(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134837
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】マルチコプタ
(51)【国際特許分類】
B64U 50/19 20230101AFI20230920BHJP
B64U 10/13 20230101ALI20230920BHJP
B64U 50/23 20230101ALI20230920BHJP
B64U 50/33 20230101ALI20230920BHJP
B64U 20/80 20230101ALI20230920BHJP
【FI】
B64U50/19
B64U10/13
B64U50/23
B64U50/33
B64U20/80
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023123031
(22)【出願日】2023-07-28
(62)【分割の表示】P 2020043429の分割
【原出願日】2020-03-12
(31)【優先権主張番号】P 2019047607
(32)【優先日】2019-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】川北 洋一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 洋一
(57)【要約】
【課題】姿勢を良好に保つことができるマルチコプタを提供する。
【解決手段】本開示の一態様は、マルチコプタ1において、マルチコプタ1の姿勢制御を行う制御部33を有し、制御部33は、マルチコプタ1の中心軸CAを中心にして対向するモータ22の指示DUTY値の差が閾値THA以上である場合に、対向するモータ22の指示DUTY値を判定して、対向するモータ22のどちらか、または、全てのモータ22への供給電力を増減させる供給電力制御を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数設けられたロータと、
複数設けられ前記ロータを駆動するモータと、
前記モータへ供給する電力を発電する発電部と、
前記発電部で発電された前記電力を充電し、充電した前記電力を前記モータへ供給するバッテリと、を有するマルチコプタにおいて、
前記マルチコプタの姿勢制御を行う制御部を有し、
前記モータに印加するように指示された電圧のデューティ値を指示DUTY値と定義し、
前記制御部は、前記マルチコプタの中心軸を中心にして対向する前記モータの前記指示DUTY値の差が所定の閾値以上である場合に、前記対向する前記モータの前記指示DUTY値を判定して、前記対向する前記モータのどちらか、または、全ての前記モータへの供給電力を増減させる供給電力制御を行うこと、
を特徴とするマルチコプタ。
【請求項2】
請求項1のマルチコプタにおいて、
前記制御部は、前記供給電力制御を行った前記モータの前記指示DUTY値を調整して、前記供給電力制御を行った前記モータに設けられた前記ロータの回転数を制御すること、
を特徴とするマルチコプタ。
【請求項3】
請求項1または2のマルチコプタにおいて、
前記制御部は、
前記供給電力を増加させる供給電力増加制御を、前記マルチコプタの高度が所定高度未満である場合に行い、
前記供給電力を低減させる供給電力低減制御を、前記マルチコプタの高度が所定高度以上である場合に行うこと、
を特徴とするマルチコプタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数のロータ(プロペラ)を搭載した回転翼機であるマルチコプタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の回転翼と、この回転翼をそれぞれ回転させるモータと、このモータに対して電力を供給するバッテリモジュールを有する電動式航空機(マルチコプタ)が開示されている。そして、この電動式航空機においては、機体が傾いた場合に、バッテリモジュールから機体が下がった側のモータへの供給電力を増加させ、バッテリモジュールから機体が上がった側のモータへの供給電力を低減させて回転翼の回転数を下げることによって、機体を水平に保つ姿勢制御を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されているマルチコプタにおいて、バッテリモジュールからモータへの電力の供給によってマルチコプタの姿勢制御を行うことができない場合がある。例えば、バッテリモジュールからモータへ供給できる電力には上限があるので、必要なモータへの供給電力がバッテリモジュールからモータへ供給できる電力の上限を超えた場合には、マルチコプタの姿勢制御を行うことができない。そのため、マルチコプタの姿勢を良好に保つことができないおそれがある。
【0005】
そこで、本開示は上記した問題点を解決するためになされたものであり、姿勢を良好に保つことができるマルチコプタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた本開示の一形態は、複数設けられたロータと、複数設けられ前記ロータを駆動するモータと、前記モータへ供給する電力を発電する発電部と、前記発電部で発電された前記電力を充電し、充電した前記電力を前記モータへ供給するバッテリと、を有するマルチコプタにおいて、前記マルチコプタの姿勢制御を行う制御部を有し、前記モータに印加するように指示された電圧のデューティ値を指示DUTY値と定義し、前記制御部は、前記マルチコプタの中心軸を中心にして対向する前記モータの前記指示DUTY値の差が所定の閾値以上である場合に、前記対向する前記モータの前記指示DUTY値を判定して、前記対向する前記モータのどちらか、または、全ての前記モータへの供給電力を増減させる供給電力制御を行うこと、を特徴とする。
【0007】
この態様によれば、マルチコプタの姿勢を速やかに安定させて、姿勢を良好に保つことができる。
【0008】
上記の態様においては、前記制御部は、前記供給電力制御を行った前記モータの前記指示DUTY値を調整して、前記供給電力制御を行った前記モータに設けられた前記ロータの回転数を制御すること、が好ましい。
【0009】
この態様によれば、姿勢を良好に保つことができる。
【0010】
上記の態様においては、前記制御部は、前記供給電力を増加させる供給電力増加制御を、前記マルチコプタの高度が所定高度未満である場合に行い、前記供給電力を低減させる供給電力低減制御を、前記マルチコプタの高度が所定高度以上である場合に行うこと、が好ましい。
【0011】
この態様によれば、供給電力増加制御と供給電力低減制御の使い分けについて、マルチコプタの高度を判断基準に含めることにより、マルチコプタの姿勢を安定させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本開示のマルチコプタによれば、姿勢を良好に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態のマルチコプタの外観斜視図である。
