(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134727
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】多価肺炎球菌多糖体-タンパク質複合体組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 47/64 20170101AFI20230920BHJP
A61K 39/09 20060101ALI20230920BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
A61K47/64
A61K39/09
A61K39/39
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023117178
(22)【出願日】2023-07-19
(62)【分割の表示】P 2022024522の分割
【原出願日】2019-02-04
(31)【優先権主張番号】62/626,509
(32)【優先日】2018-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】10-2018-0045246
(32)【優先日】2018-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.TRITON
3.BRIJ
4.IGEPAL
5.TERGITOL
(71)【出願人】
【識別番号】517211436
【氏名又は名称】サノフィ パスツール インコーポレイティッド
(71)【出願人】
【識別番号】519038714
【氏名又は名称】エスケー バイオサイエンス カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アン キョンジュン
(72)【発明者】
【氏名】ハン ドンス
(72)【発明者】
【氏名】キム フン
(72)【発明者】
【氏名】キム スンヒョン
(72)【発明者】
【氏名】シン ジンファン
(72)【発明者】
【氏名】ホッパー ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ケンジンガー リチャード ディー.
(72)【発明者】
【氏名】チョー モー
(72)【発明者】
【氏名】タラガ フィリップ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】免疫原性血清型9N複合体およびそれを含む混合キャリア多価肺炎球菌複合体組成物を提供する。
【解決手段】Streptococcus pneumoniae血清型9N由来の莢膜多糖体に複合体化されたタンパク質キャリアを含む免疫原性血清型9N複合体であって、前記タンパク質キャリアはCRM197であり、血清型9N由来の前記莢膜多糖体が2~19又は5~10の酸化度及び200~700kDaの分子量を有するように活性化された状態で血清型9N由来の前記莢膜多糖体がCRM197に複合体化された免疫原性血清型9N複合体である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
21種の異なる肺炎球菌莢膜多糖体-タンパク質複合体を含む混合キャリア多価肺炎球菌複合体組成物であって、各肺炎球菌莢膜多糖体-タンパク質複合体は、Streptococcus pneumoniaeの異なる血清型由来の莢膜多糖体に複合体化されたタンパク質キャリアを含み、前記Streptococcus pneumoniae血清型は、1、3、4、5、6A、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15B、18C、19A、19F、22F、23F、及び33Fから選択され、
前記タンパク質キャリアは、CRM197または破傷風トキソイドであり、
前記莢膜多糖体のうちの4つは、破傷風トキソイドに複合体化されており、残りの莢膜多糖体は、CRM197に複合体化されており、破傷風トキソイドに複合体化されている前記4つの莢膜多糖体は、血清型15B、22F、及び血清型1、3、及び5からなる群から選択される2つの血清型である、前記混合キャリア多価肺炎球菌複合体組成物。
【請求項2】
血清型1、5、15B及び22F由来の前記莢膜多糖体は、前記破傷風トキソイドに複合体化されており、血清型3、4、6A、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、18C、19A、19F、23F、及び33F由来の前記莢膜多糖体は、CRM197に複合体化されている、請求項1に記載の混合キャリア多価肺炎球菌複合体組成物。
【請求項3】
血清型1、3、15B及び22F由来の前記莢膜多糖体は、前記破傷風トキソイドに複合体化されており、血清型4、5、6A、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、18C、19A、19F、23F、及び33F由来の前記莢膜多糖体は、CRM197に複合体化されている、請求項1に記載の混合キャリア多価肺炎球菌複合体組成物。
【請求項4】
血清型3、5、15B及び22F由来の前記莢膜多糖体は、前記破傷風トキソイドに複合体化されており、血清型1、4、6A、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、18C、19A、19F、23F、及び33F由来の前記莢膜多糖体は、CRM197に複合体化されている、請求項1に記載の混合キャリア多価肺炎球菌複合体組成物。
【請求項5】
アジュバントをさらに含む、先行請求項のいずれか1項に記載の混合キャリア多価肺炎球菌複合体組成物。
【請求項6】
前記アジュバントは、アルミニウムをベースとするアジュバントである、請求項5に記載の混合キャリア多価肺炎球菌複合体組成物。
【請求項7】
前記アジュバントは、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、及び水酸化アルミニウムからなる群から選択される、請求項6に記載の混合キャリア多価肺炎球菌複合体組成物。
【請求項8】
前記アジュバントは、リン酸アルミニウムである、請求項7に記載の混合キャリア多価肺炎球菌複合体組成物。
【請求項9】
アジュバントをさらに含む、先行請求項のいずれか1項に記載の混合キャリア多価肺炎球菌複合体組成物。
血清型9N由来の前記莢膜多糖体は、血清型9N由来の前記莢膜多糖体が2~19または5~10の酸化度及び200~700kDaの分子量を有するように活性化された状態でCRM197に複合体化されており、
血清型9N由来の前記莢膜多糖体とCRM197との間に形成された前記複合体は、500~4,000kDaの分子量を有し、
血清型9N由来の前記莢膜多糖体とCRM197との間に形成された前記複合体における血清型9N由来の前記莢膜多糖体のCRM197に対する比は、0.5~2.5(w/w)であり、及び/または
血清型9N由来の前記莢膜多糖体とCRM197との間に形成された前記複合体の15~60%は、CL-4Bカラムにおいて0.3以下のKdを有する、先行請求項のいずれか1項に記載の混合キャリア多価肺炎球菌複合体組成物。
【請求項10】
対象におけるStreptococcus pneumoniae感染症または疾患に対する予防のための先行請求項のいずれかの混合キャリア多価肺炎球菌複合体組成物の使用。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか1項の混合キャリア多価肺炎球菌複合体組成物及び薬学的に許容可能な賦形剤を含む、ワクチン。
【請求項12】
対象におけるStreptococcus pneumoniae感染症または疾患の予防のための方法であって、予防的有効量の請求項1~9のいずれか1項の混合キャリア多価肺炎球菌複合体組成物または請求項11のワクチンを前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項13】
前記対象は、少なくとも50歳のヒトであり、前記疾患は、肺炎または侵襲性肺炎球菌疾患(IPD)である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記対象は、少なくとも6週齢のヒトであり、前記疾患は、肺炎、侵襲性肺炎球菌疾患(IPD)、または急性中耳炎(AOM)である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記対象は、6週齢~5歳、2~15ヶ月齢、または6~17歳である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記対象は、ヒトである、請求項10に記載の使用または請求項12~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記混合キャリア多価肺炎球菌複合体組成物または前記ワクチンは、筋肉内注射によって投与される、請求項12~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記混合キャリア多価肺炎球菌複合体組成物または前記ワクチンは、免疫シリーズの一部として投与される、請求項12~17のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年2月5日に出願された米国仮特許出願番号62/626,509、及び2018年4月18日に出願された韓国特許出願番号10-2018-0045246の出願日の利益を主張し、それらに依拠しており、これらの開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は一般に、混合キャリア多価肺炎球菌複合体組成物、それを含むワクチン、ならびにこれらの組成物及びワクチンを対象におけるStreptococcus pneumoniae感染症または疾患の予防のために使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)は、90種を超える既知の血清型を有するグラム陽性の槍形の通性嫌気性細菌である。ほとんどのS.pneumoniaeの血清型は、疾患を引き起こすことが示されており、23種の最も一般的な血清型が世界の侵襲性疾患のおよそ90%を占める。血清型は、肺炎球菌にとって最も重要な病原性因子である莢膜多糖体の血清学的反応に基づいて分類される。莢膜多糖体は、Tヘルパー細胞の非存在下で抗体産生を誘導するT細胞非依存性抗原である。T細胞非依存性抗原は一般に、低い親和性及び免疫学的記憶がほとんど~全くない短命の免疫反応を有する抗体を誘導する。
【0004】
初期の肺炎球菌ワクチンは、異なる血清型由来の莢膜多糖体の組み合わせを含んでいた。これらのワクチンは、発達したまたは健康な免疫系を有する患者においてS.pneumoniaeに対する免疫を付与し得るが、発達した免疫系を欠く乳幼児、及びしばしば低下した免疫機能を有する高齢の対象では有効ではなかった。特にS.pneumoniae感染症を発症するリスクがより高い乳幼児及び高齢の対象において、肺炎球菌ワクチンに対する免疫反応を改善するために、莢膜多糖体が好適なキャリアタンパク質に複合体化されて肺炎球菌複合体ワクチンが作製された。好適なキャリアタンパク質に対する複合体化は、莢膜多糖体をT細胞非依存性抗原からT細胞依存性抗原に変化させる。このように、複合体化した莢膜多糖体に対する免疫反応には、Tヘルパー細胞が関与しており、これは、莢膜多糖体への再曝露時に、より強力で迅速な免疫反応を誘導するのを補助する。
【0005】
肺炎球菌複合体ワクチンを開発するための少なくとも2つのアプローチ:単一キャリアアプローチ及び混合キャリアアプローチがある。異なる莢膜多糖体複合体の免疫原性は、使用される肺炎球菌血清型及びキャリアタンパク質に応じて変化し得る。単一キャリアアプローチでは、異なる血清型由来の莢膜多糖体は、単一タンパク質キャリアに複合体化される。PfizerのPREVNARシリーズのワクチンは、グリシンのグルタミン酸への単一アミノ酸置換を有するジフテリアトキソイドの非毒性バリアントであるCRM197タンパク質キャリアに異なる莢膜多糖体が複合体化される単一キャリアアプローチの例である。7価のPREVNARワクチン(PREVNAR)は、2000年に初めて承認され、最も流行している7種の血清型:4、6B、9V、14、18C、19F、及び23F由来の莢膜多糖体を含有する。13価ワクチンであるPREVNAR13は、CRM197タンパク質キャリアに血清型1、5、7F、3、6A、及び19Aを追加した。PREVNARワクチンで使用されている単一キャリアであるタンパク質キャリアCRM197は、肺炎球菌複合体ワクチンにおける混合キャリアシステムの一部として使用されたことはない。
【0006】
第2の肺炎球菌ワクチンアプローチは、混合キャリアアプローチである。混合キャリアアプローチでは、単一タンパク質キャリアを使用する代わりに、2つ以上のタンパク質キャリアが使用され、特定の血清型由来の莢膜多糖体は第1のタンパク質キャリアに複合体化され、異なる血清型由来の莢膜多糖体は少なくとも第2の異なるタンパク質キャリアに複合体化される。例えば、GlaxoSmithKlineは、H influenzaeタンパク質D、破傷風トキソイド、及びジフテリアトキソイドをタンパク質キャリアとして使用する10価(血清型1、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19F及び23F)混合キャリア肺炎球菌複合体ワクチンであるSYNFLORIXを開発した。SYNFLORIXでは、血清型1、4、5、6B、7F、9V、14、及び23Fは、タンパク質Dに複合体化されており、血清型18Cは、破傷風トキソイドに複合体化されており、血清型19Fは、ジフテリアトキソイドに複合体化されている[2]。SYNFLORIXに対する11価前駆体から血清型3が部分的に除去されたが、その理由は、それが急性中耳炎の試験において血清型特異的有効性を示さなかったからである[1]。別のグループであるAventis Pasteurは、ジフテリアトキソイド及び破傷風トキソイドをタンパク質キャリアとして使用して11価(血清型1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19F、及び23F)混合キャリア肺炎球菌複合体ワクチンを開発した[3]。血清型3、9V、14、及び18C由来の莢膜多糖体は、破傷風トキソイドに複合体化した場合よりもジフテリアトキソイドに複合体化した場合の方が良好な反応を誘発し得る[6]。よって、血清型3、6B、14、及び18Cは、ジフテリア毒素に複合体化され、血清型1、4、5、7F、9V、19F、及び23Fは、破傷風トキソイドに複合体化された。この混合キャリア肺炎球菌ワクチンの開発は、技術的な理由及び無細胞性百日咳ワクチンを投与した場合の反応の低下の潜在性に部分的に起因して中止された[3]。最近では、血清型5及び1は、IgG力価とOPA活性との間に関連する相関関係が存在したすべてのPREVNARの13種の血清型から観察された最も低いOPA力価のうちの1つを有するものとして報告された[4]。また、血清型3では、はるかに高い血清IgG濃度が保護に必要であることが示唆された[5]。
【発明の概要】
【0007】
