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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134643
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】二次電池管理装置
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20230920BHJP
   G06Q 40/04 20120101ALI20230920BHJP
【FI】
G06Q50/10
G06Q40/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023115063
(22)【出願日】2023-07-13
(62)【分割の表示】P 2022551631の分割
【原出願日】2022-06-08
(31)【優先権主張番号】P 2021101757
(32)【優先日】2021-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】515090628
【氏名又は名称】株式会社スリーダムアライアンス
(71)【出願人】
【識別番号】520284218
【氏名又は名称】TESNOLOGY株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002273
【氏名又は名称】弁理士法人インターブレイン
(72)【発明者】
【氏名】松村 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】近藤 克彦
(57)【要約】      (修正有)
【課題】二次電池の流通を管理し、流通を促進する二次電池管理装置を提供する。
【解決手段】二次電池管理システムは、二次電池と1以上の証券を対応づけ、証券と投資家を対応づけ、二次電池とユーザを対応づけ、二次電池の貸与先となるユーザから、二次電池の使用料を取得する。二次電池の証券を購入した投資家に対して、二次電池の使用料に基づく分配金を送金する。二次電池管理システムはまた、二次電池の貸与先が第1のユーザから第2のユーザに変更されたとき二次電池の使用料を第2のユーザから取得する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池と1以上の証券を対応づける証券管理部と、
証券と、前記証券を購入した投資家を対応づける投資家管理部と、
二次電池と前記二次電池の貸与先となるユーザを対応づけるユーザ管理部と、
二次電池の貸与先となるユーザから、前記二次電池の使用料を徴収する徴収部と、
二次電池の証券を購入した投資家に対して、前記証券に基づく分配金の送金を指示する分配部と、
投資情報を外部端末に送信する送信部と、を備え、
前記証券管理部は、証券と投資情報を対応づけて管理し、二次電池の設置位置が第1の設置位置から第2の設置位置に変更されたときには、前記二次電池に対応づけられる証券の投資情報において前記二次電池の設置位置を前記第1の設置位置から前記第2の設置位置に登録変更し、
前記送信部は、登録変更後の投資情報を前記外部端末に送信する、二次電池管理装置。
【請求項2】
前記証券管理部は、二次電池の製造に要する炭素排出量を相殺可能なカーボンクレジットの価格に基づいて、前記二次電池の証券の販売価格を設定する、請求項1に記載の二次電池管理装置。
【請求項3】
前記徴収部は、二次電池の貸与先が第1のユーザから第2のユーザに変更されたとき、前記二次電池の使用料の徴収先を前記第1のユーザから前記第2のユーザに変更する、請求項1に記載の二次電池管理装置。
【請求項4】
前記分配部は、二次電池の証券を保有する第1の投資家が、前記証券を第2の投資家に譲渡したとき、前記二次電池の分配金の送金先を前記第1の投資家から前記第2の投資家に変更する、請求項1に記載の二次電池管理装置。
【請求項5】
前記徴収部は、二次電池の設置位置が第1の設置位置から第2の設置位置に変更されるときには、前記二次電池の使用料を変更する、請求項1に記載の二次電池管理装置。
【請求項6】
貸与期間中において、二次電池の性能情報を取得する性能情報取得部と、
前記取得された性能情報に基づいて前記二次電池の劣化度を測定する劣化測定部と、を更に備え、
前記送信部は、更に、二次電池の劣化度を投資情報に含めて送信する、請求項1に記載の二次電池管理装置。
【請求項7】
前記ユーザ管理部は、前記取得された性能情報に基づいて、ユーザによる二次電池の使用能力を示すランクを設定し、
前記証券管理部は、更に、二次電池のユーザに関するランクを投資情報の一部として管理し、
前記送信部は、更に、ランクを含む投資情報を送信する、請求項6に記載の二次電池管理装置。
【請求項8】
二次電池の使用料を管理する料金設定部、を更に備え、
前記料金設定部は、ユーザのランクに応じて二次電池の使用料を設定する、請求項7に記載の二次電池管理装置。
【請求項9】
前記証券管理部は、更に、二次電池のユーザの属性を示すユーザ情報を投資情報として管理し、
前記送信部は、更に、ユーザ情報を含む投資情報を送信する、請求項1に記載の二次電池管理装置。
【請求項10】
前記徴収部は、二次電池の充電回数に応じて使用料を取得する、請求項1に記載の二次電池管理装置。
【請求項11】
前記徴収部は、所定の使用条件が成立しているときには所定の単位期間において二次電池の使用料として固定の第1料金を取得し、前記使用条件が成立しないときには追加の第2料金を取得する、請求項10に記載の二次電池管理装置。
【請求項12】
二次電池と1以上の証券を対応づける証券管理部と、
証券と、前記証券を購入した投資家を対応づける投資家管理部と、
二次電池と前記二次電池の貸与先となるユーザを対応づけるユーザ管理部と、
二次電池の貸与先となるユーザから、前記二次電池の使用料を徴収する徴収部と、
二次電池の証券を購入した投資家に対して、前記証券に基づく分配金の送金を指示する分配部と、を備え、
前記分配部は、二次電池の証券を保有する第1の投資家が、前記証券を第2の投資家に譲渡したとき、前記二次電池の分配金の送金先を前記第1の投資家から前記第2の投資家に変更する、二次電池管理装置。
【請求項13】
二次電池と1以上の証券を対応づける証券管理部と、
証券と、前記証券を購入した投資家を対応づける投資家管理部と、
二次電池と前記二次電池の貸与先となるユーザを対応づけるユーザ管理部と、
二次電池の貸与先となるユーザから、前記二次電池の使用料を徴収する徴収部と、
二次電池の証券を購入した投資家に対して、前記証券に基づく分配金の送金を指示する分配部と、を備え、
前記徴収部は、二次電池の貸与先が第1のユーザから第2のユーザに変更されたとき、前記二次電池の使用料の徴収先を前記第1のユーザから前記第2のユーザに変更する、二次電池管理装置。
【請求項14】
二次電池の貸与先となるユーザから、前記二次電池の使用料を徴収する徴収部と、
前記二次電池に対応づけられる証券を購入した投資家に対して、前記証券に基づく分配金を送金する分配部と、を備え、
前記分配部は、二次電池の証券を保有する第1の投資家が、前記証券を第2の投資家に譲渡したとき、前記二次電池の分配金の送金先を前記第1の投資家から前記第2の投資家に変更する、二次電池管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の流通を管理するための技術、に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池の市場は順調に拡大を続けている。電気自動車(EV:Electric Vehicle)、モバイル端末、電動アシスト自転車、無停電電源装置など、二次電池を利用する製品は幅広い。二次電池の特徴は、充放電を繰り返すことにより長期間にわたって使用できることである。
【0003】
二次電池の開発競争は活発化しており、二次電池の劣化の抑制、いいかえれば、二次電池の長寿命化が今後いっそう進むと考えられる。また、二次電池は材料として用いる資源の発掘、製造、リサイクルなどの過程における二酸化炭素排出量が多いといわれる。このため環境保護の観点からも二次電池の長寿命化は望ましい。
【0004】
二次電池が長寿命化していくと、二次電池の流通が本格化すると考えられる。たとえば、公共交通機関の業務用EVで二次電池を一次利用し、二次電池のSOH(State of Health)がある程度下がったところでこの二次電池を別のユーザが家庭用蓄電池として二次利用することも考えられる。二次電池のもともとのエネルギー密度が高い場合には、そのSOHが多少下がったとしても家庭用蓄電池として十分に使えることがある。二次電池が長寿命化することにより、二次電池の一次利用だけでなく二次利用、三次利用も実現可能となる(特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2019/131824号
【特許文献2】特開2020-126305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、二次電池の流通にはいくつかの障害が考えられる。まず、二次電池を最初に導入するユーザにとって、二次電池の購入負担(初期コスト)は大きい。たとえば、長期的に見れば経済効率のよい高性能な二次電池であっても、初期コストが大きい場合にはユーザは購入をためらうかもしれない。特に、一次ユーザが二次電池をその寿命が尽きるまで使い切るのではなく、いずれ二次ユーザへの売却を考えているときには、転売価格の見通しが立たなければ初期コストを負担しづらい。
【0007】
また、一次ユーザから中古の二次電池を購入したい二次ユーザにとっても、二次電池をいくらで購入するのが適切なのか、どの一次ユーザのどの二次電池を購入すべきかを判断するのが難しく、この判断の難しさも二次電池の流通を妨げる要因となる。
【0008】
本発明は、上記課題認識に基づいて完成された発明であり、その主たる目的は、二次電池の流通を促進するための技術、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある態様における二次電池管理装置は、二次電池と1以上の証券を対応づける証券管理部と、証券と、証券を購入した投資家を対応づける投資家管理部と、二次電池と二次電池の貸与先となるユーザを対応づけるユーザ管理部と、二次電池の貸与先となるユーザから、前記二次電池の使用料を徴収する徴収部と、二次電池の証券を購入した投資家に対して、前記証券に基づく分配金の送金を指示する分配部と、投資情報を外部端末に送信する送信部と、を備える。
証券管理部は、証券と投資情報を対応づけて管理し、二次電池の設置位置が第1の設置位置から第2の設置位置に変更されたときには、二次電池に対応づけられる証券の投資情報において二次電池の設置位置を第1の設置位置から第2の設置位置に登録変更し、送信部は、登録変更後の投資情報を前記外部端末に送信する。
【0010】
本発明の別の態様における二次電池管理装置は、二次電池と1以上の証券を対応づける証券管理部と、証券と、証券を購入した投資家を対応づける投資家管理部と、二次電池と二次電池の貸与先となるユーザを対応づけるユーザ管理部と、二次電池の貸与先となるユーザから、二次電池の使用料を徴収する徴収部と、二次電池の証券を購入した投資家に対して、証券に基づく分配金の送金を指示する分配部と、を備える。
分配部は、二次電池の証券を保有する第1の投資家が、証券を第2の投資家に譲渡したとき、二次電池の分配金の送金先を第1の投資家から第2の投資家に変更する。
【0011】
本発明の別の態様における二次電池管理装置は、二次電池と1以上の証券を対応づける証券管理部と、証券と、証券を購入した投資家を対応づける投資家管理部と、二次電池と二次電池の貸与先となるユーザを対応づけるユーザ管理部と、二次電池の貸与先となるユーザから、二次電池の使用料を徴収する徴収部と、二次電池の証券を購入した投資家に対して、証券に基づく分配金の送金を指示する分配部と、を備える。
徴収部は、二次電池の貸与先が第1のユーザから第2のユーザに変更されたとき、二次電池の使用料の徴収先を第1のユーザから第2のユーザに変更する。
【0012】