【
図2】本実施形態のマルチコプタの構成を示すブロック図である。
【
図3】ホバリング中の姿勢制御についての説明図である。
【
図4】ホバリング中の姿勢制御についての説明図である。
【
図5】第1実施形態で行う制御の内容を示す制御フローチャートの図である。
【
図6】エンジン出力が定格出力であるときの指示DUTY値の一例を示す図である。
【
図7】エンジン出力が非常時出力であるときの指示DUTY値の一例を示す図である。
【
図8】モータへ印加できる電圧の最大値を平常電圧としたときを示す図である。
【
図9】モータへ印加できる電圧の最大値を非常時電圧としたときを示す図である。
【
図10】変形例においてエンジン出力が非常時出力であるときの指示DUTY値の一例を示す図である。
【
図11】第2実施形態で行う制御の内容を示す制御フローチャートの図である。
【
図12】エンジン出力が定格出力であるときの指示DUTY値の一例を示す図である。
【
図13】エンジン出力が非常時出力であるときの指示DUTY値の一例を示す図である。
【
図14】第3実施形態で行う制御の内容を示す制御フローチャートの図である。
【
図15】第4実施形態で行う制御の内容を示す制御フローチャートの図である。
【
図16】第5実施形態で行う制御の内容を示す制御フローチャートの図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示のマルチコプタの実施形態について説明する。
【0015】
<マルチコプタの概要>
(マルチコプタの構成)
図1に示すように、本実施形態のマルチコプタ1は、機体11とエンジン発電ユニット12を有する。
【0016】
機体11は、プロペラ21とモータ22と機体本体部23と懸架部材24を備えている。
【0017】
プロペラ21は、複数(例えば、8個)設けられている。そして、この複数のプロペラ21を同時に回転させることにより、マルチコプタ1は飛行する。なお、プロペラ21は、本開示の「ロータ」の一例である。なお、
図1に示す例では、プロペラ21は8個設けられており、この8個のプロペラ21は、第1プロペラ21-1、第2プロペラ21-2、第3プロペラ21-3、第4プロペラ21-4、第5プロペラ21-5、第6プロペラ21-6、第7プロペラ21-7、第8プロペラ21-8により構成されている。
【0018】
モータ22は、各々のプロペラ21に設けられるようにして複数設けられており、プロペラ21を回転させる(駆動する)。このモータ22は、
図2に示すように、後述するESC36(インバータ(不図示))とパワーコントロールユニット35とを介して、後述するバッテリ31やジェネレータ42に電気的に接続されている。これにより、ジェネレータ42にて発電された電力やバッテリ31から放電される電力が、パワーコントロールユニット35とESC36とを介して、モータ22に供給される。なお、
図1に示す例では、モータ22は8個設けられており、この8個のモータ22は、第1モータ22-1、第2モータ22-2、第3モータ22-3、第4モータ22-4、第5モータ22-5、第6モータ22-6、第7モータ22-7、第8モータ22-8により構成されている。
【0019】
機体本体部23は、
図1に示すように、懸架部材24の上方に設けられている。この機体本体部23には、
図2に示すように、バッテリ31と、燃料タンク32と、制御部33と、FC(フライトコントローラ)34と、パワーコントロールユニット35と、ESC(Electric Speed Controller)36などが設けられている。
【0020】
バッテリ31は、電力を充放電可能な充放電部(二次電池、蓄電池)である。
図2に示すように、バッテリ31は、パワーコントロールユニット35を介して、ジェネレータ42と電気的に接続されており、ジェネレータ42で発電された電力を充電する。また、バッテリ31は、パワーコントロールユニット35とESC36とを介して、モータ22と電気的に接続されており、モータ22に供給する電力を放電する。また、バッテリ31において、バッテリ31の電流・電圧やバッテリ31の温度やSOC(State Of Charge、充電率)を検出するセンサが設けられており、該センサはそれらの情報に関する信号を制御部33へ送る。
【0021】
燃料タンク32は、後述するエンジン41を駆動させるために使用する燃料(例えば、ガソリン)を貯留している。また、燃料タンク32に設けられた不図示のレベルセンサは、制御部33へ燃料の残量の情報に関する信号を送る。
【0022】
制御部33は、小型のコンピュータとして構成されており、マルチコプタ1の全体を制御する。例えば、制御部33は、エンジン41の駆動を制御して、ジェネレータ42での発電を制御する。また、制御部33は、後述するマルチコプタ1の姿勢制御(バランス制御)を行う。
【0023】
FC34は、マルチコプタ1の飛行の制御を行う装置である。このFC34は、制御部33とESC36へ推力指示の信号を送る一方で、制御部33からSOCの情報に関する信号を受け取る。また、FC34は、後述するコントローラ51から使用者の操作指示の信号を受け取り、後述する各種センサ52から検出結果の情報に関する信号を受け取る。
【0024】
パワーコントロールユニット35は、モータ22へ供給される電力を制御する装置である。このパワーコントロールユニット35は、ジェネレータ42で発電された電力を受給したり、バッテリ31との間で電力の供給および受給を行ったり、ESC36へ電力を供給したりする。また、パワーコントロールユニット35は、制御部33から充放電切替指示の信号を受け取る。
【0025】
ESC36は、モータ22の回転数を制御する装置である。このESC36は、パワーコントロールユニット35から供給される電力を、駆動電力として、モータ22に供給する。また、ESC36は、FC34から推力指示の信号を受け取る。
【0026】
エンジン発電ユニット12は、
図1に示すように、懸架部材24の下に設けられている。このエンジン発電ユニット12は、モータ22やバッテリ31へ供給する電力を発電する発電部であり、
図1と
図2に示すように、エンジン41とジェネレータ(すなわち、発電機)42を備えている。エンジン41は、ジェネレータ42の動力源であって、例えば、小型のディーゼルエンジンやレシプロエンジンなどである。すなわち、エンジン41は、モータ22またはバッテリ31へ供給する電力をジェネレータ42で発電するために駆動する。また、エンジン41は、制御部33から、発電電力指示の信号を受け取る。なお、エンジン発電ユニット12は、本開示の「発電部」の一例である。
【0027】
また、マルチコプタ1は、
図2に示すように、コントローラ51と、各種センサ52を有する。
【0028】
