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特開2023-134629高いin vivo NMD特異性を有するベンザゼピン-1,7-ジオールから誘導される放射性標識リガンド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134629
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】高いin vivo NMD特異性を有するベンザゼピン-1,7-ジオールから誘導される放射性標識リガンド
(51)【国際特許分類】
   C07D 223/16 20060101AFI20230920BHJP
   A61K 51/04 20060101ALI20230920BHJP
   G01N 33/15 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
C07D223/16 Z
A61K51/04 200
G01N33/15 Z
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023114615
(22)【出願日】2023-07-12
(62)【分割の表示】P 2021526625の分割
【原出願日】2019-11-14
(31)【優先権主張番号】18206483.2
(32)【優先日】2018-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】506110634
【氏名又は名称】イーティーエイチ・チューリッヒ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】シモン・エム・アメタメイ
(72)【発明者】
【氏名】アフマド・ハイダー
(72)【発明者】
【氏名】ハジム・アフマド
(57)【要約】      (修正有)
【課題】陽電子放出断層撮影(PET)、単一光子放射断層撮影(SPECT)、液体シンチレーションカウントアッセイ、又はオートラジオグラフィーによるNMDA受容体関連疾患又は障害の診断で使用するための、良好な体内分布、高いシグナル対ノイズ比で、アーチファクトをほとんど発生させることのない、放射性標識リガンドを提供する。
【解決手段】例えば、下記式で示される化合物である。

式中、R7は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、重水素、トリチウム、-CHF、-CDF、FCHCH-及びFCHCHCH-から選択され、X及びZは、水素、重水素、トリチウム、フッ素、ヨウ素及びニトリルから選択される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽電子放出断層撮影(PET)、単一光子放射断層撮影(SPECT)、液体シンチレーションカウントアッセイ、又はオートラジオグラフィーによるNMDA受容体関連疾患又は障害の診断での使用のための式(I)
【化1】
[式中、
- 式(I)の少なくとも1つの原子は、陽電子放出断層撮影(PET)、単一光子放射断層撮影(SPECT)、液体シンチレーションカウントアッセイ、及びオートラジオグラフィーからなる群から選択される方法における検出に適した放射性標識原子、必要に応じて3H-;11C-;14C-;18F-;13N-;15O-;123I-;124I-;125I-;131I-、並びに陽電子放出放射性金属、必要に応じて64Cu及び68Gaからなる群から選択される、放射性標識原子であり;
- R1、R2及びR3の1つは、水素、重水素、トリチウム、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、-OH、-CN、-NO2、-NH2、-SH2、-(C1~C4)アルキル、フッ素化-(C1~C4)アルキル、必要に応じて-CH2F、-CD2F、-CT2F、FCH2CH2-、FCH2CH2CH2-、-O(C1~C4)アルキル、及びフッ素化-O(C1~C4)アルキル、必要に応じて-OCH2F、-OCD2F、FCH2CH2O-、及びFCH2CH2CH2O-からなる群から独立して選択され、
R1~R3のその他は水素又はフッ素であり、Tは3Hであり;
- R4は、水素、-(C1~C4)アルキル、フッ素化-(C1~C4)アルキル、塩素化-(C1~C4)アルキル、臭素化-(C1~C4)アルキル、重水素化-(C1~C4)アルキル、及びトリチウム化-(C1~C4)アルキル、必要に応じて-CH2F、-CD2F、-CT2F、FCH2CH2-、FCH2CH2CH2-、FCD2CD2-、FCD2CD2CD2-、FCT2CT2-、FCT2CT2CT2-、-CH2Cl、-CD2Cl、-CT2I、ClCH2CH2-、ClCH2CH2CH2-、ClCD2CD2-、ClCD2CD2CD2-、ClCT2CT2-、ClCT2CT2CT2-、-CH2I、-CD2I、-CT2I、ICH2CH2-、ICH2CH2CH2-、ICD2CD2-、ICD2CD2CD2-、ICT2CT2-、及びICT2CT2CT2-からなる群から選択され、
必要に応じて、R1~R3は水素、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素であり;
- Yは、
(C1~C6)アルキル、必要に応じてC5-アルキル又はC4-アルキル、
少なくとも1つの重水素、トリチウム、18F、19F、塩素、臭素、ヨウ素及び/又はOHで置換されている(C1~C6)アルキル、必要に応じてCH2-CH2-FCH-CH2N-、CH2-FCH-CH2CH2N-、CH2 CH2-ICH-CH2N-、CH2-ICH-CH2CH2N-、CH2CH2-CD2-CH2N-、CH2-CD2-CD2CH2N-、CH2CH2-CT2-CH2N-、CH2-CT2-CT2CH2N-、又はCH2-CHOH-CH2-CH2N-、
(C1~C6)アルコキシアルキル、(C1~C6)ポリエチレングリコール、必要に応じて-(CH2)2-O-(CH2)2-R5、-(CH2)3-O-R5、-(CH2)4-O-R5、並びに
(C1~C6)ヘテロアルキル、必要に応じて-(CH2)3-X-R5及び-(CH2)4-X-R5(式中、Xは硫黄又はSO2である)、
【化2】
、-(CH2)3-CO-R5、-(CH2)2-CO-N(CH3)-CH2-R5、及び-CO-(CH2)3-R5からなる群から選択され;
- R5は、置換又は非置換(C5~C6)アリール、置換又は非置換(C5~C6)ヘテロアリール、必要に応じて、置換又は非置換フェニル又はピリジル、
必要に応じて
【化3】
(式中、Zは、水素、トリチウム、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、シアノ及びニトリルからなる群から選択され、R6は、水素、重水素、トリチウム、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、-(C1~C6)アルキル、フッ素化-(C1~C6)アルキル、必要に応じて-CH2F、-CD2F、FCH2CH2-、FCH2CH2-、及びFCH2CH2CH2-からなる群から選択される)
からなる群から選択され;並びに/或いは
- YR5は、
【化4】
(式中、R7は、1つ若しくは複数の水素、重水素、トリチウム、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、又は少なくとも1つの重水素、トリチウム、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、若しくはOHで置換されている(C1~C7)アルキルである)からなる群から選択される]
の化合物及びその薬学的に許容される塩又は溶媒和物。
【請求項2】
少なくとも1つの放射性標識原子が、11C-原子、18F-原子、123I-原子、124I-原子、125I-原子、又は131I-原子である、請求項1に記載の使用のための化合物。
【請求項3】
R4又はR5の少なくとも1つが、11C-原子、18F-原子、123I-原子、124I-原子、125I-原子、又は131I-原子を含み、必要に応じて、R4が-OCH2CH2-18F、-OCH2CH2CH2-18F、OCH2CH2-123I、若しくは-OCH2CH2CH2-123Iであり、及び/又はR6が-18F若しくは-123Iである、請求項1又は2に記載の使用のための化合物。
【請求項4】
R1、R2及びR3の1つが、-H、-D、-T、-CH3、-CH2F、-CD2F、FCH2CH2-、FCH2CH2CH2-、-OCH3、-OCH2F、-OCD2F、FCH2CH2O-及びFCH2CH2CH2O-からなる群から独立して選択され、R1~R4のその他が水素又はフッ素である、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項5】
R1が、-CH3、-CH2F、-CD2F、FCH2CH2-、FCH2CH2CH2-、-OCH3、-OCH2F、-OCD2F、FCH2CH2O-及びFCH2CH2CH2O-からなる群から選択され、R2、R3及びR4が水素又はフッ素である、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項6】
R4が、水素、-CH2F、-CD2F、FCH2CH2-、及びFCH2CH2CH2-からなる群から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項7】
Yが、-(CH2)i-R5及び-(CH2)e-O-(CH2)f-R5(式中、iは2~6の整数であり、e及びfは1、2又は3から独立して選択される)からなる群から選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項8】
R5が、フェニル、
【化5】
(式中、Zは、水素、重水素、トリチウム、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、シアノ及びニトリルからなる群から選択され、R6は、水素、重水素、トリチウム、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、シアノ、-CH2F、-CD2F、FCH2CH2-、FCH2CH2-、及びFCH2CH2CH2-からなる群から選択される)からなる群から選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項9】
R6が、水素、トリチウム、フッ素及びヨウ素からなる群から選択される、請求項1から8のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項10】
