(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134738
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】呼吸器疾患を治療するための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 39/12 20060101AFI20230920BHJP
A61K 39/145 20060101ALI20230920BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20230920BHJP
A61K 47/69 20170101ALI20230920BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20230920BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230920BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20230920BHJP
A61K 39/155 20060101ALI20230920BHJP
C12N 15/40 20060101ALN20230920BHJP
【FI】
A61K39/12
A61K39/145 ZNA
A61P37/04
A61K47/69
A61K47/26
A61P11/00
A61K9/10
A61K39/155
C12N15/40
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023117519
(22)【出願日】2023-07-19
(62)【分割の表示】P 2020502178の分割
【原出願日】2018-07-24
(31)【優先権主張番号】62/536,235
(32)【優先日】2017-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】507301246
【氏名又は名称】ノババックス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】スミス,ゲイル
(72)【発明者】
【氏名】リウ,イエ
(72)【発明者】
【氏名】ティアン,ジン-フイ
(72)【発明者】
【氏名】マサレ,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ボッダパティ,サラティ
(72)【発明者】
【氏名】グレン,グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】フライズ,ルイス
(72)【発明者】
【氏名】チョウ,イクスン
(57)【要約】
【課題】COPD患者における増悪の軽減に使用するのに好適な方法およびナノ粒子が本明細書に開示される。
【解決手段】本方法および組成物は、RSVへの曝露またはRSVによる感染などの環境からの刺激に応答して発生するCOPD患者の入院の発生率を有利に減少させる。投与量、製剤、ならびにワクチンおよびナノ粒子を調製するための方法も開示される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト対象における慢性閉塞性肺疾患(COPD)の増悪を軽減する方法であって、
前記対象にナノ粒子ワクチンを投与することを含み、前記ナノ粒子が、非イオン性界面活性剤コアおよびウイルス糖タンパク質を含み、前記ウイルス糖タンパク質が、前記コアと結合しており、前記界面活性剤が約0.03%~約0.05%で存在する、方法。
【請求項2】
前記増悪が、環境からの刺激によって引き起こされる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記環境からの刺激が病原体である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記病原体がウイルス病原体である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ウイルス病原体が、RSVウイルスおよびインフルエンザウイルスからなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
入院率によって決定される増悪の発生率が約50%減少する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ヒトが少なくとも75歳、少なくとも65歳、好ましくは少なくとも60歳である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記非イオン性界面活性剤が、PS20、PS40、PS60、PS65、およびPS80からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ウイルス糖タンパク質が、RSV Fタンパク質、インフルエンザHAタンパク質、インフルエンザNAタンパク質、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ウイルス糖タンパク質がRSV Fタンパク質であり、非イオン性界面活性剤対ウイルス糖タンパク質のモル比が約30:1~約60:1である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記RSV Fタンパク質が、配列番号2のアミノ酸137~146に対応する1~10個のアミノ酸の欠失、および配列番号2のアミノ酸131~136に対応する不活性化された一次フューリン切断部位を含み、前記一次フューリン切断部位は変異により不活性化されている、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記組成物が任意の他の界面活性剤を実質的に含まない、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記RSV-Fタンパク質が、配列番号1~13およびN末端シグナルペプチドの一部または全部を欠く配列番号1~13のバリアントからなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記RSV Fタンパク質が配列番号19を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記RSV Fタンパク質が配列番号19からなる、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記非イオン性界面活性剤がPS80である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
慢性閉塞性肺疾患(COPD)を有するヒトにおける、環境からの刺激に応答するCOPDの増悪を軽減する方法であって、免疫原性組成物を前記ヒトに投与することを含み、前記免疫原性組成物は第1のナノ粒子を含み、前記第1のナノ粒子はPS80非イオン性界面活性剤コアおよび第1のウイルス糖タンパク質を含み、前記ウイルス糖タンパク質、前記コアに結合しており、前記界面活性剤が、約0.03%~約0.05%で存在する、方法。
【請求項18】
前記第1のウイルス糖タンパク質がRSV F糖タンパク質である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記免疫原性組成物が第2のナノ粒子を含み、前記第2のナノ粒子がPS80非イオン性界面活性剤コアおよび第2のウイルス糖タンパク質を含み、前記第2のウイルスタンパク質がインフルエンザHAタンパク質である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
COPDを有するヒト対象におけるCOPDの増悪を治療する方法における使用のための免疫原性組成物であって、前記ワクチン組成物は、第1のナノ粒子を含み、前記第1のナノ粒子はPS80非イオン性界面活性剤コアおよび第1のウイルス糖タンパク質を含み、前記ウイルス糖タンパク質は前記コアに結合しており、前記界面活性剤が、約0.03%~約0.05%で存在する、免疫原性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年7月24日に出願された米国仮特許出願第62/536,235号の優先権を主張し、その開示はあらゆる目的のために本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願には、2016年9月6日に出願された米国特許出願第15/257,436号、および2015年9月3日に出願された米国仮特許出願第62/213,947号、2015年11月16日に出願された同第62/255,786号、2016年3月16日に出願された同第62/309,216号、および2016年6月16日に出願された同第62/350,973号の開示が、あらゆる目的のためにそれらの全体として組み込まれる。
【0003】
電子的に提出されたテキストファイルの記載
本明細書と共に電子的に提出されたテキストファイルの内容は、参照により本明細書にそれらの全体が組み込まれる。配列表のコンピューター可読形式のコピー(ファイル名:NOVV_075_01WO_SeqList_ST25.txt、記録日:2018年7月19日、ファイルサイズ:約67キロバイト)。
【0004】
[技術分野]
本開示は、概して、呼吸器疾患の治療および呼吸器疾患に関連する増悪(exacerbation)の予防に有用な、ナノ粒子、およびそれらを含む免疫原性組成物に関する。ナノ粒子は、界面活性剤コアに結合した抗原、例えば糖タンパク質抗原を提供し、典型的には、組換えアプローチを使用して生成される。ナノ粒子は、特に高齢者集団において、慢性閉塞性肺(COPD)の増悪および関連する入院を減少させた。本開示はまた、ナノ粒子を含む組成物、それらを生成する方法、および呼吸器疾患(例えばCOPD)を治療し、さらなる増悪を予防する方法も提供する。
【背景技術】
【0005】
