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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134855
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】弾性波フィルタ及び通信装置
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/25 20060101AFI20230920BHJP
   H03H 9/64 20060101ALI20230920BHJP
   H03H 9/72 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
H03H9/25 C
H03H9/64 Z
H03H9/72
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023125204
(22)【出願日】2023-08-01
(62)【分割の表示】P 2021549025の分割
【原出願日】2020-09-25
(31)【優先権主張番号】P 2019177210
(32)【優先日】2019-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135828
【弁理士】
【氏名又は名称】飯島 康弘
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 幹
(57)【要約】
【課題】周波数特性を複数の励振電極同士で異ならせることが容易な弾性波フィルタを提供する。
【解決手段】弾性波フィルタは、少なくとも1つの第1共振子を有する第1チップと、少なくとも1つの第2共振子を有する第2チップと、を備え前記第1チップ及び前記第2チップは多層膜と、前記多層膜上方に位置する圧電膜と、を有し、前記多層膜は少なくとも一層の第1音響膜と、少なくとも一層の第2音響膜と、を含み、前記第1チップ及び前記第2チップにおいて、前記多層膜及び前記圧電膜の合計厚さが互いに異なっており、前記第1チップにおける前記多層膜と前記圧電膜の厚さの比と、前記第2チップにおける前記多層膜と前記圧電膜の厚さの比の差が5%以内である。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの第1共振子を有する第1チップと、
少なくとも1つの第2共振子を有する第2チップと、
を備え
前記第1チップ及び前記第2チップは
多層膜と、
前記多層膜上方に位置する圧電膜と、
を有し、
前記多層膜は
少なくとも一層の第1音響膜と、
少なくとも一層の第2音響膜と、
を含み、
前記第1チップ及び前記第2チップにおいて、前記多層膜及び前記圧電膜の合計厚さが互いに異なっており、
前記第1チップにおける前記多層膜と前記圧電膜の厚さの比と、前記第2チップにおける前記多層膜と前記圧電膜の厚さの比の差が5%以内である
弾性波フィルタ。
【請求項2】
前記第1チップ及び前記第2チップにおける前記多層膜と前記圧電膜の厚さの比が互いに同じとしたときの値と比較して、
それぞれの前記圧電膜の厚さの比の差が5%以内であり、
それぞれの前記多層膜の厚さの比の差が3%以内である
請求項1に記載の弾性波フィルタ。
【請求項3】
前記第1音響膜の材料は上面と接する層と比較して音響インピーダンスが低く、
前記第2音響膜の材料は上面と接する層と比較して音響インピーダンスが高い、
請求項1または2に記載の弾性波フィルタ。
【請求項4】
前記第1音響膜は二酸化ケイ素を含み、
前記第2音響膜は酸化ハフニウムを含む、
請求項3に記載の弾性波フィルタ。
【請求項5】
複数の前記第1音響膜の少なくとも一層は、異なる材料である
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の弾性波フィルタ。
【請求項6】
複数の前記第2音響膜の少なくとも一層は、異なる材料である
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の弾性波フィルタ。
【請求項7】
前記第1チップ及び前記第2チップは、
前記多層膜及び前記圧電膜の、合計の積層数が同じである
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の弾性波フィルタ。
【請求項8】
前記第1チップ及び前記第2チップは、
前記多層膜及び前記圧電膜の、積層方向における材料の並び順が同じである
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の弾性波フィルタ。
【請求項9】
前記多層膜下方に位置する支持基板を有し、
前記第1チップと前記第2チップの少なくとも一方は、前記支持基板と前記多層膜との 間に追加層を有する、
請求項7または8に記載の弾性波フィルタ。
【請求項10】
前記第1チップは第1励振電極を有し、
前記第2チップは第2励振電極を有し、
前記第1チップと前記第2チップの前記合計厚さの比は、前記第1励振電極のピッチと前記第2励振電極のピッチの比と異なる
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の弾性波フィルタ。
【請求項11】
前記第1共振子の共振周波数は、前記第2共振子の共振周波数よりも高く、
前記第1チップにおける前記合計厚さが前記第2チップにおける前記合計厚さよりも薄い
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の弾性波フィルタ。
【請求項12】
前記第1チップの前記支持基板の厚さは、前記第2チップの前記支持基板の厚さより も薄い
請求項11に記載の弾性波フィルタ。
【請求項13】
直列腕と、
並列腕と、
を有し、
前記直列腕は
前記第1共振子または前記第2共振子である2つの直列共振子と、
前記直列共振子を接続する配線と、
を含み、
前記並列腕は、
前記第1共振子または前記第2共振子である少なくとも1つの並列共振子を含み、
前記配線に接続しており、
前記直列共振子は
バスバーと、
前記バスバーに接続された複数の電極指と、
を有し、
前記配線の前記共振子が含む電極指の配列方向の幅が、平面視で、前記バスバーの前記電極指の配列方向の長さ以上である
請求項11または12に記載の弾性波フィルタ。
【請求項14】
前記幅が平面視で、前記バスバーの前記電極指の配列方向の長さよりも大きい
請求項13に記載の弾性波フィルタ。
【請求項15】
前記第1共振子を有する直列腕と、
前記第2共振子を有する並列腕と、を有し、
前記第1共振子と前記第2共振子は、ラダー型のバンドパスフィルタを構成する、
請求項11乃至14のいずれか一項に記載の弾性波フィルタ。
【請求項16】
前記第1共振子を有する並列腕と、
前記第2共振子を有する直列腕と、を有し、
前記第1共振子と前記第2共振子は、ラダー型のバンドエリミネーションフィルタを構成する、
請求項11乃至14のいずれか一項に記載の弾性波フィルタ。
【請求項17】
前記第1チップ及び前記第2チップが実装されている実装基板と、
前記第1チップ及び前記第2チップの上から前記実装基板を覆っている封止部と、
を有し、
平面視で、封止部の、前記第1チップと重なる部分の体積が、第2チップと重なる部分の体積よりも大きい
請求項1乃至16のいずれか一項に記載の弾性波フィルタ。
【請求項18】
前記第1共振子及び前記第2共振子は、スラブモードの弾性波を励振するように構成された
請求項1乃至17のいずれか一項に記載の弾性波フィルタ。
【請求項19】
請求項1乃至18のいずれか一項に記載の弾性波フィルタと、
前記弾性波フィルタに電気的に接続されているアンテナと、
前記弾性波フィルタを介して前記アンテナと電気的に接続されている集積回路素子と、