本発明の別の態様における二次電池管理装置は、二次電池の貸与先となるユーザから、二次電池の使用料を徴収する徴収部と、二次電池に対応づけられる証券を購入した投資家に対して、証券に基づく分配金を送金する分配部と、を備える。
分配部は、二次電池の証券を保有する第1の投資家が、証券を第2の投資家に譲渡したとき、二次電池の分配金の送金先を第1の投資家から第2の投資家に変更する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、二次電池の流通を促進しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】二次電池のユーザと投資家の関係を示す模式図である。
図2】二次電池管理システムの概念図である。
図3】二次電池管理システムのハードウェア構成図である。
図4】二次電池管理サーバのハードウェア構成図である。
図5】二次電池管理サーバ、投資端末およびユーザ端末の機能ブロック図である。
図6】二次電池情報のデータ構造図である。
図7】電池保有情報のデータ構造図である。
図8】ユーザ情報のデータ構造図である。
図9】証券情報のデータ構造図である。
図10】投資家情報のデータ構造図である。
図11】投資情報のデータ構造図である。
図12】電池証券の販売価格の決め方を説明するための模式図である。
図13】電池証券の発行時の処理過程を示すシーケンス図である。
図14】分配金の支払い処理過程を示すシーケンス図である。
図15図14のS48における処理過程を詳細に示すフローチャートである。
図16】電池証券の売買の処理過程を示すシーケンス図である。
図17】二次電池の貸出先を変更するときの処理過程を示すシーケンス図である。
図18】投資画面の画面図である。
図19】変形例における使用料の決定方法を説明するための模式図である。
図20】変形例における証券ブロックチェーンの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
二次電池のオーナーである管理会社は、メーカーから二次電池を購入する。二次電池はユーザに貸与される。ユーザは二次電池の使用料を支払う。二次電池は使用料という継続収入を生み出す資産となる。
【0016】
管理会社は、二次電池に対して1以上の証券を対応づける。証券は一般投資家または機関投資家に販売される。証券を購入した投資家は、ユーザが支払う二次電池の使用料に基づいて分配金(インカムゲイン)を得る。
【0017】
二次電池の導入費用は、証券化(Securitization)を通して、多数の投資家により薄く広く負担される。二次電池の使用料は、証券化を通して、多数の投資家に分配される。
【0018】
二次電池は、一次利用だけでなく、二次利用、三次利用も可能である。たとえば、ユーザA1が二次電池B1を使用し、二次電池B1が20(%)劣化し、この二次電池B1の貸与先をユーザA2に変更したとする。以後は、ユーザA2が使用料を支払うことになる。
【0019】
ユーザA2が二次電池B1を使用し、二次電池B1が更に40(%)劣化し、この二次電池B1の貸与先をユーザA3に変更したとする。以後は、ユーザA3が使用料を払うことになる。投資家は、ユーザA1,A2,A3などそのときのユーザの使用料に基づいて分配金を継続的に得ることができる。
【0020】
ガソリン自動車に比べるとEVは部品点数が少なく、車両価格は大きく下がると考えられる。車両価格が低下すると、車両価格に占める二次電池の価格の割合(二次電池/車両全体の価格比)が高くなる。二次電池を購入するのではなく、二次電池を借りて使用料を支払う方式であれば、ユーザはEVをいっそう利用しやすくなる。
【0021】
図1は、二次電池のユーザと投資家の関係を示す模式図である。
上述したように、二次電池は、一次ユーザ、二次ユーザのように複数のユーザに使用されることが想定される。二次電池の使用歴は、後述するDIエンジンにより管理される。もしくはブロックチェーンなどの分散台帳を用いて使用歴を管理してもよい。二次電池にはバッテリーマネジメントのためのコンピュータ(以下、「DIエンジン」とよぶ)が搭載される。DIエンジンは、ユーザID、放電日時、充電日時、劣化度(SOH:State of Heath)、SOC(State Of Charge)、放電電圧、気温などのさまざまなデータを登録して保持する。これらのデータを確認することにより、二次電池の使用歴をトレースできる。
【0022】
二次電池の購入価格がM(円)であるとする。二次電池に対してはn枚の証券が対応づけられる。たとえば、証券の販売価格がD(円)であり、n枚の証券が完売したとする。このとき、二次電池のオーナーである管理会社は、D×n(円)の資金調達が可能となる。D×n>Mであれば、管理会社は二次電池を購入したあと、証券化をおこなうことで、収益を得ることができる。
【0023】
管理会社は、二次電池ごとにユーザと投資家を対応づけて登録する。このようにして、ユーザ、管理会社および投資家は二次電池を介して結びつく。
【0024】
ユーザは、二次電池の使用料を支払う。具体的には二次電池の劣化度が1(%)上昇するごとに、すなわち、SOHが1(%)低下するごとにF(円)を支払う。また、充電1回につき使用料としてG(円)を支払う。F>Gであるとする。充電回数および劣化度はDIエンジンにより定期的に計測され、DIエンジンもしくはブロックチェーンの使用歴に記録される。
【0025】
使用料は、証券を購入した投資家に分配される。この仕組みは、不動産の貸借人が支払う使用料を、不動産を証券化したREIT(Real Estate Investment Trust)の投資家に分配する仕組みに似ている面がある。投資家はREITを買うのと同じように、二次電池の証券(以下、「電池証券」ともよぶ)を買うことができる。
【0026】
図2は、二次電池管理システム200の概念図である。
二次電池管理システム200は、ユーザと、管理会社と、証券会社、投資家、証券取引所を含む。管理会社は二次電池管理サーバ100を保有する。管理会社はメーカーから二次電池を購入し、証券会社に委託して二次電池を証券化する。電池証券は証券取引所を通じて投資家に売り出される。投資家は二次電池の証券を購入する。
【0027】
管理会社は、二次電池の購入費用をすぐに投資家に転嫁できる。管理会社は自己資金に限らず、銀行からの借入金で二次電池を購入してもよい。
【0028】
二次電池を業務用EVで一次利用するとする。二次電池がどこで使われるか、誰に使われるかによって証券の価値は変化する。証券会社は、二次電池の使用状況に応じて証券の販売価格を決める。この方式は新規上場株のプライシングに似ている面がある。人気のある電池証券であれば販売価格は高くなるし、人気のない電池証券であれば販売価格を低くしなければ売り切ることはできなくなる。
【0029】
業務用EVの場合、SOHが80(%)(劣化度が20(%))になるまで二次電池を一次利用するとする。劣化度1(%)につきF1(円)の使用料とすれば、劣化度に基づく一次使用料としてF1×20(円)が支払われる。充電量1(kW)あたりH1(円)の使用料とすれば、充電に基づく使用料は合計でH1×m1(円)となる。m1は充電量である。
【0030】
一次ユーザが二次電池を大切に使う場合には、20(%)劣化まで長期間に渡って使用が可能となるため、トータルの充電量は多くなる。いいかえれば、充電に基づく一次使用料H1×m1は大きくなる。一次ユーザは二次電池の価値を落とさずに二次電池を長く使えるし、投資家は長期間に渡って分配金をもらうことができる。このような優良なユーザによる使用が想定される二次電池の場合、電池証券の価格は高くなる。
【0031】
一次ユーザが二次電池を大切に使わない場合には、20(%)劣化まで短期間しか使用ができなくなるため、充電に基づく一次使用料H1×m1は小さくなる。一次ユーザは二次電池の価値を落とし、二次電池を短期間しか使うことができず、投資家も短期間しか分配金をもらうことができない。このような一次ユーザによる使用が想定される場合、電池証券の価格は低くなる。
【0032】
長寿命の二次電池の場合、20(%)の劣化後であっても家庭用蓄電池として十分に使用できる。一次ユーザは、使用済みの二次電池を二次ユーザに譲渡する。二次電池の貸与先は一次ユーザから二次ユーザに変更される。二次電池管理サーバ100は、二次電池の貸与先を登録変更する。
【0033】
なお、投資家は、電池証券を証券市場において自由に売買できる。二次電池管理サーバ100は、電池証券の売買が成立するごとに電池証券の所有者(投資家)の名義の書き換えを行う。二次電池が一次ユーザから二次ユーザに譲渡されたときには、投資家はいったん電池証券を証券市場で売却してもいいし、継続保有してもよい。
【0034】
一次ユーザは、二次ユーザに二次電池をそのまま譲渡してもよい。譲渡したときには、ブロックチェーンにおいてユーザIDが変更される。また、二次電池のDIエンジンは、ユーザが変更したことを二次電池管理サーバ100に通知する。二次ユーザが一次ユーザに二次電池の譲渡を申し出てもよいし、一次ユーザが二次ユーザに二次電池の譲渡を申し出てもよい。あるいは、管理会社が二次電池の貸出先、貸出期間、貸出条件を設定してもよい。
【0035】
家庭用蓄電池の場合、SOHが80(%)から40(%)(劣化度が20(%)から60(%))になるまで二次電池を二次利用するとする。劣化度1(%)につきF2(円)の使用料とすれば、劣化度に基づく一次使用料は合計でF2×40(円)の使用料が支払われる。充電1回につきG2(円)の使用料とすれば、充電に基づく一次使用料は合計でG2×n2(円)となる。n2は充電回数である。
【0036】
F2<F1、G2<G1であってもよい。この場合、一次利用のときよりも二次利用のときの方が電池証券の単位期間あたりの分配金が低くなりやすい。一方、二次電池の使用期間(劣化度40(%)分の変化期間)は長くなるので電池証券から分配金を受ける期間は長くなる。
【0037】
一次ユーザと同様、二次ユーザが二次電池を大切かつ活発に使用する場合には、電池証券の価値は高くなる。また、電池証券の価値は二次電池の使用環境によっても変化する。たとえば、直射日光が当たるところに設置されている二次電池は劣化が進みやすい。ユーザは二次電池を直射日光から守るだけでも使用期間を延ばすことができるので有利となる。
【0038】
一次利用から二次利用に変化するときにも電池証券の価値は変化する。二次利用においては二次電池が中古になっているため電池証券の価値は一次利用開始時よりも低くなる。一方、二次利用の二次電池からも継続的に分配金を得ることができる。電池証券の価値が大きく下がっているときに電池証券を購入すればキャピタルゲインを受けることも可能である。このように電池証券は債券のように安定したインカムゲインをもたらすという側面だけでなく、キャピタルゲインを狙えるという投資妙味も併せ持つ。
【0039】
三次利用、四次利用まで想定すると、電池証券の価値は徐々に下落していく。一方、劣化度が進んだ二次電池であってももともとのエネルギー密度が大きい場合には長期間にわたる利用が可能であるため、結果的に電池証券の現在価値が想定よりも高くなる可能性もある。電池証券にこのような投機性をもたせることで、投機家を市場に呼び込み、電池証券取引が活性化されることが期待される。また、二次電池の使用ペースは予測しやすいため、DCF(Discounted Cash Flow)法による現在価値計算にも馴染みやすいと考えられる。
【0040】
以下、ユーザ、管理会社、投資家および社会それぞれの観点から二次電池の証券化によって得られるメリットをまとめる。
【0041】
1.ユーザ
ユーザは、高額・高性能な二次電池であっても、購入する必要もローンを組む必要もなく、使用料を支払うことで利用できる。ユーザは、DIエンジンもしくはブロックチェーンにより二次電池の使用歴(素性)を確認できるので、中古二次電池でも安心して導入しやすくなる。
【0042】
ユーザは、貸与された二次電池を大切に使用することで二次電池を長く使うことができるので単位期間あたりの費用負担を抑制できる。
【0043】
2.管理会社
