(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134614
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】細胞傷害誘導治療剤
(51)【国際特許分類】
C07K 16/46 20060101AFI20230920BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230920BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230920BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20230920BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20230920BHJP
【FI】
C07K16/46 ZNA
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K39/395 E
A61K39/395 T
A61P35/00
C07K16/28
C12N15/13
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023114123
(22)【出願日】2023-07-12
(62)【分割の表示】P 2020536283の分割
【原出願日】2018-12-28
(31)【優先権主張番号】P 2017254279
(32)【優先日】2017-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003311
【氏名又は名称】中外製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(72)【発明者】
【氏名】上川路 翔悟
(72)【発明者】
【氏名】木下 恭子
(72)【発明者】
【氏名】石井 慎也
(57)【要約】 (修正有)
【課題】DLL3を発現する細胞に対する強い細胞傷害を示し、DLL3と関連する様々ながんを処置または予防するための分子/抗体を含む新規医薬組成物を提供する。
【解決手段】DLL3の特定の領域内のエピトープに結合する第1の抗原可変領域を含む第1のドメインと、T細胞受容体複合体に結合する第2の抗原可変領域を含む第2のドメインとを含む、優れたT細胞依存性細胞傷害(TDCC)を示す新規な多重特異性抗原結合分子及びこれらを含む医薬組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記のドメイン:
(1)ヒトDLL3に結合する第1の抗原結合ドメインを含む第1のドメイン、および
(2)T細胞受容体複合体に結合する第2の抗原結合ドメインを含む第2のドメイン
を含み、
(1)の第1の抗原結合ドメインが、ヒトDLL3中の配列番号7に定義される領域内の
エピトープに結合する、多重特異性抗原結合分子。
【請求項2】
下記のドメイン:
(1)ヒトDLL3に結合する第1の抗原結合ドメインを含む第1のドメイン、および
(2)T細胞受容体複合体に結合する第2の抗原結合ドメインを含む第2のドメイン
を含み、
(1)の第1の抗原結合ドメインが、以下の(a1)~(a12):
(a1)配列番号27のHVR-H1配列、配列番号28のHVR-H2配列、配列番号
29のHVR-H3配列、配列番号30のHVR-L1配列、配列番号31のHVR-L
2配列、および配列番号32のHVR-L3配列を含む抗体可変断片;
(a2)配列番号33のHVR-H1配列、配列番号34のHVR-H2配列、配列番号
35のHVR-H3配列、配列番号36のHVR-L1配列、配列番号37のHVR-L
2配列、および配列番号38のHVR-L3配列を含む抗体可変断片;
(a3)配列番号39のHVR-H1配列、配列番号40のHVR-H2配列、配列番号
41のHVR-H3配列、配列番号42のHVR-L1配列、配列番号43のHVR-L
2配列、および配列番号44のHVR-L3配列を含む抗体可変断片;
(a4)配列番号45のHVR-H1配列、配列番号46のHVR-H2配列、配列番号
47のHVR-H3配列、配列番号48のHVR-L1配列、配列番号49のHVR-L
2配列、および配列番号50のHVR-L3配列を含む抗体可変断片;
(a5)配列番号51のHVR-H1配列、配列番号52のHVR-H2配列、配列番号
53のHVR-H3配列、配列番号54のHVR-L1配列、配列番号55のHVR-L
2配列、および配列番号56のHVR-L3配列を含む抗体可変断片;
(a6)配列番号27のHVR-H1配列、配列番号75のHVR-H2配列、配列番号
29のHVR-H3配列、配列番号30のHVR-L1配列、配列番号31のHVR-L
2配列、および配列番号32のHVR-L3配列を含む抗体可変断片;
(a7)配列番号27のHVR-H1配列、配列番号76のHVR-H2配列、配列番号
29のHVR-H3配列、配列番号30のHVR-L1配列、配列番号31のHVR-L
2配列、および配列番号32のHVR-L3配列を含む抗体可変断片;
(a8)配列番号77のHVR-H1配列、配列番号78のHVR-H2配列、配列番号
79のHVR-H3配列、配列番号36のHVR-L1配列、配列番号37のHVR-L
2配列、および配列番号38のHVR-L3配列を含む抗体可変断片;
(a9)配列番号77のHVR-H1配列、配列番号78のHVR-H2配列、配列番号
80のHVR-H3配列、配列番号36のHVR-L1配列、配列番号37のHVR-L
2配列、および配列番号38のHVR-L3配列を含む抗体可変断片;
(a10)配列番号77のHVR-H1配列、配列番号78のHVR-H2配列、配列番
号80のHVR-H3配列、配列番号36のHVR-L1配列、配列番号37のHVR-
L2配列、および配列番号81のHVR-L3配列を含む抗体可変断片;
(a11)(a1)~(a10)から選択される抗体可変断片のいずれかの同じエピトー
プに結合する抗体可変断片;
(a12)(a1)~(a10)から選択される抗体可変断片のいずれかの結合と競合す
る抗体可変断片
のいずれか1つを含む、多重特異性抗原結合分子。
【請求項3】
下記のドメイン:
(1)ヒトDLL3に結合する第1の抗原結合ドメインを含む第1のドメイン、および
(2)T細胞受容体複合体に結合する第2の抗原結合ドメインを含む第2のドメイン
を含み、
(1)の第1の抗原結合ドメインが、以下の(b1)~(b21):
(b1)配列番号15に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H1
配列、配列番号15に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2配
列、配列番号15に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配列
、配列番号16に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列、
配列番号16に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、お
よび配列番号16に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配列
を含む抗体可変断片;
(b2)配列番号25に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H1
配列、配列番号25に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2配
列、配列番号25に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配列
、配列番号26に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列、
配列番号26に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、お
よび配列番号26に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配列
を含む抗体可変断片;
(b3)配列番号19に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H1
配列、配列番号19に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2配
列、配列番号19に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配列
、配列番号20に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列、
配列番号20に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、お
よび配列番号20に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配列
を含む抗体可変断片;
(b4)配列番号23に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H1
配列、配列番号23に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2配
列、配列番号23に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配列
、配列番号24に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列、
配列番号24に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、お
よび配列番号24に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配列
を含む抗体可変断片;
(b5)配列番号11に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H1
配列、配列番号11に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2配
列、配列番号11に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配列
、配列番号12に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列、
配列番号12に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、お
よび配列番号12に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配列
を含む抗体可変断片;
(b6)配列番号13に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H1
配列、配列番号13に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2配
列、配列番号13に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配列
、配列番号14に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列、
配列番号14に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、お
よび配列番号14に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配列
を含む抗体可変断片;
(b7)配列番号17に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H1
配列、配列番号17に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2配
列、配列番号17に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配列
、配列番号18に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列、
配列番号18に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、お
よび配列番号18に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配列
を含む抗体可変断片;
(b8)配列番号21に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H1
配列、配列番号21に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2配
列、配列番号21に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配列
、配列番号22に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列、
配列番号22に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、お
よび配列番号22に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配列
を含む抗体可変断片;
(b9)配列番号85に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H1
配列、配列番号85に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2配
列、配列番号85に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配列
、配列番号93に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列、
配列番号93に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、お
よび配列番号93に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配列
を含む抗体可変断片;
(b10)配列番号63に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H
1配列、配列番号63に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2
配列、配列番号63に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配
列、配列番号72に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列
、配列番号72に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、
および配列番号72に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配
列を含む抗体可変断片;
(b11)配列番号64に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H
1配列、配列番号64に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2
配列、配列番号64に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配
列、配列番号72に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列
、配列番号72に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、
および配列番号72に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配
列を含む抗体可変断片;
(b12)配列番号65に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H
1配列、配列番号65に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2
配列、配列番号65に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配
列、配列番号72に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列
、配列番号72に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、
および配列番号72に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配
列を含む抗体可変断片;
(b13)配列番号66に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H
1配列、配列番号66に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2
配列、配列番号66に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配
列、配列番号73に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列
、配列番号73に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、
および配列番号73に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配
列を含む抗体可変断片;
(b14)配列番号67に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H
1配列、配列番号67に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2
配列、配列番号67に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配
列、配列番号73に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列
、配列番号73に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、
および配列番号73に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配
列を含む抗体可変断片;
(b15)配列番号67に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H
1配列、配列番号67に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2
配列、配列番号67に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配
列、配列番号74に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列
、配列番号74に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、
および配列番号74に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配
列を含む抗体可変断片;
(b16)配列番号68に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H
1配列、配列番号68に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2
配列、配列番号68に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配
列、配列番号73に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列
、配列番号73に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、
および配列番号73に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配
列を含む抗体可変断片;
(b17)配列番号69に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H
1配列、配列番号69に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2
配列、配列番号69に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配
列、配列番号73に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列
、配列番号73に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、
および配列番号73に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配
列を含む抗体可変断片;
(b18)配列番号70に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H
1配列、配列番号70に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2
配列、配列番号70に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配
列、配列番号73に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列
、配列番号73に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、
および配列番号73に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配
列を含む抗体可変断片;
(b19)配列番号71に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H
1配列、配列番号71に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2
配列、配列番号71に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配
列、配列番号73に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列
、配列番号73に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、
および配列番号73に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配
列を含む抗体可変断片;
(b20)(b1)~(b19)から選択される抗体可変断片のいずれか1つの同じエピ
トープに結合する抗体可変断片;
(b21)(b1)~(b19)から選択される抗体可変断片のいずれか1つの結合と競
合する抗体可変断片
のいずれか1つを含む、多重特異性抗原結合分子。
【請求項4】
下記のドメイン:
(1)ヒトDLL3に結合する第1の抗原結合ドメインを含む第1のドメイン、および
(2)T細胞受容体複合体に結合する第2の抗原結合ドメインを含む第2のドメイン
を含み、
(1)の第1の抗原結合ドメインが、以下の(c1)~(c22):
(c1)配列番号15のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号16のアミノ酸
配列を有する軽鎖可変領域;
(c2)配列番号25のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号26のアミノ酸
配列を有する軽鎖可変領域;
(c3)配列番号19のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号20のアミノ酸
配列を有する軽鎖可変領域;
(c4)配列番号23のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号24のアミノ酸
配列を有する軽鎖可変領域;
(c5)配列番号11のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号12のアミノ酸
配列を有する軽鎖可変領域;
(c6)配列番号13のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号14のアミノ酸
配列を有する軽鎖可変領域;
(c7)配列番号17のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号18のアミノ酸
配列を有する軽鎖可変領域;
(c8)配列番号21のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号22のアミノ酸
配列を有する軽鎖可変領域;
(c9)配列番号85のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号93のアミノ酸
配列を有する軽鎖可変領域;
(c10)配列番号63のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号72のアミノ
酸配列を有する軽鎖可変領域;
(c11)配列番号64のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号72のアミノ
酸配列を有する軽鎖可変領域;
(c12)配列番号65のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号72のアミノ
酸配列を有する軽鎖可変領域;
(c13)配列番号66のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号73のアミノ
酸配列を有する軽鎖可変領域;
(c14)配列番号67のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号73のアミノ
酸配列を有する軽鎖可変領域;
(c15)配列番号67のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号74のアミノ
酸配列を有する軽鎖可変領域;
(c16)配列番号68のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号72のアミノ
酸配列を有する軽鎖可変領域;
(c17)配列番号69のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号73のアミノ
酸配列を有する軽鎖可変領域;
(c18)配列番号70のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号73のアミノ
酸配列を有する軽鎖可変領域;
(c19)配列番号71のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号73のアミノ
酸配列を有する軽鎖可変領域;
(c20)(c1)~(c19)の重鎖可変領域のいずれか1つに対して80%を超える
同一性を有する重鎖可変領域と、(c1)~(c19)の軽鎖可変領域のいずれか1つに
対して80%を超える同一性を有する軽鎖可変領域;
(c21)(c1)~(c19)の重鎖可変領域のいずれか1つに対して90%を超える
同一性を有する重鎖可変領域と、(c1)~(c19)の軽鎖可変領域のいずれか1つに
対して90%を超える同一性を有する軽鎖可変領域;
(c22)(c1)~(c19)の重鎖可変領域のいずれか1つに対して95%を超える
同一性を有する重鎖可変領域と、(c1)~(c19)の軽鎖可変領域のいずれか1つに
対して95%を超える同一性を有する軽鎖可変領域
から選択される重鎖可変領域と軽鎖可変領域との組合せのいずれか1つを含む、多重特異
性抗原結合分子。
【請求項5】
細胞傷害活性を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の多重特異性抗原結合分
子。
【請求項6】
細胞傷害活性がT細胞依存性細胞傷害活性である、請求項5に記載の多重特異性抗原結
合分子。
【請求項7】
(2)における第2の抗原結合ドメインがCD3イプシロン鎖に結合する、請求項1か
ら6のいずれか一項に記載の多重特異性抗原結合分子。
【請求項8】
(2)における第2の抗原結合ドメインがT細胞受容体に結合する、請求項1から6の
いずれか一項に記載の多重特異性抗原結合分子。
【請求項9】
第1の抗原結合ドメインもしくは第2の抗原結合ドメインが抗体可変断片であるか、ま
たは第1と第2の抗原結合ドメインの両方が抗体可変断片である、請求項1から8のいず
れか一項に記載の多重特異性抗原結合分子。
【請求項10】
(3)Fcガンマ受容体に対する結合活性が低下したFc領域を含む第3のドメイン
をさらに含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の多重特異性抗原結合分子。
【請求項11】
Fc領域が、配列番号112~115(IgG1~IgG4)のFc領域を構成するア
ミノ酸のいずれかにアミノ酸変異を有するFc領域である、請求項10に記載の多重特異
性抗原結合分子。
【請求項12】
Fc領域が、EUナンバリングによって特定される以下のアミノ酸位置:
220位、226位、229位、231位、232位、233位、234位、235位、
236位、237位、238位、239位、240位、264位、265位、266位、
267位、269位、270位、295位、296位、297位、298位、299位、
300位、325位、327位、328位、329位、330位、331位、および33
2位
から選択される少なくとも1個のアミノ酸の変異を有するFc領域である、請求項11に
記載の多重特異性抗原結合分子。
【請求項13】
二重特異性抗体である、請求項1から12のいずれか一項に記載の多重特異性抗原結合
分子。
【請求項14】
請求項1から12のいずれか一項に記載の多重特異性抗原結合分子または請求項13に
記載の二重特異性抗体と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項15】
請求項1から12のいずれか一項に記載の多重特異性抗原結合分子または請求項13に
記載の二重特異性抗体を含む、がんの処置または予防における使用のための医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトDLL3に結合する第1の抗原結合ドメインを含む第1のドメインと、
T細胞受容体複合体に結合する第2の抗原結合ドメインを含む第2のドメインとを含む多
重特異性抗原結合分子、および、その使用などに関する。本発明はまた、ヒトDLL3に
結合する抗原結合ドメインを含む新規な単一特異性抗原結合分子、および、その使用など
に関する。
【背景技術】
【0002】
がんは、世界の主な死因の1つである。ある特定の癌腫を除いて、腫瘍は、それらが発
見されたときには手術不能であることが多い。従来のがん処置としては、放射線療法、化
学療法、および免疫療法が挙げられる。これらの処置は、十分に有効ではないことが多く
、最終的には、処置後にがんの再発または転移が生じる。腫瘍特異性の欠如は、最大効能
を制限する因子の1つである;したがって、より腫瘍特異的な分子標的療法が、がん処置
における追加の実行可能な選択肢になってきている。
【0003】
抗体は、血漿中での安定性が高く、副作用が少ないため、医薬品として注目されている
。複数の治療用抗体の中でも、一部の型の抗体は、抗腫瘍応答を発揮するにはエフェクタ
ー細胞を必要とする。抗体依存性細胞傷害(ADCC)は、抗体のFc領域の、NK細胞
およびマクロファージ上に存在するFc受容体への結合によって、エフェクター細胞が、
抗体が結合した細胞に対して示す細胞傷害である。現在まで、抗腫瘍効能を発揮するため
にADCCを誘導することができる複数の治療用抗体が、がんを処置するための医薬品と
して開発されている(非特許文献1)。従来の治療用抗体を使用して腫瘍特異的に発現さ
れた抗原を標的とする療法は、優れた抗腫瘍活性を示すが、そのような抗体の投与は、い
つも満足のいく成果をもたらすわけではなかった。
【0004】
NK細胞またはマクロファージをエフェクター細胞として動員することによってADC
Cを採用する抗体に加えて、T細胞をエフェクター細胞として動員することによって細胞
傷害性を採用するT細胞動員(T cell-recruiting)抗体(TR抗体)
も1980年代から知られている(非特許文献2~4)。TR抗体は、T細胞上のT細胞
受容体複合体を形成するサブユニットのいずれか1つ、特に、CD3イプシロン鎖と、が
ん細胞上の抗原とを認識し、これらに結合する二重特異性抗体である。いくつかのTR抗
体が、現在開発中である。EpCAMに対するTR抗体であるカツマキソマブ(Catu
maxomab)は、悪性腹水の処置についてEUで承認されている。さらに、「二重特
異性T細胞エンゲージャー(BiTE)」と呼ばれる型のTR抗体が、強力な抗腫瘍活性
を示すことが最近見出された(非特許文献5および非特許文献6)。CD19に対するB
iTE分子であるブリナツモマブ(Blinatumomab)は、2014年に初めて
FDAの承認を受けた。ブリナツモマブは、リツキシマブ(Rituximab)と比較
して、in vitroでCD19/CD20陽性がん細胞に対するはるかに強い細胞傷
害活性を示し、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)および補体依存性細胞傷害(
CDC)を誘導することが証明された(非特許文献7)。
【0005】
しかしながら、三官能性抗体ががん抗原非依存的様式で、T細胞と、NK細胞またはマ
クロファージなどの細胞との両方に同時に結合する結果、これらの細胞上で発現される受
容体が架橋され、がん抗原非依存的様式で様々なサイトカインの発現が誘導されることが
知られている。三官能性抗体の全身投与は、そのようなサイトカイン発現の誘導の結果と
して、サイトカインストームのような副作用を引き起こすと考えられる。実際、第I相臨
床試験において、5マイクログラム(μg)/全身という非常に低い用量が、非小細胞肺
がんを有する患者に対するカツマキソマブの全身投与に関する最大耐量であり、それより
高い用量の投与は、様々な重篤な副作用を引き起こすことが報告されている(非特許文献
8)。そのような低い用量で投与した場合、カツマキソマブは、有効血中レベルには決し
て到達できない。すなわち、そのような低用量でカツマキソマブを投与することによって
は、期待される抗腫瘍効果を達成することはできない。
【0006】
一方、カツマキソマブと違って、BiTEは、Fcガンマ受容体結合部位を持たないた
め、がん抗原非依存的様式で、T細胞と、NK細胞およびマクロファージなどの細胞に発
現される受容体を架橋しない。かくして、BiTEは、カツマキソマブが投与される場合
に観察されるがん抗原非依存的サイトカイン誘導を引き起こさないことが実証されている
。しかしながら、BiTEは、Fc領域を欠く低分子量の改変抗体分子であるため、問題
は、治療用抗体として従来使用されるIgG型の抗体よりも、患者への投与後のその血中
半減期が著しく短いということである。事実、in vivoで投与されたBiTEの血
中半減期は、約数時間であると報告されている(非特許文献9および非特許文献10)。
ブリナツモマブの臨床試験においては、それはミニポンプを使用した連続静脈内輸注によ
って投与される。この投与法は、患者にとって極端に不便であるだけでなく、デバイスの
故障などによる医療事故のリスクも潜在する。かくして、そのような投与法は望ましいと
は言えない。
【0007】
デルタ様タンパク質3(DLL3)は、Notchリガンドファミリーのメンバーに属
するI型膜タンパク質である。DLL3は、正常な体節形成およびパターニングにとって
必要である。DLL3における変異は、常染色体劣性脊椎肋骨異骨症患者において肋骨欠
損または脊椎分離症を引き起こす(非特許文献11および非特許文献12)。染色体上の
DLL3遺伝子の増幅および膵がん細胞株中でのこの遺伝子の発現の増加(非特許文献1
3)および一部のグリオーマ症例におけるDLL3発現の増加(非特許文献14)を報告
する以前の研究が存在する。さらに、DLL3は、ADCC増強抗体、抗体-薬物コンジ
ュゲート(ADC)、およびBiTE-Fc形式を使用するT細胞エンゲージング二重特
異性分子を使用した、SCLCに加え、グリオーマを診断および処置する方法において以
前に提案されている(特許文献1、特許文献2および特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2011/093097
【特許文献2】WO2013/126746
【特許文献3】WO2017/021349
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Clin Cancer Res.2010 Jan 1;16(1):11~20頁
【非特許文献2】Nature.1985 Apr 18~24;314(6012):628~31頁
【非特許文献3】Int J Cancer.1988 Apr 15;41(4):609~15頁
【非特許文献4】Proc Natl Acad Sci USA.1986 Mar;83(5):1453~7頁
【非特許文献5】Proc Natl Acad Sci USA.1995 Jul 18;92(15):7021~5頁
【非特許文献6】Drug Discov Today.2005 Sep 15;10(18):1237~44頁
【非特許文献7】Int J Cancer.2002 Aug 20;100(6):690~7頁
【非特許文献8】Cancer Immunol Immunother(2007)56(10)、1637~44頁
【非特許文献9】Cancer Immunol Immunother.(2006)55(5)、503~14頁
【非特許文献10】Cancer Immunol Immunother.(2009)58(1)、95~109頁
【非特許文献11】Bulman,M.P.ら(2000)Nat Genet 24、438~441頁
【非特許文献12】Turnpenny,P.D.ら(2003)J Med Genet 40、333~339頁
【非特許文献13】Phillips,H.S.(2006)Cancer Cell 9、157~173頁
【非特許文献14】Mulledndore,M.E.(2009)Clin Cancer Res 15、2291~2301頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、T細胞をDLL3発現細胞に近接させ、DLL3を発現するがん細胞
に対するT細胞の細胞傷害性を使用することによってがん処置を可能にする多重特異性抗
原結合分子、多重特異性抗原結合分子の生産方法、およびがん細胞傷害を誘導するための
活性成分としてそのような多重特異性抗原結合分子を含む治療剤を提供することである。
本発明の別の目的は、活性成分として上記の抗原結合分子の1つを含む、様々ながんの処
置または予防における使用のための医薬組成物、および該医薬組成物を使用する治療方法
を提供することである。本発明の別の目的は、ヒトDLL3結合活性を有する新規な単一
特異性抗原結合分子、活性成分としてそのような単一特異性抗原結合分子を含む治療剤、
およびそのような治療剤を使用する治療方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、ヒトDLL3に結合する第1の抗原結合ドメインを含む第1のドメインと
、T細胞受容体複合体に結合する第2の抗原結合ドメインを含む第2のドメインとを含む
多重特異性抗原結合分子が、DLL3を発現する細胞を損傷させ、優れた細胞傷害/抗腫
瘍活性を発揮することができることを見出した。本発明は、活性成分として抗原結合分子
を含むことにより、様々ながん、特に、DLL3陽性腫瘍などのDLL3と関連するがん
を処置することができる、多重特異性抗原結合分子および医薬組成物を提供する。本発明
はまた、ヒトDLL3に結合する抗原結合ドメインを含む新規な単一特異性抗原結合分子
、およびそのような抗原結合分子を含む医薬組成物も提供する。
【0012】
より具体的には、本発明は、以下のものを提供する:
[1]下記のドメイン:
(1)ヒトDLL3に結合する第1の抗原結合ドメインを含む第1のドメイン、および
(2)T細胞受容体複合体に結合する第2の抗原結合ドメインを含む第2のドメイン
を含み、
(1)の第1の抗原結合ドメインが、ヒトDLL3中の配列番号7に定義される領域内の
エピトープに結合する、多重特異性抗原結合分子。
[2]下記のドメイン:
(1)ヒトDLL3に結合する第1の抗原結合ドメインを含む第1のドメイン、および
(2)T細胞受容体複合体に結合する第2の抗原結合ドメインを含む第2のドメイン
を含み、
(1)の第1の抗原結合ドメインが、以下の(a1)~(a12):
(a1)配列番号27のHVR-H1配列、配列番号28のHVR-H2配列、配列番号
29のHVR-H3配列、配列番号30のHVR-L1配列、配列番号31のHVR-L
2配列、および配列番号32のHVR-L3配列を含む抗体可変断片;
(a2)配列番号33のHVR-H1配列、配列番号34のHVR-H2配列、配列番号
35のHVR-H3配列、配列番号36のHVR-L1配列、配列番号37のHVR-L
2配列、および配列番号38のHVR-L3配列を含む抗体可変断片;
(a3)配列番号39のHVR-H1配列、配列番号40のHVR-H2配列、配列番号
41のHVR-H3配列、配列番号42のHVR-L1配列、配列番号43のHVR-L
2配列、および配列番号44のHVR-L3配列を含む抗体可変断片;
(a4)配列番号45のHVR-H1配列、配列番号46のHVR-H2配列、配列番号
47のHVR-H3配列、配列番号48のHVR-L1配列、配列番号49のHVR-L
2配列、および配列番号50のHVR-L3配列を含む抗体可変断片;
(a5)配列番号51のHVR-H1配列、配列番号52のHVR-H2配列、配列番号
53のHVR-H3配列、配列番号54のHVR-L1配列、配列番号55のHVR-L
2配列、および配列番号56のHVR-L3配列を含む抗体可変断片;
(a6)配列番号27のHVR-H1配列、配列番号75のHVR-H2配列、配列番号
29のHVR-H3配列、配列番号30のHVR-L1配列、配列番号31のHVR-L
2配列、および配列番号32のHVR-L3配列を含む抗体可変断片;
(a7)配列番号27のHVR-H1配列、配列番号76のHVR-H2配列、配列番号
29のHVR-H3配列、配列番号30のHVR-L1配列、配列番号31のHVR-L
2配列、および配列番号32のHVR-L3配列を含む抗体可変断片;
(a8)配列番号77のHVR-H1配列、配列番号78のHVR-H2配列、配列番号
79のHVR-H3配列、配列番号36のHVR-L1配列、配列番号37のHVR-L
2配列、および配列番号38のHVR-L3配列を含む抗体可変断片;
(a9)配列番号77のHVR-H1配列、配列番号78のHVR-H2配列、配列番号
80のHVR-H3配列、配列番号36のHVR-L1配列、配列番号37のHVR-L
2配列、および配列番号38のHVR-L3配列を含む抗体可変断片;
(a10)配列番号77のHVR-H1配列、配列番号78のHVR-H2配列、配列番
号80のHVR-H3配列、配列番号36のHVR-L1配列、配列番号37のHVR-
L2配列、および配列番号81のHVR-L3配列を含む抗体可変断片;
(a11)(a1)~(a10)から選択される抗体可変断片のいずれかの同じエピトー
プに結合する抗体可変断片;
(a12)(a1)~(a10)から選択される抗体可変断片のいずれかの結合と競合す
る抗体可変断片
のいずれか1つを含む、多重特異性抗原結合分子。
[3]下記のドメイン:
(1)ヒトDLL3に結合する第1の抗原結合ドメインを含む第1のドメイン、および
(2)T細胞受容体複合体に結合する第2の抗原結合ドメインを含む第2のドメイン
を含み、
(1)の第1の抗原結合ドメインが、以下の(b1)~(b21):
(b1)配列番号15に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H1
配列、配列番号15に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2配
列、配列番号15に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配列
、配列番号16に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列、
配列番号16に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、お
よび配列番号16に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配列
を含む抗体可変断片;
(b2)配列番号25に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H1
配列、配列番号25に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2配
列、配列番号25に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配列
、配列番号26に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列、
配列番号26に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、お
よび配列番号26に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配列
を含む抗体可変断片;
(b3)配列番号19に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H1
配列、配列番号19に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2配
列、配列番号19に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配列
、配列番号20に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列、
配列番号20に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、お
よび配列番号20に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配列
を含む抗体可変断片;
(b4)配列番号23に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H1
配列、配列番号23に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2配
列、配列番号23に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配列
、配列番号24に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列、
配列番号24に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、お
よび配列番号24に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配列
を含む抗体可変断片;
(b5)配列番号11に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H1
配列、配列番号11に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2配
列、配列番号11に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配列
、配列番号12に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列、
配列番号12に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、お
よび配列番号12に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配列
を含む抗体可変断片;
(b6)配列番号13に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H1
配列、配列番号13に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2配
列、配列番号13に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配列
、配列番号14に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列、
配列番号14に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、お
よび配列番号14に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配列
を含む抗体可変断片;
(b7)配列番号17に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H1
配列、配列番号17に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2配
列、配列番号17に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配列
、配列番号18に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列、
配列番号18に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、お
よび配列番号18に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配列
を含む抗体可変断片;
(b8)配列番号21に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H1
配列、配列番号21に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2配
列、配列番号21に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配列
、配列番号22に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列、
配列番号22に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、お
よび配列番号22に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配列
を含む抗体可変断片;
(b9)配列番号85に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H1
配列、配列番号85に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2配
列、配列番号85に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配列
、配列番号93に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列、
配列番号93に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、お
よび配列番号93に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配列
を含む抗体可変断片;
(b10)配列番号63に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H
1配列、配列番号63に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2
配列、配列番号63に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配
列、配列番号72に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列
、配列番号72に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、
および配列番号72に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配
列を含む抗体可変断片;
(b11)配列番号64に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H
1配列、配列番号64に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2
配列、配列番号64に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配
列、配列番号72に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列
、配列番号72に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、
および配列番号72に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配
列を含む抗体可変断片;
(b12)配列番号65に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H
1配列、配列番号65に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2
配列、配列番号65に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配
列、配列番号72に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列
、配列番号72に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、
および配列番号72に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配
列を含む抗体可変断片;
(b13)配列番号66に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H
1配列、配列番号66に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2
配列、配列番号66に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配
列、配列番号73に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列
、配列番号73に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、
および配列番号73に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配
列を含む抗体可変断片;
(b14)配列番号67に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H
1配列、配列番号67に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2
配列、配列番号67に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配
列、配列番号73に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列
、配列番号73に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、
および配列番号73に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配
列を含む抗体可変断片;
(b15)配列番号67に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H
1配列、配列番号67に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2
配列、配列番号67に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配
列、配列番号74に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列
、配列番号74に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、
および配列番号74に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配
列を含む抗体可変断片;
(b16)配列番号68に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H
1配列、配列番号68に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2
配列、配列番号68に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配
列、配列番号73に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列
、配列番号73に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、
および配列番号73に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配
