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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023013466
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】ポンプ装置
(51)【国際特許分類】
   F04B 43/12 20060101AFI20230119BHJP
【FI】
F04B43/12 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021117675
(22)【出願日】2021-07-16
(71)【出願人】
【識別番号】518042833
【氏名又は名称】株式会社ソラリス
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】梅田 清
(72)【発明者】
【氏名】中村 太郎
(72)【発明者】
【氏名】山田 泰之
(72)【発明者】
【氏名】田上 賢悟
(72)【発明者】
【氏名】横山 和也
(72)【発明者】
【氏名】武藤 沙織
【テーマコード(参考)】
3H077
【Fターム(参考)】
3H077AA01
3H077AA14
3H077CC04
3H077CC08
3H077CC10
3H077CC13
3H077CC17
3H077DD09
3H077EE01
3H077FF07
3H077FF45
(57)【要約】
【課題】搬送物の粘性が高い場合であっても搬送効率の低下を抑制可能なポンプ装置を提供する。
【解決手段】外筒と、外筒の内周面に沿って設けられ、弾性体を素材として構成された内筒と、外筒及び内筒の両端に設けられ、外筒の内周と内筒の外周との間を閉空間として形成する端部部材とを備え、閉空間に作動媒体を供給することにより内筒が求心方向に膨張し、閉空間から作動媒体を排出することにより内筒の弾性による復元力によって収縮可能とされたポンプユニットが複数連結されたポンプ部を備え、前記ポンプユニットを所定の順序で前記膨張をさせることにより内筒の内周側を搬送路として搬送物を搬送するポンプ装置であって、前記ポンプ部を構成する全てまたは一部のポンプユニットが前記内筒の弾性による収縮に加え、内筒を強制的に収縮させる強制収縮手段を備えた。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外筒と、
前記外筒の内周面に沿って設けられ、弾性体を素材として構成された内筒と、
外筒及び内筒の両端に設けられ、外筒の内周と内筒の外周との間を閉空間として形成する端部部材とを備え、閉空間に作動媒体を供給することにより内筒が求心方向に膨張し、閉空間から作動媒体を排出することにより内筒の弾性による復元力によって収縮可能とされたポンプユニットが複数連結されたポンプ部を備え、
前記ポンプユニットを所定の順序で前記膨張をさせることにより内筒の内周側を搬送路として搬送物を搬送するポンプ装置であって、
前記ポンプ部を構成する全てまたは一部のポンプユニットが、前記内筒の弾性による収縮に加え、内筒を強制的に収縮させる強制収縮手段を備えたことを特徴とするポンプ装置。
【請求項2】
前記強制収縮手段により強制的に収縮されるポンプユニットは、外筒の弾性率が内筒の弾性率よりも大きい素材で構成されたことを特徴とする請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項3】
前記強制収縮手段は、ポンプユニットの内筒がその弾性により収縮したときの内筒内周側の容積よりも、前記容積を拡大させることを特徴とする請求項2に記載のポンプ装置。
【請求項4】
前記強制収縮手段は、前記閉空間から作動媒体を強制的に排出可能に構成されたことを特徴とする請求項1乃至請求項3いずれかに記載のポンプ装置。
【請求項5】
前記強制収縮手段は、ポンプユニットの内筒を機械的に収縮させることを特徴とする請求項1乃至請求項3いずれかに記載のポンプ装置。
【請求項6】
前記強制収縮手段は、少なくとも最も上流側に位置するポンプユニットの内筒を強制的に収縮させることを特徴とする請求項1乃至請求項5に記載のポンプ装置。
【請求項7】
前記ポンプ部を構成する一部のポンプユニットは、外筒が軸方向への伸長が拘束された弾性体からなることを特徴とする請求項1乃至請求項6に記載のポンプ装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ポンプ装置に関し、特に、外筒及び内筒を備え、該外筒と内筒との間に加圧用媒体を供給して内筒を求心方向に膨張させて液体、スラリー等の流体や固体、又は固液混合物を搬送するためのポンプ装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポンプの一つの形態として、特許文献1に示すような蠕動運動を利用して搬送物を移送するものが知られている。特許文献1に開示されるポンプは、外筒と内筒の間に加圧用媒体を供給することで内筒を膨張させ、排出することで内筒を収縮させるポンプユニットを複数連結し、連結されたポンプユニットの内筒を順次膨張・収縮させることで、連結されたポンプユニットの内周側によって搬送物を搬送可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平05-321842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなポンプでは、特許文献1に記載されるように、ポンプユニットが収縮するときに、内筒の内周側に生じる負圧によって搬送物を引き込むことで液体、スラリー等の粘性流体や粉体、又は固液混合物等、搬送物の物性に関わらず搬送を可能としている。
しかし、搬送物の特性において粘性が高い場合に、搬送物を内筒内に十分引き込むことができず、全体の流量が低下するという問題がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するため、搬送物の粘性が高い場合であっても流量の低下を抑制可能なポンプ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためのポンプ装置の構成として、外筒と、外筒の内周面に沿って設けられ、弾性体を素材として構成された内筒と、外筒及び内筒の両端に設けられ、外筒の内周と内筒の外周との間を閉空間として形成する端部部材とを備え、閉空間に作動媒体を供給することにより内筒が求心方向に膨張し、閉空間から作動媒体を排出することにより内筒の弾性による復元力によって収縮可能とされたポンプユニットが複数連結されたポンプ部を備え、ポンプユニットを所定の順序で前記膨張をさせることにより内筒の内周側を搬送路として搬送物を搬送するポンプ装置であって、ポンプ部を構成する全てまたは一部のポンプユニットが、内筒の弾性による収縮に加え、内筒を強制的に収縮させる強制収縮手段を備えた構成とした。