管理会社にとって、二次電池は「お金を生み出すエネルギーの箱」になる。管理会社は二次電池を購入し、証券化を行うことで二次電池を資産化できる。管理会社は、使用料の一部を運営費として徴収してもよい。管理会社は、電池証券の価格を高めるためには優良ユーザに二次電池を貸し出したい。そのためには、管理会社が優良ユーザに使用料の値下げなどのインセンティブを提供することも考えられる。管理会社としても、他の管理会社との貸し出し競争をする必要があるため、優良ユーザを確保するための工夫を管理会社に促す効果も期待できる。
【0044】
また、管理会社は、長寿命でいろいろなユーザのニーズに応えられる汎用性の高い二次電池ほど電池証券の価格を高くできると考えられる。このため、優良メーカーの二次電池の購入が促進されることになり健全な開発競争にも寄与すると考えられる。二次電池のユーザはDIエンジンもしくはブロックチェーンにより管理されるため、管理会社はユーザ間で二次電池が流通しても、使用料を誰に請求すればいいのかを常時把握できる。管理会社は、二次電池のユーザに応じて使用料を機動的に変更してもよい。
【0045】
3.投資家
投資家は、電池証券を購入することでインカムゲインを得ることができる。電気は毎日使わざるを得ないものであるため、インカムゲインが安定しやすい。また、二次電池の使用状況やそれにからむ思惑によって電池証券の取引価格が変動するため投資妙味を楽しむこともできる。
【0046】
投資家は、複数種類の電池証券を購入してもよい。たとえば、安定したインカムゲインを期待する電池証券とキャピタルゲインを期待する電池証券を組み合わせることによりポートフォリオを組むこともできる。
【0047】
電池証券は、リスクあるいは利回りに応じてトランシェに分けられてもよい。電池証券をトランシェに分けることで機関投資家も安心して電池証券に投資しやすくなると考えられる。
【0048】
一般的には、機関投資家は複数の金融商品に分散投資をすることによりリスク管理することが多い。しかし、金融商品Aの価格変動と金融商品Bの価格変動にある程度の相関性が生じる場合、金融商品Aと金融商品Bに分散投資する効果は減殺されてしまうことが知られている。電池証券は、株式、債券、不動産とはまったく異なる新しいタイプの資産であるため、分散投資のポートフォリオに組み入れることで分散効果を発揮しやすくなると考えられる。このため、大口投資家にとってもポートフォリオの一部に組み入れることを検討しやすくなる。
【0049】
4.社会
投資行動を通して、二次電池を大事に使うユーザは市場に高く評価されることになる。市場が優良な二次電池の適切な使用を促すことになる。
【0050】
EV1台が搭載する二次電池の容量を50(kWH)とすると、100万台のEVだけでも50(GWH)という巨大な電力市場が生まれる。このような巨大電力を担う大量の二次電池は廃棄あるいはリサイクルされるときに膨大な二酸化炭素を排出することになる。したがって「長寿命の二次電池をできる限り使い切る」ことが今後は大切になる。二次電池管理システム200により二次電池をさまざまなユーザニーズに応じて流通させることで環境負荷を大きく下げることができると考えられる。
【0051】
管理会社は、不良ユーザには高い使用料を設定し、優良ユーザには低い使用料を設定してもよい。不良ユーザの高い使用料の一部は優良ユーザの使用料の補填として使われてもよい。あるいは、政府は二次電池の使用料の一部から税金を徴収し、優良ユーザにはそこから奨励金を支払ってもよい。
【0052】
二次電池以外にも二次電池管理システム200による証券化手法は応用可能である。たとえば、EVそのものを証券化し貸し出してもよいし、EVを構成する部品、たとえば、モーターを証券化しユーザへ貸し出してもよい。
【0053】
二次電池の使用歴をブロックチェーンで管理することは必須ではない。二次電池に付属するDIエンジンが使用歴を記録し、DIチェーン同士で情報交換してもよい。
【0054】
DIエンジンは、二次電池管理サーバ100に定期的に使用歴を報告してもよい。この場合、二次電池管理サーバ100は複数の二次電池の使用歴をまとめて管理してもよい。
【0055】
DIエンジンとDIエンジンが通信するとき、あるいは、DIエンジンと二次電池管理サーバ100が通信するときに通信料を発生させてもよい。ユーザから管理会社に通信料が支払われ、通信料の全部または一部は投資家への分配金として支払われてもよい。あるいは、管理会社からユーザに対して通信料(情報料)が支払われてもよい。
【0056】
二次電池のユーザから管理会社を経由して投資家に通信料(分配金)が支払われる方式を採用する場合、あまり使用されていない二次電池であっても通信料が定期的に発生するため、投資家はいっそう安定的にインカムゲインを得ることができる。
【0057】
管理会社は、二次電池を購入し、投資家は二次電池の購入費を負担する。このときの電池証券は、管理会社の投資家に対する債務(借用証書)としての性質を有する金融商品であってもよい。この場合、電池証券の分配金には、管理会社による金利を含めた返済金としての意味をもつことになる。
【0058】
DIエンジンは、二次電池を充電するときの電力源を把握することもできる。たとえば、DIエンジンは、原子力発電、火力発電、太陽光発電など複数の発電源のうち、どの発電源をどのくらいの割合で使って二次電池を充電しているかを把握し、これを使用歴として記録してもよい。
【0059】
DIエンジンは、二次電池の使用条件、たとえば、誰が使っているか(ユーザの種別)、何に使っているか(用途の種別)を使用歴として記録してもよい。太陽光発電など脱炭素型の電気エネルギーを使っているときには、電池証券に「脱酸素」という属性を付与してもよい(以下、「環境配慮型電池証券」とよぶ)。脱炭素社会を応援したい投資家は、環境配慮型電池証券に積極的に投資してもよい。また、政府も脱炭素促進のために環境配慮型電池証券に優遇税制を適用してもよい。優遇税制により、環境配慮型電池証券の価値を高めることができると考えられる。
【0060】
業務用EVは常時運行されるため二次電池を継続的に使用することになる。このため、業務用EVに使われる二次電池からは継続的な使用料収入を期待できる。一方、都市部における個人用EVは週末にしか使用されないことも多く、その二次電池からは安定した使用料収入を期待できない可能性もある。また、急加速・急減速を繰り返すことで二次電池の劣化は進みやすい。このように、二次電池のユーザによって電池証券の価値も変化する。投資家は、電池証券を購入するとき、二次電池のユーザに関する情報を参照することにより投資判断をしてもよい。管理会社は二次電池のユーザに関する情報を参照することで、前述のように安定した使用料収入を期待できないユーザや劣化を進めやすい使い方をしている不良ユーザに対し、使用料の金額を高く設定することで電池証券の価値を制御できる。
【0061】
管理装置は、二次電池のDIエンジンから収集した使用歴の統計情報を販売してもよい。たとえば、統計情報の一部を投資家に販売すれば、投資家は投資判断に統計情報を活用できる。あるいは、統計情報の一部を、二次電池を開発する企業に販売すれば、企業は二次電池の企画・開発をする上で有用な指針を得ることができる。
【0062】
電池証券には、二次電池本体の価値と、二次電池において使われる電池の価値が含まれる。二次電池本体の価値には、二次電池がリサイクルされるときの価値も含まれる。たとえば、稀少金属を多く含む二次電池は価値が高い。また、リサイクルしやすく設計となっている二次電池もリサイクル時における残存価値が高くなると考えられる。このような二次電池の仕様も、投資判断にとって重要な情報になると考えられる。
【0063】
以下においては、本実施形態における二次電池管理システム200の機能および構成について詳細に説明する。
【0064】
図3は、二次電池管理システム200のハードウェア構成図である。
二次電池管理システム200においては、管理会社102が運営する二次電池管理サーバ100(二次電池管理装置)、決済システム104、ユーザが有する電子機器106とユーザ端末108、投資家が有する投資端末110、証券会社112および物流会社114が、インターネット116を介して相互に接続される。管理会社102は二次電池メーカー118と専用回線により接続される。証券会社112は証券取引所120と専用回線にて接続される。
【0065】
二次電池メーカー118は、二次電池122を製造する。管理会社102は、二次電池メーカー118から二次電池122を購入する。管理会社102は、二次電池122に二次電池122の製造を発注し、二次電池メーカー118は二次電池122を発注数だけ製造して管理会社102に納品する。このため、二次電池メーカー118は二次電池122の在庫リスクから解放される。
【0066】
管理会社102は、二次電池メーカー118から購入した二次電池122をさまざまなユーザに貸与する。二次電池122には上述したDIエンジンが搭載される。DIエンジンは通信機能を有するIC(Integrated Circuit)チップおよび軽量のソフトウェアにより構成される。ユーザが保有する電子機器106は、貸与された二次電池122によって駆動される。電子機器106としては、EV、ESS(Energy Storage System)、家電製品、船、ラップトップPC、ポータブル電源などが想定される。電子機器106は、二次電池122によって駆動される装置であればよい。管理会社102は、証券会社112に対して、購入した二次電池122についての電池証券の発行を依頼する(後述)。
【0067】
決済システム104は、金融機関が運営するシステムであり、ユーザ、管理会社102、投資家の間での決済を実行する。
【0068】
ユーザ端末108は、ユーザによって使用される通信端末である。ユーザ端末108はスマートフォン、ラップトップPCなど任意の通信端末であってよいが、本実施形態におけるユーザ端末108はスマートフォンであると想定して説明する。ユーザは、ユーザ端末108から二次電池管理サーバ100に対して、二次電池122の貸し出しおよび返却を要求する。ユーザは、あらかじめ、二次電池管理サーバ100に対してユーザ登録をしておく。ユーザ登録に際しては、二次電池管理サーバ100はユーザにユーザID(以下、「PID」と表記する)を付与する。
【0069】
投資端末110は、投資家によって使用される通信端末である。投資端末110も任意の通信端末であってよいが、本実施形態における投資端末110はラップトップPCであると想定して説明する。投資家は、投資端末110から証券会社112に対して、電池証券の購買注文と売却注文を出す。投資家は、投資家ID(以下、「IID」と表記する)により識別される。
【0070】
証券会社112は、管理会社102からの依頼に基づいて電池証券を証券取引所120に発行する。また、投資家からの注文に応じて、電池証券の売買を行う。証券取引所120は、一般的な金融商品取引所であってもよいし、私設取引システム(PTS: Proprietary Trading System)であってもよい。
物流会社114は、管理会社102からの指示にしたがって、二次電池122をユーザのもとに配送する。
【0071】
図4は、二次電池管理サーバ100のハードウェア構成図である。
二次電池管理サーバ100は、コンピュータプログラムを格納する不揮発性メモリとしてのストレージ312、プログラムおよびデータを展開する揮発性のメモリ304、レジスタ、演算器、命令デコーダ等を内蔵し、メモリ304からプログラムを読み出して実行するプロセッサ300(CPU:Central Processing Unit)等を含む。プロセッサ300は、比較的高速な第1バス302と接続される。第1バス302には、メモリ304のほかNIC(Network Interface Card)が接続される。第1バス302には、このほか、GPU(Graphics Processing Unit)等の他のデバイスが接続されてもよい。
【0072】
第1バス302は、ブリッジ308を介して比較的低速な第2バス310と接続される。第2バス310には、ストレージ312のほか、モニタあるいはスピーカなどの出力デバイス316が接続される。また、第2バス310には、マウスやキーボードなどの入力デバイス314、プリンタなどの周辺機器318が接続されてもよい。
なお、ユーザ端末108および投資端末110のハードウェア構成についても、基本的には同様である。
【0073】
図5は、二次電池管理サーバ100、投資端末110およびユーザ端末108の機能ブロック図である。
