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特開2023-134631ゼータカインにより指向性を付与したIL-13受容体α2標的T細胞免疫療法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134631
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】ゼータカインにより指向性を付与したIL-13受容体α2標的T細胞免疫療法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20230920BHJP
   C12N 15/53 20060101ALI20230920BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20230920BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20230920BHJP
   C12N 15/861 20060101ALI20230920BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230920BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230920BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230920BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230920BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20230920BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/53
C12N15/113 Z
C12N15/867 Z
C12N15/861 Z
C07K19/00
C12N5/10
A61P35/00
A61P25/00
A61K35/17
A61K45/00
【審査請求】有
【請求項の数】47
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023114641
(22)【出願日】2023-07-12
(62)【分割の表示】P 2020549002の分割
【原出願日】2019-03-12
(31)【優先権主張番号】62/643,139
(32)【優先日】2018-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515045617
【氏名又は名称】シアトル チルドレンズ ホスピタル (ディービーエイ シアトル チルドレンズ リサーチ インスティテュート)
【住所又は居所原語表記】1900 Ninth Ave. Seattle, WA 98101 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】テンペラ,ジャコモ
(72)【発明者】
【氏名】ジェンセン,マイケル シー.
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,アダム
(57)【要約】      (修正有)
【課題】改善されたさらなるT細胞免疫療法のための、核酸及びそれらを有する細胞を提供する。
【解決手段】本発明は、特定の配列を含むゼータカインをコードする核酸を提供する。それによる、野生型IL-13の50倍の親和性でIL-13受容体α2(IL13Ra2)に特異的に結合するゼータカインを有する細胞、およびこのような細胞を含む組成物を使用した、がん細胞(たとえば固形腫瘍細胞など)を標的とする細胞ベースの免疫療法を含む。いくつかの実施形態において、前記受容体は、スペーサー領域を含み、たとえば、特定の利点を提供できるように設計された特定のスペーサー領域を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞膜結合型IL-13ムテインにより指向性を付与した受容体であるゼータカイン(zetakine)をコードする核酸であって、
該受容体ゼータカインが、
IL-13のムテインとスペーサーを含む細胞外ドメイン;
膜貫通ドメイン;および
細胞内シグナル伝達領域
を含み、
前記スペーサーが、前記ムテインと前記膜貫通ドメインの間に位置する、
核酸。
【請求項2】
前記IL-13のムテインが、配列番号16のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の核酸。
【請求項3】
前記IL-13のムテインが、配列番号16のアミノ酸配列を含む、請求項1または2に記載の核酸。
【請求項4】
前記スペーサーがペプチドスペーサーである、請求項1~3のいずれか1項に記載の核酸。
【請求項5】
前記スペーサーが、IgG4ヒンジスペーサー(短いスペーサー)、IgG4ヒンジ-CH3スペーサー(中程度の長さのスペーサー)、またはIgG4ヒンジ-CH2-CH3スペーサー(長いスペーサー)を含むか、これらのいずれかからなるか、実質的にこれらのいずれかからなる、請求項1~4のいずれか1項に記載の核酸。
【請求項6】
前記スペーサーが、IgG4ヒンジ-CH3スペーサー(中程度の長さのスペーサー)を含むか、このスペーサーからなるか、実質的にこのスペーサーからなる、請求項1~5のいずれか1項に記載の核酸。
【請求項7】
前記スペーサーが、IgG4ヒンジ-CH2-CH3スペーサー(長いスペーサー)を含むか、このスペーサーからなるか、実質的にこのスペーサーからなる、請求項1~6のいずれか1項に記載の核酸。
【請求項8】
前記スペーサーが、配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、この配列からなるか、実質的にこの配列からなる、請求項1~7のいずれか1項に記載の核酸。
【請求項9】
前記スペーサーが、配列番号10のアミノ酸配列を含むか、この配列からなるか、実質的にこの配列からなる、請求項1~8のいずれか1項に記載の核酸。
【請求項10】
前記スペーサーが、配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、この配列からなるか、実質的にこの配列からなる、請求項1~9のいずれか1項に記載の核酸。
【請求項11】
前記スペーサーが、配列番号11のアミノ酸配列を含むか、この配列からなるか、実質的にこの配列からなる、請求項1~10のいずれか1項に記載の核酸。
【請求項12】
前記膜貫通ドメインが、CD28膜貫通ドメイン(CD28tm)を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の核酸。
【請求項13】
前記細胞内シグナル伝達ドメインが、CD27、CD28、4-1BB、OX-40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、LFA-1、CD2、CD7、NKG2C、B7-H3およびこれらの組み合わせからなる群から選択される共刺激ドメインと、CD3ζドメインの全体またはその一部との組み合わせを含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の核酸。
【請求項14】
前記細胞内シグナル伝達領域が、CD3ζドメインのシグナル伝達機能部分と、4-1BBドメインの共刺激機能部分を含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の核酸。
【請求項15】
マーカーをコードする配列をさらに含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の核酸。
【請求項16】
前記マーカーが、細胞表面受容体の末端切断形態を含み、該マーカーがEGFRtであってもよい、請求項15に記載の核酸。
【請求項17】
メトトレキサートにより選択できるように構成されたジヒドロ葉酸還元酵素をコードする導入遺伝子をさらに含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の核酸。
【請求項18】
前記ジヒドロ葉酸還元酵素をコードする導入遺伝子が、ジヒドロ葉酸還元酵素の二重変異体(DHFRdm)である、請求項17に記載の核酸。
【請求項19】
前記ジヒドロ葉酸還元酵素の二重変異体が、L22Fアミノ酸変異およびF31Sアミノ酸変異を含む、請求項17または18に記載の核酸。
【請求項20】
リボソームスキップ配列をコードする配列をさらに含む、請求項1~19のいずれか1項に記載の核酸。
【請求項21】
前記リボソームスキップ配列が、P2AまたはT2Aを含む、請求項20に記載の核酸。
【請求項22】
請求項1~21のいずれか1項に記載の核酸を含む発現ベクター。
【請求項23】
ウイルスベクターである、請求項22に記載の発現ベクター。
【請求項24】
レンチウイルスベクターまたはアデノウイルスベクターである、請求項22または23に記載の発現ベクター。
【請求項25】
請求項1~21のいずれか1項に記載の核酸によってコードされるキメラ受容体ポリペプチド。
【請求項26】
請求項1~21のいずれか1項に記載の核酸を含む宿主細胞。
【請求項27】
T細胞または前駆T細胞である、請求項26に記載の宿主細胞。
【請求項28】
ナイーブCD8+T細胞、セントラルメモリーCD8+T細胞、エフェクターメモリーCD8+T細胞およびバルクCD8+T細胞からなる群から選択されるCD8+細胞傷害性Tリンパ球である、請求項26または27に記載の宿主細胞。
【請求項29】
前記CD8+細胞傷害性Tリンパ球がセントラルメモリーT細胞であり、該セントラルメモリーT細胞が、CD45RO+、CD62L+およびCD8+である、請求項28に記載の宿主細胞。
【請求項30】
ナイーブCD4+T細胞、セントラルメモリーCD4+T細胞、エフェクターメモリーCD4+T細胞およびバルクCD4+T細胞からなる群から選択されるCD4+ヘルパーTリンパ球である、請求項26または27に記載の宿主細胞。
【請求項31】
前記CD4+ヘルパーリンパ球が、ナイーブCD4+T細胞であり、該ナイーブCD4+T細胞が、CD45RA+、CD62L+およびCD4+であり、かつCD45RO-である、請求項30に記載の宿主細胞。
【請求項32】
前駆T細胞である、請求項26~31のいずれか1項に記載の宿主細胞。
【請求項33】
造血幹細胞である、請求項26~32のいずれか1項に記載の宿主細胞。
【請求項34】
請求項26~32のいずれか1項に記載の宿主細胞と薬学的に許容される添加剤を含む組成物。
【請求項35】
請求項26~32のいずれか1項に記載の宿主細胞を作製する方法であって、
請求項1~21のいずれか1項に記載の核酸をリンパ球に導入する工程;
抗CD3抗体および/または抗CD28抗体ならびに少なくとも1種の恒常性サイトカインの存在下で前記リンパ球を培養する工程;ならびに
前記核酸または該核酸を含むベクターで形質導入した細胞を選択的に濃縮できるように構成された選択試薬で前記リンパ球を選択する工程
を含む方法。
【請求項36】
宿主細胞を作製する方法であって、
請求項1~21のいずれか1項に記載の核酸をリンパ球に導入する工程;
抗CD3抗体および/または抗CD28抗体ならびに少なくとも1種の恒常性サイトカインの存在下で前記リンパ球を培養する工程;ならびに
前記核酸または該核酸を含むベクターで形質導入した細胞を選択的に濃縮できるように構成された選択試薬で前記リンパ球を選択する工程
を含む方法。
【請求項37】
前記選択試薬がメトトレキサートである、請求項35または36に記載の方法。
【請求項38】
前記リンパ球が、CD45RA-、CD45RO+およびCD62L+の表現型を有する、請求項35~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記リンパ球が、CD8+またはCD4+である、請求項35~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記サイトカインが、IL-15、IL-7および/またはIL-21である、請求項35~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
マーカータンパク質をコードする第2の核酸を前記宿主細胞に導入する工程をさらに含む、請求項35~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記マーカータンパク質がEGFRtである、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
医薬品において使用するため、またはIL-13受容体α2(IL-13Ra2)を発現するがんもしくは固形腫瘍の治療もしくは抑制において使用するための、請求項26~32のいずれか1項に記載の宿主細胞。
【請求項44】
前記がんが脳がんである、請求項43に記載の使用。
【請求項45】
前記がんがIL-13Rα陽性の悪性腫瘍である、請求項43または44に記載の使用。
【請求項46】
前記がんが神経膠芽腫である、請求項43~45のいずれか1項に記載の使用。
【請求項47】
前記がんが多形膠芽腫(GBM)である、請求項43~46のいずれか1項に記載の使用。
【請求項48】
対象においてがんを治療、抑制または緩和する方法であって、
がんの治療、抑制または緩和が必要な対象に請求項26~32のいずれか1項に記載の宿主細胞を投与する工程を含む方法。
【請求項49】
前記がんがIL13Rα陽性の悪性腫瘍である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記がんが脳がんである、請求項48または49に記載の方法。
【請求項51】
前記がんが神経膠腫または神経膠芽腫である、請求項48~50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
前記がんが神経膠腫である、請求項48~51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
前記がんが多形膠芽腫(GBM)である、請求項48~51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
化学療法および放射線療法から選択される付加療法を投与する工程をさらに含む、請求項48~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
前記化学療法薬が、電気化学療法、アルキル化剤、代謝拮抗薬(たとえば、5-フルオロウラシル(5-FU)、6-メルカプトプリン(6-MP)、カペシタビン(ゼローダ(登録商標))、クラドリビン、クロファラビン、シタラビン(Ara-C(登録商標))、フロクスウリジン、フルダラビン、ゲムシタビン(ジェムザール(登録商標))、ヒドロキシウレア、メトトレキサート、ペメトレキセド(アリムタ(登録商標))、ペントスタチンおよびチオグアニン)、抗腫瘍抗生物質、トポイソメラーゼ阻害薬、分裂阻害薬、コルチコステロイド、DNAインターカレーターまたはチェックポイント阻害薬(チェックポイントキナーゼCHK1、CHK2)を含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記対象が哺乳動物である、請求項48~55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
前記対象がヒトである、請求項48~56のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年3月14日に出願された「ゼータカインにより指向性を付与したIL-13受容体α2標的T細胞免疫療法」という名称の米国仮出願第62/643139号の優先権の利益を主張するものであり、この出願は引用によりその全体が本明細書に明示的に援用される。
【0002】
配列表の参照
本願は電子形式の配列表とともに出願されたものである。この配列表は、SCRI179WOSEQLISTのファイル名で2019年3月12日に作成された約35kbのファイルとして提供されたものである。この電子形式の配列表に記載の情報は、参照によりその全体が本明細書に明示的に援用される。