呼吸器疾患および感染症は世界中で依然として問題である。いくつかの病原体に対するワクチンの開発は進展してきているが、多くは依然として人間の健康に対して脅威のままである。最も有名なものはHIVであり、それに対するワクチンは、なかなか見つからないままである。特定の病原体に対するワクチンを生成する試みがなされているが、失敗に終わっており、これによりさらなる病態が引き起こされた。
【0006】
世界保健機関は、世界の全ての死の6%、年間300万人を超える死が、世界の主要な呼吸器疾患の1つである慢性閉塞性肺疾患(COPD)に起因すると推定している。COPDの増悪は、患者に深刻な悪影響を及ぼし、ヘルスケア資源に大きな負担をかける。各増悪後の肺機能の回復不可能な低下の明確な証拠がある。増悪の予防と治療はCOPDの臨床管理の主な目的である(Decramer M,et al.,(2008)“Targeting the COPD Exacerbation”J Respir Med 102:S3-S15、およびRabe KF,et al.,(2007)“Global strategy for diagnosis,management,and prevention of chronic obstructive pulmonary disease:GOLD Executive Summary”Am J Respir Crit Care Med 176:532-555を参照されたい)。
【0007】
他の治療法の選択肢の中で、アメリカ肺協会はCOPD患者への予防接種、特に毎年のインフルエンザと肺炎のワクチン接種を推奨している。したがって、COPD集団の増悪を軽減または排除して疾患の負担および関連コストを削減するための治療薬および予防薬の製造に、絶えず関心が払われている。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、呼吸器疾患および障害の治療に好適なナノ粒子を提供する。特定の態様では、ナノ粒子は慢性閉塞性肺障害(COPD)を治療する。他の態様では、ナノ粒子は呼吸器系の刺激、例えば、病原体への曝露に応答する、COPDの増悪を防ぐ。
【0009】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子は病原体に対する免疫応答を誘導する。いくつかの実施形態では、病原体はウイルスであり、典型的には、ウイルスナノ粒子を生成するために使用される抗原はウイルス糖タンパク質である。
【0010】
一態様では、本開示は、向上した安定性を有するウイルスタンパク質を含むナノ粒子を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、非イオン性界面活性剤、ウイルス糖タンパク質、および薬学的緩衝液を含むナノ粒子を含むワクチン組成物を含む。典型的な実施形態では、非イオン性界面活性剤は、PS20、PS40、PS60、PS65、およびPS80からなる群から選択され得る。いくつかの実施形態では、組成物は遊離非イオン性界面活性剤を一切含まない。1以上の糖タンパク質抗原分子は、非イオン性界面活性剤を含む界面活性剤コアを取り囲み、これにより、免疫原性を促進し、抗原の分解を阻害するナノ粒子構造が提供される。
【0011】
いくつかの実施形態では、抗原は、RSV Fタンパク質、インフルエンザHAタンパク質、インフルエンザNAタンパク質、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。典型的には、抗原は糖タンパク質である。
【0012】
任意で、RSV Fタンパク質は三量体RSV Fタンパク質である。RSV Fタンパク質は、中和抗体の生成を誘導する。さらなる実施形態では、中和抗体は、融合後状態および/または融合前状態のRSV Fタンパク質を認識する。さらなる態様では、各PS80粒子は4~7個のRSV Fタンパク質を含んでもよい。
【0013】
いくつかの実施形態では、RSV F組成物は、15mM~25mMの濃度のリン酸ナトリウム、125mM~175mMの濃度のNaCl、0.25%~2%w/vのヒスチジンを含んでもよく、組成物のpHは5.8~7.2である。
【0014】
いくつかの実施形態では、HAまたはNAインフルエンザ組成物は、15mM~25mMの濃度のリン酸ナトリウム、125mM~300mMの濃度のNaCl、0.25%~2%w/vのヒスチジンを含んでもよく、組成物のpHはpH約6.8よりも高く、典型的には、pH約8.0よりも低い。
【0015】
いくつかの実施形態では、組成物はアジュバントを含む。さらなる実施形態では、アジュバントはミョウバン(alum)またはサポニンベースのマトリックスアジュバントである。いくつかの実施形態では、組成物はアジュバントを含まない。
【0016】
いくつかの実施形態では、感染を予防する方法は、ワクチン組成物の1以上の用量を投与することを含む。本方法のいくつかの実施形態では、組成物の単回用量が投与され、防御免疫応答を誘導する。本方法のいくつかの実施形態では、各用量は約100μg~約150μgのタンパク質抗原からなる。本方法のさらなる実施形態では、1以上の用量は皮下投与される。本方法のいくつかの実施形態では、組成物はアジュバントを含む。本方法のさらなる実施形態では、アジュバントはミョウバンである。本方法のいくつかの実施形態では、組成物はアジュバントを含まない。
【0017】
本方法のさらなる実施形態では、組成物の1以上の用量は成人に投与される。本方法のさらなる実施形態では、成人は75歳超、70歳超、65歳超、60歳超、55歳超、50歳超、または45歳超である。したがって、特定の態様では、成人は約45~約75歳であり得る。
【0018】
RSVワクチンに関して、いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも3つのRSV Fナノ粒子タイプの異種集団を含み、各ナノ粒子は、PS80を含む界面活性剤含有コアを取り囲む少なくとも1つのRSV Fタンパク質三量体を含み、第1のRSV Fナノ粒子タイプは異方性ロッドを含み、第2のRSV Fナノ粒子タイプは球状オリゴマーを含み、第3のRSV Fナノ粒子タイプは異方性ロッドと球状オリゴマーの中間体を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、RSV Fタンパク質ナノ粒子を製造する方法は、第1の界面活性剤を使用して宿主細胞からRSV Fタンパク質抽出物を調製し、第1の界面活性剤を第2の界面活性剤に交換することを含み、第2の界面活性剤はPS80であり、これによって、ナノ粒子は向上した安定性を示す。本方法のさらなる実施形態では、第1の界面活性剤はNP-9である。本方法のいくつかの実施形態では、向上した安定性は、プロテアーゼ耐性、酸化ストレス耐性、熱ストレス耐性、および撹拌耐性から選択される。本方法のいくつかの実施形態では、PS80:RSV Fタンパク質のモル比は、約35対約65である。
【0020】
いくつかの実施形態では、RSV Fナノ粒子は、PS80界面活性剤コアに結合した1以上のRSV Fタンパク質三量体を含む。RSV Fナノ粒子、ナノ粒子は、動的光散乱により測定される約20nm~約60nmの平均直径を有する。RSV Fナノ粒子のいくつかの実施形態では、各RSV Fタンパク質三量体は、配列番号2の残基137~146に対応する1~10アミノ酸の欠失を有するRSV Fタンパク質からなる群から選択されるRSV Fタンパク質を含む。RSV Fナノ粒子のいくつかの実施形態では、各RSV Fタンパク質三量体は、配列番号2の残基137~146に対応する1~10アミノ酸の欠失および不活性化された一次融合切断部位を有するRSV Fタンパク質からなる群から選択されるRSV Fタンパク質を含む。
【0021】
RSV Fナノ粒子のいくつかの実施形態では、RSV Fタンパク質は配列番号2の、残基137~166に対応する10個のアミノ酸の欠失、および位置133、135、および136でのアルギニン残基のグルタミンへの変異による一次フューリン切断部位の不活性化を含む。RSV Fナノ粒子のさらなる実施形態では、RSV Fタンパク質は、成熟ペプチドである配列番号19を含むかまたはそれからなる。RSV Fナノ粒子のある特定の実施形態では、RSV Fタンパク質は配列番号8を含むかまたはそれからなる。RSV Fナノ粒子を含むワクチン製剤は、いくつかの完全長ペプチド(配列番号8)を含む成熟ペプチドから実質的になる。経時的に、タンパク質分解により、少量の切断されたRSV Fペプチドが生じる場合がある。しかしながら、有利なことに、本明細書に開示されるRSV Fナノ粒子は、そのような分解を最小限に抑え、長期の安定性を提供する。
【0022】
同様に、インフルエンザタンパク質である、HA、NA、またはその両方と組み合わせたRSV Fタンパク質を含むナノ粒子が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】修飾されたRSV Fタンパク質のアミノ酸配列(配列番号19)を示し、明るい色のテキスト(残基1~84)のF1ドメイン、暗い色のテキスト(残基85~539)のF2ドメイン、ジスルフィド結合を形成するシステインを結ぶ黒い線、N結合型グリコシル化部位を示す下線を付したアスパラギン、フューリン切断部位を示す明るい縦の点線および主要な切断部位を示す黒の縦の点線を含む。
【
図2】PS80のコアに結合したRSV Fタンパク質三量体を有するRSV Fナノ粒子の電子顕微鏡写真を示す。複数のRSV F三量体が各粒子に結合する(直径40~50nm)。
【
図3】E-301およびE201研究における全原因(RSV検出に関連しない)COPD増悪のための入院の分析を示す。
【
図4】E-301研究における経時的なCOPD増悪による入院のない集団の減少を詳細に示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書に開示されるのは、呼吸器疾患および障害を治療するためのナノ粒子、それらを生成および投与する方法、ならびにそれらを含むワクチン組成物である。ナノ粒子は、界面活性剤コアを取り囲み、結合した抗原を提供し、これにより、多数の手段により向上した安定性を提供する構造が得られる。理論に縛られるものではないが、開示されたナノ粒子によって誘導される免疫応答および関連する防御は、呼吸器疾患または障害(例えば、COPD)の増悪の軽減をもたらす。界面活性剤のコアと抗原は、抗原と界面活性剤の特性によって媒介される物理化学的相互作用を介して結合する。さらに、ナノ粒子は、免疫系に特に優れた抗原提示を提供し、これは、理論に拘束されることなく、界面活性剤コアの周りの抗原の配向性に起因すると考えられている。
