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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134833
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】角度計
(51)【国際特許分類】
   G01B 3/56 20060101AFI20230920BHJP
【FI】
G01B3/56
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023122383
(22)【出願日】2023-07-27
(62)【分割の表示】P 2021208924の分割
【原出願日】2017-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000221926
【氏名又は名称】東北パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 明仁
(72)【発明者】
【氏名】三木 猛
(57)【要約】
【課題】容易に操作することができ、また容易に角度値を把握することが可能な角度計を提供する。
【解決手段】回転軸AXの周りを互いに相対的に回動自在な第1の部材20及び第2の部材30を含み、第1の部材20は、回転軸AXの周方向に沿って設けられた複数の構造部分23を有し、第2の部材30は、複数の構造部分23のいずれかと係合する係合部32を有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸の周りを互いに相対的に回動自在な第1の部材及び第2の部材を含み、
前記第1の部材は、前記回転軸の周方向に沿って設けられた複数の構造部分を有し、
前記第2の部材は、前記複数の構造部分のいずれかと係合する係合部を有することを特徴とする角度計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角度計に関する。
【背景技術】
【0002】
角度計は、対象物における種々の角度を測定する計測器である。角度計の一例としては、人体の関節可動域を計測する関節角度計が挙げられる。例えば、特許文献1には、第1及び第2のアーム部と、当該第1及び第2のアーム部間の回転抵抗を調整する調整手段と、を備える関節角度計が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-80395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、関節角度計は、通常、測定者(すなわち人)によって操作される。このような手動で操作する角度計は、高い操作性を有することが好ましい。例えば、当該角度計は、操作時には角度値を容易に把握することができることが好ましい。
【0005】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、容易に操作することができ、また容易に角度値を把握することが可能な角度計を提供することを課題の1つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、回転軸の周りを互いに相対的に回動自在な第1の部材及び第2の部材を含み、第1の部材は、回転軸の周方向に沿って設けられた複数の構造部分を有し、第2の部材は、複数の構造部分のいずれかと係合する係合部を有することを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施例1に係る角度計の斜視図である。
図2】実施例1に係る角度計の第1の部材の斜視図である。
図3】実施例1に係る角度計の第2の部材の斜視図である。
図4】実施例1に係る角度計の斜視図である。
図5】実施例1に係る角度計の操作時の斜視図である。
図6】実施例1に係る角度計の角度検出部のブロック図である。
図7A】実施例1の変形例に係る角度計の上面図である。
図7B】実施例1の変形例に係る角度計の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に本発明の実施例について詳細に説明する。
【実施例0009】
