(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134841
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】非外傷性スペーサを備えたステント
(51)【国際特許分類】
A61F 2/848 20130101AFI20230920BHJP
A61F 2/86 20130101ALI20230920BHJP
A61F 2/94 20130101ALI20230920BHJP
【FI】
A61F2/848
A61F2/86
A61F2/94
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023123348
(22)【出願日】2023-07-28
(62)【分割の表示】P 2021195995の分割
【原出願日】2018-10-24
(31)【優先権主張番号】62/576,890
(32)【優先日】2017-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】フォラン、マーティン ジー.
(57)【要約】 (修正有)
【課題】非外傷性スペーサ部材を有する埋込み型ステントを提供する。
【解決手段】ステント10は、1つ以上の織り合わされたワイヤから形成された管状体を含む。管状体は、第1の開放端と第2の開放端の両端と、両端の間に延びるルーメンとを有する。ステントは、第1の解放端に隣接して配置された第1のアンカー部材26と、第2の開放端に隣接して配置された第2のアンカー部材28とを含み、第1,第2のアンカー部材はそれぞれ管状体から径方向外方に延び、第1,第2のアンカー部材はそれぞれ第1のアンカー部材と第2のアンカー部材の間に配置された管状体20の外径よりも大きい外径を有する。複数のスペーサ部材30が第1の開放端の周囲に配置され、第1の開放端を越えて長手方向に延び、引張力がスペーサ部材に加えられた時、管状体の外径は縮小しない。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のワイヤ交差部を画定する1つ以上の織り合わされたワイヤから形成された管状体であって、第1の開放端と、前記第1の開放端に対向する第2の開放端と、前記第1、第2の開放端の間に延びるルーメンとを有する前記管状体と、
前記第1の開放端に隣接して配置された第1のアンカー部材、および前記第2の開放端に隣接して配置された第2のアンカー部材であって、前記第1のアンカー部材および前記第2のアンカー部材は、前記管状体から径方向外方に延びて、前記第1のアンカー部材と前記第2のアンカー部材の間に配置された前記管状体の外径よりも大きな外径を有する、前記第1のアンカー部材および前記第2のアンカー部材と、
前記第1の開放端の周囲に配置されて、前記第1の開放端を超えて長手方向に延びる複数のスペーサ部材であって、前記複数のワイヤ交差部のうちの1つ以上に取り付けられている前記複数のスペーサ部材と、
を備え、
前記スペーサ部材に張引力が付与された時、前記管状体の外径は、収縮されないステント。
【請求項2】
前記スペーサ部材はそれぞれ、前記管状体の一部に沿って前記第2の開放端に向かって延びる第1の脚及び第2の脚を有する、請求項1に記載のステント。
【請求項3】
前記スペーサ部材は前記管状体の外径よりも径方向外方に延びる、請求項1または2に記載のステント。
【請求項4】
前記スペーサ部材はそれぞれ、単一のワイヤループから形成される、請求項1~3のいずれか一項に記載のステント。
【請求項5】
前記スペーサ部材は、前記管状体とは別体で形成されて、前記管状体の内壁に取り付けられる、請求項1~4のいずれか一項に記載のステント。
【請求項6】
前記スペーサ部材は前記管状体と織り合わされている、請求項1~4のいずれか一項に記載のステント。
【請求項7】
前記スペーサ部材は管状体よりも可撓性が小さい、請求項1~6のいずれか一項に記載のステント。
【請求項8】
前記スペーサ部材は、第1の長さを有する第1のグループのスペーサ部材と、第1の長さよりも短い第2の長さを有する第2のグループのスペーサ部材とを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のステント。
【請求項9】
前記第1のグループのスペーサ部材は、前記第2のグループのスペーサ部材よりも可撓性が大きい、請求項8に記載のステント。
【請求項10】
前記管状体、前記第1,第2のアンカー部材、ならびに前記スペーサ部材の全体にわたって延びるカバーをさらに備える、請求項1~9のいずれか一項に記載のステント。
【請求項11】
少なくとも1つの前記スペーサ部材は、その長さに沿って可変の可撓性を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載のステント。
【請求項12】
前記少なくとも1つのスペーサ部材は、前記管状体に隣接する第1の領域で第1の厚さと、前記管状体から最も離れて配置された第2の領域で第2の厚さとを有するテーパが付いたワイヤから形成される、請求項11に記載のステント。
【請求項13】
前記第2の厚さは前記第1の厚さよりも小さいため、前記第2の領域においてより大きな可撓性を有する、請求項12に記載のステント。
【請求項14】
前記管状体は、前記第1の開放端と第2の開放端との間に延びる長手方向軸を形成し、前記第1,第2のアンカー部材は、前記長手方向軸に対して直交して延びる、請求項1~13のいずれか一項に記載のステント。
【請求項15】
前記第2の開放端に配置された回収要素をさらに備える、請求項1~14のいずれか一項に記載のステント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステントを埋め込むための装置、方法、およびシステムに関する。より詳細には、本発明は、非外傷性スペーサ部材を有する埋込み型ステントに関する。
【背景技術】
【0002】
管腔内プロテーゼは、体内の管腔の治療に使用される医療装置である。様々な血管の疾患の修復および/または治療に使用される管腔内プロテーゼの1つのタイプは、ステントである。ステントは、生体適合性材料で形成された一般に長手方向の管状装置であり、体内のさまざまなルーメンを開いて支持するのに有用である。例えば、ステントは、血管系、泌尿生殖器管、胃腸管、食道、気管/気管支および胆管、ならびに体内の他の様々な用途で使用することができる。
【0003】