【0025】
一態様では、本開示は、組換えウイルス糖タンパク質ナノ粒子を含む組成物を提供する。特定の態様では、糖タンパク質は好適な宿主細胞で組換え発現される。一実施形態では、宿主細胞は昆虫細胞である。例示的な実施形態では、昆虫細胞はSf9細胞である。
【0026】
特定の態様では、本開示は、ナノ粒子構造に1以上のウイルス糖タンパク質種を含む免疫原性組成物であって、糖タンパク質が三量体の形態であり、各ナノ粒子が非イオン性界面活性剤に結合した少なくとも1つの三量体を含む、免疫原性組成物を提供する。特定の態様では、ナノ粒子は、1つの病原体のみからのウイルス糖タンパク質などの抗原からなる。
【0027】
ナノ粒子は、呼吸器疾患または障害の治療に使用することができる。いくつかの実施形態では、ナノ粒子はCOPDを治療するために使用される。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、病原体または他の環境的なCOPDトリガーなどの呼吸器系の刺激に応答するCOPDの増悪の発生率を減少させる。
【0028】
ナノ粒子は、ウイルス感染の予防および/または治療に使用することができる。したがって、別の態様では、本開示は、ウイルスに対する免疫応答を誘発する方法を提供する。本方法は、ナノ粒子を含む免疫学的に有効な量の組成物を対象に投与することを含む。
【0029】
本開示は、ナノ粒子を含むワクチン組成物を提供する。組成物は、複数の病原体からの抗原を有するナノ粒子を含んでもよい。いくつかの態様では、ワクチン組成物は、同一の種のウイルスからの1つを超えるウイルス系統からの抗原を有するナノ粒子を含んでもよい。態様において、ワクチン組成物は、異なるウイルス種からの抗原を含むナノ粒子を含んでもよい。別の実施形態では、本開示は、ワクチン組成物の成分の1以上で満たされた1以上の容器を含む医薬パックまたはキットを提供する。
【0030】
別の実施形態では、本開示は、ナノ粒子の有効量を組成物に添加することを含む、哺乳動物に対する感染またはその少なくとも1つの疾患症状に対する免疫を誘導するワクチン組成物を製剤化する方法を提供する。開示されたナノ粒子は、感染性因子に対する免疫または実質的な免疫を付与する免疫応答を刺激する組成物の調製に有用である。したがって、一実施形態では、本開示は、ナノ粒子の少なくとも1回の有効用量を投与することを含む、対象における感染またはその少なくとも1つの疾患症状に対する免疫を誘導する方法を提供する。
【0031】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子はアジュバントと共に投与される。他の態様では、ナノ粒子はアジュバントを含まずに投与される。いくつかの態様では、アジュバントは、非共有相互作用などによってナノ粒子に結合されてもよい。他の態様では、アジュバントはナノ粒子と同時投与されるが、アジュバントとナノ粒子は実質的に相互作用しない。
【0032】
本明細書でまた提供されるのは、ナノ粒子およびワクチン組成物を製造する方法である。有利なことに、この方法は、バキュロウイルス/Sf9システムでのタンパク質の組換え発現に関連するタンパク質など、他のタンパク質による汚染が実質的にないナノ粒子を提供する。
【0033】
定義
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用されるとき、単数形「a」、「an」、および「the」は、その内容について別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象を包含する。したがって、例えば、「タンパク質(a protein)」への言及は、1つのタンパク質またはそのようなタンパク質の混合物を指し得る。
【0034】
本明細書で使用されるとき、「アジュバント」という用語は、免疫原と組み合わせて使用されるとき、免疫原に対して誘導される免疫応答を増強するか、そうでなければ改変または修飾する薬剤を指す。免疫応答の修飾は、抗体と細胞性免疫応答のいずれかまたは両方の特異性の強化または拡大を含んでもよい。ワクチン組成物は、有効量の1以上のアジュバントを含んでもよい。
【0035】
本明細書で使用されるとき、数値に先行する場合の「約」または「およそ」という用語は、値のプラスまたはマイナス10%の範囲を示す。例えば、「約100」は、90および110を包含する。
【0036】
本明細書で使用されるとき、「免疫原」、「抗原」、および「エピトープ」という用語は、免疫応答を誘発することができる糖タンパク質を含むタンパク質、およびペプチドなどの物質を指す。
【0037】
本明細書で使用されるとき、「免疫原性組成物」は、対象への組成物の投与が抗原に対する体液性および/または細胞性免疫応答の対象での発生をもたらす抗原を含む組成物である。
【0038】
本明細書で使用する「サブユニット」組成物、例えば、ワクチンは、病原体からの全ての抗原ではなく、1以上の選択された抗原を含む。そのような組成物は、無傷のウイルスまたはそのような細胞もしくは粒子の溶解物を実質的に含まず、典型的には少なくとも部分的に精製され、しばしば実質的に精製された病原体からの免疫原性ポリペプチドから調製される。本明細書に開示されるサブユニット組成物中の抗原は、典型的には組換え的に調製され、しばしばバキュロウイルス系を使用する。
【0039】
本明細書で使用されるとき、「実質的に」とは、物質が含まれる試料の大部分を形成するような物質(例えば、化合物、ポリヌクレオチド、もしくはポリペプチド)またはほぼ完了している、プロセスステップを指す。例えば、試料において、実質的に精製された成分は、試料の85%、好ましくは85%~90%、より好ましくは少なくとも95%~99.5%、最も好ましくは少なくとも99%を構成する。成分が実質的に交換される場合、試料中に残っている量は約0.5%~約10%またはそれら未満、好ましくは約0.5%~約1.0%未満である。
【0040】
本明細書で使用されるとき、「治療する」、「治療」、および「治療すること」という用語は、有益なまたは望ましい結果、例えば臨床結果を得るためのアプローチを指す。本開示の目的のために、有益または望ましい結果は、感染もしくは疾患の開始もしくは進行の阻害もしくは抑制、感染もしくは疾患の症状の改善、もしくはその発症の低減またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0041】
本明細書で使用されるとき、「予防」(Prevention)は、「予防(prophylaxis)」と交換可能に使用され、感染もしくは疾患の完全な予防、またはその感染もしくは疾患の症状の発症の予防、感染もしくは疾患もしくはその症状の発症の遅延、または、その後に発症する感染もしくは疾患もしくはその症状の重症度の低下を意味し得る。
【0042】
本明細書で使用されるとき、「有効用量」または「有効量」は、病原体感染の少なくとも1つの症状を軽減する免疫応答を誘導するのに十分な免疫原の量を指す。有効用量または有効量は、例えば、分泌性および/または血清抗体の中和量を測定することにより、例えば、プラーク中和、補体固定、酵素結合免疫吸着(ELISA)、または微量中和アッセイにより決定され得る。
【0043】
本明細書で使用されるとき、「ワクチン」という用語は、防御免疫(例えば、病原体による対象の感染から対象を防御する、および/または病原体の感染によって引き起こされる疾患または状態の重症度を低下させる、免疫)を提供する病原体に対する免疫応答を誘導するために使用される、病原体に由来する免疫原などの免疫原性組成物を指す。防御免疫応答には、抗体の形成および/または細胞媒介性応答が含まれ得る。文脈に応じて、「ワクチン」という用語は、防御免疫を生成するために対象に投与される免疫原の懸濁液または溶液を指し得る。
【0044】
本明細書で使用されるとき、「対象」という用語には、ヒトおよび他の動物が含まれる。典型的には、対象はヒトである。例えば、対象は、成人、10代、小児(2歳~14歳)、幼児(1ヶ月~24ヶ月)、または新生児(1ヶ月まで)であり得る。いくつかの態様では、成人は約65歳以上、または約60歳以上の高齢者である。いくつかの態様では、対象は妊娠中の女性または妊娠しようとしている女性である。他の態様では、対象はヒトではなく、例えば、非ヒト霊長類、例えば、ヒヒ、チンパンジー、ゴリラ、またはマカクである。ある特定の態様では、対象はイヌまたはネコなどのペットであり得る。
【0045】
本明細書で使用されるとき、「薬学的に許容される」という用語は、米国連邦政府または州政府の規制当局によって承認されること、または哺乳動物、特にヒトにおいて使用するために米国薬局方、欧州薬局方、またはその他の一般に認められた薬局方に記載されることを意味する。薬学的に許容される担体または賦形剤は、本明細書に開示される組成物に含まれてもよい。
【0046】
本明細書で使用されるとき、「呼吸器疾患」または「呼吸器障害」は、気道および/または肺の他の構造の疾患または障害を意味する。これには、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、アレルギー性鼻炎および副鼻腔炎、気管支拡張症、および肺高血圧が含まれるが、これらに限定されない。COPDとは、気道閉塞、ならびに肺気腫、慢性気管支炎、場合によっては喘息を含む呼吸関連の問題の1以上を含む症状を共有する疾患群を指す(www.cdc.gov/tobacco/campaign/tips/diseases/copd.htmlを参照されたい)。
【0047】
本明細書で使用されるとき、「約」という用語は、示された数値のプラスまたはマイナス10%を意味する。
【0048】
概要
COPDの症状は、典型的に、対象にすでに重大な肺損傷があるときに現れ、症状はしばしば、経時的に悪化する。COPDは、肺気腫または慢性気管支炎を患っている対象の一般的な結果である。慢性気管支炎では、主な症状は、連続した2年間での1年に少なくとも3か月間の、毎日の咳と粘液(痰)の生成である。肺気腫は、肺の最小の気道(細気管支)の端にある肺胞が、典型的には喫煙により破壊される状態である。COPDの他の症状には、特に身体活動中の息切れ、喘鳴、胸の圧迫感、しばしば粘液を伴う慢性咳、唇または爪床の青み(チアノーゼ)などが含まれ得る。