図1は、実施例1に係る角度計10の斜視図である。角度計10は、回転軸AXの周りを互いに相対的に回動する第1の部材(第1の回動部材)20と第2の部材(第2の回動部材)30とを有する。また、本実施例においては、角度計10は、回転軸AXをなし、第1及び第2の部材20及び30を互いに回動自在に支持(固定)する軸部材40とからなる。
【0010】
角度計10は、例えば、人体の種々の関節可動域を測定する関節角度計として使用することができる。角度計10は、軸部材40の近傍の基部Bと、基部Bから離れる方向に沿って延びるハンドル部Hとを有する。例えば、角度計10を操作して角度測定を行う測定者は、ハンドル部Hを持って操作することができる。
【0011】
図2は、角度計10の第1の部材20の斜視図である。第1の部材20は、全体として
板状に成形された基体(第1の基体)21を有する。基体21は、回転軸AXの近傍の基部(第1の基部)B1と、基部B1から離れる方向に沿って棒状に延びるハンドル部H1とを有する。また、基体21の主面の一方(以下、単に主面と称する)21Aは、第2の部材30に対向して設けられる。
【0012】
第1の部材20は、基体21の主面21A上に形成され、回転軸AXの周方向に沿って環状に延びる環状構造22を有する。環状構造22は、例えば基体21の主面A上に設けられた板状の部分である。また、環状構造22における回転軸AXの半径方向外側の側面には、回転軸AXの周方向に沿って複数の凹部23が設けられている。
【0013】
第1の部材20における凹部23の各々の位置は、角度計10が示す角度値に対応する。すなわち、第1の部材20は、回転軸AXの周方向に沿ってかつ各々が所定の角度位置に設けられた複数の凹部23を有する。
【0014】
本実施例においては、凹部23の各々は、全体として波状に連続して設けられている。すなわち、本実施例においては、環状構造22の側面には、複数の凹部23として、所定間隔で波状の凹凸が繰り返し形成されている。
【0015】
また、本実施例においては、第1の部材20は、基体21に固定されかつ回転軸AXと同軸に配置されたギア(第1のギア)24を有する。本実施例においては、基体21の主面21Aには、回転軸AXの周囲における環状構造22の内側の領域に凹部21Bを有する。また、凹部21Bの底面には、当該底面から突出しかつ回転軸AXと同軸の中心軸を有する円柱状の凸部21Cを有する。ギア24は、この凸部21Cに固定されている。すなわち、ギア24の回転軸と第1の部材20(第2の部材30)の回転軸AXとが同軸に配置されている。
【0016】
また、本実施例においては、第1の部材20は、基体21の主面21Aから突出するピン25を有する。ピン25は、第1の部材20の第2の部材30との間の相対的な回転位置(回転可能域)を制限する。また、本実施例においては、第1の部材20における基体21の主面21Aには、角度計10によって測定された角度値を示す目盛Mが刻印又は印刷されている。
【0017】
図3は、角度計10の第2の部材30の斜視図である。第2の部材30は、全体として板状に成形された基体(第2の基体)31を有する。基体31は、回転軸AXの近傍の基部(第2の基部)B2と、基部B2から離れる方向に沿って棒状に延びるハンドル部H2とを有する。また、基体31の主面の一方(以下、単に主面と称する)31Aは、第1の部材20の主面21Aに対向して設けられる。なお、図3は、基体31の主面31A側から第2の部材30を見た場合の斜視図である。
【0018】
第2の部材30は、基体31に固定され、第1の部材20における凹部23に係合する係合部32を有する。本実施例においては、基体31の主面31Aには回転軸AXの周方向に沿って凹部31Bが設けられており、係合部32は、基体31の凹部31B内に固定されている。なお、凹部31Bは、第1及び第2の部材20及び30が組み合わされた際に、第1の部材20の環状構造22(及び凹部23)を収容する収容部として機能する。
【0019】
本実施例においては、係合部32は、基体31に固定された基部32Aと、基部32Aに結合され、基部32Aとの結合部CPから回転軸AXの周方向において互いに反対方向に延びる2つのアーム部32Bと、2つのアーム部32Bの端部に設けられた凸部(係合凸部)32Cとを有する。本実施例においては、係合凸部32Cは、アーム部32Bの端部において回転軸AXの半径方向内側にアーム部32Bから突出する突起として設けられ
ている。
【0020】
