(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134645
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】6-カルボキシ-2-(3,5-ジクロロフェニル)-ベンゾオキサゾールの結晶性固体形態
(51)【国際特許分類】
C07D 263/57 20060101AFI20230920BHJP
A61K 31/423 20060101ALI20230920BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20230920BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
C07D263/57 CSP
A61K31/423
A61P9/00
A61P25/00
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023115087
(22)【出願日】2023-07-13
(62)【分割の表示】P 2019218244の分割
【原出願日】2015-09-02
(31)【優先権主張番号】62/047, 614
(32)【優先日】2014-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/203, 953
(32)【優先日】2015-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】593141953
【氏名又は名称】ファイザー・インク
(74)【代理人】
【識別番号】100133927
【弁理士】
【氏名又は名称】四本 能尚
(74)【代理人】
【識別番号】100147186
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 眞紀
(74)【代理人】
【識別番号】100174447
【弁理士】
【氏名又は名称】龍田 美幸
(74)【代理人】
【識別番号】100185960
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 理愛
(72)【発明者】
【氏名】ケヴィン ポール ジラード
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー ジェイ. ジェンセン
(72)【発明者】
【氏名】クリス ニコール ジョウンズ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】吸湿性、ろ過性、溶解性、溶解速度などが改善された、安定な6-カルボキシ-2-(3,5-ジクロロフェニル)-ベンゾオキサゾールの固体形態を提供する。
【解決手段】120.8±0.2および127.7±0.2に
13C化学シフト(ppm)を含む固体NMRスペクトル、28.6±0.2の回折角(2θ)にピークを含む粉末X線回折パターン、および1292±2にラマンシフトピーク(cm-1)を含むラマンスペクトルの分析パラメーターを有する、6-カルボキシ-2-(3,5-ジクロロフェニル)-ベンゾオキサゾールの結晶を提供する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
6-カルボキシ-2-(3,5-ジクロロフェニル)-ベンゾオキサゾールの結晶形態であって、120.8±0.2および127.7±0.2に13C化学シフト(ppm)を含む固体NMRスペクトルを有する結晶形態。
【請求項2】
前記固体NMRスペクトルが、139.6±0.2に13C化学シフト(ppm)をさらに含む、請求項1に記載の6-カルボキシ-2-(3,5-ジクロロフェニル)-ベンゾオキサゾールの結晶形態。
【請求項3】
前記固体NMRスペクトルが、144.7±0.2に13C化学シフト(ppm)をさらに含む、請求項1に記載の6-カルボキシ-2-(3,5-ジクロロフェニル)-ベンゾオキサゾールの結晶形態。
【請求項4】
6-カルボキシ-2-(3,5-ジクロロフェニル)-ベンゾオキサゾールの結晶形態であって、28.6±0.2の回折角(2θ)にピークを含む粉末X線回折パターンを有する結晶形態。
【請求項5】
前記粉末X線回折パターンが、16.5±0.2および26.7±0.2の回折角(2θ)にピークをさらに含む、請求項4に記載の6-カルボキシ-2-(3,5-ジクロロフェニル)-ベンゾオキサゾールの結晶形態。
【請求項6】
前記粉末X線回折パターンが、15.4±0.2および20.2±0.2の回折角(2θ)にピークをさらに含む、請求項4に記載の6-カルボキシ-2-(3,5-ジクロロフェニル)-ベンゾオキサゾールの結晶形態。
【請求項7】
前記粉末X線回折パターンが、29.0±0.2の回折角(2θ)にピークをさらに含む、請求項6に記載の6-カルボキシ-2-(3,5-ジクロロフェニル)-ベンゾオキサゾールの結晶形態。
【請求項8】
前記粉末X線回折パターンが、23.5±0.2の回折角(2θ)にピークをさらに含む、請求項7に記載の6-カルボキシ-2-(3,5-ジクロロフェニル)-ベンゾオキサゾールの結晶形態。
【請求項9】
6-カルボキシ-2-(3,5-ジクロロフェニル)-ベンゾオキサゾールの結晶形態であって、1292±2にラマンシフトピーク(cm-1)を含むラマンスペクトルを有する結晶形態。
【請求項10】
前記結晶形態が、994±2、1273±2、および1615±2にラマンシフトピーク(cm-1)をさらに含むラマンスペクトルを有する、請求項9に記載の6-カルボキシ-2-(3,5-ジクロロフェニル)-ベンゾオキサゾールの結晶形態。
【請求項11】
前記ラマンスペクトルが、287±2および869±2にラマンシフトピーク(cm-1)をさらに含む、請求項6に記載の6-カルボキシ-2-(3,5-ジクロロフェニル)-ベンゾオキサゾールの結晶形態。
【請求項12】
前記ラマンスペクトルが、213±2にラマンシフトピーク(cm-1)をさらに含む、請求項11に記載の6-カルボキシ-2-(3,5-ジクロロフェニル)-ベンゾオキサゾールの結晶形態。
【請求項13】
6-カルボキシ-2-(3,5-ジクロロフェニル)-ベンゾオキサゾールの結晶形態であって、(i)26.7±0.2および28.6±0.2の回折角(2θ)にピークを含む粉末X線回折パターン、ならびに(ii)127.7±0.2に13C化学シフト(ppm)を含む固体NMRスペクトルを有する結晶形態。
【請求項14】
6-カルボキシ-2-(3,5-ジクロロフェニル)-ベンゾオキサゾールの結晶形態であって、(i)1292±2および1615±2にラマンシフトピーク(cm-1)を含むラマンスペクトル、ならびに(ii)127.7±0.2に13C化学シフト(ppm)を含む固体NMRスペクトルを有する結晶形態。
【請求項15】
非吸湿性かつ無水である、請求項1から14のいずれか一項に記載の結晶形態。
【請求項16】
実質的に純粋である、請求項1から15のいずれか一項に記載の結晶形態。
【請求項17】
少なくとも1種の薬学的に許容できる添加剤と混合して、治療有効量で請求項1から16のいずれか一項に記載の結晶形態を含む医薬組成物。
【請求項18】
哺乳動物におけるトランスサイレチンアミロイド疾患を治療する方法であって、前記哺乳動物に治療有効量の請求項1から16のいずれか一項に記載の結晶形態または請求項17に記載の医薬組成物を投与するステップを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、6-カルボキシ-2-(3,5-ジクロロフェニル)-ベンゾオキサゾールの結晶形態ならびにその調製および使用の方法に関する。
【0002】
6-カルボキシ-2-(3,5-ジクロロフェニル)-ベンゾオキサゾール(以下、「式Iの化合物」)の合成経路は、米国特許第7,214,695号に記載されており、式Iの化合物のメグルミン塩の固体形態は、米国特許出願第14/345,111号(国際出願第PCT/IB2012/054748号の米国国内移行段階)に記載されており、これらすべてを、すべての目的でその全体を参照により本明細書に援用する。式Iの化合物は、以下に示す構造を有する。
【0003】
【0004】
式Iの化合物は、その解離がTTRアミロイドーシスに関与するタンパク質トランスサイレチン(TTR)を安定化するものであり(すなわち、式Iの化合物は、天然TTR四量体の単量体への解離を阻止し、それによって、TTRアミロイドフィブリル形成が阻害される)、トランスサイレチンアミロイド疾患の治療で使用するために開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7,214,695号
【特許文献2】米国特許出願第14/345,111号
【特許文献3】国際出願第PCT/IB2012/054748号
【特許文献4】米国特許第8,576,985号
【特許文献5】米国特許第5,323,907号
【特許文献6】米国特許第5,052,558号
【特許文献7】米国特許第5,033,252号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】米国薬局方、USP37、NF32、S1<941>から、503、5/1/2014
【非特許文献2】http://www.ccdc.cam.ac.uk/mercury/
【非特許文献3】Remington:The Science & Practice of Pharmacy、19版、Williams & Williams、(1995)
【非特許文献4】「Physician’s Desk Reference」、52版、Medical Economics、Montvale、NJ(1998)
【非特許文献5】「Handbook of Pharmaceutical Excipients」、3版、A.H.Kibbe編、Pharmaceutical Press、2000
【非特許文献6】Colon,W.;Kelly,J.W.、Biochemistry、1992、31、8654~60
【非特許文献7】Kelly,J.W.、Curr.Opin.Struct.Biol.、1996、6、11~7
【非特許文献8】Liu,K.ら、Nat.Struct.Biol.、2000、7、754~7
【非特許文献9】Westermark,P.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、1990、87、2843~5
【非特許文献10】Saraiva,M.J.ら、J.Clin.Invest.、1985、76、2171~7
【非特許文献11】Jacobson,D.R.ら、N.Engl.J.Med.、1997、336、466~73
【非特許文献12】Buxbaum,J.N.、Tagoe,C.E.、Ann.Rev.Med.、2000、51、543~569
【非特許文献13】Saraiva,M.J.、Hum.Mutat.、1995、5、191~6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
