(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134589
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】キトサンとポリエチレングリコールとのコポリマー、並びに血管穿刺をシールするためにかかるコポリマーを使用する方法及びデバイス
(51)【国際特許分類】
A61L 29/14 20060101AFI20230920BHJP
A61L 29/04 20060101ALI20230920BHJP
A61L 29/06 20060101ALI20230920BHJP
A61L 29/08 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
A61L29/14 300
A61L29/04
A61L29/06
A61L29/04 200
A61L29/08 100
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023112122
(22)【出願日】2023-07-07
(62)【分割の表示】P 2021086874の分割
【原出願日】2015-05-28
(31)【優先権主張番号】62/004,806
(32)【優先日】2014-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】507343626
【氏名又は名称】アクセスクロージャー,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】ミロナキス、 アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】リム、 フロレンシア
(57)【要約】 (修正有)
【課題】血管穿刺をシールするための血管シーリング材、装置、及び方法を提供する。
【解決手段】近位端、遠位端、及び組織を通る穿刺内への送達のための大きさの断面を有する細長い第1のセクション、並びに第1のセクションの遠位端から伸延する第2のセクションを含む、組織を通る穿刺をシールするためのシーリング材が提供される。第1のセクションは、穿刺内で生理学的流体に曝露されたとき膨張する凍結乾燥ヒドロゲルから形成され得る。第1のセクションは、キトサン及び少なくとも1種の追加のポリマーを含む。第2のセクションは、非凍結乾燥非架橋ヒドロゲル前駆体の固体塊から形成され得る。前駆体は、水性の生理学的環境に曝露されるまで非反応性状態にあり、曝露されると前駆体はインサイチュで互いに架橋して第1のセクションに結合した接着層を提供する。第2のセクションはさらにキトサンを含んでもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織を通る穿刺をシールするためのシーリング材であって、
前記シーリング材は、凍結乾燥ヒドロゲルから形成された第1のセクションを含み、第
1のセクションは穿刺内で生理学的流体に曝露されたとき膨張し、
第1のセクションは少なくとも1種のポリマーに結合したキトサンを含むヒドロゲルを
含み、水性の生理学的流体に曝露されると、ヒドロゲルが膨張して組織を通る穿刺をシー
ルする、シーリング材。
【請求項2】
キトサンが少なくとも部分的に脱アセチル化されたキトサンを含む、請求項1に記載の
シーリング材。
【請求項3】
キトサンが少なくとも60%の脱アセチル化度を有する、請求項2に記載のシーリング
材。
【請求項4】
キトサンが約10キロダルトン~約600キロダルトンの分子量を有する、請求項1に
記載のシーリング材。
【請求項5】
キトサンが、遊離のキトサン、キトサン塩化物、キトサングルタミン酸塩、キトサン酢
酸塩、キトサンジカルボン酸塩、キトサンアジピン酸塩、キトサンコハク酸塩、キトサン
フマル酸塩、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載のシーリン
グ材。
【請求項6】
少なくとも1種のポリマーが、側基官能性を有する1種又は複数のポリエチレングリコ
ールポリマー鎖を含む、請求項1に記載のシーリング材。
【請求項7】
少なくとも1種のポリマーが、アミン変性ポリエチレングリコール及びエステル変性ポ
リエチレングリコールのうちの1種又は複数を含む、請求項6に記載のシーリング材。
【請求項8】
キトサンが共有結合により少なくとも1種のポリマーに結合している、請求項1に記載
のシーリング材。
【請求項9】
キトサンが非共有結合により少なくとも1種のポリマーに結合している、請求項1に記
載のシーリング材。
【請求項10】
少なくとも1種のポリマーが、キトサンに結合した架橋ポリエチレングリコールを含む
、請求項1に記載のシーリング材。
【請求項11】
第1のセクションが約0.1重量%~約30重量%のキトサンを含む、請求項1に記載
のシーリング材。
【請求項12】
少なくとも1種のポリマーが、ポリエチレングリコール-アミン(PEG-アミン)及
びポリエチレングリコール-エステル(PEG-エステル)を含み、PEG-アミン対P
EG-エステルのモル比が4:1~1:4である、請求項1に記載のシーリング材。
【請求項13】
少なくとも1種のポリマーが、ポリエチレングリコール-アミン(PEG-アミン)及
びポリエチレングリコール-エステル(PEG-エステル)を含み、PEG-アミン対P
EG-エステルの活性基部位の当量比が約0.1~約4である、請求項1に記載のシーリ
ング材。
【請求項14】
少なくとも1種のポリマーが、ポリエチレングリコール-アミン(PEG-アミン)及
びポリエチレングリコール-エステル(PEG-エステル)を含み、キトサン対PEG-
エステルのモル比が約0.0005~約0.01である、請求項1に記載のシーリング材
。
【請求項15】
少なくとも1種のポリマーが、ポリエチレングリコール-アミン(PEG-アミン)及
びポリエチレングリコール-エステル(PEG-エステル)を含み、キトサン対PEG-
エステルの活性基部位の当量比が約0.1~約5である、請求項1に記載のシーリング材
。
【請求項16】
シーリング材が第1のセクションの遠位端から伸延する第2のセクションを含む、請求
項1に記載のシーリング材。
【請求項17】
第2のセクションが非架橋前駆体を含む、請求項16に記載のシーリング材。
【請求項18】
非架橋前駆体がポリエチレングリコール-アミン及びポリエチレングリコール-エステ
ルを含む、請求項17に記載のシーリング材。
【請求項19】
第2のセクションがキトサンをさらに含む、請求項16に記載のシーリング材。
【請求項20】
第2のセクションが、キトサンに結合した非架橋ポリエチレングリコールの混合物を含
む、請求項19に記載のシーリング材。
【請求項21】
第2のセクションがさらに、キトサン強化用繊維、キトサンメッシュ、キトサン粒子、
又はこれらの組合せからなる群から選択される、止血特性を有する1種又は複数の補強部
材を含む、請求項16に記載のシーリング材。
【請求項22】
第2のセクションが約1重量%~約80重量%のキトサンを含む、請求項16に記載の
シーリング材。
【請求項23】
キトサンが、第2のセクション内に組み入れられた粒子の形態である、請求項19に記
載のシーリング材。
【請求項24】
シーリング材が、血管穿刺をシールするように構成され、水性の生理学的流体への曝露
後のシーリング材の膨張がシーリング材を膨張させ、シーリング材が止血特性及び凝血促
進特性を有する、請求項1に記載のシーリング材。
【請求項25】
第1のセクションの近位端と遠位端との間の長さが約1~約20ミリメートルであり、
第2のセクションの長さが約0.5~約5ミリメートルである、請求項1に記載のシーリ
ング材。
【請求項26】
第1のセクション及び第2のセクションが、約1~約8ミリメートルのその長さに沿っ
て実質的に均一な外側断面を有する、請求項16に記載のシーリング材。
【請求項27】
第1のセクション及び第2のセクションが、シーリング材の外側断面の寸法で少なくと
も50%の膨張に適している、請求項26に記載のシーリング材。
【請求項28】
小口径デバイスを用いて6フレンチ又はそれ以上の大きさを有する血管穿刺をシールす
るための方法であって、
近位端、遠位端、及び組織を通る穿刺内への送達のための大きさの断面を有する第1の
セクションを含むシーリング材を用意するステップであって、第1のセクションは、穿刺
内で生理学的流体に曝露されたとき膨張する凍結乾燥されたポリエチレングリコール(P
EG)及びキトサンヒドロゲルから形成される、ステップと、
小口径送達デバイスからの配置により、組織を通る穿刺内にシーリング材を導入するス
テップと、
穿刺内でシーリング材を流体に曝露するステップであって、生理学的流体に曝露される
と、PEG及びキトサンヒドロゲルが膨張して、組織を通る穿刺をシールする、ステップ
とを含む、方法。
【請求項29】
第1のセクションが約0.5重量%~約8重量%のキトサンを含む、請求項28に記載
の方法。
【請求項30】
シーリング材が、第1のセクションの遠位端から伸延する第2のセクションをさらに含
み、第2のセクションが非架橋PEG前駆体を含み、PEG前駆体の少なくとも幾らかが
非反応性状態にある、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
第2のセクションがキトサンをさらに含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
小口径デバイスが7フレンチ又はそれ以下の大きさである、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
血管穿刺が7フレンチ~24フレンチの大きさである、請求項28に記載の方法。
【請求項34】
小口径デバイスが6フレンチの大きさである、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
血管穿刺が7フレンチ~10フレンチの大きさである、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
組織を通る穿刺をシールするためのシーリング材を作製する方法であって、
近位端、遠位端、及び組織を通る穿刺内への送達のための大きさの断面を有する細長い
第1のセクションを形成するステップであって、第1のセクションは、ポリエチレングリ
コール(PEG)及びキトサンを含む凍結乾燥されたヒドロゲルから形成され、ヒドロゲ
ルは、穿刺内で生理学的流体に曝露されたとき膨張することができる、ステップと、
第1のセクションの遠位端に第2のセクションを適用するステップであって、第2のセ
クションは、複数の非架橋PEG前駆体を含み、前記前駆体は、穿刺内で生理学的流体に
曝露されるまで非反応性状態のままであり、曝露されると、前記前駆体はインサイチュで
互いに架橋し、第2のセクションに結合する、ステップ
とを含む、方法。
【請求項37】
第2のセクションが非架橋PEG及びキトサンの混合物を含む、請求項36に記載の方
法。
【請求項38】
第1のセクションが約0.1重量%~約30重量%のキトサンを含む、請求項36に記
載の方法。
【請求項39】
ポリエチレングリコールが、ポリエチレングリコール-アミン及びポリエチレングリコ
ール-エステルを含み、キトサン対ポリエチレングリコール-エステルのモル比が約0.
0005~約0.01である、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
ポリエチレングリコールが、ポリエチレングリコール-アミン及びポリエチレングリコ
ール-エステルを含み、キトサン対ポリエチレングリコール-エステルの活性基部位の当
量比が約0.1~約5である、請求項36に記載の方法。
【請求項41】
第2のセクションが約1重量%~約80重量%のキトサンを含む、請求項37に記載の
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示されている本発明の幾つかの実施形態は一般に、身体内の穿刺をシール
するためのシーリング材、装置、及び方法に関する。幾つかの実施形態は高まったシール
効果をもたらすコポリマーに関する。幾つかの実施形態において、組織を通って血管まで
伸延する血管穿刺をシールするためにかかるコポリマーを使用する装置及び方法が開示さ
れる。
【背景技術】
【0002】
例えば、患者の血管系内で処置を行うためにその血管系に経皮的にアクセスし、その処
置の終了後生じる穿刺をシールするための装置及び方法は公知である。例えば、患者の皮
膚及び覆っている組織を通して血管内へ中空の注射針を挿入することがある。ガイドワイ
ヤを注射針の内腔を介して血管内に通し、その後その注射針を抜き取ることができる。次
に、例えば、1つ又は複数の拡張器と共に、又はそれに続いて、導入シース、処置シース
、又は大腿鞘を、ガイドワイヤ上を血管内に進ませることができる。カテーテル又はその
他のデバイスを、導入シースを通してガイドワイヤ上を、医療処置が行われる位置まで進
ませることができる。このようにして、導入シースは、様々なデバイスを血管内へアクセ
スさせる、及び/又は導入することを容易にすることができ、一方血管壁の外傷を最小に
し、及び/又は失血を最小にする。
【0003】
これらの様々な医療処置の結果、血管に、殊に診断及び/又は介入カテーテル法中のカ
テーテル挿入のための部位として働く血管には動脈切開のような創傷が生じ得る。かかる
処置が終了した後、その医療処置の間にアクセス点として創り出された動脈切開は閉鎖す
る必要がある。
【0004】
処置の終了後、デバイス及び導入シースを取り外して、皮膚と血管壁との間に伸延する
穿刺を残すことができる。穿刺をシールするために、覆っている組織に、例えば、手で、
及び/又はサンドバッグを用いて、止血が起こるまで外から圧力をかけることができる。
しかしながら、この処置は時間がかかり高価であり、医療専門家が1時間もの時間をかけ
る必要がある。また、患者にとっても不快であり、患者は手術室、カテーテルラボ、又は
待機室で動かないでいる必要がある。加えて、止血が起こる前に出血の結果血腫が生ずる
リスクが存在する。
【0005】
血管閉鎖デバイスを用いて、血管内処置(例えば、カニューレ挿入)の結果として血管
(動脈又は静脈)に形成された小さい穴の止血(例えば、シーリング)を達成することが
できる。かかる処置は診断、薬物送達、治療(例えば、ステント留置又は血管形成術)な
どのためのものであり得る。これらの処置では、血管の壁に小さい切り口を形成して血管
内腔にアクセスする。この切り口、血管穿刺又は動脈切開は、処置の終了時に閉鎖しなけ
ればならない。血管穿刺における迅速な止血は、患者の合併症を減らし、患者の歩行まで
の時間及び退院までの時間を改善するので理想的である。
【0006】
例えば、機械的な原理に基づくデバイスを血管閉鎖に利用することができる。経皮外科
デバイスは組合せ創傷縫合並びに圧着(crimping)及び切断(cutting)デバイスを含む
ことができる。この組合せデバイスは血管創傷の場所を決め、創傷を取り囲む血管壁に縫
合糸を通すことができる。その後、圧着及び切断部分を分離することができ、縫合部分を
取り除くことができ、留め具(例えば、フェルール)を適用するために圧着及び切断部分
を創傷部位に位置付けることができる。
【0007】
もう1つ別の機械的な原理に基づくデバイスは、2つの構成要素、すなわち、カテーテ
ルに沿って長手方向にスライド可能であって血管壁のような組織膜内の開口の周りでその
膜内に注射針を前進させる注射針前進装置と、カテーテルを介して組織膜の遠位側を越え
て挿入可能な縫合糸回復アセンブリとを有することができる。注射針前進装置は組織壁を
通って縫合糸を前進させる。縫合糸回復アセンブリは組織膜の遠位側で縫合糸をつかみ、
組織膜の開口を通してこれを抜き取る。
【0008】
かかる機械的な手法は、組織管内での正確な位置決めを必要とし、通例(組織購入の連
続支持の代わりに)点支持を提供し、同じ血管部位でのその後のカテーテル挿入を妨げる
永続的な異物のインプラントとなる傾向がある。加えて、創傷の純粋に機械的な支持は、
創傷唇に対して点支持のみを提供する実質的に非吸収性の異物の移植となる可能性があろ
う。さらに、純粋に機械的な閉鎖はなおも、完全に閉鎖されてはいない縫合糸間に開放し
たマイクロスペース、又は小さいギャップを残す可能性がある。
【0009】
以前は(場合によっては現在も)、手による圧迫が血管穿刺を閉鎖する主要な方法であ
った。これには、血管穿刺の部位に直接かけられる長時間の手による圧力、クランプ締め
、外部の重量、等が必要である可能性があった。止血には20~60分かかる可能性があ
るので、患者は不快に感じることが多く、長時間の安静が必要であった。
【0010】
手による圧迫に加えて、又はそれに代えて、止血を達成する時間を減らすために血管閉
鎖デバイスが開発された。幾つかのかかるデバイスは血管穿刺をシールするために縫合糸
又はコラーゲンプラグを使用した。しかし、多くのかかるデバイスでは結果として、血管
内の構成要素が血管内に保持されることになり、将来合併症を起こす可能性がある。
【0011】
さらに最近になって、血管穿刺をシールするために生分解性の材料が使用され、その経
時的な溶解のために、患者の快適さが改善され、合併症が減少する。迅速な止血は患者の
予後を改善し、医療費を低減することができるので、血管シーリング材のさらなる改善が
有益であろう。
【0012】
現在使用されているが、多くの現行のシーリング材技術は、組織管を物理的に塞ぐこと
によって創傷穿刺の止血を促進する。この物理的な閉塞は手動の圧迫に取って代わるが、
かかるポリマー性シーリング材のある種のものは比較的弱いポリマー網目構造完全性を有
しており、これは止血までの時間を長くし得る。
【0013】
血管プラグ又はシーリング材を、血管プラグの遠位端が血管の外側管腔に隣接するよう
になるまで切開又は穿刺中に挿入することを含むデバイス及び方法のような様々な生物学
的な手法が血管閉鎖に対して使用されている。血管プラグは、血管又は標的器官を通る流
体の流れを遮らないように配置される。切開又は穿刺内の血管プラグの正確な位置決めは
、バルーンカテーテル又は近位のプランジャー部材が付属されている円筒状の挿入アセン
ブリの使用によって達成される。もう1つ別の生物学的な閉鎖はコラーゲンプラグを配置
して閉鎖をシールすることができる。コラーゲンが血管に入ることを妨げるために、フッ
トプレートが血管の内部に設置される。フットプレートは縫合糸で適所に保持される。
【0014】
一例において、例えば米国特許第7,316,704号に開示されているように、血管
閉鎖デバイスは、適当な緩衝剤と混合され、大腿鞘を介して動脈切開部位に注入される2
つの合成のポリエチレングリコール(「PEG」)ポリマー粉末を含むことができる。従
って、組織を通る穿刺をシールする装置及び方法が有用であろう。特に、穿刺をシールす
る効力(例えば、速さ及び/又は効率)を改善することは有用であろう。
【発明の概要】
【0015】
本発明により、幾つかの実施形態において、血管穿刺をシールするための血管シーリン
グ材、装置、及び方法が提供され、この血管シーリング材は高まったシール効果をもたら
すコポリマーを含む。
【0016】
従って、本発明の幾つかの実施形態は、増強された止血をもたらすコポリマーを含む血
管シーリング材を提供する。幾つかの実施形態において、これは、止血及び/又は凝血促
進特性を有するシーリング材による血管穿刺の物理的な閉塞の補足に起因する。幾つかの
実施形態において、シーリング材は血小板及び/又はその他の凝血を促進する補因子を引
き付ける。幾つかの実施形態において、コポリマーシーリング材は、血管穿刺の部位にお
ける増強された「把持」を提供することにより、穿刺の閉塞を改善し、さらにはこのコポ
リマーシーリング材をより大きい大きさの穿刺に対して使用することを可能にする。
【0017】
幾つかの実施形態において、コポリマーシーリング材はキトサンと1種又は複数のポリ
エチレングリコールポリマーを含み、キトサンのみ又はポリエチレングリコールポリマー
シーリング材のみを含むシーリング材と比較してより迅速な止血を示す。キトサンは、甲
殻類に見出される、組織工学、組織修復及び創傷治癒において広範な用途を有する天然の
バイオポリマーである。キトサンは、甲殻類(例えば、カニ、エビ、等)の外骨格の構造
要素であるキチンの脱アセチル化によって生成し得る。脱アセチル化の程度(%DA)の
変動によって、いろいろな応用におけるキトサンの様々な機能性が生じ得る。キトサンは
また、例えばキトサナーゼ、パパイン、セルラーゼ、酸性プロテアーゼなどにより生分解
性でもある。キトサンは、分子量、脱アセチル化の程度及びpHに応じてヒドロゲルを形
成し得る。加えて、種々の架橋剤を利用して、キトサンのポリマー鎖を架橋し、ヒドロゲ
ルを形成させることができる。
【0018】
キトサンは、例えば米国特許第4,394,373号及び米国特許第8,012,16
7号に記載されている止血特性を有することが知られている。しかし、幾つかの実施形態
において、本明細書に開示されているコポリマーシーリング材のキトサンは、1種又は複
数の他のポリマー性構成成分と単に混合されているのではなく、むしろシーリング材のそ
の他の構成成分と(例えば、共有結合又は非共有結合で)結合している。例えば、幾つか
の実施形態において、コポリマーシーリング材は2つのタイプのポリエチレングリコール
(PEG)、すなわちPEG-アミン及びPEG-エステルに共有結合(又は非共有結合
で)結合しているキトサンを含む。有利なことに、これは、配置されたときのシーリング
材の構造上の完全性を改善するが、血管穿刺をシールする際の効力を改善する凝血促進及