第2の部材30は、基体31に設けられ、第1の部材20と第2の部材30とがなす角度を検出する角度センサ33を有する。角度センサ33は、第1の部材20と第2の部材30との間の相対的な回転位置に応じた電気信号(角度信号)を生成する。例えば、角度センサ33は、ポテンショメータである。
【0021】
本実施例においては、第2の部材30は、基体31に設けられ、第1の部材20のギア24に噛み合うギア(第2のギア)34を有する。また、ギア34の中心軸(回転軸)は、角度計10の回転軸AXとは異なる位置に配置されている。角度センサ33は、ギア34の回転量に応じた電気信号を生成する。本実施例においては、角度センサ33は、ギア34の回転軸をシャフト(角度検出用の回転軸)とするポテンショメータである。
【0022】
また、本実施例においては、基体31の主面31Aには回転軸AXの周方向に沿って設けられた溝31Cが設けられている。この溝31Cは、第1の部材20のピン25に係合し、ピン25の移動を案内するレールとして機能する。第1の部材20は、ピン25が溝31C内を移動しつつ、第2の部材30との間で相対的に回動する。また、溝31Cは、端部を有し、ピン25の移動範囲、すなわち第2の部材30の第1の部材20に対する回動可能域は、この溝31Cによって制限されている。
【0023】
なお、第1の部材20の基体21、環状構造22(凹部23)、ギア24及びピン25は、例えば樹脂材料からなる。第2の部材30の基体31、係合部32及びギア34は、例えば樹脂材料からなる。また、軸部材40は、例えば樹脂材料からなる。なお、これらの部材は、例えば金属材料から構成されていてもよい。
【0024】
なお、後述するが、本実施例においては、環状構造22(凹部23)及び係合部32は、弾性力によって互いに係合する構造を有する。具体的には、係合部32のアーム部32Bは、その一端が基部32A(すなわち第2の部材30)に固定され、他端が凹部23に係合する片持ちバネ構造を有する。これによって、係合部32は凹部23に対して付勢される。
【0025】
なお、係合部32は、弾性的に凹部23に当接する部分を有することを考慮すると、例えば、係合凸部32C(当接部)に弾性力を与えるコイルバネや皿バネを有していてもよい。また、環状構造22(凹部23の各々)及び係合部32の少なくとも一方が弾性体(例えば樹脂(POM・PET・PC)、ステンレス(SUS)、バネ鋼(SUP))を有していてもよい。
【0026】
図4は、第2の部材30の基体31を透過的に示した角度計10の斜視図である。図4においては、第2の部材30の基体31の外形を破線で示している。また、図5は、角度計10の使用中における角度計10の斜視図である。図5においても、第2の部材30の基体31の外形を破線で示している。図4及び図5を用いて、角度計10の動作について説明する。
【0027】
まず、角度計10の操作の概要について説明する。角度計10は、例えば、肘関節の可動域を測定するように構成されることができる。具体的には、例えば、測定者(操作者)は、角度計10の軸部材40を被測定者(被験者)の肘関節の近傍に配置し、第1及び第2の部材20を当該被測定者の上腕骨が延びる方向に沿って配置する。
【0028】
そして、測定者は、第1の部材20を当該上腕骨に配置した状態で、第2の部材30を当該被測定者の橈骨又は尺骨が延びる方向に沿って回転させる(例えば図5)。このとき
、第1の部材20と第2の部材30とがなす角度が当該肘関節の可動域となる。なお、角度計10においては、測定者が第1及び第2の部材20及び30のハンドル部H1及びH2を持って操作するように構成されている。
【0029】
次に、角度計10の使用時の状態について説明する。まず、図4に示すように、第2の部材30の係合部32(係合凸部32C)は、第1の部材20の環状構造22に設けられた複数の凹部23のいずれかに係合している。また、第1の部材20のギア24と第2の部材30のギア34とは互いに噛み合っている。
【0030】
なお、例えば、図4に示す状態では、角度センサ33が0度の電気信号(角度信号)を出力するように設定される。他の例としては、図4に示す状態では、角度センサ33の電源が切れるように設定される。これによって、例えば測定時にのみ電源(例えば電池内の電圧)を消費する構成となり、省電力化を図ることができる。
【0031】
また、第2の部材30の係合部32は、係合凸部32Cが第2の部材20の凹部23に向かって付勢されるように構成されている。具体的には、係合部32が凹部23に係合される際には、係合部32の係合凸部32Cは凹部23に押し付けられた状態となる。例えば、係合部32のアーム部32Bは、回転軸AXの半径方向外側に撓んだ状態で係合凸部32Cが凹部23に係合するように構成及び配置されている。
