(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023013456
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】光学系および光学機器
(51)【国際特許分類】
G02B 17/08 20060101AFI20230119BHJP
【FI】
G02B17/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021117655
(22)【出願日】2021-07-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【弁理士】
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【弁理士】
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 達朗
【テーマコード(参考)】
2H087
【Fターム(参考)】
2H087KA02
2H087MA07
2H087RA44
2H087TA01
2H087TA04
2H087TA06
(57)【要約】
【課題】小型、軽量、大口径比でありながら像面湾曲を十分に補正できるようにした光学系を提供する。
【解決手段】光学系L0は、フォーカシングに際して不動の第1群L1と、フォーカシングに際して移動する第2群L2とを有する、該光学系において第1群は、物体側に向かって凹形状の第1反射面R1を有する第1光学素子M1と、像側に向かって凸形状の第2反射面を有する第2光学素子M2とを含む。物体から光学系に入射した光が、第1反射面、第2反射面および第2群をこの順で経て像面に向かう。第1光学素子のd線における屈折率をnM1、光学系における最も物体側の面から像面までの光軸上での距離をL、光学系の焦点距離をfとするとき、nM1≦1.690および0.440≦L/f≦0.800なる条件を満足する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォーカシングに際して不動の第1群と、フォーカシングに際して移動する第2群とを有する光学系であって、
前記第1群は、
物体側に向かって凹形状の第1反射面を有する第1光学素子と、
像側に向かって凸形状の第2反射面を有する第2光学素子とを含み、
物体から前記光学系に入射した光が、前記第1反射面、前記第2反射面および前記第2群をこの順で経て像面に向かい、
前記第1光学素子のd線における屈折率をnM1、前記光学系における最も物体側の面から前記像面までの光軸上での距離をL、前記光学系の焦点距離をfとするとき、
nM1≦1.690
0.440≦L/f≦0.800
なる条件を満足することを特徴とする光学系。
【請求項2】
前記第1反射面の曲率半径をrR1、前記第2反射面の曲率半径をrR2とするとき、
0.720≦rR1/rR2≦1.450
なる条件を満足することを特徴とする請求項1に記載の光学系。
【請求項3】
前記第1反射面と前記第2反射面の光軸上での距離をdM1M2、前記第1反射面から前記像面までの光軸上での距離dM1IPとするとき、
0.340≦|dM1M2|/dM1IP≦0.720
なる条件を満足することを特徴とする請求項1または2に記載の光学系。
【請求項4】
前記光学系に含まれる光学面のうち、最も大きい有効径を有する光学面の前記有効径をeamaxとするとき、
0.380≦eamax/L≦1.000
なる条件を満足することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項5】
前記第1反射面から前記像面までの光軸上での距離dM1IPとするとき、
0.500≦dM1IP/L<1.000
なる条件を満足することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項6】
前記第1反射面と前記第2反射面の光軸上での距離をdM1Mとするとき、
0.1290≦|dM1M2|/f≦0.2500
なる条件を満足することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項7】
無限遠に合焦した状態での前記第2群の横倍率をβL2とするとき、
0.0010≦βL2/f≦0.0500
なる条件を満足することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項8】
前記第1反射面の曲率半径をrR1とするとき、
-1.200≦rR1/f≦-0.450
なる条件を満足することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項9】