本構成によれば、強制収縮手段が、内筒を強制的に収縮させることにより、短時間に大きな負圧を搬送物に作用させることができる。その結果、搬送物が粘性が大きいものであっても、収縮したポンプユニット内に搬送物を取り込むことが可能となり、搬送物の流量の低下(搬送効率の低下)を抑制することができる。
また、強制収縮手段により強制的に収縮されるポンプユニットは、外筒の弾性率が内筒の弾性率よりも大きい素材で構成することにより、内筒の内周側に大きな負圧を確実に生じさせることができる。
また、強制収縮手段は、ポンプユニットの内筒がその弾性により収縮したときの内筒内周側の容積よりも、前記容積を拡大させる構成とすることにより、内筒の内周側により大きな負圧を確実に生じさせることができる。
強制収縮手段は、閉空間から作動媒体を強制的に排出する構成としたり、ポンプユニットの内筒を機械的に収縮させるように構成とすれば良い。
また、強制収縮手段は、少なくとも最も上流側に位置するポンプユニットの内筒を強制的に収縮させることにより、搬送物の粘性が大きい場合であってもポンプ内に搬送物を多く取り込むことができ、搬送物の流量の低下を抑制することができる。
また、ポンプ部を構成する一部のポンプユニットは、外筒が軸方向への伸長が拘束された弾性体からなることにより、膨張時に軸方向に収縮するため押し出す力が大きくなり、このポンプユニット内に残留する搬送物を少なくすることができ、流量の低下の防止に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】ポンプ装置の概略構成図である。
図2】ポンプユニットの構成を示す断面図である。
図3】他のポンプユニットの構成を示す断面図である。
図4】他のポンプユニットの外筒の半径方向の断面図である。
図5】ポンプ部の動作図である。
図6】第2ポンプユニットの他の実施形態を示す図である。
【0008】
以下、発明の実施形態を通じて本発明を詳説するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明される特徴の組み合わせのすべてが発明の解決手段に必須であるとは限らず、選択的に採用される構成を含むものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[蠕動運動型ポンプ全体の概略構成]
図1は、ポンプ装置1の概略構成図である。図1に示すように、本実施形態に係るポンプ装置1は、2種類のポンプユニット10;210と、搬送制御装置100とを備える。ポンプユニット10;210は、複数連結することで搬送路兼ポンプを構成する。本実施形態では、ポンプユニット10を搬送方向の最も上流側に1つ配置し、この下流側に3つのポンプユニット210を直列に連結してポンプ部8を構成するものとして説明するが、ポンプユニット10;210の連結形態はこれに限定されない。ポンプ部8は、例えば、搬送物が貯留される貯留装置の出口や、既設の配管の途中等に設けられる。
【0010】
[ポンプユニット10について]
図2は、ポンプユニット10の軸方向断面図及び径方向断面図である。
図2に示すように、ポンプユニット10は、内筒12と、内筒12の中心軸と同軸の二重管を形成するように配置される外筒14と、内筒12の外周と外筒14の内周との間に形成される空間を閉塞する一対の端部部材16;16とを備える。
【0011】
ポンプユニット10は、端部部材16;16により閉塞され、内筒12の外周と外筒14の内周との間に形成された空間に作動媒体である流体を供給することで内筒12を該内筒12の求心(軸)方向に膨張するように構成される。
【0012】
[内筒について]
内筒12は、弾性を有する円筒体として構成される。内筒12を構成する素材には、例えば、天然ラテックスゴムやシリコーンゴム等のゴムやエラストマー等の弾性素材を利用できる。
【0013】
図2に示すように、内筒12は、円筒状の筒部12Aと、該筒部12Aの両端にフランジ部12Bを備える。フランジ部12Bは、筒部12Aと一体的に形成され、筒部12Aの端部において半径方向外側に向けて同心円状に広がる中空円板状に形成されている。このフランジ部12Bは、先端(外周部)に、筒部12A側(軸方向内向き)に突出する突起部13が全周にわたり形成されている。
【0014】
[外筒について]
外筒14は、剛性を有する円筒体として構成される。外筒14を構成する素材には、例えば、金属や樹脂等の素材が利用できる。なお、剛性を有するとは、ポンプユニット10の動作時に、実質的に軸方向や半径方向等に変形しないことをいう。即ち、外筒14は、弾性率が内筒12の弾性率よりも大きい素材で構成されている。
【0015】
図2に示すように、外筒14は、円筒状の筒部14Aの両端にフランジ部14Bを備える。フランジ部14Bは、筒部14Aと一体的に形成され、筒部14Aの端部において半径方向外側に向けて同心円状に広がる中空円板状に形成されている。
【0016】
[端部部材について]
端部部材16;16は、内筒12及び外筒14の両端に配置される。端部部材16;16は、内筒12及び外筒14の両端に固定可能とされるとともに、ポンプユニット10或いはポンプユニット210との連結を可能に構成される。
【0017】
端部部材16;16は、フランジ部16Aと、筒部16Bとを備える。フランジ部16Aは、中空部20を有する平板矩形状に形成される。中空部20は、内筒12の筒部12Aが貫通可能な円孔として設けられる。中空部20の直径は、例えば、内筒12の筒部12Aの外周面に密着するような寸法とすると良い。
【0018】
フランジ部16Aは、軸方向外側の端面16aに、環状に窪む環状溝22を備える。環状溝22は、中空部20と同心円状に形成され、内筒12のフランジ部12Bの先端の突起部13が嵌合可能とされる。また、フランジ部16Aの外側の端面16aは、環状溝22に内筒12の突起部13が嵌合された状態において、内筒12のフランジ部12Bが、該外側の端面16aよりも外側に突出するように形成されている。
【0019】
内筒12は、端部部材16の環状溝22に、フランジ部12Bの突起部13が嵌め合わされることで端部部材16;16に取り付けられる。内筒12は、端部部材16;16を介して他のポンプユニット10の端部部材と連結されたり、既存の配管に設けられたフランジと連結されることで、フランジ部12Bが端部部材16に押し付けられて端部部材16との気密が構成される。
【0020】