二次電池管理サーバ100、投資端末110およびユーザ端末108の各構成要素は、CPUおよび各種コプロセッサ(co-processor)などの演算器、メモリやストレージといった記憶装置、それらを連結する有線または無線の通信線を含むハードウェアと、記憶装置に格納され、演算器に処理命令を供給するソフトウェアによって実現される。コンピュータプログラムは、デバイスドライバ、オペレーティングシステム、それらの上位層に位置する各種アプリケーションプログラム、また、これらのプログラムに共通機能を提供するライブラリによって構成されてもよい。
以下に説明する各ブロックは、ハードウェア単位の構成ではなく、機能単位のブロックを示している。
【0074】
(二次電池管理サーバ100)
二次電池管理サーバ100は、通信部130、データ処理部132およびデータ格納部134を含む。
通信部130は、投資端末110等の外部装置との通信処理を担当する。データ格納部134は各種情報を格納する。データ処理部132は、通信部130により取得されたデータおよびデータ格納部134に格納されているデータに基づいて各種処理を実行する。データ処理部132は、通信部130およびデータ格納部134のインタフェースとしても機能する。
【0075】
通信部130は、送信部136と受信部138を含む。
送信部136は、外部装置に各種データを送信する。受信部138は、外部装置から各種データを受信する。
【0076】
受信部138は、性能情報取得部140を含む。
性能情報取得部140は、二次電池122に搭載されるDIエンジンから二次電池122の「性能情報」を取得する。性能情報とは、二次電池122の性能または使用状態を示す情報であり、たとえば、公称電圧、内部抵抗値、容量、充電回数、充電率、温度、二次電池122の種別などである。
【0077】
データ処理部132は、証券管理部142、投資家管理部144、ユーザ管理部146、徴収部148、分配部150、劣化測定部152および料金設定部154を含む。
証券管理部142は、電池証券を管理する。投資家管理部144は、投資家に関する情報を管理する。ユーザ管理部146は、ユーザに関する情報を管理する。徴収部148は、ユーザから二次電池122の使用料を徴収する。本実施形態においては、ユーザが二次電池122を充電するときに使用料が発生する。分配部150は、投資家に分配金を支払う。また、使用料の一部は、管理会社102の運営費となる。本実施形態においては使用料の5(%)が運営費となり、残りの95(%)が分配金となる。
【0078】
劣化測定部152は、性能情報に基づいて二次電池122の「劣化度」を計算する。本実施形態においては、劣化度(%)=100×(初期容量-計測容量)/初期容量、として定義する。計測容量とは、計測時点における二次電池の放電容量である。二次電池122の劣化の進み方はSOHによって指標化される。SOHは容量維持率を示すが、内部抵抗値の維持率に基づいて定義されることもある。劣化度は「100-SOH(%)」を意味する。
【0079】
料金設定部154は、ユーザが二次電池122を充電するときに徴収すべき使用料を設定する。
【0080】
(投資端末110)
投資端末110は、ユーザインタフェース処理部160、通信部162、データ処理部164およびデータ格納部166を含む。
ユーザインタフェース処理部160は、キーボード、マウス、ジョイスティック、タッチパネル等の入力デバイスを介して投資家からの操作を受け付けるほか、画像表示や音声出力など、ユーザインタフェースに関する処理を担当する。通信部162は、証券会社112等との通信処理を担当する。データ格納部166は各種データを格納する。データ処理部164は、ユーザインタフェース処理部160からの入力、通信部162の受信データおよびデータ格納部166に格納されているデータに基づいて各種処理を実行する。データ処理部164は、通信部162、ユーザインタフェース処理部160およびデータ格納部166のインタフェースとしても機能する。
【0081】
ユーザインタフェース処理部160は、入力部168および出力部170を含む。
入力部168は、投資家からの各種入力を受け付ける。出力部170は、投資家に対して各種情報を出力する。
【0082】
(ユーザ端末108)
ユーザ端末108は、ユーザインタフェース処理部180、通信部182、データ処理部184およびデータ格納部186を含む。
ユーザインタフェース処理部180も、入力デバイスを介してユーザからの操作を受け付けるほか、画像表示や音声出力など、ユーザインタフェースに関する処理を担当する。通信部182は、二次電池管理サーバ100等との通信処理を担当する。データ格納部186は各種データを格納する。データ処理部184は、ユーザインタフェース処理部180からの入力、通信部182の受信データおよびデータ格納部186に格納されているデータに基づいて各種処理を実行する。データ処理部184は、通信部182、ユーザインタフェース処理部180およびデータ格納部186のインタフェースとしても機能する。
【0083】
ユーザインタフェース処理部180は、入力部188および出力部190を含む。
入力部188は、ユーザからの各種入力を受け付ける。出力部190は、ユーザに対して各種情報を出力する。
【0084】
図6は、二次電池情報210のデータ構造図である。
二次電池情報210は、DIエンジンの内蔵メモリに格納される。二次電池122は、電池ID(以下、「BID」と表記する)により識別される。電子機器106は、機器ID(以下、「MID」と表記する)により識別される。BID=B01の二次電池122(以下、「二次電池122(B01)」のように表記する)は、電子機器106(M01)に搭載されている。機器IDは、二次電池の設置位置を示す。
【0085】
二次電池122の「設置位置」は、二次電池122が搭載される電子機器106の種類、いいかえれば、二次電池122の用途を示す情報であってもよい。たとえば、二次電池122がEVにおいて一次利用され、そのあとESSにおいて二次利用されるとする。この場合、EV、ESSなどの電子機器106の種類、いいかえれば、二次電池122の使用用途を二次電池122の「設置位置」とみなしてもよい。
【0086】
同一種類の電子機器106であっても、機体が異なるときには「設置位置」は異なるとみなしてもよい。たとえば、二次電池(B01)があるEV(電子機器106)で使用されたあと、別のEVで使用されるとき、この二次電池(B01)の設置位置は変更されたとみなしてもよい。
上述したように、本実施形態においては、機器IDが二次電池の「設置位置」を示す情報であるとして説明する。
【0087】
二次電池122に対しては性能情報が対応づけられる。性能情報としては、SOH、充電回数、放電電圧など、二次電池122の性能または使用状態を示す各種の情報が含まれる。たとえば、二次電池122(B01)は、リチウムイオン二次電池(Li-ion)であり、SOHは98(%)である。すなわち、二次電池122(B01)の劣化度は2(%)である。
【0088】
DIエンジンは、定期的、または、充電時において二次電池122についての各種の性能情報を取得する。性能情報としては、このほかには、エネルギー密度、充放電効率、自己放電率、重量、耐用充放電サイクル数、耐用年数、二次電池メーカー118の名称など、仕様または計測値に基づくさまざまなデータが含まれてもよい。性能情報は、投資家にとって電池証券への投資可否を判断するための重要な情報となる。DIエンジンはこれらの性能情報を二次電池管理サーバ100に自動的に送信する。
【0089】
二次電池情報210によれば、二次電池122(B01)は電子機器106(M01)に搭載されているが、二次電池122(B05)はいずれの電子機器106にも搭載されていない。すなわち、二次電池122(B06)は、遊休状態にある。
【0090】
図7は、電池保有情報220のデータ構造図である。
電池保有情報220は、二次電池管理サーバ100のデータ格納部134に格納される。二次電池122がユーザに貸し出されたとき、ユーザ管理部146は、貸出しの対象となった二次電池122のBIDと貸出しを受けたユーザのPIDを電池保有情報220において対応づける。
【0091】
電池保有情報220によれば、二次電池122(B01)はユーザ(P01)に貸し出されている。また、遊休状態にある二次電池122(B05)はいずれのユーザにも対応づけられていない。ユーザは、個人でもよいし、法人であってもよい。たとえば、EVを使用する物流企業、ESSを使って発電所を運営する電力会社なども法人ユーザとなることができる。
【0092】
図8は、ユーザ情報230のデータ構造図である。
ユーザ情報230は、二次電池管理サーバ100のデータ格納部134に格納される。ユーザ情報230は、ユーザの属性を示す情報である。ユーザには、活用ランク、配慮ランクおよび総合ランクが設定される。ユーザが二次電池122を充電するとき、二次電池122のDIエンジンは充電が行われたことを二次電池管理サーバ100に通知する。このとき、ユーザには使用料が発生する。以下においては、ユーザは充電1回についてG(円)を支払うものと想定して説明する。また、説明を簡単にするため、使用料を決めるとき、充電量など他の要素は考慮しないものとする。
【0093】
ユーザが二次電池122を活発に利用するほど、いいかえれば、充電回数が多くなるほど、管理会社102はこのユーザから多くの使用料を徴収できる。多くの使用料を支払ってくれるユーザは、投資家にとって好ましい。
【0094】
活用ランクは、ユーザが二次電池122を活発に利用する度合いを示す。本実施形態においては、ユーザ管理部146は多数のユーザを対象として、1ヶ月(単位期間)あたりの二次電池122の充電回数を集計する。ユーザ管理部146は、充電回数の平均値および分散値に基づいて、各ユーザの標準偏差を計算する。
【0095】
ユーザ管理部146は、上位から5(%)以上の活用ランクを「5」、5~20(%)の活用ランクを「4」、20~50(%)の活用ランクを「3」、50~70(%)の活用ランクを「2」、70(%)未満の活用ランクを「1」とする。たとえば、ユーザ(P01)は、二次電池122の充電回数が上位5(%)に入るほど多いため、その活用ランクは「5」となっている。一方、ユーザ(P03)は、二次電池122の充電回数が上位70(%)にも入っていないので、その活用ランクは「1」となっている。
【0096】
ユーザが二次電池122を大事に利用するほど、いいかえれば、二次電池122の劣化が遅いほど、管理会社102はこのユーザから長期間にわたって使用料を徴収できる。使用料を長期間に渡って支払ってくれるユーザも投資家にとっては好ましい。
【0097】
配慮ランクは、ユーザが二次電池122をどのくらい大切に使っているかを示す。本実施形態においては、ユーザ管理部146は多数のユーザを対象として、1ヶ月(単位期間)あたりの二次電池122の劣化度の変化量(以下、「劣化進行度」とよぶ)について統計をとっておく。ユーザ管理部146は、この劣化進行度の小ささ(劣化しにくさ)について上位から5(%)以上の配慮ランクを「5」、5~20(%)の配慮ランクを「4」、20~50(%)の配慮ランクを「3」、50~70(%)の配慮ランクを「2」、70(%)未満の配慮ランクを「1」とする。
【0098】
たとえば、ユーザ(P01)は、二次電池122の先月の劣化進行度が上位20~50(%)のゾーンに入るため、その配慮ランクは「3」となっている。
【0099】
総合ランクは、活用ランクと配慮ランクに基づいて決定される。ユーザ管理部146は、活用ランクおよび配慮ランクを変数とする任意の単調増加関数により総合ランクを決定する。本実施形態においては、ユーザ管理部146は活用ランクと配慮ランクの平均値を総合ランクとして算出する。
【0100】
ユーザ情報230には、このほかにも、ユーザの名前、年齢、性別、居住地、口座番号、メールアドレスなど、さまざまなユーザ属性が含まれてもよい。
【0101】
図9は、証券情報240のデータ構造図である。