前記第2反射面の曲率半径をrR2とするとき、
-1.200≦rR2/f≦-0.350
なる条件を満足することを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項10】
前記光学系に含まれるレンズのうち、光軸上での厚みが最も大きいレンズの前記厚みをtmaxとするとき、
0.020≦tmax/L≦0.075
なる条件を満足することを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項11】
前記第1群は、物体側からの光が最初に入射する正レンズを有することを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項12】
前記第2群よりも像側に、正レンズと負レンズが配置されていることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項13】
前記第1群は、前記第2反射面から前記第2群に向かう光が透過するレンズ群を含み、
前記レンズ群は、正レンズを含むことを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の光学系と、該光学系を保持する保持部材とを有することを特徴とする光学機器。
【請求項15】
請求項1から13のいずれか一項に記載の光学系と、該光学系を介して物体を撮像する撮像素子とを有することを特徴とする撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置や交換レンズに用いられる撮像光学系として好適な光学系に関する。
【背景技術】
【0002】
焦点距離が長い望遠型の撮像光学系として、反射系と屈折系を有する反射屈折型の撮像光学系がある。このような反射屈折型の撮像光学系において、小型、軽量、大口径比で自動焦点調節(オートフォーカス)機能を有するものとして、特許文献1、2にはインナーフォーカス方式の撮像光学系が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-72457号公報
【特許文献2】特開2014-74783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1、2に開示された撮像光学系では、反射系の構成が像面湾曲を十分に補正することができないものとなっている。
【0005】
本発明は、小型、軽量、大口径比でありながら像面湾曲を十分に補正できるようにした光学系を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面としての光学系は、フォーカシングに際して不動の第1群と、フォーカシングに際して移動する第2群とを有する、該光学系において゜第1群は、物体側に向かって凹形状の第1反射面を有する第1光学素子と、像側に向かって凸形状の第2反射面を有する第2光学素子とを含む。物体から光学系に入射した光が、第1反射面、第2反射面および第2群をこの順で経て像面に向かう。第1光学素子のd線における屈折率をnM1、光学系における最も物体側の面から像面までの光軸上での距離をL、光学系の焦点距離をfとするとき、
nM1≦1.690
0.440≦L/f≦0.800
なる条件を満足することを特徴とする。上記光学系を有する装置も、本発明の他の一側面を構成する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、小型、軽量、大口径比でありながら像面湾曲を十分に補正できる光学系を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】実施例1の光学系の無限遠合焦状態と至近合焦状態における縦収差図。
【
図4】実施例2の光学系の無限遠合焦状態と至近合焦状態における縦収差図。
【
図6】実施例3の光学系の無限遠合焦状態と至近合焦状態における縦収差図。
【
図8】実施例4の光学系の無限遠合焦状態と至近合焦状態における縦収差図。
【
図10】実施例5の光学系の無限遠合焦状態と至近合焦状態における縦収差図。
【
図12】非球面形状に対する条件式の算出方法を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例0010】
図1、
図3、
図5、
図7および
図9はそれぞれ、実施例1~5の反射屈折光学系(以下、単に光学系という)L0の無限遠合焦状態での構成を示している。各実施例の光学系L0は、デジタルビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、放送用カメラ、銀塩フィルムカメラおよび監視カメラ等の撮像装置や交換レンズ装置において撮像光学系として用いられたり、観察装置、プロジェクタおよび露光装置等の光学機器において観察光学系、投射光学系および露光光学系として用いられる。なお、光学系は、レンズ鏡筒等の保持部材によって保持されるが、各図では保持部材の図示を省略している。