を備える通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、弾性波を利用する弾性波フィルタ、及び当該弾性波フィルタを含む通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電体上の励振電極に電圧を印加して、圧電体を伝搬する弾性波を生じさせる弾性波フィルタが知られている(例えば特許文献1)。特許文献1では、第1の弾性波フィルタを構成する第1の励振電極と、第2の弾性波フィルタを構成する第2の励振電極とを同一の圧電膜上に設けたデュプレクサを開示している。圧電膜は、第1の弾性波フィルタにおける部分と、第2の弾性波フィルタにおける部分とで厚さが異なっている。これにより、第1及び第2の弾性波フィルタの比帯域幅を容易に調整することが可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-072808号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示の一態様に係る弾性波フィルタは、少なくとも1つの第1共振子を有する第1チップと、少なくとも1つの第2共振子を有する第2チップと、を備え前記第1チップ及び前記第2チップは多層膜と、前記多層膜上方に位置する圧電膜と、を有し、前記多層膜は
少なくとも一層の第1音響膜と、少なくとも一層の第2音響膜と、を含み、前記第1チップ及び前記第2チップにおいて、前記多層膜及び前記圧電膜の合計厚さが互いに異なっており、前記第1チップにおける前記多層膜と前記圧電膜の厚さの比と、前記第2チップにおける前記多層膜と前記圧電膜の厚さの比の差が5%以内である。
【0005】
本開示の一態様に係る通信装置は、上記の弾性波フィルタと、前記弾性波フィルタに電気的に接続されているアンテナと、前記弾性波フィルタを介して前記アンテナと電気的に接続されている集積回路素子と、を有している。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1(a)及び図1(b)は実施形態に係る弾性波フィルタの外観を示す上面側及び下面側から見た斜視図である。
図2図1(b)のII-II線における断面図である。
図3図1(a)の弾性波フィルタの電気的構成の概要を模式的に示す回路図である。
図4】バンドパスフィルタにおける共振周波数の設定例を説明するための図である。
図5】バンドエリミネーションフィルタにおける共振周波数の設定例を説明するための図である。
図6図2の2つのチップの構成を模式的に示す平面図である。
図7図6のチップの共振子の構成を示す平面図である。
図8図7のVIII-VIII線における断面図である。
図9図1(a)の弾性波フィルタの利用例としての分波器の構成を模式的に示す回路図である。
図10図1(a)の弾性波フィルタの利用例としての通信装置の構成を模式的に示す回路図である。
図11図11(a)は図1(a)の弾性波フィルタの利用例としてのフィルタの構成を模式的に示すブロック図であり、図11(b)及び図11(c)は図11(a)のフィルタの特性を説明する図である。
図12】圧電膜の厚さがインピーダンスの位相の最大値に及ぼす影響を示す図である。
図13】音響膜の厚さがインピーダンスの位相の最大値に及ぼす影響を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本願においては、国際公開第2019/009246号(PCT/JP2018/025071号。以下、先行出願1という。)に記載の内容について、参照による引用(Incorporation by Reference)がなされてよい。先行出願1は、本願出願人による出願であり、また、発明者の一部が本願と共通している。
【0008】
以下、実施形態に係る弾性波フィルタについて、図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いられる図は模式的なものであり、図面上の寸法比率等は現実のものとは必ずしも一致していない。
【0009】
<弾性波フィルタ>
(弾性波フィルタの全体構成)
図1(a)は、実施形態に係る弾性波フィルタ1(以下、単に「フィルタ1」ということがある。)の外観を示す上面側から見た斜視図である。図1(b)は、フィルタ1の外観を示す下面側から見た斜視図である。なお、フィルタ1は、いずれの方向が上方若しくは下方とされてもよいものであるが、便宜的に、図1(b)の紙面上方側を上方として、上面若しくは下面等の語を用いることがある。
【0010】
フィルタ1は、例えば、表面実装型のチップ型部品として構成されている。図示の例では、フィルタ1の外形は、概ね直方体状とされている。その下面には、複数の外部端子3が適宜な形状及び適宜な数で露出している。フィルタ1の大きさは適宜な大きさとされてよい。例えば、フィルタ1の1辺の長さは1mm~十数mmである。
【0011】
フィルタ1は、例えば、不図示の回路基板に対して下面を対向させて配置され、回路基板に設けられた複数のパッドと複数の外部端子3とが導電性の接合材(例えば、はんだ)を介して接合されることによって回路基板に実装される。そして、フィルタ1は、例えば、複数の外部端子3のいずれかを介して信号が入力され、入力された信号に所定の処理(例えばフィルタリング)を施して複数の外部端子3の他のいずれかから出力する。
【0012】
図2は、図1(b)のII-II線における断面図である。
【0013】
フィルタ1は、実装基板5と、当該実装基板5上に実装された複数のチップ7(図示の例では2つのチップ7A及び7B)と、複数のチップ7を封止する封止部9とを有している。各チップ7は、チップ7と実装基板5との間に介在しているバンプ11によって実装基板5に接合されている。
【0014】
チップ7は、弾性波を利用したフィルタリングに直接的に寄与する部分である。実装基板5は、例えば、チップ7をパッケージングするパッケージの一部を構成しており、チップ7と、外部(フィルタ1が実装される不図示の回路基板)との電気的仲介に寄与する。封止部9は、例えば、実装基板5とともにチップ7をパッケージングするパッケージを構成している。
【0015】
(実装基板)
実装基板5は、例えば、リジッド式のプリント配線板によって構成されている。実装基板5は、例えば、絶縁基体13と、絶縁基体13に設けられた種々の導体とを有している。種々の導体は、例えば、絶縁基体13に概ね平行な複数の導体層(15A~15C)と、絶縁基体13の全部又は一部を上下方向に貫通する貫通導体17とを含んでいる。複数の導体層は、例えば、絶縁基体13の上面に重なる上面導体層15Aと、絶縁基体13の内部に埋設された1層以上(図示の例では1層)の内部導体層15Bと、絶縁基体13の下面に重なる下面導体層15Cとを含んでいる。
【0016】
絶縁基体13は、例えば、概ね薄型の直方体状に形成されている。また、絶縁基体13は、例えば、樹脂、セラミック及び/又はアモルファス状態の無機材料を含んで形成されている。絶縁基体13は、単一の材料からなるものであってもよいし、基材(補強材)に樹脂を含浸させた基板のように複合材料からなるものであってもよい。
【0017】
上面導体層15Aは、例えば、チップ7を実装基板5に実装するためのパッド19を含んでいる。下面導体層15Cは、例えば、既述の外部端子3を含んでいる。貫通導体17及び内部導体層15Bは、例えば、パッド19と外部端子3とを接続する配線及びチップ7Aのパッド19とチップ7Bのパッド19とを接続する配線を含んでいる。上面導体層15A、内部導体層15B、下面導体層15C及び貫通導体17は、例えば、Cu等の金属により構成されている。
【0018】
なお、実装基板5の構成は、図示の例から種々変更可能である。例えば、内部導体層15Bは設けられなくてもよい。チップ7Aのパッド19とチップ7Bのパッド19とは、内部導体層15B及び貫通導体17に代えて、又は加えて、上面導体層15Aによって接続されていてもよい。上面導体層15A、内部導体層15B、下面導体層15C若しくは貫通導体17、又はこれらの2以上の組み合わせは、インダクタ、コンデンサ若しくは適宜な処理を実行する回路を構成していてもよい。
【0019】
