IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェの特許一覧

<>
  • 特開-歯周炎の診断方法、使用及びキット 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134563
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】歯周炎の診断方法、使用及びキット
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20230920BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20230920BHJP
   C07K 16/00 20060101ALN20230920BHJP
【FI】
G01N33/53 N
G01N33/50 G
C07K16/00
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023110445
(22)【出願日】2023-07-05
(62)【分割の表示】P 2020538662の分割
【原出願日】2019-01-09
(31)【優先権主張番号】18151839.0
(32)【優先日】2018-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(74)【代理人】
【識別番号】100145654
【弁理士】
【氏名又は名称】矢ヶ部 喜行
(72)【発明者】
【氏名】コーイマン ヘルベン
(72)【発明者】
【氏名】ルメール アミル フセイン
(72)【発明者】
【氏名】フラッセ カール
(72)【発明者】
【氏名】デ ヤヘル マリヌス カレル ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】チャップル イアン レスリー キャンベル
(72)【発明者】
【氏名】フラント メリッサ マッケイ
(72)【発明者】
【氏名】プレショウ フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】テイラー ジョン ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ファン ハーツカンプ ミヒャエル アレックス
(57)【要約】      (修正有)
【課題】人間の患者が歯周炎に罹患しているか否かを評価するための体外方法が開示される。
【解決手段】本方法は、バイオマーカータンパク質を決定するという洞察に基づいている。従って、歯周炎に罹患している患者からの唾液のサンプル中で、遊離軽鎖κタンパク質及び/又は遊離軽鎖λタンパク質の濃度が測定される。測定された濃度に基づいて、当該タンパク質の濃度又は合同濃度を反映した値が決定される。この値を、同様に歯周炎に伴う濃度や合同濃度を反映した閾値と比較する。この比較により、検査値が前記患者の歯周炎の存在を示しているか否かを評価することができる。これにより、典型的には、閾値により反映された濃度又は合同濃度を下回る濃度又は合同濃度を反映した検査値は、当該患者において歯周炎がないことを示し、閾値で反映された濃度又は合同濃度又は合同濃度以上の濃度又は合同濃度を反映した検査値は、当該患者における歯周炎を示す。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間の患者が歯周炎に罹患しているか否かを評価するための体外方法であって、前記方法は、
前記人間の患者からの唾液のサンプルにおける、遊離軽鎖κタンパク質及び/又は遊離軽鎖λタンパク質の濃度を検出するステップと、
前記タンパク質について決定された濃度又は合同濃度を反映した検査値を決定するステップと、
前記検査値が前記患者の歯周炎を示すか否かを評価するため、前記検査値を、前記歯周炎に関連する濃度又は合同濃度を同様に反映した閾値と比較するステップと、
を有する方法。
【請求項2】
前記人間の患者が歯周炎の疑いがある、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
対象者の年齢が決定され、前記検査値が、前記対象者の年齢と組み合わせて、前記タンパク質について決定された濃度又は合同濃度を反映する、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記閾値が、歯周炎の存在又は歯周炎の不在に関連付けられた各サンプルの1つ以上の参照サンプル中のタンパク質について決定された濃度に基づく、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記閾値は、歯周炎を有する被験者からのサンプルと歯周炎を有しない被験者からのサンプルとを含むサンプルのセット中のタンパク質の濃度に基づく、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記タンパク質が、遊離軽鎖κタンパク質及び遊離軽鎖λタンパク質を有する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記タンパク質は遊離軽鎖λタンパク質である、前記タンパク質が、遊離軽鎖κタンパク質及び遊離軽鎖λタンパク質を有する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記決定された濃度値が、0と1との間の数へと算術的に処理される、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
人間の患者が歯周炎に罹患しているか否かを評価するためのバイオマーカーとしての、前記患者の唾液サンプル中の遊離軽鎖κタンパク質及び/又は遊離軽鎖λタンパク質の使用。
【請求項10】
前記人間の患者の年齢もバイオマーカーとして使用される、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
人間の患者が歯周炎に罹患しているか否かを評価するためのシステムであって、前記システムは、
前記人間の患者の唾液サンプル中の遊離軽鎖κタンパク質及び/又は遊離軽鎖λタンパク質を検出するよう構成された検出手段と、
決定された前記タンパク質の濃度から、患者が歯周炎に罹患していることの指標を決定するよう構成されたプロセッサと、
を有するシステム。
【請求項12】
口腔液サンプルを受けるための容器を更に有し、前記容器が前記検出手段を有する、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記指標をユーザに提示するためのユーザインタフェースと、
前記プロセッサから前記ユーザインタフェースに前記指標を転送するための、前記プロセッサと前記ユーザインタフェースとの間のデータ接続であってと、
を更に有する、請求項14に記載のシステム。
【請求項14】
前記プロセッサは、インターネットベースのアプリケーションにより機能することが可能である、請求項11乃至13のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
前記インタフェースが、対象の年齢に関する情報を入力することが可能であり、前記プロセッサが、決定された濃度から、前記被験者が歯周炎に罹患していることを示す指標を決定するよう構成された、請求項11乃至14のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項16】