炭素1においてR配置である、請求項1から9のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項11】
炭素1においてS配置である、請求項1から9のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項12】
- R1が、-OCH3、-OCH2F、-OCD2F、FCH2CH2O-及びFCH2CH2CH2O-からなる群から選択され、R2、R3及びR4が水素であり、
- R4が水素であり、
- Yが-(CH2)4-であり、
- R5が置換又は非置換フェニルである、
請求項1から11のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項13】
- R4が、水素、-CH2F、-CD2F、FCH2CH2-及びFCH2CH2CH2-からなる群から選択され、
- Yが-(CH2)4-又は-(CH2)2-O-(CH2)2-であり、
- R5が、フェニル、
【化6】
(式中、Zは、水素、トリチウム又はニトリルであり、R6は、フッ素、ヨウ素、-CH2F、-CD2F、FCH2-、FCH2CH2-、及びFCH2CH2CH2-からなる群から選択される)からなる群から選択される、
請求項1から12のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項14】
- R4が水素であり、
- Yが(CH2)4であり、
- R5が置換又は非置換フェニルである、
請求項1から13のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項15】
【化7】
(式中、
- R7は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、重水素、トリチウム、-CH2F、-CD2F、FCH2CH2-、FCH2CH2-、及びFCH2CH2CH2-からなる群から選択され、
- X及びZは、水素、重水素、トリチウム、フッ素、ヨウ素及びニトリルからなる群から独立して選択される)からなる群から選択される、請求項1から14のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項16】
【化8】
(式中、
- X及びZは、水素、重水素、トリチウム、フッ素、ヨウ素及びニトリルからなる群から独立して選択され、
- X及び/又はZがトリチウムである場合、フッ素は19Fであり、X及び/又はZがトリチウムでない場合、フッ素は18Fである)からなる群から選択される、請求項1から15のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項17】
NMDA受容体関連疾患又は障害の診断のための方法であって、
(a)そのような診断を必要とする患者又は患者の試料に、請求項1から16のいずれか一項に記載の使用のための化合物をNMDA受容体のPET画像化、SPECT画像化、液体シンチレーション及び/又はオートラジオグラフィーベースアッセイに有効な量で投与する工程と、
(b)少なくとも1つのPETスキャン、SPECTスキャン、液体シンチレーション又はオートラジオグラフィー結果を、必要に応じてex vivo分析によって、記録する工程と、
(c)PETスキャン、SPECTスキャン上の、液体シンチレーション又はオートラジオグラフィー結果における、異常なNMDA受容体発現パターンからNMDA受容体関連疾患又は障害を診断する工程と
を含む方法。
【請求項18】
NMDA受容体関連疾患又は障害が、神経変性疾患又は障害、アルツハイマー病、抑鬱障害、パーキンソン病、外傷性脳損傷、脳卒中、片頭痛、アルコール離脱、並びに慢性及び神経因性疼痛からなる群から選択される、請求項17に記載の診断の方法。
【請求項19】
推定NMDA受容体アンタゴニストを評価するための方法であって、
(a)トリチウム又は14C-原子を含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の使用のための化合物を用意する工程と、
(b)
(i)液体シンチグラフィー検出ベースアッセイにおいて、推定NMDA受容体アンタゴニストと工程(a)の化合物の競合的結合親和性を測定する工程、及び
(ii)in vitro又はex vivoオートラジオグラフィーアッセイを実施する工程であって、推定NMDA受容体アンタゴニストが工程(a)の化合物を遮断する又は外すために使用される、工程
からなる群から選択される工程を実施する工程と、
(c)(i)推定NMDA受容体アンタゴニストによって、NMDA受容体から工程(a)の化合物が外されることに基づいて、推定NMDA受容体アンタゴニストがNMDA受容体アンタゴニストであるかどうかを決定する工程と
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陽電子放出断層撮影(PET)、単一光子放射断層撮影(SPECT)、液体シンチレーション及び/又はオートラジオグラフィーベースアッセイによるNMDA(N-メチル-D-アスパラギン酸)受容体関連疾患又は障害の診断での使用のためのベンザゼピン-1,7-ジオールから誘導される化合物を対象とする。本発明はまた、NMDA受容体関連疾患又は障害の診断のための方法であって、そのような診断を必要とする患者又は患者の試料に本発明の化合物を、NMDA受容体のPET画像化、SPECT画像化、液体シンチレーション及び/又はオートラジオグラフィーベースアッセイに有効な量で投与する工程、少なくとも1つのPET又はSPECTスキャン、液体シンチレーション又はオートラジオグラフィー結果を記録する工程、並びにPET又はSPECTスキャン上の、液体シンチレーション又はオートラジオグラフィー結果における、異常なNMDA受容体発現パターンからNMDA受容体関連疾患又は障害を診断する工程による、方法に関する。本発明は、本発明の化合物を使用して、液体シンチグラフィー検出アッセイ又はオートラジオグラフィーアッセイにおいて推定NMDA受容体アンタゴニストを評価するための方法も提供する。
【背景技術】
【0002】
近年発見された、NMDA受容体ファミリーの機能的複雑性及びリガンド結合部位の多様性は、神経活性をモジュレートするための多種多様な選択肢を提供する。しかし、いくつかの失望させる臨床試験を含む最近の経験は、この複雑性がNMDA受容体を薬物開発において困難な標的にしていることを示している(Monaghanら、Neurochem. Int. 2012、61、581~592;Curr Opin Pharmacol 2015、20、14~23)。機能的NMDA受容体は、7種の相同遺伝子産物GluN1、GluN2A~D、GluN3A及び3Bのうち2種又は3種を含む4つのサブユニットからなる。サブユニットの組成は適応性が高く、受容体の巨視的及び微視的位置、発達年齢、神経機能及び活性に依存する(Paolettiら、Nat. Rev. Neurosci. 2013、14、383~400)。個々の受容体ヘテロ四量体の多様で時には反対の機能により、サブタイプ選択的化合物が薬物開発において大きな関心を持たれるようになった。
【0003】
しかし、GluN1/GluN2B選択的NTD(N末端ドメイン)リガンドに向けた薬物研究における多大な努力にもかかわらず、臨床試験の結果は失望させるものであり、基礎及び前臨床研究からの期待に応えなかった(lkonomidou及びTurski、Lancet Neural. 2002、1、383~386)。in vitro及びin vivo実験の結果を比較すると、多くの場合、実験Ki値(GluN1/GluN2B受容体に対する親和性)と特定の薬力学的又は薬理学的応答を誘導するのに必要とされた濃度又は用量との不一致が目立つ。いくつかのin vitro実験は、低ナノモル濃度範囲でGluN1/GluN2B選択的NTDモジュレーターの結合親和性及び薬力学的効果を示したが、他の研究は、高ナノモル又は低マイクロモル範囲でのみ顕著な結合及び受容体関連効果を報告した(Schepmannら、J. Pharm. Biomed. Anal. 2010、53、603-608)。これらの研究のいくつかは、絶対値に関係なく、それぞれ組換えGluN1/GluN2B及びGluN1/GluN2Aへの報告された高及び低親和性結合と一致して、天然(混合ヘテロ四量体)受容体との高及び低親和性相互作用を示した。約20の脳/血漿比を有するエリプロジルの高い脳への取込みを考慮し(Garrigou-Cadenneら、J Pharmacokinet Biopharm 1995、23、147~161)、低ナノモル結合親和性を仮定すると(Tewesら、ChemMedChem 2010、5、687~695)、前臨床in vivo研究におけるエリプロジルの有効用量は、GluN1/GluN2B NTD結合部位の大部分を占有するのに十分であると予期されるものよりも多い量であった(Toulmondら、Brain Res. 1993、620、32~41)。更に、NMDA受容体の個々のサブユニットの領域発現レベルは公知であるが(Laurieら、Brain Res Mol Brain Res 1997、51、23~32)、GluN1/GluN2B NTD選択的薬物のin vivo領域結合パターンはつかみどころがないままである。矛盾する研究結果により、学術及び産業研究チームは、特に親和性及び選択性に関して改善された薬力学的特性を有するモジュレーターを開発することを促された(Strongら、Expert Opin. Ther. Pat. 2014、24、1349~1366;Tewesら、ChemMedChem 2010、5、687~695)。モジュレーターの改善された選択性パターンに加えて、選択的NMDA受容体サブタイプを含むオフターゲットへの最少の結合で、最適な受容体サブタイプ占有に向けて投与スキームを最適化するための方法が必要とされている。
【0004】