(チップの概要)
チップ7は、例えば、概略直方体状の形状を有しており、実装基板5の上面に対向するように配置されている。2以上のチップ7の形状及び寸法は、互いに同等であってもよいし、互いに異なっていてもよい。図示の例では、チップ7Aは、チップ7Bよりも薄くされている。ひいては、実装基板5(絶縁基体13)の上面から、チップ7Aの実装基板5とは反対側の面までの高さh1は、実装基板5(絶縁基体13)の上面から、チップ7Bの実装基板5とは反対側の面までの高さh2よりも低くなっている。
【0020】
(バンプ)
バンプ11は、チップ7とパッド19との間に介在して、両者を接合している。これにより、チップ7は、実装基板5に固定されているとともに、実装基板5に電気的に接続されている。バンプ11は、例えば、はんだにより構成されている。はんだは、鉛を含むものであってもよいし、鉛フリーはんだであってもよい。なお、バンプ11は、導電性接着剤によって形成されていてもよい。チップ7とパッド19との間にバンプ11が介在していることにより、チップ7と絶縁基体13との間には間隙(空間S)が形成されている。
【0021】
(封止部)
封止部9は、例えば、実装基板5上において2以上のチップ7を共に覆うように設けられており、また、各チップ7の外周面及び上面に密着している。ただし、封止部9は、チップ7と絶縁基体13との間隙には基本的に充填されておらず、当該間隙は、空間Sとなっている。これにより、例えば、チップ7の後述する圧電膜の振動(別の観点では弾性波の伝搬)が容易化されている。空間Sは、適宜なガス(例えば空気又は不活性ガス)が封入されていてもよいし、真空状態とされていてもよい。なお、図示の例とは異なり、封止部9は、チップ7の外周面の一部(例えば実装基板5側の部分)又は全部から離れていたり、チップ7の上面を覆わずに外周面のみを覆っていたりしてもよい。
【0022】
封止部9の外形は、例えば、概ね直方体状になるように形成されている。その平面視における形状及び大きさは、例えば、実装基板5の平面形状と同様であり、封止部9の側面は実装基板5の側面と概ね面一になっている。封止部9の上面(実装基板5とは反対側の面)は、例えば、平面状である。別の観点では、実装基板5の上面から封止部9の上面までの高さは、チップ7Aの位置とチップ7Bの位置とで同じである。
【0023】
封止部9は、例えば、樹脂によって構成されている。樹脂は、例えば、熱硬化性樹脂である。熱硬化性樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂又はポリイミド樹脂である。樹脂には、当該樹脂よりも熱膨張係数が低い材料により形成された絶縁性粒子からなるフィラーが混入されていてもよい。絶縁性粒子の材料は、例えば、シリカ、アルミナ、フェノール、ポリエチレン、グラスファイバー又はグラファイトである。なお、封止部9は、樹脂以外の材料、例えば、アモルファス状態の無機材料によって構成されていてもよい。
【0024】
チップ7、封止部9及び実装基板5の線膨張係数及びヤング率等の相対的な大きさは適宜に設定されてよい。例えば、封止部9は、チップ7に比較して、線膨張係数が大きく、また、ヤング率が小さい。
【0025】
(ラダー型フィルタの構成)
図3は、フィルタ1の電気的構成の概要を模式的に示す回路図である。
【0026】
既述の複数の外部端子3は、例えば、外部(例えばフィルタ1が実装される不図示の回路基板)から信号が入力される入力用外部端子3Aと、外部へ信号を出力する出力用外部端子3Bと、基準電位が付与される基準電位用外部端子3Gとを含んでいる。フィルタ1は、入力用外部端子3Aに入力された信号から不要な信号を除去して(不要な信号を減衰させて)出力用外部端子3Bに出力する。除去された不要な信号は、基準電位用外部端子3Gに逃がされる。
【0027】
フィルタ1は、例えば、バンドパスフィルタであってもよいし、バンドエリミネーションフィルタであってもよい。バンドパスフィルタとしてのフィルタ1は、特定の帯域(通過帯域)の信号を入力用外部端子3Aから出力用外部端子3Bへ通過させる。バンドエリミネーションフィルタとしてのフィルタ1は、入力用外部端子3Aから出力用外部端子3Bへ通過する信号のうち特定の帯域(阻止帯域)の信号を減衰させる(除去する)。
【0028】
フィルタ1は、例えば、複数の共振子21(より詳細には21S及び21P)がラダー型に接続されたラダー型フィルタによって構成されている。具体的には、例えば、フィルタ1は、入力用外部端子3Aと出力用外部端子3Bとの間に直列に接続された複数(図示の例では4つ)の直列共振子21Sと、その直列のラインと基準電位部(ここでは基準電位用外部端子3G)とを接続する複数(図示の例では3つ)の並列共振子21Pとを有している。
【0029】
入力用外部端子3Aから出力用外部端子3Bまでの複数の直列共振子21Sを含むラインを直列腕23ということがある。また、直列腕23から基準電位部までの1つの並列共振子21Pを含むラインを並列腕25ということがある。直列腕23は、通過帯域内又は阻止帯域外の信号の伝送に寄与している。並列腕25は、通過帯域外又は阻止帯域内の信号を基準電位用外部端子3Gへ流すことに寄与している。
【0030】
直列共振子21Sの数及び並列共振子21P(並列腕25)の数は、適宜に設定されてよい。図示の例では、直列共振子21S及び並列共振子21Pは、それぞれ複数とされているが、それぞれ1つとすることも可能である。また、図示の例では、入力用外部端子3Aに最も近い共振子21は、直列共振子21Sとされているが、並列共振子21Pとされてもよい。出力用外部端子3Bについても同様である。チップ7内又はフィルタ1内の観点において、複数の並列共振子21Pの一部又は全部は、同一の基準電位部に接続されていてもよいし、互いに短絡された複数の基準電位部に個別に接続されていてもよいし、互いに短絡されていない複数の基準電位部に個別に接続されていてもよい。
【0031】
なお、本実施形態の説明において、複数の共振子21がラダー型に接続されているという場合、例えば、上記のように、入力用外部端子3Aと出力用外部端子3Bとの間に直列腕23(別の観点では1つの直列共振子21S又は直列に接続された複数の直列共振子21S)が電気的に接続され、1以上の直列共振子21Sの入力側又は出力側と基準電位部との間に1以上の並列腕25(別の観点では1以上の並列共振子21P)が電気的に接続されている状態を指す。
【0032】
フィルタ1は、共振子21以外の構成を含んでいても構わない。例えば、適宜な位置に、インダクタ及び/又はキャパシタを有していても構わない。図示の例では、直列共振子21Sに並列に接続されたインダクタ26が例示されている。インダクタ26は、例えば、実装基板5に設けられた導体(例えば図2に示すように内部導体層15B)によって構成されていてもよいし、チップ7に設けられた導体によって構成されていてもよい。このようなインダクタ26は、例えば、バンドパスフィルタとしてのフィルタ1の通過帯域、又はバンドエリミネーションフィルタとしてのフィルタ1の阻止帯域を広げることに寄与する。
【0033】
バンドパスフィルタとしてのフィルタ1と、バンドエリミネーションフィルタとしてのフィルタ1とでは、直列共振子21Sの共振周波数と並列共振子21Pの共振周波数との関係が異なる。以下では、バンドパスフィルタ、バンドエリミネーションフィルタの順に、直列共振子21Sの共振周波数と並列共振子21Pの共振周波数との関係について述べる。
【0034】
(バンドパスフィルタ)
図4は、バンドパスフィルタとしてのフィルタ1における共振周波数の設定例を説明するための図である。
【0035】
図4の上部のグラフにおいて、横軸は、周波数f(Hz)を示し、縦軸は、インピーダンスの絶対値|Z|(Ω)を示している。線LSは直列共振子21Sのインピーダンスを示している。線LPは並列共振子21Pのインピーダンスを示している。図4の下部のグラフにおいて、横軸は、周波数f(Hz)を示し、縦軸は、減衰量A(dB)を示している。線LFは、フィルタ1の減衰量を示している。図4の上部のグラフの横軸と、図4の下部のグラフの横軸とは一致している。