び止血特性もシーリング材に付与する。
【0019】
本明細書に開示されているシーリング材の幾つかの実施形態は、凍結乾燥されたポリマ
ーヒドロゲル(例えば、シーリング材)中にポリエチレングリコールとキトサンの両方を
含む。PEGのみを含む(キトサンを含まない)シーリング材は、本質的に、生理学的流
体の存在下でのヒドロゲルシーリング材の膨張の際に組織管を塞ぐことによって創傷穿刺
の止血を引き起こす。PEGのみを含有する凍結乾燥ヒドロゲルシーリング材は本明細書
に開示されているシーリング材に含まれているキトサンの止血及び凝血促進特性を欠き、
従って結果としてPEGのみのシーリング材は止血がより遅く、より低い効率となる。
【0020】
一方、キトサンのみを利用する(PEG成分を含まない)凍結乾燥ヒドロゲルシーリン
グ材は、凍結乾燥の際に部分的に架橋したPEGヒドロゲルが創り出すことができる気孔
特性(気孔の大きさと数)を欠く。かかるヒドロゲルは、PEG成分が付与する迅速な膨
潤能力を欠く。これらのヒドロゲルでは、生理学的流体を吸収し膨潤し、続いて組織管を
塞ぐ能力が低下している。さらに、これらのヒドロゲルでは、血液を迅速に吸収し、キト
サンの継承能力を間接的に高める能力が低下しているであろう。これは、キトサンが凝血
を促進するのに利用可能な血液がより少ないからである。この結果、本明細書に開示され
ているもののような、ポリエチレングリコールとキトサンの両方を含有するヒドロゲルと
比較して止血を促進する能力が低下することになる。
【0021】
このように、キトサンとポリエチレングリコールの両方を含む凍結乾燥ヒドロゲルは、
PEG部分の膨潤特性をキトサンの止血及び凝血促進特性と共に併せもつので、有利なこ
とに、そして意外なことに、創傷のより速い止血をもたらす。多孔質のPEG成分による
血液の吸光度は、より多くの血液量が単位表面積当たりのキトサンに利用可能であるので
、キトサンの凝血能力を補足し増強することができる。従って、これらのキトサン-PE
Gヒドロゲルは、シーリング材がポリエチレングリコールのみ又はキトサンのみで構成さ
れるときの限られた適用性に対して、より大きい創傷に適用できる。
【0022】
従って、幾つかの実施形態において、組織内の穿刺をシールするためのシーリング材が
提供される。1つの実施形態において、近位端、遠位端、及び組織を通る穿刺内への送達
のための大きさの断面を有する細長い第1のセクション、並びに第1のセクションの遠位
端から伸延する第2のセクションを含み、第1のセクションが少なくとも1種のポリマー
に結合したキトサンを含むヒドロゲルを含む、組織を通る穿刺をシールするためのシーリ
ング材が提供される。幾つかの実施形態において、第1のセクションは凍結乾燥ヒドロゲ
ルから形成され、第1のセクションは穿刺内で生理学的流体に曝露されたとき膨張するよ
うに構成されている。幾つかの実施形態において、水性の生理学的流体に曝露されると、
ヒドロゲルが膨張し、組織を通る穿刺をシールする。幾つかの実施形態において、穿刺は
血管穿刺である。
【0023】
また、幾つかの実施形態において、凍結乾燥ヒドロゲルから形成された第1のセクショ
ンを含み、この第1のセクションが穿刺内で生理学的流体に曝露されたとき膨張するよう
に構成されている、組織を通る穿刺をシールするためのシーリング材が提供される。幾つ
かの実施形態において、第1のセクションは少なくとも1種のポリマーに結合したキトサ
ンを含むヒドロゲルを含み、水性の生理学的流体に曝露されると、ヒドロゲルが膨張し、
組織を通る穿刺をシールする。
【0024】
幾つかの実施形態において、第1のセクションは近位端、遠位端、及び組織を通る穿刺
内への送達のための大きさの断面を持つ細長い形状を有する。幾つかの実施形態において
、キトサンは少なくとも部分的に脱アセチル化されているキトサンを含む。例えば、1つ
の実施形態において、キトサンは少なくとも60%の脱アセチル化度を有する。追加の実
施形態において、脱アセチル化度は約40%~50%、約50%~約60%、約60%~
約70%、約70%~約80%、約80%~約90%、約90%~約95%、約95%~
約99%(及びリストされているものの重複する範囲)である。これより大きいか又は小
さい脱アセチル化度も他の実施形態で使用される。
【0025】
幾つかの実施形態において、キトサンは約10キロダルトン~約600キロダルトン、
例えば約10キロダルトン~約50キロダルトン、約50キロダルトン~約100キロダ
ルトン、約100キロダルトン~約200キロダルトン、約200キロダルトン~約30
0キロダルトン、約300キロダルトン~約400キロダルトン、約400キロダルトン
~約500キロダルトン、約500キロダルトン~約600キロダルトンの分子量、又は
これらの値を含めてその間の値の任意の分子量を有する。
【0026】
実施形態によって、キトサンは多様なタイプのものであり得る。例えば、幾つかの実施
形態において、キトサンは遊離のキトサン、キトサン塩化物、キトサングルタミン酸塩、
キトサン酢酸塩、キトサンジカルボン酸塩、キトサンアジピン酸塩、キトサンコハク酸塩
、又はキトサンフマル酸塩であり得る。幾つかの実施形態において、2種又は複数の形態
のキトサンの組合せが使用される。
【0027】
幾つかの実施形態において、少なくとも1種のポリマーはポリエチレングリコールポリ
マー鎖である。幾つかの実施形態において、少なくとも1種のポリマーは側基官能性を有
するポリエチレングリコールポリマー鎖である。幾つかの実施形態において、少なくとも
1種のポリマーはアミン変性ポリエチレングリコール又はエステル変性ポリエチレングリ
コールである。幾つかの実施形態においては、アミン変性ポリエチレングリコールとエス
テル変性ポリエチレングリコールの併用も可能である。幾つかの実施形態において、キト
サンは共有結合により少なくとも1種のポリマーに結合している。追加の実施形態におい
て、キトサンは非共有結合により少なくとも1種のポリマーに結合している。1つの実施
形態において、少なくとも1種のポリマーはキトサンに結合した架橋ポリエチレングリコ
ールである。
【0028】
幾つかの実施形態において、キトサンの量は様々である。例えば、幾つかの実施形態に
おいて、シーリング材の第1のセクションは約0.1重量%~約30重量%のキトサンを
含む。例えば、幾つかの実施形態において、キトサンは約0.1重量%~約1.0重量%
、約1.0重量%~約5.0重量%、約5.0重量%~約10.0重量%、約10.0重
量%~約15.0重量%、約15.0重量%~約20.0重量%、約20.0重量%~約
25.0重量%、約25.0重量%~約30.0重量%の量、及びこれらの量を含めてそ
の間の任意の量で存在する。1つの実施形態において、第1のセクションは約0.5重量
%~約8重量%のキトサンを含む。1つの実施形態において、第1のセクションは約2重
量%~約4重量%のキトサンを含む。1つの実施形態において、第1のセクションは約4
重量%~約6重量%のキトサンを含む。幾つかの実施形態においては、より多いか又はよ
り少ない量のキトサンも使用される。
【0029】
幾つかの実施形態において、少なくとも1種のポリマーはポリエチレングリコール-ア
ミン(PEG-アミン)及びポリエチレングリコール-エステル(PEG-エステル)を
含む。幾つかの実施形態において、PEG-アミン及びPEG-エステルはPEG-アミ
ン対PEG-エステルのモル比が4対1~1対4で存在する。幾つかの実施形態において
、PEG-アミン及びPEG-エステルはPEG-アミン対PEG-エステルのモル比2
対1~1対2で存在する。幾つかの実施形態において、PEG-アミン及びPEG-エス
テルはPEG-アミン対PEG-エステルのモル比約0.8対約1.2で存在する。幾つ
かの実施形態において、PEG-アミン及びPEG-エステルはPEG-アミン対PEG
-エステルのモル比約0.9対約1で存在する。
【0030】
幾つかの実施形態において、PEG-アミン及びPEG-エステルは約0.1~約5の
範囲の当量活性基の比で存在する。幾つかの実施形態において、PEG-アミン及びPE
G-エステルは約0.5~約3の範囲の当量活性基の比で存在する。幾つかの実施形態に
おいて、PEG-アミン及びPEG-エステルは約0.5~約2.0の範囲の当量活性基
部位の比で存在する。幾つかの実施形態において、PEG-アミン及びPEG-エステル
は約0.8~約1.2の範囲の当量活性基部位の比で存在する。幾つかの実施形態におい
て、PEG-アミン及びPEG-エステルは約0.9~約1の範囲の当量活性基部位の比
で存在する。
【0031】
幾つかの実施形態において、少なくとも1種のポリマーはポリエチレングリコール-エ
ステル(PEG-エステル)を含む。1つの実施形態において、PEG-エステルは約9
9.0重量%~約1.0重量%、約90.0重量%~約10.0重量%、約80.0重量
%~約20.0重量%、約70.0重量%~約30.0重量%、約60.0重量%~約4
0.0重量%、約55.0重量%~約45.0重量%、約53.0重量%~約47.0重
量%、約52.0重量%~約48.0重量%、約52.0重量%~約50.0重量%の量
、及びこれらの量を含めてその間の任意の量で存在することができる。
【0032】
幾つかの実施形態において、少なくとも1種のポリマーはポリエチレングリコール-ア
ミン(PEG-アミン)とポリエチレングリコール-エステル(PEG-エステル)の混
合物とを含む。幾つかの実施形態において、PEG-アミン及びPEG-エステル混合物
は4対1~1対4のPEG-アミン対PEG-エステルのモル比で存在することができる
。幾つかの実施形態において、PEG-アミン及びPEG-エステル混合物は2対1~1
対2のPEG-アミン対PEG-エステルのモル比で存在することができる。幾つかの実
施形態において、PEG-アミン及びPEG-エステルは約0.8~約1.2のPEG-
アミン対PEG-エステルのモル比で存在することができる。幾つかの実施形態において
、PEG-アミン及びPEG-エステルは約0.9~約1のPEG-アミン対PEG-エ
ステルのモル比で存在することができる。
【0033】
幾つかの実施形態において、シーリング材は第2のセクションも含むことができる。幾
つかの実施形態において、第2のセクションは第1のセクションの遠位端から伸延するこ
とができる。幾つかのかかる実施形態において、第2のセクションは非架橋前駆体から構
成され得る。幾つかの実施形態において、非架橋前駆体はポリエチレングリコール-アミ
ン及び/又はポリエチレングリコール-エステルを含む。実施形態によって、第2のセク
ションはまた場合によりキトサンも含む。例えば、1つの実施形態において、第2のセク
ションはキトサンに結合した非架橋ポリエチレングリコールの混合物であり得る。幾つか
の実施形態において、第2のセクションは(キトサンが含まれるとき)約0.1重量%~
約30重量%のキトサンを含むことができる。例えば、第2のセクションは、幾つかの実
施形態において、約0.1重量%~約30重量%、例えば約0.1重量%~約1重量%、
約1.0重量%~約5.0重量%、約5重量%~約10.0重量%、約10.0重量%~
約15.0重量%、約15.0重量%~約20.0重量%、約20.0重量%~約25.
0重量%、約25.0重量%~約30.0重量%、及びこれらの量を含めてその間の任意
の量のキトサンを含み得る。
【0034】
また、幾つかの実施形態において、第2のセクションは1種又は複数の補強部材も含み
得る。幾つかの実施形態において、補強部材は止血特性を有し、限定されることはないが
キトサン強化用繊維、キトサンメッシュ、キトサン粒子、又はこれらの組合せを含む。
【0035】
幾つかの実施形態において、キトサンメッシュは第2のセクション内のらせんコイルと
して構成される。幾つかの実施形態において、キトサンメッシュには(その立体配座には
関わりなく)架橋キトサンが含まれ、ここで架橋はゲニピンを用いて形成されている。幾
つかの実施形態において、キトサン繊維は第2のセクション内のらせんコイルとして構成
される。幾つかのかかる実施形態において、キトサン繊維は電界紡糸により形成される。
幾つかの実施形態において、キトサンは第2のセクション内に組み入れられた粒子の形態
であり得る。キトサン粒子は、実施形態に応じて、第2のセクション全体にランダムに、
第2のセクション全体に実質的に均一に、又は第2のセクション全体にパターン化して組
み入れることができる。追加の実施形態において、ランダム、均一、又はパターン化され
た粒子分布を第2のセクションのいろいろな部分に使用することができる。
【0036】
幾つかの実施形態において、シーリング材は血管穿刺をシールするように構成され得、
ここでシーリング材は水性の生理学的流体に曝露された後膨張し、シーリング材の第2の
セクションは止血及び凝血促進特性を有することができる。幾つかの実施形態において、
第2のセクションはさらにpH調節剤を含む。幾つかの実施形態において、シーリング材
はさらに治療剤を含む。幾つかの実施形態において、シーリング材は、第1のセクション
が約1~約20ミリメートルの長さ(例えば、近位端と遠位端との間)を有する寸法にな
っている。第2のセクションを含む幾つかの実施形態において、第2のセクションは約0
.5~約5ミリメートルの長さを有する。
【0037】
第1及び第2のセクションの両方を有する幾つかの実施形態において、第1及び第2の
セクションはその約1~約8ミリメートルの長さに沿って実質的に均一な外側の断面を有
することができる。シーリング材は、水性の生理学的流体に曝露されると膨張するように
構成されている。幾つかの実施形態において、第1のセクション(及び、含まれる場合に
は第2のセクション)は、シーリング材の外側断面の寸法が少なくとも15%、例えば少
なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、又は少なく
とも50%膨張するように構成されている。
【0038】
また、本発明により、本明細書に記載されているシーリング材を血管穿刺に適用するこ
とを含む、血管穿刺をシールする方法も提供される。
【0039】
従って、幾つかの実施形態において、身体内の穿刺をシールするためのシーリング材及
び関連する方法が提供される。より特定的には、幾つかの実施形態は、組織を通る穿刺を
シールするための、キトサン及びポリエチレングリコールから作製されたシーリング材並
びにかかるシーリング材を作製する方法に関する。加えて、本発明の幾つかの実施形態は
、組織を通って伸延する穿刺内に一時的又は永続的な止血をもたらすためのシーリング材
及び方法に関する。
【0040】
1つの実施形態に従って、近位端、遠位端、及び組織を通る穿刺内への送達のための大
きさの断面を有する第1のセクション、並びに第1のセクションの遠位端に融合されそこ
から伸延する第2のセクションを有する、組織を通る穿刺をシールするためのシーリング
材が提供される。幾つかの実施形態において、第1のセクションは、キトサン及びポリエ
チレングリコールポリマー鎖及び/又は架橋で作製され、穿刺内で生理学的流体に曝露さ
れたとき膨張する凍結乾燥ヒドロゲルから形成される。幾つかの実施形態において、第2
のセクションは非凍結乾燥非架橋ヒドロゲル前駆体の固体塊から形成され、この前駆体は
水性の生理学的環境に曝露されるまで非反応性状態のままであり、曝露されると前駆体は
インサイチュで互いに架橋してシーリング材の改善された接着を動脈切開にもたらす。
【0041】
1つの実施形態において、第1のセクションは本質的に凍結乾燥ヒドロゲルからなり得
、第2のセクションは本質的に非架橋前駆体からなり得る。或いは、第2のセクションは
止血特性を有する1種又は複数の補強部材、例えば、キトサン強化用繊維、キトサンメッ
シュ又はキトサン粒子を含み得る。加えて、又は代わりに、第2のセクションはこの第2
のセクションの1つ又は複数の特性を増強するために1種又は複数の希釈剤を含み得る。
【0042】
もう1つ別の実施形態において、シーリング材は、キトサン及びポリエチレングリコー
ルポリマー鎖及び/又は架橋で作製され、穿刺内で生理学的流体に曝露されたとき膨張す
る凍結乾燥ヒドロゲルの1つのセクションのみを含む。
【0043】
場合により、シーリング材は、例えば第1及び/又は第2のセクションに含浸させた、
被覆された、又はその他で含まれる1種又は複数のpH調節剤を含んでもよい。例えば、
シーリング材が穿刺内で曝露されたとき、当該調節剤はシーリング材上又はその周りの局
部的なpHを変化させて、例えば、前駆体の架橋及び/又は所望の接着材料の創成を増強
し得る。或いは、間質体液及び/又は血液のpH及び/又は緩衝能力が前駆体の架橋を推
進し又はその他促進するのに有効になるように前駆体の材料を選択してもよい。かかる実
施形態においては、pH調節剤を省いてもよい。
【0044】
幾つかの実施形態において、シーリング材の第1のセクションは、止血及び凝血促進特
性を有するキトサンポリマー鎖と共有結合したポリエチレングリコール鎖を含有し、穿刺
内で生理学的流体に曝露されたとき膨張する凍結乾燥ヒドロゲルから構成され得る。エス
テル末端基を有するポリエチレングリコール、アミン末端基を有するポリエチレングリコ
ール及び様々な脱アセチル化度を有するキトサンのような非架橋ヒドロゲル前駆体の固体
塊を、シーリング材の遠位端に融合又はその他結合させることができる。前駆体が水性の
生理学的環境に曝露されるときまで、前駆体は非反応性状態のままである。かかるときに
は、前駆体はインサイチュで互いに架橋して改善された接着を動脈切開にもたらす。
【0045】
追加の実施形態において、キトサン繊維、キトサンメッシュ又はキトサン粒子を非架橋
ヒドロゲル前駆体と共に組み入れ又は融合してもよい。例えば、固体塊は、実質的に均一
な固体のプラグとして形成されてもよく、又は粉末及び繊維又はメッシュの焼結塊として
形成されてもよい。キトサン繊維、メッシュ又は粒子は補強部材として作用して、架橋し
た網目構造の完全性を増加させ得る。キトサン繊維、キトサンメッシュ又はキトサン粒子
を含んでも含まなくてもよい融解した前駆体は、管状の部材内で管状ロールの遠位端に塗
布し、固化させて管状ロールの遠位端に融合した固体塊を創り出すことができる。
【0046】
1つの実施形態に従って、近位端、遠位端、及び組織を通る穿刺内への送達のための大
きさの断面を有する第1のセクション、並びに第1のセクションの遠位端に融合されそこ
から伸延する第2のセクションを含む、組織を通る穿刺をシールするためのシーリング材
が提供される。第1のセクションは、穿刺内で生理学的流体に曝露されたとき膨張する凍
結乾燥ヒドロゲルから形成され得る。第2のセクションは非凍結乾燥、非架橋のヒドロゲ
ル前駆体の固体塊から形成され得、この前駆体は水性の生理学的流体に曝露されるまで非
反応性状態のままであり、曝露されると前駆体はインサイチュで互いに架橋してシーリン
グ材の改善された接着を動脈切開にもたらす。
【0047】
1つの実施形態において、第1のセクションは本質的に凍結乾燥ヒドロゲルからなり得
、第2のセクションは本質的に非架橋前駆体からなり得る。或いは、第2のセクションは
、前駆体と混合され、埋め込まれ、又は取り囲む1つ又は複数の補強部材、例えば、複数
のフィラメント又は粒子を含み得る。加えて、又は代わりに、第2のセクションはこの第
2のセクションの1つ又は複数の特性を増強するために1種又は複数の希釈剤を含んでも
よい。上述したように、シーリング材は、例えば、第1及び/又は第2のセクションに含
浸させた、被覆された、又はその他含まれる1種又は複数のpH調節剤を含んでもよい(
又は含まなくてもよい)。
【0048】
もう1つ別の実施形態において、経皮血管大口径穿刺をシールするためのシーリング材
が提供され、このシーリング材は、近位端、遠位端、及び組織管への経カテーテル送達の
ための大きさの断面を有し、さらにキトサンを含む第1のセクションを含み、場合により
、第1のセクションの遠位端に融合されそこから伸延する第2のセクションを含むことが
できる。大口径穿刺は、最初大口径穿刺と同じか又はそれより大きい大きさのシーリング
材でシールすることができるか、或いは、小口径送達デバイス上に装填することにより、
最初は大口径穿刺より小さい大きさのシーリング材でシールすることができる。シーリン
グ材の物理的性質は、そのシーリング材が膨張して、それが装填されるデバイスの全空間
を占めるようなものであり、その結果同じ大きさのシーリング材を大口径送達デバイスば
かりでなく小口径送達デバイスにも装填することができ、シーリング材は小口径送達デバ
イス上に装填されると圧縮されてより小さい空間内に嵌ることになるものと理解される。
大口径穿刺は約7フレンチ~約24フレンチの大きさの動脈穿刺であり得る。通例、小口
径穿刺は約7Frまでの大きさの動脈穿刺であり得るものと理解される。
【0049】
図面は必ずしも一定の縮尺で描かれておらず、その代わりに例示した実施形態の様々な
側面及び特徴を説明するために強調されていることが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】
図1は、キトサン及びポリエチレングリコールポリマー鎖及び/又は架橋で作製されており、穿刺内で生理学的流体に曝露されたとき膨張する凍結乾燥ヒドロゲルを含むシーリング部材の代表的な実施形態の透視図である。
【0051】
【
図1A】
図1Aは、
図1のシーリング部材を作製する方法を示す、移送管及びマンドレルの断面図である。
【0052】
【
図2A-2B】
図2A及び2Bは、キトサンがシーリング材中に含まれている様々な実施形態の側面図である。
図2Aはキトサンメッシュを示し、
図2Bはキトサン粒子を示す。
【0053】
【
図3A-3B】