【0032】
この係合部32のアーム部32Bは、基部32Aとの結合部CPを固定端とし、係合凸部32Cを自由端とする片持ちバネとして機能する。このアーム部32Bが係合凸部32Cに与える回転軸AXの半径方向内側の弾性力は、係合凸部32Cに対して凹部23に係合する付勢力となる。このようにして、係合部32は、付勢された2つの係合凸部32Cによって凹部23のいずれかに係合している。
【0033】
なお、アーム部32Bは基体31に直接結合されていてもよく、この場合、例えば、係合部32は、回転軸AXの周方向に沿って互いに反対方向に延びる2つのアーム部32Bと、係合凸部32Cとして機能し、2つのアーム部32Bの各々の端部から回転軸AXの半径方向内側に突出する凸部とを有していればよい。また、係合部32は、2つアーム部32Bを有する場合に限定されない。例えば、係合部32は、1つのアーム部32B又は3つ以上のアーム部32Bから構成されていてもよい。
【0034】
次に、図5に示すように、第2の部材30の基体31が第1の部材20に対して回動された場合、基体31の回動に従って、係合部32、角度センサ33及びギア34が相対的に回動(旋回)する。第2の部材30の第1の部材20に対する回動移動は、第1及び第2の部材20及び30がなす角度(すなわち角度計10が測定角度として示す角度)が変化することに対応する。
【0035】
第2の部材30の回動時においては、第1の部材20に設けられた複数の凹部23のうち、係合部32の係合凸部32Cが係合する凹部23が切り替わる。すなわち、第2の部材30の回動に応じ、係合部32における複数の凸部23との係合位置が変化する。
【0036】
例えば、第1及び第2の部材20及び30が、1の角度単位をなす1の相対位置から、隣接する他の角度単位をなす他の相対位置まで相対的に回動される場合を考える。まず、当該1の相対位置では、当該1の相対位置に対応する位置(角度位置)に設けられた凹部23に係合部32が係合している。
【0037】
この状態から、隣接する他の相対位置に向かって所定の回動量だけ第2の部材30を回動させた場合、当該1の相対位置における係合部32のこれに対応する凹部23との係合
状態が解かれる。すなわち、係合部32は、凹部23のいずれとも係合しない状態となる。
【0038】
そして、当該他の相対位置(相対位置範囲)に第2の部材30が達した場合、当該他の相対位置に対応する位置(角度位置)に設けられた別の(隣の)凹部23に係合部32が係合する。このように、第2の部材30を第1の部材20に対して相対的に回動させる際には、第2の係合部30の係合部32と、第1の部材20に設けられた複数の凹部23のいずれかとの間の係合及び係合解除が繰り返し行われる。
【0039】
なお、本実施例においては、係合部32は、付勢された状態で第2の部材30と共に回動する。従って、例えば、測定中に第1及び第2の部材20及び30の回動を停止した際には、第1及び第2の部材20及び30間の相対位置が保持される。従って、操作時(回動時)又は測定時(停止時)に第1及び第2の部材20及び30の相対位置が意図せず変化してしまうことが防止される。また、係合部32に与える付勢力を調節することで、回動操作に必要な力と停止時の位置保持力を調節することができる。
【0040】
このように、角度計10を用いることで、測定者は、第2の部材30の回動時における係合部32の凹部23(第1の部材20)への係合状態を触覚的に感じ取ることができる。例えば、測定者は、クリック感を得つつ角度計10を操作することができる。
【0041】
また、本実施例においては、凹部23は、所定の角度毎(例えば5度毎)に配置されている。従って、測定者は、係合部32が凹部23に係合した際に感じた触感の回数によって、測定された角度を触覚的に認識することができる。例えば、上記した所定の角度に対して回動時に感じた触感の回数を乗じることで、当該測定角度を算出することができる。
【0042】
また、本実施例においては、係合部32は、凹部23に対して付勢された状態で第2の部材30(基体31)と共に回動する。従って、例えば、係合部32と凹部23との係合時に音(「カチカチ」といった音)を出力することができる。従って、測定者は、係合部32の凹部23との係合状態を聴覚的に感じ取ることができる。