固体形態は、医薬品業界にとって、特に、適切な剤形の開発に関わるものにとって関心のあるものである。臨床または安定性の研究中に固体形態が一定に保持されない場合、使用または研究した正確な剤形がロットごとに比較できない可能性がある。また、化合物を臨床研究または市販製品に使用する場合、存在する不純物により望ましくない毒性作用を引き起こす恐れがあるため、選択した固体形態を有する化合物を高純度で生成するプロセスがあることが望ましい。ある種の固体形態はまた、増強された安定性を示すことができ、またはより容易に高純度で多量に製造することができることから、医薬製剤への組込みにより適している。ある種の固体形態は、様々な格子エネルギーに起因する、吸湿性傾向の欠如、ろ過性、改善された溶解性、および増強された溶解速度など、他の好都合な物理的特性を示すことがある。
【0008】
本明細書中の本発明の背景に対する考察は、本発明の状況を説明するために含める。これは、言及した材料のいずれかが、特許請求の範囲のいずれかの優先日の時点で任意の国において公開されているか、公知であるか、または共通の一般的知識の一部となっていることを承認するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書では、式Iの化合物の固体形態を開示しており、各固体形態は、粉末X線回折パターンピークまたは2個以上のピークの組合せ;固体NMR13C化学シフトまたは2個以上の化学シフトの組合せ;およびラマンシフトピークまたは2個以上のラマンシフトピークの組合せなど、これらだけに限らないいくつかの異なる分析的なパラメータによって単独でまたは組合せで独自に同定することができる。
【0010】
本明細書において提供する開示に基づいて、式Iの化合物の第1の結晶形態(本明細書では「形態1」と称す)は、様々な組合せにおけるいくつかの異なるスペクトルピークまたはパターンによって独自に同定できることを当業者なら理解するであろう。以下は、形態1の同定に使用することができる特徴的なピーク値の例示的な組合せであり、これらの例示的な組合せが、本明細書に開示の他のピーク値の組合せを限定すると一切みなすべきではない。
【0011】
本発明の一態様は、形態1であって、15.4±0.2および20.2±0.2の回折角(2θ)にピークを含む粉末X線回折パターンを有する形態を提供する。別の一実施形態では、形態1は、15.4±0.2、20.2±0.2、および28.6±0.2の回折角(2θ)にピークを含む粉末X線回折パターンを有する。別の一実施形態では、形態1は、15.4±0.2、20.2±0.2、28.6±0.2、および29.0±0.2の回折角(2θ)にピークを含む粉末X線回折パターンを有する。別の一実施形態では、形態1は、15.4±0.2、20.2±0.2、23.5±0.2、28.6±0.2、および29.0±0.2の回折角(2θ)にピークを含む粉末X線回折パターンを有する。
【0012】
本発明の一態様は、形態1であって、16.5±0.2、26.7±0.2、および28.6±0.2の回折角(2θ)にピークを含む粉末X線回折パターンを有する形態を提供する。別の一実施形態では、形態1は、16.5±0.2、26.7±0.2、28.6±0.2、および29.0±0.2の回折角(2θ)にピークを含む粉末X線回折パターンを有する。別の一実施形態では、形態1は、15.4±0.2、16.5±0.2、26.7±0.2、28.6±0.2、および29.0±0.2の回折角(2θ)にピークを含む粉末X線回折パターンを有する。
【0013】
本発明の別の一態様は、形態1であって、
図1に示したのと本質的に同一の回折角(2θ)にピークを含む粉末X線回折パターンを有する形態を提供する。
【0014】
本発明の別の一態様は、形態1であって、
図21に示したのと本質的に同一の回折角(2θ)にピークを含む粉末X線回折パターンを有する形態を提供する。
【0015】
本発明の別の一態様は、形態1であって、287±2、869±2、および1292±2にラマンシフトピーク(cm-1)を含むラマンスペクトルを有する形態を提供する。別の一実施形態では、形態1は、213±2、287±2、869±2、および1292±2にラマンシフトピーク(cm-1)を含むラマンスペクトルを有する。
【0016】
本発明の別の一態様は、形態1であって、994±2、1273±2、1292±2、および1615±2にラマンシフトピーク(cm-1)を含むラマンスペクトルを有する形態を提供する。別の一実施形態では、形態1は、213±2、994±2、1273±2、1292±2、および1615±2にラマンシフトピーク(cm-1)を含むラマンスペクトルを有する。
【0017】
本発明の別の一態様は、形態1であって、
図5に示したのと本質的に同一の位置にラマンシフトピーク(cm-1)を含むラマンスペクトルを有する形態を提供する。
【0018】
本発明の別の一態様は、形態1であって、120.8±0.2、127.7±0.2、および139.6±0.2に13C化学シフト(ppm)を含む固体NMRスペクトルを有する形態を提供する。別の一実施形態では、形態1は、127.7±0.2および139.6±0.2に13C化学シフト(ppm)を含む固体NMRスペクトルを有する。別の一実施形態では、形態1は、120.8±0.2および139.6±0.2に13C化学シフト(ppm)を含む固体NMRスペクトルを有する。別の一実施形態では、形態1は、120.8±0.2および127.7±0.2に13C化学シフト(ppm)を含む固体NMRスペクトルを有する。
【0019】
本発明の別の一態様は、形態1であって、120.8±0.2、127.7±0.2、および144.7±0.2に13C化学シフト(ppm)を含む固体NMRスペクトルを有する形態を提供する。別の一実施形態では、形態1は、127.7±0.2および144.7±0.2に13C化学シフト(ppm)を含む固体NMRスペクトルを有する。別の一実施形態では、形態1は、120.8±0.2および144.7±0.2に13C化学シフト(ppm)を含む固体NMRスペクトルを有する。別の一実施形態では、形態1は、120.8±0.2および127.7±0.2に13C化学シフト(ppm)を含む固体NMRスペクトルを有する。
【0020】
本発明の別の一態様は、形態1であって、
図9に示したのと本質的に同一の位置に13C化学シフト(ppm)を含む固体NMRスペクトルを有する形態を提供する。
【0021】
本発明の別の一態様は、形態1であって、(i)15.4±0.2、20.2±0.2、および28.6±0.2の回折角(2θ)にピークを含む粉末X線回折パターン、ならびに(ii)287±2、869±2、および1292±2にラマンシフトピーク(cm-1)を含むラマンスペクトルを有する形態を提供する。
【0022】
本発明の別の一態様は、形態1であって、(i)28.6±0.2の回折角(2θ)にピークを含む粉末X線回折パターン、ならびに(ii)287±2、869±2、および1292±2にラマンシフトピーク(cm-1)を含むラマンスペクトルを有する形態を提供する。
【0023】
本発明の別の一態様は、形態1であって、(i)15.4±0.2、20.2±0.2、および28.6±0.2の回折角(2θ)にピークを含む粉末X線回折パターン、ならびに(ii)120.8±0.2および139.6±0.2に13C化学シフト(ppm)を含む固体NMRスペクトルを有する形態を提供する。
【0024】
本発明の別の一態様は、形態1であって、(i)28.6±0.2の回折角(2θ)にピークを含む粉末X線回折パターン、ならびに(ii)120.8±0.2および139.6±0.2に13C化学シフト(ppm)を含む固体NMRスペクトルを有する形態を提供する。
【0025】
本発明の別の一態様は、形態1であって、(i)26.7±0.2および28.6±0.2の回折角(2θ)にピークを含む粉末X線回折パターン、ならびに(ii)127.7±0.2に13C化学シフト(ppm)を含む固体NMRスペクトルを有する形態を提供する。
【0026】
本発明の別の一態様は、形態1であって、(i)287±2、869±2、および1292±2にラマンシフトピーク(cm-1)を含むラマンスペクトル、ならびに(ii)120.8±0.2および139.6±0.2に13C化学シフト(ppm)を含む固体NMRスペクトルを有する形態を提供する。
【0027】
本発明の別の一態様は、形態1であって、(i)994±2、1273±2、および1292±2にラマンシフトピーク(cm-1)を含むラマンスペクトル、ならびに(ii)120.8±0.2および127.7±0.2に13C化学シフト(ppm)を含む固体NMRスペクトルを有する形態を提供する。
【0028】
本発明の別の一態様は、形態1であって、(i)1292±2および1615±2にラマンシフトピーク(cm-1)を含むラマンスペクトル、ならびに(ii)127.7±0.2に13C化学シフト(ppm)を含む固体NMRスペクトルを有する形態を提供する。
【0029】
ある種の実施形態では、本発明は、非吸湿性かつ無水である形態1に関する。
【0030】
ある種の実施形態では、本発明は、式Iの化合物の複数の針状晶を含む形態1に関する。
【0031】
さらなる一態様では、本発明は、形態1が、その固体形態の他のいずれか(例えば、形態2、4、および6)またはそれらの混合物の存在下に存在できることを企図している。したがって、一実施形態では、本発明は、95重量%未満、90重量%未満、80重量%未満、70重量%未満、60重量%未満、50重量%未満、40重量%未満、30重量%未満、20重量%未満、10重量%未満、5重量%未満、3重量%未満、または1重量%未満の式Iの化合物の他のいずれかの物理的形態を含む固体形態で存在する形態1を提供する。例えば、一実施形態では、上述の粉末X線回折パターン、ラマンスペクトル、IRスペクトル、および/またはNMRスペクトルのいずれか1種を有する形態1を含む式Iの化合物の固体形態であり、前記固体形態は、95重量%未満、90重量%未満、80重量%未満、70重量%未満、60重量%未満、50重量%未満、40重量%未満、30重量%未満、20重量%未満、10重量%未満、5重量%未満、3重量%未満、または1重量%未満の式Iの化合物の他のいずれかの物理的形態を含む。
【0032】
ある種の実施形態では、本発明は、実質的に純粋な結晶形態である形態1に関する。
【0033】
さらに、本明細書において提供する開示に基づいて、式Iの化合物の第2結晶形態(本明細書では「形態4」と称す)が、様々な組合せにおけるいくつかの異なるスペクトルピークまたはパターンによって独自に同定できることを当業者なら理解するであろう。以下は、形態4の同定に使用することができる特徴的なピーク値の例示的な組合せであり、これらの例示的な組合せが、本明細書に開示の他のピーク値の組合せを限定すると一切みなすべきではない。
【0034】