証券情報240は、二次電池管理サーバ100のデータ格納部134に格納される。電池証券は、証券ID(以下、「SID」と表記する)により識別される。二次電池122には1以上の電池証券が対応づけられる。図9に示す証券情報240によれば、二次電池122(B01)については10枚の電池証券(S01)が発行されている。電池証券(S01)の販売価格(売出価格)は100(円)であり、現在価格は110(円)である。したがって、販売価格で電池証券(S01)を購入した投資家には、10(円)の含み益が出ていることになる。10枚の電池証券(S01)を区別するときには、電池証券(S01:1)~電池証券(S01:10)のように表記する。
電池証券の販売価格および現在価格の決め方については後述する。
【0102】
図10は、投資家情報250のデータ構造図である。
投資家情報250は、二次電池管理サーバ100のデータ格納部134に格納される。投資家情報250は、電池証券の保有状況を示す情報である。投資家情報250によれば、投資家(I01)は企業X1である。すなわち、投資家(I01)は機関投資家である。機関投資家としては、保険会社、年金運用会社、投資銀行などの金融機関、大学などの教育機関、一般の事業会社などが考えられる。一方、投資家(I02)は個人投資家である。
【0103】
投資家(I01)は、電池証券(S01)を1枚、電池証券(S03)を10枚、電池証券(S04)を2枚、電池証券(S08)を5枚保有している。また、投資家(I01)は電池証券(S03)を平均して102(円)で取得している。図9に示した証券情報240によれば、電池証券(S03)の現在価格は130(円)であるため、投資家(I01)は電池証券(S03)については含み益を抱えている。
【0104】
図11は、投資情報260のデータ構造図である。
投資情報260は、二次電池管理サーバ100のデータ格納部134に格納される。証券管理部142は、二次電池情報210、電池保有情報220、ユーザ情報230、証券情報240に基づいて投資情報260を生成する。図11は、二次電池122(B01)に対応づけられる電池証券(S01:1)の投資情報260を示す。
【0105】
投資情報260は、現在価格欄261、性能情報欄262、投資家情報欄264、ユーザ情報欄266、予想収益欄268を含む。
証券管理部142は、現在価格欄261に電池証券(S01)の現在価格を記録する。証券管理部142は、二次電池122の二次電池情報210(図6参照)の全部または一部を性能情報欄262に、投資家情報250(図10)の一部を投資家情報欄264に、ユーザ情報230(図8参照)の全部または一部をユーザ情報欄266に記録する。このほか、図示はしていないが、投資情報260には二次電池122(B01)の設置位置(機器ID)を示す情報が含まれてもよい。
【0106】
証券管理部142は、二次電池122(B01)の過去の一定期間における分配金の収入実績に基づいて、電池証券(S01)の1ヶ月あたりの予想収益を算出して予想収益欄268に記録する。たとえば、二次電池122(B01)が過去1年間に平均して1ヶ月あたり1.5(円)の分配金を発生させているときには、証券管理部142は予想収益を1.5(円)として算出してもよい。
【0107】
このほか、証券管理部142は、過去の一定期間における分配金の収入実績から将来の期待収益を計算し、DCF法により電池証券の現在価値を算出してもよい。二次電池122は、DCF法により計算された現在価値と現在価格(取引価格)を比較することにより、電池証券(S01)が割安・適正・割高のいずれであるかを投資情報260に登録してもよい。
【0108】
投資情報260は、電池証券ごとに生成される。二次電池管理サーバ100の送信部136は、証券会社112に対して投資情報260を適宜送信する。証券会社112は、電池証券の売買機会を投資家に提供するが、このとき電池証券の投資情報260も投資家に提供する。なお、投資家への情報提供に際しては、投資家情報欄264など一部の情報を提供対象外としてもよい。
【0109】
二次電池管理サーバ100の送信部136は、投資情報260に変更があったときには、証券会社112に対して変更後の投資情報260を送信し、証券会社112は最新の投資情報260を投資家に提供する。たとえば、二次電池(B01)を搭載する電子機器106が変更になったとき、証券管理部142は投資情報260に含まれる機器ID(設置位置)を登録変更する。送信部136は、変更後の投資情報を証券会社112に送信する。
【0110】
図12は、電池証券の販売価格の決め方を説明するための模式図である。
管理会社102は、二次電池122を二次電池メーカー118から購入したあと、電池証券の発行を証券会社112に依頼する。電池証券を新規発行するとき、管理会社102は電池証券の販売価格を決定する。電池証券の販売価格の決定方法は任意であるが、本実施形態においては、二次電池管理サーバ100は以下のアルゴリズムに基づいて販売価格を決定する。
【0111】
図12において横軸は時間を示し、縦軸は管理会社102の収益を示す。ここでは原点に示す時点において二次電池122が購入され、かつ、二次電池122はすぐにいずれかのユーザに貸し出されるものと想定して説明する。説明をわかりやすくするため、図12においては遊休期間を考慮していない。
【0112】
管理会社102が二次電池メーカー118から二次電池122を購入したときの購入価格をM(円)とする。二次電池122に対してn枚の電池証券が発行されるとする。このときの1枚あたりの販売価格をD(円)とする。したがって、管理会社102は二次電池122をM(円)で購入し、n枚の電池証券をD(円)で発行することで、証券会社112からD×n(円)の収入を得ることができる。ここでは、M>D×nとする。この場合、電池証券の発行段階では、管理会社102はU=M-D×n(円)だけ損をしていることになるが、管理会社102は二次電池122の使用料の一部を運営費として回収できる。販売価格が低い方が投資を集めやすい。そこで、管理会社102は販売価格を抑制しつつ、不足分は二次電池122の使用料の一部から回収する。
【0113】
ここでは、管理会社102は、電池証券を発行してからv月後に不足分であるU(円)を運営費として回収することを目標とする。二次電池122を1回充電したときに得られる使用料をG(円)とする。本実施形態においては、G(円)の使用料が発生するときに、k×G(円)が管理会社102の運営費となり、残りの(1-k)×G(円)が投資家への分配金となる(0≦k≦1)。上述したように、本実施形態におけるkは5(%)である。
【0114】
1ヶ月あたり想定される充電回数をc(回)とすると、この二次電池122からは1ヶ月あたりk×G×c(円)の運営費が得られると考えられる。v月で不足金額U(円)を回収するためには、M-D×n=k×G×c×vが成立するように販売価格D(円)を決定する。
【0115】
この方程式において、Mは既知、G、n、v、kは任意の設定値である。証券管理部142は、二次電池122についての過去の充電実績に基づいてc(1ヶ月あたりの想定充電回数)を決定する。たとえば、電池証券の新規発行対象となる二次電池122aと同タイプかつ同じ充電容量の二次電池122bについて、1ヶ月あたりの充電回数の平均値が30(回)であれば、証券管理部142はc=30に設定してもよい。
【0116】
管理会社102は、上記方程式に基づいて販売価格D(円)を定めることにより、低価格にて電池証券を発行しつつ、v月で初期コストを回収することを期待できる。想定通りであれば、v月以降の運営費を管理会社102はすべて利益として計上できる。
【0117】
実際には、1ヶ月あたりの充電回数は、二次電池122の使用状況に応じて大きくばらつきが生じると考えられる。したがって、充電回数の不確実性、いいかえれば、分配金の不確実性が電池証券の投資妙味を生み出す。
【0118】
二次電池メーカー118は、管理会社102から二次電池122を受注生産するため在庫リスクから解放される。二次電池122の貸出先が見つからなければ、二次電池122は管理会社102の在庫になるので、管理会社102は在庫リスクを負担することになる。その一方、管理会社102は、二次電池メーカー118から二次電池122を購入したあと、電池証券を発行することにより購入費の一部または全部を短期間で回収できるため、リスクを多くの投資家に分散させることができる。また、長期間に渡って二次電池122を貸し出すことができれば、管理会社102は、二次電池122の使用料から継続的に収益を得ることができる。
【0119】
図13は、電池証券の発行時の処理過程を示すシーケンス図である。
管理会社102は、まず、二次電池メーカー118から二次電池122を購入する。このとき、証券管理部142は購入価格に基づいて、図12に関連して説明した方法により販売価格を計算する(S10)。送信部136は、証券会社112に対して電池証券の発行依頼を送信する(S12)。発行依頼には、電池証券についての投資情報260のほか、販売価格と電池証券の発行数が含まれる。
【0120】
証券会社112は、二次電池管理サーバ100からの指示にしたがって指定枚数の電池証券を証券取引所120において新規発行する(S14)。このとき、証券会社112は販売価格×指定枚数により示される発行料金を管理会社102に対して支払うように指示を出す(S16)。より具体的には、証券会社112は、二次電池管理サーバ100に対して発行料金の支払いを指示し、二次電池管理サーバ100は、証券会社112の口座から発行料金を引き落とし、管理会社102の口座に発行料金を振込むように決済システム104に指示する(S18)。証券管理部142は、電池証券の発行後、二次電池情報210、証券情報240等の各種データを更新する(S20)。
【0121】
新規発行された電池証券に対して、投資家は投資端末110から購入指示を証券会社112に送信する(S22)。証券会社112は決済システム104に指示して決済処理を実行させる(S24)。具体的には、決済システム104は投資家の口座から購入代金を引き落とし、証券会社112の口座に購入代金を振込む。決済後、証券会社112は購入通知を二次電池管理サーバ100に送信する(S26)。購入通知には、電池証券のSID、購入した投資家のIID、取引価格等が含まれる。購入通知の受信後、証券管理部142は、証券情報240、投資家情報250等の各種データを更新する(S28)。
【0122】
このあと、ユーザが二次電池122の貸出しを二次電池管理サーバ100に要求したときには、二次電池管理サーバ100の送信部136は、物流会社114に指示して二次電池122の配送を指示する。このときの配送指示には、ユーザの住所、貸出対象となる二次電池122のBIDなどが含まれる。
【0123】
物流会社114は、配送指示にしたがって、管理会社102が保有する二次電池122をユーザのもとに配送する。二次電池122の配送時においては、ユーザ管理部146は、電池保有情報220等の各種データを更新し、二次電池122と貸出先のユーザを対応づける。
【0124】
二次電池122が搭載するDIエンジンは、適宜、二次電池122の状態を計測し、性能情報を二次電池管理サーバ100に送信する。また、DIエンジンは二次電池122が装着される電子機器106からMIDを読取り、BIDとともにMIDも二次電池管理サーバ100に送信する。ユーザ管理部146は、MIDを受信したときには二次電池情報210を更新する。
【0125】
図14は、分配金の支払い処理過程を示すシーケンス図である。
ここでは、ユーザ(P01)が二次電池122(B01)を充電する場合を想定して説明する。ユーザ(P01)は二次電池122(B01)を充電ステーションで充電する(S30)。二次電池122(B01)のDIエンジンは、充電通知を二次電池管理サーバ100に送信する(S32)。充電通知には、BID、PID等が含まれる。
【0126】
二次電池管理サーバ100の徴収部148は、各二次電池122についていつ充電されたかを示す充電実績情報(不図示)を管理している。充電実績情報においては、BIDと充電日時が対応づけられる。充電通知が受信されたとき、徴収部148は充電実績情報を更新する(S34)。徴収部148は、充電通知を受信するごとに充電実績情報を更新する。
【0127】
