増量製剤を目的として、活性成分、つまり本発明のRNA分子(または、核酸分子、ベクター、または宿主細胞)と一緒に製剤化される不活性物質である。賦形剤は、しばしば「増量剤」、「充填剤」、または「希釈剤」という。増量は、剤形を製造する際に、薬剤物質の簡便で正確な分配を可能にする。それらはまた、薬物吸収もしくは溶解性の促進、または他の薬物動態学的考察などの、種々の治療強化目的にも役立ち得る。賦形剤はまた、予想される貯蔵期間にわたる変性の防止などのin vitro安定性を補助することに加えて、粉末流動性または非粘着特性を促進することなどにより関連する活性物質の取り扱いを補助するために、製造過程において有用であり得る。適切な賦形剤の選択は、投与経路および剤形、ならびに有効成分および他の要因にも左右される。
【0187】
したがって、有効量の本発明のRNA分子(または、核酸分子、ベクター、または宿主細胞)を含む医薬組成物は、固体、液体、または気体の形態であり得、とりわけ、粉末、錠剤、溶液、またはエアロゾルの形態であり得る。前記医薬組成物は、任意選択的に医薬的に許容される担体および/または希釈剤を含むことが好ましい。
【0188】
適切な医薬担体、賦形剤、および/または希釈剤の例は、当該技術分野で周知であり、リン酸緩衝生理食塩水、水、油/水エマルジョンなどのエマルジョン、種々のタイプの湿潤剤、滅菌溶液などが挙げられる。斯かる担体を含む組成物は、周知の従来の方法によって製剤化することが可能である。これらの医薬組成物は、適切な投与量で、つまり当業者により当該技術分野で既知の方法により容易に決定され得る「有効量」で対象に投与され得る。投薬計画は主治医および臨床学的因子によって決定されるだろう。医学分野において周知のように、任意の1人の患者への投薬量は、患者または対象のサイズ、体表面積、年齢、投与する特定の化合物、性別、投与の時間および経路、全身の健康状態、ならびに同時投与される他の薬物を含む多くの因子に左右される。
【0189】
したがって、好適には、本発明のRNA分子(または、核酸分子、ベクター、または宿主細胞)は、有効量で含まれる。用語「有効量」は、医薬組成物を投与する対象において検出可能な治療応答を誘導するのに十分な量を指す。上記によれば、医薬組成物における本発明のRNA分子(または、核酸分子、ベクター、または宿主細胞)の含有量は、上記のように処置に有用である限り限定されないが、好適には、全組成物に対して0.0000001~10重量%を含有する。さらに、本明細書に記載のRNA分子(または、核酸分子、ベクター、または宿主細胞)は、好適には担体において利用される。概して、適切な量の医薬的に許容される塩が、組成物を等張にするために担体において使用される。担体の例としては、限定するわけではないが、生理食塩水、リンゲル液、およびデキストロース溶液が挙げられる。好適には、許容される賦形剤、担体、または安定剤は、利用する投薬量および濃度で非毒性であり、クエン酸塩、リン酸塩および他の有機酸などの緩衝剤
;塩形成対イオン、例えば、ナトリウムおよびカリウム;低分子量(>10アミノ酸残基)ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、もしくはゼラチン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;ヒスチジン、グルタミン、リシン、アスパラギン、アルギニン、もしくはグリシンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含む炭水化物;単糖類;二糖類;その他の糖、例えばスクロース、マンニトール、トレハロースもしくはソルビトール;キレート剤、例えばEDTA;非イオン性界面活性剤、例えばTween、プルロニックもしくはポリエチレングリコール;メチオニン、アスコルビン酸およびトコフェロールを含む抗酸化剤;ならびに/または保存料、例えば塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルもしくはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えばメチルもしくはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾール)が含まれる。適切な担体およびそれらの製剤は、Remington's Pharmaceutical Sciences, 17th ed., 1985, Mack Publishing Co.により詳細に記載されている。
【0190】
治療の進行は、定期的な評価によってモニタリングすることが可能である。本発明のRNA分子(もしくは核酸分子、ベクター、もしくは宿主細胞)または本発明の医薬組成物は、滅菌水性または非水性の溶液、懸濁液、およびエマルジョン、ならびにクリームおよび坐剤中にあり得る。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの有機エステルである。水性担体としては、水、アルコール/水溶液、エマルジョンまたは懸濁液が挙げられ、生理食塩水および緩衝媒体が含まれる。防腐剤およびその他の添加剤、例えば抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、および不活性ガスなども存在してよい。さらに、本発明の医薬組成物は、医薬組成物の意図される用途に応じて、さらなる薬剤を含み得る。前記薬剤は、例えば、商品名Tweenで市場で入手可能なポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、プロピレングリコール、EDTA、クエン酸塩、スクロース、ならびに当業者にとって周知の、医薬組成物の意図された用途に適した他の薬剤であり得る。
【0191】
本発明によれば、用語「医薬組成物」は、患者、好ましくはヒト患者に投与するための組成物に関する。
【0192】
本発明の医薬組成物は、RNAベースの治療に使用され得る。上記のように、「ポリペプチドをコードするコード領域」を含む本発明のRNA分子は、RNAベースの治療に使用することができ、ここで「ポリペプチドをコードするコード領域」は、治療的または予防的効果を有する治療的もしくは医薬的に活性なポリペプチドまたはタンパク質をコードする。したがって、好適な実施形態では、本発明の医薬組成物は、上記の表1に列挙した疾患の処置または予防におけるRNAベースの治療に使用することができる。したがって、本発明のRNAベースの治療は、上記の表1に列挙された疾患の処置または予防に使用することができる。
【0193】
したがって、上記の表1に記載の遺伝子欠損が、本発明のRNA分子を用いた転写物補充療法/酵素補充療法によって治療または予防できる疾患につながる場合は、本発明の医薬組成物をRNAベースの治療に使用することができ、ここでRNA分子は、開示の欠損遺伝子を補うインタクトなバージョンのタンパク質またはその機能的断片をコードする「ポリペプチドのコード領域」を含む。特に好適な実施形態では、本発明の医薬組成物を、ゴーシェ病、ファブリー病、MPS I、MPS II(ハンター症候群)、MPS VIなどのリソソーム病および糖原病、例えば糖原病I型(フォン・ギールケ病)、II型(ポンペ病)、III型(コリ病)、IV型(アンダースン病)、V型(マッカードル病)、VI型(ハース病)、VII型(垂井病)、VII型、IX型、X型、XI型(ファンコニ・ビッケル症候群)、XI型、または0型の治療または予防におけるRNAベース
の治療に使用することができる。転写物補充療法/酵素補充療法は、有益なことに、根底にある遺伝子欠損に影響を与えず、患者に欠乏している酵素の濃度を高める。例として、ポンペ病では、転写物補充療法/酵素補充療法は、欠乏しているリソソーム酵素酸アルファグルコシダーゼ(GAA)を補充する。
【0194】
他の好適な実施形態では、本発明の医薬組成物を、本発明に従うRNAベースの治療に使用することができ、ここで「ポリペプチドをコードするコード領域」は、治療効果または予防効果を有する治療的または医薬的に活性なポリペプチド、タンパク質またはペプチドをコードし、前記ポリペプチド、タンパク質、またはペプチドは、表1に概説するような遺伝子によってコードされる群から選択される。
【0195】
他の好適な実施形態では、本発明に従うRNAベースの治療は、がん、心臓血管疾患、ウイルス感染、免疫機能障害、自己免疫疾患、神経障害、遺伝性代謝障害、または遺伝病、または細胞内で生成されるタンパク質もしくはタンパク質断片が患者に有益な効果を有し得る任意の疾患の治療に使用するためのものであり得る。がんの例としては、頭頸部がん、乳がん、腎がん、膀胱がん、肺がん、前立腺がん、骨がん、脳がん、子宮頸がん、肛門がん、結腸がん、大腸がん、虫垂がん、眼がん、胃がん、白血病、リンパ腫、肝臓がん、皮膚がん、卵巣がん、陰茎がん、膵臓がん、精巣がん、甲状腺がん、膣がん、外陰がん、子宮体がん、心臓腫瘍および肉腫が挙げられる。
