(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134620
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】トレプロスチニルおよびその塩の皮膚投与および経皮投与方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/192 20060101AFI20230920BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20230920BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230920BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230920BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20230920BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20230920BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20230920BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20230920BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20230920BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230920BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20230920BHJP
A61P 9/04 20060101ALI20230920BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20230920BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20230920BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20230920BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20230920BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
A61K31/192
A61P9/12
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K9/70 401
A61K47/20
A61K47/22
A61K47/10
A61K47/14
A61P11/00
A61P43/00 105
A61P11/06
A61P9/04
A61P9/00
A61P9/10 101
A61P9/10
A61P17/02
A61P13/12
A61P37/02
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023114183
(22)【出願日】2023-07-12
(62)【分割の表示】P 2019529890の分割
【原出願日】2017-12-05
(31)【優先権主張番号】62/430,053
(32)【優先日】2016-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515181959
【氏名又は名称】コルセア ファーマ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】チャン シャオミン
(72)【発明者】
【氏名】ベッカー サイラス ケイ.
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンカトラマン ミーナクシ エス.
(57)【要約】 (修正有)
【課題】トレプロスチニルまたはその塩および任意で追加の治療剤を皮膚投与および経皮投与するための方法、組成物、装置、およびシステムを提供する。
【解決手段】トレプロスチニルまたはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、包接化合物、もしくは多形体、および1種または複数種の薬学的に許容される賦形剤または担体を含み、トレプロスチニルまたはその塩を対象に経皮送達するように製剤化または構成されている、経皮薬物送達システム(TDS)とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレプロスチニルまたはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、包接化合物、もしくは多形体、および1種または複数種の薬学的に許容される賦形剤または担体を含み、トレプロスチニルまたはその塩を対象に経皮送達するように製剤化または構成されている、経皮薬物送達システム(TDS)。
【請求項2】
皮膚の表面への適用のために製剤化または構成されている、請求項1記載のTDS。
【請求項3】
全身分布のために血液中にトレプロスチニルまたはその塩を送達するように製剤化または構成されている、請求項1または2記載のTDS。
【請求項4】
皮膚への適用のために製剤化された局所用組成物(例えば、油、スプレー、ゲル、ゼリー、リニメント、ローション、クリーム、フォーム、軟膏、ペースト、または包帯)である、請求項1~3のいずれか一項記載のTDS。
【請求項5】
局所用組成物が、1種または複数種の化学的透過促進剤(例えば、界面活性剤[例えば、ラウレス硫酸ナトリウム]もしくは/および芳香族化合物[例えば、1-フェニルピペラジン]、または脂肪酸エステル[例えば、ミリスチン酸イソプロピル]もしくは/およびアルコール[例えば、エタノール])をさらに含む、請求項4記載のTDS。
【請求項6】
経皮パッチである、請求項1~3のいずれか一項記載のTDS。
【請求項7】
経皮パッチが、液体ベースまたはゲルベースの薬物リザーバと、任意で半透膜とを含むリザーバ型経皮パッチ(RTP)である、請求項6記載のTDS。
【請求項8】
経皮パッチが、薬物/ポリマーマトリックスを含むマトリックス型経皮パッチ(MTP)である、請求項6記載のTDS。
【請求項9】
薬物/ポリマーマトリックスが、粘着剤層中にないか、または粘着剤層(例えば、皮膚接触粘着剤層)から分離している、請求項8記載のTDS。
【請求項10】
薬物/ポリマーマトリックスが、複数の微小薬物リザーバ(薬物マイクロリザーバ)を含む、請求項9記載のTDS。
【請求項11】
薬物/ポリマーマトリックスが、複数の、ポリマーでコーティングされた薬物微粒子を含む、請求項9記載のTDS。
【請求項12】
経皮パッチが、半透膜をさらに含む、請求項9~11のいずれか一項記載のTDS。
【請求項13】
薬物/ポリマーマトリックスが、粘着剤層の一部分(例えば、単層薬物含有粘着剤[DIA]パッチにおける皮膚接触粘着剤層の一部分;薬物が充填されていない皮膚接触速度制御粘着剤層を有するパッチにおける薬物充填粘着剤層の一部分;多層薬物勾配DIAパッチにおける各薬物充填粘着剤層の一部分;または多層DIAパッチにおける皮膚接触粘着剤層の一部分および第2の粘着剤層の一部分であって、当該2つの薬物充填粘着剤層の間に半透膜もしくは他の放出制限層を有するもしくは有しない、部分)である、請求項8記載のTDS。
【請求項14】
経皮パッチが、ソリッドマイクロニードルまたは中空マイクロニードルを含む、請求項6記載のTDS。
【請求項15】
ソリッドマイクロニードルが、トレプロスチニルもしくはその塩でコーティングされているか、またはトレプロスチニルもしくはその塩を含有する生体吸収性ポリマー材料から構成される、請求項14記載のTDS。
【請求項16】
中空マイクロニードルを含む経皮パッチが、液体ベースの薬物リザーバをさらに含む、請求項14記載のTDS。
【請求項17】
経皮パッチが、1種または複数種の化学的透過促進剤(例えば、脂肪酸エステル[例えば、ミリスチン酸イソプロピル]もしくは/およびアルコール[例えば、エタノール]、または界面活性剤[例えば、ラウレス硫酸ナトリウム]もしくは/および芳香族化合物[例えば、1-フェニルピペラジン])をさらに含む、請求項6~16のいずれか一項記載のTDS。
【請求項18】
経皮パッチが、治療有効量のトレプロスチニルまたはその塩を最大約72時間(3日間)または1週間(7日間)にわたって送達する、請求項6~17のいずれか一項記載のTDS。
【請求項19】
経皮パッチが、1日当たり約0.05もしくは約0.1 mg~約0.5 mg、約0.5~約1 mg、または約1~約5 mgの治療有効量のトレプロスチニルまたはその塩を送達する、請求項6~18のいずれか一項記載のTDS。
【請求項20】
経皮パッチが、単一の経皮パッチであるか、または(例えば、分離線に沿って)複数の別々のパッチ単位に分割可能な親/母パッチの複数のパッチ単位の中の1つのパッチ単位である、請求項6~19のいずれか一項記載のTDS。
【請求項21】
皮膚内へのまたは/および皮膚を通じた薬物輸送のための追加の駆動力を提供する化学的または物理的促進技術(例えば、イオン導入法)と一体化されている、前記請求項のいずれか一項記載のTDS。
【請求項22】
皮膚透過性を向上させる化学的または物理的促進技術(例えば、化学的透過促進剤、非キャビテーションもしくはキャビテーション超音波、エレクトロポレーション、熱剥離、高周波、マイクロダーマブレーション、マイクロニードル、または高圧)と一体化されている、前記請求項のいずれか一項記載のTDS。
【請求項23】
トレプロスチニルが、カルボン酸形態のトレプロスチニルである、前記請求項のいずれか一項記載のTDS。
【請求項24】
トレプロスチニルが、トレプロスチニルの塩形態、例えば、アルカリ金属塩(例えば、トレプロスチニルナトリウム)またはアミン塩(例えば、トレプロスチニルジエタノールアミン、トレプロスチニルトリエタノールアミン、トレプロスチニル2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオールもしくはトレプロスチニルトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)である、請求項1~22のいずれか一項記載のTDS。
【請求項25】
追加の治療剤をさらに含む、前記請求項のいずれか一項記載のTDS。
【請求項26】
追加の治療剤が、局所麻酔剤、鎮痛剤、抗炎症剤、局所血管収縮剤、およびそれらの組み合わせから選択される、請求項25記載のTDS。
【請求項27】
前記請求項のいずれか一項記載の経皮薬物送達システムを対象の皮膚に適用する段階を含む、対象にトレプロスチニルまたはその塩を経皮送達する方法。
【請求項28】
治療を必要とする対象に治療有効量のトレプロスチニルまたはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、包接化合物、もしくは多形体を経皮投与する段階を含む、トレプロスチニルによる処置に応答する医学的病態を治療する方法。
【請求項29】
トレプロスチニルまたはその塩が、全身分布のために血液中に送達される、請求項28記載の方法。
【請求項30】
対象にトレプロスチニルまたはその塩を経皮投与する段階が、請求項1~26のいずれか一項記載の経皮薬物送達システム(TDS)を対象の皮膚に適用することを含む、請求項28または29記載の方法。
【請求項31】
トレプロスチニルまたはその塩が、経皮パッチによって投与される、請求項28~30のいずれか一項記載の方法。
【請求項32】
TDSまたは経皮パッチの適用部位またはその近傍に局所的に追加の治療剤を投与する段階をさらに含む、請求項30または31記載の方法。
【請求項33】
追加の治療剤が、局所麻酔剤、鎮痛剤、抗炎症剤、局所血管収縮剤、およびそれらの組み合わせから選択される、請求項32記載の方法。
【請求項34】
医学的病態が、肺高血圧症、肺線維症、間質性肺疾患、ぜんそく、うっ血性心不全、末梢血管疾患、重症間欠性跛行、アテローム発生、虚血性病変、重症虚血肢、虚血性潰瘍、皮膚潰瘍、神経障害性足潰瘍、腎機能不全および腎不全、免疫抑制、増殖性疾患、ならびに前記病態の各々に関連する疼痛から選択される、請求項28~33のいずれか一項記載の方法。
【請求項35】
医学的病態が、肺高血圧症、例えば肺動脈高血圧症である、請求項34記載の方法。
【請求項36】
追加の治療剤を投与する段階をさらに含む、請求項28~35のいずれか一項記載の方法。
【請求項37】
追加の治療剤が、血管作用剤、利尿剤、抗凝固剤、強心配糖体、およびそれらの組み合わせから選択される、請求項36記載の方法。
【請求項38】
トレプロスチニルまたはその塩の治療有効量が、1日当たり約0.05もしくは約0.1 mg~約0.5 mg、約0.5~約1 mg、または約1~約5 mgである、請求項28~37のいずれか一項記載の方法。
【請求項39】
トレプロスチニルによる処置に応答する医学的病態の治療において用いるための、トレプロスチニルまたはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、包接化合物、もしくは多形体であって、トレプロスチニルまたはその塩が経皮投与される、トレプロスチニルまたはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、包接化合物、もしくは多形体。
【請求項40】
トレプロスチニルによる処置に応答する医学的病態の治療において用いるための、トレプロスチニルまたはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、包接化合物、もしくは多形体を含む組成物であって、トレプロスチニルまたはその塩が経皮投与される、組成物。
【請求項41】
トレプロスチニルによる処置に応答する医学的病態の治療のための医薬の調製における、トレプロスチニルまたはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、包接化合物、もしくは多形体の使用であって、トレプロスチニルまたはその塩が経皮投与される、使用。
【請求項42】
トレプロスチニルまたはその塩が、請求項1~26のいずれか一項記載の経皮薬物送達システムによって経皮投与される、それぞれ請求項39、40、または41の化合物、組成物、または使用。
【請求項43】
トレプロスチニルまたはその塩が、経皮パッチによって投与される、請求項39~42のいずれか一項記載の化合物、組成物、または使用。
【請求項44】
医学的病態が、肺高血圧症、例えば肺動脈高血圧症である、請求項39~43のいずれか一項記載の化合物、組成物、または使用。
【請求項45】
請求項1~26のいずれか一項記載の経皮薬物送達システム(TDS)と、トレプロスチニルによる処置に応答する医学的病態を治療するためにTDSを使用するための使用説明書とを含む、キット。
【請求項46】
TDSが経皮パッチである、請求項45記載のキット。
【請求項47】
医学的病態が、肺高血圧症、例えば肺動脈高血圧症である、請求項45または46記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年12月5日付で出願された米国仮特許出願第62/430,053号の優先権および恩典を主張するものであり、その開示全体があらゆる目的で参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
本開示の背景
肺動脈高血圧症(PAH)を含む肺高血圧症(PH)は、死をもたらしうる疾患であり、肺動脈圧および肺血管抵抗の増大を特徴とする。PHまたはPAHを治療するために使用可能ないくつかの薬物は、様々な理由で有効に経口投与することができず、一般に皮下経路、静脈内経路、または筋肉内経路によって投与される。一般に、これらの投与経路は医療専門家による介入を必要とし、患者の相当な不快感および潜在的な局所外傷を伴うことがある。
【0003】
そのような薬物の一例はトレプロスチニルである。遊離酸としてのトレプロスチニルは、10%未満の絶対経口バイオアベイラビリティを示し、著しい代謝による非常に短い全身半減期を示す。トレプロスチニルは現在、静脈内注射または皮下注射によって投与することができ、これには注射部位の痛みおよび感染のリスクなどの欠点が有る。トレプロスチニルは現在、吸入によって投与することもできるが、PAH患者の約50%は肺への刺激感が理由で吸入トレプロスチニルを服用することができず、吸入によって投与されたトレプロスチニルは血漿濃度の大きなトラフ・ピーク比を示す。トレプロスチニルは、以下に示される構造を有する。トレプロスチニルは、遊離カルボン酸として、または塩(例えば、ナトリウム塩もしくはジエタノールアミン塩)として存在することができる。
【発明の概要】
【0004】
本開示の概要
本開示は、トレプロスチニルおよびその塩の局所アベイラビリティまたは全身アベイラビリティの増大を提供することができる、トレプロスチニルおよびその塩の皮膚投与および経皮投与のための方法、組成物、装置、およびシステムについて記載する。前述を限定するわけではないが、いくつかの態様において、本方法、組成物、装置、およびシステムは、顕著または過剰な皮膚刺激を引き起こさない。トレプロスチニルを含有する組成物、装置、またはシステムは、任意で、追加の治療剤を含んでもよい。いくつかの態様において、トレプロスチニルを含有する組成物、装置、またはシステムは、皮膚の表面に適用される。特定の態様において、トレプロスチニルまたはその塩(例えば、トレプロスチニルナトリウムまたはトレプロスチニルジエタノールアミン)は経皮パッチによって投与される。経皮パッチは、トレプロスチニルもしくはその塩を受動的に(いくつかの態様ではカルボン酸としてのトレプロスチニルの受動輸送)、任意で1つもしくは複数の化学的透過促進剤の使用によって、または物理的促進技術(例えば、イオン導入パッチ、超音波導入パッチ、マイクロニードルパッチ、もしくは高圧が加えられるパッチ)の助けを借りて能動的に送達するようにデザインすることができる。
【0005】
皮膚投与または経皮投与されるトレプロスチニルまたはその塩は、トレプロスチニルによる処置に応答する任意の医学的病態を治療するために用いることができる。医学的病態を治療するために、任意で、追加の治療剤をトレプロスチニルまたはその塩と組み合わせて用いてもよい。特定の態様において、トレプロスチニルまたはその塩は、PAHなどの肺高血圧症を治療するために皮膚投与または経皮投与される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本開示の特徴および利点のより良い理解は、本開示の例示的な態様を示す以下の詳細な説明、および添付の図面を参照することによって得られるであろう。
【0007】
【
図1】リザーバ型経皮パッチの態様の横断面を例示する。
【
図2】マトリックス型経皮パッチの態様の横断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の詳細な説明
本開示の様々な態様が本明細書において記載されるが、該態様は例としてのみ示されることが、当業者には明らかであろう。本明細書において記載される態様の数多くの修正および変更ならびに変形および置換が本開示を逸脱しないことは、当業者には明らかであろう。本開示を実践する上で本明細書において記載される態様の様々な代替態様を利用できることが理解されよう。また、本開示のあらゆる態様を、該態様と矛盾しない本明細書において記載される任意の1つまたは複数の他の態様と組み合わせてもよいということが理解されよう。
【0009】
要素がリスト形式で(例えば、マーカッシュ群で)提示される場合、要素のありうる各部分群も開示されており、任意の1つまたは複数の要素をリストまたは群から除外することができるということが理解されよう。
【0010】
また、明らかに反対の指示がない限り、2つ以上の行為または段階を含む本明細書において記載または特許請求される任意の方法において、該方法の行為または段階の順序が、該方法の行為または段階が記載されている順序に必ずしも限定されないが、本開示が、そのように順序が限定される態様を包含するということが理解されよう。
【0011】
さらに、一般に、本明細書または特許請求の範囲における一態様が1つまたは複数の特徴を含むものとして言及される場合、本開示が、該特徴からなるまたは本質的になる態様も包含するということが理解されよう。
【0012】
また、本開示の任意の態様、例えば先行技術において見られる任意の態様が、本明細書中で特定の除外が記載されているか否かにかかわらず、特許請求の範囲から明確に除外されうるということが理解されよう。
【0013】
見出しは、参照用に、および特定のセクションの位置を確定することに役立つように、本明細書に含まれる。見出しは、当該見出しに基づいてセクションに記載される態様および概念の範囲を限定するようには意図されておらず、当該の態様および概念は、本開示全体を通じて他のセクションにおける適用可能性を示しうる。
【0014】