Tewesら(ChemMedChem 2010、5、687~695)は、NR2B選択的NMDA受容体アンタゴニストとして3-ベンザゼピンの合成及び生物学的評価を記載している。放射性リガンドとしてトリチウム標識イフェンプロジルを使用する競合アッセイでは、組換えヒトNR1a/NR2B受容体を安定的に発現する細胞の膜ホモジネート(デキサメタゾンにより誘導された、細胞死を回避するために安定化されたケタミン(NMDAアンタゴニスト))におけるNR2B含有NMDA受容体への親和性は、いくつかの3-ベンザゼピンについて実証された。これらの3-ベンザゼピンから誘導されるNR2Bリガンドの選択性を調べるために、受容体結合研究においてNMDA受容体のフェンシクリジン(PCP)結合部位及び両方のσ(シグマ)受容体サブタイプ(σ1及びσ2)に対して化合物を試験した。ベンザゼピンはPCP結合部位との顕著な相互作用を示さなかったが、NMDA受容体のポリアミン結合部位への高い選択性を示した。σ2受容体への親和性も概して低かった。σ1受容体に関して、3-ベンザゼピンにおける構造変化が受容体プロファイルをNR2B選択的リガンドからσ1選択的リガンドにシフトさせうることが示された。GluN2Bアンタゴニストの開発は、有望な前臨床結果並びに治療的使用の可能性を有する高い親和性及び選択性のNR2B NMDA受容体アンタゴニストをもたらしたが、臨床試験は今日まで医学的使用のための十分な治療的利益を確立しなかった(Addyら、J Clin Pharmacol、49、856~864、2009)。
【0005】
陽電子放出断層撮影(PET)は、体内の機能的プロセスの3次元画像を作成する核医学機能的画像化法である。このシステムは、生物学的に活性な分子に向けて体内に導入される陽電子放出放射性核種(トレーサー)によって間接的に放出された一対のガンマ線を検出する。次いで、体内のトレーサー濃度の3次元画像がコンピューター分析によって構築される。現代のPET-CTスキャナーでは、3次元画像化は、同じ機械に組み込まれた、同じセッションの間に患者に行われるCT X線スキャンの補助により達成されることが多い。PET及び単一光子放射断層撮影(SPECT)は、潜在的な医薬の研究及び薬力学的前臨床研究のための有益な技術であり、ある特定の疾患及び障害を診断するために通常使用される。
【0006】
放射性トレーサーは生物学的に活性な標的特異的分子、いわゆるPET又はSPECTリガンドの一部を形成するので、PET又はSPECT技術は健康な及び罹患した生組織におけるトレーサーの標的特異的分布を画像化する。PET又はSPECTリガンドの標的特異性に応じて、標的の異常な体内分布は疾患及び障害を示すことができる。例えば、PET又はSPECT画像化は、腫瘍及び転移部位を診断する(腫瘍学)、アルツハイマー病等の神経変性疾患を画像化する、発作焦点の位置を突き止める、統合失調症、薬物乱用、気分障害等の精神障害を画像化する(神経画像化)、アテローム性動脈硬化及び血管疾患を画像化する(心臓学及び神経学)、並びに細菌感染を画像化するのに有用である。
【0007】
遅い若しくは不十分な体内分布、又は更にリガンドがある特定の組織、例えば血液脳関門を透過しないことは、PETリガンドの共通の問題である。更に、目的の標的に対するPETリガンド特異性は通常、リガンドの血清アルブミン等の非標的化タンパク質への非特異的結合によって損なわれる。全てのこれらの欠点は、適切なシグナル対ノイズ比を欠く低品質PET画像をもたらすか、又はアーチファクトを表示する。
【0008】
神経画像化のための多くのPETリガンド、例えば、ドーパミンD2/D3受容体のためのラクロプリド、ファリプリド、デスメトキシファリプリド、セロトニントランスポーターのためのMcN 5652及びDASB、セロトニン5HT1A受容体のためのMefway、ニコチン性アセチルコリン受容体のためのニフェン、並びにいくつかのアミロイドタンパク質特異的PETリガンド等の11C及び18F標識化合物がある。しかし現在のところ、NMDA受容体関連疾患又は障害を有する患者におけるNMDA受容体体内分布を正確に反映するのに十分高い、即ち30%よりはるかに高いin vivo特異性を有するNMDA特異的PETリガンドはない。
【0009】
US 2017/0224852 A1は、NMDA受容体、特にGluN2Bサブユニットに選択的に結合する化学的に安定なPETリガンドを開示している。これらのPETリガンドは、全ての主要な脳領域において良好な親和性で結合し、ラットの脳の異なる領域に不均一に蓄積する。US 2017/0224852 A1に報告されているPETリガンドは、哺乳動物の脳においてGluN2B(C、D)含有NMDA受容体の密度を非侵襲的に画像化し、GluN1/GluN2B NTDモジュレーターによる受容体占有度を評価するのに適している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】US 2017/0224852 A1
【特許文献2】米国特許出願第09/902,822号
【特許文献3】PCT/US 01/21860
【特許文献4】米国仮出願第60/313,527号
【特許文献5】米国仮出願第60/339,249号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Monaghanら、Neurochem. Int. 2012、61、581~592
【非特許文献2】Curr Opin Pharmacol 2015、20、14~23
【非特許文献3】Paolettiら、Nat. Rev. Neurosci. 2013、14、383~400
【非特許文献4】lkonomidou及びTurski、Lancet Neural. 2002、1、383~386
【非特許文献5】Schepmannら、J. Pharm. Biomed. Anal. 2010、53、603-608
【非特許文献6】Garrigou-Cadenneら、J Pharmacokinet Biopharm 1995、23、147~161
【非特許文献7】Tewesら、ChemMedChem 2010、5、687~695
【非特許文献8】Toulmondら、Brain Res. 1993、620、32~41
【非特許文献9】Laurieら、Brain Res Mal Brain Res 1997、51、23~32
【非特許文献10】Strongら、Expert Opin. Ther. Pat. 2014、24、1349~1366
【非特許文献11】Addyら、J Clin Pharmacol、49、856~864、2009
【非特許文献12】Sobrioら、Mini-reviews in Medicinal Chemistry、10、870~886、2010
【非特許文献13】Asselinら、NeuroImage、22、T131、2004
【非特許文献14】Bressanら、Biol Psychiatry、58、41~46、2005
【非特許文献15】Hartwigら、Clin Pharmacol. Ther、58、165~178、1995
【非特許文献16】H. C.Ansel及びN. G.Popovish、Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems、第5版、Lea and Febiger (1990)
【非特許文献17】Preshlockら、ChemComm 2016
【非特許文献18】Haiderら、Eur. J. Med. Chem. 2018
【非特許文献19】Szermerskiら、ChemMedChem、2018
【非特許文献20】Chuら、Current Protocols in Pharmacology、2015
【非特許文献21】Cheng Y、Prusoff WH、1973、Biochem Pharmacol. 22 (23)
【非特許文献22】McCarthyら、J. Label. Compd. Radiopharm、1997
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記を考慮すると、本発明の目的は、良好な体内分布、高いシグナル対ノイズ比で、アーチファクトをほとんど発生させることなく、例えば、陽電子放出断層撮影(PET)、単一光子放射断層撮影(SPECT)、液体シンチレーション及びオートラジオグラフィーアッセイによる、NMDA受容体関連疾患又は障害の診断に使用するのに適した、高いNMDA受容体親和性及び高いNMDA受容体選択性を有する、更に及び/又は必要に応じて改善された放射性標識リガンド、例えば、PET又はSPECTリガンドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1の態様では、本発明の目的は、陽電子放出断層撮影(PET)、単一光子放射断層撮影(SPECT)、液体シンチレーションカウントアッセイ、又はオートラジオグラフィーによるNMDA受容体関連疾患又は障害の診断での使用のための以下の式(I):
【0014】
【化1】
【0015】
[式中、
- 式(I)の少なくとも1つの原子は、陽電子放出断層撮影(PET)、単一光子放射断層撮影(SPECT)、液体シンチレーションカウントアッセイ、及びオートラジオグラフィーからなる群から選択される方法における検出に適した放射性標識原子、必要に応じて3H-;11C-;14C-;18F-;13N-;15O-;123I-;124I-;125I-;131I-、並びに陽電子放出放射性金属、必要に応じて64Cu及び68Gaからなる群から選択される、放射性標識原子であり;
- R1、R2及びR3の1つは、水素、重水素、トリチウム、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、-OH、-CN、-NO2、-NH2、-SH2、-(C1~C4)アルキル、フッ素化-(C1~C4)アルキル、必要に応じて-CH2F、-CD2F、-CT2F、FCH2CH2-、FCH2CH2CH2-、-O(C1~C4)アルキル、及びフッ素化-O(C1~C4)アルキル、必要に応じて-OCH2F、-OCD2F、FCH2CH2O-、及びFCH2CH2CH2O-からなる群から独立して選択され、
R1~R3のその他は水素又はフッ素であり、Tは3H-であり;
- R4は、水素、-(C1~C4)アルキル、フッ素化-(C1~C4)アルキル、塩素化-(C1~C4)アルキル、臭素化-(C1~C4)アルキル、重水素化-(C1~C4)アルキル及びトリチウム化-(C1~C4)アルキル、必要に応じて-CH2F、-CD2F、-CT2F、FCH2CH2-、FCH2CH2CH2-、FCD2CD2-、FCD2CD2CD2-、FCT2CT2-、FCT2CT2CT2-、-CH2Cl、-CD2Cl、-CT2I、ClCH2CH2-、ClCH2CH2CH2-、ClCD2CD2-、ClCD2CD2CD2-、ClCT2CT2-、ClCT2CT2CT2-、-CH2I、-CD2I、-CT2I、ICH2CH2-、ICH2CH2CH2-、ICD2CD2-、ICD2CD2CD2-、ICT2CT2-、及びICT2CT2CT2-からなる群から選択され、
必要に応じて、R1~R3は水素、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素であり;
- Yは、
(C1~C6)アルキル、必要に応じてC5-アルキル又はC4-アルキル、