【0196】
心臓血管疾患の例としては、アテローム性動脈硬化症、冠動脈心疾患、肺心疾患および心筋症が挙げられる。
【0197】
免疫不全および自己免疫疾患の例としては、限定するわけではないが、リウマチ性疾患、多発性硬化症および喘息が挙げられる。
【0198】
ウイルス感染の例としては、限定するわけではないが、ヒト免疫不全ウイルス、単純ヘルペスウイルス、ヒトパピローマウイルスならびにB型肝炎ウイルスおよびC型肝炎ウイルスによる感染が挙げられる。
【0199】
神経障害の例としては、限定するわけではないが、パーキンソン病、多発性硬化症、および認知症が挙げられる。
【0200】
遺伝性代謝障害の例としては、限定するわけではないが、ゴーシェ病およびフェニルケトン尿症が挙げられる。
【0201】
本発明は、また、RNAベースの治療の方法にも関する。したがって、本発明は、がん、心臓血管疾患、ウイルス感染、免疫機能障害、自己免疫疾患、神経障害、遺伝性代謝障害、または遺伝病などの疾患を、RNAベースの治療で処置する方法に関する。処置方法の好適な実施形態に関しては、RNA分子または上記で定義したRNAベースの治療で使用するための医薬組成物の文脈において上で述べたのと同じものが準用される。
【0202】
本発明において、対象は、好ましい実施形態では、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマ、げっ歯類、例えばラット、マウス、およびモルモット、または霊長類、例えばゴリラ、チンパンジー、およびヒトなどの哺乳動物である。最も好適な実施形態では、対象はヒトである。
【0203】
上記のように、上記で定義したRNA分子は、医療機関および特定の疾患の処置、特にRNAベースの治療において特に有用である。したがって、本発明は、また、本発明のRNA分子、核酸分子、ベクター、または宿主細胞と、任意選択的に医薬的に許容される担
体とを含む医薬組成物にも関する。
【0204】
しかしながら、RNA治療では、いくつかのステージでのRNA分子の効果を鎮めることが望ましいことがしばしばある。
【0205】
これは、例えば、本発明のUTR配列に対し相補的である核酸鎖を使用して、RNAi(RNA干渉)機構を使用することにより可能である。実際に、本発明の小サイズの最小UTRは、このUTRが二次構造も三次構造も形成せず、正常細胞には存在しないことから、このアプローチは実行可能である。したがって、本発明の医薬組成物を使用した上記疾患の処置の後、または上記RNAベースの治療の後に、斯かるUTR配列の相補的鎖を医療機関において有利に使用し、それにより、本発明の治療用RNA分子を発現停止させることができる。
【0206】
したがって、RNAi-アプローチは、また、本発明の文脈では、本発明の治療用RNA分子の効果を鎮めるための医薬組成物の調製のために使用することも想定される。
【0207】
用語「RNA干渉」または「RNAを阻害すること」(RNAi/iRNA)は、特定のmRNAを分解のために標的し、それによりその発現を停止させるために、二本鎖RNAを使用することを説明する。好適なRNAを阻害する分子は、二本鎖RNA(dsRNA)、RNAi、siRNA、shRNA、およびstRNAからなる群から選択され得る。遺伝子配列に適合するdsRNAは、in vitroで合成され、細胞に導入される。dsRNAは、また、センス配向およびアンチセンス配向で標的遺伝子配列を発現するベクターの形態で、例えば、ヘアピンmRNAの形態で、細胞に導入され得る。センス配列およびアンチセンス配列は、また、別個のベクターより発現し得、それにより、個々のアンチセンス分子およびセンス分子が、その発現時に二本鎖RNAを形成する。いくつかの場合では、センス配向での配列の発現、または、プロモーター配列の発現さえ、dsRNAを生じさせ、続いて、細胞内の内在増幅機構によりsiRNAを生じさせることが当技術分野で知られている。したがって、コード領域によりコードされるポリペプチドまたはタンパク質の活性の低下を引き起こす全ての手段および方法を、本発明に従って使用することができる。例えば、センス構成体、アンチセンス構成体、ヘアピン構成体、センス分子、アンチセンス分子、およびそれらの組み合わせを使用して、これらのsiRNAを生成/導入することが可能である。dsRNAは、天然だが、部分的にのみ理解されている、dsRNA前駆体分子を短い干渉RNA(siRNA)に切断する高度に保存されたヌクレアーゼダイサーを含むプロセスに供給される。siRNAの生成および調製ならびに標的遺伝子の発現を阻害する方法は、とりわけ、国際公開第02/055693号、Wei (2000) Dev. Biol. 15:239-255;La Count (2000) Biochem. Paras. 111:67-76;Baker (2000) Curr. Biol. 10:1071-1074;Svoboda (2000) Development 127:4147-4156、またはMarie (2000) Curr. Biol. 10:289-292に記載されている。これらのsiRNAは、
次に、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)、つまり、サイレンシングトリガーに対し相同のメッセンジャーRNAを破壊するマルチ複合体ヌクレアーゼの、配列特異的部分を構築する。Elbashir (2001) EMBO J. 20:6877-6888は、21ヌクレオチドRNAの二本鎖を細胞培養において使用して、哺乳類細胞の遺伝子発現を干渉することができることを示した。RNAiは、哺乳類細胞においてsiRNAにより非常に効率的に媒介されるが、安定した細胞株または非ヒト遺伝子導入動物の生成は限定されたことがすでに知られている。しかしながら、新しい世代のベクター、例えば、短ヘアピンRNA(shRNA)を、安定して発現させるために利用することができる。哺乳類細胞におけるsiRNAの安定発現は、とりわけ、Brummelkamp (2002) Science 296:550-553に示されている。また、Paul (2002) Nat. Biotechnol. 20:505-508は、ヒト細胞における小干渉RNAの
効率的な発現について述べた。哺乳類細胞における短干渉RNAおよびヘアピンRNAの発現によるRNA干渉は、また、Yu (2002) PNAS 99:6047-6052により示された。遺伝子
サイレンシングのためのshRNAアプローチは当技術分野で周知であり、st(小分子)RNAの使用を含み得る;とりわけ、Paddison (2002) Genes Dev. 16:948-958を参照
されたい。これらのアプローチは、ベクターベースであり得、例えば、pSUPERベクターまたはRNA pol IIIベクターを、とりわけYu (2002), loc. cit.; Miyagishi (2002), loc. cit. or Brummelkamp (2002), loc. citに例示されているように、利
用することができる。本発明の制御配列は、pSUPERベクターまたはRNA pol
IIIベクターをベースにする系と同様の方法で使用されることが想定される。
【0208】
siRNAを推定し、構築する方法は当技術分野で既知であり、Elbashir (2002) Methods 26:199-213、siRNAの商業ベンダーのインターネットウェブサイト、例えば、Qiagen GmbH(https://www1.qiagen.com/GeneGlobe/Default.aspx);Dharmacon(www.dharmacon.com);Xeragon Inc.(http://www.dharmacon.com/Default.aspx)、およびAmbion(www.ambion.com)またはTom Tuschlの研究グループのウェブサイト(http://www.rockefeller.edu/labheads/tuschl/siRNA.html)に記載されている。さらに、siRNAを所与のmRNA配列から推定するための
プログラムをオンラインで利用可能である(例えば、g. http://www.ambion.com/techlib/misc/siRNA_finder.htmlまたはhttp://katahdin.cshl.org:9331/RNAi/html/RNAi.html)。2-nt 3´オーバーハングのウリジン残基は、活性を失うことなく2´デオキシチミジンで置換することが可能であり、これは、RNA合成のコストを著しく低減させ、哺乳類細胞に適用する場合に、siRNA二本鎖の耐性を高め得る(Elbashir (2001) loc.
