(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134666
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】被加熱芳香発生体
(51)【国際特許分類】
A24D 1/20 20200101AFI20230920BHJP
【FI】
A24D1/20
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023115625
(22)【出願日】2023-07-14
(62)【分割の表示】P 2021520034の分割
【原出願日】2019-05-24
(31)【優先権主張番号】P 2019095531
(32)【優先日】2019-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】721008039
【氏名又は名称】Future Technology株式会社
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 龍志
(57)【要約】 (修正有)
【課題】エアロゾルフォーマを含有する被加熱芳香発生基材を包装材で巻き上げた被加熱芳香発生体を備えた芳香カートリッジの喫煙を心地よく行うことができる気体流路を形成すると同時に、被加熱芳香発生基材の充填率を高め、適正な喫煙数を確保すると共に、吸引時の被加熱芳香発生基材の燃焼及び芳香カートリッジ脱着時の被加熱芳香発生基材の脱落の問題を解決することが可能な被加熱芳香発生体を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、被加熱芳香発生基材が、エアロゾルフォーマ、非タバコ植物及び/又はタバコ植物、及び、結合剤を少なくとも含んでおり、被加熱芳香発生基材が、被加熱芳香発生体の長尺方向に垂直な断面の長軸の長さと短軸の長さとの比が1:1~30:1であり、長尺方向の長さと前記短軸の長さとの比が10:1~700:1である麺状体である、被加熱芳香発生体を提供する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体と接触加熱されて煙及び芳香の元となる揮発物を発生する被加熱芳香発生基材が包装材で巻き上げられて作製され、芳香カートリッジに備えられる被加熱芳香発生体であって、
前記被加熱芳香発生基材が、エアロゾルフォーマ、非タバコ植物及び/又はタバコ植物、及び、結合剤を少なくとも含んでおり、
前記被加熱芳香発生基材が、前記被加熱芳香発生体の長尺方向に垂直な断面の長軸の長さと短軸の長さとの比が1:1~30:1であり、前記長尺方向の長さと前記短軸の長さとの比が10:1~700:1である麺状体である、被加熱芳香発生体。
【請求項2】
発熱体と接触加熱されて煙及び芳香の元となる揮発物を発生する被加熱芳香発生基材が包装材で巻き上げられて作製され、芳香カートリッジに備えられる被加熱芳香発生体であって、
前記被加熱芳香発生基材が、エアロゾルフォーマ、タバコ植物、結合剤及び微結晶セルロースを少なくとも含んでおり、
前記被加熱芳香発生基材が、棒状、短冊状、粉体状、顆粒状、ペレット状、小片状、シート状、及び、繊維状等の形状であり、前記微結晶セルロースの質量平均分子量が、10,000以上200,000以下であることを特徴とする、被加熱芳香発生体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱式喫煙具の電気制御式発熱体を備えたチャンバーに、発熱体と接触するように装着され、発熱体の加熱により生成するエアロゾルの煙と香気成分とを堪能することができるための、被加熱芳香発生体及び芳香カートリッジ、並びに、被加熱芳香発生体の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タバコの禁煙が、職場や飲食店等の老若男女を問わない人々が集う空間に幅広く普及すると共に、火炎で燃焼するタバコの喫煙者が急減するのに対し、電気制御式発熱体をチャンバーに備えた加熱式喫煙具を用い、熱によってエアロゾルを発生するエアロゾルフォーマを含有したエアロゾル形成体を備えた電子タバコカートリッジの喫煙者が急増している。それに従って、加熱式喫煙を楽しむための各種電子タバコ製品が販売されるようになってきた。この原因は、正しく、この加熱式喫煙によれば、従来のタバコの熱分解及び燃焼によって生成される有害成分の吸引が低減されることにある。そのため、電子タバコ製品に関する技術開発が活発に行われている(例えば、特許文献1~5)。
【0003】
このような加熱式喫煙のメカニズムは、加熱式喫煙具、電子タバコカートリッジ等の形態によって異なるが、典型的な例を次に示す。一端にエアロゾル形成体を、他端にマウスピースを備えた電子タバコカートリッジが、エアロゾル形成体を加熱式喫煙具の熱源と接触するように装着されて加熱されると、エアロゾル形成体からエアロゾルフォーマを含む揮発物が放出されると同時に、この揮発物は、喫煙者の吸引によって空気と共に他端のマウスピース側に吸い込まれる。この揮発物の搬送工程において、エアロゾルフォーマの揮発物は冷却、凝縮して、煙のようなエアロゾルを形成すると共に、その他の揮発物は、喫煙者の口及び鼻に芳香を与え、その結果として喫煙を楽しむことができる。従って、加熱式喫煙の場合、エアロゾル形成体に含まれるグリセリンやプロピレングリコール等のエアロゾルフォーマを揮発させることができる200~350℃程度、すなわち、タバコの葉の熱分解が開始する程度の温度で喫煙できることを示している。
【0004】
これに対し、従来の火炎によってタバコを燃焼する火炎式喫煙の場合、少なくとも燃焼するための600℃を超える温度が必要であり、喫煙時には最高900℃に達することがある。一般に、温度の上昇と共に有害物質の発生量が多いと言われていることから、加熱式喫煙の有害物質の発生量が極めて少ないことが分かる。
【0005】
その上、エアロゾル形成体に占めるタバコの葉の含有量が少なく、そのための材料設計が施されている。また、従来のタバコ製造工程で生じたタバコ茎、葉片、及び、タバコ粉塵等を使用してすることができ、材料の有効活用及び材料コストの削減が図られている。
【0006】
しかしながら、紙巻きタバコの場合には、特許文献6に記載されているように、喫煙に適した気体流路を形成することが可能なタバコ巻上の方法及び装置が確立されている。タバコ巻上装置は、供給された刻みタバコを上方に空気搬送するチムニー部、チムニー部で刻みタバコを上方に空気搬送するための負圧が供給されるサクション部、及び、チムニー部とサクション部との間に張架されてガニチャーテープと同期して走行駆動される無端状のタバコバンドを備え、サクション部で刻みタバコをタバコバンドの下側表面に吸着した後、刻みタバコを吸着したタバコバンドが複数のガイドを通過して棒状に成形され、その棒状の刻みタバコを巻管部に搬送する刻み給送装置と、速度制御されて送り駆動されるガニチャーテープを備え、このガニチャーテープ上において、ロールから連続供給される長尺の巻紙上に、刻み給送装置から投入される棒状の刻みタバコを連続的に巻き上げる巻管部(紙巻部)とから構成され、この装置を用いて、喫煙に適した気体流路を有する紙巻タバコを大量に製造することができる。
【0007】
なお、刻み給送装置のチムニー部から巻管部に向かうたばこバンドの走行路の複数のガイドの途中に設けられた、タバコバンドに吸着された刻みタバコの余剰分を削除するエクレターディスクは、巻管部にて巻き上げられる棒状の刻みタバコの充填量を調整する重要な役割を果たしている。その後、巻管部において巻紙で巻き上げられた棒巻タバコは、切断部において所望の長さに切断され、次工程のフィルタアタッチメントに供給される。紙巻きタバコの場合、刻みタバコが、極めて多様な形状で、嵩が高く、弾性を有するため、このようなタバコ巻上げ方法及び装置が確立されているものと考えられる。
【0008】
これに対し、電子タバコカートリッジは、発熱体で加熱される部分が、グリセリンやプロピレングリコール等のエアロゾルフォーマ、タバコ植物及び/又は非タバコ植物、並びに、結合剤を少なくとも含む組成物から成形加工されたシートを断裁したエアロゾル形成基材が紙に巻き上げられているエアロゾル形成体である。このため、下記のような問題があり、これらを解決するためには、エアロゾル形成基材の形状及び大きさ、並びに、エアロゾル形成体内におけるエアロゾル形成基材の分布及び充填率等を最適化すると共に、最適な硬さでエアロゾル形成基材を紙で巻き上げる方法及び装置を見出す必要があり、種々検討されてきた(例えば、特許文献3、4、及び、7)が、未だ解決手段は見出されていない。
【0009】
第一に、紙巻きタバコとは異なり、喫煙に適した気体流路を形成することが極めて困難であるという問題がある。これは、エアロゾル形成体を構成するエアロゾル形成基材が、その必須成分である常温で液体のエアロゾルフォーマと、タバコ植物及び/又は非タバコ植物、並びに、結合剤等と共に成形加工されたシートを、棒状、短冊状、粉体状、顆粒状、ペレット状、小片状、シート状、及び、繊維状等の形状に断裁したものであるため、紙巻きタバコを構成する刻みタバコと比較すると、形状の均一性が高い、同一重量における嵩が小さい、弾性に乏しい塑性物である等の特徴に起因している。
【0010】
第二に、電子タバコカートリッジの場合、エアロゾル形成基材と発熱体とが接触して吸引する際に燃焼してはいけないため、吸引時の気流温度を高くし過ぎることはできないという問題がある。
【0011】