列を含む抗体可変断片;
(b17)配列番号69に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H
1配列、配列番号69に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2
配列、配列番号69に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配
列、配列番号73に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列
、配列番号73に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、
および配列番号73に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配
列を含む抗体可変断片;
(b18)配列番号70に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H
1配列、配列番号70に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2
配列、配列番号70に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配
列、配列番号73に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列
、配列番号73に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、
および配列番号73に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配
列を含む抗体可変断片;
(b19)配列番号71に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H
1配列、配列番号71に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2
配列、配列番号71に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配
列、配列番号73に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列
、配列番号73に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、
および配列番号73に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配
列を含む抗体可変断片;
(b20)(b1)~(b19)から選択される抗体可変断片のいずれか1つの同じエピ
トープに結合する抗体可変断片;
(b21)(b1)~(b19)から選択される抗体可変断片のいずれか1つの結合と競
合する抗体可変断片
のいずれか1つを含む、多重特異性抗原結合分子。
[4]下記のドメイン:
(1)ヒトDLL3に結合する第1の抗原結合ドメインを含む第1のドメイン、および
(2)T細胞受容体複合体に結合する第2の抗原結合ドメインを含む第2のドメイン
を含み、
(1)の第1の抗原結合ドメインが、以下の(c1)~(c22):
(c1)配列番号15のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号16のアミノ酸
配列を有する軽鎖可変領域;
(c2)配列番号25のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号26のアミノ酸
配列を有する軽鎖可変領域;
(c3)配列番号19のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号20のアミノ酸
配列を有する軽鎖可変領域;
(c4)配列番号23のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号24のアミノ酸
配列を有する軽鎖可変領域;
(c5)配列番号11のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号12のアミノ酸
配列を有する軽鎖可変領域;
(c6)配列番号13のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号14のアミノ酸
配列を有する軽鎖可変領域;
(c7)配列番号17のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号18のアミノ酸
配列を有する軽鎖可変領域;
(c8)配列番号21のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号22のアミノ酸
配列を有する軽鎖可変領域;
(c9)配列番号85のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号93のアミノ酸
配列を有する軽鎖可変領域;
(c10)配列番号63のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号72のアミノ
酸配列を有する軽鎖可変領域;
(c11)配列番号64のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号72のアミノ
酸配列を有する軽鎖可変領域;
(c12)配列番号65のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号72のアミノ
酸配列を有する軽鎖可変領域;
(c13)配列番号66のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号73のアミノ
酸配列を有する軽鎖可変領域;
(c14)配列番号67のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号73のアミノ
酸配列を有する軽鎖可変領域;
(c15)配列番号67のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号74のアミノ
酸配列を有する軽鎖可変領域;
(c16)配列番号68のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号72のアミノ
酸配列を有する軽鎖可変領域;
(c17)配列番号69のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号73のアミノ
酸配列を有する軽鎖可変領域;
(c18)配列番号70のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号73のアミノ
酸配列を有する軽鎖可変領域;
(c19)配列番号71のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号73のアミノ
酸配列を有する軽鎖可変領域;
(c20)(c1)~(c19)の重鎖可変領域のいずれか1つに対して80%を超える
同一性を有する重鎖可変領域と、(c1)~(c19)の軽鎖可変領域のいずれか1つに
対して80%を超える同一性を有する軽鎖可変領域;
(c21)(c1)~(c19)の重鎖可変領域のいずれか1つに対して90%を超える
同一性を有する重鎖可変領域と、(c1)~(c19)の軽鎖可変領域のいずれか1つに
対して90%を超える同一性を有する軽鎖可変領域;
(c22)(c1)~(c19)の重鎖可変領域のいずれか1つに対して95%を超える
同一性を有する重鎖可変領域と、(c1)~(c19)の軽鎖可変領域のいずれか1つに
対して95%を超える同一性を有する軽鎖可変領域
から選択される重鎖可変領域と軽鎖可変領域との組合せのいずれか1つを含む、多重特異
性抗原結合分子。
[5]細胞傷害活性を有する、[1]から[4]のいずれか1つに記載の多重特異性抗
原結合分子。
[6]細胞傷害活性がT細胞依存性細胞傷害活性である、[5]に記載の多重特異性抗
原結合分子。
[7](2)における第2の抗原結合ドメインがCD3イプシロン鎖に結合する、[1
]から[6]のいずれか1つに記載の多重特異性抗原結合分子。
[8](2)における第2の抗原結合ドメインがT細胞受容体に結合する、[1]から
[6]のいずれか1つに記載の多重特異性抗原結合分子。
[9](2)における第2の抗原結合ドメインが、以下の(d1)~(d12):
(d1)それぞれ、配列番号57に含まれるHVR-H1、HVR-H2およびHVR-
H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H1、HVR-H2およびHVR-H3配列と
、それぞれ、配列番号58に含まれるHVR-L1、HVR-L2およびHVR-L3領
域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1、HVR-L2およびHVR-L3配列とを含む
抗体可変断片;
(d2)それぞれ、配列番号98に含まれるHVR-H1、HVR-H2およびHVR-
H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H1、HVR-H2およびHVR-H3配列と
、それぞれ、配列番号103に含まれるHVR-L1、HVR-L2およびHVR-L3
領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1、HVR-L2およびHVR-L3配列とを含
む抗体可変断片;
(d3)それぞれ、配列番号99に含まれるHVR-H1、HVR-H2およびHVR-
H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H1、HVR-H2およびHVR-H3配列と
、それぞれ、配列番号103に含まれるHVR-L1、HVR-L2およびHVR-L3
領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1、HVR-L2およびHVR-L3配列とを含
む抗体可変断片;
(d4)それぞれ、配列番号100に含まれるHVR-H1、HVR-H2およびHVR
-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H1、HVR-H2およびHVR-H3配列
と、それぞれ、配列番号103に含まれるHVR-L1、HVR-L2およびHVR-L
3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1、HVR-L2およびHVR-L3配列とを
含む抗体可変断片;
(d5)それぞれ、配列番号101に含まれるHVR-H1、HVR-H2およびHVR
-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H1、HVR-H2およびHVR-H3配列
と、それぞれ、配列番号103に含まれるHVR-L1、HVR-L2およびHVR-L
3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1、HVR-L2およびHVR-L3配列とを
含む抗体可変断片;
(d6)それぞれ、配列番号102に含まれるHVR-H1、HVR-H2およびHVR
-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H1、HVR-H2およびHVR-H3配列
と、それぞれ、配列番号103に含まれるHVR-L1、HVR-L2およびHVR-L
3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1、HVR-L2およびHVR-L3配列とを
含む抗体可変断片;
(d7)それぞれ、配列番号298に含まれるHVR-H1、HVR-H2およびHVR
-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H1、HVR-H2およびHVR-H3配列
と、それぞれ、配列番号299に含まれるHVR-L1、HVR-L2およびHVR-L
3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1、HVR-L2およびHVR-L3配列とを
含む抗体可変断片;
(d8)それぞれ、配列番号300に含まれるHVR-H1、HVR-H2およびHVR
-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H1、HVR-H2およびHVR-H3配列
と、それぞれ、配列番号301に含まれるHVR-L1、HVR-L2およびHVR-L
3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1、HVR-L2およびHVR-L3配列とを
含む抗体可変断片;
(d9)それぞれ、配列番号302に含まれるHVR-H1、HVR-H2およびHVR
-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H1、HVR-H2およびHVR-H3配列
と、それぞれ、配列番号303に含まれるHVR-L1、HVR-L2およびHVR-L
3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1、HVR-L2およびHVR-L3配列とを
含む抗体可変断片;
(d10)配列番号302、304、306、308、310、312、314、316
、318、320、322、324、326、328、330、332、334、336
、338、340、342、344、346、348、350、352、354、356
、358、360、362、364、366、368、370、372、374、376
、378、380、382、384、386、388および390から選択されるいずれ
か1つに含まれるHVR-H1、HVR-H2およびHVR-H3領域のアミノ酸配列と
同一のHVR-H1、HVR-H2およびHVR-H3配列と、配列番号305、307
、309、311、313、315、317、319、321、323、325、327
、329、331、333、335、337、339、341、343、345、347
、349、351、353、355、357、359、361、363、365、367
、369、371、373、375、377、379、381、383、385、387
、389および391から選択されるいずれか1つに含まれるHVR-L1、HVR-L
2およびHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1、HVR-L2およびH
VR-L3配列とを含む抗体可変断片;
(d11)(d1)~(d10)から選択される抗体可変断片のいずれか1つの同じエピ
トープに結合する抗体可変断片;
(d12)(d1)~(d10)から選択される抗体可変断片のいずれか1つの結合と競
合する抗体可変断片
のいずれか1つを含む、[1]から[8]のいずれか1つに記載の多重特異性抗原結合分
子。
[10](2)における第2の抗原結合ドメインが、以下の(e1)~(e12):
(e1)配列番号57のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号58のアミノ酸
配列を有する軽鎖可変領域;
(e2)配列番号98のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号103のアミノ
酸配列を有する軽鎖可変領域;
(e3)配列番号99のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号103のアミノ
酸配列を有する軽鎖可変領域;
(e4)配列番号100のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号103のアミ
ノ酸配列を有する軽鎖可変領域;
(e5)配列番号101のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号103のアミ
ノ酸配列を有する軽鎖可変領域;
(e6)配列番号102のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号103のアミ
ノ酸配列を有する軽鎖可変領域;
(e7)配列番号300のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号301のアミ
ノ酸配列を有する軽鎖可変領域;
(e8)配列番号302のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号303のアミ
ノ酸配列を有する軽鎖可変領域;
(e9)表2A中のアミノ酸配列の組合せのいずれか1つを有する重鎖可変領域と軽鎖可
変領域;
(e10)(e1)~(e9)の重鎖可変領域のいずれか1つに対して80%を超える同
一性を有する重鎖可変領域と、(e1)~(e9)の軽鎖可変領域のいずれか1つに対し
て80%を超える同一性を有する軽鎖可変領域;
(e11)(e1)~(e9)の重鎖可変領域のいずれか1つに対して90%を超える同
一性を有する重鎖可変領域と、(e1)~(e9)の軽鎖可変領域のいずれか1つに対し
て90%を超える同一性を有する軽鎖可変領域;
(e12)(e1)~(e9)の重鎖可変領域のいずれか1つに対して95%を超える同
一性を有する重鎖可変領域と、(e1)~(e9)の軽鎖可変領域のいずれか1つに対し
て95%を超える同一性を有する軽鎖可変領域
のいずれか1つを含む、[1]から[8]のいずれか1つに記載の多重特異性抗原結合分
子。
[11](2)における第2の抗原結合ドメインが、以下の(j1)~(j5):
(j1)配列番号136のHVR-H1配列、配列番号137のHVR-H2配列、配列
番号138のHVR-H3配列、配列番号139のHVR-L1配列、配列番号140の
HVR-L2配列、および配列番号141のHVR-L3配列を含む抗体可変断片;
(j2)配列番号142のHVR-H1配列、配列番号143のHVR-H2配列、配列
番号144のHVR-H3配列、配列番号145のHVR-L1配列、配列番号146の
HVR-L2配列、および配列番号147のHVR-L3配列を含む抗体可変断片;
(j3)表2B中の組合せのいずれかから選択されるHVR配列を含む抗体可変断片;
(j4)(j1)~(j3)から選択される抗体可変断片のいずれかの同じエピトープに
結合する抗体可変断片;
(j5)(j1)~(j3)から選択される抗体可変断片のいずれかの結合と競合する抗
体可変断片
のいずれか1つを含む、[1]から[8]のいずれか1つに記載の多重特異性抗原結合分
子。
[12]第1の抗原結合ドメインもしくは第2の抗原結合ドメインが抗体可変断片であ
るか、または第1と第2の抗原結合ドメインの両方が抗体可変断片である、[1]から[
11]のいずれか1つに記載の多重特異性抗原結合分子。
[13]抗体可変断片がFabである、[12]に記載の多重特異性抗原結合分子。
[14](3)Fcガンマ受容体に対する結合活性が低下したFc領域を含む第3のド
メインをさらに含む、[1]から[13]のいずれか1つに記載の多重特異性抗原結合分
子。
[15]下記のドメイン:
(1)ヒトDLL3に結合する第1の抗原結合ドメインを含む第1のドメイン、
(2)T細胞受容体複合体に結合する第2の抗原結合ドメインを含む第2のドメイン、お
よび
(3)Fcガンマ受容体に対する結合活性が低下したFc領域を含む第3のドメイン
を含む多重特異性抗原結合分子。
[16]第1の抗原結合ドメインもしくは第2の抗原結合ドメインが抗体可変断片であ
るか、または第1と第2の抗原結合ドメインの両方が抗体可変断片である、[15]に記
載の多重特異性抗原結合分子。
[17]抗体可変断片がFabである、[16]に記載の多重特異性抗原結合分子。
[18]Fc領域が、配列番号112~115(IgG1~IgG4)のFc領域を構
成するアミノ酸のいずれかにアミノ酸変異を有するFc領域である、[14]から[17
]のいずれか1つに記載の多重特異性抗原結合分子。
[19]Fc領域が、EUナンバリングによって特定される以下のアミノ酸位置:
220位、226位、229位、231位、232位、233位、234位、235位、
236位、237位、238位、239位、240位、264位、265位、266位、
267位、269位、270位、295位、296位、297位、298位、299位、
300位、325位、327位、328位、329位、330位、331位、および33
2位
から選択される少なくとも1個のアミノ酸の変異を有するFc領域である、[18]に記
載の多重特異性抗原結合分子。
[20]二重特異性抗体である、[1]から[19]のいずれか1つに記載の多重特異
性抗原結合分子。
[21]抗体がモノクローナル抗体である、[20]に記載の二重特異性抗体。
[22][1]から[19]のいずれか1つに記載の多重特異性抗原結合分子または[
20]もしくは[21]に記載の二重特異性抗体と、薬学的に許容される担体とを含む医
薬組成物。
[23]T細胞依存性細胞傷害を誘導する、[22]に記載の医薬組成物。
[24][1]から[19]のいずれか1つに記載の多重特異性抗原結合分子または[
20]もしくは[21]に記載の二重特異性抗体を含む、がんの処置または予防における
使用のための医薬組成物。
[25][1]から[19]のいずれか1つに記載の抗原結合分子または[20]もし
くは[21]に記載の二重特異性抗体を、それを必要とする患者に投与することを含む、
がんを処置または予防するための方法。
[26]がんを処置または予防するための医薬組成物の製造における、[1]から[1
9]のいずれか1つに記載の抗原結合分子または[20]もしくは[21]に記載の二重
特異性抗体の使用。
[27]がんを処置または予防するための、[1]から[19]のいずれか1つに記載
の抗原結合分子または[20]もしくは[21]に記載の二重特異性抗体の使用。
[28]がんが、肺がん(小細胞肺がんを含む)、乳がん、子宮頸がん、結腸がん、結
腸直腸がん、子宮内膜がん、頭頸部がん、肝臓がん、卵巣がん、膵がん、前立腺がん、皮
膚がん、胃がん、精巣がん、甲状腺がん、副腎がん、腎がん、膀胱がん、子宮がん、食道
がん、尿路上皮がん、脳がん、リンパ腫、癌腫または肉腫である、[25]に記載の方法
。
[29]がんが、肺がん(小細胞肺がんを含む)、乳がん、子宮頸がん、結腸がん、結
腸直腸がん、子宮内膜がん、頭頸部がん、肝臓がん、卵巣がん、膵がん、前立腺がん、皮
膚がん、胃がん、精巣がん、甲状腺がん、副腎がん、腎がん、膀胱がん、子宮がん、食道
がん、尿路上皮がん、脳がん、リンパ腫、癌腫または肉腫である、[26]または[27
]に記載の使用。
[30]がんが、肺がん(小細胞肺がんを含む)、乳がん、子宮頸がん、結腸がん、結
腸直腸がん、子宮内膜がん、頭頸部がん、肝臓がん、卵巣がん、膵がん、前立腺がん、皮
膚がん、胃がん、精巣がん、甲状腺がん、副腎がん、腎がん、膀胱がん、子宮がん、食道
がん、尿路上皮がん、脳がん、リンパ腫、癌腫または肉腫である、[24]に記載の医薬
組成物。
[31]ヒトDLL3中の配列番号7に定義される領域内のエピトープに結合する抗原
結合分子。
[32]以下の(f1)~(f11):
(f1)配列番号27のHVR-H1配列、配列番号28のHVR-H2配列、配列番号
29のHVR-H3配列、配列番号30のHVR-L1配列、配列番号31のHVR-L
2配列、および配列番号32のHVR-L3配列を含む抗体可変断片;
(f2)配列番号33のHVR-H1配列、配列番号34のHVR-H2配列、配列番号
35のHVR-H3配列、配列番号36のHVR-L1配列、配列番号37のHVR-L
2配列、および配列番号38のHVR-L3配列を含む抗体可変断片;
(f3)配列番号39のHVR-H1配列、配列番号40のHVR-H2配列、配列番号
41のHVR-H3配列、配列番号42のHVR-L1配列、配列番号43のHVR-L
2配列、および配列番号44のHVR-L3配列を含む抗体可変断片;
(f4)配列番号45のHVR-H1配列、配列番号46のHVR-H2配列、配列番号
47のHVR-H3配列、配列番号48のHVR-L1配列、配列番号49のHVR-L
2配列、および配列番号50のHVR-L3配列を含む抗体可変断片;
(f5)配列番号27のHVR-H1配列、配列番号75のHVR-H2配列、配列番号
29のHVR-H3配列、配列番号30のHVR-L1配列、配列番号31のHVR-L
2配列、および配列番号32のHVR-L3配列を含む抗体可変断片;
(f6)配列番号27のHVR-H1配列、配列番号76のHVR-H2配列、配列番号
29のHVR-H3配列、配列番号30のHVR-L1配列、配列番号31のHVR-L
2配列、および配列番号32のHVR-L3配列を含む抗体可変断片;
(f7)配列番号77のHVR-H1配列、配列番号78のHVR-H2配列、配列番号
79のHVR-H3配列、配列番号36のHVR-L1配列、配列番号37のHVR-L
2配列、および配列番号38のHVR-L3配列を含む抗体可変断片;
(f8)配列番号77のHVR-H1配列、配列番号78のHVR-H2配列、配列番号
80のHVR-H3配列、配列番号36のHVR-L1配列、配列番号37のHVR-L
2配列、および配列番号38のHVR-L3配列を含む抗体可変断片;
(f9)配列番号77のHVR-H1配列、配列番号78のHVR-H2配列、配列番号
80のHVR-H3配列、配列番号36のHVR-L1配列、配列番号37のHVR-L
2配列、および配列番号81のHVR-L3配列を含む抗体可変断片;
(f10)(f1)~(f9)から選択される抗体可変断片のいずれかの同じエピトープ
に結合する抗体可変断片;
(f11)(f1)~(f9)から選択される抗体可変断片のいずれかの結合と競合する
抗体可変断片
のいずれか1つを含む抗原結合ドメインを含む抗原結合分子。
[33]以下の(g1)~(g20):
(g1)配列番号15に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H1
配列、配列番号15に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2配
列、配列番号15に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配列
、配列番号16に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列、
配列番号16に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、お
よび配列番号16に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配列
を含む抗体可変断片;
(g2)配列番号25に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H1
配列、配列番号25に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2配
列、配列番号25に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配列
、配列番号26に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列、
配列番号26に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、お
よび配列番号26に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配列
を含む抗体可変断片;
(g3)配列番号19に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H1
配列、配列番号19に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2配
列、配列番号19に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配列
、配列番号20に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列、
配列番号20に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、お
よび配列番号20に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配列
を含む抗体可変断片;
(g4)配列番号23に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H1
配列、配列番号23に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2配
列、配列番号23に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配列
、配列番号24に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列、
配列番号24に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、お
よび配列番号24に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配列
を含む抗体可変断片;
(g5)配列番号11に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H1
配列、配列番号11に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2配
列、配列番号11に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配列
、配列番号12に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列、
配列番号12に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、お
よび配列番号12に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配列
を含む抗体可変断片;
(g6)配列番号13に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H1
配列、配列番号13に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2配
列、配列番号13に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配列
、配列番号14に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列、
配列番号14に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、お
よび配列番号14に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配列
を含む抗体可変断片;
(g7)配列番号17に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H1
配列、配列番号17に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2配
列、配列番号17に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配列
、配列番号18に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列、
配列番号18に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、お
よび配列番号18に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配列
を含む抗体可変断片;
(g8)配列番号21に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H1
配列、配列番号21に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2配
列、配列番号21に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配列
、配列番号22に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列、
配列番号22に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、お
よび配列番号22に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配列
を含む抗体可変断片;
(g9)配列番号63に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H1
配列、配列番号63に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2配
列、配列番号63に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配列
、配列番号72に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列、
配列番号72に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、お
よび配列番号72に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配列
を含む抗体可変断片;
(g10)配列番号64に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H
1配列、配列番号64に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2
配列、配列番号64に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配
列、配列番号72に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列
、配列番号72に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、
および配列番号72に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配
列を含む抗体可変断片;
(g11)配列番号65に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H
1配列、配列番号65に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2
配列、配列番号65に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配
列、配列番号72に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列
、配列番号72に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、
および配列番号72に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配
列を含む抗体可変断片;
(g12)配列番号66に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H
1配列、配列番号66に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2
配列、配列番号66に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配
列、配列番号73に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列
、配列番号73に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、
および配列番号73に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配
列を含む抗体可変断片;
(g13)配列番号67に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H
1配列、配列番号67に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2
配列、配列番号67に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配
列、配列番号73に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列
、配列番号73に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、
および配列番号73に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配
列を含む抗体可変断片;
(g14)配列番号67に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H
1配列、配列番号67に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2
配列、配列番号67に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配
列、配列番号74に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列
、配列番号74に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、
および配列番号74に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配
列を含む抗体可変断片;
(g15)配列番号68に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H
1配列、配列番号68に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2
配列、配列番号68に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配
列、配列番号73に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列
、配列番号73に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、
および配列番号73に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配
列を含む抗体可変断片;
(g16)配列番号69に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H
1配列、配列番号69に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2
配列、配列番号69に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配
列、配列番号73に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列
、配列番号73に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、
および配列番号73に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配
列を含む抗体可変断片;
(g17)配列番号70に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H
1配列、配列番号70に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2
配列、配列番号70に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配
列、配列番号73に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列
、配列番号73に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、
および配列番号73に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配
列を含む抗体可変断片;
(g18)配列番号71に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H
1配列、配列番号71に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2
配列、配列番号71に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配
列、配列番号73に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列
、配列番号73に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、
および配列番号73に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配
列を含む抗体可変断片;
(g19)(g1)~(g18)から選択される抗体可変断片のいずれか1つの同じエピ
トープに結合する抗体可変断片;
(g20)(g1)~(g18)から選択される抗体可変断片のいずれか1つの結合と競
合する抗体可変断片
のいずれか1つを含む抗原結合ドメインを含む抗原結合分子。
[34]以下の(h1)~(h21):
(h1)配列番号15のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号16のアミノ酸
配列を有する軽鎖可変領域;
(h2)配列番号25のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号26のアミノ酸
配列を有する軽鎖可変領域;
(h3)配列番号19のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号20のアミノ酸
配列を有する軽鎖可変領域;
(h4)配列番号23のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号24のアミノ酸
配列を有する軽鎖可変領域;
(h5)配列番号11のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号12のアミノ酸
配列を有する軽鎖可変領域;
(h6)配列番号13のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号14のアミノ酸
配列を有する軽鎖可変領域;
(h7)配列番号17のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号18のアミノ酸
配列を有する軽鎖可変領域;
(h8)配列番号21のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号22のアミノ酸
配列を有する軽鎖可変領域;
(h9)配列番号63のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号72のアミノ酸
配列を有する軽鎖可変領域;
(h10)配列番号64のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号72のアミノ
酸配列を有する軽鎖可変領域;
(h11)配列番号65のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号72のアミノ
酸配列を有する軽鎖可変領域;
(h12)配列番号66のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号73のアミノ
酸配列を有する軽鎖可変領域;
(h13)配列番号67のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号73のアミノ
酸配列を有する軽鎖可変領域;
(h14)配列番号67のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号74のアミノ
酸配列を有する軽鎖可変領域;
(h15)配列番号68のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号72のアミノ
酸配列を有する軽鎖可変領域;
(h16)配列番号69のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号73のアミノ
酸配列を有する軽鎖可変領域;
(h17)配列番号70のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号73のアミノ
酸配列を有する軽鎖可変領域;
(h18)配列番号71のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号73のアミノ
酸配列を有する軽鎖可変領域;
(h19)(h1)~(h18)の重鎖可変領域のいずれか1つに対して80%を超える
同一性を有する重鎖可変領域と、(h1)~(h18)の軽鎖可変領域のいずれか1つに
対して80%を超える同一性を有する軽鎖可変領域;
(h20)(h1)~(h18)の重鎖可変領域のいずれか1つに対して90%を超える
同一性を有する重鎖可変領域と、(h1)~(h18)の軽鎖可変領域のいずれか1つに
対して90%を超える同一性を有する軽鎖可変領域;
(h21)(h1)~(h18)の重鎖可変領域のいずれか1つに対して95%を超える
同一性を有する重鎖可変領域と、(h1)~(h18)の軽鎖可変領域のいずれか1つに
対して95%を超える同一性を有する軽鎖可変領域
のいずれか1つを含む抗原結合ドメインを含む抗原結合分子。
[35]細胞傷害活性を有する、[31]から[34]のいずれか1つに記載の抗原結
合分子。
[36]細胞傷害活性が、抗体依存性細胞傷害または補体依存性細胞傷害である、[3
5]に記載の抗原結合分子。
[37]内在化活性を有する、[31]から[36]のいずれか1つに記載の抗原結合
分子。
[38]毒性化合物にコンジュゲートされている、[31]から[37]のいずれか1
つに記載の抗原結合分子。
[39]抗体可変断片である、[31]から[38]のいずれか1つに記載の抗原結合
分子。
[40]抗体可変断片がFabである、[39]に記載の抗原結合分子。
[41]抗体である、[31]から[40]のいずれか1つに記載の抗原結合分子。
[42]モノクローナル抗体である、[41]に記載の抗原結合分子。
[43][42]に記載の抗体を含む抗体-薬物コンジュゲート化合物。
[44][31]から[40]のいずれか1つに記載の抗原結合分子または[41]も
しくは[42]に記載の抗体と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
[45][31]から[40]のいずれか1つに記載の抗原結合分子または[41]も
しくは[42]に記載の抗体を含む、がんの処置または予防における使用のための医薬組
成物。
[46][31]から[40]のいずれか1つに記載の抗原結合分子または[41]も
しくは[42]に記載の抗体を、それを必要とする患者に投与することを含む、がんを処
置または予防するための方法。
[47]がんを処置または予防するための医薬組成物の製造における、[31]から[
40]のいずれか1つに記載の抗原結合分子または[41]もしくは[42]に記載の抗
体の使用。
[48]がんを処置または予防するための、[31]から[40]のいずれか1つに記
載の抗原結合分子または[41]もしくは[42]に記載の抗体の使用。
[49]がんが、肺がん(小細胞肺がんを含む)、乳がん、子宮頸がん、結腸がん、結
腸直腸がん、子宮内膜がん、頭頸部がん、肝臓がん、卵巣がん、膵がん、前立腺がん、皮
膚がん、胃がん、精巣がん、甲状腺がん、副腎がん、腎がん、膀胱がん、子宮がん、食道
がん、尿路上皮がん、脳がん、リンパ腫、癌腫または肉腫である、[46]に記載の方法
。
[50]がんが、肺がん(小細胞肺がんを含む)、乳がん、子宮頸がん、結腸がん、結
腸直腸がん、子宮内膜がん、頭頸部がん、肝臓がん、卵巣がん、膵がん、前立腺がん、皮
膚がん、胃がん、精巣がん、甲状腺がん、副腎がん、腎がん、膀胱がん、子宮がん、食道
がん、尿路上皮がん、脳がん、リンパ腫、癌腫または肉腫である、[47]または[48
]に記載の使用。
[51]がんが、肺がん(小細胞肺がんを含む)、乳がん、子宮頸がん、結腸がん、結
腸直腸がん、子宮内膜がん、頭頸部がん、肝臓がん、卵巣がん、膵がん、前立腺がん、皮
膚がん、胃がん、精巣がん、甲状腺がん、副腎がん、腎がん、膀胱がん、子宮がん、食道
がん、尿路上皮がん、脳がん、リンパ腫、癌腫または肉腫である、[45]に記載の医薬
組成物。
[52][1]から[19]のいずれか1つに記載の抗原結合分子または[20]もし
くは[21]に記載の二重特異性抗体と、使用のための指示書とを含むキット。
[53][31]から[40]のいずれか1つに記載の抗原結合分子または[41]も
しくは[42]に記載の抗体と、使用のための指示書とを含むキット。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、T細胞を、DLL3発現細胞に接近させ、DLL3発現がん細胞に対するT
細胞の細胞傷害を使用することによって、がん処置を可能にする多重特異性抗原結合分子
、該多重特異性抗原結合分子を製造する方法、およびがん処置の新しい手法としての、細
胞傷害を誘導するための活性成分としてそのような多重特異性抗原結合分子を含有する治
療剤を提供する。本発明の多重特異性抗原結合分子は、細胞傷害を誘導する強力な抗腫瘍
活性を有し、DLL3発現細胞を標的とし、これを損傷することができ、かくして、様々
ながんの処置および予防を可能にする。本発明はまた、ヒトDLL3結合活性を有する新
規な単一特異性抗原結合分子、活性成分としてそのような単一特異性抗原結合分子を含む
治療剤、およびそのような治療剤を使用する治療方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、全長ヒトDLL3および実施例1で調製されるヒトDLL3 ECD断片タンパク質の構造を示す概略図である。実施例3で選択される抗DLL3抗体のそれぞれによって認識されるエピトープも示される。EGFドメインは、N末端側からC末端側に向かって、6個の領域、EGF1~EGF6を有する。
【
図2】
図2は、抗体の、ヒトDLL3 ECD断片タンパク質への結合を示す。試験された抗DLL3抗体の名称を、それぞれのグラフの上部に示す。
【
図3】
図3は、SK-MEL-30(A)、NCI-H1436(B)およびNCI-H2227(C)がん細胞株中でのDLL3の発現を示す。黒色の点線:第2抗体(BECKMAN COULTER)のみ、灰色の実線:対照ウサギIgG(CELL LAB)、黒色の実線:DLL3抗体(二価DLA0316)。
【
図4】
図4は、SK-MEL-30細胞株に対する、抗DLL3/CD3二重特異性抗体(DL312/No.12、DLA0316/No.12、DLA0580/No.12、DLA0814/No.12、およびDLA0769/No.12)のT細胞依存性細胞傷害(TDCC)を示す。
【
図5】
図5は、NCI-H1436(A)およびNCI-H2227(B)SCLC細胞株に対するカルセイン放出アッセイにより評価された抗DLL3/CD3二重特異性抗体(DLA0316/No.12)のTDCCを示す。
【
図6】
図6は、SK-MEL-30腫瘍担持T細胞注入モデルにおける抗DLL3/CD3二重特異性抗体(DLA0316/No.12、DLA0580/No.12およびDLA0841/No.12)のin vivoでの抗腫瘍効能を示す。使用された抗体およびその用量も示す。
【
図7】
図7は、SCLC腫瘍担持T細胞注入モデルにおける抗DLL3/CD3二重特異性抗体(DLA0316/No.12)のin vivoでの抗腫瘍効能を示す。使用したがん細胞株は、NCI-H1436(A)およびNCI-H2227(B)であった。
【
図8】
図8は、抗体Bの抗体Aに対する競合比を示す。
【
図9】
図9は、SK-MEL-30細胞株に対するヒト化抗DLL3/CD3二重特異性抗体のTDCCを示す。試験した二重特異性抗体の抗DLL3アームは、それぞれ、DLA0136またはそのヒト化バリアントD30316AE03(A)、ならびにDLA0841またはそのヒト化バリアントD30841AE08およびD30841AE11(B)に由来するものであった。
【
図10】
図10は、SK-MEL-30細胞株に対するヒト化抗DLL3/CD3二重特異性抗体のTDCCを示す。グラフは、0.001nM~10nMの様々な抗CD3アームを有する二重特異性ヒト化DLL3抗体の存在下、5のE:T比でPBMCと共に同時培養した場合のSK-MEL-30の細胞傷害を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書で記載されるか、または参照される技術および手順は、当業者によって、一般
的には、例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A La
boratory Manual、第3版(2001) Cold Spring Ha
rbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor
、N.Y.;Current Protocols in Molecular Bio
logy (F.M.Ausubelら(編)、(2003));Methods in
Enzymologyシリーズ(Academic Press、Inc.):PCR
2:A Practical Approach(M.J.MacPherson、B
.D.HamesおよびG.R.Taylor(編)、(1995))、Harlowお
よびLane(編)、(1988) Antibodies, A Laborator
y Manual, and Animal Cell Culture (R.I.F
reshney(編)、(1987));Oligonucleotide Synth
esis(M.J.Gait(編)、1984);Methods in Molecu
lar Biology、Humana Press;Cell Biology:A
Laboratory Notebook(J.E.Cellis(編)、1998)
Academic Press;Animal Cell Culture(R.I.F
reshney)(編)、1987);Introduction to Cell a
nd Tissue Culture (J.P.MatherおよびP.E.Robe
rts、1998)Plenum Press;Cell and Tissue Cu
lture:Laboratory Procedures(A.Doyle、J.B.
Griffiths、およびD.G.Newell(編)、1993~8) J.Wil
ey and Sons;Handbook of Experimental Imm
unology(D.M.WeirおよびC.C.Blackwell(編));Gen
e Transfer Vectors for Mammalian Cells(J
.M.MillerおよびM.P.Calos(編)、1987);PCR:The P
olymerase Chain Reaction(Mullisら(編)、1994
);Current Protocols in Immunology(J.E.Co
liganら(編)、1991);Short Protocols in Molec
ular Biology(Wiley and Sons、1999);Immuno
biology(C.A.JanewayおよびP.Travers、1997);An
tibodies(P.Finch、1997);Antibodies:A Prac
tical Approach(D.Catty(編)、IRL Press、1988
~1989);Monoclonal Antibodies:A Practical
Approach(P.ShepherdおよびC.Dean(編)、Oxford
University Press、2000);Using Antibodies:
A Laboratory Manual(E.HarlowおよびD.Lane(Co
ld Spring Harbor Laboratory Press、1999);
The Antibodies(M.ZanettiおよびJ.D.Capra(編)、
Harwood Academic Publishers、1995);およびCan
cer:Principles and Practice of Oncology(
V.T.DeVitaら(編)、J.B.Lippincott Company、19
93)に記載された広く利用される方法などの、従来の方法を使用してよく理解され、一
般的に用いられるものである。
以下の定義および詳細な説明は、本明細書で説明される本発明の理解を容易にするため
に提供される。
【0016】
参照ポリペプチド配列に関する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」は、配列をア
ラインメントさせ、必要に応じてギャップを導入して、配列同一性の一部として任意の保
存的置換を考慮せずに、最大の配列同一性パーセントを達成した後の、参照ポリペプチド
配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージと定義さ
れる。アミノ酸配列同一性パーセントを決定するためのアラインメントを、当分野におけ
る技術の範囲内にある様々な手段で、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN
、Megalign(DNASTAR)ソフトウェア、またはGENETYX(登録商標
)(Genetyx Co.,Ltd.)などの公共的に利用可能なコンピューターソフ
トウェアを使用して達成することができる。当業者であれば、比較される配列の全長にわ
たって最大のアラインメントを達成するのに必要とされる任意のアルゴリズムを含む、配
列をアラインさせるための適切なパラメータを決定することができる。
【0017】
ALIGN-2配列比較コンピュータープログラムは、Genentech,Inc.
