(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134695
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】香味発生セグメント、ならびにこれを備える香味発生物品および香味吸引システム
(51)【国際特許分類】
A24D 1/20 20200101AFI20230920BHJP
A24F 40/20 20200101ALI20230920BHJP
A24F 40/46 20200101ALI20230920BHJP
A24C 5/01 20200101ALI20230920BHJP
【FI】
A24D1/20
A24F40/20
A24F40/46
A24C5/01
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023116565
(22)【出願日】2023-07-18
(62)【分割の表示】P 2021205732の分割
【原出願日】2018-06-22
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2017/023076
(32)【優先日】2017-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129311
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 規之
(72)【発明者】
【氏名】山田 学
(57)【要約】 (修正有)
【課題】良好な香喫味を与える香味発生セグメント、これを備える香味発生物品および香味吸引システムを提供する。
【解決手段】第1香味発生部材1aおよび第2香味発生部材1bを備える香味発生セグメント1であって、第1および第2の香味発生部材のうち少なくとも1つの香味発生部材は複数の積層された香味発生シート10を含み、かつ少なくとも1対の隣接する前記香味発生シート間に当該香味発生シート同士が接触しない非接触部を有し、前記シートの主面が他方の香味発生部材と対向している、香味発生セグメント、これを備える香味発生物品および香味吸引システム。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1香味発生部材および第2香味発生部材を備える香味発生セグメントであって、
前記第1および第2の香味発生部材のうち少なくとも1つは複数の積層された香味発生シートを含み、かつ少なくとも1対の隣接する前記香味発生シート間に当該香味発生シート同士が接触しない非接触部を有し、
前記香味発生シートの主面が他方の香味発生部材と対向している、
香味発生セグメント。
【請求項2】
少なくとも1対の隣接する前記香味発生シート間に、当該香味発生シート同士が接触している接触部をさらに有する、請求項1に記載の香味発生セグメント。
【請求項3】
前記接触部を2つ以上有し、前記非接触部が当該接触部の間に形成されている、請求項2に記載の香味発生セグメント。
【請求項4】
前記第1香味発生部材と第2香味発生部材の間に空間を有する、請求項1に記載の香味発生セグメント。
【請求項5】
前記第1香味発生部材および第2香味発生部材が伝熱シートを含み、
当該伝熱シートは前記空間に露出している、請求項4に記載の香味発生セグメント。
【請求項6】
前記複数の香味発生シートのうち少なくとも1枚は、少なくとも一方の面の一部または全部に表面加工が施されている、請求項1に記載の香味発生セグメント。
【請求項7】
前記表面加工が捲縮加工である、請求項6に記載の香味発生セグメント。
【請求項8】
前記香味発生部材の外側にラッパーを備える、請求項1に記載の香味発生セグメント。
【請求項9】
請求項1に記載の香味発生セグメントおよびフィルタを備え、当該フィルタ側から吸引可能な香味発生物品。
【請求項10】
請求項1に記載の香味発生セグメントと、当該香味発生セグメントを加熱するヒーターとを備える、香味吸引システム。
【請求項11】
前記香味発生セグメントが、前記第1香味発生部材と第2香味発生部材の間に空間を有し、前記ヒーターは、前記ヒーターの少なくとも一部が当該空間内に位置づけることが可能な形状を具備している、請求項10に記載の香味吸引システム。
【請求項12】
前記第1香味発生部材と第2香味発生部材が、前記空間に露出する伝熱シートを含み、当該前記伝熱シートが前記ヒーターと対面する、請求項11に記載の香味吸引システム。
【請求項13】
前記ヒーターが、平板型ヒーターである、請求項10に記載の香味吸引システム。
【請求項14】
基材の上に、前記第1香味発生部材および第2香味発生部材を離間して載置する工程A、
当該2つの香味発生部材の上面を互いに対面させるように前記基材を折りたたみロッド状のセグメントを形成する工程B、を備える、
請求項1に記載の香味発生セグメントの製造方法。
【請求項15】
前記工程Bが、前記2つの対向する香味発生部材の間に空間を形成する工程をさら含む
、請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
前記工程Aが、前記基材上の、第1香味発生部材および第2香味発生部材との間に開口部を設ける工程をさらに含む、請求項14に記載の製造方法。
【請求項17】
請求項1に記載の香味発生セグメントの前駆体であって、
基材、および