人間の患者の唾液のサンプル中の歯周炎についての少なくとも1つのバイオマーカーを検出するためのキットであって、前記キットは、遊離軽鎖κタンパク質及び/又は遊離軽鎖λタンパク質を検出するための1つ以上の検出試薬を有する、キット。
【請求項17】
前記1つ以上の検出試薬が、遊離軽鎖κタンパク質を検出するための第1の検出試薬と、遊離軽鎖λタンパク質を検出するための第2の検出試薬と、の少なくとも2つの検出試薬を有する、請求項16に記載のキット。
【請求項18】
前記1つ以上の検出試薬が固体支持体上に含まれている、請求項16又は17に記載のキット。
【請求項19】
前記1つ以上の検出試薬が、遊離軽鎖κタンパク質及び遊離軽鎖λタンパク質のための検出試薬から成る、請求項16乃至18のいずれか一項に記載のキット。
【請求項20】
第1の時点から第2の時点までの時間間隔にわたって、歯周炎に罹患している人間の患者の歯周炎の状態の変化を決定するための体外方法であって、前記方法は、前記第1の時点において前記患者から得られた唾液の少なくとも1つのサンプル及び前記第2の時点において前記患者から得られた唾液の少なくとも1つのサンプル中の遊離軽鎖κタンパク質及び/又は遊離軽鎖λタンパク質の濃度を検出するステップと、濃度を比較して、それにより、濃度のいずれか一方又は両方の違いが状態の変化を反映する、方法。
【請求項21】
人間の患者の唾液のサンプル中の遊離軽鎖κタンパク質及び/又は遊離軽鎖λタンパク質を検出するステップと、前記サンプル中の前記タンパク質の濃度に基づいて、患者の歯周炎の有無を評価するステップと、を有する、人間の患者の歯周炎に罹患しているか否かを診断する方法。
【請求項22】
人間の患者の遊離軽鎖κタンパク質及び/又は遊離軽鎖λタンパク質を検出する方法であって、前記方法は、
人間の患者から唾液サンプルを取得するステップと、
前記タンパク質を結合させるための1つ以上の検出試薬に前記サンプルを接触させ、各タンパク質と前記1つ以上の検出試薬との間の結合を検出することにより、遊離軽鎖κタンパク質及び/又は遊離軽鎖λタンパク質が前記サンプル中に存在するか否かを検出するステップと、
を有する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔ケアの分野であり、唾液を用いた歯周病の診断に関する。特に、本発明は、歯周炎を診断するためのキット、使用及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
歯肉の炎症(歯肉炎)は、主に歯の表面に対する細菌のバイオフィルム、即ち歯垢の付着によって引き起こされる、非破壊的な歯周病である。可逆性歯肉炎は、通常、発見して治療しなければ、歯の周囲の組織(即ち歯周組織)に炎症を起こし、歯周炎と定義される状態になり、不可逆的に組織破壊や歯槽骨の喪失を引き起こし、最終的には歯を失うことに帰着する。歯周病の進行中には、通常、歯茎の腫れ、ピンク色から暗赤色への色の変化、歯茎の出血、口臭、歯茎が触ることに対して敏感になる又は痛くなる、といった臨床的な徴候や症状がある。
【0003】
歯周炎は、口腔内の微生物によって引き起こされる慢性の多因子性炎症性疾患で、硬い組織(骨)と柔らかい組織(歯根膜)の破壊の進行により特徴付けられ、最終的には歯の可動性や喪失に至る。これは、歯肉組織の可逆的な感染と炎症である歯肉炎とは区別されるべきである。炎症性歯周炎は、最も一般的な慢性疾患の一つであり、成人が歯を失う主な原因である。歯周炎が口腔の健康に与える実質的な悪影響に加えて、歯周炎が全身的な影響を持ち、心臓病(アテローム性動脈硬化症、脳卒中など)、糖尿病、妊娠合併症、関節リウマチ、呼吸器感染症など、幾つかの全身疾患の危険因子であることを示す証拠も増えている。
【0004】
従って、歯周病の早期かつ正確な診断は、口腔内と全身の健康の両方の観点から重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
歯周病は一般的な歯科診療ではいまだに診断が不十分であり、その結果、治療介入率が比較的低く、かなりの数の未治療症例が発生している。現在の診断は、歯科専門家による口腔組織の状態(色、腫脹、プロービング時の出血の程度、プロービングポケットの深さ、口腔内X線写真からの骨の喪失)の不正確で主観的な臨床検査に依存している。これらの従来の方法は、時間がかかり、使用される技術の一部(ポケット深さ、X線)は、現在の疾患活動や更なる疾患への感受性ではなく、過去の疾患活動などの履歴の事象を反映している。それ故、好適には非専門家によっても実行され得る、より客観的で、より速く、正確で、使いやすい診断法が望ましい。従って、現在の疾患活動性、及びことによると更なる歯周病に対する被験者の感受性を測定することが望ましい。
【0006】
唾液又は口腔液は、長い間、口腔及び一般的な疾患の診断流体として提唱されており、ラボオンチップとも呼ばれる小型化されたバイオセンサーの出現に伴い、椅子に座っての迅速なテストのためのポイントオブケア診断は、より大きな科学的及び臨床的な関心を得ている。特に歯周病の検出のために、組織の炎症や破壊に関連する炎症性バイオマーカーは、近接のため簡単に唾液で終了し得、唾液が歯周病の検出のための強い可能性を持っていることを示唆している。実際、この分野は、このように重要な関心を集めており、心強い結果が提示されている。 例えば、Ramseierら(J Periodontol. 2009 Mar;80(3):436-46)は、歯周病と相関する宿主及び細菌由来のバイオマーカーを同定した。しかしながら、明確なテストは未だ現れていない。
【0007】
バイオマーカーは臨床症状を実証する生物学的指標であり、それ自体が歯周病の臨床転帰を診断するための客観的な指標である。最終的には、実績のあるバイオマーカーは、将来の疾患のリスクを評価したり、初期段階での疾患を特定したり、初期治療に対する反応を特定したり、予防戦略の実施を可能にしたりするために利用され得る。
【0008】
唾液バイオマーカーのためのポイントオブケアテストの開発に対する以前の制限は、椅子に座っての用途に適応した技術の欠如、及び個々のサンプル内の複数のバイオマーカーを分析することができないことを含んでいた。また、斯かるテストに含めるべき複数のバイオマーカーの選択は、十分に文献で言及されておらず、実用的なテストで実装されてもいない。
【0009】
より簡単なプロセスを提供することが望まれ、特に、ことによると患者自身により、小さな唾液サンプルが患者から採取されることしか必要としないプロセスを提供することが望ましいものとなり得る。斯かるサンプルが体外診断装置に入力され、それによって、測定に基づいて、患者が歯周炎に罹患していると分類される可能性の指標を返すことができるような唾液サンプルの分類が可能になることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上の要望をより好適に満たすために、本発明は、一態様において、人間の患者が歯周炎に罹患しているか否かを評価するための体外方法であって、前記方法は、前記人間の患者からの唾液のサンプルにおける、遊離軽鎖κタンパク質及び/又は遊離軽鎖λタンパク質の濃度を検出するステップと、前記タンパク質について決定された濃度又は合同濃度を反映した検査値を決定するステップと、前記検査値が前記患者の歯周炎を示すか否かを評価するため、前記検査値を、前記歯周炎に関連する濃度又は合同(joint)濃度を同様に反映した閾値と比較するステップと、を有する方法に関する。