【0003】
本明細書で提供する方法および組成物の実施形態のいくつかは、細胞膜結合型IL-13ムテインにより指向性を付与した受容体であるゼータカイン(zetakine)を有する細胞、たとえば、野生型IL-13の50倍の親和性でIL-13受容体α2(IL13Ra2)に特異的に結合するゼータカインを有する細胞、およびこのような細胞を含む組成物を使用した、がん細胞(たとえば固形腫瘍細胞など)を標的とする細胞ベースの免疫療法を含む。いくつかの実施形態において、前記受容体は、スペーサー領域を含み、たとえば、該受容体に特定の望ましい特性を提供できるように設計され、特に既定の長さを有するように選択されたスペーサー領域を含む。
【背景技術】
【0004】
脳がんについての理解が一層深まってきているにもかかわらず、過去十年間において、死亡率は一定の水準のままであり、革新的な新規治療法が早急に必要とされている。CD19を標的としたCAR発現T細胞をB細胞悪性腫瘍の患者に投与したところ、完全寛解が認められたという注目すべき臨床データの裏付けを元に、現在、T細胞免疫療法は、がん療法として有望視されている。しかしながら、改善されたさらなるT細胞免疫療法が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で提供する方法および組成物の実施形態のいくつかは、細胞膜結合型IL-13ムテインにより指向性を付与した受容体であるゼータカイン(zetakine)をコードする核酸であって、
該受容体ゼータカインが、
IL-13のムテインとスペーサーを含む細胞外ドメイン;
膜貫通ドメイン;および
細胞内シグナル伝達領域
を含み、
前記スペーサーが、前記ムテインと前記膜貫通ドメインの間に位置すること
を特徴とする核酸を含む。
【0006】
いくつかの実施形態において、前記IL-13のムテインは、配列番号16のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、前記IL-13のムテインは、配列番号16のアミノ酸配列を含む。
【0007】
いくつかの実施形態において、前記スペーサーはペプチドスペーサーである。
【0008】
いくつかの実施形態において、前記ペプチドスペーサーは、110アミノ酸長以下であり、かつ1アミノ酸長以上または2アミノ酸長以上であり、たとえば、15アミノ酸長以下であり、かつ1アミノ酸長以上または2アミノ酸長以上である。
【0009】
いくつかの実施形態において、前記スペーサーは、IgG4ヒンジスペーサー(短いスペーサー)、IgG4ヒンジ-CH3スペーサー(中程度の長さのスペーサー)、またはIgG4ヒンジ-CH2-CH3スペーサー(長いスペーサー)を含むか、これらのいずれかからなるか、実質的にこれらのいずれかからなる。
【0010】
いくつかの実施形態において、前記スペーサーは、IgG4ヒンジ-CH3スペーサー(中程度の長さのスペーサー)を含むか、このスペーサーからなるか、実質的にこのスペーサーからなる。
【0011】
いくつかの実施形態において、前記スペーサーは、IgG4ヒンジ-CH2-CH3スペーサー(長いスペーサー)を含むか、このスペーサーからなるか、実質的にこのスペーサーからなる。
【0012】
いくつかの実施形態において、前記スペーサーは、配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、この配列からなるか、実質的にこの配列からなる。いくつかの実施形態において、前記スペーサーは、配列番号10のアミノ酸配列を含むか、この配列からなるか、実質的にこの配列からなる。
【0013】
いくつかの実施形態において、前記スペーサーは、配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、この配列からなるか、実質的にこの配列からなる。いくつかの実施形態において、前記スペーサーは、配列番号11のアミノ酸配列を含むか、この配列からなるか、実質的にこの配列からなる。
【0014】
いくつかの実施形態において、前記膜貫通ドメインは、CD28膜貫通ドメイン(CD28tm)を含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、前記細胞内シグナル伝達ドメインは、CD27、CD28、4-1BB、OX-40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、LFA-1、CD2、CD7、NKG2C、B7-H3およびこれらの組み合わせからなる群から選択される共刺激ドメインと、CD3ζドメインの全体またはその一部との組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、前記細胞内シグナル伝達領域は、CD3ζドメインのシグナル伝達機能部分と、4-1BBドメインの共刺激機能部分を含む。
【0016】
いくつかの実施形態は、マーカーをコードする配列をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記マーカーは、細胞表面受容体の末端切断形態を含み、該マーカーはEGFRtであってもよい。
【0017】
いくつかの実施形態は、メトトレキサートにより選択できるように構成されたジヒドロ葉酸還元酵素をコードする導入遺伝子をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記ジヒドロ葉酸還元酵素をコードする導入遺伝子は、ジヒドロ葉酸還元酵素の二重変異体(DHFRdm)である。いくつかの実施形態において、ジヒドロ葉酸還元酵素の二重変異体は、L22Fアミノ酸変異およびF31Sアミノ酸変異を含む。
【0018】
いくつかの実施形態は、リボソームスキップ配列をコードする配列をさらに含む。
【0019】
いくつかの実施形態において、前記リボソームスキップ配列はP2AまたはT2Aを含む。
【0020】
本明細書で提供する方法および組成物の実施形態のいくつかは、本明細書で提供する実施形態のいずれかによる核酸を含む発現ベクターを含む。いくつかの実施形態において、前記ベクターはウイルスベクターである。いくつかの実施形態において、前記ベクターは、レンチウイルスベクターまたはアデノウイルスベクターである。
【0021】
本明細書で提供する方法および組成物の実施形態のいくつかは、本明細書で提供する実施形態のいずれかによる核酸によってコードされるキメラ受容体ポリペプチドを含む。
【0022】
本明細書で提供する方法および組成物の実施形態のいくつかは、本明細書で提供する実施形態のいずれかによる核酸を含む宿主細胞を含む。
【0023】
いくつかの実施形態において、前記宿主細胞は、T細胞または前駆T細胞である。
【0024】
いくつかの実施形態において、前記宿主細胞は、ナイーブCD8+T細胞、セントラルメモリーCD8+T細胞、エフェクターメモリーCD8+T細胞およびバルクCD8+T細胞からなる群から選択されるCD8+細胞傷害性Tリンパ球である。いくつかの実施形態において、前記CD8+細胞傷害性Tリンパ球は、セントラルメモリーT細胞であり、該セントラルメモリーT細胞は、CD45RO+、CD62L+およびCD8+である。
【0025】
いくつかの実施形態において、前記宿主細胞は、ナイーブCD4+T細胞、セントラルメモリーCD4+T細胞、エフェクターメモリーCD4+T細胞およびバルクCD4+T細胞からなる群から選択されるCD4+ヘルパーTリンパ球である。いくつかの実施形態において、前記CD4+ヘルパーリンパ球は、ナイーブCD4+T細胞であり、該ナイーブCD4+T細胞は、CD45RA+、CD62L+およびCD4+であり、かつCD45RO-である。
【0026】
いくつかの実施形態において、前記宿主細胞は前駆T細胞である。
【0027】
いくつかの実施形態において、前記宿主細胞は造血幹細胞である。
【0028】
本明細書で提供する方法および組成物の実施形態のいくつかは、本明細書で提供する実施形態のいずれかによる宿主細胞と薬学的に許容される添加剤を含む組成物を含む。
【0029】
本明細書で提供する方法および組成物の実施形態のいくつかは、宿主細胞(たとえば、本明細書に記載の実施形態のいずれかによる宿主細胞など)を作製する方法であって、
本明細書に記載の実施形態のいずれかによる核酸をリンパ球に導入する工程;
抗CD3抗体および/または抗CD28抗体ならびに少なくとも1種の恒常性サイトカインの存在下で前記リンパ球を培養する工程;ならびに
前記核酸または該核酸を含むベクターで形質導入した細胞を選択的に濃縮できるように構成された選択試薬で前記リンパ球を選択する工程
を含む方法を含む。
【0030】
いくつかの実施形態において、前記選択試薬は、メトトレキサートを含む。
【0031】
いくつかの実施形態において、前記リンパ球は、CD45RA-、CD45RO+およびCD62L+の表現型を有する。いくつかの実施形態において、前記リンパ球はCD8+またはCD4+である。
【0032】
いくつかの実施形態において、前記サイトカインは、IL-15、IL-7および/またはIL-21である。
【0033】
いくつかの実施形態は、マーカータンパク質をコードする第2のポリヌクレオチドを前記宿主細胞に導入する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記マーカータンパク質はEGFRtである。
【0034】
本明細書で提供する方法および組成物の実施形態のいくつかは、医薬品において使用するため、またはIL-13受容体α2(IL-13Ra2)を発現するがんもしくは固形腫瘍の治療もしくは抑制において使用するための、本明細書に記載の実施形態のいずれかによる宿主細胞を含む。いくつかの実施形態において、前記がんは脳がんである。いくつかの実施形態において、前記がんはIL13Rα陽性の悪性腫瘍である。いくつかの実施形態において、前記がんは神経膠芽腫である。いくつかの実施形態において、前記がんは多形膠芽腫(GBM)である。
【0035】
本明細書で提供する方法および組成物の実施形態のいくつかは、対象においてがんを治療、抑制または緩和する方法であって、がんの治療、抑制または緩和が必要な対象に、本明細書で提供する実施形態のいずれかによる宿主細胞を投与する工程を含む方法を含む。いくつかの実施形態において、前記がんはIL13Rα陽性の悪性腫瘍である。いくつかの実施形態において、前記がんは脳がんである。いくつかの実施形態において、前記がんは神経膠腫または神経膠芽腫である。いくつかの実施形態において、前記がんは神経膠腫である。いくつかの実施形態において、前記がんは多形膠芽腫(GBM)である。いくつかの実施形態において、前記対象は哺乳動物である。いくつかの実施形態において、前記対象はヒトである。
【0036】
いくつかの実施形態は、化学療法および放射線療法から選択される付加療法を投与する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記化学療法薬は、電気化学療法、アルキル化剤、代謝拮抗薬(たとえば、5-フルオロウラシル(5-FU)、6-メルカプトプリン(6-MP)、カペシタビン(ゼローダ(登録商標))、クラドリビン、クロファラビン、シタラビン(Ara-C(登録商標))、フロクスウリジン、フルダラビン、ゲムシタビン(ジェムザール(登録商標))、ヒドロキシウレア、メトトレキサート、ペメトレキセド(アリムタ(登録商標))、ペントスタチンおよびチオグアニン)、抗腫瘍抗生物質、トポイソメラーゼ阻害薬、分裂阻害薬、コルチコステロイド、DNAインターカレーターまたはチェックポイント阻害薬(チェックポイントキナーゼCHK1、CHK2)を含む。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】スペーサー領域が様々に異なる特定のIL-13(E13Y)ゼータカインCARをコードする核酸の概略図を示す。IL-13(E13Y)ゼータカインCARをコードする核酸は、リーダー配列(EF1p);IL-13のムテイン(E13Y)をコードするポリヌクレオチド;3種のスペーサーのうちのいずれか1つをコードするポリヌクレオチド;CD28tm膜貫通配列をコードするポリヌクレオチド;および第1シグナル伝達ドメインである4-1BBドメインと共刺激ドメインであるCD3ζドメインを含むシグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドを含んでいた。前記3種のスペーサーは、改変IgG4ヒンジを含む短い「S」スペーサー;改変IgG4ヒンジと免疫グロブリンのCH3領域(IgG4ヒンジ-CH3)を含む中程度の長さの「M」スペーサー;および改変IgG4ヒンジと免疫グロブリンのCH2ドメインと免疫グロブリンのCH3ドメイン(IgG4ヒンジ-CH2-CH3)を含む長い「L」スペーサーであった。Lスペーサーは、CH2ドメインに2つの変異(L235D、N297Q)を含んでいた。さらに、CARは、自己切断型リボソームスキップ配列2Aペプチド(T2A)を含んでいた。いくつかの構築物において、lentivectorは、メトトレキサートにより選択できるように構成されたジヒドロ葉酸還元酵素の二重変異体(DHFRdm)をコードする導入遺伝子をさらに含んでいた。
【0038】
図2A】CD8+細胞の選択工程および培養条件を含む、キメラ受容体発現T細胞の作製方法の各工程を示す。CD8細胞の選択および培養条件:CD8マイクロビーズを使用して、PBMCからCD8 T細胞を選択した。選択した細胞をCD3/CD28マイクロビーズで刺激した後、レンチウイルスを使用して図1の構築物を形質導入した。いくつかの反復実験(*)では、EGFRtの下流にインフレームに挿入したT2A-DHFRdmをさらに含む構築物を前記CD8 T細胞に形質導入してT2A-DHFRdmを共発現させ、機能的意義のある量でIL13ゼータカインCARを共発現しているMTX耐性T細胞の選択を可能とした。
【0039】
図2B】Sスペーサー、MスペーサーまたはLスペーサーを含むCARを含むCD8+T細胞においてサロゲートマーカー(EGFRt)の発現を染色したフローサイトメトリーデータを示す。
【0040】
図3A】標的細胞としてのU87腫瘍細胞株、U251T腫瘍細胞株およびDAOY腫瘍細胞株においてIL13Ra2の発現を分析した結果を示す。
【0041】
図3B】Sスペーサー、MスペーサーまたはLスペーサーを有するCARを含むエフェクターCD8+T細胞の存在下における標的細胞(上パネル:U87;中央パネル:U251T;および下パネル:DAOY)の特異的な溶解を、図示した比率で分析したグラフを示す。データは、3人の異なるドナーの平均値±SDを示す。
【0042】
図3C】Sスペーサー、MスペーサーまたはLスペーサーを有するCARを含むCD8+T細胞によるサイトカインの産生を、標的細胞(上段の列:U87;中段の列:U251T;および下段の列:DAOY)の存在下で分析したグラフを示す。エラーバーは平均値±SDを示す。
【0043】
図4A】MスペーサーまたはLスペーサーを有するIL13ゼータカインCARを含むT細胞を様々な投与量で注射したマウスにおける腫瘍負荷の経時変化を示す流束を分析したグラフを示す。
【0044】
図4B】MスペーサーまたはLスペーサーを有するIL13ゼータカインCARを含むT細胞を様々な投与量で注射したマウスのカプランマイヤー生存曲線を示す。
【0045】
図5A】IL13ゼータカインCARを含む細胞を作製および分析する方法の各工程を示す。
【0046】
図5B】Mスペーサーまたは変異型Lスペーサーを有するIL13ゼータカインCARを含む細胞において、CD4、CD8、EGFTtおよびゼータカイン(抗IL13抗体で染色)の発現を分析したフローサイトメトリーデータを示す。
【0047】
図6】MスペーサーまたはLスペーサーを有するCARを含むエフェクターCD4+/CD8+T細胞の存在下における標的細胞の特異的溶解を、図示した比率で分析した結果を示す。
【0048】
図7】MスペーサーまたはLスペーサーを有するIL13ゼータカインCARを含む細胞で治療したマウスにおける腫瘍の進行を流束の測定により分析した結果を示す。
【0049】