本出願は、新規かつ改善された混合キャリア多価肺炎球菌複合体組成物及びそれを含むワクチンを提供する。一態様では、混合キャリア多価肺炎球菌複合体組成物は、21種の異なる肺炎球菌莢膜多糖体-タンパク質複合体を含み、各肺炎球菌莢膜多糖体-タンパク質複合体は、Streptococcus pneumoniaeの異なる血清型由来の莢膜多糖体に複合体化されたタンパク質キャリアを含み、Streptococcus pneumoniae血清型は、1、3、4、5、6A、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15B、18C、19A、19F、22F、23F及び33Fから選択され、タンパク質キャリアは、CRM197または破傷風トキソイドであり、莢膜多糖体のうちの4つは、破傷風トキソイドに複合体化されており、残りの莢膜多糖体は、CRM197に複合体化されており、破傷風トキソイドに複合体化されている4つの莢膜多糖体のうち2つは、血清型1、3、及び5からなる群から選択され、残りの2つの莢膜多糖体は、血清型15B及び22Fである。
【0008】
混合キャリア21価肺炎球菌複合体組成物の一実施形態では、血清型1、5、15B及び22F由来の莢膜多糖体は、破傷風トキソイドに複合体化されており、血清型3、4、6A、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、18C、19A、19F、23F、及び33F由来の莢膜多糖体は、CRM197に複合体化されている。
【0009】
混合キャリア21価肺炎球菌複合体組成物の別の実施形態では、血清型1、3、15B及び22F由来の莢膜多糖体は、破傷風トキソイドに複合体化されており、血清型4、5、6A、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、18C、19A、19F、23F、及び33F由来の莢膜多糖体は、CRM197に複合体化されている
。
【0010】
混合キャリア21価肺炎球菌複合体組成物のさらに別の実施形態では、血清型3、5、15B及び22F由来の莢膜多糖体は、破傷風トキソイドに複合体化されており、血清型1、4、6A、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、18C、19A、19F、23F、及び33F由来の莢膜多糖体は、CRM197に複合体化されている。
【0011】
別の態様では、本出願は、21種の異なる肺炎球菌莢膜多糖体-タンパク質複合体を含む混合キャリア多価肺炎球菌複合体組成物であって、各肺炎球菌莢膜多糖体-タンパク質複合体は、Streptococcus pneumoniaeの異なる血清型由来の莢膜多糖体に複合体化されたタンパク質キャリアを含み、Streptococcus pneumoniae血清型は、1、3、4、5、6A、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15B、18C、19A、19F、22F、23F及び33Fから選択され、タンパク質キャリアは、CRM197または破傷風トキソイドであり、莢膜多糖体のうちの3つは、破傷風トキソイドに複合体化されており、残りの莢膜多糖体は、CRM197に複合体化されており、破傷風トキソイドに複合体化されている3つの莢膜多糖体は、血清型1、3、5、15B及び22Fからなる群から選択される、混合キャリア多価肺炎球菌複合体組成物を提供する。所定の実施形態では、破傷風トキソイドに複合体化されている3つの莢膜多糖体のうちの2つは、血清型1、3及び5からなる群から選択され、破傷風トキソイドに複合体化されている残りの莢膜多糖体は、血清型15B及び22Fである。
【0012】
いくつかの実施形態では、混合キャリア多価肺炎球菌複合体組成物は、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、及び水酸化アルミニウムを含むがこれらに限定されないアルミニウムをベースとするアジュバントなどのアジュバントをさらに含む。
【0013】
別の態様は、ワクチンとしての混合キャリア21価肺炎球菌複合体組成物の使用を対象とする。
【0014】
さらに別の態様は、混合キャリア21価肺炎球菌複合体組成物、及び薬学的に許容可能な賦形剤を含むワクチンを対象とする。
【0015】
さらに別の態様は、ヒトなどの対象におけるStreptococcus pneumoniae感染症または疾患の予防のための方法であって、予防的有効量の混合キャリア21価肺炎球菌複合体組成物またはそれを含むワクチンを対象に投与することを含む、方法を対象とする。
【0016】
所定の実施形態では、対象は、少なくとも50歳のヒトであり、疾患は、肺炎または侵襲性肺炎球菌疾患(IPD)である。
【0017】
他の実施形態では、対象は、少なくとも6週齢のヒトであり、疾患は、肺炎、侵襲性肺炎球菌疾患(IPD)、または急性中耳炎(AOM)である。いくつかの実施形態では、ヒト対象は、6週齢~5歳である。他の実施形態では、ヒト対象は、2~15ヶ月齢または6~17歳である。
【0018】
所定の実施形態では、混合キャリア21価肺炎球菌複合体組成物またはワクチンは、筋肉内注射によって投与される。所定の実施形態では、混合キャリア21価肺炎球菌複合体組成物またはワクチンは、免疫シリーズの一部として投与される。
【0019】
さらに別の態様は、Streptococcus pneumoniae由来の血清型9N莢膜糖体;及び莢膜糖体に結合したキャリアタンパク質を含有するStreptococcus pneumoniae血清型9Nの免疫原性複合体であって、キャリアタンパク質は、CRM197である、免疫原性複合体を対象とする。免疫原性血清型9N複合体、混合キャリア多価肺炎球菌複合体組成物及びワクチン(ならびにそれらの方法/使用)の所定の実施形態では、血清型9N糖体は、2~19または5~10の酸化度及び200~700kDaの分子量を有するように活性化された状態の複合体を形成するようにCRM197に結合していてもよい。免疫原性血清型9N複合体、混合キャリア多価肺炎球菌複合体組成物及びワクチン(ならびにそれらの方法/使用)の所定の実施形態では、免疫原性血清型9N複合体は、500~4,000kDaの分子量を有し得る。
【0020】
免疫原性血清型9N複合体、混合キャリア多価肺炎球菌複合体組成物及びワクチン(ならびにそれらの方法/使用)の所定の実施形態では、血清型9N免疫原性複合体における血清型9N莢膜糖体のキャリアタンパク質に対する比は、0.1~5(w/w)である。所定の実施形態では、その比は、0.5~2.5である。
【0021】
免疫原性血清型9N複合体、混合キャリア多価肺炎球菌複合体組成物及びワクチン(ならびにそれらの方法/使用)の所定の実施形態では、免疫原性血清型9N複合体の15~60%は、CL-4Bカラムにおいて0.3以下のKdを有し得る。
【0022】
免疫原性血清型9N複合体、混合キャリア多価肺炎球菌複合体組成物及びワクチン(ならびにそれらの方法/使用)の所定の実施形態では、免疫原性血清型9N複合体は、2~19の酸化度を達成するように活性化された血清型9N多糖体を用いて調製されている。所定の実施形態では、免疫原性血清型9N複合体は、5~10の酸化度を達成するように活性化された血清型9N多糖体を用いて調製されている。
【0023】
免疫原性血清型9N複合体、混合キャリア多価肺炎球菌複合体組成物及びワクチン(ならびにそれらの方法/使用)の所定の実施形態では、Streptococcus pneumoniae血清型9N糖体が糖1μg当たり0.02~0.19μgの過ヨウ素酸塩を添加することによってCRM197と複合体化されている場合、複合体は、500~4,000kDaの分子量、15~60%の分子量分布(Kd≦0.3)及び0.5~2.5の糖体/タンパク質比を有し得る。
【0024】
さらに別の態様では、本開示はまた、Streptococcus pneumoniae血清型9Nの免疫原性複合体を調製するための方法であって、
(a)Streptococcus pneumoniae血清型9Nの莢膜多糖体を、それを発酵させることによって産生する細菌細胞を溶解することと、
(b)Streptococcus pneumoniae血清型9Nの莢膜糖体を、溶解した細胞から精製することと、
(c)酸化剤と反応させることによってStreptococcus pneumoniae血清型9Nの莢膜多糖体を活性化して、2~19または5~10の酸化度を達成することと、
(d)活性化された糖体をCRM197と混合することによってCRM197に結合したStreptococcus pneumoniae血清型9Nの莢膜糖体の複合体を形成することと、を含む、方法も提供する。
【0025】
所定の実施形態では、工程(d)で混合されたCRM197を還元剤と反応させて、活性化されたStreptococcus pneumoniae血清型9Nの莢膜多糖体との複合体を形成し得る。所定の実施形態では、工程(c)において、0.02~0.19μgの過ヨウ素酸塩を1μgのStreptococcus pneumoniae血
清型9Nの莢膜多糖体と20~25℃で15~20時間反応させ得る。
【0026】
所定の実施形態では、工程(c)で酸化剤と反応させたStreptococcus pneumoniae血清型9Nの莢膜多糖体は、400~900kDaの分子量を有し得る。所定の実施形態では、工程(d)でCRM197と混合された活性化されたStreptococcus pneumoniae血清型9Nの莢膜多糖体は、200~700kDaの分子量を有し得る。所定の実施形態では、Streptococcus pneumoniae血清型9Nの免疫原性複合体は、500~4,000kDaの分子量を有し得る。所定の実施形態では、活性化された血清型9Nの莢膜糖体に対するCRM197の初期投入比(キャリアCRM197:糖体)は、0.5~2.5:1であり得る。所定の実施形態では、免疫原性複合体の少なくとも15~60%は、CL-4Bカラムで測定して0.3以下のKd を有し得る。
【0027】
所定の実施形態では、本開示のStreptococcus pneumoniae血清型9Nの多糖体が、糖1μg当たり0.02~0.19μgの過ヨウ素酸塩を添加することによってCRM197と複合体化された場合、免疫原性複合体は、500~4,000kDaの分子量、CL-4Bカラムで測定される15~60%(Kd≦0.3)の分子量分布及び0.5~2.5のCRM197/多糖体比を有する。
【0028】
混合キャリア21価肺炎球菌複合体組成物の前述の及び他の目的、特徴、及び利点は、以下の詳細な説明からより明らかになる。
【0029】
定義
本開示がより容易に理解されるために、所定の用語をまず以下に定義する。以下の用語及び他の用語についての追加の定義は、本明細書を通じて説明され得る。
【0030】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が別段明らかに示していない限り、複数の言及を含む。よって、例えば、「方法」に対する言及は、本明細書に記載される及び/または本開示などを読むことで当業者に明らかになる種類の1つ以上の方法、及び/または工程を含む。
【0031】
投与する:本明細書で使用される場合、組成物を対象に「投与すること」は、組成物を対象に与える、適用する、または接触させることを意味する。投与は、例えば、局所、経口、皮下、筋肉内、腹腔内、静脈内、髄腔内及び皮内などの多数の経路のいずれかによって達成され得る。
【0032】
およそ:本明細書で使用される場合、用語「およそ」または「約」は、対象となる1つ以上の値に適用される場合、記述された参照値に類似する値を指す。所定の実施形態では、用語「およそ」または「約」は、別段記述されない限りまたは別段文脈から明らかでない限り、記述された参照値のいずれかの方向(より大きいまたはより小さい)の25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、またはそれ以下に入る値の範囲を指す(そのような数値が、可能な値の100%を超える場合を除く)。
【0033】
複合体:本明細書で使用され、適切な文脈から理解されるように、用語「複合体(複数可)」または「糖複合体(複数可)」は、任意の共有結合または非共有結合の生体複合体化戦略を使用してキャリアタンパク質に複合体化されたStreptococcus pneumoniae多糖体を指す。
【0034】
酸化度:本明細書で使用される場合、用語「酸化度」(DO)は、精製されたまたはサ
イズ調整された糖体が酸化剤で活性化されたときに発生するアルデヒド基当たりの糖繰り返し単位の数を指す。糖体の酸化度は、当業者に知られている慣用の方法を使用して決定され得る。
【0035】
賦形剤:本明細書で使用される場合、用語「賦形剤」は、例えば、所望の一貫したまたは安定化効果を提供するために、またはそれに寄与するために、組成物中に含まれ得る非治療的薬剤を指す。
【0036】
混合キャリア:本明細書で使用される場合、混合キャリア肺炎球菌複合体組成物は、複数の種類のタンパク質キャリアを有する肺炎球菌複合体組成物を指す。
【0037】
多価:本明細書で使用される場合、用語「多価」は、複数のStreptococcus pneumoniae血清型由来の肺炎球菌莢膜多糖体を有する肺炎球菌複合体組成物を指す。
【0038】
混合キャリア21価肺炎球菌複合体組成物:本明細書で使用される場合、用語「混合キャリア21価肺炎球菌複合体組成物(複数可)」は、21種の異なる肺炎球菌莢膜多糖体-タンパク質複合体を含むか、またはそれらからなる組成物であって、各肺炎球菌莢膜多糖体-タンパク質複合体が、Streptococcus pneumoniaeの異なる血清型由来の莢膜多糖体に複合体化されたタンパク質キャリアを含み、Streptococcus pneumoniae血清型が、1、3、4、5、6A、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15B、18C、19A、19F、22F、23F、及び33Fであり、タンパク質キャリアが、CRM197または破傷風トキソイドであり、1)莢膜多糖体のうちの3つが、破傷風トキソイドに複合体化されており、残りの莢膜多糖体が、CRM197に複合体化されており、破傷風トキソイドに複合体化されている3つの莢膜多糖体のうちの2つが、血清型1、3及び5からなる群から選択され、残りの莢膜多糖体が、血清型15Bまたは22Fであり、または2)莢膜多糖体のうちの4つが、破傷風トキソイドに複合体化されており、残りの莢膜多糖体が、CRM197に複合体化されており、破傷風トキソイドに複合体化されている4つの莢膜多糖体のうちの2つが、血清型1、3及び5からなる群から選択され、残りの2つの莢膜多糖体が、血清型15Bまたは22Fである、組成物を指す。いくつかの実施形態では、血清型1、5、15B及び22F由来の莢膜多糖体は、破傷風トキソイドに複合体化されており、残りの莢膜多糖体は、CRM197に複合体化されている。別の実施形態では、血清型1,3、15B及び22F由来の莢膜多糖体は、破傷風トキソイドに複合体化されており、残りの血清型由来の莢膜多糖体は、CRM197に複合体化されている。さらに別の実施形態では、血清型3、5、15B及び22F由来の莢膜多糖体は、破傷風トキソイドに複合体化されており、残りの莢膜多糖体は、CRM197に複合体化されている。
【0039】
分子量:別段特定されない限り、本明細書で使用される場合、莢膜糖体または莢膜糖体-キャリアタンパク質複合体の「分子量」という用語は、多角度レーザー光散乱(MALLS)と組み合わせたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって計算される平均分子量を指す。
【0040】
薬学的に許容可能な賦形剤:本開示において有用な薬学的に許容可能な賦形剤は、従来のものである。Remington’s Pharmaceutical Sciences,by E.W.Martin,Mack Publishing Co.,Easton,PA,15th Edition (1975)は、ワクチン、及び追加の薬学的薬剤を含む1つ以上の治療用組成物の薬学的送達に好適な組成物及び製剤を記載している。好適な薬学的賦形剤には、例えば、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノ
ステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが含まれる。一般に、賦形剤の性質は、用いられる特定の投与様式に依存する。例えば、非経口製剤は通常、ビヒクルとして、水、生理食塩水、平衡塩溶液、緩衝液、水性デキストロース、グリセロールなどのような薬学的かつ生理学的に許容可能な流体を含む注射液を含む。固体組成物(例えば、粉末、丸剤、錠剤、またはカプセル形態)の場合、従来の非毒性固体賦形剤には、例えば、マンニトール、ラクトース、デンプン、またはステアリン酸マグネシウムの薬学的グレードが含まれ得る。生物学的に中性のキャリアに加えて、投与される薬学的組成物は、湿潤または乳化剤、表面活性剤、防腐剤、及びpH緩衝剤など、例えば、酢酸ナトリウムまたはソルビタンモノラウレートなどの非毒性の補助物質を微量で含有し得る。
【0041】
予防的有効量:本明細書で定義されるように、用語「予防的有効量」または「予防的有効用量」は、Streptococcus pneumoniaeによる感染によって引き起こされる1つ以上の症状の発症を遅らせるのに、及び/または頻度及び/または重症度を低下させるのに十分な免疫反応を誘導するのに必要な量または用量を指す。
【0042】
予防:用語「予防」は、本明細書で使用される場合、特定の疾患、障害もしくは病態(例えば、Streptococcus pneumoniaeによる感染症)の1つ以上の症状の疾患の兆候の回避、発症の遅延、及び/または頻度及び/または重症度の低下を指す。いくつかの実施形態では、予防は、疾患、障害、または病態に罹患しやすい集団において、疾患、障害または病態の1つ以上の症状の発症、頻度、及び/または強度の統計的に有意な低下が観察される場合に、薬剤が特定の疾患、障害または病態に対する予防を提供すると考えられるように集団ベースで評価される。
【0043】
対象:本明細書で使用される場合、用語「対象」は、マウス、ウサギ、及びヒトを含む任意の哺乳動物を意味する。所定の実施形態では、対象は、成人、青少年または乳幼児である。いくつかの実施形態では、用語「個体」または「患者」が使用され、「対象」と互換可能であることが意図されている。
【発明を実施するための形態】
【0044】
開示される実施形態(複数可)及び実施例の以下の記載は、本質的に例示的なものに過ぎず、本発明、その用途、または使用を制限することは決して意図されていない。
【0045】
本出願は、新規かつ改善された混合キャリア多価肺炎球菌複合体組成物及びそれを含むワクチンを提供する。タンパク質キャリアであるCRM197は、単一キャリア肺炎球菌複合体ワクチンで以前から使用されてきたが、本出願は、混合キャリア肺炎球菌複合体ワクチンにおけるCRM197の使用を記載している。特に、本出願は、多価肺炎球菌複合体組成物及びワクチンにおける特定の肺炎球菌血清型のためのキャリアタンパク質としてのCRM197及び破傷風トキソイドの併用を記載している。
【0046】
上記で論述したように、異なる莢膜多糖体複合体の免疫原性は、使用される肺炎球菌血清型及びキャリアタンパク質に応じて変化し得る。本出願は、血清型3を破傷風トキソイドではなくジフテリアトキソイドに複合体化した場合に免疫原性がより高いという先の知見[6]にかかわらず、混合キャリアワクチンの一部としての破傷風トキソイドへの血清型3の成功裏の複合体化を記載している。本出願はまた、混合キャリアワクチンの一部としての破傷風トキソイドへの血清型1、5、15B、及び22Fの成功裏の複合体化も記載されている。また、混合キャリア多価、例えば、21価の肺炎球菌複合体組成物における破傷風トキソイドに複合体化した血清型3に対する抗体反応は、単一キャリア、13価肺炎球菌複合体組成物(PREVNAR13)において血清型3がCRM197に複合体化された場合よりも約4.5倍高かったという予想外の知見も開示している。
【0047】
さらに、その予想外の所見は、血清型3に限られず、混合キャリア多価肺炎球菌複合体組成物において破傷風トキソイドに複合体化された他の血清型についても観察された。例えば、実施例に示されるように、混合キャリア肺炎球菌複合体組成物における血清型1及び5または3及び5の破傷風トキソイドへの複合体化であって、残りの血清型がCRM197に複合体化されているもの(例えば、PCV21(1/5/15B/22F)-TT及びPCV21(3/5/15B/22F)-TT)は、単一キャリア、肺炎球菌複合体組成物(PREVNAR13)におけるCRM197に複合体化した同じ血清型に対する抗体反応(IgG反応またはMOPA力価)と比較して、一貫して、破傷風トキソイドに複合体化された血清型に対する有意に増強された抗体反応を誘導した。
【0048】
破傷風トキソイドは、CRM197よりも大幅に大きい。そのため、混合キャリアワクチンの一部としての破傷風トキソイドに血清型1、3、5、15B、及び22Fのうちの3つまたは4つを複合体化することは、CRM197などの、破傷風トキソイドよりも小さな単一キャリアに複合体化したそれらの同じ血清型のPS/C比と比較して、破傷風トキソイドに複合体化したそれらの血清型について低下した多糖体のキャリアに対する(「PS/C」)比をもたらす。このように、本出願に記載の混合キャリアアプローチは、血清型1、3、5、15B、または22Fのうちの1つ以上についてPS/C比を低下させるために使用され得る。
【0049】
本出願に記載の混合キャリア21価肺炎球菌複合体組成物はまた、現在世界市場で入手可能な3つの肺炎球菌複合体ワクチン:PREVNAR(一部の国ではPrevenarと呼ばれている)、SYNFLORIX及びPREVNAR13によって現在カバーされていない肺炎球菌血清型も含む。現在カバーされていない肺炎球菌血清型によって引き起こされる疾患は、抗菌薬耐性の発症、免疫不全患者数の増加、及び免疫圧力の欠如に部分的に起因して増加している。例えば、現在利用可能な肺炎球菌複合体ワクチンのいずれも、血清型9Nを含んでいない。また、現在利用可能な肺炎球菌複合体ワクチンのいずれも、血清型8、10A、11A、12F、15B、22F及び33Fを含んでいない。本開示は、血清型8、9N、10A、11A、12F、15B、22F及び33Fの混合キャリア(破傷風トキソイド及びCRM197)、肺炎球菌複合体ワクチンへの成功裏の実現、及び血清型9NがPREVNAR13よりも約40~50倍高い抗体反応度を誘導したことを実証する。
【0050】
肺炎球菌多糖体血清型9N
血清型9N多糖体は、当業者に知られている単離手順(米国特許出願公開第2006/0228380号に開示されている方法を含むがこれに限定されない)を使用することによって細菌から直接得られ得る。また、糖体は、合成プロトコルを使用して製造され得る。
【0051】
血清型9NのStreptococcus pneumoniae株は、確立された培養物保存機関(例えば、the Streptococcal Reference Laboratory of the Centers for Disease Control and Prevention (Atlanta,Georgia))または臨床検体から得られ得る。
【0052】
その細菌細胞は典型的には、大豆をベースとする培地などの培地で成長する。Streptococcus pneumoniae血清型9Nの莢膜多糖体を産生する細菌細胞の発酵に続いて、細菌細胞を溶解して細胞溶解物を産生する。次いで、遠心分離、深層濾過、沈殿、限外濾過、活性炭での処理、ダイアフィルトレーション及び/またはカラムクロマトグラフィー(米国特許出願公開第2006/0228380号に開示されている方
法を含むがこれら限定されない)を含む、当該技術分野で知られている精製技術を使用して、細胞溶解物から血清型9N多糖体が単離され得る。精製された血清型9N莢膜多糖体は、免疫原性複合体の調製に使用され得る。Streptococcus pneumoniae溶解物から血清型9N多糖体を精製し、任意に、精製された多糖体をサイズ調整することによって得られる血清型9N莢膜多糖体は、例えば、血清型9N莢膜多糖体の分子量(MW)を含む異なるパラメータによって特徴付けられ得る。
【0053】
所定の実施形態では、複合体化前のStreptococcus pneumoniae血清型9Nから精製された精製多糖体は、5~5,000kDaの分子量を有する。所定の実施形態では、複合体化前の血清型9N莢膜多糖体は、50~1,000kDaの分子量を有する。所定の実施形態では、複合体化前の血清型9N莢膜多糖体は、70~900kDaの分子量を有する。所定の実施形態では、複合体化前の血清型9N莢膜多糖体は、100~800kDaの分子量を有する。所定の実施形態では、精製された血清型9N莢膜多糖体は、50~800kDa、80~780kDa、100~770kDa、120~760kDa、140~750kDa、150~740kDa、160~730kDa、170~735kDa、180~720kDa、190~710kDa、200~700kDa、220~690kDa、240~680kDa、260~670kDa、270~660kDaの分子量または同様の分子量範囲を有するように複合体化前に活性化され得る。上記範囲のいずれかの範囲内の整数が、本開示の実施形態として企図される。
【0054】
活性化された血清型9N多糖体は、酸化度及び分子量によって特徴付けられ得る。所定の実施形態では、活性化された血清型9N多糖体は、0.5~25、0.6~23、0.8~21、1~20.8、1.1~20.5、1.2~20.3、1.3~20、1.4~19.5、1.5~19.3、1.6~19.2、1.7~19.1、2~19、3~18、4~15、または5~10の酸化度を有し得る。
【0055】
多糖体は、通常の精製手順中にサイズがわずかに減少し得る。また、本開示に記載されているように、多糖体は、複合体化前にサイズ調整に供され得る。上記の分子量範囲は、複合体化前の最終サイズ調整工程の後(例えば、精製、加水分解及び活性化の後)の精製された多糖体のものを指す。
【0056】
混合キャリア多価肺炎球菌複合体組成物及びその製造方法
本開示は、21種の異なる肺炎球菌莢膜多糖体-タンパク質複合体を含むか、またはそれらからなる混合キャリア多価肺炎球菌複合体組成物であって、各肺炎球菌莢膜多糖体-タンパク質複合体は、Streptococcus pneumoniaeの異なる血清型由来の莢膜多糖体に複合体化されたタンパク質キャリアを含み、Streptococcus pneumoniae血清型は、1、3、4、5、6A、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15B、18C、19A、19F、22F、23F、及び33Fであり、タンパク質キャリアは、CRM197または破傷風トキソイドであり、莢膜多糖体のうちの3~4つは、破傷風トキソイドに複合体化されており、残りの莢膜多糖体は、CRM197に複合体化されており、破傷風トキソイドに複合体化されている3~4つの莢膜多糖体は、血清型1、3、5、15B、及び22Fからなる群から選択される、混合キャリア多価肺炎球菌複合体組成物を提供する。所定の実施形態では、莢膜多糖体のうち3つは、破傷風トキソイドに複合体化されており、残りの莢膜多糖体は、CRM197に複合体化されている。所定の実施形態では、莢膜多糖体のうち4つは、破傷風トキソイドに複合体化されており、残りの莢膜多糖体は、CRM197に複合体化されている。
【0057】
一態様では、本開示は、21種の異なる肺炎球菌莢膜多糖体-タンパク質複合体を含むか、またはそれらからなる混合キャリア多価肺炎球菌複合体組成物であって、各肺炎球菌
莢膜多糖体-タンパク質複合体は、Streptococcus pneumoniaeの異なる血清型由来の莢膜多糖体に複合体化されたタンパク質キャリアを含み、Streptococcus pneumoniae血清型は、1、3、4、5、6A、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15B、18C、19A、19F、22F、23F及び33Fであり、タンパク質キャリアは、CRM197または破傷風トキソイドであり、莢膜多糖体のうちの4つは、破傷風トキソイドに複合体化されており、残りの莢膜多糖体は、CRM197に複合体化されており、破傷風トキソイドに複合体化されている4つの莢膜多糖体のうち2つは、血清型1、3、及び5からなる群から選択され、残りの2つの莢膜多糖体は、血清型15B及び22Fである、混合キャリア多価肺炎球菌複合体組成物を提供する。
【0058】
一実施形態では、血清型1、5、15B及び22F由来の莢膜多糖体は、破傷風トキソイドに複合体化されており、残りの莢膜多糖体は、CRM197に複合体化されている。別の実施形態では、血清型1、3、15B及び22F由来の莢膜多糖体は、破傷風トキソイドに複合体化されており、残りの莢膜多糖体は、CRM197に複合体化されている。さらに別の実施形態では、血清型3、5、15B及び22F由来の莢膜多糖体は、破傷風トキソイドに複合体化されており、残りの莢膜多糖体は、CRM197に複合体化されている。
【0059】
多糖体-タンパク質複合体ワクチンでは、キャリアタンパク質は、主に多糖体抗原に対する免疫反応(例えば、抗体反応)の増強を助けるために、多糖体抗原に複合体化されている。キャリアタンパク質は、好ましくは非毒性のタンパク質である。キャリアタンパク質は、以下でさらに詳細に論述されるように、標準的な複合体化手順を使用して肺炎球菌多糖体と複合体化することに従うべきである。混合キャリア21価肺炎球菌複合体組成物に使用されるキャリアタンパク質は、破傷風トキソイド(TT)及びCRM197であり、これらの各々は、肺炎球菌複合体ワクチンの設計において使用されてきたが、同一の混合キャリアワクチンにおいて使用されたことがない。
【0060】
CRM197は、野生型ジフテリア毒素の免疫学的特性を保持するジフテリア毒素の非毒性バリアント(すなわち、トキソイド)である。CRM197は、野生型ジフテリア毒素とは構造遺伝子の1つの塩基で異なり、グルタミン酸からグリシンへの1つのアミノ酸置換が生じている。CRM197は典型的には、カサミノ酸及び酵母エキスをベースとする培地で成長したCorynebacterium diphtheria株C7(β197)の培養物から単離される。CRM197は、限外濾過、硫酸アンモニウム沈殿、及びイオン交換クロマトグラフィーによって精製され得る。代替的に、CRM197は、米国特許第5,614,382号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に従って組換え的に調製され得る。CRM197は、肺炎球菌複合体ワクチンの設計には使用されてきたが、混合キャリアワクチンの一部として使用されたことはない。
【0061】
破傷風トキソイドは、Clostridium tetaniによって引き起こされる破傷風(tetanus)(または破傷風(lockjaw))に対する大規模な免疫付与のために世界中で調製され、使用されている。破傷風トキソイドはまた、単独で、ならびにジフテリア及び/または百日咳ワクチンと組み合わせて使用される。親タンパク質である破傷風毒素は一般に、Clostridium tetaniの培養物において得られる。破傷風毒素は、約150kDaのタンパク質であり、ジスルフィド結合によって連結された2つのサブユニット(約100kDa及び約50kDa)からなる。毒素は典型的には、ホルムアルデヒドで解毒化され、硫酸アンモニウム沈殿(例えば、[7]、[8]を参照されたい)またはクロマトグラフィー技術などの既知の方法を使用して培養物濾液から精製され得る(例えば、WO1996/025425に開示されているように)。破傷風毒素はまた、組換え遺伝的手段によって不活性化され得る。