によって著されたものであり、そのソースコードは、U.S.Copyright Of
fice、Washington D.C.、20559にユーザー文書と共にファイリ
ングされており、米国著作権局登録番号TXU510087の下で登録されている。AL
IGN-2プログラムは、Genentech,Inc.、South San Fra
ncisco、Californiaから公共的に入手可能であるか、またはソースコー
ドからコンパイルすることができる。ALIGN-2プログラムは、デジタルUNIX(
商標)V4.0Dを含むUNIX(商標)オペレーティングシステム上での使用のために
コンパイルされるべきである。全ての配列比較パラメータは、ALIGN-2プログラム
によって設定され、変化しない。ALIGN-2がアミノ酸配列比較のために用いられる
状況では、所与のアミノ酸配列Aの、所与のアミノ酸配列Bへの、との、または、に対す
るアミノ酸配列同一性%(あるいは、所与のアミノ酸配列Bへの、との、または、に対す
るある特定のアミノ酸配列同一性%を有する、または含む所与のアミノ酸配列Aと表現す
ることもできる)は、以下のように算出される:
分数X/Yの100倍
(式中、Xは、AとBとの、配列アラインメントプログラムALIGN-2のアラインメ
ントにおける、そのプログラムによって同一の一致としてスコア化されるアミノ酸残基の
数であり、Yは、B中のアミノ酸残基の総数である)。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸
配列Bの長さと等しくない場合、AのBに対するアミノ酸配列同一性%は、BのAに対す
るアミノ酸配列同一性%と等しくないことが理解されるであろう。別途具体的に記述され
ない限り、本明細書で使用される全てのアミノ酸配列同一性%の値は、ALIGN-2コ
ンピュータープログラムを使用して直前の段落に記載されたように得られる。
【0018】
アミノ酸
本明細書では、アミノ酸は、1文字または3文字コードまたはその両方、例えば、Al
a/A、Leu/L、Arg/R、Lys/K、Asn/N、Met/M、Asp/D、
Phe/F、Cys/C、Pro/P、Gln/Q、Ser/S、Glu/E、Thr/
T、Gly/G、Trp/W、His/H、Tyr/Y、Ile/I、またはVal/V
で記載される。
【0019】
アミノ酸の変化
抗原結合分子のアミノ酸配列におけるアミノ酸変化のために、部位特異的突然変異誘発
法(Kunkelら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1985)82
、488~492頁))および重複伸長PCRなどの公知の方法を適切に用いることがで
きる。さらに、いくつかの公知の方法を、非天然アミノ酸への置換のためにアミノ酸変化
法として用いることもできる(Annu Rev.Biophys.Biomol.St
ruct.(2006)35、225~249頁;およびProc.Natl.Acad
.Sci.U.S.A.(2003)100(11)、6353~6357頁)。例えば
、終止コドンの1つ、UAGコドン(アンバーコドン)の相補的アンバーサプレッサーt
RNAに結合した非天然アミノ酸を有するtRNAを含有する無細胞翻訳系(Clove
r Direct(Protein Express))を使用することが好適である。
【0020】
本明細書では、アミノ酸変化の部位を記載する場合の用語「および/または」の意味は
、「および」と「または」が好適に組み合わされた全ての組合せを含む。具体的には、例
えば、「33、55および/または96位のアミノ酸が置換される」は、以下のアミノ酸
変化のバリエーション:(a)33位、(b)55位、(c)96位、(d)33位およ
び55位、(e)33位および96位、(f)55位および96位、ならびに(g)33
位、55位および96位のアミノ酸を含む。
【0021】
さらに、本明細書において、アミノ酸の変化を示す表現、特定の位置を示す数字の前後
を示す表現として、変化の前後のアミノ酸の1文字または3文字コードを、それぞれ、適
切に使用することができる。例えば、抗体可変領域に含まれるアミノ酸を置換する場合に
使用される変化N100bLまたはAsn100bLeuは、100b位(Kabatの
ナンバリングによる)のAsnの、Leuによる置換を示す。すなわち、数字は、Kab
atのナンバリングによるアミノ酸位置を示し、数字の前に書かれた1文字または3文字
のアミノ酸コードは、置換前のアミノ酸を示し、数字の後に書かれた1文字または3文字
のアミノ酸コードは、置換後のアミノ酸を示す。同様に、抗体定常領域に含まれるFc領
域のアミノ酸を置換する場合に使用される変化P238DまたはPro238Aspは、
238位(EUナンバリングによる)のProの、Aspによる置換を示す。すなわち、
数字は、EUナンバリングによるアミノ酸位置を示し、数字の前に書かれた1文字または
3文字のアミノ酸コードは、置換前のアミノ酸を示し、数字の後に書かれた1文字または
3文字のアミノ酸コードは、置換後のアミノ酸を示す。
【0022】
抗原結合分子
本明細書で使用される場合、用語「抗原結合分子」とは、抗原結合ドメインを含む任意
の分子を指し、さらに、約5アミノ酸以上の長さを有するペプチドまたはタンパク質など
の分子を指しうる。ペプチドおよびタンパク質は、生物に由来するものに限定されず、例
えば、それらは人工的に設計された配列から生産されるポリペプチドであってもよい。そ
れらはまた、天然に存在するポリペプチド、合成ポリペプチド、組換えポリペプチドなど
のいずれかであってもよい。
【0023】
本発明の抗原結合分子の好ましい例は、複数の抗原結合ドメインを含む抗原結合分子で
ある。ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合分子は、異なる抗原結合特異性を有す
る2つの抗原結合ドメインを含む抗原結合分子である。ある特定の実施形態では、本発明
の抗原結合分子は、異なる抗原結合特異性を有する2つの抗原結合ドメインと、抗体Fc
領域に含まれるFcRn結合ドメインとを含む抗原結合分子である。生体に投与されたタ
ンパク質の血中半減期を延長するための方法として、抗体のFcRn結合ドメインを目的
のタンパク質に付加し、FcRnを介したリサイクリングの機能を利用する方法が周知で
ある。
【0024】
本発明の抗原結合分子の別の好ましい例は、ただ1つの型の抗原結合ドメインを含む抗
原結合分子である。ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合分子は、同じ抗原結合特
異性を有する2つの抗原結合ドメインを含む抗原結合分子である。ある特定の実施形態で
は、本発明の抗原結合分子は、同じ抗原結合特異性を有する2つの抗原結合ドメインと、
Fc領域とを含む抗原結合分子である。
【0025】
抗原結合ドメイン
本明細書で使用される場合、用語「抗原結合ドメイン」とは、抗原の全部または一部に
特異的に結合し、それと相補的である領域を含む抗体部分を指す。抗原の分子量が大きい
場合、抗体は、抗原の特定の部分にのみ結合することができる。その特定の部分は、「エ
ピトープ」と呼ばれる。抗原結合ドメインを、1つまたは複数の抗体可変ドメインから提
供することができる。好ましくは、抗原結合ドメインは、抗体軽鎖可変領域(VL)と、
抗体重鎖可変領域(VH)との両方を含有する。そのような好ましい抗原結合ドメインと
しては、例えば、「単鎖Fv(scFv)」、「単鎖抗体」、「Fv」、「単鎖Fv2(
scFv2)」、「Fab」、および「F(ab’)2」が挙げられる。
【0026】
本発明の抗原結合分子の抗原結合ドメインは、同じエピトープに結合してもよい。エピ
トープは、配列番号9または111のアミノ酸配列を含むタンパク質中に存在してもよい
。あるいは、本発明の多重特異性抗原結合分子の抗原結合ドメインは、異なるエピトープ
に個別に結合してもよい。エピトープは、配列番号9または111のアミノ酸配列を含む
タンパク質中に存在してもよい。
【0027】
本発明の抗原結合分子の抗原結合ドメインは、「DLL3またはT細胞受容体複合体に
結合する」。すなわち、DLL3およびT細胞受容体複合体は、目的の好ましい抗原であ
る。本明細書で使用される場合、語句「抗原に結合する」とは、非特異的結合またはバッ
クグラウンド結合のレベルよりも高い特異的結合のレベルで目的の抗原に結合する、抗原
結合ドメイン、抗体、抗原結合分子、抗体可変断片など(以後、「抗原結合ドメインなど
」とする)の結合活性を指す。換言すれば、そのような抗原結合ドメインなどは、目的の
抗原に対して「特異的に/有意に抗原に結合する」。特異性を、本明細書に記載の、また
は当分野で公知の、親和性または結合活性を検出するための任意の方法によって測定する
ことができる。特異的結合の上記レベルは、有意であると当業者によって認識されるのに
十分に高いものであってよい。例えば、当業者が、好適な結合アッセイにおいて抗原結合
ドメインなどと、目的の抗原との間の結合の有意な、または比較的強いシグナルまたは値
を検出または観察することができる場合、その抗原結合ドメインなどは、目的の抗原に対
して「特異的に/有意に抗原に結合する」ということができる。語句「抗原に結合する」
は、当分野では、語句「特異的に/有意に抗原に結合する」と実質的に同じ意味を有する
ことがある。
【0028】
DLL3
本明細書で使用される場合、用語「DLL3」とは、別途指摘しない限り、霊長類(例
えば、ヒト)および齧歯類(例えば、マウスおよびラット)などの哺乳動物を含む、任意
の脊椎動物起源の任意の天然DLL3(デルタ様タンパク質3)を指す。この用語は、「
全長」のプロセシングされていないDLL3ならびに細胞中でのプロセシングの結果生じ
る任意の形態のDLL3を包含する。この用語はまた、DLL3の天然に存在するバリア
ント、例えば、スプライスバリアントまたは対立遺伝子バリアントも包含する。例示的な
ヒトDLL3のアミノ酸配列は、NCBI Reference Sequence(R
efSeq)NM_016941.3として公知であり、例示的なカニクイザルDLL3
のアミノ酸配列は、NCBI Reference Sequence XP_0055
89253.1として公知であり、例示的なマウスDLL3のアミノ酸配列は、NCBI
Reference Sequence NM_007866.2として公知である。
実施例で使用されるカニクイザルDLL3のアミノ酸配列は、配列番号8に示される。
【0029】
ヒトDLL3タンパク質は、C末端側に膜貫通(TM)領域および細胞内ドメインを含
み、N末端側にDSL(Notch)ドメインを含む(例えば、
図1を参照)。さらに、
DLL3は、N末端側からC末端側に向かって、6個の領域、EGF1~EGF6を含む
EGFドメインを有する。一部の実施形態では、本発明の抗原結合分子または抗体は、細
胞外ドメイン(ECD)、すなわち、TM領域またはC末端細胞内ドメインではなく、N
末端からTM領域の直前までのドメイン内のエピトープに結合する。本発明の分子/抗体
は、ECD内の上記ドメイン/領域のいずれかの中のエピトープに結合してもよい。好ま
しい実施形態では、本発明の分子/抗体は、EGF6からTM領域の直前までの領域内の
エピトープに結合する。より具体的には、本発明の分子/抗体は、ヒトDLL3中の配列
番号7に定義される領域内のエピトープに結合することができる。一部の実施形態では、
本発明の分子/抗体は、ヒトDLL3のEGF1、EGF2、EGF3、EGF4、EG
F5、もしくはEGF6領域またはEGF6からTM領域の直前までの領域、またはヒト
DLL3のEGF1、EGF2、EGF3、EGF4、EGF5、もしくはEGF6領域
またはEGF6からTM領域の直前までの領域内のエピトープに結合する。
【0030】
ヒトDLL3において、上記のドメイン/領域は、以下のアミノ酸残基(例えば、ww
w.uniprot.org/uniprot/Q9NYJ7またはWO2013/12
6746を参照)を有する:
細胞外ドメイン(ECD):1位~492位のアミノ酸残基;
DSLドメイン:176位~215位のアミノ酸残基;
EGFドメイン:216位~465位のアミノ酸残基;
EGF1領域:216位~249位のアミノ酸残基;
EGF2領域:274位~310位のアミノ酸残基;
EGF3領域:312位~351位のアミノ酸残基;
EGF4領域:353位~389位のアミノ酸残基;
EGF5領域:391位~427位のアミノ酸残基;
EGF6領域:429位~465位のアミノ酸残基;
EGF6からTM領域の直前までの領域:429位~492位のアミノ酸残基;
TM領域:493位~513位のアミノ酸残基;および
C末端細胞内ドメイン:516位~618位(または一部のアイソフォームでは、516
位~587位)のアミノ酸残基。上記のアミノ酸位置はまた、配列番号9に示されるアミ
ノ酸配列中のアミノ酸位置も指す。かくして、本発明の抗原結合分子または抗体は、ヒト
DLL3中の上記位置のアミノ酸残基を有する上記領域/ドメインに結合することができ
る。すなわち、本発明の抗原結合分子または抗体は、ヒトDLL3中の上記位置のアミノ
酸残基を有する上記領域/ドメイン内のエピトープに結合することができる。
【0031】
一部の実施形態では、その特異性のため、本発明の抗原結合分子/抗体は、ヒトDLL
3の上記領域/ドメイン、またはヒトDLL3の上記領域/ドメイン内のエピトープに特
異的に結合しない。一部の実施形態では、本発明の分子/抗体は、ヒトDLL3中の上記
位置のアミノ酸残基を有する上記領域/ドメインに特異的に結合しない。一部の実施形態
では、本発明の分子/抗体は、ヒトDLL3中の上記位置のアミノ酸残基を有する上記領
域/ドメイン内のエピトープに特異的に結合しない。これに関連して、「特異的に」は、
「実質的に」と言い換えてもよい。
【0032】
本明細書で使用される場合、語句「に特異的に結合する」とは、特異的結合を含む結合
レベルで目的の抗原/領域/ドメイン/エピトープに結合する抗原結合分子/抗体の活性
を指す。本明細書で使用される場合、語句「に特異的に結合する」とは、非特異的結合ま
たはバックグラウンド結合を含むが、特異的結合を含まない結合レベルで、目的のもので
はない抗原/領域/ドメイン/エピトープに結合する抗原結合分子/抗体の活性を指す。
特異性を、本明細書に記載の、または当分野で公知の任意の方法、例えば、本明細書に記
載のエピトープマッピングまたは競合アッセイによって測定することができる。非特異的
結合またはバックグラウンド結合の上記レベルは、0であってよいか、または0ではない
が、0に近いものであってもよいか、または当業者が技術的に無視するのに十分な非常に
低いものであってもよい。例えば、当業者が、好適な結合アッセイにおいて前記分子/抗
体と、目的のものではない抗原/領域/ドメイン/エピトープとの結合に関する有意な、
または相対的に強いシグナルを検出または観察できない場合、その分子/抗体は目的のも
のではない抗原/領域/ドメイン/エピトープ「に特異的に結合しない」ということがで
きる。語句「に特異的に結合しない」は、当分野では、語句「に結合しない」と実質的に
同じ意味を有することもある。
【0033】
本発明において使用されるDLL3は、上記の配列を有するDLL3タンパク質であっ
てよいか、または1つもしくは複数のアミノ酸の改変によって上記配列に由来する配列を
有する改変タンパク質であってもよい。1つまたは複数のアミノ酸の改変によって上記配
列に由来する配列を有する改変タンパク質の例は、上記アミノ酸配列との70%以上、好
ましくは、80%以上、より好ましくは、90%以上、さらにより好ましくは、95%以
上の同一性を有するポリペプチドを含んでもよい。あるいは、これらのDLL3タンパク
質の部分ペプチドを使用することができる。
【0034】
本発明において使用されるDLL3タンパク質は、その起源が限定されず、好ましくは
、ヒトまたはカニクイザルDLL3タンパク質である。
【0035】
一部の実施形態では、DLL3タンパク質について、DLL3 ECD断片タンパク質
(またはECDバリアント)を使用することができる。トランケーションの部位に応じて
、断片/バリアントは、N末端側からC末端側に向かって、DSLドメインからEGF6
まで、EGF1からEGF6まで、EGF2からEGF6まで、EGF3からEGF6ま
で、EGF4からEGF6まで、EGF5およびEGF6、またはEGF6を含んでもよ
い。断片/バリアントは、EGF6領域の直後から、TM領域の直前までに及ぶ領域をさ
らに含んでもよい。Flagタグを、当分野で周知の技術を使用して、断片/バリアント
のC末端に結合することができる。
【0036】
親和性
「親和性」とは、ある分子(例えば、抗原結合分子または抗体)の単一の結合部位と、
その結合パートナー(例えば、抗原)との非共有的相互作用の総和の強度を指す。別途指
摘しない限り、本明細書で使用される「結合親和性」とは、結合ペア(例えば、抗原結合
分子と抗原、または抗体と抗原)のメンバー間の1:1の相互作用を反映する固有の結合
親和性を指す。分子XのそのパートナーYに対する親和性は、一般に、解離定数(Kd)
によって表すことができる。親和性を、本明細書に記載のものを含む、当分野で公知の一
般的方法によって測定することができる。結合親和性を測定するための特異的な実証的お
よび例示的実施形態は、以下に記載される。
【0037】
親和性を決定するための方法
ある特定の実施形態では、本明細書に提供される抗原結合分子または抗体の抗原結合ド
メインは、その抗原について1μM以下、120nM以下、100nM以下、80nM以
下、70nM以下、50nM以下、40nM以下、30nM以下、20nM以下、10n
M以下、2nM以下、1nM以下、0.1nM以下、0.01nM以下、または0.00
1nM以下(例えば、10-8M以下、10-8M~10-13M、10-9M~10-
13M)の解離定数(Kd)を有する。ある特定の実施形態では、DLL3に関する抗体
/抗原結合分子の第1の抗原結合ドメインのKd値は、1~40、1~50、1~70、
1~80、30~50、30~70、30~80、40~70、40~80、または60
~80nMの範囲内にある。
【0038】
一実施形態では、Kdは、放射標識抗原結合アッセイ(RIA)によって測定される。
一実施形態では、RIAは、目的の抗体のFabバージョンおよびその抗原を用いて実施
される。例えば、抗原に対するFabの溶液結合親和性は、未標識抗原の滴定系列の存在
下で、Fabと、最小濃度の(125I)標識化された抗原とを平衡化させた後、抗Fa
b抗体でコーティングされたプレートを用いて結合した抗原を捕捉することによって測定
される(例えば、Chenら、J.Mol.Biol.293:865~881頁(19
99)を参照)。アッセイのための条件を確立するために、MICROTITER(登録
商標)マルチウェルプレート(Thermo Scientific)を、50mM炭酸
ナトリウム(pH9.6)中の5μg/mlの捕捉抗Fab抗体(Cappel Lab
s)で一晩コーティングした後、室温(約23℃)で2~5時間、PBS中の2%(w/
v)ウシ血清アルブミンでブロックする。非吸着プレート(Nunc#269620)中
で、100pMまたは26pMの[125I]-抗原を、目的のFabの連続希釈液と混
合する(例えば、Prestaら、Cancer Res.57:4593~4599頁
(1997)における、抗VEGF抗体、Fab-12の評価と一貫する)。次いで、目
的のFabを一晩インキュベートする;しかしながら、インキュベーションは、平衡に達
するのを確保するために、より長い期間(例えば、約65時間)にわたって継続してもよ
い。その後、混合物を、室温でのインキュベーションのために捕捉プレートに移す(例え
ば、1時間にわたって)。次いで、溶液を除去し、PBS中の0.1%ポリソルベート2
0(TWEEN-20(商標))でプレートを8回洗浄する。プレートが乾燥した時、1
50μL/ウェルのシンチラント(MICROSCINT-20(商標);Packar
d)を添加し、TOPCOUNT(商標)ガンマカウンター(Packard)上で10
分間、プレートを計測する。20%未満またはそれと等しい最大結合を与えるそれぞれの
Fabの濃度が、競合結合アッセイにおける使用のために選択される。
【0039】
別の実施形態によれば、Kdは、BIACORE(登録商標)表面プラズモン共鳴アッ
セイを使用して測定される。例えば、BIACORE(登録商標)-2000またはBI
ACORE(登録商標)-3000(BIAcore,Inc.、Piscataway
、NJ)を使用するアッセイを、約10応答単位(RU)の固相化された抗原CM5チッ
プを用いて25℃で実施する。一実施形態では、カルボキシメチル化デキストランバイオ
センサーチップ(CM5、BIACORE,Inc.)を、供給業者の指示書に従って、
N-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミドヒドロクロリド(
EDC)およびN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)で活性化する。約10応答単位
(RU)のカップリングしたタンパク質を達成するために、抗原を、10mM酢酸ナトリ
ウム、pH4.8を用いて、5μL/分の流量での注入前に5μg/ml(約0.2μM
)に希釈する。抗原の注入後、1Mのエタノールアミンを注入して、未反応の基をブロッ
クする。反応速度論測定のために、Fabの2倍連続希釈液(0.78nM~500nM
)を、約25μL/minの流量で、25℃にて0.05%ポリソルベート20(TWE
EN-20(商標))界面活性剤を含むPBS(PBST)中に注入する。結合速度(K
on)および解離速度(koff)を、結合および解離センサーグラムを同時にフィッテ
ィングすることにより、単純な1対1Langmuir結合モデル(BIACORE(登
録商標))Evaluation Softwareバージョン3.2)を使用して算出
する。平衡解離定数(Kd)は、比Koff/konとして算出される。例えば、Che
nら、J.Mol.Biol.293:865~881頁(1999)を参照。上記の表
面プラズモン共鳴アッセイにより、結合速度(on-rate)が106M-1s-1を
超える場合、撹拌キュベットを備えた、ストップフローを装備した分光光度計(Aviv
Instruments)または8000シリーズのSLM-AMINCO(商標)分
光光度計(Thermo Spectronic)などの、分光光度計中で測定された場
合に、高濃度の抗原の存在下、PBS、pH7.2中の20nMの抗抗原抗体(Fab型
)の25℃での蛍光放出強度(励起=295nm;放出=340nM、16nmバンドパ
ス)の増加または減少を測定する蛍光クエンチング技術を使用することによって、結合速
度を決定することができる。
【0040】
抗体の抗原結合ドメインの親和性を測定するための方法は、上に記載されており、当業
者であれば、他の抗原結合ドメインに関する親和性測定を実行することができる。
【0041】
抗体
本明細書における用語「抗体」は、最も広い意味で使用され、限定されるものではない
が、所望の抗原結合活性を示す限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、単一特
異性抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、および抗体断片を含む様々な抗
体構造を包含する。
【0042】
ある態様では、本発明は、多重特異性抗原結合分子または抗体を提供する。
一部の実施形態では、多重特異性抗原結合分子は、
(1)ヒトDLL3に結合する第1の抗原結合ドメインを含む第1のドメイン、および
(2)T細胞受容体複合体に結合する第2の抗原結合ドメインを含む第2のドメイン
を含み、
(1)の第1の抗原結合ドメインは、ヒトDLL3中の配列番号7に定義される領域内の
エピトープに結合する。
一部の実施形態では、多重特異性抗原結合分子中の、(1)の第1の抗原結合ドメイン
は、以下の(a1)~(a12):
(a1)配列番号27のHVR-H1配列、配列番号28のHVR-H2配列、配列番号
29のHVR-H3配列、配列番号30のHVR-L1配列、配列番号31のHVR-L
2配列、および配列番号32のHVR-L3配列を含む抗体可変断片;
(a2)配列番号33のHVR-H1配列、配列番号34のHVR-H2配列、配列番号
35のHVR-H3配列、配列番号36のHVR-L1配列、配列番号37のHVR-L
2配列、および配列番号38のHVR-L3配列を含む抗体可変断片;
(a3)配列番号39のHVR-H1配列、配列番号40のHVR-H2配列、配列番号
41のHVR-H3配列、配列番号42のHVR-L1配列、配列番号43のHVR-L
2配列、および配列番号44のHVR-L3配列を含む抗体可変断片;
(a4)配列番号45のHVR-H1配列、配列番号46のHVR-H2配列、配列番号
47のHVR-H3配列、配列番号48のHVR-L1配列、配列番号49のHVR-L
2配列、および配列番号50のHVR-L3配列を含む抗体可変断片;
(a5)配列番号51のHVR-H1配列、配列番号52のHVR-H2配列、配列番号
53のHVR-H3配列、配列番号54のHVR-L1配列、配列番号55のHVR-L
2配列、および配列番号56のHVR-L3配列を含む抗体可変断片;
(a6)配列番号27のHVR-H1配列、配列番号75のHVR-H2配列、配列番号
29のHVR-H3配列、配列番号30のHVR-L1配列、配列番号31のHVR-L
2配列、および配列番号32のHVR-L3配列を含む抗体可変断片;
(a7)配列番号27のHVR-H1配列、配列番号76のHVR-H2配列、配列番号
29のHVR-H3配列、配列番号30のHVR-L1配列、配列番号31のHVR-L
2配列、および配列番号32のHVR-L3配列を含む抗体可変断片;
(a8)配列番号77のHVR-H1配列、配列番号78のHVR-H2配列、配列番号
79のHVR-H3配列、配列番号36のHVR-L1配列、配列番号37のHVR-L
2配列、および配列番号38のHVR-L3配列を含む抗体可変断片;
(a9)配列番号77のHVR-H1配列、配列番号78のHVR-H2配列、配列番号
80のHVR-H3配列、配列番号36のHVR-L1配列、配列番号37のHVR-L
2配列、および配列番号38のHVR-L3配列を含む抗体可変断片;
(a10)配列番号77のHVR-H1配列、配列番号78のHVR-H2配列、配列番
号80のHVR-H3配列、配列番号36のHVR-L1配列、配列番号37のHVR-
L2配列、および配列番号81のHVR-L3配列を含む抗体可変断片;
(a11)(a1)~(a10)から選択される抗体可変断片のいずれかの同じエピトー
プに結合する抗体可変断片;
(a12)(a1)~(a10)から選択される抗体可変断片のいずれかの結合と競合す
る抗体可変断片
のいずれか1つである。
一部の実施形態では、多重特異性抗原結合分子中の、(1)の第1の抗原結合ドメイン
は、以下の(b1)~(b21):
(b1)配列番号15に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H1
配列、配列番号15に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2配
列、配列番号15に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配列
、配列番号16に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列、
配列番号16に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、お
よび配列番号16に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配列
を含む抗体可変断片;
(b2)配列番号25に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H1
配列、配列番号25に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2配
列、配列番号25に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配列
、配列番号26に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列、
配列番号26に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、お
よび配列番号26に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配列
を含む抗体可変断片;
(b3)配列番号19に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H1
配列、配列番号19に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2配
列、配列番号19に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配列
、配列番号20に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列、
配列番号20に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、お
よび配列番号20に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配列
を含む抗体可変断片;
(b4)配列番号23に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H1
配列、配列番号23に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2配
列、配列番号23に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配列
、配列番号24に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列、
配列番号24に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、お
よび配列番号24に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配列
を含む抗体可変断片;
(b5)配列番号11に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H1
配列、配列番号11に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2配
列、配列番号11に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配列
、配列番号12に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列、
配列番号12に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、お
よび配列番号12に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配列
を含む抗体可変断片;
(b6)配列番号13に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H1
配列、配列番号13に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2配
列、配列番号13に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配列
、配列番号14に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列、
配列番号14に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、お
よび配列番号14に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配列
を含む抗体可変断片;
(b7)配列番号17に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H1
配列、配列番号17に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2配
列、配列番号17に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配列
、配列番号18に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列、
配列番号18に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、お
よび配列番号18に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配列
を含む抗体可変断片;
(b8)配列番号21に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H1
配列、配列番号21に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2配
列、配列番号21に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配列
、配列番号22に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列、
配列番号22に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、お
よび配列番号22に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配列
を含む抗体可変断片;
(b9)配列番号85に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H1
配列、配列番号85に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2配
列、配列番号85に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配列
、配列番号93に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列、
配列番号93に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、お
よび配列番号93に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配列
を含む抗体可変断片;
(b10)配列番号63に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H
1配列、配列番号63に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2
配列、配列番号63に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配
列、配列番号72に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列
、配列番号72に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、
および配列番号72に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配
列を含む抗体可変断片;
(b11)配列番号64に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H
1配列、配列番号64に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2
配列、配列番号64に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配
列、配列番号72に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列
、配列番号72に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、
および配列番号72に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配
列を含む抗体可変断片;
(b12)配列番号65に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H
1配列、配列番号65に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2
配列、配列番号65に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配
列、配列番号72に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列
、配列番号72に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、
および配列番号72に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配
列を含む抗体可変断片;
(b13)配列番号66に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H
1配列、配列番号66に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2
配列、配列番号66に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配
列、配列番号73に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列
、配列番号73に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、
および配列番号73に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配
列を含む抗体可変断片;
(b14)配列番号67に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H
1配列、配列番号67に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2
配列、配列番号67に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配
列、配列番号73に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列
、配列番号73に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、
および配列番号73に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配
列を含む抗体可変断片;
(b15)配列番号67に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H
1配列、配列番号67に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2
配列、配列番号67に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配
列、配列番号74に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列
、配列番号74に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、
および配列番号74に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配
列を含む抗体可変断片;
(b16)配列番号68に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H
1配列、配列番号68に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2
配列、配列番号68に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配
列、配列番号73に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列
、配列番号73に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、
および配列番号73に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配
列を含む抗体可変断片;
(b17)配列番号69に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H
1配列、配列番号69に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2
配列、配列番号69に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配
列、配列番号73に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列
、配列番号73に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、
および配列番号73に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配
列を含む抗体可変断片;
(b18)配列番号70に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H
1配列、配列番号70に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2
配列、配列番号70に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配
列、配列番号73に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列
、配列番号73に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、
および配列番号73に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配
列を含む抗体可変断片;
(b19)配列番号71に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H
1配列、配列番号71に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2
配列、配列番号71に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配
列、配列番号73に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列
、配列番号73に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、
および配列番号73に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配
列を含む抗体可変断片;
(b20)(b1)~(b19)から選択される抗体可変断片のいずれか1つの同じエピ
トープに結合する抗体可変断片;
(b21)(b1)~(b19)から選択される抗体可変断片のいずれか1つの結合と競
合する抗体可変断片
のいずれか1つである。
一部の実施形態では、多重特異性抗原結合分子中の、(1)の第1の抗原結合ドメイン
は、以下の(c1)~(c22):
(c1)配列番号15のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号16のアミノ酸
配列を有する軽鎖可変領域;
(c2)配列番号25のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号26のアミノ酸
配列を有する軽鎖可変領域;
(c3)配列番号19のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号20のアミノ酸
配列を有する軽鎖可変領域;
(c4)配列番号23のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号24のアミノ酸
配列を有する軽鎖可変領域;
(c5)配列番号11のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号12のアミノ酸
配列を有する軽鎖可変領域;
(c6)配列番号13のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号14のアミノ酸
配列を有する軽鎖可変領域;
(c7)配列番号17のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号18のアミノ酸
配列を有する軽鎖可変領域;
(c8)配列番号21のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号22のアミノ酸
配列を有する軽鎖可変領域;
(c9)配列番号85のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号93のアミノ酸
配列を有する軽鎖可変領域;
(c10)配列番号63のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号72のアミノ
酸配列を有する軽鎖可変領域;
(c11)配列番号64のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号72のアミノ
酸配列を有する軽鎖可変領域;
(c12)配列番号65のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号72のアミノ
酸配列を有する軽鎖可変領域;
(c13)配列番号66のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号73のアミノ
酸配列を有する軽鎖可変領域;
(c14)配列番号67のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号73のアミノ
酸配列を有する軽鎖可変領域;
(c15)配列番号67のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号74のアミノ
酸配列を有する軽鎖可変領域;
(c16)配列番号68のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号72のアミノ
酸配列を有する軽鎖可変領域;
(c17)配列番号69のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号73のアミノ
酸配列を有する軽鎖可変領域;
(c18)配列番号70のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号73のアミノ
酸配列を有する軽鎖可変領域;
(c19)配列番号71のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号73のアミノ
酸配列を有する軽鎖可変領域;
(c20)(c1)~(c19)の重鎖可変領域のいずれか1つに対して80%を超える
同一性を有する重鎖可変領域と、(c1)~(c19)の軽鎖可変領域のいずれか1つに
対して80%を超える同一性を有する軽鎖可変領域;
(c21)(c1)~(c19)の重鎖可変領域のいずれか1つに対して90%を超える
同一性を有する重鎖可変領域と、(c1)~(c19)の軽鎖可変領域のいずれか1つに
対して90%を超える同一性を有する軽鎖可変領域;
(c22)(c1)~(c19)の重鎖可変領域のいずれか1つに対して95%を超える
同一性を有する重鎖可変領域と、(c1)~(c19)の軽鎖可変領域のいずれか1つに
対して95%を超える同一性を有する軽鎖可変領域
から選択される重鎖可変領域と軽鎖可変領域との組合せのいずれか1つを含む。
一部の実施形態では、多重特異性抗原結合分子は、細胞傷害活性を有する。より具体的
には、細胞傷害活性は、T細胞依存性細胞傷害活性(T細胞依存性細胞傷害(TDCC)
)である。
一部の実施形態では、多重特異性抗原結合分子中の、(2)における第2の抗原結合ド
メインは、CD3に結合する。より具体的には、一部の実施形態では、多重特異性抗原結
合分子中の、(2)における第2の抗原結合ドメインは、CD3イプシロン鎖に結合する
。
一部の実施形態では、多重特異性抗原結合分子中の、(2)における第2の抗原結合ド
メインは、T細胞受容体に結合する。
一部の実施形態では、多重特異性抗原結合分子中の、(2)における第2の抗原結合ド
メインは、以下の(d1)~(d12):
(d1)それぞれ、配列番号57に含まれるHVR-H1、HVR-H2およびHVR-
H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H1、HVR-H2およびHVR-H3配列と
、それぞれ、配列番号58に含まれるHVR-L1、HVR-L2およびHVR-L3領
域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1、HVR-L2およびHVR-L3配列とを含む
抗体可変断片;
(d2)それぞれ、配列番号98に含まれるHVR-H1、HVR-H2およびHVR-
H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H1、HVR-H2およびHVR-H3配列と
、それぞれ、配列番号103に含まれるHVR-L1、HVR-L2およびHVR-L3
領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1、HVR-L2およびHVR-L3配列とを含
む抗体可変断片;
(d3)それぞれ、配列番号99に含まれるHVR-H1、HVR-H2およびHVR-
H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H1、HVR-H2およびHVR-H3配列と
、それぞれ、配列番号103に含まれるHVR-L1、HVR-L2およびHVR-L3
領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1、HVR-L2およびHVR-L3配列とを含
む抗体可変断片;
(d4)それぞれ、配列番号100に含まれるHVR-H1、HVR-H2およびHVR
-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H1、HVR-H2およびHVR-H3配列
と、それぞれ、配列番号103に含まれるHVR-L1、HVR-L2およびHVR-L
3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1、HVR-L2およびHVR-L3配列とを
含む抗体可変断片;
(d5)それぞれ、配列番号101に含まれるHVR-H1、HVR-H2およびHVR
-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H1、HVR-H2およびHVR-H3配列
と、それぞれ、配列番号103に含まれるHVR-L1、HVR-L2およびHVR-L
3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1、HVR-L2およびHVR-L3配列とを
含む抗体可変断片;
(d6)それぞれ、配列番号102に含まれるHVR-H1、HVR-H2およびHVR
-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H1、HVR-H2およびHVR-H3配列
と、それぞれ、配列番号103に含まれるHVR-L1、HVR-L2およびHVR-L
3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1、HVR-L2およびHVR-L3配列とを
含む抗体可変断片;
(d7)それぞれ、配列番号298に含まれるHVR-H1、HVR-H2およびHVR
-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H1、HVR-H2およびHVR-H3配列
と、それぞれ、配列番号299に含まれるHVR-L1、HVR-L2およびHVR-L
3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1、HVR-L2およびHVR-L3配列とを
含む抗体可変断片;
(d8)それぞれ、配列番号300に含まれるHVR-H1、HVR-H2およびHVR
-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H1、HVR-H2およびHVR-H3配列
と、それぞれ、配列番号301に含まれるHVR-L1、HVR-L2およびHVR-L
3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1、HVR-L2およびHVR-L3配列とを
含む抗体可変断片;
(d9)それぞれ、配列番号302に含まれるHVR-H1、HVR-H2およびHVR
-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H1、HVR-H2およびHVR-H3配列
と、それぞれ、配列番号303に含まれるHVR-L1、HVR-L2およびHVR-L
3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1、HVR-L2およびHVR-L3配列とを
含む抗体可変断片;
(d10)配列番号302、304、306、308、310、312、314、316
、318、320、322、324、326、328、330、332、334、336
、338、340、342、344、346、348、350、352、354、356
、358、360、362、364、366、368、370、372、374、376
、378、380、382、384、386、388および390から選択されるいずれ
か1つに含まれるHVR-H1、HVR-H2およびHVR-H3領域のアミノ酸配列と
同一のHVR-H1、HVR-H2およびHVR-H3配列と、配列番号305、307
、309、311、313、315、317、319、321、323、325、327
、329、331、333、335、337、339、341、343、345、347
、349、351、353、355、357、359、361、363、365、367
、369、371、373、375、377、379、381、383、385、387
、389および391から選択されるいずれか1つに含まれるHVR-L1、HVR-L
2およびHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1、HVR-L2およびH
VR-L3配列とを含む抗体可変断片;
(d11)(d1)~(d10)から選択される抗体可変断片のいずれか1つの同じエピ
トープに結合する抗体可変断片;
(d12)(d1)~(d10)から選択される抗体可変断片のいずれか1つの結合と競
合する抗体可変断片
のいずれか1つである。
一部の実施形態では、多重特異性抗原結合分子中の、(2)における第2の抗原結合ド
メインは、以下の(e1)~(e12):
(e1)配列番号57のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号58のアミノ酸
配列を有する軽鎖可変領域;
(e2)配列番号98のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号103のアミノ
酸配列を有する軽鎖可変領域;
(e3)配列番号99のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号103のアミノ
酸配列を有する軽鎖可変領域;
(e4)配列番号100のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号103のアミ
ノ酸配列を有する軽鎖可変領域;
(e5)配列番号101のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号103のアミ
ノ酸配列を有する軽鎖可変領域;
(e6)配列番号102のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号103のアミ
ノ酸配列を有する軽鎖可変領域;
(e7)配列番号300のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号301のアミ
ノ酸配列を有する軽鎖可変領域;
(e8)配列番号302のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号303のアミ
ノ酸配列を有する軽鎖可変領域;
(e9)表2A中のアミノ酸配列の組合せのいずれか1つを有する重鎖可変領域と軽鎖可
変領域;
(e10)(e1)~(e9)の重鎖可変領域のいずれか1つに対して80%を超える同
一性を有する重鎖可変領域と、(e1)~(e9)の軽鎖可変領域のいずれか1つに対し
て80%を超える同一性を有する軽鎖可変領域;
(e11)(e1)~(e9)の重鎖可変領域のいずれか1つに対して90%を超える同
一性を有する重鎖可変領域と、(e1)~(e9)の軽鎖可変領域のいずれか1つに対し
て90%を超える同一性を有する軽鎖可変領域;
(e12)(e1)~(e9)の重鎖可変領域のいずれか1つに対して95%を超える同
一性を有する重鎖可変領域と、(e1)~(e9)の軽鎖可変領域のいずれか1つに対し
て95%を超える同一性を有する軽鎖可変領域
のいずれか1つである。
一部の実施形態では、多重特異性抗原結合分子中の、(2)における第2の抗原結合ド
メインは、以下の(j1)~(j5):
(j1)配列番号136のHVR-H1配列、配列番号137のHVR-H2配列、配列
番号138のHVR-H3配列、配列番号139のHVR-L1配列、配列番号140の
HVR-L2配列、および配列番号141のHVR-L3配列を含む抗体可変断片;
(j2)配列番号142のHVR-H1配列、配列番号143のHVR-H2配列、配列
番号144のHVR-H3配列、配列番号145のHVR-L1配列、配列番号146の
HVR-L2配列、および配列番号147のHVR-L3配列を含む抗体可変断片;
(j3)表2B中の組合せのいずれかから選択されるHVR配列を含む抗体可変断片;
(j4)(j1)~(j3)から選択される抗体可変断片のいずれかの同じエピトープに
結合する抗体可変断片;
(j5)(j1)~(j3)から選択される抗体可変断片のいずれかの結合と競合する抗
体可変断片
のいずれか1つである。
一部の実施形態では、多重特異性抗原結合分子は、
(3)Fcガンマ受容体に対する結合活性が低下したFc領域を含む第3のドメイン
をさらに含む。
一部の実施形態では、本発明は、
(1)ヒトDLL3に結合する第1の抗原結合ドメインを含む第1のドメイン、
(2)T細胞受容体複合体に結合する第2の抗原結合ドメインを含む第2のドメイン、お
よび
(3)Fcガンマ受容体に対する結合活性が低下したFc領域を含む第3のドメイン
を含む多重特異性抗原結合分子を提供する。
一部の実施形態では、多重特異性抗原結合分子中の、Fc領域は、配列番号112~1
15(IgG1~IgG4)のFc領域を構成するアミノ酸のいずれかにアミノ酸変異を
有するFc領域である。
一部の実施形態では、多重特異性抗原結合分子中の、Fc領域は、EUナンバリングに
よって特定される以下のアミノ酸位置:
220位、226位、229位、231位、232位、233位、234位、235位、
236位、237位、238位、239位、240位、264位、265位、266位、
267位、269位、270位、295位、296位、297位、298位、299位、
300位、325位、327位、328位、329位、330位、331位、および33
2位
から選択される少なくとも1個のアミノ酸の変異を有するFc領域である。
一部の実施形態では、多重特異性抗原結合分子は、二重特異性抗体である。
一部の実施形態では、二重特異性抗体は、モノクローナル抗体である。
好ましい実施形態では、上記の多重特異性抗原結合分子/二重特異性抗体/モノクロー
ナル抗体は、DLL3を発現する細胞に対するT細胞依存性細胞傷害(TDCC)活性を
有する。
【0043】
別の態様では、本発明は、ヒトDLL3中の配列番号7に定義される領域内のエピトー
プに結合する抗原結合分子を提供する。
一部の実施形態では、抗原結合分子は、以下の(f1)~(f11):
(f1)配列番号27のHVR-H1配列、配列番号28のHVR-H2配列、配列番号
29のHVR-H3配列、配列番号30のHVR-L1配列、配列番号31のHVR-L
2配列、および配列番号32のHVR-L3配列を含む抗体可変断片;
(f2)配列番号33のHVR-H1配列、配列番号34のHVR-H2配列、配列番号
35のHVR-H3配列、配列番号36のHVR-L1配列、配列番号37のHVR-L
2配列、および配列番号38のHVR-L3配列を含む抗体可変断片;
(f3)配列番号39のHVR-H1配列、配列番号40のHVR-H2配列、配列番号
41のHVR-H3配列、配列番号42のHVR-L1配列、配列番号43のHVR-L
2配列、および配列番号44のHVR-L3配列を含む抗体可変断片;
(f4)配列番号45のHVR-H1配列、配列番号46のHVR-H2配列、配列番号
47のHVR-H3配列、配列番号48のHVR-L1配列、配列番号49のHVR-L
2配列、および配列番号50のHVR-L3配列を含む抗体可変断片;
(f5)配列番号27のHVR-H1配列、配列番号75のHVR-H2配列、配列番号
29のHVR-H3配列、配列番号30のHVR-L1配列、配列番号31のHVR-L
2配列、および配列番号32のHVR-L3配列を含む抗体可変断片;
(f6)配列番号27のHVR-H1配列、配列番号76のHVR-H2配列、配列番号
29のHVR-H3配列、配列番号30のHVR-L1配列、配列番号31のHVR-L
2配列、および配列番号32のHVR-L3配列を含む抗体可変断片;
(f7)配列番号77のHVR-H1配列、配列番号78のHVR-H2配列、配列番号
79のHVR-H3配列、配列番号36のHVR-L1配列、配列番号37のHVR-L
2配列、および配列番号38のHVR-L3配列を含む抗体可変断片;
(f8)配列番号77のHVR-H1配列、配列番号78のHVR-H2配列、配列番号
80のHVR-H3配列、配列番号36のHVR-L1配列、配列番号37のHVR-L
2配列、および配列番号38のHVR-L3配列を含む抗体可変断片;
(f9)配列番号77のHVR-H1配列、配列番号78のHVR-H2配列、配列番号
80のHVR-H3配列、配列番号36のHVR-L1配列、配列番号37のHVR-L
2配列、および配列番号81のHVR-L3配列を含む抗体可変断片;
(f10)(f1)~(f9)から選択される抗体可変断片のいずれかの同じエピトープ
に結合する抗体可変断片;
(f11)(f1)~(f9)から選択される抗体可変断片のいずれかの結合と競合する
抗体可変断片
のいずれか1つを含む抗原結合ドメインを含む。
一部の実施形態では、抗原結合分子は、以下の(g1)~(g20):
(g1)配列番号15に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H1
配列、配列番号15に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2配
列、配列番号15に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配列
、配列番号16に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列、
配列番号16に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、お
よび配列番号16に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配列