【0043】
このように、角度計10は、第1の部材20が回転軸AXの周方向に沿った複数の凹部23を有する。また、第2の部材30は、第1及び第2の部材20及び30が所定の角度をなす所定の相対位置に達した際に第1の部材20の複数の凹部23のいずれかに係合する係合部32を有する。従って、容易に操作することができ、また容易に角度値を把握することが可能な角度計10を提供することができる。
【0044】
なお、関節角度計は、リハビリテーション施設、マッサージ施設又は病院の整形外科などで使用されることが想定される。ここで、当該施設内では、角度計は、視覚障害者などが使用する場合がある。角度計10は、上記したように、測定される角度を触覚的又は聴覚的に(直感的に)把握することが可能な構成を有する。従って、角度計10を用いることでは、例えば視覚障害者であっても容易に角度測定を行うことができる。すなわち、角度計10は、幅広い使用者に使用されることができる。
【0045】
また、関節角度計として角度計10を使用することを考慮した場合、角度計10に要求される測定分解能は5度程度である。すなわち、関節角度計としては、これよりも細かい分解能は不要な場合が多い。従って、例えば、凹部23を当該最小分解能である5度単位で配置することで、関節角度計としての要求仕様を満たしつつ操作性及び角度把握性が大幅に向上した角度計10を提供することができる。
【0046】
また、係合部32の係合凸部32Cは、付勢された状態で凹部23(第1の部材20の
基体21(環状構造22)に当接している。従って、係合部32は、凹部23のいずれかに係合した際にその状態を保持する。
【0047】
すなわち、測定者が測定中に第1及び第2の部材20及び30の回動を停止した際には、第1及び第2の部材20及び30間の相対位置が保持されることとなる。従って、操作時(回動時)又は測定時(停止時)に第1及び第2の部材20及び30の相対位置が意図せず変化してしまうことが防止される。なお、例えば使用用途、サイズ及び測定者などに応じて係合部32に与える付勢力を調節することで、回動させるために必要な力と停止時の位置保持力のバランス(両立)を図ることができる。
【0048】
また、本実施例においては、角度計10は、第1の部材20と第2の部材30とがなす角度を検出する角度センサ33を有する。従って、例えば、角度計10においては、第1及び第2の部材20及び30を正確に被測定部(例えば被測定者の関節)に合わせて回動させれば、その測定角度は角度センサ33によって(人を介さずに)正確に判定することが可能となる。
【0049】
なお、図4及び図5に示すように角度センサ33は、第1の部材20に設けられたギア24及び第2の部材30に設けられたギア34と共に、角度計10の角度検出部ASを構成する。換言すれば、角度計10は、第1の部材20及び第2の部材30がなす角度を電気的に検出する角度検出部ASを有する。
【0050】
また、本実施例においては、角度検出部ASは、第1の部材20に設けられ、回転軸AXと同軸に設けられたギア24と、第2の部材30に設けられ、ギア24に噛み合って回転するギア34をシャフトとするポテンショメータ(角度センサ33)とを有する。
【0051】
具体的には、第2の部材30のギア34は、その回転中心(ギア自身)が相対的に移動することで、第1の部材20のギア24に噛み合ってギア24のよりも大きな回転数で回転する。角度センサ33は、この増大された回転数で回転するギア34の回転に応じた信号を生成する。これによって、例えば、わずかな角度値、すなわちわずかな第2の部材30の第1の部材20に対する相対的な回動に対しても、正確に角度検出を行うことができる。
【0052】
図6は、角度検出部ASのブロック図である。本実施例においては、角度検出部ASは、角度センサ33の他、測定した角度に関する角度データを記憶する記憶部AS1を有する。例えば、角度センサ33が所定回数分の測定データを角度データとして記憶する記憶機能を有する。従って、測定の正確さに加え、測定に係る作業性が向上する。例えば、複数の被測定者に亘って連続して角度測定を行うことができる。
【0053】
また、角度検出部ASは、角度データ、すなわち第1及び第2の部材20及び30がなす角度(測定角度)に関する情報を告知する告知部AS2を有する。例えば、告知部AS2は、係合部32と凹部23との係合位置が変化する毎にビープ音を出力する。また、告知部ASは、測定角度を表示するパネルを有していてもよい。従って、告知部AS2を有することで、測定者は測定角度を容易に把握することができる。