【0011】
各図において、左側が物体側、右側が像側である。また、iを物体側から光が入射する群の順番とすると、Liは第i群を示す。「群」は、フォーカシングに際して一体で不動(固定)である又は移動する1または複数の光学素子(レンズや反射面を有する光学素子)のまとまりである。各実施例の光学系L0は、フォーカシングに際して不動の第1群L1と、フォーカシングに際して移動する第2群L2とを有する。なお、群は、開口絞りを含んでもよい。
【0012】
IPは像面であり、CCDセンサやCMOSセンサ等の撮像素子(光電変換素子)の撮像面やフィルムの感光面が配置される。
【0013】
実施例1の光学系L0を示す
図1の上半分には、物体から入射して像面IPに到達する光の交路を示している。図示はしないが、他の実施例の光学系L0における光路も
図1に示した光路と同様である。
【0014】
第1群L1は、物体側からの光が入射する順に、物体側に向かって凹形状の第1反射面R1を有する第1光学素子M1と、像側に向かって凸形状の第2反射面R2を有する第2光学素子M2とを含む。第1光学素子M1と第2光学素子M2はそれぞれ、第1反射面R1と第2反射面R2を裏面側に有するレンズにより構成されてもよい。また、第1群L1は、第2反射面R2から第2群L2に向かう光が透過するレンズ群を含んでもよい。
【0015】
「Focus」が付された矢印は、無限遠から至近へのフォーカシングに際して移動する第2群L2の移動方向を示している。各実施例の光学系L0では、第2群L2は無限遠から至近へのフォーカシングに際して像側に移動する。
【0016】
実施例1~5の詳細な説明の後には、実施例1~5のそれぞれに対応する数値例1~5を示している。
図2(A)、(B)、
図4(A)、(B)、
図6(A)、(B)、
図8(A)、(B)および
図10(A)、(B)はそれぞれ、実施例1~5(数値例1~5)の光学系L0の無限遠合焦状態と至近合焦状態での縦収差(球面収差、非点収差、歪曲収差および色収差)を示している。至近合焦状態は、3mの物体に合焦した状態である。球面収差図において、FnoはFナンバーを示し、実線はd線(波長587.6nm)に対する球面収差を、二点鎖線はg線(波長435.8nm)に対する球面収差をそれぞれ示している。非点収差図において、実線ΔSはサジタル像面の像面湾曲量を、破線ΔMはメリディオナル像面の像面湾曲量を示している。歪曲収差はd線に対するものを示している。色収差図はg線における倍率色収差を示している。ωは近軸計算による半画角(°)である。
【0017】
各実施例の光学系L0において、第1光学素子M1のd線に対する屈折率をnM1、光学系L0の全長(最も物体側の面から像面IPまでの光軸上での距離)をL、光学系L0の焦点距離をfとする。このとき、光学系L0は、以下の式(1)、(2)の条件を満足する。レンズの裏面に第1反射面R1が設けられている第1光学素子M1の屈折率nM1は該レンズの屈折率を示し、第1反射面R1のみからなる第1光学素子M1の屈折率nM1は1である。
【0018】
nM1≦1.690 (1)
0.440≦L/f≦0.800 (2)
式(1)は、第1光学素子M1の適切な屈折率に関する条件を示している。反射屈折光学系でインナーフォーカス方式を用いる場合において、光学系全体を小型軽量化するためには、フォーカスレンズ群が小型で、これを駆動する機構が簡素である必要がある。このため、各実施例では、フォーカスレンズ群としての第2群L2を、第2光学素子M2よりも像側に配置している。これにより、フォーカスレンズ群の有効径を小さくしてフォーカスレンズ群を小型軽量化すること、つまりは光学系L0全体を小型軽量化することが容易になる。有効径とは、レンズのうち像面に到達する軸上光線と軸外光線が通過する範囲の径である。
【0019】
また、光学系L0の全長を短くすると、第1反射面R1と第2反射面R2の正のペッツバール和が大きくなり、光学系L0全体での像面湾曲の補正が困難になる。第1光学素子M1がレンズの裏面に反射面が設けられた光学素子である場合は、該第1光学素子M1の屈折面は負レンズとして作用するため、光学系L0全体のペッツバール和を小さくするためには、第1光学素子M1の屈折率nM1を小さくすることが好ましい。これにより、光学系L0の全長を短くしながら像面湾曲を良好に補正することができる。nM1が式(1)の上限値を上回ると、第1光学素子M1の屈折面のペッツバール和が大きくなり、像面湾曲の補正が困難になるため、好ましくない。
【0020】