筒部16Bは、フランジ部16Aの内側の端面16bから軸方向に円筒状に突出して設けられる。筒部16Bは、中心軸が中空部20と同心とされ、フランジ部16Aと一体的に形成されている。筒部16Bは、外径が外筒14の内周側に摺接して挿入可能な大きさ、内径が中空部20の内径よりも大きな寸法で形成される。
【0021】
外筒14は、端部部材16の筒部16Bが挿入された状態で、フランジ部14Bを端部部材16のフランジ部16Aの内側の端面16bに、図外のボルト等の固定手段により固定される。外筒14は、例えば、外筒14のフランジ部14Bと、端部部材16のフランジ部16Aとの間にパッキンなどを介在させることで、端部部材16との気密性を構成することができる。
【0022】
上述のように、内筒12及び外筒14の両端が端部部材16;16に取り付けられることにより、内筒12の外周及び外筒14の内周の間に形成された空間を閉空間とし、ポンプユニット10における流体室V1が形成される。
【0023】
一方の端部部材16は、流体室V1に流体を供給・排出するための給排孔28を備える。給排孔28は、一端が端部部材16のフランジ部16Aの外周の端面に開口し、他端がフランジ部16Aの内側の端面16bの内筒12及び外筒14の間に開口する。
【0024】
給排孔28を構成するフランジ部16Aの外周の端面の開口には、搬送制御装置100から延長し、流体室V1への流体の供給、流体室V1から流体を排出するための図外の管が接続可能とされる。
【0025】
なお、給排孔28は、一方の端部部材16に限定されず、他方の端部部材16に設け、両方の端部部材16;16から流体室V1に流体を供給・排出するようにしても良い。また、給排孔28は、端部部材16に設けることに限定されず、外筒14に設けて流体室V1に流体を供給・排出するようにしても良く、適宜ポンプユニット10の構成に応じて変更すれば良い。
【0026】
上記構成によれば、ポンプユニット10は、給排孔28を介して流体室V1に圧縮空気を供給することにより、図2(b)に示すように内筒12が求心方向に膨張し、流体室V1に供給された圧縮空気を排出することにより、図2(a)に示すように収縮し、流体室V1から圧縮空気を排出して収縮した状態からさらに空気を排出することにより、図2(c)に示すように求心方向と逆向きに膨張することが可能に構成される。
【0027】
[ポンプユニット210について]
図3は、ポンプユニット210の軸方向断面図及び径方向断面図である。
図3に示すように、ポンプユニット210は、内筒212と、内筒212の中心軸と同軸の二重管を形成するように配置される外筒214と、内筒212の外周と外筒214の内周との間に形成される空間を閉塞する一対の端部部材216;216とを備える。
【0028】
ポンプユニット210は、端部部材216;216により閉塞され、内筒212の外周と外筒214の内周との間に形成された空間に流体を供給することで内筒212を該内筒212の軸方向に膨張するように構成される。
【0029】
[内筒について]
内筒212は、弾性を有する円筒体として構成される。内筒212を構成する素材には、例えば、天然ラテックスゴムやシリコーンゴム等のゴムやエラストマー等の弾性素材を利用できる。
【0030】
図3に示すように、内筒212は、円筒状の筒部212Aの両端にフランジ部212Bを備える。フランジ部212Bは、筒部212Aと一体的に形成され、筒部212Aの端部において半径方向外側に向けて同心円状に広がる中空円板状に形成されている。このフランジ部212Bは、先端(外周部)に、筒部212A側(軸方向内向き)に突出する突起部213が全周にわたり形成されている。
【0031】
[外筒について]
図4は、図3のA-A矢視における半径方向断面図である。
外筒214は、気密性を維持しつつ軸方向への伸縮を弾性体よりなる筒体として構成される。外筒214は、例えば、弾性素材と繊維素材とを含んで構成される。
図4に示すように、外筒214は、例えば、半径方向の断面視において弾性素材215Aと、弾性素材215Aに内包される複数の繊維215Bとを備える。
【0032】
弾性素材215Aは、例えば、天然ラテックスゴムやシリコーンゴム等のゴムやエラストマー等の弾性素材を利用できる。
【0033】
繊維215Bは、外筒214の軸線方向への伸長を拘束するために設けられ、外筒214の軸方向への伸長を拘束する拘束手段として機能する。
【0034】
繊維215Bは、例えば、層状に設けられ、外筒214の一端側から他端側まで連続して延長する長さを有し、外筒214の軸方向に沿って延長するように配設される。
なお、繊維215Bは、外筒214において必ずしも層状に含まれる必要はなく、弾性素材内に分散して埋設されていても良い。
【0035】
繊維215Bの素材には、軸方向への伸縮変化の小さい、高弾性繊維が好適である。例えば、アラミド繊維、炭素(カーボン)繊維、ガラス繊維、ナイロン、ポリアミド系繊維やポリオレフィン系繊維、金属繊維等の被伸長性を有するものを適宜選択して用いることができる。繊維には、適当なプライマー処理、又は、表面酸化処理を行うことで、接着性を十分に向上させることができるが、好ましくは、弾性素材との接着性に応じて選択すると良い。
【0036】
繊維素材の形態としては、フィラメント、ヤーン(スパン・ヤーン及びフィラメント・ヤーン)、ストランド等のいずれの形態でも用いることができ、さらに、撚りをかけずに収束させた無撚繊維、これらの繊維を複数本撚って作成した繊維を用いることも可能である。繊維の種類にもよるが、二種類以上の素材の異なる繊維や形態の異なる繊維を組み合わせても良い。
【0037】
なお、繊維215Bの長さは、一端側から他端側まで連続する長さに限定されず、外筒214の軸方向長さよりも短い複数の繊維を軸方向に沿って連続的に分布させて一端側から他端側まで到達するように構成しても良い。
【0038】
また、外筒214における拘束手段は、繊維215Bに代えて、弾性素材そのもので構成しても良い。例えば、外筒214の軸方向に延長するリブを外筒214を構成する弾性素材で一体的に形成し、拘束手段としても良い。
【0039】
また、ポンプユニット210は、内筒212の求心方向への膨張のしやすさを考慮して、外筒214の弾性率が内筒212の弾性率よりも大きくなるように構成されることが好ましい。
【0040】
[端部部材について]
端部部材216;216は、内筒212及び外筒214の両端に配置される。端部部材216;216は、内筒212及び外筒214の両端に固定可能とされるとともに、ポンプユニット10或いはポンプユニット210との連結を可能に構成される。
【0041】