【0049】
COPDに罹患した対象は増悪と呼ばれるエピソードも経験する可能性が高く、その間、これらの症状は通常の日々の変動よりも悪化し、少なくとも数日間持続する。増悪は、典型的には、対象が遭遇する環境からの刺激(environmental insult)に応答して発生する。受動喫煙、ガソリンからの煙、細菌、およびウイルス感染を含む、さまざまな生物学的および非生物学的な、環境からの刺激は、COPD患者の増悪を引き起こす可能性がある。
【0050】
本明細書で使用される方法および組成物は、増悪または増悪に関連する1以上の症状の重症度を軽減または排除するために使用され得る。本開示の免疫原性組成物は、ナノ粒子形態の病原体に由来する1以上の抗原を含む。
【0051】
病原体に由来する抗原は、非イオン性界面活性剤と組み合わされて、安定性が改善され、優れた免疫原性を有し、呼吸器疾患および障害を治療する界面活性剤コアを取り囲むナノ粒子を提供する。本開示はまた、呼吸器の疾患および障害を治療するために病原体に対して対象にワクチン接種するための方法および組成物も提供する。抗原は通常、ウイルスタンパク質であり、しばしば糖タンパク質である。呼吸器の疾患および障害を治療するためのワクチン組成物としての用途を見出すナノ粒子を含む組成物もまた開示されている。
【0052】
特定の態様では、組成物は、RSV単独に対する免疫応答を誘導するナノ粒子を含む。他の態様では、組成物はRSV由来の糖タンパク質を含むRSVに対するナノ粒子を含み、それは、例えば、RSV-Fタンパク質、および1以上のインフルエンザHA糖タンパク質系統である(例えば、1、2、3、または4つの異なるインフルエンザ系統からのHA糖タンパク質を含むナノ粒子)。
【0053】
ナノ粒子に加えて、対象には追加の免疫原性組成物を投与してもよい。例えば、Streptococcus pneumoniae、Bordetella pertussis(百日咳病原体)、Haemophilus influenzaeb型(Hib)、および麻疹のうちの1以上に対する免疫応答を誘導する組成物を対象に投与することができる。
【0054】
本明細書に開示される免疫原性組成物の注目すべき結果は、RSV F糖タンパク質を含むナノ粒子組成物の投与により、「全ての原因による(all-cause)」COPD増悪の入院が減少することであり、これは、組成物に対する応答が、RSV刺激による増悪を軽減するだけでなく、より一般的な利点もあり、全ての原因の増悪を軽減することを意味する。例えば、
図4および
図5を参照されたい。したがって、ナノ粒子を含む組成物は、COPDを有する対象に投与して、環境からの刺激に応答する憎悪を防ぐのに有用である。
【0055】
ナノ粒子の構造と形態
本開示のナノ粒子は、非イオン性界面活性剤コアに結合した糖タンパク質抗原を含む。
図2は、界面活性剤コアに結合した複数のRSV F抗原の例を図示する。
【0056】
特定の実施形態では、ナノ粒子は、非イオン性界面活性剤コアを取り囲む複数のタンパク質三量体から構成される。例えば、各ナノ粒子は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、または15個の三量体を含んでもよい。典型的には、各ナノ粒子は2~9個の三量体を含む。特定の実施形態では、各ナノ粒子は2~6個の三量体を含む。本明細書に開示される組成物は、異なる数の三量体を有するナノ粒子を含んでもよい。例えば、組成物には、三量体の数が2~9個の範囲のナノ粒子が含まれてもよく、他の実施形態では、組成物中のナノ粒子は、2~6個の三量体を含んでもよい。特定の実施形態において、組成物は、ナノ粒子当たり2~6個の三量体、またはナノ粒子当たり2~9個の三量体を有するナノ粒子の異種集団を含む。他の実施形態では、組成物は、ナノ粒子の実質的に均質な集団を含んでもよい。例えば、集団は、5つの三量体を有する約95%のナノ粒子を含んでもよい。
【0057】
抗原は、ナノ粒子の非イオン性界面活性剤含有コアに結合している。典型的には、界面活性剤はポリソルベート-20(PS20)、ポリソルベート-40(PS40)、ポリソルベート-60(PS60)、ポリソルベート-65(PS65)、およびポリソルベート-80(PS80)から選択される。界面活性剤の存在は、抗原を組織化し提示するコアを形成することにより、ナノ粒子の形成を促進する。したがって、ある特定の実施形態では、ナノ粒子は、ヘッド領域が外側に突出し、疎水性領域とPS80界面活性剤が抗原に取り囲まれた中心コアを形成するマルチオリゴマー糖タンパク質-PS80タンパク質-界面活性剤ナノ粒子に組み立てられた抗原を含んでもよい。
【0058】
本明細書に開示されるナノ粒子は、約20nm~約60nm、約20nm~約50nm、約20nm~約45nm、または約25nm~約45nmのZ-aveサイズの範囲である。粒子サイズ(Z-ave)は、特に指定がない限り、Malvern Zetasizerを使用する動的光散乱(DLS)によって測定される。
【0059】
本明細書に開示されるワクチン組成物には、いくつかのナノ粒子タイプを含んでもよい。いくつかの態様では、ナノ粒子タイプは、異方性ロッドの形態であり、二量体または単量体であり得る。他の態様では、ナノ粒子タイプは球状オリゴマーである。さらに他の態様では、ナノ粒子は、最初の2つのタイプの中間の沈降特性を有する中間ナノ粒子として記載され得る。ナノ粒子タイプの形成は、生成プロセス中に界面活性剤とタンパク質濃度を制御することにより調整することができる。ナノ粒子タイプは、沈降係数を測定することで決定することができる。
【0060】
ナノ粒子生成
本開示のナノ粒子は、天然に存在しない生成物であり、その成分は自然界では一緒に発生しない。一般に、本明細書に開示される方法は、タンパク質を単離するために第1の界面活性剤が使用され、次いで、その第1の界面活性剤が第2の界面活性剤と交換されてナノ粒子を形成する界面活性剤交換アプローチを使用する。
【0061】
ナノ粒子に含まれる抗原は典型的には、宿主細胞での組換え発現によって生成される。標準的な組換え技術を使用してもよい。典型的には、タンパク質はバキュロウイルスシステムを使用して昆虫宿主細胞で発現される。好ましい実施形態では、バキュロウイルスはカテプシン-Lノックアウトバキュロウイルスである。他の好ましい実施形態では、バキュロウイルスはキチナーゼノックアウトバキュロウイルスである。さらに他の好ましい実施形態では、バキュロウイルスは、カテプシン-Lとキチナーゼの両方のダブルノックアウトである。昆虫細胞発現系で高レベルの発現が得られる場合がある。昆虫細胞の非限定的な例は、Spodoptera frugiperda(Sf)細胞、例えばSf9、Sf21、Trichoplusia ni細胞、例えばHigh Five細胞(BTI-TN-5B1-4とも呼ばれる)、およびショウジョウバエS2細胞である。
【0062】
細胞の培養には、一般的なトランスフェクションおよび細胞増殖法を使用することができる。ベクター、例えば、融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むベクターは、当該技術分野で周知の方法に従って宿主細胞にトランスフェクトされ得る。例えば、真核細胞への核酸の導入は、リン酸カルシウム共沈、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポフェクション、およびポリアミントランスフェクション試薬を使用したトランスフェクションによって達成することができる。一実施形態では、ベクターは組換えバキュロウイルスである。
【0063】
宿主細胞を増殖させる方法には、バッチ、バッチ供給、連続、および灌流細胞培養技術が含まれるが、これらに限定されない。細胞培養とは、バイオリアクター(発酵チャンバー)内での細胞の増殖(growth)と増殖(propagation)を意味し、ここでは、精製と単離のために細胞が増殖し、タンパク質(例えば、組換えタンパク質)を発現する。典型的には、細胞培養は、バイオリアクター内で無菌の、制御された温度と大気条件下で実施される。バイオリアクターは、温度、雰囲気、撹拌、および/またはpHなどの環境条件をモニターすることができる細胞の培養に使用されるチャンバーである。一実施形態では、バイオリアクターはステンレス鋼チャンバーである。別の実施形態では、バイオリアクターは、滅菌済みのプラスチックバッグ(例えば、Cellbag(登録商標),Wave Biotech,Bridgewater,N.J.)である。他の実施形態では、滅菌済みのプラスチックバッグは、約50L~3500Lのバッグである。
【0064】
ナノ粒子の界面活性剤抽出と精製
宿主細胞の増殖後、界面活性剤と精製プロトコルを使用して、宿主細胞からタンパク質を回収することができる。宿主細胞が48~96時間増殖したら、細胞を培地から単離し、界面活性剤含有溶液を添加して細胞膜を可溶化し、界面活性剤抽出物中のタンパク質を放出する。Triton X-100およびNP-9としても知られるテルギトールは、それぞれ抽出に適した界面活性剤である。界面活性剤は、約0.1%~約1.0%の最終濃度まで添加されてもよい。例えば、濃度は約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.5%、約0.7%、約0.8%、または約1.0%であってもよい。ある特定の実施形態では、範囲は約0.1%~約0.3%であってもよい。好ましくは、濃度は約0.5%である。
【0065】