本明細書に引用される全ての特許文献および全ての非特許文献は、各特許文献または非特許文献が参照によりその全体が本明細書に組み入れられるように具体的および個別的に示される場合と同程度に、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0015】
I. 定義
本明細書および添付の特許請求の範囲において用いられる、不定冠詞「1つの(a)」および「1つの(an)」ならびに定冠詞「その(the)」は、別途具体的な記載がない限りまたは文脈が明らかに他の意味を示さない限り、単数の言及対象と同様に複数の言及対象を含みうる。
【0016】
「約」または「およそ」という用語は、当業者により確定される特定の値に関して許容される誤差を意味し、この誤差は、部分的にはその値がどのようにして測定または確定されるかに依存する。特定の態様では、「約」または「およそ」という用語は、1つの標準偏差以内を意味する。いくつかの態様では、特定の誤差限界(例えば、データのチャートまたは表に示される平均値に対する標準偏差)が記載されない場合、「約」または「およそ」という用語は、記載値を包含する範囲を意味し、同様に、有効数字を考慮した上で記載値に切り上げまたは切り下げることで含まれる範囲を意味する。特定の態様では、「約」または「およそ」という用語は、特定の値の±20%、15%、10%、または5%以内を意味する。「約」または「およそ」という用語が一連の2つ以上の数値または一連の2つ以上の数値範囲における最初の数値の前にある場合は常に、「約」または「およそ」という用語は、その一連の数値のうちの各数値またはその一連の数値範囲における各数値に適用される。
【0017】
一連の2つ以上の数値のうちの最初の数値の前にある場合の「少なくとも」または後ろにある場合の「超」という用語は常に、その一連の数値のうちの各数値に適用される。
【0018】
一連の2つ以上の数値のうちの最初の数値の後ろにある場合の「以下」または「未満」という用語は常に、その一連の数値のうちの各数値に適用される。
【0019】
「薬学的に許容される」という用語は、過度の刺激感、アレルギー応答、免疫原性、および毒性を示すことなく対象の組織および臓器に接触させて使用するのに適しており、妥当なベネフィット/リスク比に相応しており、かつ、その所期の用途に有効である、物質(例えば、有効成分または賦形剤)を意味する。また、薬学的組成物の「薬学的に許容される」賦形剤または担体は、該組成物の他の成分に適合する。
【0020】
「治療有効量」という用語は、対象に投与される際に、治療される医学的病態または当該病態に関連する1つもしくは複数の症状の発生を予防するかまたはそれをある程度軽減するために十分な、化合物の量を意味する。「治療有効量」という用語は、研究者、獣医、医師、または臨床医が求める、細胞、組織、臓器、系、動物、またはヒトの生物学的または医学的応答を誘発するために十分な化合物の量も意味する。
【0021】
「治療する」、「治療すること」、および「治療」という用語には、医学的病態または当該病態に関連する1つもしくは複数の症状を軽減または抑止すること、および当該病態の1つまたは複数の原因を軽減または根絶することが含まれる。病態の「治療」への言及は、当該病態の予防を含むように意図されている。「予防する」、「予防すること」、および「予防」という用語には、医学的病態または当該病態に関連する1つもしくは複数の症状の発症を防止するかまたは遅延させること、対象が病態に罹患するのを防止すること、および対象が病態に罹患するリスクを減少させることが含まれる。「医学的病態」という用語には、疾患および障害が含まれる。
【0022】
「対象」という用語は、霊長類(例えば、ヒト、チンパンジーもしくはサル)、げっ歯類(例えば、ラット、マウス、モルモット、スナネズミもしくはハムスター)、ウサギ類(例えばウサギ)、ブタ類(例えばブタ)、ウマ類(例えばウマ)、イヌ類(例えばイヌ)、またはネコ類(例えばネコ)などの哺乳動物を含むが、これらに限定されない、動物を意味する。本明細書において、「対象」および「患者」という用語は、例えばヒト対象などの哺乳動物対象に関して互換的に用いられる。
【0023】
「化合物」(「トレプロスチニル」を含む)という用語は、当該化合物の塩、溶媒和物、水和物、包接化合物、および多形体を包含する。化合物の「溶媒和物」は、当該化合物に非共有結合的に結合した化学量論的または非化学量論的量の溶媒(例えば、水、アセトン、またはアルコール[例えばエタノール])を含む。化合物の「水和物」は、当該化合物に非共有結合的に結合した化学量論的または非化学量論的量の水を含む。化合物の「包接化合物」は、当該化合物の結晶構造に封入された物質(例えば溶媒)の分子を含む。化合物の「多形体」は、当該化合物の結晶形である。本開示の特定の場合における、化合物(例えばトレプロスチニル)に関する「塩」、「溶媒和物」、「水和物」、「包接化合物」、または「多形体」の具体的な記載は、文脈が明らかに他の意味を示さない限り、これらの形態のいずれかの記載なしで「化合物」(「トレプロスチニル」を含む)という用語が使用される本開示の他の場合において、これらの形態のいずれかを意図的に排除するものとしては解釈されないものとする。
【0024】
II. 立体異性体
本開示は、本明細書において記載される化合物(「トレプロスチニル」を含む)の、全ての可能なジアステレオ異性体および実質的に純粋な形態での両方の鏡像異性体および任意の比率での2つ以上のジアステレオ異性体の混合物および任意の比率での両方の鏡像異性体の混合物(鏡像異性体のラセミ混合物を含む)を含む、全ての可能な立体異性体を包含するものであり、図示される構造でまたは命名法で示される特定の立体異性体だけを包含するものではないということが理解されよう。本開示のいくつかの態様は、図示される構造でまたは命名法で示される特定の立体異性体に関する。化合物(例えば、トレプロスチニル)に関する語句「またはその立体異性体」などが本開示の特定の例において具体的に列挙される場合、それは、文脈が明らかに他の意味を示さない限り、「化合物」(例えば、「トレプロスチニル」)という用語が語句「またはその立体異性体」などの列挙なしに用いられる本開示の他の例における化合物の他の可能な立体異性体のいずれかの意図的な排除としては解釈されないものとする。
【0025】
III. 化合物の塩形態
本明細書において記載される化合物(トレプロスチニルを含む)は、薬学的に許容される塩の形態で存在してもよく、または使用されてもよい。例えば、トレプロスチニルはカルボキシル基を有するため、塩基と付加塩を形成することができる。薬学的に許容される塩基付加塩は、例えば金属(例えば、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属)またはアミン(例えば有機アミン)と共に形成可能である。カチオンとして有用な金属の例としてはアルカリ金属(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、およびセシウム)、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム、カルシウム、およびバリウム)、アルミニウム、ならびに亜鉛が挙げられるがそれに限定されない。金属カチオンは、例えば水酸化物、炭酸塩、および炭酸水素塩などの無機塩基として得ることができる。塩基付加塩を形成するために有用な有機アミンの非限定的な例としては2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、クロロプロカイン、コリン、シクロヘキシルアミン、ジベンジルアミン、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、N-エチルピペリジン、ヒスチジン、イソプロピルアミン、N-メチルグルカミン、プロカイン、ピラジン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、およびトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トロメタモールまたはトロメタミン)が挙げられる。
【0026】
いくつかの態様において、トレプロスチニルは、塩の形で使用または投与される(例えば、イオン導入法が採用される場合)。特定の態様において、トレプロスチニルは、アルカリ金属塩として、例えばトレプロスチニルナトリウムとして、使用または投与される。他の態様において、トレプロスチニルは、アミン塩として、例えば、トレプロスチニルジエタノールアミン、トレプロスチニルトリエタノールアミン、トレプロスチニル2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオールまたはトレプロスチニルトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンとして、使用または投与される。
【0027】
化合物が塩基性の原子または官能基(例えば、塩基性窒素原子)を有する場合、化合物は酸との付加塩を形成しうる。酸付加塩を形成するために有用な酸の非限定的な例としては、鉱酸(例えば、HCl、HBr、HI、硝酸、リン酸、および硫酸)、ならびにカルボン酸(例えば酢酸)およびスルホン酸(例えば、エタンスルホン酸)などの有機酸が挙げられる。薬学的に許容される塩はHandbook of Pharmaceutical Salts, Properties, Selection and Use, P. Stahl and C. Wermuth, Eds., Wiley-VCH (2011)に詳説されている。
【0028】
IV. トレプロスチニルの多形体
トレプロスチニルおよびその塩の多形体は当技術分野において公知である。例えば、US 2015/0005384に記載されているトレプロスチニルの結晶形態Aは、X線粉末回折(XRPD)パターンにおいて以下の2θ角度に特徴的なピークを有する: 3.0 ± 0.2°、13.5 ± 0.2°、17. 3 ± 0.2°、18.6 ± 0.2°、および21.7 ± 0.2°。別の例として、US 2015/0011637に記載されているトレプロスチニルの結晶形態Bは、XRPDパターンにおいて以下の2θ角度に特徴的なピークを有する: 2.9 ± 0.2°、6.6 ± 0.2°、12.6 ± 0.2°、13.2 ± 0.2°、18.0 ± 0.2°、18.8 ± 0.2°、20.7 ± 0.2°、21.4 ± 0.2°、22.2 ± 0.2°、23.1 ± 0.2°、および25.3 ± 0.2°。
【0029】
さらに、US 2014/0275262には、結晶性トレプロスチニル一水和物形態AおよびBならびに結晶性無水トレプロスチニル形態Cが記載されている。結晶性トレプロスチニル一水和物形態Aは、5.2、10.4、11.6、12.6、16.2、20.0、21.7、および22.7 °2θ ± 0.2 °2θにピークを含むXRPDパターンによって特徴付けられる。結晶性トレプロスチニル一水和物形態Bは、5.3、10.7、12.1、19.4、20.6、21.6、22.3、および24.4 °2θ ± 0.2 °2θにピークを含むXRPDパターンによって特徴付けられる。結晶性無水トレプロスチニル形態Cは、6.55および20.7 °2θ ± 0.2 °2θにピークを含むXRPDパターンによって、ならびに約78.3℃に小さい吸熱および約126.3℃に大きい吸熱を有する示差走査熱量測定曲線によって特徴付けられる。
【0030】
米国特許第8,350,079号にはまた、結晶性トレプロスチニル一水和物形態が開示されている。さらに、米国特許第9,050,311号にはトレプロスチニルジエタノールアミンの結晶形態AおよびBが記載されている。
【0031】
V. 重水素化トレプロスチニル
薬物などの異物を除去するために、動物の身体はチトクロムP450酵素、エステラーゼ、プロテアーゼ、還元酵素、脱水素酵素、およびモノアミンオキシダーゼなどの種々の酵素を発現し、該酵素は腎排泄のために異物と反応して異物を高極性の中間体または代謝産物に変換する。そのような代謝反応は、例えば、炭素-水素(C-H)結合の炭素-酸素(C-O)結合もしくは炭素-炭素(C=C)π結合への、または炭素-酸素(C-O)単結合の炭素-酸素(C=O)二重結合への酸化を包含しうる。得られる代謝産物は、生理的条件下で安定または不安定でありうるし、親化合物に比べて実質的に異なる薬理特性、薬物動態特性、および薬力学特性、ならびに毒性プロファイルを有しうる。多くの薬物では、そのような代謝酸化が、急速であって、投与量の増加または/および投与頻度の増加の必要性を生じさせることがあり、これにより副作用の増加が生じることがある。
【0032】
本開示は、1つまたは複数の位置で重水素濃縮された(重水素化された)トレプロスチニル同位体置換体を包含する。いくつかの態様において、トレプロスチニルまたはその塩は、1つまたは複数の位置で重水素化される。1つまたは複数の位置でのトレプロスチニルまたはその塩の重水素化は、以下の利点のうち任意の1つもしくは複数、または全てを有しうる: (1) 半減期の延長; (2) 所望の効果を実現するために必要な投与量の減少または/および投与回数の減少; (3) トレプロスチニルの血中レベルまたは血漿レベルに関する対象間の変動の減少; (4) 有効性の向上; (5) 投与されるトレプロスチニルの量の減少または/および有害代謝産物の産生の減少による副作用の減少; ならびに(6) 最大耐量の増加。
【0033】
トレプロスチニル(Trp)またはその塩における利用可能な位置のうちの任意の1つもしくは複数、または全てにおいて、例えば、Trpのフェニル環、Trpのシクロヘキシル環、Trpのシクロペンチル環、Trpのオクチル鎖、もしくはTrpのヒドロキシ酢酸基、またはその任意の組み合わせにおける利用可能な位置のうちの任意の1つもしくは複数、または全てにおいて、水素を重水素に置き換えることができる。いくつかの態様において、トレプロスチニルまたはその塩は、Trpのシクロヘキシル環、Trpのオクチル鎖もしくはTrpのヒドロキシ酢酸基、あるいはそれらの任意の組み合わせまたは全てにおける利用可能な位置のうちの1つもしくは複数、または全てにおいて重水素化される。特定の態様において、トレプロスチニルまたはその塩は、US 2011/0294815に開示されている任意の重水素化トレプロスチニル化合物またはその塩である。いくつかの態様において、少なくとも1つの利用可能な位置が少なくとも約10%、25%、50%、75%、90%、95%、または98%(例えば、少なくとも約50%)の重水素濃縮度を有する。特定の態様において、少なくとも1つの利用可能な位置が少なくとも約90%、95%、または98%の重水素濃縮度を有する。
【0034】
さらなる態様において、独立して、重水素濃縮された(または重水素化された)トレプロスチニルまたはその塩における各位置が少なくとも約10%、25%、50%、75%、90%、95%、または98%(例えば、少なくとも約50%)の重水素濃縮度を示す。特定の態様において、独立して、重水素濃縮された各位置が少なくとも約90%、95%、または98%の重水素濃縮度を示す。
【0035】
「重水素濃縮度」という用語は、分子における所与の位置において水素の代わりに重水素が取り込まれる割合を意味する。例えば、所与の位置における重水素濃縮度10%は、所与の試料中の分子の10%が該位置において重水素を含有することを意味する。重水素の天然分布が約0.0156%であることから、非重水素濃縮の出発原料または試薬を使用して合成される分子における任意の位置における重水素濃縮度は約0.0156%である。重水素濃縮度は、質量分析および核磁気共鳴分光法を含む、当業者に公知の従来の分析法を使用して確定可能である。
【0036】
分子における所与の位置を記載するために使用される場合の、「重水素である」もしくは「重水素化された」という用語、または、分子構造図中の所与の位置における元素を表すために使用される場合の、「D」という記号は、特定の位置が重水素の天然分布を超えて重水素濃縮されていることを意味する。いくつかの態様では、重水素濃縮度は特定の位置において重水素少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、または99%(例えば、少なくとも約50%)である。特定の態様において、重水素濃縮度は特定の位置において重水素の少なくとも約90%、95%、または98%である。
【0037】
重水素化トレプロスチニルまたはその塩は、炭素の13Cまたは14Cおよび酸素の17Oまたは18Oを含むがこれらに限定されない他の元素の低存在比同位体を含有してもよい。
【0038】
VI. トレプロスチニルの皮膚/経皮投与
本開示は、顕著または過剰な皮膚刺激を引き起こさずにトレプロスチニルおよびその塩の適切な局所アベイラビリティまたは全身アベイラビリティを提供することができる、トレプロスチニルおよびその塩の皮膚投与および経皮投与のための方法、組成物、装置、およびシステムについて記載する。いくつかの態様において、トレプロスチニルを含有する組成物、デバイス、またはシステムは対象の皮膚の表面に適用され、そこから必要に応じてトレプロスチニルまたはその塩が皮膚を通って血液循環中へと拡散することができる。トレプロスチニルまたはその塩に加えて、皮膚用または経皮用の薬学的組成物、装置、またはシステムは、1種または複数種の薬学的に許容される賦形剤または担体を含有することができ、任意で、追加の治療剤を含有してもよい。
【0039】
経皮投与の利点は、胃腸管(胃腸(GI)管内の酵素および酸ならびにそれを通じた吸収を含む)の回避および肝臓初回通過代謝; 短い半減期、小さい治療指数または/および低い経口バイオアベイラビリティを有する治療剤の送達; 治療剤の制御された、継続的かつ持続的な放出; 治療剤のより均一な血漿レベルまたは送達プロファイル; 治療剤のより低い用量およびより少ない頻回投与; 全身副作用(例えば、一時的な過剰摂取または過度に高いピーク血漿中薬物濃度によって引き起こされる副作用)の低減; 侵襲性が最小限またはない; 自己投与の容易さ; ならびに患者コンプライアンスの向上を含むことができる。
【0040】
皮膚は、皮膚内への外因性物質の流れに対する強力なバリアを提供する。構造的には、皮膚は、2つの主要部分:1) 比較的薄い外層(表皮)、および2) より厚い内側領域(真皮)を含む。表皮の最外層(角質層)は、ケラチンで満たされた扁平な死細胞を含有する。角質層の扁平な死細胞間の領域は、ラメラ相を形成する脂質で満たされている。皮膚の不透水性は、主に角質層、すなわちその中の細胞間多層状脂質二重層によるものである。角質層の下層にある生存可能な表皮は、他の生体組織と同種である。真皮は、表皮を支持する神経と血管のネットワークだけでなく、皮膚の構造的な強度も提供する。真皮の下にある皮下組織もまた、皮膚に神経と血管を供給する。
【0041】
皮膚投与および経皮投与は、皮膚表面への投与、皮膚内への投与、皮膚を通じた投与、および皮膚を横切る投与を非限定的に含む。それゆえ、皮膚投与および経皮投与は、皮膚の表面への適用、ならびに注射器と針もしくはジェットインジェクタを用いた注射、小さな針と連結された装着型微量注入ポンプを用いた注入、パッチに取り付けられたマイクロニードルの挿入、または皮内インプラントの移植によるような、皮膚の層内もしくは層中(例えば、表皮もしくは真皮)または皮膚の層間への皮内投与を含むが、これらに限定されることはない。真皮は、表皮-真皮接合部の直下に全身薬物吸収のための豊富な毛細血管床を含有する。いくつかの態様において、トレプロスチニルまたはその塩および任意で追加の治療剤の真皮投与または経皮投与は、全身分布のため(例えば、PAHなどの肺高血圧症を治療するため)血液中に治療剤を送達する。
【0042】
十分な濃度での皮膚内への治療剤の送達には、角質層の浸透妨害を低減するための何らかの手段が必要になることが多い。超音波およびエレクトロポレーションなどの電気的に補助された技法、ならびに熱切除、高周波、マイクロダーマブレーションまたはマイクロニードルによる角質層の迂回を含めて、角質層のバリア性を低減または回避するためのいくつかの方法が開発されている。化学的透過/浸透促進剤は、角質層の脂質二重層を可逆的に破壊することによって皮膚透過性を効果的かつ一時的に高めることができるが、生存表皮細胞を刺激する可能性がある。
【0043】
組成物、装置、またはシステム(例えば、パッチ)は、受動的に(いくつかの態様ではカルボン酸としてのトレプロスチニルの受動輸送)、濃度勾配によって(皮膚透過性を向上させることができ、もしくは/および皮膚における薬物分配/溶解性を向上させ、それによって薬物濃度勾配を増強することができる化学的透過促進剤を用いてもしくは用いないで)、または能動機構(例えば、イオン導入法もしくはマイクロニードル)によって、トレプロスチニルまたはその塩および任意で追加の治療剤を経皮送達することができる。皮膚内への薬物の吸収および皮膚を介した薬物の拡散は、任意で芳香族化合物(例えば、1-フェニルピペラジン)、イオン導入法、非キャビテーション超音波、キャビテーション超音波、エレクトロポレーション、熱剥離、高周波、マイクロダーマブレーション、マイクロニードル、もしくは高圧、またはそれらの任意の組み合わせと組み合わせた、1種または複数種の化学的透過促進剤(例えば、界面活性剤[例えば、ラウレス硫酸ナトリウム])などの、皮膚透過性を向上させ、または/ならびに皮膚内へのおよび皮膚を通じた薬物輸送のための追加の駆動力を提供する1種または複数種の化学的または/および物理的促進法の使用によって、促進されることができる。