本発明の一態様は、形態4であって、15.9±0.2および16.9±0.2の回折角(2θ)にピークを含む粉末X線回折パターンを有する形態を提供する。別の一実施形態では、形態4は、15.9±0.2、16.9±0.2、および18.0±0.2の回折角(2θ)にピークを含む粉末X線回折パターンを有する。別の一実施形態では、形態4は、16.9±0.2、24.1±0.2、および27.3±0.2の回折角(2θ)にピークを含む粉末X線回折パターンを有する。別の一実施形態では、形態4は、15.9±0.2、16.9±0.2、18.0±0.2、および27.3±0.2の回折角(2θ)にピークを含む粉末X線回折パターンを有する。
【0035】
本発明の別の一態様は、形態4であって、
図3に示したのと本質的に同一の回折角(2θ)にピークを含む粉末X線回折パターンを有する結晶形態を提供する。
【0036】
本発明の別の一態様は、形態4であって、266±2、283±2、および1297±2にラマンシフトピーク(cm-1)を含むラマンスペクトルを有する形態を提供する。別の一実施形態では、形態4は、201±2、266±2、283±2、および1297±2にラマンシフトピーク(cm-1)を含むラマンスペクトルを有する。別の一実施形態では、形態4は、283±2、994±2、1273±2、および1547±2にラマンシフトピーク(cm-1)を含むラマンスペクトルを有する。
【0037】
本発明の別の一態様は、形態4であって、
図7に示したのと本質的に同一の位置にラマンシフトピーク(cm-1)を含むラマンスペクトルを有する形態を提供する。
【0038】
本発明の別の一態様は、形態4であって、122.1±0.2、130.7±0.2、および140.1±0.2に13C化学シフト(ppm)を含む固体NMRスペクトルを有する形態を提供する。別の一実施形態では、形態4は、122.1±0.2、124.4±0.2、および130.7±0.2に13C化学シフト(ppm)を含む固体NMRスペクトルを有する。別の一実施形態では、形態4は、130.7±0.2および140.1±0.2に13C化学シフト(ppm)を含む固体NMRスペクトルを有する。別の一実施形態では、形態4は、122.1±0.2および140.1±0.2に13C化学シフト(ppm)を含む固体NMRスペクトルを有する。別の一実施形態では、形態4は、122.1±0.2および130.7±0.2に13C化学シフト(ppm)を含む固体NMRスペクトルを有する。別の一実施形態では、形態4は、124.4±0.2および130.7±0.2に13C化学シフト(ppm)を含む固体NMRスペクトルを有する。
【0039】
本発明の別の一態様は、形態4であって、
図11に示したのと本質的に同一の位置に13C化学シフト(ppm)を含む固体NMRスペクトルを有する形態を提供する。
【0040】
本発明の別の一態様は、形態4であって、(i)15.9±0.2および16.9±0.2の回折角(2θ)にピークを含む粉末X線回折パターン、ならびに(ii)266±2、283±2、および1297±2にラマンシフトピーク(cm-1)を含むラマンスペクトルを有する形態を提供する。本発明の別の一態様は、形態4であって、(i)15.9±0.2および16.9±0.2の回折角(2θ)にピークを含む粉末X線回折パターン、ならびに(ii)122.1±0.2、130.7±0.2、および140.1±0.2に13C化学シフト(ppm)を含む固体NMRスペクトルを有する形態を提供する。
【0041】
本発明の別の一態様は、形態4であって、(i)266±2、283±2、および1297±2にラマンシフトピーク(cm-1)を含むラマンスペクトル、ならびに(ii)122.1±0.2、130.7±0.2、および140.1±0.2に13C化学シフト(ppm)を含む固体NMRスペクトルを有する形態を提供する。
【0042】
ある種の実施形態では、本発明は、非吸湿性かつ無水である形態4に関する。
【0043】
ある種の実施形態では、本発明は、式Iの化合物の複数の針状晶を含む形態4に関する。
【0044】
さらなる一態様では、本発明は、形態4が、その固体形態の他のいずれか(例えば、形態1、2、および6)またはそれらの混合物の存在下に存在できることを企図している。したがって、一実施形態では、本発明は、95重量%未満、90重量%未満、80重量%未満、70重量%未満、60重量%未満、50重量%未満、40重量%未満、30重量%未満、20重量%未満、10重量%未満、5重量%未満、3重量%未満、または1重量%未満の式Iの化合物の他のいずれかの物理的形態を含む固体形態で存在する形態4を提供する。例えば、一実施形態では、上述の粉末X線回折パターン、ラマンスペクトル、IRスペクトル、および/またはNMRスペクトルのいずれか1種を有する形態4を含む式Iの化合物の固体形態であり、前記固体形態は、95重量%未満、90重量%未満、80重量%未満、70重量%未満、60重量%未満、50重量%未満、40重量%未満、30重量%未満、20重量%未満、10重量%未満、5重量%未満、3重量%未満、または1重量%未満の式Iの化合物の他のいずれかの物理的形態を含む。
【0045】
ある種の実施形態では、本発明は、実質的に純粋な結晶形態である形態4に関する。
【0046】
さらに、本明細書において提供する開示に基づいて、式Iの化合物の第3結晶形態(本明細書では「形態6」と称す)が、様々な組合せにおけるいくつかの異なるスペクトルピークまたはパターンによって独自に同定できることを当業者なら理解するであろう。以下は、形態6の同定に使用することができる特徴的なピーク値の例示的な組合せであり、これらの例示的な組合せが、本明細書に開示の他のピーク値の組合せを限定すると一切みなすべきではない。
【0047】
本発明の一態様は、形態6であって、23.8±0.2および27.5±0.2の回折角(2θ)にピークを含む粉末X線回折パターンを有する形態を提供する。別の一実施形態では、形態6は、13.6±0.2、23.8±0.2、および27.5±0.2の回折角(2θ)にピークを含む粉末X線回折パターンを有する。別の一実施形態では、形態6は、13.6±0.2、23.5±0.2、23.8±0.2、および27.5±0.2の回折角(2θ)にピークを含む粉末X線回折パターンを有する。
【0048】
本発明の別の一態様は、形態6であって、
図14に示したのと本質的に同一の回折角(2θ)にピークを含む粉末X線回折パターンを有する結晶形態を提供する。
【0049】
本発明の別の一態様は、形態6であって、223±2、1274±2、および1434±2にラマンシフトピーク(cm-1)を含むラマンスペクトルを有する形態を提供する。別の一実施形態では、形態6は、223±2、1274±2、1434±2、および1547±2にラマンシフトピーク(cm-1)を含むラマンスペクトルを有する。
【0050】
本発明の別の一態様は、形態6であって、
図16に示したのと本質的に同一の位置にラマンシフトピーク(cm-1)を含むラマンスペクトルを有する形態を提供する。
【0051】
本発明の別の一態様は、形態6であって、109.7±0.2、126.4±0.2、および131.5±0.2に13C化学シフト(ppm)を含む固体NMRスペクトルを有する形態を提供する。別の一実施形態では、形態6は、109.7±0.2および126.4±0.2に13C化学シフト(ppm)を含む固体NMRスペクトルを有する。別の一実施形態では、形態6は、126.4±0.2および131.5±0.2に13C化学シフト(ppm)を含む固体NMRスペクトルを有する。別の一実施形態では、形態6は、109.7±0.2および131.5±0.2に13C化学シフト(ppm)を含む固体NMRスペクトルを有する。
【0052】
本発明の別の一態様は、形態6であって、
図18に示したのと本質的に同一の位置に13C化学シフト(ppm)を含む固体NMRスペクトルを有する形態を提供する。
【0053】
本発明の別の一態様は、形態6であって、(i)23.8±0.2および27.5±0.2の回折角(2θ)にピークを含む粉末X線回折パターン、ならびに(ii)223±2、1274±2、および1547±2にラマンシフトピーク(cm-1)を含むラマンスペクトルを有する形態を提供する。
【0054】
本発明の別の一態様は、形態6であって、(i)23.8±0.2および27.5±0.2の回折角(2θ)にピークを含む粉末X線回折パターン、ならびに(ii)109.7±0.2、126.4±0.2、および131.5±0.2に13C化学シフト(ppm)を含む固体NMRスペクトルを有する形態を提供する。
【0055】
本発明の別の一態様は、形態6であって、(i)223±2、1274±2、および1547±2にラマンシフトピーク(cm-1)を含むラマンスペクトル、ならびに(ii)109.7±0.2、126.4±0.2、および131.5±0.2に13C化学シフト(ppm)を含む固体NMRスペクトルを有する形態を提供する。
【0056】
ある種の実施形態では、本発明は、非吸湿性かつ無水である形態6に関する。
【0057】
さらなる一態様では、本発明は、形態6が、その固体形態の他のいずれか(例えば、形態1、2、および4)またはそれらの混合物の存在下に存在できることを企図している。したがって、一実施形態では、本発明は、95重量%未満、90重量%未満、80重量%未満、70重量%未満、60重量%未満、50重量%未満、40重量%未満、30重量%未満、20重量%未満、10重量%未満、5重量%未満、3重量%未満、または1重量%未満の式Iの化合物の他のいずれかの物理的形態を含む固体形態で存在する形態6を提供する。例えば、一実施形態では、上述の粉末X線回折パターン、ラマンスペクトル、IRスペクトル、および/またはNMRスペクトルのいずれか1種を有する形態6を含む式Iの化合物の固体形態であり、前記固体形態は、95重量%未満、90重量%未満、80重量%未満、70重量%未満、60重量%未満、50重量%未満、40重量%未満、30重量%未満、20重量%未満、10重量%未満、5重量%未満、3重量%未満、または1重量%未満の式Iの化合物の他のいずれかの物理的形態を含む。
【0058】
ある種の実施形態では、本発明は、実質的に純粋な結晶形態である形態6に関する。
【0059】
本発明のさらなる一態様は、本明細書に記載の形態1、形態2、形態4、または形態6を含む医薬組成物を提供する。さらなる一態様では、本発明は、本明細書に記載の形態1、形態2、形態4、もしくは形態6、または医薬組成物のいずれか1種を含む経口剤形を提供する。例えば、一実施形態では、経口剤形は、錠剤、丸剤、またはカプセル剤である。例えば、一実施形態では、経口剤形は、錠剤またはカプセル剤である。