他の態様において、宿主細胞からタンパク質を単離するために、異なる第1の界面活性剤が使用してもよい。例えば、第1の界面活性剤は、ビス(ポリエチレングリコールビス[イミダゾイルカルボニル])、ノノキシノール-9、ビス(ポリエチレングリコールビス[イミダゾイルカルボニル])、Brij(登録商標)35、Brij(登録商標)56、Brij(登録商標)72、Brij(登録商標)76、Brij(登録商標)92V、Brij(登録商標)97、Brij(登録商標)58P、Cremophor(登録商標)EL、デカエチレングリコールモノドデシルエーテル、N-デカノイル-N-メチルグルカミン、n-デシルアルファ-Dグルコピラノシド、デシルベータ-D-マルトピラノシド、n-ドデカノイル-N-メチルグルカミド、nドデシルアルファ-D-マルトシド、n-ドデシルベータ-D-マルトシド、n-ドデシルベータ-D-マルトシド、ヘプタエチレングリコールモノデシルエーテル、ヘプタエチレングリコールモノドデシルエーテル、ヘプタエチレングリコールモノテトラデシルエーテル、n-ヘキサデシルベータ-D-マルトシド、ヘキサエチレングリコールモノドデシルエーテル、ヘキサエチレングリコールモノヘキサデシルエーテル、ヘキサエチレングリコールモノオクタデシルエーテル、ヘキサエチレングリコールモノテトラデシルエーテル、イゲパルCA-630、イゲパルCA-630、メチル-6-0-(N-ヘプチルカルバモイル)-アルファ-D-グルコピラノシド、ノナエチレングリコールモノドデシルエーテル、N-ノナノイル-N-メチルグルカミン、N-ノナノイルN-メチルグルカミン、オクタエチレングリコールモノデシルエーテル、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル、オクタエチレングリコールモノヘキサデシルエーテル、オクタエチレングリコールモノオクタデシルエーテル、オクタエチレングリコールモノテトラデシルエーテル、オクチル-ベータ-Dグルコピラノシド、ペンタエチレングリコールモノデシルエーテル、ペンタエチレングリコールモノドデシルエーテル、ペンタエチレングリコールモノヘキサデシルエーテル、ペンタエチレングリコールモノヘキサデシルエーテル、ペンタエチレングリコールモノヘキサデシルエーテルペンタエチレングリコールモノオクタデシルエーテル、ペンタエチレングリコールモノオクチルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールエーテルW-1、ポリオキシエチレン10トリデシルエーテル、ポリオキシエチレン100ステアレート、ポリオキシエチレン20イソヘキサデシルエーテル、ポリオキシエチレン20オレイルエーテル、ポリオキシエチレン40ステアレート、ポリオキシエチレン50ステアレート、ポリオキシエチレン8ステアリン酸塩、ポリオキシエチレンビス(イミダゾリルカルボニル)、ポリオキシエチレン25プロピレングリコールステアリン酸塩、Quillaja樹皮のサポニン、Span(登録商標)20、Span(登録商標)40、Span(登録商標)60、Span(登録商標)65、Span(登録商標)80、Span(登録商標)85、Tergitol Type 15-S -12、Tergitol Type 15-S-30、Tergitol Type 15-S-5、Tergitol Type 15-S-7、Tergitol Type 15-S-9、Tergitol Type NP-10、Tergitol Type NP-4、Tergitol Type NP-40、Tergitol Type NP-7、Tergitol Type NP-9、Tergitol Type TMN-10、Tergitol Type TMN-6、Triton X-100、またはそれらの組み合わせであってもよい。
【0066】
次いで、遠心分離を使用して、ナノ粒子を細胞破片から単離することができる。いくつかの実施形態では、塩化セシウム、スクロース、およびイオジキサノールを使用するなどの勾配遠心分離を使用してもよい。例えば、イオン交換、アフィニティ、およびゲルろ過クロマトグラフィーを含む標準的な精製技術など、他の技術を代替としてまたは追加で使用してもよい。
【0067】
例えば、第1のカラムはFractogel(登録商標)EMD TMAE(EMD Millipore)などのイオン交換クロマトグラフィー樹脂であってもよく、第2のカラムはレンズマメ(Lens culinaris)レクチンアフィニティ樹脂であってもよく、第3のカラムはFractogel(登録商標)EMD SO3(EMD Millipore)樹脂などの陽イオン交換カラムであってもよい。他の態様では、陽イオン交換カラムはMMCカラムまたはNuvia C Primeカラム(Bio-Rad Laboratories、Inc)であってもよい。好ましくは、本明細書に開示される方法は、界面活性剤抽出カラム、例えば、疎水性相互作用カラムを使用しない。このようなカラムは、精製中に界面活性剤を除去するためにしばしば使用されるが、ここで開示する方法に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0068】
界面活性剤交換
ナノ粒子を形成するために、宿主細胞からタンパク質を抽出するために使用された第1の界面活性剤は、ナノ粒子構造に到達するために第2の界面活性剤に実質的に置き換えられる。NP-9は、好ましい抽出界面活性剤である。典型的には、ナノ粒子は、HPLCで測定されたときに検出可能なNP-9を含まない。第2の界面活性剤は、典型的には、PS20、PS40、PS60、PS65、およびPS80からなる群から選択される。好ましくは、第2の界面活性剤はPS80である。ナノ粒子製剤の安定性を維持するために、第2の界面活性剤とタンパク質の比率は特定の範囲内に維持される。
【0069】
特定の態様において、界面活性剤交換は、糖部分を介して糖タンパク質を結合するアフィニティークロマトグラフィーを使用して実施される。例えば、アフィニティークロマトグラフィーはマメ科植物のレクチンカラムを使用してもよい。マメ科植物のレクチンは、植物で最初に同定されたタンパク質であり、糖残基と特異的かつ可逆的に相互作用することが判明している。例えば、Sharon and Lis, “Legume lectins--a large family of homologous proteins,”FASEBJ.1990 Nov;4(14):3198-208;Liener,“The Lectins:Properties,Functions,and Applications in Biology and Medicine,”Elsevier,2012を参照されたい。好適なレクチンには、コンカナバリンA(con A)、エンドウレクチン、イガマメレクチン、およびレンズマメレクチンが含まれる。レンズマメレクチンは、その結合特性により、界面活性剤交換に適したカラムである。例えば、実施例10を参照されたい。レクチンカラムは市販されており、例えば、Capto Lentil LectinはGE Healthcareから入手可能である。特定の態様では、レンズマメレクチンカラムは組換えレクチンを使用してもよい。分子レベルでは、糖部分はレンズマメレクチンに結合し、タンパク質のアミノ酸を遊離して界面活性剤の周りで合体して界面活性剤コアの形成をもたらし、抗原の複数のコピーを有するナノ粒子、例えば、界面活性剤に固定された二量体、三量体、または四量体であり得る糖タンパク質オリゴマーを提供すると考えられる。
【0070】
界面活性剤は、タンパク質とインキュベートされて界面活性剤交換中にナノ粒子を形成するとき、初期の精製ステップ中に約0.1%(w/v)までで存在してもよく、この量は最適な安定性を有する最終ナノ粒子を達成するために下げられる。例えば、非イオン性界面活性剤(例えば、PS80)は、約0.03%~約0.1%であってもよい。好ましくは、安定性を改善するために、ナノ粒子は約0.03%~約0.05%のPS80を含む。製剤中の約0.03%未満のPS80の量は、良好な安定性を示さない。さらに、PS80が約0.05%超存在すると、凝集体が形成される。したがって、約0.03%~約0.05%のPS80は、分解を軽減したナノ粒子の長期安定性を可能にする構造的および安定性の利点を提供する。
【0071】
界面活性剤交換は、上記のように精製されたタンパク質を用いて実行することができ、精製され、保存のために凍結され、その後、界面活性剤交換のために解凍される。
【0072】
ナノ粒子の強化された安定性と強化された免疫原性
理論に縛られるものではないが、抗原を非イオン性界面活性剤コアと結合させると、優れた安定性と抗原提示をもたらすと考えられている。本明細書に開示されるナノ粒子は、驚くほど良好な安定性と免疫原性を提供する。
【0073】
界面活性剤コアに固定された糖タンパク質の位置は、望ましくない相互作用を減らすことにより安定性を高めると考えられている。例えば、プロテアーゼベースの分解に対する改善された防御は、本明細書に開示されたモル比において糖タンパク質をコアに固定して、立体障害がプロテアーゼアクセスをブロックすることになるシールド効果により達成され得る。
【0074】
ナノ粒子抗原
典型的な実施形態では、ナノ粒子を生成するために使用される抗原はウイルスタンパク質である。いくつかの態様では、タンパク質は修飾されてもよいが、天然ペプチドに対する免疫応答を刺激する能力を保持している。いくつかの態様では、タンパク質は、膜貫通ドメインを本質的に含むか、または含むように適合されて、タンパク質の界面活性剤コアへの結合を促進する。多くの場合、タンパク質は必然的に糖タンパク質である。
【0075】
RSV抗原
一態様では、ウイルスは呼吸器合胞体ウイルス(RSV)であり、ウイルス抗原は融合(F)糖タンパク質である。RSV Fタンパク質の構造と機能はよく特性評価されている。本明細書に記載の組成物で使用するのに好適なRSV-Fタンパク質は、A2、Long、ATCC VR-26、19、6265、E49、E65、B65、RSB89-6256、RSB89-5857、RSB89-6190、およびRSB89-6614などのRSV系統に由来し得る。特定の実施形態では、RSV Fタンパク質は、それらの天然のバリアントと比較して変異している。これらの変異は、タンパク質発現の改善、免疫原性の強化などの望ましい特性を付与する。RSV-Fタンパク質の構造を説明する追加情報は、Swanson et al.A Monomeric Uncleaved Respiratory Syncytial Virus F Antigen Retains Prefusion-Specific Neutralizing Epitopes Journal of Virology,2014,88,11802-11810.Jason S.McLellan et al.Structure of RSV Fusion Glycoprotein Trimer Bound to a Prefusion-Specific Neutralizing Antibody.Science,2013,340,1113-1117に見出すことができる。