図8】MスペーサーまたはLスペーサーを有するCARを含むエフェクターCD4+/CD8+T細胞の存在下における標的細胞の特異的溶解を、図示した比率で分析した結果を示す。
【0050】
図9】MスペーサーまたはLスペーサーを有するIL13ゼータカインCARを含むCD4+/CD8+T細胞におけるサイトカイン放出アッセイの分析結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本明細書で提供する方法および組成物の実施形態のいくつかは、インターロイキン13受容体α2サブユニット(IL-13Rα2)に特異的に結合可能であるか、またはIL-13Rα2に特異的に結合可能に構成されたキメラ抗原受容体(CAR)であるIL13ゼータカインに関する。いくつかの実施形態は、このようなCARをコードする核酸、該CARを含む宿主細胞、および該CARを有する宿主細胞を利用した治療方法を含み、該治療方法は、たとえば、治療が必要な対象に該宿主細胞を医薬品として提供することによって、たとえば、インターロイキン13受容体α2サブユニット(IL-13Rα2)を介した疾患または状態(たとえば、神経膠腫および神経膠芽腫を含むIL-13Ra2陽性悪性腫瘍などのがん)を治療または抑制することができる。
【0052】
IL-13Rα2は、転移性または後期のBasal-like乳がん(BLBC)において過剰発現されることが過去に報告されている(Papageorgis et al. Breast Cancer Research, 2015; 17 (1);この文献は引用によりその全体が本明細書に明示的に援用される)。また、公的に利用可能なデータに基づいて、無増悪生存期間の予測とIL-13Rα2の高発現の間での相関関係が見出されている。また、肺に急速に拡散する傾向のあるBLBCのサブタイプでは、IL-13Rα2が高発現することが観察されている。さらに、IL-13Rα2は、ヒト神経膠腫細胞の増殖を刺激し、Src/PI3K/Akt/mTORシグナル伝達経路を介した転移も刺激することが判明している(Tu et al. Tumour Biol. 2016 Nov; 37(11):14701-14709;この文献は引用によりその全体が本明細書に明示的に援用される)。たとえばキメラ受容体を使用した治療法などの、IL13Ra2を標的とした治療法が過去に報告されている(たとえば、Brown et al Clin Cancer Res 2015;Brown et al N Engl J Med 2016;Brown et al Mol Ther 2017;WO2014072888(A1)を参照されたい;これらの文献では、がん治療用の抗IL-13受容体α2(IL-13-Ra2)抗体および抗体-薬物複合体が報告されている;これらの文献は引用によりその全体が本明細書に明示的に援用される)。このような治療法として、IL13変異体(たとえばE13Y)に基づく結合ドメインまたは抗原認識ドメイン(たとえばzetakineなど)を使用した治療法やこれらのドメインを含む治療法がある。養子移入T細胞療法の標的として、インターロイキン13受容体α鎖バリアント2(IL-13Rα2)が望ましい。より具体的には、IL-13Rα2の発現は、多形膠芽腫(GBM)において患者の生存率の予後マーカーとして使用され、腫瘍の進行の助長に関わっている。
【0053】
IL-13Ra2は、多形膠芽腫などの高悪性度神経膠腫の80%以上で発現されているが、これらの腫瘍では、標的エピトープがなく、特定の標的の全体的な発現も認められないことから、標的療法が回避されることが示されている。したがって、本発明のいくつかの実施形態では、このような制約を克服するため、複数の標的を利用した治療法により神経膠腫の治療または抑制を行う。IL-13ゼータカインをキメラ抗原受容体などの別の標的療法と組み合わせたコンビナトリアル法によって、標的エピトープを持たない腫瘍における治療法の回避を克服できると考えられる。本明細書で提供するこの新たな治療法は、インビトロおよび同所性異種移植片腫瘍モデルにおいて試験されている。いくつかの実施形態において、IL-13ゼータカインにより指向性を付与した免疫療法などの治療法は、神経膠芽腫およびその他のIL-13Ra2陽性悪性腫瘍またはこれらの疾患を有する特定の対象に対してそれ自体単独で有用であり、あるいはこれらの疾患または対象の治癒法の一部としても有用である。
【0054】
本明細書で提供する実施形態のいくつかは、ゼータカインなどのキメラ受容体を含む。いくつかの実施形態において、ゼータカインは、リガンド結合ドメイン、スペーサー領域、膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達領域(通常、第1シグナル伝達ドメインと共刺激シグナル伝達ドメインを含む)を含む。本明細書で提供する実施形態のいくつかは、第2世代IL-13ゼータカインを含み、たとえば、選択または設計された特定のスペーサー領域を含む第2世代IL-13ゼータカインを含む。いくつかの態様において、本明細書で提供するゼータカインは、治療有効性もしくはインビボでの抗腫瘍作用もしくは抗腫瘍応答が向上したゼータカイン、または治療有効性もしくはインビボでの抗腫瘍作用もしくは抗腫瘍応答が向上するように構成されたゼータカインを含む。いくつかの点において、本明細書で提供する実施形態のいくつかは、標的抗原に応答した特定のゼータカインが、選択されたスペーサー領域以外は同様または同一の参照キメラ受容体と比べてより多くのサイトカインの産生を誘導することができたという本明細書で述べる観察結果に基づく。また、いくつかの点において、本明細書で提供する実施形態のいくつかは、特定のゼータカインが、同所性異種移植片腫瘍モデルなどにおいて長期間にわたって腫瘍の増殖を抑制することができ、かつ生存率の中央値を有意に上昇させることができたという本明細書で述べる観察結果に基づく。
【0055】
用語の定義
本明細書において「核酸」または「核酸分子」という用語は、本明細書に照らせば、一般的な通常の意味を有し、たとえば、ポリヌクレオチドが挙げられ、たとえば、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、オリゴヌクレオチド、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により得られる断片、およびライゲーション、切断、エンドヌクレアーゼ作用またはエキソヌクレアーゼ作用により得られる断片などが挙げられるが、これらに限定されない。核酸分子は、天然のヌクレオチドモノマー(DNA、RNAなど)、または天然のヌクレオチドの類似体(たとえば、天然のヌクレオチドのエナンチオマー)からなるモノマー、またはこれらの組み合わせから構成されていてもよい。修飾ヌクレオチドは、糖部分またはピリミジン塩基部分もしくはプリン塩基部分に修飾を有していてもよい。糖部分の修飾としては、たとえば、ハロゲン、アルキル基、アミンまたはアジド基による1つ以上のヒドロキシル基の置換が挙げられ、糖部分はエーテル化またはエステル化されていてもよい。さらに、糖部分全体が、立体構造的に類似の構造や電子的に類似の構造と置換されていてもよく、このような構造として、たとえば、アザ糖または炭素環式糖類似体が挙げられる。修飾塩基部分としては、アルキル化プリン、アルキル化ピリミジン、アシル化プリン、アシル化ピリミジン、およびその他の公知の複素環置換基が挙げられる。核酸モノマーは、ホスホジエステル結合またはこれと似た結合により連結することができる。ホスホジエステル結合と似た結合としては、ホスホロチオエート結合、ホスホロジチオエート結合、ホスホロセレノエート結合、ホスホロジセレノエート結合、ホスホロアニロチオエート(phosphoroanilothioate)結合、ホスホロアニリデート(phosphoranilidate)結合、ホスホロアミデート結合などが挙げられる。「核酸分子」は、いわゆる「ペプチド核酸」も包含し、これは、ポリアミド主鎖に付加された天然の核酸塩基または修飾核酸塩基を含む。核酸は、一本鎖であってもよく、二本鎖であってもよい。いくつかの実施形態において、タンパク質をコードする核酸配列を提供する。いくつかの実施形態において、前記核酸はRNAまたはDNAである。
【0056】
本明細書において「ベクター」、「発現ベクター」または「構築物」は、本明細書に照らせば、一般的な通常の意味を有し、たとえば、細胞に異種核酸を導入するために使用される核酸であって、様々な制御因子を含むことから、細胞において異種核酸を発現させることができる核酸が挙げられるが、これに限定されない。ベクターとしては、プラスミド、ミニサークル、酵母、またはウイルスゲノムが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、前記ベクターは、プラスミド、ミニサークルまたはウイルスゲノムである。いくつかの実施形態において、前記ベクターはウイルスベクターである。いくつかの実施形態において、前記ウイルスベクターは、レンチウイルスである。いくつかの実施形態において、前記ベクターは、レンチウイルスベクターである。いくつかの実施形態において、前記ベクターは、フォーミーウイルスベクター、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、またはレンチウイルスベクターである。
【0057】
いくつかの実施形態において、コドンの最適化などによって改変または最適化されたベクターおよび配列を提供し、コドンの最適化として、所望の細胞(好ましくはヒト細胞)におけるタンパク質の発現効率を最大限まで高めることができることが知られているコドンへと特定のコドンを変更する設計プロセスが挙げられる。いくつかの実施形態において、コドンの最適化が述べられており、当業者に公知のアルゴリズムを使用してコドンを最適化することによって、タンパク質の収率が上昇するように最適化された合成遺伝子転写産物を作製することができる。コドン最適化のためのアルゴリズムを含むプログラムは当業者に公知である。このようなプログラムとしては、たとえば、OptimumGeneTMアルゴリズムやGeneGPS(登録商標)アルゴリズムなどが挙げられる。さらに、コドンが最適化された合成配列は、たとえば、Integrated DNA Technologies社および他のDNAシークエンシングサービスから市販品として入手できる。いくつかの実施形態において、ヒトにおける発現のためにコドンが最適化された、完全長の遺伝子転写産物をコードする遺伝子の核酸配列について述べる。いくつかの実施形態において、前記遺伝子は、特にヒト細胞におけるタンパク質の発現が最大限まで上昇するように選択されたコドンを有するように最適化されており、このように選択されたコドンによって、T細胞におけるタンパク質またはCARの濃度を上昇させることができる。
【0058】
コドンを最適化することによって、ポリヌクレオチドの二次構造の形成を減少させることもできる。いくつかの実施形態において、コドンを最適化することによって、全体のGC/AT比を低下させることもできる。コドンの最適化を厳密に行うと、望ましくない二次構造が形成されたり、あるいは望ましくないGC含量となって二次構造が形成されたりする場合がある。このような二次構造は、転写効率に影響を与える。コドン使用頻度の最適化を行った後にGeneOptimizerなどのプログラムを使用することによって、二次構造の形成を回避したり、GC含量を最適化したりすることができる。このようなさらなるプログラムは、最初のコドン最適化を行った後にさらに最適化を実施したり、トラブルシューティングを行うために使用することができ、それによって、1回目の最適化の後で起こりうる二次構造の形成を制限することができる。最適化用のその他のプログラムは当業者に公知である。いくつかの実施形態において、前記核酸は、ヒトにおける発現および/または二次構造の除去および/または全体のGC/AT比の低下を目的としてコドン最適化された配列を含む。いくつかの実施形態において、前記配列は、二次構造の形成を回避するために最適化されている。いくつかの実施形態において、前記配列は、全体のGC/AT比が低下するように最適化されている。
【0059】
いくつかの実施形態は、ポリペプチド配列またはその保存的変異配列(たとえばポリペプチド配列が保存的置換された配列)を含む。いくつかの実施形態において、「保存的アミノ酸置換」は、機能的に同等のアミノ酸同士が置換されるアミノ酸置換を指す。保存的アミノ酸変化によって、得られるペプチドのアミノ酸配列において同義変化が起こる。たとえば、同等の極性を有する1つ以上のアミノ酸は同等の機能を有し、得られるペプチドのアミノ酸配列において同義変化が起こる。特定の非極性残基をより小さい非極性残基と置換する場合も、たとえこれらの残基が別々のグループに属していたとしても、「保存的置換」であると考えてもよい(たとえば、フェニルアラニンからより小さいイソロイシンへの置換)。類似した側鎖を有するアミノ酸残基ファミリーは当技術分野において定義されている。保存的アミノ酸置換に含まれるいくつかのファミリーを表1に示す。
【表1】
【0060】
本明細書において「キメラ抗原受容体」という用語は、本明細書に照らせば、一般的な通常の意味を有し、たとえば、前記疾患または障害に関連する分子と結合する抗体配列またはその他のタンパク質配列のリガンド結合ドメインが、スペーサードメインを介して、T細胞またはその他の受容体の1つ以上の細胞内シグナル伝達ドメイン(たとえば共刺激ドメイン)に連結された合成設計受容体が挙げられるが、これに限定されない。キメラ受容体は、人工T細胞受容体、キメラT細胞受容体、キメラ免疫受容体およびキメラ抗原受容体(CAR)とも呼ぶことができる。レトロウイルスベクターやレンチウイルスベクターなどのベクターを使用してキメラ受容体のコード配列をT細胞に移入することによって、モノクローナル抗体またはその結合断片の特異性をT細胞に移植することができる。CARは、特定の細胞表面抗原を発現する標的細胞へT細胞を指向させるために設計された遺伝子組換えT細胞受容体である。養子細胞移入と呼ばれる方法によって、まず対象からT細胞を得た後、抗原に対して特異性を発揮することができる受容体を発現できるようにT細胞を遺伝子操作する。次いで、このT細胞を患者に再導入する。再導入されたT細胞は抗原を認識し標的とすることができる。このようなCARは、免疫受容体を発現する細胞に任意の特異性を移植することができる遺伝子組換え受容体である。研究者によっては、キメラ抗原受容体すなわち「CAR」は、抗体または抗体断片、スペーサー、シグナル伝達ドメインおよび膜貫通領域を含むものであるとも理解されている。本明細書に記載のCARは、様々な構成成分またはドメイン(たとえばエピトープ結合領域(たとえば抗体断片、scFvまたはそれらの一部)、スペーサー、膜貫通ドメインまたはシグナル伝達ドメインなど)が遺伝子組換えされており、これよって驚くべき効果が得られたことから、本明細書の開示全体においてCARの構成成分をそれぞれ別個のものとして区別できることが多い。CARに含まれる様々な構成要素は様々なバリエーションを有することから、たとえば、このようなバリエーションによって、特定のエピトープまたは抗原に対する結合親和性が増強される。
【0061】
ベクターを使用してCARのコード配列をT細胞に移入することによって、モノクローナル抗体またはその結合断片もしくはscFvの特異性をT細胞に移植することができる。治療が必要な対象を治療するためにCARを使用する場合、養子細胞移入と呼ばれる技術が使用される。この技術では、治療対象からT細胞を採取し、得られたT細胞を遺伝子操作して、抗原に特異的なCARを発現させる。CARの発現により抗原の認識とその標的化が可能になったT細胞を患者に再導入する。
【0062】