【0036】
弾性波共振子からなる共振子21に係るインピーダンスの周波数特性においては、インピーダンスが極小値となる共振点と、インピーダンスが極大値となる反共振点とが現れる。共振点及び反共振点が現れる周波数を共振周波数(fsr、fpr)及び反共振周波数(fsa、fpa)とする。共振子21において、反共振周波数は、例えば、共振周波数よりも高い。
【0037】
直列共振子21S及び並列共振子21Pは、直列共振子21S(線LS)の共振周波数fsrと並列共振子21P(線LP)の反共振周波数fpaとが概ね一致するように共振周波数及び反共振周波数が設定される。これにより、フィルタ1(線LF)は、並列共振子21Pの共振周波数fprから直列共振子21Sの反共振周波数fsaまでの周波数範囲(減衰域)よりも若干狭い範囲を通過帯域PBとするバンドパスフィルタとして機能する。複数の直列共振子21Sは、基本的に、共振周波数が互いに同等とされ、また、反共振周波数が互いに同等とされる。複数の並列共振子21Pについても同様である。
【0038】
上記から理解されるように、バンドパスフィルタとしてのフィルタ1においては、直列共振子21Sの共振周波数は、並列共振子21Pの共振周波数よりも高い。反共振周波数についても同様である。
【0039】
(バンドエリミネーションフィルタ)
図5は、バンドエリミネーションフィルタとしてのフィルタ1における共振周波数の設定例を説明するための図である。
【0040】
図5は、図4と同様の図である。図4と同様に、線LSは直列共振子21Sのインピーダンスを示し、線LPは並列共振子21Pのインピーダンスを示し、線LFは、フィルタ1の減衰量を示している。
【0041】
バンドエリミネーションフィルタとしてのフィルタ1においては、並列共振子21P(線LP)の共振周波数fprと、直列共振子21S(線LS)の反共振周波数fsaとが概ね一致するように共振周波数及び反共振周波数が設定される。これにより、フィルタ1(線LF)は、直列共振子21Sの共振周波数fsrから並列共振子21Pの反共振周波数fpaまでの周波数範囲よりも若干狭い範囲を阻止帯域EBとするエリミネーションフィルタとして機能する。複数の直列共振子21Sは、基本的に、共振周波数が互いに同等とされ、また、反共振周波数が互いに同等とされる。複数の並列共振子21Pについても同様である。
【0042】
上記から理解されるように、バンドエリミネーションフィルタとしてのフィルタ1においては、バンドパスフィルタとしてのフィルタ1とは逆に、直列共振子21Sの共振周波数は、並列共振子21Pの共振周波数よりも低い。反共振周波数についても同様である。
【0043】
(共振子の分配)
上記のように、フィルタ1は、電気的な観点においてラダー型に接続された複数の共振子21を有している。この複数の共振子21は、フィルタ1が含む2以上のチップ7に分配されている。そして、複数の共振子21は、例えば、チップ7が実装される実装基板5を介して電気的に接続されている。具体的には、以下のとおりである。
【0044】
図6は、チップ7A及び7Bの実装基板5に対向する面を模式的に示す平面図である。
【0045】
この図に示すチップ7S及び7Pのうち一方は、図2に示すチップ7A及び7Bのうちの一方である。チップ7S及び7Pのうち他方は、チップ7A及び7Bのうちの他方である。
【0046】
チップ7は、例えば、チップ7の外形の大部分を構成している基本的に絶縁性の固着基板27を有している。固着基板27の実装基板5に対向する面(機能面27a)には、共振子21と、複数のチップ端子29(より詳細には29A~29C及び29G)と、これらを接続している複数の配線31とが位置している。
【0047】
チップ端子29及び配線31は、例えば、機能面27aに位置している導体層35によって構成されている。複数のチップ端子29は、例えば、実装基板5のパッド19(図2)と対向し、両者の間に介在するバンプ11によってパッド19に接合される。これにより、各チップ端子29は、外部端子3(図1図3)又は他のチップ端子29に電気的に接続される。
【0048】
複数のチップ端子29は、例えば、入力用チップ端子29Aと、出力用チップ端子29Bと、基準電位用チップ端子29Gと、接続用チップ端子29Cとを有している。入力用チップ端子29Aは、パッド19を介して入力用外部端子3A(図3)に電気的に接続される。出力用チップ端子29Bは、パッド19を介して出力用外部端子3Bに電気的に接続される。基準電位用チップ端子29Gは、パッド19を介して基準電位用外部端子3G(図3)に電気的に接続される。チップ7Sの接続用チップ端子29Cは、パッド19を介してチップ7Pの接続用チップ端子29Cと電気的に接続される。図6において、点線で示す配線33は、バンプ11及び実装基板5の導体によって構成される電気的経路を模式的に示している。
【0049】
図3図6との比較から理解されるように、全て(図示の例では4つ)の直列共振子21Sは、チップ7Sに設けられている。また、全て(図示の例では3つ)の並列共振子21Pはチップ7Pに設けられている。そして、複数の共振子21は、例えば、複数の配線31、複数の接続用チップ端子29C及び複数の配線33によってラダー型に接続されている。
【0050】
従って、チップ7S(チップ7A及び7Bの一方)が有する共振子21の共振周波数と、チップ7P(チップ7A及び7Bの他方)が有する共振子21の共振周波数とは互いに異なっている。より詳細には、バンドパスフィルタとしてのフィルタ1においては、チップ7Sの共振周波数はチップ7Pの共振周波数よりも高い。逆に、バンドエリミネーションフィルタとしてのフィルタ1においては、チップ7Sの共振周波数はチップ7Pの共振周波数よりも低い。
【0051】
なお、図6は、直列共振子21S及び並列共振子21Pが2つのチップ7に分配されることを説明するための模式図に過ぎない。そして、図解を容易にするために、複数の共振子21の大きさが同じとされたり、複数の共振子21が1列に一定のピッチで配列されたり、配線31の形状が簡素化されたりしている。実際には、共振子21、チップ端子29及び配線31の形状、大きさ及び配置等は、図示の例とは異なる任意のものとされてよい。また、図6では、図3に示したインダクタ26を直列共振子21Sに並列接続するためのチップ端子29及び配線31など、一部の構成の図示は省略されている。ただし、図6のように、共振子21を一列に配置できる場合には、弾性波の伝搬方向に他の共振子21が位置しないため、ノイズ等を抑制することができる。特に、音響膜を必要とするような5GHzを超える高周波信号を扱うときには、従来の表面を伝搬する弾性波ではなく、板波を用いることから、より弾性波の伝搬方向に共振子が重なる場合の影響が大きくなる恐れがあるため有効である。
【0052】
また、直列共振子21Sを一列に並べるときには、配線31を共振子の伝搬方向における長さと同程度まで幅広にすることができる。その結果、配線の電気抵抗を小さくすることができるのでロスを低減することができる。特に、5GHzを超えるような高周波信号を扱う次世代のデバイスにおいては入力電力も大きくなることも想定されるために有用である。
【0053】
このように1つのフィルタにおいて、チップ7を2以上に分割することで、チップごとに設計を最適化することができる。
【0054】
(共振子の構成)
図7は、共振子21の構成を模式的に示す平面図であり、図6に示す機能面27aの一部を拡大して示す図に相当している。
【0055】
図7では、便宜的に、D1軸、D2軸及びD3軸からなる直交座標系を付す。図7及び後述の図8を参照して共振子21について説明する場合においては、D3軸の正側を上方として、上面又は下面等の用語を用いることがある。なお、D1軸は、機能面27aに沿って伝搬する弾性波の伝搬方向に平行になるように定義され、D2軸は、機能面27aに平行かつD1軸に直交するように定義され、D3軸は、機能面27aに直交するように定義されている。
【0056】