cit)。siRNAは、また、T7または他のRNAポリメラーゼを使用して、酵素的に合成することができる(Donze (2002) Nucleic Acids Res 30:e46)。効率的なRNA干
渉(esiRNA)を媒介する短RNA二本鎖は、また、大腸菌RNase IIIを用いた加水分解により生成され得る(Yang (2002) PNAS 99:9942-9947)。さらに、真核細
胞において、小ヘアピンRNAループに連結した二本鎖siRNAを発現する発現ベクターが開発されている(例えば、(Brummelkamp (2002) Science 296:550-553)。これらの構成体の全てを、上記で名づけたプログラムの助けで開発することができる。さらに、配列解析プログラムに組み込まれているか、または別個に売られている、商業的に利用可能な配列予測ツール、例えば、www.oligoEngine.com(シアトル、ワシントン州)により提
供されるsiRNA Design Toolを、siRNA配列予測に使用することができる。
【0209】
したがって、特異的な干渉RNAを、本発明に従って、本発明のRNA分子のコード領域にコードされたポリペプチドまたはタンパク質の発現および/または機能のアンタゴニスト/サイレンサーとして使用することが可能である。これらのsiRNAは、相補的/アンチセンスおよびセンス鎖により形成され、これにより、アンチセンス/センス鎖は、少なくとも10、より好適には少なくとも12、より好適には少なくとも14、より好適には少なくとも16、より好適には少なくとも18、より好適には少なくとも19、20、21、または22ヌクレオチドを好適には含む。さらにより好適な実施形態では、アンチセンス/センス鎖は、好適には、25以上のヌクレオチドを含む。
【0210】
上記のように、本発明に従って使用するsiRNAを調製する方法は、当技術分野で周知である。本発明で提供する教示に基づき、当業者は、斯かるsiRNAを調製するだけでなく、siRNAが、本発明のRNA分子のコード領域にコードされたポリペプチドまたはタンパク質をアンタゴナイズする/干渉する/発現停止させることが可能であるか否かを評価できる立場に容易に立つ。本明細書では、上記のsiRNAは、ポリペプチドまたはタンパク質をコードするコード領域とUTR分子を宿す本発明のRNA分子の分解を招き、それにより、本発明のRNA分子のコード領域にコードされたポリペプチドまたはタンパク質のポリペプチド/タンパク質レベルは下げられると考える。
【0211】
したがって、本発明は、本明細書で上記したように、本発明のUTRに対し相補的なRNA分子に関する。
【0212】
好適な実施形態では、本発明のUTRに対し相補的な前記RNA分子は、配列CAUGGUGGCGUCUCCC(SEQ ID NO:11またはSEQ ID NO:11と比較して1~4個の置換を示す配列を含む。
【0213】
別の好適な実施形態では、本発明のUTRに対し相補的な前記RNA分子は、配列CAUGGUGGCNGUCUCCC(SEQ ID NO:12)であって、SEQ ID
NO:12の位置10のヌクレオチドNがU、G、C、もしくはAからなる群から選択されるヌクレオチドである、配列か、または、SEQ ID NO:12と比較し1~4個の置換を示す配列を含み、これは、本発明のRNA分子のコード領域にコードされたポリペプチドまたはタンパク質をアンタゴナイズする/干渉する/発現停止させることが可能である。
【0214】
好適な実施形態では、本発明のUTRに対し相補的な前記RNA分子は、配列CAUCUUGGCGUCUCCC(SEQ ID NO:13)か、または、SEQ ID NO:13と比較し1~4個の置換を示す配列を含む。
【0215】
別の好適な実施形態では、本発明のUTRに対し相補的な前記RNA分子は、配列CAUCUUGGCNGUCUCCC(SEQ ID NO:14)であって、SEQ ID
NO:14の位置10のヌクレオチドNがU、G、C、もしくはAからなる群から選択されるヌクレオチドであるが、Aがより好適である、配列か、または、SEQ ID NO:14と比較し1~4個の置換を示す配列を含み、これは、本発明のRNA分子のコード領域にコードされたポリペプチドまたはタンパク質をアンタゴナイズする/干渉する/発現停止させることが可能である。
【0216】
好適な実施形態では、本発明のUTRに対し相補的な前記RNA分子は、配列CAUGGCGGCGUCUCCC(SEQ ID NO:15)か、または、SEQ ID NO:15と比較し、1~4個の置換を示す配列を含む。
【0217】
別の好適な実施形態では、本発明のUTRに対し相補的な前記RNA分子は、配列CAUGGCGGCNGUCUCCC(SEQ ID NO:16)であって、SEQ ID
NO:16の位置10のヌクレオチドNがU、G、C、もしくはAからなる群から選択されるヌクレオチドである、配列か、または、SEQ ID NO:16と比較し1~4個の置換を示す配列を含み、これは、本発明のRNA分子のコード領域にコードされたポリペプチドまたはタンパク質をアンタゴナイズする/干渉する/発現停止させることが可能である。
【0218】
好適な実施形態では、本発明のUTRに対し相補的な前記RNA分子は、配列CAUCUCGGCGUCUCCC(SEQ ID NO:17)か、または、SEQ ID NO:17と比較し1~4個の置換を示す配列を含む。
【0219】
別の好適な実施形態では、本発明のUTRに対し相補的な前記RNA分子は、配列CAUCUCGGCNGUCUCCC(SEQ ID NO:18)であって、SEQ ID
NO:18の位置10のヌクレオチドNがU、G、C、もしくはAからなる群から選択されるヌクレオチドであるが、Aがより好適である、配列か、または、SEQ ID NO:18と比較し1~4個の置換を示す配列を含み、これは、本発明のRNA分子のコード領域にコードされたポリペプチドまたはタンパク質をアンタゴナイズする/干渉する/発現停止させることが可能である。
【0220】
別の好適な実施形態では、本発明のUTRに対し相補的な前記RNA分子は、配列CAUGGUGGCGUCCC(SEQ ID NO:19)か、または、SEQ ID NO:19と比較し1~4個の置換を示す配列を含む。
【0221】
別の好適な実施形態では、本発明のUTRに対し相補的な前記RNA分子は、配列CAUGGUGGCNGUCCC(SEQ ID NO:20)であって、SEQ ID NO:20の位置10のヌクレオチドNがU、G、C、もしくはAからなる群から選択されるヌクレオチドである、配列か、または、SEQ ID NO:20と比較し1~4個の置換を示す配列を含み、これは、本発明のRNA分子のコード領域にコードされたポリペプチドまたはタンパク質をアンタゴナイズする/干渉する/発現停止させることが可能である。
【0222】
好適な実施形態では、本発明のUTRに対し相補的な前記RNA分子は、配列CAUCUUGGCGUCCC(SEQ ID NO:21)か、または、SEQ ID NO:21と比較し1~4個の置換を示す配列を含む。
【0223】
別の好適な実施形態では、本発明のUTRに対し相補的な前記RNA分子は、配列CAUCUUGGCNGUCCC(SEQ ID NO:22)であって、SEQ ID NO:22の位置10のヌクレオチドNがU、G、C、もしくはAからなる群から選択されるヌクレオチドであるが、Aがより好適である、配列か、または、SEQ ID NO:22と比較し1~4個の置換を示す配列を含み、これは、本発明のRNA分子のコード領域にコードされたポリペプチドまたはタンパク質をアンタゴナイズする/干渉する/発現停止させることが可能である。
【0224】
好適な実施形態では、本発明のUTRに対し相補的な前記RNA分子は、配列CAUGGCGGCGUCCC (SEQ ID NO:23)か、または、SEQ ID NO
:23と比較し1~4個の置換を示す配列を含む。
【0225】
別の好適な実施形態では、本発明のUTRに対し相補的な前記RNA分子は、配列CAUGGCGGCNGUCCC(SEQ ID NO:24)であって、SEQ ID NO:24の位置10のヌクレオチドNがU、G、C、もしくはAからなる群から選択されるヌクレオチドである、配列か、または、SEQ ID NO:24と比較し1~4個の置換を示す配列を含み、これは、本発明のRNA分子のコード領域にコードされたポリペプチドまたはタンパク質をアンタゴナイズする/干渉する/発現停止させることが可能である。
【0226】
好適な実施形態では、本発明のUTRに対し相補的な前記RNA分子は、配列CAUCUCGGCGUCCC(SEQ ID NO:25)か、または、SEQ ID NO:25と比較し1~4個の置換を示す配列を含む。
【0227】
別の好適な実施形態では、本発明のUTRに対し相補的な前記RNA分子は、配列CAUCUCGGCNGUCCC(SEQ ID NO:26)であって、SEQ ID NO:26の位置10のヌクレオチドNがU、G、C、もしくはAからなる群から選択されるヌクレオチドであるが、Aがより好適である、配列か、または、SEQ ID NO:26と比較し1~4個の置換を示す配列を含み、これは、本発明のRNA分子のコード領域にコードされたポリペプチドまたはタンパク質をアンタゴナイズする/干渉する/発現停止させることが可能である。