第三に、電子タバコカートリッジは、加熱式喫煙具に着脱するため、エアロゾル形成体を発熱体に差し込むことが容易で、タバコ形成基材が脱落することなくエアロゾル形成体を発熱体から抜き取ることできなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特表2008-518614号公報
【特許文献2】特表2010-520764号公報
【特許文献3】特表2013-519384号公報
【特許文献4】特表2016-538848号公報
【特許文献5】特許第6280287号公報
【特許文献6】特開平10-108659号公報
【特許文献7】特開昭62-272962号公報
【特許文献8】特開2005-232619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
電子タバコカートリッジは、発熱体で加熱される部分が、グリセリンやプロピレングリコール等のエアロゾルフォーマ、タバコ植物及び/又は非タバコ植物、並びに、結合剤を少なくとも含む組成物から成形加工されたシートを断裁したエアロゾル形成基材が紙に巻き上げられているエアロゾル形成体であるため、エアロゾル形成基材の形状均一性、大きな嵩比重、乏しい弾性に起因して、気体流路を確保しつつ、充填率を高めることが困難であるという問題がある。喫煙を心地よく行うことができる気体流路を形成すると、エアロゾル形成基材の充填率が低くなる傾向にあり、吸引時の燃焼及び脱着時の脱落の問題が発生する可能性がある。逆に、吸引時の燃焼及び脱着時の脱落の問題を解決するため、エアロゾル形成体のエアロゾル形成基材の充填率を高くすると、エアロゾル形成体の内部における気体流量が低下するため、喫煙者が心地よく吸引することができない上、一度の吸引量が減少するため、一本あたりの喫煙数が増加し、適正な喫煙数を超える可能性がある。また、エアロゾル形成体を発熱体に差し込むことが困難となる。
【0014】
そこで、本発明者は、このように相反する課題を解決し、気体流路を確保しつつ、充填率を高めるため、被加熱芳香発生基材の形状及び大きさ、並びに、被加熱芳香発生体内における被加熱芳香発生基材の分布及び充填率等を最適化すると共に、最適な硬さで被加熱芳香発生基材を紙で巻き上げる方法及び装置を見出し、本発明の完成に至った。
【0015】
すなわち、本発明は、気体流路及び充填率を最適化し、心地よい喫煙ができ、適正な喫煙数を確保すると共に、吸引時の燃焼及び脱着時の脱落の問題もなく、被加熱芳香発生体を加熱式芳香具の発熱体に差し込むことも容易である、芳香カートリッジ用被加熱芳香発生体及び芳香カートリッジ、並びに、被加熱芳香発生体の製造方法及び製造装置を提供することを目的としている。
【0016】
なお、本発明において、エアロゾル形成基材、エアロゾル形成体、電子タバコカートリッジ、及び、加熱式喫煙具を、それぞれ、被加熱芳香発生基材、被加熱芳香発生体、芳香カートリッジ、及び、加熱式芳香具とするのは、本発明における喫煙が、タバコ成分を含むエアロゾル形成基材及びそれによって紙に巻き上げられたエアロゾル形成体を加熱することによって生成するエアロゾルの喫煙に限定されるものでははく、タバコ成分を含まないエアロゾル形成基材及びエアロゾル形成体を加熱することによって生成するエアロゾルの芳香を楽しむことを含むことに基づいている。また、「電子タバコ互換カートリッジ」と呼称されるものも、タバコ成分を含むか否かに関わらず、単に「タバコ成分を含む電子タバコカートリッジと相互に交換して使用可能な(互換性有の)カートリッジ」と定義される。
【0017】
すなわち、「喫煙」は、一般的に、ナス科タバコ属のタバコの葉又はタバコ成分を含む素材を燃焼又は加熱して生成するニコチンやタール等を含む煙を吸うことを意味するが、本発明では、「煙を楽しむ」、「煙を味わう」、「煙を堪能する」の意味であり、煙の素となるものは、タバコの葉又はタバコ成分を含むものに限定されず、非タバコ材又は非タバコ成分だけのものも使用される。また、本発明の「煙」には、例えば、エアロゾル等の空気中に分散した液滴のように、「煙に見えるもの」及び「煙状のもの」も含まれる。更に、本発明における「芳香」は「良い香り」の意味であり、素材そのものから漂う香り(フレグランス)、加熱されたときに空間に漂う香り(アロマ)、吸引したときに口に漂う香り(フレーバー)等を含む。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、加熱式芳香具のチャンバーに備えられた電気制御式発熱体に差し込まれ、その発熱体と接触加熱されて煙及び芳香を発生する被加熱芳香発生基材が包装材で巻き上げられて作製され、芳香カートリッジに備えられる被加熱芳香発生体において、被加熱芳香発生基材が、エアロゾルフォーマ、タバコ植物及び/又は非タバコ植物、並びに、結合剤を少なくとも含んでおり、被加熱芳香発生基材が、一次凝集体に集合して形成される空隙の気体流路と、被加熱芳香発生基材及びその一次凝集体が、二次凝集体に集合して形成される空隙の気体流路と、被加熱芳香発生基材及びその一次凝集体が、包装材と接触して形成される空隙の気体流路とを備え、これらの気体流路が、被加熱芳香発生体を貫通している異形気体流路を有することを特徴とする被加熱芳香発生体であって、このような異形気体流路を有する被加熱芳香発生体は、気体流路が十分に確保されるので、吸引時の被加熱芳香発生基材の燃焼の問題を解決して、十分なエアロゾルの煙及び芳香を快く吸引でき、加熱式芳香具の発熱体に容易に差し込むことができる。その一方で、被加熱芳香発生基材の充填率が高いため、適正な喫煙数を確保できると共に、芳香カートリッジの脱着時の被加熱芳香発生基材の脱落問題も生じることはない。
【0019】
更に、このような異形気体流路は、被加熱芳香発生体の長尺方向に垂直な断面において、中心領域と外周領域とを面積で等分すると、中心領域が、外周領域よりも空隙率が高いことが、上記効果を発揮する上で好ましい。
【0020】
そして、このような被加熱芳香発生体を構成する被加熱芳香発生基材は、長尺方向に垂直な断面形状が長尺方向で均一であって、長尺方向に垂直な断面の長軸の長さと短軸の長さとのアスペクト比が1:1~30:1であることが好ましく、2:1~20:1であることがより好ましく、5:1~20:1であることがより更に好ましい。ただし、長軸の長さと短軸の長さとのアスペクト比が30:1より大きくなると、気体流路の確保が困難となる。
【0021】
また、このアスペクト比から分かるように、被加熱芳香発生基材の長尺方向に垂直な断面形状は、特に限定されるわけではなく、等方性の、正三角形、正方形、及び、正五角形等の正多角形、並びに、円形であっても問題はないが、異形気体流路が確保されるためには、アスペクト比が2:1以上であることが好ましく、略長方形及び略楕円形であることが好ましい。
【0022】
特に、被加熱芳香発生基材は、その断面形状が略長方形の略直方体であることが、空隙を形成し、気体流路を確保する上で最も好ましい。具体的には、このような直方体の長尺方向に垂直な断面の短軸の長さは、0.1~1.0mmであることが好ましく、0.1~0.5mmであることがより好ましい。直方体の長尺方向に垂直な断面の長軸の長さは、0.5~3.0mmであることが好ましく、0.5~2.0mmであることがより好ましい。
【0023】
また、被加熱芳香発生基材が、長尺方向に垂直な断面形状が長尺方向に均一な形状であることは、被加熱芳香発生基材が包装材で巻き上げられている被加熱芳香発生体の長尺方向の均一性を確保するためにも、気体流路が被加熱芳香発生体を貫通するためにも最も好ましい。
【0024】
一方、被加熱芳香発生体を構成する被加熱芳香発生基材に垂直な断面の短軸の長さと長尺方向の長さとの比は、芳香カートリッジが使用される加熱式芳香具のチャンバー等の大きさに依存するものであり、被加熱芳香発生体の長尺方向に垂直な断面における空隙率との因果関係に乏しい。しかし、本発明の異形気体流路を有する被加熱芳香発生体を用いて心地よい吸引をするためには、適正な長さがあり、長尺方向の長さと短軸方向の長さとの比が10:1~700:1であることが好ましい。また、被加熱芳香発生基材として最も好ましい略直方体の長尺方向の具体的な長さも、同様に、10~70mmであることが好ましい。
【0025】
このような長尺方向に垂直な断面形状に異方性を有する被加熱芳香発生体は、長尺方向に垂直な断面における長軸方向の面は、隣接する被加熱芳香発生基材の長尺方向に垂直な断面の短軸方向の面よりも、隣接する被加熱芳香発生基材の長尺方向に垂直な断面における長軸方向の面と接する頻度が高く、気体流路を確保しつつ、充填率を高くすることができる。
【0026】
更に、このような長尺方向に垂直な断面形状に異方性を有する被加熱芳香発生体は、被加熱芳香発生基材の長尺方向に垂直な断面の長軸方向が、被加熱芳香発生体の周の接線方向に配列する被加熱芳香発生基材の数の方が、この長軸方向が、被加熱芳香発生体の周の法線方向に配列する被加熱芳香発生基材の数よりも多く、気体流路を確保しつつ、充填率を高くすることができる。
【0027】
従って、このような被加熱芳香発生体を備えた芳香カートリッジを加熱式芳香具で喫煙すると、心地よいエアロゾルの煙及び芳香吸引が行えると同時に、被加熱芳香発生基材の充填率を高め、適正な喫煙数を確保すると共に、吸引時の被加熱芳香発生基材の燃焼及び芳香カートリッジ脱着時の被加熱芳香発生基材の脱落の問題を解決することが可能となり、芳香カートリッジを加熱式芳香具のチャンバーに備えられた発熱体に差し込み易くなる。
【0028】