図3A及び3Bは、それぞれ、組織を通る穿刺中にシーリング材を送達するための装置の別の実施形態の透視図及び側面図である。
【0054】
【
図3C】
図3Cは、
図3A及び3Bの装置の側面図であり、装置の内部の構成要素を示すために外側ハウジングの一部分が除去されている。
【0055】
【
図3D】
図3Dは、
図3A-3Cの装置と共に使用することができる導入シース及び拡張器アセンブリの透視図である。
【0056】
【
図4A-4F】
図4A-4Fは、シーリング材を動脈切開部位に送達する方法を示す図である。
【0057】
【
図5A.5A-1.5B.5B-1】
図5A、5A-1、5B、及び5B-1は、膨張ラインを通る流体流を制御するためのメカニズムを示す図である。
【0058】
【
図6A.6A-1.6B.6B-1】
図6A、6A-1、6B、及び6B-1は、膨張ラインを通る流体流を制御するための別のメカニズムを示す図である。
【0059】
【
図6C-6D】
図6C-6Dは、膨張ラインを通る流体流を制御するためのさらに別のメカニズムを示す図である。
【0060】
【
図6E-6F】
図6E-6Fは、膨張ラインを通る流体流を制御するためのさらにもう1つ別のメカニズムを示す図である。
【0061】
【
図7A.7A-1.7B.7B-1】
図7A、7A-1、7B、及び7B-1は、膨張ラインを通る流体流を制御するためのさらにもう1つ別のメカニズムを示す図である。
【0062】
【
図8A-8B】
図8A-8Bは、内側ハウジングに対する外側ハウジングの移動を制御するためのメカニズムを示す図である。
【0063】
【
図9A-9B】
図9A-9Bは、内側ハウジングに対する外側ハウジングの移動を制御するためのもう1つ別のメカニズムを示す図である。
【0064】
【
図10A-10B】
図10A-10Bは、内側ハウジングに対する外側ハウジングの移動を制御するためのさらにもう1つ別のメカニズムを示す図である。
【0065】
【
図11A-11C】
図11A-11Cは、支持部材の作動を防止するロッキングメカニズムを示す図である。
【0066】
【
図12A-12B】
図12A-12Bは、支持部材を前進させるためのメカニズムを示す図である。
【0067】
【
図13A-13B】
図13A-13Bは、支持部材を前進させるための別のメカニズムを示す図である。
【0068】
【
図14A-14B】
図14A-14Bは、位置決めアセンブリの移動を制限する後退ロックを示す図である。
【0069】
【
図15A-15F】
図15A-15Fは、シーリング材を動脈切開部位に送達するための別の方法を示す図である。
【0070】
【
図16A-16B】
図16A-16Bは、膨張インジケーターを含むシーリング材を動脈切開に送達するための装置を示す図である。
【0071】
【
図17A-17D】
図17A-17Dは、シースと係合するように構成された拡張器の実施形態を示す図である。
【0072】
【
図18A-18C】
図18A-18Cは、シースと係合するように構成された拡張器のもう1つ別の実施形態を示す図である。
【0073】
【
図19A-19D-1】
図19A-19D-1は、位置決めアセンブリ及びシースを係合させるためのメカニズムを示す図である。
【0074】
【
図20】
図20は、位置決めアセンブリ及びシースを係合させるための別のメカニズムを示す図である。
【0075】
【
図21A-21I】
図21A-21Iは、シーリング材を動脈切開部位に送達するための方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0076】
(詳細な説明)
本明細書に開示されている装置、シーリング材及び方法は、キトサンとPEG部分(例
えば、PEG-アミン及びPEG-エステル)との間の相互作用を十分に利用して、生理
学的流体による活性化後の架橋されたシーリング材(把持及び凍結乾燥部分の両方)の改
善された完全性と共に増強された止血及び凝血促進特性を達成する。キトサンは、実施形
態に応じて、共有結合又は非共有結合でPEGと結合してシーリング材を創り出すことが
できる。さらに、様々な架橋剤(例えば、ゲニピン)を使用してキトサンポリマー鎖を架
橋させて純粋なキトサンの高分子量ヒドロゲルを創り出すことができる。その後、ヒドロ
ゲルは凍結乾燥により脱水されて、(生理学的流体との接触後に)最終の架橋した網目構
造の完全性及び安定性を改善するためにシーリング材の第2のセクション(「把持」セク
ション)に含まれ得る多孔質のメッシュを形成することができる。
【0077】
シーリング材
図1は、血管のような組織を通って伸延する穿刺(図示せず)をシールするためのシー
リング材2の非限定的な実施形態を示す。一般に、シーリング材2は、近位及び遠位端4
a、4bを有する第1の、近位の、又は主要なセクション4、並びに第1のセクション4
の遠位端4bに融合又はその他で結合し、そこから遠位方向に伸延する、複数の非凍結乾
燥及び/又は非架橋前駆体から形成された、例えば、固体塊又は固体プラグとして形成さ
れた、第2の、遠位の、又は先端セクション6を含むことができる。以下にさらに記載す
るように、非架橋前駆体は、例えば、組織を通って伸延する穿刺内に配置され又はその他
曝露されたとき、例えば、水性の生理学的環境に曝露される前又はそれまで、非反応性状
態のままであり得る。
【0078】
例えば、シーリング材2のこの構成は、インサイチュで接着材料を創り出すための第2
のセクション6の架橋を、第1のセクション4の凍結乾燥ヒドロゲル又はその他膨張可能
な材料の膨潤特性及び凝血促進特性と結合することができる。キトサンをポリエチレング
リコールポリマーの網目構造内に組み入れることによって、全体の凍結乾燥ヒドロゲルは
、意外なことに、生理学的流体との接触時組織管内での凍結乾燥ヒドロゲルの膨張をもた
らし、共同して血管全体のより速い止血をもたらす止血及び凝血促進特性をもたらすこと
により血管外の閉鎖を増強することになる。
【0079】
1つの実施形態において、第1のセクション4は、管状の形状に巻かれた凍結乾燥ヒド
ロゲルのシートから形成することができる。第1のセクション4は、所望の通り、楕円形
、三角形、四角形、円錐状、円盤状、多角形の形状、など(図示せず)のような他の管状
又は中実のロッド断面又は形状を有していてもよいことが了解されよう。
【0080】
第1のセクション4は、一方がポリエチレングリコール(「PEG」)で、他方の構成
成分がキトサンである2つの構成成分を含む凍結乾燥され架橋されたヒドロゲルから形成
することができる。これら2種のポリマー、PEG及びキトサンは共有結合するか又は一
緒にブレンドされて、生理学的流体と接触すると膨張し止血特性を有する凍結乾燥ポリマ
ーヒドロゲルを形成することができる。幾つかの実施形態においては非共有結合を使用し
てもよい。場合により、以下にさらに記載するように、第2のセクション6の材料が、例
えば融合中に、第1のセクション4の遠位端4b内に部分的に侵入することができる遷移
ゾーン(図示せず)を含んでもよい。幾つかのかかる実施形態はシーリング材の構造上の
安定性を高め、さらに止血を増強する。
【0081】
幾つかの実施形態において、第1のセクション4の材料は、時間と共に、例えば、数日
、数週、又は数か月の期間にわたり身体により少なくとも部分的に吸収され得る。同様に
、第2のセクション6の材料も、時間と共に、例えば、数日、数週、又は数か月の期間に
わたり身体により少なくとも部分的に吸収され得る。実施形態によって、第1のセクショ
ン4及び第2のセクション6は同じ材料製であり得る。幾つかの実施形態において、第1
のセクション4及び第2のセクション6の組成は、止血の過程におけるそれらの相対的な
役割及び最終的な穿刺の治癒を果たすように調節することができる。例えば、幾つかの実
施形態において、第2のセクション6の吸収の速度を第1のセクション4より遅くするこ
とができ、それによりシーリング材をより長い時間の間穿刺上に維持し、従って下にある
血管の治癒が可能となる。分解の速度(従って、シーリング材の特定の構成)は、穿刺の
大きさ、血流(又は間質流体流)の速度又は穿刺部位の血圧、又は穿刺部位が受ける可動
性の程度(例えば、体動からの力を頻繁に受ける穿刺部位の治癒にはより長い時間がかか
る)に基づいて選択することができる。
【0082】
PEG/キトサンコポリマーシーリング材は、一部分のキトサンに対して2部分のPE
G(一部分のPEG-アミン及び一部分のPEG-エステル)を含むことができる。幾つ
かの実施形態において、キトサンは少なくとも部分的に脱アセチル化されていることがで
きる。ここで使用する用語「部分」とは、必ずしも様々な構成成分の量又は割合を示すわ
けではないことに留意されたい。シーリング材の特定の組成を含めてさらなる側面に関す
る具体的な詳細については以下に述べる。
【0083】
ポリエチレングリコール
シーリング材に使用されるPEGは、実施形態及び予想される穿刺の大きさ、穿刺の領
域での血流の通常の速度、患者の物理的な状態(例えば、抗凝血剤投薬中、等)のような
要因に依存して様々であり得る。幾つかの実施形態において、PEG-アミン部分は、8
A20K-NH2(例えば、8-アーム、20キロダルトン(kDa)分子量、アミン終
止アームあり)のようなポリマーであり得る。幾つかの実施形態において、PEG-エス
テル部分は4A10K-CM-HBA-NHS(例えば、4-アーム、10kDa分子量
、アーム上にカルボキシメチル-ヒドロキシブチレート-N-ヒドロキシスクシンイミジ
ル官能基あり)のようなポリマーであり得る。もう1つ別の実施形態において、PEG-
エステル部分は4A10K-SS-NHS(例えば、4-アーム、10kDa分子量、ア
ーム上にスクシンイミジルスクシネート官能基あり)のようなポリマー若しくは4A10
K-SG-NHS(例えば、4-アーム、10kDa分子量、アーム上にスクシンイミジ
ルグルタレート官能基あり)のようなポリマー又はこれらのポリマーの混合物でよい。
【0084】
様々な実施形態において、シーリング材の第1のセクション4及び第2のセクション6
の両方を製造するためにいろいろな前駆体を使用することができる。例えば、前駆体は、
ポリエチレングリコール誘導体、又は少なくとも2つの末端基(例えば、2つのアーム)
を持ち、少なくとも1つの架橋可能な末端基を有するポリエチレングリコールを含むこと
ができる。第1の官能基はインサイチュで第2の官能基と化学的に反応して共有結合を形
成することにより架橋可能なゲルを形成することができる。幾つかの実施形態において、
第1の官能基又は第2の官能基は強力な求電子剤を含むことができる。例えば、第1及び
/又は第2の官能基は、エポキシド、スクシンイミド、N-ヒドロキシスクシンイミド、
アクリレート、メタクリレート、マレイミド、及びN-ヒドロキシスルホスクシンイミド
の1つ又は複数であり得る。さらに、幾つかの実施形態において、第1及び/又は第2の
官能基はアミン基、スルフヒドリル基、カルボキシル基、及び/又はヒドロキシル基であ
り得る。
【0085】
実施形態に応じて、様々な分子量のPEGを使用することができる。上述したように、
分子量の決定は、シーリング材が保有する必要がある所望の構造上完全性、穿刺部位での
血液又は流体流の速度、消失時間及びその他の臨床可変量に基づいて行うことができる。
幾つかの実施形態において、ポリエチレングリコールの分子量は約2500ダルトン~約
50,000ダルトンの範囲であり得る。これには、約2500ダルトン~約5000ダ
ルトン、約5000ダルトン~約10,000ダルトン、約10,000ダルトン~約1
5,000ダルトン、約15,000ダルトン~約20,000ダルトン、約20,00
0ダルトン~約25,000ダルトン、約25,000ダルトン~約30,000ダルト
ン、約30,000ダルトン~約35,000ダルトン、約35,000ダルトン~約4
0,000ダルトン、約40,000ダルトン~約45,000ダルトン、約45,00
0ダルトン~約50,000ダルトンの範囲の分子量、及び上記の間の任意の分子量を有
するポリエチレングリコールが包含される。
【0086】
実施形態に応じて、ポリエチレングリコールは多様な数の官能基を有し得る。例えば、
幾つかの実施形態において、ポリエチレングリコールは2~8個の官能基、例えば3、4
、5、6、又は7個の官能基を含み得る。多様な数の官能基を有するポリエチレングリコ
ールの混合物も幾つかの実施形態において使用される。
【0087】
ポリエチレングリコールの様々な誘導体も実施形態に応じて使用することができる。使
用できるポリエチレングリコール誘導体の非限定的な例としては、限定されることはない
が、分岐ポリエチレングリコール誘導体、ヘテロ官能性ポリエチレングリコール誘導体、
線状単官能性ポリエチレングリコール誘導体、及びさらにこれらの組合せがある。分岐ポ
リエチレングリコール誘導体の非限定的な例には、限定されることはないが、Y形PEG
NHSエステル(分子量約40000Da)、Y形PEGマレイミド(分子量約400
00Da)、Y形PEGアセトアルデヒド(分子量約40000Da)、Y形PEGプロ
ピオンアルデヒド(分子量約40000Da)がある。ヘテロ官能性ポリエチレングリコ
ール誘導体の非限定的な例には、限定されることはないが、ヒドロキシルPEGカルボキ
シル(分子量約3500Da)、ヒドロキシルPEGアミン、HCl塩(分子量約350
0Da)、アミンPEGカルボキシル、HCl塩、(分子量約3500Da)、アクリレ
ートPEG NHSエステル(分子量約3500Da)、マレイミドPEGアミン、TF
A塩(分子量約3500Da)、マレイミドPEG NHSエステル(分子量約3500
Da)、4-アームPEGスクシンイミジルスクシネート(ペンタエリトリトール)(分
子量約10000Da)、8-アームPEGアミン(分子量約10000~約20000
Da)がある。線状単官能性ポリエチレングリコール誘導体の非限定的な例には、限定さ
れることはないが、メトキシPEGスクシンイミジルカルボキシメチルエステル(分子量
約10000~約20000Da)、メトキシPEGマレイミド(分子量約10000~
約20000Da)、メトキシPEGビニルスルホン(分子量約10000~約2000
0Da)、メトキシPEGチオール(分子量約10000~約20000Da)、メトキ
シPEGプロピオンアルデヒド(分子量約10000~約20000Da)、メトキシP
EGアミン、HCl塩(分子量約10000~約20000Da)が包含される。
【0088】
キトサン
上述したように、コポリマーシーリング材は一部分のキトサンを含むことができる。幾
つかの実施形態において、キトサンは少なくとも部分的に脱アセチル化されていることが
できる。1つの実施形態において、キトサンは少なくとも約50%脱アセチル化されてい
ることができる。約60%~約99%の脱アセチル化度を有するキトサン、例えば、約6
0%~約65%、約65%~約70%、約70%~約75%、約75%~約80%、約8
0%~約85%、約85%~約90%、約90%~約95%、約95%~約96%、約9
6%~約97%、約97%~約98%、約98%~約99%、及び上記値の間の任意の脱
アセチル化度を有するキトサンが幾つかの実施形態において使用される。
【0089】
PEG成分と同様に、キトサンは実施形態に応じて多様な分子量を有することができる
。キトサンはその製造方法に基づいて多様な分子量を有することができるが、シーリング
材の幾つかの実施形態は約10キロダルトン(kDa)~約600kDaの分子量を有す
るキトサンを含む。例えば、幾つかの実施形態において、キトサン成分は、約10kDa
~約50kDa、約50kDa~約100kDa、約100kDa~約150kDa、約
150kDa~約200kDa、約200kDa~約250kDa、約250kDa~約
300kDa、約300kDa~約350kDa、約350kDa~約400kDa、約
400kDa~約500kDa、約500kDa~約600kDaの分子量、及びこれら
の範囲の間の任意の分子量を有する。
【0090】
1つの実施形態において、キトサン成分は150kDa~400kDaの分子量及び少
なくとも90%の脱アセチル化度を有するキトサンを含む。
【0091】
もう1つ別の実施形態において、キトサン成分は150kDa~400kDaの分子量
及び75%~90%の脱アセチル化度を有するキトサンを含む。
【0092】
キトサン前駆体は場合により遊離のアミン形態又は、代わりにキトサンの塩形態であり
得る。適切な塩としては、限定されることはないが、キトサン塩化物、キトサングルタミ
ン酸塩、キトサン酢酸塩又はその他の塩形態のキトサンがある。キトサンの様々な塩及び
/又は遊離のアミン形態と塩との混合物も使用できる。
【0093】
PEG-キトサンの比
上述したように、幾つかの実施形態において、シーリング材は2部分のPEG(例えば
、PEGアミン及びPEGエステル)及び一部分のキトサンを含むことができる。構成成
分のモル比はシーリング材の所望の性質(例えば、止血までの時間等)に応じて多様であ
り得る。実施形態に応じて、キトサンは約0.0001~約1.0のキトサン対PEGの
モル比で存在することができる。例えば、キトサンは約0.0001~約0.0005、
約0.0005~約0.001、約0.001~約0.005、約0.005~約0.0
1、約0.01~約0.05、約0.05~約0.1、約0.1~約0.2、約0.2~
約0.3、約0.3~約0.4、約0.4~約0.5、約0.5~約0.6、約0.6~
約0.7、約0.7~約0.8、約0.8~約0.9、約0.9~約1のキトサン対PE
Gのモル比、又はこれらの間(端点を含む)の任意の比で存在することができる。
【0094】
実施形態に応じて、キトサンはまた、シーリング材製剤のパーセンテージ(重量/重量
、重量/体積、又は体積/体積)に基づいてシーリング材組成物中に存在し得る。例えば
、キトサンは約0.1%~約30%、例えば約0.1%、約1%、約3%、約4%、約5
%、約6%、約10%、約15%、約20%、約25%、又は約30%(又はこれらの値
の間のパーセンテージ)の製剤全体中の重量パーセンテージで存在し得る。幾つかの実施
形態において、キトサンは約0.1重量%~約30重量%、約0.5重量%~約25重量
%、約0.5重量%~約15重量%、約0.5重量%~約10重量%、約0.5重量%~
約8重量%、約0.5重量%~約6重量%、約0.5重量%~約4重量%、約2重量%~
約4重量%の量、又はこれらの間の任意の量で存在することができる。もう1つ別の実施
形態において、第1のセクションは約4重量%~約6重量%のキトサンを含む。より多い
か又はより少ない量のキトサンも使用することができる。さらに追加の実施形態において
、最終のヒドロゲル製剤中のキトサンの重量比は約1重量%~約6重量%のキトサン、例
えば約1重量%~約2重量%、約2重量%~約3重量%、約3重量%~約4重量%、約4
重量%~約5重量%、約5重量%~約6重量%、及びこれらの間(端点を含む)のパーセ
ンテージである。
【0095】
実施形態に応じて、PEG-アミンは約0.09~約9.9のPEG-アミン対PEG
-エステル及びキトサンのモル比で存在し得る。例えば、PEG-アミンは、約0.09
~約0.1、約0.1~約0.2、約0.2~約0.3、約0.3~約0.4、約0.4
~約0.5、約0.5~約0.6、約0.6~約0.7、約0.7~約0.8、約0.8
~約0.9、約0.9~約1.0、約1.0~約2.0、約2.0~約3.0、約3.0
~約4.0、約4.0~約5.0、約5.0~約6.0、約6.0~約7.0、約7.0
~約8.0、約8.0~約9.0、約9.0~約9.9、又はこれらの間(端点を含む)
の任意の量のPEG-アミン対PEG-エステル及びキトサンのモル比で存在し得る。
【0096】
或いは、PEG-アミンはシーリング材製剤のパーセンテージ(重量/重量、重量/体
積、又は体積/体積)に基づいてシーリング材組成物中に存在し得る。例えば、PEG-
アミンは、製剤全体中の約99.0%~約1.0%、約90.0%~約10.0%、約8
0.0%~約20.0%、約70.0%~約30.0%、約60.0%~約40.0%、
約55.0%~約45.0%、約53.0%~約47.0%、約52.0%~約48.0
%、約50.0%~約48.0%、及びこれらの量も含めてその間の任意のパーセンテー
ジの重量パーセンテージで存在し得る。
【0097】
実施形態に応じて、PEG-エステルは約0.09~19.9のPEG-エステル対P
EG-アミン及びキトサンのモル比で存在し得る。例えば、PEG-エステルは、約0.
09~約0.1、約0.1~約0.2、約0.2~約0.3、約0.3~約0.4、約0
.4~約0.5、約0.5~約0.6、約0.6~約0.7、約0.7~約0.8、約0
.8~約0.9、約0.9~約1.0、約1.0~約2.0、約2.0~約3.0、約3
.0~約4.0、約4.0~約5.0、約5.0~約6.0、約6.0~約7.0、約7
.0~約8.0、約8.0~約9.0、約10~約11、約11~約12、約12~約1
3、約13~約14、約14~約15、約15~約16、約16~約17、約17~約1
8、約18~約19、19~約19.9、又はこれらの間の任意の量のPEG-エステル
対PEG-アミン及びキトサンのモル比で存在し得る。
【0098】
実施形態に応じて、PEG-エステルはシーリング材製剤のパーセンテージ(重量/重
量、重量/体積、又は体積/体積)に基づいてシーリング材組成物中に存在し得る。例え
ば、PEG-エステルは、約99.0%~約1.0%、約90.0%~約10.0%、約
80.0%~約20.0%、約70.0%~約30.0%、約60.0%~約40.0%
、約55.0%~約45.0%、約53.0%~約47.0%、約52.0%~約48.