【0228】
別の好適な実施形態では、本発明のUTRに対し相補的な前記RNA分子は、配列CA
UGGUGGCGCUUC(SEQ ID NO:27)か、または、SEQ ID NO:27と比較し1~4個の置換を示す配列を含む。
【0229】
別の好適な実施形態では、本発明のUTRに対し相補的な前記RNA分子は、配列CAUGGUGGCNGCUUC(SEQ ID NO:28)であって、SEQ ID NO:28の位置10のヌクレオチドNがU、G、C、もしくはAからなる群から選択されるヌクレオチドである、配列か、または、SEQ ID NO:28と比較し1~4個の置換を示す配列を含み、これは、本発明のRNA分子のコード領域にコードされたポリペプチドまたはタンパク質をアンタゴナイズする/干渉する/発現停止させることが可能である。
【0230】
好適な実施形態では、本発明のUTRに対し相補的な前記RNA分子は、配列CAUCUUGGCGCUUC(SEQ ID NO:29)か、または、SEQ ID NO:29と比較し1~4個の置換を示す配列を含む。
【0231】
別の好適な実施形態では、本発明のUTRに対し相補的な前記RNA分子は、配列CAUCUUGGCNGCUUC(SEQ ID NO:30)であって、SEQ ID NO:30の位置10のヌクレオチドNがU、G、C、もしくはAからなる群から選択されるヌクレオチドであるが、Aがより好適である、配列か、または、SEQ ID NO:30と比較し1~4個の置換を示す配列を含み、これは、本発明のRNA分子のコード領域にコードされたポリペプチドまたはタンパク質をアンタゴナイズする/干渉する/発現停止させることが可能である。
【0232】
好適な実施形態では、本発明のUTRに対し相補的な前記RNA分子は、配列CAUGGCGGCGCUUC(SEQ ID NO:31)か、または、SEQ ID NO:31と比較し1~4個の置換を示す配列を含む。
【0233】
別の好適な実施形態では、本発明のUTRに対し相補的な前記RNA分子は、配列CAUGGCGGCNGCUUC(SEQ ID NO:32)であって、SEQ ID NO:32の位置10のヌクレオチドNがU、G、C、もしくはAからなる群から選択されるヌクレオチドである、配列か、または、SEQ ID NO:32と比較し1~4個の置換を示す配列を含み、これは、本発明のRNA分子のコード領域にコードされたポリペプチドまたはタンパク質をアンタゴナイズする/干渉する/発現停止させることが可能である。
【0234】
好適な実施形態では、本発明のUTRに対し相補的な前記RNA分子は、配列CAUCUCGGCGCUUC(SEQ ID NO:33)か、または、SEQ ID NO:33と比較し1~4個の置換を示す配列を含む。
【0235】
別の好適な実施形態では、本発明のUTRに対し相補的な前記RNA分子は、配列CAUCUCGGCNGCUUC(SEQ ID NO:34)であって、SEQ ID NO:34の位置10のヌクレオチドNがU、G、C、もしくはAからなる群から選択されるヌクレオチドであるが、Aがより好適である、配列か、または、SEQ ID NO:34と比較し1~4個の置換を示す配列を含み、これは、本発明のRNA分子のコード領域にコードされたポリペプチドまたはタンパク質をアンタゴナイズする/干渉する/発現停止させることが可能である。
【0236】
別の好適な実施形態では、本発明は、開始コドンに対し相補的なトリプレットを超えて伸長する5´末端に追加のヌクレオチドを宿し、本発明のRNA分子のコード領域にコードされる所望のポリペプチドまたはタンパク質の配列に対し相補的である、SEQ ID
NO:11~34からなる群から選択されるRNA分子に関する。好適には、本発明のUTR配列に対し相補的な上記配列を含む相補配列(つまり、SEQ ID NO:11~34からなる群から選択されるRNA分子)は、好適には、少なくとも15、より好適には少なくとも16、より好適には少なくとも17、より好適には少なくとも18、より好適には少なくとも19、より好適には少なくとも20、21、22、23、または24ヌクレオチドを含む。さらにより好適な実施形態では、これらの配列は、25、30、35、40、またはそれ以上のヌクレオチドを含む。相補配列の特異性を高めることにより不所望の副作用を防ぐために、5´末端の長さを伸ばすことが望ましい場合がある。
【0237】
別の好適な実施形態では、本発明は、上記のRNA分子の何れかだけでなく、SEQ ID NO:11~34からなる群から選択され、上記のRNA分子に対し最大で5%、10%、20%、または30%のミスマッチを含む、RNA分子にも関する。さらに、RNA分子は、本明細書で上記したように化学的に修飾され得る。
【0238】
本発明は、また、本発明のDNA分子、本発明のRNA分子、本発明の核酸分子、本発明のベクター、または本発明の宿主細胞を含むキットにも関する。好適な実施形態に関しては、本発明のDNA分子、RNA分子、核酸分子、ベクター、または宿主細胞の文脈において上で述べたのと同じものが準用される。有利なことに、本発明のキットは、さらに、任意選択的に、上記および以下の使用および方法の実行に必要な緩衝液、保存液、および/または残りの試薬もしくは物質を含む。さらに、本発明のキットの一部は、バイアルもしくはボトルにおいて個別に、または、容器もしくはマルチコンテナユニット中で組み合わせて、パッケージ化することが可能である。本発明のキットは、とりわけ、本発明の方法の実行または本発明のRNA分子の調製に有利に使用され得、本明細書で言及する種々の応用において、例えば、上記および以下で概説する用途において利用することが可能である。キットに含まれ得る別の構成要素は、キットの使用者に向けられた、キットの使用についての指示書である。キットの製造は、好適には、当業者に既知である標準的な手順に従う。
【0239】
本発明は、また、RNA分子のコード領域を、前記コード領域にコードされたポリペプチドまたはタンパク質に翻訳するために、本明細書で上記したUTRを使用することにも関する。
【0240】
より好適な実施形態では、本発明は、また、RNA分子のコード領域を、前記コーディングにコードされたポリペプチドまたはタンパク質に翻訳する効率を高めるために、本明細書で上記したUTRを使用することにも関する。
【0241】
使用についての好適な実施形態に関しては、本発明のRNA分子の文脈において上で述べたのと同じものが準用される。
【0242】
好適な実施形態では、本発明は、以下の項目1~20により特徴付けられる次のものに関する:
【0243】
1.mRNAに転写され得るDNA分子であって、以下のエレメント:
(a)その5´末端に開始コドンを含み、ポリペプチドをコードするコード領域と;
(b)前記コード配列のすぐ上流にある、以下の(b1)および(b2)からなる群から選択される配列とを有する一本の鎖を含むか;または相補鎖を含み、
(b1)は、R-CGCCACC(SEQ ID NO:1)か;または、
前記配列において、SEQ ID NO:1の位置6のCがAに置換され、SEQ ID
NO:1の位置7のCがGに置換され;および/もしくはSEQ ID NO:1の位置5のAがGに置換されている配列であり;
(b2)は、R-CNGCCACC(SEQ ID NO:2)であって、SEQ ID NO:2の位置2のヌクレオチドNがT、G、C、もしくはAから成る群から選択されるヌクレオチドである、配列か;または、
前記配列において、SEQ ID NO:2の位置7のCがAに置換され、SEQ ID
NO:2の位置8のCがGに置換され;および/もしくはSEQ ID NO:2の位置6のAがGに置換されている配列であり、
は、DNA依存性RNAポリメラーゼにより認識されるプロモーターである、DNA分子。
【0244】
2.DNA依存性RNAポリメラーゼにより認識される前記プロモーターが:
(i)TAATACGACTCACTATAGGGAGA(SEQ ID NO:3)、または、SEQ ID NO:3と比較して1~6個の置換を示し、T7DNA依存性RNAポリメラーゼにより認識される配列;
(ii)AATTAACCCTCACTAAAGGGAGA(SEQ ID NO:4)、または、SEQ ID NO:4と比較し1~6個の置換を示し、T3DNA依存性RNAポリメラーゼにより認識される配列;
(iii)ATTTAGGTGACACTATAGAAG(SEQ ID NO:5)、またはSEQ ID NO:5と比較して1~6個の置換を示し、SP6DNA依存性RNAポリメラーゼにより認識される配列;および、
(iv)AATTAGGGCACACTATAGGGA(SEQ ID NO:6)、またはSEQ ID NO:6と比較して1~6個の置換を示し、K11DNA依存性RNAポリメラーゼにより認識される配列からなる群から選択される、項目1に記載のDNA分子。
【0245】
3.SEQ ID NO:2の位置2のヌクレオチドNがT、G、またはCからなる群から選択されるヌクレオチドであり、ヌクレオチドNはAではない、項目1または2に記載のDNA分子。
【0246】
4.SEQ ID NO:2の位置2の前記ヌクレオチドNがTである、項目3に記載のDNA分子。