【0062】
破傷風トキソイドはまた、肺炎球菌複合体ワクチンを含む他のワクチンにおけるキャリアタンパク質として使用されてきた。しかし、混合キャリア肺炎球菌複合体ワクチンにおいてCRM197と組み合わせて破傷風毒素を使用することは新規である。当該技術はまた、混合キャリア肺炎球菌複合体ワクチンにおいて血清型3を破傷風トキソイドに複合体化することから離れて教示しているが、その理由は、血清型3がジフテリアトキソイドに複合体化された場合、破傷風トキソイドと比較して、免疫原性がより高いことが示されたためである[6]。
【0063】
血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15B、18C、19A、19F、22F、23F、及び33F由来の莢膜多糖体を含む、本明細書に記載の組成物及びワクチンに使用される肺炎球菌莢膜多糖体は、例えば、WO2006/110381、WO2008/118752、WO2006/110352、ならびに米国特許出願公開第2006/0228380号、第2006/0228381号、第2007/0184071号、第2007/0184072号、第2007/0231340号、第2008/0102498号及び第2008/0286838号(これらのすべては、それらの全体が参照により組み込まれる)に開示されているものを含む、当業者に知られている標準的技術を含む任意の利用可能な技術を使用してStreptococcus pneumoniaeから調製され得る。例えば、各肺炎球菌莢膜多糖体の血清型は、培養培地(例えば、大豆をベースとする培地)で成長し得る。細胞は溶解され、個々の多糖体は、遠心分離、沈殿、限外濾過、及び/またはカラムクロマトグラフィーにより溶解物から精製され得る。また、肺炎球菌莢膜多糖体は、合成プロトコルを使用して製造され得る。
【0064】
Streptococcus pneumoniaeの莢膜多糖体は、最大8個の糖残基を含有し得る繰り返しオリゴ糖単位を含む。莢膜糖体抗原は、全長多糖体であり得るか、またはサイズが縮小されていてもよい(例えば、単一のオリゴ糖単位、または繰り返しオリゴ糖単位の天然長糖鎖よりも短い)。莢膜多糖体のサイズは、酸加水分解処理、過酸化水素処理、高圧ホモジナイザーと、任意にそれに続く過酸化水素処理によりオリゴ糖フラグメントを生成することによるサイジング、またはマイクロ流体化などの当該技術分野で知られている様々な方法によって縮小され得る。
【0065】
血清型の各々の肺炎球菌複合体は、各血清型の莢膜多糖体をキャリアタンパク質に複合体化することにより調製され得る。異なる肺炎球菌複合体は、単回投薬量の製剤を含む組成物に製剤化され得る。
【0066】
多糖体-タンパク質複合体を調製するために、各肺炎球菌血清型から調製された莢膜多糖体は、その莢膜多糖体がキャリアタンパク質と反応し得るように化学的に活性化され得る。活性化されると、各莢膜多糖体は、糖複合体を形成するためにキャリアタンパク質に別々に複合体化され得る。多糖体の化学的活性化及びその後のキャリアタンパク質への複合体化は、従来の方法によって達成され得る。例えば、莢膜多糖体の末端におけるビシナルヒドロキシル基は、例えば、米国特許第4,365,170号、第4,673,574号及び第4,902,506号(それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されているように、過ヨウ素酸塩(過ヨウ素酸ナトリウム、過ヨウ素酸カリウム、または過ヨウ素酸を含む)などの酸化剤によってアルデヒド基に酸化され得る。過ヨウ素酸塩は、炭水化物のビシナルヒドロキシル基をランダムに酸化して、反応性アルデヒド基を形成し、C-C結合の切断を引き起こす。用語「過ヨウ素酸塩」は、過ヨウ素酸塩及び過ヨウ素酸の両方を含む。この用語はまた、メタ過ヨウ素酸塩(IO4-)及びオルト過ヨウ素酸塩(IO65-)の両方を含む。用語「過ヨウ素酸塩」はまた、過ヨウ素酸ナトリウム及び過ヨウ素酸カリウムを含む過ヨウ素酸塩の様々な塩も含む。所定の実施形態では
、多糖体は、メタ過ヨウ素酸ナトリウムの存在下で酸化され得る。
【0067】
所定の実施形態では、過ヨウ素酸塩は、多糖体1μg当たり約0.03~0.17μgの量で使用され得る。所定の実施形態では、過ヨウ素酸塩は、多糖体1μg当たり約0.025~0.18μgまたは約0.02~0.19μgの量で使用され得る。糖体は、上記範囲内で所望のように活性化され得る。その範囲外では、効果が不十分であり得る。
【0068】
多糖体はまた、シアネートエステルを形成するために1-シアノ-4-ジメチルアミノピリジニウムテトラフルオロボレート(CDAP)で活性化され得る。活性化された多糖体は次いで、キャリアタンパク質上のアミノ基に直接またはスペーサーもしくはリンカー基を介して結合される。
【0069】
例えば、スペーサーは、マレイミド活性化キャリアタンパク質(例えば、N-[y-マレイミドブチルオキシ]スクシンイミドエステル(GMBS)を使用)またはハロアセチル化キャリアタンパク質(例えば、ヨードアセトイミド、N-スクシンイミジルブロモアセテート(SBA;SIB)、N-スクシンイミジル(4-ヨードアセチル)アミノベンゾエート(SlAB)、スルホスクシンイミジル(4-ヨードアセチル)アミノベンゾエート(スルホ-SIAB)、N-スクシンイミジルヨードアセテート(SIA)またはスクシンイミジル3-[ブロモアセトアミド]プロピオネート(SBAP)を使用)との反応後に得られるチオエーテル結合を介してキャリアに結合され得るチオール化多糖体を提供するためのシスタミンまたはシステアミンであり得る。好ましくは、シアネートエステル(任意にCOAP化学によって製造される)は、ヘキサンジアミンまたはアジピン酸ジヒドラジド(AOH)と結合され、アミノ誘導体化糖体は、タンパク質キャリア上のカルボキシル基を介してカルボジイミド(例えば、EDACまたはEDC)化学を使用してキャリアタンパク質に複合体化される。このような複合体は、例えば、WO93/15760、WO95/08348及びWO96/129094に記載されており、これらのすべては、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0070】
活性化された莢膜多糖体とキャリアタンパク質の複合体化は、例えば、米国特許出願公開第2006/0228380号、第2007/0231340、第2007/0184071号及び第2007/0184072号、WO2006/110381号、WO2008/079653号、ならびにWO2008/143709(これらのすべては、それらの全体が参照により組み込まれる)に記載されているように、例えば、還元的アミノ化によって達成され得る。例えば、活性化された莢膜多糖体及びキャリアタンパク質を還元剤と反応させて複合体を形成し得る。好適な還元剤には、水素化ホウ素、例えば、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、ボラン-ピリジン、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、または水素化ホウ素イオン交換樹脂が含まれる。還元反応の終了時に、複合体中に残存している未反応のアルデヒド基が存在し得る。未反応のアルデヒド基は、好適なキャップ剤、例えば、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)を使用してキャップ化され得る。一実施形態では、還元反応は、水性溶媒中で行われる。別の実施形態では、反応は、非プロトン性溶媒中で行われる。実施形態では、還元反応は、DMSO(ジメチルスルホキシド)またはDMF(ジメチルホルムアミド)溶媒中で行われる。他の可能な還元剤には、アミン-ボラン、例えば、ピリジン-ボラン、2-ピコリン-ボラン、2,6-ジボラン-メタノール、ジメチルアミン-ボラン、t-BuMeiPrN-BH3、ベンジルアミン-BH3または5-エチル-2-メチルピリジン-ボラン(PEMB)が含まれるがこれらに限定されない。
【0071】
活性化された莢膜多糖体は、キャリアタンパク質に直接、またはスペーサーもしくはリンカー、例えば、二官能性リンカーの使用を介して間接的に複合体化され得る。リンカーは、任意にヘテロ二官能性またはホモ二官能性であり、例えば、反応性アミノ基及び反応
性カルボン酸基、2個の反応性アミノ基または2個の反応性カルボン酸基を有する。
【0072】
複合体化のための他の好適な技術は、例えば、国際特許出願公開WO98/42721(それらの全体が参照により組み込まれる)に記載されているように、カルボジイミド、ヒドラジド、活性エステル、ノルボラン、p-ニトロ安息香酸、N-ヒドロキシスクシンイミド、S--NHS、EDC、TSTUを使用する。複合体化は、糖体の遊離ヒドロキシル基と1,1’-カルボニルジイミダゾール(CDl)との反応(Bethell et al.(1979)J.Biol.Chem.254:2572-2574;Hearn et al.(1981)J.Chromatogr.218:509-518を参照されたい)と、それに続くタンパク質との反応によりカルバメート結合を形成することによって形成され得るカルボニルリンカーが関与し得る。これは、アノマー末端の第1級ヒドロキシル基への還元、第1級ヒドロキシル基の任意の保護/脱保護、第1級ヒドロキシル基とCDIとの反応によるCDIカルバメート中間体の形成、及びCDlカルバメート中間体とタンパク質上のアミノ基との結合を含み得る。
【0073】
肺炎球菌複合体ワクチンのための多糖体のキャリアタンパク質に対する比は典型的には、0.3~3.0(w/w)の範囲であるが、血清型によって変化し得る。比は、存在するタンパク質及び多糖体の量の独立した測定によって、または当該技術分野で知られている比の直接測定を提供する方法によって決定され得る。1H NMR分光法または二重モニタリング(例えば、屈折率及びUV(それぞれ総物質及びタンパク質含有量のため))を伴うSEC-HPLC-UV/RIを含む方法は、SEC-HPLC-MALLSまたはMALDI-TOF-MSと同様に、複合体のサイズ分布にわたって糖体/タンパク質比をプロファイリングし得る。
【0074】
このようにして得られた多糖体-タンパク質複合体は、様々な方法によって精製され、濃縮され得る。これらの方法には、濃縮/ダイアフィルトレーション、カラムクロマトグラフィー、及び深層濾過が含まれる。精製された多糖体-タンパク質複合体は、組み合わされて、混合キャリア21価肺炎球菌複合体組成物を製剤化し、これがワクチンとして使用され得る。
【0075】
ワクチン組成物の製剤化は、当該技術分野で認識されている方法を使用して達成され得る。ワクチン組成物は、その意図された投与経路に適合するように製剤化される。個々の肺炎球菌莢膜多糖体-タンパク質複合体は、組成物を調製するために生理学的に許容可能なビヒクルと共に製剤化され得る。そのようなビヒクルの例には、水、緩衝生理食塩水、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール)及びデキストロース溶液が含まれるがこれらに限定されない。
【0076】
いくつかの実施形態では、混合キャリア21価肺炎球菌複合体組成物は、アジュバントをさらに含む。本明細書で使用される場合、「アジュバント」は、抗原に対する免疫反応を非特異的に増強する物質またはビヒクルを指す。アジュバントには、抗原が吸着される鉱物(ミョウバン、アルミニウム塩、例えば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、ヒドロキシリン酸硫酸アルミニウムなど)の懸濁液、または抗原溶液が鉱物油中に乳化されている油中水エマルション(例えば、フロイント不完全アジュバント)であって、時に、抗原性をさらに増強するために死滅したマイコバクテリアを包含するもの(フロイント完全アジュバント)が含まれ得る。免疫刺激性オリゴヌクレオチド(CpGモチーフを含むものなど)もまた、アジュバントとして使用され得る(例えば、米国特許第6,194,388号;第6,207,646号;第6,214,806号;第6,218,371号;第6,239,116号;第6,339,068号;第6,406,705号;及び第6,429,199号を参照されたい)。アジュバントはまた、生物学的分子、例えば、脂質及び共刺激分子も含む。例示的な生物学的アジュバントには
、AS04[9]、IL-2、RANTES、GM-CSF、TNF-α、IFN-γ、G-CSF、LFA-3、CD72、B7-1、B7-2、OX-40L及び41BBLが含まれる。
【0077】
いくつかの実施形態では、アジュバントは、アルミニウムをベースとするアジュバントである。典型的には、単回0.5mlワクチン用量は、約0.1mg~2.5mgのアルミニウムをベースとするアジュバントを含有するように製剤化される。他の実施形態では、単回0.5mlワクチン用量は、0.1mg~2mg、0.1mg~1mg、0.1mg~0.5mg、0.1mg~0.2mg、0.125mg~2.5mg、0.125mg~0.5mg、0.125mg~0.2mgまたは0.125~0.25mgのアルミニウムをベースとするアジュバントを含有するように製剤化される。所定の実施形態では、単回0.5mlワクチン用量は、約0.125mg~約0.250mgのアルミニウムをベースとするアジュバントを含有するように製剤化される。所定の実施形態では、単回0.5mlワクチン用量は、約0.125mgのアルミニウムをベースとするアジュバントを含有するように製剤化される。所定の実施形態では、単回0.5mlワクチン用量は、約0.250mgのアルミニウムをベースとするアジュバントを含有するように製剤化される。
【0078】
特定の実施形態では、アジュバントは、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、及び水酸化アルミニウムからなる群から選択される。
【0079】
特定の実施形態では、アジュバントは、リン酸アルミニウムである。
【0080】
いくつかの実施形態では、組成物は、Streptococcus pneumoniaeの感染症に対するワクチンとして使用するためのものである。
【0081】
肺炎球菌莢膜多糖体-タンパク質キャリア複合体の特徴付け
所定の実施形態では、多糖体-タンパク質キャリア複合体は、100~10,000kDaの分子量を有し得る。所定の実施形態では、複合体は、200~9,000kDaの分子量を有する。所定の実施形態では、複合体は、300~8,000kDaの分子量を有する。所定の実施形態では、複合体は、400~7,000kDaの分子量を有する。所定の実施形態では、複合体は、500~6,000kDaの分子量を有する。所定の実施形態では、複合体は、600~5,000kDaの分子量を有する。所定の実施形態では、複合体は、500~4,000kDaの分子量を有する。上記範囲のいずれかの範囲内の整数が、本開示の実施形態として企図される。
【0082】
分子量が上記範囲内である場合、複合体は、高収率で安定して形成され得る。また、遊離多糖体の割合が低減され得る。また、優れた免疫原性が上記分子量範囲内で得られ得る。
【0083】
個々の多糖体-タンパク質複合体が精製された後、それらは、本開示の免疫原性組成物を製剤化するために混和される。
【0084】
本開示の血清型の糖-タンパク質複合体は、タンパク質キャリアに対する多糖体の比(多糖体の量/タンパク質キャリアの量、w/w)によって特徴付けられ得る。
【0085】
所定の実施形態では、各血清型についての多糖体-タンパク質キャリア複合体における多糖体のタンパク質キャリアに対する比(w/w)は、0.5~2.5、0.4~2.3、0.3~2.1、0.24~2、0.2~1.8、0.18~1.6、0.16~1.4、0.14~1.2、0.12~1または0.1~1(例えば約0.7、約0.8、約