【0060】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載の形態1、形態2、形態4、もしくは形態6、または医薬組成物のいずれか1種を含む錠剤を提供する。例えば、一実施形態では、錠剤は、約1~約100mgの形態1、2、4、または6を含む。さらに、例えば、錠剤は、約10mgの形態1、2、4、または6を含む。さらに、例えば、錠剤は、約20mgの形態1、2、4、または6を含む。さらに、例えば、錠剤は、約30mgの形態1、2、4、または6を含む。さらに、例えば、錠剤は、約40mgの形態1、2、4、または6を含む。さらに、例えば、錠剤は、約50mgの形態1、2、4、または6を含む。さらに、例えば、錠剤は、約60mgの形態1、2、4、または6を含む。さらに、例えば、錠剤は、約70mgの形態1、2、4、または6を含む。さらに、例えば、錠剤は、約80mgの形態1、2、4、または6を含む。さらに、例えば、錠剤は、約90mgの形態1、2、4、または6を含む。さらに、例えば、錠剤は、約100mgの形態1、2、4、または6を含む。
【0061】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載の形態1、形態2、形態4、形態6、または医薬組成物のいずれか1種を含む軟ゼラチンカプセル剤を提供する。例えば、一実施形態では、軟ゼラチンカプセル剤は、約1~約100mgの形態1、2、4、または6を含む。さらに、例えば、軟ゼラチンカプセル剤は、約10mgの形態1、2、4、または6を含む。さらに、例えば、軟ゼラチンカプセル剤は、約20mgの形態1、2、4、または6を含む。さらに、例えば、軟ゼラチンカプセル剤は、約30mgの形態1、2、4、または6を含む。さらに、例えば、軟ゼラチンカプセル剤は、約40mgの形態1、2、4、または6を含む。さらに、例えば、軟ゼラチンカプセル剤は、約50mgの形態1、2、4、または6を含む。さらに、例えば、軟ゼラチンカプセル剤は、約60mgの形態1、2、4、または6を含む。さらに、例えば、軟ゼラチンカプセル剤は、約70mgの形態1、2、4、または6を含む。さらに、例えば、軟ゼラチンカプセル剤は、約80mgの形態1、2、4、または6を含む。さらに、例えば、軟ゼラチンカプセル剤は、約90mgの形態1、2、4、または6を含む。さらに、例えば、軟ゼラチンカプセル剤は、約100mgの形態1、2、4、または6を含む。
【0062】
本発明のさらなる一態様は、実施例1に記載するように形態1を調製する方法を提供する。本発明のさらなる一態様は、形態4を調製する方法であって、実施例2に記載するように形態1を加熱するステップを含む方法を提供する。本発明のさらなる一態様は、形態2を調製する方法であって、実施例3に記載するように、THFに形態1を溶解させるステップと、生じた溶液を蒸発させるステップとを含む方法を提供する。本発明のさらなる一態様は、形態6を調製する方法であって、実施例4に記載するように形態1を加熱するステップを含む方法を提供する。
【0063】
本発明のさらなる一態様は、哺乳動物における老人性全身性アミロイドーシス(SSA)、家族性アミロイド多発ニューロパチー(FAP)、および家族性アミロイド心筋症(FAC)などのトランスサイレチンアミロイド疾患を治療する方法であって、その哺乳動物に治療有効量の本明細書に記載の形態1、形態2、形態4、形態6、または医薬組成物のいずれかを投与するステップを含む方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【
図1】PANalytical製のX’Pert PRO MPD回折計で実施した形態1の特徴的なPXRDパターンを示す図である。
【
図2】
図1に示すPXRDパターンに対応するピークリストを示す図である。
【
図3】PANalytical製のX’Pert PRO MPD回折計で実施した形態4の特徴的なPXRDパターンを示す図である。
【
図4】
図3に示すPXRDパターンに対応するピークリストを示す図である。
【
図5】InGaAs検出器を備えた、Nexus 670 FT-IR分光光度計(Thermo Nicolet)に接続したNXR FT-ラマンモジュールで実施した形態1の特徴的なラマンスペクトルを示す図である。
【
図6】
図5に示すラマンスペクトルに対応するピークリストを示す図である。
【
図7】InGaAs検出器を備えた、Nexus 670 FT-IR分光光度計(Thermo Nicolet)に接続したNXR FT-ラマンモジュールで実施した形態4の特徴的なラマンスペクトルを示す図である。
【
図8】
図7に示すラマンスペクトルに対応するピークリストを示す図である。
【
図9】Bruker-Biospin Avance III 500MHz NMR分光計内に配置したBruker-Biospin 4mm CPMASプローブで実施した形態1の特徴的な13C固体NMRスペクトルを示す図である。
【
図10】
図9に示す13C固体NMRスペクトルに対応するピークリストを示す図である。化学シフトは、外試料の固相アダマンタンを基準として、そのアップフィールド共鳴を29.5ppmに設定する。
【
図11】15.0kHzのマジック角回転下で収集した、Bruker-Biospin Avance III 500MHz NMR分光計内に配置したBruker-Biospin 4mm CPMASプローブで実施した形態4の特徴的な13C固体NMRスペクトルを示す図である。アスタリスクマークを付けたピークは回転サイドバンドである。
【
図12】
図11に示す13C固体NMRスペクトルに対応するピークリストを示す図である。化学シフトは、外試料の固相アダマンタンを基準として、そのアップフィールド共鳴を29.5ppmに設定する。
【
図13】形態2の計算による粉末X線パターンを示す図である。
【
図14】PANalytical製のX’Pert PRO MPD回折計で実施した形態6の特徴的なPXRDパターンを示す図である。
【
図15】
図14に示すPXRDパターンに対応するピークリストを示す図である。
【
図16】InGaAs検出器を備えた、Nexus 670 FT-IR分光光度計(Thermo Nicolet)に接続したNXR FT-ラマンモジュールで実施した形態6の特徴的なラマンスペクトルを示す図である。
【
図17】
図16に示すラマンスペクトルに対応するピークリストを示す図である。
【
図18】15.0kHzのマジック角回転下で収集した、Bruker-Biospin Avance III 500MHz NMR分光計内に配置したBruker-Biospin 4mm CPMASプローブで実施した形態6の特徴的な13C固体NMRスペクトルを示す図である。ハッシュマークを付けたピークは回転サイドバンドである。
【
図19】
図18に示す13C固体NMRスペクトルに対応するピークリストを示す図である。化学シフトは、外試料の固相アダマンタンを基準として、そのアップフィールド共鳴を29.5ppmに設定する。
【
図20】PANalytical製のX’Pert PRO MPD回折計で実施した6-カルボキシ-2-(3,5-ジクロロフェニル)-ベンゾオキサゾールの非晶質形態の特徴的なPXRDパターンを示す図である。
【
図21】Bruker AXS D8 ADVANCE回折計で実施した形態1の特徴的なPXRDパターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
化学構造に基づいて、化合物が結晶化するかどうか、どんな条件下で化合物が結晶化するか、化合物の結晶性固体形態はいくつ存在し得るか、またはそれらの形態のいずれかの固体構造を、ある程度の確実性を伴って予測することはできない。任意の結晶性薬物の重要な特徴は、そのような材料の多形挙動である。一般に、薬物の結晶形態は、薬物の非結晶形態よりも好ましい。これは一部には、それらの優れた安定性による。例えば、多くの状況で、保存時に、非結晶性薬物が結晶性薬物の形態に転換する。薬物の非結晶形態および結晶形態は典型的に異なる物理的特性および化学的特性を有することから、そのような相互変換は、医薬品の使用において安全性の理由で望ましくない場合がある。医薬化合物の異なる固体形態が示す異なる物理的特性は、重要な薬学的パラメータ、例えば、(製剤および製品の製造において重要である)保存、安定性、圧縮性、密度、および(生物学的利用能の決定において重要である)溶解速度に影響を及ぼす可能性がある。安定性の差は、化学反応性の変化(例えば、加水分解または酸化が異なり、それにより、ある種の多形を含む剤形が、異なる多形を含む剤形よりも迅速に変色する可能性がある)、機械的な変化(例えば、速度論的に好まれる結晶形態が、熱力学的により安定な結晶形態に転換する場合、錠剤が保存時に崩壊する可能性がある)、または両方の変化(例えば、1つの多形の錠剤が、高い湿度においてはより分解を受けやすい場合がある)から生じ得る。極端な状況では、多形間の溶解性の差により、効力を欠き、かつ/または毒性を示す結晶形態への移行が生じることがある。さらに、結晶形態の物理的特性が、医薬品の加工において重要である場合もある。例えば、特定の結晶形態は、溶媒和物をより容易に形成する場合があり、またはろ過および洗浄して不純物を取り除くのが、他の結晶形態よりも困難である場合がある(すなわち、粒子形状およびサイズ分布は、1つの結晶形態と他の形態との間で異なる場合がある)。
【0066】
様々な物理的形態が様々な利点をもたらすという理由で、薬物の1つの理想的な物理的形態があるわけではない。最も安定な形態およびそのような他の形態を探索することは非常な努力を要し、成果は予測不可能である。したがって、種々の製剤中で使用することができる多様な独特の薬物の形態、例えば、塩、多形、非結晶形態を求めることは重要である。薬物の形態を特定の製剤または治療用途のために選択するには、多様な特性の検討が必要となり、特定の用途のための最良の形態は、1つの特定の重要な良好な特性を有する形態とすることができ、一方、他の特性は、許容できればよく、またはわずかに許容できればよい。
【0067】
薬物の開発の成功には、患者にとって治療上有効な治療となるためのある種の一般的要件を満たすことが必要となる。これらの要件は、2つのカテゴリー、(1)剤形の製造を成功させるための要件、ならびに(2)薬物製剤を患者に投与した後の薬物送達および体内動態を成功させるための要件に分類される。
【0068】
同じ化合物の異なる結晶性固体形態はしばしば、異なる固体の特性、例えば、融点、溶解性、溶解速度、吸湿性、粉体の流動性、機械的特性、化学的安定性、および物理的安定性などを有する。これらの固体の特性は、ろ過、乾燥、および剤形の製造ユニットの操作における利点をもたらすことができる。したがって、同じ化合物の異なる結晶性固体形態を同定したら、任意の所与のセットの加工および製造の条件下における最適な結晶性固体形態、ならびにそれぞれの結晶性固体形態の異なる固体の特性を決定することができる。
【0069】
分子の多形を、当技術分野で公知のいくつかの方法により得ることができる。このような方法には、溶融再結晶、溶融冷却、溶媒再結晶、脱溶媒和、急速蒸発、急速冷却、緩慢冷却、蒸気拡散、および昇華があるが、これらだけに限らない。多形は、周知の技術、例えば、以下に限定するものではないが、示差走査熱量測定(DSC)、熱重量分析(TGA)、X線粉末回折法(PXRD)、単結晶X線回折法、固体核磁気共鳴(NMR)、赤外(IR)分光法、ラマン分光法、および高温光学顕微鏡法などを使用して、検出、同定、分類、および特徴付けすることができる。薬剤開発に関して、大規模で確実に調製され、精製されるだけでなく、保存時に安定で、分解しない(一般に原薬として知られている)化合物形態を提供することが重要である。さらに、原薬は、意図された投与経路に応じて選択された剤形の製剤化に適していなければならない。