当該基材の上に、離間して配置された第1香味発生部材および第2香味発生部材を備え、
少なくとも一つの香味発生部材は、基材に平行に積層された複数の香味発生シートを含み、かつ少なくとも1対の隣接する前記香味発生シート間に当該香味発生シート同士が接触しない非接触部を有する、前駆体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香味発生セグメント、ならびにこれを備える香味発生物品および香味吸引システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来たばこの代替として非燃焼型香味吸引システムの開発が進められている。例えば、特許文献1には、平板状ヒーターを収納するための凹部を有する筐体および当該筐体内に喫煙可能材料の積層体を備えるたばこカートリッジであって、当該積層体が前記ヒーターと前記筐体の凹部の壁を介して近接するように筐体内部表面に配置されているたばこカートリッジが開示されている(特許文献1
図4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非燃焼型香味吸引システムにおいてはより良好な香喫味を得ることが求められているが、特許文献1に記載の技術には未だ改善の余地がある。かかる事情を鑑み、本発明は、良好な香喫味を与える香味発生セグメント、これを備える香味発生物品および香味吸引システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明者らは特定の構造を有する香味発生セグメントが前記課題を解決することを見出し、本発明を完成した。すなわち、前記課題は以下の本発明によって解決される。
[1]第1香味発生部材および第2香味発生部材を備える香味発生セグメントであって、
前記第1および第2の香味発生部材のうち少なくとも1つは複数の積層された香味発生シートを含み、かつ少なくとも1対の隣接する前記香味発生シート間に当該香味発生シート同士が接触しない非接触部を有し、
前記香味発生シートの主面が他方の香味発生部材と対向している、
香味発生セグメント。
[2]少なくとも1対の隣接する前記香味発生シート間に、当該香味発生シート同士が接触している接触部をさらに有する、[1]に記載の香味発生セグメント。
[3]前記接触部を2つ以上有し、前記非接触部が当該接触部の間に形成されている、[2]に記載の香味発生セグメント。
[4]前記第1香味発生部材と第2香味発生部材の間に空間を有する、[1]~[3]のいずれかに記載の香味発生セグメント。
[5]前記第1香味発生部材および第2香味発生部材が伝熱シートを含み、
当該伝熱シートは前記空間に露出している、[4]に記載の香味発生セグメント。
[6]前記複数の香味発生シートのうち少なくとも1枚は、少なくとも一方の面の一部または全部に表面加工が施されている、[1]~[5]のいずれかに記載の香味発生セグメント。
[7]前記表面加工が捲縮加工である、[6]に記載の香味発生セグメント。
[8]前記香味発生部材の外側にラッパーを備える、[1]~[7]のいずれかに記載の香味発生セグメント。
[9]前記[1]~[8]のいずれかに記載の香味発生セグメントおよびフィルタを備え
、当該フィルタ側から吸引可能な香味発生物品。
[10]前記[1]~[8]のいずれかに記載の香味発生セグメントと、当該香味発生セグメントを加熱するヒーターとを備える、香味吸引システム。
[11]前記香味発生セグメントが、前記第1香味発生部材と第2香味発生部材の間に空間を有し、前記ヒーターは、前記ヒーターの少なくとも一部が当該空間内に位置づけることが可能な形状を具備している、[10]に記載の香味吸引システム。
[12]前記第1香味発生部材と第2香味発生部材が、前記空間に露出する伝熱シートを含み、当該前記伝熱シートが前記ヒーターと対面する、[11]に記載の香味吸引システム。
[13]前記ヒーターが平板型ヒーターである、[10]~[12]のいずれかに記載の香味吸引システム。
[14]基材の上に、前記第1香味発生部材および第2香味発生部材を離間して載置する工程A、
当該2つの香味発生部材の上面を互いに対面させるように前記基材を折りたたみロッド状のセグメントを形成する工程B、を備える、[1]~[8]のいずれかに記載の香味発生セグメントの製造方法。
[15]前記工程Bが、前記2つの対向する香味発生部材の間に空間を形成する工程をさら含む、[14]に記載の製造方法。
[16]前記工程Aが、前記基材上の、第1香味発生部材および第2香味発生部材との間に開口部を設ける工程をさらに含む、[14]または[15]に記載の製造方法。
[17]前記[1]~[8]に記載の香味発生セグメントの前駆体であって、
基材、および
当該基材の上に、離間して配置された第1香味発生部材および第2香味発生部材を備え、
少なくとも一つの香味発生部材は、基材に平行に積層された複数の香味発生シートを含み、かつ少なくとも1対の隣接する前記香味発生シート間に当該香味発生シート同士が接触しない非接触部を有する、前駆体。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、良好な香喫味を与える香味発生セグメント、これを備える香味発生物品および香味吸引システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2A】本発明の香味発生セグメントの概要を示す図