【0247】
5.項目4のDNA分子を含むベクター。
【0248】
6.項目5のベクターを含む、宿主細胞。
【0249】
7.項目1~4の何れか一つに記載のDNA分子、項目5に記載のベクター、または項目6に記載の宿主細胞を含む、組成物。
【0250】
8.(a)その5´末端に開始コドンを含み、ポリペプチドをコードするコード領域と;
(b)前記コード配列のすぐ上流にある、以下の(b1)および(b2)からなる群から選択されるUTRとを含むRNA分子であって、
(b1)は、配列R-CGCCACC(SEQ ID NO:1)のUTRか、または前記UTR配列において、SEQ ID NO:1の位置6のCがAに置換され、SEQ ID NO:1の位置7のCがGに置換され;および/もしくはSEQ ID NO:1の位置5のAがGに置換されている配列のUTRであり;
(b2)は、配列R-CNGCCACC(SEQ ID NO:2)であって、SEQ ID NO:2の位置2のヌクレオチドNがU、G、C、もしくはAからなる群から選択されるヌクレオチドである配列のUTRか、または前記UTR配列において、SEQ ID NO:2の位置7のCがAに置換され、SEQ ID NO:2の位置8のC
がGに置換され;および/もしくはSEQ ID NO:2の位置6のAがGに置換されている配列のUTRであり、
は、DNA依存性RNAポリメラーゼがRNA合成を開始するヌクレオチドで始まるプロモーター領域の一部に相当するRNA配列である、RNA分子。
【0251】
9.Rは、
(i)GGGAGA(SEQ ID NO:7);
(ii)GGGAGA(SEQ ID NO:8);
(iii)GAAG(SEQ ID NO:9);および
(iv)GGGA(SEQ ID NO:10)からなる群から選択される、項目8に記載のRNA分子。
【0252】
10.SEQ ID NO:2の位置2のヌクレオチドNがU、G、またはCからなる群から選択されるヌクレオチドであり、ヌクレオチドNはAではない、項目8または9に記載のRNA分子。
【0253】
11.SEQ ID NO:2の位置2の前記ヌクレオチドNがUである、項目10に記載のRNA分子。
【0254】
12.3´末端にポリAテールを含む、項目8~11の何れか一つに記載のRNA分子。
【0255】
13.前記ポリAテールの長さは少なくとも120ヌクレオチドである、項目8~12の何れか一つに記載のRNA分子。
【0256】
14.項目8~13の何れか一つのRNA分子をコードする核酸分子。
【0257】
15.項目14の核酸分子を含むベクター。
【0258】
16.項目15のベクターを含む宿主細胞。
【0259】
17.項目8~13の何れか一つに記載のRNA分子、項目14に記載の核酸分子、項目15に記載のベクター、または項目16に記載の宿主細胞と、任意選択的に医薬的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
【0260】
18.RNAベースの治療で使用される、項目17の医薬組成物。
【0261】
19.項目1~4の何れか一つに記載のDNA分子、項目8~13の何れか一つに記載のRNA分子、項目14に記載の核酸分子、項目5もしくは15に記載のベクター、または、項目6もしくは16に記載の宿主細胞を含む、キット。
【0262】
20.RNA分子のコード領域を、前記コード領域にコードされたポリペプチドまたはタンパク質に翻訳するための、項目8(b)で定義したUTRの使用。
【図面の簡単な説明】
【0263】
図1】本発明で使用する個々のルシフェラーゼレポーター構成体の名前と共に、「最小UTR」配列を宿す配列を示す図である。配列は、T7プロモーターと、開始コドンATGが続くコザックエレメントの一部を宿す。TATA配列と後続の6塩基(GGGAGA)を含む最初の10塩基は、T7プロモーターに由来する配列である一方、開始コドンATGの上流の残りの塩基は、コザックエレメントに属する(GCCACC)。「Sp30」は、30ヌクレオチドのランダム配列である。配列番号9で下線を引いた配列は、長さが30ヌクレオチドであるヒトαグロビン(「hAg」)に由来する5´UTR配列である。図1に示す配列1~9は、それぞれSEQ ID NO:37~45に対応する。
図2A】「最小UTR」中の余分な「C」が必須であることを示す図である(図1の配列番号1および番号2)。ヒト肺胞上皮性細胞株(A549)およびヒト肝細胞がん細胞株(HepG2)を、96ウェルプレートに、それぞれ、20,000細胞/ウェルおよび40,000細胞/ウェルという密度で播種した。播種して24時間後に、Lipofectamine(登録商標)2000を使用して、細胞に、SNIM RNA構成体(図1の配列1および2)をコードする異なるルシフェラーゼを遺伝子導入した。ルシフェラーゼの発現を遺伝子導入の24時間後に測定した。値は3反復の平均±SD2を表し、該値を遺伝子導入量に対しプロットし、GraphPad Prismによりデータ解析した。A549細胞およびHepG2細胞の両方において、Cの除去は、より低い発現をもたらした。そのため、この余分なCを、全てのさらなる構成体の設計に含めた。
図2B】「最小UTR」中の余分な「C」が必須であることを示す図である(図1の配列番号1および番号2)。ヒト肺胞上皮性細胞株(A549)およびヒト肝細胞がん細胞株(HepG2)を、96ウェルプレートに、それぞれ、20,000細胞/ウェルおよび40,000細胞/ウェルという密度で播種した。播種して24時間後に、Lipofectamine(登録商標)2000を使用して、細胞に、SNIM RNA構成体(図1の配列1および2)をコードする異なるルシフェラーゼを遺伝子導入した。ルシフェラーゼの発現を遺伝子導入の24時間後に測定した。値は3反復の平均±SD2を表し、該値を遺伝子導入量に対しプロットし、GraphPad Prismによりデータ解析した。A549細胞およびHepG2細胞の両方において、Cの除去は、より低い発現をもたらした。そのため、この余分なCを、全てのさらなる構成体の設計に含めた。
図3】示すような個々のヌクレオチドの影響を示し、A549遺伝子導入細胞における、余分な「C」とコザックエレメントの間の距離の影響を実証する図である。材料および方法で記載するように、細胞に遺伝子導入し、ルシフェラーゼアッセイを実行した。より多い用量が線形範囲を外れたため、62.5ng/ウェルまでの用量反応のみをここでは提示する。ヒトαグロビンに由来する5´UTRを、正の対照として使用した。図1の配列3-8それぞれを宿すSNIM RNA分子を用いた遺伝子導入実験を実行した。ヒト肺胞上皮性細胞株(A549)を、96ウェルプレートに、20,000細胞/ウェルの密度で播種した。播種して24時間後に、Lipofectamine(登録商標)2000を使用して、細胞に、SNIM RNA構成体(図1の配列番号3-8)をコードする異なるルシフェラーゼを遺伝子導入した。ルシフェラーゼの発現を遺伝子導入の24時間後に測定した。値を遺伝子導入量に対しプロットし、GraphPad Prismによりデータ解析した。値は3反復の平均±SDを表す。肺胞上皮性細胞株(A549)では、Cとコザックエレメントの間への余分な「A」の挿入(図1の配列番号3)は、著しく低い発現をもたらした(図3)。Cとコザックエレメントの間への単一「T」の挿入(図1の配列番号4)は、正の対照として使用したヒトαグロビンの5´UTRで達成されるとの同等の発現レベルをもたらした。
図4】示すような個々のヌクレオチドの影響を示し、HepG2遺伝子導入細胞における、余分な「C」とコザックエレメントの間の距離の影響を実証する図である。材料および方法で記載するように、細胞に遺伝子導入し、ルシフェラーゼアッセイを実行した。より多い用量が線形範囲を外れたため、62.5ng/ウェルまでの用量反応のみをここでは提示する。図1の配列番号3-8を用いた遺伝子導入実験を実行した。肝細胞がん細胞株(HepG2)を、96ウェルプレートに、40,000細胞/ウェルという密度で播種した。播種して24時間後に、Lipofectamine(登録商標)2000を使用して、細胞に、SNIM RNA構成体(図1の配列番号3-8)をコードする異なるルシフェラーゼを遺伝子導入した。ルシフェラーゼの発現を遺伝子導入の24時間後に測定した。値を遺伝子導入量に対しプロットし、GraphPad Prismによりデータ解析した。値は3反復の平均±SDを表す。両細胞株(A549細胞(図3)およびHepG2(図4))において、Cとコザックエレメントの間への余分な「A」の挿入(図1の配列番号3)は、著しく低い発現をもたらした(図3および4)。両細胞タイプにおいて、Cとコザックエレメントの間への単一「T」の挿入(図1の配列番号4)は、正の対照として使用したヒトαグロビンの5´UTRで達成されるとの同等の発現レベルをもたらした。HepG2細胞では、配列番号1(図1)も、同等に効果的だった。