端部部材216;216は、フランジ部216Aと、筒部216Bとを備える。フランジ部216Aは、中空部220を有する平板矩形状に形成される。中空部220は、内筒212の筒部212Aが貫通可能な円孔として設けられる。中空部220の直径は、例えば、内筒212の筒部212Aの外周面に密着するような寸法とすると良い。
【0042】
フランジ部216Aは、軸方向外側の端面216aに、環状に窪む環状溝222を備える。環状溝222は、中空部220と同心円状に形成され、内筒212のフランジ部212Bの先端の突起部213が嵌合可能とされる。また、フランジ部216Aの外側の端面216aは、環状溝22に内筒12の突起部13が嵌合された状態において、内筒212のフランジ部212Bが、該外側の端面16aよりも外側に突出するように形成されている。
【0043】
内筒212は、端部部材216の環状溝222に、フランジ部212Bの突起部213が嵌め合わされることで端部部材216;216に取り付けられる。内筒212は、端部部材216;216を介して他のポンプユニット10;210の端部部材や、既存の配管に設けられたフランジと連結されることで、フランジ部212Bが端部部材216に押し付けられて端部部材216との気密が構成される。
【0044】
筒部216Bは、フランジ部216Aの内側の端面216bから軸方向に円筒状に突出して設けられる。筒部216Bは、中心軸が中空部220と同心とされ、フランジ部216Aと一体的に形成されている。筒部216Bは、外径が外筒214の内周側に密着状態で挿入可能な大きさを有するように設定され、内径が中空部220の内径よりも大きな寸法を有するように設定されている。
【0045】
カシメ中間部材224は、カシメ部材226と共に外筒214を端部部材216;216に気密状態で固定するための固定手段を構成する。カシメ中間部材224は、端部部材216の筒部216Bを外筒214に挿入した状態において外筒214の外周に挿入可能な環状部材として形成される。
【0046】
カシメ中間部材224は、内周側が円筒面として形成され、外筒214の外周に対して例えば、締り嵌めとなるように内径が設定される。また、カシメ中間部材224は、外周側が円錐面(テーパー面)として形成され、内周面に対して漸次肉厚となるように形成される。カシメ中間部材224は、厚肉側を端部部材216に押し付けるようにして外筒214の外周に配置される。
【0047】
カシメ部材226は、外筒214に配置されたカシメ中間部材224の外周に嵌合可能なな環状部材として形成される。カシメ部材226は、内周側が円錐面(テーパー面)として形成され、カシメ中間部材224の円錐面に対して面接触するように構成される。
【0048】
カシメ部材226は、内周側の円錐面をカシメ中間部材224の円錐面に接触させて、図外のボルト等の固定手段で端部部材216の内側の端面216bに固定される。これにより、カシメ中間部材224が外筒214に押し付けられ、端部部材216の筒部216Bに外筒214が気密状態で固定される。
【0049】
上述のように、端部部材216;216が、内筒212及び外筒214の端部に取り付けられることにより、内筒212の外周及び外筒14の内周の間に形成された空間を閉空間とし、ポンプユニット210における流体室V2を形成する。
【0050】
一方の端部部材216は、流体室V2に流体を供給・排出するための給排孔228を備える。給排孔228は、一端が端部部材216のフランジ部216Aの外周の端面に開口し、他端がフランジ部216Aの内側の端面216bの内筒212及び外筒214の間に開口する。
【0051】
給排孔228を構成するフランジ部216Aの外周の端面の開口には、搬送制御装置100から延長し、流体室V2への流体の供給、流体室V2から流体を排出するための図外の管が接続可能とされる。
【0052】
なお、給排孔228は、一方の端部部材216に限定されず、他方の端部部材216に設け、両方の端部部材216;216から流体室V2に流体を供給・排出するようにしても良い。また、給排孔228は、端部部材216に設けることに限定されず、外筒214に設けて流体室V2に流体を供給・排出するようにしても良く、適宜ポンプユニット210の構成に応じて変更すれば良い。
【0053】
上記構成によれば、ポンプユニット210は、給排孔228を介して流体室V2に圧縮空気を供給することにより、図3(b)に示すように内筒212が半径方向内向き(求心方向)に膨張するとともに軸方向に収縮し、流体室V2に供給された圧縮空気を排出することにより、図3(a)に示すように半径方向に収縮するとともに軸方向に伸長する。
【0054】
[搬送制御装置について]
搬送制御装置100は、連結されたポンプユニット10及びポンプユニット210による搬送物の搬送動作を制御するための装置である。搬送制御装置100は、例えば、図1に示すように、流体系制御部110と、電気系制御部160とで構成することができる。なお、図1において破線は電気的な信号の経路を示す信号線、実線は流体の流路を示す管をそれぞれ示している。
【0055】
[流体系制御部]
[正圧系]
流体系制御部110は、ポンプユニット10;210への流体の供給、停止、排出を制御する。本実施形態では、流体に空気を利用するものとして説明するが、流体は空気に限定されず、他の気体や水などの液体を利用しても良い。
なお、流体系制御部110は、利用する流体に応じて、以下で説明する機能が得られるように適宜変更すれば良い。
【0056】
流体系制御部110は、例えば、コンプレッサー112、レギュレータ114、供給弁116、排出弁118、流量センサ120、圧力センサ122、減圧手段124、吸引用弁126等を備える。
【0057】
コンプレッサー112は、ポンプユニット10の流体室V1、ポンプユニット210の流体室V2に供給する空気を圧縮空気として生成する。
【0058】
レギュレータ114は、コンプレッサー112と接続され、コンプレッサー112により加圧された圧縮空気を入力とし、入力された圧縮空気を所定の圧力に減圧して一定圧の圧縮空気を出力する。レギュレータ114から出力される圧縮空気の圧力は、少なくともポンプユニット10;210を膨張させたときにポンプユニット10の内筒12、ポンプユニット210の内筒212の内周面が互いに密接可能な圧力、或いはそれよりも大きく設定される。
【0059】
供給弁116は、連結されたポンプユニット10;210毎に設けられ、レギュレータ114と、各ポンプユニット10;210とが接続される。供給弁116は、レギュレータ114により減圧された圧縮空気を入力とし、この圧縮空気をポンプユニット10;210の流体室V1;V2への出力(流体室V1;V2への圧縮空気の供給及び供給の停止)を制御する。供給弁116は、電気的な信号に基づいて開閉する弁を有し、弁を開くことで圧縮空気を流体室V1或いは流体室V2に供給し、弁を閉じることで圧縮空気の供給を停止する。供給弁116は、電気系制御部160と電気的に接続され、電気系制御部160から入力される信号に基づいて弁を開閉する。