【
図2B】本発明の香味発生セグメントの一部の概要を示す図
【
図2C】積層された香味発生シートの一態様を示す図
【
図2D】積層された香味発生シートに設けられた隙間を示す図
【
図5】本発明の香味発生セグメントの製造方法の概要を示す図
【
図6】本発明の香味発生セグメントの製造方法の概要を示す図
【
図7】本発明の香味発生物品の製造方法の概要を示す図
【
図8A】本発明の香味発生物品の製造方法の概要を示す図
【
図8B】本発明の香味発生物品の製造方法の概要を示す図
【
図9】本発明の香味吸引システムの製造方法の概要を示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明において、香味発生セグメントとは香味を発生するための基材である。香味発生
物品とは少なくとも香味発生セグメントを含み、香味を発生可能な物品あるいは香味を吸引可能なロッド状の物品である。香味発生物品は香味発生セグメントを含むが、香味発生セグメント自体が香味発生物品であってもよい。香味吸引システムとは香味発生物品と、ヒータを備えた加熱ユニットとの組合せをいう。
【0009】
1.香味発生セグメント
本発明の香味発生セグメントの一態様を
図2Aに示す。
図2Aにおいて、1aは第1香味発生部材、1bは第2香味発生部材、10は香味発生シート、10
outは最外層の香味
発生シート、10
inは最内層の香味発生シート、14は空間、16は伝熱シートである。第1香味発生部材1aおよび第2香味発生部材1bは対向して配置される。この際、双方の香味発生部材の主面が対向するように配置されることが好ましく、主面が平行に配置されることがより好ましい。
図2Aにおいては、2つの香味発生部材が複数の香味発生シートから構成されているが、一方の香味発生部材は、1枚の香味発生シートで構成されていてもよいし、香味発生ブロックで構成されていてもよい。本発明においてシートとは、略平行な1対の主面、および側面を有する形状をいう。シートは抄紙によって製造されることが好ましい。香味発生ブロックとは好ましくは射出成型や押出成形等、抄紙以外の方法で製造される。また香味発生ブロックの形状は限定されないが、立方体、直方体、円柱、楕円柱等の形状を取ることができ、直方体形状であることが好ましい。このような態様においては、前記香味発生シートの主面と香味発生ブロックとが対向するように2つの香味発生部材が配置される。香味デリバリ効率を考慮すると、2つの香味発生部材が複数の香味発生シートから構成されていることが好ましいので、以下、この態様を例にして本発明を説明する。
【0010】
本発明の香味発生セグメント1の形状は限定されないが、柱状であることが好ましい。本発明の香味発生セグメント1は、以下のように定義されるアスペクト比が1以上である形状を満たす柱状形状を有していることが好ましい。
【0011】
アスペクト比=h/w
wは柱状体の底面の幅、hは高さであり、h≧wであることが好ましい。底面の形状は限定されず、多角、角丸多角、円、楕円等であってよく、幅wは当該底面が円形の場合は直径、楕円形である場合は長径、多角形または角丸多角である場合は外接円の直径または外接楕円の長径である。例えば、
図2A(i)に示す態様における香味発生シートを後述のラッパーで巻き上げ
図2A(ii)に示すような底面形状の香味発生セグメントを得た場合、その底面は楕円形状であるため、上述の底面の幅wは、外接楕円の長径であると認定できる。当該長径とこれに直交する長さと比較すると、前者が幅w、後者が高さhとなる。製造しやすさ等を考慮すると、底面は多角形であることが好ましく、四角形であることがより好ましい。香味発生セグメント1の高さhは5~20mm程度、幅wは2~5mm程度であることが好ましい。また、図示されていないが、香味発生セグメント1は最外部にラッパーを備えていてもよい。ラッパーは巻紙であってもよいし、香味発生シート10から構成されていてもよい。また、ラッパーは後述するとおり基材6から構成されていてもよい。
【0012】
香味発生シートとは、香味を発生するシートであり、香味を発生しうる成分をシート基材に担持させてなるシートまたは香味を発生する材料で構成されたシートが挙げられる。複数の香味発生シートは積層されて香味発生部材を構成する。積層されるとは香味発生シートの主面同士が重なるように配置されることをいう。ただし、少なくとも1対の隣接する香味発生シート同士は非接触部を有するので、本発明において積層されているとは、すべての隣接する1対の香味発生シート同士の全面が接触している態様を含まない。すなわち、香味発生部材が3以上の香味発生シートを備えるとき、1対のシート同士において非接触部を有していれば他の1対においてシート同士が全面において接触していてもよい。
しかしながら香味デリバリ効率等を考慮すると、本発明においては、すべてのシート間に係る非接触部を有していることが好ましい。
【0013】