コントローラ51は、マルチコプタ1の使用者が持つ操作部であり、例えば、ジョイスティックである。また、各種センサ52は、高度や姿勢や緯度や経度や加速度や障害物などを検出するセンサである。
【0029】
また、本実施形態のマルチコプタ1においては、モータ22とバッテリ31とエンジン41によりシリーズハイブリッドシステムが構成されている。すなわち、マルチコプタ1においては、エンジン41が発電のみに使用され、モータ22がプロペラ21の駆動に使用され、さらに電力を回収するためのバッテリ31を有するシステムが構成されている。このようにして、マルチコプタ1は、エンジン41の駆動によりジェネレータ42にて発電し、発電した電力でモータ22を駆動してプロペラ21を駆動することにより、飛行する。また、マルチコプタ1は、エンジン41の駆動によりジェネレータ42にて発電した際の余剰電力を、バッテリ31に一旦蓄え、必要に応じてモータ22の駆動に用いる。
【0030】
(マルチコプタの作用)
このような構成のマルチコプタ1は、モータ22に電力を供給し、複数のプロペラ21を回転させることにより飛行する。そして、プロペラ21の回転数を制御し、プロペラ21の回転によって得られる揚力をマルチコプタ1自体の重力とバランスさせることで、マルチコプタ1のホバリング飛行や前進・後進・左右移動飛行を実現させることができる。また、プロペラ21により発生させる揚力を大きくしてマルチコプタ1の上昇飛行を実現させることができ、プロペラ21により発生させる揚力を小さくしてマルチコプタ1の下降飛行を実現させることができる。また、各々のプロペラ21の回転数を制御して、複数のプロペラ21の回転によって発生する揚力に不均衡を生じさせることにより、マルチコプタ1の前進・後進・左右移動飛行を実現することができる。そして、相対するプロペラ21の回転数に差を設けることにより、旋回(回転)飛行を実現することができる。
【0031】
(姿勢制御について)
ここで、制御部33が行うマルチコプタ1の姿勢制御について説明する。マルチコプタ1の傾斜角度を目標角度に維持する制御を行っているときとして、例えば、マルチコプタ1がホバリングしているとき(ホバリング(飛行)中)は、
図3に示すように、プロペラ21の回転によって得られる揚力LFA,LFBと重力Gとが釣り合うようにして、姿勢制御が行われる。そこで、このようにマルチコプタ1がホバリングしているときに、
図4に示すように、外部から強い横風が吹いた場合を想定すると、風によりマルチコプタ1を横転させようとする力FAが作用する。そのため、マルチコプタ1が横転することを回避してその場にてホバリングすることを維持しようとする力を得るため、揚力LFAを大きくして姿勢制御が行われる。なお、マルチコプタ1の傾斜角度とは、マルチコプタ1(機体11)の中心軸CAと重力Gの作用方向(
図3や
図4の上下方向)を示す軸とがなす角度(
図4における破線で示すマルチコプタ1の傾斜時の中心軸CAと重力Gの作用方向を示す軸とがなす角度θ)である。
【0032】
<姿勢を良好に保つ制御について>
次に、前記のような姿勢制御を行うマルチコプタ1において、当該マルチコプタ1の姿勢を良好に保つ制御について説明する。
【0033】
〔第1実施形態〕
まず、第1実施形態について説明する。
【0034】
マルチコプタ1は、その動力源としてバッテリ31を有しており、マルチコプタ1の姿勢制御を行う上で各モータ22に設けられたプロペラ21の駆動により発生する揚力(以下、「プロペラ21の揚力」という。)は、バッテリ31からモータ22に供給できる電力によって律速される。そして、このとき、マルチコプタ1の姿勢制御をバッテリ31からモータ22に供給できる電力(電圧)の範囲内でしか行うことができないとすると、想定外の状態(例えば、マルチコプタ1が非常に強い風を受けた状態など)が発生した場合に、マルチコプタ1の姿勢制御に必要なプロペラ21の揚力が不足してしまうおそれがある。
【0035】
例えば、
図4に示すように、外部から強い横風が吹いた場合には、第4プロペラ21-4の揚力を大きくしてマルチコプタ1の姿勢制御を行う必要がある。しかしながら、このとき、第4プロペラ21-4を駆動する第4モータ22-4に供給すべき電力がバッテリ31からモータ22に供給できる電力の上限を超えた場合には、第4プロペラ21-4の揚力が不足してしまうおそれがある。
【0036】
そしてこのように、マルチコプタ1の姿勢制御に必要なプロペラ21の揚力が不足してしまうと、マルチコプタ1の姿勢制御が困難になって、マルチコプタ1の姿勢を良好に保つことができず、マルチコプタ1が安定して飛行できないおそれがある。
【0037】
そこで、本実施形態では、ホバリング時にマルチコプタ1の姿勢を良好に(水平に)保つため(すなわち、マルチコプタ1の傾斜角度をホバリング時の目標角度(例えば、0°)に維持するため)に、制御部33は、ホバリング時にてマルチコプタ1が水平方向に対して傾くおそれがある(すなわち、マルチコプタ1の傾斜角度がホバリング時の目標角度からずれるおそれがある)場合に、エンジン発電ユニット12の出力を平常時よりも上げて特定のモータ22への供給電力を増加させる供給電力増加制御を行う。
【0038】
なお、エンジン発電ユニット12の出力とは、本開示の「発電部の出力」の一例であり、詳しくはエンジン41の出力である。また、供給電力増加制御は、本開示の「供給電力制御」の一例である。
【0039】
(フローチャートの説明)
具体的には、制御部33は、
図5に示す制御フローチャートに基づく制御を行う。
図5に示すように、制御部33は、各モータ22の指示DUTY値(指示デューティ値)を読み取り(ステップS1)、対向するモータ22の指示DUTY値の差を演算する(ステップS2)。
【0040】
ここで、プロペラ21の回転数は、モータ22に印加する電圧(実効電圧)がデューティ制御により制御されることにより制御される。そして、指示DUTY値は、本開示の「印加電圧」の一例であり、モータ22に印加するように指示された電圧(パルス電圧)のデューティ値(デューティ比の値)である。
【0041】
また、「対向するモータ22」とは、
図6に示すように、マルチコプタ1の中心軸CAを中心にして対向するモータ22であり、さらに言い換えれば、全てのモータ22が配置される位置を繋いで形成される多角形の対角線上にて対向する一対のモータ22である。なお、
図6に示す例では、例えば、第1モータ22-1と第5モータ22-5、および、第2モータ22-2と第6モータ22-6、および、第3モータ22-3と第7モータ22-7、および、第4モータ22-4と第8モータ22-8が、それぞれ、対向するモータ22である。
【0042】
なお、
図6(その他、
図7,10,12,13)において、各モータ22の指示DUTY値を模式的に示しており、マルチコプタ1の中心軸CAの位置にて指示DUTY値=0%であり、そこから外周へ向かって指示DUTY値が大きくなり、最外周の位置にて指示DUTY値=100%となるように示されている。