【0060】
排出弁118は、ポンプユニット210毎に設けられ、それぞれポンプユニット210と接続される。排出弁118は、流体室V2における圧縮空気を入力とし、この圧縮空気が大気中に排出されるように出力側が大気開放されている。排出弁118は、電気的な信号に基づいて開閉する弁を有し、弁を開くことで流体室V2を大気開放することによって流体室V2内の圧縮空気を大気中に排出し、弁を閉じることで圧縮空気の排出を停止する。排出弁118は、電気系制御部160と電気的に接続され、電気系制御部160から入力される信号に基づいて弁を開閉する。
【0061】
流量センサ120は、ポンプユニット10;210毎に設けられた供給弁116と対応するポンプユニット10;210との間に設けられ、ポンプユニット10;210に供給された圧縮空気の流量を計測する。流量センサ120は、電気系制御部160と電気的に接続され、計測した圧縮空気の流量を電気系制御部160に出力する。
なお、流量センサ120が設けられる位置は、流体室V1や流体室V2に供給される圧縮空気の流量を計測できるのであればいずれであっても良い。
【0062】
圧力センサ122は、ポンプユニット10;210毎に設けられた、流量センサ120と対応するポンプユニット10;210との間に設けられ、ポンプユニット10の流体室V1内やポンプユニット210の流体室V2内の圧力を計測する。圧力センサ122は、電気系制御部160と電気的に接続され、計測した流体室V1内の圧力や流体室V2内の圧力を電気系制御部160に出力する。
なお、圧力センサ122の設けられる位置は、流体室V1や流体室V2内の圧力を計測できるのであればいずれの位置であっても良い。
【0063】
[負圧系]
減圧手段124は、ポンプユニット10の流体室V1から空気を強制的に排出(吸引)するための装置である。減圧手段124は、例えば、流体室V1内の空気を吸引し、流体室V1の気圧を大気圧よりも低下可能に構成される。減圧手段124には、例えば、真空ポンプ、或いは、コンプレッサー112の圧縮空気によるベンチュリー効果を利用して負圧を発生させる装置等の減圧装置を用いることができる。
【0064】
吸引用弁126は、減圧手段124とポンプユニット10との間に設けられ、減圧手段124と流体室V1との連通状態を制御する。吸引用弁126は、電気的な信号に基づいて開閉する弁を有し、弁を開くことで圧縮空気を流体室V1に供給し、弁を閉じることで圧縮空気の供給を停止する。吸引用弁126は、電気系制御部160と電気的に接続され、電気系制御部160から入力される信号に基づいて弁を開閉する。
【0065】
なお、吸引用弁126を介して減圧手段124がポンプユニット10と供給弁116とを接続する管の途中に割り込むものとしたがこれに限定されない。ポンプユニット10に対して減圧手段124による減圧の作用が、吸引用弁126により制御可能に構成されていれば良い。
【0066】
また、供給弁116、排出弁118及び吸引用弁126は、初期状態として信号が入力されない状態において弁を閉じた状態とし、信号が入力されることで弁を開き、信号が停止されることで弁を閉じるものとして説明する。
【0067】
供給弁116、排出弁118及び吸引用弁126には、例えば、ソレノイドバルブを適用することができる。供給弁116、排出弁118及び吸引用弁126は、ソレノイドバルブを用いることにより、ポンプユニット10;210を膨張或いは収縮させるときの応答速度を向上させることができる。
【0068】
電気系制御部160は、ポンプユニット10;210を動作させるための制御装置である。例えば、電気系制御部160は、演算処理手段としてのCPUや記憶手段としてのROM,RAM等のハードウェアを備えたコンピュータである。
【0069】
記憶手段には、ポンプユニット10を動作させるためのプログラムや、供給弁116、排出弁118及び吸引用弁126への信号の出力・停止を判定するための判定値等が記憶される。
【0070】
電気系制御部160は、演算処理手段が記憶手段に記憶されたプログラムに従って処理を実行し、ポンプユニット10毎に設けられた流量センサ120から入力される流量、及び圧力センサ122から入力される圧力に基づいて、ポンプユニット10毎に設けられた供給弁116、排出弁118および吸引用弁126に弁を開閉するための信号を出力する。
なお、電気系制御部160は、コンピュータに限定されず、PLC(Programmable Logic Controller)を利用することもできる。
【0071】
[ポンプユニット10の膨縮制御]
電気系制御部160は、ポンプユニット10を膨張させる場合、対応する供給弁116にのみ信号を出力し、吸引用弁126には信号の出力の停止状態を維持する。これにより、ポンプユニット10は、流体室V1内に圧縮空気が流入し、内筒12が求心方向に膨張する。
【0072】
電気系制御部160は、流体室V1への圧縮空気の供給過程において、流量センサ120から入力される流量の変化と、圧力センサ122から入力される圧力の変化とを監視する。そして、電気系制御部160は、入力された流量と圧力とが膨張状態に達したとされる判定値となったときに、供給弁116への信号の出力を停止する。
これにより、ポンプユニット10の内筒12は、図2(b)に示すような膨張状態となり、その状態が維持される。以下、この膨張状態を完全膨張状態、若しくは単に完全膨張という場合がある。
なお、完全膨張とは、搬送物の搬送動作において最も膨張したときを言い、例えば、搬送路を閉塞可能に膨張した状態を意味するものとする。
【0073】
[ポンプユニット10の収縮制御]
また、電気系制御部160は、ポンプユニット10が完全膨張した状態から収縮させる場合、吸引用弁126にのみ信号を出力し、対応する供給弁116への信号の出力の停止状態を維持する。
これにより、ポンプユニット10の流体室V1内の圧縮空気は、減圧手段124により吸引され、強制的に排出される。
【0074】
電気系制御部160は、流体室V1からの圧縮空気の排出過程において、流体室V1の圧力の変化を監視する。そして、電気系制御部160は、入力された圧力がポンプユニット10の過収縮状態に達したとされる判定値となったときに、吸引用弁126への信号の出力を停止する。
【0075】