を含む抗体可変断片;
(g2)配列番号25に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H1
配列、配列番号25に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2配
列、配列番号25に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配列
、配列番号26に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列、
配列番号26に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、お
よび配列番号26に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配列
を含む抗体可変断片;
(g3)配列番号19に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H1
配列、配列番号19に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2配
列、配列番号19に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配列
、配列番号20に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列、
配列番号20に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、お
よび配列番号20に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配列
を含む抗体可変断片;
(g4)配列番号23に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H1
配列、配列番号23に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2配
列、配列番号23に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配列
、配列番号24に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列、
配列番号24に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、お
よび配列番号24に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配列
を含む抗体可変断片;
(g5)配列番号11に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H1
配列、配列番号11に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2配
列、配列番号11に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配列
、配列番号12に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列、
配列番号12に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、お
よび配列番号12に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配列
を含む抗体可変断片;
(g6)配列番号13に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H1
配列、配列番号13に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2配
列、配列番号13に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配列
、配列番号14に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列、
配列番号14に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、お
よび配列番号14に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配列
を含む抗体可変断片;
(g7)配列番号17に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H1
配列、配列番号17に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2配
列、配列番号17に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配列
、配列番号18に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列、
配列番号18に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、お
よび配列番号18に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配列
を含む抗体可変断片;
(g8)配列番号21に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H1
配列、配列番号21に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2配
列、配列番号21に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配列
、配列番号22に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列、
配列番号22に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、お
よび配列番号22に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配列
を含む抗体可変断片;
(g9)配列番号63に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H1
配列、配列番号63に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2配
列、配列番号63に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配列
、配列番号72に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列、
配列番号72に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、お
よび配列番号72に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配列
を含む抗体可変断片;
(g10)配列番号64に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H
1配列、配列番号64に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2
配列、配列番号64に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配
列、配列番号72に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列
、配列番号72に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、
および配列番号72に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配
列を含む抗体可変断片;
(g11)配列番号65に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H
1配列、配列番号65に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2
配列、配列番号65に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配
列、配列番号72に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列
、配列番号72に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、
および配列番号72に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配
列を含む抗体可変断片;
(g12)配列番号66に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H
1配列、配列番号66に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2
配列、配列番号66に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配
列、配列番号73に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列
、配列番号73に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、
および配列番号73に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配
列を含む抗体可変断片;
(g13)配列番号67に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H
1配列、配列番号67に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2
配列、配列番号67に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配
列、配列番号73に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列
、配列番号73に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、
および配列番号73に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配
列を含む抗体可変断片;
(g14)配列番号67に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H
1配列、配列番号67に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2
配列、配列番号67に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配
列、配列番号74に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列
、配列番号74に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、
および配列番号74に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配
列を含む抗体可変断片;
(g15)配列番号68に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H
1配列、配列番号68に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2
配列、配列番号68に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配
列、配列番号73に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列
、配列番号73に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、
および配列番号73に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配
列を含む抗体可変断片;
(g16)配列番号69に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H
1配列、配列番号69に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2
配列、配列番号69に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配
列、配列番号73に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列
、配列番号73に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、
および配列番号73に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配
列を含む抗体可変断片;
(g17)配列番号70に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H
1配列、配列番号70に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2
配列、配列番号70に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配
列、配列番号73に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列
、配列番号73に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、
および配列番号73に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配
列を含む抗体可変断片;
(g18)配列番号71に含まれるHVR-H1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H
1配列、配列番号71に含まれるHVR-H2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H2
配列、配列番号71に含まれるHVR-H3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-H3配
列、配列番号73に含まれるHVR-L1領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L1配列
、配列番号73に含まれるHVR-L2領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L2配列、
および配列番号73に含まれるHVR-L3領域のアミノ酸配列と同一のHVR-L3配
列を含む抗体可変断片;
(g19)(g1)~(g18)から選択される抗体可変断片のいずれか1つの同じエピ
トープに結合する抗体可変断片;
(g20)(g1)~(g18)から選択される抗体可変断片のいずれか1つの結合と競
合する抗体可変断片
のいずれか1つを含む抗原結合ドメインを含む。
一部の実施形態では、抗原結合分子は、以下の(h1)~(h21):
(h1)配列番号15のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号16のアミノ酸
配列を有する軽鎖可変領域;
(h2)配列番号25のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号26のアミノ酸
配列を有する軽鎖可変領域;
(h3)配列番号19のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号20のアミノ酸
配列を有する軽鎖可変領域;
(h4)配列番号23のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号24のアミノ酸
配列を有する軽鎖可変領域;
(h5)配列番号11のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号12のアミノ酸
配列を有する軽鎖可変領域;
(h6)配列番号13のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号14のアミノ酸
配列を有する軽鎖可変領域;
(h7)配列番号17のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号18のアミノ酸
配列を有する軽鎖可変領域;
(h8)配列番号21のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号22のアミノ酸
配列を有する軽鎖可変領域;
(h9)配列番号63のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号72のアミノ酸
配列を有する軽鎖可変領域;
(h10)配列番号64のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号72のアミノ
酸配列を有する軽鎖可変領域;
(h11)配列番号65のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号72のアミノ
酸配列を有する軽鎖可変領域;
(h12)配列番号66のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号73のアミノ
酸配列を有する軽鎖可変領域;
(h13)配列番号67のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号73のアミノ
酸配列を有する軽鎖可変領域;
(h14)配列番号67のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号74のアミノ
酸配列を有する軽鎖可変領域;
(h15)配列番号68のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号72のアミノ
酸配列を有する軽鎖可変領域;
(h16)配列番号69のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号73のアミノ
酸配列を有する軽鎖可変領域;
(h17)配列番号70のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号73のアミノ
酸配列を有する軽鎖可変領域;
(h18)配列番号71のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号73のアミノ
酸配列を有する軽鎖可変領域;
(h19)(h1)~(h18)の重鎖可変領域のいずれか1つに対して80%を超える
同一性を有する重鎖可変領域と、(h1)~(h18)の軽鎖可変領域のいずれか1つに
対して80%を超える同一性を有する軽鎖可変領域;
(h20)(h1)~(h18)の重鎖可変領域のいずれか1つに対して90%を超える
同一性を有する重鎖可変領域と、(h1)~(h18)の軽鎖可変領域のいずれか1つに
対して90%を超える同一性を有する軽鎖可変領域;
(h21)(h1)~(h18)の重鎖可変領域のいずれか1つに対して95%を超える
同一性を有する重鎖可変領域と、(h1)~(h18)の軽鎖可変領域のいずれか1つに
対して95%を超える同一性を有する軽鎖可変領域
のいずれか1つを含む抗原結合ドメインを含む。
一部の実施形態では、抗原結合分子は、細胞傷害活性を有する。
一部の実施形態では、抗原結合分子における、細胞傷害活性は、抗体依存性細胞傷害ま
たは補体依存性細胞傷害である。
一部の実施形態では、抗原結合分子は、内在化活性を有する。
一部の実施形態では、抗原結合分子は、毒性化合物にコンジュゲートされている。
一部の実施形態では、抗原結合分子は、抗体である。
一部の実施形態では、抗原結合分子は、モノクローナル抗体である。
一部の実施形態では、本発明は、抗体を含む抗体-薬物コンジュゲート化合物を提供す
る。
【0044】
抗体のクラス
抗体の「クラス」とは、その重鎖が有する定常ドメインまたは定常領域の型を指す。5
つの主要な抗体クラス:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMが存在し、これ
らのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3
、IgG4、IgA1、およびIgA2にさらに分けることができる。免疫グロブリンの
異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、アルファ、デルタ、イプシロン
、ガンマおよびミューと呼ばれる。好ましい実施形態では、本発明の抗体は、IgG型抗
体である。
【0045】
フレームワーク
「フレームワーク」または「FR」とは、超可変領域(HVR)残基以外の可変ドメイ
ン残基を指す。可変ドメインのFRは、一般的には、4つのFRドメイン:FR1、FR
2、FR3、およびFR4からなる。したがって、HVRおよびFR配列は一般に、VH
(またはVL)中に以下の配列:FR1-H1(L1)-FR2-H2(L2)-FR3
-H3(L3)-FR4に現れる。
【0046】
ヒトコンセンサスフレームワーク
「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、選択されたヒト免疫グロブリンVLまたはV
Hフレームワーク配列中に最も一般的に存在するアミノ酸残基を表すフレームワークであ
る。一般的には、それらの選択されたヒト免疫グロブリンVLまたはVH配列は、可変ド
メイン配列のサブグループに由来する。一般的には、配列のサブグループは、Kabat
ら、Sequences of Proteins of Immunological
Interest、第5版、NIH Publication 91-3242、Be
thesda MD(1991)、vols.1-3に記載されたようなサブグループで
ある。一実施形態では、VLについて、サブグループは、Kabatら、上掲に記載のよ
うなサブグループカッパIである。一実施形態では、VHについて、サブグループは、K
abatら、上掲に記載のようなサブグループIIIである。
【0047】
HVR
本明細書で使用される場合、用語「超可変領域」または「HVR」とは、配列において
超可変性である(「相補性決定領域」または「CDR」)、および/または構造的に定義
されたループ(「超可変ループ」)を形成する、および/または抗原接触残基(「抗原接
触」)を含有する、抗体可変ドメインのそれぞれの領域を指す。一般に、抗体は、3個は
VH中に(H1、H2、H3)、3個はVL中に(L1、L2、L3)、6個のHVRを
含む。本明細書における例示的なHVRは、
(a)アミノ酸残基26~32(L1)、50~52(L2)、91~96(L3)、2
6~32(H1)、53~55(H2)、および96~101(H3)に存在する超可変
ループ(ChothiaおよびLesk、J.Mol.Biol.196:901~91
7頁(1987));
(b)アミノ酸残基24~34(L1)、50~56(L2)、89~97(L3)、3
1~35b(H1)、50~65(H2)、および95~102(H3)に存在するCD
R(Kabatら、Sequences of Proteins of Immuno
logical Interest、第5版、Public Health Servi
ce、National Institutes of Health、Bethesd
a MD(1991));
(c)アミノ酸残基27c~36(L1)、46~55(L2)、89~96(L3)、
30~35b(H1)、47~58(H2)、および93~101(H3)に存在する抗
原接触(MacCallumら、J.Mol.Biol.262:732~745頁(1
996));ならびに
(d)HVRアミノ酸残基46~56(L2)、47~56(L2)、48~56(L2
)、49~56(L2)、26~35(H1)、26~35b(H1)、49~65(H
2)、93~102(H3)、および94~102(H3)を含む、(a)、(b)、お
よび/または(c)の組合せ
を含む。
別途指摘しない限り、HVR残基および可変ドメイン中の他の残基(例えば、FR残基
)は、本明細書では、Kabatら、上掲に従ってナンバリングされる。
【0048】
可変領域
用語「可変領域」または「可変ドメイン」とは、抗体の抗原への結合に関与する抗体重
鎖または軽鎖のドメインを指す。天然抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメイン(それぞれ、
VHおよびVL)は、一般に、類似する構造を有し、それぞれのドメインは、4個の保存
されたフレームワーク領域(FR)および3個の超可変領域(HVR)を含む。(例えば
、Kindtら、Kuby Immunology、第6版、W.H.Freeman
and Co.、91頁(2007)を参照)。単一のVHまたはVLドメインは、抗原
結合特異性を付与するのに十分なものでありうる。さらに、特定の抗原に結合する抗体を
、その抗原に結合する抗体に由来するVHまたはVLドメインを使用して単離して、それ
ぞれ、相補的なVLまたはVHドメインのライブラリーをスクリーニングすることができ
る。例えば、Portolanoら、J.Immunol.150:880~887頁(
1993);Clarksonら、Nature 352:624~628頁(1991
)を参照。
【0049】
キメラ抗体
用語「キメラ」抗体とは、重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の供給源または種に
由来するが、重鎖および/または軽鎖の残りの部分が、異なる供給源または種に由来する
抗体を指す。同様に、用語「キメラ抗体可変ドメイン」とは、重鎖および/または軽鎖可
変領域の一部が、特定の供給源または種に由来するが、重鎖および/または軽鎖可変領域
の残りの部分が、異なる供給源または種に由来する抗体可変領域を指す。
【0050】
ヒト化抗体
「ヒト化」抗体とは、非ヒトHVRに由来するアミノ酸残基と、ヒトFRに由来するア
ミノ酸残基とを含むキメラ抗体を指す。ある特定の実施形態では、ヒト化抗体は、HVR
(例えば、CDR)の全部または実質的に全部が非ヒト抗体のものに対応し、FRの全部
または実質的に全部がヒト抗体のものに対応する、少なくとも1つ、典型的には2つの可
変ドメインの実質的に全部を含むであろう。ヒト化抗体は、ヒト抗体に由来する抗体定常
領域の少なくとも一部を含んでもよい。「ヒト化型」の抗体、例えば、非ヒト抗体とは、
ヒト化を受けた抗体を指す。「ヒト化抗体可変領域」とは、ヒト化抗体の可変領域を指す
。
【0051】
ヒト抗体
「ヒト抗体」は、ヒトもしくはヒト細胞によって産生される、またはヒト抗体レパート
リーもしくは他のヒト抗体コード配列を利用する非ヒト起源に由来する抗体のものに対応
するアミノ酸配列を有するものである。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含
むヒト化抗体を具体的に除外する。「ヒト抗体可変領域」とは、ヒト抗体の可変領域を指
す。
【0052】
所望の結合活性を有する抗体を製造する方法
所望の結合活性を有する抗体を製造する方法は、当業者には公知である。以下は、上記の
DLL3に結合する抗体(抗DLL3抗体)を製造する方法を記載する例である。T細胞
受容体複合体などに結合する抗体を、以下に記載のように生産することもできる。
【0053】
抗DLL3抗体を、公知の方法を使用して、ポリクローナルまたはモノクローナル抗体
として得ることができる。好ましく生産される抗DLL3抗体は、哺乳動物に由来するモ
ノクローナル抗体である。そのような哺乳動物由来モノクローナル抗体は、遺伝子工学技
術によって抗体遺伝子を担持する発現ベクターで形質転換されたハイブリドーマまたは宿
主細胞により産生される抗体を含む。
【0054】
モノクローナル抗体産生ハイブリドーマを、例えば、以下に記載されるような公知の技
術を使用して生成することができる。具体的には、哺乳動物を、感作抗原としてDLL3
タンパク質を使用して従来の免疫化方法によって免疫化する。得られる免疫細胞を、従来
の細胞融合方法により公知の親細胞と融合する。次いで、抗DLL3抗体を産生するハイ
ブリドーマを、従来のスクリーニング方法を使用するモノクローナル抗体産生細胞のスク
リーニングによって選択することができる。
【0055】
具体的には、モノクローナル抗体は、以下に記載されるように調製される。まず、ヌク
レオチド配列がNCBI Reference Sequence NM_016941
.3またはXP005589253.1に開示されたDLL3遺伝子を発現させて、抗体
調製のための感作抗原として使用されるDLL3タンパク質を生産することができる。あ
るいは、DLL3の細胞外ドメイン(ECD)をコードするポリヌクレオチドを発現させ
て、DLL3 ECD含有タンパク質を生産することができる。すなわち、全長DLL3
またはDLL3 ECDをコードする遺伝子配列を、公知の発現ベクターに挿入し、適切
な宿主細胞をこのベクターで形質転換する。所望の全長DLL3またはDLL3 ECD
タンパク質は、公知の方法によって宿主細胞またはその培養上清から精製される。あるい
は、感作抗原として精製された天然のDLL3タンパク質を使用することができる。
精製された全長DLL3またはDLL3 ECDタンパク質を、哺乳動物の免疫化にお
ける使用のための感作抗原として使用することができる。全長DLL3またはDLL3
ECDの部分ペプチドを、感作抗原として使用することもできる。この事例では、部分ペ
プチドを、DLL3アミノ酸配列からの化学的合成によって得ることもできる。さらに、
それらを、DLL3遺伝子の一部を発現ベクター中に組み込み、それを発現させることに
よって得ることもできる。さらに、それらを、プロテアーゼを使用してDLL3タンパク
質を分解することによって得ることもできるが、部分ペプチドとして使用されるDLL3
ペプチドの領域およびサイズは、特定の実施形態に特に限定されない。好ましい領域とし
て、アミノ酸配列に由来する任意の配列を選択することができる。感作抗原として使用さ
れるペプチドを構成するアミノ酸の数は、少なくとも5つ以上、または好ましくは、例え
ば、6つ以上、または7つ以上である。より具体的には、8~50個の残基または好まし
くは、10~30個の残基からなるペプチドを、感作抗原として使用することができる。
【0056】
あるいは、感作抗原として、全長DLL3またはDLL3 ECDタンパク質の所望の
部分ポリペプチドまたはペプチドと、異なるポリペプチドとを融合することによって調製
される融合タンパク質を使用することができる。例えば、抗体Fc断片およびペプチドタ
グが、感作抗原として使用される融合タンパク質を生産するために好ましく使用される。
そのような融合タンパク質の発現のためのベクターを、2つ以上の所望のポリペプチド断
片をコードする遺伝子を、インフレームで融合し、融合遺伝子を上記の発現ベクター中に
挿入することによって構築することができる。融合タンパク質を製造する方法は、Mol
ecular Cloning、第2版(Sambrook,J.ら、Molecula
r Cloning、第2版、9.47~9.58(1989)Cold Spring
Harbor Lab.Press)に記載されている。感作抗原として使用されるD
LL3を調製するための方法、およびDLL3を使用する免疫化方法も、後に本明細書の
実施例に記載される。
【0057】
感作抗原で免疫化される哺乳動物に関しては特に制限はない。しかしながら、細胞融合
のために使用される親細胞との適合性を考慮することによって哺乳動物を選択することが
好ましい。一般に、マウス、ラット、およびハムスター、ウサギなどの齧歯類、およびサ
ルが好ましく使用される。
【0058】
上記動物は、公知の方法によって感作抗原で免疫化される。一般に、実施される免疫化
方法としては、例えば、感作抗原の哺乳動物への腹腔内または皮下注射が挙げられる。具
体的には、感作抗原を、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)、生理食塩水などで適切に希釈
する。必要に応じて、完全フロイントアジュバントなどの従来のアジュバントを、抗原と
混合し、混合物を乳化する。次いで、感作抗原を、4~21日間隔で数回、哺乳動物に投
与する。適切な担体を、感作抗原による免疫化において使用することができる。特に、感
作抗原として低分子量の部分ペプチドを使用する場合、免疫化のために、感作抗原ペプチ
ドを、アルブミンまたはキーホールリンペットヘモシアニンなどの担体タンパク質にカッ
プリングさせることが望ましいことがある。
【0059】
あるいは、所望の抗体を産生するハイブリドーマを、以下に記載されるDNA免疫化を
使用して調製することができる。DNA免疫化は、動物における抗原タンパク質をコード
する遺伝子の発現を可能にするように構築されたベクターDNAを投与する結果として免
疫化された動物において感作抗原を発現させることによって免疫刺激を提供する免疫化方
法である。タンパク質抗原が、免疫化される動物に投与される従来の免疫化方法と比較し
て、DNA免疫化は、
- DLL3などの膜タンパク質の構造を保持しながら、免疫刺激を提供することができ
る;および
- 免疫化のために抗原を精製する必要がない、
といった点で優れていると期待される。
【0060】
DNA免疫化を使用して本発明のモノクローナル抗体を調製するために、まず、DDL
3タンパク質を発現するDNAを、免疫化しようとする動物に投与する。DLL3をコー
ドするDNAを、PCRなどの公知の方法によって合成することができる。得られるDN
Aを、適切な発現ベクターに挿入した後、これを、免疫化しようとする動物に投与する。
好ましく使用される発現ベクターとしては、例えば、pcDNA3.1などの市販の発現
ベクターが挙げられる。ベクターを、従来の方法を使用して生物に投与することができる
。例えば、DNA免疫化を、免疫化しようとする動物の体内の細胞に発現ベクターでコー
ティングされた金粒子を導入するための遺伝子銃を使用することによって実施する。DL
L3を認識した抗体を、WO2011/093097に記載の方法によって生産すること
もできる。
【0061】
上記の哺乳動物を免疫化した後、DLL3結合抗体の力価の増加を、血清中で確認する
。次いで、免疫細胞を哺乳動物から収集した後、細胞融合にかける。特に、脾細胞が、免
疫細胞として好ましく使用される。
【0062】
哺乳動物ミエローマ細胞を、上記免疫細胞と融合される細胞として使用する。ミエロー
マ細胞は、好ましくは、スクリーニングのための好適な選択マーカーを含む。選択マーカ
ーは、特定の培養条件下でのその生存(または死滅)に関する特徴を細胞に付与する。ヒ
ポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ欠損(以後、HGPRT欠損
と省略される)およびチミジンキナーゼ欠損(以後、TK欠損と省略される)が、選択マ
ーカーとして公知である。HGPRTまたはTK欠損を有する細胞は、ヒポキサンチン-
アミノプテリン-チミジン感受性(以後、HAT感受性と省略される)を有する。HAT
感受性細胞は、HAT選択培地中でDNAを合成することができず、かくして殺傷される
。しかしながら、細胞を正常細胞と融合した場合、それらは正常細胞のサルベージ経路を
使用してDNA合成を継続することができ、したがって、それらはHAT選択培地中でも
増殖することができる。
【0063】
HGPRT欠損およびTK欠損細胞を、それぞれ、6-チオグアニン、8-アザグアニ
ン(以後、8AGと省略される)、または5’-ブロモデオキシウリジンを含有する培地
中で選択することができる。正常細胞は、これらのピリミジンアナログをそのDNA中に
組み込むため、殺傷される。一方、これらの酵素が欠損した細胞は、これらのピリミジン
アナログを組み込むことができないため、選択培地中で生存することができる。さらに、
ネオマイシン耐性遺伝子によって提供されるG418耐性と呼ばれる選択マーカーは、2
-デオキシストレプトアミン抗生物質(ゲンタマイシンアナログ)に対する耐性を付与す
る。細胞融合にとって好適である様々な型のミエローマ細胞が公知である。
【0064】
例えば、以下の細胞を含むミエローマ細胞を、好ましく使用することができる:
P3(P3x63Ag8.653)(J.Immunol.(1979)123(4)、
1548~1550頁);
P3x63Ag8U.1(Current Topics in Microbiolo
gy and Immunology(1978)81、1~7頁);
NS-1(C.Eur.J.Immunol.(1976)6(7)、511~519頁
);
MPC-11(Cell(1976)8(3)、405~415頁);
SP2/0(Nature(1978)276(5685)、269~270頁);
FO(J.Immunol.Methods(1980)35(1-2)、1~21頁)
;
S194/5.XXO.BU.1(J.Exp.Med.(1978)148(1)、3
13~323頁);
R210(Nature(1979)277(5692)、131~133頁)など。
【0065】
免疫細胞とミエローマ細胞との細胞融合は、本質的には公知の方法、例えば、Kohl
erおよびMilsteinら(Methods Enzymol.(1981)73:
3~46頁)による方法を使用して実行される。
より具体的には、細胞融合を、例えば、細胞融合促進剤の存在下、従来の培養培地中で
実行することができる。融合促進剤としては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG
)およびセンダイウイルス(HVJ)が挙げられる。必要に応じて、融合効率を改善する
ために、ジメチルスルホキシドなどの補助物質も添加する。
免疫細胞のミエローマ細胞に対する比を、当業者自身の裁量で決定してもよく、例えば
、1~10個の免疫細胞ごとに1個のミエローマ細胞が好ましい。細胞融合のために使用
される培養培地としては、例えば、RPMI1640培地およびMEM培地などの、ミエ
ローマ細胞株の増殖にとって好適な培地、ならびにこの型の細胞培養のために使用される
他の従来の培養培地が挙げられる。さらに、ウシ胎仔血清(FCS)などの血清添加物を
、培養培地に添加することが好ましい。
【0066】
細胞融合のために、上記の免疫細胞およびミエローマ細胞の所定量を、上記の培養培地
中でよく混合する。次いで、約37℃に予め温めたPEG溶液(例えば、平均分子量が約
1,000~6,000である)を、一般的には、30%~60%(w/v)の濃度でそ
れに添加する。これを穏やかに混合して、所望の融合細胞(ハイブリドーマ)を生成する
。次いで、上記の適切な培養培地を徐々に細胞に添加し、これを繰り返し遠心分離して、
上清を除去する。かくして、ハイブリドーマの増殖にとって好ましくない細胞融合剤など
を除去することができる。
【0067】
かくして得られたハイブリドーマを、従来の選択培地、例えば、HAT培地(ヒポキサ
ンチン、アミノプテリン、およびチミジンを含有する培養培地)を使用する培養によって
選択することができる。所望のハイブリドーマ以外の細胞(非融合細胞)を、十分な期間
にわたって、上記のHAT培地中での培養を継続することによって殺傷することができる
。典型的には、その期間は、数日から数週間である。次いで、所望の抗体を産生するハイ
ブリドーマをスクリーニングし、従来の限界希釈法によって単一にクローニングする。
【0068】
かくして得られたハイブリドーマを、細胞融合に使用されるミエローマが有する選択マ
ーカーに基づく選択培地を使用して選択することができる。例えば、HGPRTまたはT
K欠損細胞を、HAT培地(ヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジンを含有す
る培養培地)を使用する培養によって選択することができる。具体的には、HAT感受性
ミエローマ細胞を細胞融合のために使用する場合、正常細胞と上手く融合した細胞は、H
AT培地中で選択的に増殖することができる。所望のハイブリドーマ以外の細胞(非融合
細胞)を、十分な期間にわたって、上記のHAT培地中での培養を継続することによって
殺傷することができる。具体的には、所望のハイブリドーマを、一般的には数日から数週
間にわたる培養によって選択することができる。次いで、所望の抗体を産生するハイブリ
ドーマをスクリーニングし、従来の限界希釈法によって単一にクローニングする。
【0069】
好ましくは、所望の抗体を、既知の抗原/抗体反応に基づくスクリーニング方法によっ
て選択し、単一にクローニングすることができる。例えば、DLL3結合モノクローナル
抗体は、細胞表面上に発現されるDLL3に結合することができる。そのようなモノクロ
ーナル抗体を、蛍光活性化細胞選別(FACS)によってスクリーニングすることができ
る。FACSは、レーザー光線を使用して、蛍光抗体と接触させた細胞を分析すること、
および個々の細胞から放出された蛍光を測定することによって、抗体の細胞表面への結合
を評価するシステムである。
【0070】
FACSにより本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマをスクリーニン
グするために、DLL3発現細胞を最初に調製する。スクリーニングに好ましく使用され
る細胞は、DLL3が強制的に発現される哺乳動物細胞である。対照として、細胞表面D
LL3に結合する抗体の活性を、宿主細胞として非形質転換哺乳動物細胞を使用して選択
的に検出することができる。具体的には、抗DLL3モノクローナル抗体を産生するハイ
ブリドーマを、DLL3を強制的に発現する細胞には結合するが、宿主細胞には結合しな
い抗体を産生するハイブリドーマを選択することによって単離することができる。
【0071】
あるいは、固相化されたDLL3発現細胞に結合する抗体の活性を、ELISAの原理
に基づいて評価することができる。例えば、DLL3発現細胞を、ELISAプレートの
ウェルに固相化する。ハイブリドーマの培養上清を、ウェル中の固相化された細胞と接触
させ、固相化された細胞に結合する抗体を検出する。モノクローナル抗体がマウスに由来
する場合、細胞に結合した抗体を、抗マウス免疫グロブリン抗体を使用して検出すること
ができる。抗原結合能力を有する所望の抗体を産生するハイブリドーマを、上記のスクリ
ーニングによって選択し、それらを限界希釈法などによってクローニングすることができ
る。
【0072】
かくして調製されたモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを、従来の培養培地中で継
代し、長期間にわたって液体窒素中で保存することができる。
【0073】
上記のハイブリドーマを、従来の方法によって培養し、所望のモノクローナル抗体を、
培養上清から調製することができる。あるいは、ハイブリドーマを適合する哺乳動物に投
与し、そこで増殖させ、モノクローナル抗体を、腹水中で調製する。前者の方法は、高純
度の抗体を調製するのに好適である。
【0074】
好ましくは、上記ハイブリドーマなどの抗体産生細胞からクローニングされる抗体遺伝
子によりコードされる抗体を使用することもできる。クローニングされた抗体遺伝子を、
適切なベクター中に挿入し、これを宿主中に導入して、遺伝子によってコードされる抗体
を発現させる。抗体遺伝子を単離し、遺伝子をベクターに挿入し、宿主細胞を形質転換す
るための方法は、例えば、Vandammeら(Eur.J.Biochem.(199
0)192(3)、767~775頁)によって既に確立されている。組換え抗体を製造
する方法も、以下に記載の通り公知である。
【0075】
好ましくは、本発明は、本発明の多重特異性抗原結合分子または単一特異性抗原結合分
子をコードする核酸を提供する。本発明はまた、多重特異性抗原結合分子または単一特異
性抗原結合分子をコードする核酸が導入されるベクター、すなわち、核酸を含むベクター
も提供する。さらに、本発明は、核酸またはベクターを含む細胞を提供する。本発明はま
た、細胞を培養することによって多重特異性抗原結合分子または単一特異性抗原結合分子
を製造する方法も提供する。本発明はさらに、前記方法によって生産された多重特異性抗
原結合分子または単一特異性抗原結合分子を提供する。
【0076】
例えば、抗DLL3抗体の可変領域(V領域)をコードするcDNAを、抗DLL3抗
体を発現するハイブリドーマ細胞から調製する。このために、全RNAを最初にハイブリ
ドーマから抽出する。細胞からmRNAを抽出するために使用される方法としては、例え
ば、
- グアニジン超遠心分離法(Biochemistry(1979)18(24)、5
294~5299頁)、および
- AGPC法(Anal.Biochem.(1987)162(1)、156~15
9頁)
が挙げられる。
【0077】
抽出されたmRNAを、mRNA精製キット(GE Healthcare Bios
cience)などを使用して精製することができる。あるいは、QuickPrep
mRNA精製キット(GE Healthcare Bioscience)などの、細
胞から直接的に全mRNAを抽出するためのキットも市販されている。mRNAを、その
ようなキットを使用してハイブリドーマから調製することができる。抗体のV領域をコー
ドするcDNAを、逆転写酵素を使用して、調製されたmRNAから合成することができ
る。cDNAを、AMV Reverse Transcriptase First-
strand cDNA Synthesis Kit(Seikagaku Co.)
などを使用して合成することができる。さらに、SMART RACE cDNA増幅キ
ット(Clontech)およびPCRに基づく5’-RACE法(Proc.Natl
.Acad.Sci.USA(1988)85(23)、8998~9002頁;Nuc
leic Acids Res.(1989)17(8)、2919~2932頁)を適
切に使用して、cDNAを合成し、増幅することができる。そのようなcDNA合成プロ
セスにおいて、以下に記載される適切な制限酵素部位を、cDNAの両末端に導入するこ
とができる。
【0078】
目的のcDNA断片を、得られたPCR産物から精製した後、これをベクターDNAに
ライゲーションする。かくして、組換えベクターを構築し、大腸菌(E.coli)など
に導入する。コロニー選択の後、所望の組換えベクターを、コロニー形成大腸菌から調製
することができる。次いで、組換えベクターが目的のcDNAヌクレオチド配列を有する
かどうかを、ジデオキシヌクレオチド鎖終結法などの公知の方法によって試験する。
【0079】
可変領域遺伝子を増幅するためのプライマーを使用する5’-RACE法が、可変領域
をコードする遺伝子を単離するために都合よく使用される。まず、ハイブリドーマ細胞か
ら抽出されたRNAを鋳型として使用するcDNA合成によって、5’-RACE cD
NAライブラリーを構築する。SMART RACE cDNA増幅キットなどの市販の
キットを適切に使用して、5’-RACE cDNAライブラリーを合成する。
【0080】
調製された5’-RACE cDNAライブラリーを鋳型として使用するPCRによっ
て、抗体遺伝子を増幅する。既知の抗体遺伝子配列に基づいて、マウス抗体遺伝子を増幅
するためのプライマーを設計することができる。プライマーのヌクレオチド配列は、免疫
グロブリンサブクラスに応じて変化する。したがって、Iso Stripマウスモノク
ローナル抗体アイソタイピングキット(Roche Diagnostics)などの市
販のキットを使用して、前もってサブクラスを決定することが好ましい。
【0081】
具体的には、例えば、ガンマ1、ガンマ2a、ガンマ2b、およびガンマ3重鎖ならび
にカッパおよびラムダ軽鎖をコードする遺伝子の増幅を可能にするプライマーを使用して
、マウスIgGをコードする遺伝子を単離する。一般に、可変領域に近い定常領域部位に
アニーリングするプライマーを、IgG可変領域遺伝子を増幅するための3’側プライマ
ーとして使用する。一方、5’RACE cDNAライブラリー構築キットに結合したプ
ライマーを、5’側プライマーとして使用する。
【0082】
かくして増幅されたPCR産物を使用して、重鎖と軽鎖の組合せから構成される免疫グ
ロブリンを再形成させる。再形成された免疫グロブリンのDL3結合活性を指標として使
用して、所望の抗体を選択することができる。例えば、目的がDLL3に対する抗体を単
離することである場合、抗体のDLL3への結合が特異的であることがより好ましい。D
LL3結合抗体を、例えば、以下のステップ:
(1)DLL3発現細胞と、ハイブリドーマから単離されたcDNAによりコードされる
V領域を含む抗体とを接触させるステップ;
(2)抗体の、DLL3発現細胞への結合を検出するステップ;および
(3)DLL3発現細胞に結合する抗体を選択するステップによってスクリーニングする
ことができる。
【0083】
抗体のDLL3発現細胞への結合を検出するための方法が公知である。具体的には、抗
体のDLL3発現細胞への結合を、FACSなどの上記の技術によって検出することがで
きる。DLL3発現細胞の固相化された試料を、適切に使用して、抗体の結合活性を評価
する。
【0084】
結合活性を指標として使用する好ましい抗体スクリーニング方法はまた、ファージベク
ターを使用するパンニング法を含む。ファージベクターを使用するスクリーニング方法は
、抗体遺伝子がポリクローナル抗体を発現する細胞集団に由来する重鎖および軽鎖サブク
ラスライブラリーから単離される場合に有利である。重鎖および軽鎖可変領域をコードす
る遺伝子を、適切なリンカー配列によって連結して、単鎖Fv(scFv)を形成するこ
とができる。scFvを表面上に提示するファージを、scFvをコードする遺伝子をフ
ァージベクター中に挿入することによって生成することができる。ファージを、目的の抗
原と接触させる。次いで、目的の結合活性を有するscFvをコードするDNAを、抗原
に結合したファージを収集することによって単離することができる。このプロセスを、必
要に応じて繰り返して、所望の結合活性を有するscFvを濃縮することができる。
【0085】
目的の抗DLL3抗体のV領域をコードするcDNAを単離した後、cDNAを、cD
NAの両末端に導入された制限部位を認識する制限酵素で消化する。好ましい制限酵素は
、抗体遺伝子のヌクレオチド配列中に低頻度で存在するヌクレオチド配列を認識し、切断
するものである。さらに、好ましくは、付着末端をもたらす酵素の制限部位をベクター中
に導入して、正確な向きで単一コピーの消化断片を挿入する。抗DLL3抗体のV領域を
コードするcDNAを上記のように消化し、これを適切な発現ベクター中に挿入して、抗
体発現ベクターを構築する。この場合、抗体定常領域(C領域)をコードする遺伝子およ
び上記のV領域をコードする遺伝子がインフレームで融合された場合、キメラ抗体が得ら
れる。本明細書で、「キメラ抗体」は、定常領域の起源が可変領域のものと異なることを
意味する。かくして、マウス/ヒト異種キメラ抗体に加えて、ヒト/ヒト同種キメラ抗体
も、本発明のキメラ抗体に含まれる。上記のV領域遺伝子を、定常領域を既に有する発現
ベクター中に挿入することによって、キメラ抗体発現ベクターを構築することができる。
具体的には、例えば、上記のV領域遺伝子を切り出す制限酵素の認識配列を、所望の抗体
定常領域(C領域)をコードするDNAを担持する発現ベクターの5’側に適切に置くこ
とができる。キメラ抗体発現ベクターを、制限酵素の同じ組合せで消化された2つの遺伝
子をインフレームで融合することによって構築する。
【0086】
抗DLL3モノクローナル抗体を生産するために、抗体遺伝子を、遺伝子が発現調節領
域の制御下で発現されるように、発現ベクター中に挿入する。抗体発現のための発現調節
領域は、例えば、エンハンサーおよびプロモーターを含む。さらに、発現される抗体が細
胞の外部に分泌されるように、適切なシグナル配列を、アミノ末端に結合させてもよい。
一方、他の適切なシグナル配列を結合させることができる。発現されるポリペプチドは、
上記配列のカルボキシル末端で切断され、得られるポリペプチドは、成熟ポリペプチドと
して細胞の外部に分泌される。次いで、適切な宿主細胞を、発現ベクターで形質転換し、
抗DLL3抗体をコードするDNAを発現する組換え細胞を得る。
【0087】
抗体重鎖(H鎖)および軽鎖(L鎖)をコードするDNAを、異なる発現ベクター中に
別々に挿入して、抗体遺伝子を発現させる。HおよびL鎖を有する抗体分子を、同じ宿主
細胞に、H鎖遺伝子およびL鎖遺伝子をそれぞれ挿入したベクターを同時にトランスフェ
クトすることによって発現させることができる。あるいは、宿主細胞を、HおよびL鎖を
コードするDNAを挿入した単一の発現ベクターで形質転換することができる(WO94
/11523を参照)。
【0088】
単離された抗体遺伝子を適切な宿主に導入することによる抗体調製のための様々な公知
の宿主細胞/発現ベクターの組合せがある。これらの発現系は全て、本発明の抗体可変領
域を含むドメインの単離に適用可能である。宿主細胞として使用される適切な真核細胞と
しては、動物細胞、植物細胞、および真菌細胞が挙げられる。具体的には、動物細胞は、
例えば、以下の細胞を含む。
(1)哺乳動物細胞:CHO、COS、ミエローマ、ベビーハムスター腎臓(BHK)、
HeLa、Veroなど;
(2)両性類細胞:アフリカツメガエル卵母細胞など;および
(3)昆虫細胞:sf9、sf21、Tn5など。
【0089】
さらに、植物細胞として、タバコ(Nicotiana tabacum)などのタバ
コ属に由来する細胞を使用する抗体遺伝子発現系が公知である。カルス培養細胞を適切に
使用して、植物細胞を形質転換することができる。
【0090】
さらに、以下の細胞を真菌細胞として使用することができる:
酵母:サッカロミセス・セレビシア(Saccharomyces cerevisia
e)などのサッカロミセス属、およびピチア・パストリス(Pichia pastor
is)などのピチア属;ならびに
糸状菌:アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)などのアスペ
ルギルス属。
【0091】
さらに、原核細胞を利用する抗体遺伝子発現系も公知である。例えば、細菌細胞を使用
する場合、大腸菌細胞、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)
細胞などを、本発明において好適に利用することができる。目的の抗体遺伝子を担持する
発現ベクターを、トランスフェクションによってこれらの細胞に導入する。トランスフェ
クトされた細胞をin vitroで培養し、所望の抗体を、形質転換された細胞の培養
物から調製することができる。
【0092】
上記の宿主細胞に加えて、トランスジェニック動物を使用して、組換え抗体を生産する
こともできる。すなわち、目的の抗体をコードする遺伝子が導入された動物から、抗体を
得ることができる。例えば、ミルク中に特異的に産生されるタンパク質をコードする遺伝
子をインフレームで挿入することによって、融合遺伝子として抗体遺伝子を構築すること
ができる。例えば、ヤギベータカゼインなどを、ミルク中に分泌されるタンパク質として
使用することができる。抗体遺伝子と共に挿入された融合遺伝子を含有するDNA断片を
、ヤギ胚に注入した後、この胚をメスのヤギに導入する。胚のレシピエントヤギ(または
その子孫)から生まれたトランスジェニックヤギによって産生されるミルクから、ミルク
タンパク質と融合したタンパク質として、所望の抗体を得ることができる。さらに、トラ
ンスジェニックヤギによって産生される所望の抗体を含有するミルクの容量を増加させる
ために、必要に応じてトランスジェニックヤギにホルモンを投与してもよい(Ebert
,K.M.ら、Bio/Technology(1994)12(7)、699~702
頁)。
【0093】
ヒト化抗体を製造する方法
本明細書に記載の抗原結合分子をヒトに投与する場合、ヒトなどに対する異種抗原性を
低下させるために人工的に改変された遺伝子組換え抗体に由来するドメインを、抗体可変
領域を含む抗原結合分子のドメインとして適切に使用することができる。そのような遺伝
子組換え抗体としては、例えば、ヒト化抗体が挙げられる。これらの改変抗体は、公知の
方法によって適切に生産される。さらに、一般に、ある特定の抗体の結合特異性を、CD
R移植によって別の抗体に導入することができる。
【0094】
具体的には、マウス抗体などの非ヒト動物抗体のCDR(または本明細書に定義される
「HVR」)を、ヒト抗体などに移植することによって調製されるヒト化抗体が公知であ
る。ヒト化抗体を得るための一般的な遺伝子工学技術も公知である。具体的には、例えば
、重複伸長PCRが、マウス抗体CDRをヒトFRに移植するための方法として公知であ
る。重複伸長PCRでは、移植しようとするマウス抗体CDRをコードするヌクレオチド
配列を、ヒト抗体FRを合成するためのプライマーに付加する。プライマーは、4つのF
Rのそれぞれについて調製される。マウスCDRをヒトFRに移植する場合、マウスFR
に対して高い同一性を有するヒトFRの選択が、CDR機能を維持するのに有利であると
一般的に考えられる。すなわち、移植しようとするマウスCDRに隣接するFRのアミノ
酸配列に対して高い同一性を有するアミノ酸配列を含むヒトFRを使用することが一般に
好ましい。
【0095】
ライゲーションしようとするヌクレオチド配列は、それらが互いにインフレームに接続
されるように設計される。ヒトFRを、それぞれのプライマーを使用して個別に合成する
。結果として、マウスCDRをコードするDNAが個々のFRをコードするDNAに結合
した生成物が得られる。それぞれの生成物のマウスCDRをコードするヌクレオチド配列
は、それらが互いに重複するように設計される。次いで、相補鎖合成反応を行って、ヒト
抗体遺伝子を鋳型として使用して合成された生成物の重複CDR領域をアニーリングさせ
る。ヒトFRを、この反応によってマウスCDR配列を介してライゲーションする。
【0096】
3個のCDRと4個FRとが最終的にライゲーションされた全長V領域遺伝子を、好適
な制限酵素認識配列と共に付加された、その5’または3’末端にアニーリングするプラ
イマーを使用して増幅する。上記のように得られたDNAおよびヒト抗体C領域をコード
するDNAを、それらがインフレームにライゲーションされるように発現ベクター中に挿
入することによって、ヒト化抗体の発現ベクターを生成することができる。組換えベクタ
ーを宿主にトランスフェクトして組換え細胞を確立した後、組換え細胞を培養し、ヒト化
抗体をコードするDNAを発現させて、細胞培養物中でヒト化抗体を産生させる(欧州特
許出願公開第EP239400号および国際特許出願公開第WO1996/002576
号を参照)。
【0097】
上記のように生産されたヒト化抗体の抗原結合活性を定性的または定量的に測定および
評価することによって、CDRが、CDRを介してライゲーションした場合に好ましい抗
原結合部位を形成することができるヒト抗体FRを好適に選択することができる。再形成
されるヒト抗体のCDRが適切な抗原結合部位を形成するように、FR中のアミノ酸残基
を、必要に応じて置換してもよい。例えば、マウスCDRをヒトFRに移植するために使
用されるPCR法を適用することによって、アミノ酸配列変異をFR中に導入することが
できる。より具体的には、部分的ヌクレオチド配列変異を、FRにアニーリングするプラ
イマー中に導入することができる。ヌクレオチド配列変異は、そのようなプライマーを使
用することによって合成されたFR中に導入される。上記の方法によって、抗原に結合す
るアミノ酸置換された抗体変異体の活性を測定および評価することにより、望ましい特徴
を有するFR配列変異体を選択することができる(Sato,K.ら、Cancer R
es.(1993)53:851~856頁)。
【0098】
ヒト抗体を製造する方法
あるいは、ヒト抗体遺伝子の全レパートリーを有するトランスジェニック動物を、DN
A免疫化によって免疫化することによって、所望のヒト抗体を得ることができる(WO1
993/012227;WO1992/003918;WO1994/002602;W
O1994/025585;WO1996/034096;WO1996/033735
を参照)。
【0099】
さらに、ヒト抗体ライブラリーを使用してパンニングすることによってヒト抗体を調製
するための技術も公知である。例えば、ヒト抗体のV領域を、ファージディスプレイ法に
よってファージ表面上に単鎖抗体(scFv)として発現させる。抗原に結合するscF
vを発現するファージを選択することができる。抗原に結合するヒト抗体V領域をコード
するDNA配列を、選択されたファージの遺伝子を分析することによって決定することが
できる。抗原に結合するscFvのDNA配列を決定する。V領域配列をインフレームに
所望のヒト抗体のC領域配列と融合すること、およびこれを適切な発現ベクターに挿入す
ることによって、発現ベクターを調製する。発現ベクターを、上記のものなどの発現にと
って適切な細胞中に導入する。細胞中でヒト抗体をコードする遺伝子を発現させることに
よって、ヒト抗体を生産することができる。これらの方法は既に公知である(WO199
2/001047;WO1992/020791;WO1993/006213;WO1
993/011236;WO1993/019172;WO1995/001438;W
O1995/015388を参照)。
【0100】
ベクター
本明細書で使用される場合、用語「ベクター」とは、それが連結される別の核酸を増殖
させることができる核酸分子を指す。この用語は、自己複製する核酸構造としてのベクタ
ーならびにそれが導入された宿主細胞のゲノム中に組み込まれるベクターを含む。ある特
定のベクターは、それらが作動可能に連結された核酸の発現を指令することができる。そ
のようなベクターは、本明細書では「発現ベクター」と呼ばれる。
【0101】
宿主細胞
用語「宿主細胞」、「宿主細胞株」および「宿主細胞培養物」は、互換的に使用され、
外因性核酸が導入された細胞を指し、そのような細胞の子孫を含む。宿主細胞は、初代形
質転換細胞および継代回数に関係なく、それに由来する子孫を含む「形質転換体」および
「形質転換細胞」を含む。子孫は、核酸含量において親細胞と完全に同一でなくてもよく
、変異を含有してもよい。元々形質転換された細胞中でスクリーニングまたは選択された
のと同じ機能または生物活性を有する変異体子孫も、本明細書に含まれる。
【0102】
エピトープ
「エピトープ」は、抗原中の抗原決定基を意味し、本明細書に開示される抗原結合分子
または抗体の抗原結合ドメインが結合する抗原部位を指す。かくして、例えば、エピトー
プは、その構造に従って定義することができる。あるいは、エピトープを、エピトープを
認識する抗原結合分子または抗体の抗原結合活性に従って定義することができる。抗原が
ペプチドまたはポリペプチドである場合、エピトープを、エピトープを形成するアミノ酸
残基によって特定することができる。あるいは、エピトープが糖鎖である場合、エピトー
プを、その特定の糖鎖構造によって特定することができる。
【0103】
線状エピトープは、一次アミノ酸配列が認識されるエピトープを含有するエピトープで
ある。そのような線状エピトープは、その特定の配列中に、典型的には、少なくとも3個
、最も一般的には、少なくとも5個、例えば、約8~10個または6~20個のアミノ酸
を含有する。
【0104】
線状エピトープとは対照的に、「立体的エピトープ」は、エピトープを含有する一次ア
ミノ酸配列が、認識されるエピトープの唯一の決定基ではないエピトープである(例えば
、立体的エピトープの一次アミノ酸配列は、エピトープを定義する抗体によって必ずしも
認識されない)。立体的エピトープは、線状エピトープと比較してより多数のアミノ酸を
含有してもよい。立体的エピトープを認識する抗原結合ドメインは、ペプチドまたはタン
パク質の三次元構造を認識する。例えば、タンパク質分子が折り畳まれ、三次元構造を形
成する場合、立体的エピトープを形成するアミノ酸および/またはポリペプチド主鎖はア
ラインされるようになり、エピトープは抗原結合ドメインによって認識可能になる。エピ
トープコンフォメーションを決定するための方法としては、例えば、限定されるものでは
ないが、X線結晶分析、二次元核磁気共鳴、部位特異的スピン標識、および電子常磁性共
鳴が挙げられる。例えば、Epitope Mapping Protocols in
Methods in Molecular Biology(1996)、Vol.