共振子21は、いわゆる1ポート弾性波共振子によって構成されている。共振子21は、例えば、紙面両側に示された2つの配線31の一方から入力された信号を2つの配線31の他方から出力する。この際、共振子21は、電気信号から弾性波への変換及び弾性波から電気信号への変換を行う。
【0057】
共振子21は、例えば、既述の固着基板27(その少なくとも機能面27a側の一部)と、機能面27a上に位置する励振電極37と、励振電極37の両側に位置する1対の反射器39とを含んでいる。図6に例示したように、固着基板27は、複数の共振子21に共用されることがある。以下の説明では、便宜上、励振電極37及び1つの反射器39の組み合わせ(共振子21の電極部)が共振子21であるかのように表現することがある。励振電極37及び反射器39は、既述の導体層35によって構成されている。
【0058】
機能面27aは、圧電性を有している。励振電極37は、例えば、共振子21に入力された電気信号の波形に応じた波形を有する弾性波を機能面27aに生じさせることに寄与する。この弾性波の共振現象が利用されることによって図4及び図5に示したインピーダンスの周波数特性が実現される。反射器39は、弾性波の漏れを低減して、電気信号と弾性波との間の変換効率を向上させることに寄与する。
【0059】
(共振子の電極部)
励振電極37は、IDT(Interdigital Transducer)電極によって構成されており、1対の櫛歯電極41を含んでいる。なお、視認性を良くするために、一方の櫛歯電極41にはハッチングを付している。各櫛歯電極41は、例えば、バスバー43と、バスバー43から互いに並列に延びる複数の電極指45と、複数の電極指45間においてバスバー43から突出するダミー電極47とを含んでいる。1対の櫛歯電極41は、複数の電極指45が互いに噛み合うように(交差するように)配置されている。
【0060】
バスバー43は、例えば、概略、一定の幅で弾性波の伝搬方向(D1方向)に直線状に延びる長尺状に形成されている。そして、一対のバスバー43は、弾性波の伝搬方向に直交する方向(D2方向)において互いに対向している。なお、バスバー43は、幅が変化したり、弾性波の伝搬方向に対して傾斜したりしていてもよい。
【0061】
各電極指45は、例えば、概略、一定の幅で弾性波の伝搬方向に直交する方向(D2方向)に直線状に延びる長尺状に形成されている。各櫛歯電極41において、複数の電極指45は、弾性波の伝搬方向に配列されている。また、一方の櫛歯電極41の複数の電極指45と他方の櫛歯電極41の複数の電極指45とは、基本的には交互に配列されている。
【0062】
複数の電極指45のピッチp(例えば互いに隣り合う2本の電極指45の中心間距離)は、励振電極37内において基本的に一定である。なお、励振電極37は、一部にピッチpに関して特異な部分を有していてもよい。特異な部分としては、例えば、大部分(例えば8割以上)よりもピッチpが狭くなる狭ピッチ部、大部分よりもピッチpが広くなる広ピッチ部、少数の電極指45が実質的に間引かれた間引き部が挙げられる。
【0063】
以下において、ピッチpという場合、特に断りがない限りは、上記のような特異な部分を除いた部分(複数の電極指45の大部分)のピッチをいうものとする。また、特異な部分を除いた大部分の複数の電極指45においても、ピッチが変化しているような場合においては、大部分の複数の電極指45のピッチの平均値をピッチpの値として用いてよい。
【0064】
電極指45の本数は、共振子21に要求される電気特性等に応じて適宜に設定されてよい。図7は模式図であることから、電極指45の本数は少なく示されている。実際には、図示よりも多くの電極指45が配列されてよい。後述する反射器39のストリップ電極51についても同様である。
【0065】
複数の電極指45の長さは、例えば、互いに同等である。なお、励振電極37は、複数の電極指45の長さ(別の観点では交差幅)が伝搬方向の位置に応じて変化する、いわゆるアポダイズが施されていてもよい。電極指45の長さ及び幅は、要求される電気特性等に応じて適宜に設定されてよい。
【0066】
ダミー電極47は、例えば、概ね一定の幅で弾性波の伝搬方向に直交する方向に突出している。その幅は、例えば電極指45の幅と同等である。また、複数のダミー電極47は、複数の電極指45と同等のピッチで配列されており、一方の櫛歯電極41のダミー電極47の先端は、他方の櫛歯電極41の電極指45の先端とギャップを介して対向している。なお、励振電極37は、ダミー電極47を含まないものであってもよい。
【0067】
1対の反射器39は、弾性波の伝搬方向において複数の励振電極37の両側に位置している。各反射器39は、例えば、電気的に浮遊状態とされてもよいし、基準電位が付与されてもよい。各反射器39は、例えば、格子状に形成されている。すなわち、反射器39は、互いに対向する1対のバスバー43と、1対のバスバー43間において延びる複数のストリップ電極51とを含んでいる。複数のストリップ電極51のピッチ、及び互いに隣接する電極指45とストリップ電極51とのピッチは、基本的には複数の電極指45のピッチと同等である。
【0068】
1対の櫛歯電極41に電圧が印加されると、複数の電極指45によって圧電性を有する機能面27aに電圧が印加され、機能面27aが振動する。これにより、D1方向に伝搬する弾性波が励振される。弾性波は、複数の電極指45によって反射される。そして、複数の電極指45のピッチpを概ね半波長(λ/2)とする定在波が立つ。定在波によって圧電膜57に生じる電気信号は、複数の電極指45によって取り出される。このような原理により、共振子21は、ピッチpを半波長とする弾性波の周波数を共振周波数とする共振子として機能する。反共振周波数は、共振周波数及び容量比によって規定される。
【0069】
上記から理解されるように、原理的及び/又は原則的には、ピッチpを小さくすると、共振周波数(及び反共振周波数)は高くなる。より詳細には、共振周波数とピッチpとの関係は反比例の関係に近い。別の観点では、共振周波数が高い共振子21のピッチpは、共振周波数が低い共振子21のピッチpよりも短い。ただし、後述する説明から理解されるように、本実施形態においては、必ずしもこの限りではない。
【0070】
特に図示しないが、1つの共振子21は、図7に示した構成が2以上に分割されて構成されていてもよい。例えば、共振子21は、励振電極37及び1対の反射器39の組み合わせを複数有し、その複数の励振電極37が直列に接続されて構成されていてもよい。この場合、例えば、1つの励振電極37に印加される電圧を下げ、共振子21全体としての耐電力性を向上させることができる。各直列共振子21Sが複数の励振電極37を有しているか否かは、例えば、並列腕25との接続位置を基準に特定してよい。例えば、互いに直列に接続されている2つの励振電極37間に並列腕25が接続されていなければ、その2つの励振電極37は、同一の直列共振子21Sを構成している。
【0071】
(固着基板及び導体層)
図8は、図7のVIII-VIII線における断面図である。ここでは、チップ7Aの断面を紙面右側に、チップ7Bの断面を紙面左側に示している。両者の縮尺は一致している。
【0072】
まず、チップ7A及びチップ7Bに共通する事項について説明する。固着基板27は、例えば、支持基板53と、支持基板53上に位置する多層膜55と、多層膜55上に位置する圧電膜57とを有している。圧電膜57の上面は、既述の機能面27aを構成している。すなわち、導体層35(励振電極37等)は、圧電膜57上に位置している。
【0073】
圧電膜57は、例えば、電気信号と弾性波との間の変換に直接に寄与する部分である。多層膜55は、例えば、圧電膜57を伝搬する弾性波を反射して弾性波のエネルギーを圧電膜57に閉じ込めることに寄与している。支持基板53は、例えば、多層膜55及び圧電膜57の強度を補強することに寄与している。
【0074】