0%、約52.0%~約50.0%、及びこれらの量の間又はこれらを含む任意のパーセ
ンテージの製剤全体中の重量パーセンテージで存在し得る。
【0099】
幾つかの実施形態において、キトサン対PEG-エステルのモル比はおよそ0.000
1~約1である。もう1つ別の実施形態において、キトサン対PEG-エステルのモル比
はおよそ0.0001~約0.005である。さらにもう1つ別の実施形態において、キ
トサン対PEG-エステルのモル比はおよそ0.005~約0.01である。幾つかの実
施形態において、キトサンの活性基部位対PEG-エステルの活性基部位の当量比はおよ
そ0.01~約9である。もう1つ別の実施形態において、キトサンの活性基部位対PE
G-エステルの活性基部位の当量比はおよそ0.01~約2である。もう1つ別の実施形
態において、キトサンの活性基部位対PEG-エステルの活性基部位の当量比はおよそ0
.1~約2である。もう1つ別の実施形態において、キトサンの活性基部位対PEG-エ
ステルの活性基部位の当量比はおよそ0.5~約1.5である。
【0100】
上述したように、幾つかの実施形態において、第2のセクションが存在し得、本質的に
非架橋前駆体からなり得る。幾つかの実施形態において、第2のセクションは、非凍結乾
燥非架橋ヒドロゲル前駆体の固体塊で形成され得、この前駆体は水性の生理学的環境に曝
露されるまで非反応性状態のままであるが、曝露されるとこの前駆体はインサイチュで互
いに架橋して、シーリング材の改善された接着を動脈切開にもたらす。ヒドロゲル前駆体
は、エステル末端基を有するポリエチレングリコール、アミン末端基を有するポリエチレ
ングリコールを含み得、これらは融合又はその他でシーリング材の遠位端に結合する。様
々な脱アセチル化度を有するキトサンが第2のセクションに存在してもしなくてもよい。
第2のセクション中のキトサンの重量パーセンテージは、存在する場合、0.1%~80
%で変化し得る。もう1つ別の実施形態において、キトサンは1%~30%の重量パーセ
ンテージで第2のセクション中に存在する。さらにもう1つ別の実施形態において、キト
サンは10%~30%の重量パーセンテージで第2のセクション中に存在する。追加の実
施形態において、キトサン繊維、キトサンメッシュ又はキトサン粒子は非架橋ヒドロゲル
前駆体と共に組み入れ又は融合され得る。例えば、固体塊は実質的に均一な中実のプラグ
として形成されてもよく、又は粉末若しくは繊維の焼結塊又はメッシュとして形成されて
もよい。キトサン繊維、メッシュ又は粒子は架橋網目構造の完全性を増大するために補強
部材として機能し得る。キトサン繊維、キトサンメッシュ又はキトサン粒子を含んでも含
まなくてもよい融解した前駆体は、管状部材内の管状ロールの遠位端に塗布し、固化させ
て、管状ロールの遠位端と融合した固体塊を創り出すことができる。
【0101】
幾つかの実施形態はキトサンを含有するコポリマーの使用に関連しているが、キトサン
はまた止血までの時間を減らすためにシーリング材として独立して使用することもできる
。かかる実施形態において、キトサンはシーリング材の約0.01%~シーリング材の約
99.9%の範囲である。
【0102】
追加の作用物質
追加の実施形態において、1種又は複数の追加の組成物をコポリマーシーリング材に添
加することができる。幾つかの実施形態において、追加の作用物質は穿刺のシールを促進
するためにシーリング材に添加される。幾つかの実施形態において、血栓形成促進剤をシ
ーリング材に含ませてもよい。例えば、生物学的血栓形成促進剤が幾つかの実施形態で含
まれる。これらには、限定されることはないが、コラーゲン、フィブリン、フィブリノー
ゲン、トロンビン、第VIII因子、第IX因子、第X因子、カルシウム塩、カルボキシ
メチルセルロース、酸化セルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、又はその他のタンパク質
をベースにした物質の1種又は複数がある。血栓形成を促進する合成材料としては、ポリ
グリコール酸(PGA)、ポリラクチド(PLA)、ポリビニルアルコール(PVA)、
などが挙げられる。
【0103】
幾つかの実施形態において、第1のセクション4(及び/又は第2のセクション6)は
さらに、例えば治癒を促進し、感染及び/又はその他の有害な医療事象、などを予防する
ために治療及び/又は医薬剤を含ませてもよい。
【0104】
例えば、幾つかの実施形態において、シーリング材はさらに、以下に挙げる1種又は複
数の薬剤を、単独で、又は組み合わせて含んでもよい。また、利用される薬剤は以下に挙
げる1種又は複数の薬剤の等価物、誘導体、又はアナログでもよい。薬剤としては、限定
されることはないが、医薬剤、例えば、抗菌剤(例えば、抗生物質、抗ウィルス剤、抗寄
生虫剤、抗真菌剤)、抗炎症剤(例えば、ステロイド又は非ステロイド系抗炎症剤)、生
物学的作用剤、例えばホルモン、酵素若しくは酵素関連成分、抗体若しくは抗体関連成分
、オリゴヌクレオチド(例えば、DNA、RNA、短干渉RNA、アンチセンスオリゴヌ
クレオチド、など)、DNA/RNAベクター、ウィルス(野生型又は遺伝子組換え)又
はウィルスベクター、ペプチド、タンパク質、酵素、細胞外基質成分、並びに1種又は複
数の生物学的構成成分を産生するように構成された生細胞が挙げられる。いかなる特定の
薬剤の使用も、その主要な効果又は規制機関が認可した治療適応症又は使用法に制限され
ない。薬剤はまた、別の薬剤又は治療剤の1つ又は複数の副作用を低減又は治療する化合
物又はその他の物質も包含する。多くの薬剤は単一より多くの作用モードを有しているの
で、以下のいずれか1つの薬効分類内の特定の薬剤のリストはその薬剤の1つの可能な使
用の単なる代表例であり、その使用の範囲を眼科のインプラントシステムに限定する意図
はない。
【0105】
上述したように、シーリング材に含まれる治療剤は当技術分野で公知の通り任意の数の
賦形剤と組み合わせられる。使用するのに適した賦形剤としては、限定されることはない
が、生分解性ポリマー賦形剤、ベンジルアルコール、エチルセルロース、メチルセルロー
ス、ヒドロキシメチルセルロース、セチルアルコール、クロスカルメロースナトリウム、
デキストラン、デキストロース、フルクトース、ゼラチン、グリセリン、モノグリセリド
、ジグリセリド、カオリン、塩化カルシウム、ラクトース、ラクトース一水和物、マルト
デキストリン、ポリソルベート、アルファ化デンプン、ステアリン酸カルシウム、ステア
リン酸マグネシウム、二酸化ケイ素、コーンスターチ、タルク、などがある。1種又は複
数の賦形剤は約1%、5%、又は10%のような低い総量で含まれ得、他の実施形態にお
いては約50%、70%又は90%もの総量で含まれ得る。
【0106】
シーリング材に使用できる薬剤の例として、様々な抗分泌剤;抗有糸分裂及び他の抗増
殖剤、アドレナリンアンタゴニスト、例えば、ベータ遮断剤、例えばアテノロールプロプ
ラノロール、メチプラノロール、ベタキソロール、カルテオロール、レボベタキソロール
、レボブノロール及びチモロール;アドレナリンアゴニスト又は交感神経様作用剤、例え
ばエピネフリン、ジピベフリン、クロニジン、アプラクロニジン(aparclonidine)、及
びブリモニジン;副交感神経作用剤又はコリン作用性(cholingeric)アゴニスト、例え
ばピロカルピン、カルバコール、ホスホリンヨウ素、及びフィゾスチグミン、サリチレー
ト、塩化アセチルコリン、エゼリン、フルオロリン酸ジイソプロピル、臭化デメカリウム
);、ムスカリン作用薬;炭酸脱水酵素阻害剤、例えば局所及び/又は全身性作用剤、例
えばアセタゾラミド(acetozolamide)、ブリンゾラミド、ドルゾラミド及びメタゾラミ
ド、エトキスゾラミド、ダイアモックス、及びジクロルフェナミド;散瞳-毛様筋調節作
用物質、例えばアトロピン、シクロペントレート、スクシニルコリン、ホマトロピン、フ
ェニレフリン、スコポラミン及びトロピカミド;プロスタグランジン、例えばプロスタグ
ランジンF2アルファ、抗プロスタグランジン、プロスタグランジン前駆体、又はプロス
タグランジンアナログ作用剤、例えばビマトプロスト、ラタノプロスト、トラボプロスト
及びウノプロストンを挙げることができる。
【0107】
シーリング材に含ませられる薬剤のその他の例として、抗炎症剤、例えばグルココルチ
コイド及びコルチコステロイド、例えばベタメタゾン、コルチゾン、デキサメタゾン、デ
キサメタゾン21-リン酸、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン21-リン酸、プレ
ドニゾロンアセテート、プレドニゾロン、フルオロメトロン(flluroometholone)、ロテ
プレドノール、メドリゾン、フルオシノロンアセトニド、トリアムシノロンアセトニド(
triamcinolone acetonide)、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド(triamci
nolone acetonide)、ベクロメタゾン、ブデソニド、フルニソリド、フルオロメトロン、
フルチカゾン、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンアセテート、ロテプレドノール、及
びリメキソロン;非ステロイド系抗炎剤、例えば、ジクロフェナク、フルルビプロフェン
、イブプロフェン、ブロムフェナク、ネパフェナク、及びケトロラク、サリチレート、イ
ンドメタシン、イブプロフェン、ナキソプレン、ピロキシカム及びナブメトン;抗感染症
薬又は抗菌剤、例えば抗生物質、例えば、テトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、
バシトラシン、ネオマイシン、ポリミキシン、グラミシジン、セファレキシン、オキシテ
トラサイクリン、クロラムフェニコール、リファンピシン、シプロフロキサシン、トブラ
マイシン、ゲンタマイシン、エリスロマイシン、ペニシリン、スルホンアミド、スルファ
ジアジン、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルフィソキサゾール、ニトロフラ
ゾン、プロピオン酸ナトリウム、アミノグリコシド系抗生物質(例えばゲンタマイシン及
びトブラマイシン)、フルオロキノロン系抗菌剤(例えばシプロフロキサシン、ガチフロ
キサシン、レボフロキサシン、モキシフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン
);バシトラシン、エリスロマイシン、フシジン酸、ネオマイシン、ポリミキシンB、グ
ラミシジン、トリメトプリム、及びスルファセタミド;抗真菌剤、例えばアムホテリシン
B及びミコナゾール;抗ウィルス剤、例えばイドクスウリジントリフルオロチミジン、ア
シクロビル、ガンシクロビル、インターフェロン;抗真菌剤;免疫調節剤、例えば、抗ア
レルギー薬、例えば、クロモグリク酸ナトリウム、アンタゾリン、メタピリリン、クロル
フェニラミン、セチリジン(cetrizine)、ピリルアミン、プロフェンピリダミン;抗ヒ
スタミン剤、例えばアゼラスチン、エメダスチン及びレボカバスチン;免疫学的薬剤(例
えば、ワクチン及び免疫刺激剤);MAST細胞安定剤、例えばクロモリンナトリウム、
ケトチフェン、ロドキサミド、ネドクロミル(nedocrimil)、オロパタジン、及びペミロ
ラスト;毛様体切除剤、例えばゲンチマイシン(gentimicin)及びシドフォビル;並びに
その他の眼科用薬剤、例えばベルテポルフィン、プロパラカイン、テトラカイン、シクロ
スポリン、及びピロカルピン;細胞表面糖タンパク質受容体の阻害剤;充血緩和剤、例え
ばフェニレフリン、ナファゾリン、テトラヒドロゾリン;脂質又は降圧性脂質;ドーパミ
ン作動性アゴニスト及び/又はアンタゴニスト、例えばキンピロール、フェノルドパム、
及びイボパミン;血管痙攣阻害剤;血管拡張薬;抗高血圧剤;アンジオテンシン変換酵素
(ACE)阻害剤;アンジオテンシン-1受容体アンタゴニスト、例えばオルメサルタ;
、微小管阻害剤;分子モーター(ダイニン及び/又はキネシン)阻害剤;アクチン細胞骨
格調節剤、例えばサイトカラシン(cyctchalasin)、ラトランクリン、スウィンホリドA
、エタクリン酸、H-7、及びRho-キナーゼ(ROCK)阻害剤;リモデリング阻害
剤;細胞外基質のモジュレーター、例えばtert-ブチルヒドロ-キノロン及びAL-
3037A;アデノシン受容体アゴニスト及び/又はアンタゴニスト、例えばN-6-シ
クロヘキシルアデノシン(cylclophexyladenosine)及び(R)-フェニルイソプロピル
アデノシン;セロトニンアゴニスト;ホルモン剤、例えばエストロゲン、エストラジオー
ル、黄体ホルモン、プロゲステロン、インシュリン、カルシトニン、副甲状腺ホルモン、
ペプチド及びバソプレッシン視床下部放出因子;増殖因子アンタゴニスト又は増殖因子、
例えば、上皮細胞増殖因子、線維芽細胞増殖因子、血小板由来増殖因子又はそのアンタゴ
ニスト、形質転換増殖因子ベータ、ソマトトロピン(somatotrapin)、フィブロネクチン
、結合組織増殖因子、骨形態形成タンパク質(BMP);サイトカイン、例えばインター
ロイキン、CD44、コクリン(cochlin);及び血清アミロイド、例えば血清アミロイ
ドAも挙げることができる。
【0108】
他の治療剤としては、神経保護剤、例えばルベゾール(lubezole)、ニモジピン及び関
連化合物、及び血流促進剤、例えばドルゾラミド又はベタキソロール;血液酸素化を促進
する化合物、例えばエリスロポエチン;ナトリウムチャネル遮断薬;カルシウムチャネル
遮断薬、例えばニルバジピン又はロメリジン;グルタミン酸阻害薬、例えばメマンチン、
ニトロメマンチン、リルゾール、デキストロメトルファン又はアグマチン;アセチルコリ
ンエステラーゼ阻害剤、例えばガランタミン、ヒドロキシルアミン又はその誘導体、例え
ば水溶性ヒドロキシルアミン誘導体OT-440;シナプス調節剤、例えばフラボノイド
配糖体及び/又はテルペノイド、例えばイチョウを含有する硫化水素化合物;神経栄養因
子、例えばグリア細胞株由来神経栄養因子、脳由来神経栄養因子;IL-6ファミリーの
タンパク質のサイトカイン、例えば毛様体神経栄養因子又は白血病抑制因子;酸化窒素レ
ベルに影響を及ぼす化合物又は因子、例えば酸化窒素、ニトログリセリン、又は酸化窒素
合成酵素阻害剤;カンナビノイド受容体アゴニスト、例えばWIN55-212-2;遊
離基捕捉剤、例えばメトキシポリエチレングリコールチオエステル(MPDTE)又はE
DTAメチルトリエステルとカップリングしたメトキシポリエチレン(polyethlene)グ
リコールチオール(MPSEDE);酸化防止剤、例えばアスタキサンチン、ジチオール
チオン、ビタミンE、又はメタロコロール(例えば、鉄、マンガン又はガリウムコロール
);酸素ホメオスタシスに関与する化合物又は因子、例えばニューログロビン又はサイト
グロビン;ミトコンドリアの分割又は分裂に影響する阻害剤又は因子、例えばMdivi
-1(ダイナミン関連タンパク質1(Drp1)の選択的阻害剤);キナーゼ阻害剤又は
モジュレーター、例えばRho-キナーゼ阻害剤H-1152又はチロシンキナーゼ阻害
剤AG1478;インテグリン機能に影響を及ぼす化合物又は因子、例えばベータ1-イ
ンテグリン活性化抗体HUTS-21;N-アシル-エタノールアミン(ethanaolamines
)及びそれらの前駆体、N-アシル-エタノールアミンリン脂質;グルカゴン様ペプチド
1受容体の刺激剤(例えば、グルカゴン様ペプチド1);ポリフェノールを含有する化合
物、例えばレスベラトロール;キレート化合物;アポトーシス関連プロテアーゼ阻害剤;
新たなタンパク質合成を低下させる化合物;放射線治療剤;光線力学療法剤;遺伝子治療
剤;遺伝子モジュレーター;神経又は神経の一部(例えば、脱髄)に対する損傷を防止す
る自己免疫モジュレーター、例えばグラチマー、ミエリン阻害剤、例えば抗-NgR B
locking Protein、NgR(310)エクト-Fc;その他の免疫調節剤
、例えばFK506結合性タンパク質(例えば、FKBP51)を挙げることができる。
【0109】
使用できる他の治療剤として、他のベータ遮断剤、例えばアセブトロール、アテノロー
ル、ビソプロロール、カルベジロール、エスモロール(asmolol)、ラベタロール、ナド
ロール、ペンブトロール、及びピンドロール;他のコルチコステロイド系及び非ステロイ
ド系抗炎症剤、例えばアスピリン、ベタメタゾン、コルチゾン、ジフルニサール、エトド
ラク、フェノプロフェン、フルドロコルチゾン、フルルビプロフェン、ヒドロコルチゾン
、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、メクロフェナメイト、メフェナム
酸、メロキシカム、メチルプレドニゾロン、ナブメトン、ナプロキセン、オキサプロジン
、プレドニゾロン、ピロキシカム、サルサレート、スリンダク、及びトルメチン;COX
-2阻害剤、例えばセレコキシブ、ロフェコキシブ及びバルデコキシブ;他の免疫調節剤
、例えばアルデスロイキン、アダリムマブ(HUMIRA(登録商標))、アザチオプリ
ン、バシリキシマブ、ダクリズマブ、エタネルセプト(ENBREL(登録商標))、ヒ
ドロキシクロロキン、インフリキシマブ(REMICADE(登録商標))、レフルノミ
ド、メトトレキサート、ミコフェノール酸モフェチル、及びスルファサラジン;他の抗ヒ
スタミン剤、例えばロラタジン、デスロラタジン、セチリジン、ジフェンヒドラミン、ク
ロルフェニラミン、デキスクロルフェニラミン、クレマスチン、シプロヘプタジン、フェ
キソフェナジン、ヒドロキシジン及びプロメタジン;他の抗感染症剤、例えばアミノグリ
コシド類、例えばアミカシン及びストレプトマイシン;抗真菌剤、例えばアムホテリシン
B、カスポファンギン、クロトリマゾール、フルコナゾール、イトラコナゾール、ケトコ
ナゾール、ボリコナゾール、テルビナフィン及びナイスタチン;抗マラリヤ薬、例えばク
ロロキン、アトバコン、メフロキン、プリマキン、キニジン及びキニーネ;抗マイコバク
テリウム剤、例えばエタンブトール、イソニアジド、ピラジナミド、リファンピン及びリ
ファブチン;抗寄生虫薬、例えばアルベンダゾール、メベンダゾール、チアベンダゾール
(thiobendazole)、メトロニダゾール、ピランテル、アトバコン、ヨードキノール(iod
oquinaol)、イベルメクチン、パロマイシン、プラジカンテル、及びトリメトレキサート
(trimatrexate);他の抗ウィルス剤、例えば抗CMV又は抗ヘルペス剤、例えばアシク
ロビル、シドフォビル、ファムシクロビル、ガンシクロビル、バラシクロビル、バルガン
シクロビル、ビダラビン、トリフルリジン及びホスカルネット;プロテアーゼ阻害剤、例
えばリトナビル、サキナビル、ロピナビル、インジナビル、アタザナビル、アンプレナビ
ル及びネルフィナビル;ヌクレオチド/ヌクレオシド/非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤
、例えばアバカビル、ddI、3TC、d4T、ddC、テノホビル及びエムトリシタビ
ン、デラビルジン、エファビレンツ及びネビラピン;他の抗ウィルス剤、例えばインター
フェロン、リバビリン及びトリフルリジン(trifluridiene)、他の抗細菌剤、例えばカ
ルバペネム(cabapenem)、例えばエルタペネム、イミペネム及びメロペネム;セファロ
スポリン系抗生物質、例えばセファドロキシル、セファゾリン、セフジニル、セフジトレ
ン、セファレキシン、セファクロル、セフェピム、セフォペラゾン、セフォタキシム、セ
フォテタン、セフォキシチン、セフポドキシム、セフプロジル、セフタジジム(ceftaxid
ime)、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフロキシム及びロラカル
ベフ;、他のマクロライド系及びケトライド系抗生物質、例えばアジスロマイシン、クラ
リスロマイシン、ジリスロマイシン及びテリスロマイシン;ペニシリン系抗生物質(クラ
ブラン酸含有及び非含有)、例えばアモキシシリン、アンピシリン、ピバンピシリン、ジ
クロキサシリン、ナフシリン、オキサシリン、ピペラシリン、及びチカルシリン;テトラ
サイクリン系抗生物質、例えばドキシサイクリン、ミノサイクリン及びテトラサイクリン
;他の抗細菌剤、例えばアズトレオナム、クロラムフェニコール、クリンダマイシン、リ
ネゾリド、ニトロフラントイン及びバンコマイシン;アルファ遮断剤、例えばドキサゾシ
ン、プラゾシン及びテラゾシン;カルシウムチャネル遮断薬、例えばアムロジピン、ベプ
リジル、ジルチアゼム、フェロジピン、イスラジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニ
ソルジピン及びベラパミル;他の抗高血圧剤、例えばクロニジン、ジアゾキシド、フェノ
ルドパム(fenoldopan)、ヒドララジン、ミノキシジル、ニトロプルシド、フェノキシベ
ンザミン、エポプロステノール、トラゾリン、トレプロスチニル及び硝酸ベースの薬剤;
プロスタグランジンPDE-5阻害剤及び他のプロスタグランジン作用剤、例えばアルプ
ロスタジル、カルボプロスト、シルデナフィル、タダラフィル及びバルデナフィル;抗増
殖剤、例えばシロリムス、タクロリムス、エベロリムス、ゾタロリムス、パクリタキセル
及びミコフェノール酸;ホルモン関連作用剤、例えばレボチロキシン、フルオキシメステ
ロン(fluoxymestrone)、メチルテストステロン、ナンドロロン、オキサンドロロン、テ
ストステロン、エストラジオール、エストロン、エストロピペート、クロミフェン、ゴナ
ドトロピン、ヒドロキシプロゲステロン、レボノルゲストレル、メドロキシプロゲステロ
ン、メゲストロール、ミフェプリストン、ノルエチンドロン、オキシトシン、プロゲステ
ロン、ラロキシフェン及びタモキシフェン;抗新生物薬、例えばアルキル化剤、例えばカ
ルムスチン ロムスチン、メルファラン、シスプラチン、フルオロウラシル3、及びプロ
カルバジン抗生物質様作用剤、例えばブレオマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン
、イダルビシン、マイトマイシン及びプリカマイシン、抗増殖剤(例えば、1,3-ci
sレチノイン酸、5-フルオロウラシル、タキソール、ラパマイシン、マイトマイシンC
及びシスプラチン);代謝拮抗剤、例えばシタラビン、フルダラビン、ヒドロキシ尿素、
メルカプトプリン及び5-フルオロウラシル(5-FU);免疫調節剤、例えばアルデス
ロイキン、イマチニブ、リツキシマブ及びトシツモマブ;有糸分裂阻害剤ドセタキセル、
エトポシド、ビンブラスチン及びビンクリスチン;放射性医薬品、例えばストロンチウム
-89;及び他の抗新生物薬、例えばイリノテカン、トポテカン及びミトタンがある。
【0110】
場合により、第2のセクションはさらに1種又は複数のpH調節剤を含んでもよい。例
えば、pH調節剤、例えばホウ酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、及
び/又は他の塩、例えば結晶又は粉末形態のNa2B4O7・10H2Oを、(以下でよ
り詳細に述べるように)前駆体と共に融解した後前駆体と共に第1のセクション4の遠位