66、Morris(編)を参照。
【0105】
抗DLL3抗原結合ドメインを含有する試験抗原結合分子または抗体によってエピトー
プ結合を評価するための方法の例を、以下に記載する。以下の例によれば、DLL3以外
の抗原のための抗原結合ドメインを含有する試験抗原結合分子または抗体によってエピト
ープ結合を評価するための方法も、適切に行うことができる。
【0106】
例えば、抗DLL3抗原結合ドメインを含有する試験抗原結合分子または抗体がDLL
分子中の線状エピトープを認識するかどうかを、例えば、以下に記載されるように確認す
ることができる。DLL3の細胞外ドメインを形成するアミノ酸配列を含む線状ペプチド
は、上記の目的のために合成される。ペプチドを化学的に合成するか、またはDLL3
cDNA中の細胞外ドメインに対応するアミノ酸配列をコードする領域を使用する遺伝子
工学技術によって得ることができる。次いで、抗DLL3抗原結合ドメインを含有する試
験抗原結合分子または抗体を、細胞外ドメインを形成するアミノ酸配列を含む線状ペプチ
ドに対するその結合活性について評価する。例えば、固相化された線状ペプチドを、EL
ISAによる抗原として使用して、ペプチドに対するポリペプチド複合体の結合活性を評
価することができる。あるいは、線状ペプチドに対する結合活性を、線状ペプチドが、抗
原結合分子または抗体の、DLL3発現細胞への結合を阻害するレベルに基づいて評価す
ることができる。これらの試験は、線状ペプチドに対する抗原結合分子または抗体の結合
活性を証明することができる。
【0107】
抗DLL3抗原結合ドメインを含有する試験抗原結合分子または抗体が立体的エピトー
プを認識するかどうかを、以下のように評価することができる。DLL3発現細胞は、上
記の目的のために調製される。抗DLL3抗原結合ドメインを含有する試験抗原結合分子
または抗体を、立体的エピトープが接触時にDLL3発現細胞に強く結合し、DLL3の
細胞外ドメインを形成するアミノ酸配列を含む固相化された線状ペプチドに実質的に結合
しない場合にそれを認識すると決定することができる。本明細書で、「実質的に結合しな
い」とは、DLL3を発現する細胞に対する結合活性と比較して、結合活性が80%以下
、一般的には、50%以下、好ましくは、30%以下、特に、好ましくは15%以下であ
ることを意味する。
【0108】
DLL3発現細胞に対する抗DLL3抗原結合ドメインを含有する試験抗原結合分子ま
たは抗体の結合活性をアッセイするための方法としては、例えば、Antibodies
:A Laboratory Manual(Ed Harlow、David Lan
e、Cold Spring Harbor Laboratory(1988)359
~420頁)に記載された方法が挙げられる。具体的には、DLL3発現細胞を抗原とし
て使用するELISAまたは蛍光活性化細胞選別(FACS)の原理に基づいて、評価を
実施することができる。
【0109】
ELISA形式では、DLL3発現細胞に対する抗DLL3抗原結合ドメインを含有す
る試験抗原結合分子または抗体の結合活性を、酵素反応により生成されるシグナルのレベ
ルを比較することによって、定量的に評価することができる。具体的には、試験ポリペプ
チド複合体を、DLL3発現細胞が固相化されたELISAプレートに添加する。次いで
、細胞に結合した試験抗原結合分子または抗体を、試験抗原結合分子または抗体を認識す
る酵素標識化された抗体を使用して検出する。あるいは、FACSを使用する場合、試験
抗原結合分子または抗体の希釈系列を調製し、DLL3発現細胞に関する抗体結合力価を
決定して、DLL3発現細胞に対する試験抗原結合分子または抗体の結合活性を比較する
ことができる。
【0110】
緩衝液などに懸濁された細胞の表面上に発現される抗原に対する試験抗原結合分子また
は抗体の結合を、フローサイトメーターを使用して検出することができる。公知のフロー
サイトメーターとしては、例えば、以下の装置:
FACSCantoTM II
FACSAriaTM
FACSArrayTM
FACSVantageTM SE
FACSCaliburTM(全てBD Biosciencesの商標名である)
EPICS ALTRA HyPerSort
Cytomics FC500
EPICS XL-MCL ADC EPICS XL ADC
Cell Lab Quanta/Cell Lab Quanta SC(全てBec
kman Coulterの商標名である)
が挙げられる。
【0111】
抗原に対する抗DLL3抗原結合ドメインを含有する試験抗原結合分子または抗体の結
合活性をアッセイするための好ましい方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
まず、DLL3発現細胞を、試験抗原結合分子または抗体と反応させた後、これを、抗原
結合分子または抗体を認識するFITC標識二次抗体で染色する。試験抗原結合分子また
は抗体を、好適な緩衝液で適切に希釈して、所望の濃度の抗原結合分子または抗体を調製
する。例えば、抗原結合分子または抗体を、10μg/ml~10ng/mlの範囲内の
濃度で使用することができる。次いで、蛍光強度および細胞数を、FACSCalibu
r(BD)を使用して決定する。CELL QUEST Software(BD)を使
用する分析によって得られる蛍光強度、すなわち、幾何平均値は、細胞に結合した抗体の
量を反映する。すなわち、結合した試験抗原結合分子または抗体の量によって表される、
試験抗原結合分子または抗体の結合活性を、幾何平均値を測定することによって決定する
ことができる。
【0112】
抗DLL3抗原結合ドメインを含有する試験抗原結合分子または抗体が別の抗原結合分
子または抗体と共通のエピトープを共有するかどうかを、同じエピトープについての2つ
の抗原結合分子または抗体の間の競合に基づいて評価することができる。抗原結合分子ま
たは抗体の間の競合を、交差ブロッキングアッセイなどによって検出することができる。
例えば、競合的ELISAアッセイが、好ましい交差ブロッキングアッセイである。
【0113】
具体的には、交差ブロッキングアッセイにおいては、マイクロタイタープレートのウェ
ルに固相化されたDLL3タンパク質を、候補競合剤抗原結合分子または抗体の存在下ま
たは非存在下で予備インキュベートした後、試験抗原結合分子または抗体をそれに添加す
る。ウェル中のDLL3タンパク質に結合した試験抗原結合分子または抗体の量は、同じ
エピトープへの結合について競合する候補競合剤抗原結合分子または抗体の結合能力と間
接的に相関する。すなわち、同じエピトープに対する競合剤抗原結合分子または抗体の親
和性が高いほど、DLL3タンパク質でコーティングされたウェルに対する試験抗原結合
分子または抗体の結合活性は低い。
【0114】
DLL3タンパク質を介してウェルに結合した試験抗原結合分子または抗体の量を、前
もって抗原結合分子または抗体を標識化することによって容易に決定することができる。
例えば、ビオチン標識化された抗原結合分子または抗体を、アビジン/ペルオキシダーゼ
コンジュゲートおよび適切な基質を使用して測定する。特に、ペルオキシダーゼなどの酵
素標識を使用する交差ブロッキングアッセイは、「競合ELISAアッセイ」と呼ばれる
。抗原結合分子または抗体を、検出または測定を可能にする他の標識物質で標識化するこ
ともできる。具体的には、放射標識、蛍光標識などが公知である。
【0115】
候補競合剤抗原結合分子または抗体が、競合剤抗原結合分子または抗体の非存在下で行
われる対照実験における結合活性と比較して、抗DLL3抗原結合ドメインを含有する試
験抗原結合分子または抗体による結合を少なくとも20%、好ましくは、すくなくとも2
0~50%、より好ましくは少なくとも50%ブロックできる場合、試験抗原結合分子ま
たは抗体は、競合剤抗原結合分子もしくは抗体が結合した同じエピトープに実質的に結合
する、または同じエピトープへの結合について競合すると決定される。
【0116】
抗DLL3抗原結合ドメインを含有する試験抗原結合分子または抗体が結合したエピト
ープの構造が既に同定されている場合、試験および対照の抗原結合分子または抗体が共通
のエピトープを共有するかどうかを、アミノ酸変異を、エピトープを形成するペプチドに
導入することによって調製されるペプチドに対する2つの抗原結合分子または抗体の結合
活性を比較することによって評価することができる。
【0117】
上記の結合活性、例えば、変異が導入される線状ペプチドに対する試験および対照の抗
原結合分子または抗体の結合活性を測定することを、上記のELISA形式で比較する。
ELISA法の他に、試験および対照の抗原結合分子または抗体をカラムに流した後、溶
出溶液中に溶出した抗原結合分子または抗体を定量することによって、カラムに結合した
ペプチド変異体に対する結合活性を決定することができる。例えば、GST融合ペプチド
の形態で、ペプチド変異体をカラムに吸着させるための方法が公知である。
【0118】
あるいは、同定されたエピトープが立体的エピトープである場合、試験および対照の抗
原結合分子または抗体が共通のエピトープを共有するかどうかを、以下の方法によって評
価することができる。まず、DLL3発現細胞およびエピトープに導入された変異を有す
るDLL3を発現する細胞を調製する。試験および対照の抗原結合分子または抗体を、P
BSなどの適切な緩衝液中にこれらの細胞を懸濁することによって調製された細胞懸濁液
に添加する。次いで、細胞懸濁液を、緩衝液で適切に洗浄し、試験および対照の抗原結合
分子または抗体を認識するFITC標識抗体をそれに添加する。蛍光強度および標識化さ
れた抗体で染色された細胞数を、FACSCalibur(BD)を使用して決定する。
試験および対照の抗原結合分子または抗体を、好適な緩衝液を使用して適切に希釈し、所
望の濃度で使用する。例えば、それらを、10μg/ml~10ng/mlの範囲内の濃
度で使用することができる。CELL QUEST Software(BD)を使用す
る分析によって決定される蛍光強度、すなわち、幾何平均値は、細胞に結合した標識抗体
の量を反映する。すなわち、結合した標識抗体の量によって表される、試験および対照の
抗原結合分子または抗体の結合活性を、幾何平均値を測定することによって決定すること
ができる。
【0119】
上記方法では、抗原結合分子または抗体が「DLL3変異体(またはDLL3バリアン
ト)を発現する細胞に実質的に結合しない」かどうかを、例えば、以下の方法によって評
価することができる。まず、DLL3変異体を発現する細胞に結合した試験および対照の
抗原結合分子または抗体を、標識抗体で染色する。次いで、細胞の蛍光強度を決定する。
FACSCaliburをフローサイトメトリーによる蛍光検出のために使用する場合、
決定される蛍光強度を、CELL QUEST Softwareを使用して分析するこ
とができる。抗原結合分子または抗体の存在下および非存在下での幾何平均値から、比較
値(デルタ幾何平均)を、以下の式に従って算出して、抗原結合分子または抗体による結
合の結果としての蛍光強度の増大の比率を決定することができる。
【0120】
デルタ幾何平均=幾何平均(抗原結合分子または抗体の存在下での)/幾何平均(抗原
結合分子または抗体の非存在下での)。
【0121】
DLL3変異体を発現する細胞に結合した試験抗原結合分子または抗体の量を反映する
、上記の分析によって決定される幾何平均比較値(DLL3変異体分子に関するデルタ幾
何平均値)を、DLL3発現細胞に結合した試験抗原結合分子または抗体の量を反映する
デルタ幾何平均比較値と比較する。この場合、DLL3発現細胞およびDLL3変異体を
発現する細胞に関するデルタ幾何平均比較値を決定するために使用される試験抗原結合分
子または抗体の濃度は、特に好ましくは、等しいか、または実質的に等しくなるように調
整される。DLL3中のエピトープを認識することが確認された抗原結合分子または抗体
を、対照の抗原結合分子または抗体として使用する。
【0122】
DLL3変異体を発現する細胞に関する試験抗原結合分子または抗体のデルタ幾何平均
比較値が、DLL3発現細胞に関する試験抗原結合分子または抗体のデルタ幾何平均比較
値よりも、少なくとも80%、好ましくは50%、より好ましくは30%、特に好ましく
は15%小さい場合、試験抗原結合分子または抗体は、「DLL3変異体(またはDLL
3バリアント)を発現する細胞に実質的に結合しない」。幾何平均値(Geometri
c Mean)を決定するための式は、CELL QUEST Softwareのユー
ザーガイド(BD biosciences)に記載されている。比較が、比較値が実質
的に等価であることを示す場合、試験および対照の抗原結合分子または抗体のエピトープ
を、同じであると決定することができる。
【0123】
同じエピトープに結合する抗体
参照抗体と「同じエピトープに結合する」抗原結合ドメインを含む抗原結合分子または
抗体とは、競合アッセイにおいて参照抗体のその抗原への結合を50%以上ブロックする
抗原結合分子または抗体を指し、逆に、参照抗体は競合アッセイにおいて抗原結合分子ま
たは抗体のその抗原への結合を50%以上ブロックする。交差ブロッキングアッセイなど
の例示的な競合アッセイは、上で提供されている。
【0124】
特異性
「特異的」とは、1つまたは複数の結合パートナーに特異的に結合する分子が、パート
ナー以外の分子に有意な結合を示さないことを意味する。さらに、「特異的」はまた、抗
原結合ドメインが抗原に含まれる複数のエピトープの特定のエピトープに特異的である場
合にも使用される。抗原結合ドメインが結合するエピトープが複数の異なる抗原中に含ま
れる場合、抗原結合ドメインを含有する抗原結合分子は、エピトープを有する様々な抗原
に結合することができる。
【0125】
抗体断片
「抗体断片」とは、インタクト抗体が結合する抗原に結合するインタクト抗体の一部を
含むインタクト抗体以外の分子を指す。抗体断片の例としては、限定されるものではない
が、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2;ダイアボディ;線状抗
体;単鎖抗体分子(例えば、scFv);および抗体断片から形成される単一特異性また
は多重特異性抗体が挙げられる。
【0126】
用語「全長抗体」、「インタクト抗体」および「全抗体」は、本明細書では互換的に使
用され、天然抗体構造と実質的に類似する構造を有する、または本明細書に定義されるF
c領域を含有する重鎖を有する抗体を指す。
【0127】
可変断片(Fv)
本明細書で、用語「可変断片(Fv)」とは、一対の抗体軽鎖可変領域(VL)と抗体
重鎖可変領域(VH)とから構成される抗体由来抗原結合ドメインの最小単位を指す。1
988年に、SkerraおよびPluckthunは、細菌シグナル配列の下流に抗体
遺伝子を挿入し、大腸菌中で遺伝子の発現を誘導することによって、大腸菌ペリプラズム
画分から均一かつ活性な抗体を調製することができることを見出した(Science(
1988)240(4855)、1038~1041頁)。ペリプラズム画分から調製さ
れたFv中で、VHは、抗原に結合する様式でVLと会合する。本明細書で、用語「抗体
可変断片」とは、少なくとも1個の軽鎖可変領域(VL)と、少なくとも1個の抗体重鎖
可変領域(VH)とを含む任意の断片を指す。
【0128】
scFv、単鎖抗体、およびsc(Fv)2
本明細書で、用語「scFv」、「単鎖抗体」、および「sc(Fv)2」は全て、重
鎖および軽鎖に由来する可変領域を含有するが、定常領域は含有しない単一のポリペプチ
ド鎖の抗体断片を指す。一般に、単鎖抗体はまた、抗原結合を可能にすると考えられる所
望の構造の形成を可能にする、VHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカ
ーも含有する。単鎖抗体は、「The Pharmacology of Monocl
onal Antibodies、Vol.113、RosenburgおよびMoor
e(編)、Springer-Verlag、New York、269~315頁(1
994)」中で、Pluckthunによって詳細に考察されている。また、国際特許出
願公開第WO1988/001649号;米国特許第4,946,778号および第5,
260,203号も参照されたい。特定の実施形態では、単鎖抗体は、二重特異性であっ
てもよい、および/またはヒト化されていてもよい。
【0129】
scFvは、Fvを形成するVHおよびVLがペプチドリンカーによって一緒に連結さ
れた抗原結合ドメインである(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.(
1988)85(16)、5879~5883頁)。VHおよびVLを、ペプチドリンカ
ーによってごく近接して保持することができる。
【0130】
sc(Fv)2は、2個のVLと2個のVHの4個の可変領域が、ペプチドリンカーな
どのリンカーによって連結されて、一本の鎖を形成する単鎖抗体である(J Immun
ol.Methods(1999)231(1-2)、177~189頁)。2個のVH
と2個のVLは、異なるモノクローナル抗体に由来するものであってもよい。そのような
sc(Fv)2は、好ましくは、例えば、Journal of Immunology
(1994)152(11)、5368~5374頁に開示された単一抗原中に存在する
2個のエピトープを認識する二重特異性sc(Fv)2を含む。sc(Fv)2を、当業
者には公知の方法によって生産することができる。例えば、sc(Fv)2を、ペプチド
リンカーなどのリンカーによってscFvを連結することによって生産することができる
。
【0131】
本明細書で、sc(Fv)2を形成する抗原結合ドメインの形態は、2個のVHユニッ
トと2個のVLユニットが、単鎖ポリペプチドのN末端から開始して、VH、VL、VH
およびVLの順序で配置される([VH]-リンカー-[VL]-リンカー-[VH]-
リンカー-[VL])抗体を含む。2個のVHユニットと2個のVLユニットの順序は、
上記の形態に限定されず、それらは任意の順序で配置されていてもよい。その形態の例は
、以下に列挙される。
[VL]-リンカー-[VH]-リンカー-[VH]-リンカー-[VL]
[VH]-リンカー-[VL]-リンカー-[VL]-リンカー-[VH]
[VH]-リンカー-[VH]-リンカー-[VL]-リンカー-[VL]
[VL]-リンカー-[VL]-リンカー-[VH]-リンカー-[VH]
[VL]-リンカー-[VH]-リンカー-[VL]-リンカー-[VH]
【0132】
sc(Fv)2の分子形態は、WO2006/132352にも詳細に記載されている
。これらの説明によれば、当業者であれば、本明細書に開示されるポリペプチド複合体を
生産するために所望のsc(Fv)2を適切に調製することができる。
【0133】
さらに、本発明の抗原結合分子または抗体を、PEGなどの担体ポリマーまたは抗がん
剤などの有機化合物とコンジュゲートすることができる。あるいは、糖鎖が所望の効果を
もたらすように、糖鎖付加配列を抗原結合分子または抗体に挿入することが好ましい。
【0134】
抗体の可変領域を連結するのに使用されるリンカーは、遺伝子工学によって導入するこ
とができる任意のペプチドリンカー、合成リンカー、および例えば、Protein E
ngineering、9(3)、299~305頁、1996に開示されたリンカーを
含む。しかしながら、ペプチドリンカーが、本発明においては好ましい。ペプチドリンカ
ーの長さは、特に限定されず、当業者であれば、目的に応じて好適に選択することができ
る。その長さは、好ましくは5アミノ酸以上(特に限定されないが、上限は一般的には3
0アミノ酸以下、好ましくは20アミノ酸以下である)、特に好ましくは、15アミノ酸
である。sc(Fv)2が3個のペプチドリンカーを含有する場合、それらの長さは、全
て同じであるか、または異なっていてもよい。
【0135】
例えば、そのようなペプチドリンカーとしては、
Ser
Gly Ser
Gly Gly Ser
Ser Gly Gly
Gly Gly Gly Ser (配列番号116)
Ser Gly Gly Gly (配列番号117)
Gly Gly Gly Gly Ser (配列番号118)
Ser Gly Gly Gly Gly (配列番号119)
Gly Gly Gly Gly Gly Ser (配列番号120)
Ser Gly Gly Gly Gly Gly (配列番号121)
Gly Gly Gly Gly Gly Gly Ser (配列番号122)
Ser Gly Gly Gly Gly Gly Gly (配列番号123)
(Gly Gly Gly Gly Ser (配列番号118))n
(Ser Gly Gly Gly Gly (配列番号119))n
(式中、nは、1またはそれより大きい整数である)が挙げられる。当業者であれば、ペ
プチドリンカーの長さまたは配列を、目的に応じて選択することができる。
【0136】
合成リンカー(化学架橋剤)は、ペプチドを架橋するために日常的に使用されており、
その例としては、
N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、
スベリン酸ジスクシンイミジル(DSS)、
スベリン酸ビス(スルホスクシンイミジル)(BS3)、
ジチオビス(プロピオン酸スクシンイミジル)(DSP)、
ジチオビス(プロピオン酸スルホスクシンイミジル)(DTSSP)、
エチレングリコールビス(コハク酸スクシンイミジル)(EGS)、
エチレングリコールビス(コハク酸スルホスクシンイミジル)(スルホ-EGS)、
酒石酸ジスクシンイミジル(DST)、酒石酸ジスルホスクシンイミジル(スルホ-DS
T)、
ビス[2-(スクシンイミドキシカルボニルオキシ)エチル]スルホン(BSOCOES
)、および
ビス[2-(スルホスクシンイミドキシカルボニルオキシ)エチル]スルホン(スルホ-
BSOCOES)が挙げられる。これらの架橋剤は、市販されている。
【0137】
一般に、4個の抗体可変領域を一緒に連結するためには、3個のリンカーが必要である
。使用されるリンカーは、同じ型または異なる型のものであってもよい。
【0138】
Fab、F(ab’)2、およびFab’
「Fab」は、1個の軽鎖、ならびに1個の重鎖に由来するCH1ドメインおよび可変
領域からなる。Fab分子の重鎖は、別の重鎖分子とジスルフィド結合を形成することが
できない。
【0139】
「F(ab’)2」または「Fab」は、免疫グロブリン(モノクローナル抗体)を、
ペプシンおよびパパインなどのプロテアーゼで処理することによって生成され、2個のH
鎖のそれぞれにおけるヒンジ領域間に存在するジスルフィド結合の近くで免疫グロブリン
(モノクローナル抗体)を消化することによって生成される抗体断片を指す。例えば、パ
パインは、2個のH鎖のそれぞれにおけるヒンジ領域の間に存在するジスルフィド結合の
上流でIgGを切断して、VL(L鎖可変領域)およびCL(L鎖定常領域)を含むL鎖
が、それらのC末端領域のジスルフィド結合によりVH(H鎖可変領域)およびCHガン
マ1(H鎖定常領域中のガンマ1領域)を含むH鎖断片に連結された、2個の相同な抗体
断片を生成する。これらの2個の相同な抗体断片はそれぞれ、Fab’と呼ばれる。
【0140】
「F(ab’)2」は、CH1ドメインの定常領域およびCH2ドメインの一部を含む
2個の軽鎖および2個の重鎖からなり、ジスルフィド結合が2個の重鎖間で形成される。
本明細書に開示されるF(ab’)2は、好ましくは、以下のように生成することができ
る。所望の抗原結合ドメインを含む全モノクローナル抗体などを、ペプシンなどのプロテ
アーゼで部分的に消化し、Fc断片を、プロテインAカラム上への吸着によって除去する
。プロテアーゼは、それがpHなどの適切に設定された酵素反応条件下でF(ab’)2
を生成する選択的様式で全抗体を切断することができる限り、特に限定されない。そのよ
うなプロテアーゼとしては、例えば、ペプシンおよびフィシンが挙げられる。
【0141】
Fc領域
本明細書における用語「Fc領域」または「Fcドメイン」は、定常領域の少なくとも
一部を含有する免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。この用語
は、天然配列のFc領域およびFc領域バリアントを含む。一実施形態では、ヒトIgG
重鎖Fc領域は、Cys226、またはPro230から、重鎖のカルボキシル末端に向
かって伸びる。しかしながら、Fc領域のC末端リシン(Lys447)またはグリシン
-リシン(残基446~447)は、存在しても、しなくてもよい。本明細書で別途特定
されない限り、Fc領域または定常領域中のアミノ酸残基のナンバリングは、EUナンバ
リングシステムによるものであり、Kabatら、Sequences of Prot
eins of Immunological Interest、第5版、Publi
c Health Service、National Institutes of
Health、Bethesda、MD、1991に記載されたように、EUインデック
スとも呼ばれる。
【0142】
天然配列Fc領域
「天然配列Fc領域」は、自然において見つかるFc領域のアミノ酸配列と同一のアミ
ノ酸配列を含む。天然配列ヒトFc領域は、天然配列ヒトIgG1 Fc領域(非Aおよ
びAアロタイプ);天然配列ヒトIgG2 Fc領域;天然配列ヒトIgG3 Fc領域
;および天然配列ヒトIgG4 Fc領域ならびに天然に存在するそのバリアントを含む
。
【0143】
バリアントFc領域
「バリアントFc領域」は、少なくとも1個のアミノ酸改変、好ましくは、1個または
複数のアミノ酸置換により天然配列Fc領域のものと異なるアミノ酸配列を含む。好まし
くは、バリアントFc領域は、天然配列Fc領域または親ポリペプチドのFc領域と比較
して少なくとも1個のアミノ酸置換、例えば、天然配列Fc領域または親ポリペプチドの
Fc領域内に約1~約10個のアミノ酸置換、好ましくは約1~約5個のアミノ酸置換を
有する。本明細書におけるバリアントFc領域は、好ましくは、天然配列Fc領域および
/または親ポリペプチドのFc領域との少なくとも約80%の配列同一性、最も好ましく
は、それとの少なくとも約90%の配列同一性、より好ましくは、それとの少なくとも約
95%の配列同一性を有するであろう。
【0144】
Fc受容体
用語「Fc受容体」または「FcR」とは、抗体のFc領域に結合する受容体を指す。
一部の実施形態では、FcRは、天然ヒトFcRである。一部の実施形態では、FcRは
、IgG抗体(ガンマ受容体)に結合するものであり、FcガンマRI、FcガンマRI
I、およびFcガンマRIIIサブクラスの受容体が挙げられ、これらの受容体の対立遺
伝子バリアントおよび選択的にスプライスされた形態を含む。FcガンマRII受容体は
、主にその細胞質ドメインにおいて異なる類似するアミノ酸配列を有する、FcガンマR
IIA(「活性化受容体」)およびFcガンマRIIB(「阻害受容体」)を含む。活性
化受容体であるFcガンマRIIAは、その細胞質ドメイン中に免疫受容体チロシンに基
づく活性化モチーフ(ITAM)を含有する。阻害受容体であるFcガンマRIIBは、
その細胞質ドメイン中に免疫受容体チロシンに基づく阻害モチーフ(ITIM)を含有す
る(例えば、Daeron、Annu.Rev.Immunol.15:203~234
頁(1997)を参照)。FcRは、例えば、RavetchおよびKinet、Ann
u.Rev.Immunol.9:457~92頁(1991);Capelら、Imm
unomethods、4:25~34頁(1994);ならびにde Haasら、J
.Lab.Clin.Med.、126:330~41頁(1995)に総説されている
。将来同定されるものを含む、他のFcRも、本明細書の用語「FcR」によって包含さ
れる。
【0145】
用語「Fc受容体」または「FcR」は、新生児受容体、FcRnも含み、これは、母
体IgGの胎児への移動(Guyerら、J.Immunol.、117:587頁(1
976);およびKimら、J.Immunol.、24:249頁(1994))およ
び免疫グロブリンの恒常性の調節を担う。FcRnへの結合を測定する方法は公知である
(例えば、GhetieおよびWard.、Immunol.Today 18(12)
:592~598頁(1997);Ghetieら、Nature Biotechno
logy、15(7):637~640頁(1997);Hintonら、J.Biol
.Chem.279(8):6213~6216頁(2004);WO2004/922
19(Hintonら)を参照)。
【0146】
in vivoでのヒトFcRnへの結合およびヒトFcRn高親和性結合ポリペプチ
ドの血漿半減期を、例えば、ヒトFcRnを発現するトランスジェニックマウスもしくは
トランスフェクトされたヒト細胞株において、またはバリアントFc領域を有するポリペ
プチドが投与される霊長類においてアッセイすることができる。WO2000/4207
2(Presta)は、FcRへの結合が増加または減少した抗体バリアントを記載して
いる。例えば、Shieldsら、J.Biol.Chem.9(2):6591~66
04頁(2001)も参照。
【0147】
Fcガンマ受容体
Fcガンマ受容体とは、モノクローナルIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG
4抗体のFcドメインに結合することができる受容体を指し、Fcガンマ受容体遺伝子に
より実質的にコードされるタンパク質のファミリーに属する全てのメンバーを含む。ヒト
においては、このファミリーは、アイソフォームFcガンマRIa、FcガンマRIbお
よびFcガンマRIcを含むFcガンマRI(CD64);アイソフォームFcガンマR
IIa(アロタイプH131およびR131を含む)、FcガンマRIIb(Fcガンマ
RIIb-1およびFcガンマRIIb-2を含む)、およびFcガンマRIIcを含む
FcガンマRII(CD32);およびアイソフォームFcガンマRIIIa(アロタイ
プV158およびF158を含む)およびFcガンマRIIIb(アロタイプFcガンマ
RIIIb-NA1およびFcガンマRIIIb-NA2を含む)を含むFcガンマRI
II(CD16);ならびに全ての未同定のヒトFcガンマ受容体、Fcガンマ受容体ア
イソフォーム、およびそのアロタイプを含む。しかしながら、Fcガンマ受容体は、これ
らの例に限定されない。それに限定されるものではないが、Fcガンマ受容体としては、
ヒト、マウス、ラット、ウサギ、およびサルに由来するものが挙げられる。Fcガンマ受
容体は、任意の生物に由来するものであってよい。マウスFcガンマ受容体としては、限
定されるものではないが、FcガンマRI(CD64)、FcガンマRII(CD32)
、FcガンマRIII(CD16)、およびFcガンマRIII-2(CD16-2)、
ならびに全ての未同定のマウスFcガンマ受容体、Fcガンマ受容体アイソフォーム、お
よびそのアロタイプが挙げられる。そのような好ましいFcガンマ受容体としては、例え
ば、ヒトFcガンマRI(CD64)、FcガンマRIIA(CD32)、FcガンマR
IIB(CD32)、FcガンマRIIIA(CD16)、および/またはFcガンマR
IIIB(CD16)が挙げられる。FcガンマRIのポリヌクレオチド配列およびアミ
ノ酸配列は、それぞれ、NCBI Reference Sequence NM_00
0566.3(配列番号124)およびNP_000557.1(配列番号125)に示
される;FcガンマRIIAのポリヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、それぞれ、
BC020823.1(配列番号126)およびAAH20823.1(配列番号127
)に示される;FcガンマRIIBのポリヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、それ
ぞれ、BC146678.1(配列番号128)およびAAI46679.1(配列番号
129)に示される;FcガンマRIIIAのポリヌクレオチド配列およびアミノ酸配列
は、それぞれ、BC033678.1(配列番号130)およびAAH33678.1(
配列番号131)に示される;ならびにFcガンマRIIIBのポリヌクレオチド配列お
よびアミノ酸配列は、それぞれ、BC128562.1(配列番号132)およびAAI
28563.1(配列番号133)に示される(RefSeq受託番号)。Fcガンマ受
容体がモノクローナルIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4抗体のFcドメイ
ンに対する結合活性を有するかどうかを、上記のFACSおよびELISA形式に加えて
、ALPHAスクリーン(Amplified Luminescent Proxim
ity Homogeneous Assay)、表面プラズモン共鳴(SPR)に基づ
くBIACORE法、その他(Proc.Natl.Acad.Sci.USA(200
6)103(11)、4005~4010頁)によって評価することができる。
【0148】
一方、「Fcリガンド」または「エフェクターリガンド」とは、抗体Fcドメインに結
合し、Fc/Fcリガンド複合体を形成する分子、好ましくは、ポリペプチドを指す。そ
の分子は、任意の生物に由来するものであってよい。FcリガンドのFcへの結合は、好
ましくは、1つまたは複数のエフェクター機能を誘導する。そのようなFcリガンドとし
ては、限定されるものではないが、Fc受容体、Fcガンマ受容体、Fcアルファ受容体
、Fcベータ受容体、FcRn、C1q、およびC3、マンナン結合レクチン、マンノー
ス受容体、スタフィロコッカスプロテインA、スタフィロコッカスプロテインG、および
ウイルスFcガンマ受容体が挙げられる。Fcリガンドはまた、Fcガンマ受容体と相同
なFc受容体のファミリーである、Fc受容体ホモログ(FcRH)(Davisら(2
002)、Immunological Reviews 190、123~136頁)
も含む。Fcリガンドはまた、Fcに結合する未同定の分子も含む。
【0149】
Fcガンマ受容体結合活性
Fcドメインの、Fcガンマ受容体であるFcガンマRI、FcガンマRIIA、Fc
ガンマRIIB、FcガンマRIIIA、および/またはFcガンマRIIIBのいずれ
かへの結合活性の低下を、上記のFACSおよびELISA形式ならびにALPHAスク
リーン(Amplified Luminescent Proximity Homo
geneous Assay)および表面プラズモン共鳴(SPR)に基づくBIACO
RE法(Proc.Natl.Acad.Sci.USA(2006)103(11)、
4005~4010頁)を使用することによって評価することができる。一部の実施形態
では、本発明の抗原結合分子または抗体は、Fcガンマ受容体に対する結合活性が低下し
たFc領域を含むドメインを含む。
【0150】
ALPHAスクリーンは、2つの型のビーズ:ドナービーズおよびアクセプタービーズ
を使用して、以下に記載される原理に基づくALPHA技術によって実施される。発光シ
グナルは、ドナービーズに連結された分子が、アクセプタービーズに連結された分子と生
物学的に相互作用する場合および2つのビーズがごく接近して位置する場合にのみ検出さ
れる。ドナービーズ中の光増感剤は、レーザー光線によって励起されると、ビーズ周囲の
酸素を、励起された一重項酸素に変換する。一重項酸素がドナービーズの周囲に拡散し、
ごく接近して位置するアクセプタービーズに到達する場合、アクセプタービーズ内の化学
発光反応が誘導される。この反応は、最終的には光放出をもたらす。ドナービーズに連結
された分子が、アクセプタービーズに連結された分子と相互作用しない場合、ドナービー
ズによって生成された一重項酸素は、アクセプタービーズに到達せず、化学発光反応は起
こらない。
【0151】