香味を発生しうる成分としては、例えば、たばこ原料に含まれる香喫味成分やメントール等の香料成分等が挙げられる。シート基材としては、例えば、圧縮たばこペレットやたばこ粉末等のたばこ材料等が挙げられる。本発明において、シート基材としてはたばこ材料が好ましい。すなわち香味発生シートとしては、たばこ材料の基材シートに必要に応じて香味を発生しうる成分を担持したたばこシートが好ましい。香味発生シートは、加熱に伴ってエアロゾルを発生してもよい。エアロゾルの発生を促進するためにグリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール等のポリオール等のエアロゾル源を更に添加してもよい。かかるエアロゾル源の添加量は、香味発生シートの乾燥重量に対して5~50重量%が好ましく、10~30重量%がより好ましい。尚、グリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール等のポリオールは香喫味成分として添加してもよい。エアロゾル源を含む場合または香味成分がエアロゾルを発生する場合、香味発生シートはエアロゾル発生シートでもある。
【0014】
まずは積層される前の素材としての香味発生シートについて説明する。
【0015】
1)調製
香味発生シートがエアロゾル発生シート、好ましくはたばこシートである場合、たばこシートは抄造、スラリー、圧延、等の公知の方法で適宜製造できる。具体的に抄造の場合は、以下の工程を含む方法で製造できる。1)乾燥葉たばこ原料を粗砕し、水で抽出して水抽出物と残渣に分離する。2)水抽出物を減圧乾燥して濃縮する。3)残渣にパルプを加え、リファイナで繊維化した後、抄紙する。4)抄紙したシートに水抽出物の濃縮液を添加して乾燥したばこシートとする。この場合、ニトロソアミン等の一部の成分を除去する工程を加えてもよい(特表2004-510422号公報参照)。スラリー法の場合は、以下の工程を含む方法で製造できる。1)水パルプバインダと、砕いたたばこを混合する。2)当該混合物を薄く延ばして(キャストして)乾燥する。この他、国際公開第2014/104078号に記載されているように、以下の工程を含む方法によって製造された不織布状のたばこシートを用いることもできる。1)粉粒状のたばこ原料と結合剤を混合する。2)当該混合物を不織布によって挟む。3)当該積層物を熱溶着によって一定形状に成形し、不織布状のたばこシートを得る。たばこシートの組成は特に限定されないが、例えば、たばこ原料の含有量はたばこシート全重量に対して50~95重量%であることが好ましい。また、たばこシートはバインダを含んでもよく、係るバインダとしては、例えば、グアーガム、キサンタンガム、CMC(カルボキシメチルセルロース)、CMC-Na(カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩)等が挙げられる。バインダ量としては、たばこシート全重量に対して2~20重量%であることが好ましい。たばこシートはさらに他の添加物を含んでもよい。添加物としては、例えばパルプなどのフィラーを挙げることができる。前述のとおり、たばこシートは香味を発生しうる成分を含む。本発明においては複数のたばこシートを用いるが、係るたばこシートはすべて同じ組成あるいは物性を有していてもよいし、各たばこシートの中の一部または全部が異なる組成あるいは物性を有していてもよい。香味発生シートがたばこシート以外である場合、例えばたばこ原料以外の植物パルプをシート基材として用いたシートを用いることができる。
【0016】
2)寸法等
香味発生シートの形状は限定されないがシート主面の形状が四角形であることが好ましい。厚みは限定されないが、高効率の熱交換や香味発生セグメントの強度等を考慮すると、200μm~2mmが好ましく、200~600μmがより好ましい。各香味発生シートの厚みは同じであってもよいし異なっていてもよい。香味発生セグメント1としたときにその高さh方向に平行な長さを香味発生シート長さLといい、これに直交する長さを幅
Wという。高さhと香味発生シート長さLは同一でもよいし異なっていてもよい。例えば香味発生セグメントが長さhのラッパーを備える場合、香味発生セグメントの高さはhである。当該ラッパーに包接される香味発生シートの長さLはhよりも短くてもよい。Lはすべての香味発生シートにおいて同じであることが好ましい。
図2Aのように香味発生シートが積層される場合は、Wはすべての香味発生シートにおいて同じであることが好ましい。
図2Cに示すように香味発生シートの両長辺が折り曲げられて積層される場合または香味発生シートが湾曲されて積層される場合は、最外層を構成する香味発生シートのWが、最内層を構成する香味発生シートのWよりも大きいことが好ましい。
図2Cに示す態様においては、対向する香味発生シート端同士が接触していてもよい。
【0017】
3)表面加工
複数の香味発生シートのうち少なくとも1枚は、少なくとも一方の面の一部または全部に表面加工が施されていることが好ましい。本発明において表面加工とは、香味発生シートの少なくとも一方の主面、即ち表面または裏面に複数の凹凸を形成する加工をいう。表面加工の方法としては特に限定されず、捲縮加工、エンボス加工、デボス加工、ハーフカット加工等の公知の加工を用いることができる。本発明において捲縮加工とはシートにしわを設ける加工である。例えば、表面に複数の凸部を有する一対のローラ間に香味発生シートを通すことによって、香味発生シートの表面と裏面の両方にシート搬送方向に直交して延びるしわを設けて捲縮加工を施すことができる。係るローラに設けられた凸部は、シート搬送方向に直交して延びている。ローラに設けられた凸部の頂点間のピッチは0.5~2.0mmが好ましい。そのため、香味発生シートのピッチは0.5~2.0mmであることが好ましい。また、香味発生シートのピッチは、香味発生セグメントの幅に対して1.5~20%であることが好ましい。