貸与期間中の所定期日、たとえば、毎月25日になると(以下、「精算日」とよぶ)、DIエンジンは二次電池122の最新の性能情報を二次電池管理サーバ100に送信する(S36)。徴収部148は、前回の精算日から今回の精算日までの充電回数に基づいて使用料を計算する。たとえば、充電回数がn回で、1回の充電あたりの使用料(以下、1ヶ月あたりの合計の使用料と区別するために1回分の使用料のことを「単位使用料」とよぶ)がG(円)であれば、1ヶ月の使用料はG×n(円)となる。単位使用料G(円)は、二次電池122ごとにあらかじめ決められている。送信部136は、合計の使用料G×nをユーザ端末108に通知する(S38)。ユーザはユーザ端末108において、1ヶ月あたりの使用料をいつでも確認できる。
【0128】
徴収部148は、使用料G×n(円)の決済を決済システム104に指示する(S40)。ユーザ(P01)の口座からは使用料が引き落とされ、管理会社102の口座に振込まれる。二次電池管理サーバ100は、使用料を証券会社112に通知する(S42)。証券会社112は、使用料のうち(1-k)×G×nを分配金として投資端末110に通知する(S44)。証券会社112は、管理会社102に振込まれた使用料の一部を分配金として投資家の口座に振込むよう決済システム104に指示することで、決済処理を実行させる(S46)。以上により、ユーザ(P01)が支払った使用料のうちの一部は管理会社102の運営費となり、残りは投資家への分配金となる。
【0129】
二次電池管理サーバ100は、使用料の徴収後、更に、必要に応じて単位使用料の改定を行う(S48)。単位使用料の改定については次の図15に関連して詳述する。
【0130】
図15は、図14のS48における処理過程を詳細に示すフローチャートである。
劣化測定部152は、精算日に取得された性能情報に基づいて、二次電池122のSOHを計算する(S50)。また、劣化測定部152は、前回の精算日から今回の精算日までの単位期間における劣化進行度も計算する。ユーザ管理部146は、劣化進行度に基づいて配慮ランクを更新する(S52)。
【0131】
続いて、ユーザ管理部146は、充電実績情報に基づいて活用ランクを更新する(S54)。ユーザ管理部146は、配慮ランクおよび活用ランクに基づいて総合ランクを更新する(S56)。前回から総合ランクに変化がなければ(S58のN)、以降の処理はスキップされる。総合ランクに変化があれば(S58のY)、料金設定部154は単位使用料を変更する(S60)。
【0132】
具体的には、総合ランクが1以下のときには、料金設定部154は単位使用料を基本設値から50(%)分だけ増加させる。総合ランクが1~2のときには、料金設定部154は単位使用料を基本設定値から10(%)分だけ増加させる。総合ランクが2~3のときには、料金設定部154は単位使用料を基本設定値に設定する。総合ランクが3~4のときには、料金設定部154は単位使用料を基本設定値から10(%)分だけ減少させる。総合ランクが4よりも大きいときには、料金設定部154は単位使用料を基本設定値から50(%)分だけ減少させる。
【0133】
たとえば、ユーザ(P01)について二次電池122(B01)の単位使用料の基本設定値が20(円)で、ユーザ(P01)は二次電池122(B01)を1ヶ月あたり20回充電したとする。このときの基準となる使用料は400(円)となる。ユーザ(P01)の総合ランクが「1」のときには単位使用料は30(円)となるので、1ヶ月あたりの使用料は600(円)となる。ユーザ(P01)の総合ランクが「4.5」のときには単位使用料は10(円)となるので、1ヶ月の使用料は200(円)となる。このように、ユーザ(P01)は二次電池122(B01)を積極的に使い、かつ、二次電池122(B01)が劣化しないように大事に使うほど、使用料についての優遇を受けることができる。
【0134】
なお、一人のユーザが複数の二次電池122を使用する場合もある。この場合には、ユーザ管理部146は、二次電池122ごとにユーザの配慮ランク、活用ランクおよび総合ランクを計算してもよい。あるいは、ユーザ管理部146は、複数の二次電池122それぞれについて計算された配慮ランクの平均値を、このユーザの配慮ランクとして算出してもよい。
【0135】
たとえば、ユーザ(P01)が二次電池122(B01)、二次電池122(B21)、二次電池122(B22)を保有しているとする。ユーザ管理部146は、二次電池122(B01)に対するユーザ(P01)の配慮ランクを「3」と算出する。同様にして、二次電池122(B21)、二次電池122(B22)についての配慮ランクをそれぞれ「4」「5」と算出したとする。この場合、ユーザ管理部146は、ユーザ(P01)の配慮ランクをその平均値である「4(=(3+4+5)/3)」として算出してもよい。同様にして、ユーザ管理部146は、このユーザ(P01)の活用ランク、総合ランクを算出してもよい。
【0136】
上述の例では、前回の精算日から今回の精算日までの充電回数に応じて活用ランクを計算し、活用ランクに応じて単位使用料が変化するとして説明した。このほかには、たとえば、前回の精算日から今回の精算日までの総充電量に応じて、ユーザ管理部146は活用ランクを更新してもよい。ユーザ管理部146は、総充電量が多いほど活用ランクを高く設定してもよい。料金設定部154は、総充電量に基づいて算出された活用ランクに応じて、単位使用料を変化させてもよい。
【0137】
図16は、電池証券の売買の処理過程を示すシーケンス図である。
投資家(I01)が電池証券の売却注文を出し、投資家(I02)が電池証券の購買注文を出したとき、証券会社112は通常の株式売買と同様にして売買成否を判定する。売買が成立すると(S70)、証券会社112は電池証券の保有者を投資家(I01)から投資家(I02)に名義変更する(S72)。
【0138】
名義変更の完了後、証券会社112は二次電池管理サーバ100に売買対象となった電池証券のSIDとともに、売買に関わった投資家のIIDを含む変更通知を二次電池管理サーバ100に送信する(S74)。投資家管理部144は、変更通知にしたがって証券情報240等のデータを更新する(S76)。
【0139】
図17は、二次電池122の貸出先を変更するときの処理過程を示すシーケンス図である。
ここでは、ユーザ(P01)が二次電池122(B01)を返却し、この二次電池122(B01)が新たにユーザ(P10)に貸し出される場合を想定して説明する。ユーザ(P01)は、ユーザ端末108において二次電池122(B01)の返却を指示する。このとき、ユーザ端末108の入力部188は返却指示を受け付け、通信部182は返却指示を二次電池管理サーバ100に送信する(S80)。返却指示には、BID(=B01)およびPID(=P01)が含まれる。
【0140】
二次電池管理サーバ100の送信部136は、物流会社114に二次電池122の回収指示を送信する(S82)。回収指示には、回収対象となるユーザ(P01)のPIDと住所、二次電池122(B01)のBIDが含まれる。物流会社114は、ユーザ(P01)から二次電池122(B01)を回収し、管理会社102の有する倉庫に運ぶ。すなわち、二次電池122(B01)はいったん管理会社102の在庫品となる。ユーザ管理部146は、二次電池情報210、電池保有情報220等のデータを更新する(S84)。
【0141】
次に、ユーザ(P10)が二次電池122(B01)の貸与を要求したとする。ユーザ端末108の入力部188は貸与要求を受け付け、通信部182は貸与要求を二次電池管理サーバ100に送信する(S86)。貸与指示には、BID(=B01)およびPID(=P10)が含まれる。
【0142】
二次電池管理サーバ100は、物流会社114に配送指示を送信する(S88)。配送指示には、貸出対象となる二次電池122(B01)のBID、ユーザ(P01)のPIDおよびユーザ(P01)の住所が含まれる。物流会社114は、管理会社102から二次電池122(B01)を回収し、ユーザ(P10)のもとに二次電池122(B01)を運ぶ。ユーザ管理部146は、二次電池情報210、電池保有情報220等のデータを更新する(S90)。
【0143】
以上のように、二次電池122(B01)が返却されたとき、二次電池122(B01)は管理会社102の在庫品となる。二次電池122(B01)が在庫品となっているとき、二次電池122(B01)に対応づけられる電池証券(S01:B01)は収益を生まなくなる。二次電池122(B01)の遊休化、いいかえれば、二次電池122(B01)が在庫化して新たなユーザに貸し出されないことは、投資家にとってリスクとなる。
【0144】
電池証券(S01:B01)は、二次電池122(B01)が在庫品となるリスクを抱えるが、上述した仕組みにより、管理会社102は、在庫リスクを多くの投資家に負担してもらうことができる。管理会社102は在庫リスクを抑制しやすくなるので、積極的に二次電池122を購入しやすくなる。
【0145】
なお、一次利用者であるユーザ(P01)から二次利用者である別のユーザ(P10)に二次電池122(B01)の貸与先を変更する場合だけでなく、一次利用者であるユーザ(P01)がいったん二次電池122(B01)を返却し、再び二次利用者として同じ二次電池122(B01)を借りる場合もありえる。たとえば、ユーザ(P01)は二次電池122(B01)をEV用に借りて二次電池122(B01)を設置したあと、同じ二次電池122(B01)を次にESS用に設置する場合も考えられる。このように、一次ユーザと二次ユーザは別人物である必要はない。この場合には、二次電池122(B01)の徴収先は変更にならない。ただし、一次利用と二次利用では使用料が異なるとしてもよい。
【0146】
図18は、投資画面270の画面図である。
投資家管理部144は、投資端末110に対して投資画面270を提供する。投資端末110の出力部170は、電池証券の保有状況を示す投資画面270を表示させる。図18は、投資家(I01)の投資画面270を示す。投資画面270には、投資家(I01)が保有する電池証券の銘柄、現在価格、保有数、評価損益等が表示される。
【0147】
図18の投資画面270によれば、投資家(I01)は電池証券(B01)を1枚保有し、「評価損益」に表示されているように「10(円)」の含み益を得ている。投資家(I01)は電池証券(B01)を追加購入したいときには購買(BUY)ボタン274をタッチすることで、購買画面(不図示)を表示させることができる。投資家(I01)は電池証券(B01)の購買画面において、電池証券(B01)の追加購入を指示する。
【0148】
投資家(I01)は電池証券(B01)を売却したいときには売却(SELL)ボタン272をタッチする。売却ボタン272がタッチされたとき、出力部170は売却画面(不図示)を表示させる。投資家(I01)は電池証券(B01)の売却画面において、電池証券(B01)の売却を指示する。
【0149】
証券会社112は、電池証券の売却注文および購買注文を集めて取引を成立させる。出力部170は購買不可または売却不可となっている電池証券については、売却ボタン272または購買ボタン274をグレーアウト表示させる。たとえば、図18においては、電池証券(B04)についてはいずれの投資家からも売却注文が出ていないので、出力部170は電池証券(B04)の購買ボタン274をグレーアウト表示させている。したがって、投資家(I01)は電池証券(B04)を新たに購入することはできない。電池証券(B04)の売却注文が出たときには、証券会社112は各投資端末110に電池証券(B04)を購入可能である旨を通知する。このとき、出力部170は購買ボタン274のグレーアウト表示を解除する。
【0150】
投資家(I01)、銘柄名をタッチすることにより、投資情報画面(不図示)を表示させることができる。投資情報画面においては、電池証券の取引価格のチャート(価格遷移)が表示される。また、投資情報260(図11参照)の一部も表示される。このほか、証券管理部142は、電池証券の割安度を示す情報を投資情報画面に表示してもよい。
【0151】
<総括>
以上、実施形態に基づいて二次電池管理システム200を説明した。
ユーザは、二次電池122を買うのではなく、二次電池122を借りることにより、二次電池122の初期導入にともなう負担を軽減できる。ユーザは、二次電池122の充電回数に応じて使用料を支払う。二次電池122の導入コストを抑えることができるので、ユーザは旧型の二次電池122から新型の二次電池122への交換をしやすくなる。ユーザは使い終わった二次電池122を処分する必要はなく、管理会社102に返却すればよい。管理会社102が二次電池122のライフサイクルに責任をもつので、二次電池122の不法投棄・不正処分を減らすことができる。