少なくとも1つの重水素、トリチウム、18F、19F、塩素、臭素、ヨウ素及び/又はOHで置換されている(C1~C6)アルキル、必要に応じてCH2-CH2-FCH-CH2N-、CH2-FCH-CH2CH2N-、CH2 CH2-ICH-CH2N-、CH2-ICH-CH2CH2N-、CH2CH2-CD2-CH2N-、CH2-CD2-CD2CH2N-、CH2CH2-CT2-CH2N-、CH2-CT2-CT2CH2N-、又はCH2-CHOH-CH2-CH2N-、
(C1~C6)アルコキシアルキル、(C1~C6)ポリエチレングリコール、必要に応じて-(CH2)2-O-(CH2)2-R5、-(CH2)3-O-R5、-(CH2)4-O-R5、並びに
(C1~C6)ヘテロアルキル、必要に応じて-(CH2)3-X-R5及び-(CH2)4-X-R5(式中、Xは硫黄又はSO2である)、
【0016】
【化2】
【0017】
、-(CH2)3-CO-R5、-(CH2)2-CO-N(CH3)-CH2-R5、及び-CO-(CH2)3-R5からなる群から選択され;
- R5は、置換又は非置換(C5~C6)アリール、置換又は非置換(C5~C6)ヘテロアリール、必要に応じて置換又は非置換フェニル又はピリジル、
必要に応じて
【0018】
【化3】
【0019】
(式中、Zは、水素、トリチウム、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、シアノ及びニトリルからなる群から選択され、R6は、水素、重水素、トリチウム、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、-(C1~C6)アルキル、フッ素化-(C1~C6)アルキル、必要に応じて-CH2F、-CD2F、FCH2CH2-、FCH2CH2-、及びFCH2CH2CH2-からなる群から選択される)
からなる群から選択され;並びに/或いは
- YR5は、
【0020】
【化4】
【0021】
(式中、R7は、1つ若しくは複数の水素、重水素、トリチウム、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、又は少なくとも1つの重水素、トリチウム、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、若しくはOHで置換されている(C1~C7)アルキルである)からなる群から選択される];
の化合物及びその薬学的に許容される塩又は溶媒和物によって解決される。
【0022】
本発明に関して、「アルキル」等の先行語は、直鎖状又は分岐状、置換又は非置換アルキル残基を包含すると解釈されることが理解される。用語「直鎖状又は分岐状、置換又は非置換アルキル」の範囲は、直鎖状又は分岐状、置換又は非置換アルキル残基を包含する。例えば、用語「(C1~4)アルキル」は、直鎖状又は分岐状、置換又は非置換の、1~4つの炭素を有する化合物の基を示す。
【0023】
本明細書で使用されるアルコキシアルキル基は、酸素原子を、エーテルモチーフ、即ち2つの炭素が結合した酸素として、炭素以外の任意の化学原子に結合した酸素、例えばヒドロキシル基、又は酸素アニオンとして含む、任意の直鎖状又は分岐状、置換又は非置換アルキル鎖を意味すると理解されるべきである。
【0024】
本明細書で使用される用語ヘテロ原子は、炭素及び水素以外の原子、例えば必要に応じてO、N、S、P、F、Cl、Br及びIを意味すると理解されるべきである。
【0025】
ヘテロアルキル残基は、1つ又は複数の炭素原子がヘテロ原子によって、必要に応じてO、N、S、P、F、Cl、Br又はIによって、必要に応じて置き換えられていてもよい炭素鎖である。Nが置換されていない場合、それはNHである。ヘテロ原子は、直鎖状又は分岐状炭素鎖内の末端又は内部炭素原子のいずれかを置き換えうる。そのような基は、オキソ等の基によって本明細書で記載される通りに置換されて、これらに限定されないがアルコキシカルボニル、アクリル、アミド及びチオキソ等の定義をもたらしうる。
【0026】
本明細書で使用される用語アリールは、本明細書で定義される芳香族炭素環又はヘテロアリールを意味すると理解されるべきである。各アリール又はヘテロアリールは、特に指定されていない限り、その部分又は完全水素化誘導体を含む。例えば、キノリニルはデカヒドロキノリニル及びテトラヒドロキノリニルを含んでもよく、ナフチルはテトラヒドロナフチル等のその水素化誘導体を含んでもよい。本明細書に記載のアリール及びヘテロアリール化合物の他の部分又は完全水素化誘導体は、当業者に明らかであろう。当然、用語はアラルキル及びアルキルアリールを包含し、これらの両方は本発明の化合物を実践するための更なる実施形態である。例えば、用語アリールは、フェニル、インダニル、インデニル、ジヒドロナフチル、テトラヒドロナフチル、ナフチル及びデカヒドロナフチルを包含する。
【0027】
用語ヘテロアリールは、N、O及びS等の1~4つのヘテロ原子を含有する、芳香族C3~C20、必要に応じて5~8員単環式又は必要に応じて8~12員二環式環を意味すると理解されるべきである。例示的なヘテロアリールは、アジリジニル、チエニル、フラニル、イソオキサゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、ピロリル、イミダゾリル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、ピラニル、キノキサリニル、インドリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチエニル、キノリニル、キナゾリニル、ナフチリジニル、インダゾリル、トリアゾリル、ピラゾロ[3,4-b]ピリミジニル、プリニル、ピロロ[2,3-b]ピリジニル、ピラゾール[3,4-b]ピリジニル、ツベルシジニル(tubercidinyl)、オキサゾ[4,5-b]ピリジニル、及びイミダゾ[4,5-b]ピリジニルを含む。アリールオキシ又はヘテロアリールアミン等の上記の環状部分の類似物である用語は、そのそれぞれの基に結合した、上で定義されたアリール、ヘテロアリール、複素環を意味すると理解されるべきである。
【0028】
本明細書で使用される場合、用語窒素及び硫黄は、得られる化合物が化学的に安定である限り、窒素及び硫黄の任意の酸化型並びに任意の塩基性窒素の四級化型を含む。例えば、-S-C1~6アルキル基は、-S(O)-C1~6アルキル及び-S(O)2-C1~6アルキルを含むと理解されるべきである。
【0029】
本明細書で使用される用語ポリエチレングリコールは、置換又は非置換エチレンオキシドモノマーの鎖を指す。
【0030】
本明細書で使用される場合、及び全ての実施形態に関して、用語「含む(comprising)」は必要に応じて、更なる成分が存在しえないことも含む、即ち用語「からなる」を含む。
【0031】
本発明の化合物は、σ1受容体よりも予想外の高い結合親和性及び選択性でNMDA受容体、特にGluN2Bサブユニットに選択的に結合することがわかった(例えば、以下の代表的な実施例5を参照されたい)。
【0032】
理論に拘束されることを望むものではないが、本発明に従う使用のための化合物の二環式構造の芳香環上のヒドロキシル基(R2及びR3に対してオルト位)は、改善された結合親和性を担っていると考えられる。R2及びR3に対してオルトの遊離ヒドロキシル基対対応するメチルエーテルの直接比較は、
(i)オートラジオグラフィー結果(図1図2及び図3を参照されたい)、
(ii)NMDA受容体のGluN2Bサブユニットに対する結合親和性及びσ1受容体を上回る選択性(以下のTable 1(表1)を参照されたい)、並びに
(iii)in vivo取込み(実施例4並びに図9図10及び図11の時間放射能曲線に反映されている)
の予想外の顕著な改善を実証した。
【0033】
要約すると、本発明に従う使用のための化合物は、予想外だが明らかに現況技術の化合物よりも優れている。
【0034】
好ましくは、本発明の化合物は、ナノモル範囲、必要に応じて100nM未満でNMDA受容体に対する親和性を有する。NMDA受容体親和性を評価するためのアッセイは、当分野において一般常識であり、例えばTewesら(ChemMedChem 2010、5、687~695)及び以下の実施例において見出すことができる。
【0035】
本発明のPETリガンドは、例えば、5~90分以内等の短いスキャン時間で高品質な核医学画像を提供し、血中のリガンドの定量的分析を可能にする。本リガンドの脳への取込みは、NMDA受容体の密度の非侵襲的画像化を可能にし、GluN1/GluN2B NTDモジュレーターによる受容体占有度を評価することができるようにする。本PETリガンドは、オートラジオグラフィー研究において実質的に全ての主要なGluN2Bに富む脳領域に高い親和性で結合する(図5図6及び図7を参照されたい)。放射性代謝産物はラットの脳ホモジネートにおいて検出することができず、本PETリガンドの代謝安定性を示している(図8を参照されたい)。
【0036】
本発明の放射性リガンドは、PET実験において、GluN2B保有NMDA受容体に対して高い特異性を示し、この実験は、CP-101,606による遮断条件下ではっきりと減少したラットの脳の異なる領域におけるPETリガンドの不均一な蓄積を実証した(図10及び図11を参照されたい)。
【0037】
結論として、本リガンドは、哺乳動物の脳においてGluN2B含有NMDA受容体の密度を非侵襲的に画像化するための、及びGluN1/GluN2B NTDモジュレーターによる受容体占有度を評価するための改善された化合物を表す。改善された選択性は、改善された脳蓄積と一緒になって、本発明の化合物を哺乳動物におけるECSに関連する診断用途のための優れた候補にする。
【0038】
更に、例えば、トリチウムで標識された及び14C標識された場合、本発明での使用のための化合物は、例えば、in vitro結合実験等における液体シンチレーションアッセイ、in vitro/ex vivoオートラジオグラフィー、及びGluN2B-アンタゴニスト、例えば開発中であるアンタゴニストのex vivo受容体占有実験に使用することができる(以下の方法態様を参照されたい)。特に、3H及び14C標識プローブの利点は、例えば、放射線取扱いの容易さ(例えば、陽電子放出体と比べて実験室施設への費用が少なく、安全性が高い)及びこれらの放射性同位体の長い物理的半減期を考慮すると生成物の貯蔵寿命が長いことを含み、これは結局ハイスループットスクリーニング及びたった1回分の製造で異なる時点でのいくつかの実験を可能にする。GluN2B標的化薬物開発に現在使用されている市販のトリチウム化放射性リガンドは、非選択的3H-イフェンプロジルである。例えば、3H-イフェンプロジルとは対照的に、本発明での使用のための化合物は、シグマ1受容体よりも高度に選択的であり、したがって、NMDA標的化リガンドを評価するための改善されたツールを提供する。