0.9、約1.0、約1.1、約1.2、約1.3、約1.4、約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、約2.0、約2.1、約2.2、約2.3、約2.4または約2.5)である。
【0086】
多糖体のタンパク質キャリアに対する比が上記範囲内である場合、複合体は、高収率で安定して形成され得る。また、遊離多糖体の割合が低減され得る。また、優れた免疫原性が達成され得、複合体は、上記範囲内で他の血清型による干渉を伴わずに安定的に維持され得る。
【0087】
本開示の複合体及び免疫原性組成物は、タンパク質キャリアに共有結合的に複合体化されていないが、それにもかかわらず多糖体-タンパク質キャリア複合体組成物中に存在する遊離多糖体を含有し得る。遊離多糖体は、多糖体-タンパク質キャリア複合体と非共有結合的に関連していてもよい(すなわち、多糖体-タンパク質キャリア複合体に非共有結合的に結合しているか、多糖体-タンパク質キャリア複合体に吸着しているか、または多糖体-タンパク質キャリア複合体の中にもしくは多糖体-タンパク質キャリア複合体によって捕捉されている)。
【0088】
所定の実施形態では、多糖体-タンパク質キャリア複合体は、各血清型の多糖体の総量を基準として、約60%、約50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%または15%未満の各血清型の遊離多糖体を含有する。所定の実施形態では、各血清型の多糖体-タンパク質キャリア複合体は、各血清型の多糖体の総量を基準として、約60%未満の各血清型の遊離多糖体を含有する。所定の実施形態では、各血清型の多糖体-タンパク質キャリア複合体は、各血清型の多糖体の総量を基準として、約50%未満の各血清型の遊離多糖体を含有する。所定の実施形態では、各血清型の多糖体-タンパク質キャリア複合体は、各血清型の多糖体の総量を基準として、約40%未満の各血清型の遊離多糖体を含有する。所定の実施形態では、各血清型の多糖体-タンパク質キャリア複合体は、各血清型の多糖体の総量を基準として、約30%未満の各血清型の遊離多糖体を含有する。所定の実施形態では、各血清型の多糖体-タンパク質キャリア複合体は、各血清型の多糖体の総量を基準として、約25%未満の各血清型の遊離多糖体を含有する。所定の実施形態では、各血清型の多糖体-タンパク質キャリア複合体は、各血清型の多糖体の総量を基準として、約20%未満の各血清型の遊離多糖体を含有する。所定の実施形態では、各血清型の多糖体-タンパク質キャリア複合体は、各血清型の多糖体の総量を基準として、約15%未満の各血清型の遊離多糖体を含有する。所定の実施形態では、各血清型の多糖体-タンパク質キャリア複合体は、各血清型の多糖体の総量を基準として、約10%未満の各血清型の遊離多糖体を含有する。
【0089】
各血清型の多糖体-タンパク質キャリア複合体はまた、その分子サイズ分布(Kd)によって特徴付けられ得る。複合体の相対的分子サイズ分布を決定するために、サイズ排除クロマトグラフィー媒体(CL-4B;架橋アガロースビーズ、4%)が使用され得る。サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)は、複合体の分子サイズ分布をプロファイルするために重力供給カラムにおいて使用される。媒体中で細孔から排除された大きな分子は、小さな分子よりも速く溶出する。カラム溶出液を収集するためにフラクションコレクターが使用される。フラクションは、糖体アッセイによって比色分析で試験される。Kdの決定のため、カラムは、分子が完全に排除されたフラクション(V0;Kd=0)及び最大保持率を表すフラクション(Vi;Kd=1)を達成するように校正される。特定の試料特質に到達するフラクション(Ve)は、式Kd=(Ve-V0)/(Vi-V0)によるKdに関連する。
【0090】
所定の実施形態では、各血清型の多糖体-タンパク質キャリア複合体の少なくとも15%は、CL-4Bカラムにおいて0.3以下のKdを有し得る。
【0091】
所定の実施形態では、各血清型の多糖体-タンパク質キャリア複合体の少なくとも20%は、CL-4Bカラムにおいて0.3以下のKdを有し得る。所定の実施形態では、各血清型の多糖体-タンパク質キャリア複合体の少なくとも15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%または90%は、CL-4Bカラムにおいて0.3以下のKdを有し得る。所定の実施形態では、各血清型の多糖体-タンパク質キャリア複合体の少なくとも60%は、CL-4Bカラムにおいて0.3以下のKdを有し得る。所定の実施形態では、各血清型の多糖体-タンパク質キャリア複合体の少なくとも50~80%は、CL-4Bカラムにおいて0.3以下のKdを有し得る。所定の実施形態では、各血清型の多糖体-タンパク質キャリア複合体の少なくとも65~80%は、CL-4Bカラムにおいて0.3以下のKdを有し得る。所定の実施形態では、各血清型の糖体-タンパク質複合体の少なくとも15~60%は、CL-4Bカラムにおいて0.3以下のKdを有し得る。
【0092】
予防的方法及び使用
一態様では、本開示は、混合キャリア21価肺炎球菌複合体組成物及び薬学的に許容可能な賦形剤を含むワクチンを提供する。いくつかの実施形態では、薬学的に許容可能な賦形剤は、少なくともコハク酸塩緩衝液などの緩衝液、塩化ナトリウムなどの塩、及び/またはポリオキシエチレンソルビタンエステル(例えば、ポリソルベート80)などの表面活性剤を含む。いくつかの実施形態では、上記のように特定の血清型由来の3つまたは4つの莢膜多糖体は、破傷風トキソイドに複合体化されており、1、3、4、5、6A、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15B、18C、19A、19F、22F、23F、及び33Fの中の残りの莢膜多糖体は、CRM197に複合体化されている(21価)。
【0093】
一実施形態では、血清型1、5、15B及び22F由来の莢膜多糖体は、破傷風トキソイドに複合体化されており、血清型3、4、6A、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、18C、19A、19F、23F、及び33F由来の莢膜多糖体は、CRM197に複合体化されている(21価)。
【0094】
別の実施形態では、血清型1、3、15B及び22F由来の莢膜多糖体は、破傷風トキソイドに複合体化されており、血清型4、5、6A、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、18C、19A、19F、23F、及び33F由来の莢膜多糖体は、CRM197に複合体化されている(21価)。
【0095】
さらに別の実施形態では、血清型3、5、15B及び22F由来の莢膜多糖体は、破傷風トキソイドに複合体化されており、血清型1、4、6A、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、18C、19A、19F、23F、及び33F由来の莢膜多糖体は、CRM197に複合体化されている(21価)。
【0096】
いくつかの実施形態では、ワクチンは、Streptococcus pneumoniae感染によって引き起こされる疾患に対するヒト対象における保護的免疫反応を引き出す。
【0097】
さらなる態様によれば、本開示は、Streptococcus pneumoniae感染症または疾患の予防のための方法であって、予防的有効量の混合キャリア21価肺炎球菌複合体組成物またはそれを含むワクチンをヒト対象に投与することを含む、方法を提供する。混合キャリア21価肺炎球菌複合体組成物またはそれを含むワクチンは、以下にさらに詳細に記載されるように、例えば、全身的または粘膜的経路を含む任意の経路によって投与され得る。
【0098】
所定の実施形態では、ヒト対象は、高齢の対象であり、疾患は、肺炎または侵襲性肺炎球菌疾患(IPD)である。所定の実施形態では、高齢の対象は、少なくとも50歳である。他の実施形態では、高齢の対象は、少なくとも55歳である。さらに他の実施形態では、高齢の対象は、少なくとも60歳である。
【0099】
他の実施形態では、ヒト対象は、乳幼児であり、疾患は、肺炎、侵襲性肺炎球菌疾患(IPD)、または急性中耳炎(AOM)である。所定の実施形態では、乳幼児は、0~2歳である。他の実施形態では、乳幼児は、2~15ヶ月である。
【0100】
さらに別の実施形態では、ヒト対象は、6週齢~17歳であり、疾患は、肺炎、侵襲性肺炎球菌疾患(IPD)または急性中耳炎(AOM)である。所定の実施形態では、ヒト対象は、6週齢~5歳である。他の実施形態では、ヒト対象は、5~17歳である。
【0101】
各ワクチン用量中の複合体の量または混合キャリア多価肺炎球菌複合体組成物の予防的有効量は、有意な副作用のない予防を誘導する量として選択され得る。そのような量は、肺炎球菌の血清型に応じて変化し得る。一般に、各用量は、約0.1μg~約100μg、具体的には、約0.1~10μg、より具体的には、約1μg~約5μgの多糖体を含み得る。特定のワクチン用の成分の最適量は、対象における適切な免疫反応の観察を含む標準的な研究によって解明され得る。例えば、ヒト対象のワクチン接種用の量は、動物試験の結果を外挿することによって決定され得る。また、用量は、経験的に決定され得る。
【0102】
いくつかの実施形態では、ワクチンまたは混合キャリア21価肺炎球菌複合体組成物は、約1μg~約5μgの各莢膜多糖体;約1μg~約30μgのTT;約20μg~約85μgのCRM197;及び任意に約0.1mg~約0.5mgの元素アルミニウムアジュバントを含有するように製剤化された単回0.5ml用量であり得る。いくつかの実施形態では、ワクチンまたは混合キャリア21価肺炎球菌複合体組成物は、約4μg~約5μgの量で存在する血清型6B及び任意に血清型3を除く約2μg~約2.5μgの各莢膜多糖体;約2μg~約25μgのTT;約40μg~約75μgのCRM197;及び任意に約0.1mg~約0.25mgの元素アルミニウムアジュバントを含有するように製剤化された単回0.5ml用量であり得る。
【0103】
いくつかの実施形態では、ワクチンまたは混合キャリア21価肺炎球菌複合体組成物は、約4.4μgの量で存在する血清型6Bを除く約2.2μgの各莢膜多糖体を含有するように製剤化された単回0.5ml用量であり得る。
【0104】
いくつかの実施形態では、ワクチンまたは混合キャリア21価肺炎球菌複合体組成物は、血清型1、3、4、5、6B、9V、19A、及び19F(各々が約4μg~約5μgの量で存在する)からなる群から選択される最大で6種の莢膜多糖体を除く約2μg~約2.5μgの莢膜多糖体の各々を含有するように製剤化された単回0.5ml用量であり得る。一実施形態では、約4μg~約5μgの量で存在する最大で6種の莢膜多糖体は、血清型1、3、4、6B、9V、19A、及び19Fからなる群から選択される。他の実施形態では、ワクチンまたは混合キャリア21価肺炎球菌複合体組成物は、血清型1、3、4、5、6B、9V、19A、及び19F(各々が約4.4μgの量で存在する)からなる群から選択される最大で6種の莢膜多糖体を除く約2.2μgの莢膜多糖体の各々を含有するように製剤化された単回0.5ml用量であり得る。一実施形態では、約4.4μgの量で存在する最大で6種の莢膜多糖体は、血清型1、3、4、6B、9V、19A、及び19Fからなる群から選択される。
【0105】
いくつかの実施形態では、ワクチンまたは混合キャリア21価肺炎球菌複合体組成物は
、約2μg~約2.5μgの血清型4、5、6A、7F、8、9V、9N、10A、11A、12F、14、15B、18C、22F、23F、及び33Fの莢膜多糖体ならびに約4μg~約5μgの血清型1、3、6B、19A、及び19Fの莢膜多糖体を含有するように製剤化された単回0.5ml用量であり得る。
【0106】
いくつかの実施形態では、ワクチンまたは混合キャリア21価肺炎球菌複合体組成物は、約2μg~約2.5μgの血清型1、5、6A、7F、8、9N、10A、11A、12F、14、15B、18C、22F、23F、及び33Fの莢膜多糖体ならびに約4μg~約5μgの血清型3、4、6B、9V、19A、及び19Fの莢膜多糖体を含有するように製剤化された単回0.5ml用量であり得る。
【0107】
所定の実施形態では、ワクチンまたは混合キャリア21価肺炎球菌複合体組成物は、約2~2.5μgの血清型1、4、5、6A、7F、8、9V、9N、10A、11A、12F、14、15B、18C、19A、19F、22F、23F、及び33Fの莢膜多糖体ならびに約4~約5μgの血清型3及び6Bの莢膜多糖体を含有するように製剤化された単回0.5ml用量であり得る。
【0108】
いくつかの実施形態では、ワクチンまたは混合キャリア21価肺炎球菌複合体組成物は、約2~約2.5μgの血清型1、4、5、6A、7F、8、9V、9N、10A、11A、12F、14、15B、18C、19A、19F、22F、23F、及び33Fの莢膜多糖体ならびに約4~約5μgの血清型6Bの莢膜多糖体ならびに約8~約9μgの血清型3の莢膜多糖体、より好ましくは約8.8μgの血清型3の莢膜多糖体を含有するように製剤化された単回0.5ml用量であり得る。
【0109】
所定の実施形態では、混合キャリア21価肺炎球菌複合体組成物またはそれを含むワクチンはさらに、賦形剤として塩化ナトリウム及びコハク酸ナトリウム緩衝液を含む。
【0110】
いくつかの実施形態では、混合キャリア21価肺炎球菌複合体組成物は、血清型1、5、15B及び22Fの肺炎球菌莢膜多糖体の各々が、TTに複合体化されており、血清型3、4、6A、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、18C、19A、19F、23F、及び33F由来の莢膜多糖体が、CRM197に複合体化されている(21価)液体製剤に製剤化され得る。各0.5mL用量は、約4.4μgの血清型6Bを除く約2.2μgの各莢膜多糖体、約2μg~約25μgのTTキャリアタンパク質(血清型1、5、15B及び22Fの場合のみ)及び約40μg~約75μgのCRM197キャリアタンパク質、約0.125~0.250mgの元素アルミニウム(約0.5~1.2mgのリン酸アルミニウム)アジュバント、ならびに賦形剤としての塩化ナトリウム及びコハク酸ナトリウム緩衝液を含有する液体に製剤化され得る。
【0111】
いくつかの実施形態では、混合キャリア21価肺炎球菌複合体組成物は、血清型3、5、15B及び22Fの肺炎球菌莢膜多糖体の各々が、TTに複合体化されており、血清型1、4、6A、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、18C、19A、19F、23F、及び33F由来の莢膜多糖体が、CRM197に複合体化されている(21価)液体製剤に製剤化され得る。一実施形態では、各0.5mL用量は、約4.4μgの血清型6Bを除く約2.2μgの各莢膜多糖体、約2μg~約25μgのTTキャリアタンパク質(血清型3、5、15B及び22Fの場合のみ)及び約40μg~約70μgのCRM197キャリアタンパク質、約0.125mg~約0.250mgの元素アルミニウム(約0.5~1.2mgのリン酸アルミニウム)アジュバント、ならびに賦形剤としての塩化ナトリウム及びコハク酸ナトリウム緩衝液を含有する液体に製剤化され得る。別の実施形態では、各0.5mL用量は、約4.4μgの血清型1、3、4、5、6B、9V、19A、及び19Fからなる群から選択される最大で6種の莢膜多糖体