端4bに塗布することができる。或いは、pH調節剤は、融解した前駆体を第1のセクシ
ョン4に融合した後、例えば、ホウ酸塩又はその他の塩の結晶を非架橋前駆体の固体塊の
外側表面に結合又は含浸することにより、及び/又は、例えば、他での参照により本明細
書中に組み入れられている参考文献に開示されている実施形態と同様に、融解し、融解塩
のコーティングを外側表面に塗布することにより、第2のセクション6に塗布してもよい
。加えて、又は代わりに、1種又は複数のpH調節剤は、所望であれば、第1のセクショ
ン4上に提供されてもよい。
【0111】
このようにして、pH調節剤は、例えば穿刺内に配置されたときのシーリング材2の上
又は周りの局部的なpHを変化させて、架橋及び/又は所望の接着材料の創成を増強する
ことができる。或いは、間質体液及び/又は血液のpH及び/又は緩衝能力は、第2のセ
クション6の架橋を推進又は促進するのに有効であり得る。例えば、第2のセクション6
の前駆体は、これらの因子の全てを考慮に入れるように、及び/又は組織に対する強固な
接着を形成するように、最適化することができる。
【0112】
追加の実施形態において、限定されることはないが、低分子量PEG及び/又はグリセ
ロールを始めとする希釈剤のような他の作用物質をシーリング材に添加してもよい。
【0113】
これらの追加の作用物質は、シーリング材に埋め込まれてもよく、シーリング材に(例
えば、「コア」として)包み込まれてもよく、シーリング材と共に製造されてもよく、及
び/又は1つ又は複数のコーティング又は層として塗布されてもよい。さらに、第1のセ
クション4の材料は実質的に均一な組成を有していてもよく、又は組成は、例えば、その
長さに沿って、及び/又は第1のセクション4内の下にある層内で、変化してもよい。
【0114】
シーリング材の製造
幾つかの実施形態において、第1のセクション4は、全体が凍結乾燥ヒドロゲルから、
例えば、最初に凍結乾燥ポリマーの薄いシートとして形成され得る。例えば、PEG及び
キトサンのブレンドから第1のセクション4を製造するには、ヒドロゲルを形成すること
が意図されたPEG-アミン、PEG-エステル及びキトサン粉末を別個の容器(例えば
、バイアル)に入れることができる。リン酸及びホウ酸緩衝液は、例えば、ホウ酸ナトリ
ウム及びリン酸ナトリウムを注射用殺菌水(WFI)に溶解し、各々の溶液のpHを予め
決められた要件に合うように調節することによって作製することができる。使用するキト
サンはキトサン塩の形態(例えばキトサン塩化物、キトサングルタミン酸塩、キトサン酢
酸塩又はキトサンのその他の塩形態)でよい。キトサン塩粉末は所定の量のPEG-エス
テル又はPEG-アミン粉末と混合し得る(又は実施形態に応じて予め混合してもよい)
。次に粉末をそれぞれの緩衝溶液に、例えば1つのバイアルでPEG-エステル及びキト
サンをリン酸緩衝溶液に、他のバイアルでPEG-アミンをホウ酸緩衝溶液に溶解し得る
。或いは、キトサン粉末をホウ酸緩衝溶液中でPEG-アミンと混合することができる。
さらに、代わりに、キトサン粉末をバイアルの各々で、例えば、PEG-アミン及びPE
G-エステルの両方と混合し溶解し、その後合わせることができる。PEG-エステル対
PEG-アミンのモル比は、PEG-エステル基がPEG-アミンを超えていて、PEG
-エステル基が、PEGとキトサンポリマー鎖との間の共有結合を創り出すためのキトサ
ンポリマー鎖のアミン基との反応に利用可能であるようなものでよい。様々なPEG前駆
体の割合に関する追加の情報は上により詳細に開示されている。これらの前駆体溶液は一
緒に混合し、トレイに注ぎ、凍結乾燥し得る。凍結乾燥された材料は、場合により、例え
ば重合反応を完了させるために一連の熱及び/又は湿度調節サイクルに付してもよい。
【0115】
幾つかの実施形態において、ヒドロゲルシーリング材の凍結乾燥され状態調節されたシ
ートはその後大きさ及び質量条件に従って切り取る、例えば、仕上がった第1のセクショ
ン4の所望の長さに切断することができる。例えば、
図1Aに示されているように、切り
取られたヒドロゲルは、乾燥し、巻き上げ、その後の第2のセクション6への結合のため
の移送管8中に装填され得る。
【0116】
シーリング材2の非凍結乾燥非架橋の遠位セクション6を製造するためには、PEG-
アミン及びPEG-エステル粉末(又は他の架橋可能なポリマー前駆体)を適当な容器(
例えば、ビーカー又はフラスコ)内で融解し、混合し、混合物を完全に融解し均一に混合
するのに充分な時間所定の温度に加熱することができる。当業者には了解されるように、
様々な前駆体の融点は、少なくとも部分的に分子量に依存する。しかしながら、当業者は
、本明細書に提供されている開示に基づいて、コポリマーシーリング材を生成するのに適
当な前駆体を容易に製造することができる。もう1つ別の実施形態において、非凍結乾燥
セクションはさらに、融解したセクションに含まれているキトサン繊維、キトサンメッシ
ュ又はキトサン粒子を含有し得る。例えば、前駆体は実質的に乾燥した空気又は不活性ガ
ス雰囲気中、例えば、真空チャンバー内で融解され得る。この手法は、他の場合には早過
ぎる分解及び架橋を生起し得る湿気の取り込みを減らすことができる。真空発生装置を用
い、キトサン繊維、キトサンメッシュ又はキトサン粒子を含んでも含まなくてもよい融解
したPEGは、次いで、ロール状に巻かれた凍結乾燥した第1のセクション4の遠位端4
bに塗布され得る。
【0117】
例えば、上記したように、第1のセクション4は、ロール状に巻いたシートから形成し
、
図1Aに示されているように移送管8に装填することができる。移送管8は、仕上がっ
たシーリング材2の所望の外径又は断面に対応する内径又は他の断面を有し得る。移送管
8は、ポリマー、金属、又は複合材のような組み立てプロセスのプロセスパラメーターに
対処するのに充分ないかなる材料から形成されてもよく、場合により、第1のセクション
4の挿入及び/又はシーリング材2の取り出しを容易にするために所望のコーティング、
例えばPTFEを含んでもよい。
【0118】
第1のセクション4は、第1のセクション4の遠位端4bが、移送管8の端部から、例
えば第2のセクション6の所望の長さに相当するか又はそれより長い所定の距離L6だけ
内方にずれるように、移送管8中に装填することができる。例えば、第2のセクション6
の所望の仕上げ長さが約1.5ミリメートルの場合、遠位端4bは、移送管8の端部から
内方に約2ミリメートル(2.0mm)ずらすとよい(この場合、以下に記載されるよう
に、あらゆる余分な材料は後に切り取ることができる)。次いで、真空発生装置を用いて
、キトサン繊維、キトサンメッシュ又はキトサン粒子を含んでも含まなくてもよい融解し
た非架橋PEGを、ロール状に巻いた凍結乾燥シーリング材の遠位端4bに付ける。例え
ば、真空は、(「真空」と標識された矢印で現されるように)融解したPEGを移送管8
中に、そして第1のセクション4の遠位端4bに突き当たるように向けさせる。こうして
、移送管8は融解したPEGを所望の形状に、例えば第2のセクション6の直径及び/又
は長さに形作ることができる。
【0119】
真空は、融解した前駆体を第1のセクション4の遠位端4bに名目上突き当たらせるこ
とができ、及び/又は融解した前駆体を、例えば毛細管作用などによって第1のセクショ
ン4内の気孔及び/又はその他の開放空間中に部分的に引き込むことができる。この状況
で、第1のセクション4の遠位端4b内に、融解した前駆体が第1のセクション4の凍結
乾燥ヒドロゲル又はその他の材料に侵入している遷移ゾーン7が創り出され得、これは第
2のセクション6の第1のセクション4への融合を増強することができる。例えば、融解
した前駆体は周囲条件下で急速に冷却され得、その結果遠位端4bへの侵入が比較的短く
なり得、例えば、数ミリメートル(mm)未満(例えば、約5mm未満、約4mm未満、
約3mm未満、約2mm未満、約1ミリメートル未満、又はそれ以下)の遷移ゾーン7が
得られる。
【0120】
融解した前駆体は周囲条件下で乾燥させてもよく、例えば、単に放冷し固化させてもよ
く、又は、代わりに、融解し塗布された前駆体を所望の条件に曝露して、融解した前駆体
の固化を加速又は促進してもよい。この真空プロセスは2つのセクションを一緒に効果的
に融合してある長さのシーリング材2を提供する。
【0121】
キトサン繊維は紡糸技術により揮発性溶剤中キトサン溶液から製造することができる(
例えば、電界紡糸)。キトサンメッシュは高濃度のキトサン溶液を凍結乾燥することによ
って製造することができる。或いは、キトサンを種々の架橋剤で架橋して高度に架橋した
キトサンポリマー鎖を創り出すことができ、これをさらに加工してキトサン繊維又はメッ
シュを製造することができる。幾つかの実施形態においては化学架橋剤(例えば、グルタ
ルアルデヒド(gluteraldehdye)、ホルムアルデヒド)を使用することができるが、幾つ
かの実施形態においてはゲニピンのような天然の架橋剤を使用する。また電界紡糸法を使
用して架橋キトサン繊維(例えば、繊維状マット又はメッシュ)を製造することができる
。幾つかの実施形態においては、蒸気架橋も使用し得る。
【0122】
上述したように、様々な割合のPEG及びキトサンを使用して、生理学的流体と接触し
た際に高い膨潤能力と共に止血特性を有する最終の凍結乾燥ヒドロゲルを提供することが
できる。幾つかの実施形態において、2種のPEG前駆体がキトサンと組み合わせられる
。一定のかかる実施形態において、一方のPEG前駆体はエステル末端基を含有し、一方
はアミン末端基を含有する。PEG前駆体はキトサンと反応することができ(PEGエス
テルはキトサンのアミン基と反応することができる)、そして互いに反応することができ
(PEG-エステルはPEG-アミンと反応する)、凍結乾燥の際に高度に多孔質のヒド
ロゲル材料となることができる部分的に架橋した網目構造を提供することができる。
【0123】
PEG-エステル対PEG-アミン前駆体比並びにPEG前駆体対キトサンの比は凍結
乾燥ヒドロゲルの最終特性を変化させることができる。上述したように、最終のヒドロゲ
ル製剤中のキトサンの重量割合は約0.1~約30重量%であり得るが、幾つかの実施形
態において最終のヒドロゲル製剤中のキトサンの重量割合は約1%~約10%である。1
つの実施形態において、第1のセクションは約2重量%~約4重量%のキトサンを含む。
さらに追加の実施形態において、最終の凍結乾燥ヒドロゲルは約4重量%~約6重量%の
キトサンを含有する。エステル活性基を有するPEG前駆体のアミン末端基を有するPE
G前駆体に対する比は凍結乾燥されたポリマー網目構造の架橋密度、多孔性及び完全性に
影響することができる。幾つかの実施形態において、PEG-エステルは、幾らかのエス
テル基がキトサンのアミン基と共有結合的に反応することができるように、PEG-アミ
ンより過剰である。これらの結果として得られるヒドロゲルはそのポリマー網目構造内に
キトサンを含有し、そこではキトサンはPEG成分と共有結合で結合している。この方法
は、ヒドロゲル材料の全表面積を増大することによって最終の凍結乾燥ヒドロゲル材料の
膨潤能力と共に止血能力を増大する。
【0124】
図2Aに示されているように、キトサン生体吸収性メッシュ6a’が第2のセクション
6’の前駆体6b’内に埋め込まれられ得るか、及び/又はそれを取り囲み得る。生体吸
収性キトサンのメッシュ6a’は固化した前駆体6b’より大きい剛性、弾性、及び/又
はその他の望ましい性質を有し得る。加えて、図に示されているように、メッシュ6a’
はらせん構造を有する1種又は複数の繊維又はフィラメント(図に示されている1本のら
せん状フィラメント)であってもよく、又は代わりに、メッシュ6a’はフィラメントの
組紐、ロール状に巻いた多孔質マット、などでもよい(図示せず)。1つの実施形態にお
いて、メッシュ6a’は、例えば、上記したように融解した前駆体(図示せず)を塗布す
る前に移送管8(図示せず、
図1A参照)の端部に補強部材を挿入することによって、第
2のセクション6’の前駆体6b’内に埋め込むことができる。こうして、塗布された前
駆体が移送管8内に引き込まれ、冷却される(又は、その他乾燥され、及び/又は固化さ
れる)につれて、前駆体6b’はメッシュ6a’に侵入し得るか、及び/又はそれを取り
囲み得、それによりその部材を第2のセクション6’内に埋め込み得る。
【0125】
図2Bに示されているように、キトサン補強粒子又は充填材6a”が第2のセクション
6”内に提供され得る。例えば、キトサンの組成物を融解した前駆体混合物と混合し得、
次いで、例えば上記の真空プロセスを用いて、補強充填材6a”を第1のセクション4(
図示せず)の遠位端4bに前駆体6b”と共に塗布し得る。こうして、充填材6a”をラ
ンダムに、実質的に均一に、又は所望のパターンで第2のセクション6”全体に分布させ
ることにより、第2のセクション6”の前駆体6b”の剛性を増強し、脆性を低減させ、
及び/又はその他性質を所望のように変更させ得る。
【0126】
上述したように、幾つかの実施形態において、希釈剤を製剤に含ませることができる。
幾つかのかかる実施形態において、希釈剤は、第1のセクション6の機械的な強度及び/
又は完全性を改善し、及び/又は第2のセクション6の脆性を最小にするように、第1の
セクション4への塗布前に製剤(例えば、融解した前駆体)に加えられる。
【0127】
本発明のシーリング材の形状は制御された変形に資する形状を有するように改変するこ
とができると理解されたい。例としては、逆ゴルフティー、砂時計、スイープ又は波状面
、管状又は中実のロッド断面又は形状、楕円形、三角形、四角形、円錐、円盤、多角形の
形状、など(図示せず)がある。
【0128】
図1に示されているように、第1のセクション4及び第2のセクション6(又は、第1
のセクション4がない場合は、代わりに、セクション6)は、例えば、シーリング材2の
送達を容易にするために、第1のセクション4の近位端4aと遠位端4bとの間を、また
第2のセクション6を通って伸延する内腔5を含み得る。例えば、内腔5はそこを通るバ
ルーンカテーテル又はその他の位置決め部材を受容して受け入れるような寸法になってい
ることができ、例えば、シーリング材2が位置決め部材に対してスライドするか又はそれ
を通り過ぎることができ、及び/又は位置決め部材がシーリング材に対して軸方向に導か
れ得るようになっている。或いは、シーリング材2は実質的に連続したロッド材料であっ
て、例えば、位置決め部材を持たないカートリッジ又はシャトルを用いて穿刺内にシーリ
ング材2を送達することができるようになっていてもよい。
【0129】
加えて(又は、代わりに)、シーリング材2が内腔5を有する場合、例えば、第1のセ
クション4が1つ又は複数のシート又は層の材料からロール状に巻かれるか又は成形によ
り形成されるならば、内腔5は第1のセクション4が形成されるときに作製され得る。或
いは、内腔5は、既に形成された中実の第1のセクション4、第2のセクション6、又は
全体のシーリング材2を通って材料に穴をあけるか、又はその他で材料を除去することに
より形成されてもよい。例えば、第1のセクション4がロール状に巻かれたシートから形
成されるならば、例えば、
図1Aに示されているように、移送管8から伸延する遠位端4
bに第2のセクション6を付ける前に、ロッド又はその他のマンドレル9(これは移送管
8と同様に製造され得る)を内腔5に通して挿入することができる。こうして、第2のセ
クション6は、例えば、移送管8内で、成形され、マンドレル9の周りで遠位端4bに融
合され得る。融解した前駆体が固化したらマンドレル9を取り外すことができ、第2のセ
クション6及び第1のセクション4を通る連続した内腔が得られる。或いは、第2のセク
ション6を通る内腔5の部分は、第2のセクション6が形成され第1のセクション4に融
合された後に穴をあけたり、ドリルで掘ったり、又はその他の方法で作製してもよい。
【0130】
シーリング材の寸法は特定の用途に適合させることができる(例えば、より大きい穿刺
をシールするにはより大きい幅及び/又はより長く、又はより小さい穿刺のためにはより
小さい/短い)。幾つかの実施形態において、シーリング材2は約3~20ミリメートル
(3-20mm)、例えば約3~約5mm、約5~約7mm、約7~約9mm、約9~約
11mm、約11~約13mm、約13~約15mm、約15~約15.5mm、約15
.5~約16mm、約16~約16.5mm、約16.5~約17mm、約17~約20
mm、又はこれらの間の任意の長さの全体の長さを有する。具体的なシール用途で必要で
あれば、より短いか又はより長いシーリング材も使用できる。
【0131】
シーリング材の第2の部分6はシーリング材の全長の任意のパーセンテージであり得る
。例えば、
図1に示した非限定的な実施形態は第1のセクション4が第2のセクション6
より実質的に長いシーリング材を表しているが、代わりに、セクション4、6が同様な長
さを有していてもよく、又は第2のセクション6が第1のセクション4より長くてもよい
ことが了解されよう。さらに代わりの実施形態において、第1のセクション4は省略され
てもよく、第2のセクション6が、例えば約3~20ミリメートル(3-20mm)の長
さを有するシーリング材2の全長(図示せず)を提供してもよい。
【0132】
例えば、第1のセクション4は約ゼロ(シーリング材2全体が第2のセクション6から
形成されている場合)~20ミリメートル(0-20mm)、例えば約5~20ミリメー
トル(5-20mm)、例えば約15ミリメートル(15mm)の長さを有し得る。第2
のセクション6は第1のセクション4と同様な外径を有し得るが、実質的により短い、例
えば、約ゼロ(シーリング材2全体が第1のセクション4から形成されている場合)~8
ミリメートル(0-8mm)、例えば約半分~5ミリメートル(0.5-5.0mm)、
例えば約1.5ミリメートルの長さを有していてもよい。
【0133】
用途に応じて、シーリング材の外径(又は他の断面寸法)は約1~約8ミリメートル、
例えば約1mm~約3mm、約3mm~約5mm、約5~約8mm、及び上記の間の任意
の直径又は寸法である。例えば、幾つかの実施形態において、シーリング材の横寸法は約
1~約3mm、例えば約1mm~約1.25mm、約1.25mm~約1.5mm、約1
.5mm~約1.75mm、約1.75mm~約2mm、約2mm~約2.5mm、約2
.5mm~約3mm、及び上記の間の任意の寸法である。より大きい又はより小さい横寸
法のシーリング材も使用できる。
【0134】
シーリング材配置のためのデバイス
図3A-3Dを参照すると、一般に位置決め部材714及び、位置決め部材714上に
支えられた、シーリング材2を穿刺(図示せず)中に送達するためのカートリッジ716
を有する装置710が示されている。カートリッジ716は、(本明細書に記載されてい
るシーリング材の特徴のいずれか1つを含むことができる)シーリング材2を担持し、シ
ーリング材2に隣接する支持部材730の遠位端734を取り囲むシーリング材スリーブ
750、及び支持部材730の近位端732上のハンドル又はハブ723を有することが
できる。シーリング材スリーブ750は、支持部材730の遠位端734の一部分を取り
囲み、例えば、
図3Dに示されているような導入シース780のハブ又は近位端783に
突き当たるか又はその他接触するような大きさの、比較的に大きい直径の近位部分752
、及び、シーリング材2を取り囲み、例えば、導入シース780のハブ783及び/又は
内腔786に入るような大きさの比較的に小さい直径の遠位部分754を有することがで
きる。ハブ783はシーリング材スリーブの小径部分を解放可能に受容するように適合さ
せたキャビティーを有することができる。カートリッジ716は最初、シーリング材スリ
ーブ750及びシーリング材2が位置決め部材714の位置決め要素746に直ぐ隣接し
て位置するように提供され得る。
【0135】
ハンドル723は、以下にさらに記載するように、内側ハウジング又はフレーム774
及び、装置710の1つ又は複数の構成部品の互いに対する動きを可能にするか、及び/
又は起こさせるための1つ又は複数のアクチュエータ760-764を取り囲む外側ハウ
ジング又はシュラウド772を有することができる。図に示されているように、外側ハウ
ジング772は、その中に第1及び第2のアクチュエータ760及び762が具備されて
いる第1の開口又はスロット773、並びにその中に第3のアクチュエータ764が具備
されている第2のスロット775を有することができる。開口773は、以下にさらに記
載するように、第1及び/又は第2のアクチュエータ760、762と相互作用するため
の1つ又は複数の特徴を有し得る。
【0136】
内側ハウジング774は外側ハウジング772に対して、例えば最初の近位位置と遠位
位置との間で軸方向にスライド可能であり得る。例えば、外側ハウジング772は、内側
ハウジング774の周りに取り付けられ得るクラムシェルの半分又はその他の構成部品を
有していてもよく、その結果協働するレール及び溝(図示せず)により、内側ハウジング
774が実質的な横方向の動きなしに軸方向にスライドできるようになっている。1つの
代表的な実施形態において、1つ又は複数の細長いリブ又はレール(図示せず)が外側ハ
ウジング772の内側表面に成形されるか又はその他具備され得、この外側ハウジング7
72は内側ハウジング774内のレール又は溝(やはり図示せず)間にスライド可能に受
容され得る。
【0137】
ハンドル723は、外側ハウジング772と一体的に形成されるか又はその他外側ハウ
ジング772から伸延する遠位シュラウド776を有することができる。1つ又は複数の
戻り止め又は他の特徴、例えば、一対の歯778が、ハブ723を
図3Dに示されている
シース780のような導入シースと係合させるためにシュラウド776上に具備され得る
。例えば、シース780は、ハブ783の反対側に沿って軸方向に伸延する一対のポケッ
ト783aを有するハブ783を有し得る。歯778は、例えば、以下に記載されるよう
に、使用中装置710がシース780内に導入されたときポケット783a内にスライド
可能に受容され得るタブ又は戻り止め778aを有する。歯778及びポケット783a
の相対的な長さは、戻り止め778aがポケット783aを貫通し、その遠位端から外に
伸延するように設定されている。戻り止め778aは、挿入を容易にする傾斜を付けた又
は先細の遠位縁、及び、やはり以下にさらに記載するように、ポケット783aの遠位端
と係合して、歯778がポケット783aを通って引き戻されるのを防止することにより
、シース780とハブ723の外側ハウジング772の動きを連結させる鈍い近位縁を有
し得る。
【0138】
図3Cに見ることができるように、装置710はラックピニオン装置を有することがで
きる。例えば、図に示されているように、ラック766が支持部材730の近位端732
に連結され、外側及び/又は内側ハウジング772、774内にスライド可能に受容され
得る。ピニオン768は、複数の噛み合い歯766a、768aによりラック766に連
結された内側ハウジング774に回転可能に装着され得る。第2の又は支持アクチュエー
タ762、例えば、内側ハウジング774に旋回可能に連結されたボタンが、ピニオン7