【0070】
式Iの化合物が、本明細書において形態1、形態2、形態4、および形態6と称した独特の結晶形態で存在し得ることが分かった。これらの形態は、トランスサイレチンアミロイド疾患を治療するための製剤製品において使用することができる。上述のように、各形態は、生物学的利用能、安定性、および製造性などの特性に関して他を上回る利点を有し得る。本発明の一態様では、式Iの化合物の結晶形態、すなわち、形態1、形態2、形態4、および形態6が発見され、これらは、非晶質形態よりも大量調製および取扱いに適しているようである。形態1、形態2、形態4、および形態6を高純度で生成するプロセスを本明細書に記載している。本発明の別の一目的は、式Iの化合物の各固体形態を、他の固体形態を実質的に含ませずに調製するプロセスを提供することである。さらに、本発明の一目的は、上述のような様々な固体形態の式Iの化合物を含む医薬製剤、およびこのような医薬製剤を投与することによってトランスサイレチンアミロイド疾患を治療する方法を提供することである。
【0071】
定義
本明細書で使用する用語「治療する」は、別段の指示がない限り、このような用語が当てはまる障害もしくは状態、またはこのような障害もしくは状態の1種もしくは複数種の症状を回復させ、軽減し、その進行を阻害し、またはそれを阻止することを意味する。本明細書で使用する用語「治療」は、別段の指示がない限り、直前で定義した「治療する」行為を指す。
【0072】
本明細書では、トランスサイレチンまたはTTRは、2,2,2対称を特徴とする55kDaのホモ四量体であり、二量体-二量体界面に2個の同一のろう斗状結合部位を有し、これらの部位において、甲状腺ホルモン(T4)は血漿およびCSF中で結合することができる。TTRは、1当量未満のホロレチノール結合タンパク質に一般に結合する。TTRは、生理学的条件下で四量体化する127残基タンパク質である。TTRは、血清中ではチロキシンの第3の輸送体として、脳脊髄液中では第1の担体として働く。TTRはまた、レチノール結合タンパク質との会合によってレチノールを輸送する。TTRは、低pHでアミロイドを形成する。
【0073】
本明細書では、特定の結晶形態に関連する用語「実質的に純粋な」は、その結晶形態または非晶形態が、10重量%未満、好ましくは5重量%未満、好ましくは3重量%未満、好ましくは1重量%未満のその化合物の他のいずれかの物理的形態を含むことを意味する。
【0074】
本明細書では、X線回折のピーク位置に関連する用語「本質的に同一の」は、典型的なピーク位置および強度ばらつきが考慮されていることを意味する。例えば、ピーク位置(2θ)が、回折を測定するために使用する装置においても同様に、いくらかのばらつき、一般に0.1~0.2度程度を示すであろうことを当業者なら理解するであろう。さらに、相対ピーク強度が、装置間ばらつき、ならびに結晶化度、好ましい配向、調製した試料表面、および当業者に公知の他の因子に起因するばらつきを示し、これを単に定性的な尺度とみなすべきであることを当業者なら理解するであろう。同様に、本明細書では、固体NMRスペクトルおよびラマンスペクトルに関連する「本質的に同一の」は、当業者に公知のこれらの分析技術に関連するばらつきも内包することを意図している。例えば、固体NMRで測定される13C化学シフトは、非常に明確なピークでは最大で0.2ppmのばらつき、幅広いラインではさらに大きなばらつきを一般に有し、一方、ラマンシフトは、約2cm-1のばらつきを一般に有する。
【0075】
用語「多形」は、同一の化合物の様々な結晶形態を指しており、それには、同一の化合物の水和物(例えば、結晶構造中に結合水が存在)および溶媒和物(例えば、水以外の結合溶媒)を含む他の固体の分子形態があるが、それらだけに限らない。
【0076】
用語「非晶質」は、三次元の秩序を欠いているあらゆる固体物質を指す。場合によっては、非晶質固体は、X線粉末回折(PXRD)結晶学、固体核磁気共鳴(ssNMR)分光法、示差走査熱量測定(DSC)、またはこれらの技術のいくつかの組合せを含む公知の技術により特性決定することができる。
【0077】
用語「結晶質」は、三次元の規則性を示すあらゆる固体物質を指し、これは、非晶質固体物質とは対照的に、鋭く明確なピークを有する特殊なPXRDパターンを生じる。
【0078】
用語「溶媒和物」は、原薬および化学量論量または非化学量論量の1種または複数種の溶媒分子(例えばエタノール)を含む分子複合体を述べている。溶媒が、薬物に緊密に結合している場合、得られた複合体は十分に規定された、湿度と無関係な化学量論を有する。しかし、チャネル溶媒和物および吸湿性化合物のように、溶媒が弱く結合している場合、溶媒含有量は、湿度および乾燥状態に依存するであろう。このような場合、複合体は、大抵の場合、非化学量論的である。
【0079】
用語「水和物」は、原薬および化学量論量または非化学量論量の水を含む溶媒和物を述べている。
【0080】
用語「粉末X線回折パターン」または「PXRDパターン」は、実験で観察されたディフラクトグラムまたはそれに由来するパラメータを指している。粉末X線回折パターンは、ピーク位置(横座標)およびピーク強度(縦座標)により特徴付けられる。
【0081】
用語「2シータ値」または「2θ」は、X線回折実験の実験設定に基づいて、度で示したピーク位置を指しており、回折パターンにおける共通の横座標単位である。実験設定は、入射ビームが一定の格子面と角度シータ(θ)を形成するときに反射が回折される場合に、反射されたビームが、角度2シータ(2θ)で記録されることを必要とする。特定の固体形態に関する特定の2θ値に対する本明細書の言及は、本明細書に記載のX線回折実験条件を使用して測定した2θ値(度)を意味することを意図していることを理解すべきである。
【0082】
式Iの化合物の固体形態
本明細書に開示の式Iの化合物の固体形態は、次の1種または複数種により特性決定することができる:粉末X線回折パターン(すなわち、様々な回折角度(2θ)でのX線回折ピーク)、固体核磁気共鳴(NMR)スペクトルパターン、ラマンスペクトルダイアグラムパターン、赤外スペクトルパターン、水溶性、調和国際会議(ICH)の高強度光条件下での光安定性、ならびに物理的および化学的貯蔵安定性。例えば、式Iの化合物の固体形態を、その粉末X線回折パターンにおけるピークの位置および相対強度によりそれぞれ特性決定した。
【0083】
式Iの化合物の固体形態の粉末X線回折パターンを、Optix長高精度焦点源を使用して生成したCu放射の入射ビームを使用して、PANalytical製のX’Pert PRO MPD回折計で収集した。楕円傾斜多層ミラーを使用して、Cu KαX線を、試験片を通して検出器上に集中させた。分析前に、ケイ素試験片(NIST SRM 640d)を分析して、観察されたSi111ピーク位置がNISTの認証位置と一致していることを確認した。試料の試験片を3μm厚膜間に挟み、透過幾何配置で分析した。ビームストップ、短い散乱線除去エクステンション、散乱線除去用ナイフエッジを使用して、大気によって生じたバックグラウンドを最小化した。入射ビームおよび回折ビームのソーラースリットを使用して、軸の発散からの広がりを最小化した。回折パターンを、試験片から240mm離れて位置する走査式位置感応型検出器(X’Celerator)、およびデータコレクタバージョン2.2bソフトウェアを使用して収集した。データ取得パラメータは、以下の表1に示すとおりであった。
【0084】
【0085】
より一般には、本明細書に報告した測定に使用したPANalytical製のシステムのような透過機器でX線回折測定を行うために、試料の試験片を3μm厚膜間に挟み、透過幾何配置で分析した。入射X線ビームを、最初はホルダーの平面に対して小さい角度で試料に向け、次いで、入射ビームとホルダーの平面との角度を連続的に高める弧を介して動かす。このようなX線粉末分析に関連する測定差は、(a)試料調製での誤差;(b)機器誤差;(c)校正誤差;(d)操作者の誤差(ピーク位置を決定する際に存在する誤差を含む);および(e)材料の性質(例えば、好ましい配向および透過性の誤差)を含む様々な因子から生じている。校正誤差および試料高さ誤差は、大抵の場合、すべてのピークを同じ方向にシフトさせる。これらのシフトは、X線ディフラクトグラムから同定することができ、シフトを補償する(系統的補正係数をすべてのピーク位置値に適用する)か、または機器を再校正することにより除去することができる。通常、この補正係数により、測定されたピーク位置を、予測されたピーク位置と一致させるが、それは±0.2°2θの範囲内であればよい。
【0086】
ピーク位置(2θ)が一般に±0.2°2θの装置間ばらつきを示すであろうことを当業者なら理解するであろう。したがって、ピーク位置(2θ)が報告されている場合、こうした数が、このような装置間ばらつきを内包することを意図していることを当業者なら認識するであろう。さらに、本発明の結晶形態が、所与の図面に示したのと本質的に同一の粉末X線回折ピーク位置を有すると記載されている場合、用語「本質的に同一の」はまた、回折ピーク位置におけるこのような装置間ばらつきを内包することを意図している。さらに、相対ピーク強度が、装置間ばらつき、ならびに結晶化度、好ましい配向、調製した試料表面、および当業者に公知の他の因子に起因するばらつきを示し、これを単に定性的な尺度とみなすべきであることを当業者なら理解するであろう。
【0087】
PXRDピークの同定は、以下のように行った。PXRDパターンは形態1および形態4に関して分析し、好適配向および粒子統計の効果は評価しなかった。ほとんどの状況下で、約30°2θまでの範囲内のピークを選択した。最強ピークの2%以上の強度を有するピークを、ピークの選択に使用した。ピーク位置は、端数を最も近い0.1°2θに丸めた。X軸に沿ったピーク位置(°2θ)は、TRIADS(商標)v2.0ソフトウェアを使用して決定した。TRIADS(商標)アルゴリズムは、全体を参照により本明細書に援用する米国特許第8,576,985号により記載されている。上述のように、ピーク位置のばらつきは、X線粉末回折のばらつきに関するUSPの検討に概説された勧告に基づき±0.2°2θの範囲内に示す(米国薬局方、USP37、NF32、S1<941>から、503、5/1/2014を参照)。
【0088】