図5】A549細胞における、ルシフェラーゼの発現に対するTISUエレメントの影響を示す図である。詳細な用量反応と曲線の当てはめを、構成体をコードする選択したルシフェラーゼについて実行した。図2~4のこれまでのデータに基づき、TISUエレメントを、2つの所望の特質を含有する配列4(図1)の組み合わせに持ち込んだ:(図1の配列番号9を達成するためのT7プロモーターとコザックエレメントの間にCおよび、Cとコザックエレメントの間に余分なT)。ヒト肺胞上皮性細胞株(A549)(図5AおよびB)ならびにヒト肝細胞がん細胞株(HepG2)(図5CおよびD)を、96ウェルプレートに、それぞれ、20,000細胞/ウェルおよび40,000細胞/ウェルという密度で播種した。播種して24時間後に、Lipofectamine(登録商標)2000を使用して、細胞に、SNIM RNA構成体をコードする異なるルシフェラーゼを遺伝子導入した。ルシフェラーゼの発現を、遺伝子導入の24時間後と48時間後に測定した(図5E)。値を遺伝子導入量に対しプロットし、GraphPad Prismによりデータ解析した。示すように、A459(A、B)およびHepG2(C、D)細胞に、mRNAをコードする異なるルシフェラーゼを遺伝子導入。ルシフェラーゼの活性を、遺伝子導入の24時間後(A,C)および48時間後(B,D)に測定した。値は3反復の平均±SDを表す。両細胞株において、両測定時点で、TISUエレメントを含有するルシフェラーゼ構成体で著しくより高い発現が得られた(図5A~D)。
図6】A549細胞(図6A)およびHepG2細胞(図6B)における、ルシフェラーゼの発現に対するTISUエレメントの影響を示す図である。ヒト肺胞上皮性細胞株(A549)およびヒト肝細胞がん細胞株(HepG2)を、96ウェルプレートに、それぞれ、20,000細胞/ウェルおよび40,000細胞/ウェルという密度で播種した。播種して24時間後に、Lipofectamine(登録商標)2000を使用して、細胞に、SNIM RNA構成体をコードする異なるルシフェラーゼを遺伝子導入した(X軸は、96ウェルプレートのウェル毎のSNIM RNAのng量を示す)。ルシフェラーゼの発現を遺伝子導入の24時間後に測定した。値を遺伝子導入量に対しプロットし、GraphPad Prismによりデータ解析した。示すように、A459(A)およびHepG2(B)に、mRNAをコードする異なるルシフェラーゼを遺伝子導入。
図7】mRNA構成体をコードする異なるルシフェラーゼを用いた、マウスでのin vivo実験の結果を示す図である。図7に示すルシフェラーゼ構成体(各UTR配列エレメントについては図1を参照)について、Balb/cマウス(メス、6-8週)においてin vivoでテストした。この実験セットでは、導入遺伝子の発現を高めることが示されている追加のUTRエレメント(国際公開第2012/170930A1号)も、その有効性についてテストした。このUTRエレメントを含有するルシフェラーゼ構成体は、Luc2-SUSAと呼ばれている。20μgの各SNIM-RNAをLF-44と組み合わせ、Balb/cマウスに静脈内注射した。in vivoでの画像化を、IVIS撮像系を利用して注射の6時間後に実行し、光子/秒/cm/srとして定量化した値をプロットした。全動物画像化の結果を図7Aに示し、全臓器を画像化した結果を図7B(肝臓)、7C(肺)、7D(脾臓)それぞれに示す。動物から取った臓器を液体窒素で凍らせ、ホモジナイズした。細胞をTris-HCl溶解バッファーに溶解し、ルシフェラーゼの活性を測定した。結果を図7E(肝臓)、7F(肺)、7G(脾臓)それぞれに示す。TISUエレメントの挿入は、以前公開された5´および3´UTR(国際公開第2012/170930A1号)と比較し、より高い発現をもたらした。Cとコザックの間への単一のTの追加(図1の配列番号4)は、ヒトαグロビンUTR(図1の配列番号8)で観察されるのと同等の発現レベルをもたらす。TISUエレメントの配列番号4(図1)への追加は、さらに、発現を増大させた(図1の配列番号9)。驚くべきことに、ヒトαグロビンUTRの影響は、配列特異的であるとはいえないことが分かった。ランダムな30ヌクレオチド配列が、ヒトαグロビン5´UTRと同様の発現レベルを支持した。細胞株におけるin vitro結果およびマウスにおけるin vivo実験に基づき、配列番号1、4、7、および9(図1)が、転写物療法用に、「最小UTR」を宿す配列の期待の持てる候補として提案される。これらの最小UTR配列は、in vitro転写時のRNA生成量に対し悪い影響を与えず、結果として生じるmRNAは、従来の技術水準のUTRを含有するmRNAと比較し、さらにより効率的に翻訳される。
図8】mRNA構成体をコードする異なるルシフェラーゼを有するマウスの、白血球数(WBC)(図8A)、赤血球(RBC)(図8B)、血小板(図8C)、ヘモグロビン(図8D)、およびヘマトクリット(図8E)の値を示す図である。実験を、基本的には、図7に記載するように行い、血液パラメータをSysmex KX-21N(商標)Automated Hematology Analyzer(イリノイ州、USA)を利用することにより解析した。
図9】非常に高いEPO発現を支持することが知られている(国際公開第2012/170930A1号:図1および2)の5´および3´UTR(SUSA UTR)を含有するmRNAをコードするヒトEPOと比較した、mRNAをコードするヒトEPOを含有するTISUエレメントを用いた発現実験を示す図である。ヒト肺胞上皮性細胞株(A549)およびヒト肝細胞がん細胞株(HepG2)を、96ウェルプレートに、それぞれ、20,000細胞/ウェルおよび40,000細胞/ウェルという密度で播種した。播種して24時間後に、細胞に、Lipofectamine(登録商標)2000を使用して、SNIM RNA構成体をコードする異なるEPOを250ng遺伝子導入した。ELISA(R&D Systems(ミネソタ州、USA)のHuman Erythropoietin Quantikine IVD ELISA Kit)により遺伝子導入の24時間後にEPO量を定量化し、GraphPad Prismによりデータ解析した。値は3反復の平均±SDを表す。
図10】ヒトOTCを用いた発現実験を示す図である。ヒトOTCについて、mRNAをコードするhOTCを含有するTISUエレメントからの発現を、これまでに知られている他の全ての組み合わせと比較し最も高い発現を生成することが知られている5´ヒトαグロビンUTRを含有するmRNAをコードするhOTCからの発現と比較した。ヒト肝細胞がん細胞株(HepG2)を96ウェルプレートに播種し、播種して24時間後に、細胞に、Lipofectamine2000を使用して、SNIM RNA構成体をコードする異なるhOTCを遺伝子導入した。遺伝子導入の24時間後に、細胞を溶解し、ウェスタンブロットを使用してOTC量を定量化した。SNIM RNAをコードするhOTCを含有する、hAgとTISUエレメントの両方が、同様のレベルのhOTC発現をもたらした(図10A)。ビンキュリンをハウスキーパーとして使用し、帯強度を定量化し、定量化内部標準として使用した(図10B)。
図11】配列7に存在するランダムな30ヌクレオチド長のスペーサ(左)と、配列8に存在するヒトαグロビンの5´UTR(右)の予想第2構造を示す図である。
【0264】
本発明の他の態様および利点を以下の例で記載するが、これは例示のために提供するものであり、限定のためではない。本出願で言及する各刊行物、特許、特許出願、または他の文書は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【実施例0265】
I.物質および方法
プラスミドベクター
各5´UTR配列をコドン最適化ルシフェラーゼ配列と共にGeneScriptG(
ニュージャージー州、USA)により合成し、pUC57-Kan(GeneScript)においてクローン化した。EPO(コドン最適化ヒトエリスロポエチン)およびOTC(コドン最適化ヒトオルニチントランスカルバミラーゼ)の場合、コード配列ルシフェラーゼ遺伝子を、EPO(SEQ ID NO:35)とOTC(SEQ ID NO:36)の遺伝子それぞれのコード配列と置き換えた。構成体において使用するUTR配列は、各ルシフェラーゼレポーター構成体の名前と共に図1に示す。
【0266】
mRNA生成
in vitroで転写されたmRNA(IVT mRNA)を生成するために、プラスミドをBstBI消化により直線化し、クロロホルム抽出およびエタノール沈殿により精製した。精製した直鎖状プラスミドをRiboMax Large Scale RNA production System-T7(Promega,ドイツ)を使用して、in vitro転写の鋳型として使用した。アンチリバースキャップアナログ(ARCA)を反応混合物に加えて、5´キャップ化mRNAを生成し、mRNAをポリアデニル化して(Thermo Scientific)、3´ポリAテールを生成した。
【0267】