式(2)は、光学系L0の全長と焦点距離との適切な関係に関する条件を示している。L/fが式(2)の下限値を下回ると、第2反射面R2のパワーの絶対値が大きくなり、光学系L0全体のペッツバール和が大きくなるため、像面湾曲の補正が困難になる。特に第1光学素子M1が第1反射面R1のみからなる場合に球面収差と像面湾曲の補正が困難になるため、好ましくない。一方、L/fが式(2)の上限値を上回ると、光学系L0の全長が長くなって小型軽量化が困難になるため、好ましくない。
式(1)、(2)の数値範囲を以下のようにすると、より好ましい。
【0021】
nM1≦1.680 (1a)
0.450≦L/f≦0.750 (2a)
式(1)、(2)の数値範囲を以下のようにすると、さらに好ましい。
【0022】
nM1≦1.670 (1b)
0.460≦L/f≦0.720 (2b)
上述した光学構成を有し、かつ式(1)、(2)の条件を満足することで、小型、軽量、大口径比でオートフォーカス機能を有し、像面湾曲を十分に補正できる光学系L0を得ることができる。
次に、各実施例の光学系L0が満足することが好ましい条件について説明する。各実施例の光学系L0は、以下の式(3)から(11)で示す条件のうち少なくとも1つを満足することが好ましい。
0.720≦rR1/rR2≦1.450 (3)
0.340≦|dM1M2|/dM1IP≦0.720 (4)
0.380≦eamax/L≦1.000 (5)
0.500≦dM1IP/L<1.000 (6)
0.1290≦|dM1M2|/f≦0.2500 (7)
0.0010≦βL2/f≦0.0500 (8)
-1.200≦rR1/f≦-0.450 (9)
-1.200≦rR2/f≦-0.350 (10)
0.020≦tmax/L≦0.075 (11)
上記式において、rR1は第1反射面R1の曲率半径、rR2は第2反射面R2の曲率半径、dM1M2は第1反射面R1と第2反射面R2間の光軸上での距離、dM1IPは第1反射面R1から像面IPまでの光軸上での距離をそれぞれ示す。eamaxは光学系L0に含まれる光学面(屈折面(レンズ面)および反射面を含む)のうち有効径が最も大きい光学面の有効径を示す。βL2は無限遠合焦状態での第2レンズ群L2の横倍率を示す。tmaxは光学系L0に含まれるレンズのうち光軸上での厚みが最も大きいレンズの厚みを示す。
【0023】
レンズが開口を有する場合のようにレンズ面が光軸上に存在しない場合は、該レンズ面の参照球面が光軸と交わる位置をそのレンズ面の光軸上での位置(面頂点)とする。
【0024】
図12は、光軸上に存在しない面頂点の光軸上での位置の算出方法を示す。参照球面とは、図中に破線で示すように、球心が光軸上に位置し、最大有効径位置ymaxに対応する球面位置Pmaxと最小有効径位置yminに対応する球面位置Pminとを結んでできる球面である。図中に示すように、参照球面が光軸と交わる位置が面頂点の位置である。
【0025】
式(3)は、第1反射面R1の曲率半径と第2反射面R2の曲率半径との関係に関する条件であって、光学系L0全体を小型化しつつ良好な光学性能を得るための条件を示している。rR1/rR2が式(3)の上限を上回ると、第2反射面R2のパワーの絶対値が大きくなり、像面湾曲の補正が困難となるため、好ましくない。rR1/rR2が式(3)の下限を下回ると、第1反射面R1のパワーが大きくなり、球面収差や像面湾曲の補正が困難となるため、好ましくない。
【0026】
式(4)は第1反射面R1と第2反射面R2の光軸上での距離と第1反射面R1から像面IPまでの光軸上での距離との関係に関する条件であって、光学系L0全体を小型軽量化しつつ良好な光学性能を得るための条件を示している。光学系L0全体を小型軽量化するためには、特にフォーカスレンズ群を駆動する機構を簡素化する必要がある。このため、フォーカスレンズ群である第2群L2を、第1光学素子M1の物体側近傍または像側に配置することが好ましい。|dM1M2|/dM1IPが式(4)の上限を上回ると、第1反射面R1から像面IPまでの光軸上での距離が短くなり、良好な光学性能を達成しつつ第2群L2を第1光学素子M1の物体側近傍または像側に配置することが困難となる。この結果、第2群L2を駆動する機構が複雑化して、光学系L0全体を小型化することが困難となるため、好ましくない。|dM1M2|/dM1IPが式(4)の下限を下回ると、第1反射面R1と第2反射面R2の光軸上での距離が短くなり、この結果、第2反射面R2の有効径が大きくなって光学系L0全体を小型化することが困難であるため、好ましくない。
【0027】