式Iの化合物の固体形態はまた、ラマン分光法により特性決定することができる。ラマンスペクトルは、InGaAs検出器を備えた、Nexus 670 FT-IR分光光度計(Thermo Nicolet)に接続したNXR FT-ラマンモジュールを使用して、収集した。硫黄およびシクロヘキサンを使用して、波長の検証を行った。分析のために、試料材料をペレットホルダーに充填して、各試料を準備した。各試料の照射に、約0.5WのNd:YVO4レーザー出力(励起波長1064nm)を使用した。各スペクトルは、周囲温度で得られた、2cm-1のスペクトル分解能で収集した256回の同時走査を表す。ピーク位置は、ピークの最大でピッキングした。相対強度値は、次の基準:強(1.00~0.75)、中(0.74~0.30)、および弱(0.29以下)を使用して、強(S)、中(M)、および弱(W)に分類した。
【0089】
式Iの化合物の固体形態はまた、固体NMR分光法を使用して、特性決定することができる。式1の固体形態に関する13C固体スペクトルを、以下のように収集した。固体NMR(ssNMR)分析は、周囲温度および圧力においてBruker-Biospin Avance III 500MHz(1H周波数)NMR分光計内に配置したBruker-Biospin CPMASプローブで行った。充填したローターをマジック角に配向させ、15.0kHzで回転させた。炭素ssNMRスペクトルは、周囲温度においてプロトンデカップリング交差分極マジック角回転法(CPMAS)実験を使用して、収集した。スペクトルの取得中、80~100kHzの位相変調プロトンデカップリング界を適用した。交差分極接触時間を2.0ミリ秒に設定した。リサイクル遅延を、形態1は180秒、形態4は50秒、形態6は5秒に設定した。スキャン数は、適当な信号対雑音比が得られるように調整した。外標準の結晶アダマンタンを使用し、そのアップフィールド共鳴を29.5ppmに設定(ニートのテトラメチルシランから決定)して、その炭素スペクトルを基準とした。Bruker-BioSpin TopSpinバージョン3.1ソフトウェアを使用して、自動ピークピッキングを行った。通常、5%の相対強度の閾値を使用して、ピークを予備選択した。自動ピークピッキングのアウトプットを視覚的に確認して、有効性を保証し、必要に応じて、手動で調整を行った。特定の13C固体NMRピーク値を本明細書に報告するが、機器、試料、および試料調製の違いにより、これらのピーク値には幅がある。ピーク値にはばらつきが内在することから、これは固体NMRの分野では慣例である。13C化学シフトのX軸値に関する典型的なばらつきは、結晶性固体については±0.2ppm程度である。本明細書に報告した固体NMRピーク高さは、相対強度である。固体NMR強度は、CPMASの実験パラメータの実際の設定および試料の熱履歴に応じて変わる場合がある。
【0090】
所与の化合物の結晶形態が、単一多形の実質的に純粋な形態で存在し得るが、2種以上の異なる多形または非晶形態を含む結晶形態でも存在し得ることも当業者なら認識するであろう。固体形態が2種以上の多形を含む場合、X線回折パターンは、本発明の個々の多形それぞれに特徴的なピークを有するであろう。例えば、2種の多形を含む固体形態は、実質的に純粋な固体形態に対応する2種のX線回折パターンの重畳である粉末X線回折パターンを有するであろう。例えば、式Iの化合物の固体形態は、第1および第2固体形態を含有することができ、ここでは、固体形態は、少なくとも10重量%の第1形態を含有する。さらなる例では、固体形態は、少なくとも20重量%の第1形態を含有する。さらにさらなる例は、少なくとも30重量%、少なくとも40重量%、または少なくとも50重量%の第1形態を含有する。様々な量におけるいくつかの個々の形態の多くのこのような組合せが可能であることを当業者なら認識するであろう。
【0091】
形態1
形態1は、実施例1に記載するように生成することができる式Iの化合物の結晶質、非吸湿性、無水性の形態である。
【0092】
形態1を、Optix長高精度焦点源を使用して生成したCu放射の入射ビームを使用して、PANalytical製のX’Pert PRO MPDで測定した、
図1に示すPXRDのパターンにより特性決定した。度(2θ)および≧2.0%の相対強度を伴う相対強度で表された形態1のPXRDパターンを
図2に示している。相対強度は、結晶サイズおよび形態に応じて変わり得る。
【0093】
適切な分析方法を使用して、形態1の特徴的ピークを同定するために、本明細書において形態1をニート物質とした。これらの分析方法から、許容されるばらつきの範囲内に定義した範囲を有する、形態1の特徴であるピーク値がもたらされる。しかし、形態1が任意の追加成分、例えば製剤中に利用される成分などと混合されると、これらの特徴的ピークの相対強度は変化すると予想される。したがって、形態1が薬物製剤の範囲内の追加成分と混合されるか、またはそれらで希釈されると、特定の方法の分析パラメータは、これらの特徴的ピークの検出を可能にする別の最適化を必要とする可能性があることを機器分析分野の当業者なら理解されよう。例えば、以下の段落に記載するように、PXRD方法は、形態1が追加成分と混合された場合、特徴的な形態1のピークの検出を可能にするためにさらに最適化することができる。形態1の特徴的ピークに関連したピーク値が、この方法の最適化の結果として変更されないであろうことをPXRD分析分野の当業者なら理解されよう。
【0094】
形態1の粉末X線回折分析もまた、Cu放射線源(K-α平均)を備えたBruker AXS D8 ADVANCE回折計を使用して行った。このシステムは、一次側に2.5軸ソーラースリットを備えている。二次側は、2.5軸ソーラースリットおよび電動スリットを利用する。回折された放射線は、Lynx Eye XE検出器によって検出した。X線管電圧およびアンペア数は、それぞれ40kVおよび40mAに設定した。データは、ステップサイズ0.037度およびステップ時間10秒を使用して、Cu波長で3.0~40.0度の2シータまでシータ-シータゴニオメータで収集した。試料を低バックグラウンドホルダー内に置いて準備し、収集中は回転させた。得られた形態1の粉末パターンは、
図21に示している。
【0095】
形態1はまた、InGaAs検出器を備えた、Nexus 670 FT-IR分光光度計(Thermo Nicolet)に接続したNXR FT-ラマンモジュールで実施した、
図5に示すラマンスペクトルのパターンにより特性決定した。形態1のラマンスペクトルのピークは、
図6に示している。
【0096】
また、形態1を、Bruker-Biospin Avance III 500 MHz NMR分光計内に配置したBruker-Biospin 4mm CPMASプローブで実施した、
図9に示す固体NMRスペクトルのパターンにより特性決定した。形態1の13C化学シフトは、
図10に示している。
【0097】
形態1を、乾燥粉末が水を吸収するように、試料が溶媒をどれくらいの速さで、およびどれくらいの量を吸収するか測定する重量法である等温蒸気収着分析により分析した。この分析は、試料周りの蒸気濃度を変化させ、これにより生じる質量変化を測定することで行われる。形態1の等温蒸気収着分析は、形態1が、無水であり、周囲温度で相対湿度が90%までの場合に可逆的な増量が0.25%未満であることを示している。
【0098】
形態4
形態4は、実施例2に記載するように生成することができる式Iの化合物の結晶質、非吸湿性、無水性の形態である。
【0099】
形態4を、Optix長高精度焦点源を使用して生成したCu放射の入射ビームを使用して、PANalytical製のX’Pert PRO MPDで測定した、
図3に示すPXRDのパターンにより特性決定した。度(2θ)および≧2.0%の相対強度を伴う相対強度で表された形態4のPXRDパターンを
図4に示している。相対強度は、結晶サイズおよび形態に応じて変わり得る。
【0100】
形態4はまた、InGaAs検出器を備えた、Nexus 670 FT-IR分光光度計(Thermo Nicolet)に接続したNXR FT-ラマンモジュールで実施した、
図7に示すラマンスペクトルのパターンにより特性決定した。形態4のラマンスペクトルのピークは、
図8に示している。
【0101】
また、形態4を、Bruker-Biospin Avance III 500 MHz NMR分光計内に配置したBruker-Biospin 4mm CPMASプローブで実施した、
図11に示す固体NMRスペクトルのパターンにより特性決定した。形態4の13C化学シフトは、
図12に示している。
【0102】
形態2
形態2は、実施例3に記載するように生成することができる式Iの化合物の結晶性THF溶媒和物である。
【0103】
図13に示した形態2の計算による粉末パターンは、Mercury v.3.1(http://www.ccdc.cam.ac.uk/mercury/)を使用して、調製した。
【0104】
形態6
形態6は、実施例4に記載するように生成することができる式Iの化合物の結晶質、非吸湿性、無水性の形態である。
【0105】
形態6を、Optix長高精度焦点源を使用して生成したCu放射の入射ビームを使用して、PANalytical製のX’Pert PRO MPDで測定した、
図14に示すPXRDのパターンにより特性決定した。度(2θ)および≧2.0%の相対強度を伴う相対強度で表された形態6のPXRDパターンを
図15に示している。相対強度は、結晶サイズおよび形態に応じて変わり得る。
【0106】
形態6はまた、InGaAs検出器を備えた、Nexus 670 FT-IR分光光度計(Thermo Nicolet)に接続したNXR FT-ラマンモジュールで実施した、
図16に示すラマンスペクトルのパターンにより特性決定した。形態6のラマンスペクトルのピークは、
図17に示している。
【0107】
また、形態6を、Bruker-Biospin Avance III 500 MHz NMR分光計内に配置したBruker-Biospin 4mm CPMASプローブで実施した、
図18に示す固体NMRスペクトルのパターンにより特性決定した。形態6の13C化学シフトは、
図19に示している。
【0108】
医薬組成物