捲縮によってできた凹凸の高さHはシートの平均厚みをTavとするとき、1.05Tav~1.59Tavであることが好ましい。高さHは、捲縮加工されたシートを水平な面に載置した際にシート底部からシート頂点までの距離として定義される。エンボス加工やデボス加工とは、凸状の加工具をシートに押しつけてシートの片面または両面に凹部を形成する加工であり、ハーフカット加工とは、シートの片面または両面に、シートが切断されない程度の深さ、好ましくはシート厚みの半分以下の深さの切込みを設ける加工である。ハーフカット加工にはナイフやレーザーを用いることができる。後述するとおり、香味発生シートに表面加工を施すことで、香味発生部材とした場合に効率よく非接触部、好ましくは後述する隙間を形成できる。香味発生シートの凸部の頂点間のピッチは同一シート内ですべて同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、各香味発生シートの凸部の頂点間のピッチは、シート毎に異なっていてもよいし、同一であってもよい。
【0018】
次に、積層された香味発生シートについて説明する。
【0019】
1)積層された複数の香味発生シート
少なくとも1つの香味発生部材は、複数の香味発生シート10が積層されて構成される。積層された香味発生シート10の数は2枚~15枚であることが好ましい。香味発生シートの数を係る数とすることにより、十分な量の香味成分を発生させることができると共に、後述する隙間として十分なスペースを確保でき、発生した香味のデリバリ効率を高めることができる。香味発生セグメントに含まれる香味発生部材1aおよび1bの総重量は130mg~685mgであることが好ましく、200mg~350mgであることが好ましい。各香味発生シート10の重量は、この総重量を達成できるように適宜選択される。
【0020】
前述のとおり香味発生シートはグリセリンなどのエアロゾル源を含むが、吸引の終始にわたってエアロゾルのデリバリーが均一になるように各香味発生シートに含まれるエアロゾル源の重量を調整することが好ましい。例えば
図10(a)に示すように、香味発生セ
グメントの中心から外側に向かってA~Cの位置を特定し、当該位置を含む領域にそれぞれ同じ厚みのシートが存在する場合を考える。この場合、各シートのエアロゾル源の重量が同じであれば、シート厚み当たりのエアロゾル源の重量は同じになる。このためA、B、Cの位置で発生しうるエアロゾル源の量をほぼ同じとすることができる。
【0021】
一方、当該位置を含む領域に異なる厚みのシートが存在する場合(
図10(b))、各シートのエアロゾル源の重量が同じであってもシート厚み当たりのエアロゾル源の重量は異なるので、A、B、Cの位置で発生しうるエアロゾル源の量も異なる。この場合、以下の関係を満たすようにシートを設計すれば、A、B、Cの位置位置で発生しうるエアロゾル源の量をほぼ同じとすることができる。
X/a=Y/b=Z/c
a:Aの位置をカバーするシートAの厚み、
X:Aの位置をカバーするシートAに含まれるエアロゾル源の重量
b:Bの位置をカバーするシートBの厚み、
Y:Bの位置をカバーするシートBに含まれるエアロゾル源の重量
c:Cの位置をカバーするシートCの厚み、
Z:Cの位置をカバーするシートCに含まれるエアロゾル源の重量
【0022】
例えばシートの内外表面において表面加工に差を設ける等によってもこのような設計が可能となる。具体的には内表面にハーフカットを多く設け、該表面にはハーフカットを少なく設けるなどの態様が考えられる。
【0023】
さらに、内側に配置される当該シートと外側に配置される当該シートにおいて、当該シートに含まれる香喫味成分および香料成分の重量を変えることで、吸引時に所望のタイミングで香喫味を変化させることもできる。
【0024】
各香味発生シートは隣接するシート間に非接触部を有するように積層されるので、少なくとも1対の隣接する前記香味発生シート間に当該香味発生シート同士が接触しない非接触部を有する。
【0025】
2)非接触部
1対の隣接する前記香味発生シート間には、当該シート同士が接触する接触部分を2つ以上有することが好ましい。当該接触部分との間に形成された非接触部分を「隙間」という。一部または全部の隙間は、香味発生セグメントの先端部から後端部にわたって延びていることが好ましい。これによって香味流路を確保して香味デリバリ効率を向上することができ、さらには接触部分を介してヒータからの熱を外側の香味発生シートに伝達できるので伝熱効率を高めることができる。
【0026】
隣接する1対の香味発生シート間に前記隙間を設ける方法は特に限定されず、例えば前述の表面加工を少なくとも一つの香味発生シートに施すこと等によって行うことができる。具体的には、表面加工により凹凸が設けられた香味発生シートと平らな香味発生シートとの組合せや(
図2D(i))、表面加工により凹凸が設けられた香味発生シート同士の凸部の位置を同一の位置に存在させない、すなわち凹凸の位相をずらすこと(
図2D(ii))等によって、隙間を設けることができる。
図2DにおいてCは接触部、Vは隙間である。位相をずらす方法は限定されないが、例えば香味発生シート毎に表面加工のピッチを変える等の方法が挙げられる。前記接触部は接着されていてもよいし接着されていなくてもよい。香味発生シートが表面処理によって設けられた凸部を複数具備する場合、少なくとも係る凸部のうちの一つが隣接する香味発生シートと接触していればよい。捲縮加工されたシートに形成された凸部の長手方向は香味発生セグメントの長手方向と平行または略平行であることが好ましい。凸部の長手方向とは稜線の延びる方向であり、捲縮ローラ