ルーメンに隣接する金属製のステントは、膵液の貯留を排出するためや、胆管や胆嚢の直接的な排液路を設けるためにも使用される。金属製のステントを嚢胞の壁に隣接して配置すると、排液により嚢胞の体積が減少してステントの遠位面と嚢胞の壁とが接触するため急性出血を生じることがある。多端端子状尖端などのステント端では、ステントの端部と嚢胞の壁との間における反復的な相互作用が関与し得る。したがって、ステントなどの管腔内プロテーゼが排液に使用される場合には、この組織の相互作用を抑制または除去して出血をなくすことが依然必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、一体型スペーサ機構を有するステント、例えば編組ステントなどの様々な実施形態に関する。
第1の例示のステントは、1つ以上の織り合わされたワイヤで形成され、第1の開放端と第2の開放端の両端部と、両端部間に延びるルーメンとを有する管状体であって、第1の開放端と第2の開放端との間に延びる長手方向軸を画定する管状体と、第1の開放端に隣接して配置された第1のアンカー部材と第2の開放端に隣接して配置された第2のアンカー部材であって、それぞれ管状体から径方向外方に延び、第1のアンカー部材と第2のアンカー部材との間に配置された管状体の外径よりも大きな外形を有する第1のアンカー部材と第2のアンカー部材と、第1の開放端の周囲に配置され第1の開放端を超えて長手方向に延びる複数のスペーサ部材とを備え、スペーサ部材に引張力が付与された時、管状体の外径は縮小されない。
【0005】
上記例のいずれか1つに代替的にまたは追加的に、スペーサ部材はそれぞれ、管状体の一部に沿って第2の開放端に向かって延びる第1の脚と第2の脚とを有する。
上記例のいずれか1つに代替的にまたは追加的に、スペーサ部材は、管状体の外径を超えて径方向外方に延びる。
【0006】
上記例のいずれか1つに代替的にまたは追加的に、スペーサ部材はそれぞれ、単一のワイヤループから形成される。
上記例のいずれか1つに代替的にまたは追加的に、スペーサ部材は、管状体とは別個に形成されて管状体の内壁に取り付けられる。
【0007】
上記の例のいずれか1つに代替的にまたは追加的に、スペーサ部材は、管状体に織り交ぜられる。
上記例のいずれか1つに代替的にまたは追加的に、スペーサ部材は、管状体よりも可撓性が小さい。
【0008】
上記例のいずれか1つに代替的にまたは追加的に、複数のスペーサ部材は、第1の長さを有する第1のグループのスペーサ部材と、第1の長さより短い第2の長さを有する第2のグループのスペーサ部材とを含む。
【0009】
上記例のいずれか1つに代替的にまたは追加的に、第1のグループのスペーサ部材は、第2のグループのスペーサ部材よりも可撓性が大きい。
上記例のいずれか1つに代替的にまたは追加的に、ステントは、管状体、第1および第2のアンカー部材、ならびに複数のスペーサ部材の全体にわたって延びるカバーをさらに含んでもよい。
【0010】
上記例のいずれか1つに代替的にまたは追加的に、少なくとも1つのスペーサ部材は、その長さに沿って可変の可撓性を有する。
上記例のいずれか1つに代替的にまたは追加的に、少なくとも1つのスペーサ部材は、管状体に隣接する第1の領域に第1の厚さと、管状体から最も遠くに配置された第2の領域に第2の厚さとを有するテーパ付きのワイヤで形成される。
【0011】
上記例のいずれか1つに代替的にまたは追加的に、第2の厚さは第1の厚さよりも小さいため、第2の領域の柔軟性はより大きい。
上記の例のいずれか1つに代替的にまたは追加的に、第1および第2のアンカー部材は、長手方向軸に直交して延びる。
【0012】
上記例のいずれか1つに代替的にまたは追加的に、ステントは、第2の開放端に配置された回収要素をさらに含み得る。
別例のステントは、1つ以上の織り合わされたワイヤで形成され、第1の開放端と第2の開放端の両端部と、両端部間に延びるルーメンとを有する管状体であって、第1の開放端と第2の開放端との間に延びる長手方向軸を画定する管状体と、第1の開放端の周囲に配置されて管状体の外径を超えて径方向外方に延びる第1のグループのスペーサ部材であって、第1の長さを有する第1のグループのスペーサ部材と、第1の開放端の周囲に配置されて第1の開放端を超えて長手方向に延びる第2のグループのスペーサ部材であって、第1の長さよりも短い第2の長さを有する第2のスペーサ部材を備え、第1および/または第2のスペーサ部材に引張力を付与した時、管状体の外径は縮小されない。
【0013】
上記例のいずれか1つに代替的にまたは追加的に、第1の開放端に隣接して配置された第1のアンカー部材と、第2の開放端に隣接して配置された第2のアンカー部材と、第1のアンカー部材および第2のアンカー部材はそれぞれ、管状体から径方向外方に延び、第1のアンカー部材および第2のアンカー部材はそれぞれ、第1のアンカー部材と第2のアンカー部材との間に配置された管状体の外径よりも大きい外径を有する。
【0014】
上記例のいずれか1つに代替的にまたは追加的に、第1のグループのスペーサ部材は、第2のグループのスペーサ部材よりも可撓性が大きい。
上記例のいずれか1つに代替的にまたは追加的に、第1または第2のグループのスペーサ部材のうちの少なくとも1つのスペーサ部材は、管状体に隣接する第1の領域に第1の厚さを有し、管状体から最も離れた第2の領域に第2の厚さを有するテーパが付いたワイヤで形成される。第2の厚さは、第1の厚さよりも小さいため、第2の領域でより可撓性が大きくなっている。
【0015】
別例は、嚢胞内に配置されたステントの第1の開放端と、嚢胞の外側に配置されたステントの第2の開放端とを備える、組織の壁内にステントを埋め込む工程を含む嚢胞を排液する方法であって、ステントは、1つ以上の編み合わされたワイヤで形成され、管状体は、第1の開放端と第2の開放端との間に延びるルーメンを形成し、ステントは、第1の開放端の周囲に配置された第1の開放端を超えて長手方向に延びる複数のスペーサ部材を含み、ステントのルーメンを介して嚢胞から流体を排出し、嚢胞は排液されるにつれて、嚢胞の壁は複数のスペーサ部材の1つ以上に接触するようになり、複数のスペーサ部材は、嚢胞の壁がステントの第1の開放端に接触することを防止する。
【0016】
いくつかの実施形態についての上記概要は、開示する各実施形態、または本開示の全ての実施態様を説明することを意図したものではない。以下の図面および詳細な説明は上記実施形態のいくつかをより詳細に例示する。
【0017】