【0011】
別の態様において、本発明は、人間の患者が歯周炎に罹患しているか否かを評価するためのバイオマーカーとしての、前記患者の唾液サンプル中の遊離軽鎖κタンパク質及び/又は遊離軽鎖λタンパク質の使用を提示する。
【0012】
任意に、患者の年齢もまた、バイオマーカーとして使用される。
【0013】
更に別の態様では、本発明は、人間の患者が歯周炎に罹患しているか否かを評価するためのシステムであって、前記システムは、前記人間の患者の唾液サンプル中の遊離軽鎖κタンパク質及び/又は遊離軽鎖λタンパク質を検出するよう構成された検出手段と、決定された前記タンパク質の濃度から、患者が歯周炎に罹患していることの指標を決定するよう構成されたプロセッサと、を有するシステムに関する。
【0014】
該システムは、任意に、情報を提示することができるインタフェース、特にグラフィカルユーザインタフェースへのデータ接続を含み、好適には、情報を入力することも可能であり、前記インタフェースは、システムの一部であるか又はリモートのインタフェースのいずれかである。
【0015】
任意に、以上のアイテムのうちの1つ以上、特にプロセッサは、「クラウド内で」、即ち、固定されたマシン上ではなく、インターネットベースのアプリケーションによって機能することが可能である。
【0016】
更なる態様においては、人間の患者の唾液のサンプル中の歯周炎についての少なくとも1つのバイオマーカーを検出するためのキットであって、前記キットは、遊離軽鎖κタンパク質及び/又は遊離軽鎖λタンパク質を検出するための1つ以上の検出試薬を有する、キットを提供する。典型的には、2つの検出試薬が使用され、それぞれが異なるバイオマーカーを結合する。一実施例では、第1の検出試薬は遊離軽鎖κを結合することができ、第2の検出試薬は遊離軽鎖λを結合することができる。
【0017】
更に他の態様において、本発明は、第1の時点t1から第2の時点t2までの時間間隔にわたって、歯周炎に罹患している人間の患者の歯周炎の状態の変化を決定するための体外方法であって、前記方法は、前記時点t1において前記患者から得られた唾液の少なくとも1つのサンプル及び前記時点t2において前記患者から得られた唾液の少なくとも1つのサンプル中の遊離軽鎖κタンパク質及び/又は遊離軽鎖λタンパク質の濃度を検出するステップと、濃度を比較して、それにより、濃度のいずれか一方又は両方の違いが状態の変化を反映する、方法を提供する。
【0018】
更なる態様において、本発明は、人間の患者の唾液のサンプル中の遊離軽鎖κタンパク質及び/又は遊離軽鎖λタンパク質を検出するステップと、前記サンプル中の前記タンパク質の濃度に基づいて、患者の歯周炎の有無を評価するステップと、を有する、人間の患者の歯周炎に罹患しているか否かを診断する方法を提供する。任意に、当該態様の方法は、患者の歯周炎を治療するステップを更に有する。
【0019】
更に他の態様において、本発明は、人間の患者の遊離軽鎖κタンパク質及び/又は遊離軽鎖λタンパク質を検出する方法であって、前記方法は、
(a)人間の患者から唾液サンプルを取得するステップと、
(b)前記タンパク質を結合させるための1つ以上の検出試薬に前記サンプルを接触させ、各タンパク質と前記1つ以上の検出試薬との間の結合を検出することにより、遊離軽鎖κタンパク質及び/又は遊離軽鎖λタンパク質が前記サンプル中に存在するか否かを検出するステップと、
を有する方法を提供する。典型的には、遊離軽鎖λタンパク質を結合することができる第1の検出試薬があり、第2の検出試薬は、遊離軽鎖κタンパク質を結合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本開示に記載の方法における使用のためのシステムを模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
一般的な意味で、本発明は、単一のタンパク質であっても、歯周炎の有無を識別するための、人間の患者の唾液サンプル中のバイオマーカーとして機能し得るという洞察に基づくものである。 歯周炎を診断するために単独で又は組み合わせて使用することができる2つのタンパク質が同定されている。
【0022】
これらのタンパク質は、遊離軽鎖λタンパク質及び/又は遊離軽鎖κタンパク質である。単一のバイオマーカータンパク質を使用する場合には、遊離軽鎖λタンパク質が好適である。
【0023】
両方のタンパク質が検出される場合、特定の実施例では、2つのタンパク質の和、比、又は差が決定されても良い。和、比及び/又は差は、任意に、互いに組み合わせて使用されることができる。例えば、或る実施例によれば、2つの鎖の比及び和が組み合わせても良く、又は別の実施例において比及び差が組み合わせても良い。和、比、差又は組み合わせは、任意に、遊離軽鎖λタンパク質及び/又は遊離軽鎖κタンパク質の測定値と更に組み合わせられても良い。例えば、κ/λ比は、有利に、遊離軽鎖λの測定値と組み合わせられても良く、κ/λ比は、有利に、遊離軽鎖κの測定値と組み合わせられても良く、又はκ/λ比は、有利に、遊離軽鎖κ及び遊離軽鎖λの測定値と組み合わせられても良い。
【0024】
対象者の年齢は、任意に追加のマーカーとして含められても良い。
【0025】
遊離軽鎖タンパク質は、免疫グロブリン軽鎖である。これらのタンパク質は免疫グロブリン重鎖とは関連しない。典型的な免疫グロブリン全分子とは異なり、遊離軽鎖タンパク質は免疫グロブリン重鎖に共有結合しておらず、例えば遊離軽鎖は重鎖にジスルフィド結合していない。典型的には、遊離軽鎖は約220個のアミノ酸を有する。典型的には、自由軽鎖タンパク質は、可変領域(しばしば、軽鎖可変領域Vと呼ばれる)及び一定領域(しばしば、軽鎖一定領域Cと呼ばれる)から構成される。ヒトは、カッパ(κ)及びラムダ(λ)の文字で命名された2種類の免疫グロブリン軽鎖を産生する。これらの各々は、可変領域の変動に基づいて、4つのκサブタイプ(Vκ1、Vκ2、Vκ3及びVκ4)及び6つのラムダサブタイプ(Vλ1、Vλ2、Vλ3、Vλ4、Vλ5及びVλ6)を有するサブグループに更に分類されることができる。遊離軽鎖κは、典型的には単量体である。遊離軽鎖λは、典型的には二量体であり、ジスルフィド結合によって(別の遊離軽鎖λに)連結されている。遊離軽鎖λの重合体形態及び遊離軽鎖κの重合体形態が同定されている。遊離軽鎖は、骨髄及びリンパ節細胞によって、またびまん性リンパ球によって歯根膜内で局所的に産生され、血液から急速に除去され、腎臓によって異化される。単量体の遊離軽鎖は2乃至4時間、2量体の遊離軽鎖は3乃至6時間で除去される。
【0026】
上記の2つのタンパク質は本分野で知られている。当業者は、それらの構造、及び唾液サンプルのような水性サンプル中で検出する方法を認識している。以下、前記タンパク質のバイオマーカーを総称して「本発明のバイオマーカーパネル」と呼ぶ。一実施例では、本発明のバイオマーカーパネルは、本発明で同定された2つのタンパク質バイオマーカー、即ち、遊離軽鎖λ及び遊離軽鎖κから成る。本発明のバイオマーカーパネルに加えて、歯周炎のタイプの決定に適用されるデータのセットに、人口統計学的データ(例えば、年齢、性別)などの他のバイオマーカー及び/又はデータを含めることができる。
【0027】