【0044】
化学的透過促進剤は、角質層中の細胞間多層状脂質二重層を破壊することによって皮膚透過性を向上させることができ、皮膚における薬物分配/溶解性を向上させることによって薬物輸送のための追加の駆動力を提供し、それによって皮膚を通じた薬物拡散を駆動する薬物濃度勾配を増強することができる。イオン導入法は、典型的には、連続的な低電圧電流を印加し、角質層および皮膚を横切る薬物輸送のための電気的駆動力を主に提供する。荷電分子は電気泳動によって移動し、一方で弱荷電および非荷電分子は、角質層中の固定陰イオン(例えば、ケラチン)の代わりに移動陽イオン(例えば、Na+)の選択的移動によって生じる水の対流、つまり電気浸透と呼ばれるプロセスによって移動することができる。低電流の使用によっては重大な皮膚刺激は引き起こされない。受動的経皮技法と比較して、イオン導入技法は、皮膚内へのいっそう速い薬物放出、薬物送達の速度および量のいっそう良好な制御、ならびに皮膚を通じて荷電分子または高分子を拡散させるいっそう高い能力を提供することができる。超音波は、人間が聞くには高すぎる周波数で振動する圧力波である。熱を発生させるが泡を発生させない非キャビテーション超音波は、角質層脂質構造を破壊することによって皮膚透過性を向上させる。キャビテーション超音波は、皮膚表面で振動および崩壊する気泡と熱を発生させ、結果的に角質層脂質構造の破壊を引き起こし、これによりいっそう深部の組織を傷つけることなく何時間もの間、皮膚透過性を向上させる。例えば約15秒間の平均持続時間の間に皮膚に適用される低周波数(kHz、例えば約55 kHz)の超音波は、キャビテーション気泡の形成および振動ならびにいっそう高い経皮薬物流束をもたらす。
【0045】
エレクトロポレーションでは、角質層内の脂質二重層構造を破壊し、それによって皮膚透過性を主に向上させる、短い(マイクロ秒~ミリ秒の)高電圧(例えば、約100 V)の電気パルスを使用する。長寿命のエレクトロポアを通じた薬物拡散は、最大で数時間、持続しうる。熱剥離は、例えばレーザーを用いて数マイクロ秒から数ミリ秒で皮膚表面を数百度に加熱することにより、表皮またはより深部の組織を損傷することなく、角質層にミクロン規模の穿孔を形成することによって、皮膚透過性を向上させる。角質層中に作出された細孔は、皮膚の表面に適用された薬物が角質層の拡散バリアを迂回し、血管が形成されているより深部の皮膚層に接近することを可能にする。高周波に基づく透過は、例えば約1秒未満の間、皮膚を高周波交流に曝し、それによって皮膚内に熱誘導マイクロチャネルを形成させる。薬物送達速度は、マイクロチャネルの数および深さによって制御される。マイクロダーマブレーションは、例えば、皮膚表面上に微結晶を吹き付けることによる角質層バリアの除去を通じて、皮膚透過性を促進する。マイクロニードル(例えば、約100ミクロンなどの、約50~110ミクロンの長さを有する非常に短い針)の挿入により角質層を貫通し、ミクロン規模のチャネルを皮膚に作出することによって、皮膚透過性が促進される。マイクロニードルは、ソリッドマイクロニードルを薬物でコーティングすること、生体吸収性ポリマーマイクロニードル内に薬物を封入すること、または中空マイクロニードルを通る薬物の対流流束を介して薬物を皮膚に能動的に推進することができる。あるいは、皮膚にマイクロニードルを穿刺してマイクロチャネルを皮膚の中に形成させた後、穿孔した皮膚に無針パッチを適用し、マイクロチャネルを介して薬物を皮膚の中に送達することができる。ジェット注射では、注射液の高圧狭噴流(high-pressure narrow jet)を使用して表皮を貫通し、それによって皮膚にミクロン規模の穴を作出する。ジェットインジェクタは、ノズルを通して圧縮空気またはガス(例えば、ヘリウム)を押し出し、ジェット流に取り込まれた薬物粒子を皮膚透過のために高速で発射する。薬物リザーバまたはデポーを含む装置(例えばパッチまたはジェットインジェクタ)は、装置に印加された高圧または装置によって発生された高圧が薬物を装置から外へ(任意で小さな針またはマイクロニードルを通して)および角質層を通して向けさせるようにデザインすることができる。適度な圧力(例えば、約25 kPa)の適用もまた、薬物の皮膚透過に十分でありうる。
【0046】
化学的または/および物理的促進技術の組み合わせは、個々の技法単独よりも経皮薬物輸送を増加させるうえで効果的であることが多く、それを相乗的に行うことができる。化学的または/および物理的促進剤の組み合わせは、各促進剤の必要な「用量」を低減することもできる。そのような促進技術の組み合わせは、化学的透過促進剤(CPE、例えば、リモネン、オレイン酸、アゾン、エタノール、もしくはジメチルスルホキシド、またはそれらの任意の組み合わせ)およびイオン導入法; CPE(例えば、リノール酸、ミリスチン酸イソプロピル、界面活性剤[例えば、ラウリル硫酸ナトリウム]、もしくはポリエチレングリコール、またはそれらの任意の組み合わせ)および超音波; CPE(例えば、多糖類[例えば、デキストランもしくはヘパリン]、尿素、もしくはチオ硫酸ナトリウム、またはそれらの任意の組み合わせ)およびエレクトロポレーション; イオン導入法および超音波; イオン導入法およびエレクトロポレーション; ならびに超音波およびエレクトロポレーションを含むことができるが、これらに限定されることはない。
【0047】
いくつかの態様において、トレプロスチニルまたはその塩および任意で追加の治療剤は、薬物輸送のためのさらなる駆動力を提供する促進技術と組み合わせて皮膚透過性を向上させる促進技術を使用することによって、投与される。いくつかの態様において、薬物輸送のための駆動力を主に提供するイオン導入法は、皮膚透過性を向上させる1種または複数種の化学的または/および物理的促進技術との組み合わせで利用される。そのような組み合わせの例としては、非限定的に、イオン導入法-化学的透過促進剤、イオン導入法-超音波、イオン導入法-エレクトロポレーション、イオン導入法-熱剥離、イオン導入法-高周波、イオン導入法-マイクロダーマブレーション、イオン導入法-マイクロニードル、およびイオン導入法-高圧が挙げられる。
【0048】
化学的または/および物理的促進方法(例えば、化学的透過促進剤、イオン導入法、キャビテーション超音波、およびマイクロニードル)は、1つの経皮薬物送達装置もしくはシステム(例えば、パッチ)に一体化されるかまたはそれと一体化されることもできる。例えば、超音波は、携帯型装置、または超音波導入パッチに一体化されることができる低周波シンバルトランスデューサを用いて適用することができる(例えば、米国特許第9,327,105号を参照)。薬物送達の速度は、例えば、半透膜もしくはパッチのポリマーマトリックスによって; 所望のレベルの伝導性が達成されたときに超音波処理手順を停止するリアルタイムの皮膚インピーダンスフィードバックによって; またはマイクロプロセッサもしくは患者により制御されることができ、連続的もしくは断続的な薬物送達を可能にする、電流に応じたイオン導入法によって制御することができる。別の例として、電子的に制御されるマイクロポンプを、薬物送達のタイミング、頻度、および長さを制御するために、中実または中空のマイクロニードルを含むパッチに一体化するかまたはそれと一体化することができる。さらなる例として、イオン導入パッチは、オンデマンドの薬物送達を可能にするための電池を含むことができ、それによって薬物作用のより迅速な開始が可能となる。
【0049】
物理的促進方法は、例えば、薬物リザーバを含む使い捨て構成要素と連動する携帯型の電動装置を用いて適用することができる。例えば、熱剥離システムは、再使用可能な携帯型アプリケータおよび使い捨ての薬物含有パッチを含むことができる。
【0050】
いくつかの態様において、1種または複数種の化学物質透過促進剤を用いるまたは用いない、トレプロスチニルの受動的経皮投与は、遊離カルボン酸としてトレプロスチニルを送達する。他の態様において、トレプロスチニルの塩形態(例えば、トレプロスチニルナトリウムなどのアルカリ金属塩またはトレプロスチニルジエタノールアミンなどのアミン塩)は、イオン導入法を用いて経皮送達される。
【0051】
少なくとも約1週間、2週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年、またはそれより長い期間にわたる遅延放出または持続放出のために、トレプロスチニルまたはその塩は、皮内もしくは経皮インプラントまたは持続放出経皮パッチもしくはマイクロニードルパッチなどの種々の装置を介して送達することができる。
【0052】
薬学的に許容される賦形剤および担体は、薬学的に許容される物質、材料、および媒体を含む。賦形剤の非限定的な例としては、液体および固体充填剤、希釈剤、結合剤、潤滑剤、滑剤、界面活性剤、分散剤、崩壊剤、乳化剤、湿潤剤、懸濁化剤、増粘剤、溶媒、等張化剤、緩衝剤、pH調整剤、吸収遅延剤、安定剤、保存料、抗酸化剤、抗菌剤、抗細菌剤、抗真菌剤、補助剤、封入材料、およびコーティング材料が挙げられる。薬学的製剤中でのそのような賦形剤の使用は当技術分野において公知である。例えば、従来の媒体および担体は、非限定的に油(例えば、ゴマ油などの植物油)、水性溶媒(例えば、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水[PBS]および等張溶液[例えば、リンゲル溶液])、ならびに溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド[DMSO]およびアルコール[例えば、エタノール、グリセロールおよびプロピレングリコール])を含む。任意の従来の賦形剤または担体が有効成分と適合しない場合を除いて、本開示は、トレプロスチニルまたはその塩を含有する製剤中での従来の賦形剤および担体の使用を包含する。例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 21st Ed., Lippincott Williams & Wilkins (Philadelphia, Pennsylvania [2005]); Handbook of Pharmaceutical Excipients, 5th Ed., Rowe et al., Eds., The Pharmaceutical Press and the American Pharmaceutical Association (2005); Handbook of Pharmaceutical Additives, 3rd Ed., Ash and Ash, Eds., Gower Publishing Co. (2007); およびPharmaceutical Pre-formulation and Formulation, Gibson, Ed., CRC Press LLC (Boca Raton, Florida [2004])を参照されたい。
【0053】
本開示は、組成物、装置、もしくはシステムの必要な構成要素の全てが完全な単位(例えば、経皮パッチ)として提供されうる、または組み合わせ(assemblage)のために別々に提供されうる、トレプロスチニルを含有する組成物、装置、もしくはシステムまたはそれらの複数を含むキットを含む。経皮パッチまたはその複数のものは、パウチ(例えば、再密封可能なパウチ)などの、任意の適切な容器中に保管することができる。キットは、所望であれば物理的促進技術の適用に必要な任意の器具または装置をさらに含むことができ、あるいはそのような器具または装置は、トレプロスチニルを含有する組成物、装置、またはシステム(例えば、イオン導入パッチまたは超音波導入パッチ)の一部であることができる。キットは、トレプロスチニルを含有する組成物、装置、またはシステムおよび他の器具または装置を保管、準備(必要な場合)、および適用または使用するための説明書を含むことができる。トレプロスチニルを含有する組成物、装置、またはシステムおよび他の任意の器具または装置を適用または使用するための説明書は、肺高血圧症またはより具体的にはPAHなどの特定の医学的病態の治療に合わせて調整することができる。
【0054】
A. 皮膚/経皮用組成物
皮膚への適用のための局所製剤は、上層皮膚層の病態を治療するために、または治療剤(例えば、トレプロスチニルもしくはその塩)の皮膚の下層にある局所組織への経皮投与(これは、例えば、デジタル潰瘍などの虚血性潰瘍を治療するために有用であることができる)のためにもしくは全身分布に向けて血液中への経皮投与のために有用であることができる。一般におよび本明細書における他の箇所に記載された皮膚/経皮用組成物に関する開示に加えて、皮膚への適用に適した局所用組成物は、非限定的に油、液体または半液体調製物、例えばスプレー、ゲル、ゼリー、リニメント、ローション、ならびにクリーム、フォーム、軟膏およびペーストなどの水中油型または油中水型乳濁液を含む。蒸発または吸収時に、皮膚にスプレー、ゲルまたは他の局所製剤を適用することで、低分子量の親油性薬物を角質層(皮膚の最外層)の中に追いやることができ、これは何時間にもわたる生存表皮(皮膚の中間層)への薬物の長期放出のための薬物リザーバとしての役割を果たすことができる。局所用組成物は、治療剤を含浸させた包帯剤として構成されてもよく、例えばゲル、フォーム、ペースト、ヒドロゲル、親水コロイド、ヒドロセル(hydrocellular)材料もしくはハイドロファイバー、またはそれらの任意の組み合わせから構成されてもよい。
【0055】
いくつかの態様において、局所用組成物は担体に溶解され、懸濁され、分散され、または組み入れられた、トレプロスチニルまたはその塩および任意で追加の治療剤を含む。担体は、例えば、溶液、懸濁液、乳濁液、軟膏、ゲルベース、パッチの液体もしくはゲル組成物、またはパッチのポリマーマトリックスの形態であることができ、例えば、ワセリン、ラノリン、ワックス(例えば、ミツロウ)、鉱油、長鎖アルコール、ポリエチレングリコールもしくはポリプロピレングリコール、希釈剤(例えば、水もしくは/およびアルコール[例えば、エタノールもしくはプロピレングリコール])、ゲル、ポリマー材料、乳化剤、増粘剤、安定剤、または保存料、あるいはそれらの任意の組み合わせを含有することができる。特定の態様において、担体は、約0.1~15% w/w、0.1~10% w/w、0.5~5% w/wまたは0.5~2% w/wの濃度で薬物を含む。
【0056】
いくつかの態様において、局所用組成物は、皮膚内へのまたは/および皮膚を横切って体循環内への、トレプロスチニルまたはその塩(例えば、遊離カルボン酸としてのトレプロスチニルの受動輸送)および任意で追加の治療剤の輸送を促進する、化学的浸透/透過促進剤(CPE)を含む。CPEの非限定的な例としては、炭化水素(例えば、アルカンおよびアルケン[例えば、スクアレン]); テルペンおよびテルペノイド(例えば、D-リモネン、カルボン、ユーカリプトール、メントール、メントンおよびネロリドール); 精油/揮発性油(例えば、アニス油、キャラウェイ油、カルダモン油、ヘノポジ油、ユーカリ油およびレモン油); エーテルおよび脂肪族エーテル(例えば、2-n-ノニル-1,3-ジオキソラン); フェノール(例えば、オイゲノール); アルコールおよび脂肪アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ペンタノール、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、ベンジルアルコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコールおよびグリセロール); 安息香酸(例えば、サリチル酸およびアセチルサリチル酸); 脂肪酸(例えば、吉草酸、ラウリン酸、オレイン酸およびリノール酸); エステル、脂肪アルコールエステルおよび脂肪酸エステル(例えば、酢酸エチル、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、プロピレングリコールモノオレエート、グリセロールモノオレエート、トリアセチンおよびペンタデカラクトン); ヒドロキシル含有エステル、脂肪アルコールエステルおよび脂肪酸エステル(例えば、ラウリルラクテート、グリセリル/グリセロールモノラウレート、グリセロールモノオレエート[モノオレイン]、ソルビタンオレエートおよびサリチル酸オクチル); アミン(例えば、ジエタノールアミンおよびトリエタノールアミン); アミド、脂肪族アミンアミドおよび脂肪酸アミド(例えば、尿素、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジエチルアセトアミド、ジエチルトルアミド、N-ラウロイルサルコシン、1-ドデシルアザシクロヘプタン-2-オン[ラウロカプラムまたはアゾン(登録商標)]、アゾン関連化合物、およびピロリドン化合物[例えば、2-ピロリドンおよびN-メチル-2-ピロリドン]); イオン性および非イオン性界面活性剤(例えば、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、ラウリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム[ラウリルエーテル硫酸ナトリウム]、コール酸ナトリウム、ソルビタンモノラウレート、Brij(登録商標)界面活性剤、Pluronic(登録商標)界面活性剤、およびTween(登録商標)界面活性剤); リン脂質(例えばレシチン); スルホキシド(例えば、ジメチルスルホキシド); ジンセノサイドならびに本明細書における他の箇所に記載されるものが挙げられる。米国特許出願公開第2007/0269379号にはCPEの広範なリストが提供されている。
【0057】
特定の態様において、CPEは界面活性剤を含む。いくつかの態様において、CPEは、非イオン性界面活性剤(例えば、ソルビタンモノラウレートまたはN-ラウロイルサルコシン)およびイオン性界面活性剤(例えば、ラウロイルサルコシン酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤)などの2種以上の界面活性剤を含む。さらなる態様において、CPEは界面活性剤(例えば、ラウレス硫酸ナトリウム[ラウリルエーテル硫酸ナトリウム]などのアニオン性界面活性剤)および芳香族化合物(例えば、1-フェニルピペラジン)を含む。そのようなCPEの組み合わせは、低い皮膚刺激性で皮膚を通じた薬物の透過を大いに促進することができる。さらなる態様において、CPEは、有機スルホキシドならびに脂肪酸、脂肪酸エステルおよびアゾン関連化合物から選択される化合物を含む。
【0058】
熱も皮膚浸透を促進することができる。熱は、例えば、放射熱、伝導熱または対流熱の形態であることができる。放射熱は、例えば赤外線ランプによって提供することができる。
【0059】
局所用組成物は、経皮送達装置またはシステム(例えば、パッチ)の一部であるか、それを含むか、またはそれに一体化されるもしくはそれと一体化されることができる。さらに、局所用組成物は、本明細書において記載される物理的促進技術(例えば、イオン導入法)のうちのいずれかと組み合わせて適用することができる。
【0060】
皮膚/経皮用組成物のさらなる例は、例示の目的で以下に記載される。
【0061】
1. 透過促進剤を含む組成物
いくつかの態様において、局所用組成物は、トレプロスチニルまたはその塩および透過促進剤を含む。任意で、組成物は、追加の治療剤を含有してもよい。
【0062】
透過促進剤は、治療剤の皮膚透過性を向上させる。特定の態様において、透過促進剤は、N-ラウロイルサルコシン、オクチル硫酸ナトリウム、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸、オレイン酸グリセリル、もしくはラウリルスルホ酢酸ナトリウム、またはそれらの任意の組み合わせを含む。特定の態様において、組成物は、重量/体積(w/v)ベースで、約1~20%、1~15%、1~10%または1~5%の量の透過促進剤を含有する。治療剤が皮膚に浸透する能力をさらに増強するために、組成物は界面活性剤、アゾン(登録商標)もしくはアゾン様化合物、アルコール、脂肪酸、脂肪酸エステル、または脂肪族チオール、あるいはそれらの任意の組み合わせを含有することもできる。
【0063】
組成物は、1種または複数種のさらなる賦形剤をさらに含有することができる。適切な賦形剤は、非限定的に可溶化剤(例えば、C2~C8アルコール)、保湿剤または湿潤剤(例えば、グリセロール[グリセリン]、プロピレングリコール、アミノ酸およびその誘導体、ポリアミノ酸およびその誘導体、ピロリドンカルボン酸ならびにその塩および誘導体)、界面活性剤(例えば、ラウレス硫酸ナトリウムおよびソルビタンモノラウレート)、乳化剤(例えば、セチルアルコールおよびステアリルアルコール)、増粘剤(例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、およびアクリルポリマー)、ならびに製剤基剤または担体(例えば、軟膏基剤としてのポリエチレングリコール)を含む。非限定的な例として、組成物の基剤または担体は、エタノール、プロピレングリコールおよびポリエチレングリコール(例えば、PEG 300)、ならびに任意で水性液体(例えば、等張リン酸緩衝生理食塩水)を含有することができる。