図面は、必ずしも縮尺通りではなく、類似の参照符号は、異なる図面において類似する構成要素を示す。図面は、例示することを目的として、限定することを目的とすることなく、本願の様々な実施形態を示す。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】嚢胞の壁に隣接して配置された従来のステントの側面図。
【
図2】嚢胞の壁に隣接する、本開示の実施形態に係る中空状管状ステントの側面図。
【
図4】本開示の別の実施形態に係るステントの端面図。
【
図5】組織構造内に配置された
図2のステントの端部を示す斜視図。
【
図6A】標的組織構造に埋め込まれた本発明の別の実施形態にかかるステントの部分断側面図。
【
図6B】標的組織構造に埋め込まれた本発明の別の実施形態にかかるステントを示す部分断側面図。
【
図7】本発明のさらに別の実施形態に係るステントを示す側面図。
【
図8】組織構造内における
図7のステントの端部を示す斜視図。
【
図9】本発明の別の実施形態に係るステントを示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本開示は、様々な変更形態および代替形態が可能であるが、そのうちの特別なものが例示することを目的として図に示され詳細に説明されている。しかしながら、その意図は、本発明を記載された特定の実施形態に限定することではないことを理解されたい。逆に、その意図は、本開示の趣旨および範囲に含まれるすべての変更物、均等物、および代替物を網羅することにある。
【0020】
以下の定義された用語については、請求項または本明細書の他の場所において異なる定義が与えられない限り、これらの定義が適用されるものとする。
本明細書では、すべての数値は明示されているかどうかにかかわらず、「約」という用語で修飾されることが想定されている。「約」という用語は、一般に、当業者が列挙された値と同等である(すなわち、同じ機能または結果を有する)と見なすであろう数置範囲を指す。多くの場合において、「約」という用語には、最も近い有効数字に四捨五入される複数の数字が含まれ得る。
【0021】
終点による数値範囲の記載には、その範囲内のすべての数値が含まれる(例えば、1~5には、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、および5が含まれる)。
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されているように、単数形「ひとつ(a)」、「ひとつ(an)」、および「その(the)」は、内容が明らかに別のことを指示しない限り、複数の指示対象を含む。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、「または(or)」という用語は、内容が明確に他のことを指示しない限り、「および/または(and/or)」を含む意味で一般に使用される。
【0022】
本明細書における「実施形態」、「いくつかの実施形態」、「別の実施形態」などについての記載は、記載された実施形態が1つ以上の特定の特徴、構造、および/または特性を含み得ることを示すことに留意しなければならない。しかしながら、そのような記載は、すべての実施形態が特定の特徴、構造、および/または特性を含むことを必ずしも意味していない。さらに、特定の特徴、構造、および/または特性が一実施形態に関連して説明されている場合には、そのような特徴、構造、および/または特性は、明示されているかどうかにかかわらず、明らかに反対のことが述べられていない限り、別の実施形態に関連して使用され得ることを理解されたい。
【0023】
以下の詳細な説明は、図面を参照して読まれたい。異なる図面における類似の構造には同じ番号が付けられている。必ずしも縮尺通りではない図面は、例示的な実施形態を示すものであって、本発明の範囲を限定することは意図されていない。
【0024】
図1は、嚢胞の壁40などの組織の壁に隣接して配置された従来の織成ステント5を示す。ステントのルーメンを介した排液により嚢胞の体積が減少すると、ステント5の末端7は嚢胞の壁4に接触して、出血や血管の感染を伴う組織の刺激を引き起こす可能性がある。さらに、装置の端部と組織の壁との早すぎる接触は、装置のルーメンの遮断を招き、嚢胞液の残留ポケットを効果的に排液できないままになる可能性がある。
【0025】
図2は、管状体20と、管状体20の端部を越えて延びる複数の非外傷性スペーサ部材30とを含むステント10を示す。管状体20は、開放された第1の端部22と、開放された第2の端部24と、両端部の間に延びるルーメンとを備える中空状の管状構造体である。管状体20は、1つまたは複数のワイヤ15で形成され得る。ワイヤ15は、織成され、編組され、巻かれ、編まれ、およびそれらの組みあわせにより、管状体20を形成する。
【0026】
ステント10は、例えば、ニチノール、またはニチノールを含有する材料、または他のニッケル-チタン合金などの金属材料の複数のワイヤ15を含み得る。いくつかの場合には、ワイヤ15は、例えば、約0.011インチ(約0.28mm)の直径を有し得る。
図2に示すワイヤ15の数および直径は、限定ではなく、同じであっても異なっていてもよく、別の数のワイヤ15や別の直径のワイヤを好適に使用し得る。望ましくは、例えば、約10~約36までの偶数の数のワイヤ15を使用し得る。
【0027】
望ましくは、ワイヤ15はニチノール、ステンレス鋼、エルジロイ(登録商標)などのコバルトベースの合金、白金、金、チタン、タンタル、ニオブ、ポリマー材料およびそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない任意の好適な埋込み可能な材料から形成される。ポリマーのステント材料の有用であり且つ限定的でない例には、ポリ(L-ラクチド)(PLLA)、ポリ(D、L-ラクチド)(PLA)、ポリ(グリコリド)(PGA)、ポリ(L-ラクチド-co-D、L-ラクチド)(PLLA/PLA)、ポリ(L-ラクチド-co-グリコリド)(PLLA/PGA)、ポリ(D、L-ラクチド-co-グリコリド)(PLA/PGA)、ポリ(グリコリド-co-トリメチレンカーボネート)(PGA/PTMC)、ポリジオキサノン(PDS)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリヒドロキシブチレート(PHBT)、ポリ(ホスファゼン)ポリ(D、L-ラクチド-co-カプロラクトン)PLA/PCL)、ポリ(グリコリド-co-カプロラクトン)(PGA/PCL)、ポリ(リン酸エステル)などが含まれる。