他のバイオマーカーが任意に含まれる場合、バイオマーカーの総数(即ち、本発明のバイオマーカーパネルに他のバイオマーカーを加えたもの)は、典型的には3、4、5又は6である。
【0028】
しかしながら、本発明の好ましい利点は、患者における歯周炎の分類を、好ましくは2つ以下のバイオマーカーを測定することによって決定することができる点であり、ここで遊離軽鎖λ及び遊離軽鎖κの両方のバイオマーカーパネルが好ましい。特に、該決定は、他のデータの使用を伴う必要がなく、有利には、簡便で直接的な診断テストを提供する。
【0029】
該方法は、望まれるように、小さな唾液サンプル、例えば滴サイズのサンプルが被験者から採取されることしか必要としない。サンプルのサイズは、典型的には0.1μl乃至2ml、例えば1乃至2mlの範囲内であり、これにより、より少量、例えば0.1乃至100μlは、体外装置の処理に使用することができ、より大きなサンプル、例えば20mlまで、例えば7.5乃至17mlを採用することも可能である。
【0030】
このサンプルは体外診断装置に入力され、該装置は、関与するタンパク質又はタンパク質の濃度を測定し、診断結果を返し、歯周炎を有する可能性に基づいて対象者を分類する。
【0031】
本発明の使用の容易さにより、歯周炎を有する、又は歯周炎を発症する危険性が高い歯科患者の大多数を、定期的に(例えば、定期的な歯科検診の一部として、又は自宅でさえも)検査することが可能になる。これにより、特に、歯周炎が進行した後すぐに歯周炎の存在を検出することができ、従って、歯周炎が進行するのを防ぐために、よりタイムリーに口腔ケア対策を講じることができる。又は、例えば、歯周炎のリスクが高いことが知られている患者で、初めて検査を受ける場合には、該方法は、歯周炎が進行しているか否かを識別することを可能とする。また、この方法は、歯周炎の治療が成功したか否かを確認するために、以前に歯周炎と診断された患者の治療の後に適用することができる。特に、この方法は自己診断にも適しており、サンプルを採取して装置に入力するステップは、患者自身が行うことができる。
【0032】
患者は、典型的には、歯周炎が存在するか否かを確認するために本発明を実施するときに、歯周炎を有することが知られているか、又は疑われているかもしれない。従って、特定の実施例では、本発明の方法は、歯周炎を有することが知られているか又は疑われている人間の患者が歯周炎を有するか否かを評価するためのものである。
【0033】
本発明の方法は、典型的には、本発明のバイオマーカーパネルを構成する前記タンパク質、及び任意の更なるバイオマーカータンパク質を、1つ以上の検出試薬を用いて検出することを有する。
【0034】
本発明に従って検査される「唾液」は、唾を吐くか又は拭き取ることによって得られる未希釈唾液であっても良く、又は流体で口をすすぐことによって得られる希釈唾液であっても良い。希釈された唾液は、患者が滅菌水(例えば5ml又は10ml)又は他の適当な液体で数秒間口をすすぐか又は口に含んで、容器に唾液を吐くことによって得られても良い。希釈された唾液は、口腔すすぎ液と呼ばれることがある。
【0035】
「検出する」とは、バイオマーカータンパク質の濃度を測定、定量、スコア付け、又は分析することを意味する。バイオマーカータンパク質を含む生物学的化合物を評価する方法は、本分野で知られている。タンパク質バイオマーカーを検出する方法は、直接測定及び間接測定を含むことが認識されている。当業者は、特定のバイオマーカータンパク質を分析するための適切な方法を選択することができるであろう。
【0036】
タンパク質バイオマーカーに関する用語「濃度」は、その通常の意味、即ち、体積中のタンパク質の豊富さという意味を付される。タンパク質濃度は通常、体積当たりの質量で測定されるが、最も一般的にはmg/ml、μg/ml、又はng/mlであるが、時にはpg/mlとなる。別の尺度は、モル度(又はモル濃度)、mol/L又は「M」である。濃度は、既知の、決定された、又は予め決定された量のサンプル中のタンパク質の量を検出することによって決定することができる。
【0037】
濃度を決定することの代替は、サンプル中のタンパク質バイオマーカーの絶対量を決定すること、又はサンプル中のバイオマーカーの質量分率を決定すること、例えば、サンプル中の他のすべてのタンパク質の合計に対するバイオマーカーの量を決定することである。
【0038】
「検出試薬」とは、関心のあるタンパク質バイオマーカーに特異的に(又は選択的に)結合し、相互作用し、又は検出する薬剤又は化合物である。斯かる検出試薬は、タンパク質バイオマーカーを優先的に結合する抗体、ポリクローナル抗体、又はモノクローナル抗体を含み得るが、これらに限定されない。
【0039】
検出試薬を参照する場合、「特異的に(又は選択的に)結合する」又は「特異的に(又は選択的に)免疫反応性を有する」という表現は、タンパク質及び他の生物学的製剤の異種集団におけるタンパク質バイオマーカーの存在を決定する結合反応を指す。従って、指定された免疫分析条件下では、指定された検出試薬(例えば、抗体)は、バックグラウンドの少なくとも2倍の特定のタンパク質に結合し、サンプル中に存在する他のタンパク質に実質的に有意な量で結合しない。このような条件下での特異的結合は、特定のタンパク質に対する特異性のために選択された抗体を必要とする場合がある。特定のタンパク質に対して特異的に免疫反応性を有する抗体を選択するために、様々な免疫分析形式が使用され得る。例えば、固相ELISA免疫分析(酵素連結免疫吸着分析)は、タンパク質に対して特異的に免疫反応性を有する抗体を選択するために日常的に使用される(特異的な免疫反応性を決定するために使用され得る免疫分析形式及び条件の説明については、例えば、Harlow & Lane, Antibodies, A Laboratory Manual (1988)を参照)。典型的には、特異的又は選択的な反応は、バックグラウンドのシグナル又はノイズの少なくとも2倍、より典型的にはバックグラウンドの10乃至100倍である。
【0040】
「抗体」とは、エピトープ(例えば、抗原)を特異的に結合し、認識する免疫グロブリン遺伝子又は免疫グロブリン遺伝子、又はその断片によって実質的にコードされるポリペプチド配位子を指す。認識される免疫グロブリン遺伝子には、カッパ及びラムダ軽鎖一定領域遺伝子、アルファ、ガンマ、デルタ、イプシロン及びミュー重鎖一定領域遺伝子、並びに多種多様な免疫グロブリン可変領域遺伝子が含まれる。抗体は、例えば、無傷の免疫グロブリンとして、又は種々のペプチダーゼでの消化によって産生される多数のよく特徴づけられたフラグメントとして存在する。これには、例えば、Fab'及びF(ab)'2フラグメントが含まれる。ここで用いられる「抗体」という用語はまた、全抗体の改変によって産生された抗体断片、又は組換えDNA法を用いてデノボ合成された抗体断片のいずれかを含む。また、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、又は一本鎖抗体も含まれる。抗体の「Fc」部分とは、免疫グロブリン重鎖のうち、CH1、CH2及びCH3の1つ以上の重鎖定数領域ドメインを構成する部分を指すが、重鎖可変領域は含まない。抗体は、例えば、第1の抗原に特異的に結合する第1の可変領域と、第2の異なる抗原に特異的に結合する第2の可変領域とを有する抗体などの二重特異性抗体であっても良い。少なくとも1つの二重特異性抗体を使用することにより、必要とされる検出試薬の数を減らすことができる。
【0041】