【0064】
局所用組成物は、乳濁液、クリーム、ローション、ゲル、軟膏、ペースト、ゼリー、フォーム、またはスプレーなどの、任意の適切な剤形を有することができる。いくつかの態様において、組成物は、約10~800 cm2、10~400 cm2、または10~200 cm2の表面積を覆うように皮膚に適用される。組成物は、治療薬を皮膚またはその下層組織に送達することができる。組成物はまた、例えば経皮パッチまたはマイクロニードルパッチとして、体循環への治療剤の経皮投与のために製剤化することができる。
【0065】
2. 透過促進剤および揮発性液体を含む組成物
さらなる態様において、局所用組成物は、トレプロスチニルまたはその塩、透過促進剤、および揮発性液体を含む。任意で組成物は追加の治療剤を含有してもよい。
【0066】
透過促進剤は、治療剤の皮膚透過性を向上させる。いくつかの態様において、透過促進剤は、アミノ安息香酸C8~C18アルキル(例えば、p-アミノ安息香酸C8~C18アルキル)、ジメチルアミノ安息香酸C8~C18アルキル(例えば、p-ジメチルアミノ安息香酸C8~C18アルキル)、C8~C18アルキルシンナメート、メトキシケイ皮酸C8~C18アルキル(例えば、p-メトキシケイ皮酸C8~C18アルキル)、およびサリチル酸C8~C18アルキルから選択される。特定の態様において、透過促進剤は、サリチル酸オクチル、p-ジメチルアミノ安息香酸オクチル、もしくはp-メトキシケイ皮酸オクチル、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0067】
揮発性液体は、任意の揮発性の皮膚寛容性の溶媒であることができる。特定の態様において、揮発性液体は、C2~C5アルコールまたはその水溶液、例えばエタノールもしくはイソプロパノールまたはその水溶液である。エアロゾル噴射剤(例えば、ジメチルエーテル)は揮発性液体と見なすことができる。いくつかの態様において、揮発性液体は、組成物の担体または媒体として機能する。
【0068】
組成物は任意で増粘剤を含有してもよい。増粘剤の非限定的な例としては、セルロース増粘剤(例えば、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、およびヒドロキシプロピルメチルセルロース)、ポビドン、ポリアクリル酸/ポリアクリレート(例えば、Carbopol(登録商標)ポリマー)、Sepigel(登録商標)(ポリアクリルアミド/イソパラフィン/ラウレス-7)、ならびにGantrez(登録商標)シリーズのポリメチルビニルエーテル/無水マレイン酸コポリマー(例えば、PMV/MAコポリマーのブチルエステルGantrez(登録商標) A-425)が挙げられる。
【0069】
いくつかの態様において、組成物は、重量ベースで、約0.1~5%、約0.5~5%、または約1~5%のトレプロスチニルまたはその塩、約1~20%、約1~15%、または約1~10%の透過促進剤、および約40~98%、約45~95%、約50~90%、または約60~80%の揮発性液体を含有する。さらなる態様において、組成物は、重量ベースで、約1~40%、約1~30%、約1~20%、もしくは約5~20%の水、または/および約0.1~15%、約0.5~10%、もしくは約1~5%の増粘剤を任意で含有してもよい。
【0070】
例示目的として、特定の態様において、局所スプレー組成物は、約0.1~5% w/vのトレプロスチニルまたはその塩、約2~10% w/vのサリチル酸オクチルまたはp-メトキシケイ皮酸オクチル、および担体としての約95%の水性エタノールを含有する。さらなる態様において、局所用ゲル組成物は、約0.1~5% w/vのトレプロスチニルまたはその塩、約1~10% w/vのサリチル酸オクチルまたはp-メトキシケイ皮酸オクチル、約0.5~5% w/vのCarbopol(登録商標)ポリアクリル酸、および担体としての約70%の水性エタノール、ならびに任意で約1~10% w/vの塩基性溶液(例えば、0.1 N NaOH)を含む。さらなる態様において、局所用ローション組成物は、約0.1~5% w/vのトレプロスチニルまたはその塩、約1~10% w/vのサリチル酸オクチルまたはp-メトキシケイ皮酸オクチル、約1~5% w/vのエチルセルロースまたはヒドロキシプロピルセルロース、および担体としての約90%の水性エタノールを含有する。
【0071】
組成物は、他の賦形剤、例えば配合剤(例えば、パラフィン油、シリコーン油、植物油、もしくはミリスチン酸イソプロピルなどの脂肪酸エステル)、希釈剤、共溶媒(例えば、アセトンもしくはジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル)、乳化剤、界面活性剤(例えば、エトキシル化脂肪アルコール、グリセロールモノステアレートもしくはリン酸エステル)、安定剤、抗酸化剤または保存料(例えば、ヒドロキシ安息香酸エステル)、あるいはそれらの任意の組み合わせをさらに含むことができる。例えば、共溶媒または/および界面活性剤を用いて、溶液または懸濁液中の治療剤を所望の濃度に維持することができる。
【0072】
局所用組成物は、クリーム、ローション、ゲル、軟膏、ムース、スプレーもしくはエアロゾルなどの任意の適切な剤形、または皮膚を通じた吸収により薬物を投与する任意の経皮装置(例えば、パッチ)を有することができる。いくつかの態様において、局所用組成物は、約10~800 cm2、10~400 cm2または10~200 cm2の表面積を覆うように皮膚に適用される。
【0073】
3. 透過促進剤および別の賦形剤を含む組成物
さらなる態様において、局所用組成物は、トレプロスチニルまたはその塩、透過促進剤、ならびに少なくとも1つの親油性溶媒、製剤基剤および増粘剤を含む。いくつかの態様において、組成物は親油性溶媒および製剤基剤を含有し、または同じ物質が親油性溶媒および製剤基剤の両方として機能することができる。さらなる態様において、組成物は親油性溶媒、製剤基剤および増粘剤を含有する。組成物は追加の治療剤を任意で含んでもよい。
【0074】
透過促進剤は、治療剤の皮膚透過性を向上させる。透過促進剤の非限定的な例としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)、デシルメチルスルホキシド、ラウロカプラム、ピロリドン(例えば、2-ピロリドンおよびN-メチル-2-ピロリジン)、界面活性剤、アルコール(例えば、オレイルアルコール)、ポリエチレングリコール(例えば、PEG 400)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、オレイン酸、ならびに脂肪酸エステル(例えば、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸メチル、グリセロールモノオレエート、およびプロピレングリコールモノオレエート)が挙げられる。
【0075】
親油性溶媒の非限定的な例としては、親油性アルコール(例えば、ヘキシレングリコール、オクチルドデカノール、オレイルアルコールおよびステアリルアルコール)、ポリエチレングリコール(例えば、PEG 100、PEG 300、PEG 400、およびPEG 3350)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリソルベート(例えば、Tween (登録商標) 20~80)、Labrasol(登録商標)、脂肪酸エステル(例えば、ミリスチン酸イソプロピルおよびアジピン酸ジイソプロピル)、セバシン酸ジエチル、プロピレングリコールモノカプリレート、プロピレングリコールラウレート、モノグリセリドおよびジグリセリド(例えば、Capmul(登録商標) MCM)、中鎖トリグリセリド、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、グリセリルモノカプリレート、グリセリルモノオレエート、グリセリルモノリノレート、グリセロールオレエート/プロピレングリコール、鉱油、ならびに植物油が挙げられる。
【0076】
親油性溶媒は、製剤基剤または担体としても機能しうる。例えば、ポリエチレングリコール(例えば、PEG 300、PEG 400およびPEG 3350などの、PEG 100からPEG 3500までの)は、親油性溶媒および製剤基剤として機能することができる。
【0077】
組成物はまた、親水性溶媒、例えばC1~C5アルコール(例えば、エタノール、イソプロパノール、グリセロール、プロピレングリコールおよび1,2-ペンタンジオール)または/ならびに水を含有することもできる。
【0078】
組成物は増粘剤を含有して組成物の粘性または/および物理的安定性を向上させることができる。増粘剤の例としては、非限定的にグリセロール、ステアリルアルコール、およびポリマー(例えば、ポリジメチルシロキサン[ジメチコン]およびCarbopol(登録商標)ポリマー)が挙げられる。
【0079】
いくつかの態様において、組成物は抗酸化剤をさらに含有する。抗酸化剤の非限定的な例としては、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、トコフェロール(例えば、ビタミンEおよびそのエステル)、フラボノイド、グルタチオン、アスコルビン酸およびそのエステル、DMSO、ならびにキレート化剤(例えば、EDTAおよびクエン酸)が挙げられる。
【0080】
特定の態様において、局所用組成物は、w/wベースで、約0.1~5%または約0.5~5%のトレプロスチニルまたはその塩、約2~30%または約5~20%の透過促進剤、製剤基剤としても機能しうる約20~80%または約30~70%の親油性溶媒、約0.1~10%または約1~7.5%の増粘剤、および約0.01~2%または約0.05~1%の抗酸化剤を含む。非限定的な例として、局所用組成物は、トレプロスチニルまたはその塩、親油性溶媒としてのPEG 400または/およびPEG 3350ならびに製剤基剤、透過促進剤としてのジエチレングリコールモノエチルエーテル、オレイルアルコールまたは/およびミリスチン酸イソプロピル、増粘剤としてのステアリルアルコール、ならびに抗酸化剤としてのBHTを含有することができる。
【0081】
局所用組成物は、クリーム、ローション、ゲル、軟膏、ゼリー、ペーストなどの任意の適切な剤形、または皮膚を通じた吸収により薬物を投与する任意の経皮装置(例えば、パッチ)を有することができる。
【0082】
B. 経皮薬物送達装置/システム
いくつかの態様において、トレプロスチニルまたはその塩および任意で追加の治療剤は、経皮薬物送達装置またはシステム(TDS)、例えば、経皮パッチ、マイクロニードルパッチ、またはイオン導入装置(例えば、イオン導入パッチ)によって投与される。TDSの利点は、実質的に一定の速度(実質的にゼロ次のキネティクス)での治療有効量の1種または複数種の薬物の体循環中への制御された、長期にわたる、継続的な送達;より均一な血中薬物濃度;使用の容易さ;および患者コンプライアンスの向上を含むことができる。TDSは、受動的に(化学的透過促進剤を用いてもしくは用いないで)または能動的に(例えば、イオン導入法もしくはマイクロニードルを用いて)薬物を経皮送達することができる。皮膚内への薬物の吸収および皮膚を介した薬物の拡散は、任意で芳香族化合物(例えば、1-フェニルピペラジン)、イオン導入法、非キャビテーション超音波、キャビテーション超音波、エレクトロポレーション、熱剥離、高周波、マイクロダーマブレーション、マイクロニードル、もしくは高圧、またはそれらの任意の組み合わせと組み合わせた、1種または複数種の化学的透過促進剤(例えば、界面活性剤[例えば、ラウレス硫酸ナトリウム])などの、皮膚透過性を向上させ、または/かつ皮膚内へのおよび皮膚を通じた薬物輸送のための追加の駆動力を提供する1種または複数種の化学的または/および物理的促進法の使用によって促進されることができる。そのような促進方法(例えば、化学的透過促進剤、イオン導入法、キャビテーション超音波、およびマイクロニードル)は、TDS(例えば、パッチ)に一体化されるかまたはそれと一体化されることができる。
【0083】
いくつかの態様において、トレプロスチニルまたはその塩および任意で追加の治療剤は、経皮パッチによって投与される。経皮パッチは、例えば、片側が不透過性の裏打ち層/フィルムで封入され、反対側が皮膚接触粘着剤層を有する薬物リザーバを含有することができる。裏打ち層は、パッチおよびその内容物を外部環境から保護し、任意の適切な材料(例えば、金属プラスチックラミネート)から構成されることができる。パッチは、保存中にパッチを保護するライナーを有することができ、ライナーはパッチを適用する直前に取り除かれる。治療剤は、液体ベースまたはゲルベースのリザーバ中に溶解、懸濁、または分散させることができ、これにより液体の化学物質透過促進剤(例えば、エタノール)の使用が可能になる。ゲルは、例えば、適切なポリマー材料(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース)から構成されることができる。いくつかの態様において、経皮パッチは、不透過性裏打ち層、液体ベースまたはゲルベースの薬物リザーバ、速度制限または速度制御拡散バリアとして機能することができる半透膜、および皮膚接触粘着剤層を含む。半透膜は、例えば、適切なポリマー材料(例えば、硝酸セルロースもしくは酢酸セルロース、ポリイソブテン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ酢酸ビニル、またはポリカーボネート)から構成されることができる。経皮パッチがイオン導入パッチであるいくつかの態様において、パッチは、治療剤と、任意で、疎水性治療剤の溶解を補助することができかつ化学的透過促進剤として機能することができるアルコール(例えば、エタノール)とを含む、緩衝化されていてもよい水溶液を含有する。
【0084】
あるいは、経皮パッチは、固体または半固体ポリマーマトリックス中に組み込まれたまたは分散された治療剤を有することができる。ポリマーマトリックス(例えば、エチレン-酢酸ビニル)は、ポリマーマトリックス中への、またはポリマーマトリックスからの薬剤の溶解または/および拡散を制御することによって治療剤の放出を制御することができ、マトリックス中に組み込まれている間の薬剤の安定性を向上させることができる。特定の態様において、経皮パッチは、不透過性裏打ち層/フィルム、薬物/ポリマーマトリックス、および皮膚接触粘着剤層を含む。
【0085】
他の態様において、経皮パッチは薬物含有粘着剤(drug-in-adhesive)パッチであり、これはマトリックス型パッチと見なすことができる。いくつかの態様において、経皮パッチは、不透過性裏打ち層/フィルムと、ポリマー粘着剤または粘性粘着剤中に治療剤を組み込んだ皮膚接触粘着剤層とを含む(単層薬物含有粘着剤パッチ)。パッチは、体温(約37℃)によって粘着剤層中の材料の液化、粘着剤層に埋め込まれた治療剤の溶解、および皮膚内への治療剤の拡散が誘導されるようにデザインされることができる。さらなる態様において、経皮パッチは、不透過性裏打ち層/フィルムと、治療剤を含有する上部粘着剤層と、半透膜と、治療剤を含有する皮膚接触粘着剤層とを含む(多層薬物含有粘着剤パッチ)。皮膚接触粘着剤層は治療剤の即時または初期放出用にデザインされているのに対し、第2の(上部)粘着剤層は半透膜を通した治療剤の制御放出用にデザインされている。
【0086】
1種または複数種の治療剤に加えて、経皮パッチは、1種または複数種の化学的透過促進剤(CPE、例えば、オレイン酸またはそのエステル)および任意で安定剤(例えば、抗酸化剤)および保存料などの、他の成分を含有することができる。さらに、経皮パッチは、エタノール、ジプロピレングリコール、オレイン酸もしくはそのエステル(例えば、オレイルオレエート)、またはトリアセチン、あるいはそれらの任意の組み合わせなどの、パッチ製剤中の薬物の可溶化を補助する、皮膚における薬物の溶解性を向上させる、もしくは皮膚を通じた薬物の拡散性を高める、またはそれらの任意の組み合わせを行う1種または複数種の補助剤を含有することができる。
【0087】
経皮パッチは、ヒートシール可能な構成要素を用いて作出することができる。あるいは、経皮パッチの構成要素は、粘着剤を用いて互いに粘着することができる。
【0088】
角質層に突き刺す非常に短い針を含むマイクロニードル装置(例えば、パッチ)も、最小侵襲的な方法でトレプロスチニルまたはその塩および任意で追加の治療剤を送達するために使用することができる。マイクロニードルは、非常に短く(例えば、長さが約10~200ミクロン、例えば約100ミクロン)、非常に狭い(例えば、幅が約10~50ミクロン)。マイクロニードルの長さに応じて、マイクロニードルは、角質層を通って表皮中(epidermis)へ、表皮を横切って、または/および表皮(superficial dermis)中へ貫通するようにデザインされることができる。皮膚への薬物の迅速な放出または制御された放出は、(例えば、浸漬コーティングにより)薬物でコーティングされたソリッドマイクロニードル;針マトリックス内に薬物を封入しておりかつ皮膚に溶解することができる水溶性ポリマーで作出されたソリッドマイクロニードル;またはマイクロチャネルを形成するソリッドマイクロニードルの皮膚への挿入と、それに続く薬物を送達する経皮パッチの適用とによって、達成することができる。あるいは、中空マイクロニードルは注射または注入によって皮膚内へと薬物を送達することができる。そのようなパッチは、マイクロフルイディクスと一体化されることができ、液体ベースの薬物リザーバを含有することができ、薬物の投与を制御するチップを含有することができる。
【0089】
TDS(パッチを含む)は、例えば約1週間以上までの制御された長期にわたる薬物放出を提供するようにデザインされることができる。WO 1993/003696ならびに米国特許第3,598,122号; 同第4,144,317号; 同第4,201,211号; 同第4,262,003号; および同第4,379,454号は、数時間から数日間までの範囲の長期間にわたって制御された量の薬物を送達することができる様々なTDS(パッチを含む)について記載している。そのようなシステムは、トレプロスチニルまたはその塩および任意で追加の治療剤の経皮送達に適合されることができる。
【0090】
TDS(例えば、経皮パッチ)は、治療される医学的病態の治療に適した任意の場所で対象の皮膚に適用することができる。TDSの適用のための身体的位置の非限定的な例としては、頭皮、額、首、胸、背中(例えば、上下の腰)、腋窩、腹部、臀部、陰嚢、上腕(例えば、外側上腕)、前腕(例えば、腹側および背側の前腕)、手(例えば、手のひらおよび手の甲)、大腿部(例えば、腹側、背側および外側の大腿部)、ふくらはぎ、足首(例えば、外側足首)、ならびに足(例えば、背側足および外側足ならびに足底アーチ)が挙げられる。経皮薬物送達の速度は、部分的には角質層の厚さが異なるために、体の部位によって異なりうる。いくつかの態様において、例えば肺高血圧症(例えばPAH)を治療するための血流への経皮薬物送達のために、対象の腰、胸、大腿部、臀部、腹部、上腕、および腋窩にTDS(例えば、経皮パッチ)が適用される。パッチをより確実に皮膚に付着させるために、パッチ適用部位は、好ましくは無毛である。TDSによって引き起こされうる任意の副作用(例えば、皮膚刺激)を予防または軽減するために、新しいまたは新鮮なTDS(例えば、経皮パッチ)の適用部位をローテーションするか、身体の適切な場所における新しい部位にすることができる。
【0091】
経皮薬物送達装置およびシステムのさらなる例は、例示の目的で以下に記載される。
【0092】
1. 透過促進剤を含むTDS
いくつかの態様において、TDSはトレプロスチニルまたはその塩および透過促進剤を含む。TDSは追加の治療剤を任意で含有してもよい。
【0093】
透過促進剤は、治療剤の皮膚透過性を向上させる。透過促進剤は、例えば、C8~C20もしくはC12~C18の脂肪アシル鎖長およびC1~C6もしくはC2~C4アルコール成分(例えば、イソプロパノール)を有する脂肪酸エステルであることができる。特定の態様において、透過促進剤は、ミリスチン酸イソプロピルまたはパルミチン酸イソプロピルを含む。いくつかの態様において、透過促進剤の量は、TDS(例えば、経皮パッチ)またはその一部分(例えば、薬物リザーバもしくは皮膚接触層)の約0.1~20重量%、約0.5~15重量%、約1~15重量%、約2~12重量%、または約4~10重量%である。
【0094】
いくつかの態様において、TDS(例えば、経皮パッチ)は、TDSの皮膚への接触を維持する粘着剤を含む。粘着剤の非限定的な例としては、アクリル/アクリレート(例えば、ポリアルキルアクリレートおよびDuro-Tak (登録商標)ポリアクリレートを含む、ポリアクリレート)、ポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、ポリシロキサン、ポリウレタン、可塑化ポリエーテルブロックアミドコポリマー、天然および合成ゴム、可塑化スチレン-ブタジエンゴムブロックコポリマー(例えば、Duro-Tak (登録商標)87-6173)、ならびにそれらの混合物が挙げられる。