ポリマー材料で作製されたワイヤはまた、ポリマー材料に組み込むことができる金属ベースの粉末、粒子、またはペーストなどの放射線不透過性材料を含有してもよい。例えば、放射線不透過性材料は、ポリマーワイヤが形成されるポリマー組成物とブレンドされ、その後、本明細書に記載されるようにステント10に形作られてもよい。これに代えて、放射線不透過性材料は、ステント10の金属製またはポリマー製のワイヤ15の表面に塗布されてもよい。いずれの実施形態においても、様々な放射線不透過性材料やそれらの塩および誘導体を使用することができ、例えば、限定ではないが、ビスマス、バリウム、および、硫酸バリウム、タンタル、タングステン、金、白金、チタンなどの塩が使用され得る。追加の有用な放射線不透過性材料は、米国特許第6,626,936号明細書に開示されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。放射線不透過性材料として有用な金属錯体も考えられる。ステントは、ワイヤに沿った所望の領域で選択的に放射線不透過性にすること、または完全に放射線不透過性にすることができる。
【0028】
いくつかの場合には、ワイヤ15は、タンタル、金、白金、タングステン、イリジウム、またはそれらの組み合わせの内側コアと、ニチノールの外側部材または層とを有する複合構造を有し、放射線不透過性や視認性を向上させるための複合ワイヤを提供する。一例では、内側コアは白金であり、外側層はニチノールである。白金の内部コアは、全断面の割合に基づいて、ワイヤ15の少なくとも約10%を占める。さらに、ニチノールをそのマルテンサイト相およびオーステナイト相で加熱、成形、および冷却するなどの形状記憶のために処理されていないニチノールも外層として有用である。このような複合ワイヤのさらなる詳細は、米国特許第7,101,392号明細書に開示され、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。ワイヤ15は、ニチノールから形成されるか、または白金の中心コアおよびニチノールの外層を有する複合ワイヤから形成される。さらに、MIGなどの溶接工程で必要とされる場合には、充填する溶接材料も、ニチノール、ステンレス鋼、エルジロイなどのコバルトベースの合金、白金、金、チタン、タンタル、ニオブ、およびそれらの組み合わせから形成できる。
【0029】
管状体20は、第1,第2の端部にそれぞれ隣接する1つ以上のアンカー部材26、28を有する。アンカー部材26、28は、管状体20から径方向外方に延びる部分であって、フランジを形成する。
図2に示す例では、アンカー部材26、28は、管状体20から周方向であり且つ径方向外方にステント10の長手方向軸Xに対してほぼ直交して延びる。アンカー部材26、28は、アンカー部材26、28の間に配置されたステント本体部分の外径よりも大きな外径を有する。
【0030】
ステント10は、
図2に示すように、管状体の第1の端部22の周囲に配置された複数の非外傷性スペーサ部材30を含む。別例では、複数のスペーサ部材30は、第1の端部22および第2の端部24の両方の周囲に配置される。スペーサ部材30は、嚢胞が排液されて嚢胞の壁40が第1の端部22に向かって前進するため、ステントの第1の端部22を嚢胞の壁40から離間して保持するように構成される。スペーサ部材30は、嚢胞40の壁がステント10の管状体20の第1の端部22に接触することを防止する。嚢胞が完全に排液された場合でも、スペーサ部材30は、嚢胞の壁と管状体20の第1の端部22との間の接触を防止するため、むき出しになったステントの第1の端部22に接触することによる組織壁への損傷を防止する。いくつかの場合には、スペーサ部材30は、管状体20を形成するワイヤ15から形成される。例えば、スペーサ部材30は、管状体20の第1の端部22から1つ以上のワイヤ15を延ばした後、そのワイヤを管状体20に織り戻すことにより形成される。別例では、スペーサ部材30は、先に形成された管状体20に追加される追加のワイヤから形成される。スペーサ部材30は、管状体20の第1の端部22に隣接して配置された第1の領域36と、スペーサ部材30の長さに沿って測定された管状体20の第1の端部22から最も離れたスペーサ部材30の部位である終端38とを有する。スペーサ部材30は、管状体20のワイヤ15について上記列挙された金属やポリマー材料などの生体適合性材料から形成される。スペーサ部材30は、自立することができ、形状を保持しながら、管状材20の第1の端部22から片持ち支持されたり、管状体20の第1の端部22から延びたりすることができる。しかしながら、スペーサ部材30は管腔の壁に係合した時、スペーサ部材30は、ステント10に係合する為に不十分な径方向の抵抗性を付与する。
【0031】
図2に示す例では、スペーサ部材30はそれぞれ、ループ状に形成された単一のワイヤ35で形成されて、先に形成された管状体20に取り付けられて、ワイヤループの端部は、管状体20の内面に取り付けられた脚部32、34を画定する。別例では、複数のスペーサ部材30は単一のワイヤから形成される。脚部32、34は、管状本体20の内側に溶接される。これに代えて、脚部32、34は、接着剤、ワイヤラッピング、または別の好適な永久的な結合で取り付けられてもよい。いくつかの例では、脚部32、34は、管状体20のワイヤ15に織り込まれる。脚部32、34は、第1の端部22から第2の端部24まで、管状体20の長さの25%以上、50%以上、または75%以上にわたって延びる。いくつかの例では、脚部32、34は、第1の端部22から第2の端部24まで管状体20の全長にわたって延びる。脚部32、34は、管状体20の内面に沿って実質的に長手方向軸に平行に、または、長手方向軸に対して一定の斜めの角度、すなわち、らせん方向に延びる。いくつかの例では、脚部32、34は、ステント10の編組パターンでワイヤ15の経路に従って、ワイヤ15に沿って並置される。
【0032】
1つのスペーサ部材30からの脚部32、34は、いくつかの例では、別のスペーサ部材30の脚部32、34と重なる。例えば、いくつかの実施形態では、第1のスペーサ部材30の脚部32、34は、管状体20の内面に沿って第1の螺旋方向に延びるが、第2のスペーサ部材30の脚部32、34は、管状体20の内面に沿って反対の第2の螺旋方向に延びて、第1のスペーサ部材30の脚部32、34と交差する。別例では、すべてのスペーサ部材30のすべての脚32、34は、別のスペーサ部材30の脚32、34に接触することなく、管状体20の内部に沿って延びる。例えば、各スペーサ部材30の脚32、34は、管状体20の内部に沿って同一の螺旋方向に延びる。