診断方法は、その感度及び特異性において異なる。診断分析の「感度」とは、陽性となった疾患患者の割合(「真陽性」の割合)である。分析によって検出されなかった罹患者は「偽陰性」である。疾患がなく、分析で陰性と判定された被験者は「真陰性」と呼ばれる。診断分析の「特異度」は、1から偽陽性率を引いたものであり、「偽陽性」率は、疾患がなくても陽性と判定された人の割合として定義される。
【0042】
本発明のバイオマーカータンパク質は、いずれの方法でサンプル中に検出されても良い。バイオマーカー検出のための好ましい方法は、抗体ベースの分析、タンパク質アレイ分析、質量分析(MS)ベースの分析、及び(近)赤外分光法ベースの分析である。例えば、免疫分析は、ウエスタンブロット、ラジオ免疫分析、ELISA、「サンドイッチ」免疫分析、免疫沈降分析、沈殿反応、ゲル拡散沈殿反応、免疫拡散分析、蛍光免疫分析などの技術を用いた競合分析系及び非競合分析系を含むが、これらに限定されるものではない。このような分析は、慣習的なものであり本分野でよく知られている。例示的な免疫分析を以下に簡単に記載する(ただし、限定を意図するものではない)。
【0043】
免疫沈降プロトコルは、一般的に、タンパク質ホスファターゼ及び/又はプロテアーゼ阻害剤(例えば、EDTA、PMSF、アプロチニン、バナジン酸ナトリウム)を添加したRIPAバッファ(1%のNP-40又はTriton X-100、1%のデオキシコール酸ナトリウム、0.1%のSDS、0.15MのNaCl、0.01MのpH7.2のリン酸ナトリウム、1%のTrasylol)などの溶解バッファで細胞の集団を溶解すること、対象の抗体を細胞溶解液に添加すること、4℃で一定時間(例えば、1乃至4時間)インキュベートすること、タンパク質A及び/又はタンパク質Gセファロースビーズを細胞溶解液に添加すること、4℃で1時間以上インキュベートすること、溶解バッファで該ビーズを洗浄すること、及びSDS/サンプルバッファで該ビーズを再懸濁することを有する。特定の抗原を免疫沈降させる抗体の能力は、例えば、ウエスタンブロット分析によって評価することができる。当業者であれば、抗原に対する抗体の結合を増加させ、バックグラウンドを減少させるために修正され得るパラメータ(例えば、Sepharoseビーズで細胞溶解物を予備洗浄すること)について知識があるであろう。
【0044】
ウエスタンブロット分析は、一般に、タンパク質サンプルを調製すること、ポリアクリルアミドゲル中でのタンパク質サンプルの電気泳動(例えば、抗原の分子量に応じて8%乃至20%のSDS-PAGE)、ポリアクリルアミドゲルからニトロセルロース、PVDF又はナイロンなどの膜にタンパク質サンプルを移すこと、該膜をブロッキング溶液(例えば、3%のBSAを含むPBS又は脱脂乳)でブロッキングすること、該膜を洗浄バッファ(例えば、PBS-Tweeen20)で洗浄すること、ブロッキングバッファで希釈した一次抗体(目的の抗体)で膜をブロッキングすること、洗浄バッファで膜を洗浄すること、ブロッキングバッファで希釈された酵素基質(例えば、ワサビペルオキシダーゼ又はアルカリホスファターゼ)又は放射性分子(例えば、32P又は125I)に共役させた二次抗体(一次抗体を認識する抗体、例えば抗ヒト抗体)で膜をブロッキングすること、洗浄バッファで該膜を洗浄すること、及び抗原の存在を検出することを有する。当業者であれば、検出されるシグナルを増加させ、バックグラウンドノイズを減少させるために変更することができるパラメータについて知識があるであろう。
【0045】
ELISAは一般に、抗原(即ち、関心のあるバイオマーカータンパク質又はその断片)を調製すること、96個のウェルのマイクロタイタープレートのウェルを抗原でコーティングすること、酵素基質(例えば、ワサビペルオキシダーゼ又はアルカリホスファターゼ)のような検出可能な化合物に結合した関心のある抗体をウェルに添加し一定時間インキュベートすること、及び抗原の存在を検出することを有する。ELISAでは、目的の抗体を検出可能な化合物に結合させる必要はなく、代わりに、検出可能な化合物に結合させた第2の抗体(目的の抗体を認識する)をウェルに添加しても良い。更に、抗原でウェルにコーティングする代わりに、抗体がウェルにコーティングされても良い。この場合、コーティングされたウェルに目的の抗原を添加した後、検出可能な化合物に結合した第2の抗体を添加しても良い。当業者であれば、当技術分野で知られているELISAの他のバリエーションと同様に、検出されるシグナルを増加させるために変更することができるパラメータについて知識があるであろう。
【0046】
複数のマーカーが使用されている場合は、これらのバイオマーカーの合同濃度に基づいて閾値が決定される。単一のバイオマーカーが使用される場合、閾値はそのバイオマーカーの濃度に基づいて決定される。閾値は、患者が歯周炎を有するものとして分類されるか否かを決定する。本発明は、上記のような単一のバイオマーカー又は2つのバイオマーカーの組み合わせの測定に基づいて、十分な精度で歯周炎を検出することができるという洞察を反映している。
【0047】
この洞察は、患者が歯周炎を有するか否かを評価するための、人間の患者の唾液サンプル中のバイオマーカー又はバイオマーカーとしての、遊離軽鎖λタンパク質及び/又は遊離軽鎖κタンパク質の使用である、本発明の別の態様をサポートする。
【0048】
この使用は、本明細書前に実質的に以上に記載された方法及び以下に記載される方法で実施することができる。
【0049】
遊離軽鎖λ及び遊離軽鎖κの両方が検出された場合、本発明の方法は、前記タンパク質について測定された合同濃度を反映した検査値を決定することを有する。合同濃度値は、決定された濃度を入力し、これらの値を算術演算して得られる値であれば、どのような値であっても良い。これは、例えば、単純な濃度の加算であっても良い。また、各濃度に、これらの濃度の所望の重みを反映した係数を乗算し、その結果を加算することを含んでも良い。また、濃度を互いに乗算すること、又は乗算、除算、減算、指数化、及び加算の任意の組み合わせを含むこともできる。それは更に、濃度を幾つかの乗数まで上げることを含むことができる。 好ましい実施例では、2つのバイオマーカーの和(κ+λ)が使用される。 他の好ましい実施例では、2つのバイオマーカーの比が使用される(例えば、κ/λ又はλ/κ)。 他の実施例では、2つのバイオマーカー間の差が使用される(例えば、κ-λ又はλ-κ)。
【0050】
任意に、検査値は、被験者の年齢と組み合わせて、前記タンパク質について決定された合同濃度を反映する。
【0051】
結果として得られる合同濃度値は、歯周炎の存在に関連する合同濃度を同じように反映した閾値と比較される。この比較により、検査値が、唾液が検査の対象とされる患者における歯周炎の存在を示すものであるか否かを評価することができる。
【0052】
該閾値は、例えば、歯周炎の存在に関連する基準サンプル中の同じタンパク質について、即ち歯周炎と診断された患者において、決定された濃度に基づいて、同じ方法で得られた濃度又は合同濃度値であっても良い。典型的には、同じかそれ以上の合同濃度を反映した値は、被検患者の歯周炎の存在を示す。同様に、試験された歯周炎患者の唾液中のより低い合同濃度を反映する値は、歯周炎がないことを示す。しかしながら、歯周炎を示す検査値が閾値を下回り、歯周炎がないことを示す検査値が閾値を上回るような閾値(例えば、負の乗数を使用することによって)を算出することも可能であることは理解されるであろう。