このような構成の固着基板27では、例えば、弾性波として、スラブモードのものが利用されてよい。スラブモードの弾性波の伝搬速度(音速)は、一般的なSAW(Surface Acoustic Wave)の伝搬速度よりも速い。例えば、一般的なSAWの伝搬速度が3000~4000m/sであるのに対して、スラブモードの弾性波の伝搬速度は10000m/s以上である。その結果、比較的高い周波数領域での共振及び/又はフィルタリングを実現することが容易化される。例えば、1μm以上のピッチpで5GHz以上の共振周波数を実現することも可能である。
【0075】
特に図示しないが、圧電膜57の上面は、導体層35(チップ端子29を除く)の上から絶縁性の保護膜によって覆われていてもよい。保護膜の材料は、例えば、SiO又はSiである。保護膜は、これらの材料からなる複数層の積層体であってもよい。保護膜は、単に導体層35の腐食を低減するためのものであってもよいし、温度補償に寄与するものであってもよい。保護膜が設けられる場合等において、励振電極37及び反射器39の上面又は下面には、弾性波の反射係数を向上させるために、絶縁体又は金属からなる付加膜が設けられてもよい。
【0076】
チップ7の各層の具体的な構成は、例えば、以下のとおりである。
【0077】
(支持基板)
支持基板53は、直接的には、共振子21の電気的特性に影響しない。従って、支持基板53の材料及び寸法は適宜に設定されてよい。支持基板53の材料は、例えば、絶縁材料であり、絶縁材料は、例えば、樹脂又はセラミックである。なお、支持基板53は、圧電膜57等に比較して熱膨張係数が低い材料によって構成されていてもよい。この場合、例えば、温度変化によって共振子21の周波数特性が変化してしまう蓋然性を低減することができる。このような材料としては、例えば、シリコン等の半導体、サファイア等の単結晶及び酸化アルミニウム質焼結体等のセラミックを挙げることができる。なお、支持基板53は、互いに異なる材料からなる複数の層が積層されて構成されていてもよい。支持基板53の厚さは、例えば、圧電膜57よりも厚い。
【0078】
(多層膜)
多層膜55は、複数の音響膜59を順に積層することによって構成されている。複数の音響膜59は、互いに重なり合うもの同士で材料が互いに異なっている。別の観点では、複数の音響膜59は、互いに重なり合うもの同士で音響インピーダンスが互いに異なっている。これにより、例えば、互いに重なり合う音響膜59の界面において弾性波を反射させることが容易化される。図示の例では、第1音響膜59Aと、当該第1音響膜59Aの材料とは異なる材料からなる第2音響膜59Bとが交互に積層されている。すなわち、多層膜55は、2種の材料によって構成されている。もちろん、図示の例とは異なり、多層膜55は、3種以上の材料によって構成されていてもよい。
【0079】
複数の音響膜59の材料は、音響インピーダンス等の観点から適宜に設定されてよい。例えば、第2音響膜59Bの材料の音響インピーダンスは、第1音響膜59Aの材料の音響インピーダンスよりも高くされてよい。これにより、例えば、両者の界面において弾性波の反射率が比較的高くなる。具体的には、例えば、第1音響膜59Aの材料は、二酸化ケイ素(SiO)とされてよい。この場合において、第2音響膜59Bの材料は、例えば、五酸化タンタル(Ta)、酸化ハフニウム(HfO)、二酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化チタン(TiO)又は酸化マグネシウム(MgO)とされてよい。
【0080】
第1音響膜59A及び第2音響膜59Bの音響インピーダンスの関係が上記のようなものである場合において、圧電膜57に接する層は、例えば、第1音響膜59Aとされてよい。支持基板53に接する層については第1音響膜59Aであってもよいし、第2音響膜59Bであってもよい。
【0081】
多層膜55の積層数(音響膜59の層数)は適宜に設定されてよい。一例を挙げると、積層数は、3層以上12層以下である。もちろん、積層数は、2層であってもよいし、13層以上であってもよい。また、積層数は、偶数でもよいし、奇数でもよい。
【0082】
音響膜59の厚さは適宜に設定されてよい。例えば、各チップ7において、全ての音響膜59は、互いに厚さが同一であってもよいし、一部又は全部の音響膜59同士において互いに厚さが異なっていてもよい。図示の例では、各チップ7において、複数の第1音響膜59Aの厚さは互いに同一であり、複数の第2音響膜59Bの厚さは互いに同一である。また、この例では、第1音響膜59Aの厚さと、第2音響膜59Bの厚さとは互いに異なっている。換言すれば、互いに同一の材料からなる音響膜59同士は同一の厚さを有し、互いに異なる材料からなる音響膜59同士は互いに異なる厚さを有している。ただし、図示の例とは異なり、第1音響膜59Aの厚さと第2音響膜59Bの厚さとが互いに同一であってもよいし、第1音響膜59A同士で厚さが異なっていてもよいし、第2音響膜59B同士で厚さが異なっていてもよい。
【0083】
互いに重なり合う音響膜59の間には、両者の密着性の向上及び/又は拡散の低減のための付加的な層が挿入されてもよい。付加的な層の厚さは、特性への影響が無視できる程度に薄くされる。例えば、付加的な層の厚さは概ね2pの1%以下である。本開示の説明においては、そのような付加的な層が設けられている場合においても、付加的な層の存在を無視した表現をすることがある。圧電膜57と多層膜55との間等についても同様である。
【0084】
(圧電膜)
圧電膜57は、例えば、圧電性を有する単結晶によって構成されている。より具体的には、例えば、圧電膜57は、タンタル酸リチウム(LiTaO)の単結晶又はニオブ酸リチウム(LiNbO)の単結晶によって構成されている。圧電膜57のカット角は、公知のカット角も含め、種々のものとされてよい。例えば、圧電膜57は、回転YカットX伝搬のものとされてよい。すなわち、弾性波の伝搬方向(D1方向)とX軸とは略一致してよい(例えば両者の差は±10°)。このときの圧電膜57の法線(D3軸)に対するY軸の傾斜角は適宜に設定されてよい。
【0085】
(導体層)
導体層35は、これまでに述べてきたように、例えば、励振電極37、反射器39、配線31及びチップ端子29を構成している。なお、これらの各部位のいずれかは、その全部又は一部が導体層35以外の導体層によって構成されていてもよい。例えば、励振電極37、反射器39及び配線31の厚み全部が導体層35によって構成される一方で、チップ端子29は、導体層35とその上に重ねられた他の導体層とによって構成されていてもよい。
【0086】
導体層35は、例えば、金属により形成されている。金属は、適宜な種類のものとされてよく、例えば、アルミニウム(Al)又はAlを主成分とする合金(Al合金)である。Al合金は、例えば、アルミニウム-銅(Cu)合金である。なお、導体層35は、複数の金属層から構成されていてもよい。例えば、Al又はAl合金と、圧電膜57との間に、これらの接合性を強化するためのチタン(Ti)からなる比較的薄い層が設けられていてもよい。
【0087】
(厚さの一例)
各層の具体的な厚さは適宜に設定されてよい。以下では、その一例を示す。上記のように電極指45のピッチをpとする。このとき、圧電膜57の厚さは、0.3p以上0.6p以下とされてよい。第1音響膜59Aの厚さは、0.10p以上又は0.14p以上とされてよく、また、0.28p以下又は0.26p以下とされてよく、前記の下限と上限とは適宜に組み合わされてよい。また、第2音響膜59Bの厚さは、0.08p以上又は1.90p以上とされてよく、また、2.00p以下又は0.20p以下とされてよく、前記の下限と上限とは、矛盾しない限り、適宜に組み合わされてよい。導体層35の厚さは、例えば、0.04p以上0.17p以下とされてよい。
【0088】
(チップ同士の異同)
既述のように、チップ7A及び7Bは、共振子21の共振周波数が互いに異なっている。ここでは、チップ7Aが有する共振子21の共振周波数がチップ7Bが有する共振子21の共振周波数よりも高いものとする。従って、例えば、バンドパスフィルタとしてのフィルタ1においては、直列共振子21Sを有するチップ7Sはチップ7Aであり、並列共振子21Pを有するチップ7Pはチップ7Bである。逆に、バンドエリミネーションフィルタとしてのフィルタ1においては、並列共振子21Pを有するチップ7Pがチップ7Aであり、直列共振子21Sを有するチップ7Sがチップ7Bである。