本明細書において「リガンド」という用語は、本明細書に照らせば、一般的な通常の意味を有し、たとえば、生体分子と複合体を形成することができる物質が挙げられるが、これに限定されない。リガンドとしては、たとえば、基質、タンパク質、小分子、阻害因子、活性化因子、核酸および神経伝達物質が挙げられるが、これらに限定されない。リガンドは分子間力によって結合し、たとえばイオン結合、水素結合、またはファンデルワールス相互作用によって結合する。リガンドが受容体タンパク質に結合すると、三次元構造が変化し、それによってリガンドの機能が発揮される。リガンドの結合強度は、結合親和性とも呼ばれ、直接的な相互作用および解離作用によって決まる。リガンドは、「リガンド結合ドメイン」によって結合されてもよい。「リガンド結合ドメイン」は、たとえば、タンパク質上の特定のリガンドまたは特定のエピトープと結合可能な構造に見られる保存配列を指してもよい。リガンド結合ドメインまたはリガンド結合部分は、抗体またはその結合断片もしくはscFv、受容体のリガンドもしくはその変異体、ペプチド、および/またはポリペプチド性親和性分子もしくはポリペプチド性結合パートナーを含んでいてもよい。リガンド結合ドメインは、1つまたは複数のリガンドに特異的な特定のタンパク質ドメインやタンパク質上のエピトープであってもよいが、これらに限定されない。
【0063】
本明細書において「一本鎖可変領域断片」または「scFv」という用語は、本明細書に照らせば、一般的な通常の意味を有し、たとえば、短いリンカーペプチドで連結された免疫グロブリンの重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL)を含む融合タンパク質が挙げられるが、これに限定されない。本発明を何ら限定するものではないが、このリンカーは、柔軟性を得るためにグリシンを含んでいてもよく、溶解性を得るために親水性アミノ酸(たとえばセリンまたはトレオニン)を含んでいてもよい。前記リンカーは、VHのN末端とVLのC末端を連結することができ、あるいはVHのC末端とVLのN末端を連結することもできる。いくつかの実施形態において、CAR上に存在するリガンド結合ドメインは、一本鎖可変領域断片(scFV)である。いくつかの実施形態において、CAR上に存在するscFvドメインは、腫瘍細胞上に存在するIL-13受容体α2(IL13Rα2)に特異的である。
【0064】
いくつかの実施形態において、前記細胞外ドメインは、少なくとも1つのペプチドスペーサーを含む。いくつかの実施形態において、前記ペプチドスペーサーは、15アミノ酸長以下であり、かつ1アミノ酸長以上または2アミノ酸長以上である。いくつかの実施形態において、前記スペーサーはポリペプチド鎖である。いくつかの態様において、前記ポリペプチド鎖の長さは、たとえば、3アミノ酸長、5アミノ酸長、10アミノ酸長、11アミノ酸長、12アミノ酸長、13アミノ酸長、14アミノ酸長、15アミノ酸長、16アミノ酸長、17アミノ酸長、18アミノ酸長、19アミノ酸長、20アミノ酸長、21アミノ酸長、22アミノ酸長、23アミノ酸長、24アミノ酸長、25アミノ酸長、26アミノ酸長、27アミノ酸長、28アミノ酸長、29アミノ酸長、30アミノ酸長、31アミノ酸長、32アミノ酸長、33アミノ酸長、34アミノ酸長、35アミノ酸長、36アミノ酸長、37アミノ酸長、38アミノ酸長、39アミノ酸長、40アミノ酸長、41アミノ酸長、42アミノ酸長、43アミノ酸長、44アミノ酸長、45アミノ酸長、46アミノ酸長、47アミノ酸長、48アミノ酸長、49アミノ酸長、50アミノ酸長、51アミノ酸長、52アミノ酸長、53アミノ酸長、54アミノ酸長、55アミノ酸長、56アミノ酸長、57アミノ酸長、58アミノ酸長、59アミノ酸長、60アミノ酸長、61アミノ酸長、62アミノ酸長、63アミノ酸長、64アミノ酸長、65アミノ酸長、66アミノ酸長、67アミノ酸長、68アミノ酸長、69アミノ酸長、70アミノ酸長、71アミノ酸長、72アミノ酸長、73アミノ酸長、74アミノ酸長、75アミノ酸長、76アミノ酸長、77アミノ酸長、78アミノ酸長、79アミノ酸長、80アミノ酸長、81アミノ酸長、82アミノ酸長、83アミノ酸長、84アミノ酸長、85アミノ酸長、86アミノ酸長、87アミノ酸長、88アミノ酸長、89アミノ酸長、90アミノ酸長、91アミノ酸長、92アミノ酸長、93アミノ酸長、94アミノ酸長、95アミノ酸長、96アミノ酸長、97アミノ酸長、98アミノ酸長、99アミノ酸長、100アミノ酸長、101アミノ酸長、102アミノ酸長、103アミノ酸長、104アミノ酸長、105アミノ酸長、106アミノ酸長、107アミノ酸長、108アミノ酸長、109アミノ酸長、110アミノ酸長、111アミノ酸長、112アミノ酸長、113アミノ酸長、114アミノ酸長、115アミノ酸長、116アミノ酸長、117アミノ酸長、118アミノ酸長、119アミノ酸長、120アミノ酸長、121アミノ酸長、122アミノ酸長、123アミノ酸長、124アミノ酸長、125アミノ酸長、126アミノ酸長、127アミノ酸長、128アミノ酸長、129アミノ酸長、130アミノ酸長、131アミノ酸長、132アミノ酸長、133アミノ酸長、134アミノ酸長、135アミノ酸長、136アミノ酸長、137アミノ酸長、138アミノ酸長、139アミノ酸長、140アミノ酸長、141アミノ酸長、142アミノ酸長、143アミノ酸長、144アミノ酸長、145アミノ酸長、146アミノ酸長、147アミノ酸長、148アミノ酸長、149アミノ酸長、150アミノ酸長、151アミノ酸長、152アミノ酸長、153アミノ酸長、154アミノ酸長、155アミノ酸長、156アミノ酸長、157アミノ酸長、158アミノ酸長、159アミノ酸長、160アミノ酸長、161アミノ酸長、162アミノ酸長、163アミノ酸長、164アミノ酸長、165アミノ酸長、166アミノ酸長、167アミノ酸長、168アミノ酸長、169アミノ酸長、170アミノ酸長、171アミノ酸長、172アミノ酸長、173アミノ酸長、174アミノ酸長、175アミノ酸長、176アミノ酸長、177アミノ酸長、178アミノ酸長、179アミノ酸長、180アミノ酸長、181アミノ酸長、182アミノ酸長、183アミノ酸長、184アミノ酸長、185アミノ酸長、186アミノ酸長、187アミノ酸長、188アミノ酸長、189アミノ酸長、190アミノ酸長、191アミノ酸長、192アミノ酸長、193アミノ酸長、194アミノ酸長、195アミノ酸長、196アミノ酸長、197アミノ酸長、198アミノ酸長、199アミノ酸長、200アミノ酸長、201アミノ酸長、202アミノ酸長、203アミノ酸長、204アミノ酸長、205アミノ酸長、206アミノ酸長、207アミノ酸長、208アミノ酸長、209アミノ酸長、210アミノ酸長、211アミノ酸長、212アミノ酸長、213アミノ酸長、214アミノ酸長、215アミノ酸長、216アミノ酸長、217アミノ酸長、218アミノ酸長、219アミノ酸長、220アミノ酸長、221アミノ酸長、222アミノ酸長、223アミノ酸長、224アミノ酸長、225アミノ酸長、226アミノ酸長、227アミノ酸長、228アミノ酸長、229アミノ酸長、230アミノ酸長、231アミノ酸長、232アミノ酸長、233アミノ酸長、234アミノ酸長、235アミノ酸長、236アミノ酸長、237アミノ酸長、238アミノ酸長、239アミノ酸長もしくは240アミノ酸長、またはこれらの長さのいずれか2つによって定義される範囲内の長さであってもよい。キメラ受容体において、スペーサーは、たとえば、20種のアミノ酸のうち任意のものを任意の順序で含むことによって、所望の長さのポリペプチド鎖を構成していてもよく、前記20種のアミノ酸としては、アルギニン、ヒスチジン、リシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン、システイン、グリシン、プロリン、アラニン、バリン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、またはトリプトファンが挙げられる。いくつかの実施形態において、スペーサーは、キメラ受容体においてscFVまたはリガンド結合ドメインと膜貫通領域との間に位置する。所望の長さとなるようにスペーサーをカスタマイズ、選択、構成または最適化することによって、標的細胞に対するscFvドメインまたはリガンド結合ドメインの結合性を向上させて、それにより細胞傷害性を高めてもよい。いくつかの実施形態において、scFvドメインまたはリガンド結合ドメインと膜貫通ドメインの間に位置するリンカーまたはスペーサーは、25~55アミノ酸長であってもよい(たとえば、少なくとも25アミノ酸長、少なくとも26アミノ酸長、少なくとも27アミノ酸長、少なくとも28アミノ酸長、少なくとも29アミノ酸長、少なくとも30アミノ酸長、少なくとも31アミノ酸長、少なくとも32アミノ酸長、少なくとも33アミノ酸長、少なくとも34アミノ酸長、少なくとも35アミノ酸長、少なくとも36アミノ酸長、少なくとも37アミノ酸長、少なくとも38アミノ酸長、少なくとも39アミノ酸長、少なくとも40アミノ酸長、少なくとも41アミノ酸長、少なくとも42アミノ酸長、少なくとも43アミノ酸長、少なくとも44アミノ酸長、少なくとも45アミノ酸長、少なくとも46アミノ酸長、少なくとも47アミノ酸長、少なくとも48アミノ酸長、少なくとも49アミノ酸長、少なくとも50アミノ酸長、少なくとも51アミノ酸長、少なくとも52アミノ酸長、少なくとも53アミノ酸長、少なくとも54アミノ酸長もしくは少なくとも55アミノ酸長、またはこれらの長さのいずれか2つによって定義される範囲内のアミノ酸長であってもよい)。スペーサーの例として、IgG4ヒンジのみからなるスペーサー、CH2ドメインおよびCH3ドメインに連結されたIgG4ヒンジからなるスペーサー、またはCH3ドメインに連結されたIgG4ヒンジからなるスペーサーが挙げられる。また、スペーサーの例として、Hudecek et al. Clin. Cancer Res., 19:3153 (2013)、国際特許出願WO2014031687、米国特許第8,822,647号、米国公開出願第2014/0271635号(これらの文献は引用によりその全体が本明細書に明示的に援用される)に記載されているスペーサーが挙げられる。
【0065】
いくつかの実施形態において、第1シグナル伝達ドメインや共刺激シグナル伝達ドメインなどの、CARのシグナル伝達ドメインとして、細胞内の成分と相互作用するタンパク質または受容体タンパク質の細胞内ドメインまたは細胞質内ドメインが挙げられ、これらの細胞内ドメインは、シグナルを中継するか、シグナルの中継に関与することができる。いくつかの態様において、このような相互作用は、エフェクター分子またはエフェクタータンパク質との特異的なタンパク質-タンパク質相互作用またはタンパク質-リガンド相互作用を介した細胞内ドメインによる情報伝達によって起こり、次いでシグナル伝達の連鎖反応が起こることによって、その目的地へとシグナルを送ることができる。いくつかの実施形態において、シグナル伝達ドメインとして、共刺激ドメインが挙げられる。いくつかの態様において、共刺激ドメインとしては、T細胞にシグナルを提供するシグナル伝達部分が挙げられ、このシグナル伝達部分は、たとえばTCR/CD3複合体のCD3ζ鎖などによって提供される第1シグナルに加えて、たとえば、免疫応答、活性化、増殖、分化、サイトカイン分泌、細胞溶解活性、パーフォリン活性またはグランザイム活性などのT細胞エフェクター応答などの応答を増強するシグナルをT細胞に提供する。いくつかの実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインおよび/または共刺激ドメインとして、CD27、CD28、4-1BB、OX40、CD30、CD40、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2CもしくはB7-H3の全体もしくはその一部、またはCD83に特異的に結合するリガンドの全体もしくはその一部を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0066】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物、細胞およびベクターは、マーカー配列または該マーカー配列をコードする核酸を含み、マーカー配列として、たとえば、細胞の標識となるタンパク質を挙げることができる。本発明の細胞の実施形態のいくつかにおいて、本発明の細胞は、この細胞上に発現される特定のキメラタンパク質のマーカータンパク質を共発現する。本明細書で提供する細胞の実施形態のいくつかにおいて、キメラ受容体は、特定のマーカータンパク質と共発現される。本明細書で提供する細胞の実施形態のいくつかにおいて、該細胞は、キメラ受容体をコードする核酸を含む。マーカーとして選択マーカー配列を挙げることができ、たとえば、人為的な選択を可能とする特性を付与するために、ベクターまたは細胞に導入される遺伝子が挙げられる。選択マーカー配列またはマーカー配列は、スクリーニング可能なマーカーであってもよく、このようなマーカー配列を使用することによって、研究者が所望とする細胞と所望としない細胞を区別すること、または特定の種類の細胞を濃縮することが可能となる。いくつかの実施形態において、細胞表面選択マーカーをコードするマーカー配列を含むキメラ受容体をコードするベクターを提供する。本明細書に記載の実施形態において、フローサイトメトリーなどの実験において選択可能なマーカー配列を含んでいてもよいCARを提供する。いくつかの実施形態において、マーカーは、Her2tGタンパク質またはEGFRtタンパク質である。
【0067】
本明細書において「メトトレキサート(MTX)」は、本明細書に照らせば、一般的な通常の意味を有し、たとえば、代謝拮抗薬および葉酸代謝拮抗薬が挙げられるが、これらに限定されない。メトトレキサート(MTX)は、葉酸の代謝を抑制することによって作用する。いくつかの実施形態において、養子T細胞免疫療法用の遺伝子組換えマルチプレックスT細胞を作製する方法を提供する。最も広い範囲において、本発明の方法は、本明細書に記載の実施形態のいずれかによる遺伝子送達ポリヌクレオチドを提供する工程、および選択試薬を加えることによって、前記遺伝子送達ポリヌクレオチドを含む細胞の選択する工程を含んでいてもよい。本明細書に記載の実施形態のいくつかにおいて、前記選択試薬は選択剤を含む。いくつかの実施形態において、前記選択試薬はMTXである。
【0068】
本明細書において「ジヒドロ葉酸還元酵素」または「DHFR」という用語は、本明細書に照らせば、一般的な通常の意味を有し、たとえば、NADPHを電子ドナーとして使用してジヒドロ葉酸をテトラヒドロ葉酸に還元する酵素が挙げられるが、これに限定されず、このテトラヒドロ葉酸は、C1転移反応に使用されるテトラヒドロ葉酸由来の補因子に変換されうる。本明細書の実施形態のいくつかにおいて、遺伝子送達ポリヌクレオチドを提供する。いくつかの実施形態において、前記遺伝子送達ポリヌクレオチドは、ジヒドロ葉酸還元酵素の二重変異体(DHFRdm)をコードする少なくとも1つの選択マーカーカセットを含む。
【0069】
本明細書において「リボソームスキップ配列」は、翻訳中のリボソームにリボソームスキップ配列を「スキップ」させてペプチド結合の形成を妨げ、リボソームスキップ配列の直後の領域から翻訳させるという機能を有する配列を指す。たとえば、いくつかのウイルスはリボソームスキップ配列を有することから、単一の核酸から複数のタンパク質を連続して翻訳することができ、翻訳されたタンパク質はペプチド結合によって連結されずに個別のタンパク質として得られる。本明細書において、リボソームスキップ配列は「リンカー」配列として使用される。本明細書で提供する核酸の実施形態のいくつかにおいて、本発明の核酸は、キメラ受容体をコードする配列とマーカータンパク質をコードする配列との間にリボソームスキップ配列を含むことから、キメラ受容体とマーカータンパク質は、ペプチド結合によって連結されずに共発現される。いくつかの実施形態において、前記リボソームスキップ配列はP2A配列、T2A配列、E2A配列またはF2A配列である。いくつかの実施形態において、前記リボソームスキップ配列はT2A配列である。
【0070】
本明細書において「ゼータカイン(zetakine)」は、サイトカイン受容体に特異的に結合可能なサイトカインをリガンド結合ドメインに含む特定の種類のCARを指してもよい。いくつかの実施形態において、このようなサイトカインとして、ヒトサイトカインが挙げられ、たとえばIL-13が挙げられる。いくつかの実施形態において、このIL-13は、配列中に変異を含み、IL-13受容体α2に対して高い親和性を示す。
【0071】
本明細書において「ムテイン」は、本明細書に照らせば、一般的な通常の意味を有し、たとえば、変異により得られるタンパク質が挙げられるが、これに限定されない。「IL-13のムテイン」は、少なくとも1つまたは少なくとも2つのアミノ酸置換を有していてもよいIL-13変異体であってもよい。