式(5)は、光学系L0中のレンズ面の最大有効径と光学系L0の全長との関係に関する条件であって、光学系L0全体を小型軽量化するための条件を示している。eamax/Lが式(5)の上限を上回ると、最大有効径が大きくなって光学系L0全体を小型軽量化が困難になるため、好ましくない。eamax/Lが式(5)の下限を下回ると、光学系L0の全長が長くなって小型化が困難になるため、好ましくない。
【0028】
式(6)は、第1反射面R1から像面IPまでの光軸上での距離と光学系L0の全長との関係に関する条件であって、光学系L0全体を小型化しつつ良好な光学性能を得るための条件を示している。dM1IP/Lが式(6)の上限を上回ると、第1反射面R1から像面IPまでの光軸上での距離が長くなり、第1反射面R1と第2反射面R2のペッツバール和が増加して像面湾曲の補正が困難になるため、好ましくない。dM1IP/Lが式(6)の下限を下回ると、光学系L0の全長が長くなって小型化が困難になるため、好ましくない。
【0029】
式(7)は、第1反射面R1と第2反射面R2の光軸上での距離と光学系L0の焦点距離との関係に関する条件であって、光学系L0全体を小型軽量化しつつ良好な光学性能を得るための条件を示している。|dM1M2|/fが式(7)の上限を上回ると、第1反射面R1から像面IPまでの光軸上での距離が短くなり、良好な光学性能を達成しつつ第2群L2を第1光学素子M1の物体側近傍または像側に配置することが困難となる。この結果、第2群L2を駆動する機構が複雑化して、光学系L0全体を小型化することが困難となるため、好ましくない。|dM1M2|/fが式(7)の下限を下回ると、第1反射面R1と第2反射面R2のパワーの絶対値が大きくなり、球面収差の補正が困難になるため、好ましくない。
【0030】
式(8)は、無限遠合焦状態での第2群L2の横倍率と光学系L0の焦点距離との関係に関する条件であって、光学系L0全体を小型化しつつ良好な光学性能を得るための条件を示している。βL2/fが式(8)の上限を上回ると、第2群L2のパワーの絶対値が大きくなり、無限遠から至近へのフォーカシングに際しての球面収差の補正が困難となるため、好ましくない。βL2/fが式(8)の下限を下回ると、第2群L2の位置敏感度が低下して、無限遠と至近との間でのフォーカシングに際しての第2群L2の移動量が大きくなる。この結果、光学系L0全体の小型化が困難になるため、好ましくない。
【0031】
式(9)は、第1反射面R1の曲率半径と光学系L0の焦点距離f全系の焦点距離との関係に関する条件であって、光学系L0全体を小型化しつつ良好な光学性能を得るための条件を示している。rR1/fが式(9)の上限を上回ると、第1反射面R1のパワーの絶対値が大きくなり、像面湾曲の補正が困難となるため、好ましくない。rR1/fが式(9)の下限を下回ると、第1反射面R1のパワーの絶対値が小さくなり、光学系L0の全長を短くすることが困難となるため、好ましくない。
【0032】
式(10)は、第2反射面R2の曲率半径と光学系L0の焦点距離との関係に関する条件であって、光学系L0全体を小型化しつつ良好な光学性能を得るための条件を示している。rR2/fが式(10)の上限を上回ると、第2反射面R2のパワーの絶対値が大きくなり、像面湾曲の補正が困難となるため、好ましくない。rR2/fが式(10)の下限を下回ると、第2反射面R2のパワーの絶対値が小さくなり、光学系L0の全長を短くすることが困難となるため、好ましくない。
【0033】
式(11)は、光学系L0中のレンズの最大厚みと光学系L0の全長との関係に関する条件であって、光学系L0全体を小型軽量化するための条件を示している。tmax/Lが式(11)の上限を上回ると、最大厚みのレンズの大型化によって光学系L0を軽量化することが困難となるため、好ましくない。tmax/Lが式(11)の下限を下回ると、光学系L0全体が大型化して軽量化することが困難となるため、好ましくない。
【0034】
式(3)~(11)の数値範囲を以下のようにすると、より好ましい。
0.750≦rR1/rR2≦1.400 (3a)
0.350≦|dM1M2|/dM1IP≦0.670 (4a)
0.390≦eamax/L≦0.900 (5a)
0.530≦dM1IP/L≦0.900 (6a)
0.1310≦|dM1M2|/f≦0.2200 (7a)
0.0018≦βL2/f≦0.0300 (8a)
-1.150≦rR1/f≦-0.480 (9a)
-1.150≦rR2/f≦-0.380 (10a)
0.030≦tmax/L≦0.070 (11a)
式(3)~(11)の数値範囲を以下のようにすると、さらに好ましい。
0.850≦rR1/rR2≦1.380 (3b)
0.390≦|dM1M2|/dM1IP≦0.650 (4b)
0.400≦eamax/L≦0.800 (5b)
0.550≦dM1IP/L≦0.800 (6b)
0.1320≦|dM1M2|/f≦0.2160 (7b)