【0039】
別の実施形態では、本発明での使用のためのPET又はSPECTリガンドは、少なくとも1つの放射性標識原子が11C-原子、18F-原子、123I-原子、124I-原子、125I-原子、又は131I-原子である、リガンドである。
【0040】
放射性標識原子は、当技術分野で公知の放射合成手段によって導入することができる(以下の図1図4並びに実施例2及び実施例7を参照されたい)。典型的には、本PETリガンドの放射合成は、衝撃の終了後、例えば2.5時間以内に達成することができ、合成終了時に、例えば約1GBqをもたらす。
【0041】
更なる実施形態では、本発明での使用のための化合物は、R4又はR5の少なくとも1つが、11C-原子、18F-原子、123I-原子、124I-原子、125I-原子、又は131I-原子を含み、必要に応じて、R4が-OCH2CH2-18F、-OCH2CH2CH2-18F、OCH2CH2-123I、若しくは-OCH2CH2CH2-123Iであり、及び/又はR6が-18F若しくは-123Iである、化合物である。
【0042】
更なる実施形態では、R1、R2及びR3の1つは、-H、-D、-T、-CH3、-CH2F、-CD2F、FCH2CH2-、FCH2CH2CH2-、-OCH3、-OCH2F、-OCD2F、FCH2CH2O-及びFCH2CH2CH2O-からなる群から独立して選択され、R1~R3のその他は水素又はフッ素である。
【0043】
更なる実施形態では、R1は、-CH3、-CH2F、-CD2F、FCH2CH2-、FCH2CH2CH2-、-OCH3、-OCH2F、-OCD2F、FCH2CH2O-及びFCH2CH2CH2O-からなる群から選択され、R2、R3及びR4は水素又はフッ素である。
【0044】
更なる実施形態では、R4は、水素、-CH2F、-CD2F、FCH2CH2-、及びFCH2CH2CH2-からなる群から選択される。
【0045】
更なる実施形態では、Yは、-(CH2)i-R5及び-(CH2)e-O-(CH2)f-R5(式中、iは2~6の整数であり、e及びfは1、2又は3から独立して選択される)からなる群から選択される。
【0046】
更なる実施形態では、R5は、フェニル、
【0047】
【化5】
【0048】
(式中、Zは、水素、重水素、トリチウム、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、シアノ及びニトリルからなる群から選択され、R6は、水素、重水素、トリチウム、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、シアノ、-CH2F、-CD2F、FCH2CH2-、FCH2CH2-、及びFCH2CH2CH2-からなる群から選択される)からなる群から選択される。
【0049】
更なる実施形態では、本発明での使用のための化合物は、R6が、水素、トリチウム、フッ素及びヨウ素からなる群から選択される、化合物である。
【0050】
更なる実施形態では、本発明での使用のための化合物は、R6がトリチウムである、化合物である。
【0051】
別の実施形態では、本発明での使用のための化合物は、炭素1においてR配置である、化合物である。
【0052】
別の実施形態では、本発明での使用のための化合物は、炭素1においてS配置である、化合物である。
【0053】
更なる実施形態では、本発明での使用のための化合物は、
- R1が、-OCH3、-OCH2F、-OCD2F、FCH2CH2O-及びFCH2CH2CH2O-からなる群から選択され、R2、R3及びR4が水素であり、
- R4が水素であり、
- Yが-(CH2)4-であり、
- R5が置換又は非置換フェニルである、化合物である。
【0054】
更なる実施形態では、本発明での使用のための化合物は、
- R4が、水素、-CH2F、-CD2F、FCH2CH2-、及びFCH2CH2CH2-からなる群から選択され、
- Yが-(CH2)4-又は-(CH2)2-O-(CH2)2-であり、
- R5が、フェニル、
【0055】
【化6】
【0056】
(式中、Zは、水素、トリチウム、又はニトリルであり、R6は、フッ素、ヨウ素、-CH2F、-CD2F、FCH2-、FCH2CH2-、及びFCH2CH2CH2-からなる群から選択される)からなる群から選択される、化合物である。
【0057】
更なる実施形態では、本発明での使用のための化合物は、
- R4が水素であり、
- Yが(CH2)4であり、
- R5が置換又は非置換フェニルである、化合物である。
【0058】
別の実施形態では、本発明での使用のための化合物は、
【0059】
【化7】
【0060】
(式中、
- R7は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、重水素、トリチウム、-CH2F、-CD2F、FCH2CH2-、FCH2CH2-、及びFCH2CH2CH2-からなる群から選択され、
- X及びZは、水素、重水素、トリチウム、フッ素、ヨウ素及びニトリルからなる群から独立して選択される)からなる群から選択される。
【0061】
更なる実施形態では、本発明での使用のための化合物は、
【0062】
【化8】
【0063】
(式中、
- X及びZは、水素、重水素、トリチウム、フッ素、ヨウ素及びニトリルからなる群から独立して選択され、
- X及び/又はZがトリチウムである場合、フッ素は19Fであり、X及び/又はZがトリチウムでない場合、フッ素は18Fである)からなる群から選択される。
【0064】
本発明は、式Iの化合物の薬学的に許容される塩又は溶媒和物を含む。「薬学的に許容される塩又は溶媒和物」は、患者に投与されると、本発明の化合物又はその薬理学的に活性な代謝産物若しくは薬理学的に活性な残基を提供することができる(直接的又は間接的に)任意の薬学的に許容される塩又は溶媒和物を指す。薬理学的に活性な代謝産物は、酵素的に又は化学的に代謝可能な本発明の任意の化合物を意味すると理解されるべきである。
【0065】
薬学的に許容される塩は、薬学的に許容される無機及び有機酸並びに塩基に由来するものを含む。適切な酸の例は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、フマル酸、マレイン酸、リン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、コハク酸、トルエン-p-硫酸、酒石酸、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、安息香酸、マロン酸、ナフタレン-2-硫酸及びベンゼンスルホン酸を含む。シュウ酸等の他の酸は、それら自体は薬学的に許容されないが、化合物及びそれらの薬学的に許容される酸付加塩を得る場合の中間体として有用な塩の調製において用いることができる。適当な塩基に由来する塩は、アルカリ金属(例えばナトリウム)、アルカリ土類金属(例えばマグネシウム)、アンモニウム及びN-(C1~C4アルキル)4 +塩を含む。
【0066】
更に、本発明の範囲は、式Iの化合物のプロドラッグも包含する。プロドラッグは、患者の体内での単純な化学的変換により本発明の化合物を産生するように改変された化合物を含む。単純な化学的変換は、加水分解、酸化及び還元を含む。具体的には、プロドラッグが患者に投与された場合、プロドラッグは本明細書の上で開示された化合物に変換され、それによって所望の薬理学的効果を付与することができる。
【0067】
更なる態様では、本発明は、NMDA受容体関連疾患又は障害の診断のための方法であって、
(a)そのような診断を必要とする患者又は患者の試料に本発明での使用のための化合物をNMDA受容体のPET画像化、SPECT画像化、液体シンチレーション及び/又はオートラジオグラフィーベースアッセイに有効な量で投与する工程と、
(b)少なくとも1つのPETスキャン、SPECTスキャン、液体シンチレーション又はオートラジオグラフィー結果を、必要に応じてex vivo分析によって、記録する工程と、
(c)PETスキャン、SPECTスキャン上の、液体シンチレーション又はオートラジオグラフィー結果における、異常なNMDA受容体発現パターンからNMDA受容体関連疾患又は障害を診断する工程と
を含む方法を対象とする。
【0068】
用語患者は、上の文脈で使用される場合、ヒト及び動物患者、必要に応じて哺乳動物を含む。
【0069】
用語患者の試料は、上の文脈で使用される場合、NMDA受容体を包含する又は包含する可能性が高い任意の組織、例えば生検、体液、例えば、血液、血清、髄液又は脳脊髄液を含むことが意図される。
【0070】
必要に応じて、液体シンチレーションベースアッセイ及びオートラジオグラフィーアッセイは、本発明の全ての方法態様において、例えば試料のex vivo分析によって、動物、例えば動物の疾患を診断するために使用される。
【0071】
用語液体シンチレーションは、本明細書で使用される場合、例えば、放射線、例えば生じた光子放出を計数可能にするために、試料を液体シンチレーターと混合する技術を使用することによる試料の測定を含む。例えば、目的は、放射性同位体とシンチレーターの直接接触によって試料のシグナルを増強することである。
【0072】
シンチレーションベース又はオートラジオグラフィーベースアッセイは、シンチレーション又はオートラジオグラフィーの原理を利用する任意のシンチレーションアッセイ又はオートラジオグラフィーアッセイを含むことが意図される。
【0073】
更なる実施形態では、NMDA受容体関連疾患又は障害は、神経変性疾患又は障害、アルツハイマー病、抑鬱障害、パーキンソン病、外傷性脳損傷、脳卒中、片頭痛、アルコール離脱、並びに慢性及び神経因性疼痛からなる群から選択される。
【0074】
更なる態様では、本発明は、推定NMDA受容体アンタゴニストを評価するための方法であって、
(a)トリチウム又は14C-原子を含む、本発明での使用のための化合物を用意する工程と、
(b)
(i)液体シンチグラフィー検出ベースアッセイにおいて、推定NMDA受容体アンタゴニストと工程(a)の化合物の競合的結合親和性を測定する工程、及び
(ii)in vitro又はex vivoオートラジオグラフィーアッセイを実施する工程であって、推定NMDA受容体アンタゴニストが工程(a)の化合物を遮断する又は外すために使用される、工程
からなる群から選択される工程を実施する工程と、
(c)(i)推定NMDA受容体アンタゴニストによって、NMDA受容体から工程(a)の化合物が外されることに基づいて、推定NMDA受容体アンタゴニストがNMDA受容体アンタゴニストであるかどうかを決定する工程と