【0072】
本明細書において、CD213A2(分化抗原群(cluster of differentiation)213A2)としても知られている「インターロイキン13受容体α2サブユニット(IL-13Rα2)」という用語は、本明細書に照らせば、一般的な通常の意味を有し、たとえば、ヒトではIL-13RA2遺伝子によってコードされる細胞膜結合タンパク質が挙げられるが、これに限定されない。IL-13Rα2は、インターロイキン13受容体複合体のサブユニットの1つであるIL-13Rα1と密接に関係している。IL-13Rα2は、通常、IL-13と高い親和性で結合するが、機能性を持つ細胞質内ドメインを持たず、シグナル伝達のメディエーターとしては機能しないと見られる。一方、IL-13Rα2は、IL-4には直接結合することができないにもかかわらず、IL-13とIL-4の作用を制御することができる。さらに、IL-13Rα2は、IL-13の細胞内移行に一定の役割を果たしていることが報告されている。
【0073】
本明細書において「T細胞」すなわち「Tリンパ球」は、どのような哺乳動物種から得られたT細胞であってもよく、サル、イヌ、ヒトなどから得られたT細胞であってもよいが、霊長類から得られたT細胞であることが好ましい。いくつかの実施形態において、T細胞は、たとえば治療用組成物の形態などの該T細胞が投与される予定のレシピエント対象または該T細胞が投与されたレシピエント対象と同種(同種であるが別のドナーに由来するもの)である。いくつかの実施形態において、T細胞は自己由来である(ドナーとレシピエントは同じである)。いくつかの実施形態において、T細胞は同系である(ドナーとレシピエントは異なるが、一卵性双生児である)。
【0074】
本明細書において「細胞傷害性Tリンパ球(CTL)」という用語は、本明細書に照らせば、一般的な通常の意味を有し、たとえば、その表面上にCD8を発現するTリンパ球(たとえばCD8+T細胞)が挙げられるが、これに限定されない。いくつかの実施形態において、このような細胞は、抗原を経験したことのある「メモリー」T細胞(T細胞)であることが好ましい。いくつかの実施形態において、前記細胞は細胞傷害性Tリンパ球である。本明細書において「セントラルメモリー」T細胞(または「TCM」)は、抗原を経験した細胞傷害性Tリンパ球(CTL)であり、ナイーブ細胞と比較して、その表面上にCD62L、CCR-7および/またはCD45ROを発現するが、CD45RAを発現していないか、CD45RAの発現が低下している細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を指す。いくつかの実施形態おいて、前記細胞はセントラルメモリーT細胞(TCM)である。いくつかの実施形態において、セントラルメモリー細胞は、ナイーブ細胞と比較して、CD62L、CCR7、CD28、CD127、CD45ROもしくはCD95またはこれらの組み合わせの発現が陽性であり、CD54RAの発現が低下していることがある。本明細書において「エフェクターメモリー」T細胞(または「TEM」)は、抗原を経験したT細胞であり、セントラルメモリー細胞と比較して、その表面上にCD62Lを発現していないか、CD62Lの発現が低下しており、ナイーブ細胞と比較して、CD45RAを発現していないか、CD45RAの発現が低下しているT細胞を指す。いくつかの実施形態では、前記細胞はエフェクターメモリーT細胞である。いくつかの実施形態において、エフェクターメモリー細胞は、ナイーブ細胞またはセントラルメモリー細胞と比較して、CD62Lおよび/またはCCR7の発現が陰性であり、CD28および/またはCD45RAの発現が陽性または陰性であってもよい。
【0075】
成熟T細胞は、表面タンパク質としてCD4を発現し、CD4+T細胞と呼ばれる。CD4+T細胞は、一般に、免疫系においてヘルパーT細胞として機能することが運命づけられているものとして扱われる。たとえば、抗原提示細胞がクラスII MHC上で抗原を発現する場合、CD4+細胞は細胞間相互作用(たとえばCD40とCD40L)の組み合わせおよびサイトカインを介して抗原提示細胞を補助する。しかしながら、稀に例外があり、たとえば、制御性T細胞、ナチュラルキラー細胞または細胞傷害性T細胞のサブグループもCD4を発現する。これらのCD4+発現T細胞群は、いずれもヘルパーT細胞とは見なされない。
【0076】
本明細書において「セントラルメモリー」T細胞(または「TCM」)という用語は、本明細書に照らせば、一般的な通常の意味を有し、たとえば、抗原を経験した細胞傷害性Tリンパ球(CTL)であり、ナイーブ細胞と比較して、その表面上にCD62L、CCR-7もしくはCD45ROまたはこれらの任意の組み合わせを発現するが、CD45RAは発現していないか、CD45RAの発現が低下している細胞傷害性Tリンパ球(CTL)が挙げられるが、これに限定されない。いくつかの実施形態において、セントラルメモリー細胞は、ナイーブ細胞と比較して、CD62L、CCR7、CD28、CD127、CD45ROもしくはCD95またはこれらの任意の組み合わせの発現が陽性であり、CD54RAの発現が低下している。
【0077】
本明細書において「エフェクターメモリー」T細胞(または「TEM」)という用語は、本明細書に照らせば、一般的な通常の意味を有し、たとえば、抗原を経験したT細胞であり、セントラルメモリー細胞と比較して、その表面上にCD62Lを発現していないか、CD62Lの発現が低下しており、ナイーブ細胞と比較して、CD45RAを発現していないか、CD45RAの発現が低下しているT細胞が挙げられるが、これに限定されない。いくつかの実施形態において、エフェクターメモリー細胞は、ナイーブ細胞またはセントラルメモリー細胞と比較して、CD62LもしくはCCR7またはその両方の発現が陰性であり、CD28もしくはCD45RAまたはその両方の発現が陽性または陰性である。
【0078】
本明細書において「ナイーブ」T細胞という用語は、本明細書に照らせば、一般的な通常の意味を有し、たとえば、抗原を経験していないTリンパ球であり、セントラルメモリー細胞またはエフェクターメモリー細胞と比較して、CD62LもしくはCD45RAまたはその両方を発現しており、CD45ROを発現していないTリンパ球が挙げられるが、これに限定されない。いくつかの実施形態において、ナイーブCD8+Tリンパ球は、ナイーブT細胞の表現型マーカーの発現によって特徴付けられ、ナイーブT細胞の表現型マーカーとしては、CD62L、CCR7、CD28、CD127もしくはCD45RAまたはこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0079】
本明細書において「エフェクター」T細胞または「T」という用語は、本明細書に照らせば、一般的な通常の意味を有し、たとえば、抗原を経験した細胞傷害性Tリンパ球であり、セントラルメモリー細胞またはナイーブT細胞と比較して、CD62L、CCR7またはCD28を発現していないか、CD62L、CCR7またはCD28の発現が低下しているか、グランザイムBもしくはパーフォリンまたはこれらの組み合わせが陽性である細胞傷害性Tリンパ球が挙げられるが、これに限定されない。
【0080】
本明細書において「前駆T細胞」という用語は、本明細書に照らせば、一般的な通常の意味を有し、たとえば、胸腺へと遊走して、前駆T細胞になることができ、T細胞受容体を発現していないリンパ球系前駆細胞が挙げられるが、これに限定されない。あらゆるT細胞は、骨髄中の造血幹細胞に由来する。造血幹細胞由来の造血前駆細胞(リンパ球系前駆細胞)は胸腺に定着し、細胞分裂により増殖し、未熟な胸腺細胞の大集団を作り出す。最も初期の胸腺細胞はCD4もCD8も発現せず、したがって、ダブルネガティブ(CD4CD8)細胞に分類される。これらは発達が進むにつれて、ダブルポジティブ胸腺細胞(CD4CD8)となり、最終的にシングルポジティブ(CD4CD8またはCD4CD8)胸腺細胞に成熟して、その後、胸腺から末梢組織に放出される。
【0081】
本明細書において「医薬添加剤」または「医薬担体」という用語は、本明細書に照らせば、一般的な通常の意味を有し、たとえば、処置または治療を目的とした薬学的に活性な薬剤またはT細胞を処方および/または投与するための溶媒として使用される担体または不活性媒体が挙げられるが、これに限定されない。担体としては、高分子ミセル、リポソーム、リポタンパク質ベースのキャリア、ナノ粒子キャリア、デンドリマーまたは当業者に公知のT細胞用のその他の担体が挙げられる。理想的な担体または添加剤としては、毒性がなく、生体適合性、非免疫原性および生分解性を有するか、宿主の防御機構によって認識されないか、このような特性の任意の組み合わせを有するものが挙げられる。
【0082】
本明細書において「対象」または「患者」は、たとえば、実験、診断、予防および/または治療を目的として、本明細書に記載の実施形態を使用または投与してもよいあらゆる生物を指す。対象または患者として、たとえば、動物が挙げられる。いくつかの実施形態において、対象は、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類またはヒトである。いくつかの実施形態において、対象は、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、イヌ、ネコ、霊長類またはヒトである。
【0083】
膵臓がん、乳がん、卵巣がん、悪性神経膠腫(たとえば神経膠芽腫)などの様々ながん細胞において、インターロイキン13受容体α2(IL-13Rα2)が高発現することが判明している。また、高悪性度の星状細胞腫を有するヒト患者の大部分においても、IL-13Rα2が過剰発現する場合がある(PLoS One. 2013 Oct 16; 8(10):e77719参照;この文献は引用によりその全体が本明細書に明示的に援用される)。さらに、様々なモデルのがん細胞においてIL13RA2の発現量を抑制すると、腫瘍の増殖が顕著に遅延することがある(Breast Cancer Research, 2015; 17 (1);この文献は引用によりその全体が本明細書に明示的に援用される)。ほとんどの正常組織はIL-13RA2を発現せず、このような場合、IL-13RA2を発現してもその発現量は低いと想定される。また、多形膠芽腫(GBM)の場合、IL13Rα2の高発現は、腫瘍が進行していることおよび患者の生存率が低いことを示す予後マーカーとなることがある。
【0084】
本明細書で提供する実施形態のいくつかは、固形腫瘍に指向性を有するキメラ受容体などのキメラ受容体(ゼータカインなど)を含む。いくつかの実施形態において、細胞外ドメインは、IL13の変異体(IL13 E13Yなど)を含む結合ドメインを含み、この結合ドメインが、スペーサー領域を介してキメラ受容体の膜貫通ドメインに連結されている。いくつかの実施形態において、このスペーサー領域は、通常、結合ドメインから膜貫通ドメインへと伸びている。いくつかの実施形態において、前記スペーサーは、12アミノ酸長、15アミノ酸長、20アミノ酸長、30アミノ酸長、40アミノ酸長、50アミノ酸長、60アミノ酸長、70アミノ酸長、80アミノ酸長、90アミノ酸長もしくは100アミノ酸長を超える長さのポリペプチドを含むか、約12アミノ酸長、約15アミノ酸長、約20アミノ酸長、約30アミノ酸長、約40アミノ酸長、約50アミノ酸長、約60アミノ酸長、約70アミノ酸長、約80アミノ酸長、約90アミノ酸長もしくは約100アミノ酸長を超える長さのポリペプチドを含むか、少なくとも12アミノ酸長、少なくとも15アミノ酸長、少なくとも20アミノ酸長、少なくとも30アミノ酸長、少なくとも40アミノ酸長、少なくとも50アミノ酸長、少なくとも60アミノ酸長、少なくとも70アミノ酸長、少なくとも80アミノ酸長、少なくとも90アミノ酸長もしくは少なくとも100アミノ酸長のポリペプチドを含むか、または少なくとも約12アミノ酸長、少なくとも約15アミノ酸長、少なくとも約20アミノ酸長、少なくとも約30アミノ酸長、少なくとも約40アミノ酸長、少なくとも約50アミノ酸長、少なくとも約60アミノ酸長、少なくとも約70アミノ酸長、少なくとも約80アミノ酸長、少なくとも約90アミノ酸長もしくは少なくとも約100アミノ酸長のポリペプチドを含み、たとえば、50アミノ酸長または100アミノ酸長を超え、150アミノ酸長未満、200アミノ酸長未満または220アミノ酸長未満であってもよいポリペプチドを含み、たとえば、50~220アミノ酸長のポリペプチド、50~150アミノ酸長のポリペプチド、または110アミノ酸長のポリペプチドもしくは約110アミノ酸長のポリペプチドを含む。いくつかの実施形態において、膜貫通ドメインはCD28膜貫通ドメイン(CD28tm)であるか、CD28膜貫通ドメイン(CD28tm)を含み、この膜貫通ドメインの後ろに共刺激ドメインが続き、この共刺激ドメインは、たとえば、ヒト4-1BB(CD137)の細胞内セグメントに由来する共刺激ドメインと、CD3ζのシグナル伝達ドメインなどの第1シグナル伝達ドメインである。
【0085】
いくつかの実施形態において、キメラ受容体をコードする核酸は、マーカーをコードする配列をさらに含み、このマーカーをコードする配列は、該キメラ受容体をコードする核酸が連結されているプロモーターと同じプロモーターに動作可能に連結されていてもよい。いくつかの態様において、前記マーカーは、細胞表面受容体の末端切断形態であり、たとえば、上皮成長因子受容体(EGFRt)、CD19(CD19t)もしくはHER2(Her2t)またはその他の受容体の末端切断形態である。いくつかの態様において、前記マーカーをコードする核酸は、P2Aリボソームスキップ配列、T2Aリボソームスキップ配列またはIRESなどのスキップ配列によって、キメラ受容体をコードする核酸から隔てられている。いくつかの態様において、前記核酸は、ジヒドロ葉酸還元酵素の二重変異体(DHFRdm)をコードする導入遺伝子をさらに含み、このDHFRdmをコードする導入遺伝子は、たとえば、構築物産物を発現する細胞(治療用T細胞産物など)のメトトレキサートによる選択を容易にするために加えてもよい。
【0086】
特定の核酸
本明細書で提供する方法および組成物の実施形態のいくつかは、細胞膜結合型IL-13ムテインにより指向性を付与した受容体であるゼータカインをコードする核酸を含む。いくつかの実施形態において、核酸は、
a)細胞外ドメインをコードする第1のポリヌクレオチド;
b)IL-13のムテインをコードする第2のポリヌクレオチド;
c)膜貫通ドメインをコードする第3のポリヌクレオチド;および
d)細胞内シグナル伝達ドメインをコードする第4のポリヌクレオチド
を含む。
いくつかの実施形態において、前記核酸は、マーカーポリペプチド(たとえばEGFRtなど)をコードするポリヌクレオチドをさらに含む。いくつかの実施形態において、前記核酸は、選択マーカー(たとえばDHFRdmなど)をコードするポリヌクレオチドをさらに含む。いくつかの実施形態において、前記核酸はリボソームスキップ配列を含む。
【0087】
いくつかの実施形態において、IL13のムテインは、配列番号16のアミノ酸配列と同一性(%)を有するアミノ酸配列を含むか、このようなアミノ酸配列からなるか、実質的にこのようなアミノ酸配列からなる。このような実施形態のいくつかにおいて、配列番号16との配列同一性は、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%もしくは少なくとも100%、またはこれらのパーセンテージのいずれか2つの間のパーセンテージである。いくつかの実施形態において、IL13のムテインは、配列番号16のアミノ酸配列を含むか、このアミノ酸配列からなるか、実質的にこのアミノ酸配列からなる。
【0088】