例えば、ビオチン標識化された抗原結合分子または抗体はドナービーズに固相化され、
グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)タグ付Fcガンマ受容体はアクセプター
ビーズに固相化される。競合的変異体Fcドメインを含む抗原結合分子または抗体の非存
在下では、Fcガンマ受容体は、野生型Fcドメインを含む抗原結合分子または抗体と相
互作用し、結果として、520~620nmのシグナルを誘導する。非タグ付変異体Fc
ドメインを有する抗原結合分子または抗体は、Fcガンマ受容体との相互作用に関して野
生型Fcドメインを含む抗原結合分子または抗体と競合する。競合の結果としての蛍光の
減少を定量することによって、相対的結合親和性を決定することができる。スルホ-NH
S-ビオチンなどを使用する抗体などの、抗原結合分子または抗体をビオチン化するため
の方法は公知である。GSTタグをFcガンマ受容体に付加するための適切な方法として
は、Fcガンマ受容体およびGSTをコードするポリペプチドをインフレームに融合する
こと、融合遺伝子を担持するベクターを用いて導入される細胞を使用して、該遺伝子を発
現させること、次いで、グルタチオンカラムを使用して精製することを含む方法が挙げら
れる。好ましくは、誘導されたシグナルを、例えば、GRAPHPAD PRISM(G
raphPad;San Diego)などのソフトウェアを使用する非線形回帰分析に
基づく1部位競合モデルに適合させることによって分析することができる。
【0152】
それらの相互作用を観察するための物質の1つを、センサーチップの金薄層上にリガン
ドとして固相化する。金薄層とガラスとの境界面で全反射が起こるように、センサーチッ
プの裏面に光が当てられた時、反射光の強度は、ある特定の部位で部分的に減少する(S
PRシグナル)。それらの相互作用を観察するための他の物質を、センサーチップの表面
上に分析物として注入する。分析物がリガンドに結合する場合、固相化されたリガンド分
子の質量は増大する。これは、センサーチップの表面上での溶媒の屈折率を変化させる。
屈折率の変化は、SPRシグナルの位置シフトを引き起こす(逆に、解離は、シグナルを
元の位置にシフトさせる)。Biacoreシステムでは、上記のシフト(すなわち、セ
ンサーチップ表面上の質量の変化)の量を、垂直軸にプロットし、かくして、経時的な質
量の変化を、測定データとして示す(センサーグラム)。反応速度パラメータ(結合速度
定数(ka)および解離速度定数(kd))を、センサーグラムの曲線から決定し、親和
性(KD)を、これらの2つの定数間の比から決定する。阻害アッセイは、好ましくはB
IACORE法において使用される。そのような阻害アッセイの例は、Proc.Nat
l.Acad.Sci.USA(2006)103(11)、4005~4010頁に記
載されている。
【0153】
機能性Fc領域
「機能性Fc領域」は、天然配列Fc領域の「エフェクター機能」を有する。例示的な
「エフェクター機能」としては、C1q結合;CDC;Fc受容体結合;ADCC;食作
用;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体;BCR)の下方調節などが挙げられる。そ
のようなエフェクター機能には、一般的には、Fc領域を結合ドメイン(例えば、抗体可
変ドメイン)と組み合わせる必要があり、例えば、本明細書の定義に開示されたような様
々なアッセイを使用して評価することができる。一部の実施形態では、本発明の抗原結合
分子または抗体は、エフェクター機能を有する機能性Fc領域を含むドメインを含む。
【0154】
「エフェクター機能」とは、抗体アイソタイプと共に変化する、抗体のFc領域に起因
する生物活性を指す。抗体エフェクター機能の例としては、C1q結合および補体依存性
細胞傷害(CDC);Fc受容体結合;抗体依存性細胞傷害(ADCC);食作用;細胞
表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方調節;およびB細胞活性化が挙げられる。
【0155】
ヒトエフェクター細胞
「ヒトエフェクター細胞」とは、1つまたは複数のFcRを発現し、エフェクター機能
を実行する白血球を指す。ある特定の実施形態では、細胞は、少なくともFcガンマRI
IIを発現し、ADCCエフェクター機能を実行する。ADCCを媒介するヒト白血球の
例としては、末梢血単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞
傷害性T細胞、および好中球が挙げられる。エフェクター細胞を、天然の供給源、例えば
、血液から単離することができる。
【0156】
Fcガンマ受容体結合活性が低下したFc領域
本明細書では、「Fcガンマ受容体結合活性が低下した」とは、例えば、上記の分析方
法に基づいて、試験抗原結合分子または抗体の競合活性が、対照抗原結合分子または抗体
の競合活性の50%以下、好ましくは、45%以下、40%以下、35%以下、30%以
下、20%以下、または15%以下、特に好ましくは、10%以下、9%以下、8%以下
、7%以下、6%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、または1%以下であ
ることを意味する。
【0157】
モノクローナルIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4抗体のFcドメインを
含む抗原結合分子または抗体を、対照抗原結合分子または抗体として適切に使用すること
ができる。Fcドメイン構造は、配列番号112(RefSeq受託番号AAC8252
7.1のN末端にAが付加される)、配列番号113(RefSeq受託番号AAB59
393.1のN末端にAが付加される)、配列番号114(RefSeq受託番号CAA
27268.1のN末端にAが付加される)、および配列番号115(RefSeq受託
番号AAB59394.1のN末端にAが付加される)に示される。さらに、特定のアイ
ソタイプの抗体の抗体のFcドメイン変異体を含む抗原結合分子または抗体を試験物質と
して使用する場合、Fcガンマ受容体結合活性に対する変異体の変異の効果を、同じアイ
ソタイプのFcドメインを含む抗原結合分子または抗体を対照として使用して評価する。
上記のように、Fcガンマ受容体結合活性が低下していると判定されたFcドメイン変異
体を含む抗原結合分子または抗体が適切に調製される。
【0158】
そのような公知の変異体としては、例えば、アミノ酸231A~238S(EUナンバ
リング)の欠失を有する変異体(WO2009/011941)、ならびに変異体C22
6S、C229S、P238S、(C220S)(J.Rheumatol(2007)
34、11頁);C226SおよびC229S(Hum.Antibod.Hybrid
omas(1990)1(1)、47~54頁);C226S、C229S、E233P
、L234V、およびL235A(Blood(2007)109、1185~1192
頁)が挙げられる。
【0159】
具体的には、特定のアイソタイプの抗体のFcドメインを形成するアミノ酸中で、好ま
しい抗原結合分子または抗体としては、以下のアミノ酸位置:220、226、229、
231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、
264、265、266、267、269、270、295、296、297、298、
299、300、325、327、328、329、330、331、または332(E
Uナンバリング)から選択される少なくとも1個のアミノ酸の変異(置換など)を有する
Fcドメインを含むものが挙げられる。Fcドメインが起源とする抗体のアイソタイプは
特に限定されず、モノクローナルIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4抗体に
由来する適切なFcドメインを使用することができる。IgG1抗体に由来するFcドメ
インを使用することが好ましい。
【0160】
好ましい抗原結合分子または抗体としては、例えば、IgG1抗体のFcドメインを形
成するアミノ酸中で、位置がEUナンバリングに従って特定される(それぞれの数字は、
EUナンバリングにおけるアミノ酸残基の位置を表し、数字の前の1文字のアミノ酸記号
は置換前のアミノ酸残基を表すが、数字の後の1文字のアミノ酸記号は置換後のアミノ酸
残基を表す)、以下に示される置換:
(a)L234F、L235E、P331S;
(b)C226S、C229S、P238S;
(c)C226S、C229S;または
(d)C226S、C229S、E233P、L234V、L235A
のいずれか1つを有するFcドメインを含むもの;ならびに231位~238位にアミノ
酸配列の欠失を有するFcドメインを有するものが挙げられる。
【0161】
さらに、好ましい抗原結合分子または抗体としては、IgG2抗体のFcドメインを形
成するアミノ酸中で、位置がEUナンバリングに従って特定される、以下に示される置換
:
(e)H268Q、V309L、A330S、およびP331S;
(f)V234A;
(g)G237A;
(h)V234AおよびG237A;
(i)A235EおよびG237A;または
(j)V234A、A235E、およびG237A
のいずれか1つを有するFcドメインを含むものも挙げられる。それぞれの数字はEUナ
ンバリングにおけるアミノ酸残基の位置を表し、数字の前の1文字のアミノ酸記号は置換
前のアミノ酸残基を表すが、数字の後の1文字のアミノ酸記号は置換後のアミノ酸残基を
表す。
【0162】
さらに、好ましい抗原結合分子または抗体としては、IgG3抗体のFcドメインを形
成するアミノ酸中で、位置がEUナンバリングに従って特定される、以下に示される置換
:
(k)F241A;
(l)D265A;または
(m)V264A
のいずれか1つを有するFcドメインを含むものも挙げられる。それぞれの数字はEUナ
ンバリングにおけるアミノ酸残基の位置を表し、数字の前の1文字のアミノ酸記号は置換
前のアミノ酸残基を表すが、数字の後の1文字のアミノ酸記号は置換後のアミノ酸残基を
表す。
【0163】
さらに、好ましい抗原結合分子または抗体としては、IgG4抗体のFcドメインを形
成するアミノ酸中で、位置がEUナンバリングに従って特定される、以下に示される置換
:
(n)L235A、G237A、およびE318A;
(o)L235E;または
(p)F234AおよびL235A
のいずれか1つを有するFcドメインを含むものも挙げられる。それぞれの数字はEUナ
ンバリングにおけるアミノ酸残基の位置を表し、数字の前の1文字のアミノ酸記号は置換
前のアミノ酸残基を表すが、数字の後の1文字のアミノ酸記号は置換後のアミノ酸残基を
表す。
【0164】
他の好ましい抗原結合分子または抗体としては、例えば、IgG1抗体のFcドメイン
を形成するアミノ酸中の233、234、235、236、237、327、330、ま
たは331位(EUナンバリング)の任意のアミノ酸が、対応するIgG2またはIgG
4中のEUナンバリングにおける対応する位置のアミノ酸で置換された、Fcドメインを
含むものが挙げられる。
【0165】
好ましい抗原結合分子または抗体としては、例えば、IgG1抗体のFcドメインを形
成するアミノ酸中の234、235、および297位(EUナンバリング)のアミノ酸の
いずれか1つまたは複数が、他のアミノ酸で置換された、Fcドメインを含むものも挙げ
られる。置換後のアミノ酸の型は特に限定されないが、234、235、および297位
のアミノ酸のいずれか1つまたは複数がアラニンで置換された、Fcドメインを含む抗原
結合分子または抗体が特に好ましい。
【0166】
好ましい抗原結合分子または抗体としては、例えば、IgG1抗体のFcドメインを形
成するアミノ酸中のおよび265位(EUナンバリング)のアミノ酸が、別のアミノ酸で
置換された、Fcドメインを含むものも挙げられる。置換後のアミノ酸の型は特に限定さ
れないが、265位のアミノ酸がアラニンで置換された、Fcドメインを含む抗原結合分
子または抗体が特に好ましい。
【0167】
DLL3に結合する抗原結合ドメイン
本明細書で使用される場合、語句「DLL3に結合する抗原結合ドメイン」または「抗
DLL3抗原結合ドメイン」とは、上記のDLL3タンパク質に特異的に結合する抗原結
合ドメイン、またはDLL3タンパク質の部分ペプチドの全部もしくは一部を指す。
【0168】
ある特定の実施形態では、DLL3に結合する抗原結合ドメインは、抗体軽鎖および重
鎖可変領域(VLおよびVH)を含むドメインである。抗体軽鎖および重鎖可変領域を含
むそのようなドメインの好適な例としては、「単鎖Fv(scFv)」、「単鎖抗体」、
「Fv」、「単鎖Fv2(scFv2)」、「Fab」、「F(ab’)2」などが挙げ
られる。特定の実施形態では、DLL3に結合する抗原結合ドメインは、抗体可変断片を
含むドメインである。抗体可変断片を含むドメインを、1つまたは複数の抗体の可変ドメ
インから提供することができる。
【0169】
ある特定の実施形態では、DLL3に結合する抗原結合ドメインは、抗DLL3抗体の
重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含む。ある特定の実施形態では、DLL3に結合する抗
原結合ドメインは、Fab構造を含むドメインである。
【0170】
好ましくは、抗DLL3抗原結合ドメインは、配列番号15、配列番号25、および配
列番号63~71のいずれか1つの重鎖可変領域と、配列番号16、配列番号26、およ
び配列番号72~74のいずれか1つの軽鎖可変領域とを含む。
【0171】
一部の実施形態では、抗DLL3抗原結合ドメインは、DLL3の細胞外ドメインに特
異的に結合する。一部の実施形態では、抗DLL3抗原結合ドメインは、DLL3の細胞
外ドメイン内のエピトープに特異的に結合する。一部の実施形態では、抗DLL3抗原結
合ドメインは、真核細胞の表面上に発現されるDLL3タンパク質に結合する。一部の実
施形態では、抗DLL3抗原結合ドメインは、がん細胞の表面上に発現されるDLL3タ
ンパク質に結合する。
【0172】
特定の実施形態では、DLL3に結合する抗原結合ドメインは、以下の表1Aおよび表
1Bに示される抗体可変/定常領域配列のいずれか1つを含む。
【0173】
表1Aは、生成された抗DLL3抗体の配列番号を示す。
【0174】
【0175】
表1Bは、生成された抗DLL3抗体のHVR(CDR)配列の配列番号を示す。
【0176】
【0177】
特定の実施形態では、DLL3に結合する抗原結合ドメインは、表1Aに示された抗体
可変領域のいずれか1つと、DLL3への結合について競合する、または表1Aに示され
た抗体可変領域のHVR領域と同一のHVR配列を含む任意の抗体可変断片と、DLL3
への結合について競合する、または表1Bに示されたものと同一のHVR配列を含む任意
の抗体可変断片と、DLL3への結合について競合する、抗体可変断片を含むドメインで
ある。特定の実施形態では、DLL3に結合する抗原結合ドメインは、表1Aに示された
抗体可変領域のいずれか1つと同じDLL3内のエピトープに結合する、または表1Aに
示された抗体可変領域のHVR領域と同一のHVR配列を含む任意の抗体可変断片と同じ
DLL3内のエピトープに結合する、または表1Bに示されたものと同一のHVR配列を
含む任意の抗体可変断片と同じDLL3内のエピトープに結合する、抗体可変断片を含む
ドメインである。
【0178】
あるいは、DLL3に結合する抗原結合ドメインは、上記の抗体可変断片のいずれか1
つと、DLL3への結合について競合する抗体可変断片を含む。あるいは、DLL3に結
合する抗原結合ドメインは、上記の抗体可変断片のいずれか1つがDLL3上において結
合するのと同じエピトープに結合する抗体可変断片を含む。
【0179】
T細胞受容体複合体に結合する抗原結合ドメイン
本明細書で使用される場合、語句「T細胞受容体複合体に結合する抗原結合ドメイン」
または「抗T細胞受容体複合体抗原結合ドメイン」とは、T細胞受容体複合体の部分ペプ
チドの全部または一部に特異的に結合する抗原結合ドメインを指す。T細胞受容体複合体
は、T細胞受容体自体、またはT細胞受容体と共にT細胞受容体複合体を構成するアダプ
ター分子であってもよい。CD3が、アダプター分子として好適である。
【0180】
ある特定の実施形態では、T細胞受容体複合体に結合する抗原結合ドメインは、抗体軽
鎖および重鎖可変領域(VLおよびVH)を含むドメインである。抗体軽鎖および重鎖可
変領域を含むそのようなドメインの好適な例としては、「単鎖Fv(scFv)」、「単
鎖抗体」、「Fv」、「単鎖Fv2(scFv2)」、「Fab」、「F(ab’)2」
などが挙げられる。特定の実施形態では、T細胞受容体複合体に結合する抗原結合ドメイ
ンは、抗体可変断片を含むドメインである。抗体可変断片を含むドメインを、1つまたは
複数の抗体の可変ドメインから提供することができる。
【0181】
ある特定の実施形態では、T細胞受容体複合体に結合する抗原結合ドメインは、抗T細
胞受容体複合体抗体の重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含む。ある特定の実施形態では、
T細胞受容体複合体結合活性に結合する抗原結合ドメインは、Fab構造を含むドメイン
である。
【0182】
T細胞受容体に結合する抗原結合ドメイン
本明細書で使用される場合、語句「T細胞受容体に結合する抗原結合ドメイン」または
「抗T細胞受容体抗原結合ドメイン」とは、T細胞受容体の部分ペプチドの全部または一
部に特異的に結合する抗原結合ドメインを指す。抗原結合ドメインが結合するT細胞受容
体の部分は、T細胞受容体の可変領域またはT細胞受容体の定常領域であってよいが、定
常領域中に存在するエピトープが好ましい。定常領域配列の例としては、RefSeq受
託番号CAA26636.1(配列番号104)のT細胞受容体アルファ鎖、RefSe
q受託番号C25777(配列番号105)のT細胞受容体ベータ鎖、RefSeq受託
番号A26659(配列番号106)のT細胞受容体ガンマ1鎖、RefSeq受託番号
AAB63312.1(配列番号107)のT細胞受容体ガンマ2鎖、およびRefSe
q受託番号AAA61033.1(配列番号108)のT細胞受容体デルタ鎖が挙げられ
る。
【0183】
ある特定の実施形態では、T細胞受容体に結合する抗原結合ドメインは、抗体軽鎖およ
び重鎖可変領域(VLおよびVH)を含むドメインである。抗体軽鎖および重鎖可変領域
を含むそのようなドメインの好適な例としては、「単鎖Fv(scFv)」、「単鎖抗体
」、「Fv」、「単鎖Fv2(scFv2)」、「Fab」、「F(ab’)2」などが
挙げられる。特定の実施形態では、T細胞受容体に結合する抗原結合ドメインは、抗体可
変断片を含むドメインである。抗体可変断片を含むドメインを、1つまたは複数の抗体の
可変ドメインから提供することができる。
【0184】
ある特定の実施形態では、T細胞受容体に結合する抗原結合ドメインは、抗T細胞受容
体抗体の重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含む。ある特定の実施形態では、T細胞受容体
に結合する抗原結合ドメインは、Fab構造を含むドメインである。
【0185】
CD3に結合する抗原結合ドメイン
本明細書で使用される場合、語句「CD3に結合する抗原結合ドメイン」または「抗C
D3抗原結合ドメイン」とは、CD3の部分ペプチドの全部または一部に特異的に結合す
る抗原結合ドメインを指す。エピトープが、ヒトCD3を構成するガンマ鎖、デルタ鎖、
またはイプシロン鎖配列中に存在する限り、CD3に結合する抗原結合ドメインは、任意
のエピトープ結合ドメインであってもよい。CD3を構成するガンマ鎖、デルタ鎖、また
はイプシロン鎖の構造に関して、そのポリヌクレオチド配列は、RefSeq受託番号N
M_000073.2、NM_000732.4およびNM_000733.3に開示さ
れており、そのポリペプチド配列は、NP_000064.1(配列番号109)、NP
_000723.1(配列番号110)、およびNP_000724.1(配列番号11
1)(RefSeq受託番号)に示されている。一部の実施形態では、本発明の抗原結合
分子または抗体は、CD3イプシロン鎖に結合する抗原可変領域を含むドメインを含む。
【0186】
ある特定の実施形態では、CD3に結合する抗原結合ドメインは、抗体軽鎖および重鎖
可変領域(VLおよびVH)を含むドメインである。抗体軽鎖および重鎖可変領域を含む
そのようなドメインの好適な例としては、「単鎖Fv(scFv)」、「単鎖抗体」、「
Fv」、「単鎖Fv2(scFv2)」、「Fab」、「F(ab’)2」などが挙げら
れる。特定の実施形態では、CD3に結合する抗原結合ドメインは、抗体可変断片を含む
ドメインである。抗体可変断片を含むドメインを、1つまたは複数の抗体の可変ドメイン
から提供することができる。
【0187】
ある特定の実施形態では、CD3に結合する抗原結合ドメインは、抗CD3抗体の重鎖
可変領域と軽鎖可変領域とを含む。ある特定の実施形態では、CD3に結合する抗原結合
ドメインは、Fab構造を含むドメインである。
【0188】
エピトープが、ヒトCD3を形成するガンマ鎖、デルタ鎖、またはイプシロン鎖配列内
に位置する限り、本発明の抗CD3抗原結合ドメインは、任意のエピトープに結合しても
よい。本発明では、好ましい抗CD3抗原結合ドメインとしては、ヒトCD3複合体のイ
プシロン鎖の細胞外ドメイン中のエピトープに結合する、CD3抗体軽鎖可変領域(VL
)とCD3抗体重鎖可変領域(VH)とを含むものが挙げられる。そのような好ましい抗
CD3抗原結合ドメインとしては、OKT3抗体(Proc.Natl.Acad.Sc
i.USA(1980)77、4914~4917頁)またはNCBI受託番号AAB2
4132の軽鎖可変領域(VL)と、NCBI受託番号AAB24133の重鎖可変領域
(VH)とを有する抗体などの様々な公知のCD3抗体(Int.J.Cancer S
uppl.7、45~50頁(1992))のCD3抗体軽鎖可変領域(VL)と、CD
3抗体重鎖可変領域(VH)とを含むものが挙げられる。さらに、そのような適切な抗C
D3抗原結合ドメインとしては、所望の動物を、上記方法によってヒトCD3を形成する
ガンマ鎖、デルタ鎖、またはイプシロン鎖で免疫化することによって得られる、所望の特
徴を有するCD3抗体に由来するものが挙げられる。抗CD3抗原結合ドメインが由来す
る適切な抗CD3抗体としては、ヒト抗体および上記のように適切にヒト化された抗体が
挙げられる。
【0189】
好ましくは、抗CD3抗原結合ドメインは、表2Bに示された重鎖可変領域のいずれか
1つの重鎖可変領域と、表2Bに示された軽鎖可変領域のいずれか1つの軽鎖可変領域と
を含む。
【0190】
一部の実施形態では、抗CD3抗原結合ドメインは、CD3イプシロン鎖に特異的に結
合する。一部の実施形態では、抗CD3抗原結合ドメインは、CD3イプシロン鎖内のエ
ピトープに特異的に結合する。一部の実施形態では、抗CD3抗原結合ドメインは、真核
細胞の表面上に発現されるCD3イプシロン鎖に結合する。一部の実施形態では、抗CD
3抗原結合ドメインは、T細胞の表面上に発現されるCD3イプシロン鎖に結合する。
【0191】
特定の実施形態では、CD3に結合する抗原結合ドメインは、以下の表2Aに示される
抗体可変領域配列のいずれか1つを含む。特定の実施形態では、CD3に結合する抗原結
合ドメインは、表2Aに示される重鎖可変領域と軽鎖可変領域との組合せのいずれか1つ
を含む。特定の実施形態では、CD3に結合する抗原結合ドメインは、表2Aに示される
抗体可変領域に含まれるHVR配列を含む。
【0192】
表2Aは、抗CD3抗原結合ドメインの可変領域の配列番号を示す。
【0193】
【0194】
特定の実施形態では、CD3に結合する抗原結合ドメインは、以下の表2Bに示される
HVR配列の組合せのいずれか1つを含む。
【0195】
表2Bは、抗CD3抗原結合ドメインのHVR(CDR)配列の配列番号を示す。
【0196】
【0197】
特定の実施形態では、CD3に結合する抗原結合ドメインは、表2Aに示された抗体可
変領域のいずれか1つと、CD3への結合について競合する、または表2Aに示された抗
体可変領域のHVR領域と同一のHVR配列を含む任意の抗体可変断片と、CD3への結
合について競合する、または表2Bに示されたものと同一のHVR配列を含む任意の抗体
可変断片と、CD3への結合について競合する、抗体可変断片を含むドメインである。特
定の実施形態では、CD3に結合する抗原結合ドメインは、表2Aに示された抗体可変領
域のいずれか1つと同じCD3内のエピトープに結合する、または表2Aに示された抗体
可変領域のHVR領域と同一のHVR配列を含む任意の抗体可変断片と同じCD3内のエ
ピトープに結合する、または表2Bに示されたものと同一のHVR配列を含む任意の抗体
可変断片と同じCD3内のエピトープに結合する、抗体可変断片を含むドメインである。
【0198】
あるいは、CD3に結合する抗原結合ドメインは、上記の抗体可変断片/抗体可変領域
のいずれか1つと、CD3への結合について競合する抗体可変断片を含む。あるいは、C
D3に結合する抗原結合ドメインは、上記の抗体可変断片/抗体可変領域のいずれか1つ
がCD3上において結合するのと同じエピトープに結合する抗体可変断片を含む。
【0199】
多重特異性抗原結合分子
「多重特異性抗原結合分子」とは、1つより多い抗原に特異的に結合する抗原結合分子
を指す。好ましい実施形態では、本発明の多重特異性抗原結合分子は、2つ以上の抗原結
合ドメインを含み、異なる抗原結合ドメインは、異なる抗原に特異的に結合する。
【0200】
本発明の多重特異性抗原結合分子は、DLL3に結合する第1の抗原結合ドメインと、
T細胞受容体複合体に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む。上記の「DLL3に結
合する抗原結合ドメイン」に記載されたものから選択されるDLL3に結合する抗原結合
ドメインおよび「T細胞受容体複合体に結合する抗原結合ドメイン」に記載されたものか
ら選択されるT細胞受容体複合体に結合する抗原結合ドメインの、上記の「CD3に結合
する抗原結合ドメイン」との組合せを使用することができる。
【0201】
例えば、第1の抗原結合ドメインは、抗体重鎖および軽鎖可変領域を含むドメインであ
り、および/または第2の抗原結合ドメインは、抗体重鎖および軽鎖可変領域を含むドメ
インである。あるいは、第1の抗原結合ドメインは、抗体可変断片を含むドメインであり
、および/または第2の抗原結合ドメインは、抗体可変断片を含むドメインである。ある
いは、第1の抗原結合ドメインは、Fab構造を含むドメインであり、および/または第
2の抗原結合ドメインは、Fab構造を含むドメインである。
【0202】
ある特定の実施形態では、本発明は、DLL3に結合する第1の抗原結合ドメインと、
T細胞受容体複合体に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む多重特異性抗原結合分子
を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、DLL3に結合する第1の抗原結合ド
メイン、T細胞受容体複合体に結合する第2の抗原結合ドメイン、およびFcガンマ受容
体結合活性が低下したFc領域を含むドメインを含む二重特異性抗原結合分子を提供する
。Fc領域は、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4抗体のFcドメインと比
較して低下したFcガンマ受容体結合活性を有してもよい。実施形態では、Fc領域は、
配列番号112~115(IgG1~IgG4)のFc領域を構成するアミノ酸のいずれ
かにアミノ酸変異を有するFc領域である。
【0203】
ある特定の実施形態では、本発明は、DLL3に結合する第1の抗体可変断片と、CD
3に結合する第2の抗体可変断片とを含む二重特異性抗体を提供する。ある特定の実施形
態では、本発明は、DLL3に結合する第1の抗体可変断片、CD3に結合する第2の抗
体可変断片、およびFcガンマ受容体結合活性が低下したFc領域を含む二重特異性抗体
を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、DLL3に結合する第1の抗体可変断
片、CD3イプシロン鎖に結合する第2の抗体可変断片、および天然に存在するIgG
Fc領域と比較して、Fcガンマ受容体結合活性が低下したFc領域を含む二重特異性抗
体を提供する。
【0204】
本発明の「多重特異性抗原結合分子」の好ましい実施形態の例としては、多重特異性抗
体が挙げられる。Fcガンマ受容体結合活性が低下したFc領域を多重特異性抗体Fc領
域として使用する場合、多重特異性抗体に由来するFc領域を適切に使用することができ
る。二重特異性抗体が、本発明の多重特異性抗体として特に好ましい。この場合、二重特
異性抗体は、2つの異なる特異性を有する抗体である。IgG型二重特異性抗体を、Ig
G抗体を産生する2つの型のハイブリドーマを融合することによって生成されたハイブリ
ッドハイブリドーマ(クアドローマ)から分泌させることができる(Milsteinら
、Nature(1983)305、537~540頁)。
【0205】
さらに、IgG型二重特異性抗体は、2つの型の目的のIgGを構成するL鎖およびH
鎖の遺伝子、すなわち、合計4個の遺伝子を、細胞中に導入すること、およびそれらを同
時に発現させることによって分泌される。しかしながら、これらの方法によって生産する
ことができるIgGのHおよびL鎖の組合せの数は、理論的には、10の組合せである。
したがって、10の型のIgGからHおよびL鎖の所望の組合せを含むIgGを精製する
ことは困難である。さらに、理論的には、所望の組合せを有するIgGの分泌量は、顕著
に減少し、したがって、大規模培養が必要であり、生産コストはさらに増大するであろう
。
【0206】
したがって、H鎖間ならびに所望の組合せを有するLおよびH鎖の間の結合を促進する
ための技術を、本発明の多重特異性抗原結合分子に適用することができる。
例えば、抗体H鎖の第2の定常領域または第3の定常領域(CH2またはCH3)の境界
面に静電反発力を導入することによって望ましくないH鎖結合を抑制するための技術を、
多重特異性抗体結合に適用することができる(WO2006/106905)。
【0207】
CH2またはCH3の境界面に静電反発力を導入することによって意図しないH鎖結合
を抑制する技術において、H鎖の他の定常領域の境界面に接触するアミノ酸残基の例とし
ては、CH3領域中のEUナンバリングの356位、439位、357位、370位、3
99位、および409位の残基に対応する領域が挙げられる。
【0208】
より具体的には、例として、以下の(1)~(3)に示されるアミノ酸残基の対から選
択される、第1のH鎖CH3領域中の1~3対のアミノ酸残基が同じ型の電荷を担持する
、2つの型のH鎖CH3領域を含む抗体が挙げられる:(1)EUナンバリングの356
位および439位のH鎖CH3領域に含まれるアミノ酸残基;(2)EUナンバリングの
357位および370位のH鎖CH3領域に含まれるアミノ酸残基;ならびに(3)EU
ナンバリングの399位および409位のH鎖CH3領域に含まれるアミノ酸残基。
【0209】
さらに、抗体は、上記の第1のH鎖CH3領域とは異なる第2のH鎖CH3領域中のア
ミノ酸残基の対が、(1)~(3)のアミノ酸残基の上記対から選択され、上記の第1の
H鎖CH3領域中の同じ型の電荷を担持する(1)~(3)のアミノ酸残基の上記対に対
応する1~3対のアミノ酸残基が、上記の第1のH鎖CH3領域中の対応するアミノ酸残
基に由来する反対の電荷を担持する、抗体であってもよい。
【0210】
上記の(1)~(3)に示されたアミノ酸残基はそれぞれ、結合の間に互いに近くに来
る。当業者であれば、市販のソフトウェアを使用する相同性モデリングなどにより、所望
のH鎖CH3領域またはH鎖定常領域中の(1)~(3)の上記アミノ酸残基に対応する
位置を見出すことができ、これらの位置のアミノ酸残基を、適切に改変にかけることがで
きる。
【0211】
上記の抗体において、「荷電したアミノ酸残基」は、好ましくは、例えば、以下の群:
(a)グルタミン酸(E)およびアスパラギン酸(D);ならびに
(b)リシン(K)、アルギニン(R)、およびヒスチジン(H)
のいずれか一方に含まれるアミノ酸残基から選択される。
【0212】
上記抗体において、語句「同じ電荷を担持する」とは、例えば、2つ以上のアミノ酸残
基が全て、上記の群(a)および(b)のいずれか一方に含まれるアミノ酸残基から選択
されることを意味する。語句「反対の電荷を担持する」とは、例えば、2つ以上のアミノ
酸残基のうちの少なくとも1個のアミノ酸残基が、上記の群(a)および(b)のいずれ
か一方に含まれるアミノ酸残基から選択される場合、残りのアミノ酸残基が他方の群に含
まれるアミノ酸残基から選択されることを意味する。
【0213】
好ましい実施形態では、上記の抗体は、ジスルフィド結合によって架橋されたその第1
のH鎖CH3領域と第2のH鎖CH3領域とを有してもよい。
【0214】
本発明では、改変を受けるアミノ酸残基は、抗体可変領域または抗体定常領域の上記ア
ミノ酸残基に限定されない。当業者であれば、市販のソフトウェアを使用する相同性モデ
リングなどにより、ポリペプチド変異体またはヘテロ多量体中の境界面を形成するアミノ
酸残基を同定することができる;次いで、これらの位置のアミノ酸残基を改変にかけて、
結合を調節することができる。
【0215】
他の公知の技術を、本発明の多重特異性抗体の結合のために使用することもできる。抗
体のH鎖Fc領域の1つに存在するアミノ酸側鎖を、長い方の側鎖(ノブ)で置換するこ
と、および他のH鎖の対応するFc領域に存在するアミノ酸側鎖を、小さい方の側鎖(ホ
ール)で置換することにより、異なるアミノ酸を含むFc領域含有ポリペプチドを互いに
効率的に結合させて、ホール内へのノブの配置を可能にすることができる(WO1996
/027011;Ridgway JBら、Protein Engineering(
1996)、9、617~621頁;Merchant A.M.ら、Nature B
iotechnology(1998)16、677~681頁;およびUS20130
336973)。
【0216】
さらに、他の公知の技術を、本発明の多重特異性抗体の形成のために使用することもで
きる。抗体のH鎖CH3の1つの一部を、対応するIgA由来配列に変化させること、お
よび対応するIgA由来配列を、他のH鎖CH3の相補的部分に導入することによって産
生された鎖交換操作ドメインCH3を使用するCH3の相補的結合によって、異なる配列
を有するポリペプチドの結合を効率的に誘導することができる(Protein Eng
ineering Design & Selection、23;195~202頁、
2010)。この公知の技術を使用して、目的の多重特異性抗体を効率的に形成させるこ
ともできる。
【0217】
さらに、WO2011/028952、WO2014/018572、およびNat
Biotechnol.2014 Feb;32(2):191~8頁に記載された抗体
CH1とCLの結合およびVHとVLの結合を使用する抗体生産のための技術;WO20
08/119353およびWO2011/131746に記載された別々に調製されたモ
ノクローナル抗体を組み合わせて使用して二重特異的抗体を生産するための技術(Fab
アーム交換);WO2012/058768およびWO2013/063702に記載さ
れた抗体重鎖CH3間の結合を調節するための技術;WO2012/023053に記載
された2つの型の軽鎖と1つの型の重鎖とから構成される二重特異性抗体を生産するため
の技術;Christophら(Nature Biotechnology Vol.