ーによる加工時のシート搬送方向に直交する方向である。
【0027】
隣接する2つの香味発生シートの層間距離の最大値Gmaxは、当該隣接する2つの香味発生シートのうちの少なくとも一方の香味発生シート厚みの最大値Tmaxよりも大きいことが好ましい。このことは以下の方法で確認できる。
図2Bに示すように香味発生セグメント1のある断面においてn番目のシートと(n+1)番目のシート間に形成される層間距離nを測定して最大値G
(n)maxを決定する。次いでn番目のシートと(n+1
)番目のシートの厚みを測定して最大値T
(n)maxおよびT
(n+1)maxを決定して比較する。この測定を総ての層間について実施する。例えば、シート枚数が4枚である場合、3つの層間について測定を実施する。そして当該断面において以下を満たすことを確認する。
G
(1)max>T
(1)maxまたはG
(1)max>T
(2)max
G
(2)max>T
(2)maxまたはG
(2)max>T
(3)max
G
(3)max>T
(3)maxまたはG
(3)max>T
(4)max
【0028】
この関係が任意の断面で満たされるとき、隣接する2つの香味発生シートの層間距離の最大値Gmaxは、当該隣接する2つの香味発生シートのうちの少なくとも一方の香味発生シート厚みの最大値Tmaxよりも大きいという。香味発生シート10が固定されていないために測定が困難である場合は、次のように測定することが好ましい。まず、香味発生セグメント1を低粘度の硬化性樹脂(例えばエポキシ樹脂)に含浸させて非接触部を樹脂で充填した後に当該樹脂を硬化して測定用サンプルを調製する。次いで、当該サンプルを切断しながら前記測定を実施する。
【0029】
香味発生セグメントにおける非接触部の総量の割合(以下「空隙率」ともいう)は、0.10~0.40であることが好ましく、0.15~0.36であることがより好ましく、0.25~0.33であることが特に好ましい。空隙率を好ましい範囲とすることによって、効率的に香味を供給することができる。また、空隙率をより好ましい範囲とすることにより、吸引初期から終期に渡って、香味発生セグメント中のシートに含まれる香喫味成分の効率的な放出を維持することができる。
【0030】
3)伝熱シート
香味発生部材1aおよび1bは、伝熱シート16を有していてもよい。伝熱シート16の位置は限定されないが、一態様において
図2Aに示すとおり、空間14に露出していることが好ましい。伝熱シートとしてはアルミニウム等の金属シート等を用いることができる。
【0031】
4)空間
香味発生セグメント1は、
図2Aに示すとおり、香味発生部材1aおよび1bとの間に空間14を有していてもよい。香味発生セグメント1は、積層方向に垂直な方向が香味発生物品2の長手方向と平行になるように、すなわち高さhが香味発生物品2の長手方向と平行になるように配置されることが好ましいので、空間14も香味発生物品2の長手方向に沿って延在することが好ましい。空間の断面積は、香味発生セグメント1の断面積の5~46%であることが好ましく、15~46%であることがより好ましい。空間14の中心は、香味発生セグメント1の断面中央を通る軸すなわち中心軸上にあってもよいが、中心軸上になくてもよい。例えば、香味発生セグメント1の積層方向の厚みが2Rである場合、空間14の中心O’は、香味発生セグメント1の中心Oから積層方向へ0.1R~0.7R程度ずれていてもよい。空間14の中心O’の位置は、香味発生部材1aと1b厚みを調整することによっても、香味発生セグメント1の中心Oからずらすことができる。
【0032】
上記においては2つの香味発生部材が複数の香味発生シートから構成される場合を説明
したが、前述のとおり、1つの香味発生部材は複数の香味発生シートから構成されていなくてもよい。この場合、当該香味発生部材は、一枚の香味発生シート10で構成されていてもよいし、香味発生シートよりもより厚い香味発生ブロックで構成されていてもよい。香味発生ブロックの厚みは限定されないが、香味発生シートの厚みの2~10倍程度であってよい。香味発生ブロックは、例えば、たばこ材料とバインダーを含む組成物を所望の形に成形することで調製できる。その形状としては、前述のとおり円柱、楕円柱などが挙げられる。成形方法としては、抄紙以外の方法、例えば押出成形、射出成形、スラリー発泡成形、および3Dプリンターによる成形が挙げられる。香味発生ブロックは、長手方向に通気可能なオープンセル構造を有していてもよい。
【0033】
2.香味発生物品
図3に香味発生物品の一態様を示す。
図3において、2は香味発生物品、1は香味発生セグメント、20はマウスピース、22はフィルター、24はキャビティ、26は支持部材である。上記のとおり、支持部材やキャビティは香味発生物品に任意に設けてよい。マウスピース20は吸口部を備える部材でありフィルター22を含んでいてもよい。マウスピース20の寸法も限定されないが、香味発生セグメント1と同じ幅を有することが好ましく、長さは26~50mmであることが好ましい。本発明において吸い口部に向かう方向を下流方向ということがある。
【0034】