本発明の活性剤(すなわち、本明細書に記載の式Iの化合物の固体形態)は、哺乳動物の医学的使用に適した医薬組成物に製剤化することができる。任意の適切な投与経路を使用して、患者に有効投与量の本明細書に記載の式Iの化合物の固体形態のいずれかを提供することができる。例えば、経口または非経口製剤などを使用することができる。剤形には、カプセル剤、錠剤、分散剤、懸濁剤など、例えば、腸溶コーティングされたカプセル剤および/または錠剤、本明細書に記載の式Iの化合物の固体形態の腸溶コーティングされたペレットを含有するカプセル剤および/または錠剤がある。すべての剤形において、本明細書に記載の式Iの化合物の固体形態を他の適切な構成物質と混合することができる。組成物は、単位剤形で好都合に提供され、医薬分野で公知の任意の方法により調製することができる。本発明の医薬組成物は、治療有効量の活性剤および1種または複数種の不活性な薬学的に許容できる担体、および場合により他の任意の治療成分、安定化剤などを含む。担体は、製剤の他の成分と相容性であり、かつそのレシピエントに対して過度に有害でないという意味において薬学的に許容できなければならない。組成物は、希釈剤、緩衝剤、結合剤、崩壊剤、増粘剤、滑沢剤、防腐剤(抗酸化剤を含む)、フレーバリング剤、風味マスキング剤、無機塩(例えば、塩化ナトリウム)、抗菌剤(例えば、塩化ベンザルコニウム)、甘味剤、帯電防止剤、界面活性剤(例えば、「TWEEN20(商標)」および「TWEEN80(商標)」などのポリソルベート、ならびにBASFから入手可能なPluronic(登録商標)F68およびF88)、ソルビタンエステル、脂質(例えば、レシチンおよび他のホスファチジルコリンなどのリン脂質、ホスファチジルエタノールアミン、脂肪酸および脂肪酸エステル、ステロイド(例えば、コレステロール))、ならびにキレート化剤(例えば、EDTA、亜鉛、および他のこのような適切なカチオン)をさらに含むことができる。本発明による組成物での使用に適した他の医薬添加剤および/または添加物は、Remington:The Science & Practice of Pharmacy、19版、Williams & Williams、(1995)、および「Physician’s Desk Reference」、52版、Medical Economics、Montvale、NJ(1998)、および「Handbook of Pharmaceutical Excipients」、3版、A.H.Kibbe編、Pharmaceutical Press、2000に列挙されている。本発明の活性剤は、経口、直腸、局所、鼻、眼、または非経口(腹腔内、静脈内、皮下、または筋肉内注射を含む)投与に適したものを含む組成物に製剤化することができる。
【0109】
製剤中の活性剤の量は、剤形、治療される状態、標的患者集団、および他の考慮事項を含む様々な因子に応じて変動し、通常、当業者によって容易に決定される。治療有効量は、トランスサイレチン(TTR)解離を阻害(すなわち、天然TTR四量体の単量体への解離を阻止)するのに必要な量である。組成物は、約0.001重量%~約99重量%の範囲の活性剤、好ましくは約0.01重量%~約5重量%の活性剤、より好ましくは約0.01重量%~2重量%の活性剤を通常含有し、組成物中に含有される添加剤/添加物の相対量にも左右される。
【0110】
本発明の医薬組成物は、活性成分としての治療有効量の活性剤と1種または複数種の適当な医薬担体とを従来の手順に従って組み合わせることにより調製した従来の剤形で投与する。これらの手順は、所望の調製物に適しているような成分の混合、顆粒化、および圧縮、または溶解を必要とし得る。
【0111】
使用する医薬担体は、固体でも液体でもよい。例示的な固体担体には、ラクトース、スクロース、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アラビアゴム、ステアリン酸マグネシウム(magnesiun)、ステアリン酸などがある。例示的な液体担体には、シロップ、ラッカセイ油、オリーブ油、水などがある。同様に、担体は、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルなどの当技術分野で公知の時間遅延性または時間放出性の材料を単独で、またはワックス、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メタクリル酸メチルなどと共に含むことができる。
【0112】
様々な医薬形態を使用することができる。したがって、固体担体を使用する場合、調製物は、錠剤化するか、粉末もしくはペレット形態で硬ゼラチンカプセル剤に入れるか、またはトローチ剤もしくはロゼンジ剤の形態とすることができる。固体担体の量は、変動してよいが、通常、約25mg~約1gである。液体担体を使用する場合、調製物は、シロップ剤、乳剤、軟ゼラチンカプセル剤、アンプルもしくはバイアル中の無菌注射液剤もしくは懸濁剤、または非水性液体懸濁剤の形態とすることができる。
【0113】
本発明の組成物において使用する本明細書に記載の式Iの化合物の固体形態の実際の投与量は、使用する特定の固体形態、製剤化する特定の組成物、投与方式、ならびに治療する特定の部位、ホスト、および疾患によって変動することは理解されるであろう。薬剤に関する実験データを考慮して、従来の投与量決定試験を使用すれば、当業者は、所与の一連の状態に関して最適な投与量を確定することができる。経口投与では、通常使用される例示的な1日用量は、適当な間隔で繰り返される治療経過に伴い約0.001~約1000mg/体重kg、より好ましくは約0.001~約50mg/体重kgである。プロドラッグの投与は、十分に有効な形態の重量レベルと化学的に同等である重量レベルで一般に投与される。本発明の実施では、最も適切な投与経路、ならびに治療用量の規模は、治療すべき疾患の性質および重症度に依存するであろう。用量および投与頻度はまた、個々の患者の年齢、体重、および応答に応じて変動し得る。通常、適切な経口剤形は、1単回用量または等分に分けられた用量で投与される活性成分の1日の全用量0.5mg~100mgの用量範囲をカバーし得る。このような製剤における本明細書に記載の式Iの化合物の固体形態の好ましい量は、約0.5mg~約20mg、例えば、約1mg~約10mgまたは約1mg~約5mgなどである。
【0114】
本発明の組成物は、医薬組成物を調製するために通常知られている様式で、例えば、混合、溶解、顆粒化、乳化、カプセル封入、閉じ込め、または凍結乾燥などの従来技術を使用して製造することができる。活性化合物の薬学的に使用することができる調製物への加工を容易にする添加剤および佐剤から選択することができる1種または複数種の生理学的に許容できる担体を使用する従来の様式で、医薬組成物を製剤化することができる。
【0115】
経口投与では、本明細書に記載の式Iの化合物の固体形態は、当技術分野で公知の薬学的に許容できる担体と活性剤を組み合わせることにより製剤化することができる。このような担体により、本発明の化合物を、治療される患者が経口摂取するための錠剤、丸剤、カプセル剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤などとして製剤化することができる。活性剤と混合して固体添加剤を使用し、場合により、生じた混合物を粉砕し、適切な佐剤を添加した後に顆粒の混合物を加工して、経口用途用の医薬調製物を得ることができる。適切な添加剤には、ラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトールを包含する糖などの充填剤;およびセルロース調製物、例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、ゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル-セルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、またはポリビニルピロリドン(PVP)がある。所望により、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはアルギン酸ナトリウムなどのその塩などの崩壊剤を添加することができる。
【0116】
経口で使用することができる医薬調製物には、ゼラチン製のプッシュ-フィットカプセル剤、ならびにゼラチンとグリセリンまたはソルビトールなどの可塑剤とから製造された軟質密閉カプセル剤が包含される。プッシュ-フィットカプセル剤は、ラクトースなどの充填剤、デンプンなどの結合剤、および/またはタルクもしくはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、および場合により安定化剤と混合されている活性成分を含有することができる。軟質カプセル剤では、活性剤を、脂肪油、流動パラフィン、または液状ポリエチレングリコールなどの適切な液体に溶解または懸濁させることができる。さらに、安定化剤を添加することができる。経口投与のための製剤はいずれも、このような投与に適した投与量とすべきである。頬側投与では、組成物は、従来の様式で製剤化された錠剤またはロゼンジの形態をとってよい。
【0117】
眼への投与では、本明細書に記載の式Iの化合物の個体形態を薬学的に許容できる眼用媒体において送達することができ、それにより、この化合物が、例えば、前房、後房、硝子体、房水、硝子体液、角膜、虹彩/毛様体、水晶体、脈絡膜/網膜、および強膜を含む眼の角膜および内部領域に浸透し得る十分な期間、眼表面と接触し続けられるようになる。薬学的に許容できる眼用媒体は、例えば、軟膏、植物油、またはカプセル封入材料であり得る。本発明の活性剤はまた、硝子体液、房水、またはサブテノンに直接注入することができる。
【0118】
あるいは、活性成分は、使用前に適切な媒体、例えば無菌発熱物質不含水で構成するための散剤形態とすることができる。本明細書に記載の式Iの化合物の固体形態はまた、例えば、カカオ脂または他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤を含有する、坐剤または停留浣腸剤などの直腸または膣組成物に製剤化することができる。
【0119】
上述の製剤に加えて、固体形態はまた、デポ調製物として製剤化することができる。このような長時間作用性製剤は、埋込み(例えば、皮下または筋肉内)によって、または筋肉内注射によって投与することができる。したがって、例えば、固体形態は、適切なポリマーもしくは疎水性材料(例えば、許容できる油中のエマルションとして)またはイオン交換樹脂と共に、またはやや難溶の誘導体として、例えば、やや難溶の塩として製剤化することができる。
【0120】
さらに、本明細書に記載の式Iの化合物の固体形態は、治療剤を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスなどの持続放出系を使用して、送達することができる。様々な持続放出材料が確立されており、当業者に知られている。
【0121】
医薬組成物はまた、適切な固相またはゲル相担体または添加剤を含むことができる。このような担体または添加剤の例には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、糖、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、およびポリエチレングリコールなどのポリマーがある。
【0122】
ある種の実施形態では、本発明は、前記固体形態が形態1である、前述の医薬組成物のいずれかに関する。ある種の実施形態では、本発明は、前記固体形態が形態4である、前述の医薬組成物のいずれかに関する。
【0123】
製造品