加えて、SNIM mRNAの生成については、化学修飾したヌクレオチド、すなわち、メチル-CTPおよびチオ-UTP(Jena Bioscience,ドイツ)を、ATP:CTP:UTP:メチル-CTP:チオ-UTP:GTPが7.57mM:5.68mM:5.68mM:1.89mM:1.89mM:1.21mMという最終濃度に加えた。完全IVT混合物を37℃で2時間インキュベーションし、続いて、37℃で20分間、DNaselでDNAを消化した。RNAを酢酸アンモニウムで沈殿させ(最終濃度2.5M)、70%EtOHで洗浄した。洗浄ステップを2回実行した。最終的に、RNAペレットをRNAseフリー水に再懸濁した。全てのmRNAを1%アガロースゲル上で検証した。転写RNAは、ウリジン残基の約25%が2-チオウリジン(s2U)でありシチジン残基の約25%が5-メチルシチジン(m5C)であるという点で化学修飾されている。UTRの配列は図1で提供する。
【0268】
in vitro遺伝子導入
ヒト肺胞上皮性細胞株(A549)およびヒト肝細胞がん細胞株(HepG2)を、96ウェルプレートに、それぞれ20,000細胞/ウェルおよび40,000細胞/ウェルという密度で播種した。播種して24時間後に、商業的な遺伝子導入試薬Lipofectamine(登録商標)2000を、1μgのmRNAにつき2.5μLのLipofectamine(登録商標)2000という比率で使用して、細胞に、SNIM RNA構成体をコードする異なるルシフェラーゼを遺伝子導入した(図2-6のX軸は、96ウェルプレートのウェル毎のSNIM RNAのng量を示す)。複合体形成を、以下のように準備した:Lipofectamine(登録商標)2000とmRNAを別々にOptiMEM遺伝子導入媒体で希釈し、それぞれ、45μLの総体積となるまで加えた。これらの混合物を室温で5分間インキュベーションした。次に、Lipofectamine(登録商標)2000溶液をmRNA溶液と混ぜ、次に、室温でもう20分間インキュベーションした。遺伝子導入総体積90μLにおいて、細胞を37℃(5%CO2レベル)で1時間インキュベーションした。その後、遺伝子導入培地を取り除き、細胞をPBSで洗浄した。続いて、細胞を、10%FBSを含有するLeibovitz L-15培地を用いて再度インキュベーションした。
【0269】
細胞培養
ヒト肺胞腺がん細胞株(A549,ATCC CCL-185)を、10%FBSを補充したHam F12K培地で増殖させた。ヒト肝細胞がん細胞株(HepG2,ATCC HB-8065)を、10%ウシ胎児血清を補充したDMEM培地で培養した。全ての細胞株を、5%CO2レベルの加湿雰囲気において増殖させた。
【0270】
バイオルミネセンス測定
ホタルルシフェラーゼ(FFL)が共通のレポータータンパク質であり、これは、哺乳動物には内因的に存在せず、発光画像法により容易に検出することが可能である。ルシフェラーゼは、バイオルミネセンス発光を生じさせるルシフェリンと酸素の反応を触媒する。
【0271】
ヒト肺胞上皮性細胞株(A549)およびヒト肝細胞がん細胞株(HepG2)を、96ウェルプレートに、それぞれ、20,000細胞/ウェルおよび40,000細胞/ウェルという密度で播種した。播種して24時間後に、Lipofectamine(登録商標)2000を使用して、細胞に、SNIM RNA構成体をコードする異なるルシフェラーゼを遺伝子導入した(X軸は、96ウェルプレートのウェル毎のSNIM RNAのng量を示す)。バイオルミネセンスを遺伝子導入の24時間後に測定した。値を遺伝子導入量に対しプロットし、GraphPad Prismによりデータ解析した。
【0272】
ホモジナイズした組織可溶化物におけるルシフェラーゼ発現を定量化するため、臓器を動物から採取し、液体窒素で凍らせ、ホモジナイズし、細胞を溶解バッファー(0.1%Tritron-X100を有する25mM Tris-HCl pH7.5)に溶解した。
【0273】
動物
6~8週齢のメスのBALB/cマウスをJanvier,Route Des Chenes SecsBP5,F-53940 Le Genest St.Isle,Franceより得て、特定病原体除去条件下で維持した。実験前に少なくとも7日間、マウスを動物施設の環境に順応させた。全ての動物手順が地方の倫理員会により承認および制御され、ドイツの動物生態保護法のガイドラインに従って実行された。
【0274】
リピドイド製剤
リピドイドを以下のようにmRNAと共に製剤化した:C12-(2-3-2)、DOPE、Chol、およびDSPE-PEG2k(3.6:0.18:0.76:1重量比)をエタノールに溶解し、10.5という脂質/mRNA重量比でホタルルシフェラーゼをコードする化学修飾したmRNAを含む、クエン酸緩衝液(10mMクエン酸、150mMNaCl、pH=4.5)に速やかに注入して、20%という最終エタノール濃度を得て、水に対し透析を行った。結果として生じるリピドイド/mRNA複合体は、正に帯電したナノ粒子(92.6±0.7nm;21.0±0.2mV)をもたらし、これを、拘束したマウスの尾静脈に静脈内注射した。第2実験では、静脈内注射の前にリピドイド/mRNA複合体をPBSに適合させたが、これはほぼ帯電していないナノ粒子(91.5±0.6nm;-0.7±0.2mV)をもたらした。
【0275】
in vivoバイオルミネセンス画像化を使用した、マウスにおけるLuc活性の測定
投与して24時間後に、マウスをメデトミジン(11.5μg/kg BW)、ミダゾラム(115μg/kg BW)、およびフェンタニル(1.15μg/kg BW)の腹腔内注射により麻酔した。D-ルシフェリン基質(マウスにつき3mg/100μLPBS)を、静脈内注射により適用した。10分後に、IVIS 100 Imaging
System(Xenogen,アラメダ,USA)とカメラ設定:Bin(HS)、視野10、f1 f-stop、高分解能ビニング、および5分の露出時間を使用して、バイオルミネセンスを測定した。Living Image Software version 2.50(Xenogen,アラメダ,USA)を使用して、シグナルを定量化し、解析した。
【0276】
OTCタンパク質についてのウェスタンブロット解析
凍ったプレートを解凍し、プレートにおいて直接的な細胞溶解を実行した。プロテアーゼ阻害剤(cOmplete,EDTAフリー,Roche Diagnostics,ドイツ)およびDNase(DNase I溶液(2500U/mL),(Thermo
Fisher,USA)を補完した溶解バッファー(25mMTRIS、0.1%Triton-X100、Sigma-Aldrich、ドイツ)を使用して、タンパク質を溶解した。溶解後に、サンプルをNuPage(登録商標)LDS Sample BufferおよびSample Reducing Agent(Thermo Fisher,USA)と混ぜ、70℃で10分間加熱した。NuPAGE 10% Bis-Tris Midi Gelの上で、XCell4 SureLock(商標)Midi,Bio-Rad Criterion(商標)System(Thermo Fisher,USA)を用いて、ゲル電気泳動を15μLの可溶化物を使用して実行した。TransBlot(登録商標)Turbo(商標)Transfer System(Biorad,ドイツ)を30分間使用して、タンパク質を転移させた。転移後、膜を30分間NET-ゼラチンで保護してから、該膜を一晩4℃で一次抗体と共にインキュベーションし、NET-ゼラチン1:2000(OTCポリクローナル抗体(Center),AP6928c-AB Biocat,ドイツ)に希釈した。NET-ゼラチンを用いた3回の洗浄ステップの後、NET-ゼラチンに1:10,000で希釈した、ホースラディッ
シュ・ペルオキシダーゼ結合第2抗体(ヤギ抗ウサギIgG-HRP,sc-2004,Santa Cruz Biotechnology,USA)を室温で一時間加えた。膜を再び、NET-ゼラチンを用いて、シグナルが化学発光基質キット(Luminata Crescendo Western HRP基質,Merck Millipore,ドイツ)で可視化され、ChemiDoc(商標)MP System(Biorad,ドイツ)で可視化されるまで、3回洗浄した。
【0277】
物質
FBS、Leibovitz L-15培地(Gibco)、Lipofectamine(登録商標)2000、およびOptiMEM(Gibco)を、Invitrogen,ドイツから購入した。無菌PBSは社内で用意した。Ham F-12K、DMEM、およびトリプシン-EDTAをc.c.pro GmbH,ドイツより購入した。
【0278】
II.結果
II.a細胞培養実験
【0279】
図2AおよびBは、T7プロモーターとコザックエレメントの間の余分な「C」が必須であることを示す。その塩基を除去すると、比較する細胞タイプの両方において、発現が低減する。両構成体(図1の配列番号1および2)では、全用量範囲および直線範囲(除外する値:62.5ng/ウェルより多い用量は分析から除いた)を、比較の便宜上、別個に提示する。A549細胞およびHepG2細胞の両方において、Cの除去は、より低い発現をもたらした。そのため、この余分なCを、全てのさらなる構成体の設計に含めた。
【0280】
A549およびHepG2細胞で得られた結果に基づき、さらなる実験を、余分な「C」を含有する構成体を用いて行った(配列番号1:T7Luc2)。
【0281】
図3および図4