【0033】
スペーサ部材30は、第1の端部22の外周に等間隔で配置されて径方向外方に向かって放射状に広がる。スペーサ部材30は、
図3に示すように、間隔を空けて配置される。別例では、スペーサ部材30は、第1の端部22の外周で隣接するスペーサ部材30と重なってもよい。例えば、スペーサ部材30はそれぞれ、その両側で隣接するスペーサ部材30とオーバーラップしてもよい。
図3に示すように、ステント10は3つのスペーサ部材30を含む。別の実施形態では、ステント10は、2つの対向するスペーサ部材30、または4、5、6つ、またはそれ以上の数のスペーサ部材30を、ステント10の外周に等間隔または不均一に配置される。
【0034】
スペーサ部材30を形成するワイヤ35は、管状体20を形成するワイヤ15と同一または異なる特性を有する。例えば、ワイヤ35は、同一または異なる剛性または可撓性であり、そのすべては具体的な用途に基づき調整される。いくつかの実施形態では、スペーサ部材30を形成するワイヤ35は、ステント10の管状体20を形成するステントワイヤ15よりも硬くてもよい。いくつかの例では、スペーサ部材30を形成するワイヤ35は、ステントワイヤ15とは異なる材料で形成され、および/または、異なる直径を有する。いくつかの場合には、スペーサ部材30を形成するワイヤ35はステンレス鋼であるが、ステントワイヤ15はニチノールなどのニッケルチタン合金で形成されてもよい。スペーサ部材のワイヤ35を形成する材料は、管状体20のワイヤ15を形成する材料よりも大きな、または同一の、または小さな剛性を有してもよいし、および/またはスペーサ部材のワイヤ35を形成する材料は、管状体20のワイヤ15を形成する材料より大きな、または同一の、または小さな弾性係数(ヤング率)を有してもよい。ワイヤ35、15の材料、ワイヤの直径、および前処理、ならびにステントの構成の選択は、特定のステントの特性を実現するために変更できる要因のいくつかである。加えて、スペーサ部材30の少なくとも1つは、例えばコーティングまたは仕上げを用いて、またはバンドを用いて、またはステント材料の一部として、様々な方法により放射線不透過性にすることもできる。色または異なる仕上げをスペーサ部材30に追加して、それらをステントワイヤ15のそれ以外の部分から視覚的に区別することもできる。
【0035】
スペーサ部材30は、スペーサ部材30に引張力または圧搾力を加えても管状体20の外径が縮小されないように構成される。スペーサ部材30が、予め形成された管状体20に取り付けられる追加のワイヤで形成される例では、その取り付けは、スペーサ部材30を張引しても管状体20の外径が縮小しない。例えば、スペーサ部材30を溶接するか、または接着剤を使用して、スペーサ部材30を管状体20の内面の1つ以上のワイヤの交差部に取り付けることにより、スペーサ部材30が張引されたり、圧縮されたりした際、スペーサ部材30が織成または編組された構造体と相互作用して直径が縮小することを防止する。スペーサ部材30が管状本体20を形成する際に使用される1つ以上のワイヤで形成される例では、スペーサ部材30を形成するワイヤの部分は、スペーサを張引することにより管状体20の外径が縮小しないように管状体20に対して安定化され得る。一例では、安定化には、スペーサ部材30を形成するワイヤが管状体20を出る、管状体の第1の端部22で最後のワイヤの交差部のうちの1つ以上を溶接することを含む。別例では、接着剤または追加的なワイヤラッピングを用いて、スペーサ部材30を管状体20に安定化し得る。スペーサ部材30は、回収のためにステント10の直径を縮小する為に回収要素として機能しない。いくつかの例では、別体の回収要素80が管状体20の第2の端部24および/または第1の端部22に配置される。
図2に示す例では、ステント10は、管状体20の第2の端部24に取り付けられた回収要素80を含む。いくつかの例では、回収要素80は、管状体20の第2の端部24で管状体20のワイヤ15のループの中に織り込まれるワイヤまたは縫合である。
【0036】
スペーサ部材30は、管状体20の第1の端部22を超えて長手方向に延びる。スペーサ部材30は、距離Dだけ管状体20の第1の端部22を超えて延び得る。いくつかの例では、距離Dは、管状体20の全長の5%~50%、10%~50%、または5%~30%であり得る。いくつかの例では、スペーサ部材30は、第1の端部22を超えて8mm~15mm延び得る。スペーサ部材30は、第1の端部22で計測して管状体20の外径を超えて、管状体20から径方向に離間して延び得る。
図2,3に示す例では、スペーサ部材30はまた、アンカー部材26、28の外径を超えて径方向に延びる。例えば、スペーサ部材30は、ステント10の長手方向軸Xから約20度~約85度の間、約25度~約75度の間、約30度~約60度、または約45度~約75度の角度で径方向外方に延び得る。長手方向軸Xに対するスペーサ部材30の角度は、例えば、25度以上、30度以上、35度以上、40度以上、45度以上、50度以上、55度以上、60度以上、65度以上、70度以上、75度以上、80度以上、または85度以上、または別の所望の角度であってもよい。図に示すスペーサ部材30は、細長いループとして成形されている。別例では、スペーサ部材30は、円形、楕円形、涙滴などの任意の所望の形状であり得る。スペーサ部材30の末端38は、
図3に示すように、嚢胞の壁40に係合する非外傷性の末端を設けるために丸みを帯びていてもよい。
【0037】
スペーサ部材30は、ステント10を嚢胞の壁40から間隔をおいた配置に維持するために必要な剛性を有する構造を形成して、管状体20の第1の端部22との接触から組織の壁への損傷を防止する。いくつかの例では、スペーサ部材30の可撓性は、その長さに沿って変化する。スペーサ部材30は、その長さに沿って様々な厚さを有するワイヤから形成され得る。一例では、
図4に示すように、ステント100は、管状体120に隣接する第1の領域136に第1の厚さを有するワイヤから形成され、先細りおよび/または終端部138で第2の厚さに移行する少なくとも1つのスペーサ部材130を含む。