過収縮状態(単に過収縮という場合がある)とは、図2(a)に示すように流体室V1の圧縮空気を給排孔28から大気中に自然に放出して、内筒12の弾性による復元力により自然に収縮させたとき(以下、この状態を自然収縮状態という)よりも、図2(c)に示すように求心方向逆向き(半径方向外向き)に膨張した状態となることを言う。本実施形態では、例えば、内筒12の内周側の圧力が大気圧状態にあるときには、過収縮時の流体室V1の圧力は、大気圧よりも低い状態とされる。
【0076】
即ち、減圧手段124は、電気系制御部160が供給弁116及び吸引用弁126を制御することでポンプユニット10の流体室V1に負圧を印加し、流体室V1の圧縮空気を強制的に排出することによってポンプユニット10の内筒12を強制的に収縮させる強制収縮手段として機能する。
【0077】
[ポンプユニット210の膨張制御]
電気系制御部160は、ポンプユニット210を膨張させる場合、供給弁116にのみ信号を出力し、排出弁118には信号の出力の停止状態を維持する。これにより、ポンプユニット210は、流体室V2内に圧縮空気が流入し、内筒212が求心方向に膨張する。
【0078】
電気系制御部160は、流体室V2への圧縮空気の供給過程において、流量センサ120から入力される流量の変化と、圧力センサ122から入力される圧力の変化とを監視する。そして、電気系制御部160は、入力された流量と圧力とがポンプユニット210の完全膨張に達したとされる判定値となったときに、供給弁116への信号の出力を停止する。これにより、ポンプユニット210の内筒212は、図3(b)に示すような膨張状態となる。以下、この膨張状態を完全膨張状態、若しくは単に完全膨張という場合がある。
なお、完全膨張とは、搬送物の搬送動作において最も膨張したときを言い、例えば、搬送路を閉塞可能に膨張した状態を意味するものとする。
【0079】
[ポンプユニット210の収縮制御]
また、電気系制御部160は、ポンプユニット210が完全膨張した状態から収縮させる場合、供給弁116には信号の出力の停止状態を維持し、排出弁118にのみ信号を出力する。これにより、ポンプユニット210の内筒212は、流体室V2内の圧縮空気が排出弁118を介して大気に放出され、収縮が開始される。図3(a)に示すように収縮する。
【0080】
電気系制御部160は、流体室V2からの圧縮空気の排出過程において、流体室V2の圧力の変化を監視する。そして、電気系制御部160は、入力された圧力がポンプユニット210の収縮状態に達したとされる判定値となったときに、排出弁118への信号の出力を停止する。これにより、ポンプユニット210は、図3(a)に示すように収縮する。以下、この収縮状態を自然収縮状態、若しくは単に自然収縮ともいう場合がある。
【0081】
[ポンプ装置の動作]
ポンプ装置1は、例えば、次のように動作させることができる。なお、以下の説明では、図1に示すように、図中矢印示す搬送方向に搬送物を搬送するものとして説明する。また、図1中においてポンプユニット10;210や供給弁116、排出弁118、流量センサ120、圧力センサ122、吸引用弁126等に付された()付けのA,B,C,Dは、各ポンプユニット10;210の動作に付随する弁等を特定するための符号である。
【0082】
図5図6は、本実施形態に係るポンプ部8の搬送動作を示す図である。
動作例1では、図5(a)に示すように、全てのポンプユニット10A;210B~210Dが膨張した状態を初期状態として動作を開始するものとして説明する。
【0083】
[ステップ1]
まず、電気系制御部160は、ポンプユニット10(A);210(B)~210(D)を完全膨張させるために、供給弁116(A)~116(D)にのみ信号を出力し、吸引用弁126(A)、排出弁118(B)~118(D)への信号の出力を停止状態とする。これにより、ポンプユニット10(A);210(B)~210(D)の流体室Vには、圧縮空気が供給され、各ポンプユニット10(A);210(B)~210(D)の内筒12;212が求心方向に膨張を開始する。
【0084】
そして、電気系制御部160は、流量センサ120(A)~120(D)から入力される流量と圧力センサ122(A)~122(D)から入力される圧力とが、それぞれポンプユニット10が完全膨張したとされる判定値、及びポンプユニット210が完全膨張したとされる判定値に達すると、供給弁116(A)~116(D)への信号の出力を停止する。このとき電気系制御部160は、吸引用弁126(A)、排出弁118(B)~118(D)への信号の出力の停止状態が維持されている。
【0085】
これにより、図5(a)に示すように、ポンプ部8を構成する全てのポンプユニット10(A);210(B)~210(D)の内筒12;212が求心方向に完全膨張し、連結された内筒12;212により形成される搬送路が閉鎖状態とされる。
なお、このとき搬送物は、ポンプ部8において最も上流側に位置するポンプユニット10Aまで達しているものとする。
【0086】
[ステップ2]
次に、電気系制御部160は、吸引用弁126(A)にのみ信号を出力し、供給弁116A~116(D)、排出弁118(B)~118(D)への信号の出力の停止状態を維持する。
これにより、ポンプユニット210B~210(D)の内筒212が完全膨張したまま、ポンプユニット10(A)の流体室V1から圧縮空気が減圧手段124により強制的に排出され、ポンプユニット10(A)の内筒12が急速に収縮を開始する。
【0087】
そして、電気系制御部160は、圧力センサ122(A)から入力された圧力がポンプユニット10の過収縮状態とされる判定値に達したことを検知すると、吸引用弁126Aへの信号の出力を停止する。このとき、供給弁116(A)~116(D)、排出弁118(B)~118(D)への信号の出力の停止状態が維持されている。
これによりポンプユニット10(A)は、図5(b)に示すように過収縮状態となる。そして、ポンプユニット10(A)が急速に収縮するとともに過収縮状態とされることにより、大きな負圧が得られ、ポンプ部8に達していた搬送物がこの大きな負圧によってポンプユニット10(A)内へと引き込むことができる。
【0088】
[ステップ3]
次に、電気系制御部160は、排出弁118(B)にのみ信号を出力し、供給弁116(A)~116(D)、吸引用弁126(A)及び排出弁118(C);118(D)への信号の出力を停止状態とする。
これにより、ポンプユニット10(A)が過収縮、ポンプユニット210(C);210(D)が完全膨張を維持したまま、ポンプユニット210(B)の収縮が開始される。
【0089】
そして、電気系制御部160は、圧力センサ122(B)から入力された圧力がポンプユニット210の自然収縮状態とされる判定値に達したことを検知すると、排出弁118(B)への信号の出力を停止する。このとき供給弁116(A)~116(D)、吸引用弁126(A)及び118C;118(D)への信号の出力は停止状態が維持されている。