31、753~758頁(2013))によって記載された単一のH鎖と単一のL鎖とを
含む抗体の鎖の一方を個別に発現する2つの細菌細胞株を使用して二重特異性抗体を生産
するための技術などを、多重特異性抗体の形成のために使用することができる。
【0218】
あるいは、目的の多重特異性抗体を効率的に形成させることができない場合であっても
、本発明の多重特異性抗体を、産生された抗体から、目的の多重特異性抗体を分離および
精製することによって得ることができる。例えば、2つの型のH鎖の可変領域中にアミノ
酸置換を導入することによって等電点の差異を付与することによるイオン交換クロマトグ
ラフィーによる、2つの型のホモマー型およびヘテロマー型の目的の抗体の精製を可能に
するための方法が報告されている(WO2007114325)。今まで、ヘテロマー抗
体を精製するための方法として、プロテインAに結合するマウスIgG2a H鎖と、プ
ロテインAに結合しないラットIgG2b H鎖とを含むヘテロ二量体抗体を精製するた
めにプロテインAを使用する方法が報告されている(WO98050431およびWO9
5033844)。さらに、IgG-プロテインA結合部位である、EUナンバリングの
435位および436位のアミノ酸残基の、異なるプロテインA親和性をもたらすアミノ
酸であるTyr、Hisなどによる置換を含むH鎖を使用して、または異なるプロテイン
A親和性を有するH鎖を使用して、それぞれのH鎖とプロテインAとの相互作用を変化さ
せること、次いで、プロテインAカラムを使用することによって、ヘテロ二量体抗体をそ
のまま効率的に精製することができる。
【0219】
あるいは、複数の異なるH鎖に対する結合能力を提供することができる共通のL鎖を得
て、多重特異性抗体の共通のL鎖として使用することができる。多重特異性IgGの効率
的な発現を、そのような共通のL鎖および複数の異なるH鎖の遺伝子を細胞に導入して、
IgGを発現させることによって達成することができる(Nature Biotech
nology(1998)16、677~681頁)。共通のH鎖を選択する場合、異な
るH鎖のいずれかに対する強力な結合能力を示す共通のL鎖を選択するための方法を使用
することもできる(WO2004/065611)。
【0220】
さらに、Fc領域のC末端不均質性が改善されたFc領域を、本発明のFc領域として
適切に使用することができる。より具体的には、本発明は、IgG1、IgG2、IgG
3、またはIgG4に由来するFc領域を構成する2つのポリペプチドのアミノ酸配列か
ら、EUナンバリングによって特定される446位のグリシンおよび447位のリシンを
欠失させることによって産生されるFc領域を提供する。
【0221】
2つ以上などの、複数のこれらの技術を組み合わせて使用することができる。さらに、
これらの技術を、結合させようとする2つのH鎖に適切に、別々に適用することができる
。さらに、これらの技術を、Fcガンマ受容体に対する結合活性が低下した上記のFc領
域と組み合わせて使用することができる。さらに、本発明の抗原結合分子は、それが、上
記の改変を受けた抗原結合分子に基づいて、同じアミノ酸配列を有するような、別々に生
産された分子であってもよい。
【0222】
好ましくは、本発明の抗原結合分子は、DLL3に結合する第1の抗原結合ドメインと
、T細胞受容体複合体に結合する第2の抗原結合ドメインとを含んでもよい。実施形態で
は、第2の抗原結合ドメインは、T細胞受容体に結合する。別の実施形態では、第2の抗
原結合ドメインは、CD3イプシロン鎖に結合する。実施形態では、第1の抗原結合ドメ
インは、ヒトDLL3に結合する。さらなる実施形態では、第1の抗原結合ドメインは、
真核細胞の表面上のDLL3に結合する。実施形態では、第1の抗原結合ドメインは、真
核細胞、好ましくは、がん細胞の表面上のヒトDLL3に結合する。
【0223】
本明細書における語句「抗DLL3アーム」とは、二重特異性抗体中のDLL3に結合
する抗体重鎖と抗体軽鎖とを指す。本明細書における語句「抗CD3アーム」とは、二重
特異性抗体中のCD3に結合する抗体重鎖と抗体軽鎖とを指す。
【0224】
好ましくは、本発明の抗原結合分子は、細胞性細胞傷害性(「細胞傷害性」とも呼ばれ
る)を有してもよい。実施形態では、細胞性細胞傷害性は、T細胞依存性細胞傷害性(T
DCC)である。別の実施形態では、細胞傷害性は、その表面上にDLL3を発現する細
胞に対する細胞性細胞傷害性である。DLL3発現細胞は、がん細胞であってもよい。
【0225】
好ましい態様では、本発明の抗体(または抗原結合分子)は、がん細胞などのDLL3
発現細胞に対する、細胞傷害性(もしくは細胞性細胞傷害性)、または好ましくは、T細
胞依存性細胞傷害性(TDCC)を有する。DLL3は、そのような細胞の表面上に発現
され得る。本発明の抗体(または抗原結合分子)の(細胞性)細胞傷害性またはTDCC
を、当分野で公知の任意の好適な方法によって評価することができる。例えば、一部の実
施例に記載される方法を、TDCCを測定するために使用することができる。この場合、
細胞傷害活性は、本発明の抗体(または抗原結合分子)による細胞増殖阻害の比率によっ
て評価される。細胞増殖は、xCELLigence Real-Time Cell
Analyzerなどの好適な分析装置を使用して測定される。がん細胞を標的細胞とし
て使用し、それらを好適な細胞濃度(例えば、約104細胞/ウェル)でマルチウェルプ
レート上に播種する。次の日、適切な濃度(例えば、0.001~10nM)で調製され
た試験抗体を、プレートに添加する。反応の15分後、T細胞(PBMCなど)を含有す
る溶液を、10の比などの、好適なエフェクター(PBMC)/標的(がん細胞)比でそ
れに添加する。反応を、二酸化炭素ガスを用いて実行する。T細胞の添加後、細胞増殖阻
害(CGI)率(%)を、式:CGI率(%)=(A-B)×100/(A-1)(式中
、Aは、抗体(または抗原結合分子)を含まない、すなわち、標的細胞およびT細胞のみ
を含有するウェルの平均細胞指数値を表し、Bは、抗体(または抗原結合分子)を含むウ
ェルの平均細胞指数値を表す)を使用して決定する。計算において使用される細胞指数値
は、正規化された値である、すなわち、抗体添加の直前の時点での細胞指数値を1と定義
する。抗体(または抗原結合分子)のCGI率が高い、すなわち、有意に正の値を有する
場合、抗体(または抗原結合分子)はTDCC活性を有し、本発明においてより好ましい
ということができる。
【0226】
あるいは、細胞傷害活性を、カルセイン-アセトキシメチル放出アッセイによって評価
することができる。がん細胞を標的細胞として使用する。標的細胞を、カルセイン-アセ
トキシメチルで標識化した後、洗浄する。試験抗体(例えば、0.001~10nM)を
プレートにピペットで注入し、カルセイン標識化された標的細胞懸濁液をそれに添加する
。室温でプレートを静置した後、エフェクター細胞(PBMCなど)懸濁液をそれに添加
する。プレートを撹拌した後、それを遠心分離し、CO2インキュベータ中でインキュベ
ートする。プレートをよく撹拌し、遠心分離した後、各ウェルに由来する培養培地を別の
プレートに移す。吸光度(495nm、参照515nm)を測定する。最大放出のために
、細胞を0.5%NP-40で溶解してもよい。培養培地バックグラウンドの蛍光値を、
実験放出(A)、標的細胞の自発的放出(B)、および標的細胞の最大放出(C)の値か
ら差し引く。細胞傷害を、以下の式:細胞傷害(%)=(A-B)/(C-B)×100
を使用して算出する。抗体(または抗原結合分子)のこの値が高い、すなわち、有意に正
の値を有する場合、抗体(または抗原結合分子)はTDCC活性を有し、本発明において
より好ましいということができる。
【0227】
単一特異性抗原結合分子
使用される用語「単一特異性抗原結合分子」は、ただ1つの型の抗原に特異的に結合す
る抗原結合分子を指す。単一特異性抗原結合分子の好ましい例は、単一の型の抗原結合ド
メインを含む抗原結合分子である。単一特異性抗原結合分子は、単一の抗原結合ドメイン
または同じ型の複数の抗原結合ドメインを含んでもよい。単一特異性抗原結合分子の好ま
しい例は、単一特異性抗体である。単一特異性抗原結合分子がIgG型の単一特異性抗体
である場合、単一特異性抗体は、同じ抗原結合特異性を有する2つの抗体可変断片を含む
。
【0228】
本発明の単一特異性抗原結合分子は、DLL3に結合する抗原結合ドメインを含む。D
LL3に結合する抗原結合ドメインは、上の「DLL3に結合する抗原結合ドメイン」に
記載されたもののいずれか1つであってもよい。
【0229】
用語「DLL3に結合する単一特異性抗原結合分子」とは、抗体がDLL3を標的とす
る際の診断剤および/または治療剤として有用であるように十分な親和性でDLL3に結
合することができる単一特異性抗原結合分子を指す。一実施形態では、DLL3に結合す
る単一特異性抗原結合分子の、関連しない非DLL3タンパク質への結合の程度は、例え
ば、ラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定された場合、DLL3への結合の約1
0%未満である。ある特定の実施形態では、DLL3に結合する単一特異性抗原結合分子
は、1μM以下、100nM以下、10nM以下、1nM以下、0.1nM以下、0.0
1nM以下、または0.001nM以下(例えば、10-8M以下、例えば、10-8M
~10-13M、例えば、10-9M~10-13M)の解離定数(Kd)を有する。
【0230】
一部の実施形態では、本発明におけるDLL3に結合する単一特異性抗原結合分子は、
C1q結合;CDC;Fc受容体結合;ADCC;食作用;細胞表面受容体(例えば、B
細胞受容体;BCR)の下方調節などの、エフェクター機能を有する機能性Fc領域を含
む。
【0231】
抗体依存性細胞傷害
「抗体依存性細胞傷害」または「ADCC」とは、ある特定の細胞傷害細胞(例えば、
NK細胞、好中球、およびマクロファージ)上に存在するFc受容体(FcR)に結合し
た分泌型Igにより、これらの細胞傷害性エフェクター細胞が抗原を担持する標的細胞に
特異的に結合した後、細胞毒素を用いて標的細胞を殺傷することができるようになる、細
胞傷害の型を指す。ADCCを媒介するための主な細胞であるNK細胞は、FcガンマR
IIIのみを発現するが、単球は、FcガンマRI、FcガンマRII、およびFcガン
マRIIIを発現する。造血細胞上でのFcR発現は、RavetchおよびKinet
、Annu.Rev.Immunol 9:457~92頁(1991)の464頁の表
3にまとめられている。目的の分子のADCC活性を評価するために、米国特許第5,5
00,362号もしくは第5,821,337号または米国特許第6,737,056号
(Presta)に記載されたものなどのin vitro ADCCアッセイを実施す
ることができる。そのようなアッセイのための有用なエフェクター細胞としては、PBM
CおよびNK細胞が挙げられる。あるいは、またはさらに、目的の分子のADCC活性を
、in vivoで、例えば、Clynesら、PNAS(USA)、95:652~6
56頁(1998)に開示されたものなどの動物モデルにおいて、評価することができる
。
【0232】
イムノコンジュゲート
本発明はまた、化学療法剤もしくは化学療法薬、増殖阻害剤、毒性化合物、毒素(例え
ば、タンパク質毒素、細菌、真菌、植物、もしくは動物起源の酵素活性毒素、もしくはそ
の断片)、または放射性アイソトープなどの1つまたは複数の細胞傷害剤にコンジュゲー
トされた、本明細書の抗原結合分子、例えば、DLL3に結合する単一特異性抗原結合分
子を含むイムノコンジュゲートも提供する。一部の実施形態では、本発明は、毒性化合物
にコンジュゲートされた抗原結合分子または抗体を提供する。換言すれば、本発明は、抗
原結合分子または抗体を含む抗体-薬物コンジュゲート化合物を提供する。
【0233】
一実施形態では、イムノコンジュゲートは、抗体が、限定されるものではないが、メイ
タンシノイド(米国特許第5,208,020号、第5,416,064号および欧州特
許第EP0425235B1号を参照);モノメチルオーリスタチン薬物部分DEおよび
DF(MMAEおよびMMAF)などのオーリスタチン(米国特許第5,635,483
号および第5,780,588号、および第7,498,298号を参照);ドラスタチ
ン;カリケアミシンまたはその誘導体(米国特許第5,712,374号、第5,714
,586号、第5,739,116号、第5,767,285号、第5,770,701
号、第5,770,710号、第5,773,001号、および第5,877,296号
;Hinmanら、Cancer Res.53:3336~3342頁(1993);
ならびにLodeら、Cancer Res.58:2925~2928頁(1998)
を参照);ダウノマイシンまたはドキソルビシンなどのアントラサイクリン(Kratz
ら、Current Med.Chem.13:477~523頁(2006);Jef
freyら、Bioorganic & Med.Chem.Letters 16:3
58~362頁(2006);Torgovら、Bioconj.Chem.16:71
7~721頁(2005);Nagyら、Proc.Natl.Acad.Sci.US
A 97:829~834頁(2000);Dubowchikら、Bioorg.&M
ed.Chem.Letters 12:1529~1532頁(2002);King
ら、J.Med.Chem.45:4336~4343頁(2002);および米国特許
第6,630,579号を参照);メトトレキサート;ビンデシン;ドセタキセル、パク
リタキセル、ラロタキセル、テセタキセル、およびオルタタキセルなどのタキサン;トリ
コテセン;ならびにCC1065を含む1つまたは複数の薬物にコンジュゲートされた、
抗体-薬物コンジュゲート(ADC)である。
【0234】
別の実施形態では、イムノコンジュゲートは、限定されるものではないが、ジフテリア
A鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、外毒素A鎖(シュードモナス・エルギノーサ(
Pseudomonas aeruginosa)由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、
モデシンA鎖、アルファ-サルシン、シナアブラギリ(Aleurites fordi
i)タンパク質、ジアンチンタンパク質、アメリカヤマゴボウ(Phytolacca
americana)タンパク質(PAPI、PAPII、およびPAP-S)、ニガウ
リ(Momordica charantia)阻害剤、クルシン、クロチン、シャボン
ソウ(Saponaria officinalis)阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン、
レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、およびトリコテセンを含む、酵素学
的に活性な毒素またはその断片にコンジュゲートされた、本明細書に記載の抗原結合分子
(DLL3に結合する単一特異性抗原結合分子など)を含む。
【0235】
別の実施形態では、イムノコンジュゲートは、放射性コンジュゲートを形成するための
放射性原子にコンジュゲートされた、本明細書に記載の抗原結合分子(DLL3に結合す
る単一特異性抗原結合分子など)を含む。様々な放射性アイソトープが、放射性コンジュ
ゲートの生産のために利用可能である。例としては、211At、131I、125I、
90Y、186Re、188Re、153Sm、212Bi、32P、212Pbおよび
Luの放射性アイソトープが挙げられる。放射性コンジュゲートを検出のために使用する
場合、それは、シンチグラフ検査のための放射性原子、例えば、Tc-99mもしくは1
23I、または核磁気共鳴(NMR)イメージング(磁気共鳴イメージング、MRIとし
ても知られる)のためのスピン標識、例えば、再度、ヨウ素-123、ヨウ素-131、
インジウム-111、フッ素-19、炭素-13、窒素-15、酸素-17、ガドリニウ
ム、マンガンもしくは鉄を含んでもよい。
【0236】
抗原結合分子(DLL3に結合する単一特異性抗原結合分子など)と、細胞傷害剤との
コンジュゲートを、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオン酸(
SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カ
ルボキシレート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導
体(ジメチルアジピミデートHClなど)、活性エステル(ジスクシンイミジルスベリン
酸など)、アルデヒド(グルタルアルデヒドなど)、ビス-アジド化合物(ビス(p-ジ
アゾニウムベンゾイル)ヘキサンジアミンなど)、ビス-ジアゾニウム誘導体(ビス-(
p-アジドベンゾイル)-エチレンジアミンなど)、ジイソシアネート(トルエン2,6
-ジイソシアネートなど)、およびビス活性フッ素化合物(1,5-ジフルオロ-2,4
-ジニトロベンゼンなど)などの、様々な二官能性タンパク質カップリング剤を使用して
作製することができる。例えば、リシン免疫毒素を、Vitettaら、Science
238:1098頁(1987)に記載のように調製することができる。炭素14で標
識化された1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミン五酢酸(M
X-DTPA)は、放射性核種の抗体へのコンジュゲーションのための例示的なキレート
剤である。WO94/11026を参照。リンカーは、細胞中での細胞傷害薬の放出を容
易にする「開裂性リンカー」であってもよい。例えば、酸不安定リンカー、ペプチダーゼ
感受性リンカー、光不安定リンカー、ジメチルリンカーまたはジスルフィド含有リンカー
(Chariら、Cancer Res.52:127~131頁(1992);米国特
許第5,208,020号)を使用することができる。
【0237】
本明細書におけるイムノコンジュゲートまたはADCは、限定されるものではないが、
市販されている(例えば、Pierce Biotechnology,Inc.、Ro
ckford、IL.、U.S.A.から)、BMPS、EMCS、GMBS、HBVS
、LC-SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMP
B、SMPH、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-KMUS、スルホ-MB
S、スルホ-SIAB、スルホ-SMCC、およびスルホ-SMPB、ならびにSVSB
(スクシンイミジル-(4-ビニルスルホン)安息香酸)などの架橋試薬を用いて調製さ
れたそのようなコンジュゲートを明示的に企図するが、それらに限定されない。
【0238】
がん
用語「がん」および「がん性」とは、典型的には、未調節の細胞成長/増殖を特徴とす
る哺乳動物における生理的病状を指す、または説明する。がんの例としては、限定される
ものではないが、癌腫、リンパ腫(例えば、ホジキンおよび非ホジキンリンパ腫)、芽腫
、肉腫、および白血病が挙げられる。そのようながんのより特定の例としては、扁平上皮
がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺腺癌、肺扁平上皮癌、腹膜がん、肝細胞がん、
消化管がん、膵がん、グリオーマ、子宮頸がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、ヘパト
ーマ、乳がん、結腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、腎臓がん
、肝臓がん、前立腺がん、外陰部がん、甲状腺がん、肝癌、白血病および他のリンパ増殖
障害、ならびに様々な型の頭頸部がんが挙げられる。
【0239】
腫瘍
用語「腫瘍」とは、悪性であるにしろ、良性であるにしろ、全ての新生物性細胞成長お
よび増殖、ならびに全ての前がん性およびがん性の細胞および組織を指す。用語「がん」
、「がん性」、「細胞増殖障害」、「増殖障害」および「腫瘍」は、本明細書で言及され
るように、相互排他的ではない。
【0240】
好ましい実施形態では、がんは、DLL3を発現するがん(がん組織または細胞を含む
)。一部の実施形態では、がんは、膵がん、グリオーマ、小細胞肺がん(SCLC)、ま
たはメラノーマである。
【0241】
医薬製剤
用語「医薬製剤」とは、そこに含まれる活性成分の生物活性が有効であることを可能に
するような形態にあり、製剤が投与される対象にとって許容できないほどに毒性であるさ
らなる成分を含有しない調製物を指す。
【0242】
薬学的に許容される担体
「薬学的に許容される担体」とは、対象にとって非毒性的である、活性成分以外の、医
薬製剤中の成分を指す。薬学的に許容される担体としては、限定されるものではないが、
緩衝剤、賦形剤、安定剤、または保存剤が挙げられる。
【0243】
処置
本明細書で使用される場合、「処置」(および「処置する」または「処置すること」な
どのその文法的変形)は、処置される個体の自然の経過を変化させる試みにおける臨床的
介入を指し、予防のため、または臨床病理の過程の間に実施することができる。処置の望
ましい効果としては、限定されるものではないが、疾患の出現または再発の予防、症状の
軽減、疾患の任意の直接的または間接的な病理的帰結の縮小、転移の予防、疾患進行速度
の低下、疾患状態の改善または緩和、および寛解または予後の改善が挙げられる。一部の
実施形態では、本発明の抗体は、疾患の発症を遅延させるか、または疾患の進行を減速さ
せるために使用される。
【0244】
一態様では、本発明は、DLL3に結合する第1の抗原結合ドメインと、T細胞受容体
複合体に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む多重特異性抗原結合分子、およびその
使用に一部基づくものである。本発明の抗原結合分子および抗体は、例えば、腫瘍、特に
、結腸直腸腫瘍および胃腫瘍の診断または処置にとって有用である。
【0245】
医薬組成物
本発明の医薬組成物、本発明の細胞性細胞傷害を誘導するための治療剤、細胞増殖抑制
剤、または抗がん剤を、必要に応じて、様々な型の抗原結合分子と共に製剤化することが
できる。例えば、抗原を発現する細胞に対する細胞傷害作用を、本発明の複数の抗原結合
分子のカクテルによって増強することができる。
【0246】
必要に応じて、本発明の抗原結合分子を、マイクロカプセル(ヒドロキシメチルセルロ
ース、ゼラチン、ポリ[メチルメタクリレート]などから作られるマイクロカプセル)中
に封入し、コロイド薬物送達系(リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマ
ルジョン、ナノ粒子、およびナノカプセル)の成分中で作製することができる(例えば、
「Remington’s Pharmaceutical Science 第16版
」、Oslo(編)(1980)を参照)。さらに、薬剤を持続放出剤として調製するた
めの方法は、公知であり、これらのものを本発明の抗原結合分子に適用することができる
(J.Biomed.Mater.Res.(1981)15、267~277頁;Ch
emtech.(1982)12、98~105頁;米国特許第3,773,719号;
欧州特許出願第EP58481号および第EP133988号;Biopolymers
(1983)22、547~556頁)。
【0247】
本発明の医薬組成物、細胞増殖抑制剤、または抗がん剤を、経口的または非経口的に患
者に投与することができる。非経口投与が好ましい。具体的には、そのような投与方法と
しては、注射、経鼻投与、経肺投与、および経皮投与が挙げられる。注射としては、例え
ば、静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、および皮下注射が挙げられる。例えば、本発
明の細胞性細胞傷害を誘導するための医薬組成物、治療剤、細胞増殖抑制剤、または抗が
ん剤を、注射によって局部的または全身的に投与することができる。さらに、適切な投与
方法を、患者の年齢および症状に従って選択することができる。投与される用量を、例え
ば、それぞれの投与につき、体重1kgあたり0.0001mg~1,000mgの範囲
から選択することができる。あるいは、用量を、例えば、患者の身体あたり0.001m
g~100,000mgの範囲から選択することができる。しかしながら、本発明の医薬
組成物の用量は、これらの用量に限定されない。
【0248】
本発明の医薬組成物を、従来の方法(例えば、Remington’s Pharma
ceutical Science、最新版、Mark Publishing Com
pany、Easton、U.S.A.)に従って製剤化することができ、それらは薬学
的に許容される担体および添加剤を含有してもよい。例としては、限定されるものではな
いが、界面活性剤、賦形剤、着色剤、香料、保存剤、安定剤、緩衝剤、懸濁剤、等張剤、
結合剤、崩壊剤、滑沢剤、流動促進剤、および矯味剤が挙げられ、他の一般的に使用され
る担体も好適に使用することができる。担体の特定例としては、軽質無水ケイ酸、ラクト
ース、結晶性セルロース、マンニトール、デンプン、カルメロースカルシウム、カルメロ
ースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース
、ポリビニルアセタールジエチルアミノ酢酸、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、中鎖ト
リグリセリド、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、サッカロース、カルボキシメチル
セルロース、トウモロコシデンプン、無機塩などが挙げられる。
【0249】
好ましくは、本発明の医薬組成物は、本発明の抗原結合分子を含む。実施形態では、組
成物は、細胞性細胞傷害の誘導における使用のための医薬組成物である。別の実施形態で
は、組成物は、がんの処置または予防における使用のための医薬組成物である。好ましく
は、がんは、上記のがんである。本発明の医薬組成物を、がんを処置または予防するため
に使用することができる。かくして、本発明は、本発明の抗原結合分子を、それを必要と
する患者に投与する、がんを処置または予防するための方法を提供する。
【0250】
さらに、本発明は、がんを処置または予防するための医薬組成物の製造における、上記
の抗原結合分子または抗体の使用を提供する。本発明はまた、がんを処置または予防する
ための抗原結合分子/抗体/医薬組成物の使用も提供する。
【0251】
本発明はまた、DLL3を発現する細胞と、DLL3に結合する本発明の抗原結合分子
とを接触させることによって、DLL3を発現する細胞を損傷させるため、または細胞増
殖を抑制するための方法も提供する。DLL3に結合するモノクローナル抗体は、本発明
の細胞性細胞傷害を誘導するための治療剤、細胞増殖抑制剤、および抗がん剤に含まれる
、本発明の抗原結合分子として上記されている。本発明の抗原結合分子が結合する細胞は
、それらがDLL3を発現する限り、特に限定されない。具体的には、本発明において、
好ましいがん抗原発現細胞としては、膵がん細胞、グリオーマ細胞、メラノーマ細胞、ま
たは小細胞肺がん(SCLC)細胞が挙げられる。
【0252】
本発明において、「接触」は、例えば、本発明の抗原結合分子を、in vitroで
培養されたDLL3を発現する細胞の培養培地に添加することによって実行することがで
きる。この場合、添加される抗原結合分子を、溶液または凍結乾燥によって調製された固
体などの適切な形態で使用することができる。本発明の抗原結合分子を水性溶液として添
加する場合、溶液は、抗原結合分子のみを含有する純粋な水性溶液または例えば、上記の
界面活性剤、賦形剤、着色剤、香料、保存剤、安定剤、緩衝剤、懸濁剤、等張化剤、結合
剤、崩壊剤、滑沢剤、流動促進剤、および矯味剤を含有する溶液であってもよい。添加さ
れる濃度は、特に限定されないが、培養培地中での最終濃度は、好ましくは、1pg/m
l~1g/ml、より好ましくは、1ng/ml~1mg/ml、さらにより好ましくは
、1μg/ml~1mg/mlの範囲にある。
【0253】
本発明の別の実施形態では、「接触」は、in vivoでDLL3発現細胞を移植さ
れた非ヒト動物またはDLL3を内因的に発現するがん細胞を有する動物への投与によっ
て実行することもできる。投与方法は、経口または非経口であってもよい。非経口投与が
特に好ましい。具体的には、非経口投与方法は、注射、経鼻投与、経肺投与、および経皮
投与を含む。注射としては、例えば、静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、および皮下
注射が挙げられる。例えば、本発明の細胞性細胞傷害を誘導するための医薬組成物、治療
剤、細胞増殖抑制剤、または抗がん剤を、注射によって局部的または全身的に投与するこ
とができる。さらに、適切な投与方法を、動物対象の年齢および症状に応じて選択するこ
とができる。抗原結合分子を水性溶液として投与する場合、溶液は、抗原結合分子のみを
含有する純粋な水性溶液または例えば、上記の界面活性剤、賦形剤、着色剤、香料、保存
剤、安定剤、緩衝剤、懸濁剤、等張化剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、流動促進剤、および
矯味剤を含有する溶液であってもよい。投与される用量を、例えば、それぞれの投与につ
き、体重1kgあたり0.0001mg~1,000mgの範囲から選択することができ
る。あるいは、用量を、例えば、患者の身体あたり0.001mg~100,000mg
の範囲から選択することができる。しかしながら、本発明の抗原結合分子の用量は、これ
らの例に限定されない。
【0254】
以下に記載される方法は、本発明の抗原結合分子と、本発明の抗原結合分子を形成する
抗原結合ドメインが結合するDLL3発現細胞とを接触させることによって引き起こされ
る細胞性細胞傷害を評価または決定するための方法として好ましく使用される。in v
itroで細胞傷害活性を評価または決定するための方法としては、細胞傷害性T細胞な
どの活性を決定するための方法が挙げられる。本発明の抗原結合分子がT細胞媒介性細胞
性細胞傷害を誘導する活性を有するかどうかを、公知の方法(例えば、Current
protocols in Immunology、Chapter 7、Immuno
logic studies in human、John E、Coliganら(編
)、John Wiley & Sons,Inc.(1993)を参照)によって決定
することができる。細胞傷害アッセイにおいては、抗原結合ドメインがDLL3とは異な
る抗原に結合し、細胞中で発現されない抗原結合分子を、対照抗原結合分子として使用す
る。対照抗原結合分子は、同じ様式でアッセイされる。次いで、本発明の抗原結合分子が
対照抗原結合分子のものよりも強い細胞傷害活性を示すかどうかを試験することによって
、活性を評価する。
【0255】
一方、in vivoでの細胞傷害活性を、例えば、以下の手順によって評価または決
定する。本発明の抗原結合分子を形成する抗原結合ドメインが結合する抗原を発現する細
胞を、非ヒト動物対象に、皮内または皮下移植する。次いで、移植の日またはその後から
、試験抗原結合分子を、毎日、または数日の間隔で静脈または腹腔に投与する。腫瘍サイ
ズを、経時的に測定する。腫瘍サイズの変化の差異を、細胞傷害活性と定義することがで
きる。in vitroアッセイのように、対照抗原結合分子を投与する。本発明の抗原
結合分子は、腫瘍サイズが、対照抗原結合分子を投与された群よりも、本発明の抗原結合
分子を投与された群において小さい場合、細胞傷害活性を有すると判断することができる
。
【0256】
好ましくは、抗原結合分子を形成する抗原結合ドメインが結合する抗原を発現する細胞
の増殖を抑制するために、MTT法およびアイソトープ標識化されたチミジンの細胞への
取込みの測定を使用して、本発明の抗原結合分子との接触の効果を評価または決定する。
一方、好ましくは、in vivoでの細胞傷害活性を評価または決定するための上記の
同じ方法を使用して、in vivoで細胞増殖を抑制する活性を評価または決定するこ
とができる。
【0257】
本発明はまた、本発明の抗原結合分子または本発明の方法によって生産された抗原結合
分子を含有する、本発明の方法における使用のためのキットも提供する。キットを、追加
の薬学的に許容される担体もしくは媒体、またはキットを使用する方法を記載する取扱説
明書などと共に包装することができる。
【0258】
さらに、本発明は、本発明の方法における使用のための、本発明の抗原結合分子または
本発明の方法によって生産された抗原結合分子に関する。
【0259】
別の実施形態では、内在化抗体が提供される。換言すれば、本発明は、内在化活性を有
する抗体または抗原結合分子を提供する。そのような抗体は、抗体の細胞中への送達を増
強するある特定の特徴を有してもよいか、またはそのような特徴を有するように改変する
ことができる。これを達成するための技術は、当分野で公知である。例えば、抗体のカチ
オン化は、細胞中へのその取込みを容易にすることが知られている(例えば、米国特許第
6,703,019号を参照)。リポフェクションまたはリポソームを使用して、抗体を
細胞中に送達することもできる。抗体断片を使用する場合、標的タンパク質に特異的に結
合する最小の阻害断片を使用することができる。例えば、抗体の可変領域配列に基づいて
、標的タンパク質配列に結合する能力を保持するペプチド分子を設計することができる。
そのようなペプチドを化学的に合成する、および/または組換えDNA技術によって生産
することができる。例えば、Marascoら、Proc.Natl.Acad.Sci
.USA 90:7889~7893頁(1993)を参照。抗体(または抗原結合分子
)の内在化活性を、例えば、欧州特許出願公開第3015115号(WO2014/20
8482)の参照例18に記載された方法によって決定することができる。
【0260】
DLL3細胞外ドメイン(ECD)断片タンパク質の発現および精製
C末端上にFlagタグを有していてもよい、DLL3細胞外ドメイン(ECD)断片
タンパク質(またはそのトランケートされたバリアント)を、適切なベクターおよび細胞
を使用して一過的に発現させることができる。タンパク質を含有する培養上清を、親和性
樹脂を充填したカラムに加え、溶出させる。タンパク質を含有する画分を収集した後、緩
衝液で平衡化させた濾過カラムに加える。次いで、タンパク質を含有する画分をプールし
、使用まで-80℃で保存する。ECD断片タンパク質を、公知の方法または本明細書に
記載の方法によるエピトープマッピングまたは競合アッセイのために使用することができ
る。
【0261】
DLL3を発現する細胞株の樹立
DLL3を発現する細胞株を樹立するために、DLL3 cDNAを、発現ベクター中
に挿入し、これを、例えば、エレクトロポレーションによって細胞中に導入する。導入後
、選択のための薬剤(ゲネチシンなど)を添加し、細胞を培養して、それに対して耐性で
ある細胞株を得る。トランスフェクトされた細胞株を、限界希釈によってプレート中に播
種し、増殖させることができる。樹立された細胞株を、DLL3を発現する細胞に対する
本発明の抗原結合分子または抗体のTDCC活性を評価するために使用することができる
。
【0262】
抗DLL3抗体(単一特異性)の生成およびスクリーニング
以下に記載されるように、抗DLL3抗体を調製し、選択し、アッセイすることができ
る。ウサギなどの動物を、DLL3またはその断片で免疫化する。最後の免疫化後、脾臓
および血液を、免疫化した動物から収集する。抗原特異的B細胞を染色し、細胞選別装置
を用いて選別し、例えば、EL4細胞(European Collection of
Cell Cultures)と一緒に、ウェルあたり1個の細胞の密度でプレート中
に播種し、培養する。培養後、B細胞培養上清をさらなる分析のために収集し、ペレット
を凍結保存することができる。ELISAスクリーニングを行って、B細胞培養上清中で
の抗体の特異性を試験することができる。DLL3発現細胞を、BSAおよび細胞膜のた
めの生体適合性アンカーで予めコーティングしたプレート上に固相化する。固相化された
細胞を、B細胞培養上清と共にインキュベートする。細胞を洗浄し、例えば、ヤギ抗ウサ
ギIgGポリクローナル抗体HRPコンジュゲートを添加する。細胞を氷上でさらにイン
キュベートし、基質を添加し、光密度を好適に分析する。B細胞クローンを、DLL3発
現細胞への結合についてスクリーニングし、クローンを、DLL3特異的結合剤として選
択する。選択されたクローンを、凍結保存された細胞ペレットから精製する。抗体重鎖可
変領域のDNAを、逆転写PCRによって増幅し、ヒトIgG1重鎖定常領域をコードす
るDNAとライゲーションして、対応する重鎖を形成させる。抗体軽鎖可変領域のDNA
を、逆転写PCRによって増幅し、軽鎖定常領域をコードするDNAとライゲーションし
て、対応する軽鎖を形成させる。クローニングされた抗体を細胞中で発現させ、機能的評
価のために培養上清から精製する。単一特異性抗体を、公知の方法によって抗DLL3/
抗CD3二重特異性抗体を生産するために使用してもよい。
【0263】
選択された抗DLL3抗体(単一特異性)のエピトープマッピング
DLL3およびDLL3 ECD断片タンパク質の構造を、
図1に図示する。これらの
DLL3 ECD断片タンパク質を、例えば、以下に記載されるように、抗DLL3抗体
のエピトープマッピングのために使用することができる。プレートを、断片タンパク質で
コーティングし、緩衝液でブロックする。ブロッキング緩衝液を除去し、抗DLL3抗体
を、固相化されたタンパク質と共にインキュベートし、緩衝液で洗浄する。抗Flag抗
体を含む任意の好適な検出系を使用して、抗体結合を評価することができる。例えば、モ
ノクローナルANTI-FLAG M2-ペルオキシダーゼ、クローンM2(Sigma
-Aldrich)を添加し、インキュベートし、洗浄する。次いで、基質を添加し、光
密度(例えば、OD405)を決定する。OD405値は、断片タンパク質に対する試験
抗体の反応性を表す。どのドメインの欠失(
図1を参照)が抗体結合を廃止するかを試験
することによって、抗体エピトープを推論することができる。すなわち、抗体が、例えば