そして、被加熱芳香発生体を備えた芳香カートリッジには、マウスピースとして、フィルターだけを被加熱芳香発生体と長尺方向に連設したものが好ましく使用されるが、被加熱芳香発生体と長尺方向において連設される長尺方向に沿って気流が通過可能な支持部材と、支持部材の長尺方向において連設されるフィルターとを備えていることがより好ましい。支持部材は、被加熱芳香発生体の吸引側への移動を防止し、フィルターは、アエロゾルの煙や芳香を濾過して被加熱芳香発生基材の脱落物や粉塵が口腔内に流入することを防止するため、より快適な喫煙を楽しむことができる。
【0029】
本発明の支持部材は、特に限定されるものではないが、気体流路と支持部からなり、支持部が少なくとも最外周部に存在し、吸引を阻害することなく、被加熱芳香発生体の吸引側への移動を防止すると共に、芳香カートリッジの形態を保持する形態であることを特徴としている。材質も、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂等の汎用ポリマーが使用される。一方、フィルターも、一般的に使用されている酢酸セルロース繊維製のものを使用することができる。
【0030】
しかしながら、従来の支持部材もフィルターも生分解性に乏しいポリマーから製造されているため、マイクロプラスチック等の環境汚染物質になるという問題がある。そこで、本発明の支持部材及びフィルターは、共に、生分解性を有する脂肪族ポリエステル、並びに、デンプン系及びセルロース系生分解性ポリマーで製造されているものが好ましく用いられる。特に、脂肪族ポリエステルとしては、ポリエチレンアジペート(PEA)、ポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)(PHB)、ポリ(β-プロピオラクトン)(PPL)、ポリ(ブチレンサクシネート)(PBS)、ポリ(L-ラクチド)(PLA)、ポリ(p-ジオキサノン)(PPDO)が好ましく使用することができる。
【0031】
さて、このように、被加熱芳香発生基材の充填率が高いにもかかわらず、気体流路が確保された異形気体流路を有する被加熱芳香発生体が形成されるには、被加熱芳香発生体を製造する方法が重要な役割を果たしている。
【0032】
すなわち、本発明の被加熱芳香発生体を製造する方法は、エアロゾルフォーマ、タバコ植物及び/又は非タバコ植物、並びに、結合剤を少なくとも含む被加熱芳香発生シートが、長尺方向に垂直に切断した断面形状が長尺方向に均一で、被加熱芳香発生体の2倍以上に長い麺状被加熱芳香発生基材に断裁される第一の工程と、所定量の麺状被加熱芳香発生基材を、ベルトで支持、搬送される所定幅の被加熱芳香発生体包装材ウェブ上に被加熱芳香発生体包装材ウェブの長尺方向と平行となるように載置する第二の工程と、ベルトを曲折することによって麺状被加熱芳香発生基材を被加熱芳香発生体包装材ウェブで、長尺方向に円柱状となるように巻き上げる第三の工程と、第三の工程で製造された棒状被加熱芳香発生体の被加熱芳香発生体包装材ウェブを長尺方向に沿って線接着する第四の工程と、第四の工程で製造された棒状被加熱芳香発生体を所定長に断裁する第五の工程とから成ることを特徴とするものである。
【0033】
被加熱芳香発生体の製造方法の第三の工程が、被加熱芳香発生体に異形気体流路を形成する上で最も重要な工程である。この工程において、麺状被加熱芳香発生基材が、被加熱芳香発生体の長尺方向に揃えられ、ベルトで支持され搬送される被加熱芳香発生体包装材ウェブの長尺方向に載置され、ベルトを曲折することによって麺状被加熱芳香発生基材を被加熱芳香発生体包装材ウェブで、長尺方向に円柱状となるように、長い棒状被加熱芳香発生体が形成され、被加熱芳香発生体の内部構造が決定される。空隙率の高い異形気体流路が形成されるのは、ベルトの曲折によって、麺状被加熱芳香発生基材が移動して集合した一次凝集体が空隙を形成し、更に、麺状被加熱芳香発生基材単独体やその一次凝集体が移動して集合した二次凝集体が空隙を生成し、それらが被加熱芳香発生体を貫通する異形気体流路を形成すると共に、麺状被加熱芳香発生基材単独体及びその一次凝集体と包装材とが空隙を生成し、それが麺状被加熱芳香発生体を貫通する異形気体流路を形成するからである。一方、充填率が高くなるのは、この工程の後期におけるベルトの曲折によって、麺状被加熱芳香発生基材が、その長尺方向と垂直な方向から包装材で丸め込まれ、円柱状の長い棒状被加熱芳香発生体が形成されるので、円柱状に近付けば近付く程、麺状被加熱芳香発生基材の一次凝集体及び二次凝集体を構成する麺状被加熱芳香発生基材が滑りながら移動し、麺状被加熱芳香発生基材に垂直な断面の長軸方向の面が、隣接する麺状被加熱芳香発生基材の垂直な断面の長軸方向の面と接する頻度が高くなると共に、この長軸方向が、円柱の周の接線方向に配列する麺状被加熱芳香発生基材の数も多くなるためである。そして、このような外周領域の麺状被加熱芳香発生基材の充填状態が、安定した強固な構造を形成する。逆に、棒状被加熱芳香発生体の中心領域は、上述した嵩高い一次凝集体及び二次凝集体が残るため、一次凝集体及び二次凝集体に形成された異形気体流路は残存し、中心領域の空隙率は、外周領域よりも高くなる。芳香カートリッジに使用される被加熱芳香発生体は、このようにして内部構造が形成された棒状被加熱芳香発生体を断裁したものであり、このような内部構造と全く同一の内部構造を有している。
【0034】
すなわち、被加熱芳香発生体の長尺方向の長さよりも長く、断面の形状が略同一である麺状被加熱芳香発生基材を、ロール状である被加熱芳香発生体包装材ウェブの長尺方向に載置し、長尺方向に円柱状となるように丸め込むため、棒状被加熱芳香発生体の異形気体流路は貫通孔となり、丸め込む過程で、麺状被加熱芳香発生基材が、円柱を形成するに従って、一次凝集体及び二次凝集体を生成し、それら自体に異形気体流路を形成すると共に、包装材との間でも異形気体流路を形成することができる。また、この過程で、一次凝集体及び二次凝集体が、円柱状の棒状被加熱芳香発生基体の中心領域に残存するが、外周領域において、麺状被加熱芳香発生基材の垂直な断面の長軸方向が、隣接する麺状被加熱芳香発生基材の垂直な断面の長軸方向と接する頻度が高くなると共に、円柱の周の接線方向に配列する割合が増加して充填率が高くなる。
【0035】
このような挙動を制御するためには、麺状被加熱芳香発生基材の形状が重要であり、第一の工程で断裁される麺状被加熱芳香発生基材が、長尺方向に垂直な断面の長軸の長さと短軸の長さとのアスペクト比が1:1~30:1であり、長尺方向の長さとこの短軸の長さとのアスペクト比が40:1~3600:1であること好ましい。特に、上記長軸の長さと短軸の長さとのアスペクト比は、2:1~20:1であることがより好ましく、5:1~20:1であることがより更に好ましい。これらのアスペクト比は、長尺方向に並んでいる麺状被加熱芳香発生基材が、長尺方向と垂直方向から包むように円柱状に成形される際の易動度と密接な関係があり、気体流路を確保しつつ、充填率を高めることができるのである。従って、長尺方向に垂直な断面の長軸の長さと短軸の長さとのアスペクト比が30:1を超え、長尺方向の長さと短軸の長さとのアスペクト比が3600:1を超えると、麺状被加熱芳香発生体が長軸方向の面で接する頻度が高くなると共に、易動度が極端に低下して、一次凝集体及び二次凝集体を形成することが困難となる。また、長軸の長さと短軸の長さとのアスペクト比が1:1の場合、製造条件によっては、麺状被加熱芳香発生体が、最密充填構造のように配列してしまう場合もある。
【0036】
麺状被加熱芳香発生基材の長尺方向に垂直な断面の形状は、等方性の、正三角形、正方形、及び、正五角形等の正多角形、並びに、円形であっても問題はないが、異形気体流路を形成する上では、短軸と長軸を有する長方形及び楕円形等であることがより好ましく、略長方形であることがより更に好ましい。
【0037】
また、本発明の麺状被加熱芳香発生基材を長尺方向の円柱に丸め込む第三の工程は、ベルトを段階的に円柱状に曲折させることができる溝を設けたガイドを、ベルトと共に、ベルトに支持、搬送される包装材及び包装材上に載置された麺状被加熱芳香発生基材を通過させることを特徴としている。このベルトは、紙巻きタバコで使用されている、例えば、特許文献8に記載されているようなガニチャーテープを利用することもできる。
【0038】
以上から明らかなように、棒状被加熱芳香発生体の長尺方向に垂直な断面において、中心領域と外周領域とを面積で等分すると、中心領域が、外周領域よりも空隙率を高くすることができ、この状態が芳香カートリッジに備えられる被加熱芳香発生体にそのまま反映される。
【0039】
これは、長尺方向に垂直な断面形状に異方性を有する麺状被加熱芳香発生基材は、包装材で巻き上げられ、一次凝集体及び二次凝集体を形成する過程において、長尺方向に垂直な断面における長軸方向の面は、隣接する麺状被加熱芳香発生基材の長尺方向に垂直な断面の短軸方向の面よりも、隣接する麺状被加熱芳香発生基材の長尺方向に垂直な断面における長軸方向の面と接する頻度が高くなることと密接な関係がある。更に、この過程において、麺状被加熱芳香発生基材の長尺方向に垂直な断面の長軸方向が、棒状被加熱芳香発生体の周の接線方向に配列する麺状被加熱芳香発生基材の数の方が、この長軸方向が、棒状被加熱芳香発生体の周の法線方向に配列する麺状被加熱芳香発生基材の数よりも多くすることができることとも密接な関係がある。
【0040】
そして、このような棒状被加熱芳香発生体の長尺方向に垂直な断面の構造には、上述したように、麺状被加熱芳香発生基材の形状が大きな影響を及ぼすが、ベルトの搬送速度、ガイドの形状等によっても制御することが可能である。
【0041】
更に、被加熱芳香発生体包装材の長尺方向の線接着を簡便かつ容易にするため、第一の工程と平行して、被加熱芳香発生体包装材ウェブの所定の位置に所定量のホットメルト接着剤を塗布する工程を加え、第四の工程に加熱手段を備えることが好ましい。