【0054】
また、角度検出部ASは、角度情報を外部に送信する送信部AS3を有する。角度検出部ASが外部送信機能を有することで、角度計10によって測定された角度を外部機器に出力することができる。例えば、角度計10に接続される外部機器としては、当該測定角度を表示するディスプレイや、当該測定角度を表示又は分析するアプリケーションがインストールされたコンピュータ又はスマートフォンなどが挙げられる。
【0055】
なお、本実施例においては、角度計10が関節角度計として機能する場合について説明した。しかし、角度計10は、他の角度を測定する角度計としても使用されることができる。例えば、要求される分解能に対応する位置に凹部23を設けることで、製品としての要求を満たす高い操作性及び角度把握性の角度計10を構成することができる。
【0056】
また、本実施例においては、第1の部材20が複数の凹部23を有し、第2の部材30が係合部32を有する場合について説明した。しかし、第2の部材30が凹部23を有し、第1の部材20が係合部32を有していてもよい。
【0057】
また、本実施例においては、角度計10が角度検出部ASを有する場合について説明した。しかし、角度検出部ASの構成はこれに限定されない。例えば、角度検出部ASは第1の部材20のギア24をシャフトとするポテンショメータを有していてもよい。また、本実施例においては、角度計10が角度検出部ASを有する場合について説明したが、角度計10は角度検出部ASを有していなくてもよい。
【0058】
また、本実施例においては、角度検出部ASが記憶部AS1に複数回分の測定データを記憶する場合について説明した。しかし、角度検出部ASは、測定されたデータを記憶部AS1に記憶することなく告知及び送信してもよい。例えば、角度計10が外部機器(例えばスマートフォンなど)に接続された状態で測定を行う場合、角度検出部ASは角度を検出してから測定データを送信部AS3が送信するまでに必要なバッファを有していればよい。従って、例えば、角度検出部ASは、少なくとも送信部AS3を有していればよい。
【0059】
また、本実施例においては、角度計10が軸部材40を有する場合について説明したが、角度計10は軸部材40を有していなくてもよい。角度計10は、回転軸AXの周りを互いに相対的に回動する第1の部材20と第2の部材30とを有していればよい。
【0060】
また、第1及び第2の部材20及び30の基体21及び31の構成はこれに限定されない。例えば、基体21及び31はハンドル部H1及びH2を有していなくてもよい。また、例えば、基体21は凹部21B、ピン25及び目盛Mを有していなくてもよい。また、基体31は凹部31B及び溝31Cを有していなくてもよい。
【0061】
また、本実施例においては、凹部23は、環状構造22の側面に設けられた波状の凹凸面である場合について説明した。しかし、凹部23の構成はこれに限定されない。例えば、凹部23は、所定の角度位置毎すなわち所定の間隔で配置される場合に限定されない。例えば、測定対象となる部分などに応じて、所定の角度範囲では比較的小さな間隔で凹部23が配置され、他の角度範囲では比較的大きな間隔で凹部23が配置されていてもよい。
【0062】
また、凹部23の各々は、互いに異なるサイズ(幅及び深さなど)を有していてもよい。例えば、複数の凹部23のうち、所定の角度範囲に設けられた凹部23は比較的大きなサイズを有し、他の角度範囲に設けられた凹部23はこれより小さなサイズを有していてもよい。また、例えば、複数の凹部23のうち、所定の角度位置(例えば測定角度が30度及び60度に対応する位置)に設けられた凹部23は比較的大きなサイズを有し、他の凹部23はこれより小さなサイズを有していてもよい。位置及び範囲に応じてサイズが異なる凹部23を配置することで、測定者に与えるクリック感が変化する。従って、より明確に測定角度を認識することができる。
【0063】
また、本実施例においては、凹部23は、環状構造22の半径方向外側の側面に設けられる場合について説明した。しかし、凹部23は、環状構造22の半径方向内側の側面に
設けられていてもよい。この場合、係合部32は環状構造22の半径方向内側に配置され、係合凸部32Cが半径方向外側に向かって設けられていればよい。なお、環状構造22の半径方向外側に凹部23を設けることで、基体21の小型化、及び第1の部材20の小型化を図ることができる。