図4に示すように、第2の厚さは、第1の厚さよりも小さいため、終端部138でより可撓性の大きなスペーサ部材130を実現できる。より可撓性のある終端部138により、スペーサ部材130は、嚢胞の壁40に接触した時、終端部138でわずかに湾曲して、組織の損傷の可能性を減らし得る。
【0038】
いくつかの実施形態では、ステント10、100は、ステント10、100の管状体20、120の少なくとも一部の上に配置されたカバー70、170を含む。例えば、カバー70、170は、ステント10,100の管状体20,120の全長を完全に覆い、編組または織成されたパターンで形成されたすべての隙間がカバー70、170で覆われて、完全に覆われたステントを形成して、管状体20,120のルーメンの中に組織の内部成長や流体の漏れを防止し得る。別例では、カバー70、170は、ステント10、100の管状体20、120の長さの一部だけを覆って、編組または織成されたパターンで形成された隙間の一部がカバーされないままである部分的に覆われたステントを形成して、組織の内部成長を可能にする。いくつかの場合には、スペーサ部材30、130は、カバー70、170で覆われるため、管状体20,120とスペーサ部材30,130の双方を含む、ステント10,100の全体がカバー70,170で覆われ得る。例えば、カバー70、170は、スペーサ部材30、130を形成するワイヤによって形成されたループの隣接する両側間の間隙を横切って延びて満たすが、隣接するスペーサ部材30、130間の間隙がカバー材料を欠くため、流体は、ステント10,100の端部の周囲でスペーサ部材30,130の間を流れてステント10,100のルーメンの中に入ることが可能になる。いくつかの場合には、ステント10、100は、シリコーンまたは別のポリマーの溶液の中に浸漬されて、カバー70、170を形成し得る。別例では、ポリマーシートまたは管が管状体20、120の周囲および/または管状体20、120の内部に配置されて、カバー70、170を形成し得る。カバー70、170は、管状体20、120の外面または内面、または管状体20、120の内面および外面の両方に配置されて、ステント10、100をポリマー材料に埋め込み得る。コーティングまたはカバーは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのポリマーカバー、またはシリコーンカバーであり得るが、別のカバー、具体的にはエラストマーポリマーも使用され得る。有用なポリマー材料の限定的ではない例には、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリナフタレン、ポリテトラフルオロエチレン、拡張されたポリテトラフルオロエチレン、シリコーン、および、それらの組み合わせならびにコポリマーが含まれ得る。
【0039】
図5は、嚢胞として示されている組織部分に埋め込まれた
図2のステント10の一端を示す。嚢胞を排液する方法において、ステント10の第1の端部は、第1のアンカー部材26と、管状体20の第1の端部22と、3つのスペーサ部材30であってその全てが組織の壁46を貫通して嚢胞を示すキャビティの中に突出する3つのスペーサ部材30とで組織の壁の開口部の中に埋め込まれ得る。第2のアンカー部材28は、組織の壁46の反対側に配置されて、組織の壁46を横切ってステント10を固定する。第1のアンカー部材26の大きい方の直径は、ステント10を所定の位置に保持して、スペーサ部材30は嚢胞内に配置される。ステント10のルーメン内を通過して排液されて嚢胞の体積が減少すると、下方の嚢胞の壁(
図2を参照)は、管状体20の第1の端部22ではなくスペーサ部材30に接触する。スペーサ部材30は、嚢胞の壁が管状体20の第1の端部22と接触することを防止する。スペーサ部材30は、嚢胞の壁から間隔をあけて管状体20の第1の端部22を保持して、流体が、隣接するスペース部材30の間で管状体20の第1の端部22の周囲を通過して、管状体20のルーメンの中に流れて嚢胞から流体が排出することを可能にする。嚢胞から全ての流体が排出された場合であっても、嚢胞の壁は、スペーサ30によって管状体20の第1の端部22から間隔をあけて配置される。この間隔をあけた配置により、組織への刺激やその結果生じる出血を抑制または排除し得る。
【0040】
図6A,6Bは、組織の壁46を貫通して配置されたステントの別例200であって、ステント200の第1の端部222が嚢胞242のキャビティに配置されたステントの別例を示す。ステント200は、管状体220と、管状体220の第1の端部222に隣接する第1の領域236からスペーサ部材230の終端238まで延びる第1の長さを有する第1のグループのスペーサ部材230とを含む。ステント200は、管状体200の第1の端部222の第1の端部222に隣接する第1の領域237からスペーサ部材231の終端部239まで延びる第2のグループのスペーサ部材231を含む。第2のグループのスペーサ部材231は、第1のグループのスペーサ部材230の第1の長さよりも短い第2の長さを有し、第2のグループのスペーサ部材231の終端部239を第1のグループのスペーサ部材230の終端部238よりも管状体220の第1の端部222により接近して配置する。嚢胞242内の流体がステント200のルーメン内を通過して矢印260の方向に排出されると、
図6に示すように、嚢胞の壁40は潰れて第1のグループのスペーサ部材230の終端部238に係合する。次に、嚢胞が排液され続けて嚢胞の壁40が管状体220の第1の端部222に向かって前進すると、第1のグループのスペーサ部材230は、矢印の方向250に、管状体220の第2の端部224に向かって屈曲または湾曲して、
図6Bに示すように、第2のグループのスペーサ部材231の終端部239は嚢胞の壁40と係合可能になる。
【0041】
第1のグループのスペーサ部材230は、第2のグループのスペーサ部材231よりもより可撓性であってもよく、嚢胞の壁40が管状体の第1の端部222に向かって前進した時、第1のグループのスペーサ部材230が屈曲または部分的に潰れることを可能にする。上記スペーサ部材30と同様に、第1、第2のグループのスペーサ部材の230、231は、それらの長さに沿って可変の可撓性を有し得る。特に、第1、第2のグループのスペーサ部材230、231の一方または両方は、管状体320に隣接する第1の部分236よりもより可撓性が高い終端238を有し得る。上記ステント10と同様に、第1,第2のグループのスペーサ部材230,231がルーメンの壁に係合した場合には、スペーサ部材230、231は、ステント200を固定するために不十分な径方向の抵抗性を付与する。上記スペーサ部材30と同様に、スペーサ230,231は、スペーサ部材230、231に引張力または圧搾力を加えても管状体220の外径が縮小しないように構成される。