【0042】
そして、上記被加熱芳香発生体の製造方法は、次のような装置により、連続的に製造することが可能となる。すなわち、本発明の被加熱芳香発生体の製造装置は、エアロゾルフォーマ、タバコ植物及び/又は非タバコ植物、並びに、結合剤を少なくとも含む被加熱芳香発生シートが断裁された麺状被加熱芳香発生基材の供給装置と、被加熱芳香発生体包装材ウェブの供給装置と、被加熱芳香発生体包装材ウェブを支持、搬送する無端ベルトの駆動装置と、無端ベルト搬送経路に備えられた複数の溝を有するガイドと、被加熱芳香発生体包装材ウェブの接着装置と、麺状被加熱芳香発生基材が被加熱芳香発生体包装材ウェブで巻き上げられた棒状被加熱芳香発生体の断裁機とが連続的に駆動することを特徴としている。ここで、複数のガイドの溝は、三日月程度の溝から、半月程度の溝を経て、略満月に近い溝まで、段階的に円柱状となるように、3~4基の異なるガイドを備えていることが好ましい。
【0043】
また、本発明の被加熱芳香発生体の製造装置は、被加熱芳香発生体包装材の接着工程の簡便化を図り、エアロゾルフォーマ、タバコ植物及び/又は非タバコ植物、並びに、結合剤を少なくとも含む被加熱芳香発生シートが断裁された麺状被加熱芳香発生基材の供給装置と、所定量のホットメルト接着剤が所定位置に塗布された被加熱芳香発生体包装材ウェブの供給装置と、被加熱芳香発生体包装材ウェブを支持、搬送する無端ベルトの駆動装置と、無端ベルト搬送経路に備えられた複数の溝を有するガイドと、被加熱芳香発生体包装材ウェブの加熱装置と、麺状被加熱芳香発生基材が前記被加熱芳香発生体包装材ウェブで巻き上げられた棒状被加熱芳香発生体の断裁機とが連続的に駆動するものとすることがよ
り好ましい。
【発明の効果】
【0044】
本発明により、被加熱芳香発生体の長尺方向に垂直な断面において、被加熱芳香発生基材の一次凝集体及び二次凝集体が生成し、被加熱芳香発生基材の充填率を高めることができる一方で、一凝集体及び二次凝集体の内部に異形気体流路が形成されると共に、被加熱芳香発生体包装材と被加熱芳香発生基材及び一次凝集体との間にも異形気体流路が形成され、かつ、これらの異形気体流路は、被加熱芳香発生体を貫通しているため、エアロゾルの煙及び芳香が、喫煙者の口腔内に十分吸引されることができる。
【0045】
更に、本発明の被加熱芳香発生体は、充填率が高い上、外周領域における被加熱芳香発生基材の充填率が、中心領域より高いことにより、被加熱芳香発生体の端部及び外周部からの圧力に対して強固な構造を形成するため、芳香カートリッジの脱着時に被加熱芳香発生基材が脱落することがなく、適正な喫煙数を確保すると共に、吸引時の被加熱芳香発生基材の燃焼の問題も生じることがない。加えて、中心領域の充填率が低いため、芳香カートリッジを加熱式芳香具の発熱体に差し込み易くすることができる。
【0046】
一方、本発明の被加熱芳香発生体の製造方法及び製造装置によれば、充填率が高く、空隙率を確保した異形気体流路を有する被加熱芳香発生体を安定して連続的に生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】本発明の一実施形態に係る、異形気体流路を有する被加熱芳香発生体を備えた芳香カートリッジを、長尺方向に中心軸を通り切断した断面模式図である。
【
図2】電気制御式発熱体をチャンバーに備えた加熱式芳香具に挿入された
図1に示す芳香カートリッジ及び加熱式芳香具を、長尺方向に中心軸を通り切断した断面の模式図である。
【
図3】本発明の異形気体流路を有する被加熱芳香発生体を製造するために、被加熱芳香発生体包装材ウェブロールで巻き上げられる麺状被加熱芳香発生基材の形状の一例を示す模式図である。(I)は麺状体の長尺方向に直角な方向から見た長軸側の側面の模式図であり、(II)は、麺状体の長尺方向と直角に切断した断面の模式図である。(A)は、断面が略正方形の例であり、(B)は、断面が略長方形の例である。
【
図4】本発明の異形気体流路を有する被加熱芳香発生体を製造するために、被加熱芳香発生体包装材ウェブで巻き上げられる麺状被加熱芳香発生基材の形状の一例を示す模式図である。(I)は麺状体の長尺方向に直角な方向から見た長軸側の側面の模式図であり、(II)は、麺状体の長尺方向と直角に切断した断面の模式図である。タバコ充填物集積体の正面図である。(A)は、断面が略円の例であり、(B)は、断面が略楕円の例である。
【
図5】麺状被加熱芳香発生基材を、被加熱芳香発生体包装材ウェブで巻き上げ、被加熱芳香発生体を製造する方法及び装置の概略を示す模式図である。
【
図6(A)】麺状被加熱芳香発生基材を、被加熱芳香発生体包装材ウェブで巻き上げる工程において、麺状被加熱芳香発生基材が異形気体流路を形成する機構を示す概略模式図である。
【
図6(B)】麺状被加熱芳香発生基材を、被加熱芳香発生体包装材ウェブで巻き上げる工程において、麺状被加熱芳香発生基材が異形気体流路を形成する機構を示す概略模式図である。
【
図6(C)】麺状被加熱芳香発生基材を、被加熱芳香発生体包装材ウェブで巻き上げる工程において、麺状被加熱芳香発生基材が異形気体流路を形成する機構を示す概略模式図である。
【
図6(D)】麺状被加熱芳香発生基材を、被加熱芳香発生体包装材ウェブで巻き上げる工程において、麺状被加熱芳香発生基材が異形気体流路を形成する機構を示す概略模式図である。
【
図6(E)】麺状被加熱芳香発生基材を、被加熱芳香発生体包装材ウェブで巻き上げる工程において、麺状被加熱芳香発生基材が異形気体流路を形成する機構を示す概略模式図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る、被加熱芳香発生体を構成する被加熱芳香発生基材の断面が略長方形の場合における、異形気体流路を有する被加熱芳香発生体の長尺方向と直角に切断した断面の模式図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る、異形気体流路を有する被加熱芳香発生体を備えた芳香カートリッジに適用される支持部材の長尺方向と直角に切断した断面の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、一実施形態を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能であり、特許請求の範囲に記載した技術思想によってのみ限定されるものである。
【0049】
図1は、本発明の一実施形態に係る、異形気体流路を有する被加熱芳香発生体2を備えた芳香カートリッジ1を、長尺方向に中心軸を通り切断した断面模式図である。芳香カートリッジ1は、被加熱芳香発生体2と、支持部材31とフィルター32からなるマウスピース3とが長尺方向に連設されている。そして、被加熱芳香発生体2は、被加熱芳香発生基材21が被加熱芳香発生体包装材22で束ねられ、略円柱状に成形されており、支持部材31は気体流路(1)311と支持部(1)314を備えている。
図1では、被加熱芳香発生体2と支持部材31とが被加熱芳香発生体/支持部材連結材4で連設されており、更に、スポンジ状の多孔質体である円柱状のフィルター32が、芳香カートリッジ外装材5により、支持部材31の長尺方向で芳香カートリッジ1として一体化されているが、これに限定されるものではない。
【0050】
被加熱芳香発生基材21は、エアロゾルフォーマ、タバコ植物及び/又は非タバコ植物、並びに、結合剤が少なくとも含まれているが、詳細については後述する。
【0051】
支持部材31及びフィルター32は、芳香カートリッジ1が環境汚染物質とならないように、生分解性プラスチックであるPLAを原料として製造されたものを使用する。
【0052】
図1の芳香カートリッジ1は、最大外径が6.5~7.5mm、長さが40~49mmに成形されており、被加熱芳香発生体2の長さは11~13mmに断裁されているが、これらの寸法は、加熱式芳香具のチャンバーに応じて決定されるので、これらに限定されるものではない。
【0053】
図2は、芳香カートリッジ1の使用形態を表す断面図で、電気制御式発熱体62をチャンバー61に備えた加熱式芳香具6に挿入された
図1に示す芳香カートリッジ1及び加熱式芳香具6を、長尺方向に中心軸を通り切断した断面の模式図である。芳香カートリッジ1は、加熱式芳香具6のチャンバー61に挿入され、被加熱芳香発生体2が、チャンバー61内にある針状又はブレード状の電気制御式発熱体62に差し込まれ、被加熱芳香発生基材21と発熱体62とが接触する。発熱体62が、(図示していない)電気制御部で200~350℃に温度制御されると、被加熱芳香発生基材21からエアロゾルフォーマと芳香成分が揮発するので、この状態で、喫煙者がマウスピース3から吸うことにより、エアロゾルフォーマが冷却されて生成するエアロゾルの煙と芳香成分を吸引して煙を楽しむことができる。
【0054】
以下、
図1及び2に示した被加熱芳香発生体2を構成する被加熱芳香発生基材21とそれを製造する原料となる麺状被加熱芳香発生基材23とは、以下、区別して説明される必要がある。しかし、被加熱芳香発生基材21は、麺状被加熱芳香発生基材23を断裁しただけのもので、同一化学組成物であるため、両者を指す場合には、単に、被加熱芳香発生基材と表記する。
【0055】
被加熱芳香発生基材は、少なくとも、グリセリンやプロピレングリコール等のエアロゾルを生成するエアロゾルフォーマ、乾燥・粉砕されたタバコ植物及び/又は非タバコ植物、並びに、結合剤を混合し、シート状に成形した後、所定の寸法に断裁されることで形成される。被加熱芳香発生基材の具体的な組成物としては、結合剤としても作用する微結晶セルロース、架橋ポリビニルピロリドン、及び、増粘剤に加え、β-シクロデキストリン、香味料、及び、抗菌性保存剤等を適宜加えることが好ましい。