68を選択的に回転させるために、例えば、噛み合い歯762b、768bによりピニオ
ン768に連結される。例えば、以下にさらに記載するように、第2のアクチュエータ7
62を押し下げてピニオン768を回転させることにより、ラック766を遠位方向に前
進させ、これにより支持部材730を前進させ得る。
【0139】
場合により、図に示されているように、第1の又はロッキングアクチュエータ760が
、始動するまで外側及び/又は内側のハウジング772、774の相対的な動きを防止し
、及び/又は支持部材730の動きを制限するためにハブ723上に具備され得る。例え
ば、
図3Cに最もよく見られるように、ロッキングアクチュエータ760は、内側ハウジ
ング774に旋回可能に装着され得、外側ハウジング772の開口773の遠位縁773
bに突き当たるか又はその他係合する遠位端760aを有し得る。結果として、内側ハウ
ジング774は近位位置に実質的に固定され得、ロッキングアクチュエータ760が始動
してアクチュエータ760の遠位端760aを開口773の遠位縁773bから解放する
まで遠位位置方向に導かれることはできない。
【0140】
加えて、又は代わりに、第1のアクチュエータ760は、支持部材730を内側ハウジ
ング774に対して選択的にロックするための戻り止め又は他のロッキング特徴760b
を有し得る。例えば、
図3Cに示されているように、戻り止め760bが、あらゆる他の
特徴と係合していない第1のアクチュエータ760から内方に伸延する。第1のアクチュ
エータ760が始動され、すなわち、内方に導かれて、アクチュエータ760の遠位端7
60aを外側ハウジング772の遠位縁773bから解放すると、戻り止め760bは下
方の内側ハウジング774中に落下し得る。本明細書中に述べられているように、内側及
び外側ハウジング部分774、772が互いに対して可動になると、ハンドル723を近
位方向に動かして外側のシース780を後退させシーリング材を露わにすることができる
。
【0141】
その後、支持アクチュエータ762を続いて始動させると、本明細書に記載されている
ように、ラック766が前進して、ラック766の遠位端766bが戻り止め760bの
下を通り、戻り止め760bがポケット(図示せず)に捕捉されるまで、支持部材730
がシーリング材を動脈切開の方へ詰め得る。戻り止め760bがポケットに捕捉されると
、ラック766は近位方向に動くことができないので、ラック766と連結された支持部
材730の近位方向の動きが防止される。
【0142】
装置710はまた、例えば、配置後シーリング材2を通って位置決め要素746を選択
的に後退させるための第3の又はバルーン後退アクチュエータ764も有し得る。例えば
、
図3Cに示されているように、第3のアクチュエータ764は内側ハウジング774に
スライド可能に装着され得、位置決め部材714のハブ748に選択的に連結され得る。
【0143】
最初、第3のアクチュエータ764は、内側ハウジング774に連結され得るが、シー
リング材2が配置され及び/又は詰められたら内側ハウジング774から切り離され得る
。例えば、
図3Cに最もよく見られるように、第3のアクチュエータ764は内側ハウジ
ング774から切り離され得る第3のアーム764cを有し得、その結果外側及び/又は
内側ハウジング772、774に対する第3のアクチュエータ764の近位方向の動きが
ハブ748の同様な近位方向の動きを引き起こすことにより、位置決め要素746を近位
方向に導くことになる。
【0144】
さらに、第3のアクチュエータ764は、ラック766の近位端766cに隣接してス
ライド可能に配置され得る第2のアーム764bを有することができる。第2のアーム7
64bがこのようにして配置されると、第3のアーム764cはハブ748と連結したま
まであり得る。例えば、第2のアクチュエータ762を作動させることにより、ラック7
66が遠位方向に導かれると、第2のアーム764bがラック766の近位端766cか
らスライドし得ることにより、第3のアーム764cを内側ハウジング774から切り離
し得る。例えば、図に示されているように、ラック766が遠位方向に導かれたとき第2
のアーム764bを外方に偏らせて第2のアーム764bをラック766の近位端766
cから外すために、バネ又は他のバイヤス機構764aが第3のアクチュエータ764(
又は場合により、外側ハウジング772)に具備され得る。さらに、バネ又はバイヤス機
構764aは、第3のアーム764cを内側ハウジングから切り離すことにより位置決め
要素746の不用意な動きを防止するためにアクチュエータを押し下げることを必要とし
得る。その後、第3のアクチュエータ764を近位方向に導いてハブ748及び位置決め
要素746を後退させ得る。
【0145】
装置710は、例えば、患者の身体内の体腔と連通する穿刺中にシーリング材2を送達
するのに使用され得る。最初に、
図3Dに示されている導入シース780が穿刺を通して
体腔中に配置され得る。
【0146】
場合により、導入シース780は、例えば、拡張器790及びガイドワイヤ799を有
する導入器キット、及び/又は装置710も有するシステムの一部として提供され得る。
拡張器790は近位端792及び、導入シース780の内腔786を通ってスライド可能
に受容されるような大きさの、例えばガイドワイヤ799に沿った拡張器790及び導入
シース780の穿刺(図示せず)への導入を容易にするために、例えば先細の侵襲的な及
び/又はその他の遠位先端で終結する遠位端794を有し得る。図に示されているように
、拡張器790は近位のハウジング796を有することができ、これは装置710の遠位
のシュラウド776と同様に構成された歯798及び戻り止め798aを有する。拡張器
790は、歯798がハブ783の通路783aに入り、戻り止め798aがハブ783
の通路783aを出るまで、導入シース780のハブ783及び内腔786中に導かれ得
る。
【0147】
こうして、拡張器790及び導入シース780は共に連結され得、その結果、ガイドワ
イヤ799(本明細書中他に記載されているように、図には示していないが、既に穿刺を
通って体腔内に配置されている)は、拡張器790及び導入シース780を穿刺中に導入
するために、拡張器790の遠位端794及び内腔796中にバックロードされ得ること
になる。導入シース780が所望の通り配置されたら、歯798を内方に押し入れて戻り
止め798aをポケット783aから解放し得、拡張器790が導入シース790の内腔
796から引き出され得る。その後、本明細書中他に記載されているように、導入シース
780を使用して、体腔にアクセスし、1つ又は複数の処置を行うことができる。
【0148】
穿刺をシールすることが所望の場合、導入シース780を通して導入されるあらゆる機
器を取り外し得、装置710を、例えば、
図3A~3Bに示されているように製造し得る
。つぶした位置決め要素746と共に、位置決め部材714の遠位端744は導入シース
780のハブ783中に、内腔786を通って、体腔中に導かれ得る。シーリング材スリ
ーブ750及びシーリング材2は位置決め要素746に直ぐ隣接して位置しているので、
遠位端744が導入シース780に入ると、スリーブ750は導入シース780に接触し
得、これはスリーブ750のさらなる前進を防止し得る。例えば、スリーブ750の遠位
部分754は少なくとも部分的に導入シース780のハブ783に入り得、スリーブ75
0の近位部分752はハブ783に突き当たり得、これによりスリーブ750のさらなる
前進を防止する。スリーブ750が支持部材730に解放可能に取り付けられている場合
、位置決め部材714の前進はスリーブ750を支持部材730の遠位端734から解放
し得る。
【0149】
位置決め部材714はさらに導入シース780中に前進し得、その際スリーブ750は
導入シース780に対して実質的に動かないままでいることができ、従って、支持部材7
30上を近位方向にスライドする。従って、支持部材730の遠位端734はスリーブ7
50の遠位部分754から出、導入シース内腔786に入り得、これによりシーリング材
2をスリーブ750からシース内腔786中に押し出す。場合により、スリーブ750の
遠位部分754は、導入シースハブ783内のバルブ(図示せず)を少なくとも部分的に
開放し、例えば、シーリング材2及び支持部材730の遠位端734が導入シース内腔7
86中に前進するのを容易にするのに充分な長さ及び/又はその他の特徴を有し得る。こ
うして、スリーブ750は、シーリング材2がハブ783及びその中のあらゆるバルブを
通って導入シース780の内腔786内を通過するまでシーリング材2を保護し得る。
【0150】
その後、位置決め部材714は、位置決め要素746が導入シース780の遠位端78
4を超えて、すなわち、体腔内に配置されるまで前進し得る。これが起こると、ハウジン
グシュラウド776の歯778が整列し得、例えば、上記したように、戻り止め778a
がポケット783aの遠位端と係合するまでシースハブ783のポケット783aに入り
得る。戻り止め778aがポケット783aと係合すると、導入シース780及び外側ハ
ウジング772は共に連結して、一緒に動くようになり得る。
【0151】
位置決め部材714及び導入シース780の相対的な長さは、シーリング材2がシース
内腔786内にあり、例えば、導入シース780の遠位端784の近位に存続するが、位
置決め要素746は遠位端784を超えて曝露されるように設定され得る。その後、位置
決め要素746を、例えば、シリンジ148からの流体を用いて位置決め要素746を膨
らませることにより膨張させ得る。次いで、全体の装置710及び導入シース780は、
(装置ハブ723又はシースハブ783のいずれを操作するかには関わりなく)膨張した
位置決め要素746が穿刺に隣接した体腔の壁と接触するまで、後退させ得る。
【0152】
適切に配置されたら、第1のアクチュエータ760を始動させて外側及び内側部材77
2、774の動きを切り離し得る。例えば、外側ハウジング772を保持したままで、第
1のアクチュエータ760を内方に押して第1のアクチュエータ760の遠位端760a
を外側ハウジング772の遠位端773bから解放し得、次に外側ハウジング772を近
位方向に、すなわち患者及び穿刺から離れて後退させ得る。位置決め部材714及び支持
部材730に連結された内側ハウジング774と共に、この作用により、内側ハウジング
774は外側ハウジング772内で、すなわち、近位位置(
図3A-3Cに示されている
)から遠位位置までスライドさせられ、これにより導入シース780を支持部材730に
対して後退させ、シーリング材2を位置決め要素746に隣接する穿刺内で曝露する。
【0153】
内側ハウジング774が遠位位置にあるとき、第2のアクチュエータ762を作動させ
支持部材730を前進させ、例えば、シーリング材2を膨張した位置決め要素746及び
/又は体腔の外側の壁、例えば動脈切開に対して詰めるか又は圧縮し得る。例えば、特に
図3Cを参照して、第2のアクチュエータ762を内方に押し得、これによりピニオン7
68を回転させ、ラック766を前進させ、従って支持部材730を前進させて遠位端7
34を位置決め要素746の方向に向け、それらの間でシーリング材2を圧縮する。
【0154】
場合により、第2のアクチュエータ762は、第2のアクチュエータ762が完全に押
し下げられたとき外側ハウジング772と係合し得る1つ又は複数の特徴、例えばタブ又
は戻り止め762aを有し得る。例えば、
図3A及び3Bに示されているように、外側ハ
ウジング772の開口773は、内側ハウジング774が完全に遠位位置に移動したとき
第2のアクチュエータ762のタブ762aと整列し得る1つ又は複数のポケット又は凹
み773aを有し得る。タブ762aがポケット773a内に受容されていると、内側ハ
ウジング774は外側ハウジング772に対して近位方向に動かすことができず、これに
より外側及び内側ハウジング772、774が互いに対して固定される。
【0155】
シーリング材2が充分な時間曝露され、及び/又は支持部材730により突き固められ
たら、位置決め要素746をつぶし得、例えば、つぶした位置決め要素746をシーリン
グ材2及び支持部材730を介して引っ張ることにより位置決め部材714を体腔から引
き出し得る。例えば、位置決め要素746からシリンジ148を用いて空気を抜き得、次
いで第3のアクチュエータ764を作動させて、つぶれた位置決め要素746をシーリン
グ材2を介して支持部材730の遠位端734中に引き出し得る。
【0156】
場合により、上記したように、第3のアクチュエータ764は、第3のアクチュエータ
の第3のアーム764cを解放するのに充分な程にラック766が前進するまで内側ハウ
ジング774と連結したままでいることができる。その後、外側及び内側ハウジング77
2、774に対する第3のアクチュエータ764の近位方向の動きにより、ハブ748及
び全体の位置決め部材714も近位方向に動くことにより、位置決め要素746がシーリ
ング材2を通って支持部材730の遠位端734内に引き出される。外側のハウジング7
72のスロット775の長さは、位置決め要素746を所望の距離だけ遠位端734中に
引き出すように設定され得る。
【0157】
位置決め要素746がシーリング材2を通って引き出されたら、全体の装置710を引
き出して支持部材730を穿刺から除去し、シーリング材2を穿刺内に残すことができる
。
【0158】
図4A-4Fは、シーリング材をもう1つ別の装置810から動脈切開部位に送達する
方法を概略的に示す。装置810は装置710に関連して記載した特徴のいずれかを含む
ことができる。例えば、装置810は位置決めアセンブリ814の遠位部分に配置された
シーリング材2を有することができる。位置決めアセンブリ814は穿刺を通って血管中
に伸延しており、位置決め要素846が血管内腔内にあり、シーリング材2は血管壁の外
にある(
図4A)。位置決め要素846の膨張により、動脈切開部位に対して装置810
が固定される(
図4B)。シース880を引き出すと、動脈切開部位に対してシーリング
材2が曝露され(
図4C)、支持部材830の前進によりシーリング材2が突き固められ
る(
図4D)。位置決め要素846の空気を抜いた後(
図4E)、位置決め要素846を
シーリング材2を介して近位方向に動かすことができ(
図4F)、シーリング材2が血管
の外に残る。支持部材830はシーリング材2の位置を維持することができる一方で、位
置決め要素846が引き出される。位置決め要素846が引き出された後、シース880
及び位置決めアセンブリ814を含めて全体の装置810を患者から引き出すことができ
る。装置810及び装置810を使用する方法について以下に詳細に記載する。
【0159】
図4A~4Fに示されているように、装置810はハンドル823を有することができ
る。ハンドル823は外側ハウジング872及び内側ハウジング874を有することがで
きる。外側ハウジング872は、例えば、シース880が位置決めアセンブリ814に対
して近位方向に動くとき、内側ハウジング874に対して動くことができる。
【0160】
ハンドル823は装置810を制御するための1つ又は複数のアクチュエータを有する
ことができる。各々のアクチュエータは1つ又は複数の装置810の機能を制御すること
ができる。1つ又は複数のアクチュエータはハンドル823に沿ってどこでも配置するこ
とができる。
図4A~4Fで、アクチュエータ860、862、864、及び848は、
各々のアクチュエータが制御する処理工程に基づいてハンドル823に沿って配置される
。
図4A~4Fに示されているアクチュエータの構成は、手順の各々の続く工程に対して
ユーザーがその手を近位方向に動かすことを必要とするだけで、装置810を作動させる
ことに関連する混乱を低減する。
図4A~4Eは4つのアクチュエータ860、862、
864、及び848を図示しているが、同一の機能を実行するためにより少ないか又は追
加のアクチュエータを使用してもよい。
【0161】
装置810は膨張ライン48cを有することができる。膨張ライン48cは位置決め要
素846と流体連通している。膨張ライン48cは流体を位置決め要素846に送達する
ためのシリンジ148又は他のデバイスに接続している。
【0162】
装置810は、膨張ライン48cを通る流体流を制御するために第1のアクチュエータ
860を有することができる。第1のアクチュエータ860は開放位置と閉鎖位置との間
で動く。
図4Aに示されているように、第1のアクチュエータ860が開放位置にあると
き、シリンジ148は膨張ライン48cを介して流体を送達して位置決め要素846を膨
張させることができる。
図4Bで、第1のアクチュエータ860は閉鎖位置に移動し、膨
張ライン48cを通る流体流を制限して位置決め要素846の膨張した状態を維持する。
位置決め要素846が膨張した後、装置810は近位方向に動き、位置決め要素846は
動脈切開に隣接する。
【0163】
装置810は位置決めアセンブリ814に対するシース880の動きを制御するために
第2のアクチュエータ862を有することができる。第2のアクチュエータ862は第1
の位置と第2の位置との間で動く。第1の位置(
図4A及び4B)で、シース880は位
置決めアセンブリ814に対して動くことができないので、シーリング材2の不注意な曝
露が防止される。
図4Cに示されているように、第2のアクチュエータ862が第1の位
置から第2の位置に動くと、シース880は位置決めアセンブリ814に対して動くこと
が可能になる。シース880が後退すると、シーリング材2が動脈切開部位に曝露され、
一方位置決めアセンブリ814は動かないままでいる。また、シース880を後退させる
と、外側ハウジング872の一部分が第2のアクチュエータ862を少なくとも部分的に
覆うこともできるようになる。
【0164】
装置810は、内側ハウジング874が外側ハウジング872に対して動くことを防止
するためにロック機構を有することができる。シース880が後退すると、外側ハウジン
グ872は第1の位置と第2の位置との間で動く。外側ハウジング872が第1の位置に
あるとき(
図4A及び4B)、内側ハウジング874は外側ハウジング872に対して動
くことができる。外側ハウジング872が第2の位置にあるとき(
図4C)、内側ハウジ
ング874は外側ハウジング872に対して近位方向に動くことができない。
【0165】
図4C及び4Dに示されているように、装置810は第3のアクチュエータ864を有
することができる。第3のアクチュエータ864は第1の位置と第2の位置の間で動く。
第3のアクチュエータ864が第1の位置から第2の位置に動くと、支持部材830が前
進してシーリング材2を突き固める。シーリング材2を突き固めると、シーリング材2の
実質的な移動を防止して止血を促進することができる。
【0166】
第3のアクチュエータ864が第1の位置から第2の位置に動くと、後退ロック816
を解放することができる。後退ロック816は、位置決めアセンブリ814が、シーリン
グ材2を突き固める前に不注意に後退することを防止する。後退ロック816が解放され
ると、位置決めアセンブリ814の少なくとも一部分が支持部材830に対して近位方向
に動くことが可能になる。
【0167】
装置は第1の位置と第2の位置との間で動くことができる第4のアクチュエータ848
を有することができる。後退ロック816のロック解除により、第4のアクチュエータ8
48の動きが可能になる。第4のアクチュエータ848が第1の位置から第2の位置に動
くと、位置決めアセンブリ814の少なくとも一部分が支持部材830に対して後退する
。
【0168】
図4Eで、第1のアクチュエータ860は開放位置に動いて膨張ライン48cを通る流
体流を可能にする。第1のアクチュエータ860が開放位置にあるとき、シリンジ148
が位置決め要素846の空気を抜くことができる。
図4Fで、位置決め部材814はシー
リング材2を通って後退し、全体の装置810を患者から除去することができる。
【0169】
上記したように、装置810は位置決め要素846への流体流を制御するために作動機
構を有することができる。作動機構は、
図5A-7Bに関連して以下に記載する特徴のい
ずれかを単独で、又は互いに組み合わせて有することができる。
【0170】
図5A及び5Bは、開口位置と閉鎖位置との間で動く第1のアクチュエータ860aを
示す。
図5A-1及び5B-1は、膨張ライン48aの断面図を示す。ハンドルの外側ハ
ウジング872aは開口を有し、ここを通って第1のアクチュエータ860aの一部分が
伸延する。
図5A及び5Bで、第1のアクチュエータ860aはバルブであるが、第1の
アクチュエータ860a及びバルブは別個の構成部品であることもできる。バルブは、膨
張ライン48aを通る流体流を制限するためにピンチ機構を有することができる。
【0171】
第1のアクチュエータ860aは開放位置(
図5A)と閉鎖位置(
図5B)との間で動
くことができる。開放位置において、流体は膨張ライン48aを通って流れることができ
る。閉鎖構成において、流体は膨張ライン48aを通って流れることができない。
図5A
及び5Bは第1のアクチュエータ860aをロッカーとして描いているが、第1のアクチ
ュエータ860aは他の形状をとることができる。
【0172】
図6A及び6Bは、第1のアクチュエータ860b及び収縮アクチュエータ866bを
有する装置を示す。
図6A-1及び6B-1は膨張ライン48bの断面図を示す。連結部
分867bは第1のアクチュエータ860bを収縮アクチュエータ866bに接続する。
図6A及び6Bに示されている連結部分867bは複数の結合部材を有するが、連結部分
867bは1つの結合部材のみを有していてもよい(
図6E-6F参照)。外側ハウジン
グ872bは2つの開口を有しており、ここを通って第1のアクチュエータ860bの一
部分及び収縮アクチュエータ866bが伸延する。
【0173】
図5A及び5Bと同様に、第1のアクチュエータ860bは第1の位置から第2の位置
に動いて膨張ライン48bを通る流体流を制限することができる。第1のアクチュエータ
860bを第1の位置から第2の位置に動かすと、収縮アクチュエータ866bが第1の
位置から第2の位置に動かされる。収縮アクチュエータ866bを第2の位置から第1の
位置に動かすと、第1のアクチュエータ860bが第2の位置から開放位置に動かされて
膨張ライン48bを通る流体流が可能になる。
【0174】
図6A及び6Bと同様に、
図6C及び6Dは、連結部分867cにより接続された第1
のアクチュエータ860c及び収縮アクチュエータ866cを有することができる。連結
部分867cは1つ又は複数の結合部材を有することができる。
図6A及び6Bとは異な
り、第1のアクチュエータ860c及び収縮アクチュエータ866cはバルブ884cと
異なる。例えば、バルブ884cは、第1のアクチュエータ860c及び収縮アクチュエ
ータ866cに対して遠位に配置することができる。
【0175】
第1のアクチュエータ860cは第1の位置から第2の位置に動いて、バルブ884c
を閉鎖し、膨張ラインを通る流体流を制限することができる。第1のアクチュエータ86