を除く約2.2μgの各莢膜多糖体、約2μg~約25μgのTTキャリアタンパク質(血清型3、5、15B及び22Fの場合のみ)及び約40μg~約70μgのCRM197キャリアタンパク質、約0.125mg約~0.250mgの元素アルミニウム(約0.5~1.2mgのリン酸アルミニウム)アジュバント、ならびに賦形剤としての塩化ナトリウム及びコハク酸ナトリウム緩衝液を含有する液体に製剤化され得る。一実施形態では、約4.4μgの最大で6種の莢膜多糖体は、血清型1、3、4、6B、9V、19A、及び19Fからなる群から選択される。さらに別の実施形態では、各0.5mL用量は、約4.4μgの血清型1、3、6B、19A,及び19Fを除く約2.2μgの各莢膜多糖体、約2μg~約25μgのTTキャリアタンパク質(血清型3、5、15B及び22Fの場合のみ)及び約40μg~約70μgのCRM197キャリアタンパク質、約0.125mg~約0.250mgの元素アルミニウム(約0.5~1.2mgのリン酸アルミニウム)アジュバント、ならびに賦形剤としての塩化ナトリウム及びコハク酸ナトリウム緩衝液を含有する液体に製剤化され得る。
【0112】
いくつかの実施形態では、混合キャリア21価肺炎球菌複合体組成物は、血清型1、3、15B及び22Fの肺炎球菌莢膜多糖体の各々が、TTに複合体化されており、血清型4、5、6A、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、18C、19A、19F、23F、及び33F由来の莢膜多糖体が、CRM197に複合体化されている(21価)液体製剤に製剤化され得る。一実施形態では、各0.5mL用量は、約4.4μgの血清型6Bを除く約2.2μgの各莢膜多糖体、約2μg~約25μgのTTキャリアタンパク質(血清型1、3、15B及び22Fの場合のみ)及び約40μg~約75μgのCRM197キャリアタンパク質、約0.125mg~約0.250mgの元素アルミニウム(約0.5~1.2mgのリン酸アルミニウム)アジュバント、ならびに賦形剤としての塩化ナトリウム及びコハク酸ナトリウム緩衝液を含有する液体に製剤化され得る。
【0113】
いくつかの実施形態では、液体製剤は、防腐剤を用いずに単回用量のシリンジに充填され得る。振盪後、液体製剤は、筋肉内投与のために準備された均質な白色の懸濁液であるワクチンになる。
【0114】
混合キャリア21価肺炎球菌複合体組成物は、単回注射でまたは免疫シリーズの一部として投与され得る。例えば、混合キャリア21価肺炎球菌複合体組成物は、適切な間隔、例えば、1、2、3、4、5、もしくは6ヶ月の間隔またはそれらの組み合わせで2回、3回、4回、もしくはそれ以上の回数で投与され得る。いくつかの実施形態では、混合キャリア21価肺炎球菌複合体組成物は、例えば、約2、3、4、及び12~15ヶ月齢の時点、約3、4、5、及び12~15ヶ月齢の時点、または約2、4、6、及び12~15ヶ月齢の時点を含む、生後の最初の15ヶ月以内に4回乳幼児に投与される。この最初の用量は、6週齢の早さで投与され得る。別の実施形態では、混合キャリア21価肺炎球菌複合体組成物は、例えば、約2、4、及び11~12ヶ月の時点を含む生後の最初の15ヶ月以内に3回乳幼児に投与される。
【0115】
混合キャリア多価肺炎球菌複合体組成物はまた、Streptococcus pneumoniae由来の1つ以上のタンパク質も含み得る。包含に好適なStreptococcus pneumoniaeタンパク質の例には、国際特許出願WO02/083855で特定されているもの、及び国際特許出願WO02/053761に記載されているものが含まれる。
【0116】
混合キャリア21価肺炎球菌複合体組成物は、非経口、経皮、もしくは経粘膜、経鼻、筋肉内、腹腔内、皮内、静脈内、または皮下経路などの当業者に知られている1つ以上の投与経路を介して対象に投与され、それに応じて製剤化され得る。混合キャリア21価肺
炎球菌複合体組成物は、その意図された投与経路に適合するように製剤化され得る。
【0117】
いくつかの実施形態では、混合キャリア21価肺炎球菌複合体組成物は、筋肉内、腹腔内、皮下、静脈内、動脈内、もしくは経皮注射または呼吸粘膜注射によって液体製剤として投与され得る。混合キャリア21価肺炎球菌複合体組成物は、液体形態または凍結乾燥形態で製剤化され得る。いくつかの実施形態では、注射可能な組成物は、液体の溶液もしくは懸濁液、注射前の液体中の溶液もしくは懸濁液に好適な固体形態として、またはエマルションとして、従来の形態で調製される。いくつかの実施形態では、注射溶液及び懸濁液は、滅菌粉末または顆粒から調製される。これらの経路による投与のための薬学的薬剤の製剤化及び製造における一般的な考慮事項は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,19th ed.,Mack Publishing Co.,Easton,PA,1995(参照により本明細書に組み込まれる)で見ることができる。現在のところ、治療剤を肺及び呼吸器系に直接送達するために経口もしくは鼻腔内スプレーまたはエアロゾル経路(例えば、吸入による)が最も一般的に使用される。いくつかの実施形態では、混合キャリア21価肺炎球菌複合体組成物は、計量された投薬量の組成物を送達する装置を使用して投与される。本明細書に記載の皮内薬学的組成物を送達する際に使用するのに好適な装置は、米国特許第4,886,499号、米国特許第5,190,521号、米国特許第5,328,483号、米国特許第5,527,288号、米国特許第4,270,537号、米国特許第5,015,235号、米国特許第5,141,496号、米国特許第5,417,662号(これらのすべてが参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているものなどの短針装置が含まれる。皮内組成物はまた、参照により本明細書に組み込まれるWO1999/34850に記載されているもの、及びその機能的等価物などの、皮膚への針の有効貫通長を制限する装置によって投与され得る。また、液体ジェット注射器を介して、または角質層を貫通して真皮に到達するジェットを生成する針を介して液体ワクチンを真皮に送達するジェット注射装置も好適である。ジェット注射装置は、例えば、米国特許第5,480,381号、米国特許第5,599,302号、米国特許第5,334,144号、米国特許第5,993,412号、米国特許第5,649,912号、米国特許第5,569,189号、米国特許第5,704,911号、米国特許第5,383,851号、米国特許第5,893,397号、米国特許第5,466,220号、米国特許第5,339,163号、米国特許第5,312,335号、米国特許第5,503,627号、米国特許第5,064,413号、米国特許第5,520,639号、米国特許第4,596,556号、米国特許第4,790,824号、米国特許第4,941,880号、米国特許第4,940,460号、WO1997/37705号、及びWO1997/13537(これらのすべてが参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。また、圧縮ガスを使用して、粉末形態のワクチンを皮膚の外層を通して真皮まで加速させる弾道的な粉末/粒子送達装置も好適である。また、従来のシリンジは、皮内投与の古典的なマントー法で使用され得る。
【0118】
非経口投与用の調製物には、滅菌水性または非水性溶液、懸濁液、及びエマルションが含まれる。非水性溶媒の例には、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの油、オレイン酸エチルなどの注射用有機エステルである。油の例には、植物または動物油、落花生油、大豆油、オリーブ油、ひまわり油、肝油、海洋油などの合成油、及び牛乳または卵から得られる脂質が含まれる。水性担体には、水、アルコール性/水性溶液、エマルションまたは懸濁液(生理食塩水及び緩衝媒体を含む)が含まれる。非経口用ビヒクルには、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸リンガー液、または固定油が含まれる。静脈内ビヒクルには、流体及び栄養補給剤、電解質補給剤(リンゲルデキストロースをベースとするものなど)が含まれる。例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレト剤、及び不活性ガスなどの防腐剤及び他の添加剤も存在し得る。
【0119】
混合キャリア21価肺炎球菌複合体組成物は、単位用量バイアル、複数回用量バイアル、または事前充填されたシリンジの形態で製剤化され得る。液体製剤用の薬学的に許容可能な担体には、水性または非水性溶媒、懸濁液、エマルション、または油が含まれる。組成物は、等張性、高張性、または低張性であり得る。しかしながら、輸液または注射用の組成物は、基本的には等張性であることが望ましい。よって、組成物の保存には、等張性または高張性が有利であり得る。組成物が高張性である場合、組成物は、投与前に希釈されて等張性とされ得る。等張化剤は、塩などのイオン性等張化剤または炭水化物などの非イオン性等張化剤であり得る。イオン性等張化剤には、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化カリウム、及び塩化マグネシウムが含まれるがこれらに限定されない。非イオン性等張化剤には、ソルビトール及びグリセロールが含まれるがこれらに限定されない。好ましくは、少なくとも1つの薬学的に許容可能な緩衝液が含まれる。例えば、組成物が輸液または注射剤である場合、pH4~pH10、例えば、pH5~pH9、または、pH6~pH8で緩衝能を有する緩衝液中で製剤化されることが好ましい。緩衝液は、米国薬局方(USP)に好適なものから選択され得る。例えば、緩衝液は、酢酸、安息香酸、グルコン酸、グリセリン酸、及び乳酸などの一塩基酸;アコニット酸、アジピン酸、アスコルビン酸、炭酸、グルタミン酸、リンゴ酸、コハク酸、及び酒石酸などの二塩基酸;クエン酸及びリン酸などの多塩基酸;ならびにアンモニア、ジエタノールアミン、グリシン、トリエタノールアミン、及びTRISなどの塩基からなる群から選択され得る。
【0120】
混合キャリア21価肺炎球菌複合体組成物は、表面活性剤を含み得る。表面活性剤の例には、ポリオキシエチレンソルビタンエステル(一般にTweenと称される)、特に、ポリソルベート20及びポリソルベート80;エチレンオキサイド(EO)、プロピレンオキサイド(PO)、ブチレンオキサイド(BO)のコポリマー(DOWFAXなど);エトキシ(オキシ-1,2-エタンジイル)基の異なる繰り返しを有するオクトキシノール、特にオクトキシノール-9(Triton-100);エチルフェノキシポリエトキシエタノール(IGEPAL CA-630/NP-40);レシチンなどのリン脂質;TERGITOL NPシリーズなどのノニルフェノールエトキシレート;ラウリル、セチル、ステアリル、オレイルアルコール由来のポリオキシエチレン脂肪エーテル(Brij界面活性剤)、特に、トリエチレングリコールモノラウリルエーテル(Brij30);SPAN(登録商標)として知られるソルビタンエーテル、特に、ソルビタントリオレエート(Span85)及びソルビタンモノラウレートが含まれるがこれらに限定されない。
【0121】
Tween80/Span85などの表面活性剤の混合物が使用され得る。Tween80などのポリオキシエチレンソルビタンエステルとTriton X-100などのオクトキシノールとの組み合わせも好適である。Laureth9とTween及び/またはオクトキシノールとの組み合わせも有利である。好ましくは、含まれるポリオキシエチレンソルビタンエステル(Tween80など)の量は、0.01%~1%(w/v)、0.01%~0.1%(w/v)、0.01%~0.05%(w/v)、または約0.02%であり得;含まれるオクチルフェノキシポリオキシエタノールまたはノニルフェノキシポリオキシエタノール(Triton X-100など)の量は、0.001%~0.1%(w/v)、特に0.005%~0.02%であり得;含まれるポリオキシエチレンエーテル(Laureth9など)の量は、0.1%~20%(w/v)、場合により0.1%~10%、特に0.1%~1%または約0.5%であり得る。
【0122】
いくつかの実施形態では、混合キャリア21価肺炎球菌複合体組成物は、放出制御システムを介して送達され得る。例えば、静脈輸液、経皮パッチ、リポソーム、または他の経路が投与に使用され得る。一態様では、マクロ分子、例えばマイクロスフィアまたは埋込物が使用され得る。
【0123】
上記開示は、本発明を一般に説明している。以下の具体例を参照することによってより完全な理解が得られ得る。これらの例は、単に例示の目的のために記載されており、本発明の範囲を限定することは意図されていない。
【実施例0124】
実施例1.S.pneumoniae莢膜多糖体の調製
【0125】
S.pneumoniaeの培養及び莢膜多糖体の精製は、当業者に知られているように行った。S.pneumoniae血清型は、American Type Culture Collection(ATCC)から入手した (血清型1:ATCC番号6301;血清型3:ATCC番号6303;血清型4:ATCC番号6304;血清型5:ATCC番号6305;血清型6A:ATCC番号6306;血清型6B:ATCC番号6326;血清型7F:ATCC番号10351;血清型9N:ATCC番号6309;血清型9V:ATCC番号10368;血清型14:ATCC番号6314;血清型18C:ATCC番号10356;血清型19A:ATCC番号10357;血清型19F:ATCC番号6319;血清型23F:ATCC番号6323)。血清型8、10A、11A、12F、15B、22F、及び33Fの内部株を使用したが、任意の公共に利用可能な株が使用され得る。S.pneumoniaeは、莢膜及び運動性、グラム陽性、槍形双球菌、ならびに血液寒天培地におけるアルファ溶血を特徴としていた。血清型は、特異的抗血清を使用するQuelling試験(米国特許第5,847,112号)によって同定した。
【0126】
細胞バンクの調製
【0127】
菌株を増殖させ、動物由来の成分を除去するために、数世代のシードストックを生成した(世代F1、F2、及びF3)。追加の2世代のシードストックを産生した。最初の追加の世代は、F3バイアルから培養し、その後の世代は、最初の追加の世代のバイアルから培養した。シードバイアルを、凍結保存剤としての合成グリセロールを用いて冷凍保存した(-70℃未満)。細胞バンク調製のため、すべての培養物を、大豆をベースとする培地で成長させた。凍結の前に、細胞を遠心分離によって濃縮し、使用済みの培地を除去し、細胞ペレットを、凍結保存剤(合成グリセロールなど)を含有する新鮮な培地に再懸濁した。
【0128】
培養及び採取
【0129】
ワーキング細胞バンクからの培養物を、大豆をベースとする培地を含有するシードボトルに播種し、培養した。標的光学密度(吸光度)に到達した後、シードボトルを使用して大豆をベースとする培地を含有する発酵槽に播種した。光学密度値が一定に維持され始めたときに培養を終了した。培養を終了した後、デオキシコール酸ナトリウムを培養物に添加して細胞を溶解させた。得られた発酵槽の内容物を冷却し、タンパク質の沈殿を誘導した。次いで、混合物を遠心分離して、沈殿したタンパク質及び細胞デブリを除去した。
【0130】
精製
【0131】
遠心分離から得られた溶液を、深層フィルターを通して濾過して、遠心分離で沈殿しなかったタンパク質及び細胞デブリを除去した。濾液を100kDa MW膜上で濃縮し、濃縮物を10容量の25mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.2)でダイアフィルトレーションをして試料を得た。試料を濾過して上清を収集し、そこから多糖体を沈殿させ、濾過した。濾液を30kDa膜上で濃縮し、濃縮物を約10容量の三重蒸留水を使用して