【0056】
微結晶セルロースは、シート状に成形加工を行う際に、成形加工機との接着を防止すると共に形態を維持する効果がある。架橋ポリビニルピロリドンは、芳香成分を寄留させる効果と共に、形態を維持することができる。β-シクロデキストリンは、メントール等のフェノール系水酸基を有する芳香成分を寄留させる効果がある。また、増粘剤は、シート状に成形加工する際の組成物を適正な粘度に調整する働きがある。タバコ植物及び/又は非タバコ植物だけでは、芳香成分がもの足りない場合には、香味料を添加することが好ましい場合がある。そして、抗菌性保存剤は、植物を使用していることもあり、賞味期限を確保するために必要である。
【0057】
本実施形態では、被加熱芳香発生基材を形成する植物は非タバコ植物に限定するが、タバコ植物以外の植物であれば特に制限はない。植物の使用部位としては、例えば、根(塊根(イモ類等を含む)、担根体等)、地下茎(鱗茎、球茎、塊茎、根茎等)、茎、皮(茎皮、樹皮等を含む)、葉、花(花弁、雄蕊、雌蕊等を含む)、樹木の幹や枝等の様々な部位を使用できる。
【0058】
塊根としては、ダリア、サツマイモ、キャッサバ、キクイモ、担根体としては、ヤマノイモ属(ヤマノイモ、自然薯、ナガイモ等のヤムイモ類)、鱗茎としては、タマネギ、ヒガンバナ、チューリップ、ヒヤシンス、ニンニク、ラッキョウ、ユリ、球茎としては、クロッカス、グラジオラス、フリージア、アヤメ、サトイモ、コンニャク、塊茎としては、コンニャク、シクラメン、アネモネ、べゴニア、チョロギ、・ジャガイモ、アピオス(ほど芋)、根茎としては、カンナ、ハス(レンコン)、ショウガ、その他として、カブ、ゴボウ、ニンジン、ダイコン、クズが挙げられる。茎としては、アスパラガス、タケノコ、ウド、ダイコン、ヤーコンが挙げられる。
【0059】
上記イモ類或いは以下に挙げる植物には、炭水化物が含有され、非タバコ植物の少なくとも一部の材料として好ましく用いられる。例えば、澱粉としては、コーンスターチ(とうもろこし)、ばれいしょ澱粉(じゃがいも)、かんしょ澱粉(サツマイモ)、タピオカ澱粉(タピオカ)等があり、増粘剤、安定剤等として使用することもできる。これらの澱粉は、架橋により耐酸性向上、耐熱性向上、耐シェア性向上等、エステル化、エーテル化により、保存安定性向上、糊化促進等、酸化により透明性向上、フィルム性向上、保存安定性向上等を図ることが可能である。
【0060】
植物種子から得られる、タマリンドシードガム、グアーガム、ローカストビーンガム、樹液から得られる、アラビアガム、カラヤガム、果実から得られる、ペクチン、その他の植物から得られる、セルロース、アガロースを主成分とするコンニャクマンナン、大豆多糖類を利用することができる。更に、カチオン化グアーガムのように変性して使用することができるものもある。
【0061】
海藻から得られる、カラギナン(カッパカラギナン、イオタカラギナン、ラムダカラギナンの3タイプに分類される)、寒天、アルギン酸を利用することができ、カラギナン金属塩、アルギン酸Na等の塩としても用いられる。
【0062】
ハーブやスパイスとして使用されている植物としては、くちなしの実、こぶみかんの葉、みょうが、よもぎ、わさび、アジョワンシード、アニス、アルファルファ、エキナセア、エシャロット、エストラゴン、エバーラスティングフラワー、エルダー、オールスパイス、オリスルート、オレガノ、オレンジピール、オレンジフラワー、オレンジリーフ、カイエンチリペッパー(カイエンヌチリペッパー)、カモミールジャーマン、カモミールローマン、カルダモン、カレーリーフ、ガーリック(にんにく)、キャットニップ、キャラウェイ、キャラウェイシード、キンモクセイ、クミン、クミンシード、クローブ、グリーンカルダモン、グリーンペッパー、コーンフラワー、サフラン、シダー、シナモン、ジャスミン、ジュニパーベリー、ジョロキア、ジンジャー(しょうが)、スターアニス、スペアミント、スマック、セイジ、セボリ(セイボリー)、セロリ、セロリシード、ターメリック(ウコン)、タイム、タマリンド、タラゴン、チャービル(セルフィーユ)、チャイブ、ディル、ディルシード、トマト(ドライトマト)、トンカ豆、ドライパクチー、ナツメグ、ハイビスカス、ハバネロ、ハラペーニョ、バーズアイ、バジル、バニラ、パクチー(コリアンダー)、パセリ、パプリカ、ヒソップ、ピメンツデスペレット、ピンクペッパー、フェヌグリークシード、フェンネル、ブラウンマスタード、ブラックカルダモン、ブラッククミン、ブラックペッパー、べチバー、ペニーロイヤル、ペパーミント(ハッカ)、ホースラディッシュ、ホワイトペッパー、ホワイトマスタード、ポピーシード、ポルチーニ、マジョラム、マスタードシード、マニゲット、マリーゴールド、マルバフラワー、メース、ヤローフラワー、ユーカリ、ラべンダー、リコリス、リンデン、レッドクローバー、レッドペッパー、レモングラス、レモンバーベナ、レモンバーム、レモンピール、ローズ(バラ)、ローズバッズ(パープル)、ローズヒップ、ローズペダル、ローズマリー、ローズレッド、ローレル(ローリエ)、ロングペッパー、胡麻(生胡麻、煎り胡麻)、黄金唐辛子、花椒(ホアジャオ)、三鷹、山椒、唐辛子、柚子等を使用できる。また、ミックススパイス(例えば、五香粉、ガラムマサラ、ラスエルハヌート、バリグール、チキンカレーマサラ、タンドリーマサラ、カトルエピス、エルブ・ド・プロバンス)や、ポプリ等として使用されている様々な植物の混合物も使用できる。
【0063】
また、モモ、ブルーベリー、レモン、オレンジ、リンゴ、バナナ、パイナップル、マンゴー、葡萄、キンカン、メロン、梅、アーモンド、カカオ、コーヒー、ピーナッツ、ひまわり、オリーブ、クルミ、その他ナッツ類等の食用果実(果肉部分)や種子も使用できる。
【0064】
更に、茶類も使用できる。茶類は茶になる植物が異なるだけでなく、同じ植物であっても加工法によって異なるお茶になるため、いずれのお茶も使用することができる。具体的には、日本茶、紅茶、明日葉茶、甘茶、アマチャヅル茶、アロエ茶、イチョウ葉茶、ウーロン茶、ウコン茶、ウラジロガシ茶、エゾウコギ茶、オオバコ茶、カキオドシ茶、柿の葉茶、カミツレ茶、カモミールティ、河原決明茶、カリン茶、菊花茶、ギムネマ茶、グァバ茶、クコ茶、柔の葉茶、黒豆茶、ゲンノショウコ茶、玄米茶、ゴボウ茶、コンフリー茶、毘布茶、桜茶、サフラン茶、シイタケ茶、シソ茶、ジャスミン茶、しょうが茶、スギナ茶、セキショウ茶、センブリ茶、ソバ茶、タラノキ茶、タンポポ茶、甜茶、ドクダミ茶、杜仲茶、ナタマメ茶、ニワトコ茶、ネズミモチ茶、ハトムギ茶、ハブ茶、ビワの葉茶、プーアル茶、紅花茶、松葉茶、マテ茶、麦茶、メグスリノキ茶、ヨモギ茶、ユーカリ茶、羅漢果茶、ルイボスティ、ゴーヤ茶等が挙げられる。これらお茶については、飲用後の茶殻を使用してもよい。茶殻等を使用すれば、高価なお茶等を再利用して有効活用できるという
メリットがある。
【0065】
その他の非タバコ植物として、アオサ、アオノリ、アカモク、アサクサノリ、アラメ、イワノリ(岩海苔)、エゴノリ、オゴノリ、ガゴメコンブ、カジメ、ガニアシ、クビレズタ、クロメ、コンブ、スサビノリ、ダルス、チシマクロノリ、ツルアラメ、テングサ、トロロコンブ、ネコアシコンブ属、ノリ(海苔)、ハバノリ、ヒジキ、ヒトエグサ、ヒロメ、フノリ、ボウアオノリ、マコンブ、メカブ、モズク、ワカメも使用することができる。
【0066】
そして、イネ科植物としては、インディカ種(インド型、大陸型、長粒種)、グラベリマ種(アフリカイネ)、サティバ種(アジアイネ)、ジャバニカ種(ジャワ型、熱帯島嶼形、大粒種)、ジャポニカ種(日本型、温帯島嶼型、短粒種)、ネリカ種(アジアイネとアフリカイネの種間雑種)のコメも使用することができ、粉又は糠としても使用することができる。
【0067】
その他イネ科植物としては、アワ、エンバク(カラス麦の栽培品種、オーツ麦)、オオムギ(大麦)、カラスムギ、キビ、コドラ(コードンビエ)、コムギ(小麦)、シコクビエ、テフ、トウジンビエ、ハダカムギ(オオムギの変種)、ハトムギ(種子ではなく果実である)、ヒエ、フォニオ、マコモ、モチムギ(オオムギのモチ種)、モロコシ(タカキビ、コウリャン、ソルガム)、トウモロコシ、ライムギ(ライ麦)も使用できる。
【0068】
マメ科植物としては、黒豆、アズキ、イナゴマメ、インゲンマメ、エンドウキマメクラスタマメグラスピー、ケツルアズキ、ササゲ、シカクマメ、ゼオカルパマメ、ソラマメ、ダイズ、タケアズキ、タチナタマメ、タマリンド、テパリービーン、ナタマメ、ハツショウマメ、バンバラマメ、ヒヨコマメ、フジマメ、ベニバナインゲン、ホースグラム、モスビーン、ライマメ、ラッカセイ、リョクトウ、ルピナス、レンズマメ、レンズマメ(ヘントウ)を使用することができる。
【0069】
また、ソバ、アマランス(アマランサス、センニンコク)、キヌア、ダッタンソバも利用することができる。
【0070】
きのこ類としては、シイタケ、マツタケ、ハツタケ、シメジ、ショウロ、マツシュルーム、ハラタケが挙げられる。
【0071】
さとうきび(糖蜜の搾りかすでもよい)、てんさい(ビート)、ヒノキ、松、杉、ヒバ、椿、白檀等芳香を有する樹木の幹や枝、これらの樹皮や葉、根等も使用できる。シダ類、コケ類等も非タバコ植物として使用することが可能である。
【0072】
非タバコ植物として、日本酒、ワイン等の発酵酒を製造する際の副産物や絞りかす(酒粕、葡萄の絞りかす(葡萄の皮や種子、果軸等からなる))等も使用できる。そして、上述した種々の植物を混合して使用してもよいし、上述した以外の非タバコ植物を使用することもできる。