【0043】
図5の説明に戻って、制御部33は、ステップS2にて演算した指示DUTY値の差が閾値THA以上か否かを判断する(ステップS3)。なお、閾値THAは、例えば60%である。また、閾値THAは、所定の閾値であり、本開示の「所定の電圧差」の一例である。
【0044】
そして、制御部33は、指示DUTY値の差が閾値THA以上でない場合(ステップS3:NO)、すなわち、指示DUTY値の差が閾値THA未満である場合には、エンジン出力を定格出力ROに設定する(ステップS4)。
【0045】
ここで、「エンジン出力」とは、エンジン41の出力であり、すなわち、エンジン41の駆動によりジェネレータ42にて発電する電力に対応するものである。また、「定格出力RO」とは、マルチコプタ1のホバリング時における平常時の出力である。
【0046】
このように、対向するモータ22の指示DUTY値の差が小さい場合には、対向するプロペラ21から発生される揚力の差が小さくなるため、マルチコプタ1が傾くおそれが低い(すなわち、マルチコプタ1の傾斜角度がホバリング時の目標角度からずれるおそれが低い)と考えられる。そのため、制御部33は、エンジン出力を定格出力ROのままとしてマルチコプタ1の姿勢制御を行う。
【0047】
一方、制御部33は、指示DUTY値の差が閾値THA以上である場合(ステップS3:YES)には、対向するどちらかのモータ22の指示DUTY値が閾値THB以上であるか否かを判断する(ステップS5)。なお、閾値THBは、例えば90%である。また、閾値THBは、所定の上限閾値であり、本開示の「所定の上限電圧値」の一例である。
【0048】
このように、指示DUTY値の差が閾値THA以上である場合には、対向するプロペラ21から発生される揚力の差が大きくなるため、マルチコプタ1が傾くおそれが高い(すなわち、マルチコプタ1の傾斜角度がホバリング時の目標角度からずれるおそれが高い)と考えられる。そのため、制御部33は、指示DUTY値の差が閾値THA以上である場合に、マルチコプタ1の姿勢を良好に保つことができないおそれがあると判断して、対向するどちらかのモータ22(例えば、
図6に示す第4モータ22-4と第8モータ22-8のどちらか)の指示DUTY値が閾値THB以上であるか否かを判断する。
【0049】
そして、対向するどちらかのモータ22の指示DUTY値が閾値THB以上でない場合(ステップS5:NO)、すなわち、対向する両方のモータ22の指示DUTY値がいずれも閾値THB未満である場合には、エンジン出力を定格出力ROに設定する(ステップS4)。
【0050】
このように、指示DUTY値の差が閾値THA以上であっても、対向する両方のモータ22の指示DUTY値がいずれも閾値THB未満である場合には、指示DUTY値を制御してマルチコプタ1の姿勢を良好に保つことができると考えられる。そのため、制御部33は、エンジン出力を定格出力ROのままとしてマルチコプタ1の姿勢制御を行う。
【0051】
一方、対向するどちらかのモータ22の指示DUTY値が閾値THB以上である場合(ステップS5:YES)には、エンジン出力を非常時出力EOHに設定して(ステップS6)、指示DUTY値が閾値THB以上のモータ22への供給電力を増加させる(ステップS7)。なお、「非常時出力EOH」は、定格出力ROよりも高い出力である。
【0052】
例えば、
図6に示すように、対向する第4モータ22-4と第8モータ22-8のうち第4モータ22-4の指示DUTY値が閾値THB以上である場合には、エンジン出力を非常時出力EOHに設定して、第4モータ22-4への供給電力を増加させる。
【0053】
このようにして、本実施形態では、制御部33は、エンジン出力を平常時よりも上げて特定のモータ22への供給電力を増加させる供給電力増加制御を行う。詳しくは、制御部33は、少なくとも1つのモータ22の指示DUTY値が閾値THB以上である場合に、供給電力制御として、エンジン出力を平常時よりも上げて、指示DUTY値が閾値THB以上であるモータ22への供給電力を増加させる供給電力増加制御を行う。
【0054】
図5の説明に戻って、制御部33は、供給電力を増加したモータ22の指示DUTY値が閾値THB未満になるまで、指示DUTY値が閾値THB以上のモータ22への供給電力を増加させる(ステップS8:NO,S7)。
【0055】
例えば、
図7に示すように第4モータ22-4の指示DUTY値が閾値THB未満になるまで、第4モータ22-4への供給電力を増加させる。そして、このようにして、第4モータ22-4への供給電力を増加させて、第4モータ22-4の指示DUTY値を閾値THB未満にする。すなわち、第4モータ22-4への供給電力を増加させて、例えば
図8と
図9に示すように第4モータ22-4へ印加できる電圧の最大値を平常電圧V0から非常時電圧V1に増加させることにより、第4モータ22-4の指示DUTY値(第4モータ22-4に実効電圧Vaを印加するためのデューティ値)を平常時のデューティ値D0から非常時のデューティ値D1(<D0)へ下げる。
【0056】
そして、このようにして第4モータ22-4の指示DUTY値を下げることにより、第4モータ22-4の指示DUTY値についてその最大値(100%)に対して余裕を持たせることができる。そのため、第4モータ22-4の指示DUTY値を調整して第4モータ22-4へ印加する実効電圧Vaを制御することにより、第4モータ22-4に設けられた第4プロペラ21-4の回転数を制御して第4プロペラ21-4の揚力を制御できる。例えば、第4モータ22-4の指示DUTY値を閾値THB未満の範囲内で上げて第4モータ22-4へ印加する実効電圧Vaを高くすることにより、第4プロペラ21-4の回転数を高くして第4プロペラ21-4の揚力を大きくする。このようにして、マルチコプタ1の姿勢制御を行って、マルチコプタ1の姿勢を良好に保つことができる。
【0057】
図5の説明に戻って、制御部33は、供給電力を増加したモータ22の指示DUTY値が閾値THB未満になったら(ステップS8:YES)、エンジン出力を非常時出力EOHから定格出力ROに切替える(ステップS4)。
【0058】
(変形例)
また、変形例として、制御部33は、ステップS7において、全てのモータ22への供給電力を増加させるとしてもよい。これにより、
図10に示すように、全てのモータ22の指示DUTY値を下げて、例えば第4モータ22-4の指示DUTY値を閾値THB未満にしてもよい。
【0059】
なお、
図6,7,10に示す例においては、第4モータ22-4への供給電力を増加させる例を挙げたが、他のモータ22の指示DUTY値が閾値THB以上である場合には、制御部33は、指示DUTY値が閾値THB以上である他のモータ22への供給電力も増加させる。すなわち、制御部33は、マルチコプタ1において少なくとも1つのモータ22の指示DUTY値が閾値THB以上である場合に、指示DUTY値が閾値THB以上であるモータ22または全てのモータ22への供給電力を増加させる供給電力増加制御を行う。