【0053】
閾値はまた、歯周炎の既知の診断を受けた患者と「歯周炎ではない」患者を含むサンプルのセットにおける現在のバイオマーカータンパク質の濃度を測定することに基づいて決定されても良い。これにより、測定された濃度値は、機械学習法を含む統計的分析を受けることができ、所望の感度と特異度で、歯周炎と分類された患者と歯周炎に罹患していないと分類された患者とを識別することを可能とする。その結果、所望の閾値が得られ得る。この閾値に基づいて、検査されるべきサンプルは、同じ濃度測定を受けることができ、濃度値は次いで、閾値が得られるのと同じ方法で処理され、閾値と比較されることができる合同濃度値を決定し、それにより、検査されるサンプルが歯周炎を有する又は有さないものとして分類されることを可能とする。
【0054】
興味深い実施例では、濃度又は合同濃度値は、以下のようにスコアの形で得られる。数値(例えばng/mlのタンパク質濃度値)が各測定に割り当てられ、これらの値は、0と1との間のスコアを算出するために線形又は非線形の組み合わせで使用される。上述したように、閾値が対象のセットに基づいて決定される場合、0と1との間のスコアは、典型的には、合同濃度を入力とするシグモイド関数を用いて算出される(以下に示される)。
【0055】
スコアがある閾値を超えると、該方法は、患者が歯周炎に罹患していることを示す。閾値は、所望の感度及び特異性に基づいて選択されても良い。
【0056】
本発明によれば、対象者に対して「歯周炎分類」を行う場合、このことは、歯周炎のリスクがある、又は歯周炎に苦しんでいると想定できる対象者に対して行われることが理解されるであろう。このことは、例えば、歯周炎の程度を区別する能力がなくても、以前に実施された歯周炎の診断などから知ることができるか、又は、例えば、被験者の口腔内健康状態の記録から推測することができる。
【0057】
本分野で認識されているような臨床的定義は、以下に基づく。
【0058】
歯肉指数(GI)
口腔内全体の歯肉指数は、0から4のスケールで評価されるLobene Modified Gingival Index(MGI)に基づいて記録される。
0=炎症がない。
1=軽度の炎症。いずれかの部分において、色のわずかな変化があり、テクスチャの変化がなく、全体の辺縁歯肉又は乳頭部歯肉単位には変化がない。
2=軽度の炎症。しかし、全体の辺縁歯肉又は乳頭部歯肉単位を含む。
3=中程度の炎症。辺縁歯肉又は乳頭部歯肉単位の光沢、発赤、浮腫、及び/又は肥大。
4=重度の炎症;辺縁歯肉単位又は乳頭部歯肉単位の著明な発赤、浮腫及び/又は肥大、自然出血、うっ血、又は潰瘍化。
【0059】
プロービングの深さ(PD)
プロービング深さは、手動式歯周プローブを使用して、最小mm単位で記録される。プロービング深さは、プローブの先端(ポケットの底部にある仮定)から自由歯肉縁までの距離である。
【0060】
歯肉退縮(REC)
歯肉退縮は、手動式UNC-15歯周プローブを使用して、最小mm単位で記録される。歯肉退縮とは、自由歯肉辺縁からセメント質-エナメル質接合部までの距離である。歯肉後退は正の数値、歯肉過成長は負の数値で示される。
【0061】
臨床的付着喪失(CAL)
【0062】
臨床的付着喪失は、プロービング深さと各部位の後退との合計として算出される。
【0063】
プロービング時の出血(BOP)
プロービング後、各部位はプロービング時の出血について有無を評価され、30秒のプロービングで出血が発生した場合は、当該部位について1のスコアが、そうでない場合は0のスコアが割り当てられる。
【0064】
その結果得られた対象群(患者群)の定義は以下の通りであり、これにより、軽度-中程度の歯周炎群及び進行歯周炎群は、本発明に関連する「歯周炎」である。
-健康群(H)。すべての部位でPD≦3mmであり(ただし、最後に直立する臼歯の遠位に4mmのポケットを4つまで許容)、隣接歯間の付着喪失を有する部位はなく、10%以下の部位でGIが2.0以上、%BOPスコア≦10%である。
-歯肉炎群(G)。30%を超える部位でGI≧3.0であり、隣接歯間の接着喪失のある部位がなく、PD>4mmの部位がなく、%BOPスコア>10%である。
-軽度-中程度歯周炎群(MP):8本以上の歯で隣接歯間PDが5乃至7mm(約2乃至4mmのCALに相当)であり、%BOPスコア>30%である。
-進行歯周炎群(AP):12本以上の歯で隣接歯間PDが7mm以上(約5mm以上のCALに相当)であり、%BOPスコア>30%である。
【0065】
一実施例では、本発明の方法は、図1に模式的に表されるシステムを利用する。該システムは、様々な装置構成要素(ユニット)を内蔵した単一の装置であっても良い。また、該システムは、その様々な構成要素、又はこれらの構成要素の一部を別個の装置として有しても良い。図1に示す構成要素は、測定装置(A)、グラフィカルユーザインタフェース(B)、及びコンピュータ処理装置(C)である。
【0066】
上述したように、本発明のシステムは、インタフェースへのデータ接続を有し、インタフェース自体はシステムの一部であってもよいし、リモートのインタフェースであっても良い。後者は、実際のインタフェースを提供するために、別の装置、好ましくはスマートフォンやタブレットコンピュータのようなハンドヘルド装置を使用する可能性を指す。このような場合のデータ接続は、好ましくは、Wi-Fi(登録商標)やBluetooth(登録商標)などの無線データ転送、又は他の技術や規格によるデータ転送を含む。
【0067】
測定装置(A)は、例えば、装置(A)に挿入可能なカートリッジ(A1)に唾液の滴を置くことによって、唾液サンプルを受け取るように構成されている。該装置は、同じ唾液サンプルから、遊離軽鎖λタンパク質及び遊離軽鎖κタンパク質の少なくとも一方の濃度を決定することができる既存の装置であっても良い。
【0068】
測定装置(A)は、例えば、装置(A)に挿入可能なカートリッジ(A1)に唾液の滴を載せることにより、唾液サンプルを受け取ることが可能であるべきである。測定装置は、同じ唾液サンプルから、遊離軽鎖λ及び遊離軽鎖κタンパク質の少なくとも1つの濃度を決定することができる既存の装置であっても良い。
【0069】
処理ユニット(C)は、部分(A)からタンパク質濃度の数値を受け取る。処理ユニット(C)は、0から1の間のスコア(S)を算出することを可能にするソフトウェア(典型的には組み込みソフトウェア)を備える。該ソフトウェアは更に、閾値(T)についての数値を含む。算出された値(S)が閾値(T)を超える場合、ユニット(C)は、GUI(B)に「歯周炎」の示唆(I)を出力し、そうでなければ「歯周炎なし」を出力する。更なる実施例では、示唆(I)がなされる確実性を示すために、(S)の特定の値を使用しても良い。これは確率スコアであっても良く、0.5はとり得る閾値であり、例えばスコアS=0.8は歯周炎の可能性を示し得る。興味深い選択肢は、以下のとおりである:
スコアSに基づいて、直接に確実性を示し得るものであり、即ちS=0.8が歯周炎の80%の確実性を意味するもの、又は
範囲R1乃至R2の定義を通して示唆を為すものであり、R1<S<R2のとき、表示(I)が「決定的ではない」ことを意味するようなもの。
【0070】
スコアの特定の算出は、例えば、以下の式を適用するシグモイド関数によって実装されても良い:
【数1】
【0071】