0.0040≦βL2/f≦0.0150 (8b)
-1.100≦rR1/f≦-0.500 (9b)
-1.100≦rR2/f≦-0.400 (10b)
0.040≦tmax/L≦0.065 (11b)
各実施例において、第1群L1は、物体側からの光が最初に入射する正レンズを有することが望ましい。これにより、球面収差の補正が容易になり、光学系L0全体を小型化することが可能となる。
【0035】
また、第2群L2よりも像側に、少なくとも1つの正レンズと少なくとも1つの負レンズが配置されていることが望ましい。これにより、フォーカスレンズ群である第2群L2の位置敏感度を高くすることが容易になり、無限遠と至近との間でのフォーカシングに際しての第2群L0の移動量を小さくすることができ、光学系L0全体を小型化することが可能となる。
【0036】
さらに第1群L0は、、第2反射面R2から第2群L2に向かう光が透過するレンズ群を含んでもよい。
【0037】
次に、各実施例のより具体的な構成について説明する。実施例1~5の光学系L0は、物体側からの光が入射する順に、第1群L1と、フォーカシングレンズ群としての第2レンズ群L2と、第3レンズ群L3とを有する。
【0038】
実施例1~3および実施例5の光学系L0において、第1群L1は、物体側から光が入射する順に、正レンズL1Pと、第1反射面R1を有する第1光学素子M1と、第2反射面R2を有する第2光学素子とを有する。第1群L1が最も物体側に正レンズL1Pを有することで、球面収差を良好に補正することができ、光学系L0全体の小型化が容易になる。
【0039】
また、実施例1~3および実施例5の光学系L0において、第1光学素子M1は、その中央部に開口を有し、周辺部に裏面反射面が設けられたレンズである。第2光学素子M2から第2群L2に向かう光は、第1光学素子M1の開口内を通過する。
【0040】
さらに実施例1および3の光学系L0において、第2光学素子M2は、第2反射面R2のみを有する。
【0041】
一方、実施例4の光学系L0において、第1群L1は、物体側から光が入射する順に、第1反射面R1を有する第1光学素子M1と、第2反射面R2を有する第2光学素子と、レンズ群L1Lとを有する。第1光学素子M1と第2光学素子M2はいずれも、第1反射面R1と第2反射面R2のみを有し、レンズを含まない光学素子である。第1反射面R1と第2反射面R2はいずれも、球面収差を良好に補正できるように非球面として形成されている。
【0042】
また、実施例1~4の光学系L0の第1群L1は、第2反射面R2から第2群L2に向かう光が透過するレンズ群L1Lを有する。このうち実施例1におけるレンズ群L1Lは、第1光学素子M1から第2光学素子M2に向かう光と第2光学素子M2から第2群L2に向かう光が透過する正レンズを含む。これにより、球面収差の補正が容易となる。また、実施例1~3におけるレンズ群L1Lは、正レンズと負レンズを含む。これにより、色収差と球面収差を良好に補正することができる。また、レンズ群L1Lが正レンズを含むことで、フォーカシングにおける第2群L2の位置敏感度を高めることができる。この結果、無限遠と至近との間でのフォーカシングに際しての第2群L2の移動量を小さくすることができ、光学系L0全体を小型化することができる。
【0043】
さらに、実施例1から4の光学系L0において、第2群L2は、正レンズと負レンズを含む。これにより、無限遠と至近との間のフォーカシングに際して色収差を良好に補正することができる。一方、実施例5の光学系L0において、第2群L2は、軽量化のため1つの負レンズのみにより構成されている。
【0044】
実施例1~3の光学系L0は、第2群L2よりも像側に配置された第3群L3を有する。第3群L3は、正レンズと負レンズを含み、これにより倍率色収差の補正が容易になる。また、実施例3の光学系L0において、第3群L3を光軸に直交する方向に移動させることで手振れ等に起因する像ふれを低減(補正)することが可能である。
【0045】
実施例3の光学系L0は、さらに第3群L3よりも像側に配置された第4群L4を有する。第4群L4は、正レンズと負レンズを含み、これにより倍率色収差の補正が容易になる。また、フォーカシングにおける第2群L2の位置敏感度を高めることができる。この結果、無限遠と至近との間でのフォーカシングに際しての第2群L2の移動量を小さくすることができ、光学系L0全体を小型化することができる。
【0046】
以下に、数値例1~6を示す。各数値例の面データにおいて、各数値例の面データにおいて、面番号iは光の入射側から数えたときの面の順番を示す。rはi番目の面の曲率半径(mm)、dはi番目と(i+1)番目の面間の光軸上でのレンズ厚または距離(空気間隔)(mm)である。間隔dが(可変)となっている部分は、フォーカシングに際して間隔が変化することを意味する。