【0060】
以上のような変形例においても、上記の実施形態と同様の効果を奏することが可能である。
【0061】
(本実施形態の作用効果について)
以上のように本実施形態によれば、制御部33は、ホバリング時にてマルチコプタ1が傾くおそれがある場合に、エンジン出力を平常時よりも上げて特定のモータ22または全てのモータ22への供給電力を増加させる供給電力増加制御を行う。
【0062】
このようにして、ホバリング時にてマルチコプタ1が傾くおそれがある場合に、エンジン出力を平常時よりも上げて、特定のモータ22または全てのモータ22への供給電力を増加させる。これにより、バッテリ31からモータ22への電力の供給によりプロペラ21の揚力を所望の大きさに制御できない場合であっても、ジェネレータ42から特定のモータ22または全てのモータ22への電力の供給によって特定のモータ22または全てのモータ22に設けられたプロペラ21の揚力を所望の大きさに制御してマルチコプタ1の傾きを抑制できる。そのため、マルチコプタ1の姿勢制御を行って、マルチコプタ1の姿勢を良好に保つことができる。
【0063】
すなわち、マルチコプタ1の姿勢が不安定であるときに、一時的に特定のモータ22または全てのモータ22への供給電力を増加させることにより、特定のモータ22または全てのモータ22に設けられたプロペラ21の揚力を制御して、マルチコプタ1の姿勢を速やかに安定させることができる。そして、このようにして容易な制御でマルチコプタ1の姿勢を良好に保つことができる。
【0064】
なお、マルチコプタ1の姿勢を安定させる制御において、一時的に特定のモータ22への供給電力を増加させる制御を行うことは、一時的に全てのモータ22への供給電力を増加させる制御を行うことと比較して、エネルギー消費を低く抑えることができる。
【0065】
また、制御部33は、対向するモータ22の指示DUTY値の差が閾値THA以上である場合であって、少なくとも1つのモータ22の指示DUTY値が閾値THB以上である場合に、供給電力制御として供給電力増加制御を行う。そして、この供給電力増加制御とは、エンジン出力を平常時よりも上げて、指示DUTY値が閾値THB以上であるモータ22、または、全てのモータ22への供給電力を増加させる制御である。
【0066】
このようにして、対向するモータ22の指示DUTY値の差が大きくなった場合において、少なくとも1つのモータ22の指示DUTY値が閾値THB以上である場合に、エンジン出力を平常時よりも上げて、指示DUTY値が閾値THB以上であるモータ22または全てのモータ22への供給電力を増加させる。これにより、指示DUTY値が閾値THB以上であるモータ22の指示DUTY値を下げて閾値THB未満にすることができる。そのため、指示DUTY値を下げて閾値THB未満にしたモータ22の指示DUTY値を調整して当該モータ22に設けられたプロペラ21の揚力を所望の大きさに制御して、マルチコプタ1の姿勢制御を行って、マルチコプタ1の姿勢を良好に保つことができる。
【0067】
〔第2実施形態〕
次に、第2実施形態について説明するが、第1実施形態と同様の内容については説明を省略し、異なった点を中心に述べる。
【0068】
本実施形態では、制御部33は、ホバリング時にてマルチコプタ1が傾くおそれがある場合に、エンジン発電ユニット12の出力を平常時よりも下げて特定のモータ22への供給電力を低減させる供給電力低減制御を行う。なお、供給電力低減制御は、本開示の「供給電力制御」の一例である。
【0069】
(フローチャートの説明)
具体的には、制御部33は、
図11に示す制御フローチャートに基づく制御を行う。
図11に示すように、制御部33は、ステップS102にて演算した指示DUTY値の差が閾値THA以上である場合(ステップS103:YES)には、対向するどちらかのモータ22の指示DUTY値が閾値THC以下であるか否かを判断する(ステップS105)。なお、閾値THCは、例えば30%である。また、閾値THCは、所定の下限閾値であり、本開示の「所定の下限電圧値」の一例である。
【0070】
このように、指示DUTY値の差が閾値THA以上である場合には、マルチコプタ1が傾くおそれが高いと考えられる。そのため、制御部33は、マルチコプタ1の姿勢を良好に保つことができないおそれがあると判断して、対向するどちらかのモータ22(例えば、
図12に示す第2モータ22-2と第6モータ22-6のどちらか、第3モータ22-3と第7モータ22-7のどちらか)の指示DUTY値が閾値THC以下であるか否かを判断する。
【0071】
そして、対向するどちらかのモータ22の指示DUTY値が閾値THC以下でない場合(ステップS105:NO)、すなわち、対向する両方のモータ22の指示DUTY値がいずれも閾値THCよりも大きい場合には、エンジン出力を定格出力ROに設定する(ステップS104)。
【0072】
このように、指示DUTY値の差が閾値THA以上であっても、対向する両方のモータ22の指示DUTY値がいずれも閾値THCよりも大きい場合には、指示DUTY値を制御してマルチコプタ1の姿勢を良好に保つことができると考えられる。そのため、制御部33は、エンジン出力を定格出力ROのままとしてマルチコプタ1の姿勢制御を行う。
【0073】
一方、対向するどちらかのモータ22の指示DUTY値が閾値THC以下である場合(ステップS105:YES)には、バッテリ出力を停止して(ステップS106)、エンジン出力を非常時出力EOLに設定して(ステップS107)、指示DUTY値が閾値THC以下のモータ22への供給電力を低減させる(ステップS108)。
【0074】
なお、「バッテリ出力」とは、バッテリ31からモータ22への電力の供給である。また、「非常時出力EOL」は、定格出力ROよりも低い出力である。
【0075】
例えば、
図12に示すように、対向する第2モータ22-2と第6モータ22-6のうち第6モータ22-6の指示DUTY値が閾値THC以下である場合には、バッテリ出力を停止し、かつ、エンジン出力を非常時出力EOLに設定して、第6モータ22-6への供給電力を低減させる。なお、
図12に示す例では、対向する第3モータ22-3と第7モータ22-7のうち第7モータ22-7の指示DUTY値も閾値THC以下であるので、同様に、第7モータ22-7への供給電力も低減させる。
【0076】
このようにして、本実施形態では、制御部33は、エンジン出力を平常時よりも下げて特定のモータ22への供給電力を低減させる供給電力低減制御を行う。詳しくは、制御部33は、少なくとも1つのモータ22の指示DUTY値が閾値THC以下である場合に、供給電力制御として、エンジン出力を平常時よりも下げて、指示DUTY値が閾値THC以下であるモータ22への供給電力を低減させる供給電力低減制御を行う。さらに、制御部33は、供給電力低減制御を行うときには、バッテリ出力を停止させるバッテリ出力停止制御を行う。