ダイアフィルトレーションをした。ダイアフィルトレーションを実施した後、残りの溶液を0.2μmのフィルターを通して濾過した。濾液についてインプロセスコントロール試験(外観、残存タンパク質、残存核酸、エンドトキシン、分子量、及び多糖体の総量)を実施した。濃縮物を無菌濾過し、-20℃で保存した。
【0132】
実施例2.S.pneumoniae莢膜多糖体とキャリアタンパク質の複合体の調製
【0133】
異なる血清型の多糖体を、異なる経路に従って活性化し、次いでキャリアタンパク質であるCRM197またはTTに複合体化した。具体的には、15B及び22Fを除く全血清型の莢膜多糖体の各々をCRM197に複合体化することによって、及び血清型1、3、5、15B及び22Fの莢膜多糖体の各々をTTに複合体化することによって複合体を調製した。天然血清型のサイズに応じて、活性化プロセスは、各莢膜多糖体のサイズの標的分子量への減少、化学的活性化、及び限外濾過を介した緩衝液交換を含み得る。複合体を、限外濾過を使用して精製し、最終的に0.2μmフィルターを通して濾過した。pH、温度、濃度、及び時間などのプロセスパラメータは以下のとおりであった。
【0134】
(1)活性化プロセス
【0135】
工程1:加水分解
【0136】
還元的アミノ化は、タンパク質の第1級アミン(-NH2)基と糖体のアルデヒドとの間にアミド結合が形成される、ポリマーを複合体化するための既知の方法である。アルデヒド基が肺炎球菌莢膜多糖体に付加され、キャリアタンパク質への複合体化を促進する。単糖のビシナルジオール構造は、過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO4)によって酸化されてアルデヒド基を形成し得る。血清型1、3、4、6A、8、11A、12F、14、15B、18C、22F、及び33Fの莢膜多糖体を以下のように事前処理した。
【0137】
血清型1の場合、水酸化ナトリウム(0.05Mの最終塩基濃度)を莢膜多糖体の溶液に添加し、溶液を50±2℃でインキュベートした。次いで溶液を約21℃~約25℃の範囲の温度に冷却し、これに塩酸を最終pHが6.0±0.1になるように添加し、これにより加水分解を停止させた。
【0138】
血清型3、8、11A、及び15Bの場合、塩酸(0.01Mの最終酸濃度)を莢膜多糖体の溶液に添加し、溶液を60±2℃でインキュベートした。次いで溶液を約21℃~約25℃の範囲の温度に冷却し、これに0.1Mのリン酸ナトリウムを最終pHが6.0±0.1になるように添加し、これにより加水分解を停止させた。
【0139】
血清型4の場合、塩酸(0.1Mの最終酸濃度)を莢膜多糖体の溶液に添加し、溶液を45±2℃でインキュベートした。次いで溶液を約21℃~約25℃の範囲の温度に冷却し、これに1Mのリン酸ナトリウムを最終pHが6.0±0.1になるように添加し、これにより加水分解を停止させた。
【0140】
血清型6Aの場合、氷酢酸(0.1Mの最終酸濃度)を莢膜多糖体の溶液に添加し、溶液を60±2℃でインキュベートした。次いで溶液を約21℃~約25℃の範囲の温度に冷却し、これに1Mの水酸化ナトリウムを最終pHが6.0±0.1になるように添加し、これにより加水分解を停止させた。
【0141】
血清型12Fの場合、塩酸(0.01Mの最終酸濃度)を莢膜多糖体の溶液に添加し、溶液を70±2℃でインキュベートした。次いで溶液を約21℃~約25℃の範囲の温度に冷却し、これに0.1Mのリン酸ナトリウムを最終pHが6.0±0.1の溶液になる
ように添加し、これにより加水分解を停止させた。
【0142】
血清型14及び18Cの場合、氷酢酸(0.2Mの最終酸濃度)を莢膜多糖体の溶液に添加し、溶液を94±2℃でインキュベートした。次いで溶液を約21℃~約25℃の範囲の温度に冷却し、これに1Mのリン酸ナトリウムを、溶液の最終pHが6.0±0.1になるように添加し、これにより加水分解を停止させた。
【0143】
血清型22F及び33Fの場合、塩酸(0.01Mの最終酸濃度)を莢膜多糖体の溶液に添加し、溶液を60±2℃でインキュベートした。次いで溶液を約21℃~約25℃の範囲の温度に冷却し、これに0.1Mのリン酸ナトリウムを最終pHが6.0±0.1になるように添加し、これにより加水分解を停止させた。
【0144】
得られた莢膜多糖体の各々を、注射用水(WFI)、酢酸ナトリウム、及びリン酸ナトリウム中で希釈し、約1.0mg/mL~約2.0mg/mLの最終濃度とした。
【0145】
工程2:過ヨウ素酸塩反応
【0146】
各肺炎球菌糖体の活性化のための過ヨウ素酸ナトリウムのモル当量は、繰り返し単位のモル質量に基づいて決定した。十分に混合し、温度を10℃以下とした1、7F、及び19Fを除くすべての血清型について21℃~25℃で16~20時間酸化反応を進行させた。複合体の一貫して安定した製造の維持を補助するために、各血清型についての酸化度(Do)レベルの範囲は、複合体化プロセス中に標的化される。各血清型についてのDoレベルの好ましい標的範囲が表1及び表2に示されている。
【表1】
【表2】
【0147】
工程3:限外濾過
【0148】
酸化した糖体を濃縮し、100kDaのMWCO限外濾過器(血清型1の場合は30kDaの限外濾過器、血清型18Cの場合は5kDaの限外濾過器)でWFIを用いてダイアフィルトレーションを行った。ダイアフィルトレーションは、血清型1の場合は0.9%塩化ナトリウム溶液、血清型7F及び23Fの場合は0.01M酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.5)、ならびに血清型19Fの場合は0.01Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)を使用して行った。透過液を廃棄し、保持液を0.2μmのフィルターを通して濾過した。
【0149】
工程4:凍結乾燥
【0150】
水性溶媒を使用することによってキャリアタンパク質に複合体化される血清型3、4、5、8、9N、9V、10A、14、及び33Fの莢膜多糖体の場合、多糖体とキャリアタンパク質の混合溶液を、さらなるスクロースを添加することなく調製し、凍結乾燥させ、次いで-25℃±5℃で保存した。
【0151】
水性溶媒を使用することによってキャリアタンパク質に複合体化される血清型1及び18Cの莢膜多糖体の場合、多糖体及びキャリアタンパク質を、さらなるスクロースを添加することなく独立して調製し、凍結乾燥させ、次いで-25℃±5℃で保存した。
【0152】
DMSO溶媒を使用することによってキャリアタンパク質に複合体化される血清型6A、6B、7F、15B-TT、19A、19F、22F-TT及び23Fの莢膜多糖体の場合、5%±3%(w/v)の最終スクロース濃度に到達させるための既定量のスクロースを活性化した糖体に添加し、試料を独立して調製し、凍結乾燥させ、次いで-25℃±5℃で保存した。
【0153】
血清型11Aの莢膜多糖体の場合、20%±5%(w/v)の最終スクロース濃度に到達させるための既定量のスクロースを活性化した糖体に添加し、多糖体及びキャリアタンパク質を独立して調製し、凍結乾燥させ、次いで-25℃±5℃で保存した。
【0154】
血清型12Fの莢膜多糖体の場合、10%±5%(w/v)の最終スクロース濃度に到達させるための既定量のスクロースを活性化した糖体に添加し、多糖体及びキャリアタンパク質を独立して調製し、凍結乾燥させ、次いで-25℃±5℃で保存した。
【0155】
(2)複合体化プロセス
【0156】
血清型1、3、4、5、8、9N、9V、10A、14、18C、及び33Fについては水性複合体化を行い、血清型6A、6B、7F、11A、12F、15B-TT、19A、19F、22F-TT及び23FについてはDMSO複合体化を行った。莢膜多糖体の各々を0.2~2:1の比でキャリアタンパク質に複合体化した。
【0157】
工程1:溶解
【0158】
水性複合体化
【0159】
血清型1、3、4、5、8、9N、9V、10A、14、18C、及び33Fの場合、凍結乾燥した試料を解凍し、室温で平衡化した。凍結乾燥した試料を、リン酸ナトリウム緩衝溶液を使用することによって各血清型について設定された比で23±2℃で反応濃縮物に再構成した。
【0160】
ジメチルスルホキシド(DMSO)複合体化
【0161】
血清型6A、6B、7F、11A、12F、15B-TT、19A、19F、22F-TT、及び23Fの場合、凍結乾燥した試料を解凍し、室温で平衡化し、DMSO中で再構成した。
【0162】
工程2:複合体化反応
【0163】
水性複合体化
【0164】
血清型3-TT、4、5-TT、8、9N、9V、10A、14、18C、及び33Fの場合、シアノ水素化ホウ素ナトリウム溶液(100mg/mL)を糖体1モル当たり1.0~1.4モルのシアノ水素化ホウ素ナトリウムとなるように添加することによって複合体化反応を開始させた。しかしながら、血清型1、1-TT及び3の場合は、シアノ水素化ホウ素ナトリウム溶液を糖体1モル当たり0.5モルのシアノ水素化ホウ素ナトリウムとなるように添加することによって反応を開始させた。
【0165】
反応混合物を23℃~37℃で44~106時間インキュベートした。反応温度及び時間は、血清型によって調整した。次いで温度を23±2℃に低下させ、塩化ナトリウム0.9%を反応器に添加した。水素化ホウ素ナトリウム溶液(100mg/mL)を、糖体1モル当たり1.8~2.2モル当量の水素化ホウ素ナトリウムとなるように添加した。混合物を23±2℃で3~6時間インキュベートした。この手順は、糖体上に存在する未反応のアルデヒドを減少させた。次いで、混合物を塩化ナトリウム0.9%で希釈し、希釈した複合体化混合物を0.8または0.45μmのプレフィルターを使用して濾過した。
【0166】
DMSO複合体化
【0167】
血清型6A、6B、7F、11A、12F、15B-TT、19A、19F、22F-TT及び23Fの莢膜多糖体の場合、シアノ水素化ホウ素ナトリウム溶液(100mg/mL)を、活性化した糖体1モル当たり0.8~1.2モル当量の比のシアノ水素化ホウ素ナトリウムとなるように添加することによって複合体化反応を開始させた。WFIを反応混合物に1%(v/v)の標的濃度になるように添加し、混合物を23±2℃で12~26時間インキュベートした。100mg/mLの水素化ホウ素ナトリウム溶液(典型的には活性化した糖体1モル当たり1.8~2.2モル当量の水素化ホウ素ナトリウム)及
びWFI(標的5%v/v)を反応物に添加し、混合物を23±2℃で3~6時間インキュベートした。この手順は、糖体上に存在する未反応のアルデヒドを減少させた。次いで、反応混合物を塩化ナトリウム0.9%で希釈し、希釈した複合体化混合物を0.8または0.45μmのプレフィルターを使用して濾過した。
【0168】
工程3:限外濾過
【0169】
希釈した複合体混合物を濃縮し、100kDaのMWCO限外濾過フィルターまたは300kDaのMWCO限外濾過フィルターで最少で15容量の0.9%塩化ナトリウムまたは緩衝液を用いてダイアフィルトレーションを行った。また、プロセスで使用された緩衝液の組成及びpHは、血清型の各々に応じて異なっていた。
【0170】
工程4:滅菌濾過
【0171】
限外濾過後の保持液を滅菌濾過(0.2μm)し、濾過された複合体についてインプロセス制御(外観、遊離タンパク質、遊離糖体、分子サイズ分布、無菌性、糖体含有量、タンパク質含有量、pH、エンドトキシン、残留シアン化物、残留DMSO、糖体同一性、TT同一性、及びCRM197同一性)を実施した。最終濃縮物を冷蔵し、2℃~8℃で保存した。
【0172】
実施例3.多価肺炎球菌複合体ワクチンの製剤化
【0173】
実施例2から得られた最終バルク濃縮物の所望容量は、バッチ容量及びバルク糖体濃度に基づいて計算した。0.85%塩化ナトリウム(生理食塩水)、ポリソルベート80、及びコハク酸塩緩衝液を予めラベル化した製剤容器に添加した後、バルク濃縮物を添加した。次いで調製物を十分に混合し、0.2μmの膜を通して無菌濾過した。製剤化されたバルクをバルクリン酸アルミニウムの添加中及び添加後に穏やかに混合した。pHを確認し、必要に応じて調整した。製剤化されたバルク生成物を2~8℃で保存した。以下の非限定的な多価肺炎球菌複合体ワクチン製剤を調製し、PCV21(1/5/15B/22F)-TT及びPCV21(3/5/15B/22F)-TTと命名した。
【0174】
PCV21(1/5/15B/22F)-TTは、血清型1、5、15B及び22Fの各多糖体をTTに複合体化することによって、また、血清型3、4、6A、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、18C、19A、19F、23F、及び33Fの各多糖体をCRM197に複合体化することによって調製された多糖体-複合体を含んでいた。
【0175】
PCV21(3/5/15B/22F)-TTは、血清型3、5、15B及び22Fの各多糖体をTTに複合体化することによって、また、血清型1、4、6A、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、18C、19A、19F、23F、及び33Fの各多糖体をCRM197に複合体化することによって調製された多糖体-複合体を含んでいた。
【0176】
0.5mlの総用量のPCV21(1/5/15B/22F)-TT組成物は、4.4μgの血清型6Bを除く2.2μgの各多糖体、2μg~25μgのTT(血清型1、5、15B及び22Fの場合)及び40μg~75μgのCRM197、0.125mgの元素アルミニウム(0.5mgのリン酸アルミニウム)アジュバント、4.25mgの塩化ナトリウム、約295μgのコハク酸塩緩衝溶液;及び約100μgのポリソルベート80を合計で0.5mlの用量中に含んでいた。
【0177】
0.5mlの総用量のPCV21(3/5/15B/22F)-TT組成物は、4.4μgの血清型1、3、6B、19A、及び19Fを除く2.2μgの各多糖体、2μg~25μgのTT(血清型3、5、15B、及び22Fの場合)、0.250mgの元素アルミニウム(1.13mgのリン酸アルミニウム)を含み、PCV21(1/5/15B/22F)-TTのものと同一の他の成分及びその含有量を有していた。
【0178】
実施例4.多価肺炎球菌複合体ワクチンの免疫原性
実施例3で調製した混合キャリア多価肺炎球菌ワクチンであるPCV21(1/5/15B/22F)-TT及びPCV21(3/5/15B/22F)-TTをウサギにおける免疫原性反応を誘導する能力について試験した。免疫原性の評価は、血清IgG濃度については抗原特異的ELISAによって、抗体機能性についてはオプソニン食作用アッセイ(OPA)によって実施した。ニュージーランド白ウサギを、0週目及び2週目に、製剤中の計画されたヒト臨床用量よりも5%多い用量の各多糖体(4.62μgの6Bを除き、2.31μgの各多糖体)またはヒト用量(4.4ugの6Bを除き、2.2ugの各多糖体)で筋肉内免疫した。免疫後2週間ごとに血清を採取した。いずれの濃度も同じ結果を示した。
【0179】
4-1.PCV21(3/5/15B/22F)-TT
【0180】
血清型特異的IgG濃度測定
【0181】