【0095】
TDSは1種または複数種のさらなる賦形剤を含むことができる。さらなる賦形剤は、例えば、希釈剤、皮膚軟化剤、可塑剤、もしくは皮膚への刺激を軽減する薬剤、またはそれらの任意の組み合わせを含むことができる。
【0096】
特定の態様において、皮膚に適用する前のTDSは、水、テトラグリコール(グリコフロール)、または/および親水性有機溶媒(例えば、C1~C5アルコール)を実質的に含まない。
【0097】
TDSは、インタクトな無傷の皮膚を通して体循環中に治療剤を経皮投与することができる。
【0098】
いくつかの態様において、TDSは、皮膚への適用のための経皮パッチの形態である。特定の態様において、パッチは、支持体層に積層されたまたは他の方法で付着している、皮膚接触層を有する。皮膚接触層は、皮膚接触面を保護し、それが皮膚に適用されるまでそれを清潔に保つために、使用前に取り外すことが可能な剥離ライナーで覆うことができる。パッチの支持体層は、皮膚接触層のための支持体として、および皮膚接触層中の治療剤の環境への喪失を防ぐバリアとして作用する。支持体層の材料は、治療剤、透過促進剤、および粘着剤と相溶性であり、パッチの構成要素に対して最小限の透過性を有する。支持体層は、パッチの構成要素を紫外線への曝露による劣化から保護するために、不透明であることができる。支持体層はまた、粘着剤層に結合してそれを支持することができるが、それでもパッチを使用する対象の動きに適応するのに十分に柔軟である。支持体層の材料は、例えば、金属箔、金属化ポリホイル、あるいはポリマー(例えば、ポリエステル[例えば、ポリエステルテレフタレート]もしくはアルミニウム化ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン-メタクリル酸メチル ブロックコポリマー、ポリエーテルブロックアミドコポリマー、ポリウレタン、ポリ塩化ビニリデン、ナイロン、シリコーンエラストマー、ゴム系ポリイソブチレン、スチレン、またはスチレン-ブタジエンもしくはスチレン-イソプレンコポリマー)を含有する複合箔またはフィルムであることができる。剥離ライナーは、支持体層と同じ材料で作出することができ、または適切な剥離面でコーティングされたフィルムとすることができる。
【0099】
2. リザーバ型経皮パッチ
さらなる態様において、トレプロスチニルまたはその塩および任意で追加の治療剤は、リザーバ型経皮パッチ(RTP)から送達される。いくつかの態様において、RTPは、不透過性裏打ち層/フィルムと、液体ベースまたはゲルベースの薬物リザーバと、薬物放出を制御する半透膜または微多孔膜と、皮膚接触粘着剤層とを含む。RTPは一般に、パッチの皮膚接触面を覆い使用直前に除去される保護剥離ライナーを有する。薬物リザーバは任意で、1種または複数種の化学的透過促進剤(CPE)を含有してもよい。リザーバからの薬物放出速度は、例えば、ポリマー組成、半透膜の孔径および厚さ、ならびに液体ベースまたはゲルベースのリザーバ材料中の薬物の溶解度によって制御することができる。皮膚接触粘着剤層は、周縁部にあって半透膜を覆ってもしくは部分的に覆って(重なり合って)いなくてもよいし、または半透膜を覆ってもしくは部分的に覆っていてもよい。粘着剤層が半透膜を覆ってもしくは部分的に覆っている場合、パッチを皮膚に適用すると粘着剤層中の薬物が、皮膚結合部位を飽和させるプライミング用量の薬物として作用できるように、貯蔵中にリザーバ中の薬物は粘着剤層と平衡を保っていることができる。皮膚からパッチがはがれるのを防ぐために、任意で、別の保護粘着剤層(例えば、医療用/外科用テープまたはPatchProtect(商標)もしくはTegaderm(商標)包帯)をパッチ全体におよびパッチの端部を超えて適用してもよい。RTPから送達される薬物の量は、例えば、薬物リザーバ中の薬物の量、膜の透過性、および皮膚に適用されるパッチの面積に依存しうる。
【0100】
RTPの変化形は、液体ベースまたはゲルベースの薬物リザーバを覆う半透膜または微多孔膜を有するのではなく、むしろ別の種類の放出制限(例えば、速度制限)層(例えば、ポリマー層)または薬物リザーバを覆う皮膚接触粘着剤層を有する。液体ベースの薬物リザーバの内容物の漏出を防ぐために、薬物リザーバは粘性液体(例えば、エチレングリコールまたは/およびシリコーン流体)から構成されることができ、または/かつ粘性増強剤(例えば、ゴムまたは天然もしくは半合成セルロース)を含有することができる。
【0101】
いくつかの態様において、薬物リザーバは、1種または複数種の薬物が均一に分散されうるポリマー(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース)から構成されるゲルを含有する。他の態様において、薬物リザーバは、1種または複数種の薬物が溶解もしくは懸濁されうる粘性液体(例えば、エチレングリコールもしくは/およびシリコーン流体)、または/ならびに粘性増強剤を含有する。特定の態様において、半透膜または微多孔膜はポリマー(例えば、ポリエチレン)から構成される。米国特許第9,289,397号には、半透膜を構成することができるポリマーのリストが開示されている。いくつかの態様において、不透過性裏打ち層は、金属プラスチックラミネートまたは他の可撓性ポリマー(例えば、ポリエチレン)である。さらなる態様において、裏打ち層は閉塞性であり、これは皮膚の外層の水和を促進する。水和は、皮膚内への薬物の透過を促進することができる。特定の態様において、裏打ち層は金属化ポリマー(例えば、ポリエステル/エチレン-酢酸ビニル)から構成され、薬物リザーバゲルは、ポリマー(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース)から構成され、かつCPE(例えば、ミリスチン酸イソプロピル)と、薬物の可溶化を補助しかつCPEとしても機能しうるアルコール(例えば、エタノール)と、1種または複数種の薬物とを含有し、半透膜は、ポリマー(例えば、ポリエチレン)から構成される微多孔膜である。
【0102】
特定の態様において、RTPは
図1に示されている構造を有する。
図1のRTPは、以下の層を有する:
(1) 層1は、例えば、金属化ポリマー(例えば、ポリエステル/エチレン-酢酸ビニル)および任意で光不透過性の材料(例えば、インク)から構成される裏打ち層またはフィルムであり;
(2) 層2は、例えばポリマー(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース)から構成され、1種または複数種の薬物および任意でCPE(例えば、ミリスチン酸イソプロピル)または/ならびにCPEとしても機能しうるアルコール(例えば、エタノール)を含有する薬物リザーバゲルであり;
(3) 層3は、例えばポリマー(例えば、ポリエチレン)から構成される、半透性微多孔膜であり;
(4) 層4は、例えばアクリルから構成されることができる、周縁皮膚粘着域であり;
(5) 層5は、中央のゲルベースの薬物リザーバ(層2)を密封する、剥離ライナー(層6)に取り付けられておりかつ剥離ライナーと共に除去されるディスクであり; ならびに
(6) 層6は、例えばシリコーンコーティングポリエステルフィルムであることができる、剥離ライナーである。
図1のRTPは、ヒートシール可能な構成要素で作出することができる。例えば、ゲルベースの薬物リザーバは、裏打ち層と微多孔膜との間のヒートシールによってパッケージングすることができる。薬物リザーバと周縁皮膚粘着域とを保護する剥離ライナーは、RTPの適用の直前に剥がされることができる。
【0103】
他の態様において、RTPは以下を含む:
(1) 例えば着色ポリエステルおよびアルミニウムフィルムから構成される、裏打ち層;
(2) 1種または複数種の薬物と、例えば鉱油、ポリイソブチレン、およびコロイド状二酸化ケイ素とを含有する、薬物リザーバ;
(3) 例えばポリプロピレンから構成される、速度制御微多孔膜;
(4) 1種または複数種の薬物と、例えば鉱油、ポリイソブチレン、およびコロイド状二酸化ケイ素とを、皮膚のより迅速な薬物飽和のために任意で含有してもよい、皮膚粘着剤層; ならびに
(5) 皮膚粘着剤層を覆い、使用直前に除去される、例えばポリエステルから構成される、保護スリット剥離ライナー。
【0104】
いくつかの態様において、RTPは、揮発性溶媒、および任意で不揮発性溶媒中の1種または複数種の薬物の溶液を含む。液体ベースの薬物リザーバは、任意で、1種または複数種のCPE、例えば揮発性CPE(例えば、キャラウェイ油、カルダモン油、およびレモン油などの精油/揮発性油)を含有してもよい。薬物の蒸発送達は、例えば、約2日、約3日、もしくは約4日、またはそれより長い期間にわたって薬物を放出する薬物デポーを、皮膚内(例えば、角質層内)に形成することができる。薬物の蒸発送達を容易にするために、皮膚接触粘着剤層は周縁部にあってよく、使用される場合に半透膜を覆わなくてもよい。RTPが、液体ベースの薬物リザーバを覆う半透膜ではなく皮膚に接触する粘着剤層を有する場合、薬物リザーバは、薬物リザーバの内容物の漏出を防ぐために不揮発性または粘性の溶媒を含有することができる。
【0105】
米国特許第9,289,397号には、以下でさらに詳細に記載されるように、1つまたは複数のパッチ単位に分割可能であり、皮膚に適用されるパッチ単位の数に応じて送達される薬物の量を対象が調整することが可能である、リザーバ型経皮パッチが記載されている。
【0106】
3. マトリックス型経皮パッチ
他の態様において、トレプロスチニルまたはその塩および任意で追加の治療剤は、マトリックス型経皮パッチ(MTP)から送達される。いくつかの態様において、MTPは、不透過性裏打ち層/フィルムと、1種または複数種の薬物を含有するマトリックスと、任意で、薬物マトリックスとは異なる(例えば、薬物マトリックスを取り囲むまたはコーティングする)皮膚接触粘着剤層とを含む。あるいは、薬物マトリックスは、皮膚に粘着するようにデザインされることができる。皮膚からパッチがはがれるのを防ぐために、任意で、別の保護粘着剤層(例えば、医療用/外科用テープまたはPatchProtect(商標)もしくはTegaderm(商標)包帯)をパッチ全体におよびパッチの端部を超えて適用してもよい。MTPは一般に、パッチの皮膚接触面を覆い使用直前に除去される保護剥離ライナーを有する。いくつかの態様において、裏打ち層は閉塞性であり、これは皮膚の外層の水和を促進する。薬物マトリックスは、任意で、1種または複数種の化学的透過促進剤を含有してもよい。いくつかの態様において、マトリックスは、1種または複数種の薬物が実質的に均一に分散または含浸されており、そこから皮膚へと連続的に薬物が放出されうる、ポリマーマトリックスである。ポリマーマトリックスは、薬物の拡散を制御するようにデザインされることができる。薬物含有粘着剤パッチまたは他の種類のMTPのポリマーマトリックスからの薬物送達速度は、実質的に一定(実質的にゼロ次のキネティクス)であることができ、例えば薬物/ポリマーマトリックスの製剤形態および厚さによって、例えば、使用されるポリマーおよびその量によって、薬物の量および溶解度によって、ならびに使用される任意の他の賦形剤およびその量によって、制御されることができる。MTPから送達される薬物の量は、例えば、マトリックス中の薬物の量および皮膚に適用されるパッチの面積に依存しうる。RTPに対しての、MTP、特に薬物含有粘着剤パッチの利点には、例えば、厚さおよび重量の低減、より高い柔軟性、より良好な皮膚への適合性および粘着、より高い患者の快適さ、ならびに製造がより容易かつ低コストであること、が含まれうる。
【0107】
ポリマーマトリックスは、固体または半固体であることができ、親水性または/および疎水性/親油性ポリマーから構成されることができる。ポリマーは、直鎖状または架橋状であることができ、粘着性または非粘着性であることができる。ポリマーマトリックスを構成することができるポリマーの例としては、非限定的に、天然セルロースおよびセルロース誘導体(例えば、メチルセルロース、エチルセルロースおよびセルロースエステル)、ゴム、ゼラチン、ゼイン、ポリアクリル酸、ポリアクリレート、ポリメタクリル酸、ポリメタクリレート、ポリメタクリレート-コ-シロキサン(polymethacrylate-co-siloxane)、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール、エチレンビニルオキシエタノール、ポリビニルピロリドン、ポリアミド、ポリ尿素、天然および合成ゴム(例えば、ヒドリンゴム、ネオプレン、ニトリルゴム、およびシリコンゴム)、セラック、ワックス、ポリブタジエン、ポリエチレン、ポリイソブチレン、ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン-コ-プロピレン、ポリエチレン-コ-アクリル酸エチル、エチレン-酢酸ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル(例えば、ポリアクリル酸メチルおよびポリアクリル酸エチル)、ポリメタクリル酸メチル、ニトリル含有ポリマー、シリコーンベースのポリマー(例えば、ポリジメチルシロキサンおよびポリビニルシロキサン)、ならびにそれらのコポリマーおよび組み合わせが挙げられる。特定の態様において、ポリマーマトリックスは、直鎖または架橋アクリルポリマー(例えば、ポリアクリル酸、ポリアクリレートもしくはポリメタクリレート)、ポリイソブチレン、エチレン-酢酸ビニル、またはシリコーンポリマー(例えば、ポリジメチルシロキサンもしくはポリビニルシロキサン)、あるいはそれらの任意の組み合わせから構成される。必要に応じてポリマーの架橋を促進するために、ポリマーマトリックスは任意で架橋剤(例えば、テトラプロポキシシラン)を含有してもよい。さらに、ポリマーマトリックスは任意で可塑剤を含有してもよい。非限定的な例として、半固体の薬物細胞懸濁液(a semisolid suspension of drug cells)が、アクリルポリマー、シリコーン粘着剤、および1種または複数種の薬物を含むポリマーマトリックス中に形成されることができる。
【0108】
いくつかの態様において、MTPは、パッチからの1種または複数種の実質的に水溶性の薬物の制御放出または/および持続放出を提供することができる水膨潤性ポリマーマトリックスを含む。水膨潤性ポリマーマトリックスは、例えば、ヒドロゲルであることができる。特定の態様において、ポリマーマトリックスは、1種または複数種の多糖類{例えば、天然もしくは合成ガム(例えば、グアーガムもしくはトラガカント)または天然もしくは半合成セルロース(例えば、ヒプロメロース[ヒドロキシプロピルメチルセルロースもしくはHPMC]またはカルボキシメチルセルロース[CMC])}あるいは/および直鎖状であるかまたは架橋されていることができる1種または複数種の親水性合成ポリマー(例えば、ポリアクリル酸、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール、もしくはポリビニルピロリドン)を含むかまたはそれから構成される。薬物充填ポリマーマトリックスによる(例えば、皮膚からの)水の吸収はポリマーマトリックスの膨潤をもたらし、それによってマトリックスからの薬物の拡散が促進される。吸水および膨潤機構は、ポリマーマトリックスからの薬物の放出を制御する。薬物充填ポリマーマトリックスによる皮膚からの水の吸収を促進するために、ポリマーマトリックスは、単層薬物含有粘着剤パッチ(後述)における皮膚接触粘着剤層であることができ、またはパッチは、ポリマーマトリックスを取り囲みかつ覆わない皮膚接触粘着剤層を有することができる。
【0109】
米国特許第9,289,397号は、薬物透過性粘着剤のリストを開示している。いくつかの態様において、(パッチの製造において粘着剤層に薬物が充填されているか否かに関わらず)1種または複数種の薬物が拡散する粘着剤層または各粘着剤層は、感圧粘着剤(PSA)である。さらなる態様において、パッチの各粘着剤層はPSAである。PSAを構成することができるポリマーの例としては、非限定的に、ポリイソブチレン、ポリ酢酸ビニル、アクリルポリマー(例えば、シアノアクリレート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、およびそれらのエステル[例えば、ポリアクリル酸メチルおよびポリアクリル酸ブチル])、ヒドロゲル(例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリグルタミン酸、およびゼラチン)、シリコーンポリマー(例えば、ポリジメチルシロキサン、シリコーン-2675、およびシリコーン-2920)、天然および合成ゴム(例えば、ブチルゴム)、多糖類(例えば、キトサン、ペクチン、天然および合成ゴム[例えば、アルギン、グアーガム、カラヤゴム、およびトラガカント]、ならびに天然および半合成セルロース[例えば、デンプン、CMC、およびHPMC])、ポリペプチド(例えば、フィブリン)、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。特定の態様において、PSAは、ポリイソブチレン、アクリルポリマー(例えば、ポリアクリレート)またはシリコーンポリマー(例えば、シリコーン-2675もしくはシリコーン-2920)、あるいはそれらの任意の組み合わせから構成される。粘着剤層は任意で粘着付与剤(例えば、ロジンエステル)を含有してもよい。
【0110】
いくつかの態様において、MTPは、裏打ち層と、1種または複数種の薬物を含有するマトリックス(例えば、ポリマーマトリックス)と、薬物マトリックスを覆ってまたは部分的に覆っていない周縁皮膚接触粘着剤層とを含む。他の態様において、MTPは、裏打ち層と、1種または複数種の薬物を含有するマトリックス(例えば、ポリマーマトリックス)と、薬物マトリックスを覆ってまたは部分的に覆っている皮膚接触粘着剤層とを含む。
【0111】
特定の態様において、MTPは
図2に示されている構造を有する。
図2のMTPは以下の層を有する:
(1) 層1は、皮膚へのパッチの適用の直前に剥がされる、パッチを覆う保護剥離ライナーであり;
(2) 層2は、1種または複数種の薬物を含有する、粘着性ポリマーマトリックスであり;
(3) 層3は、層4の粘着性フィルムをポリマーマトリックスから分離する層であり;
(4) 層4は、重ね合わせ粘着性フィルムであり; および
(5) 層5は、裏打ち層である。
【0112】
さらなる態様において、MTPは、不透過性裏打ち層と、ポリマー性または粘性粘着剤中に1種または複数種の薬物が組み込まれた皮膚接触粘着剤層とを含む、単層薬物含有粘着剤(drug-in-adhesive: DIA)パッチである。単層DIAパッチは任意で、薬物を充填されていない周縁部の皮膚接触粘着剤層を有してもよい。いくつかの態様において、薬物を充填された皮膚接触粘着剤層(および任意の薬物を充填されていない周縁部の皮膚接触粘着剤層)の粘着剤は、感圧粘着剤(PSA)である。特定の態様において、PSAは、アクリルポリマー(例えば、ポリアクリレート)、ポリアルキレン(例えば、ポリイソブチレン)またはシリコーンベースのポリマー(例えば、シリコーン-2675もしくはシリコーン-2920)、あるいはそれらの任意の組み合わせから構成される。
【0113】
単層DIAパッチから送達される薬物の量は、粘着剤層を通じた薬物拡散により制御され、皮膚と接触しているパッチの表面積に正比例する。DIAパッチの粘着剤層は、皮膚に粘着することに加えて、薬物の送達速度を制御するようにデザインされることができる。薬物が完全に粘着剤に溶解している場合、DIAパッチからの薬物放出の速度は粘着剤中の薬物濃度に依存し(一次キネティクス)、薬物放出速度は、パッチが除去または交換される際に高い割合(例えば、約80%)の初期薬物充填物がパッチ内に残っていない限り、着用時間と共に減少しうる。他方、粘着剤中に懸濁された薬物の放出速度は、薬物がDIAパッチから放出され、皮膚内に吸収されるにつれて、さらに多くの懸濁薬物が粘着剤に溶解するので、着用時間を通して実質的に一定(実質的にゼロ次のキネティクス)であることができる。粘着剤のポリマーマトリックスはまた、使用されるポリマーおよびその量または比率、架橋ポリマーの使用、ならびにポリマーの粘性などの、薬物放出に対するバリアを提供するようにデザインされることもできる。
【0114】
薬物が粘着剤(例えば、シリコーン粘着剤)に不溶性である場合、DIAパッチからの薬物の持続的送達は、両親媒性溶媒の使用を通して達成することができる。両親媒性溶媒(例えば、エタノールまたは/および1-オクタノールもしくは2-オクタノールなどの、アルコール)中での薬物の溶解、さらには粘着剤マトリックス中での薬物充填溶媒の分散でさえも、マトリックス中で乳濁液を形成する可能性があり、最大約72時間以上の間、DIAパッチからの薬物の持続送達を提供することができる。体温(約37℃)によって粘着剤中の材料の液化、粘着剤中に埋め込まれた薬物の溶解、および皮膚内への薬物の拡散が誘導されるようにDIAパッチをデザインすることもできる。
【0115】