【0077】
図11の説明に戻って、制御部33は、供給電力を低減したモータ22の指示DUTY値が閾値THCよりも大きくなるまで、指示DUTY値が閾値THC以下のモータ22への供給電力を低減させる(ステップS109:NO,S108)。
【0078】
例えば、
図13に示すように第6モータ22-6と第7モータ22-7の指示DUTY値が閾値THCよりも大きくなるまで、第6モータ22-6と第7モータ22-7への供給電力を低減させる。そして、このようにして、第6モータ22-6と第7モータ22-7への供給電力を低減させて、第6モータ22-6と第7モータ22-7の指示DUTY値を閾値THCよりも大きくする。
【0079】
そして、このようにして第6モータ22-6と第7モータ22-7の指示DUTY値を上げることにより、第6モータ22-6と第7モータ22-7の指示DUTY値についてその最小値(0%)に対して余裕を持たせることができる。そのため、第6モータ22-6と第7モータ22-7の指示DUTY値を調整して第6モータ22-6と第7モータ22-7へ印加する実効電圧Vaを制御することにより、第6モータ22-6と第7モータ22-7に設けられた第6プロペラ21-6と第7プロペラ21-7の回転数を制御して第6プロペラ21-6と第7プロペラ21-7の揚力を制御できる。例えば、第6モータ22-6と第7モータ22-7の指示DUTY値を閾値THCよりも大きい範囲内で下げて第6モータ22-6と第7モータ22-7へ印加する実効電圧Vaを下げることにより、第6プロペラ21-6と第7プロペラ21-7の回転数を下げて第6プロペラ21-6と第7プロペラ21-7の揚力を小さくする。このようにして、マルチコプタ1の姿勢制御を行って、マルチコプタ1の姿勢を良好に保つことができる。
【0080】
図11の説明に戻って、制御部33は、供給電力を低減したモータ22の指示DUTY値が閾値THCよりも大きくなったら(ステップS109:YES)、バッテリ出力を再開して(ステップS110)、エンジン出力を非常時出力EOLから定格出力ROに切替える(ステップS104)。
【0081】
(変形例)
また、変形例として、制御部33は、ステップS108において、全てのモータ22への供給電力を低減させるとしてもよい。これにより、全てのモータ22の指示DUTY値を上げて、例えば第6モータ22-6と第7モータ22-7の指示DUTY値を閾値THCよりも大きくしてもよい。
【0082】
なお、
図12,13に示す例においては、第6モータ22-6と第7モータ22-7への供給電力を低減させる例を挙げたが、他のモータ22の指示DUTY値が閾値THC以下である場合には、制御部33は、指示DUTY値が閾値THC以下である他のモータ22への供給電力も低減させる。すなわち、制御部33は、マルチコプタ1において少なくとも1つのモータ22の指示DUTY値が閾値THC以下である場合に、指示DUTY値が閾値THC以下であるモータ22または全てのモータ22への供給電力を低減させる供給電力低減制御を行う。
【0083】
以上のような変形例においても、上記の実施形態と同様の効果を奏することが可能である。
【0084】
(本実施形態の作用効果について)
以上のように本実施形態によれば、制御部33は、ホバリング時にてマルチコプタ1が傾くおそれがある場合に、エンジン出力を平常時よりも下げて特定のモータ22または全てのモータ22への供給電力を低減させる供給電力低減制御を行う。
【0085】
このようにして、ホバリング時にてマルチコプタ1が傾くおそれがある場合に、エンジン出力を平常時よりも下げて、特定のモータ22または全てのモータ22への供給電力を低減させる。これにより、バッテリ31からモータ22への電力の供給によりプロペラ21の揚力を所望の大きさに制御できない場合であっても、ジェネレータ42から特定のモータ22または全てのモータ22への電力の供給によって特定のモータ22または全てのモータ22に設けられたプロペラ21の揚力を所望の大きさに制御してマルチコプタ1の傾きを抑制できる。そのため、マルチコプタ1の姿勢制御を行って、マルチコプタ1の姿勢を良好に保つことができる。
【0086】
すなわち、マルチコプタ1の姿勢が不安定であるときに、一時的に特定のモータ22または全てのモータ22への供給電力を低減させることにより、特定のモータ22または全てのモータ22に設けられたプロペラ21の揚力を制御して、マルチコプタ1の姿勢を速やかに安定させることができる。そして、このようにして容易な制御でマルチコプタ1の姿勢を良好に保つことができる。
【0087】
また、制御部33は、対向するモータ22の指示DUTY値の差が閾値THA以上である場合であって、少なくとも1つのモータ22の指示DUTY値が閾値THC以下である場合に、供給電力制御として供給電力低減制御を行う。そして、この供給電力低減制御とは、エンジン出力を平常時よりも下げて、指示DUTY値が閾値THC以下であるモータ22、または、全てのモータ22への供給電力を低減させる制御である。
【0088】
このようにして、対向するモータ22の指示DUTY値の差が大きくなった場合において、少なくとも1つのモータ22の指示DUTY値が閾値THC以下である場合に、エンジン出力を平常時よりも下げて、指示DUTY値が閾値THC以下であるモータ22または全てのモータ22への供給電力を低減させる。これにより、指示DUTY値が閾値THC以下であるモータ22の指示DUTY値を上げて閾値THCよりも大きくすることができる。そのため、指示DUTY値を上げて閾値THCよりも大きくしたモータ22の指示DUTY値を調整して当該モータ22に設けられたプロペラ21の揚力を所望の大きさに制御して、マルチコプタ1の姿勢制御を行って、マルチコプタ1の姿勢を良好に保つことができる。
【0089】
また、エンジン出力を低減させるので、エンジン41を駆動するために必要な燃料タンク32の燃料の消費を抑制できる。そのため、燃費良くマルチコプタ1の姿勢を良好に保つことができる。
【0090】
また、制御部33は、供給電力低減制御を行うときには、バッテリ31からモータ22への電力の供給を停止させるバッテリ出力停止制御を行う。
【0091】
このようにして、バッテリ31からモータ22への電力の供給を停止させるので、バッテリ31の充電消費量を減らすことができる。そのため、バッテリ31に充電する電力を発電するために必要なエンジン出力を小さくできるので、エンジン41を駆動するために必要な燃料の消費を抑制できる。したがって、より効率的に、燃費良くマルチコプタ1の姿勢を良好に保つことができる。
【0092】
〔第3実施形態〕
次に、第3実施形態について説明するが、第1,2実施形態と同様の内容については説明を省略し、異なった点を中心に述べる。
【0093】
本実施形態では、制御部33は、燃料残量が多い場合に供給電力増加制御を行い、燃料残量が少ない場合に供給電力低減制御を行う。
【0094】