を含む方法を対象とする。
【0075】
推定NMDA受容体アンタゴニストは、NMDA受容体アンタゴニストであることが公知であるか、又はそうであると仮定することができる、例えば、低分子化学物質及びポリペプチドを含む任意の化学分子でありうる。当業者は、本方法において任意の化学分子を評価し、それが本発明での使用のための化合物を外すか、又は本発明での使用のための化合物によって外されるかに基づいて、この化学分子がNMDA受容体アンタゴニストであるかどうかを決定することができる。
【0076】
ヒトの体内、特に生きているヒトの脳におけるNMDA受容体のPET及びSPECT画像化は、最新であるが、医学及び診断において既に標準の手順である。普通の当業者は、有効な投与量、有効な製剤、投与の経路及び部位、並びに哺乳動物組織においてそれぞれの陽電子放出トレーサー化合物の意味のあるPET又はSPECTスキャンを得るのに必要な全ての更なるパラメーターを日常的に選択することができる。PET画像化全般並びに特にNMDA関連疾患及び障害のPET画像化に関する概要については、Sobrioら、Mini-reviews in Medicinal Chemistry、10、870~886、2010;Asselinら、NeuroImage、22、T131、2004;Bressanら、Biol Psychiatry、58、41~46、2005;及びHartwigら、Clin Pharmacol. Ther、58、165~178、1995の論文を参照する。
【0077】
診断的使用のために、本発明の化合物は、任意の従来の投与形態で、任意の従来の方法で投与されうる。投与経路は、経口、静脈内、筋肉内及び皮下注射を含む。好ましい投与様式は静脈内である。
【0078】
液体シンチレーションベースアッセイに関して、トリチウム及び14C標識化合物を、in vitro結合実験、in vitro/ex vivoオートラジオグラフィー、及び開発中のGluN2B-アンタゴニストのex vivo受容体占有実験において使用することができる。トリチウム標識プローブの利点は、放射線取扱いの容易さ(陽電子放出体と比べて実験室施設への費用が少なく、安全性が高い)及び生成物の長い貯蔵寿命であり、これはハイスループットスクリーニング及びたった1回分の製造で異なる時点でのいくつかの実験を可能にする。GluN2B標的化薬物開発において現在使用されている市販のトリチウム化放射性リガンドは非選択的[3H]イフェンプロジルであるため、前臨床実験の品質は著しく改善される。[3H]イフェンプロジルとは対照的に、本発明での使用のための化合物は、シグマ1受容体よりも高度に選択的であり、したがって、薬物候補等のNMDAアンタゴニストを評価するための改善された手段を提供する。
【0079】
化合物は、単独で、又は他の活性成分を含めて、薬学的に許容される賦形剤、例えば、化合物の安定性を増強する、それらを含有する医薬又は診断用組成物の投与を容易にする、増加した溶解又は分散をもたらす賦形剤、希釈剤、緩衝剤、粘度調整剤等と組み合わせて投与されうる。有利なことに、そのような組合せ組成物は、より少ない投与量の従来の診断薬を利用するので、それらの薬剤が単一物質として使用される場合に発生する、可能性のある毒性及び有害な副作用が回避される。上記の化合物は、従来の診断薬又は他の賦形剤と物理的に組み合わせて、単一の医薬組成物にすることができる。これに関しては、それぞれその全体が参照により本明細書に組み込まれるCappolaら:米国特許出願第09/902,822号、PCT/US 01/21860及び米国仮出願第60/313,527号を参照することができる。有利なことに、本発明の化合物は、単独で、又は他の生物学的に活性な化合物と組み合わせて、単回又は複数回投与形態で投与されうる。PET/SPECTスキャニングのための投与量における本発明の化合物の最適なパーセンテージ(w/w)は、変化してもよく、当業者の範囲内である。或いは、PET/SPECTスキャニングのための化合物は、いくつかの投与量で投与されうる。
【0080】
上記の通り、本明細書に記載の化合物の投与形態は、当業者に公知の薬学的に許容される賦形剤を含む。そのような投与形態を調製するための方法は公知である(例えば、H. C. Ansel及びN. G. Popovish、Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems、第5版、Lea and Febiger (1990)を参照されたい)。投与量レベル及び必要量は、当技術分野で十分に認識されており、特定の患者に適した利用可能な方法及び技術により当業者によって選択されうる。一部の実施形態では、投与量レベルは、70kgの患者に対して約1~100mg/用量の範囲である。PET/SPECTスキャン当たり1用量で十分でありうるが、PET/SPECTスキャン当たり最大2用量が与えられてもよい。静脈内用量については、最大2000mg/PET又はSPECTスキャンが必要とされうる。これに関しては、米国仮出願第60/339,249号も参照する。当業者が理解する通り、より少ない又はより多い投与量が、特定の因子に応じて必要とされうる。例えば、特定の用量及び診断手順は、患者の全体的な健康プロファイル、患者の障害の重症度及び経過又はそれに対する素質、並びに診断医師の判断等の因子に依存する。
【0081】
以下において、本発明は具体的な例によって例示され、具体的な例のいずれも添付の特許請求の範囲の範囲を限定すると解釈されるべきでない。
【図面の簡単な説明】
【0082】
図118F標識脱メチル化ベンザゼピン-1,7-ジオール誘導体の代表的な放射合成を示す。
図2】[3H]Me-NB1、[3H]OF-Me-NB1、[3H]PF-NB1及び[3H]MF-Me-NB1の代表的な放射合成を示す。
図3】[3H]OF-NB1の代表的な放射合成を示す。
図4】ベンザゼピン-1-オールの合成のための一般的な方法を示す。
図5】ラット及びマウスの脳における[18F]OF-NB1と[18F]OF-Me-NB1とのオートラジオグラフィー比較を示す。
図6】ラット及びマウスの脳における[18F]PF-NB1と[18F]PF-Me-NB1とのオートラジオグラフィー比較を示す。
図7】ラット及びマウスの脳におけるGluN2Bに対するin vitroでの[18F]OF-NB1の選択的及び特異的結合を示す。
図8】(R)-[18F]OF-NB1のex vivo代謝産物研究を示す。
図9】ラットの脳における[18F]OF-NB1と[18F]OF-Me-NB1との時間-放射能曲線(TACS)の比較を示す。
図10】ラットの脳における[18F]PF-NB1と[18F]PF-Me-NB1との時間-放射能曲線(TACS)の比較を示す。
図11】ラットの脳における、異なる用量の実験的GluN2BアンタゴニストCP-101,606を使用する、(R)-[18F]OF-NB1の時間-放射能曲線(TACS)を示す。
【発明を実施するための形態】
【実施例0083】
(実施例1)
化学反応
ベンザゼピン-1-オールの合成のための一般的な方法は、例えばTewesら、ChemMedChem 2010、5、687~695から当技術分野で公知である。本発明での使用のための標識化合物を製造するために使用される代表的な合成経路は、図4に示されている。図4の合成経路は、ベンザゼピン-1-オールの誘導体及び本発明での使用のための実質的に全ての化合物をもたらすように、一般的に公知の方法によって適合されうる。当業者は、本発明の任意のPETリガンドの合成に適するように合成経路を日常的に適合させる。
【0084】
(実施例2)
F-18放射性標識化
[18F]フッ化物を製造し、アニオン交換カートリッジ(Waters社SepPak Accell QMAカートリッジ炭酸塩、前処理なし)で捕捉し、次いでMeCN/H2O(4:1、0.9mL)中のKryptofix222(6.3mg/mL)、K2C2O4(1mg/mL)及びK2CO3(0.1mg/mL)の溶液で溶出させ、続いてMeCN(3x1mL)で共沸乾燥させた(Preshlockら、ChemComm 2016)。reactivialを空気(20mL)でパージし、残渣を0.3mLの乾燥ジメチルアセトアミド(DMA)中の6~8mgのボロン酸エステル前駆体2a、2b、2c(図1)及び14mgのCu(OTf)2(py)4の溶液に再溶解させた。得られた溶液を120℃で20分間撹拌し、その後1.5mLのMeCN/H2O(1:1)で希釈した。0.4mLの水性NaOH(10M)を添加したら、混合物を95℃で15分間撹拌した。生成物をセミ分取HPLC(Agilent社Eclipse XBD-C18カラム、250×9.4mm、5μm、H2O中0.1%H3PO4(溶媒A)、MeCN(溶媒B);0.0~5.0分、20%B;5.1~20.0分、20~35%B;20.1~25.0分、35%B、25.1~30.0分、35~60%B、30.1~33.0分、60~90%B、33.1~36.0分、90%B、36.1~38.0分、90~20%B、38.1~42.0分、20%B、流速4mL/分、230nmでのUV検出)によって精製した。収集した画分を35mLの水で希釈し、生成物をC18 lightカートリッジ(Waters社、5mLのEtOH及び5mLの水で前処理)で捕捉した。カートリッジを5mLの水で洗浄し、続いて生成物を0.5mLのEtOHで溶出させた。生成物を生理食塩水中5%EtOHで製剤化して、[18F]OF-Me-NB1 3a、[18F]PF-Me-NB1 3b又は[18F]MF-Me-NB1 3c(図1)のいずれかを得た。或いは、エタノールを90℃で蒸発させ、続いてMeCN(3×0.8mL)で共沸乾燥させた。残渣を氷浴中で冷却した後、0.4mLのDCMに再溶解させた。0.4mlのBBr3(DCM中1M)を同時に添加する間、バイアルを氷浴中で維持し、続いて室温で15分間撹拌した。DCMを蒸発乾固させ、その後水性0.1%H3PO4/MeCN(5:1、3mL)に再溶解させた。その後、生成物をセミ分取HPLC(Agilent社Eclipse XBD-C18カラム、250×9.4mm、5μm、H2O中0.1%H3PO4(溶媒A)、MeCN(溶媒B);0.0~5.0分、20%B;5.1~20.0分、20~35%B;20.1~25.0分、35%B、25.1~30.0分、35~60%B、30.1~33.0分、60~90%B、33.1~36.0分、90%B、36.1~38.0分、90~20%B、38.1~42.0分、20%B、流速4mL/分、230nmでのUV検出)によって精製した。収集した画分を35mLの水で希釈し、生成物をC18 lightカートリッジ(Waters社、5mLのEtOH及び5mLの水で前処理)で捕捉した。カートリッジを5mLの水で洗浄し、続いて生成物を0.5mLのEtOHで溶出させた。生成物を5%EtOHで製剤化して、[18F]OF-NB1 4a、[18F]PF-NB1 4b又は[18F]MF-NB1 4c(図1)のいずれかを得た。分析用HPLCシステム(Waters社Atlantis T3カラム、150×4.6mm、3μm、H2O中0.1%TFA(溶媒A)、MeCN(溶媒B);0.0~10.0分、40~60%B;10.1~11.0分、60~40%B;11.1~15.0分、40%B、流速1mL/分、230nmでのUV検出)を使用して品質管理を行った。対応する非放射性参照化合物を同時注入することによって、放射性リガンドの同一性を確認し、参照化合物の確立されたUV較正曲線に基づいてモル活性を算出した。放射化学的変換率(RCC)は9~25%の範囲であり、放射化学的純度は95%を超えた。モル活性は合成の終了時に61~168GBq/μmolの範囲であった。