いくつかの実施形態において、前記細胞外ドメインは、少なくとも1つのペプチドスペーサーを含む。いくつかの実施形態において、前記ペプチドスペーサーは、15アミノ酸長以下であり、かつ1アミノ酸長以上または2アミノ酸長以上である。いくつかの実施形態において、前記スペーサーはポリペプチド鎖である。いくつかの実施形態において、前記スペーサーは、IgG4ヒンジスペーサーまたはその一部を含む。いくつかの実施形態において、前記スペーサーは、ヒト抗体のヒンジ領域またはその一部を含む。前記方法の実施形態のいくつかにおいて、前記スペーサーは、IgG4のヒンジ域またはその一部を含む。いくつかの実施形態において、前記IgG4ヒンジ領域は、改変されたIgG4ヒンジまたはその一部である。本明細書で述べる「改変されたIgG4ヒンジ」は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7または配列番号8で示されるヒンジ領域のアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%もしくは少なくとも100%の配列同一性、またはこれらのパーセンテージのいずれか2つによって定義される範囲内の配列同一性を有しうるヒンジ領域を指してもよい。いくつかの実施形態において、前記スペーサーは、短い(S)スペーサー、中程度の長さの(M)スペーサーまたは長い(L)スペーサーである。短い(S)スペーサーは、配列番号9に示される配列を含む。中程度の長さの(M)スペーサーは、配列番号10に示される配列を含む。長い(L)スペーサーは、配列番号11に示される配列を含む。
【0089】
いくつかの実施形態において、前記スペーサーは、IgG4ヒンジスペーサー(短い(S)スペーサー)、IgG4ヒンジ-CH3スペーサー(中程度の長さの(M)スペーサー)、またはIgG4ヒンジ-CH2-CH3スペーサーを含むか、これらのいずれかからなるか、実質的にこれらのいずれかからなる。いくつかの実施形態において、前記スペーサーはIgG4-CH3スペーサー(中程度の長さの(M)スペーサー)を含む。
【0090】
いくつかの実施形態において、前記スペーサーは、配列番号10のアミノ酸配列と配列同一性(%)を有するアミノ酸配列を含むか、このようなアミノ酸配列からなるか、実質的にこのようなアミノ酸配列からなる。このような実施形態のいくつかにおいて、配列番号10との配列同一性は、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%もしくは少なくとも100%、またはこれらのパーセンテージのいずれか2つの間のパーセンテージである。いくつかの実施形態において、前記スペーサーは、配列番号10のアミノ酸配列を含むか、このアミノ酸配列からなるか、実質的にこのアミノ酸配列からなる。
【0091】
いくつかの実施形態において、前記スペーサーは、配列番号11のアミノ酸配列と配列同一性(%)を有するアミノ酸配列を含むか、このようなアミノ酸配列からなるか、実質的にこのようなアミノ酸配列からなる。このような実施形態のいくつかにおいて、配列番号11との配列同一性は、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%もしくは少なくとも100%、またはこれらのパーセンテージのいずれか2つの間のパーセンテージである。いくつかの実施形態において、前記スペーサーは、配列番号11のアミノ酸配列を含むか、このアミノ酸配列からなるか、実質的にこのアミノ酸配列からなる。
【0092】
いくつかの実施形態において、前記スペーサーは、少なくとも10~229個のアミノ酸、少なくとも10~200個のアミノ酸、少なくとも10~175個のアミノ酸、少なくとも10~150個のアミノ酸、少なくとも10~125個のアミノ酸、少なくとも10~100個のアミノ酸、少なくとも10~75個のアミノ酸、少なくとも10~50個のアミノ酸、少なくとも10~40個のアミノ酸、少なくとも10~30個のアミノ酸、少なくとも10~20個のアミノ酸もしくは少なくとも10~15個のアミノ酸、またはこれらの範囲の両端の間の任意の整数で表される個数のアミノ酸を有する。いくつかの実施形態において、スペーサー領域は、1~12個のアミノ酸、1~119個のアミノ酸、または1~229個のアミノ酸を有する。いくつかの実施形態において、前記スペーサーは、1アミノ酸長以上かつ250アミノ酸長未満、1アミノ酸長以上かつ200アミノ酸長未満、1アミノ酸長以上かつ150アミノ酸長未満、1アミノ酸長以上かつ100アミノ酸長未満、1アミノ酸長以上かつ75アミノ酸長未満、1アミノ酸長以上かつ50アミノ酸長未満、1アミノ酸長以上かつ25アミノ酸長未満、1アミノ酸長以上かつ20アミノ酸長未満、1アミノ酸長以上かつ15アミノ酸長未満、1アミノ酸長以上かつ12アミノ酸長未満、または1アミノ酸長以上かつ10アミノ酸長未満である。いくつかの実施形態において、前記スペーサーは、10~250アミノ酸長、10~150アミノ酸長、10~100アミノ酸長、10~50アミノ酸長、10~25アミノ酸長、10~15アミノ酸長、15~250アミノ酸長、15~150アミノ酸長、15~100アミノ酸長、15~50アミノ酸長、15~25アミノ酸長、25~250アミノ酸長、25~100アミノ酸長、25~50アミノ酸長、50~250アミノ酸長、50~150アミノ酸長、50~100アミノ酸長、100~250アミノ酸長、100~150アミノ酸長、または150~250アミノ酸長である。代表的なスペーサーとして、IgG4ヒンジのみからなるスペーサー、CH2ドメインおよびCH3ドメインに連結されたIgG4ヒンジからなるスペーサー、またはCH3ドメインに連結されたIgG4ヒンジからなるスペーサーが挙げられる。また、代表的なスペーサーとして、Hudecek et al. Clin. Cancer Res., 19:3153 (2013)、国際特許出願WO2014031687、米国特許第8,822,647号、米国公開出願第2014/0271635号(これらの文献は引用によりその全体が本明細書に明示的に援用される)に記載されているスペーサーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0093】
いくつかの実施形態において「膜貫通ドメイン」は、細胞膜の二重層を貫通する疎水性タンパク質領域であり、生体膜に埋め込まれるタンパク質を繋ぎ止める役割を果たす。膜貫通ドメインのトポロジーは、膜貫通型のαヘリックスであってもよいが、これに限定されない。いくつかの実施形態において、膜貫通ドメインは、CD28膜貫通配列またはその断片を含み、このCD28膜貫通配列またはその断片は、たとえば、10アミノ酸長、11アミノ酸長、12アミノ酸長、13アミノ酸長、14アミノ酸長、15アミノ酸長、16アミノ酸長、17アミノ酸長、18アミノ酸長、19アミノ酸長、20アミノ酸長、21アミノ酸長、22アミノ酸長、23アミノ酸長、24アミノ酸長、25アミノ酸長、26アミノ酸長、27アミノ酸長もしくは28アミノ酸長、またはこれらの長さのいずれか2つによって定義される範囲内の長さである。いくつかの実施形態において、CD28膜貫通配列またはその断片は、28アミノ酸長である。
【0094】
いくつかの実施形態において、前記細胞内シグナル伝達ドメインは、CD27、CD28、4-1BB、OX-40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、LFA-1、CD2、CD7、NKG2C、B7-H3およびこれらの組み合わせからなる群から選択される共刺激ドメインと、CD3ζドメインの全体またはその一部との組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、前記細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζドメインのシグナル伝達機能部分と、4-1BBドメインの共刺激機能部分を含む。
【0095】
いくつかの実施形態において、前記核酸は、マーカー配列をコードする配列をさらに含む。いくつかの態様において、前記マーカーは、細胞表面受容体の末端切断形態であり、たとえば、上皮成長因子受容体(EGFRt)、CD19(CD19t)もしくはHER2(Her2t)またはその他の受容体の末端切断形態である。いくつかの実施形態において、前記マーカー配列は、細胞表面受容体の末端切断形態であり、EGFRtであってもよい。
【0096】
いくつかの実施形態において、前記核酸は、メトトレキサートにより選択できるように構成されたジヒドロ葉酸還元酵素をコードする導入遺伝子をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記ジヒドロ葉酸還元酵素をコードする導入遺伝子は、ジヒドロ葉酸還元酵素の二重変異体(DHFRdm)である。いくつかの実施形態において、ジヒドロ葉酸還元酵素の二重変異体は、L22Fアミノ酸変異およびF31Sアミノ酸変異を含む。
【0097】
いくつかの実施形態において、前記核酸は、リボソームスキップ配列をコードする配列をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記リボソームスキップ配列はP2AまたはT2Aを含む。
【0098】
いくつかの実施形態において、前記核酸は、該核酸全体のGC/AT比が低下するように改変されている。いくつかの実施形態において、前記核酸は、ヒトにおける発現のためにコドン最適化されている。
【0099】
本明細書で提供する方法および組成物の実施形態のいくつかは、本発明の実施形態のいずれかによる核酸を含む発現ベクターを含む。いくつかの実施形態において、前記ベクターはウイルスベクターである。いくつかの実施形態において、前記ベクターは、レンチウイルスベクターまたはアデノウイルスベクターである。いくつかの実施形態において、前記受容体ゼータカインは、IL-13ムテインとスペーサーを含む細胞外ドメイン;膜貫通ドメイン;および細胞内シグナル伝達領域を含み、前記スペーサーは、前記ムテインと前記膜貫通ドメインの間に位置する。
【0100】
特定のキメラ受容体
本明細書で提供する方法および組成物の実施形態のいくつかは、本発明の実施形態のいずれかによる核酸または本発明の実施形態のいずれかによるベクターによってコードされるキメラ受容体ポリペプチドを含む。本明細書で提供する方法および組成物の実施形態のいくつかは、本発明の実施形態のいずれかによる核酸または本発明の実施形態のいずれかによるベクターによってコードされる、細胞膜結合型IL13ムテインにより指向性を付与した受容体であるゼータカインを含む。
【0101】
特定の宿主細胞
本明細書で提供する方法および組成物の実施形態のいくつかは、本発明の実施形態のいずれかによる核酸または本発明の実施形態のいずれかによる発現ベクターを含む宿主細胞を含む。いくつかの実施形態において、前記宿主細胞は、遺伝子組換え細胞を含む。いくつかの実施形態において、前記宿主細胞は、ナイーブCD8+T細胞、セントラルメモリーCD8+T細胞、エフェクターメモリーCD8+T細胞およびバルクCD8+T細胞からなる群から選択されるCD8+細胞傷害性Tリンパ球である。いくつかの実施形態において、前記CD8+細胞傷害性Tリンパ球は、セントラルメモリーT細胞であり、該セントラルメモリーT細胞は、CD45RO+、CD62L+およびCD8+である。いくつかの実施形態において、前記宿主細胞は、ナイーブCD4+T細胞、セントラルメモリーCD4+T細胞、エフェクターメモリーCD4+T細胞およびバルクCD4+T細胞からなる群から選択されるCD4+ヘルパーTリンパ球である。いくつかの実施形態において、前記CD4+ヘルパーリンパ球は、ナイーブCD4+T細胞であり、該ナイーブCD4+T細胞は、CD45RA+、CD62L+およびCD4+であり、かつCD45RO-である。いくつかの実施形態において、前記宿主細胞は前駆T細胞である。いくつかの実施形態において、前記宿主細胞は造血幹細胞である。
【0102】
本明細書で提供する方法および組成物の実施形態のいくつかは、IL-13受容体α2を発現するがんまたは固形腫瘍の治療または抑制において使用するための、本発明の実施形態のいずれかによる宿主細胞または本発明の実施形態のいずれかによる組成物を提供する。前記組成物は、本発明の実施形態のいずれかによる宿主細胞と医薬品添加剤を含む。いくつかの実施形態において、前記がんは神経膠芽腫である。いくつかの実施形態において、前記がんは多形膠芽腫(GBM)である。いくつかの実施形態において、前記がんはIL13Rα陽性の悪性腫瘍である。いくつかの実施形態において、前記がんは脳がんまたは脳腫瘍である。したがって、いくつかの実施形態は、医薬品において使用するため、またはIL13Rα陽性悪性腫瘍、多形膠芽腫(GBM)、神経膠腫および神経膠芽腫を含む(ただしこれらに限定されない)脳がんなどのがんの治療または抑制において使用するための、本明細書に記載の実施形態のいずれかによる宿主細胞に関する。
【0103】
特定の組成物
本明細書で提供する方法および組成物の実施形態のいくつかは、本発明の実施形態のいずれかによる宿主細胞と薬学的に許容される添加剤を含む組成物を含む。
【0104】
宿主細胞を作製する特定の方法
本明細書で提供する方法および組成物の実施形態のいくつかは、本発明の実施形態のいずれかによる宿主細胞を作製する方法を含む。このような実施形態のいくつかは、
a)本発明の実施形態のいずれかによる核酸または本発明の実施形態のいずれかによる発現ベクターをリンパ球に導入する工程;
b)抗CD3抗体または抗CD28抗体および少なくとも1種の恒常性サイトカインの存在下で、前記リンパ球を培養する工程;ならびに
c)前記核酸または前記ベクターで形質導入した細胞を選択的に濃縮できるように構成された選択試薬で前記リンパ球を選択する工程
を含む。
いくつかの実施形態において、前記選択試薬はメトトレキサートである。いくつかの実施形態において、前記リンパ球は、CD45RA-、CD45RO+もしくはCD62L+の表現型、またはこれらの任意の組み合わせを有する。いくつかの実施形態において、前記リンパ球は、CD8+またはCD4+である。いくつかの実施形態において、前記サイトカインは、IL-15、IL-7もしくはIL-21またはこれらの任意の組み合わせである。いくつかの実施形態において、前記方法は、マーカータンパク質をコードする第2の核酸を前記宿主細胞に導入する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記マーカータンパク質はEGFRtである。いくつかの実施形態において、前記発現ベクターは、本発明の実施形態のいずれかによる核酸を含む。いくつかの実施形態において、前記ベクターはウイルスベクターである。いくつかの実施形態において、前記ベクターは、レンチウイルスベクターまたはアデノウイルスベクターである。
【0105】
いくつかの実施形態において、前記宿主細胞は、ナイーブCD8+T細胞、セントラルメモリーCD8+T細胞、エフェクターメモリーCD8+T細胞およびバルクCD8+T細胞からなる群から選択されるCD8+細胞傷害性Tリンパ球である。いくつかの実施形態において、前記CD8+細胞傷害性Tリンパ球は、セントラルメモリーT細胞であり、該セントラルメモリーT細胞は、CD45RO+、CD62L+もしくはCD8+またはこれらの任意の組み合わせである。いくつかの実施形態において、前記宿主細胞は、ナイーブCD4+T細胞、セントラルメモリーCD4+T細胞、エフェクターメモリーCD4+T細胞およびバルクCD4+T細胞からなる群から選択されるCD4+ヘルパーTリンパ球である。いくつかの実施形態において、前記CD4+ヘルパーリンパ球は、ナイーブCD4+T細胞であり、該ナイーブCD4+T細胞は、CD45RA+、CD62L+もしくはCD4+またはこれらの任意の組み合わせであり、かつCD45RO-である。いくつかの実施形態において、前記宿主細胞は前駆T細胞である。いくつかの実施形態において、前記宿主細胞は造血幹細胞である。
【0106】
特定の治療方法
本明細書で提供する方法および組成物の実施形態のいくつかは、治療方法における本発明の宿主細胞の使用を含む。このような実施形態のいくつかは、IL-13受容体α2(IL-13Ra2)を発現するがんまたは固形腫瘍の治療、抑制または緩和における細胞の使用を含む。いくつかの実施形態において、前記がんは神経膠芽腫である。いくつかの実施形態において、前記がんは多形膠芽腫(GBM)である。いくつかの実施形態において、前記がんはIL-13Rα陽性悪性腫瘍である。いくつかの実施形態において、前記がんは脳がんまたは脳腫瘍である。
【0107】