【0089】
チップ7Aとチップ7Bとは、複数の音響膜59及び圧電膜57の、合計の積層数、積層方向における材料の並び順及び膜同士の厚さの比が互いに同じである。一方で、チップ7Aとチップ7Bとは、複数の音響膜59及び圧電膜57の合計厚さが互いに異なっている。具体的には、チップ7Aにおける複数の音響膜59及び圧電膜57の合計厚さは、チップ7Bにおける複数の音響膜59及び圧電膜57の合計厚さよりも薄い。換言すれば、膜同士の比率を維持したままチップ7Bの多層膜55及び圧電膜57の構成を厚さ方向に縮小すると、チップ7Aの多層膜55及び圧電膜57の構成となる。
【0090】
例えば、図示の例では、いずれのチップ7においても、合計の積層数は、7層(音響膜59の6層及び圧電膜57の1層)である。従って、チップ7Aとチップ7Bとは、複数の音響膜59及び圧電膜57の合計の積層数が同一である。
【0091】
図示の例について、さらに、第1音響膜59Aの材料としてSiOを例に取り、第2音響膜59Bの材料としてTaを例に取り、圧電膜57の材料としてLiTaOを例に取る。このとき、いずれのチップ7においても、下から順に、Ta、SiO、Ta、SiO、Ta、SiO、LiTaOの順に積層されている。かつLiTaOのカット角はチップ7Aとチップ7Bとで同一である。従って、チップ7Aとチップ7Bとは、複数の音響膜59及び圧電膜57の、その積層方向における材料の並び順が同一である。
【0092】
なお、上記のように、カット角がフィルタ1の周波数特性に影響を及ぼす層(圧電膜57)については、カット角が同一である場合に同一の材料であるものとされてよい。逆に言えば、各層において、フィルタ1の周波数特性に及ぼす影響を無視できる事項については、同一の材料か否かの判断において考慮されなくてよい。
【0093】
図示の例では、以下のように表される下側の層からの厚さの比、第2音響膜59B(最下層)の厚さ:第1音響膜59Aの厚さ(下から2層目):第2音響膜59Bの厚さ(下から3層目):第1音響膜59Aの厚さ(下から4層目):第2音響膜59Bの厚さ(下から5層目):第1音響膜59Aの厚さ(下から6層目):圧電膜57の厚さは、チップ7Aとチップ7Bとで同一である。従って、チップ7Aとチップ7Bとは、複数の音響膜59及び圧電膜57の膜同士の厚さの比が同一である。
【0094】
なお、チップ7Aにおける膜同士の比と、チップ7Bにおける膜同士の比とが同一であるといっても、製造の精度に起因する差及び本開示の趣旨に照らして許容可能な差等が存在してもよいことはもちろんである。例えば、チップ7Aにおける比(第1の膜の厚さ/第2の膜の厚さとする。)と、チップ7Bにおける比(前記第1の膜に対応する膜の厚さ/前記第2の膜に対応する膜の厚さとする。)との差が、チップ7Aにおける比とチップ7Bにおける比との平均の5%以内の場合、チップ7Aにおける比とチップ7Bにおける比とは互いに同一であると捉えられてよい。
【0095】
膜厚比の差が5%以内の範囲で、各膜の厚みが変動しても、共振子21としての特性を維持することができる。例えば、図12図13に圧電膜の厚さおよび音響膜の厚さがインピーダンスの位相の最大値に及ぼす影響をシミュレーションした結果を示す。
【0096】
(圧電膜の厚さ)
電極指45のピッチp及び圧電膜57の厚さt0を種々設定し、共振子21の特性をシミュレーション計算により求めた。ピッチp及び厚さt0以外のシミュレーションの条件は、以下のとおりである。
圧電膜:
材料:LiTaO
オイラー角:(0°,16°,0°)
厚さ:t0
第1音響膜:
材料:SiO
厚さ(t1): t0:t1=0.40:0.20となるようにt0の値に応じて設定
第2音響膜:
材料:HfO
厚さ(t2): t0:t2=0.40:0.16となるようにt0の値に応じて設定
【0097】
図12は、インピーダンスの位相の最大値θmaxを算出した結果を示す等高線図である。この図において、線L21及び線L22は、最大値θmaxが概ね82°以上となる範囲を示す直線である。
【0098】
図12において、同じピッチの一の値に着目すると、最大値θmaxの値が所定の大きさ以上(例えば82°以上)となる厚さt0の値には幅があることが分かる。例えば、±5%程度の変動は可能であることが分かる。
【0099】
(音響膜の厚さ)
次に、上記のシミュレーションにおける第1音響膜59Aの厚さt1及び第2音響膜59Bの厚さt2の圧電膜7の厚さt0の値に対する比率は、インピーダンスの位相の最大値θmaxが大きくなるように選択されている。具体的には、以下のとおりである。
【0100】
厚さt0の値を一定としつ、厚さt1及び厚さt2の値を種々設定してシミュレーション計算を行い、共振子21の特性をシミュレーション計算により求めた。このシミュレーションの条件は、図12に係るシミュレーションの条件と概ね同様である。以下に、図12に係るシミュレーションの条件と異なる条件を示す。
圧電膜の厚さt0:0.40μm
第1層の厚さt1:0.16μm~0.24μm
第2層の厚さt2:0.06μm~0.28μm
【0101】
図13は、上記のシミュレーションによって算出されたインピーダンスの位相の最大値θmaxを示す図である。
【0102】
この図に示されているように、t1=0.20μmかつt2=0.16μmのときに、最大値θmaxは大きな値をとっている。このときの厚さt0~t2の比率は、図12のシミュレーションの条件の説明でも述べた、下記の比率となる。
t0:t1:t2=0.40:0.20:0.16
【0103】
図13では、厚さt1及び/又は厚さt2の値が上記比率となる値から0.02μm程度異なっていても、最大値θmaxの値として大きな値が得られることが分かる。0.02μmは、厚さt0(0.40μm)の5%である。従って、厚さt1及び厚さt2は、第1構成例と同様に、上記の比率から±5%以内の範囲とされてもよいことが分かる。
【0104】
また、各膜の厚さは、膜同士の厚さの比が互いに同じとしたときの値から、前記圧電膜の厚さは97%以上103%以下であり、前記複数の音響膜のそれぞれの厚さは95%以上105%以下としてもよい。このような値にすることで、周波数特性を安定して実現することができる。
【0105】
図示の例では、チップ7Aにおける支持基板53の上面から圧電膜57の上面までの厚さは、チップ7Bにおける支持基板53の上面から圧電膜57の上面までの厚さよりも薄い。従って、チップ7Aとチップ7Bとは、複数の音響膜59及び圧電膜57の合計厚さが互いに異なっている。
【0106】
多層膜55及び圧電膜57の厚さに対する導体層35(励振電極37及び反射器39)の厚さの比率は、チップ7Aとチップ7Bとで同一であってもよいし(図示の例)、異なっていてもよい。同様に、多層膜55及び圧電膜57の厚さに対する支持基板53の厚さの比率は、チップ7Aとチップ7Bとで同一であってもよいし(図示の例)、異なっていてもよい。また、チップ7Aにおける複数の音響膜59及び圧電膜57の合計厚さと、チップ7Bにおける複数の音響膜59及び圧電膜57の合計厚さとの比は、チップ7Aのピッチpとチップ7Bのピッチpとの比と同等であってもよいし(図示の例)、異なっていてもよい。
【0107】
以上のとおり、本実施形態では、弾性波フィルタ1は、第1チップ(チップ7A)と、チップ7Aと電気的に接続されている第2チップ(チップ7B)とを有している。これらのチップ7それぞれは、順に積層的に配置されている支持基板53、複数の音響膜59、圧電膜57及び励振電極37を有している。複数の音響膜59は、支持基板53上に順に積層されており、互いに重なり合うもの同士で材料が互いに異なっている。チップ7Aとチップ7Bとは、複数の音響膜59及び圧電膜57の、合計の積層数、積層方向における材料の並び順及び膜同士の厚さの比が互いに同じである。また、チップ7Aと及びチップ7Bとは、複数の音響膜59及び圧電膜57の合計厚さが互いに異なっている。