【0073】
生薬として知られているものも好ましく用いられる。具体的には、藍草(アイソウ)、茜根(アカネコン)、赤目柏(アカメガシワ)、阿仙薬(アセンヤク)、安息香(アンソクコウ)、威霊仙(イレイセン)、菌陳蕎(インチンコウ)、茴香(ウイキョウ)、ウコン(ターメリック)、烏梅(ウバイ)、烏薬(ウヤク)、裏白柏(ウラジロガシ)、ウワウルシ、営実(エイジツ)、延胡索(エンゴサク)、延命草(エンメイソウ)、黄耆(オウギ)、黄今(オウゴン)、黄精(オウセイ)、黄柏(オウバク)、黄連(オウレン)、桜皮(オウヒ)、弟切草(オトギリソウ)、遠志(オンジ)、槐花(カイカ)、薤白(ガイハク)、夏枯草(カゴソウ)、訶子(カシ)、何首烏(カシュウ)、莪朮(ガジュツ)、霍香(カッコウ)、葛根(カッコン)、カミツレ、瓜呂根(カロコン)、瓜呂仁(カロニン)、乾姜(カンキョウ)、甘草(カンゾウ)、款冬花(カントウカ)、艾葉(ガイヨウ)、桔梗(キキョウ)、枳具子(キグシ)、枳殻(キコク)、枳実(キジツ)、菊花(キクカ)、橘皮(キッピ)、羗活(キョウカツ)、杏仁(キョウニン)、金柑(キンカン)、金銀花(キンギンカ)、金銭草(キンセンソウ)、枸杞子(クコシ)、枸杞葉(クコヨウ)、苦参(クジン)、胡挑(クルミ)、苦棟皮(クレンピ)、黒文字(クロモジ)、瞿麦(クバク)、荊芥(ケイガイ)、桂皮(ケイヒ)、決明子(ケツメイシ)、牽牛子(ケンゴシ)、玄参(ゲンジン)、膠飴(コウイ)、紅花(コウカ)、合歓皮(ゴウカンピ)、降香(コウコウ)、香鼓(コウシ)、香需(コウジユ)、紅参(コウジン)、香附子(コウブシ)、粳米(コウベイ)、厚朴(コウボク)、藁本(コウホン)、五加皮(ゴカヒ)、牛膝(ゴシツ)、呉茱萸(ゴシュユ)、虎杖根(ゴジョウコン)、牛蒡子(ゴボウシ)、五昧子(ゴミシ)、柴胡(サイコ)、細辛(サイシン)、サフラン、山帰来(サンキライ)、山査子(サンザシ)、山梔子(サンシシ)、山茱萸(サンシュユ)、山豆根(サンズコン)、酸棗仁(サンソウニン)、山椒(サンショウ)、三稜(サンリョウ)、山薬(サンヤク)、地黄(ジオウ)、紫苑(シオン)、地骨皮(ジコッピ)、紫根(シコン)、紫蘇子(シソシ)、紫蘇葉(シソヨウ)、蒺藜子(シツリシ)、柿帯(シテイ)、地膚子(ジフシ)、芍薬(シャクヤク)、蛇床子(ジャショウシ)、沙参(シャジン)、車前子(シャゼンシ)、車前草(シャゼンソウ)、縮砂(シュクシャ)、十薬(ジュウヤク)、生姜(ショウキョウ)、棕櫚実(シュロジツ)、棕櫚葉(シュロヨウ)、升麻(ショウマ)、小麦(ショウバク)、菖蒲根(ショウブコン)、辛夷(シンイ)、女貞子(ジョテイシ)、秦皮(シンピ)、神麹(シンキク)、奏ぎょう(ジンギョウ)、充蔚子(ジュウイシ)、椒目(ショクモク)、青皮(セイヒ)、石菖根(セキショウコン)、石榴実皮(セキリュウジツヒ)、石斛(セッコク)、川弓(センキュウ)、前胡(ゼンコ)、川骨(センコツ)、旋覆花(センプクカ)、接骨木(セッコツボク)、草果(ソウカ)、皀角刺(ソウカクシ)、桑寄生(ソウキセイ)、蒼耳子(ソウジシ)、蒼朮(ソウジュツ)、側柏葉(ソクハクヨウ)、続断(ゾクダン)、桑白皮(ソウハクヒ)、蘇木(ソボク)、蘇葉(ソヨウ)、ソウ莢(キョウ)、大黄(ダイオウ)、大棗(タイソウ)、大腹皮(ダイフクヒ)、沢瀉(タクシヤ)、丹参(タンジン)、竹如(チクジョ)、竹節人参(チクセツニンジン)、竹葉(チクヨウ)、知母(チモ)、地楡(チユ)、丁子(チョウジ)、釣腰鈎(チョウトウコウ)、陳皮(チンピ)、天南星(テンナンショウ)、天麻(テンマ)、天門冬(テンモントウ)、冬瓜子(トウガシ)、当帰(トウキ)、唐胡麻(トウゴマ)、党参(トウジン)、灯芯草(トウシンソウ)、桃仁(トウニン)、橙皮(トウヒ)、兎絲子(トシシ)、栃実(トチノミ)、杜仲(トチュウ)、独活(ドッカツ)土瓜根(ドカコン)、肉従容(ニクジュヨウ)、ニクズク、忍冬(ニンドウ)、人参(ニンジン)、貝母(バイモ)、麦芽(バクガ)、柏子仁(ハクシニン)、白扁豆(ハクヘンズ)、麦門冬(バクモントウ)、破胡紙(ハコシ)、簿荷(ハッカ)、蕃果(バンカ)、半夏(ハンゲ)、反鼻(ハンビ)、板藍根(バンヲンコン)、半枝連(ハンシレン)、百合根(ユリネ)白止(ビャクシ)、白花蛇舌草(ビャクカジャゼツソウ)、百部根(ヒャクブコン)、白朮(ビャクジュツ)、檳榔子(ビンロウジ)、防已(ボウイ)、茅根(ボウコン)、防風(ボウフウ)、蒲黄(ホウオウ)、蒲公英根(ホウエイコン)、牡丹皮(ボタンピ)、麻黄(マオウ)麻子仁(マシニン)、蔓荊子(マンケイシ)、松脂(マツヤニ)、木適(モクツウ)、木瓜(モッカ)、木香(モッコウ)、没薬(モツヤク)、木賊(モクゾク)、射干(ヤカン)、益智(ヤクチ)、夜交藤(ヤコウトウ)、羅漢果(ラカンカ)、蘭草(ランソウ)、竜眼肉(リュウガンニク)、竜胆(リュウタン)、良姜(リョウキョウ)、霊芝(レイシ)、連翹(レンギョウ)、達銭草(レンセンソウ)、蓮肉(レンニク)、芦根(ロコン)を挙げることができる。
【0074】
非タバコ植物の抽出物、所謂、エキスも使用することができ、抽出物の形態としては、液体、水あめ状、粉末、顆粒、溶液等が挙げられる。
【0075】
次いで、エアロゾルフォーマは、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、トリエチレングリコール、乳酸、ジアセチン(グリセリンジアセタート)、トリアセチン(グリセリントリアセタート)、トリエチレングリコールジアセタート、クエン酸トリエチル、ミリスチン酸イソプロピル、ステアリン酸メチル、ドデカンジオン酸ジメチル、テトラデカンサンジオン酸ジメチル等を使用できるが、特に、グリセリン、プロピレングリコールが好ましく用いられる。このようなエアロゾルフォーマは、被加熱芳香発生基材に対して、1~80質量%用いることが好ましく、10~40質量%であることがより好ましい。
【0076】
必要に応じ、風味を追加するために、香味料が好ましく用いられる。香味料としては、はっか、ココア、コーヒー、紅茶のエキス等が挙げられる。
【0077】
また、食品の抗菌性保存剤を添加して安定性を高めることが好ましく、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、安息香酸、安息香酸ナトリウム等を使用することができる。
【0078】
結合剤及び/又は増粘剤として、グアーガム、キサンタンガム、アラビアゴム、ローカストビーンガム、カラギーナン、寒天、アルギン酸、及び、ペクチン等の多糖類、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、及び、エチルセルロース等のセルロース系多糖類、デンプン及びデキストリン等のデンプン系多糖類、並びに、アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、及び、ペクチン等の有機酸塩を単独で又は二種以上を組合せて用いることができる。
【0079】
微結晶セルロースとは、パルプを酸で加水分解・精製した、高純度の流動性ある結晶化したセルロース粉末で、水、エタノール等の有機溶媒には溶解せず、医薬の錠剤成形用の賦形剤として用いられている。これは、微結晶セルロースの流動性と体積変化が大きい高圧縮性により、直打法による錠剤の成形における、凝集破壊の防止、金型との付着防止等に効果的であるためである。本発明においても、微結晶セルロースを添加することによって、例えば、三本ロールのロール成形による被加熱芳香発生基材を製造するためのシート製造において、シートの凝集破壊及び金属ロールとの付着を効果的に防止することができる効果が認められた。
【0080】
微結晶セルロースは、粉体のままでも、水等の溶媒に分散させて懸燭液としても投入することができる。溶媒に分散させる場合には、高速攪拌機や高圧ホモジナイザー等を使用することが好ましい。微結晶セルロースの添加量は、被加熱芳香発生基材の1~15質量%含有することが好ましく、3~12質量%であることがより好ましく、5~10質量%であることがより更に好ましい。
【0081】
本発明に用いられる微結晶セルロースの平均粒子径は、好ましくは30~200μmであり、より好ましくは50~150μmであり、より更に好ましくは70~120μmである。微結晶セルロースの平均粒子径が、30μm以上であるとシートの凝集破壊を防止する効果に優れ、200μm以下であると、シートと金属ロールとの付着を効果的に防止することができる。
【0082】
なお、上記微結晶セルロースの平均粒子径は、JIS K 0069:1992に記載の方法により、篩分け法によって求められた値である。つまり、上記平均粒子径は、複数の篩による試験結果について、目開きの大きいほうからの質量の積算を行い、その質量50%に相当する径をいうが、その際に、目開き250μmの篩上残留物が8質量%以下であって、目開き75μmの篩上残留物が45質量%以上であることがより好ましい。目開き250μmの篩上残留物が8質量%以下の場合は、篩分けされた微結晶セルロースがシートの凝集破壊を防止する効果を有し、目開き75μmの篩上残留物が45質量%以上の場合は、シートと金属ロールとの付着を防止することができる。
【0083】
微結晶セルロースの質量平均分子量(Mw)は、10,000~200,000であることが好ましく、10,000~100,000であることがより好ましく、20,000~60,000であることがより更に好ましい。10,000以上であると、シートの凝集破壊を抑制する効果に優れ、100,000以下であると、シートの凝集破壊を抑制する効果に加えて、シートと金属ロールの付着を効果的に防止することができる。
【0084】