0cを第1の位置から第2の位置に動かすと、収縮アクチュエータ866cが第1の位置
から第2の位置に動かされる。収縮アクチュエータを第2の位置から第1の位置に動かす
と、第1のアクチュエータ860cが第2の位置から第1の位置に動かされてバルブ88
4cを開放する。
【0176】
図6A-Dと同様に、
図6E及び6Fは、連結部分867dにより接続された第1のア
クチュエータ860d及び収縮アクチュエータ866dを有することができる。
図6A及
び6Bとは異なり、連結部分867dは1つの結合部材を有するのみである。さらに、図
6C及び6Dと同様に、第1のアクチュエータ860d及び収縮アクチュエータ866d
はバルブ884dと異なる。例えば、バルブ884dは、第1のアクチュエータ860d
及び収縮アクチュエータ866dに対して遠位に配置することができる。
【0177】
第1のアクチュエータ860dを第1の位置から第2の位置に動かして、バルブ884
dを閉鎖し、膨張ラインを通る流体流を制限することができる。第1のアクチュエータ8
60dを第1の位置から第2の位置に動かすと、収縮アクチュエータ866dが第1の位
置から第2の位置に動かされる。収縮アクチュエータを第2の位置から第1の位置に動か
すと、第1のアクチュエータ860dが第2の位置から第1の位置に動かされてバルブ8
84dを開放する。
【0178】
第1のアクチュエータ及び収縮アクチュエータを有する装置は、装置を作動させること
に関連する混乱を最小にするのに有用であり得る。例えば、装置が位置決め要素の膨張と
収縮との間に行われる工程を制御するために追加のアクチュエータを有する場合、追加の
アクチュエータはハンドルに沿って第1のアクチュエータと収縮アクチュエータとの間に
配置することができる。アクチュエータは各々のアクチュエータが制御する処理工程に基
づいて配置することができ、その結果ユーザーは各々の続く処理工程のために自身の手を
近位方向に動かすことができる。位置決め要素の収縮は装置を引き抜く前の最終の工程で
あるので、収縮アクチュエータは追加のアクチュエータの近位に配置することができる。
【0179】
上記したように、第1のアクチュエータ及びバルブは別個の構成部品であり得る。
図7
A-Bに示されているように、第1のアクチュエータ960は第1の位置と第2の位置と
の間で動いてバルブ961の位置を制御する。第1のアクチュエータ960を第1の位置
(
図7A)から第2の位置(
図7B)に動かすと、バルブ961が開放位置から閉鎖位置
に動く。閉鎖位置で、バルブ961は膨張ライン948を通る流体流を制限する。
図7A
-1及び7A-2は、開放構成から閉鎖構成に動く膨張ライン948の断面図を示す。第
1のアクチュエータ960を第2の位置から第1の位置に動かすと、バルブ961が閉鎖
位置から開放位置に動き、従って流体は膨張ライン948を通って流れることが可能にな
る。
【0180】
第1のアクチュエータ960はレバーであり得る。ピンが第1のアクチュエータ960
をバルブ961に接続する。バルブ961はピンチ機構を有するスライディングバルブで
あって、膨張ライン948を通る流体流を制限することができる。第1のアクチュエータ
960を第1の位置と第2の位置との間で動かすと、バルブ961が開放位置と閉鎖位置
との間を直線的にスライドする。
図7A-Bは第1のアクチュエータ960をレバーとし
て示しているが、装置はラックピニオン装置、カム機構、又は他の任意のアクチュエータ
のようなバルブ961を動かすことができる任意の他の機構を有することができる。
【0181】
装置810は、位置決めアセンブリ814に対するシース880の動きを制御するため
に第2のアクチュエータ862を有することができる。外側ハウジング872は開口を有
することができ、ここを通って第2のアクチュエータ862の少なくとも一部分が伸延す
る。
図8A及び8Bに示されているように、第2のアクチュエータ862はバネで作動す
るボタンであり得る。
【0182】
第2のアクチュエータ862aは第1の位置(
図8A)と第2の位置(
図8B)との間
を動く。第2のアクチュエータ862aが第1の位置にあるとき、第2のアクチュエータ
862aは位置決めアセンブリに対するシースの近位方向の動きを防止する。第2のアク
チュエータ862aが第2の位置にあるとき、シースは位置決めアセンブリに対して近位
方向に動くことができる。シースが近位方向に動くとき、外側ハウジング872aは第2
のアクチュエータ862aが第1の位置に動くのを防止する。
図8A及び8Bに示されて
いる第2のアクチュエータ862aはバネ機構868aを有しているが、本明細書に記載
されている他のいかなるロック機構も、位置決めアセンブリに対するシースの動きを制御
するのに使用することができる。
【0183】
図9A及び9Bに示されているように、第2のアクチュエータ862bは戻り止め86
9bを有することができる。第2のアクチュエータ862bが第1の位置(
図9A)にあ
るとき、シースは位置決めアセンブリに対して動くことができない。第2のアクチュエー
タ862bが第2の位置(
図9B)にあるとき、戻り止め869bは第2のアクチュエー
タ862bを押し下げられた位置にロックし、従ってシースが位置決めアセンブリに対し
て近位方向に動くのが可能になる。シースが近位方向に動くとき、外側ハウジング872
bは第2のアクチュエータ862bの上を動いて第2のアクチュエータ862bを押し下
げられたまま保つ。
【0184】
装置810はまた、シース880が位置決めアセンブリ814に対して動くことができ
る距離を制限するための機構も有することができる。例えば、
図8B及び8Bに示されて
いるように、シースは内側ハウジング874の遠位端が外側ハウジング872の遠位端又
はハンドル823内の異なる特徴に突き当たるまでのみ動くことができる。
【0185】
既に記載したように、ハンドル823は外側ハウジング872に対して内側ハウジング
874をロックするためのロック機構を有することができる。
図4A-4Fに示されてい
るように、ロック機構は外側ハウジング872の内側の壁に沿って配置された1つ又は複
数の突起863及び内側ハウジング874上に配置された1つ又は複数の弾性部材875
を有することができる。シース880が近位方向に動くとき、1つ又は複数の弾性部材8
75は内方に曲がり、1つ又は複数の突起863を越えて動く。1つ又は複数の弾性部材
875が1つ又は複数の突起863を越えて動いた後、内側ハウジング874は外側ハウ
ジング872に対して近位方向に動くことができない。
【0186】
図10A及び10Bで、ロック機構は外側ハウジング872の内側の壁に沿った少なく
とも2つの突起863及び内側ハウジング874の近位端に配置された少なくとも2つの
弾性部材875を有する。弾性部材875は内方に曲がることができ、1つ又は複数の突
起863を越えて遠位方向に動く。シース880が引き出されるとき、弾性部材875は
内方に曲がり、突起863を越えて動く。弾性部材875が突起を越えて動いた後、内側
ハウジング874は外側ハウジング872に対して近位方向に動くことができない。
【0187】
或いは、ロック機構は内側ハウジング874上に配置された1つ又は複数の突起863
及び外側ハウジング872の内側の壁に沿って配置された1つ又は複数の弾性部材を有す
ることができる。本明細書に記載されている他のロック機構も、内側ハウジング874を
外側ハウジング872に対してロックするのに使用することができる。
【0188】
装置810は位置決めアセンブリ814を内側ハウジング874から解放するための機
構を有することができる。位置決めアセンブリ814の解放によって位置決めアセンブリ
814は近位方向に動くことが可能になり、一方支持部材830の位置は維持される。或
いは、装置810は、内側ハウジングを外側ハウジングから解放するための機構を有する
ことができる。
【0189】
図11A~11Cは、外側のシース880を後退させる前に支持部材830が前進する
のを防止するメカニズムを示す。
図11Aに示されているように、ロック機構は第3のア
クチュエータ864の動きを防止するタブ873であり得る。しかし、シース880が近
位方向に動いた後(
図11B)、タブ873が近位方向に動いて第3のアクチュエータ8
64の第1の位置(
図11B)から第2の位置(
図11C)への動きを可能にする。本明
細書に記載されている他のロック機構も、支持部材830が前進するのを防止するために
使用することができる。
【0190】
図12A及び12Bは、支持部材830を前進させる1つのメカニズムを示す。第3の
アクチュエータ864が第1の位置から第2の位置へ動くと、連結要素865が伸びて支
持部材830を前進させる。支持部材830は、支持部材830の一部分が内側ハウジン
グ874又は外側ハウジング872の遠位端のようなハンドルの特徴に突き当たるまで伸
延することができる。支持部材830が前進することができる距離はまた、連結要素86
5が伸びることができる距離によっても限定され得る。
【0191】
図13A及び13Bは、バネ部材870を有する装置810を示す。第3のアクチュエ
ータ864を第1の位置から第2の位置に動かすと、バネ部材870が伸び、支持部材8
30を遠位方向に前進させる。支持部材830は、支持部材830の一部分が内側ハウジ
ング874又は外側ハウジング872の遠位端のようなハンドルの特徴に突き当たるまで
伸延することができる。支持部材830が前進することができる距離はまた、バネ部材8
70が伸びることができる距離によっても限定され得る。支持部材830を前進させるに
は、装置710又はあらゆる他のアクチュエータに関連して記載されているラックピニオ
ン装置のような他の機構を使用することができる。
【0192】
既に記載したように、装置810は内側ハウジング874に対する位置決めアセンブリ
814の位置をロックするための後退ロック816を有することができる。第3のアクチ
ュエータ864を第1の位置から第2の位置に動かすと、レバー817を第1の位置から
第2の位置に動かすことによって後退ロック816を解除することができる。レバー81
7が第2の位置にあるとき、位置決めアセンブリ814は外側ハウジング872に対して
動くことができる。位置決めアセンブリ814の第4のアクチュエータ848を後退させ
ると、位置決めアセンブリ814はシーリング材2を越えて後退させられる。支持部材8
30はシーリング材2の位置を保持することができるが、位置決めアセンブリ814は後
退する。位置決め要素814が後退した後、全体の装置810を患者から取り出すことが
できる。本明細書に記載されている他のロック機構も、内側ハウジング874に対する位
置決めアセンブリ814の位置をロックするために使用することができる。
【0193】
図15A-15Fは、
図4A-4Fに示されている方法と同様な、シーリング材を送達
する方法を概略的に示す。しかし、既に記載したように、ハンドル823は4つのアクチ
ュエータ860、862、864、及び848を有する必要はない。例えば、
図15A-
15Fに示されているように、ハンドルは第1のアクチュエータ860を有しない。代わ
りに、膨張ライン48cはバルブ882を有する。バルブ882は第1の位置と第2の位
置との間を動く。バルブ882が第1の位置にあるとき、
図15Aに示されているように
、流体はシリンジから位置決め部材846に流れることができる。バルブ882が第1の
位置から第2の位置に動いたとき、
図15Bに示されているように、流体はもはやシリン
ジから位置決め部材846に流れることができない。
【0194】
図16A-Bは、シーリング材を動脈切開部位に送達するための装置1010を示す。
装置1010は本明細書に記載されているシーリング材を送達する装置の特徴のいずれか
を有することができる。例えば、装置1010はハンドル1023及び位置決め要素10
46を有する位置決めアセンブリ1014を有することができる。位置決めアセンブリ1
014の少なくとも一部はシース1080を通って伸延することができる。膨張ライン4
8cが位置決め要素1046から、位置決め要素1046を膨張させ収縮させるためのシ
リンジ148又は他の任意の機構まで伸延することができる。膨張ライン48cは位置決
め要素1046への流体流を制御するための第1のアクチュエータ1082を有すること
ができる。ハンドル1023は、シース1080が位置決め要素1014に対して後退す
るのを可能にするための第2のアクチュエータ1062、支持部材(図示せず)を前進さ
せるための第3のアクチュエータ1064、及び/又は位置決めアセンブリ1014の少
なくとも一部分をシース1080に対して後退させるための第4のアクチュエータ104
8を有することができる。
【0195】
シース1080は、シースの遠位部分が血管に入ったときを示す機構を有することがで
きる。例えば、シース1080は、シース1080の遠位部分に1つ又は複数の入口開口
1089を有することができる。シース1080が血管に入ると、血液は開口1089内
へ流入し、ユーザーの外にある出口開口から流出することができる。
【0196】
図16Aに示されているように、シース1080はハンドル1023と係合するための
ハブ1083も有することができる。例えば、ハブ1083はハンドルの1つ又は複数の
フランジと係合するための1つ又は複数の開口を有することができ、又はその逆である。
シースハブ1083を押し下げると、シース1080を位置決めアセンブリ1014から
解放することができる。シースハブはシーリング材スリーブと係合するためのキャッチを
有することもできる(図示せず)。位置決めアセンブリ1014がシース1080に入る
と、シースキャッチがシーリング材スリーブと係合して、シーリング材をシーリング材ス
リーブからシース1080へ移すことができる。
【0197】
装置1010は膨張インジケーター1002も有することができる。膨張インジケータ
ー1002は、位置決め要素1046が所定の圧力まで膨張したときを示し、膨張ライン
48cをシールすることをユーザーに知らせる。
図16Bに示されているように、膨張ラ
インはプランジャーシステム1004に接続している。位置決め要素1046が膨張する
と、シャフト部材1005が第1の位置から第2の位置に動く。シャフト部材1005が
第2の位置に動くと、インジケーター1002は第1の位置から第2の位置に動く。イン
ジケーター1002が第2の位置にあるとき、位置決め要素1046は十分に膨張してい
る。位置決め要素1046がしぼむと、シャフト部材1005は第2の位置から第1の位
置に動き、インジケーター1002は第2の位置から第1の位置に動く。インジケーター
1002が第1の位置にあるとき、位置決め要素1046は十分に膨張していない。
【0198】
インジケーター1002は第1のインジケーター1003a及び第2のインジケーター
1003bを有することができる。位置決め要素1046が十分に膨張していないとき、
第1のインジケーター1003aがハンドル1023の開口1006を通して見ることが
できる。位置決め要素1046が十分に膨張しているとき、第2のインジケーター100
3bがハンドル1023の開口1006を通して見ることができる。
【0199】
本明細書に記載されているシーリング材を送達する装置はいずれも、限定されることは
ないが、ガイドワイヤ又は拡張器を始めとするシステムの構成要素であり得る。ガイドワ
イヤは、上記のガイドワイヤ799に関連して記載した特徴のいずれかを有することがで
きる。拡張器もまた、上に記載した拡張器790及び/又は以下に記載する拡張器119
0(
図17A-17D)又は拡張器1290(
図18A-18C)に関連して記載されて
いる特徴の1つ又は複数を有することができる。
【0200】
図17A-18Cに示されているように、拡張器は、拡張器の遠位の先端に近い入口開
口から拡張器の近位端に近い出口開口までの血液の流れを可能にする流体内腔を含有する
ことができる。シースの先端が血管に入ると血流が近位の口から出る。その後シースをさ
らに進めて、シースの遠位の先端が血管内腔内にあることを確実にすることができる。
【0201】
図17A-17Dに示されているように、拡張器1190は、内腔が貫通して伸延して
いる細長い構造体1191を有する。拡張器1190はまた、シースと係合するための拡
張器ハブ1196を有する近位部分1193及び/又は先細端部を有する遠位部分119
2も有することができる。
図17Aに示されているように、拡張器ハブ1196はU字形
であり得る。U字形拡張器ハブ1196はシースの近位端を受容するための開口を画定す
る。拡張器ハブ1196はまた、シースの外側表面と係合するように構成されたハブ部材
1197a、1197bを有することができる。また拡張器ハブ1196は、シースの対
応する特徴と係合する1つ又は複数のフランジも有することができる。例えば、
図17A
に示されているように、ハブ部材1197a、1197bはフランジ1198a、119
8bを有することができ、及び/又はハブ1196は拡張器ハブの上面近くにフランジ1
199a、1199bを有することができる。
【0202】
拡張器1190はまた、拡張器1190の遠位部分1192が血管に入ったときを決定
するのに役立つブリードバック特徴も有することができる。例えば、拡張器1190は、
拡張器1190の遠位部分1192に1つ又は複数の入口開口1194を有することがで
きる。
図17Aに示されているように、拡張器1190は2つの入口開口1194を有す
ることができる。入口開口1194は、細長い構造体1191の先細部分に対して近位に
、及び/又は拡張器1190の縦軸を横断する同じ平面に沿って位置することができる。
拡張器1190はまた、拡張器ハブ1196の近位に配置された1つ又は複数の出口開口
1195も有することができる。
図17Aに示されているように、拡張器1190は1つ
の出口開口1195を有することができる。出口開口1195は入口開口1194の1つ
と同じ平面に沿って位置することができる。拡張器ハブは、血流が出て行く方向を示すた
めの方向特徴1197を有することができる。
図17Cに示されているように、方向特徴
1197は、拡張器ハブ1196の上面に沿う矢印であり得る。
【0203】
細長い構造体1191を貫通して伸延する内腔は様々な直径を有することができる。例
えば、内腔は、細長い構造体1192の遠位部分1192及び近位部分1193に第1の
直径1189を、遠位部分1192と近位部分1193との間で第2の直径1188を有
することができる。第1の直径1189は第2の直径1188未満であり得る。第1の直
径1189は、ガイドワイヤの外径より大きく、第2の直径1188より小さい直径を有
することができる。幾つかの実施形態において、第1の直径1189は第2の直径118
8の少なくとも約半分及び/又は第2の直径1188の約3/4以下である。幾つかの実
施形態において、第1の直径1189は第2の直径1188の約2/3である。
【0204】
内腔の直径は変化することができるが、細長い構造体1191の外径は同じままである
。例えば、近位部分1193は近位部分1193と遠位部分1192との間の一部分と同
じ外径を有することができる。変化する直径により、拡張器1190の近位部分1193
及び遠位部分1192がガイドワイヤの周りにシールを形成することが可能になる。従っ
て、血液は入口開口1194を通って出口開口1195へ流れるのみである。
【0205】
図18A-Cは、拡張器1290が、貫通して伸延する内腔を有する細長い構造体12
91を有することを示す。拡張器1290はまた、シースと係合するための拡張器ハブ1
296を有する近位部分1293及び/又は先細端部を有する遠位部分1292を有する
こともできる。
図18Aに示されているように、拡張器ハブ1296はシースと係合する
ように構成されたハブ部材1297a、1297bを有することができる。例えば、シー
スはハブ部材1297a、1297bを受容するために対応する特徴を有することができ
る。また、ハブ部材1297a、1297bは1つ又は複数のフランジを有していてシー
スの対応する特徴と係合することができる。例えば、
図18Aに示されているように、ハ
ブ部材1297a、1297bは、外方に面するフランジ1298a、1298b及び/
又は内方に面するフランジ1299a、1299bを有することができる。フランジはハ
ブ部材1297a、1297bの近くに(例えば、フランジ1299a、1299b)及
び/又は遠位部分に(例えば、フランジ1298a、1298b)配置することができる
。
【0206】
拡張器1290はまた、拡張器1290の遠位部分1292が血管に入ったときを決定
するのに役立つブリードバック特徴も有することができる。例えば、拡張器1290は、
拡張器1290の遠位部分1292に1つ又は複数の入口開口1294を有することがで
きる。
図18Aに示されているように、拡張器1290は2つの入口開口1294を有す
ることができる。入口開口1294は細長い構造体1291の先細部分に対して近位に、
及び/又は拡張器1290の縦軸を横断する同じ平面に沿って位置することができる。拡
張器1290はまた1つ又は複数の出口開口1295も有することができる。
図18Aに
示されているように、拡張器1290は1つの出口開口1295を有することができる。
幾つかの実施形態において、出口開口1295は入口開口1294の1つと同じ平面に沿
って位置することができる。他の実施形態において、出口開口1295は入口開口129
4のいずれかと異なる平面に沿って位置することができる。例えば、出口開口1295は
入口開口1294を通る平面に垂直な平面に沿って位置することができる。
【0207】
細長い構造体1291を貫通して伸延する内腔は変化する直径を有することができる。
例えば、内腔は、細長い構造体1292の遠位部分1292及び近位部分1293で第1
の直径1289を、遠位部分1292と近位部分1293との間で第2の直径1288を
有することができる。第1の直径1289は第2の直径1288未満であり得る。第1の
直径1289はガイドワイヤの外径より大きく、第2の直径1288より小さい直径を有
することができる。幾つかの実施形態において、第1の直径1289は第2の直径128
8の少なくとも約半分及び/又は第2の直径1288の約3/4以下である。幾つかの実
施形態において、第1の直径1289は第2の直径1288の約2/3である。
【0208】
内腔の直径は変化することができるが、細長い構造体1291の外径は同じままである
。例えば、近位部分1293は近位部分1293と遠位部分1292との間の一部分と同
じ外径を有することができる。変化する直径により、拡張器1290の近位部分1293
及び遠位部分1292がガイドワイヤの周りにシールを形成することが可能になる。従っ
て、血液は入口開口1294を通って出口開口1295まで流れるのみである。
【0209】
上述の拡張器のいずれかにおいて、出口開口のいずれかの直径は入口開口のいずれかの
直径未満であり得る。例えば、出口開口のいずれかの直径は入口開口のいずれかの直径の
半分以下であり得る。
【0210】
図19A-19Eは、上述の位置決めアセンブリがどのようにシースと係合するかを示
す。
図19Aは、装置1310がシース1380を介して送達される前の装置1310を