(フローチャートの説明)
具体的には、制御部33は、
図14に示す制御フローチャートに基づく制御を行う。
図14に示すように、対向するどちらかのモータ22の指示DUTY値が閾値THB以上である場合(ステップS205:YES)には、燃料残量が所定量PAM以上であるか否かを判断する(ステップS206)。なお、「燃料残量」とは、燃料タンク32に残っている燃料の量である。
【0095】
そして、燃料残量が所定量PAM以上である場合(ステップS206:YES)には、エンジン出力を非常時出力EOHに設定して(ステップS207)、指示DUTY値が閾値THB以上のモータ22への供給電力を増加させる(ステップS208)。なお、所定量PAMは、例えば、燃料タンク32の燃料が満タンであるときを100%の量とするときに、20%に相当する量である。また、所定量PAMは、本開示の「所定の燃料残量」の一例である。
【0096】
そして、供給電力を増加させたモータ22の指示DUTY値が閾値THB未満になるまで、当該モータ22への供給電力を増加させる(ステップS209:NO,S208)。そして、供給電力を増加させたモータ22の指示DUTY値が閾値THB未満になったら(ステップS209:YES)、エンジン出力を非常時出力EOHから定格出力ROに切替える(ステップS204)。
【0097】
一方、燃料残量が所定量PAM未満である場合(ステップS206:NO)には、対向するどちらかのモータ22の指示DUTY値が閾値THC以下であるか否かを判断する(ステップS210)。
【0098】
そして、対向するどちらかのモータ22の指示DUTY値が閾値THC以下である場合(ステップS210:YES)には、バッテリ出力を停止して(ステップS211)、エンジン出力を非常時出力EOLに設定して(ステップS212)、指示DUTY値が閾値THC以下のモータ22への供給電力を低減させる(ステップS213)。
【0099】
そして、制御部33は、供給電力を低減したモータ22の指示DUTY値が閾値THCよりも大きくなるまで、指示DUTY値が閾値THC以下のモータ22への供給電力を低減させる(ステップS214:NO,S213)。
【0100】
その後、制御部33は、供給電力を低減したモータ22の指示DUTY値が閾値THCよりも大きくなったら(ステップS214:YES)、バッテリ出力を再開して(ステップS215)、エンジン出力を非常時出力EOLから定格出力ROに切替える(ステップS204)。
【0101】
(本実施形態の作用効果について)
以上のように本実施形態によれば、制御部33は、燃料タンク32の燃料の残量が所定量PAM以上である場合に供給電力増加制御を行い、燃料タンク32の燃料の残量が所定量PAM未満である場合に供給電力低減制御を行う。
【0102】
このようにして、燃料タンク32の燃料の残量が多いときにエンジン出力を平常時よりも上げて、モータ22への供給電力を増加させる。これにより、エンジン出力を上げることにより燃料タンク32の燃料の消費量が増えても、燃料タンク32の燃料が枯渇することを防ぐことができる。また、燃料タンク32の燃料の残量が少ないときにエンジン出力を平常時よりも下げて、モータ22への供給電力を低減させる。これにより、燃料タンク32の燃料の消費量を減らして、燃料タンク32の燃料が枯渇することを防ぐことができる。
【0103】
〔第4実施形態〕
次に、第4実施形態について説明するが、第1~3実施形態と同様の内容については説明を省略し、異なった点を中心に述べる。
【0104】
本実施形態では、マルチコプタ1の姿勢を良好に保てなかった(すなわち、マルチコプタ1の傾斜角度がホバリング時の目標角度からずれた)場合に、マルチコプタ1の姿勢を良好な姿勢に戻す(すなわち、マルチコプタ1の傾斜角度をホバリング時の目標角度に戻す)制御を行う。詳しくは、本実施形態では、第1,3実施形態においてホバリング時にてマルチコプタ1が傾くおそれがある場合に供給電力制御として供給電力増加制御を行った(
図5,14参照)にも関わらず、マルチコプタ1が傾いた場合には、供給電力制御として供給電力低減制御を行う。
【0105】
(フローチャートの説明)
具体的には、制御部33は、
図15に示す制御フローチャートに基づく制御を行う。
図15に示すように、制御部33は、角度センサであるジャイロセンサ61(
図2参照)からマルチコプタ1の傾斜角度を取得し(ステップS301)、マルチコプタ1の傾斜角度が所定角度以上であるか否かを判断する(ステップS302)。
【0106】
そして、制御部33は、マルチコプタ1の傾斜角度が所定角度以上である場合(ステップS302:YES)には、ジャイロセンサ61からの情報に基づいて高さの高いモータ22を特定し(ステップS303)、バッテリ出力を停止してエンジン出力を非常時出力EOLに設定し(ステップS304)、特定したモータ22への供給電力を低減する(ステップS305)。なお、高さの高いモータ22とは、他のモータ22と比べて高い位置にあるモータ22であり、例えば、最も低い位置にあるモータ22に対して所定値以上高い位置にあるモータ22である。
【0107】
このようにして、制御部33は、ホバリング時にてマルチコプタ1が傾いた(すなわち、マルチコプタ1の傾斜角度がホバリング時の目標角度(例えば、0°)からずれた)場合に、供給電力低減制御を行う。
【0108】
次に、制御部33は、マルチコプタ1の傾斜角度が所定角度未満であるか否かを判断する(ステップS306)。そして、制御部33は、マルチコプタ1の傾斜角度が所定角度未満である場合(ステップS306:YES)にはエンジン出力を定格出力ROに設定し(ステップS307)、一方、マルチコプタ1の傾斜角度が所定角度以上である場合(ステップS306:NO)には再びステップS303の処理を行う。
【0109】
なお、制御部33は、ステップS302において傾斜角度が所定角度未満である場合(ステップS302:NO)には、そのまま、エンジン出力を定格出力ROにする(ステップS307)。
【0110】
(本実施形態の作用効果について)
以上のように本実施形態によれば、ホバリング時にてマルチコプタ1が傾いた場合に、供給電力制御として、特定のモータ22(すなわち、高さの高いモータ22)への供給電力を低減させる供給電力低減制御を行う。
【0111】
これにより、特定のモータ22に設けられたプロペラ21の揚力を所望の大きさに制御して、マルチコプタ1の姿勢を良好な姿勢(すなわち、ホバリングの姿勢)に戻すことができる。そのため、第1~3実施形態の制御を行ってもマルチコプタ1の姿勢を良好に保てなかった場合であっても、本実施形態の制御を行うことにより、マルチコプタ1の姿勢を良好な姿勢に戻すことができる。なお、制御部33は、第1~3実施形態の制御を行わずに、本実施形態の制御を行ってもよい。
【0112】
そして、本実施形態では、制御部33は、ホバリング時にてマルチコプタ1が傾くおそれがある場合に供給電力制御として供給電力増加制御を行ったときに、マルチコプタ1が傾いた場合には、供給電力制御として供給電力低減制御を行う。