本明細書で提供する方法および組成物の実施形態のいくつかは、がんまたは腫瘍を有する対象において細胞免疫療法を行う方法であって、本発明の実施形態のいずれかによる宿主細胞または本発明の実施形態による組成物を前記対象に投与する工程を含む方法を提供する。前記組成物は、本発明の実施形態のいずれかによる宿主細胞と薬学的に許容される添加剤を含む。いくつかの実施形態において、前記がんは神経膠芽腫である。いくつかの実施形態において、前記がんは多形膠芽腫(GBM)である。いくつかの実施形態において、前記がんはIL13Rα陽性の悪性腫瘍である。いくつかの実施形態において、前記がんは脳がんである。いくつかの実施形態において、前記対象は、併用療法の投与を行うために選択された対象である。いくつかの実施形態において、前記併用療法は、化学療法薬の投与を含む。いくつかの実施形態において、前記併用療法は、放射線療法の投与を含む。いくつかの実施形態において、前記化学療法薬は、電気化学療法、アルキル化剤、代謝拮抗薬(たとえば、5-フルオロウラシル(5-FU)、6-メルカプトプリン(6-MP)、カペシタビン(ゼローダ(登録商標))、クラドリビン、クロファラビン、シタラビン(Ara-C(登録商標))、フロクスウリジン、フルダラビン、ゲムシタビン(ジェムザール(登録商標))、ヒドロキシウレア、メトトレキサート、ペメトレキセド(アリムタ(登録商標))、ペントスタチンまたはチオグアニン)、抗腫瘍抗生物質、トポイソメラーゼ阻害薬、分裂阻害薬、コルチコステロイド、DNAインターカレーターまたはチェックポイント阻害薬(チェックポイントキナーゼCHK1またはCHK2)を含む。いくつかの実施形態において、前記がんは神経膠腫である。
【実施例0108】
実施例1-IL-13(E13Y)ゼータカインCARの構築
スペーサー領域が異なる様々なIL-13(E13Y)ゼータカインCARを構築した。図1に示すように、IL-13(E13Y)ゼータカインCARをコードする核酸は、リーダー配列(EF1p);IL-13のムテイン(E13Y)をコードするポリヌクレオチド;3種のスペーサーのうちのいずれか1つをコードするポリヌクレオチド;CD28tm膜貫通配列をコードするポリヌクレオチド;および第1シグナル伝達ドメインである4-1BBドメインと共刺激ドメインであるCD3ζドメインを含むシグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドを含んでいた。前記3種のスペーサーは、改変IgG4ヒンジを含む短い「S」スペーサー;改変IgG4ヒンジと免疫グロブリンのCH3領域(IgG4ヒンジ-CH3)を含む中程度の長さの「M」スペーサー;および改変IgG4ヒンジと免疫グロブリンのCH2ドメインと免疫グロブリンのCH3ドメイン(IgG4ヒンジ-CH2-CH3)を含む長い「L」スペーサーであった。Lスペーサーは、CH2ドメインに2つの変異(L235D、N297Q)を含んでおり、これらの変異によって、CARとFc受容体(FcR)が相互作用して望ましくない作用が起こる可能性を低減することができる。さらに、CARは、自己切断型リボソームスキップ配列2Aペプチド(T2A)を含んでいた。いくつかの構築物において、lentivectorは、メトトレキサートにより選択できるように構成されたジヒドロ葉酸還元酵素の二重変異体(DHFRdm)をコードする導入遺伝子をさらに含んでいる。IL-13のムテインを配列番号16に示す。IL-13のムテインの配列の一例は、Kahlonらによる文献(Kahlon KS et al., Cancer Res. 2004;この文献は引用によりその全体が本明細書に援用される)に記載されている。本明細書で述べるように、E13Y変異により、IL-13Rα2に対する選択的な結合性が向上した。
【0109】
実施例2-スペーサーが異なる様々なCARのインビトロにおける比較
図2Aに示した方法に従って、CARが異なる様々なT細胞を作製した。まず、マイクロビーズを使用して、末梢血単核細胞(PBMC)からCD8+T細胞を選択した。選択した細胞をCD3/CD28マイクロビーズで刺激した後、レンチウイルスを使用して前記構築物を形質導入した。いくつかの反復実験(*)では、EGFRtの下流にインフレームに挿入したT2A-DHFRdmをさらに含む構築物を前記CD8 T細胞に形質導入してT2A-DHFRdmを共発現させ、機能的意義のある量でIL13ゼータカインCARを共発現しているMTX耐性T細胞の選択を可能とした。次に、細胞をフローサイトメトリー染色してゼータカインCARを発現している細胞を同定し、さらにEGFRtマーカーを使用して細胞を選択した。図2Bに示す代表的なフローサイトメトリーデータから、CD8+T細胞が効率的に選択され、次いで、サロゲートマーカー(EGFRt)の発現を利用することにより、ほぼ純粋なIL13ゼータカインCAR発現CD8+T細胞を濃縮または選択することができたことが示された(*)。
【0110】
さらに、Sスペーサー、MスペーサーまたはLスペーサーを有するゼータカインCARを含むCD8+T細胞によるIL13Ra2発現標的細胞の特異的溶解と、標的細胞の存在下での該CD8+T細胞によるサイトカインの発現を評価した。まず、標的細胞としてのU87細胞、U251T細胞およびDAOY細胞におけるIL13Ra2の発現を分析した(図3A)。4時間にわたる51Cr細胞傷害性アッセイでは、標識したU87腫瘍細胞株、U251T腫瘍細胞株およびDAOY腫瘍細胞株を、Mock T細胞またはスペーサーが異なる様々な第2世代IL13ゼータカインCAR T細胞と共培養した(図3B)。Mスペーサーを有するIL13ゼータカインCAR T細胞およびLスペーサーを有するIL13ゼータカインCAR T細胞では、特異的な溶解が誘導されたが、短いスペーサーを有するIL13ゼータカインCAR T細胞では、IL13Ra2を効率的に標的化することはできなかった。データは、3人の異なるドナーの平均値±SDを示した。
【0111】
サイトカイン放出アッセイでは、ゼータカインCARを含むT細胞を標的細胞とともに24時間培養した。細胞を含まない上清を回収し、TNFα、IFNγおよびIL-2の分泌を測定した。Mスペーサーを有するゼータカインCARを含むCD8+T細胞およびLスペーサーを有するゼータカインCARを含むCD8+T細胞は、サイトカインの産生量が多かったが、Sスペーサーを有するゼータカインCARを含むCD8+T細胞では、サイトカインの産生はほとんど見られなかった(図3C)。
【0112】
実施例3-IL13ゼータカインCARのインビボにおける抗腫瘍活性
MスペーサーまたはLスペーサーを含むIL13ゼータカインCARのインビボにおける抗腫瘍活性を試験した。0日目に、ffLucで標識したU87神経膠芽腫細胞(0.2×106個)をNSGマウスの前脳に頭蓋内注射した。7日目に、中程度の長さのスペーサーまたは長いスペーサーを含む第2世代IL13ゼータカインCARを形質導入したCD8+T細胞を様々な投与量(2×106個または1×106個)でマウス(1群あたりn=5)に投与するか、Mock T細胞をマウスに投与した。
【0113】
腫瘍負荷の指標として、U87細胞からの全流束(光子/秒)を測定した。図4Aに示すように、Mock治療マウスやLスペーサーを含むIL13ゼータカインCARで治療したマウスと比較して、Lスペーサーを含むIL13ゼータカインCARを含む細胞で治療したマウスでは、腫瘍負荷が時間の経過とともに減少した。カプランマイヤー生存曲線では、Lスペーサーを含むIL13ゼータカインCARを含む細胞を様々な投与量で投与したマウスにおいて、生存率の改善が示された(図4B)。
【0114】
実施例4-IL13ゼータカインCARのインビトロにおける分析
図5Aに示した方法と実質的に同様の方法で、MスペーサーまたはLスペーサーを有するIL13ゼータカインCARを含む細胞を作製した。簡潔に述べると、CD4+T細胞およびCD8+T細胞を単離し、共培養した。2日後、Mスペーサーを有するIL-13ゼータカインまたはLスペーサーを有するIL-13ゼータカインをこれらのT細胞に形質導入した。刺激の終了後(S1D13)、CD4:CD8の比率、マーカーの発現、抗IL-13抗体を使用した染色によるゼータカインの直接発現について細胞を分析した(図5B)。
【0115】
インビトロ機能分析において細胞を試験した(図6)。IL-13ゼータカインにより指向性を付与したT細胞をIL-13Ra2発現標的細胞と共培養した後、クロム放出アッセイを行って特異的な溶解の程度を評価した。このアッセイでは、刺激した15日目(S1D15)のT細胞を様々な標的細胞株と共培養し、この際、エフェクター細胞と標的細胞の比率を様々に変えた。K562-OKT3細胞は、TCR複合体の誘導によりT細胞を活性化させたポジティブコントロールとして使用し、これ以外の細胞株は、様々な程度でIL-13Ra2を発現するものであった(上部の表を参照されたい)。下部の表は、T細胞におけるCD4とCD8の比率、およびサロゲートマーカーの陽性率を示す。アッセイは、サロゲートマーカー陽性細胞の総数を正規化することによって行った。試験の結果、Mスペーサーを有するゼータカインおよびLスペーサーを有するゼータカインのいずれでも、IL-13Ra2陽性標的細胞に対する溶解が誘導されたことが示された。
【0116】
実施例5-IL13ゼータカインCARのインビボにおける抗腫瘍活性
図7に示すように、Mスペーサーを有するIL-13ゼータカインおよびLスペーサーを有するIL-13ゼータカインは、神経膠芽腫(GBM)モデルにおいて、腫瘍の増殖を抑制することが観察された。実施例4で作製した細胞および刺激した15日目(S1D15)の細胞を、同所性異種移植片腫瘍モデルにおいて試験した。このモデルは、GFP:ffluc発現U87神経膠芽腫細胞をNOD-Scid IL2yR-nullマウスに頭蓋内注射することにより作製した。7日後、IL-13ゼータカインにより指向性を付与したT細胞を、GFP:ffluc発現U87腫瘍と同側に注射した。ffluc発現U87腫瘍から生じた流束を評価したところ、MスペーサーまたはLスペーサーを有するIL-13ゼータカイン発現T細胞によりインビボでの腫瘍負荷が減少したことが示されたことから、これらのIL-13ゼータカイン発現T細胞が腫瘍の増殖を抑制することが観察された(図7)。腫瘍の接種から26日後の流束の変化量を統計分析したところ、MスペーサーまたはLスペーサーを有するIL-13ゼータカイン発現T細胞は、(IL-13ゼータカインを含まない)Mock T細胞と比べて流束の発生を有意に抑制したことが示された。
【0117】
実施例6-IL13ゼータカインCARのインビトロにおける分析
IL-13ゼータカインにより指向性を付与したT細胞を、クロム放出アッセイで分析した。このアッセイでは、急速培養した14日目(S1R1D14)のT細胞を様々な標的細胞株と共培養し、この際、エフェクター細胞と標的細胞の比率を様々に変えた。K562-OKT3細胞は、TCR複合体の誘導によりT細胞を活性化させたポジティブコントロールとして使用し、これ以外の細胞株は、様々な程度でIL-13Ra2を発現するものであった(上部の表を参照されたい)。IL-13Ra2に特異的な溶解を実証するため、ゼータカインの発現のための形質導入を行っていないMock T細胞をネガティブコントロールとしてこの試験に組み込んだ。下部の表は、T細胞におけるCD4とCD8の比率、およびサロゲートマーカーの陽性率を示す。アッセイは、マーカー陽性細胞の総数を正規化することによって行った。試験の結果、Mスペーサーを有するゼータカインおよびLスペーサーを有するゼータカインのいずれでも、IL-13Ra2陽性標的細胞に対する溶解が誘導されたことが示された(図8)。
【0118】
別の試験において、IL-13ゼータカイン発現T細胞を、様々な標的細胞株とともに24時間共培養した。ここでは、エフェクター細胞と標的細胞の比率を2:1とした。試験データから、試験したゼータカインは、標的特異的にIL-13Ra2に結合し、サイトカインの放出を誘導することができたことが示された(図9)。
【0119】
本明細書で提供する実施形態における特定のアミノ酸配列およびヌクレオチド配列の一覧を表2に示す。

【表2】
【0120】
本明細書で使用されている「含む(comprising)」という用語は、「含む(including)」、「含む(containing)」または「特徴とする(characterized by)」という用語と同義であるとともに、オープンエンドで包括的な意味であり、本明細書には記載されていないさらなる要素や工程を除外するものではない。
【0121】
前述の説明は、本発明のいくつかの方法および材料を開示するものである。本発明の方法および材料は、変更することができ、製造方法および器具も変更することができる。このような変更は、本明細書に開示された本発明の実施または本開示を考慮に入れて、当業者であれば容易に理解することができる。したがって、本発明は、本明細書に開示された特定の実施形態に限定されず、本発明の真の範囲および要旨において可能なあらゆる変更およびその他の態様を包含する。
【0122】
本明細書において引用された公開特許出願、非公開特許出願、特許および学術文献を含む(ただしこれらに限定されない)すべての参考文献は、引用によりその全体が本明細書に援用され、本明細書の一部を構成する。参照によって援用された文献、特許または特許出願が本明細書の開示内容と矛盾する場合、このような矛盾事項よりも本明細書の記載が採用および/または優先される。
【0123】
本発明は、以下の発明を含む。
[1]細胞膜結合型IL-13ムテインにより指向性を付与した受容体であるゼータカイン(zetakine)をコードする核酸であって、該受容体ゼータカインが、IL-13のムテインとスペーサーを含む細胞外ドメイン;膜貫通ドメイン;および細胞内シグナル伝達領域を含み、前記スペーサーが、前記ムテインと前記膜貫通ドメインの間に位置する、核酸。
[2]前記IL-13のムテインが、配列番号16のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、[1]に記載の核酸。
[3]前記IL-13のムテインが、配列番号16のアミノ酸配列を含む、[1]または[2]に記載の核酸。
[4]前記スペーサーがペプチドスペーサーである、[1]~[3]のいずれか1つに記載の核酸。
[5]前記スペーサーが、IgG4ヒンジスペーサー(短いスペーサー)、IgG4ヒンジ-CH3スペーサー(中程度の長さのスペーサー)、またはIgG4ヒンジ-CH2-CH3スペーサー(長いスペーサー)を含むか、これらのいずれかからなるか、実質的にこれらのいずれかからなる、[1]~[4]のいずれか1つに記載の核酸。
[6]前記スペーサーが、IgG4ヒンジ-CH3スペーサー(中程度の長さのスペーサー)を含むか、このスペーサーからなるか、実質的にこのスペーサーからなる、[1]~[5]のいずれか1つに記載の核酸。
[7]前記スペーサーが、IgG4ヒンジ-CH2-CH3スペーサー(長いスペーサー)を含むか、このスペーサーからなるか、実質的にこのスペーサーからなる、[1]~[6]のいずれか1つに記載の核酸。
[8]前記スペーサーが、配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、この配列からなるか、実質的にこの配列からなる、[1]~[7]のいずれか1つに記載の核酸。
[9]前記スペーサーが、配列番号10のアミノ酸配列を含むか、この配列からなるか、実質的にこの配列からなる、[1]~[8]のいずれか1つに記載の核酸。
[10]前記スペーサーが、配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、この配列からなるか、実質的にこの配列からなる、[1]~[9]のいずれか1つに記載の核酸。
[11]前記スペーサーが、配列番号11のアミノ酸配列を含むか、この配列からなるか、実質的にこの配列からなる、[1]~[10]のいずれか1つに記載の核酸。
[12]前記膜貫通ドメインが、CD28膜貫通ドメイン(CD28tm)を含む、[1]~[11]のいずれか1つに記載の核酸。
[13]前記細胞内シグナル伝達ドメインが、CD27、CD28、4-1BB、OX-40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、LFA-1、CD2、CD7、NKG2C、B7-H3およびこれらの組み合わせからなる群から選択される共刺激ドメインと、CD3ζドメインの全体またはその一部との組み合わせを含む、[1]~[12]のいずれか1つに記載の核酸。