【0076】
一次融合切断は、配列番号2に対応する残基131~136に位置する。一次融合切断部位の不活性化は、部位内の残基を変異させることにより達成され、結果として、もはやフューリンはコンセンサス部位を認識できなくなる。例えば、一次フューリン切断部位の不活性化は、野生型RSV Fタンパク質(配列番号2)のアルギニン133、アルギニン135、およびアルギニン136に対応する位置に少なくとも1つのアミノ酸置換を導入することにより達成され得る。特定の態様では、アルギニンの1つ、2つ、または3つ全てがグルタミンに変異している。他の態様では、不活性化は、野生型部位を以下の配列の1つに変異させることにより達成される:KKQKQQ(配列番号14)、QKQKQQ(配列番号15)、KKQKRQ(配列番号16)、およびGRRQQR(配列番号17)。
【0077】
特定の態様では、以下に示される好適なRSV Fタンパク質の特定の例を含む、配列番号2のアミノ酸137~145に対応する1~10アミノ酸が削除され得る。配列番号3~13の各々は、任意で、活性な一次融合切断部位KKRKRR(配列番号18)を有して調製されてもよい。配列番号2の野生型系統には、配列番号3~13では修正されている配列エラー(AからPへ、VからIへ、およびVからMへ)がある。宿主細胞でのRSV-Fタンパク質の発現に続いて、N末端シグナルペプチドが切断されて最終配列が提供される。通常、シグナルペプチドは宿主細胞のプロテアーゼによって切断される。しかしながら、他の態様では、完全長タンパク質が宿主細胞から単離され、その後シグナルペプチドが切断され得る。N末端RSV Fシグナルペプチドは、配列番号20(MELLILKANAITTILTAVTFCFASG)のアミノ酸からなる。したがって、例えば、発現および精製中の配列番号8からのシグナルペプチドの切断に続いて、配列番号19の配列を有する成熟タンパク質が得られ、RSV Fナノ粒子ワクチンを生成するために使用される。
図1を参照されたい。任意で、RSV Fシグナルペプチドアミノ酸の1以上から全てまでを欠失、変異、またはシグナルペプチド全体を欠失、および異なるシグナルペプチドに置き換えて、発現を増強してもよい。開始メチオニン残基は、発現を開始するために維持される。
【表1】
【0078】
いくつかの態様では、本明細書に開示されるRSV Fタンパク質は、野生型系統から、融合ドメインの欠失によってのみ変更され、場合により一次切断部位の不活性化を伴う。他の態様では、RSV Fタンパク質に追加の変更を加えることができる。典型的には、システイン残基は変異している。典型的には、N結合型グリコシル化部位は変異していない。
図1を参照されたい。さらに、パリビズマブ抗体がその部位に結合する能力のために、本明細書でパリビズマブ部位とも呼ばれる抗原部位IIが保存されている。モタビズマブ抗体もまた部位IIで結合する。追加の好適なRSV-Fタンパク質は、特に
図1Cに開示される残基100~150に及ぶ配列を含むRSV-Fタンパク質を含む参照により組み込まれる米国特許公開第2011/0305727号に見出せる。
【0079】
特定の他の態様では、配列番号2に示されるように、RSV F1またはF2ドメインは野生型株と比べて修飾されていてもよい。例えば、F1ドメインは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の変更を有してもよく、それらは変異または欠失であってもよい。同様に、F2ドメインには1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の変更があってもよく、それらは変異または欠失であってもよい。F1およびF2ドメインは、それぞれ独立して、野生型配列に対して少なくとも90%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を保持し得る。
【0080】
特定の例では、RSVナノ粒子製剤は、約270μg/mL~約300μg/mL、または約60μg/mL~約300μg/mLの範囲のRSV Fと共に約0.025%~約0.03%のPS80を含むことができる。他の態様では、ナノ粒子製剤は、300μg/mL~約500μg/mLのRSV Fを含む組成物中に約0.035%~約0.04%のPS80を含んでもよい。さらに他の態様では、ナノ粒子製剤は、350~500μg/mLのRSV Fを含む組成物中に約0.035%~約0.04%のPS80を含んでもよい。
【0081】
抗原と界面活性剤の濃度は変化する可能性があるため、それぞれの量は、非イオン性界面活性剤:タンパク質のモル比として言及する場合がある。例えば、PS80のタンパク質に対するモル比は、PS80濃度およびELISA/A280で測定した抗原のタンパク質濃度、ならびにそれぞれの分子量を使用して計算される。計算に使用されるPS80の分子量は1310であり、RSV Fを例にとると、RSV Fの分子量は65kDである。モル比は次のように計算される:(PS80濃度×10×65000)÷(1310×mg/mLでのRSV F濃度)。したがって、例えば、タンパク質によって測定されるナノ粒子の濃度が270μg/mLであり、PS80の濃度が0.015%および0.03%である。これらはそれぞれ、PS80:RSV Fタンパク質のモル比が27:1(つまり、0.015×10×65000/(1310×0.27))および55:1である。
【0082】
特定の態様では、モル比は、約30:1~約80:1、約30:1~約70:1、約30:1~約60:1、約40:1~約70:1、または約40:1~約50:1の範囲内である。しばしば、代替の非イオン性界面活性剤はPS80であり、モル比は約30:1~約50:1のPS80:タンパク質である。RSV-F糖タンパク質の場合、35:1~約65:1の範囲のモル比、特に約45:1の比を有するナノ粒子が特に安定している。
【0083】
修飾された抗原
本明細書に開示される抗原は、これらの抗原のバリエーションおよび変異体を包含する。ある特定の態様では、抗原は開示された抗原と同一性を共有し得る。一般に、そして特定の抗原に関して特に定義されない限り、同一性のパーセンテージは少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも98%であり得る。同一性のパーセンテージは、www.ebi.ac.uk/Tools/msa/clustalw2/で入手可能なアライメントプログラムClustalW2を使用して計算することができる。次のデフォルトパラメータは、ペアワイズアラインメントに使用することができる:Protein Weight Matrix=Gonnet;Gap Open=10; Gap Extension=0.1。
【0084】
特定の態様では、ナノ粒子に含まれるタンパク質はそのタンパク質からなる。他の態様では、ナノ粒子に含まれるタンパク質はそのタンパク質を含む。さまざまな目的のために、タンパク質自体への付加をすることができる。いくつかの態様では、抗原は、N末端、C末端、またはその両方で伸長され得る。いくつかの態様では、伸長は、精製または検出などの機能に有用なタグである。いくつかの態様では、タグはエピトープを含む。例えば、タグは、ポリグルタメートタグ、FLAGタグ、HAタグ、ポリHisタグ(約5~10個のヒスチジンを有する)、Mycタグ、グルタチオン-S-トランスフェラーゼタグ、緑色蛍光タンパク質タグ、マルトース結合タンパク質タグ、チオレドキシンタグ、またはFcタグであってもよい。他の態様では、伸長は、発現を増強するためにタンパク質に融合されたN末端シグナルペプチドであってもよい。そのようなシグナルペプチドは細胞内での発現中にしばしば切断されるが、いくらかのナノ粒子は無傷のシグナルペプチドと共に抗原を含む場合がある。したがって、ナノ粒子が抗原を含むとき、抗原は伸長を含む場合があり、したがって、ナノ粒子に組み込まれたとき、融合タンパク質である場合がある。配列の同一性を計算するために、伸長は含まれない。
【0085】
いくつかの態様では、抗原は切断されていてもよい。例えば、N末端は、約10個のアミノ酸、約30個のアミノ酸、約50個のアミノ酸、約75個のアミノ酸、約100個のアミノ酸、または約200個のアミノ酸により切断され得る。N末端の代わりに、またはN末端に加えて、C末端が切断され得る。例えば、C末端は、約10個のアミノ酸、約30個のアミノ酸、約50個のアミノ酸、約75個のアミノ酸、約100個のアミノ酸、または約200個のアミノ酸により切断され得る。切断されたタンパク質の同一性を計算するために、タンパク質の残りの部分に対して同一性が測定される。
【0086】
組み合わせナノ粒子
本明細書で使用されるとき、組み合わせナノ粒子は、2以上の異なる病原体に対する免疫応答を誘導するナノ粒子を指す。特定の組み合わせに応じて、病原体は同じ種の異なる系統またはサブタイプであっても、病原体が異なる種であってもよい。組み合わせナノ粒子を調製するために、複数の病原体からの糖タンパク質は、界面活性剤交換段階でそれらを結合することにより、組み合わせて単一のナノ粒子にすることができる。糖タンパク質のカラムへの結合とその後の界面活性剤交換により、界面活性剤コアの周りに複数の糖タンパク質のタイプが形成され、組み合わせナノ粒子が提供される。
【0087】
本開示はまた、それぞれが異なる病原体に対する応答を誘導する2以上のナノ粒子を組み合わせることにより、2以上の異なる病原体に対する免疫応答を誘導するワクチン組成物を提供する。任意で、ワクチン組成物は、対象に投与されるワクチン組成物の数を減らしながら複数の病原体に対する免疫応答を最大化する目的で、1以上の組み合わせナノ粒子を単独でまたは追加のナノ粒子と組み合わせて含んでもよい。
【0088】