【0085】
(実施例3)
オートラジオグラフィー
齧歯類の脳組織をTissue-Tek(登録商標)(O.C.T.(商標)Tissue-Tek(登録商標)、Sakura Finetek Europe B.V.社、Alphen aan den Rijn、Netherlands)に包埋した。厚み10μmの水平ラット及びマウス脳切片をクライオスタット(Cryo-Star HM 560 MV;Microm、Thermo Scientific社、Wilmington、DE、USA)で調製した。組織切片をSuperFrost Plusスライド(Menzel社、Braunschweig、Germany)に載せ、更なる使用まで-20℃で保存した。オートラジオグラフィー実験の前に、脳薄片を最初に氷上で15分間解凍し、その後30mM HEPES、0.56mM MgCl2、110mM NaCl、3.3mM CaCl2、5mM KCl及び0.1%脂肪酸不含ウシ血清アルブミン(BSA)を含有する緩衝液(pH7.4)中で、0℃で10分間前処理した。乾燥させたら、組織切片を1mLのそれぞれの放射性リガンド(3nM)と、加湿チャンバー内で、21℃で15分間インキュベートした。σ1R遮断のために、SA4503、フルスピジン又は(+)-ペンタゾシンのいずれかの1μM溶液を放射性トレーサー溶液に添加した。GluN2B遮断実験のために、CERC-301、EVT101又はCP101,606のいずれかの1μM溶液を放射性トレーサー溶液に添加した。脳薄片を、30mM HEPES、0.56mM MgCl2、110mM NaCl、3.3mM CaCl2、5mM KCl及び0.1%脂肪酸不含ウシ血清アルブミン(BSA)を含有する緩衝液(pH7.4)で5分間洗浄し、同じイオン組成であるがBSAを含まない第2の緩衝液で3分間2回更に洗浄した。組織切片を蒸留水に2回浸し、その後乾燥させ、ホスホロイメージャープレート(phosphor imager plate)(Fuji社、Dielsdorf、Switzerland)に30分間曝露した。フィルムをBAS5000リーダー(Fuji社)でスキャンし、AIDA 4.50.010ソフトウェア(Raytest Isotopenmessgerate GmbH社、Straubenhardt、Germany)を使用して画像を作成した。メチル化及び脱メチル化NB1の典型的なオートラジオグラフィーを図5図6及び図7に示す。トレーサーの分布は、脳全体においてGluN2Bの発現分布と一致している。更に、特異性を確立するためにGluN2B遮断薬(Ro 25-6981、CP101,606(Sigma-Aldrich社、Buchs、Switzerland))を使用した。選択性を確立するための陰性対照として、GluN2A遮断薬NVP-AAM077(Sigma-Aldrich社、Buchs、Switzerland)及び内因性リガンドであるグルタミン酸を使用した。
【0086】
(実施例4)
ラットの脳のPETスキャン及び時間-放射能曲線及び受容体占有
Wistarラットにイソフルランで麻酔をかけ、15~38MBq、0.6~1.7nmol/kg(ラット)のメチル化及び脱メチル化放射性標識リガンドの尾静脈注射後、PET/CTスキャナー(Super Argus、Sedecal社、Madrid、Spain)で90分間スキャンした。解剖学的方向のために、PETスキャンに続いてコンピューター断層撮影を行った。Wistarラットにおける用量応答及び受容体占有は、トレーサー投与の直前の異なる用量(3、10及び15mg/kg)のCP101,606(GluN2B-アンタゴニスト、Sigma-Aldrich社、Buchs、Switzerland)の尾静脈注射によって行った。本発明者らのグループ(Haiderら、Eur. J. Med. Chem. 2018)によって以前に記載された通りに、得られたデータを、ユーザー定義の時間フレームで、0.3875×0.3875×0.775mm3のボクセルサイズで再構成した。時間-放射能曲線(TAC)は、あらかじめ決められた関心領域に対するPMOD v3.7(PMOD Technologies社、Zurich、Switzerland)によって差し引いた。結果は標準取込値(SUV)として示され、1cm3当たりの減衰補正放射能を体重1グラム当たりの注射用量で割ったものを示す。受容体占有評価は以前に報告された通りに行った(Haiderら、Eur. J. Med. Chem. 2018)。メチル化及び脱メチル化ベンザゼピンのベースラインTACを図9及び図10に示す。(R)[18F]-OF-NB1を使用する典型的な受容体占有研究から得られたTACを図11に示す。
【0087】
(実施例5)
in vitro結合親和性
GluN2Bに対する結合競合アッセイの実行は現況技術から既に公知であり(Szermerskiら、ChemMedChem、2018)、σ1受容体(σ1R)に対するアッセイも公知である(Chuら、Current Protocols in Pharmacology、2015)。約1mgタンパク質/mL(GluN2BサブユニットIC50決定のため)及び約2mgタンパク質/mL(σ1R IC50決定のため)のラットの膜ホモジネートの一部をアッセイにおいて使用した(Bradfordの方法によって決定した)。使用した放射性リガンドは、GluN2B結合競合アッセイについては[3H]イフェンプロジル(Perkin Elmer社)であり、σ1R結合競合アッセイについては[3H](+)-ペンタゾシン(Perkin Elmer社)であった。試験したリガンドについて、8つの異なる濃度の希釈系列を30pM~最大30nMの範囲で調製した。GluN2Bサブユニット結合アッセイのために、[3H]イフェンプロジルを基質及び1mg/ml総タンパク質と一緒に、200μlの総体積のHEPES緩衝液(30mM、110mM NaCl、5mM KCl、2.5mM CaCl2、1.2mM MgCl2、pH7.4)中で、25℃で60分間、機械的振盪下(110Rpm)でインキュベートした。σ1R結合競合結合アッセイは、総タンパク質濃度、インキュベーション時間及び温度をそれぞれ2mgタンパク質/mL、37℃及び150分に変更して同様に実施した。インキュベーションの終了は、3mlのHEPES緩衝液での希釈、続いて、0.05%ポリエチレンイミン溶液中でプレインキュベートしたガラスマイクロファイバーフィルター(Whatman社GF/C 25mm)による濾過によって完了した。放射能を測定するために、シンチレーション液(10ml/シンチレーションバイアル、Ultima Gold、Perkin Elmer社)を利用し、放射能をPackard 2200CA TRI-CARB液体シンチレーション分析器によって測定した。得られたIC50値を、Cheng及びPrusoffの式(Cheng Y、Prusoff WH、1973、Biochem Pharmacol.22 (23))を使用してKi値に変換した。メチル化(OF-Me-NB1及びPF-Me-NB1)及び脱メチル化(OF-NB1及びPF-NB1)のKi値を以下のTable 1(表1)に示す。
【0088】
【表1】
【0089】
(実施例6)
in vitro結合親和性
Wistarラットに242~704MBq(14.8~27.5nmol/kg)の(R)-[18F]OF-Me-NB1及び(R)-[18F]OF-NB1を注射した。あらかじめ決められた時間(15、30及び60分)での脳抽出物の試料を得、以前に報告された通りにradio-UPLCによって分析した(Haiderら、Eur. J. Med. Chem. 2018)。脳において放射性代謝産物が最大60分検出されなかったので、このクラスの化合物は脳において代謝的に安定であることがわかった。典型的な代謝産物研究を(R)-[18F]OF-NB1について図8に示す。
【0090】
(実施例7)
トリチウム標識化
メチル化リガンドについて、典型的なトリチウム標識化手法を図2に提示する。乾燥DMF(0.2mL)中の(R)-NB1(0.5mg、1.6μmol)の撹拌溶液に炭酸セシウム(2.5mg、7.7μmol)を添加し、得られた懸濁液を室温で5分間撹拌した。DMF(0.1mL)中の[3H]ヨードメタン(15MBq、ARC社、St Lous、US、モル活性1.4GBq/μmol)の溶液を滴下添加し、反応混合物を90℃で1時間撹拌した。混合物を水性TFA緩衝液(0.1%、0.7mL)で希釈し、その後L-6200Aポンプシステム、D-6000インターフェース、L-4250 UV-VIS検出器及びセミ分取カラム(Waters社Sunfire Prep C18カラム(150×10.0mm、5μm)を備えるセミ分取HPLCシステム(Merck Hitachi社)に注入した。以下の通り、0.1%水性TFA(溶媒A)及びMeCN(溶媒B)の勾配系を精製のために使用した:0~5分20%B、5~40分20~95%B、40~41分95~20%B。生成物を収集し、4mLの水で希釈し、Waters社Sep Pak C18 lightカートリッジ(5mLのエタノール及び5mLの水で前処理)に通した。カートリッジを5mLの水で洗浄し、生成物を1mLのエタノールで溶出させた。品質管理は、同じHPLCシステム及び勾配を用いて行った。合成は担体付加及び無担体付加条件下で成功裏に行われ、最終生成物は-20℃で保存した。トリチウムを脱メチル化NB1リガンドに導入する別の例は、図3に示されている通り、芳香族トリチウム化を介しうる(McCarthyら、J. Label. Compd. Radiopharm、1997)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2023-07-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽電子放出断層撮影(PET)、単一光子放射断層撮影(SPECT)、液体シンチレーションカウントアッセイ、又はオートラジオグラフィーによるNMDA受容体関連疾患又は障害の診断での使用のための式(I)