各血清型についての莢膜多糖体(PnP)を96ウェルプレートに0.5μg/ウェル~1μg/ウェルでコーティングした。各対象から当量の血清を採取し、群毎にプールした。血清プールをTween20及びStatens Serum Institutから入手した肺炎球菌細胞壁多糖体(CWPS)(5μg/mL)を含む抗体希釈緩衝液で2.5倍に連続希釈し、次いで室温で30分間反応させた。プレートを洗浄緩衝液で5回洗浄し、次いで予め吸着し、希釈した血清50μlを、コーティングされたウェルプレートに添加し、続いて室温で2時間~18時間インキュベートした。ウェルプレートを同様に洗浄した後、次いでヤギ抗ウサギIgG-アルカリホスファターゼ複合体を各ウェルに添加し、続いて室温で2時間インキュベートした。プレートを上述したように洗浄し、基質として1mg/mLのp-ニトロフェニルアミン緩衝液を各ウェルに添加し、室温で2時間反応させた。50μlの3MのNaOHを添加することによって反応をクエンチし、405nm及び690nmにおける吸光度を測定した。比較例として、商用利用可能な13価ワクチン(PREVNAR13)を同じ手順に供した。結果が表3に示されている。
【0182】
【0183】
血清型3及び5の莢膜多糖体をTTに複合体化した場合、血清型特異的IgG濃度は、CRM197に複合体化した場合に得られるものと比較して有意に上昇した。また、PCV21(3/5/15B/22F)-TTで免疫したウサギは、PREVNAR13に存在しない追加の8種の血清型(すなわち、8、9N、10A、11A、12F、15B、22F、及び33F)に対するIgG濃度の有意な上昇も実証した。特に、血清型9Nは、PREVNAR13と比較して、血清特異的IgG濃度の50倍を超える増加を有していた。
【0184】
機能性免疫原性試験(MOPA)
【0185】
抗体機能は、MOPAアッセイで血清を試験することによって評価した。-70℃以下で保存されたS.pneumoniaeMOPA株を、各株の濃度が約50,000CFU/mLとなるように対応する最終希釈倍数に希釈した。当量の血清を各対象から採取し、群ごとにプールし、20μlの血清がU底プレートに残存するように2倍に連続的に希釈した。試料を希釈した後、各血清型のために調製された10μlの菌株を、希釈した試料と混合し、混合物を、S.pneumoniaeと抗体が十分に混合されるように室温で30分間反応させた。予備分化したHL-60細胞と補体の混合物を添加し、CO2インキュベーター(37℃)において45分間反応させた。温度を低下させて貪食を停止させ、30~60分間予め乾燥させた寒天プレートに10μlの反応溶液を点在させ、次いで乾燥するまで20分間プレートに吸収させた。25mg/mLのTTCストック溶液を調製されたオーバーレイ寒天に添加し、対応する菌株に適切な抗体をそれに添加した。混合物を十分に混合し、次いで約25mLの混合物をプレートに添加し、約30分間硬化させた。完全に硬化したプレートをCO2インキュベーター(37℃)において12~18時間インキュベートし、次いでコロニーを計数した。MOPA力価は、50%の殺傷が観察された希釈率として表された。比較例として、商用利用可能な13価ワクチン(PREVNAR13)を同じ手順に供した。結果が表4に示されている。
【0186】
【0187】
血清型3及び5をTTに複合体化した場合、機能性MOPA力価は、CRM197に複合体化した場合に得られたMOPA力価と比較して有意に上昇した。また、PCV21(
3/5/15B/22F)-TTで免疫したウサギは、PREVNAR13に存在しない追加の8種の血清型(すなわち、8、9N、10A、11A、12F、15B、22F、及び33F)の各々に対する機能性MOPA力価の有意な上昇も実証した。
【0188】
4-2.PCV21(1/5/15B/22F)-TT
【0189】
血清型特異的IgG濃度及び機能性免疫原性力価を4-1と同じ手法で測定し、2つの別個の実験の結果を以下に示す。
【0190】
血清型特異的IgG濃度測定
【0191】
【0192】
血清型1及び5の莢膜多糖体をTTに複合体化した場合、血清型特異的IgG濃度は、CRM197に複合体化した場合に得られるものと比較して有意に上昇した。また、PCV21(1/5/15B/22F)-TTで免疫したウサギは、PREVNAR13に存在しない追加の8種の血清型(すなわち、8、9N、10A、11A、12F、15B、22F、及び33F)に対するIgG濃度の有意な上昇も実証した。ここでも、血清型9Nは、PRENAR13に対して有意な上昇(50倍超)を示した。
【0193】
機能性免疫原性試験(MOPA)
【0194】
【0195】
血清型1及び5をTTに複合体化した場合、機能性MOPA力価は、CRM197に複合体化した場合に得られたMOPA力価と比較して有意に上昇した。また、PCV21(3/5/15B/22F)-TTで免疫したウサギは、PREVNAR13に存在しない追加の8種の血清型(すなわち、8、9N、10A、11A、12F、15B、22F、及び33F)の各々に対する機能性MOPA力価の有意な上昇も実証した。
【0196】
実施例5.Streptococcus pneumoniae血清型9N由来の糖体-タンパク質複合体の調製についての追加の詳細
【0197】
細胞バンクの調製
【0198】
Streptococcus pneumoniae血清型9N(ATCC6309)は、American Type Culture Collection(ATCC)から入手した。菌株の増殖及び動物由来の成分の除去のために、シードストックを数世代培養した。ストックバイアルを、凍結保護剤としての合成グリセロールと共に冷蔵庫(<-70℃)内で保持した。細胞バンクの調製のため、細胞培養物を大豆をベースとする培地で増殖させた。凍結の前に、細胞を遠心分離によって濃縮し、使用された培地を除去した後、細胞ペレットを、凍結保護剤(例えば、合成グリセロール)を含有する新鮮な培地
に再懸濁した。
【0199】
発酵
【0200】
細胞バンクからの培養物を、大豆をベースとする培地を含有するシードボトルに播種した。成長条件が満たされるまで、培養物を撹拌せずに一定温度でインキュベートした。シードボトルを使用して、温度、pH及び撹拌速度を制御して、大豆をベースとする培地を含有するシード発酵槽に培養物を播種した。発酵は、成長が停止した後、または発酵槽の稼働能力に到達した後に終了した。不活性化剤を添加することによって発酵を終了させた後、連続流遠心分離と濾過の組み合わせを使用して細胞デブリを除去した。
【0201】
精製
【0202】
肺炎球菌多糖体の精製プロセスは、多層濾過、繰り返された濃縮/ダイアフィルトレーション及び濾過/溶出からなっていた。
【0203】
活性化
【0204】
最終的な多糖体濃度を、計算された量のWFIを順次添加することによって約2.0g/Lに調整した。必要に応じて、反応pHをおよそ6.0に調整した。pH調整後、反応温度を21~25℃に調整した。酸化を開始させるために、糖1mg当たりおよそ0.024~0.189mgの過ヨウ素酸ナトリウムを添加した。酸化反応は、21~25℃で16~20時間行った。
【0205】
活性化した多糖体を濃縮し、100kDaのMWCO限外濾過膜を使用してダイアフィルトレーションをした。ダイアフィルトレーションは、ダイアフィルトレーション容量の10倍のWFIについて行った。次いで、精製された活性化した多糖体を2~8℃で保存した。精製された活性化した糖体を、(i)比色分析アッセイによって決定された糖体濃度、(ii)比色分析アッセイによって決定されたアルデヒド濃度、(iii)酸化度、及び(iv)SEC-MALLSによって測定された分子量によって特徴付けした。
【0206】
SEC-MALLSは、多糖体及び多糖体-タンパク質複合体の分子量を決定するために使用される。SECは、流体力学体積に基づいて多糖体を分離するために使用される。分子量を決定するために屈折率(RI)検出器及び多角度レーザー光散乱(MALLS)検出器が使用される。光が物質と反応すると光が散乱する。散乱光の量は、濃度、dn/dc(比屈折率増分)の二乗及び材料のモル質量と関連する。分子量は、MALLS検出器からの散乱光の信号及びRI検出器からの濃度信号に基づいて計算される。
【0207】
活性化した多糖体の酸化度(DO)は、糖繰り返し単位のモルをアルデヒドのモルで除したものとして決定される。糖繰り返し単位のモルは、様々な比色技術、例えば、アントロンアッセイを使用して決定される。そして、アルデヒドのモルは、パークジョンソン比色分析アッセイによって決定される。
【0208】
上述のこれらの技術を使用して、上述の方法によって得られた活性化したStreptococcus pneumoniae血清型9N莢膜多糖体は、2~19、より典型的には5~10の酸化度、及び約200~700kDaの分子量を有することが決定された。
【0209】
複合体化
【0210】
活性化した多糖体1g当たり0.5~2gのCRM197の比で、活性化した多糖体をキャリアタンパク質CRM197と混和した。次いで、混和した混合物を凍結乾燥した。活性化した多糖体とCRM197の凍結乾燥混合物を-20℃で保存した。
【0211】
活性化した多糖体とCRM197の凍結乾燥混合物を0.1Mリン酸ナトリウム溶液中で再構成し、次いで十分に混合した。反応溶液中の最終的な多糖体濃度は約10~20g/Lであった。反応混合物に1.0~1.2モル当量のシアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaBH3CN)を添加することによって複合体化を開始させた後、反応を35~39℃で44~52時間行った。複合体化反応溶液と同じ容量の0.9%塩化ナトリウム溶液を添加し、次いで未反応のアルデヒドをキャップするために1.8~2.2モル当量の水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)を添加することによって複合体化反応を終了させた。キャップ反応は、21~25℃で3~6時間行った。
【0212】
濃縮及び100kDaのMWCO膜を使用するダイアフィルトレーションのために、複合体溶液を0.9%塩化ナトリウム溶液で希釈した。希釈した複合体溶液を0.8~0.45μmのフィルターを通して濾過し、濃縮及びダイアフィルトレーションによって精製した。100kDaのMWCO膜を使用するダイアフィルトレーションは、ダイアフィルトレーション容量の15~40倍の0.9%塩化ナトリウム溶液を使用して行った。ダイアフィルトレーションが完了した後、残りの溶液を0.2μmのフィルターを通して濾過した。複合体溶液をおよそ0.55mg/mL未満の濃度に希釈し、滅菌濾過し、次いで2~8℃で保存した。
【0213】
精製された血清型9N複合体を、特に、(i)比色分析(Lowry)アッセイによって決定されたタンパク質濃度、(ii)比色分析アッセイによって決定されたアルデヒド濃度、(iii)糖体対タンパク質比、(iv)サイズ排除クロマトグラフィー(CL-4B)によって決定された分子サイズ分布及び(v)SEC-MALLSによって測定された分子量によって特徴付けした。
【0214】
血清型9N複合体の特徴の変化を、酸化度(DO)を変化させながら観察した。結果が表7にまとめられている。
【0215】
【0216】
血清型9N複合体の特徴の変化を、凍結乾燥中に活性化多糖体及びCRM197の混和比を変化させながら観察した。結果が表8にまとめられている。
【0217】
【0218】
血清型9N複合体の特徴の変化を、複合体化反応溶液中の多糖体濃度を変化させながら観察した。結果が表9にまとめられている。
【0219】
【0220】
実施例6.免疫原性の分析
【0221】
CRM197に複合体化したStreptococcus pneumoniae血清型9N糖体-タンパク質複合体を含有する1価複合体組成物を製剤化した。
【0222】
表11~13の1価免疫原性組成物の免疫原性をELISAによって分析した。血清型特異的IgGの血清濃度を決定した。
【0223】
体重2.5~3.5kgのニュージーランド白ウサギのメス5羽を、提案されたヒト臨床用量(複合体2.2μg;+AlPO4としての0.25mg/mLのアルミニウム)で0週目に筋肉内経路で免疫した。2週目にウサギを同じ用量の複合体ワクチンで再度免疫し、4週目に血液試料を採取した。0週目及び4週目に血清試料について血清型特異的ELISAを行った。
【0224】
分析結果が表10に示されている。1価複合体組成物(複合体番号8)で免疫したウサギは、血清型9Nの総IgG力価の有意な上昇を示した。他の複合体で免疫したウサギも、総IgG力価の有意な上昇を示した。
【0225】
表10は、表8の複合体番号8でウサギを免疫した後のIgG濃度を測定した結果を示す。
【0226】
【0227】
1つ以上の例示的な実施形態が本明細書に記載されているが、以下の特許請求の範囲によって定義される本発明の概念の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態及び詳細の様
々な変更が本明細書においてなされ得ることは、当業者によって理解される。
参考文献
【0228】
以下の参考文献は、本出願において引用され、当該技術分野に関する一般的な情報を提供し、本出願において論述されたアッセイ及び他の詳細を提供する。以下の参考文献は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0229】
[1]Prymula et al.,The Lancet,367:740-48
(2006).
【0230】
[2]Vesikari et al.,PIDJ,28(4):S66-76 (2009).
【0231】
[3]Dagan et al.,Infection & Immunity,5383-91 (2004).
【0232】
[4]Juergens et al.,Clinical and Vaccine
Immunology,21(9):1277-1281 (2014).
【0233】
[5]Andrews et al.,The Lancet,14:839-846
(2014).
【0234】
[6]Nurkka et al.,Vaccine,20:194-201 (2001).
【0235】
[7]Levin and Stone,J. Immunol.,67:235-242 (1951).
【0236】
[8]W.H.O. Manual for the Production and
Control of Vaccines:Tetanus Toxoid,1977
(BLG/UNDP/77.2 Rev.I.)
【0237】
[9]Didierlaurent et al.,J. Immunol.,183:6186-6197 (2009).
Streptococcus pneumoniae血清型9N由来の莢膜多糖体に複合体化されたタンパク質キャリアを含む免疫原性血清型9N複合体であって、前記タンパク質キャリアはCRM197であり、血清型9N由来の前記莢膜多糖体が2~19又は5~10の酸化度及び200~700kDaの分子量を有するように活性化された状態で血清型9N由来の前記莢膜多糖体がCRM197に複合体化された免疫原性血清型9N複合体。
前記免疫原性血清型9N複合体は、2~19の酸化度を達成するように活性化された血清型9N多糖体を用いて調製されている、請求項1、2、又は4に記載の免疫原性血清型9N複合体。
工程(c)において、0.02~0.19μgの過ヨウ素酸塩を1μgのStreptococcus pneumoniae血清型9Nの莢膜多糖体と20~25℃で15~20時間反応させる、請求項11に記載の方法。
工程(c)で酸化剤と反応させたStreptococcus pneumoniae血清型9Nの莢膜多糖体は400~900kDaの分子量を有する、請求項11~13のいずれか1項に記載の方法。
工程(c)において、0.02~0.19μgの過ヨウ素酸塩を1μgのStreptococcus pneumoniae血清型9Nの莢膜多糖体と反応させ、工程(d)で形成された免疫原性血清型9N複合体は500~4000kDaの分子量、CL-4Bカラムにおいて測定された0.3以下のKdを有する15~60%の分子量分布、及び0.5~2.5のCRM197/多糖体比を有する、請求項11~13のいずれか1項に記載の方法。