示す。装置1310は上記のシーリング材を送達する装置の特徴のいずれも有することが
できる。位置決めアセンブリ1314はシース1380と係合することができ、ハンドル
1323の動きがシース1380も動かすこともできるようにする。例えば、ハンドル1
323は、シース1380のハブ1383と係合するように構成されたシュラウド部分1
376を有することができる。
図19Aに示されているように、シュラウド1376は2
つの歯1378を有することができ、各々の歯1378は歯1378の遠位部分に配置さ
れたあご1379を有することができる。ハブ1383は開口1385を有していて歯1
378を受容することができる。スナップ嵌め、締まり嵌め、又はネジ機構のような歯の
ない他の締結機構も、装置1310をシース1380と連結するのに使用することができ
る。
【0211】
上記したように、シーリング材1302は最初、位置決めアセンブリ1314の遠位部
分に配置される(
図19A)。位置決めアセンブリ1314がシース1380に入る前は
、シーリング材1302が環境に曝露されるのを防止するためにシーリング材スリーブ1
350がシーリング材1302を覆っている。シーリング材スリーブ1350は上記のシ
ーリング材スリーブ450の特徴のいずれも有することができる。位置決めアセンブリ1
314がシース1380に入ると、シーリング材1302はシーリング材スリーブ135
0からシース1380に移される(
図19B)。シースハブ1383及び/又はシュラウ
ド1376はシーリング材スリーブ1350を保持する。シースハブ1383及び/又は
シュラウド1375は、シース1380が後退するときでもシーリング材スリーブ135
0を保持するか(
図19C)又はシーリング材1302は支持部材1330を用いて突き
固められる(
図19D)。
【0212】
幾つかの実施形態において、
図20に示されているように、歯はシースハブ1483の
外部部分と係合する。例えば、ハブ1483は、あご1478と係合するように構成され
た溝1486を有することができる。シースハブ1483はまた、シーリング材スリーブ
1450の外径より小さい内径を有することができ、シーリング材はシーリング材スリー
ブ1450からシース1480に容易に移される。
【0213】
図21A-21Iは、本明細書に記載されているシーリング材を送達する装置及び拡張
器のいずれかを有するシステムを使用する方法を説明する。この方法は以下に記載する工
程の1つ又は複数を含むことができる。処置シース(図示せず)は血管壁1506の穿刺
1504を通して挿入して血管内腔へのアクセスを確保することができる。ガイドワイヤ
1502が処置シースを通って血管中に伸延した後、処置シースは組織管から除去するこ
とができ、ガイドワイヤ1502が適切な位置に残され、ガイドワイヤ1502の遠位先
端は血管内腔内に配置される。次に、閉鎖系シース1510を通して拡張器1508を前
進させることができ、拡張器-シースアセンブリをガイドワイヤ1502に沿って前進さ
せることができる(
図21A)。本明細書に記載されている機構のいずれかを用いて、拡
張器-シースアセンブリが血管内腔に入ったときを決定することができる(例えば、拡張
器及び/又はシース上のブリードバックポート)。
【0214】
シース1510の遠位端が血管内腔内に伸延した後、拡張器1508及びガイドワイヤ
1502を近位方向に後退させて取り除き、シース1510の遠位端を血管内腔内に残す
ことができる(
図21B)。その後、位置決めアセンブリ1512をシース1510の近
位端内に導入し、シース1510を通して遠位方向に前進させることができる(
図21C
-E)。本明細書に記載されているように、位置決めアセンブリ1512は、シース15
10に入る前位置決めアセンブリ1512の遠位部分に配置されたシーリング材1516
を有することができる。位置決め要素1514がシース1510の遠位端から血管内腔内
に伸延した後、位置決め要素1514を血管内腔内で膨張させることができる(
図21F
)。
【0215】
次いで、位置決めアセンブリ1512を引き出し、位置決め要素1514を血管穿刺1
504に対して、そしてシーリング材1516及びシース1510を血管壁1506の外
側に固定することができる(
図21G)。その後、シース1510を部分的に後退させ、
シーリング材1516を曝露することができる(
図21H)。次に、支持部材1518を
前進させてシーリング材1516を血管壁1506に対して突き固めることができる(図
21I)。その後、位置決め要素1514の断面を減らし(例えば空気を抜く)、シーリ
ング材1516を通って近位方向に後退させてもよい。支持部材1518を位置決め要素
1514の近位方向の後退中シーリング材に対抗する位置に残してシーリング材の位置を
維持してもよい。位置決め要素1514の除去後、支持部材1518及びシース1510
がまだ組織管内に存在しているならば患者から取り出して血管壁1506に隣接して配置
されたシーリング材1516を残すことができる。
【0216】
本発明の1つの実施において、位置決め要素1514は、細長いバルーンカテーテルシ
ャフトの遠位領域に支えられた膨張性バルーンである。バルーンカテーテルシャフトは、
シャフトの近位端に連結し得る膨張媒体源と膨張性バルーンを流体連通させるために貫通
して伸延する中央の内腔を有する細長い管状ボディーを含む。中央のコアワイヤは中央の
内腔の少なくとも一部分を貫通し、バルーンを貫通して伸延して、バルーンの遠位端を支
持する。コアワイヤは、遠位方向にバルーンを越えて少なくとも約2mm~10cm、好
ましくは少なくとも約3cm~5cmの長さだけ伸延して可撓性の前進セグメントを提供
し得る。
【0217】
中央内腔の内径はコアワイヤの外径より大きくて、膨張内腔を提供し、バルーンの膨張
を可能にする。
【0218】
シーリング材1516は中央の内腔を備えているのが好ましく、結果として、膨張性バ
ルーンより近位の、バルーンカテーテルシャフトの遠位端に予め装着することができる。
シーリング材1516は、貫通して伸延する中央の内腔を有する円筒状のプラグとして形
成され得る。或いは、シーリング材1516は、1、2、3、4、又はそれ以上の層とし
てカテーテルシャフトの周りに巻き付けることができるシート又は膜の形態で提供され得
る。
【0219】
例えば
図21F及び21Gを参照すると、シーリング材は、遠位のカテーテルシャフト
上に、膨張したバルーンの近位表面から短い距離離れて予め配置される。この距離は、図
21Gに図示されているように、血管の予想される壁厚と協働するような寸法になってい
てもよく、その結果膨張したバルーンは血管の内壁に抗して配置され得、シーリング材は
血管の外壁に隣接する穿刺の直ぐ外側に配置されることになる。シーリング材の遠位端と
バルーンの近位表面との間で軸方向に測定されるこの距離は通例約4mm以下であり、幾
つかの実施形態においては約3mm又は2mm以下である。
【0220】
この構成を使用して、シーリング材は、製造の時点で、又は、いずれにしても患者への
バルーンカテーテルの導入前臨床部位でバルーンカテーテルシャフト上に前もって配置さ
れてもよい。バルーンカテーテル及びシーリング材は、その後シース1510により、患
者の外側から、シース1510の近位端内へ単一のユニットとして案内され、シース15
10により血管壁に案内される。その後、バルーンを血管内で膨張させ得、システムを、
バルーンカテーテルとシーリング材との間の内部の相対的な動きなしに、
図21Fに示さ
れている遠位位置から、
図21Gの近位の固定された位置へと、ユニットとして近位方向
に引き出し得る。その後外側のスリーブの近位方向への後退はシーリング材を曝露する。
【実施例0221】
実施例1
キトサン塩(塩化物塩、Protasan UP CL 214、FMC BioPo
lymer製、分子量150-400kDa、脱アセチル化度>90%)を、適当な緩衝
液(それぞれリン酸塩及びホウ酸塩緩衝液、)中のPEG-エステル(4-アーム-10
K-CM-HBA-NHS、MW10kDa)及びPEG-アミン(8-アーム-20K
-PEG-NH
3
+Cl
-、MW20kDa)前駆体と混合し、反応させてヒドロゲルを
形成し、これを続いて約-37℃で冷凍し、その後約20時間にわたり徐々に凍結乾燥さ
せた。次いで、凍結乾燥ヒドロゲルを様々な湿度及び温度の工程に通して状態調節して、
長方形の形状(約6mm×約15mm)にスライスすることができる構造上の完全性を有
する凍結乾燥ヒドロゲルを得た。下記表1に、キトサンを適当な緩衝液中のPEG-エス
テル及びPEG-アミン前駆体とブレンドすることにより合成されたヒドロゲル(サンプ
ル1~10)の殺菌前の厚さ及び血液膨潤データを、キトサンを含有せず、やはり殺菌前
に試験された対照サンプル(PEGのみのヒドロゲル)(サンプル11~12)と比較し
てまとめて示す。この実施例でPEG-エステル対PEG-アミンのモル当量比は多様で
あり、約1~約1.5の範囲で試験された。キトサンはこの実施例で0~約6.9重量%
で変化させた。血液膨潤試験は、凍結乾燥ヒドロゲル(殺菌前)をウシ血液に約37℃で
約45秒間漬け、血液に漬ける前後の重量の差を測定することにより膨潤のパーセンテー
ジを測定することによって行った。
【表1】
【0222】
ウシ血液膨潤の結果が上記表1に示されている。PEG前駆体のみ(キトサンを含まな
い)から作製されたサンプル11~12は、血液と接触した際の実質的な膨潤能力を実証
している。このPEGのみのヒドロゲルの膨潤能力は、部分的に架橋されたPEGヒドロ
ゲルが凍結乾燥の際に創り出すことができる気孔特性(気孔の大きさ及び数)によるもの
と考えられる。表1のデータは、キトサンをPEG前駆体と共有結合することにより作製
された殺菌前の凍結乾燥されたPEG/キトサンコポリマーシーリング材(サンプル1~
10)が、含まれるキトサンの量に関係なく(試験した割合の場合)、PEGのみのヒド
ロゲルの膨潤能力に匹敵する膨潤能力を示すことができるか、又はPEGのみのヒドロゲ
ルの膨潤能力を超えることさえできることを実証している。
【0223】
実施例2
キトサン塩(ナトリウム塩、Xianju Tengwang製)を、適当な緩衝液(
それぞれ、リン酸及びホウ酸緩衝剤)中のPEG-エステル(4-アーム-10K-CM
-HBA-NHS)及びPEG-アミン(8-アーム-20K-PEG-NH3+Cl-
)前駆体と混合し、ゲルが形成されるまで反応させた。得られたヒドロゲルを約-37℃
で冷凍し、次いで約20時間にわたり徐々に凍結乾燥させた。その後、凍結乾燥ヒドロゲ
ルを様々な湿度及び温度工程に通して状態調節して、操作する(例えば、スライスする、
ロール状に巻く、及び送達カテーテル(例えば、MYNXGRIP(登録商標)カテーテ
ル)の遠位端上に装填する)ことを可能にする構造上の完全性を有する凍結乾燥ヒドロゲ
ルを得た。下記表2に、使用した量、並びにキトサンを適当な緩衝液中のPEG-エステ
ル及びPEG-アミン前駆体とブレンドすることにより合成された最終のヒドロゲルの厚
さ及び膨潤データを要約して示す。下記表は、キトサンをPEG前駆体と共有結合させる
ことにより合成される凍結乾燥ヒドロゲルがウシ血液と接触した際に実質的に膨潤するこ
とができること、及び膨潤パーセントが対照サンプルに匹敵することを示している。
【表2】
【0224】
実施例3
キトサン塩(塩化物塩、Protasan UP CL 213、FMC BioPo
lymer製、分子量150-400kDa、脱アセチル化度75-90%)を、適当な
緩衝液(それぞれ、リン酸及びホウ酸緩衝液)中のPEG-エステル(4-アーム-10
K-CM-HBA-NHS、MW10kDa)及びPEG-アミン(8-アーム-20K
-PEG-NH3
+Cl-、MW20kDa)前駆体と下記表3に示す量で混合し、反応
させてヒドロゲルを形成し、続いてこれを約-37℃で冷凍し、その後約20時間にわた
り徐々に凍結乾燥した。この実施例におけるPEG-エステル対PEG-アミンのモル当
量比は約1である。この実施例においてキトサンは0~約5.5重量%で変化させた。次
いで、凍結乾燥ヒドロゲルを様々な湿度及び温度工程に通して状態調節して、スライスし
(約6mm×約15mmの長方形)円筒状の形状に巻くことができるような構造上の完全
性を有する凍結乾燥ヒドロゲルを得た。未反応のPEG-エステル及びPEG-アミン成
分(キトサンを持たないヒドロゲルシーリング材の凍結乾燥部分に使用したのと同じPE
G成分)を融解することにより一緒に混合し(モル当量比1対1)、凍結乾燥されたシー
リング材の遠位端に塗布した。遠位端に未反応のPEG成分を有するロール状に巻いた凍
結乾燥ヒドロゲルを、次に、送達カテーテル(すなわち、6フレンチの血管外送達カテー
テル、MYNXGRIP(登録商標)カテーテル)の遠位端に装填した。
【0225】
次に、送達カテーテルをe-ビームによる殺菌処理に付した。殺菌後ヒドロゲルを、血
管外送達系の実用時をシミュレートした技術を用いてカテーテルデバイスから排出させて
、ウシ血液中の血液膨潤性能を評価した。試験したサンプルは、キトサンを含有しない対
照サンプル(PEGのみのヒドロゲル)(製剤3-1)と比較したキトサン+PEG-エ
ステル及びPEG-アミン前駆体(製剤3-2~3-6)であった。血液膨潤試験は、凍
結乾燥ヒドロゲル(殺菌後)をウシ血液中に約37℃で約45秒間浸漬し、血液に漬ける
前後の重量の差を測定することで膨潤のパーセンテージを測定することによって行った(
例えば、膨潤%=(((ヒドロゲルの膨潤重量-過剰の流体重量)-初期ヒドロゲル重量
)/初期ヒドロゲル重量)×100%、ここで過剰の流体重量は、ヒドロゲル構造体内に
組み込まれていない血液と考えられる)。血液膨潤試験の結果を下記表3に示す。
【表3】
【0226】
上記表3の製剤3-1(対照)は血液と接触した際の膨潤する実質的な能力を実証した
。製剤3-3~3-5のデータは、6Fr血管外送達カテーテルに装填された後に排出さ
れた殺菌後の凍結乾燥PEG/キトサンコポリマーシーリング材が、PEGのみのヒドロ
ゲルの膨潤能力に匹敵する膨潤能力を示すことができるということを実証した。製剤No
.3-6の膨潤能力は対照サンプルと比較してそれより低かったが、この値(血液中に約
750%膨潤する)も対照(製剤No.3-1)に匹敵する膨潤を有すると考えられる。
【0227】
実施例4
PEG-エステル対PEG-アミンのモル当量比を1.1とした以外は実施例3と同様
にして凍結乾燥されたPEG/キトサンヒドロゲルを作製した。ヒドロゲルをロール状に
巻き、前の通りに送達カテーテル(例えば、6Fr血管外送達カテーテル、MYNXGR
IP(登録商標)カテーテル)の遠位端に装填し、全てのカテーテルをe-ビームで殺菌
した。キトサンは0~約5.5重量%で変化させた。血液膨潤試験を実施例3と同様にし
て行った。製剤4-1はPEG前駆体のみ(キトサンを含まない)から作製した対照サン
プルであり、製剤4-2~4-6は下記表4に示されている様々な量のPEG/キトサン
で作製した。血液膨潤試験の結果を下記表4に示す。
【表4】
【0228】
製剤4-1(対照)は、殺菌後6Fr血管外送達カテーテルに装填されたとき血液と接
触した際膨潤する実質的な能力を実証した。製剤4-3、4-5及び4-6の評価におい
て、これらのサンプルは、6Fr血管外送達カテーテルに装填された、殺菌後凍結乾燥さ
れたPEG/キトサンコポリマーシーリング材が、PEGのみのヒドロゲルに匹敵すると
考えられる膨潤能力を示すことができるということを実証した。
【0229】
実施例5
PEG/キトサンコポリマーヒドロゲル(実施例3の製剤3-2~3-6)の血液凝固
能力を、殺菌前のPEGのみのヒドロゲル(対照、実施例3の製剤3-1)の血液凝固能
力と比較した。血液凝固試験を行う前に、凍結乾燥ヒドロゲルを直径約8mmの円盤に切
断することによってサンプルを調製した。血液凝固試験を行う際、凍結乾燥した円盤状の
サンプルをウシ全血(酸性クエン酸ブドウ糖-ACDで抗凝固処理済)及びCaCl
2で
処理し、インキュベーション期間の一部として約37℃のオーブンに約10分間入れた。
インキュベーション期間の後、血餅に取り込まれなかった赤血球をDI水に溶血し、得ら
れたヘモグロビン溶液のUV吸光度を約540nmの波長で測定した。ヘモグロビン溶液
のより高い吸光度値はより遅い凝固速度を示し、より低い吸光度値はより速い凝固速度を
示す。下記表5に、PEG/キトサンコポリマーで作製したヒドロゲル(製剤3-2~3
-6)と比較してPEGのみ(製剤3-1、対照)で作製されたヒドロゲルの血液凝固試
験の結果を要約して示す。
【表5】
【0230】
表の結果から、PEG/キトサンコポリマーを含む製剤3-2~3-6では、PEG/
キトサンサンプルのより低いUV吸光度により示されているように、PEGのみを含むヒ
ドロゲルと比較してより速い凝固速度が得られることが分かる。試験したPEG/キトサ
ンコポリマーは全て、含まれるキトサンの量と無関係に、PEGのみの対照サンプルと比
較して血液凝固能力の実質的な改善を示している。
【0231】
実施例6
実施例5と同様に、殺菌前のPEG/キトサンコポリマーヒドロゲル(実施例4の製剤
4-2~4-6、殺菌前)の血液凝固能力を、上記実施例5に説明した血液凝固試験を用
いて、殺菌前のPEGのみのヒドロゲル(対照、実施例4の製剤4-1、殺菌前)と比較
した。血液凝固試験の試験パラメーターは実施例5と同じに保った。下記表6に、PEG
のみから製造されたヒドロゲル(製剤4-1、対照)のブロット凝血試験の結果を、PE
G/キトサンコポリマーで製造されたヒドロゲル(製剤4-2~4-6)と比較して要約
して示す。
【表6】
【0232】
表6は、PEG/キトサンコポリマーを含むヒドロゲル(製剤4-2~4-6)では、
より低いUV吸光度値のために、PEGのみを含むヒドロゲル(製剤4-1、対照)と比
較して、より速い凝固速度が得られることを示している。試験したPEG/キトサンコポ
リマーは全て、PEGのみと比較したとき、含まれるキトサンの量と無関係に、血液凝固
能力の実質的な改善を示している。
【0233】
実施例7
実施例5と同様に、殺菌前のヒドロゲル円盤(直径約8mm)の血液凝固能力に対する
厚さの影響を評価するために、様々な厚さのPEGのみのヒドロゲル(キトサンを含まな
い)の血液凝固能力を試験した。血液凝固試験の試験パラメーターは実施例5と同じに保
った。下記表7に、表に示されている様々な厚さのPEGのみで製造されたヒドロゲル(
対照)のブロット凝血試験の結果を要約して示す。
【表7】
【0234】
表7は、予期した通り、PEGのみのヒドロゲルの血液凝固能力がある点までは厚さの
増大と共に増大し、その後血液凝固能力は低下し始め、より厚いサンプル片により影響を
受けないことを示している。しかしながら、ヒドロゲル円盤(キトサンなし)の血液凝固
能力に対する厚さの影響は、これらのヒドロゲルシーリング材へのキトサンの配合ほど顕
著ではない。PEGのみのヒドロゲルと比較したPEG/キトサンヒドロゲルの同様な厚
さのヒドロゲル(例えば表5及び6のそれぞれ製剤3-4及び4-5と比較した上記表7
の製剤7-5、これらはいずれも約1.4mmの厚さである)の血液凝固試験データは、
キトサンを含有する製剤で実質的により速い凝固速度が得られることを示している。
【0235】
実施例8
実施例3で作製されたようなPEG/キトサンコポリマーシーリング材を含むヒドロゲ
ルプロトタイプ、製剤3-3を、6フレンチ送達システム(すなわち、MYNXGRIP
(登録商標)血管閉鎖デバイス)に装填し、ヒツジモデルで試験した。PEG/キトサン
シーリング材は6Fr送達デバイスに嵌合する、すなわち、装填されるのに十分な小さい
大きさであった。この研究ではPEG/キトサンコポリマーシーリング材を用いて7つの
大腿部アクセス部位をシールして、小口径サイズ~大口径サイズの大きさの範囲の大腿部
穿刺でのその性能を評価した。同時の抗凝血を含めて標準的なカテーテル挿入技術に従っ
た。利用した処置シースは7Fr、8.5Fr、9Fr、及び10Frから大腿部動脈穿
刺を創り出すような大きさであった。PEG/キトサンシーリング材を装填された6Fr
送達システムを各々7つの穿刺の1つに配置した。6Fr送達システムを用いたPEG/
キトサンシーリング材(製剤3-3)の配置は全て臨床的に成功し、例えば、PEG/キ
トサンは穿刺をシールした。これらの結果は、6Fr-適合性PEG/キトサンシーリン
グ材を用いて動脈の閉鎖(10Frシースから穿刺の大きさまで)が実現可能であること
を実証している。小口径デバイス、すなわち、穿刺の大きさより小さい大きさのデバイス
で大口径穿刺を閉鎖することができることを示すために、6フレンチ送達デバイスを利用
した。しかしながら、6Frより大きいサイズの送達デバイスも使用し得る、特に穿刺の
大きさと同様な大きさの送達デバイスも当然使用し得る。
【0236】
上に開示された実施形態の特定の特徴及び側面の様々な組合せ又はサブコンビネーショ
ンも考えられ、それらも本発明の1つ又は複数の実施形態内に入るものと考えられる。さ
らに、ある実施形態に関連した任意の特定の特徴、側面、方法、性質、特性、品質、属性
、要素、などの本明細書の開示は本明細書に記載の他の全ての実施形態で使用することが
できる。従って、開示された実施形態の様々な特徴及び側面は、開示された実施形態の様
々な態様を形成するために互いに組み合わせたり置き換えたりすることができるものと理
解されたい。従って、本明細書に開示された本発明の実施形態の範囲は上記の開示された
特定の実施形態によって制限されるものではないと意図されている。また、本明細書に開
示されているシーリング材、装置及び/又は方法は様々な修正、及び代替形態が可能であ
り、その具体的な実施例は図面に示されており、本明細書に詳細に記載されている。しか
しながら、シーリング材、デバイス及び方法は開示されている特定の形態又は方法に限定
されることはなく、逆に記載されている様々な実施形態及び添付の特許請求の範囲の思想
及び範囲内に入る全ての修正、等価物、及び代替物をカバーすることができるものと理解
されたい。本明細書に開示されているいかなる方法もその記載されている順に実行する必
要はない。本明細書に開示されている方法は実行者がとる一定の行為を含むが、また明示
又は暗示による行為の第三者の指示も含むことができる。例えば、「血管シーリング材を
挿入して血管穿刺をシールする」といったような行為は、「血管穿刺をシールするために
血管シーリング材の挿入を指示する」ことを含む。
【0237】
本明細書に開示されている範囲はいずれか及びあらゆる重複、サブ範囲、及びこれらの
組合せも包含する。「まで」、「少なくとも」、「より大きい」、「未満」、「の間」な
どのような言葉は表示されている数を含む。「約」又は「およそ」のような用語に先行さ
れている数は表示されている数を含む。例えば、「約10ナノメートル」は「10ナノメ
ートル」を含む。
キトサンが、遊離のキトサン、キトサン塩化物、キトサングルタミン酸塩、キトサン酢酸塩、キトサンジカルボン酸塩、キトサンアジピン酸塩、キトサンコハク酸塩、キトサンフマル酸塩、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載の装置。