【化1】
[式中、
- 式(I)におけるR は、陽電子放出断層撮影(PET)、単一光子放射断層撮影(SPECT)、液体シンチレーションカウントアッセイ、及びオートラジオグラフィーからなる群から選択される方法における検出に適した放射性標識原子を含む置換(C 5 ~C 6 )アリールであり;前記放射性標識原子は、 3H-;11C-;14C-;18F-;13N-;15O-;123I-;124I-;125I-;131I-からなる群から選択され;
- R1、R2及びR3の1つは、水素、重水素、トリチウム、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、-OH、-CN、-NO2、-NH2、-SH2、-(C1~C4)アルキル、フッ素化-(C1~C4)アルキル及びフッ素化-O(C1~C4)アルキルからなる群から独立して選択され、
R1~R3のその他は水素又はフッ素であり、Tは3Hであり;
- R4は、水素、-(C1~C4)アルキル、フッ素化-(C1~C4)アルキル、塩素化-(C1~C4)アルキル、臭素化-(C1~C4)アルキル、重水素化-(C1~C4)アルキル、及びトリチウム化-(C1~C4)アルキルからなる群から選択され
- Yは、
(C1~C6)アルキル
なくとも1つの重水素、トリチウム、18F、19F、塩素、臭素、ヨウ素OH又はそれらの組み合わせで置換されている(C1~C6)アルキル、及び(C1~C6)アルコキシアルキルからなる群から選択される]
の化合物及びその薬学的に許容される塩又は溶媒和物。
【請求項2】
少なくとも1つの放射性標識原子が、11C-原子、18F-原子、123I-原子、124I-原子、125I-原子、又は131I-原子である、請求項1に記載の使用のための化合物。
【請求項3】
R4又はR5の少なくとも1つが、11C-原子、18F-原子、123I-原子、124I-原子、125I-原子、又は131I-原子を含、請求項1又は2に記載の使用のための化合物。
【請求項4】
R 4 が、-OCH 2 CH 2 - 18 F、-OCH 2 CH 2 CH 2 - 18 F、OCH 2 CH 2 - 123 I、若しくは-OCH 2 CH 2 CH 2 - 123 Iであり、R 6 が- 18 F若しくは- 123 Iであるか又はそれらの組合せである、請求項3に記載の使用のための化合物。
【請求項5】
R 1 、R 2 及びR 3 の1つが、-CH 2 F、-CD 2 F、-CT 2 F、FCH 2 CH 2 -、FCH 2 CH 2 CH 2 -、OCH 2 F、-OCD 2 F、FCH 2 CH 2 O-、及びFCH 2 CH 2 CH 2 O-からなる群から独立して選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項6】
R 4 が、-CH 2 F、-CD 2 F、-CT 2 F、FCH 2 CH 2 -、FCH 2 CH 2 CH 2 -、FCD 2 CD 2 -、FCD 2 CD 2 CD 2 -、FCT 2 CT 2 -、FCT 2 CT 2 CT 2 -、-CH 2 Cl、-CD 2 Cl、-CT 2 I、ClCH 2 CH 2 -、ClCH 2 CH 2 CH 2 -、ClCD 2 CD 2 -、ClCD 2 CD 2 CD 2 -、ClCT 2 CT 2 -、ClCT 2 CT 2 CT 2 -、-CH 2 I、-CD 2 I、-CT 2 I、ICH 2 CH 2 -、ICH 2 CH 2 CH 2 -、ICD 2 CD 2 -、ICD 2 CD 2 CD 2 -、ICT 2 CT 2 -、及びICT 2 CT 2 CT 2 -からなる群から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項7】
R 1 ~R 3 が、水素、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素である、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項8】
R 5 が、置換フェニル又は置換ピリジルからなる群から選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項9】
R1、R2及びR3の1つが、-H、-D、-T、-CH3、-CH2F、-CD2F、FCH2CH2-、FCH2CH2CH2-、-OCH3、-OCH2F、-OCD2F、FCH2CH2O-及びFCH2CH2CH2O-からなる群から独立して選択され、R1~R4のその他が水素又はフッ素である、請求項1から8のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項10】
R1が、-CH3、-CH2F、-CD2F、FCH2CH2-、FCH2CH2CH2-、-OCH3、-OCH2F、-OCD2F、FCH2CH2O-及びFCH2CH2CH2O-からなる群から選択され、R2、R3及びR4が水素又はフッ素である、請求項1から9のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項11】
R4が、水素、-CH2F、-CD2F、FCH2CH2-、及びFCH2CH2CH2-からなる群から選択される、請求項1から10のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項12】
R5
【化2】
(式中、Zは、水素、重水素、トリチウム、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、シアノ及びニトリルからなる群から選択され、R6は、水素、重水素、トリチウム、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、シアノ、-CH2F、-CD2F、FCH2CH2-、FCH2CH2-、及びFCH2CH2CH2-からなる群から選択される)からなる群から選択される、請求項1から11のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項13】
R6が、水素、トリチウム、フッ素及びヨウ素からなる群から選択される、請求項1から12のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項14】
炭素1においてR配置である、請求項1から13のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項15】
炭素1においてS配置である、請求項1から13のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項16】
- R1が、-OCH3、-OCH2F、-OCD2F、FCH2CH2O-及びFCH2CH2CH2O-からなる群から選択され、R2、R3及びR4が水素であり、
- R4が水素であり、
- Yが-(CH2)4-であり、
- R5が置換フェニルである、
請求項1から15のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項17】
- R4が、水素、-CH2F、-CD2F、FCH2CH2-及びFCH2CH2CH2-からなる群から選択され、
- Yが-(CH2)4-又は-(CH2)2-O-(CH2)2-であり、
- R5
【化3】
(式中、Zは、水素、トリチウム又はニトリルであり、R6は、フッ素、ヨウ素、-CH2F、-CD2F、FCH2-、FCH2CH2-、及びFCH2CH2CH2-からなる群から選択される)からなる群から選択される、
請求項1から16のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項18】
- R4が水素であり、
- Yが(CH2)4であり、
- R5が置換フェニルである、
請求項1から17のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項19】
【化4】
(式中、
- R7は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、重水素、トリチウム、-CH2F、-CD2F、FCH2CH2 -及びFCH2CH2CH2-からなる群から選択され、
- X及びZは、水素、重水素、トリチウム、フッ素、ヨウ素及びニトリルからなる群から独立して選択される)からなる群から選択される、請求項1から18のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項20】
【化5】
(式中、
- X及びZは、水素、重水素、トリチウム、フッ素、ヨウ素及びニトリルからなる群から独立して選択され、
- X及び/又はZがトリチウムである場合、フッ素は19Fであり、X及び/又はZがトリチウムでない場合、フッ素は18Fである)からなる群から選択される、請求項1から19のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項21】
陽電子放出断層撮影(PET)、単一光子放射断層撮影(SPECT)、液体シンチレーションカウントアッセイ、又はオートラジオグラフィーによるNMDA受容体関連疾患又は障害の診断での使用のための請求項1に記載の化合物を含む組成物であって、NMDA受容体関連疾患又は障害が、神経変性疾患又は障害、アルツハイマー病、抑鬱障害、パーキンソン病、外傷性脳損傷、脳卒中、片頭痛、アルコール離脱、並びに慢性及び神経因性疼痛からなる群から選択される、組成物
【請求項22】
推定NMDA受容体アンタゴニストを評価するための方法であって、
(a)トリチウム又は14C-原子を含む、請求項1から20のいずれか一項に記載の使用のための化合物を用意する工程と、
(b)
(i)液体シンチグラフィー検出ベースアッセイにおいて、推定NMDA受容体アンタゴニストと工程(a)の化合物の競合的結合親和性を測定する工程、及び
(ii)in vitro又はex vivoオートラジオグラフィーアッセイを実施する工程であって、推定NMDA受容体アンタゴニストが工程(a)の化合物を遮断する又は外すために使用される、工程
からなる群から選択される工程を実施する工程と、
(c)推定NMDA受容体アンタゴニストによって、NMDA受容体から工程(a)の化合物が外されることに基づいて、推定NMDA受容体アンタゴニストがNMDA受容体アンタゴニストであるかどうかを決定する工程と
を含む方法。
【外国語明細書】