【0064】
また、本実施例においては、凹部23は環状構造22に設けられる場合について説明したが、凹部23の構成はこれに限定されない。凹部23は第1の部材20に設けられていればよい。例えば、基体21の主面21Aに凸部が設けられ、当該凸部における回転軸AXの半径方向外側の側面領域に凹部23が設けられていてもよい。すなわち、凹部23が回転軸AXの半径方向外側に設けられる場合、凹部23は、基体21に設けられていればよい。
【0065】
また、係合部32の係合凸部32Cは、例えば、基体31の主面31Aから第1の部材20の基体21に向かって突出していてもよい。
【0066】
また、角度計10は、係合部32に係合される被係合部として所定の角度位置に凹部23を有し、また係合部32が係合凸部32Cを有する場合について説明した。しかし、角度計10は、第1及び第2の部材20及び30の回転軸AXの周方向に沿って設けられた複数の構造部分と、これに係合する係合部を有していればよい。
【0067】
図7Aは、実施例1の変形例に係る角度計10Aの模式的な上面図である。図7Bは、図7AのV-V線に沿った断面図である。なお、図7Aにおいては、凸部23A及び係合部35の他の部材については図示を省略している。
【0068】
本変形例においては、図7Bに示すように、角度計10Aは、第1の部材20が凹部23に代えて凸部23Aを有する。凸部23Aは、基体21の主面21Aから回転軸AXに沿った方向に突出する突起である。また、第2の部材30は、係合部32に代えて、凸部23Aに係合する係合凹部35Aを有する係合部35を有する。本変形例に係る角度計10Aのように、互いに係合関係を有する部材が、第1の部材20及び第2の部材30に設けられていればよい。
【0069】
換言すれば、第1の部材20は、第1及び第2の部材20及び30の回動軸である回転軸AXの周方向に沿って設けられた複数の構造部分(例えば凹部23又は凸部23A)を有していればよい。そして、第2の部材30は、第2の部材と共に回転軸AXの周りを回動し、当該複数の構造部分のいずれかに係合する係合部(例えば係合部32又は35)を有していればよい。
【0070】
また、当該複数の構造部分として凹部23を設ける場合、例えば、第1の部材20が基体21における第2の部材30に対向する主面21Aに設けられ、回転軸AXの周方向に沿って環状に延びる環状構造22を有し、当該複数の構造部分は、環状構造22における回転軸AXの半径方向外側の側面に設けられた複数の凹部23を含んでいればよい。また、当該複数の構造部分として波状の凹凸面を設ける場合、例えば、当該複数の構造部分は、環状構造22の当該側面に設けられた波状の凹凸面を有していればよい。
【0071】
また、係合部32を当該複数の構造部分に付勢する場合、係合部32は上記したアーム部32Bによる片持ちバネ構造を用いた構造に限定されない。例えば、係合部32は、一端が第2の部材30に固定され、他端が当該複数の構造部分に当接する片持ちバネを有していてもよい。また、例えば、係合部32は、係合凸部32Cがコイルバネによって凹部23に当接する構造を有していてもよい。
【0072】
また、係合部32は、当該係合構造(例えばアーム部32B)を有する場合に限定されず、例えば、その一部又は全部が弾性体によって構成されていてもよい。また、係合部32に加え、又は係合部32に代えて当該複数の構造部分の一部又は全部が弾性体によって構成されていてもよい。例えば、本変形例に示す係合部35は全体が弾性体によって構成されていてもよい。係合部32又は35が当該構造部分に付勢されつつ回動することで、安定して測定者にクリック感を与えることができる。
【0073】
上記したように、角度計10は、回転軸AXの周りを互いに相対的に回動自在な第1の部材20と第2の部材30とを含む。また、第1の部材20は、回転軸AXの周方向に沿って設けられた複数の構造部分(凹部23)を有する。また、第2の部材30は、当該複数の構造部分のいずれかと係合する係合部(係合部32)を有する。従って、容易に操作することができ、また容易に角度値を把握することが可能な角度計10を提供することができる。
【符号の説明】
【0074】
10、10A 角度計
20 第1の部材
30 第2の部材
23 凹部(構造部分)
32 係合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B