【0047】
ndはi番目の光学部材の材料のd線における屈折率である。νdはi番目の光学部材の材料のd線を基準としたアッベ数である。アッベ数νdは、フラウンホーファ線のd線(587.6nm)、F線(486.1nm)、C線(656.3nm)における屈折率をNd、NF、NCとするとき、
νd=(Nd-1)/(NF-NC)
で表される。
【0048】
上記dと、焦点距離(mm)、Fナンバーおよび半画角(°)は全て各実施例の光学系L0が無限遠物体に合焦したときの値である。BFはバックフォーカス(mm)を表す。バックフォーカスは、光学系L0の最終面(最も像側のレンズ面)から像面までの光軸上の距離を空気換算長により表記したものである。レンズ全長は、光学系L0の最前面(最も物体側のレンズ面)から最終面までの光軸上の距離にバックフォーカスを加えた長さである。
【0049】
面番号に付された「*」は、その面が非球面形状を有する面であることを意味する。非球面形状は、xを光軸方向での面頂点からの変位量、hを光軸に直交する方向での光軸からの高さ、Rを近軸曲率半径、kを円錐定数、A4,A6,A8,A10およびA12を各次数の非球面係数とするとき、以下の式で表される。
【0050】
【0051】
非球面係数における「e±X」は「×10±X」を意味する。
【0052】
また、各数値例における式(1)~(11)の条件の値を、表1にまとめて示す。
[数値例1]
単位 mm
面データ
面番号 r d nd νd
1 291.972 11.41 1.59349 67.0
2 2085.308 57.61
3 -167.951 8.00 1.54814 45.8
4 -260.429 -8.00 1.54814 45.8
5 -167.951 -46.25
6 -462.691 -4.65 1.91650 31.6
7 -2591.481 -1.90
8 -275.113 1.90
9 -2591.481 4.65 1.91650 31.6
10 -462.691 24.03
11 124.843 4.35 1.53775 74.7
12 -905.486 1.44
13 -181.246 1.84 1.88300 40.8
14 686.432 (可変)
15 2817.050 2.00 1.59522 67.7
16 58.565 11.61
17 -687.302 2.29 1.84666 23.8
18 -200.292 (可変)
19 92.360 8.33 1.51823 58.9
20 -96.636 0.13
21 -741.544 1.91 1.91650 31.6
22 182.274 65.95
像面 ∞
各種データ
焦点距離 298.89
Fナンバー 2.28
半画角(°) 4.14
像高 21.64
レンズ全長 177.20
BF 65.95
物体距離 無限遠 -3000
d14 1.83 28.60
d18 28.73 1.97
[数値例2]
単位 mm
面データ
面番号 r d nd νd
1 556.718 6.72 1.48749 70.2
2 -3701.868 54.85
3 -157.006 8.00 1.48749 70.2
4 -221.723 -8.00 1.48749 70.2
5 -157.006 -46.52
6 -129.814 -3.50 1.51633 64.1
7 -165.738 3.50 1.51633 64.1
8 -129.814 36.29
9 37.612 3.51 1.48749 70.2
10 80.984 0.26
11 30.337 2.49 1.80518 25.4
12 25.645 (可変)
13 -187.587 2.00 1.72916 54.7
14 71.979 2.81
15 -118.528 2.07 1.84666 23.8
16 -69.665 (可変)
17 -178.895 5.11 1.51823 58.9
18 -40.203 9.87
19 -37.624 1.90 1.77250 49.6
20 -85.338 47.69
像面 ∞
各種データ
焦点距離 408.04
Fナンバー 5.00
半画角(°) 3.04
像高 21.64
レンズ全長 189.17
BF 47.69
物体距離 無限遠 -3000
d12 13.84 37.02
d16 46.31 23.19
[数値例3]
単位 mm
面データ
面番号 r d nd νd
1 241.332 9.86 1.51633 64.1
2 437.456 62.27
3 -193.477 8.00 1.65844 50.9
4 -280.017 -8.00 1.65844 50.9
5 -193.477 -54.54