フィルター22はセルロースアセテートフィルター等の当該分野で通常使用される材料で構成されることが好ましい。フィルター22の長さはマウスピース20の全長の12~60%であることが好ましい。
【0035】
キャビティ24は空間であり、キャビティ24を形成するラッパーの側面にはベンチレーションが設けられていてもよい。キャビティ24は加熱された香味を冷却する、香味と空気を適度に混合して香喫味を調製する等の機能を担う。キャビティ24の長さはマウスピース20の全長の8~77%であることが好ましい。また、キャビティ24を冷却要素に置換してもよい。冷却要素としては例えばポリ乳酸シート等が挙げられ、複数のポリ乳酸シートに捲縮加工を施したものを冷却要素として用いることができる。
【0036】
支持部材26は、香味発生物品の強度を高めて形状を保持する。支持部材26はセルロースアセテート、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等の耐熱性プラスチック、シリコン、セラミック等、当該分野で通常使用される材料で構成されることが好ましい。例えば、
図7に示すように2つの支持部材の主面が対向するように配置することができる。支持部材26の長さはマウスピース20の全長の14~77%であることが好ましい。
【0037】
3.香味吸引システム
本発明の香味吸引システムは、ヒーターを備える。ヒーターは、好ましくは非燃焼式に、より好ましくは電気的に香味発生セグメントを加熱する。ヒーターは電源等を備える加熱ユニットを備えることが好ましい。
図1に本発明の香味吸引システムの一態様を示す。図中、1は香味発生セグメント、20はマウスピース、22はフィルター、30はヒーター、32は加熱ユニットである。
【0038】
ヒーター30の形状は限定されず、ヒーター30の一部が香味発生セグメントにおける前記空間14に配置可能な形状を有していることが好ましい。例えばシート状ヒーター、平板状ヒーター、筒状ヒーターであってよい。シート状ヒーターとは柔軟なシート形のヒーターであり、例えばポリイミド等の耐熱性ポリマーのフィルム(厚み20~225μm程度)を含むヒーターが挙げられる。平板状ヒーターとは剛直な平板形のヒーター(厚み200~500μm程度)であり、例えば平板基材上に抵抗回路を有し当該部分を発熱部とするヒーターが挙げられる。筒状ヒーターとは中空または中実の筒形のヒーターであり
、例えば、外周面に抵抗回路を有し当該部分を発熱部とするヒーターが挙げられる。筒状ヒーターの断面形状は円、楕円、多角、角丸多角等であってよい。
【0039】
ヒーターは任意の配置であってよいが、以下、
図4を用いて好ましい態様を説明する。
図4は本発明の香味吸引システムの長手方向端から見た断面を示す。
図4において30はヒーター、10は香味発生シートである。
【0040】
図4(A、C)に示すとおり、ヒーター30は空間14に配置できる。
図4Aは当該空間に平板状ヒーター30が配置された態様を示す。図示していないが、香味発生セグメント1は香味発生シート10と共に積層されている伝熱シートを有することが好ましく、当該伝熱シートはヒーター30と対面していることがより好ましい。このように、平板状ヒーターは香味発生シート10を内側から加熱する場合に好適である。
【0041】
図4(B、D)に示すとおり、ヒーター30は、最外層の香味発生シート10
outの外
側に配置できる。香味発生セグメント1がラッパーを備える場合、ヒーター30はラッパーの外側に配置してよい。このように、シート状ヒータは、香味発生シート10を外側からまたは中間から加熱する場合に好適である。本態様においても、香味発生セグメント1は、香味発生シート10と共に積層されている伝熱シートを有することが好ましく、当該伝熱シートはヒーター30と隣接していることがより好ましい。
【0042】
4.製造方法
冒頭で説明したとおり香味発生セグメント1は香味発生物品2であってもよいが、ここでは香味発生セグメント1とフィルター等を備える物品を香味発生物品2として説明する。
【0043】
(1)香味発生セグメントの製造方法
本発明の香味発生セグメント1の製造方法は限定されないが、以下の工程を経て製造されることが好ましい。
工程A:基材の上に、前記第1香味発生部材および第2香味発生部材を離間して載置する工程
工程B:当該2つの香味発生部材の上面を互いに対面させるように前記基材を折りたたみ、香味発生セグメント1を形成する工程
【0044】
当該方法を
図5を参照して説明する。
図5中、100は香味発生セグメント前駆体、1aは第1香味発生部材、1bは第2香味発生部材、6は基材である。
図5(i)においては、第1香味発生部材1aおよび第2香味発生部材1bの両方が、基材に平行に積層された複数の香味発生シート10を含みかつ隣接する香味発生シート10間に隙間を有しているが、少なくとも一方の香味発生部材が複数の積層された香味発生シート10を含みかつ隣接する香味発生シート10間に隙間を有していればよい。第1香味発生部材1aと第2香味発生部材1bは離間して載置されている。離間して載置するとは、工程Bによって香味発生部材の上面を互いに対面できるように載置することをいう。複数の積層された香味発生シート10は、シート間に隙間が形成できる程度に部分的に接触していてもよい。
【0045】