[14]前記細胞内シグナル伝達領域が、CD3ζドメインのシグナル伝達機能部分と、4-1BBドメインの共刺激機能部分を含む、[1]~[13]のいずれか1つに記載の核酸。
[15]マーカーをコードする配列をさらに含む、[1]~[14]のいずれか1つに記載の核酸。
[16]前記マーカーが、細胞表面受容体の末端切断形態を含み、該マーカーがEGFRtであってもよい、[15]に記載の核酸。
[17]メトトレキサートにより選択できるように構成されたジヒドロ葉酸還元酵素をコードする導入遺伝子をさらに含む、[1]~[16]のいずれか1つに記載の核酸。
[18]前記ジヒドロ葉酸還元酵素をコードする導入遺伝子が、ジヒドロ葉酸還元酵素の二重変異体(DHFRdm)である、[17]に記載の核酸。
[19]前記ジヒドロ葉酸還元酵素の二重変異体が、L22Fアミノ酸変異およびF31Sアミノ酸変異を含む、[17]または[18]に記載の核酸。
[20]リボソームスキップ配列をコードする配列をさらに含む、[1]~[19]のいずれか1つに記載の核酸。
[21]前記リボソームスキップ配列が、P2AまたはT2Aを含む、[20]に記載の核酸。
[22][1]~[21]のいずれか1つに記載の核酸を含む発現ベクター。
[23]ウイルスベクターである、[22]に記載の発現ベクター。
[24]レンチウイルスベクターまたはアデノウイルスベクターである、[22]または[23]に記載の発現ベクター。
[25][1]~[21]のいずれか1つに記載の核酸によってコードされるキメラ受容体ポリペプチド。
[26][1]~[21]のいずれか1つに記載の核酸を含む宿主細胞。
[27]T細胞または前駆T細胞である、[26]に記載の宿主細胞。
[28]ナイーブCD8+T細胞、セントラルメモリーCD8+T細胞、エフェクターメモリーCD8+T細胞およびバルクCD8+T細胞からなる群から選択されるCD8+細胞傷害性Tリンパ球である、[26]または[27]に記載の宿主細胞。
[29]前記CD8+細胞傷害性Tリンパ球がセントラルメモリーT細胞であり、該セントラルメモリーT細胞が、CD45RO+、CD62L+およびCD8+である、[28]に記載の宿主細胞。
[30]ナイーブCD4+T細胞、セントラルメモリーCD4+T細胞、エフェクターメモリーCD4+T細胞およびバルクCD4+T細胞からなる群から選択されるCD4+ヘルパーTリンパ球である、[26]または[27]に記載の宿主細胞。
[31]前記CD4+ヘルパーリンパ球が、ナイーブCD4+T細胞であり、該ナイーブCD4+T細胞が、CD45RA+、CD62L+およびCD4+であり、かつCD45RO-である、[30]に記載の宿主細胞。
[32]前駆T細胞である、[26]~[31]のいずれか1つに記載の宿主細胞。
[33]造血幹細胞である、[26]~[32]のいずれか1つに記載の宿主細胞。
[34][26]~[32]のいずれか1つに記載の宿主細胞と薬学的に許容される添加剤を含む組成物。
[35][26]~[32]のいずれか1つに記載の宿主細胞を作製する方法であって、[1]~[21]のいずれか1つに記載の核酸をリンパ球に導入する工程;抗CD3抗体および/または抗CD28抗体ならびに少なくとも1種の恒常性サイトカインの存在下で前記リンパ球を培養する工程;ならびに前記核酸または該核酸を含むベクターで形質導入した細胞を選択的に濃縮できるように構成された選択試薬で前記リンパ球を選択する工程を含む方法。
[36]宿主細胞を作製する方法であって、[1]~[21]のいずれか1つに記載の核酸をリンパ球に導入する工程;抗CD3抗体および/または抗CD28抗体ならびに少なくとも1種の恒常性サイトカインの存在下で前記リンパ球を培養する工程;ならびに前記核酸または該核酸を含むベクターで形質導入した細胞を選択的に濃縮できるように構成された選択試薬で前記リンパ球を選択する工程を含む方法。
[37]前記選択試薬がメトトレキサートである、[35]または[36]に記載の方法。
[38]前記リンパ球が、CD45RA-、CD45RO+およびCD62L+の表現型を有する、[35]~[37]のいずれか1つに記載の方法。
[39]前記リンパ球が、CD8+またはCD4+である、[35]~[38]のいずれか一つに記載の方法。
[40]前記サイトカインが、IL-15、IL-7および/またはIL-21である、[35]~[39]のいずれか1つに記載の方法。
[41]マーカータンパク質をコードする第2の核酸を前記宿主細胞に導入する工程をさらに含む、[35]~[40]のいずれか1つに記載の方法。
[42]前記マーカータンパク質がEGFRtである、[41]に記載の方法。
[43]医薬品において使用するため、またはIL-13受容体α2(IL-13Ra2)を発現するがんもしくは固形腫瘍の治療もしくは抑制において使用するための、[26]~[32]のいずれか1つに記載の宿主細胞。
[44]前記がんが脳がんである、[43]に記載の使用。
[45]前記がんがIL-13Rα陽性の悪性腫瘍である、[43]または[44]に記載の使用。
[46]前記がんが神経膠芽腫である、[43]~[45]のいずれか1つに記載の使用。
[47]前記がんが多形膠芽腫(GBM)である、[43]~[46]のいずれか1つに記載の使用。
[48]対象においてがんを治療、抑制または緩和する方法であって、がんの治療、抑制または緩和が必要な対象に[26]~[32]のいずれか1つに記載の宿主細胞を投与する工程を含む方法。
[49]前記がんがIL13Rα陽性の悪性腫瘍である、[48]に記載の方法。
[50]前記がんが脳がんである、[48]または[49]に記載の方法。
[51]前記がんが神経膠腫または神経膠芽腫である、[48]~[50]のいずれか1つに記載の方法。
[52]前記がんが神経膠腫である、[48]~[51]のいずれか1つに記載の方法。
[53]前記がんが多形膠芽腫(GBM)である、[48]~[51]のいずれか1つに記載の方法。
[54]化学療法および放射線療法から選択される付加療法を投与する工程をさらに含む、[48]~[53]のいずれか1つに記載の方法。
[55]前記化学療法薬が、電気化学療法、アルキル化剤、代謝拮抗薬(たとえば、5-フルオロウラシル(5-FU)、6-メルカプトプリン(6-MP)、カペシタビン(ゼローダ(登録商標))、クラドリビン、クロファラビン、シタラビン(Ara-C(登録商標))、フロクスウリジン、フルダラビン、ゲムシタビン(ジェムザール(登録商標))、ヒドロキシウレア、メトトレキサート、ペメトレキセド(アリムタ(登録商標))、ペントスタチンおよびチオグアニン)、抗腫瘍抗生物質、トポイソメラーゼ阻害薬、分裂阻害薬、コルチコステロイド、DNAインターカレーターまたはチェックポイント阻害薬(チェックポイントキナーゼCHK1、CHK2)を含む、[54]に記載の方法。
[56]前記対象が哺乳動物である、[48]~[55]のいずれか1つに記載の方法。
[57]前記対象がヒトである、[48]~[56]のいずれか1つに記載の方法。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
【配列表】
2023134631000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2023-07-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
IL-13ムテインにより指向性を付与した受容体であるゼータカイン(zetakine)をコードする核酸であって、
該受容体ゼータカインが、
IL-13のムテインを含む細胞外ドメイン;
スペーサー;
膜貫通ドメイン;および
細胞内シグナル伝達領域
を含み、
前記スペーサーが、配列番号10に示されるアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、
前記スペーサーが、前記ムテイン前記膜貫通ドメインに連結し前記膜貫通ドメインが、前記スペーサーを前記細胞内シグナル伝達領域に連結する、
核酸。
【請求項2】
記ムテインが、配列番号17に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の核酸。
【請求項3】
記ムテインが、配列番号17に示されるアミノ酸配列を含む、請求項1または2に記載の核酸。
【請求項4】
前記膜貫通ドメインが、CD28膜貫通ドメインを含む、請求項1~のいずれか1項に記載の核酸。
【請求項5】
前記細胞内シグナル伝達領域が、CD27、CD28、4-1BB、OX-40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、LFA-1、CD2、CD7、NKG2C、B7-H3およびこれらの組み合わせからなる群から選択される共刺激ドメインと、CD3ζドメインの全体またはその一部との組み合わせを含む、請求項1~のいずれか1項に記載の核酸。
【請求項6】
前記細胞内シグナル伝達領域が、CD3ζドメインの一部と、4-1BBドメインの共刺激部分を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の核酸。
【請求項7】
マーカータンパク質をコードする配列をさらに含む、請求項1~のいずれか1項に記載の核酸。
【請求項8】
前記マーカータンパク質が、末端切断型の上皮成長因子受容体またはジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)を含、請求項に記載の核酸。
【請求項9】
前記DHFRが、DHFRの二重変異体(DHFRdm)である、請求項に記載の核酸。
【請求項10】
前記DHFRdmが、L22Fアミノ酸変異およびF31Sアミノ酸変異を含む、請求項に記載の核酸。
【請求項11】
リボソームスキップ配列をさらに含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の核酸。
【請求項12】
前記リボソームスキップ配列が、P2AまたはT2Aを含む、請求項11に記載の核酸。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の核酸を含む発現ベクター。
【請求項14】
ウイルスベクターである、請求項13に記載の発現ベクター。
【請求項15】
レンチウイルスベクターまたはアデノウイルスベクターである、請求項13または14に記載の発現ベクター。
【請求項16】
請求項1~12のいずれか1項に記載の核酸によってコードされるIL-13ムテインにより指向性を付与した受容体であるゼータカイン
【請求項17】
請求項1~12のいずれか1項に記載の核酸を含む細胞。
【請求項18】
リンパ球である、請求項17に記載の細胞。
【請求項19】
前記リンパ球が、CD45RA-、CD45RO+およびCD62L+の表現型を有する、請求項18に記載の細胞。
【請求項20】
ナイーブCD8+T細胞、セントラルメモリーCD8+T細胞、エフェクターメモリーCD8+T細胞またはCD45RO+CD62L+CD8+T細胞である、請求項17~19のいずれか1項に記載の細胞。
【請求項21】
ナイーブCD4+T細胞、セントラルメモリーCD4+T細胞、エフェクターメモリーCD4+T細胞またはCD45RA+CD62L+CD4+CD45RO-T細胞である、請求項17~19のいずれか1項に記載の細胞。
【請求項22】
前駆T細胞である、請求項17に記載の細胞。
【請求項23】
前記前駆T細胞が、造血幹細胞である、請求項22に記載の細胞。
【請求項24】
請求項1723のいずれか1項に記載の細胞と薬学的に許容されるキャリアを含む組成物。
【請求項25】
請求項12のいずれか1項に記載の核酸を含む遺伝子操作された細胞を作製する方法であって、
遺伝子操作された細胞を産生するために請求項1~12のいずれか1項に記載の核酸を細胞に導入する工程;
抗CD3抗体および/または抗CD28抗体ならびに少なくとも1種の恒常性サイトカインの存在下で前記遺伝子操作された細胞を培養する工程;ならびに
培養後の前記遺伝子操作された細胞を濃縮する工程
を含む方法。
【請求項26】
前記核酸が、マーカータンパク質をコードする配列をさらに含み、前記濃縮する工程が、マーカータンパク質の発現を選択する試薬と培養後の前記遺伝子操作された細胞を培養する工程を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記細胞がリンパ球である、請求項25または26に記載の方法。
【請求項28】
前記リンパ球が、CD45RA-、CD45RO+およびCD62L+の表現型を有する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記細胞が、ナイーブCD8+T細胞、セントラルメモリーCD8+T細胞、エフェクターメモリーCD8+T細胞またはCD45RO+CD62L+CD8+T細胞である、請求項2528のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記細胞が、ナイーブCD4+T細胞、セントラルメモリーCD4+T細胞、エフェクターメモリーCD4+T細胞、またはCD45RA+CD62L+CD4+CD45RO-T細胞である、請求項25~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記細胞が前駆T細胞である、請求項25または26に記載の方法。
【請求項32】
前記前駆T細胞が、造血幹細胞である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記少なくとも1種の恒常性サイトカインが、IL-15、IL-7IL-21またはこれらの組み合わせである、請求項2532のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記マーカータンパク質が、末端切断型の上皮成長因子受容体である、請求項26~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
IL-13受容体α2(IL-13Ra2)を発現するがんの治療または抑制用の医薬品の製造における、請求項17~23のいずれか1項に記載の細胞の使用
【請求項36】
前記がんが脳がんを含む、請求項35に記載の使用。
【請求項37】
前記がんが神経膠腫、神経膠芽腫または多形膠芽腫である、請求項36に記載の使用。
【請求項38】
前記がんがIL-13Rα陽性の悪性腫瘍である、請求項35~37のいずれか1項に記載の使用。
【請求項39】
がんの治療用である、請求項24に記載の組成物。
【請求項40】
前記がんがIL-13Rα陽性の悪性腫瘍である、請求項39に記載の組成物。
【請求項41】
前記がんが脳がんを含む、請求項39または40に記載の組成物。
【請求項42】
前記脳がんが、神経膠腫、神経膠芽腫または多形膠芽腫である、請求項41に記載の組成物。
【請求項43】
化学療法および放射線療法から選択される療法を受けている対象への投与用である、請求項39~42のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項44】
前記化学療法が、電気化学療法、アルキル化剤、抗腫瘍抗生物質、トポイソメラーゼ阻害薬、分裂阻害薬、コルチコステロイド、DNAインターカレーター、チェックポイント阻害薬またはこれらの組み合わせを含む、請求項43に記載の組成物。
【請求項45】
前記化学療法が、5-フルオロウラシル(5-FU)、6-メルカプトプリン(6-MP)、カペシタビン、クラドリビン、クロファラビン、シタラビン、フロクスウリジン、フルダラビン、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、メトトレキサート、ペメトレキセド、ペントスタチン、チオグアニン、またはこれらの組み合わせを含む、請求項43に記載の組成物。
【請求項46】
哺乳動物への投与用である、請求項43~45のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項47】
ヒトへの投与用である、請求項43~46のいずれか1項に記載の組成物。