【0042】
管状体320および複数のスペーサ部材330を備えたステント300のさらなる例を
図7に示す。この例では、管状体320は1つ以上のステントワイヤ315で形成され、アンカー部材を備えず、長さに沿ってほぼ均一な直径を有する。複数のスペーサ部材330は、管状体320の第1の端部322、管状体320の第2の端部324、またはその両方に取り付けられ得る。スペーサ部材330は管状体320を形成するワイヤ315で形成されてもよいし、または管状体320が形成された後、管状体320に取り付けられるワイヤ335で形成されてもよい。上記ステント10と同様に、ワイヤ315は、溶接、接着剤、ワイヤラッピング、またはその他の好適な永久的な連結によって管状体320に取り付けられ得る。さらに、上記ステント10と同様に、スペーサ部材330は、スペーサ部材330に引張力または圧搾力を加えても管状体320の外径が縮小しないように構成される。
【0043】
ワイヤ335は、スペーサ部材330に沿って可変の可撓性を設けるように先細りにすることができる。例えば、ワイヤ335は、管状体320に隣接する第1の領域336で第1の厚さを有し、スペーサ部材330の終端部338の領域で第2のより小さな厚さまで先細りにすることができるため、スペーサ部材330の終端部338は、第1の領域336よりも可撓性が大きくなる。これにより、スペーサ部材330の終端部338は、組織に接触した際、管状体320の反対側の端部に向かって屈曲または湾曲可能になる。より硬い第1の領域336は、組織の壁から間隔をあけて管状体320の端部を保持して、流体が管状体320の第1の端部322の周囲でステント300のルーメンの中に排出することを可能にする。スペーサ部材330の末端部338の可撓性により、スペーサ部材330は、ステント300の下で組織の壁に穏やかに係合できるが、スペーサ部材330は、長手方向軸にほぼ平行して延びるルーメンの壁に対してステント300をアンカーするために不十分な径方向の抵抗性を付与する。より硬い第1の領域336は、組織の壁に対して直交して配置されたステント300をアンカーするために長手方向に十分な抵抗性を付与し得る。
図8は、組織の壁46の開口の中に延びる管状体320の第1の端部322を示す。ステント300のこの例では、スペーサ部材330は、組織の壁46の開口部内にステント300を保持すること、および、嚢胞が排液されるときステント300の管状体320の第1の端部322を組織の壁から間隔をあけて配置することの2つの機能を有する。
【0044】
図9は、管状体420に織成され、編組され、編成され、または巻き付けられた1つ以上のワイヤ415で形成された管状体420を有するステント400の別例を示す。ステント400は、管状体420の第1の端部422に隣接する第1領域437からスペーサ部材430の終端部438まで延びる第1の長さを有する第1グループのスペーサ部材430を含む。ステント400は、管状体420の第1の端部422に隣接する第1の領域437からスペーサ部材431の終端部439に延びる第2グループのスペーサ部材431を含む。第2グループのスペーサ部材431は、第1のグループのスペーサ部材430の第1の長さよりも短い第2の長さを有し、第2のグループのスペーサ部材423の終端部439は、第1のグループのスペーサ部材430の終端部438よりも管状体420の第1の端部422に接近して配置される。第1のグループのスペーサ部材430は、第2のグループのスペーサ部材431よりも可撓性を有し、第1のグループのスペーサ部材430は、嚢胞が排液して、組織の壁が第1の端部422に向かって進むにつれて屈曲、湾曲、または部分的に潰れることを可能にする。この例では、管状体420は、アンカー部材を備えず、その長さに沿って実質的に均一な直径を有する。第1,第2のグループのスペーサ部材430、431は、管状体420の第1の端部422、管状体420の第2の端部424、またはその両方に取り付けられ得る。スペーサ部材430、431は、管状体420を形成するワイヤ415で形成されてもよいし、または、管状体420を形成した後に管状体420に取り付けられるワイヤ435で形成されてもよい。上記ステント10と同様に、スペーサ部材430、431は、スペーサ部材430、431に引張力または圧縮力を加えても管状体420の外径が縮小しないように構成される。ワイヤ435は、先細りにされ、スペーサ部材430、431に沿って可変の柔軟性を有する。例えば、ワイヤ435は、管状体420に隣接する第1の領域436、437で第1の厚さを有し、終端部438,439の領域で第2のより小さな厚みに先細りまたは移行して、終端部438、439は、第1の領域436、437よりも可撓性が大きくなる。これにより、スペーサ部材430、431の終端部438、439は、組織の壁と接触した時、管状体420の第2の端部424に向かって湾曲可能になる。より硬い第1の領域436、437は、管状体420の終端部438,439を組織の壁から間隔をあけて保持する。スペーサ部材430、431の終端部438、439の可撓性により、スペーサ部材430、431はステント400の下で組織の壁に穏やかに係合することを可能にするが、長手方向軸に対してほぼ平行に延びるルーメンの壁に対してステント400をアンカーするために不十分な径方向の抵抗性を付与する。より硬い第1の領域436、437は、組織の壁に対して直交して配置されたステント400をアンカーするために長手方向に十分な抵抗性を付与する。
【0045】