ここで、Nは使用したタンパク質/バイオマーカーの数であり、c、c等は係数(数値)であり、B、B等はそれぞれのタンパク質濃度である。
【0072】
係数の決定は、以下のトレーニング手順により行うことができる。
-歯周炎を有する(現在の基準で歯科医によって識別される)被験者N1と、歯周炎を有しない(健康な歯肉又は歯肉炎を有する)被験者N2を選択する。
-各被験者から唾液サンプルを採取し、上記で説明したバイオマーカーの組み合わせのタンパク質濃度を決定する。
-スコアSを、歯周炎の場合は1、歯周炎がない場合は0と定義する。
-スコア及びタンパク質濃度値にシグモイド関数をフィッティングする。
【0073】
スコアSが、歯周炎患者の場合には高く、歯周炎でない対照者の場合には低くなるような他の回帰法又は機械学習法(線形回帰、ニューラルネットワーク、サポートベクターマシン)が使用されても良い。
【0074】
前述のシステムに関し、本発明は更に別の態様において、人間の患者が歯周炎を有するか否かを評価するためのシステムであって、該システムは、
前記人間の患者の唾液サンプル中の遊離軽鎖κタンパク質及び/又は遊離軽鎖λタンパク質を検出するよう構成された検出手段と(以上に説明されたように、斯かる手段は知られており、当業者には容易にアクセス可能であるものであり、典型的には、対象の口腔サンプルを受容するための容器が備えられ、該容器は該検出手段を備えている)、
決定された前記タンパク質の濃度から、患者が歯周炎に罹患していることの指標を決定するよう構成されたプロセッサと、
を有するシステムを提供する。
【0075】
任意に、該システムは、情報を提示することができるユーザインタフェース(又はリモートインタフェースへのデータ接続)、特にグラフィカルユーザインタフェース(GUI)を有し、GUIは、テキストベースのユーザインタフェース、タイプされたコマンドラベル又はテキストナビゲーション(斯かるインタフェースのタイプはいずれも本発明では除外されない)の代わりに、グラフィカルアイコン及び二次表記のような視覚的指標を介してユーザが電子デバイスと相互作用することを可能にするタイプのユーザインタフェースである。GUIは一般的に知られており、典型的には、MP3プレーヤ、ポータブルメディアプレーヤ、ゲーム装置、スマートフォン、及びより小さい家庭用、オフィス用及び産業用制御装置などのハンドヘルドモバイル装置で使用されており、前述したように、該インタフェースはまた任意に、例えば対象者の年齢、性別、BMI(Body Mass Index)といった情報を入力することが可能となるよう選択されても良い。
【0076】
本発明はまた、単独で又は前記システムの一部として、人間の患者の唾液サンプル中の歯周炎についての少なくとも1つのバイオマーカーを検出するためのキットを提供し、前記キットは、遊離軽鎖κタンパク質及び/又は遊離軽鎖λタンパク質を検出するための1つ以上の検出試薬を有する。典型的には、前記キットは、それぞれが異なるバイオマーカーに向けられた2つの検出試薬からなり、第1の検出試薬は遊離軽鎖κタンパク質を結合することができ、第2の検出試薬は遊離軽鎖λタンパク質を結合することができる。本発明の方法に関して以上に議論されたように、該キットは、他のタンパク質のためのものなど、より多くの検出試薬を有しても良い。好適な実施例では、該キットにおいて利用可能とされる検出試薬は、上述したように、本発明の2バイオマーカーパネルを構成する2つのタンパク質の選択のための検出試薬を有する。
【0077】
好ましくは、前記キットは、前記検出試薬を含むチップ、マイクロタイタープレート、ビーズ又は樹脂などの固体支持体を有する。幾つかの実施例では、該キットは、ProteinChipなどの質量分析プローブを有する。
【0078】
該キットはまた、未結合の検出試薬又は前記バイオマーカー(サンドイッチ型分析)に特異的な洗浄液及び/又は検出試薬を提供しても良い。
【0079】
興味深い態様では、本発明のバイオマーカーパネルの認識は、人間の患者における歯周炎の状態を経時的にモニタリングする際に適用される。従って、本発明はまた、第1の時点tから第2の時点tまでの時間間隔にわたって、歯周炎に罹患している人間の患者における歯周炎の状態の変化を決定するための体外方法を提供し、該方法は、t1において前記患者から得られた唾液の少なくとも1つのサンプル及びt2において前記患者から得られた唾液の少なくとも1つのサンプルにおいて、遊離軽鎖κタンパク質及び/又は遊離軽鎖λタンパク質の濃度を検出するステップと、これら濃度を比較し、好ましくは少なくとも1つの、より好ましくは両方の濃度の差が状態の変化を反映するようにするステップと、を有する。該差は、濃度の差として見なされることができ、従って、最初に0と1の間の数字、又は他の任意の分類を生成することなく直接の比較を可能とする。両方の時点で受信した測定値もまた、上記のように歯周炎の状態を決定するときに行われるのと同様の方法で処理することができることは、理解されるであろう。
【0080】
本発明はまた、人間の患者が歯周炎を有するか否かを診断する方法であって、人間の患者の唾液のサンプル中に遊離軽鎖κタンパク質及び/又は遊離軽鎖λタンパク質を検出するステップを有する方法を提供する。患者の歯周炎の有無は、通常、前記サンプル中の前記タンパク質の濃度に基づいて評価される。任意に、本態様の方法は、患者の歯周炎を処置するステップを更に含む。この任意の処置ステップは、既知の治療剤の投与又は歯科処置、又は治療剤と歯科処置との組み合わせを有しても良い。既知の治療剤は、マウスウォッシュ、チップ、ゲル又はマイクロスフィアのような抗菌剤含有剤の投与を含む。歯周炎の治療に使用するための典型的な抗菌剤は、クロルヘキシジンである。他の治療剤は、抗生物質、典型的には経口投与される抗生物質、及びドキシサイクリンのような酵素抑制剤を含む。既知の非外科的治療処置には、スケーリング及びルートプレーニング(SRP)が含まれる。 既知の外科的処置には、外科的ポケット縮小、フラップ手術、歯肉移植又は骨移植が含まれる。
【0081】
本発明は更に、人間の患者の遊離軽鎖κタンパク質及び/又は遊離軽鎖λタンパク質を検出する方法であって、前記方法は、
(a)人間の患者から唾液サンプルを取得するステップと、
(b)前記タンパク質を結合させるための1つ以上の検出試薬に前記サンプルを接触させ、各タンパク質と前記1つ以上の検出試薬との間の結合を検出することにより、遊離軽鎖κタンパク質及び/又は遊離軽鎖λタンパク質が前記サンプル中に存在するか否かを検出するステップと、
を有する方法を提供する。
【0082】
以下の限定するものではない例を参照しながら、本発明が更に説明される。
【0083】
実施例
歯周病の健康状態が異なる153名の被験者を対象に臨床研究を実施した(現在の基準(例:米国歯周病学会基準)に基づき、歯科専門家による臨床評価により特定した)。被験者のうち39名が健康な歯肉(H)を持ち、35名が歯肉炎(G)、41名が軽度歯周炎(MP)、38名が進行性歯周炎(AP)と診断され、ROC(Receiver-Operator-Characteristic)AUC(Area-Under-the Curve)値が、2つの独立した臨床現場での繰り返しの臨床訪問後に得られた。
【0084】
様々なバイオマーカーの組み合わせの性能が、LOOCV(Leave-one-out cross validation)を用いたロジスティック回帰によって評価され、その結果、ここで説明したような好適なバイオマーカーの組み合わせが得られた。
【0085】