これにより、ポンプユニット210(B)は、図5(c)に示すように自然収縮状態となる。そして、ポンプユニット210(B)の収縮による負圧によって、ポンプユニット10(A)内に引き込まれていた搬送物が、ポンプユニット210(B)内へと引き込まれる。
【0090】
[ステップ4]
次に、電気系制御部160は、排出弁118(C)にのみ信号を出力し、供給弁116(A)~116D、吸引用弁126(A)及び排出弁118(B);118(D)への信号の出力を停止状態とする。
これにより、ポンプユニット10(A)が過収縮、ポンプユニット210(B)が自然収縮、ポンプユニット210(D)が完全膨張の状態を維持したまま、ポンプユニット210(C)の収縮が開始される。
【0091】
そして、電気系制御部160は、圧力センサ122(C)から入力された圧力がポンプユニット210の自然収縮状態とされる判定値に達したことを検知すると、排出弁118(C)への信号の出力を停止する。このとき供給弁116(A)~116(D)、吸引用弁126(A)及び排出弁118(B);118(D)への信号の出力は停止状態が維持されている。
これにより、ポンプユニット210(C)は、図5(d)に示すように自然収縮状態となる。そして、ポンプユニット210(C)の収縮による負圧によって、ポンプユニット210(B)内に引き込まれていた搬送物がポンプユニット210(C)内へと引き込まれる。
【0092】
[ステップ5]
次に、電気系制御部160は、供給弁(A)及び排出弁118(D)に信号を出力し、供給弁116(B)~116(D)、吸引用弁126(A)及び排出弁118(B);118(C)への信号の出力を停止状態とする。
これにより、ポンプユニット210(B);210(C)が自然収縮の状態を維持したまま、ポンプユニット10(A)の膨張、ポンプユニット210(C)の収縮が開始される。
【0093】
そして、電気系制御部160は、圧力センサ122(A)から入力された圧力がポンプユニット10の完全膨張状態とされる判定値、圧力センサ122(D)から入力された圧力がポンプユニット210の自然収縮状態とされる判定値に達したことを検知すると、供給弁(A)、排出弁118(D)への信号の出力を停止する。このとき供給弁116(B)~116(D)、吸引用弁126(A)及び排出弁118(B);118(C)への信号の出力は停止状態が維持されている。
これにより、図5(d)に示すように、ポンプユニット10(A)が完全膨張、ポンプユニット210(D)が自然収縮状態となる。そして、図5(d)に示すように、ポンプユニット10(A)が完全膨張、ポンプユニット210(D)が自然収縮状態となることにより、ポンプユニット10(A)内の搬送物がポンプユニット210(B)に押し出され、ポンプユニット210(B)内の搬送物がポンプユニット210(C)に押し出され、ポンプユニット210(C)内の搬送物がポンプユニット210(D)に押し出される。
【0094】
[ステップ6]
次に、電気系制御部160は、供給弁116(B)にのみ信号を出力し、供給弁116(A);116(C);116(D)、吸引用弁126(A)及び排出弁118(B)~118(D)への信号の出力を停止状態とする。
これにより、ポンプユニット10(A)が完全膨張、ポンプユニット210(C);210(D)が自然収縮の状態を維持したまま、ポンプユニット210(B)の膨張が開始される。
【0095】
そして、電気系制御部160は、圧力センサ122(B)から入力された圧力が、ポンプユニット210の完全膨張状態とされる判定値に達したことを検知すると、供給弁116(B)への信号の出力を停止する。このとき供給弁116(A);116(C);116(D)、吸引用弁126(A)及び排出弁118(B)~118(D)への信号の出力は停止状態が維持されている。
【0096】
これにより、図6(f)に示すように、ポンプユニット210(B)が完全膨張となる。そして、ポンプユニット210(B)の膨張によって、ポンプユニット210(B)内の搬送物が加圧され、ポンプユニット210(C)へと押し出される。ポンプユニット210(C)へと押し出された搬送物は、ポンプユニット210(D)内の搬送物をポンプ部8外の流出路へと押し出す。
【0097】
[ステップ7]
次に、電気系制御部160は、供給弁116(C)にのみ信号を出力し、供給弁116(A);116(B);116(D)、吸引用弁126(A)及び排出弁118(B)~118(D)への信号の出力を停止状態とする。
これにより、ポンプユニット10(A);ポンプユニット210(B)が完全膨張、ポンプユニット210(D)が自然収縮の状態を維持したまま、ポンプユニット210(C)の膨張が開始される。
【0098】
そして、電気系制御部160は、圧力センサ122(C)から入力された圧力が、ポンプユニット210の完全膨張状態とされる判定値に達したことを検知すると、供給弁116(C)への信号の出力を停止する。このとき供給弁116(A);116(B);116(D)、吸引用弁126(A)及び排出弁118(B)~118(D)への信号の出力は停止状態が維持されている。
【0099】
これにより、図6(g)に示すように、ポンプユニット210(C)が完全膨張となる。そして、ポンプユニット210(C)の膨張によって、ポンプユニット210(C)内の搬送物が加圧され、ポンプユニット210(D)へと押し出される。ポンプユニット210(D)へと押し出された搬送物は、さらにポンプユニット210(D)内の搬送物をポンプ部8外の流出路へと押し出す。
【0100】
[ステップ8]
次に、電気系制御部160は、供給弁116(D)にのみ信号を出力し、供給弁116(A);116(B);116(C)、吸引用弁126(A)及び排出弁118(B)~118(D)への信号の出力を停止状態とする。
これにより、ポンプユニット10(A);ポンプユニット210(B);210(C)が完全膨張の状態を維持したまま、ポンプユニット210の膨張が開始される。
【0101】
そして、電気系制御部160は、圧力センサ122(D)から入力された圧力が、ポンプユニット210の完全膨張状態とされる判定値に達したことを検知すると、供給弁116(D)への信号の出力を停止する。このとき供給弁116(A);116(B);116(C)、吸引用弁126(A)及び排出弁118(B)~118(D)への信号の出力は停止状態が維持されている。
【0102】
これにより、図6(h)に示すように、ポンプユニット210(D)が完全膨張する。そしてポンプユニット210(D)の膨張によって、ポンプユニット210(D)内の搬送物は、ポンプユニット210(D)内の搬送物をポンプ部8外の流出路へと押し出す。