そのような組成物は、病原体が何らかの態様で関連している場合に特に望ましい。一例では、組成物は、特定の年の季節性インフルエンザを形成すると当局によって毎年特定された系統に対するナノ粒子を含み得る。典型的には、季節性インフルエンザワクチンの場合、ワクチン組成物には、3、4、または5つのインフルエンザのサブタイプの系統に対する免疫応答を誘導するHAおよび/またはNAのナノ粒子と組み合わせたRSV抗原が含まれる。したがって、インフルエンザの異なる系統をワクチン組成物に組み合わせることができる。いくつかの態様では、組み合わせナノ粒子は、第1の系統由来のHAタンパク質および第2の系統由来のNAタンパク質を含み得る。他の態様では、ナノ粒子は、同一または異なるサブタイプ由来の1以上のHAおよび1以上のNAタンパク質を含んでもよい。例えば、ナノ粒子は、サブタイプH1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、およびH16から選択される1以上のHAナノ粒子、ならびに/またはサブタイプN1、N2、N3、N4、N5、N6、N7、N8、およびN9から選択される1以上のNAナノ粒子を含み得る。系統発生的に、HAおよびNAタンパク質はグループに分けられる。HAの場合、グループ1にはH1、H2、H5、H6、H8、H9、H11、H12、H13、およびH16が含まれ、グループ2にはH3、H4、H7、H10、H14、およびH15が含まれる。NAタンパク質も2つのグループを形成する:グループ1にはN1、N4、N5、およびN8が含まれ、グループ2にはN2、N3、N6、N7、およびN9が含まれる。ある特定の態様では、抗原は、天然のインフルエンザHAタンパク質および/またはNAタンパク質に対して少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも97%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有し得る。
【0089】
別の例では、上記で説明したように、インフルエンザとRSVの両方が呼吸器疾患の増悪を引き起こすため、HA、NA、および/またはRSV Fを組み合わせナノ粒子に混合するか、免疫原性組成物に複数のナノ粒子を組み合わせて、RSVおよび1以上のインフルエンザ系統に対する免疫応答を誘導してもよい。
【0090】
ワクチン組成物
本明細書に開示される組成物は、予防的または治療的に使用され得るが、典型的には予防的である。したがって、本開示は、感染を治療または予防する方法を含む。この方法は、治療量または予防量の本開示の免疫原性組成物を対象に投与することを含む。好ましくは、医薬組成物は、防御効果を提供するワクチン組成物である。他の態様では、防御効果には、曝露集団のパーセンテージにおける感染症に関連する症状の改善が含まれてもよい。例えば、病原体に応じて、組成物は、熱疲労、筋肉痛、頭痛、咽頭痛、嘔吐、下痢、発疹、腎および肝機能障害の症状、内出血、および外出血から選択される1以上のウイルス疾患症状を、未治療の対象と比較して、予防または軽減し得る。
【0091】
ナノ粒子は、様々な賦形剤、緩衝液などの存在下でワクチンとして投与するために製剤化されてもよい。例えば、ワクチン組成物は、リン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、および/またはヒスチジンを含み得る。リン酸ナトリウムは、約10mM~約50mM、約15mM~約25mM、または約25mMで存在し得、特定の場合には、約22mMのリン酸ナトリウムが存在する。ヒスチジンは、約0.1%(w/v)、約0.5%(w/v)、約0.7%(w/v)、約1%(w/v)、約1.5%(w/v)、約2%(w/v)、または約2.5%(w/v)で存在し得る。塩化ナトリウムは、存在するとき、約150mMであり得る。特定の組成物、例えばインフルエンザワクチンでは、塩化ナトリウムは約200mM、約300mM、または約350mMを含むより高い量で存在し得る。
【0092】
特定のナノ粒子、特にRSV Fナノ粒子は、わずかに酸性のpHレベルで向上した安定性を有する。例えば、ナノ粒子を含む組成物のpH範囲は、約pH5.8~約pH7.0、約pH5.9~約pH6.8、約pH6.0~約pH6.5、約pH6.1~約pH6.4、約pH6.1~約pH6.3、または約pH6.2であり得る。典型的には、RSV Fタンパク質ナノ粒子の組成物は約pH6.2である。他のナノ粒子では、組成物は中性になりやすい傾向にあり、例えば、インフルエンザのナノ粒子は約pH7.0~pH7.4であり得、しばしばpH7.2であり得る。
【0093】
アジュバント
ある特定の実施形態では、本明細書に開示される組成物は、免疫応答を増強するために1以上のアジュバントと組み合わせてもよい。他の実施形態では、組成物はアジュバントなしで調製され、したがって、アジュバントを含まない組成物として投与するために利用可能である。有利には、本明細書に開示されるアジュバントを含まない組成物は、単回投与として投与されたときに防御免疫応答を提供し得る。強い免疫応答を誘導する、ミョウバンを含まない組成物は、約60歳以上の成人で特に有用である。
【0094】
アルミニウムベースのアジュバント
いくつかの実施形態では、アジュバントはミョウバン(例えば、AlPO4またはAl(OH)3)であってもよい。典型的には、ナノ粒子はミョウバンに実質的に結合している。例えば、ナノ粒子は、ミョウバンに少なくとも80%結合、少なくとも85%結合、少なくとも90%結合、または少なくとも95%結合していてもよい。しばしば、ナノ粒子は、組成物中のミョウバンに92%~97%結合している。用量あたりのミョウバンの量は、典型的には約400μg~約1250μgの範囲にある。例えば、ミョウバンは、用量あたり、約300μg~約900μg、約400μg~約800μg、約500μg~約700μg、約400μg~約600μg、または約400μg~約500μgの量で存在し得る。典型的に、ミョウバンは、タンパク質ナノ粒子の120μgの用量に対して約400μgで存在する。
【0095】
マトリックスアジュバント
本開示のマトリックス粒子は、1つのサポニン画分のみを使用して形成されたものを使用して形成される。サポニン画分を生成してマトリックス粒子を形成するためのいくつかのアプローチが好適である。画分A、B、およびCは、米国特許第6,352,697号に記載されており、次のように調製することができる。Quilja saponaria Molinaの粗水性抽出物であるQuil Aの親油性画分をクロマトグラフィーで分離し、70%アセトニトリル水溶液で溶離して親油性画分を回収する。次いで、この親油性画分を、酸性水中の25%~60%のアセトニトリルの勾配を使用して溶離するセミ分取HPLCで分離する。本明細書で「画分A」または「QH-A」と呼ばれる画分は、約39%のアセトニトリルで溶離される画分である。本明細書で「画分B」または「QH-B」と呼ばれる画分は、約47%のアセトニトリルで溶離される画分であるか、それに対応する。本明細書で「画分C」または「QH-C」と呼ばれる画分は、約49%のアセトニトリルで溶離される画分であるか、それに対応する。画分の精製に関するさらなる情報は、米国特許第5,057,540号に見出せる。本明細書に記載されるように調製されたとき、Quillaja saponaria Molinaの画分A、B、およびCはそれぞれ、定義可能な特性を有する化学的に密接に関連する分子のグループまたはファミリーを表す。それらが得られるクロマトグラフィー条件は、溶離プロファイルおよび生物学的活性に関してバッチ間の再現性が非常に一貫しているようなものである。
【0096】
他の使用可能なサポニン画分が記載されている。画分B3、B4、およびB4bはEP0436620に記載されている。画分QA1~QA22についてはEP03632279B2に記載される。Q-VAC(Nor-Feed, AS Denmark)、Quillaja saponaria Molina Spikoside(lsconova AB,Ultunaallen 2B,756 51 Uppsala,Sweden)が記載される。EP 0 3632 279 B2の画分QA-1、QA-2、QA-3、QA-4、QA-5、QA-6、QA-7、QA-8、QA-9、QA-10、QA-11、QA-12、QA-13、QA-14、QA-15、QA-16、QA-17、QA-18、QA-19、QA-20、QA-21、およびQA-22、特にQA-7、QA-17、QA-18、およびQA-21を使用し得る。それらは、EP 0 3632 279 B2、特に6ページおよび8ページと9ページの実施例1に記載されているように取得される。実施形態では、Quillaja saponaria Molina由来のサポニン画分は、QA1~21のいずれか1つから選択される。
【0097】
QS-7およびQS-21画分などの他のサポニン画分、それらの生成およびそれらの使用は、米国特許第5,057,540号、同第6,231,859号、同第6,352,697号、同第6,524,584号、同第6,846,489号、同第7,776,343号、および同第8,173,141号に記載されている。これらの画分は、本明細書に開示される方法および組成物で使用するためのマトリックスを生成するために使用され得る。
【0098】
いくつかの態様では、組成物は、サポニン画分を1つのみ有するマトリックス粒子を含む。他の態様では、組成物は、粒子タイプごとに1つのサポニン画分を各々含む複数のタイプのマトリックス粒子を含んでもよいが、粒子は異なる画分を有する。
【0099】
各々1つのサポニン画分を有するマトリックス粒子は、重量%の任意の組み合わせで組成物中に存在してもよい。特定の態様では、組成物は、0.1重量%~99.9重量%、5重量%~95重量%、10重量%~90重量%、15重量%~85重量%、20重量%~80重量%、25重量%~75重量%、30重量~70重量%、35重量~65重量%、40重量~60重量%、45重量~55重量%、40~60重量%、または50重量%の、第1のサポニン画分を含むマトリックス粒子を含み得、残りの部分は異なるサポニン画分を含むマトリックス粒子で構成されている。
【0100】
組成物中の各マトリックスの量は、組成物全体の割合として変動し得る。例えば、画分Aマトリックスの量は、約80%(w/w)、約85%(w/w)、約90%(w/w)、約92%(w/w)、または約95%(w/w)であり得、いずれの場合も、残りは画分Cマトリックスである。典型的には、画分Aマトリックスが約80%(w/w)~約95%(w/w)の範囲で、組成物の残りが画分Cマトリックスである。通常、約85%(w/w)の画分Aマトリックスと残りの画分Cマトリックス(すなわち、85:15)が使用される。85:15の画分Aマトリックスと画分Cマトリックスの組み合わせの特定の例は、画分Aマトリックスと画分Cマトリックスを約85対約15の比率で混合したMatrix-M(商標)(Novavax AB,Uppsala,Sweden)である。