【0113】
このようにして、ホバリング時にてマルチコプタ1が傾いた場合に、ホバリング時にてマルチコプタ1が傾くおそれがある場合に行った供給電力制御とは異なる供給電力制御を行う。これにより、より状況に適した姿勢制御を行って、より確実に、マルチコプタ1の姿勢を良好な姿勢に戻すことができる。
【0114】
(本実施形態の別例)
本実施形態では、特定した高さの高いモータ22への供給電力を低減させているが、特定したモータ22に加え隣接するモータ22への供給電力を低減させてもよい。
【0115】
〔第5実施形態〕
次に、第5実施形態について説明するが、第1~4実施形態と同様の内容については説明を省略し、異なった点を中心に述べる。
【0116】
本実施形態では、第4実施形態と同様に、マルチコプタ1の姿勢を良好に保てなかった場合に、マルチコプタ1の姿勢を良好な姿勢に戻す制御を行う。詳しくは、本実施形態では、第2,3実施形態においてホバリング時にてマルチコプタ1が傾くおそれがある場合に供給電力制御として供給電力低減制御を行った(
図11,14参照)にも関わらず、マルチコプタ1が傾いた場合には、供給電力制御として供給電力増加制御を行う。
【0117】
(フローチャートの説明)
具体的には、制御部33は、
図16に示す制御フローチャートに基づく制御を行う。
図16に示すように、第4実施形態と異なる点として、制御部33は、マルチコプタ1の傾斜角度が所定角度以上である場合(ステップS402:YES)には、ジャイロセンサ61からの情報に基づいて高さの低いモータ22を特定し(ステップS403)、エンジン出力を非常時出力EOHに設定し(ステップS404)、特定したモータ22への供給電力を増加させる(ステップS405)。なお、高さの低いモータ22とは、他のモータ22と比べて低い位置にあるモータ22であり、例えば、最も高い位置にあるモータ22に対して所定値以上低い位置にあるモータ22である。
【0118】
このようにして、制御部33は、ホバリング時にてマルチコプタ1が傾いた場合に、供給電力増加制御を行う。
【0119】
(本実施形態の作用効果について)
以上のように本実施形態によれば、ホバリング時にてマルチコプタ1が傾いた場合に、供給電力制御として、特定のモータ22(すなわち、高さの低いモータ22)への供給電力を増加させる供給電力増加制御を行う。
【0120】
これにより、特定のモータ22に設けられたプロペラ21の揚力を所望の大きさに制御して、マルチコプタ1の姿勢を良好な姿勢(すなわち、ホバリングの姿勢)に戻すことができる。そのため、第1~3実施形態の制御を行ってもマルチコプタ1の姿勢を良好に保てなかった場合であっても、本実施形態を行うことにより、マルチコプタ1の姿勢を良好な姿勢に戻すことができる。なお、制御部33は、第1~3実施形態の制御を行わずに、本実施形態の制御を行ってもよい。
【0121】
そして、本実施形態では、制御部33は、ホバリング時にてマルチコプタ1が傾くおそれがある場合に供給電力制御として供給電力低減制御を行ったときに、マルチコプタ1が傾いた場合には、供給電力制御として供給電力増加制御を行う。
【0122】
このようにして、ホバリング時にてマルチコプタ1が傾いた場合に、ホバリング時にてマルチコプタ1が傾くおそれがある場合に行った供給電力制御とは異なる供給電力制御を行う。これにより、より状況に適した姿勢制御を行って、より確実に、マルチコプタ1の姿勢を良好な姿勢に戻すことができる。
【0123】
(本実施形態の別例)
本実施形態では、特定した高さの低いモータ22への供給電力を増加させているが、特定したモータ22に加え隣接するモータ22への供給電力を増加させてもよい。
【0124】
なお、制御部33は、第4実施形態と第5実施形態の両方の制御を行ってもよい。
【0125】
なお、上記した実施の形態は単なる例示にすぎず、本開示を何ら限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることはもちろんである。
【0126】
例えば、供給電力増加制御と供給電力低減制御の使い分けについて、マルチコプタ1の高度(以下、単に「高度」という。)を判断基準に含めてもよい。具体的には、制御部33は、高度が所定高度未満である場合には供給電力増加制御を行い、高度が所定高度以上である場合には供給電力低減制御を行ってもよい。一般的に高度が高いと風などの外乱が大きくなることから、供給電力低減制御を行うことで、バランスを保ちながらマルチコプタ1の高度を下げることができ、外乱の影響が少ない環境にマルチコプタ1を安全に復帰させることができる。一方で、高度が所定高度未満であるにも関わらず、マルチコプタ1のバランスが大きく崩れた場合には、マルチコプタ1の高度が多少高くなったとしても供給電力増加制御を行ってマルチコプタ1の姿勢を安定させることに注力する必要がある。
【0127】
なお、上記の説明では、マルチコプタ1の傾斜角度が目標角度からずれるおそれがある(または、ずれた)場合として、ホバリング時にてマルチコプタ1が傾くおそれがある(または、傾いた)場合を一例に挙げたが、その他、マルチコプタ1が移動中にマルチコプタ1の傾斜角度が目標角度からずれるおそれがある(または、ずれた)場合も一例に挙げることもできる。
【0128】
また、本開示のマルチコプタは、エタノール燃料やLPガス、天然ガスなどを燃料としたエンジンや、ディーゼルエンジンなどを搭載したマルチコプタ(ハイブリッドドローン)にも適用できる。
【0129】
また、本開示のマルチコプタは、シリーズハイブリッドシステムが構成されているマルチコプタに限定されず、それ以外のハイブリッドシステムが構成されているマルチコプタや、エンジン動力で動作するドローンにも適用可能である。
【0130】
また、本開示のマルチコプタは、燃料電池システムを搭載したマルチコプタ(ハイブリッドドローン)にも適用できる。このとき、燃料電池システムは、燃料と酸化剤により発電する燃料電池と、燃料電池に燃料を供給するために駆動する燃料供給部(燃料噴射弁(インジェクタ)など)と、燃料電池で発電した電力を充放電する充放電部などを有する。そして、燃料電池が「発電部」に相当し、燃料供給部が「駆動部」に相当し、充放電部が「バッテリ」に相当する。
【0131】
また、本開示のマルチコプタは、エンジンなどの駆動部を有さないマルチコプタにも適用できる。このとき、発電部として、例えば、太陽光発電部や風力発電部などが考えられる。
【符号の説明】
【0132】
1 マルチコプタ
11 機体
12 エンジン発電ユニット
21 プロペラ(ロータ)
22 モータ
31 バッテリ
32 燃料タンク
33 制御部
41 エンジン
42 ジェネレータ(発電機)
61 ジャイロセンサ
CA (マルチコプタの)中心軸
THA 閾値
THB 閾値
THC 閾値
RO 定格出力
EOH 非常時出力
EOL 非常時出力
PAM 所定量