【0103】
ポンプユニット210(D)が完全膨張したことにより、ポンプ部8は、全てのポンプユニット10(A);210(B)~210(D)が完全膨張の状態、即ち、ステップ1の状態に戻る。そして、ポンプ装置1は、ポンプ部8がステップ2~ステップ9の状態を繰り返すこと、即ち、ステップ2~ステップ9を1つの搬送サイクルとし、これを繰り返すことで搬送物を上流側から下流側へと搬送可能とされる。
【0104】
以上説明したように、本実施形態のポンプ装置1によれば、上述の強制収縮手段によりポンプユニット10(A)の内筒12を強制的に収縮させることにより、内筒12がその弾性により自然に収縮したときよりも短い時間で収縮することになり、大きな負圧を搬入路に対して作用させることができる。
【0105】
加えて、強制収縮手段が、ポンプユニット10(A)の内筒12がその弾性により収縮したときの内筒12の内周側の容積よりも、前記容積を拡大させる構成とすることにより、内筒12の内周側により大きな負圧を搬入路に対して生じさせることができる。
【0106】
その結果、搬送物の粘性が高い場合であっても、最上流に設けられたポンプユニット10(A)によってポンプ部8内に搬送物を引き込むことが可能となり、搬送物の流量の低下(搬送効率の低下)を抑制することができる。つまり、搬送物の粘性に依存することなく、流量の低下を抑制することが可能とされる。
【0107】
また、強制収縮手段が、流体室V1から作動媒体である圧縮空気を強制的に排出可能に構成されたことにより、ポンプユニット10(A)の収縮速度及び収縮量を調整することができ、内筒12の収縮によって得られる負圧を可変とすることができる。
これにより、搬送物の物性に応じて、流量の低下を抑制すべく、内筒12の収縮によって得られる負圧を設定することができる。
【0108】
なお、上記実施形態では、全てのポンプユニット10(A);210(B)~210(D)を完全膨張させた後に、上流側から下流側にポンプユニット10(A)→210(B)→210(C)→210(D)のように順次、収縮させるものとして説明したがこれに限定されない。
【0109】
ポンプ部8におけるポンプユニット10(A);210(B)~210(D)を膨張・収縮させる順序、或いは膨張・収縮させる組み合わせは適宜設定すれば良い。
例えば、ポンプ部8内に搬送物を引き込む場合、上記実施形態では、ポンプユニット10(A)のみを収縮させるものとしたが、ポンプユニット10(A);210(B)、或いはポンプユニット10(A);210(B):210(C)を同時、或いは、上流側のポンプユニットからタイミングをずらして収縮させるようにしても良い。このとき収縮するポンプユニットのうち最も下流側に位置するポンプユニットに下流側で隣接するポンプユニットの膨張状態を維持させておくと良い。ここで言うタイミングをずらしてとは、上流側に隣接するポンプユニットが完全に収縮する前に、下流側に隣接するポンプユニットが収縮動作を開始することを言う。
【0110】
また、例えば、ポンプ部8内から搬送物を押し出す場合、上記実施形態では、ポンプユニット210(D)を収縮しつつポンプユニット10(A)を膨張させるものとしたが、ポンプユニット10(A);210(B)、或いはポンプユニット10(A);210(B):210(C)を同時、或いは、上流側のポンプユニットからタイミングをずらして膨張させるようにしても良い。ここで言うタイミングをずらしてとは、上流側に隣接するポンプユニットが完全に膨張する前に、下流側に隣接するポンプユニットが膨張動作を開始することを言う。
【0111】
また、ポンプ部8は、ポンプユニット10を1つ、ポンプユニット210を3つ連結して構成されるものとして説明したが、例えば、ポンプユニット10を2つ、ポンプユニット210を2つとしても良く、ポンプユニット10を3つ、ポンプユニット210を1つとしても良く、全てをポンプユニット10で構成しても良い。
好ましくは、ポンプ部8において、強制的に収縮されるポンプユニット10が、最も上流側に設けると良い。
【0112】
ポンプユニット10は、外筒14が軸方向に伸縮しないため、強制収縮手段により内筒12を強制的に収縮させることができるという特徴がある。
一方、ポンプユニット210は、半径方向に膨張したときに軸方向に収縮し、半径方向に収縮したときに軸方向に伸長するように構成されているため、内筒212を強制収縮手段により内筒212を強制的に収縮させると、その影響が外筒214にも影響が及んでしまう。しかし、ポンプユニット210は、膨張時に軸方向にも収縮するため押し出す力がポンプユニット10よりも大きいという特徴がある。
したがって、ポンプ部8は、2種類のポンプユニット10、ポンプユニット210の特徴を考慮し、搬送物に応じた構成とすれば良い。なお、前述のように、ポンプ部8の構成において、強制的に収縮されるポンプユニット10が、最も上流側に設けると良いことは言うまでもない。即ち、ポンプ部8は、過収縮するポンプユニット10を少なくとも1つ含むように構成されていれば良い。
【0113】
なお、ポンプユニット210の収縮についても、ポンプユニット10と同様に強制的に収縮させても良い。この場合、弾性体で構成される内筒212及び外筒214において、外筒214の弾性率が内筒212の弾性率よりも大きい素材で構成すると良い。
【0114】
なお、上記実施形態では、ポンプユニット10を強制的に収縮させる方策として、流体室V2における作動媒体を強制的に排出することで内筒12を収縮させるものとして説明したが、これに限定されない。
本発明に係る技術的な思想は、ポンプユニット10の内筒12を強制的に収縮させることにより、内筒12の内周側に大きな負圧を生じさせることにある。つまり、内筒12の弾性による収縮によって得られる内筒12の内周側の負圧よりも大きな負圧が得られるものであれば良い。例えば、強制収縮手段として、内筒12をばねによって半径方向外向きに引っ張るような付勢手段を設けたり、内筒12の一部を予め外筒14に固定しておき、膨張時に内筒12の弾性に対して強制的な負荷を与えておくようにしたり、内筒12の外周側に板ばねを設けておき、膨張時に内筒12の弾性に対して強制的な負荷を与えておくようにしたりしても良い。
【符号の説明】
【0115】
1 ポンプ装置、8 ポンプ、10 ポンプユニット、12 内筒、14 外筒、
100 搬送制御装置、
110 流体系制御部、112 コンプレッサー、114 レギュレータ、
116 供給弁、118 排出弁、120 流量センサ、122 圧力センサ、
124 減圧手段、126 吸引用弁、160 電気系制御部、
210 ポンプユニット、212 内筒、214 外筒、V1;V2 流体室。
図1
図2
図3
図4
図5
図6