次いで積層体100を、当該2つの香味発生部材の上面を互いに対面させるように点線部で折り曲げてロッド状の香味発生セグメント1を形成する。香味発生セグメント1において対向する第1香味発生部材1aと第2香味発生部材1bの間には空間14を有することが好ましい。空間14の大きさは香味発生部材の厚み等によって調整できる、このようにして得た香味発生セグメント1の底面に開口部を設けてもよいが、
図6に示すように予め離間部分に開口部60を設けた積層体100を用いて香味発生セグメント1を形成してもよい。当該製造方法は、香味発生セグメント1をラッパーで包む工程をさらに備えてい
てもよい。
【0046】
図2Cのように香味発生シート10を湾曲して積層する場合は、各香味発生シート10を予め湾曲させた後に積層してもよいし、平らな香味発生シート10を積層した後に湾曲させてもよい。
【0047】
工程Bにおける折りたたみ回数は、第1香味発生部材1aおよび第2香味発生部材1bの配置される態様によって適宜設定できる。例えば
図5(ii)のように、基材6の上に第1香味発生部材1aおよび第2香味発生部材1bをそれぞれの中心線が同一線上にないように配置してもよい。
図5(ii)は香味発生セグメント前駆体100を上から見た図である。この場合は4か所の点線部分を折り畳むことで香味発生セグメント1を製造できる。
【0048】
また、
図5(iii)に示すように、基材6の上に複数の第1香味発生部材1aおよび第2香味発生部材1bを配置することもできる。この場合、工程Aにおける離間して配置するとは、基材6の搬送方向(図中矢印で示す)に直交する方向に第1香味発生部材1aおよび第2香味発生部材1bを離間して配置することを意味する。この態様においては一点鎖線で切断した後に
図5(i)に示すようにして香味発生セグメント1を製造できる。
【0049】
基材6は任意の材料から構成できるが、折り曲げ可能な程度の可撓性を有すること、香味を発生しうる成分が外表面に染み出さない程度のバリア性を有することが好ましい。好ましい材料として、当該特性を満足するシガレット用の巻紙やシガレットフィルタ用のチップペーパーを用いることができる。
【0050】
(2)香味発生物品の製造方法
前述のとおり製造した香味発生セグメント1の底部にフィルター等を挿入することで香味発生物品2が製造できる。あるいは
図7に示すように香味発生物品2を製造してもよい。
図7は積層体を横から見た図である。具体的には、離間部分にフィルター部材22および冷却部材26を載置した積層体100を準備して、2つの香味発生部材の上面を互いに対面させるように当該基材を折りたたむ。
【0051】
さらに香味発生物品2をラッパーで包む工程をさらに備えてもよい。あるいは、基材6の幅方向に余白62を十分に設け、基材を折りたたんだ後に、当該余白62を折って側壁を形成すれば、基材6でラッパーを形成することもできる(
図8A(a))。この態様においては基材6をラッパーとして認定できるが、係るラッパーのさらに外側にラッパー(最外部材)を別途設けてもよい。また、ラッパーで包まれた香味発生セグメントとラッパーで包まれたフィルターとを別々に準備して、これらを公知の方法で接合してもよい(
図8A(b))。例えばシガレットのチップペーパー等を用いて、リークが生じないようにように接合部を包むことによって両者を接合できる。
【0052】
さらに、
図8B(i)に示すように、余白62に開口部を設けヒーター挿入口64を形成してもよい。さらにまた、
図8B(ii)に示すとおり、余白62に折曲部66を設けてもよい。
図8B(iii)に示すとおり折曲部66と香味発生物品2の側壁とを接着して香味発生物品2の強度を高めることができる。
【0053】
(3)香味吸引システム3の製造方法
前述のとおり製造した香味発生セグメント1または香味発生物品2にヒーター30を設置することで香味吸引システム3を製造できる。ヒーター30の設置方法は限定されないが、
図9に示すようにヒーター30を香味発生セグメント1の空間14に挿入することが好ましい。
【実施例0054】
[実施例1]
厚さが300μm、幅が7mm、長さ12mmのたばこシート10を8枚準備する。基材6として、幅が14mm、長さ95mmの巻紙を準備し、当該巻紙の上にたばこシート10を基材に平行に積層して第1たばこ部材1aを形成する。同様にたばこシート10を3枚準備して巻紙の上に第2たばこ部材1bを形成する。ただし、第1たばこ部材1aと第2たばこ部材1bの近接する端面同士が71mm離れるようにする。以下、各部材において、基材6の幅方向に平行な長さを「幅」、基材6の長さ方向に平行な長さを「長さ」という。
【0055】
次に、前記離間部分の中央部に幅が4mm、長さが2mmの開口部を設け、さらに開口部と第2たばこ部材1bの間に、支持部材、冷却要素、フィルター部材を載置する。ここで、支持部材の寸法は、幅が7mm、長さが8mm、厚みが5mmであり、冷却要素の寸法は、幅が7mm、長さが18mm、厚みが5mmであり、フィルター部材の寸法は、幅が7mm、長さが7mm、厚みが5mmである。そして、第1たばこ部材1aと第2たばこ部材1bの上面が互いに対面するように前記基材を折りたたみロッド状のたばこセグメント1を備える香味発生物品2を製造する。
【0056】
厚さが320μm、幅が4.9mm、長さ13mmの平板状ヒーター30を準備して、たばこセグメント1の第1たばこ部材1aと第2たばこ部材1bとの間に形成された空間14内に挿入する。ヒーター30を電源を備える加熱ユニット32に接続して、たばこセグメント1を電気的に加熱する。