【0101】
他のアジュバント
いくつかでは、組成物の他のアジュバントが、追加としてまたは代替として使用され得る。あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Vogel et al.,“A Compendium of Vaccine Adjuvants and Excipients(2nd Edition)”に記載される任意のアジュバントの包含は、本開示の範囲内で想定される。他のアジュバントには、フロイントの完全アジュバント(殺傷されたMycobacterium tuberculosisを含む免疫応答の非特異的刺激物質)、フロイントの不完全アジュバント、および水酸化アルミニウムアジュバントが含まれる。他のアジュバントには、GMCSP、BCG、thur-MDPおよびnor-MDPなどのMDP化合物、CGP(MTP-PE)、リピドA、およびモノホスホリルリピドA(MPL)、MF-59、細菌から抽出された3つの構成要素を含むRIBI、MPL、トレハロースジミコレート(TDM)、および2%スクアレン/Tween(登録商標)80エマルション中の細胞壁骨格(CWS)が含まれる。いくつかの実施形態では、アジュバントは少層膜(paucilamellar)脂質小胞、例えば、Novasomes(登録商標)であってもよい。Novasomes(登録商標)は、約100nm~約500nmの範囲の少重層膜非リン脂質小胞である。それらは、Brij 72、コレステロール、オレイン酸、およびスクアレンを含む。Novasomesは効果的なアジュバントであることが示されている(米国特許第5,629,021号、同第6,387,373号、および同第4,911,928号を参照されたい)。
【0102】
投与および投与量
本明細書に開示される組成物は、全身経路もしくは粘膜経路もしくは経皮経路を介して、または特定の組織に直接投与され得る。本明細書で使用されるとき、「全身投与」という用語には、非経口投与経路が含まれる。特に、非経口投与には、皮下、腹腔内、静脈内、動脈内、筋肉内、または胸骨内注射、静脈内、または腎臓透析注入技術が含まれる。典型的には、全身の非経口投与は筋肉内注射である。本明細書で使用されるとき、「粘膜投与」という用語には、経口、鼻腔内、膣内、直腸内、気管内、腸内、および眼内投与が含まれる。好ましくは、投与は筋肉内である。
【0103】
組成物は、単回投与スケジュールまたは複数回投与スケジュールで投与され得る。一次免疫スケジュールまたは追加免疫スケジュールで複数回投与が使用され得る。複数回投与スケジュールでは、様々な用量を同一または異なる経路、例えば、非経口で初回免疫および粘膜で追加免疫、粘膜で初回免疫および非経口で追加免疫などによって投与することができる。いくつかの態様では、後続の追加投与は、前の投与の約2週間後、約3週間後、約4週間後、約5週間後、または約6週間後に投与される。しかしながら、典型的には、本明細書に開示される組成物は一度だけ投与され、それでもなお防御免疫応答を提供する。
【0104】
いくつかの実施形態では、μgで測定されるときの用量は、溶質を含む用量の総重量、またはRSV Fナノ粒子の重量、またはRSV Fタンパク質の重量であり得る。用量は、A280またはELISAのいずれかのタンパク質濃度アッセイを使用して測定される。
【0105】
小児投与を含む抗原の用量は、約30μg~約300μg、約90μg~約270μg、約100μg~約160μg、約110μg~約150μg、約120μg~約140μg、または約140μg~約160μgの範囲であり得る。特定の実施形態では、用量は、ミョウバンと共に投与される約120μgである。特定の集団は、アジュバントと共に、またはアジュバントを伴わずに投与され得る。例えば、高齢者に投与するとき、ミョウバンがないことが好ましい。ある特定の態様では、組成物は添加されるアジュバントを含まなくてもよい。そのような状況では、用量は約10%または約20%増加し得る。
【0106】
いくつかの実施形態では、用量は、約0.1mL~約1.5mL、約0.3mL~約1.0mL、約0.4mL~約0.6mL、または典型的な量である約0.5mLの体積で投与されてもよい。
【0107】
RSVワクチンの特定の実施形態では、用量は、約175μg/mL~約325μg/mL、約200μg/mL~約300μg/mL、約220μg/mL~約280μg/mL、または約240μg/mL~約260μg/mLのRSV Fタンパク質濃度を含み得る。
【0108】
参照による組み込み
本明細書において引用される全ての参照文献、論文、刊行物、特許、特許公開、および特許出願は、参照によりそれらの全体があらゆる目的のために組み入れられる。
【実施例0109】
実施例1
RSV Fタンパク質の発現および精製
配列番号8を有するRSV Fタンパク質をバキュロウイルス発現システムで発現させ、RSV Fタンパク質を発現する組換えプラークを拾い上げて確認した。次いで、組換えウイルスは、Sf9昆虫細胞の感染によって増幅された。昆虫細胞の培養物にバキュロウイルスを約3MOI(感染多重度=ウイルスffuまたはpfu/細胞)で感染させた。感染後48~72時間で培養物と上清を採取した。約30mLの粗細胞採取物を、約800×gで15分間遠心分離することにより清浄化した。得られたRSV Fタンパク質を含む粗細胞採取物を以下に記載のように精製した。
【0110】
非イオン性界面活性剤Tergitol(登録商標)NP-9(ノニルフェノールエトキシレート)は、膜タンパク質抽出プロトコルで使用された。NP-9粗抽出物を、陰イオン交換クロマトグラフィー、レンズマメレクチンアフィニティ/HIC、および陽イオン交換クロマトグラフィーを通過させることによりさらに精製した。洗浄された細胞は、界面活性剤処理によって溶解され、次いで低pH処理にかけられ、BVおよびSf9宿主細胞のDNAおよびタンパク質の沈殿をもたらした。中和された低pH処理溶解物は、2回目の低pH処理が行われる前に、陰イオン交換およびアフィニティクロマトグラフィーで清澄化され、さらに精製された。
【0111】
アフィニティクロマトグラフィーを使用して、Sf9/BVタンパク質、DNA、およびNP-9を除去し、RSV Fタンパク質を濃縮した。簡潔に述べると、レンズマメレクチンはカルシウムとマンガンを含む金属タンパク質であり、多糖類とグルコースまたはマンノースを含むグリコシル化タンパク質とに可逆的に結合する。RSV F含有陰イオン交換フロースルー画分は、レンズマメレクチンアフィニティークロマトグラフィー樹脂(Capto Lentil Lectin, GE Healthcare)にロードされた。グリコシル化RSV Fタンパク質は選択的に樹脂に結合し、非グリコシル化タンパク質とDNAはカラムのフロースルーで除去される。弱く結合した糖タンパク質は、高塩濃度および低モル濃度のメチルα-D-マンノピラノシド(MMP)を含むバッファーで除去された。
【0112】
さらに、NP-9界面活性剤を界面活性剤ポリソルベート80(PS80)と界面活性剤交換するために、カラム洗浄も使用した。界面活性剤交換を行うために、RSV F糖タンパク質をレンズマメレクチンカラムに結合させた後、カラムを0.1%PS80とインキュベートした。RSV Fタンパク質は、高濃度のMMPでレンズマメレクチンカラムから溶離した。溶離後、RSV Fタンパク質三量体は、界面活性剤コアに含まれるRSV Fタンパク質三量体とPS80で構成されるミセルナノ粒子に組み立てられる。界面活性剤交換の後、低pH不活性化ステップがあり、続いて0.1%のPS80を含む緩衝液の存在下で硫酸塩カラムにおいてインキュベートした。
【0113】
溶離された物質は、PS80:RSV Fタンパク質のモル比が約50のバルク保存用の原薬(DS)を提供するのに十分なPS80を含む溶液で希釈された。DSの適切な組成は、22mMリン酸ナトリウム、0.03%PS80、pH6.2のリン酸緩衝液を含む溶液でRSV Fナノ粒子を組み合わせることにより達成された。界面活性剤交換中およびその後の各ステップで、組成物中のPS80と抗原の比率は、35~60のモル比に維持された。ELISA/A280で測定したPS80濃度とRSV Fの濃度、およびそれぞれの分子量を使用して、モル比を計算した。PS80の分子量は1310で、RSVは65kDである。
【0114】
実施例2
ワクチン組成物の調製
投与されるワクチン製剤のためのナノ粒子を提供するために、約50のPS80:RSVタンパク質モル比の原薬を製剤に希釈した。原薬は解凍して希釈し、ガラスバイアルまたは充填済みシリンジに充填してから、投与前に2~8℃で保存した。ナノ粒子はミョウバンアジュバントに結合した。ミョウバンのアジュバントを添加して混合し、ナノ粒子の約95%がミョウバンに結合するようにし、これは、0.5mLの体積での120μg用量のRSV Fナノ粒子あたり約0.4mgを意味する。
【0115】
実施例3
ナノ粒子中のRSV FはCOPD増悪入院を低減する
60歳以上の11,856人の対象の無作為化プラセボ対照研究では、ミョウバンのない135μgRSV Fナノ粒子を含むワクチンにより、全原因COPD増悪入院が低減された(
図3および
図4で「E-301」と呼ばれる)。ワクチンの安全性、免疫原性、および有効性を確認するために、対象を1年間追跡した。驚くべきことに、RSV Fナノ粒子ワクチンの投与は、研究の一般集団(p=0.017)と、以前にベースラインCOPDを有すると特定された対象の研究の部分集団(p=0.14)の両方で、COPD増悪による入院を低減した。
【0116】
60歳以上の1,600人の対象からなる小規模の同等の研究では、RSV Fナノ粒子ワクチンを投与した群はCOPD増悪入院を経験しなかった(
図3で「E-201」と呼ばれる)。データは、E-201研究では、プラセボを投与した801人の対象のうちの4人と比較して、ワクチンを投与した798人の対象のうちの0人が入院事象を起こし、100%のワクチン有効率(VE%)をもたらした。