統計学では、受信者動作特性曲線(ROC曲線)は、その識別閾値が変化したときの二値分類器システムの性能を示すグラフィカルなプロットである。この曲線は、様々な閾値設定における偽陽性率(FPR)に対して真陽性率(TPR)をプロットすることによって作成される。真陽性率は、機械学習では、感度、リコール、又は検出確率としても知られている。偽陽性率は、フォールアウト又は誤報の確率としても知られており、(1-特異性)として算出することができる。従って、ROC曲線は、フォールアウトの関数としての感度である。一般的に、検出と誤報の両方の確率分布が既知であれば、ROC曲線は、検出確率の累積分布関数(-∞から識別閾値までの確率分布の下の面積)をy軸に、誤報確率の累積分布関数をx軸にプロットすることによって生成することができる。検査の精度は、検査が、検査されるグループを、問題の疾患を持つ群と持たない群とにどれだけ好適に分けるかに依存する。精度はROC曲線の下の面積で測定される。面積が1の場合は完全な検査を表し、0.5の場合は価値のない検査を表す。診断検査の精度を分類するための指針として、伝統的な学術的な点数システムがある。
0.09乃至1=優秀(A)
0.08乃至9.90=良い(B)
0.70乃至0.80=普通(C)
0.60乃至0.70=悪い(D)
0.50乃至0.60=不合格(F)
【0086】
以上に基づいて、上述した臨床試験の結果において、0.75を超えるROC AUC値は、本発明に従った診断検査を提供するための望ましい精度を呈すると考えられる。
【0087】
以下の表1は、本発明のパネルのバイオマーカーを使用して、歯周炎を検出するために、0.8を超えるROC AUC値が得られたことを示している。
【0088】
本表に示されたバイオマーカータンパク質は、FLCκ、FLCλ、比κ/λ、和κ+λ、及び差κ-λである。
【0089】
本表において、比κ/λ、和κ+λ及び年齢から成るバイオマーカーパネルを用いて、0.847のROC AUCという最大の結果が得られたことが分かる。これに近い結果(0.835)が、FLCκ、FLCλ、比κ/λ 及び年齢を用いて得られている。0.835は、FLCλ、比κ/λ 及び年齢を用いても得られる。0.8を超えるスコアは、FLCλのみのものを含む他の多くのマーカーについて報告されている。
【表1】
【0090】
本表は、ロジスティック回帰により歯周炎と非歯周炎を分類するための、マーカーとして任意に年齢が追加される、FLCバイオマーカーパネルの性能を示している。
【0091】
マーカーκ及びλの隣において、追加の予測因子κ+λ、κ-λ、κ/λが考察された。冗長なパネルは本表には示されていない。ここで冗長との語は,例えばκ+λ及びκ-λを予測因子として含むパネルが、ロジスティック回帰において、κ及びλを予測因子として含む対応するパネルと同じ結果を与えるという事実を反映している。
【0092】
斜体で示されたパネルは、相対的な性能が低いため好適ではない。他の全てのパネルは、AUC LOOCV>0.75(ほとんどのパネルでAUC LOOCV>0.80)であり許容できる性能を呈している。
【0093】
本発明は図面及び以上の記述において説明され記載されたが、斯かる説明及び記載は説明するもの又は例示的なものであって限定するものではないとみなされるべきであり、本発明は開示された実施例に限定されるものではない。例えば、異なるバイオマーカーのための検出試薬を異なる単位で提示することが可能である。あるいは、便利にも、本発明のキットは、全ての実施例で使用されるタンパク質バイオマーカー、即ち、遊離軽鎖κタンパク質及び/又は遊離軽鎖λタンパク質のための検出試薬の固定セットと、任意に他のバイオマーカーのための検出試薬を有する柔軟なモジュールと、を有しても良い。
【0094】
図面、説明及び添付される請求項を読むことにより、請求される本発明を実施化する当業者によって、開示された実施例に対する他の変形が理解され実行され得る。請求項において、「有する(comprising)」なる語は他の要素又はステップを除外するものではなく、「1つの(a又はan)」なる不定冠詞は複数を除外するものではない。特定の手段が相互に異なる従属請求項に列挙されているという単なる事実は、これら手段の組み合わせが有利に利用されることができないことを示すものではない。請求項におけるいずれの参照記号も、請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0095】
要約すると、人間の患者が歯周炎に罹患しているか否かを評価するための体外方法がここで開示される。本方法は、バイオマーカータンパク質を決定するという洞察に基づいている。従って、患者からの唾液のサンプル中で、遊離軽鎖κタンパク質及び/又は遊離軽鎖λタンパク質の濃度が測定される。測定された濃度に基づいて、当該タンパク質の濃度又は合同濃度を反映した値が決定される。この値を、同様に歯周炎に伴う濃度や合同濃度を反映した閾値と比較する。この比較により、検査値が前記患者の歯周炎の存在を示しているか否かを評価することができる。これにより、典型的には、閾値により反映された濃度又は合同濃度を下回る濃度又は合同濃度を反映した検査値は、当該患者において歯周炎がないことを示し、閾値で反映された濃度又は合同濃度又は合同濃度以上の濃度又は合同濃度を反映した検査値は、当該患者における歯周炎を示す。
図1
【手続補正書】
【提出日】2023-07-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間の患者が歯周炎に罹患しているか否かを評価するための体外方法であって、前記方法は、
前記人間の患者からの唾液のサンプルにおける、少なくとも遊離軽鎖λタンパク質を含むタンパク質の濃度を測定するステップと、
前記タンパク質について測定された濃度又は前記測定された濃度を算術演算して求まる合同濃度を反映した検査値を決定するステップと、
前記検査値が前記患者の歯周炎を示すか否かを評価するため、前記検査値を、前記歯周炎と診断された患者における前記測定された濃度又は合同濃度を同様に反映した閾値と比較するステップと、
を有する方法。
【請求項2】
人間の患者の年齢が決定され、前記検査値が、前記人間の患者の年齢と組み合わせて、前記タンパク質について測定された濃度又は合同濃度を反映する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記閾値が、歯周炎の存在関連付けられた各サンプルの1つ以上の参照サンプル中の前記測定された濃度又は合同濃度に基づく、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記閾値は、歯周炎を有する被験者からのサンプル含むサンプルのセット中の前記測定された濃度又は合同濃度に基づく、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記タンパク質が更に、遊離軽鎖κタンパク質有する、請求項1乃至のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記検査値が、0と1との間の数へと算術的に処理される、請求項1乃至のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
人間の患者が歯周炎に罹患しているか否かを評価するためのバイオマーカーとしての、前記患者の唾液サンプル中の離軽鎖λタンパク質の使
【外国語明細書】