6 -283.331 33.13
7 75.910 10.95 1.62280 57.0
8 -319.014 4.21
9 79.120 6.77 1.79360 37.1
10 369.318 2.32
11 -406.179 2.50 1.91082 35.3
12 64.547 (可変)
13 148.537 1.99 1.77250 49.6
14 32.155 4.34 1.80518 25.4
15 48.512 (可変)
16 78.723 7.06 1.74320 49.3
17 -64.937 2.50 1.74950 35.3
18 226.899 12.05
19 -152.744 4.23 1.48749 70.2
20 -63.548 1.00
21 -101.205 3.01 1.85026 32.3
22 -163.840 60.33
像面 ∞
各種データ
焦点距離 290.25
Fナンバー 2.31
半画角(°) 4.26
像高 21.64
レンズ全長 202.93
BF 60.33
物体距離 無限遠 -3000
d12 4.39 24.84
d15 24.57 4.12
[数値例4]
単位 mm
面データ
面番号 r d nd νd
1* -226.220 -51.50
2* -205.541 51.50
3 221.161 7.84 1.48749 70.2
4 -67.360 0.40
5 -66.938 2.49 1.90366 31.3
6 -100.826 (可変)
7 631.717 3.16 1.85478 24.8
8 -296.661 0.92
9 -187.635 2.00 1.48749 70.2
10 45.925 (可変)
11 -127.999 3.27 1.80400 46.5
12 -77.656 22.57
13 -902.695 6.77 1.48749 70.2
14 -47.597 4.20
15 -47.606 2.00 1.87070 40.7
16 -154.492 33.57
像面 ∞
非球面データ
第1面
K =-1.00000e+000 A 4=-3.91046e-010 A 6=-6.37894e-014
第2面
K = 0.00000e+000 A 4= 3.52117e-008 A 6=-5.58765e-012
各種データ
焦点距離 298.75
Fナンバー 2.28
半画角(°) 4.14
像高 21.64
レンズ全長 168.92
BF 33.57
物体距離 無限遠 -3000
d 6 1.76 19.94
d10 26.48 8.30
[数値例5]
単位 mm
面データ
面番号 r d nd νd
1 696.779 7.98 1.48749 70.2
2 -393.230 52.01
3 -119.528 7.98 1.45867 67.9
4 -205.681 -7.98 1.45867 67.9
5 -119.528 -38.20
6 -101.866 -5.81 1.51823 58.9
7 -178.838 5.81 1.51823 58.9
8 -101.866 38.20
9 -119.528 7.98 1.45867 67.9
10 -205.681 (可変)
11 914.008 1.99 1.59522 67.7
12 54.072 (可変)
13 727.391 4.85 1.67270 32.1
14 -44.061 1.17 1.83400 37.2
15 148.718 6.98
16 110.665 5.48 1.58913 61.1
17 -78.286 77.79
像面 ∞
各種データ
焦点距離 387.15
Fナンバー 5.00
半画角(°) 3.20
像高 21.64
レンズ全長 197.84
BF 77.79
物体距離 無限遠 -3000
d10 1.71 26.59
d12 29.91 5.03
【0053】
【0054】
[撮像装置]
図11は、上述した各実施例の光学系L0を撮像光学系として用いたデジタルスチルカメラ(撮像装置)を示している。図において、10はカメラ本体、11は実施例1~5のいずれかの光学系L0により構成される撮影光学系である。12はカメラ本体に内蔵されたCCDセンサやCMOSセンサ等の固体撮像素子(光電変換素子)であり、撮影光学系11によって形成された光学像を光電変換する。カメラ本体10は、クイックターンミラーを有する一眼レフカメラでもよいし、クイックターンミラーを有さないミラーレスカメラでもよい。
【0055】
このように、各実施例の光学系L0を撮像装置に適用することにより、光学性能が良好で小型軽量な撮像装置を得ることができる。
【0056】
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。