なお、セルロースの分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により測定することができる。例えば、特開平6-109715号公報にあるような測定法が採用され、標準資料としては、ポリエチレングリコール等を適宜用いる。
【0085】
次いで、被加熱芳香発生体を製造するための原料となる麺状被加熱芳香発生基材23の製造工程について説明する。麺状被加熱芳香発生基材23は、主原料となる非タバコ植物を乾燥・粉砕し、秤量等を行う乾燥・粉砕工程と、その他の原料の前処理、秤量等を行う準備工程と、原料を混合して組成物とする混合工程と、組成物を被加熱芳香発生シートに成形する成形工程と、シートを麺状被加熱芳香発生基材23に断裁する断裁工程を経て製造される。
【0086】
乾燥・粉砕工程では、主原料となる非タバコ植物の使用部位(例えば、葉、種子、乾燥果実、茎、樹皮、根等)を組成物とするため、加熱乾燥し、所定の大きさの粉砕物に加工する。その際、後に添加するエアロゾルフォーマ、水、その他の成分のスラリー化(分散、吸収、及び、寄留)に適した水分量に調整する。その為、60~80℃の温度で乾燥を行うことが好ましく、65~75℃で行うことがより好ましい。この温度範囲で乾燥することによって、必要とする香味成分の散逸を避けながら、所望の水分量に到達させることができる。すなわち、60℃未満であると所望の水分量に到達するために時間を要し、80℃を超えると、必要とする香味成分が散逸する。そして、乾燥・粉砕後の非タバコ植物の水分量は0.1~5質量%とすることが好ましく、0.1~3質量%以下とすることがより好ましい。少なくとも一定の水分量が必要であるのは、水等との親和性がスラリー化に必要なためである。また、乾燥・粉砕工程に粉砕物を篩分けする分級工程を設けることによって、更にスラリー化を容易にするだけでなく、好ましい状態のスラリーを製造できる。
【0087】
準備工程においては、麺状被加熱芳香発生基材23を作製するにために必要な、非タバコ植物以外の原料であるエアロゾルフォーマ、微結晶セルロース、架橋ポリビニルピロリドン、β-シクロデキストリン、増粘剤、香味料、抗菌性保存剤、水、アルコール等を秤量しておき、混合工程に投入される。なお、本実施形態における水は、殺菌又は微生物を除去したもの、逆浸透膜又はイオン交換等により得られた純水を用いる。
【0088】
混合工程では、湿式混合が行われ、例えば、混合槽中の原料を撹拌羽根にて、剪断力を加えつつ混合するような形態の通常の湿式混合機、例えば、ヘンシェルミキサー等が好ましく用いられる。また、高粘度の場合には、ローターを用いたバンバリーミキサー、ブレードを用いたニーダー等が好ましく用いられる。
【0089】
本実施形態における成形工程では、代表例として、被加熱芳香発生体2を製造する原料となる長尺方向に長い直方体の麺状被加熱芳香発生基材23を成形加工する方法を説明するが、麺状被加熱芳香発生基材の形状はこれに限定されるものではない。また、下記に示す成形方法も一例であり、この方法に限定されるものでもない。
【0090】
まず、各種原料が混合された組成物を3本ロールミルで薄いシート状に成形する。3本ロールミルは、狭いロール間に押し込まれる圧縮力と、ロール速度差による剪断力により、混練、分散等を行いながら、ドクターブレードにより所望の厚さのシートとすることが可能であり、本発明のような種々の原料が分散したスラリーをシート状に成形する加工機として好ましい。この最終仕上げに、プレスローラやプレス機を用いてもよい。また、三本ロールミルは、成形だけでなく、混錬、分散を行うことができるため、必要に応じて、非タバコ植物、エアロゾルフォーマ、結合剤、香味料、抗菌性保存剤、水等を更に添加して、粘度、配合量を調整しながら所望の被加熱芳香発生シートに成形することもできる。上述したように、シートに成形加工する方法は、これに限定されず、スラリーを加圧によりオリフィスを通過させて成形する方法も好ましく用いられる。
【0091】
成形工程で成形される被加熱芳香発生シートの厚さは、0.1~1.0mmの範囲であることが好ましく、0.1~0.5mmの範囲であることがより好ましい。
【0092】
このようにして製造された被加熱芳香発生シートは、断裁工程において、カッター、回転刃方式のロータリーカッター等により、所定の幅に断裁され、麺状被加熱芳香発生基材23が製造される。
【0093】
本実施形態では、一例として、厚さ0.3mmの被加熱芳香発生シートの断裁について説明する。まず、成形された被加熱芳香発生シートを、縦150mm、横240mmの長方形に断裁する。この長方形の被加熱芳香発生シートを、ロータリーカッターに供給し、縦1.5mm、横240mmの形状に断裁し、シート断裁物、すなわち、被加熱芳香発生体21を製造するために供給する麺状被加熱芳香発生基材23を得る。この麺状被加熱芳香発生基材23を
図3(B)に示す。この場合の、麺状被加熱芳香発生基材23の長尺方向に垂直な断面の短軸の長さXは0.3mm、同じく長軸の長さYは1.5mm、長尺方向の長さZは240mmとなり、長軸の長さと短軸の長さとのアスペクト比は、Y:X=5:1、長尺方向の長さと短軸の長さとのアスペクト比は、Z:X=800:1である。
【0094】
しかし、麺状被加熱芳香発生基材23としては、
図3(B)に示した略直方体の形状に限定されものではなく、麺状被加熱芳香発生基材23の垂直な断面が略正方形、すなわち、短軸の長さと長軸の長さとのアスペクト比が1:1のもの使用することができる。
【0095】
また、
図4(A)及び(B)に示したように、麺状被加熱芳香発生基材23の垂直な断面が、それぞれ、円形及び楕円形のものも使用することが可能である。ただし、このような形状の場合には、被加熱芳香発生シートを用いて、円形及び楕円形のダイを用いた押出し成形や押出し製麺機等を用いて製造することができる。
【0096】
図5は、
図3(B)に示す形状の麺状被加熱芳香発生体23で、Y:X=5:1及びZ:X=800:1のものを50本用い、
図1に示すような芳香カートリッジ1に備える被加熱芳香発生体21を製造した。
【0097】
このような麺状被加熱芳香発生体23を用いた被加熱芳香発生体21の製造方法及び製造装置の概略を
図6に示した。被加熱芳香発生シートが断裁された麺状被加熱芳香発生基材23を、被加熱芳香発生体包装材ウェブ712の長尺方向に載置し、連続的に巻き上げ、巻き上げられた棒状被加熱芳香発生体25を断裁して被加熱芳香発生体21を製造する方法及び装置である。
【0098】
被加熱芳香発生シートが断裁された麺状被加熱芳香発生基材23が、麺状被加熱芳香発生基材供給部8のコンベア81に、麺状被加熱芳香発生基材23の長尺方向とコンベア81の移動方向が平行となるように投入されると、コンベア81及び麺状被加熱芳香発生基材移載装置82を経由して、被加熱芳香発生体包装材供給部71から供給される被加熱芳香発生体包装ウェブ712の長尺方向と麺状被加熱芳香発生基材23の長尺方向が平行となるように、巻上げ部7の麺状被加熱芳香発生基材受取部730で被加熱芳香発生体包装材ウェブ712上に移載される。被加熱芳香発生体包装材ウェブ712は、ガニチャーテープ供給部72から供給される無端状のガニチャーテープ721で支持、搬送される。このようにガニチャーテープ721に支持、搬送される被加熱芳香発生体包装材ウェブ712上に載置された麺状被加熱芳香発生基材23は、ガニチャーテープ721が被加熱芳香発生体包装材ウェブ712と共に、搬送方向と垂直方向から曲折されるような溝が形成された巻上げガイド(1)~(4)を通過して、円柱状の棒状被加熱芳香発生体25に巻き上げられ、断裁部9で所定の長さに断裁され、被加熱芳香発生体2が製造される。なお、棒状被加熱芳香発生体25の包装材を搬送方向の線状に接着する方法は、予め被加熱芳香発生体包装材ウェブ712の所定の位置にホットメルト接着剤を塗布しておき、巻き上げられた後に、加熱接着部74を通過することによって行われる。
【0099】
このようにして製造される、被加熱芳香発生体包装材22で束ねられた被加熱芳香発生体2内部の被加熱芳香発生基材21の充填構造、すなわち、異形気体流路は、巻上げ部7に設置された溝の深さが異なる巻上げガイド(1)731~(4)734を、ガニチャーテープ721と共に、麺状被加熱芳香発生基材23を載置した被加熱芳香発生体包装材ウェブ712が通過することによって形成される。
【0100】
この被加熱芳香発生体包装材22で束ねられた被加熱芳香発生体2内部の被加熱芳香発生基材21の異形気体流路が形成される様子を
図6(A)~(E)に示した。巻上げガイド(1)731~(4)734は、搬送方向に垂直に切断した断面の形状で、搬送方向に従って、溝の深さが深くなり、巻上げガイド(4)731において完全に巻き上げられる。
【0101】
図6(A)は、麺状被加熱芳香発生基材23が、被加熱芳香発生体包装材供給部71から供給される被加熱芳香発生体包装ウェブ712の長尺方向と麺状被加熱芳香発生基材23の長尺方向が平行となるように、コンベア81から麺状被加熱芳香発生基材移載装置82を経由して、巻上げ部7の麺状被加熱芳香発生基材受取部730で被加熱芳香発生体包装材ウェブ712上に移載された状態を示している。実際には、
図6(A)に描かれている程ではないが、麺状被加熱芳香発生基材23は、ほぼ整列して積み上げられている。
【0102】
図6(B)は、三日月程度の浅い溝の巻上げガイド(1)731を通過している状態を示している。被加熱芳香発生体包装ウェブ712上に整列して積み上げられていた麺状被加熱芳香発生基材23がガニチャーテープ721と共に溝を通過すると、ガニチャーテープ721及び被加熱芳香発生体包装ウェブ712が溝に沿って搬送方向の垂直方向に曲折され、麺状被加熱芳香発生基材23が崩れるように麺状被加熱芳香発生基材一次凝集体232を形成し、麺状被加熱芳香発生基材一次凝集体形成気体流路が生成し始めている。