本明細書に記載の式Iの化合物の固体形態は、包装材料と、包装材料中にある、TTRフォールディングをモジュレートするために、またはTTR介在性疾患もしくは障害、またはTTRミスフォールディングが関与する疾患もしくは障害の1種または複数種の症状を治療、阻止、または改善するために有効である、本明細書において提供する式Iの化合物の固体形態と、この固体形態が、TTRフォールディングをモジュレートするために、またはTTR介在性疾患もしくは障害、またはTTRミスフォールディングが関与する疾患もしくは障害の1種または複数種の症状を治療、阻止、または改善するために使用されることを示すラベルとを含有する製造品として包装することができる。
【0124】
本発明において提供する製造品は、包装材料を含有する。医薬用製品の包装で使用される包装材料は、当業者に周知である。例えば、米国特許第5,323,907号、同第5,052,558号、および同第5,033,252号を参照されたい。医薬用包装材料の例としては、以下に限定するものではないが、ブリスターパック、瓶、チューブ、吸入器、ポンプ、袋、バイアル、容器、シリンジ、瓶、ならびに選択された製剤および意図した投与と治療の方式に適した任意の包装材料があり、この治療には、TTRミスフォールディングが介在物または誘因物として症状または原因に関与する、任意の疾患または障害のための様々な治療が含まれる。
【0125】
ある種の実施形態では、本発明は、前記固体形態が形態1である、前述の製造品のいずれかに関する。ある種の実施形態では、本発明は、前記固体形態が形態2である、前述の製造品のいずれかに関する。ある種の実施形態では、本発明は、前記固体形態が形態4である、前述の製造品のいずれかに関する。ある種の実施形態では、本発明は、前記固体形態が形態6である、前述の製造品のいずれかに関する。
【0126】
in vitro生物学的試験
いくつかのin vitro試験を使用して、固体形態を、トランスサイレチン四量体を安定化する能力、またはフィブリル形成を阻止する能力に関して評価することができる。これらの試験には、フィブリル形成アッセイ、血漿選択性アッセイ、トランスサイレチン化合物複合体の三次元構造の決定(例えば、X線結晶学による)、トランスサイレチン四量体解離またはフィブリル形成の速度論、ならびに、例えば遠心分離または熱量測定によるトランスサイレチン化合物相互作用の化学量論およびエネルギーの決定が包含され得る。例示的なin vitroアッセイの詳細は、米国特許第7,214,695号(この全体を参照により本明細書に援用する)に提供されている。
【0127】
本発明の固体形態を使用する方法
本明細書に記載の式Iの化合物は、その解離がTTRアミロイドーシスに関与するタンパク質トランスサイレチン(TTR)の安定化に有用であり(すなわち、天然TTR四量体の単量体への解離を阻止し、それによって、TTRアミロイドフィブリル形成が阻害される)、したがって、ヒトを含めた哺乳動物におけるトランスサイレチンアミロイド疾患の治療が提供される。
【0128】
少なくともいくつかのアミロイド疾患は、20種を超える非相同タンパク質またはタンパク質断片のいずれか1種の沈着によって引き起こされるようであり、最終的には原繊維性のクロス-β-シート四次構造が生じる。トランスサイレチンのように正常にフォールディングされたタンパク質からのアミロイドフィブリルの形成は、アセンブリ-コンピテント中間体を生成するタンパク質ミスフォールディングを必要とする。トランスサイレチン(TTR)アミロイド形成のプロセスは、老人性全身性アミロイドーシス(SSA)、家族性アミロイド多発ニューロパチー(FAP)、および家族性アミロイド心筋症(FAC)を引き起こすようである。SSAは野生型TTRの沈着に関連するが、FAPおよびFACは80種超のTTR変異体のうちの1種のアミロイド形成により引き起こされる。例えば、Colon,W.;Kelly,J.W.、Biochemistry、1992、31、8654~60;Kelly,J.W.、Curr.Opin.Struct.Biol.、1996、6、11~7;Liu,K.ら、Nat.Struct.Biol.、2000、7、754~7;Westermark,P.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、1990、87、2843~5;Saraiva,M.J.ら、J.Clin.Invest.、1985、76、2171~7;Jacobson,D.R.ら、N.Engl.J.Med.、1997、336、466~73;Buxbaum,J.N.、Tagoe,C.E.、Ann.Rev.Med.、2000、51、543~569;およびSaraiva,M.J.、Hum.Mutat.、1995、5、191~6を参照されたく、これらは各々、その全体を参照により援用する。別のTTRアミロイド疾患には、肝移植後の心アミロイドーシス、肝移植後の末梢神経アミロイドーシス、軟髄膜アミロイドーシス、トランスサイレチン突然変異体に関連する手根管症候群、硝子体沈着、およびトランスサイレチン突然変異体に関連する皮膚アミロイドーシスが含まれる。
【0129】
式1の化合物の治療有効量を、一般には医薬組成物の形態で投与して、TTR解離のモジュレートまたは調節により介在される疾患を治療することができる。「有効量」とは、そのような治療を必要とする哺乳動物に投与したとき、TTR解離により介在される疾患の治療を実施するのに十分な薬剤の量を意味することを意図している。したがって、化合物1の治療有効量は、TTRの解離をモジュレート、調節、または阻害して、その活性により介在される疾患状態を低減または軽減するのに十分な量である。「治療する」は、ヒトなどの哺乳動物における疾患状態の緩和を少なくとも意味することを意図しており、それには、特にその哺乳動物が疾患状態を有しやすいことが判明しているが、まだ疾患状態を有するとは診断されていないとき、その哺乳動物において疾患状態が生じることを阻止すること;疾患状態をモジュレートおよび/もしくは阻害すること;ならびに/または疾患状態を軽減することが包含される。例示的な疾患状態には、老人性全身性アミロイドーシス(SSA)、家族性アミロイド多発ニューロパチー(FAP)、家族性アミロイド心筋症(FAC)、肝移植後の心アミロイドーシス、肝移植後の末梢神経アミロイドーシス、軟髄膜アミロイドーシス、トランスサイレチン突然変異体に関連する手根管症候群、硝子体沈着、およびトランスサイレチン突然変異体に関連する皮膚アミロイドーシスが含まれる。
【実施例0130】
次の実施例は、本発明の別個の形態、すなわち、形態1および形態4の調製を説明するが、これは、本明細書に定義しているか、または下記で特許請求している本発明の範囲を限定するものではない。
【0131】
(実施例1)
形態1の調製
4-アミノ-3-ヒドロキシ安息香酸(1.0当量、LR)をテトラヒドロフラン(19L/kg)と水(1.9L/Kg)との混合物中に20℃で溶解させた。3,5-ジクロロベンゾイルクロリド(1.3当量)をテトラヒドロフラン溶液(1.9L/kg)として添加し、混合物を20℃で少なくとも30分間撹拌した。HPLCにより反応の完了が判断されたら(4-アミノ-3-ヒドロキシ安息香酸の残りが<5%)、トリエチルアミン(1.2当量)を添加し、混合物を35℃に加熱し、少なくとも90分間撹拌した。THFの残りが5~15%になるまで、一定レベルの蒸留により溶媒をエタノールで部分的に置換した。スラリーを20℃に冷却し、少なくとも60分間撹拌し、次いで、スラリーをろ過した。固体をエタノール(3×4L/kg)で洗浄し、次いで、65℃で少なくとも16時間真空乾燥させて、88~92%の収率で純粋な4-[(3,5-ジクロロベンゾイル)アミノ]-3-ヒドロキシ安息香酸を得た。
【0132】
4-[(3,5-ジクロロベンゾイル)アミノ]-3-ヒドロキシ安息香酸(1.0当量)を含むテトラヒドロフラン(10L/kg)のスラリーに、トリエチルアミン(1.1当量)に続いて水(4当量)を添加した。混合物を20~25℃で1時間保持し、次いで、混合物をろ過して、残存するすべての不溶性材料を除去した。メタンスルホン酸(1.6当量)を添加し、スラリーを形成させた。反応温度が少なくとも107℃になるまで、THF/水をトルエンで一定レベル置換し、107℃で置換を停止し、次いで、反応を少なくとも15時間還流した。UPLCにより反応の完了が判断されたら、すなわち、>95%純度になったら、これを20℃に冷却し、2-プロパノール(5L/kg)を添加した。スラリーを少なくとも60分間粒状化し、次いで、ろ過し、2-プロパノール(各洗浄4L/kg)で2回洗浄し、60~70℃で最低18時間真空乾燥させて、82~89%の収率で形態1を得た。
【0133】
(実施例2)
形態4の調製
形態1(187mg)をテトラヒドロフラン(7.5mL)に懸濁させ、その懸濁物を75℃で加熱した。透明な溶液を、事前に温めた0.2μmナイロンフィルターを通して保温ろ過し、氷/水浴で冷やしたトルエン(25mL)を含む容器中に入れた。試料を冷凍庫(-10~-25℃)内で一晩保存した。形態4を、冷却しながら、真空ろ過により収集した。
【0134】
(実施例3)
形態2の調製
3mg/mLの形態1のTHF溶液を、フード中において周囲条件で蒸発させ、結晶を得た。単結晶分析から以下の結果が示された:
実験式 C14H7NO3Cl2
式量 308.12
温度 周囲
波長 1.54178Å
結晶系 三斜晶系
空間群 P-1
単位格子寸法 a=3.7740(2)Å α=80.668(3)°
b=13.6536(8)Å β=89.381(4)°
c=15.5098(9)Å γ=89.520(3)°
体積 788.56(8)Å3
Z 4
密度(計算値) 1.365Mg/m3
F2の適合度 1.112
最終R指数[I>2シグマ(I)] R1=0.0776、wR2=0.2360
R指数(全データ) R1=0.1026、wR2=0.2561
【0135】
(実施例4)
形態6の調製
形態1(4168mg)をテトラヒドロフラン(100mL)に懸濁させ、60℃で加熱撹拌した。ジメチルアセトアミド(5mL)を添加した。得られた溶液を、事前に温めた0.2μmナイロンフィルターを通して保温ろ過し、氷/水浴で冷やしたジクロロメタンを含む容器中に入れた。観察された固体を真空ろ過で単離し、周囲温度で空気乾燥させた。
【0136】
(実施例5)
非晶質6-カルボキシ-2-(3,5-ジクロロフェニル)-ベンゾオキサゾールの調製
形態1(79.7mg)を5mLのジオキサン/水(80/20)に懸濁させ、約80℃で加熱した。得られた透明な溶液を、事前に温めた0.2μmナイロンフィルターを通して保温ろ過し、事前に温めたレシービングバイアル中に入れた。次いで、試料をドライアイス/IPA浴で凍結させ、凍結乾燥機に移動させて2日間置いた。固体を収集した。
前記粉末X線回折パターンが、29.0±0.2の回折角(2θ)にピークをさらに含む、請求項5に記載の6-カルボキシ-2-(3,5-ジクロロフェニル)-ベンゾオキサゾールの結晶。
6-カルボキシ-2-(3,5-ジクロロフェニル)-ベンゾオキサゾールの結晶であって、(i)26.7±0.2および28.6±0.2の回折角(2θ)にピークを含む粉末X線回折パターン、ならびに(ii)127.7±0.2に13C化学シフト(ppm)を含む固体NMRスペクトルを有する結晶。