【0152】
管理会社102は、二次電池122を購入したとき、証券化により二次電池122の購入費を賄うことができる。また、二次電池122の使用料の一部を運営費として徴収することにより、管理会社102は二次電池122から継続的収入を得ることができる。証券化と運営費の徴収により、管理会社102の経営を安定させることができる。管理会社102は二次電池122の一次利用により二次電池122の初期コストを回収し、二次利用、三次利用により利益を上げられるように使用料を設定してもよい。
【0153】
ユーザの二次電池122に対するニーズはさまざまなである。少量かつ高性能の二次電池122を使いたいユーザもいれば、SOHが低くても大量の二次電池122を集めたいユーザもいる。管理会社102がユーザから返却された二次電池122を別のユーザに貸し出すことにより、さまざまなユーザのニーズに応えることができる。二次電池122の流通を促進することで、1つの二次電池122が一次ユーザ、二次ユーザなどの複数のユーザによって長期間にわたって使用されることになる。二次電池122の長期使用は環境保護の観点からも重要である。新品のときの性能だけでなく、長期使用に耐えられるか否かがユーザ、管理会社102および投資家にとって重要になるため、高価格であっても高品質の二次電池122に対する開発ニーズを喚起できる。
【0154】
投資家は、電池証券を購入することにより、安定したインカムゲインを得ることができる。また、電池証券の取引からキャピタルゲインを得ることもできる。更に、電池証券は、株式、債券、不動産、コモディティとはほとんど関連しない金融商品であるため、他の金融商品とポートフォリオを組むことで分散投資効果を高めることができると考えられる。なお、本実施形態における電池証券は、二次電池122に対する債権を示す債務証書とであってもよい。
【0155】
二次電池メーカー118は、管理会社102からまとまった生産数を期待できるので、二次電池122を安定生産しやすい。
【0156】
たとえば、EV用の二次電池122はSOHが80(%)に至るまで使用し、ESS用の二次電池122はSOHが30(%)に至るまで使用可能であるとする。この場合には、SOHが100(%)から80(%)に低下するまではEV用として二次電池122を一次利用し、SOHが80(%)から30(%)に低下するまではESS用として同じ二次電池122を二次利用すればよい。すなわち、1つの二次電池122をEV用を希望する一次ユーザから、ESS用を希望する二次ユーザに流通させることができる。EVにおいては二次電池122の使用料を高く設定し、使用条件がそれよりも緩いESSにおいては二次電池122の使用料を低く設定してもよい。
【0157】
料金設定部154は、二次電池122の貸し出し時点のSOH(劣化度)に応じて、二次電池122の使用料を設定してもよい。たとえば、ある二次電池122がSOH=100(%)で貸し出されるときの使用料をG(円)とする。この二次電池122のSOHが80(%)まで劣化したとする。料金設定部154は、次回の貸し出し時点でSOH=80(%)の二次電池122が二次利用されるときには、ユーザに対して、使用料G(円)に貸し出し時点のSOH=80%を乗じた0.8×G(円)の使用料を設定してもよい。このような制御方法によれば、二次ユーザは中古の二次電池122を導入しやすくなるため、二次電池122の流通をいっそう促しやすくなる。
【0158】
一般的には、EV用の二次電池122はユーザの使用方法によって劣化の進み度合いが変化しやすい。このため、EVの二次電池122には高いSOHが求められる。一方、ESS用の二次電池122は安定的な使われ方をするため、劣化はゆるやかであり、EVほど高いSOHは求められない。管理会社102も、一次利用時に二次電池122の購入費を回収できていれば、二次電池122を安価に貸し出しやすくなる。最終的には、使用不可となった二次電池122を管理会社102が回収し、分解および部品の再利用を行うことが望ましい。
【0159】
二次電池122が使用されるシーンに応じて、電池証券の金融商品としての性格も変化する。ESSの場合、安定的に充電が行われやすいので、使用料が安くても収入が安定しやすい。安全かつ安定した収入を求める投資家にとっては、ESSなどで二次利用される二次電池122に対応づけられる電池証券は魅力的な投資対象になるかもしれない。
【0160】
上述したように、二次電池122が高性能かつ高価である場合、電池証券の取引価格は高くなりやすい。その一方、このような二次電池122は長期間に渡って使用できるので長期投資の観点からは好ましい。また、ユーザは二次電池122を大事に使うことで、使用料を安くしてもらうことができる。投資家にとっても、二次電池122を長く使ってくれるユーザは望ましい。管理会社102としても優良ユーザに積極的に二次電池122を貸し出したい。このようなメカニズムにより、優良な二次電池122の開発を促し、ユーザに二次電池122を大切に使わせるように促すことが可能となる。
【0161】
二次電池122のユーザが変更となる機会には投資妙味が高まる。電池証券の価値は二次電池122のユーザによって変化する。ユーザが変更となるとき、電池証券への投資を続けるか、売却するか、あるいは、買い増しをするかという判断は投資家にとって重要となる。
【0162】
あるユーザが二次電池122を返却したとき、あるいは、管理会社102が二次電池122を証券化したときには、二次電池122の新たなユーザが決まるまで二次電池122は遊休状態となる。遊休状態にある二次電池122からは使用料が発生しないため、電池証券からインカムゲインを得られないかもしれない。以下、二次電池122が遊休状態となるために、この二次電池122が新たに貸し出されるまで投資家がインカムゲインを得られなくなる投資家にとってのリスクのことを「遊休リスク」とよぶ。
【0163】
二次電池122に対する需要が高いときには遊休リスクは低くなる。一方、二次電池122が供給過多となっているときには遊休リスクが高くなる。遊休リスクが高いときには電池証券の取引価格が低くなると考えられる。逆に、ESSなどにおいて二次電池122の二次利用に対する需要が大きいときには、電池証券の取引価格は一次利用時の証券価格以上になる可能性もある。投資家は、需要の大きさについての見通し、遊休リスクについてのコンセンサスと独自の相場観に基づいて電池証券を売買することで、二次電池122に特有の投資を楽しむことができる。
【0164】
なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。
【0165】
複数の投資端末110、複数のユーザ端末108および1つの二次電池管理サーバ100を含むことにより二次電池管理システム200が構成されるとして説明したが、投資端末110またはユーザ端末108の機能の一部は二次電池管理サーバ100により実現されてもよいし、二次電池管理サーバ100の機能の一部が投資端末110またはユーザ端末108に割り当てられてもよい。また、投資端末110、ユーザ端末108や二次電池管理サーバ100以外の第3の装置が、二次電池管理サーバ100、投資端末110またはユーザ端末108の機能の一部を担ってもよい。図5において説明した投資端末110およびユーザ端末108の各機能と二次電池管理サーバ100の各機能の集合体は大局的には1つの「情報処理装置(二次電池管理装置)」として把握することも可能である。1つまたは複数のハードウェアに対して、本発明を実現するために必要な複数の機能をどのように配分するかは、各ハードウェアの処理能力や二次電池管理システム200に求められる仕様等に鑑みて決定されればよい。
【0166】
<変形例>
本実施形態においては、二次電池122に対して、通信機能を有するDIエンジンを搭載するとして説明した。変形例として、二次電池122ではなく電子機器106がDIエンジンを搭載してもよい。DIエンジンは、少なくとも、通信機能と二次電池122の性能を計測する機能を備える装置であればよい。DIエンジンは、電子機器106をIoT機器として機能させるために必要な機能を提供するICチップとして構成されてもよい。
【0167】
二次電池情報210(図6)は、二次電池122に保存されてもよいし、電子機器106に保存されてもよい。あるいは、二次電池情報210は二次電池管理サーバ100に保存されてもよい。たとえば、二次電池122のDIエンジンは、二次電池122の性能・状態を定期的に二次電池管理サーバ100に送信し、二次電池管理サーバ100の性能情報取得部140は性能情報をデータ格納部134に保存してもよい。
【0168】
ユーザの使用料の一部は証券会社112に支払われてもよい。証券会社112は電池証券の売買手数料により収益を得てもよい。
【0169】
管理会社102はカーボンクレジットを購入してもよい。そして、このカーボンクレジットの購入費用を電池証券の販売価格に追加してもよい。たとえば、二次電池122の製造に要する炭素排出量を相殺可能な量のカーボンクレジットの価格がQ(円)であるとする。この二次電池122についてn枚の電池証券が発行されるときには、管理会社102は、販売価格D(円)にQ/n(円)を追加してもよい。管理会社102は、二次電池122の使用料から得られる運営費に追加分を設定することで、カーボンクレジットの費用負担分を回収してもよい。
【0170】
二次電池管理サーバ100は、証券会社112の取引仲介機能の全部または一部を担ってもよい。たとえば、二次電池管理サーバ100は、売買処理部(不図示)を備えてもよい。売買処理部は投資家からの購買注文と売却注文を受け付けてマッチングすることにより、電池証券の売買を仲介してもよい。
【0171】
ユーザは、劣化進行度に応じた使用料を支払うとしてもよい。たとえば、劣化度が1(%)増加するごとに、いいかえれば、SOHが1(%)低下するごとに、F(円)の使用料を支払うとしてもよい。この場合には、M-D×n=k×G×c×v+F×J×vが成立するように販売価格D(円)を決定する。ここで、変数Jは、1ヶ月あたりの想定劣化進行度である。なお、販売価格は、二次電池管理サーバ100ではなく証券会社112が決定してもよい。
【0172】
本実施形態においては、二次電池管理サーバ100は使用料を決済し、使用料から管理費を控除した分配金を投資家に分配するように証券会社112に指示するとして説明した。すなわち、二次電池管理サーバ100および証券会社112がそれぞれ決済を実行している。変形例として、二次電池管理サーバ100はユーザから使用料を徴収し、一部を管理会社102の口座に管理費として振込み、残りを投資家の口座に分配金として振込んでもよい。すなわち、管理費および分配金の決済は、二次電池管理サーバ100がまとめて実行してもよい。
【0173】
二次電池管理サーバ100の投資家管理部144は、ユーザに対して、投資家名を通知してもよい。この場合、ユーザは、自分が使用している二次電池122に対して、誰が投資しているかを知ることができる。たとえば、有名投資家が電池証券を介して自分に投資していると知ることにより、有名投資家の期待と信頼を感じることができるので、ユーザは二次電池122を大事に使おうとする意欲をいっそう高められる。また、たくさんの投資家が集まるユーザは、投資家の注目を集めるユーザとしてのステータスを確立することができる。このように、投資を通して、優良ユーザになろうとする動機を高めることができる。
【0174】
二次電池122を介した金銭的支援も考えられる。たとえば、ユーザAの二次電池122に対応する電池証券に対して、投資家Bが投資するとき、ユーザAの使用料は投資家Bに分配金として支払われる。ユーザAが投資家Bの息子である場合、ユーザAは二次電池122を使用することで投資家B(親)に金銭援助できる。
【0175】
Y社は二次電池122を大事に使う企業であるという良い評判がたてば、投資家はY社が使用する二次電池122に積極的に投資しやすくなる。また、Y社はこのような評判を守るためにいっそう二次電池122を大切に使うと考えられる。Y社のこのような行動は、使用料の削減や企業イメージの向上だけでなく、環境保護にも寄与する。また、Y社が使用する二次電池122についての電池証券は販売しやすくなるので、管理会社102にとってもY社のような優良ユーザは好ましい。