【0103】
次いで、
図6(C)では、半月程度の深さの溝の巻上げガイド(2)732を通過している状態を示している。ガニチャーテープ721及び被加熱芳香発生体包装ウェブ712が溝に沿って搬送方向の垂直方向に大きく曲折すると共に、麺状被加熱芳香発生基材一次凝集体232が次々と形成され、そのそれぞれに数多くの麺状被加熱芳香発生基材一次凝集体形成気体流路233が形成されている。同時に、麺状被加熱芳香発生基材一次凝集体232同士、又は、麺状被加熱芳香発生基材一次凝集体232と麺状被加熱芳香発生基材単独体231等が麺状被加熱芳香発生基材二次凝集体234を形成し、麺状被加熱芳香発生基材一次凝集体232間及び麺状被加熱芳香発生基材一次凝集体232と麺状被加熱芳香発生基材単独体231との間に大きな麺状被加熱芳香発生基材二次凝集体形成気体流路235が形成され始める。また、外周領域では、麺状被加熱芳香発生基材単独体231及び麺状被加熱芳香発生基材一次凝集体232と被加熱芳香発生体包装ウェブ712との間に被加熱芳香発生体包装ウェブ形成気体流路241も形成されるようになる。
【0104】
更に、
図6(D)では、満月に近い溝の巻上げガイド(3)733を通過すると、
図6(C)の状態が進行すると共に、ガニチャーテープ721及び被加熱芳香発生体包装ウェブ712が溝に沿って搬送方向の垂直方向に円周を描くようになり、その外周領域では、麺状被加熱芳香発生基材一次凝集体232及び麺状被加熱芳香発生基材二次凝集体234を構成する麺状被加熱芳香発生基材23が滑りながら移動し、麺状被加熱芳香発生基材23に垂直な断面の長軸方向の面が、隣接する麺状被加熱芳香発生基材23の垂直な断面の長軸方向の面と接する頻度が高くなると共に、この長軸方向が、円周の接線方向に配列する麺状被加熱芳香発生基材23の数も多くなり、外周領域の麺状被加熱芳香発生基材23の充填率が高くなり始める。一方、中心領域は、麺状被加熱芳香発生基材一次凝集体232及び麺状被加熱芳香発生基材二次凝集体234が残存しており、麺状被加熱芳香発生基材一次凝集体形成気体流路233及び麺状被加熱芳香発生基材二次凝集体形成気体流路235が大きく低減されることはなく、外周領域よりも空隙が多くなり始めている。
【0105】
そして、
図6(E)では、ガニチャーテープ721及び被加熱芳香発生体包装ウェブ712が溝に沿って搬送方向の垂直方向に完全に巻き上げられ、棒状被加熱芳香発生体25が形成される。この状態では、
図6(D)の状態が更に進行し、棒状被加熱芳香発生体25の内部構造が固定される。すなわち、棒状被加熱芳香発生体25の中心領域では、嵩高い麺状被加熱芳香発生基材一次凝集体232及び麺状被加熱芳香発生基材二次凝集体234が残存しており、これらに内在する麺状被加熱芳香発生基材一次凝集体形成気体流路233及び麺状被加熱芳香発生基材二次凝集体形成気体流路235のため、空隙率が高く、異形気体流路が確保されている。一方、外周領域は、麺状被加熱芳香発生基材単独体231及び麺状被加熱芳香発生基材一次凝集体232と被加熱芳香発生体包装ウェブ712との間に被加熱芳香発生体包装ウェブ形成気体流路241も形成されているが、麺状被加熱芳香発生基材一次凝集体232及び麺状被加熱芳香発生基材二次凝集体234を構成する麺状被加熱芳香発生基材23が滑りながら移動し、麺状被加熱芳香発生基材23に垂直な断面の長軸方向の面が、隣接する麺状被加熱芳香発生基材23の垂直な断面の長軸方向の面と接する頻度が高くなると共に、この長軸方向が、円周の接線方向に配列する麺状被加熱芳香発生基材23の数も多く、外周領域の麺状被加熱芳香発生基材23の充填率が高くなり、安定した強固な構造を形成している。
【0106】
上記棒状被加熱芳香発生体25の内部構造は、その長尺方向に垂直な断面の構造であって、麺状被加熱芳香発生基材23の長尺方向に垂直な断面は、長尺方向に均一に生成されているため、棒状加熱芳香発生体25の長尺方向に垂直な断面の構造は均一であると共に、麺状被加熱芳香発生基材一次凝集体形成気体流路233、麺状被加熱芳香発生基材二次凝集体形成気体流路235、及び、被加熱芳香発生体包装ウェブ形成気体流路241の異形気体流路は、棒状加熱芳香発生体25の長尺方向に貫通している。従って、この棒状加熱芳香発生体25を断裁して製造された被加熱芳香発生体2と棒状加熱芳香発生体25の内部構造は同一である。
【0107】
図7に、被加熱芳香発生体2の長尺方向に垂直な断面の拡大図を示した。これは、
図6(E)の断面図と全く同じものであり、同一構造である。従って、この被加熱芳香発生体2を備えた芳香カートリッジ1を使用して喫煙を行うと、従来の芳香カートリッジの課題を解消され、エアロゾルの煙及び芳香が、喫煙者の口腔内に十分吸引されることができ、心地よい喫煙ができるだけでなく、外周領域における被加熱芳香発生基材の充填率が、中心領域より高いことにより、被加熱芳香発生体の端部及び外周部からの圧力に対して強固な構造を形成するため、芳香カートリッジの脱着時に被加熱芳香発生基材が脱落することがなく、適正な喫煙数を確保すると共に、吸引時の被加熱芳香発生基材の燃焼の問題も生じることがない。加えて、中心領域の充填率が低いため、芳香カートリッジを加熱式芳香具の発熱体に差し込み易くすることができる。
【0108】
なお、本実施形態で製造された被加熱芳香発生体2は、50本の麺状被加熱芳香発生基材23が、被加熱芳香発生体包装材ウェブ712で巻き上げられ、断裁部9で断裁することによって、外形約6.9mm、長さ12.0mmに仕上げられ、その質量は0.29gであり、被加熱芳香発生体2の体積に対する被加熱芳香発生基材21の体積充填率は約0.60、被加熱芳香発生体2の密度は、1.07g/cm3であった。そして、これを用いて製造された
図1に示した芳香カートリッジ1は、市販されている加熱式芳香具に十分適合するものであった。
【0109】
ここで、
図1に示した芳香カートリッジ1で使用するマウスピース3を構成する支持部材31について補足説明する。
図8は、支持部材の長尺方向に垂直な断面の模式図である。
図1では、
図8(A)に示した中空円筒状の支持部材31(1)を使用している。中空部が気体流路(1)311であり、外周部が被加熱芳香発生体包装材22と接し、被加熱芳香発生体2のマウスピース側への移動を防止する支持部(1)314である。
【0110】
本発明の異形気体流路を有する被加熱芳香発生体2によって、従来以上に心地よい喫煙を楽しむことができるようになるが、支持部材31の構造を変更することによって、更なる改良が可能であるため、
図8(B)及び(C)の支持部材31(2)及び31(3)を使用することが、本発明の被加熱芳香発生体2と組合せにおいて好ましい。
図8(B)は、支持部材31(2)の中央から外周方向に4つの突起を設けた支持部(2)315とその突起の間に気体流路(2)312が形成されているものである。
図8(C)は、中空円筒状の支持部材31(3)であるが、外周部と、中空部に設けられた隔壁とが支持部(3)316を形成し、隔壁が設けられた中空部が気体流路(3)313となっている。
【0111】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、本実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲内において様々に適用されうるものである。例えば、本実施形態では、被加熱芳香発生体2とフィルター32との間には、支持部材31だけしか設けられていないが、支持部材31とフィルター32の間に冷却部材を設けることもできる。
【符号の説明】
【0112】
1 芳香カートリッジ
2 被加熱芳香発生体
21 被加熱芳香発生基材
211 被加熱芳香発生基材単独体
212 被加熱芳香発生基材一次凝集体
213 被加熱芳香発生基材一次凝集体形成気体流路
214 被加熱芳香発生基材二次凝集体
215 被加熱芳香発生基材二次凝集体形成気体流路
22 被加熱芳香発生体包装材
221 被加熱芳香発生体包装材形成気体流路
23 麺状被加熱芳香発生基材
231 麺状被加熱芳香発生基材単独体
232 麺状被加熱芳香発生基材一次凝集体
233 麺状被加熱芳香発生基材一次凝集体形成気体流路
234 麺状被加熱芳香発生基材二次凝集体
235 麺状被加熱芳香発生基材二次凝集体形成気体流路
24(712) 被加熱芳香発生体包装材ウェブ
241 被加熱芳香発生体包装材ウェブ形成気体流路
25 棒状被加熱芳香発生体
3 マウスピース
31(1)~(3) 支持部材
311 気体流路(1)
312 気体流路(2)
313 気体流路(3)
314 支持部(1)
315 支持部(2)
316 支持部(3)
32 フィルター
4 被加熱芳香発生体/支持部材連結材
5 芳香カートリッジ外装材
6 加熱式芳香具
61 チャンバー
62 電気制御式発熱体
7 巻上げ部
71 被加熱芳香発生体包装材供給部
712(24) 被加熱芳香発生体包装材ウェブ
713 ガイドローラー
72 ガニチャーテープ供給部
721 ガニチャーテープ
722 ガイドローラー
73 巻上げガイド
730 麺状被加熱芳香発生基材受取部
731 巻上げガイド(1)
732 巻上げガイド(2)
733 巻上げガイド(3)
734 巻上げガイド(4)
74 加熱接着部
8 麺状被加熱芳香発生基材供給部
81 コンベア
82 麺状被加熱芳香発生基材移載装置
9 断裁部
X 麺状体断面の短軸の長さ
Y 麺状体断面の長軸の長さ
Z 麺状体の長さ