単層DIAパッチの変化形は速度制御粘着剤層を有する。いくつかの態様において、速度制御粘着剤層を有する単層DIAパッチは、不透過性裏打ち層、ポリマー性または粘性粘着剤(例えば、ポリアクリレートまたはポリイソブチレンなどのPSA)中に1種または複数種の薬物が組み込まれた粘着剤層、および薬物充填粘着剤層を覆ってもしくは部分的に覆っている皮膚接触速度制御粘着剤層を含む。薬物充填粘着剤層および速度制御粘着剤層は、同じかまたは異なるポリマー性または粘性粘着剤を含有することができる。薬物が充填されていない皮膚接触速度制御粘着剤層の透過性および厚さは、パッチからの薬物の拡散/放出を制御するように選択することができる。
【0116】
さらなる態様において、MTPは、複数の薬物充填粘着剤層を含む多層DIAパッチである。いくつかの態様において、多層DIAパッチは、不透過性裏打ち層と、それぞれが1種または複数種の薬物を充填した2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれより多くの粘着剤層とを含み、薬物の充填はDIA層からDIA層へ漸進的に(例えば、漸増的に)変化する。そのようなパッチは、多層性の薬物充填粘着剤層を横切る拡散経路に沿った薬物充填勾配を含むので、パッチは実質的に一定の速度(実質的にゼロ次のキネティクス)で薬物を送達することができる。そのようなパッチを、多層薬物勾配DIAパッチと呼ぶことができる。特定の態様において、粘着剤層が皮膚に近いほど、その粘着剤層中の薬物充填量は少ない。他の態様において、粘着剤層が皮膚に近いほど、その粘着剤層中の薬物充填量は多い。多層DIAパッチはまた、各粘着剤層において実質的に同様の薬物充填量を有することができる。薬物充填粘着剤層の厚さは、実質的に同様であってもよいし、(例えば、漸進的もしくは増加的に)変化してもよい。特定の態様において、薬物充填粘着剤層のそれぞれの厚さは実質的に同様である。粘着剤層は、同じかまたは異なるポリマー性または粘性粘着剤を含有することができる。特定の態様において、粘着剤層はそれぞれ同じ粘着剤を含有する。多層薬物勾配DIAパッチの変化形において、パッチは、速度制御粘着剤層を有する単層DIAパッチについて上述したものと同様に、薬物が充填されていない皮膚接触速度制御粘着剤層を有する。
【0117】
別の種類の多層DIAパッチは速度制御半透膜を含有する。いくつかの態様において、多層DIAパッチは、不透過性裏打ち層、1種または複数種の薬物を含有する上部粘着剤層、半透膜または微多孔膜、および薬物含有皮膚接触粘着剤層を含む。多層DIAパッチは、周縁部の薬物を充填されていない皮膚接触粘着剤層を有することができる。皮膚接触粘着剤層は、薬物の即時放出用または初期放出用にデザインされており、一方、第2の(上部)粘着剤層は、半透膜を通る薬物の制御放出用にデザインされている。米国特許第9,289,397号には、半透膜を構成することができるポリマーのリストが開示されている。上部粘着剤層および皮膚接触粘着剤層は、同じかまたは異なるポリマー性または粘性粘着剤を含有することができる。特定の態様において、上部粘着剤層および皮膚接触粘着剤層は同じ粘着剤を含有する。この種類の多層DIAパッチの変化形は、ポリマー層または粘着剤層などの2つの薬物充填粘着剤層の間に半透膜の代わりに別の種類の放出制限(例えば、速度制限)層を有する。この種類の多層DIAパッチの別の変化形は、2つの薬物充填粘着剤層の間に半透膜または他の放出制限層を有さない。
【0118】
別の種類のMTPは、RTPおよびMTPのハイブリッドである。いくつかの態様において、膜/マトリックスハイブリッドMTPは、不透過性裏打ち層、1種または複数種の薬物を含有するポリマーマトリックス、薬物放出を制御する半透膜または微多孔膜、および半透膜を取り囲むまたは覆うことができる皮膚接触粘着剤層を含む。ポリマーマトリックス(例えば、ポリイソブチレン)は粘着剤であっても粘着剤でなくてもよく、薬物の拡散も制御するようにデザインすることができる。
【0119】
さらなる種類のMTPは、マイクロリザーバMTPである。いくつかの態様において、マイクロリザーバMTPは、不透過性裏打ち層、複数の微小(microscopic)薬物リザーバ(薬物マイクロリザーバ)を含有するポリマーマトリックス、および薬物/ポリマーマトリックスを取り囲むまたは覆うことができる皮膚接触粘着剤層を含む。マイクロリザーバMTPは任意で、ポリマーマトリックスからの薬物放出を制御する半透膜または微多孔膜を有してもよい。いくつかの態様において、薬物マイクロリザーバは、水混和性薬物可溶化剤(例えば、ポリエチレングリコール)を含有する水溶液中に1種または複数種の薬物を懸濁することによって形成される。薬物懸濁液を親油性ポリマー中に(例えば、高剪断機械力により)均一に分散させて、数千の微小薬物リザーバを形成させる。その場でポリマー鎖を直ちに架橋させることにより分散液を迅速に安定化させて、粘着パッド上にマウントすることができる特定の面積および厚さの薬用ポリマーディスクを形成させる。他の態様において、薬物マイクロリザーバは、水混和性薬物可溶化剤(例えば、ポリエチレングリコール)を含有する水溶液中に1種または複数種の薬物を懸濁させ、粘性ポリマー(例えば、シリコーンエラストマー)中に分散剤(例えば、パルミチン酸イソプロピル)を用いて薬物を分散させることによって形成される。瞬間加熱下で射出成形により、薬物/ポリマー分散液を迅速に成形して、不透過性裏打ち層(例えば、金属プラスチックラミネート)上にその場で数千個の微小薬物リザーバを含有する薬用ポリマーディスクを形成させる。マイクロリザーバMTPからの薬物放出の速度は、ポリマーマトリックス中およびそれを通る、ならびに使用される場合には半透膜を通る薬物の溶解および拡散によって制御することができ、実質的に一定(実質的にゼロ次のキネティクス)であることができる。
【0120】
さらなる種類のMTPはポリマーでコーティングされた薬物微粒子を含有する。いくつかの態様において、そのようなMTPは、不透過性裏打ち層、複数のポリマーでコーティングされた薬物微粒子を含有するポリマーマトリックス、および任意で薬物/ポリマーマトリックスを取り囲むまたは覆うことができる皮膚接触粘着剤層を含む。あるいは、薬物/ポリマーマトリックスは皮膚接触粘着剤層であることができる。いくつかの態様において、1種または複数種の薬物を親水性ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール、ポリメタクリレートまたは天然もしくは半合成セルロース)でコーティングして、例えば、約1~200ミクロン(例えば、約1~100ミクロンもしくは100~200ミクロン)のコーティング厚を有する、ポリマーでコーティングされた薬物微粒子を形成させる。ポリマーでコーティングされた薬物微粒子は、例えば、ポリマーゲル化剤(例えば、ゼラチン)または/および吸水性ポリマー(例えば、上述の水膨潤性ポリマー)を含むかまたはそれから構成されるポリマーマトリックス中に分散される。ポリマーマトリックスによる(例えば、皮膚からの)水の吸収は、薬物微粒子のポリマーコーティングの溶解を促進し、その速度は、例えば、水溶性およびポリマーコーティングの厚さに依存しうる。ポリマーマトリックスによる水の吸収およびポリマーコーティングの溶解は、パッチからの薬物の制御放出および持続放出を提供する。ポリマーマトリックスによる皮膚からの水の吸収を促進するために、ポリマーマトリックスは単層DIAパッチにおける皮膚接触粘着剤層であることができ、またはパッチは、ポリマーマトリックスを取り囲み、ポリマーマトリックスを覆わない皮膚接触粘着剤層を有することができる。
【0121】
MTPから送達される薬物の量は、例えば、パッチに充填された薬物の量および皮膚に適用されたパッチの面積に依存しうる。それゆえ、例えば、薬物が送達される異なる皮膚接触表面域または/およびパッチに充填される異なる量の薬物を有する、同じ種類のMTPの複数のパッチから異なる用量の薬物を送達することができる。あるいは、切断されたパッチがより少量の薬物を送達するように、MTPを(例えば、ハサミで)より小片に切断することができる。MTPは、パッチを手で容易かつ正確に引き裂くことができるように、またはより低い用量もしくは特定の用量の薬物を送達する2つ以上のより小片にハサミで切断することができるように、境界を定めて製造することができる。同様に、MTPのストリップまたはロールは、患者が特定の用量の薬物の送達のために皮膚に適用するパッチのサイズを選択できるよう、容易に手で引き裂くことができるまたはハサミで切断されることができる異なる薬物用量のための境界領域を定めて製造することができる。より低用量または選択された用量の薬物の送達のためにより小片に切断することができるMTPの種類は、非限定的に、薬物が充填されていない皮膚接触速度制御粘着剤層を有しないまたは有する単層DIAパッチ、ならびに薬物充填ポリマーマトリックスおよび薬物充填ポリマーマトリックスを覆う皮膚接触粘着剤層を含むパッチを含む。
【0122】
米国特許第9,289,397号には、薬物投与量の用量設定/調整を可能にする経皮パッチが記載されている。親/母パッチは、パッチ単位の1つまたは複数の境界に沿って互いに接続されている複数のパッチ単位を含む。各パッチ単位は(例えば、全ての側面上でまたは全ての縁に沿って)境界線で取り囲まれ、1つまたは複数の境界線に沿った1つまたは複数の分離線(例えば、裏打ち層のミシン目線または脆弱線)により定義され、不透過性裏打ち層および薬物層を含む。各パッチ単位の境界は任意で皮膚接触粘着剤層を有してもよい。分離線は、例えば、互いに平行または/および垂直にすることができ、規則的な間隔で離間させることができる。親パッチ、または複数のパッチ単位は、1つまたは複数の分離線に沿って手で引き裂くことまたはハサミで切断することなどによって、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれより多くの別々のパッチ単位に分割可能である。対象に送達される薬物の量は、皮膚に適用されたパッチ単位の数に比例し、したがって処置する医師の指示の下で対象により用量設定可能/調整可能である。例えば、各パッチ単位が一定期間にわたって1日当たり約0.5 mgの薬物を送達するようにデザインされているなら、1つ、2つ、3つ、4つ、または5つのパッチ単位の皮膚への適用は、その期間にわたって1日あたり、それぞれ、約0.5、1、1.5、2、または2.5 mgの薬物を送達するであろう。親パッチは、例えば、1つ、2つ、もしくはそれより多くの行のパッチ単位を含むことができ、または2×2形式(2行2列のパッチ単位)であることができる。米国特許第9,289,397号の
図1、2、および3a~3dは、投与量の用量設定可能な経皮パッチの態様を示す。投与量の用量設定可能な経皮パッチは、マトリックス型経皮パッチまたはリザーバ型経皮パッチであることができる。
【0123】
4. 他のマトリックス含有経皮放出システム
さらなる態様において、トレプロスチニルまたはその塩および任意で追加の治療剤は、マトリックス材料中に含まれるかまたは分散される。マトリックス材料は、ポリマー(例えば、エチレン-酢酸ビニル)を含むことができ、例えばリザーバ内への、またはリザーバからの治療剤の溶解または/および拡散を制御することによって治療剤の放出を制御することができ(薬物リザーバとして役立つようにマトリックス材料をデザインすることができ)、リザーバに含まれている間の治療剤の安定性を向上させることができる。特定の態様において、マトリックスは薬物リザーバに含まれるかまたは薬物リザーバとして機能する。マトリックス含有「放出システム」は、経皮パッチとして構成されることができ、リザーバから治療剤を放出するのを補助する水膨潤性材料(例えば、ヒドロゲル)などの、治療剤の放出を加速させることができる賦形剤を含有することができる。米国特許第4,144,317号および同第5,797,898号には、そのような放出システムの例が記載されている。
【0124】
放出システムは、血漿レベルの時間変動が望ましい場合には時間的に調節された放出プロファイル(例えば、パルス放出)を、または一定の血漿レベルが望ましい場合にはより連続的または一貫した放出プロファイルを提供することができる。パルス放出は、個々のリザーバからまたは複数のリザーバから達成することができる。例えば、各リザーバが単一のパルスを提供する場合、複数のリザーバの各々からの単一パルスの放出を時間的にずらすことによって複数のパルス(「パルス」放出)が達成される。あるいは、放出システムのいくつかの層および他の材料を単一のリザーバに組み込むことによって、単一のリザーバから複数のパルスを達成することができる。継続的な放出は、長期間にわたる治療剤の分解、溶解、または拡散を可能にする放出システムを組み込むことによって達成することができる。さらに、継続的な放出は、数パルスの治療薬を急速に連続して放出すること(「デジタル」放出)によって概算することができる。能動的放出システムは、米国特許第5,797,898号に記載されているように、単独でまたは受動的放出システムと組み合わせて使用することができる。
【0125】
VII. 追加の治療剤
トレプロスチニルまたはその塩に加えて、組成物(例えば、局所用組成物)、装置(例えば、パッチ)またはシステム(簡潔にするために本明細書ではまとめて経皮送達システム[TDS]と呼ぶ)は、1種または複数種の追加の治療剤を任意で含み、送達してもよい。あるいは、1種または複数種の追加の治療剤を、トレプロスチニルまたはその塩とは別に(その投与と同時に、その投与の前または後に)任意で投与してもよい。
【0126】
いくつかの態様において、1種または複数種の追加の治療剤は局所作用を有し、例えば、疼痛、皮膚刺激(例えば、紅斑)または浮腫などの、トレプロスチニルまたはその塩の皮膚投与または経皮投与に関連する任意の副作用を予防または軽減するために使用される。他の態様において、1種または複数種の追加の治療剤は全身作用を有し、例えば、肺高血圧症(PAHを含む)などの、トレプロスチニル応答性の医学的病態を治療するために使用される。
【0127】
いくつかの態様において、TDSは局所麻酔剤を含む。局所麻酔剤は、例えば、身体的促進技術の適用から生じうるあらゆる疼痛を予防するために使用することができる。局所麻酔剤の非限定的な例としては、アミド(例えば、アルチカイン、ブピバカイン、シンコカイン[ジブカイン]、エチドカイン、レボブピバカイン、リドカイン、メピバカイン、プリロカイン、ロピバカインおよびトリメカイン)、エステル(例えば、ベンゾカイン、クロロプロカイン、コカイン、シクロメチカイン、ジメトカイン[ラロカイン]、ピペロカイン、プロカイン[ノボカイン]、プロパラカイン、プロポキシカイン、ストバインおよびテトラカイン[アメソカイン])、エーテル(例えば、ポリドカノールおよびプラモカイン[プラモキシン])、天然由来の局所麻酔剤(例えば、コカイン、オイゲノール、メントール、サキシトキシン、ネオサキシトキシンおよびテトロドトキシン)、ならびにそれらの類似体、誘導体および塩が挙げられる。特定の態様において、局所麻酔剤はアルチカイン、ベンゾカイン、ブピバカイン、ジメトカイン、リドカイン、メピバカイン、プリロカイン、プロカイン、ロピバカイン、テトラカイン、トリメカインおよびそれらの組み合わせから選択される。
【0128】
局所麻酔剤の代わりにまたは局所麻酔剤に加えて、TDSは鎮痛剤を含むことができる。特定の態様において、鎮痛剤は局所作用を有する。鎮痛剤の非限定的な例としては、
アセトアミノフェン(パラセタモール);
酢酸誘導体(例えば、ジクロフェナク)、プロピオン酸誘導体(例えば、イブプロフェンおよびナプロキセン)、サリチレート(例えば、アスピリン)、および選択的COX-2阻害剤(例えば、セレコキシブおよびエトリコキシブ)などの、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID);
エタノールなどの、アルコール;
モルヒネ、ジヒドロモルフィン、コデイン、ヒドロコドン、オキシコドン、ペチジン、ブプレノルフィン、タペンタドールおよびトラマドールなどの、オピオイド;
NMDA受容体アンタゴニスト(例えば、デキストロメトルファンおよびケタミン)およびα-(例えば、α2-)アドレナリン受容体アゴニスト(例えば、クロニジン)などの、向精神性を有しうる鎮痛剤;
三環系抗うつ薬(例えば、アミトリプチリン、アミトリプチリンオキシド、アモキサピン、クロミプラミン、ドスレピン[ドチエピン]、ドキセピンおよびメリトラセン)およびセロトニン-ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(例えば、ビシファジン、デュロキセチン、ミルナシプラン、レボミルナシプラン、シブトラミン、トラマドール、タペンタドール、ベンラファキシン、デスベンラファキシンおよびSEP-227162)などの、抗うつ薬;
抗けいれん薬(例えば、カルバマゼピン、ガバペンチン、プレガバリン、およびバルプロ酸ならびにそれらの塩[例えば、バルプロ酸ナトリウム])、電位依存性ナトリウムチャネル阻害薬(例えば、フナピド、メキシレチン、ネホパム、オルフェナドリンおよびラキサトリジン(raxatrigine))、および神経カリウムチャネル開口薬(例えば、フルピルチン)などの、他の非定型鎮痛剤; ならびに
それらの類似体、誘導体および塩が挙げられる。
【0129】
いくつかの態様において、TDSは局所麻酔剤または/および鎮痛剤、ならびに1種または複数種の化学的透過促進剤(CPE)を含む。特定の態様において、1種または複数種のCPEは、N-ラウロイルサルコシン、ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸およびオレイン酸グリセリルから選択される。
【0130】
さらなる態様において、TDSは抗炎症剤を含み、それはまた鎮痛作用を有しても有しなくてもよい。特定の態様において、抗炎症剤は局所作用を有する。抗炎症剤は、例えば、任意の皮膚刺激(例えば、炎症過程の結果でありうる紅斑)または/およびトレプロスチニルもしくはその塩の皮膚投与もしくは経皮投与に関連する任意の疼痛を軽減するために使用することができる。抗炎症剤(例えば、コルチコステロイド/グルココルチコイドまたはH1抗ヒスタミン薬)もまた、経皮パッチの粘着剤によって引き起こされうる任意のアレルギー性皮膚反応または皮膚刺激を軽減するために使用することができる。
【0131】
いくつかの態様において、抗炎症剤は非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)である。NSAIDの例としては、非限定的に
アセクロフェナク、ブロムフェナク、ジクロフェナク、エトドラク、インドメタシン、ケトロラク、ナブメトン、スリンダク、スリンダク硫化物、スリンダクスルホンおよびトルメティンなどの、酢酸誘導体;
フルフェナム酸、メクロフェナム酸、メフェナム酸およびトルフェナム酸などの、アントラニル酸誘導体(フェナメート);
ドロキシカム、イソキシカム、ロルノキシカム、メロキシカム、ピロキシカムおよびテノキシカムなどの、エノール酸誘導体(オキシカム);
フェノプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、デキシブプロフェン、ケトプロフェン、デクスケトプロフェン、ロキソプロフェン、ナプロキセンおよびオキサプロジンなどの、プロピオン酸誘導体;
ジフルニサル、サリチル酸、アセチルサリチル酸(アスピリン)、トリサリチル酸コリンマグネシウム、およびサルサレートなどの、サリチレート;
アプリコキシブ、セレコキシブ、エトリコキシブ、フィロコキシブ、フルオロコキシブ(fluorocoxibs)(例えば、フルオロコキシブA-C)、ルミラコキシブ、マバコキシブ、パレコキシブ、ロフェコキシブ、チルマコキシブ(JTE-522)、バルデコキシブ、4-O-メチルホノキオール、ニフルミン酸、DuP-697、CG100649、GW406381、NS-398、SC-58125、ベンゾチエノ[3,2-d]ピリミジン-4-オンスルホンアミドチオ-誘導体、およびハマビシ(Tribulus terrestris)に由来するCOX-2阻害剤などの、COX-2選択的阻害剤;
モノテルペノイド(例えば、ユーカリプトールおよびフェノール[例えば、カルバクロール])、アニリノピリジンカルボン酸(例えば、クロニキシン)、スルホンアニリド(例えば、ニメスリド)、およびリポオキシゲナーゼの二重阻害剤(例えば、5-LOX)およびシクロオキシゲナーゼ(例えば、COX-2)(例えば、ケブラジン酸、リコフェロン、2-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-4-(N-メチルインドール-3-イル)チオフェン、およびジ-tert-ブチルフェノールに基づく化合物[例えば、DTPBHZ、DTPINH、DTPNHZおよびDTPSAL])などの、他の種類のNSAID; ならびに
それらの類似体、誘導体および塩が挙げられる。
【0132】