配列1を鋳型として使用し、この配列に対し、何れかの単一ヌクレオチド(A、T、G、もしくはC:それぞれ図1の配列番号3-6)、または、30ヌクレオチド長で任意の予想可能な第2構造を欠いたランダム配列(配列7)、またはヒトαグロビン由来の5´UTR(配列8)を、調査する「C」およびコザック配列の間に組み込んだ。
【0282】
材料および方法で記載するように、細胞に遺伝子導入し、ルシフェラーゼアッセイを実行した。より多い用量は線形範囲を外れたため、62.5ng/ウェルまでの用量反応のみをここでは提示する。ヒトαグロビンに由来する5´UTRを、正の対照として使用した。
【0283】
上記の結果を要約すると、図1~4は、T7プロモーターとコザックエレメントの間の余分な「C」は、最小主義的な5´UTRを利用することにより高いタンパク質発現を達成することに関し、必須であることを示す。ヌクレオチドを除去することは、発現の低下をもたらす。余分な「C」とコザックエレメントの間に余分な「A」を追加することは、発現に対し悪い影響を与える。ピリミジン塩基と、最も好適には「T」をその位置に加えると、hAgに由来する5´UTRで観察されるのと同等のレベルが得られる。
【0284】
続いて、追加の実験を実行して:
-最良に機能する配列(配列9)と組み合わせた場合のTISUの影響を解明し、
-hAg由来の5´UTRの影響が、細胞特異的な影響であるか、または、5´キャップと開始コドンの間の距離が重要であるか否かを決定する。
【0285】
図5は、A549細胞におけるルシフェラーゼの発現に対するTISUエレメントの影響を示す。「TISUエレメント」には、図1に示す配列番号4と比較して、図1の配列番号9の「CC」の代わりに、「AG」が組み込まれている。A549細胞(図5AおよびB)ならびにHepG2細胞(図5CおよびD)は、遺伝子導入の24時間後(A,C)および48時間後(B,D)に、配列番号1の「C」と、この「C」とコザックエレメントの間に追加の「T」を有するTISUエレメントを含有するルシフェラーゼで、著しくより高いルシフェラーゼ発現を示した。
【0286】
図6は、図5と同じだが、30ヌクレオチドランダム配列を含有する5´UTRが追加されており、ヒトαグロビンUTR(図1の配列8)を、同じ長さのランダム配列(図1の配列7)と並べて比較することを可能にした実験の結果を示す。ルシフェラーゼ発現を、示すように、SNIM RNAで遺伝子導入した24時間後に、HepG2(図6A)およびA549細胞(図6B)において測定した。
【0287】
図9は、A549およびHepG2細胞にそれぞれSNIM RNAを遺伝子導入した後、標準として使用した国際公開第2012/170930A1号:図1および2)の5´および3´UTR(SUSA UTR)を含有するmRNAをコードするhEPOと比較した、mRNAをコードするhEPOを含有するTISUエレメントを用いた発現実験の結果を示す。EPO量を、ELISAにより、遺伝子導入の24時間後に定量化した。値は3反復の平均±SDを表す。
【0288】
ヒトA549細胞では、TISUエレメントの組み込みは、5´および3´UTRの組み込みで達成されるものと比較し、より高い発現をもたらした(図9A)。同等の発現レベルがHepG2細胞でも観察された(図9B)。これは、特に、SUSA5´および3´UTRの組み込みが、本発明のUTRと比較し、RNAを約200ヌクレオチド長くすることから、驚くべきである。
【0289】
図10は、ヒトOTCを用いた発現実験を示す図である。比較のために、mRNAをコードするhOTCを含有するTISUエレメントを、これまでに知られている他の全ての組み合わせと比較し、最も高い発現を生成することが知られている5´ヒトαグロビンUTRを含有するmRNAをコードするhOTCからのそれと比較した。
【0290】
HepG2細胞に、SNIM RNA構成体をコードする異なるhTOCを遺伝子導入し、24時間後に溶解し、ウェスタンブロッティングによりOTC量を定量化した。
【0291】
SNIM RNAをコードするhOTCを含有する、hAgとTISUエレメントの両方が、同様のレベルのhOTC発現をもたらした(図10A)。ビンキュリンをハウスキーパーとして使用し、帯強度を濃度測定を使用して比較した(図10B)。
【0292】
II.bマウスにおけるLuc2構成体のIV適用
結果を図7および図8に示す。
【0293】
以下の構成体をマウスにおけるIV適用に使用した:
Luc2(+8+A)
Luc2(+8+T)
Luc2(+8+T)+TISU
Luc2-hAg
Luc2-Sp30
Luc2-SUSA UTR
【0294】
20μgの各SNIM-RNAを、LF-44と組み合わせ、Balb/cマウスにIV注射した。追加の対照として、5´末端でヒトCMVエンハンサーと隣接し、3´末端でヒト成長ホルモン3´UTRと隣接しているLuc2配列(Luc2-SUSA)も、生成した。この構成体においてUTRとして使用される配列は、Shireの特許(国際公開第2012/170930A1号:配列ID1/図1)から取った。
【0295】
in vivo画像化を、IVIS撮像系を利用して注射の6時間後に実行し、光子/秒/cm2/srとして定量化した値をプロットした。全動物画像化の結果を図7Aに示し、全臓器を画像化した結果を図7B(肝臓)、7C(肺)、7D(脾臓)にそれぞれ示す。
【0296】
動物から取った臓器を液体窒素で凍らせ、ホモジナイズし、溶解し、ルシフェラーゼ活性を測定した。結果を図7E(肝臓)、7F(肺)、7G(脾臓)それぞれに示す。
【0297】
動物の血液パラメータを、Sysmex KX-21N(商標)Automated Hematology Analyzerを利用することにより解析した:mRNA構成体をコードする異なるルシフェラーゼを有するマウスの白血球数(WBC)(図8A)、赤血球(RBC)(図8B)、血小板(図8C)、ヘモグロビン(図8D)、ヘマトクリット(図8E)の値 は、有意な差を示さなかった。
【0298】
図11:配列7に存在するランダムな30ヌクレオチド長のスペーサ(左)と、配列8に存在する同じ長さのヒトαグロビンの5´UTR(右)の予想第2構造。両配列の第2構造は似てすらないが、似た発現レベルを生成し(図6Aおよび6B)、これは両方とも、T7Luc2(+8+T)-TISUと比較し、等しく低かった。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図7-1】
図7-2】
図7-3】
図7-4】
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図9
図10
図11
【配列表】
2023134529000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2023-07-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)その5´末端に開始コドンを含み、ポリペプチドをコードするコード領域と、
(b)前記コード配列のすぐ上流にある、以下の(b1)からなる群から選択されるUTRとを含むRNA分子であって、
(b1)は、配列R-CGCCACC(SEQ ID NO:1)のUTR、または前記UTR配列において、SEQ ID NO:1の位置6のCがAに置換され、SEQ ID NO:1の位置7のCがGに置換され;および/もしくはSEQ ID NO:1の位置5のAがGに置換されている配列のUTRであり、
は、DNA依存性RNAポリメラーゼがRNA合成を開始するヌクレオチドで始まるプロモーター領域の一部に相当するRNA配列であり、
は、
(i)GGGAGA(SEQ ID NO:7)、
(ii)GGGAGA(SEQ ID NO:8)、
(iii)GAAG(SEQ ID NO:9)、および
(iv)GGGA(SEQ ID NO:10)からなる群から選択され、
3´末端にはポリAテールを含み、
が(i)もしくは(ii)である場合、(b)で定義されるUTRの最大長さは、14ヌクレオチドであり、または、R が(iii)もしくは(iv)である場合、(b)で定義されるUTRの最大長さは、12ヌクレオチドである、RNA分子。
【請求項2】
前記ポリAテールの長さは少なくとも120ヌクレオチドである、請求項1に記載のRNA分子。
【請求項3】
請求項1または2に記載のRNA分子をコードする核酸分子。
【請求項4】
請求項3の核酸分子を含むベクター。
【請求項5】
請求項4のベクターを含む宿主細胞。
【請求項6】
請求項1または2に記載のRNA分子、請求項3に記載の核酸分子、請求項4に記載のベクター、または請求項5に記載の宿主細胞と、任意選択的に医薬的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
【請求項7】
RNAベースの治療で使用される、請求項6の医薬組成物。
【請求項8】
求項1または2に記載のRNA分子、請求項3に記載の核酸分子、請求項4に記載のベクター、または、請求項5に記載の宿主細胞を含む、キット。
【請求項9】
RNA分子のコード領域を、前記コード領域にコードされたポリペプチドまたはタンパク質に翻訳するための、請求項1の(b)で定義したUTRの使用。
【外国語明細書】