【0176】
Y社の従業員は、Y社が使用する二次電池122についての投資家となってもよい。Y社の従業員が二次電池122を大事に使うことで、従業員自身が分配金という利益を得ることができる。Y社は、自社が使っている二次電池についての電池証券をまとめて証券会社112から購入し、従業員に購入した二次電池を二次販売してもよい。
【0177】
本実施形態においては、ユーザは、充電回数に応じて使用料を支払うとして説明した。変形例として、ユーザは充電量に応じて使用料を支払うとしてもよい。あるいは、ユーザは二次電池122の使用期間の長さに応じて使用料を支払うとしてもよい。
【0178】
充電量に応じて使用料を支払う場合、SOHを考慮して使用料を変化させてもよい。たとえば、1(kWh)あたり30(円)の使用料を設定するとする。また、電気容量が1(kWh)の二次電池122(BX)をユーザ(P01)が1日1回充電する場合、5年間の合計使用料は37,500(円)(=30×250×5)となる。ここでは、1年あたりの稼働日数を250日と想定し、かつ、1日1回満充電を行うと想定している。
【0179】
SOHが低下するにしたがって、二次電池122(BX)の1回あたりの充電量は低下する。たとえば、二次電池122(BX)の電気容量が1(kWh)から0.9(kWh)に低下したときには、充電1回あたりの使用量を27(円)(=30×0.9)としてもよい。このように、充電時点におけるSOHに応じて、料金設定部154は単位使用料を変化させてもよい。
【0180】
一例として、5月10日から15日までの二次電池122(BX)のSOHは100(%)であり、ユーザ(P01)は1日に1回満充電を行ったとする。この場合には、この6日間の合計使用料は180(円)(=30×6×1.0)となる。次に、5月16日から22日までの二次電池122(BX)のSOHは99(%)であり、このときにも1日に1回満充電を行ったとする。この場合には、この7日間の合計使用料は208(円)(=30×7×0.99)となる。このように、充電時のSOHに基づいて、料金設定部154は1回あたりの充電に要する使用料を補正してもよい。充電1回あたりの使用料の積分値が、二次電池122(BX)の合計使用料となる。
【0181】
SOH=80(%)となった二次電池122(BX)がユーザ(P02)に貸与されたとする。二次利用のときの1(kWh)あたりの使用料を8(円)とする。二次電池(BX)を1年に365日間稼働させ、1日1回充電する場合、10年間の合計使用料は29,200(円)(=8×365×10)となる。上述したように、SOHの低下にともなって二次電池122(BX)の使用料を可変としてもよい。
【0182】
ユーザ(P02)が二次電池122(BX)を10年間使用し、SOHは80(%)から70(%)に低下したとする。別例として、料金設定部154は、上述した29,200(円)の10(%)(=80-70)にあたる2,920(円)をユーザ(P02)に払い戻してもよい。
【0183】
二次電池122(BX)の劣化が進むと、二次電池122(BX)を満充電するための電気エネルギーの一部が熱エネルギーに変換されやすくなる。いいかえれば、SOHの低下にともなって充電効率が悪くなる。たとえば、SOH=100(%)のときにはSOC=100(%)まで満充電するが、SOH=90(%)のときにはSOC=90(%)を上限として充電するように制御することで、充電効率の悪化を防ぐことができる。
【0184】
電気容量が1(kWh)の二次電池122(BX)は、SOH=100(%)のときには、1回充電したときの使用料は30(円)である。一方、この二次電池122(BX)のSOHが90(%)に劣化したときには、1回充電したときの使用料は24.3(円)(=30×0.9×0.9)となる。SOH=90(%)となったとき、二次電池122(BX)の1回あたりの充電量は0.81(kWh)(=1×0.9×0.9)となるためである。
【0185】
二次電池122(BX)が劣化したときには、1回あたりの充電量が少ないため、1回あたりの使用料も安くなる。その一方、充電回数は多くなるため、投資家は二次電池122(BX)の劣化が進んでも利益を確保しやすい。しかし、二次電池122(BX)が短期間に劣化すると、上述の通り、充電回数が多くなるため、煩わしさを感じたユーザが二次電池122(BX)を新しい二次電池(BX)に交換する可能性が高くなる。これにより、投資家にとっては、電池証券による収益期間が短くなってしまうこととなる。このため、投資家は二次電池122(BX)の劣化状況を見ながら、電池証券(BX)を手放す時期を検討する必要がある。
【0186】
電池証券の価値は、二次電池122の劣化しにくさだけでなく、二次電池122の個体差(品質のばらつき)にも影響を受ける。たとえば、二次電池メーカー118(M1)が製造する二次電池122に比べて、二次電池メーカー118(M2)が製造する二次電池122は製造品質のばらつきが少ないとする。製造不良により内部抵抗値の大きな二次電池122は、正常な二次電池122に比べて充電時間が長くなる。したがって、ユーザは不良の二次電池122を借りてしまったときには、これを返却して新しい二次電池122を改めて借りようとする。この結果、不良の二次電池122に対応づけられる電池証券を購入した投資家は不利となる。したがって、ユーザおよび投資家は二次電池メーカー118(M2)が製造する二次電池122を二次電池メーカー118(M1)が製造する二次電池122を好むようになる。また、二次電池メーカー118も、性能だけでなく、製造品質の安定性についても評価をしてもらいやすくなる。
【0187】
証券管理部142は、複数の電池証券をテーマに合わせてパッケージ化してもよい。たとえば、証券管理部142はZ社がユーザとなっている二次電池122についての電池証券をまとめて、「Z社が使用する二次電池122の電池証券」としてパッケージ販売してもよい。Z社を信頼する投資家は、このような電池証券をまとめて購入してもよい。
【0188】
このほかにも、「S社が製造した二次電池122の電池証券」「日本製の二次電池122の電池証券」「二次利用されている二次電池122の電池証券」「総合ランクが4以上のユーザのみを対象とした二次電池122の電池証券」「東北地方(所定地域)で使用されている二次電池122の電池証券」などが考えられる。テーマに合わせて電池証券をパッケージ化することにより、投資家の投資判断を支援しやすくなる。たとえば、SDGs(Sustainable Development Goals)を重視する投資家であれば「二次利用されている二次電池122の電池証券」に積極的に投資することで、投資活動を通して二次電池122の二次利用を応援できる。
【0189】
二次電池管理サーバ100は、電池証券の格付けを行う格付処理部(不図示)を備えてもよい。格付処理部は、ユーザの総合ランク、耐用充放電サイクル数などの二次電池122の性能を表す数値を変数とする任意の多変量関数により、電池証券の格付けを算出してもよい。投資情報260に格付けを含めることにより、投資判断を支援してもよい。
【0190】
ユーザは、二次電池122に対して劣化閾値を設定してもよい。二次電池122の劣化度が劣化閾値に到達したとき、二次電池管理サーバ100は二次電池122を自動的に回収するとしてもよい。たとえば、ユーザAが使用する二次電池の劣化度が劣化閾値(例:20(%))を超えたとする。このとき、二次電池管理サーバ100の交換処理部(不図示)は、ユーザAに二次電池の交換を通知するとともに、物流会社114に対して二次電池122をユーザAから回収するように指示する。このような制御方法によれば、ユーザは二次電池122があらかじめ定めた劣化閾値に到達したときに二次電池管理サーバ100が二次電池122を自動的に回収してくれるので、求める性能を発揮できなくなった二次電池122を使い続ける事態を効果的に回避できる。また、交換処理部は、ユーザAに新たな二次電池122を配達するように物流会社114に指示してもよい。
【0191】
図19は、変形例における使用料の決定方法を説明するための模式図である。
本実施形態においては、使用料は「G(円)×充電回数」であるとして説明した。変形例として、1ヶ月あたりの充電回数がL回(例:10回)まではW(円)として固定料金(基本使用料)とし、充電回数がL+1回(例:11回)からは1回の充電当たりGQ(円)だけ使用料が加算されるとしてもよい。いいかえれば、1ヶ月あたりの充電回数がL回以内という使用条件が成立しているときには固定料金のみが請求される。
【0192】
ここで、W/L>GQであるとする。この場合には、L回目の充電までは、1回の充電あたり「W/L(円)」の使用料となるが、L+1回目の充電からは1回当たりの使用料は安くなる。二次電池122を積極的に使用するユーザにとっては有利な料金設定となる。また、二次電池122をあまり使用しない消極的なユーザであっても、W(円)の基本使用料は必ず発生するため、管理会社102および投資家は収入を確保しやすくなる。
【0193】
管理会社102の運営費を基本料部分のW(円)とし、W(円)を超えた追加の使用料は投資家に分配金として支払われるとしてもよい。このような料金設定によれば、管理会社102の収入を安定化させるとともに投資家にリスクを負担させることができる。その一方、投資リスクに見合うように電池証券の販売価格を下げるという方法も考えられる。
【0194】
1ヶ月あたりの劣化進行度が所定の閾値以下であるときには、料金設定部154はこのユーザの使用料を割り引いてもよい。たとえば、1ヶ月あたりの劣化進行度が1(%)以内であるときには、料金設定部154は本来の使用料から10(%)を控除するとしてもよい。このように劣化進行度を加味した上で使用料を設定することで、ユーザが二次電池122を大事に使うようにいっそう誘導しやすくなる。
【0195】
図20は、変形例における証券ブロックチェーン280の模式図である。
本実施形態においては、二次電池122および電池証券に関する情報を二次電池管理サーバ100にて管理するとして説明した。変形例として、電池証券等に関する情報をブロックチェーンにより分散管理するとしてもよい。
【0196】
ここでは、電池証券を管理する証券ブロックチェーン280を想定して説明する。まず、ブロック280aは、電池証券(S01:1)に関するブロックである。ブロック280aによれば、電池証券(S01:1)は二次電池122(B01)に対応づけられており、投資家(I01)により購入されている。二次電池122(B01)はユーザ(P01)により使用されている。
【0197】
ユーザ(P01)が二次電池122(B01)を返却し、ユーザ(P02)が二次電池122(B01)を借りたとする。このとき、ユーザ(P02)は、ユーザ端末108においてブロック280bを生成する。ブロック280bにおいては、電池証券(S01:1)の所有者はユーザ(P02)に変更されている。
【0198】
ブロック280bが一般的なブロックチェーンと同様の方法により認証されると、ブロック280aにブロック280bが接続される。ブロック280bが証券ブロックチェーン280に接続されたあとは、徴収部148はユーザ(P01)ではなくユーザ(P02)から使用料を徴収する。なお、ユーザ(P02)ではなく、二次電池管理サーバ100の証券管理部142がブロック280bを生成するとしてもよい。
【0199】
次に、投資家(I01)が電池証券(S01:1)を売却し、これを投資家(I02)が購入したとする。このとき、投資家(I02)は、投資端末110においてブロック280cを生成する。ブロック280cにおいては、電池証券(S01:1)の保有者は投資家(I02)に変更されている。
【0200】
ブロック280cは、認証後にブロック280bに接続される。ブロック280cが証券ブロックチェーン280に接続されたあとは、分配部150は投資家(I02)に分配金を送る。
【0201】
証券ブロックチェーン280を参照することにより、投資家は、電池証券についての履歴を確認できる。電池証券に限らず、二次電池122についての情報をブロックチェーンにより管理してもよい。
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