他の態様において、抗炎症剤はコルチコステロイド(例えば、グルココルチコイド)である。コルチコステロイドの非限定的な例としては、ヒドロコルチゾン型(例えば、コルチゾンおよびその誘導体[例えば、酢酸コルチゾン]、ヒドロコルチゾンおよびその誘導体[例えば、酢酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン-17-アセポン酸、ヒドロコルチゾン-17-ブテプレート、ヒドロコルチゾン-17-酪酸およびヒドロコルチゾン-17-吉草酸]、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロンおよびその誘導体[例えば、アセポン酸メチルプレドニゾロン]、プレドニゾン、ならびにチキソコルトールおよびその誘導体[例えば、ピバル酸チキソコルトール])、ベタメタゾン型(例えば、ベタメタゾンおよびその誘導体[例えば、安息香酸ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、ベタメタゾンリン酸ナトリウムおよび吉草酸ベタメタゾン]、ベタメタゾンおよびその誘導体[例えば、デキサメタゾンリン酸ナトリウム]、ならびにフルオコルトロンおよびその誘導体[例えば、カプリル酸フルオコルトロンおよびピバル酸フルオコルトロン])、ハロゲン化ステロイド(例えば、アルクロメタゾンおよびその誘導体[例えば、ジプロピオン酸アルクロメタゾン]、ベクロメタゾンおよびその誘導体[例えば、ジプロピオン酸ベクロメタゾン]、クロベタゾールおよびその誘導体[例えば、クロベタゾール-17-プロピオン酸]、クロベタゾンおよびその誘導体[例えば、クロベタゾン-17-酪酸]、デスオキシメタゾンおよびその誘導体[例えば、酢酸デスオキシメタゾン]、ジフロラゾンおよびその誘導体[例えば、二酢酸ジフロラゾン]、ジフルコルトロンおよびその誘導体[例えば、吉草酸ジフルコルトロン]、フルプレドニデンおよびその誘導体[例えば、酢酸フルプレドニデン]、フルチカゾンおよびその誘導体[例えば、プロピオン酸フルチカゾン]、ハロベタソール[ウロベタゾール]およびその誘導体[例えば、プロプリオン酸ハロベタソール(halobetasol proprionate)]、ハロメタゾンおよびその誘導体[例えば、酢酸ハロメタゾン]、モメタゾンおよびその誘導体[例えば、フロ酸モメタゾン]、ならびにトリアムシノロおよびその誘導体[例えば、二酢酸トリアムシノロ])、アセトニドおよび関連物質(例えば、アムシノニド、ブデソニド、シクレソニド、デソニド、フルニソリド、フルオシノニド、フルオシノロンアセトニド、フルランドレノリド[フルランドレノロンまたはフルドロキシコルチド]、ハルシノニドおよびトリアムシノロンアセトニド)、カルボネート(例えば、プレドニカルベート)、ならびにそれらの類似体、誘導体および塩が挙げられる。
【0133】
特定の態様において、コルチコステロイドは、ベタメタゾン、クロベタゾール、ハロベタゾール、ハロベタゾールプロピオネート、トリアムシノロンアセトニド、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0134】
いくつかの態様において、抗炎症剤は、適度または中度の効力のコルチコステロイド/グルココルチコイドであり、これは局所使用のために製剤化することができる。適度または中度の効力を有するコルチコステロイドの例としては、米国7群分類システムの下での第III、IVおよびV群コルチコステロイド、ならびに欧州4群分類システムの下での第II群コルチコステロイドが挙げられ、ここでコルチコステロイドの効力は、例えば、その濃度および局所用組成物の種類に依存しうる:
アムシノニド0.05~0.1%、ジプロピオン酸ベタメタゾン0.05%、吉草酸ベタメタゾン0.1%、酢酸ジフロラゾン0.05%、フルオシノニド0.05%、プロピオン酸フルチカゾン0.005%、ハロメタゾン0.05%、モメタゾンフランカルボン酸エステル0.1%、トリアムシノロンアセトニド0.5%、および二酢酸トリアムシノロン0.5%を含むがこれらに限定されない、米国第III群(高中-強度);
デスオキシメタゾン0.05%、フルオシノロンアセトニド0.025~0.2%、ピバル酸クロコルトロン0.1%、フルランドレノリド0.05%、酪酸ヒドロコルチゾン0.1%、酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾン(hydrocortisone probutate) 0.1%、吉草酸ヒドロコルチゾン0.2%、フロ酸モメタゾン0.1%、およびトリアムシノロンアセトニド0.1~0.5%を含むがこれらに限定されない、米国第IV群(中-強度);
ジプロピオン酸ベタメタゾン0.05%、吉草酸ベタメタゾン0.1%、デソニド0.05%、フルオシノロンアセトニド0.025/0.03%、フルオシノロンアセトニド0.01%、フルランドレノリド0.025~0.05%、プロピオン酸フルチカゾン0.05%、酪酸ヒドロコルチゾン0.1%、酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾン0.1%、吉草酸ヒドロコルチゾン0.2%、プレドニカルベート0.1%、およびトリアムシノロンアセトニド0.1%を含むがこれらに限定されない、米国第V群(低中-強度); ならびに
酪酸クロベタゾン0.05%およびトリアムシノロンアセトニド0.1~0.5%を含むがこれらに限定されない、欧州第II群(適度)。
【0135】
さらなる態様において、TDSは抗ヒスタミン薬を含む。特定の態様において、抗ヒスタミン薬は局所作用を有する。例えば皮膚に広がっている肥満細胞により、分泌されるヒスタミンは炎症を促進し、血管透過性を向上させ、それは毛細血管から組織への流体の漏出を引き起こす。抗ヒスタミン薬は、ヒスタミン誘発性の炎症、血管拡張および浮腫を抑制する。いくつかの態様において、抗ヒスタミン薬はヒスタミンH1受容体での作用を阻害する。H1抗ヒスタミン薬の例としては、非限定的にアクリバスチン、アンタゾリン、アステミゾール、アザタジン、アゼラスチン、ベポタスチン、ビラスチン、ブロモジフェンヒドラミン、ブロムフェニラミン、バクリジン、カルビノキサミン、セチリジン、クロルシクリジン、クロロジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン(クロルフェナミン)、クロルプロマジン、クロロピラミン、シドキセピン、クレマスチン、シクリジン、シプロヘプタジン、デスロラタジン、デキスブロムフェニラミン、デキスクロルフェニラミン、ジメンヒドリナート、ジメチンデン、ジフェンヒドラミン、ドキセピン、ドキシラミン、エバスチン、エンブラミン、エスミルタザピン[(S)-(+)-ミルタザピン]、フェキソフェナジン、ヒドロキシジン、ケトチフェン、レボカバスチン、レボセチリジン、ロラタジン、メクロジン(メクリジン)、メピラミン、ミルタザピン、ミゾラスチン、オロパタジン、オルフェナドリン、フェニンダミン、フェニラミン、フェニルトロキサミン、プロメタジン、ピリラミン、クエチアピン、キフェナジン、ルパタジン、テルフェナジン、トリメプラジン[アリメマジン]、トリペレンナミン、トリプロリジン、ならびにそれらの類似体、誘導体および塩が挙げられる。特定の態様において、抗ヒスタミン薬は第二世代または第三世代のH1抗ヒスタミン薬であり、中枢神経系のH1受容体およびコリン作動性受容体よりも末梢H1受容体に対してはるかに選択的である。第二世代および第三世代のH1抗ヒスタミン薬の非限定的な例としては、アクリバスチン、アステミゾール、アゼラスチン、ベポタスチン、ビラスチン、セチリジン、シドキセピン、レボセチリジン、エバスチン、フェキソフェナジン、レボカバスチン、ロラタジン、デスロラタジン、ミゾラスチン、オロパタジン、キフェナジン、ルパタジン、テルフェナジン、ならびにそれらの類似体、誘導体および塩が挙げられる。
【0136】
いくつかの態様において、TDSは抗炎症剤(例えば、NSAID、コルチコステロイドもしくはH1抗ヒスタミン薬、またはそれらの任意の組み合わせ)および1種または複数種のCPEを含む。特定の態様において、1種または複数種のCPEは、N-ラウロイルサルコシン、ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸およびオレイン酸グリセリルから選択される。
【0137】
さらなる態様において、TDSは、局所作用を有する血管収縮薬を含む。局所血管収縮は、毛細血管の拡張によって引き起こされうる紅斑を低減することができる。さらに、例えば局所麻酔剤との局所血管収縮剤の同時投与は、血管を収縮させることによって局所麻酔の持続時間を延ばすことができ、それによって長期間にわたって麻酔剤を安全に濃縮することができる。血管収縮薬の例としては、非限定的に
H1抗ヒスタミン薬などの、抗ヒスタミン薬;
置換フェネチルアミン(例えば、アンフェタミン、デキストロアンフェタミン、リスデキサンフェタミン、メタンフェタミン、デキストロメタンフェタミン、レボメタンフェタミン、メフェドロン、メチルフェニデート、デキサメチルフェニデート、エフェドリン、プソイドエフェドリン、フェニルプロパノールアミンおよびプロリンタン)、メタンフェタミン類似体(例えば、プロピルヘキセドリン)、アンパカイン(例えば、アンパレックスおよびCX7171)、ユーゲロイック(eugeroics)(例えば、アドラフィニル、アルモダフィニル、ヒドラフィニルおよびモダフィニル)、カフェイン、コカイン、ニコチンおよびメチルヘキサンアミン(ジメチルアミラミン)などの刺激薬;
α(例えば、α1または/およびα2)アドレナリン受容体アゴニスト(例えば、ナファゾリン、オキシメタゾリン、フェニレフリン、シネフリン、テトリゾリン[テトラヒドロゾリン]、トラマゾリおよびキシロメタゾリン)などの、充血除去剤; ならびに
それらの類似体、誘導体および塩が挙げられる。
【0138】
いくつかの態様において、TDSは局所血管収縮剤(例えば、H1抗ヒスタミン薬、刺激薬もしくは充血除去剤、またはそれらの任意の組み合わせ)および1種または複数種のCPEを含む。特定の態様において、1種または複数種のCPEは、N-ラウロイルサルコシン、ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸およびオレイン酸グリセリルから選択される。
【0139】
トレプロスチニルまたはその塩に加えて、TDSは、任意で1種または複数種の化学的透過促進剤との組み合わせで、任意の組み合わせの追加の治療剤(例えば、任意の組み合わせの局所麻酔剤、鎮痛剤、抗炎症剤および局所血管収縮剤)を含み、送達しうる。
【0140】
いくつかの態様において、トレプロスチニル含有TDS(例えば、経皮パッチ)からの送達の代わりに、またはそれからの送達に加えて、1種または複数種の追加の治療剤がTDSとは別に(その適用と同時に、その適用前または適用後に)投与される。いくつかの態様において、疼痛、皮膚刺激(例えば、紅斑)、アレルギー性皮膚反応または浮腫などの、TDSの適用に関連しうる任意の局所的な副作用を予防または軽減するために、トレプロスチニル含有TDSの適用部位またはその近傍に1種または複数種の追加の治療剤が局所投与される。そのような治療剤の例としては、非限定的に局所麻酔剤、鎮痛剤、抗炎症剤(コルチコステロイド/グルココルチコイド、NSAIDSおよびH1抗ヒスタミン薬を含む)、ならびに局所血管収縮剤が挙げられる。いくつかの態様において、トレプロスチニル含有TDSの適用部位またはその近傍で局所組成物を皮膚に適用することによって、1種または複数種の追加の治療剤が皮膚投与または経皮投与される。そのような局所用組成物は、例えば、クリーム、ローション、ゲル、軟膏、ゼリー、ペースト、塗布薬、フォームまたは皮膚スプレーであることができる。いくつかの態様において、1種もしくは複数種の追加の治療剤を含有する局所用組成物、または1種もしくは複数種の追加の治療剤をそれぞれが含有する2つ以上の局所用組成物が皮膚に適用され、次にトレプロスチニル含有TDSが1つもしくは複数の局所用組成物の適用部位に(例えば、その上にもしくは全面に)またはその近傍に適用される。特定の態様において、適度または中度の効力のコルチコステロイド/グルココルチコイド(例えば、0.1%トリアムシノロンアセトニド)を含有する局所用組成物(例えば、クリーム)が皮膚に適用され、次にトレプロスチニル含有TDSが局所用組成物の適用部位に(例えば、その上にもしくは全面に)またはその近傍に適用される。
【0141】
さらなる態様において、トレプロスチニル含有TDSとは別に投与される1種または複数種の追加の治療剤が全身投与される。いくつかの態様において、1種または複数種の追加の治療剤は、肺高血圧症(PAHを含む)などの、トレプロスチニル応答性の医学的病態を治療するために使用される。そのような治療剤の例としては、非限定的に血管作用剤(血管拡張剤を含む)、利尿剤、抗凝固剤および強心配糖体(以下に記載)が挙げられる。トレプロスチニル含有TDSの適用に関連する任意の局所的な副作用を予防または軽減するために使用することができる特定の治療剤(例えば、鎮痛剤ならびにNSAIDSおよびH1抗ヒスタミン薬などの抗炎症剤)も全身投与することができる。全身投与の経路は、非限定的に経口および非経口(例えば、静脈内、筋肉内、皮下、鼻腔内[例えば、鼻内スプレーまたは点滴薬による]および肺内[例えば、経口または鼻内吸入による])を含む。
【0142】
VIII. トレプロスチニルの治療的使用
トレプロスチニル、プロスタサイクリン(プロスタグランジンI2)類似体は、種々のプロスタサイクリン様効果を有する。例えば、トレプロスチニルは血管拡張を促進し、血小板活性化および凝集を阻害し、血栓形成を阻害し、血栓溶解を刺激し、アテローム発生を阻害し、細胞増殖を阻害し、血管形成を誘発し、内皮細胞膜リモデリングを促進し、炎症を軽減し、ならびに細胞保護を提供しうる。トレプロスチニルおよびその塩は、非限定的に肺高血圧症、門脈肺高血圧症、肺線維症、間質性肺疾患、虚血性疾患(例えば、心筋虚血、虚血性脳卒中、末梢血管疾患[末梢動脈疾患を含む]、手足の虚血、レイノー現象[レイノー病およびレイノー症候群を含む]、強皮症[全身性強皮症を含む]および腎不全)、虚血性潰瘍(例えば、デジタル潰瘍)、心血管疾患(例えば、冠動脈疾患)、心不全(例えば、うっ血性心不全)、抗凝固療法を必要とする病態(例えば、心筋梗塞後および心臓手術後)、アテローム発生(例えば、アテローム性動脈硬化症)、血栓性微小血管症、静脈閉塞(例えば、網膜中心静脈閉塞症)、高血圧症(例えば、妊娠高血圧腎症)、糖尿病血管障害、体外循環、炎症性疾患(例えば、慢性閉塞性肺疾患[COPD]および乾癬)、生殖および分娩、無秩序な細胞増殖の病態(例えば、腫瘍およびがん)、細胞/組織保存、ならびにプロスタサイクリンまたはトレプロスチニル処置が利益を提供しうる他の治療領域を含む、多種多様の病態を治療するために皮膚投与または経皮投与することができる。
【0143】
いくつかの態様において、トレプロスチニルまたはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、包接化合物、もしくは多形体は、肺高血圧症、肺線維症、間質性肺疾患、ぜんそく、うっ血性心不全、末梢血管疾患、重症間欠性跛行、アテローム発生(例えば、アテローム性動脈硬化症)、虚血性病変(例えば、バージャー病、レイノー現象、レイノー病、強皮症および全身性硬化症によって引き起こされるものなどの、皮膚の末梢虚血性病変)、重症虚血肢、虚血性潰瘍(例えば、デジタル潰瘍)、皮膚潰瘍、神経障害性足潰瘍(例えば、糖尿病神経障害性足潰瘍(糖尿病性神経障害性足潰瘍))、腎機能不全および腎不全、免疫抑制、増殖性疾患(例えば、頭頸部、脳、肺、肝臓、腎臓、膵臓、消化管[例えば、結腸]、前立腺および乳房のものなどの、腫瘍およびがん)、ならびに前記病態の各々に関連する疼痛から選択される、プロスタサイクリンまたはトレプロスチニル応答性の病態を治療するために皮膚投与または経皮投与される。
【0144】
トレプロスチニルまたはその塩は、プロスタサイクリンまたはトレプロスチニルによる処置に応答する任意の症状を治療するために追加の治療剤との組み合わせで使用することができる。非限定的な例として、血管(例えば、心血管)障害を治療するために、トレプロスチニルまたはその塩は、抗血小板薬、ホスホジエステラーゼ阻害剤、カルシウムチャネル遮断薬もしくは内皮アンタゴニスト、またはそれらの任意の組み合わせなどの、血管(例えば、心血管)治療薬と組み合わせて使用することができる。
【0145】
いくつかの態様において、トレプロスチニルまたはその塩は、肺高血圧症を治療するために皮膚投与または経皮投与される。任意で、肺高血圧症を治療するために、追加の治療剤(例えば、血管作用剤、利尿剤、抗凝固剤、もしくは強心配糖体、またはそれらの任意の組み合わせ)を投与してもよい。特定の態様において、肺高血圧症は肺動脈高血圧症である。
【0146】
肺高血圧症とは、肺動脈、肺静脈、および肺毛細血管を含む肺血管系の血圧上昇のことである。したがって、肺高血圧症は肺動脈高血圧症(PAH)および肺静脈性肺高血圧症(PVH)(例えば、うっ血性心不全)を包含する。より広範には、肺高血圧症は以下を包含する:
WHO第I群 - 特発性PAH、遺伝性PAH(例えば、BMPR2、ALK1、およびエンドグリン[遺伝性出血性末梢血管拡張症ありまたはなし])、薬物誘発性および毒素誘発性PAH、様々な病態(例えば、結合組織病、HIV感染症、門脈圧亢進症、先天性心疾患、住血吸虫症、および慢性溶血性貧血[例えば鎌状赤血球症])に関連するPAH、新生児遷延性肺高血圧症、肺静脈閉塞症(PVOD)、ならびに肺毛細血管腫症(PCH)を含む、肺動脈高血圧症;
WHO第II群 - 収縮不全、拡張障害、および心臓弁膜症を含む、左心疾患による肺高血圧症;
WHO第III群 - 慢性閉塞性肺疾患(COPD)、間質性肺疾患、拘束性と閉塞性との混合障害を伴う他の肺疾患、睡眠呼吸障害、肺胞低換気障害、高地への慢性曝露、および発育異常
を含む、肺疾患または/および低酸素症による肺高血圧症;
WHO第IV群 - 慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH); ならびに
WHO第V群 - 血液疾患(例えば、骨髄増殖性疾患および脾摘出)、全身性疾患(例えば、サルコイドーシス、肺ランゲルハンス細胞組織球症、リンパ脈管筋腫症、神経線維腫症、および血管炎)、代謝障害(例えば、糖原病、ゴーシェ病、および甲状腺疾患)、ならびに他の原因(例えば、腫瘍閉塞、線維性縦隔炎、および透析期慢性腎不全)を含む、不明の多因子機序を伴う肺高血圧症。
【0147】
例えば、肺高血圧症を治療するためのトレプロスチニルまたはその塩の治療有効量および投与頻度、ならびにトレプロスチニルまたはその塩による処置の長さは、肺高血圧症の種類、病態の重症度、対象の年齢、体重、身体全体の健康、性別および食事、ならびに処置に対する対象の応答を含む、様々な要因に依存しうるものであり、処置医が判定することができる。いくつかの態様において、1日当たりのトレプロスチニルまたはその塩の有効用量は、約0.1~約100 mg、約0.1~約50 mg、約0.5~約50 mg、約0.5~約25 mg、約0.5~約10 mg、約1~約10 mg、約1~約5 mg、もしくは約5~約10 mg、または処置医が適切と見なす用量であり、これを単回投与または分割投与することができる。特定の態様において、1日当たりのトレプロスチニルまたはその塩の有効用量は、約0.1~約10 mg、約0.1~約5 mg、約0.5~約5 mg、または約1~約5 mgである。さらなる態様において、1日当たりのトレプロスチニルまたはその塩の有効用量は、約0.05もしくは約0.1 mg~約0.5 mg、約0.5~約1 mg、約1~約3 mg、もしくは約3~約6 mgである。さらなる態様において、1日当たりのトレプロスチニルまたはその塩の有効用量は、約0.001~約2 mg/kg体重、約0.005~約1 mg/kg体重、約0.01~約0.5 mg/kg体重、もしくは約0.01~約0.1 mg/kg体重、または処置医が適切と見なす用量である。
【0148】
いくつかの態様において、トレプロスチニルまたはその塩は、毎日(1日に1回、2回、3回、4回、もしくはそれ以上を含む)、2日毎に、3日毎に、毎週、2週毎に、3週毎に、毎月、6週毎に、2ヶ月毎に、または3ヶ月毎に、あるいは処置医が適切と見なす頻度で、単回投与または複数回投与される。特定の態様において、トレプロスチニルまたはその塩は、毎日投与される。さらなる態様において、トレプロスチニルまたはその塩は、少なくとも約1週間、2週間、または3週間にわたって投与される。他の態様において、トレプロスチニルまたはその塩は長期投与レジメンに基づいて投与される。特定の態様において、治療有効量のトレプロスチニルまたはその塩が、少なくとも約1ヶ月間(4週間)、6週間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、1年間、1.5年間、2年間、3年間、またはそれより長い期間にわたって投与される。
【0149】
いくつかの態様において、トレプロスチニルまたはその塩は、PAHを治療するために皮膚投与または経皮投与される。特定の態様において、追加の治療剤は、PAHを治療するためにトレプロスチニルまたはその塩と組み合わせて投与される。追加の治療剤は、トレプロスチニルまたはその塩の投与と同時に、またはそれに連続して(その前もしくは後に)投与することができる。トレプロスチニルまたはその塩と同時投与される場合、追加の治療剤はトレプロスチニルまたはその塩と同じ組成物に含有されていてもよく、別々の組成物に含有されていてもよい。
【0150】
特定の態様において、肺高血圧症(例えば、PAH)を治療するための追加の治療剤は以下から選択される:
非限定的にプロスタグランジンおよびプロスタノイド(例えば、プロスタサイクリン[プロスタグランジンI2]ならびにその類似体、例えばベラプロスト、シカプロスト、およびイロプロスト)、他のプロスタサイクリン受容体アゴニスト(例えば、セレキシパグおよびACT-333679[MRE-269])、カルシウムチャネル遮断薬(CCB)(例えば、ジヒドロピリジン型CCB[例えばアムロジピンおよびニフェジピン]ならびに非ジヒドロピリジンCCB[例えばジルチアゼム])、エンドセリン受容体(例えば、ETAまたは/およびETB)アンタゴニスト(例えば、アンブリセンタン、ボセンタン、シタキセンタン(sitaxentan)、およびアクテリオン(Actelion)-1)、ホスホジエステラーゼ5型(PDE5)阻害剤(例えば、アバナフィル、ベンザミデナフィル(benzamidenafil)、ジナフィル(dynafil)、ロデナフィル(lodenafil)、ミロデナフィル、シルデナフィル、タダラフィル、ウデナフィル、バルデナフィル、ジピリダモール、イカリイン、パパベリン、プロペントフィリン、ザプリナスト、およびT-1032)、可溶性グアニル酸シクラーゼ活性化因子(例えば、シナシグアトおよびリオシグアト)、ならびにそれらの類似体、誘導体、および塩を含む、血管作動剤(血管拡張剤を含む);
非限定的にチアジド利尿剤(例えば、ベンドロフルメチアジド、クロロチアジド、エピチジド、およびヒドロクロロチアジド)、チアジド様利尿剤(例えば、クロルタリドン、インダパミド、およびメトラゾン)、ならびにそれらの類似体、誘導体、および塩を含む、利尿剤;
非限定的にビタミンKアンタゴニスト(例えば、アセノクマロール、アトロメンチン、クマリン、フェニンジオン、フェンプロクモン、およびワルファリン)、直接トロンビン阻害剤(例えば、アルガトロバン、ダビガトラン、ヒルジン、レピルジン、およびビバリルジン)、直接第Xa因子阻害剤(例えば、アピキサバン、ベトリキサバン、ダレキサバン(darexaban)、エドキサバン、エリバキサバン(eribaxaban)、レタキサバン(letaxaban)、およびリバーロキサバン)、ヘパリンおよびその誘導体(例えば、未分画ヘパリン、低分子ヘパリン、フォンダパリヌクス、およびイドラパリヌクス)、その他(例えば、アンチトロンビン、バトロキソビン、およびヘメンチン(hementin))、ならびにそれらの類似体、誘導体、断片、および塩を含む、抗凝固剤; ならびに
非限定的に強心配糖体(例えば、ジゴキシン、アセチルジゴキシン、ジゴキシゲニンおよびジギトキシン)ならびに酸素治療を含む、他の種類の治療剤。
【0151】
IX. 代表的な態様
本開示の以下の態様は、例としてのみ提供される:
1. トレプロスチニルまたはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、包接化合物、もしくは多形体、および1種または複数種の薬学的に許容される賦形剤または担体を含み、トレプロスチニルまたはその塩を対象に経皮送達するように製剤化または構成されている、経皮薬物送達システム(TDS)。
2. 皮膚の表面への適用のために製剤化または構成されている、態様1のTDS。
3. 全身分布のために血液中にトレプロスチニルまたはその塩を送達するように製剤化または構成されている、態様1または2のTDS。
4. 皮膚への適用のために製剤化された局所用組成物(例えば、油、スプレー、ゲル、ゼリー、リニメント、ローション、クリーム、フォーム、軟膏、ペースト、または包帯)である、態様1~3のいずれかのTDS。
5. 局所用組成物が、1種または複数種の化学的透過促進剤(例えば、界面活性剤[例えば、ラウレス硫酸ナトリウム]もしくは/および芳香族化合物[例えば、1-フェニルピペラジン]、または脂肪酸エステル[例えば、ミリスチン酸イソプロピル]もしくは/およびアルコール[例えば、エタノール])をさらに含む、態様4のTDS。
6. 経皮パッチである、態様1~3のいずれかのTDS。
7. 経皮パッチが、液体ベースまたはゲルベースの薬物リザーバと、任意で半透膜とを含むリザーバ型経皮パッチ(RTP)である、態様6のTDS。
8. 経皮パッチが、薬物/ポリマーマトリックスを含むマトリックス型経皮パッチ(MTP)である、態様6のTDS。
9. 薬物/ポリマーマトリックスが、粘着剤層中にないか、または粘着剤層(例えば、皮膚接触粘着剤層)から分離している、態様8のTDS。
10. 薬物/ポリマーマトリックスが、複数の微小薬物リザーバ(薬物マイクロリザーバ)を含む、態様9のTDS。
11. 薬物/ポリマーマトリックスが、複数の、ポリマーでコーティングされた薬物微粒子を含む、態様9のTDS。
12. 経皮パッチが、半透膜をさらに含む、態様9~11のいずれかのTDS。
13. 薬物/ポリマーマトリックスが、粘着剤層の一部分(例えば、単層薬物含有粘着剤[DIA]パッチにおける皮膚接触粘着剤層の一部分;薬物が充填されていない皮膚接触速度制御粘着剤層を有するパッチにおける薬物充填粘着剤層の一部分;多層薬物勾配DIAパッチにおける各薬物充填粘着剤層の一部分;または多層DIAパッチにおける皮膚接触粘着剤層の一部分および第2の粘着剤層の一部分であって、当該2つの薬物充填粘着剤層の間に半透膜もしくは他の放出制限層を有するもしくは有しない、部分)である、態様8のTDS。
14. 経皮パッチが、ソリッドマイクロニードルまたは中空マイクロニードルを含む、態様6のTDS。
15. ソリッドマイクロニードルが、トレプロスチニルもしくはその塩でコーティングされているか、またはトレプロスチニルもしくはその塩を含有する生体吸収性ポリマー材料から構成される、態様14のTDS。
16. 中空マイクロニードルを含む経皮パッチが、液体ベースの薬物リザーバをさらに含む、態様14のTDS。
17. 経皮パッチが、1種または複数種の化学的透過促進剤(例えば、脂肪酸エステル[例えば、ミリスチン酸イソプロピル]もしくは/およびアルコール[例えば、エタノール]、または界面活性剤[例えば、ラウレス硫酸ナトリウム]もしくは/および芳香族化合物[例えば、1-フェニルピペラジン])をさらに含む、態様6~16のいずれかのTDS。
18. 経皮パッチが、治療有効量のトレプロスチニルまたはその塩を最大約72時間(3日間)または1週間(7日間)にわたって送達する、態様6~17のいずれかのTDS。
19. 経皮パッチが、1日当たり約0.05もしくは約0.1 mg~約0.5 mg、約0.5~約1 mg、または約1~約5 mgの治療有効量のトレプロスチニルまたはその塩を送達する、態様6~18のいずれかのTDS。
20. 経皮パッチが、単一の経皮パッチであるか、または(例えば、分離線に沿って)複数の別々のパッチ単位に分割可能な親/母パッチの複数のパッチ単位の中の1つのパッチ単位である、態様6~19のいずれかのTDS。
21. 皮膚内へのまたは/および皮膚を通じた薬物輸送のための追加の駆動力を提供する化学的または物理的促進技術(例えば、イオン導入法)と一体化されている、前記態様のいずれかのTDS。
22. 皮膚透過性を向上させる化学的または物理的促進技術(例えば、化学的透過促進剤、非キャビテーションもしくはキャビテーション超音波、エレクトロポレーション、熱剥離、高周波、マイクロダーマブレーション、マイクロニードル、または高圧)と一体化されている、前記態様のいずれかのTDS。
23. トレプロスチニルが、カルボン酸形態のトレプロスチニルである、前記態様のいずれかのTDS。
24. トレプロスチニルが、トレプロスチニルの塩形態、例えば、アルカリ金属塩(例えば、トレプロスチニルナトリウム)またはアミン塩(例えば、トレプロスチニルジエタノールアミン、トレプロスチニルトリエタノールアミン、トレプロスチニル2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオールもしくはトレプロスチニルトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)である、態様1~22のいずれかのTDS。
25. 追加の治療剤をさらに含む、前記態様のいずれかのTDS。
26. 追加の治療剤が、局所麻酔剤、鎮痛剤、抗炎症剤、局所血管収縮剤、およびそれらの組み合わせから選択される、態様25のTDS。
27. 前記態様のいずれかの経皮薬物送達システムを対象の皮膚に適用する段階を含む、対象にトレプロスチニルまたはその塩を経皮送達する方法。
28. 治療を必要とする対象に治療有効量のトレプロスチニルまたはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、包接化合物、もしくは多形体を経皮投与する段階を含む、トレプロスチニルによる処置に応答する医学的病態を治療する方法。
29. トレプロスチニルまたはその塩が、全身分布のために血液中に送達される、態様28の方法。
30. 対象にトレプロスチニルまたはその塩を経皮投与する段階が、態様1~26のいずれかの経皮薬物送達システム(TDS)を対象の皮膚に適用することを含む、態様28または29の方法。
31. トレプロスチニルまたはその塩が、経皮パッチによって投与される、態様28~30のいずれかの方法。
32. TDSまたは経皮パッチの適用部位またはその近傍に局所的に追加の治療剤を投与する段階をさらに含む、態様30または31の方法。
33. 追加の治療剤が、局所麻酔剤、鎮痛剤、抗炎症剤、局所血管収縮剤、およびそれらの組み合わせから選択される、態様32の方法。
34. 医学的病態が、肺高血圧症、肺線維症、間質性肺疾患、ぜんそく、うっ血性心不全、末梢血管疾患、重症間欠性跛行、アテローム発生、虚血性病変、重症虚血肢、虚血性潰瘍、皮膚潰瘍、神経障害性足潰瘍、腎機能不全および腎不全、免疫抑制、増殖性疾患、ならびに前記病態の各々に関連する疼痛から選択される、態様28~33のいずれかの方法。
35. 医学的病態が、肺高血圧症、例えば肺動脈高血圧症である、態様34の方法。
36. 追加の治療剤を投与する段階をさらに含む、態様28~35のいずれかの方法。
37. 追加の治療剤が、血管作用剤、利尿剤、抗凝固剤、強心配糖体、およびそれらの組み合わせから選択される、態様36の方法。
38. トレプロスチニルまたはその塩の治療有効量が、1日当たり約0.05もしくは約0.1 mg~約0.5 mg、約0.5~約1 mg、または約1~約5 mgである、態様28~37のいずれかの方法。
39. トレプロスチニルまたはその塩が経皮投与される、トレプロスチニルによる処置に応答する医学的病態の治療において用いるための、トレプロスチニルまたはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、包接化合物、もしくは多形体。
40. トレプロスチニルまたはその塩が経皮投与される、トレプロスチニルによる処置に応答する医学的病態の治療において用いるための、トレプロスチニルまたはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、包接化合物、もしくは多形体を含む、組成物。
41. トレプロスチニルまたはその塩が経皮投与される、トレプロスチニルによる処置に応答する医学的病態の治療のための医薬の調製における、トレプロスチニルまたはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、包接化合物、もしくは多形体の使用。
42. トレプロスチニルまたはその塩が、態様1~26のいずれかの経皮薬物送達システムによって経皮投与される、それぞれ態様39、40、または41の化合物、組成物、または使用。
43. トレプロスチニルまたはその塩が、経皮パッチによって投与される、態様39~42のいずれかの化合物、組成物、または使用。
44. 医学的病態が、肺高血圧症、例えば肺動脈高血圧症である、態様39~43のいずれかの化合物、組成物、または使用。
45. 態様1~26のいずれかの経皮薬物送達システム(TDS)と、トレプロスチニルによる処置に応答する医学的病態を治療するためにTDSを使用するための使用説明書とを含む、キット。
46. TDSが経皮パッチである、態様45のキット。
47. 医学的病態が、肺高血圧症、例えば肺動脈高血圧症である、態様45または46のキット。
【実施例0152】
X. 実施例
以下の実施例は、本開示を例示するようにのみ意図されている。他のアッセイ法、研究、プロトコル、手順、方法論、試薬および条件が代わりに適宜使用されてもよい。
【0153】
実施例1. トレプロスチニルのインビトロ皮膚透過性アッセイ法
皮膚透過性アッセイ法は、0.64 cm2の拡散面積および7.5 mLの容積を有する垂直フランツ(Franz)拡散セルを用いて実施した。32℃で継続的に撹拌しながらアッセイ法を行った。熱分離されたヒト死体表皮をアッセイ法において使用し、熱ストリッピング手順の後に-20℃で表皮を保存した。ヒトの表皮は拡散セルに載せる前に解凍した。トレプロスチニルを皮膚に適用し、拡散セルをスクリューキャップで閉じた。様々な時間間隔で、全培地または受容体培地を新鮮な培地と交換した。収集した培地の一部を使用して、72時間におけるトレプロスチニルの累積皮膚透過性を計算した。別々のドナー由来のヒト表皮を用いて、トレプロスチニルの皮膚透過性を評価した。特定のドナー由来のヒト表皮上で試験されたトレプロスチニルについてN = 4の重複測定を実施した。トレプロスチニルは、別々のドナー由来のヒト表皮で試験した場合、72時間で高い累積皮膚透過性を示した。
【0154】
実施例2. ミニブタにおけるトレプロスチニルの皮膚刺激性試験
ブタの皮膚はヒトの皮膚と非常に類似しているので、ブタは薬物の皮膚投与または経皮投与を伴う試験において頻繁に使用される。
【0155】
リザーバ型経皮パッチからのトレプロスチニル経皮投与後の皮膚刺激性をGottingen Minipig (登録商標)(Marshall BioResources, North Rose, New York)において評価した。トレプロスチニル含有リザーバ経皮パッチは、6 cm
2のゲルシール領域および26 cm
2の周辺皮膚粘着剤領域を有する32 cm
2の円形パッチであった。プラセボリザーバー経皮パッチは、12 cm
2のゲルシール領域および27 cm
2の周辺皮膚粘着剤領域を有する39 cm
2の楕円形パッチであった。パッチのリザーバは、ヒドロキシプロピルセルロースから構成され、エタノール、ミリスチン酸イソプロピルおよびトレプロスチニル10 mgを含有するか、またはプラセボパッチのための活性剤を含有しないゲルを含んでいた。金属化ポリエステル/エチレン-酢酸ビニルから構成される裏打ち層と、ポリエチレンから構成される半透性微多孔膜との間に、ヒートシールによりリザーバをパッケージングした。ゲルリザーバ領域および周辺粘着剤領域を保護した透明剥離ライナーをパッチ適用の直前に剥がした。パッチは
図1に描いたパッチの構造を有していた。
【0156】
パッチ適用(投薬)を容易にするためにおよび投薬手順中の動物の安全性を確実にするために、必要であれば、ミニブタを麻酔薬テラゾール3~6 mg/kgの初期用量での筋肉内注射により鎮静させた。テラゾールのいずれの使用も試験データに示されている。
【0157】
トレプロスチニル含有経皮パッチおよびプラセボ経皮パッチの両方を、体重約15~25 kgの雌性Gottingen Minipig(登録商標)3頭の各々の背面に適用し、24時間そのままにしておいた。投薬部位(背側正中線の両側の側腹部全体、肩甲骨の尾側)をパッチの適用前日に電気バリカンで慎重に刈り取り、次に室温(RT)生理食塩水で慎重に洗浄して汚れやごみを取り除いた。準備された領域は、いくつかのパッチを収容するのに十分な大きさであった。その後、投薬部位を、かみそりで慎重に滑らかに剃毛しながら、傷または切り傷を生じさせないようにした。シェービングクリームではなく、RT生理食塩水を使用して、シェービングを補助することができた。次に投与部位を、非刺激性の半閉塞テープ(例えば、Elastikonテープ)で固定された包帯で包んだ。次にミニブタにジャケットを装着させた。パッチの適用日に、ジャケットおよび包装をミニブタから取り外した。投薬部位を目視で検査して擦り傷または明らかな皮膚病理がないことを確認し、イソプロパノールで拭いて穏やかに洗浄した後、少なくとも5分間風乾させた。皮膚の周辺領域の堅固な粘着を確実にするためにパッチの周辺粘着領域にしっかりとした指圧を加えることによって、パッチを擦り傷または明白な皮膚病理なしに皮膚の領域に適用した。パッチの剥離を防ぐために、Tegaderm(商標)包帯材(またはPatchProtect(商標)包帯材などの、同等の透明粘着包帯材)を、パッチの上から適用し、パッチの縁部を越えて少なくとも2インチ延ばし、パッチの周辺領域およびパッチを取り囲む皮膚に粘着させた。パッチ適用部位を、非刺激性の半閉塞テープ(例えば、Elastikonテープ)で固定されたガーゼまたはVetrap包帯(もしくは同等物)で包んだ。次いで、パッチの乱れを防ぐためにミニブタにジャケットを装着させた。パッチを投薬部位に24時間、定位置保持した。
【0158】
経皮投与部位を、パッチ適用前ならびにパッチ除去後2時間(±15分)、24時間(±1時間)、48時間、72時間、96時間、120時間、144時間および168時間の時点で刺激の全体的な徴候(紅斑、浮腫および病変)ならびに他の任意の局所的または全身的影響の徴候について観察した。パッチ適用部位の写真は、パッチ除去直前、パッチ除去後、ならびにパッチ除去後2時間(±15分)、24時間(±1時間)、48時間、72時間、96時間、120時間、144時間および168時間の時点で撮影した。
【0159】
以下のスコアは、皮膚刺激をスコア化するためのドレイズ(Draize)スケールに基づいている[J. Draize et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 82:377-390 (1944)]。
【0160】
表1は、トレプロスチニル含有経皮パッチおよびプラセボ経皮パッチの様々な時点での紅斑および浮腫スコアを示す。本試験において使用されたGottingen Minipig(登録商標) 3頭には、601、602および603の番号が付けられている。表1から分かるように、経皮パッチからのトレプロスチニルならびに化学的透過促進剤であるミリスチン酸イソプロピルおよびエタノールの送達は、著しい皮膚刺激を引き起こさず、ミニブタ3頭中の1頭(付番603)において軽度または軽い紅斑を引き起こしただけであった。
【0161】
【0162】
実施例3. ミニブタにおける経皮送達トレプロスチニルの薬物動態
リザーバ型経皮パッチからのトレプロスチニルの経皮投与後の薬物動態(PK)を、Gottingen Minipig(登録商標) (Marshall BioResources)において試験した。トレプロスチニル含有リザーバ経皮パッチは、12 cm2のゲルシール領域および27 cm2の周辺皮膚粘着剤領域を有する39 cm2の楕円形パッチであった。このパッチは、PK試験において使用されたパッチのリザーバがトレプロスチニル40 mgを含有していたことを除き、実施例2において記載されたトレプロスチニル含有パッチと同様の組成および構造を有していた。
【0163】
PK試験では受領時に約6ヶ月齢、パッチ適用時に体重約23 kgの未処置雄性Gottingen Minipig(登録商標)を使用した。経皮パッチの適用を容易にするために、ミニブタを筋肉内注射により3 mg/kgのテラゾールで鎮静させた。パッチ適用前に、ミニブタ上の投薬部位を実施例2に記載したのと同様に準備し、包帯を1日1回パッチ適用部位に再適用したことを除いて実施例2に記載したのと同様にパッチ適用を実施した。トレプロスチニル計160 mgを含有する4つの経皮パッチをミニブタ2頭の各々の背面に同時に適用し、72時間そのままにしておいた。パッチ適用前の1時間以内に; パッチ適用後3、6、12、24、48および72時間の時点で; ならびにパッチ除去後0.167、0.5、1、2、4および6時間の時点で血液試料を採取した。
【0164】
ミニブタ2頭について、経皮パッチからのトレプロスチニルの送達は、C最大 20.8~27.6 ng/mL、C72時間 2.4~4.9 ng/mL、T最大 6時間、AUC0~72 429-946 ng・hr/mL、および半減期(T1/2)を28~35時間の処置中にもたらした。
【0165】
特定の態様が例示および記載されたが、様々な修正が該態様に実施可能でありかつ本明細書において想定されることが理解されよう。また、本開示が、本明細書に示される特定の例に限定されないことが理解されよう。本明細書における本開示の態様および例の記載および例示は、限定的な意味で解釈されるようには意図されていない。さらに、本開示の全ての局面が、本明細書に記載される特定の記載、構成、または相対比には限定されず、これらが種々の条件および変動要素に依存しうるものであることが理解されよう。本開示の態様および例の、形態および詳細に関する様々な修正および変形は、当業者には明らかであろう。したがって、本開示が、あらゆるそのような修正、変形、および等価物も網羅することが想定されよう。
トレプロスチニルまたはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、包接化合物、もしくは多形体、および1種または複数種の薬学的に許容される賦形剤または担体を含み、トレプロスチニルまたはその塩を対象に経皮送達するように製剤化または構成されている、経皮薬物送達システム(TDS)。