、N末端から短縮された逐次的欠失構築物のパネル間である特定の欠失構築物に結合する
ことができない場合(
図1)、次いで、この構築物は抗体のエピトープを含有せず、抗体
が結合することができるより長い欠失構築物、またはより具体的には、そのようなより長
い欠失構築物間で最も短いもののN末端領域は、抗体のエピトープを含有するということ
ができる。
【0264】
抗DLL3/CD3二重特異性抗体の機能的評価
抗DLL3/CD3二重特異性抗体を、以下に記載されるような、異種移植モデルにお
いて、そのin vivoでの抗腫瘍効能について評価することができる。がん細胞株を
NOD scidマウスに移植し、腫瘍形成が確認されたNOD scidマウスを、ヒ
トPBMCのin vitroでの培養によって増殖したT細胞の移植にかける。マウス
(T細胞注射モデルと呼ばれる)を、二重特異性抗体の投与によって処置する。例えば、
T細胞注射モデルを使用する二重特異性抗体の抗腫瘍効能試験において、以下のことを実
施することができる。T細胞を、PBMCおよびT細胞活性化/拡大キット/ヒト(MA
CS Miltenyi biotec)などの好適な媒体を使用して拡大培養する。ヒ
トがん細胞株を、Matrigel(商標)Basement Membrane Ma
trix(BD)などの好適な支持材料と混合し、NOD scidマウスの領域に移植
する。移植の前日(移植当日を0日目と定義する場合、-1日目)に、抗アシアロ-GM
1抗体をマウスに腹腔内投与する。移植後10日目に、マウスを、その体重および腫瘍サ
イズに応じて群に分け、抗アシアロ-GM1抗体を再びマウスに腹腔内投与する。次の日
、上記の拡大培養によって得られたT細胞を、マウスの腹腔内に移植する。T細胞移植の
4時間後、抗DLL3/CD3二重特異性抗体を、尾静脈を介して静脈内投与する。抗腫
瘍活性(腫瘍体積増加の阻害)を、溶媒を投与した対照群と比較して、二重特異性抗体を
投与した群において評価することができる。
【0265】
抗DLL3単一特異性抗体のヒト化および最適化
ヒト化DLL3抗体の重鎖および軽鎖の可変領域を、ヒト生殖系列フレームワークを使
用して設計することができる。設計された重鎖および軽鎖可変領域のポリヌクレオチドを
、それぞれ、重鎖定常領域配列および軽鎖定常領域配列を含有する発現ベクター中にクロ
ーニングする。ヒト化抗体を、細胞中で一過的に発現させ、BIAcore分析を上記の
ように実行する。選択されたヒト化抗体を、さらに最適化する。CDR領域中の脱アミド
化、異性化、スクシンイミド形成、メチオニンおよびトリプトファン酸化ならびに非対シ
ステインのシステイン化などの化学的分解を回避するために、選択されたヒト化抗体の配
列を、元のアミノ酸とシステインを除く、他の18種のアミノ酸に変異させてもよい。上
記の方法によって、バリアントを一過的に発現させ、精製する。精製されたモノクローナ
ル抗体バリアントを、上記の方法を使用するBIAcoreによって評価し、親抗体とし
てDLL3に結合することができる目的のバリアントを選択する。次いで、CDR中での
これらの変異の組合せを有する抗体を生成する。
【0266】
抗DLL3抗体の競合分析
ビオチン標識化された抗DLL3抗体の調製
抗DLL3抗体の可変重鎖および軽鎖配列(VHおよびVL)を、発現ベクター中にク
ローニングする。抗DLL3抗体を、NHS-PEG4-ビオチンで標識化することによ
って、ビオチン標識化された抗DLL3抗体を調製することができる。
【0267】
Octetアッセイ
Octet(登録商標)RED384(Fortebio)を使用して、抗体のパネル
のためのエピトープビニングによる競合結合アッセイを実施することができる。ビオチン
化抗体を、ストレプトアビジン(SA)バイオセンサーにロードする。次に、センサーを
DLL3に曝露した後、第2抗体に曝露する。生データを、ForteBio’s Da
ta Analysis Software 7.0を使用して処理し、抗体対を競合結
合について評価する。第2抗体による追加の結合は、非占有エピトープ(非競合剤)を示
すが、結合がないことは、エピトープブロッキング(競合剤)を示す。競合的抗体結合が
存在するかどうかを決定するために、抗体Aを最初にストレプトアビジンバイオセンサー
に固相化し、抗原と抗体Bとの複合体の逐次的結合を測定する。抗体Bの抗体Aに対する
競合比を、以下の式:
競合比(抗体Bの抗体Aに対する比)=
[結合応答(抗体B-抗原)]/[結合応答(抗原-抗体A)]
を使用して算出する。競合比が低い場合、すなわち、0に近い場合、抗体Aと抗体Bは、
同じエピトープについて互いに競合しないということができる。
【0268】
抗DLL3/抗CD3二重特異性抗体の調製
抗DLL3単一特異性抗体と、抗CD3抗体とを使用して、他の場所に公開された従来
の方法を使用して抗DLL3/CD3二重特異性抗体を生成することができる。使用され
る抗CD3抗体は、CD3イプシロン鎖中の領域内のエピトープに結合することができる
。生成される二重特異性抗体は、Fcガンマ受容体に対する親和性が減じられたサイレン
トFcを含有してもよい。さらに、例えば、WO2016159213に報告されたFa
bアーム交換技術を使用して、二重特異性抗体を作製することができる。
【0269】
抗DLL3/CD3二重特異性抗体中の抗DLL3アーム(または抗CD3アーム)の
結合親和性評価のためのBIAcore分析
抗DLL3/CD3抗体中の抗DLL3アーム(または抗CD3アーム)の、DLL3
に対する結合親和性を、例えば、BIAcoreを使用して、pH7.4および37℃で
評価することができる。例えば、抗ヒトFc(GE Healthcare)を、アミン
カップリングキット(GE Healthcare)を使用して、CM4センサーチップ
の全てのフローセル上に固相化する。二重特異性抗体を、抗Fcセンサー表面上に捕捉し
た後、DLL3(またはCD3)をフローセル上に注入する。抗体および分析物を、20
mM ACES、150mM NaCl、0.05%Tween(商標)20、0.00
5%NaN3を含有するACES pH7.4中で調製することができる。センサー表面
を、3M MgCl2を用いて各サイクルで再生する。データを1:1結合モデルにプロ
セシングし、適合させることによって、結合親和性を決定する。
【0270】
本明細書に引用される全ての文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例0271】
以下は、本発明の方法および組成物の例である。様々な他の実施形態を、上に提供され
た一般的説明を考慮して実行することができることが理解される。
【0272】
実施例1.ヒトDLL3細胞外ドメイン(ECD)断片タンパク質およびカニクイザルD
LL3 ECDタンパク質の発現および精製
ヒトDLL3細胞外ドメイン(ECD)断片タンパク質として、C末端上にFlagタ
グ(配列番号135)を有するヒトDLL3 ECD(配列番号1、以後、del0と呼
ぶ)およびC末端上にFlagタグを有するトランケートされたヒトDLL3 ECDバ
リアント(配列番号2~7、以後、それぞれ、del1~del6と呼ぶ)を、Free
Style 293-F細胞(Thermo Fisher Scientific)を
使用して一過的に発現させた。ヒトDLL3 ECD断片タンパク質を含有する培養上清
を、抗Flag M2親和性樹脂(Sigma)を充填したカラムに加え、Flagペプ
チド(Sigma)を用いて溶出させた。ヒトDLL3 ECD断片タンパク質を含有す
る画分を収集した後、1×D-PBSで平衡化させたSuperdex 200ゲル濾過
カラム(GE healthcare)に加えた。次いで、ヒトDLL3 ECD断片タ
ンパク質を含有する画分をプールし、-80℃で保存した。
【0273】
N末端上にMycタグおよびC末端上にHisタグを有するカニクイザルDLL3 E
CD(配列番号8、以後、Myc-cynoDLL3-Hisと呼ぶ)を、FreeSt
yle 293-F細胞(Thermo Fisher Scientific)を使用
して一過的に発現させた。カニクイザルDLL3 ECDタンパク質を含有する培養上清
を、HisTrap HPカラム(GE Healthcare)に加え、イミダゾール
を用いて溶出させた。カニクイザルDLL3 ECDタンパク質を含有する画分を収集し
た後、1×D-PBSで平衡化させたSuperdex 200ゲル濾過カラム(GE
healthcare)に加えた。次いで、カニクイザルDLL3 ECDタンパク質を
含有する画分をプールし、-80℃で保存した。
【0274】
実施例2.ヒトDLL3を発現するBa/F3細胞株の確立
デルタ様タンパク質3アイソフォーム1前駆体をコードするヒトDLL3 cDNA(
NCBI受託番号NP_058637.1、配列番号9)を、発現ベクターpCXND3
(WO2008/156083に記載された)に挿入した。
【0275】
線状化されたヒトDLL3-pCXND3を、エレクトロポレーション(LONZA、
4D-Nucleofector X)により、マウスIL-3依存性プロB細胞由来細
胞株Ba/F3に導入した。
【0276】
導入後、ゲネチシンを添加し、細胞を培養して、ゲネチシンに耐性である細胞株を得た
。トランスフェクトされた細胞を、限界希釈によって96ウェルプレート中に播種し、拡
大した。確立された細胞株を、hDLL3/BaF_H3と命名した。
【0277】
実施例3.抗DLL3抗体(単一特異性)の生成およびスクリーニング
以下に記載されるように、抗DLL3抗体を調製し、選択し、アッセイした。
【0278】
12週齢のNZWウサギを、実施例1に記載されたように調製されたヒトDLL3 E
CDおよびカニクイザルDLL3 ECDタンパク質を用いて、交互に皮内に免疫化した
(50~100マイクログラム(μg)/用量/ウサギ)。最後の免疫化の6日後、脾臓
および血液を、免疫化したウサギから収集した。抗原特異的B細胞を、Myc-cyno
DLL3-Hisおよび抗c-myc-FITC(Miltenyi Biotech)
で染色し、FCM細胞選別装置(FACS aria III、BD)を用いて選別し、
25,000細胞/ウェルのEL4細胞(European Collection o
f Cell Cultures)および20倍希釈された活性化ウサギT細胞馴化培地
と一緒に、ウェルあたり1個の細胞の密度で96ウェルプレート中に播種し、7~12日
間培養した。EL4細胞を、前もってマイトマイシンC(Sigma、カタログ番号M4
287)で2時間処理し、3回洗浄した。フィトヘマグルチニン-M(Roche、カタ
ログ番号1 1082132-001)、ホルボール12-ミリステート13-アセテー
ト(Sigma、カタログ番号P1585)および2%FBSを含有するRPMI-16
40中でウサギ胸腺細胞を培養することにより、活性化ウサギT細胞馴化培地を調製した
。培養後、B細胞培養上清をさらなる分析のために収集し、ペレットを凍結保存した。
【0279】
ELISAスクリーニングを行って、B細胞培養上清中での抗体の特異性を試験した。
ヒトDLL3を発現するBa/F3(実施例2で樹立されたhDLL3/BaF_H3、
2.5×104個の細胞)を、BSA(Sigma-Aldrich)および細胞膜のた
めの生体適合性アンカー(YUKA SANGYO)としてのSUNBRIGHT(登録
商標)OE-080CSで予めコーティングされた、Nunc MaxiSorp 38
4ウェルプレート(Sigma-Aldrich)上に固相化した。固相化された細胞を
、B細胞培養上清の20マイクロリットル(μL)と共に1時間インキュベートした。上
清を吸引し、細胞を、HEPES緩衝液(0.02M HEPES、5mM KCl、4
mM NaHCO3、139mM NaCl、2mM CaCl2、5mMグルコース、
0.4mM KH2PO4、0.34mM Na2HPO4、および0.1%BSA)で
洗浄した。洗浄後、ヤギ抗ウサギIgGポリクローナル抗体HRPコンジュゲート(BE
THYL、A120-111P)を添加した。細胞を、氷上で1時間、さらにインキュベ
ートし、洗浄した。次いで、ABTS Microwell Peroxidase S
ubstrate(Kirkegaard & Perry Laboratories
)を添加し、SPECTRAMax 384(Molecular Devices)を
用いてOD405を分析した。
【0280】
合計28,864個のB細胞クローンを、ヒトDLL3を発現するBa/F3への結合
についてスクリーニングし、846個のクローンを、hDLL3/BaF_H3に結合す
るDLL3特異的結合剤として選択した。選択されたクローンを、DLA0001~DL
A0846と命名した。DLA0001~DLA0846のRNAを、ZR-96 Qu
ick-RNAキット(ZYMO RESEARCH、カタログ番号R1053)を使用
することによって、凍結保存された細胞ペレットから精製した。抗体重鎖可変領域のDN
Aを、逆転写PCRによって増幅し、ヒトIgG1重鎖定常領域をコードするDNAとラ
イゲーションして、対応する重鎖を形成させた。抗体軽鎖可変領域のDNAを、逆転写P
CRによって増幅し、hk0MC軽鎖定常領域をコードするDNA(アミノ酸配列は配列
番号10に示される)とライゲーションして、対応する軽鎖を形成させた。クローニング
された抗体を、FreeStyle 293-F細胞(Thermo Fisher S
cientific)中で発現させ、機能性評価のために培養上清から精製した。表3に
列挙されるいくつかの抗DLL3抗体を、さらなる分析のために選択した。
また、抗DLL3抗体(DLA0316)重鎖可変領域のDNAを、ウサギIgG重鎖
定常領域をコードするDNAとライゲーションし、抗DLL3抗体(DLA0316)軽
鎖可変領域のDNAを、ウサギカッパ鎖定常領域をコードするDNAとライゲーションし
た。この抗体を、FreeStyle 293-F細胞(Thermo Fisher
Scientific)中で一過的に発現させ、DLA0316-rbIgGと命名した
。
【0281】
表3は、選択された抗DLL3抗体の可変領域の配列番号を示す。
【0282】
【0283】
実施例4.選択された抗DLL3抗体(単一特異性)のエピトープマッピング
全長DLL3タンパク質および実施例1で調製されたヒトDLL3 ECD断片タンパク
質の構造図を、
図1に示す。実施例1で調製されたヒトDLL3 ECD断片タンパク質
を、抗DLL3抗体のエピトープマッピングのために使用した。
【0284】
Nunc MaxiSorp 384ウェルプレート(Sigma-Aldrich)
を、ヒトDLL3 ECD断片タンパク質del0~del6のそれぞれでコーティング
し、20%Blocking One(NACALAI TESQUE)でブロックした
。ブロッキング緩衝液を除去し、組換え抗DLL3抗体を、室温で1時間、固相化された
タンパク質と共にインキュベートし、HEPES緩衝液(0.05%Tween(商標)
20、HEPES)で洗浄した。次いで、モノクローナルANTI-FLAG M2-ペ
ルオキシダーゼ、クローンM2(Sigma-Aldrich)を添加し、室温で1時間
インキュベートし、洗浄した。次いで、ABTS Microwell Peroxid
ase Substrate(Kirkegaard & Perry Laborat
ories)を添加し、SPECTRAMax 384(Molecular Devi
ces)を用いてOD405を分析した。
【0285】
図2は、ヒトDLL3 ECD断片タンパク質への結合を示す。それぞれのバー(OD
405値)は、ヒトDLL3 ECD断片タンパク質のそれぞれに対する試験抗体の反応
性を表す。どのドメインの欠失が、抗体結合を廃止するかを試験することによって、抗体
エピトープを推測することができ、それぞれの抗体のエピトープを、
図1に示す。
【0286】
実施例5.抗DLL3/CD3二重特異性抗体の生成および機能性評価
実施例5.1がん細胞表面上でのDLL3発現の評価
培養がん細胞株SK-MEL30(DSMZ)、NCI-H1436(ATCC)、お
よびNCI-H2227(ATCC)の細胞表面上でのDLL3の発現を、フローサイト
メトリーによって評価した。
【0287】
がん細胞(5×10
5個の細胞)を、0.5%BSA添加CellWASH(BD B
ioscience)(以後、FACS/PBSと呼ぶ)で洗浄した。二価抗DLL3抗
体(DLA0316-rbIgG)または対照抗体(ウサギIgG)を、50μL溶液中
、20μg/mLの最終濃度で添加した。4℃で30~60分間静置した後、細胞をFA
CS/PBSで洗浄し、FACS/PBSで50倍希釈されたFITC標識ヤギ抗ウサギ
IgG抗体を、細胞に添加した。4℃でさらに30分間静置した後、細胞をFACS/P
BSで洗浄し、FACS Verse(Becton Dickinson)によって分
析した。DLL3は、それぞれのがん細胞株上で発現されることを見出した(
図3)。
【0288】
実施例5.2 抗DLL3/CD3二重特異性抗体の機能的特徴
実施例5.2.1 ヒト末梢血単核細胞(PBMC)溶液の調製
初代ヒトPBMC溶液を、健康なボランティアから新鮮に単離した。
【0289】
新鮮なPMBC溶液については、1,000ユニット/mLのヘパリン溶液(Novo
Heparin for injection、5,000ユニット、Novo No
rdisk)100μLを予めロードしたシリンジを使用して、それぞれの健康なボラン
ティア(成人の個体)から、50mLの末梢血を収集した。この末梢血を、PBS(-)
中で2倍に希釈し、4つのアリコートに分割し、15mLのFicoll-Paque
PLUSをロードし、前もって遠心分離にかけた、リンパ球分離用のLeucosepチ
ューブ(カタログ番号227290、Greiner Bio-One)に添加した。こ
の分離チューブを遠心分離し(室温で10分間、2,150rpm)し、単核細胞画分を
収集した。単核細胞画分中の細胞を、10%FBSを含有するDulbecco’s M
odified Eagle’s Medium(SIGMA)で1回洗浄し、10%F
BS/RPMI1640を使用して4×106細胞/mLの細胞密度に調整した。この細
胞懸濁液を、以下の実験においてヒトPBMC溶液として使用した。
【0290】
実施例5.2.2 細胞増殖阻害の比率による抗DLL3/CD3二重特異性抗体のT
細胞依存性細胞傷害(TDCC)の測定
表3に記載された一部の抗DLL3単一特異性抗体およびWO2011/093097
A1に記載された一部の抗DLL3抗体を、抗CD3抗体(重鎖の可変領域、配列番号5
7、軽鎖の可変領域、配列番号58)と一緒に使用して、他の場所に公開された従来の方
法を使用して抗DLL3/CD3二重特異性抗体を生成した。抗DLL3/CD3二重特
異性抗体中のDLL3結合アームのCDR配列を、表4に示す。
【0291】
生成された二重特異性抗体はそれぞれ、Fcガンマ受容体に対する親和性が減じられた
Fc領域を含有していた。
【0292】
表4は、抗DLL3/CD3二重特異性抗体中のDLL3結合アームのHVR(CDR
)配列の配列番号を示す。
【0293】
【0294】
表4中の「HCDR1」、「HCDR2」、「HCDR3」、「LCDR1」、「LC
DR2」、および「LCDR3」は、それぞれ、HVR-H1、HVR-H2、HVR-
H3、HVR-L1、HVR-L2、およびHVR-L3に対応する。
【0295】
図4は、生成された抗DLL3/CD3二重特異性抗体のT細胞依存性細胞傷害(TD
CC)を示す。細胞傷害活性を、xCELLigence Real-Time Cel
l Analyzer(Roche Diagnostics)を使用して、細胞増殖阻
害の比率によって評価した。SK-MEL 30ヒトがん細胞株を、標的細胞として使用
した。標的細胞を皿から分離させ、細胞を1×10
4細胞/ウェルに調整することによっ
て100μL/ウェルのアリコート中、Eプレート96(Roche Diagnost
ics)上に播種し、細胞増殖の測定を、xCELLigence Real-Time
Cell Analyzerを使用して開始した。24時間後、プレートを取り出し、
各濃度(0.001、0.01、0.1、1または10nmol/L)で調製されたそれ
ぞれの抗体の50μLのアリコートをプレートに添加した。室温で15分間反応させた後
、実施例5.2.1で調製された新鮮なヒトPBMC溶液50μLを、エフェクター(P
BMC)/標的(SK-MEL30)比2(すなわち、2×10
4細胞/ウェル)で添加
し、xCELLigence Real-Time Cell Analyzerを使用
して、細胞増殖の測定を再開した。37℃で5%二酸化炭素ガスの条件下で、反応を実行
した。PBMCを添加した38時間後、細胞増殖阻害(CGI)率(%)を、以下の式を
使用して決定した。計算において使用したxCELLigence Real-Time
Cell Analyzerから得られた細胞指数値は、抗体添加の直前の時点での細
胞指数値を1と定義した場合の正規化された値であった。
細胞増殖阻害率(%)=(A-B)x100/(A-1)。
【0296】
Aは、抗体を添加しないウェル(標的細胞およびヒトPBMCのみを含有する)中での
平均細胞指数値を表し、Bは、生成された抗DLL3/CD3二重特異性抗体の1つを含
有する標的ウェルの平均細胞指数値を表す。実験を、3回繰り返し実施した。
【0297】
分析した全ての抗体を、SK-MEL-30細胞株を使用するTDCCアッセイにかけ
た。全ての二重特異性抗体は、用量依存的様式で細胞増殖阻害を示し、細胞増殖阻害率は
、10nmol/Lの抗体濃度で80%を超えていた。二重特異性抗体DLA0316/
No.12およびDLA0841/No.12が、最も強いTDCC活性を示した(
図4
)。
【0298】
実施例5.2.3 SCLCにおけるカルセイン放出アッセイによるキメラ抗DLL3
/CD3二重特異性抗体のTDCCの測定
小細胞肺がん細胞株に対する抗DLL3/CD3二重特異性抗体のTDCCも分析した
。細胞傷害活性を、カルセイン-アセトキシメチル放出アッセイによって評価した。NC
I-H1436およびNCI-H2227ヒトがん細胞株を、標的細胞として使用した。
アッセイを3組行った。標的細胞を、37℃で2h、カルセイン-アセトキシメチル(カ
ルセイン-AM;Nacalai tesque)で標識化した後、洗浄した。それぞれ
の最終濃度(0.001、0.01、0.1、1または10nM)で調製された抗DLL
3/CD3二重特異性抗体を、96ウェルU底プレート中にピペットで注入し、カルセイ
ン標識化された標的細胞懸濁液(2x105細胞/mL)を各ウェルに添加した。室温で
15分間、プレートを静置した後、エフェクター細胞(PBMC)懸濁液(5x106細
胞/mL)をウェルに添加した。96ウェルプレートを撹拌した後、プレートを1000
rpmで2分間遠心分離し、37℃で約4時間、5%CO2インキュベータ中でインキュ
ベートした。96ウェルプレートをよく撹拌した後、1000rpmで5分間遠心分離し
、各ウェルに由来する培養培地の100μLのアリコートを、96ウェル平底プレートに
移した。EnSpire(PerkinElmer)を用いて吸光度(495nm、参照
515nm)を測定した。最大放出のために、細胞を0.5%NP-40で溶解した。培
養培地バックグラウンドの蛍光値を、実験放出(A)、標的細胞の自発的放出(B)、お
よび標的細胞の最大放出(C)の値から差し引いた。細胞傷害を、以下の式:
細胞傷害(%)=(A-B)/(C-B)x100
を使用して算出した。
【0299】
図5は、小細胞肺がん細胞株に対する抗DLL3/CD3二重特異性抗体のTDCCを
示す。DLA0316/No.12は、2つの小細胞肺がん細胞株の両方に対して用量依
存的様式で細胞傷害を示した。
【0300】
実施例6.in vivoでの抗腫瘍効能の評価
上記の抗体の一部を、腫瘍担持モデルを使用してそれらのin vivoでの効能につ
いて評価した。
【0301】
in vivoでの抗腫瘍効能の評価を、実施例5に記載されたin vitroアッ
セイにおいて細胞傷害活性を有すると確認された、抗ヒトDLL3/CD3二重特異性抗
体(DLA0316/No.12、DLA0841/No.12、およびDLA0580
/No.12)を使用して実行した。がん細胞株をNOD scidマウスに移植し、腫
瘍形成が確認されたNOD scidマウスを、ヒトPBMCのin vitroでの培
養によって増殖したT細胞の移植にかけた。マウス(T細胞注入モデルと呼ぶ)を、抗ヒ
トDLL3/CD3二重特異性抗体の投与によって処置した。
【0302】
より具体的には、SK-MEL-30(ATCC)移植T細胞注入モデルを使用する抗
ヒトDLL3/CD3二重特異性抗体の抗腫瘍効能試験において、以下の試験を実施した
。購入したPBMCおよびT細胞活性化/拡大キット/ヒト(MACS Milteny
i biotec)を使用して、T細胞を拡大培養した。ヒトがん細胞株SK-MEL-
30(1x107細胞)を、Matrigel(商標)Basement Membra
ne Matrix(BD)と混合し、NOD scidマウス(CLEA Japan
、メス、6W~8W)の鼠径皮下領域に移植した。移植の当日を、0日目と定義した。移
植の前日(0日目)に、抗アシアロ-GM1抗体(Wako Pure Chemica
ls)を、0.2mg/マウスでマウスに腹腔内投与した。移植後10日目に、マウスを
、その体重および腫瘍サイズに応じて群に分け、抗アシアロ-GM1抗体を0.2mg/
マウスで再びマウスに腹腔内投与した。次の日、上記の拡大培養によって得られたT細胞
を、3x107細胞/マウスで腹腔内に移植した。T細胞移植の4時間後、抗ヒトDLL
3/CD3二重特異性抗体を、5mg/kgおよび1mg/kgで尾静脈を介して静脈内
投与した。抗ヒトDLL3/CD3二重特異性抗体を、1回だけ投与した。
【0303】
抗腫瘍活性(腫瘍体積増加の阻害)を、溶媒を投与した対照群と比較して、抗ヒトDL
L3/CD3二重特異性抗体を投与した群において観察した(
図6)。
【0304】
NCI-H1436移植T細胞注入モデル上でのDLA0316/No.12に関する
抗腫瘍効能試験を、同様の方法によって実施した。腫瘍移植後、16日目に、マウスを群
に分け、次の日にT細胞を移植した。T細胞移植の3日後、抗DLL3/CD3二重特異
性抗体を、5mg/kg、1mg/kg、および0.2mg/kgで静脈内投与した。
【0305】
抗腫瘍活性(腫瘍体積増加の阻害)を、溶媒を投与した対照群と比較して、DLA03
16/No.12を投与した群において観察した(
図7A)。
【0306】
NCI-H2227移植T細胞注入モデル上でのDLA0316/No.12に関する
抗腫瘍効能試験を、同様の方法によって実施した。腫瘍移植後、18日目に、マウスを群
に分け、17日目にT細胞を移植した。T細胞移植の3日後、抗DLL3/CD3二重特
異性抗体を、5mg/kg、1mg/kg、および0.2mg/kgで静脈内投与した。
【0307】
抗腫瘍活性(腫瘍体積増加の阻害)を、溶媒を投与した対照群と比較して、DLA03
16/No.12を投与した群において観察した(
図7B)。
【0308】
実施例7.抗DLL3単一特異性抗体のヒト化および最適化
ヒト化DLL3抗体の重鎖および軽鎖の可変領域を、ヒト生殖系列フレームワークを使
用して設計した。設計された重鎖および軽鎖可変領域のポリヌクレオチドを、それぞれ、
重鎖定常領域SG1配列(配列番号59(アミノ酸配列は配列番号60に示される))お
よび軽鎖定常領域SK1配列(配列番号61(アミノ酸配列は配列番号62に示される)
)を含有する発現ベクター中にクローニングした。ヒト化抗体を、FreeStyle
293-F細胞(Thermo Fisher Scientific)中で一過的に発
現させ、BIAcore分析を上記のように実行した。ヒト化抗体およびその親抗体の配
列を、以下の表5に示す。
【0309】
選択されたヒト化抗体を、さらに最適化した。CDR領域中の脱アミド化、異性化、ス
クシンイミド形成、メチオニンおよびトリプトファン酸化ならびに非対システインのシス
テイン化などの化学的分解を回避するために、選択されたヒト化抗体の配列内のアミノ酸
残基を、元のアミノ酸とシステインを除く、他の18種のアミノ酸に変異させた。上記の
方法によって、バリアントを一過的に発現させ、精製した。精製されたモノクローナル抗
体バリアントを、上記の方法を使用するBIAcoreによって評価し、ヒトDLL3お
よびカニクイザルDLL3に結合することができる目的のバリアントを親抗体として選択
した。次いで、CDR中でのこれらの変異の組合せを有する抗体を生成した。これらの様
々な変異を含有する抗体のHVR(CDR)配列を、親抗体のHVR(CDR)配列と共
に、以下の表6に示す。
【0310】
表5は、生成された抗DLL3抗体の配列番号を示す。
【0311】
【0312】
表6は、生成された抗DLL3抗体のHVR(CDR)配列の配列番号を示す。
【0313】
【0314】
表6中の「HCDR1」、「HCDR2」、「HCDR3」、「LCDR1」、「LC
DR2」、および「LCDR3」は、それぞれ、HVR-H1、HVR-H2、HVR-
H3、HVR-L1、HVR-L2、およびHVR-L3に対応する。
【0315】
実施例8.抗DLL3抗体の競合分析
ビオチン標識化された抗DLL3抗体の調製
以前に報告された抗DLL3抗体の可変領域を含む抗DLL3抗体(DL301-SG
1、DL306-SG1、DL309-SG1、DL312-SG1、DLL3-14-
SG1、DLL3-22-SG1、DLL3-4-SG1およびDLL3-6-SG1)
を、上記と同じ様式で調製した。可変重鎖および軽鎖配列(VHおよびVL)を、それぞ
れ、SG1(配列番号60)およびSK1(配列番号62)を含む発現ベクター中にクロ
ーニングした。抗DLL3抗体の配列を、以下の表7に示す。
【0316】
表7は、調製された抗DLL3抗体の配列番号を示す。
【0317】
【0318】
抗DLL3抗体(DL301-SG1、DL306-SG1、DL309-SG1、D
L312-SG1、D30316AE02-SG1、およびD30841AE05-SG
1)を、NHS-PEG4-ビオチン(Thermo Fisher)で標識化すること
によって、ビオチン標識化された抗DLL3抗体を調製した。
【0319】
Octetアッセイ
Octet(登録商標)RED384(Fortebio)を使用して、抗体のパネル
のためのエピトープビニングによる競合結合アッセイを実施した。40nMのビオチン化
抗体(DL301-SG1、DL306-SG1、DL309-SG1、DL312-S
G1、D30316AE02-SG1、およびD30841AE05-SG1)を最初に
ストレプトアビジン(SA)バイオセンサーにロードした。次に、センサーを20nMの
ヒトDLL3に曝露した後、80nMの第2抗体に曝露する。第2抗体は、DL301-
SG1、DL306-SG1、DL309-SG1、DL312-SG1、D30316
AE02-SG1、D30841AE05-SG1、DLL3-14-SG1、DLL3
-22-SG1、DLL3-4-SG1、およびDLL3-6-SG1である。生データ
を、ForteBio’s Data Analysis Software 7.0を
使用してプロセシングし、抗体対を競合結合について評価した。第2抗体による追加の結
合は、非占有エピトープ(非競合剤)を示すが、結合がないことは、エピトープブロッキ
ング(競合剤)を示す。
【0320】
競合的抗体結合が存在するかどうかを決定するために、抗体Aを最初にストレプトアビ
ジンバイオセンサーに固相化し、抗原と抗体Bとの複合体の逐次的結合を測定した。
【0321】
抗体Bの抗体Aに対する競合比を、以下の式:
競合比(抗体Bの抗体Aに対する比)=
[結合応答(抗体B-抗原)]/[結合応答(抗原-抗体A)]
を使用して算出した。
【0322】
その結果、D30841AE05-SG1がDL306-SG1と競合し、D3031
6AE02-SG1は、試験した他の抗体と競合しないことが示された(
図8)。
【0323】
実施例9.抗ヒトDLL3/抗ヒトCD3二重特異性抗体の調製
表5に記載された抗DLL3単一特異性抗体および抗CD3抗体を使用して、他の場所
に公開された従来の方法を使用して、抗DLL3/CD3二重特異性抗体を生成した。抗
DLL3アームと抗CD3アームとの組合せを、表8に示す。
【0324】
生成される二重特異性抗体は、Fcガンマ受容体に対する親和性が減じられたサイレン
トFcを含有する。これらの分子のために、Igawaら(WO2016159213)
によって報告されたFabアーム交換技術を使用して、二重特異性抗体を作製した。
【0325】
表8は、調製された抗DLL3/CD3二重特異性抗体の可変領域の配列番号を示す。
【0326】
【0327】
実施例10.抗DLL3/CD3二重特異性抗体中の抗DLL3アームの結合親和性評価
のためのBiacore分析
pH7.4での抗DLL3/CD3抗体中の抗DLL3アームのヒトまたはカニクイザ
ルDLL3への結合親和性を、Biacore 8K機器(GE Healthcare
)を使用して37℃で評価した。抗ヒトFc(GE Healthcare)を、アミン
カップリングキット(GE Healthcare)を使用して、CM4センサーチップ
の全てのフローセル上に固相化した。二重特異性抗体を、抗Fcセンサー表面上に捕捉し
た後、組換えヒトまたはカニクイザルDLL3をフローセル上に注入した。全ての抗体お
よび分析物を、20mM ACES、150mM NaCl、0.05%Tween(商
標)20、0.005%NaN3を含有するACES pH7.4中で調製した。センサ
ー表面を、3M MgCl2を用いて各サイクルで再生した。Biacore 8K評価
ソフトウェア、バージョン2.0(GE Healthcare)を使用して、データを
1:1結合モデルにプロセシングし、適合させることによって、結合親和性を決定した。
【0328】
二重特異性抗体の抗DLL3アームの、組換えDLL3への結合親和性を、表9に示す
。
【0329】
表9は、二重特異性抗体の抗DLL3アームの結合親和性を示す。
【0330】
【0331】
実施例11.抗DLL3/CD3二重特異性抗体の抗CD3アームの結合親和性評価のた
めのBiacore分析
pH7.4での抗DLL3/CD3二重特異性抗体の抗CD3アームの、CD3への結
合親和性を、Biacore 8K機器(GE Healthcare)を使用して、3
7℃で評価した。抗ヒトFc(GE Healthcare)を、アミンカップリングキ
ット(GE Healthcare)を使用して、CM4センサーチップの全てのフロー
セル上に固相化した。二重特異性抗体を、抗Fcセンサー表面上に捕捉した後、組換えヒ
トCD3egタンパク質(CD3イプシロン-ガンマ、CD3イプシロンとCD3ガンマ
とのヘテロ二量体)を、フローセル上に注入した。全ての抗体および分析物を、20mM
ACES、150mM NaCl、0.05%Tween(商標)20、0.005%
NaN3を含有するACES pH7.4中で調製した。センサー表面を、3M MgC
l2を用いて各サイクルで再生した。Biacore 8K評価ソフトウェア、バージョ
ン2.0(GE Healthcare)を使用して、データを1:1結合モデルにプロ
セシングし、適合させることによって、結合親和性を決定した。
【0332】
二重特異性抗体の様々な抗CD3アームの、組換えCD3egタンパク質への結合親和
性を、表10に示す。
【0333】
表10は、二重特異性抗体の抗CD3アームの結合親和性を示す。
【0334】
【0335】
実施例12.細胞増殖阻害の比率によるヒト化抗DLL3/CD3二重特異性抗体のT細
胞依存性細胞傷害(TDCC)の測定
ヒト化抗DLL3/CD3二重特異性抗体に関するTDCCアッセイを、実施例5.2
.2に記載されたものと同様の方法によって実施した。SK-MEL30ヒトがん細胞株
を、標的細胞として使用し、アッセイ時間は48または72時間であった。
図9は、ヒト
化抗DLL3/CD3二重特異性抗体のTDCCを示す。ヒト化抗体は、その親クローン
と比較して、同レベルのTDCC活性を示し、十分な効能と結論付けられた。
【0336】
実施例13.抗ヒトDLL3/抗ヒトCD3二重特異性抗体の調製
表5に記載された抗DLL3単一特異性抗体D30841AE13-SG1および抗C
D3抗体を使用して、他の場所に公開された従来の方法を使用して、抗DLL3/CD3
二重特異性抗体を生成した。配列番号を、表11に示す。
【0337】
表11は、調製された抗DLL3/CD3二重特異性抗体の可変領域の配列番号を示す
。
【0338】
【0339】
生成される二重特異性抗体は、Fcガンマ受容体に対する親和性が減じられたサイレン
トFcを含有する。これらの分子のために、Igawaら(WO2016159213)
によって報告されたFabアーム交換技術を使用して、二重特異性抗体を作製した。
【0340】
実施例14.細胞増殖阻害の比率によるヒト化抗DLL3/CD3二重特異性抗体のT細
胞依存性細胞傷害(TDCC)の測定
実施例13で作製された抗DLL3/CD3二重特異性抗体のTDCCアッセイを、実
施例5.2.2に記載されたものと同様の方法によって実施した。SK-MEL 30ヒ
トがん細胞株を、標的細胞として使用した。エフェクター細胞に関して、凍結されたPB
MCを使用した。凍結されたPBMCを調製するために、凍結バイアルを、37℃の水浴
中に入れて、凍結された細胞を解凍した。次いで、細胞を、9mLの培地(標的細胞を培
養するために使用した培地)を含有する15mLのファルコンチューブに分注した。次い
で、細胞懸濁液を、室温で5分間、1,200rpmでの遠心分離にかけた。上清を穏や
かに吸引し、新鮮な加温した培地を、再懸濁のために添加した。PBMCを、エフェクタ
ー:標的比5でSK-MEL-30と共に培養した。PBMCの添加の72時間後、細胞
増殖阻害率(%)をプロットし、
図10に示した。
【0341】
図10に示されるように、D30841AE13/TR01と、D30841AE13
/hu40G5cとの両方が、二重特異性抗体の1および10nMの濃度でTDCC活性
を示した。
【0342】
前記発明は、理解を明確にするために実例および実施例によっていくらか詳細に説明さ
れてきたが、その説明および実施例は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきで
はない。本明細書で引用された全ての特許文献および科学文献の開示は、その全体が参照
により明示的に組み込まれる。