ステント10と同様に、ステント100、200、300、および400は、ステント100、200、300、400の管状体の少なくとも一部の上に配置された上記カバー70、170に類似するカバーを含む。例えば、カバーは、ステント100、200、300、400の管状体の全長を完全に覆って、編組または織成パターンで形成された隙間のすべてがカバーで覆われて管状体のルーメン内への組織の成長や流体の漏れを防止する、完全に覆われたステントを形成する。別例では、カバーは、ステント100,200,300,400の管状体の長さの一部のみを覆って編組または織成パターンで形成された隙間の一部がカバーされないままである部分的にカバーされたステントを形成して組織の内部成長を可能にする。いくつかの例では、スペーサ部材130、230、330、430は、カバーによって覆われるため、管状体全体およびスペーサ部材130、230、330、430の双方を含むステント100、200、300、400全体がカバーによって覆われ得る。例えば、カバーは、スペーサ部材130、230、330、430を形成するワイヤで形成されたループの隣接する両側の間の間隙を横切って延びて同間隙を満たし得るが、隣接するスペーサ部材130、230、330、430間の間隙がカバー材料を欠いて、流体がステント100、200、300、400の端部の周囲でスペーサ部材130、230、330、430の間を流れて、ステント100、200、300、400のルーメン内に流れることを許容してもよい。
【0046】
ステント10、100、200、300、400には、様々な種類のステントおよびステント構造が使用できる。例えば、ステント10、100、200、300、400は、自己拡張型ステントまたはバルーン拡張型ステントとすることができる。ステント10、100、200、300、400は、送達のために圧縮時形態または収縮時形態に径方向に収縮され、その後、体管腔内で展開する間に拡張時形態に拡張可能であってもよい。したがって、ステント10、100、200、300、400は、径方向に拡張可能または変形可能であると説明できる。自己拡張型ステントには、ステントを径方向に拡張させるばねのような作用を有するもの、または特定の温度での特定の形態にするためにステント材料の記憶特性により拡張するステントが含まれる。ステントの形態は、多くの形状から選択することもできる。例えば、ワイヤステントは、径方向に変形可能なステントを形成するために、ワイヤに波状またはジグザグが有る無しにかかわらず、連続的ならせん状パターンに固定することができる。個々のリング状または円形状の部材は、ストラット、縫合糸、リングを溶接することまたは織り交ぜることまたはロックすることなどによって連結されて、管状ステントを形成することができる。別の実施形態では、ステント10、100、200、300、400は、相互に連結されたストラットのパターンをチューブからエッチングまたは切断することにより、モノリシック管状部材として形成され得る。
【0047】
本開示は、多くの点において、単なる例示であることを理解されたい。本開示の範囲を逸脱することなく、詳細、特に形状、サイズ、および工程の構成について変更を加えることができる。これは、適切な範囲で、他の実施形態で使用されている1つの例示的な実施形態の特徴を使用することが含まれる。本発明の範囲は、言うまでもないが、添付の特許請求の範囲が表現する文言で定義される。
【手続補正書】
【提出日】2023-07-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の織り合わされたワイヤから形成された管状体であって、第1の開放端と、前記第1の開放端に対向する第2の開放端と、前記第1、第2の開放端の間に長手方向軸に沿って延びる長さとを有する、前記管状体と、
前記第1の開放端に隣接して配置された第1のアンカー部材、および前記第2の開放端に隣接して配置された第2のアンカー部材であって、前記第1のアンカー部材および前記第2のアンカー部材はそれぞれ、前記管状体から径方向外方に延びて、前記第1のアンカー部材と前記第2のアンカー部材の間に配置された前記管状体の外径よりも大きな外径を有する、前記第1のアンカー部材および前記第2のアンカー部材と、
前記第1の開放端の周囲に配置されて、前記第1の開放端を超えて長手方向に延びる複数のスペーサ部材であって、前記管状体とは別個に形成されて、前記管状体に固定される、前記複数のスペーサ部材と、
を備える、ステント。
【請求項2】
前記スペーサ部材はそれぞれ、前記管状体に固定された脚を画定する端部を有する単一のワイヤループから形成される、請求項1に記載のステント。
【請求項3】
前記脚は、前記管状体の内面に取り付けられる、請求項2に記載のステント。
【請求項4】
前記脚は、前記管状体に織り込まれる、請求項2に記載のステント。
【請求項5】
前記脚は、前記管状体の前記長さの25%以上にわたって延びる、請求項2~4のいずれか一項に記載のステント。
【請求項6】
前記脚は、前記長手方向軸に対して一定の斜めの角度で延び、前記脚は、前記管状体を形成する前記1つ以上の織り合わされたワイヤの経路に従う、請求項2~5のいずれか一項に記載のステント。
【請求項7】
第1のスペーサ部材の前記脚は、前記管状体の内面に沿って第1の螺旋方向に延び、第2のスペーサ部材の前記脚は、前記管状体の内面に沿って反対の第2の螺旋方向に延びる、請求項2~6のいずれか一項に記載のステント。
【請求項8】
前記複数のスペーサ部材の少なくとも1つは、その長さに沿って可変の可撓性を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のステント。
【請求項9】
前記複数のスペーサ部材は、前記管状体よりも可撓性が小さい、請求項1~7のいずれか一項に記載のステント。
【請求項10】
前記複数のスペーサ部材は、第1の長さを有する第1のグループのスペーサ部材と、前記第1の長さよりも短い第2の長さを有する第2のグループのスペーサ部材とを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のステント。
【請求項11】
前記第1のグループのスペーサ部材は、前記第2のグループのスペーサ部材よりも可撓性が大きい、請求項10に記載のステント。
【請求項12】
前記複数のスペーサ部材の少なくとも1つは、前記管状体に隣接する第1の領域で第1の厚さと、前記管状体から最も離れて配置された第2の領域で第2の厚さとを有するテーパが付いたワイヤから形成される、請求項1~11のいずれか一項に記載のステント。
【請求項13】
前記第2の厚さは前記第1の厚さよりも小さいため、前記第2の領域においてより大きな可撓性を有する、請求項12に記載のステント。
【請求項14】
前記管状体、前記第1のアンカー部材、および前記第2のアンカー部材、ならびに前記複数のスペーサ部材の全体にわたって延びるカバーをさらに備える、請求項1~13のいずれか一項に記載のステント。
【請求項15】
前記複数のスペーサ部材に引張力が付与された時、前記管状体の外径は収縮されない、請求項1~14のいずれか一項に記載のステント。