【0108】
従って、例えば、1つのチップ7によって弾性波フィルタを構成した場合に比較して、フィルタ1の挿入損失及びスプリアスを低減することができる。具体的には、例えば、以下のとおりである。
【0109】
直列共振子21Sと並列共振子21Pとの間の周波数差は、通常、励振電極37のピッチpを直列共振子21Sと並列共振子21Pとで異ならせることによって実現される。一方、フィルタ1のように多層膜55及び圧電膜57を用いた高周波デバイスにおいては、ピッチpを小さくしても共振子21の周波数が高くなり難い。その結果、直列共振子21Sと並列共振子21Pとの間の周波数差を確保することが困難になる。
【0110】
また、多層膜55及び圧電膜57の材料及び膜厚等については、例えば、挿入損失及びスプリアスが低減されるように、シミュレーション及び/又は実験に基づいて最適設計がなされる(最適な設計値が求められる)。この設計値は、例えば、ピッチpとの相関が高い。従って、直列共振子21Sと並列共振子21Pとの間でピッチpの差を大きくして、両者の周波数差を確保しようとすると、少なくとも一方の共振子21において挿入損失及び/又はスプリアスが増加することになる。
【0111】
ここで、先行出願1に示されているように、圧電膜57及び/又は多層膜55が薄くなると、共振周波数が高くなる。一方、本実施形態では、チップ7Aの膜厚をチップ7Bの膜厚よりも薄くしている。従って、チップ7Aにおける周波数をチップ7Bにおける周波数よりも高くすることが容易化される。ひいては、直列共振子21Sと並列共振子21Pとの間の周波数差を確保することが容易化される。
【0112】
また、チップ7Aとチップ7Bとの間で、圧電膜57及び多層膜55における、積層数、材料の積層順及び膜厚比はそれぞれ互いに同一である。従って、例えば、各チップ7において、ピッチpとの相関において最適設計に近い圧電膜57及び多層膜55の構成を採用することができる。その結果、フィルタ1全体として、挿入損失及び/又はスプリアスを低減することができる。
【0113】
なお、上記の説明から理解されるように、基本的に、ピッチpが相対的に小さいチップ7(ここでは7A)において、圧電膜57及び多層膜55の合計の厚さが薄くされる。ただし、既に言及したように、チップ7Aとチップ7Bとの間のピッチpの比と、チップ7Aとチップ7Bとの間の圧電膜57及び多層膜55の合計の厚さの比とは同一とは限らない。例えば、各チップ7の設計において種々のパラーメータについて総合的に最適値を求めた結果、ピッチpに対する多層膜55及び圧電膜57の合計の厚さの比が2つのチップ7同士で互いに異なるものとなる場合がある。また、2つのチップ7(7S及び7Pとは限らない)の周波数差の程度、及び/又は各種の層の厚さによっては、チップ7Aのピッチpとチップ7Bのピッチpとが同等となることもあり得る。
【0114】
また、本実施形態では、フィルタ1は、バンドパスフィルタを含んでいてよい。具体的には、チップ7Aは、複数の直列共振子21Sを有していてよい(チップ7Sであってよい)。チップ7Bは、複数の並列共振子21Pを有していてよい(チップ7Pであってよい)。複数の直列共振子21Sの共振周波数は、複数の並列共振子21Pの共振周波数よりも高くされてよい。複数の直列共振子21S及び複数の並列共振子21Pは、互いに電気的に接続されてラダー型のバンドパスフィルタを構成してよい。チップ7Aにおける複数の音響膜59及び圧電膜57の合計厚さがチップ7Bにおける複数の音響膜59及び圧電膜57の合計厚さよりも薄くされてよい。
【0115】
この場合、例えば、比較的高い周波数帯(例えば5GHz)に通過帯域を有するバンドパスフィルタを実現することができる。そして、このようなバンドパスフィルタにおいて、挿入損失及びスプリアスを低減することができる。
【0116】
また、本実施形態では、フィルタ1は、バンドエリミネーションフィルタを含んでいてよい。具体的には、チップ7Aは、複数の並列共振子21Pを有していてよい(チップ7Pであってよい)。チップ7Bは、複数の直列共振子21Sを有していてよい(チップ7Sであってよい)。複数の直列共振子21Sの共振周波数は、複数の並列共振子21Pの共振周波数よりも低くされてよい。複数の直列共振子21S及び複数の並列共振子21Pは、互いに電気的に接続されてラダー型のバンドパスフィルタを構成してよい。チップ7Aにおける複数の音響膜59及び圧電膜57の合計厚さがチップ7Bにおける複数の音響膜59及び圧電膜57の合計厚さよりも薄くされてよい。
【0117】
この場合、例えば、比較的高い周波数帯(例えば5GHz)に通過帯域を有するバンドエリミネーションフィルタを実現することができる。そして、このようなバンドエリミネーションフィルタにおいて、挿入損失及びスプリアスを低減することができる。
【0118】
上記のバンドパスフィルタ及びバンドエリミネーションフィルタについての記述は、以下のように纏めることができる。本実施形態では、チップ7A及び7Bのそれぞれは、共振子21を有してよい。チップ7Aの共振子21の共振周波数は、チップ7Bの共振子21の共振周波数よりも高くされてよい。チップ7Aにおける複数の音響膜59及び圧電膜57の合計厚さがチップ7Bにおける複数の音響膜59及び圧電膜57の合計厚さよりも薄くされてよい。
【0119】
また、本実施形態では、例えば、チップ7Aの支持基板53の厚さは、チップ7Bの支持基板53の厚さよりも薄い。
【0120】
支持基板53は、例えば、支持基板53と多層膜55(及び圧電膜57)との間に生じる熱応力によって励振電極37(共振子21)の温度特性に影響を及ぼす。従って、多層膜55及び圧電膜57が相対的に薄いチップ7Aにおいて支持基板53が相対的に薄いことによって、2つのチップ7の間で温度特性を同等にすることが容易化される。別の観点では、2つのチップの双方において温度特性を向上させることが容易化される。
【0121】
また、本実施形態では、フィルタ1は、実装基板5及び封止部9を更に有している。実装基板5は、チップ7A及び7Bが実装されている第1面(実装基板5の上面)を有している。封止部9は、チップ7A及び7Bの上から実装基板5の上面を覆っている。実装基板5の上面からチップ7Aの実装基板5とは反対側の面までの高さh1は、実装基板5の上面からチップ7Bの実装基板5とは反対側の面までの高さh2よりも低い。実装基板5の上面から封止部9の実装基板5とは反対側の面までの高さは、チップ7Aの位置とチップ7Bの位置とで同じである。
【0122】
この場合、例えば、高さh1と高さh2とが同じ態様(当該態様も本開示に係る技術に含まれる。)に比較して、フィルタ1の温度が上昇したときのチップ7Aの周波数の変化量が小さい。すなわち、チップ7Aの温度特性が向上する。一方で、高さh1と高さh2とが同じ態様に比較して、チップ7Bの温度特性は低下する。これは、発明者らの実験によって確認されている。このような作用が生じる理由としては、例えば、高さh1が低いと、封止部9のチップ7A上の部分が厚くなり、チップ7Aの反りを抑制する効果が向上することが挙げられる。また、例えば、高さh1が低いと、封止部9のうちチップ7Aの上方に位置する部分がチップ7Bの側方に位置することになり、チップ7Bの側面に応力を付与し、チップ7Bの反りを助長することが挙げられる。ここで、上記のような封止部9の影響を無視したときに、周波数が相対的に高いチップ7Aは、チップ7Bに比較して温度特性が低くなりやすい。そこで、封止部9の影響を考慮したときに、チップ7Aの温度特性をチップ7Bの温度特性に優先して向上させることによって、フィルタ1全体として、温度特性を向上させることができる。
【0123】
また、本実施形態では、支持基板53と多層膜55とが直接接合されているが、間に追加層を含んでいてもよい。追加層としては、密着層や絶縁層であってもよいし、多層膜と同じ材料からなる積層膜であってもよい。そして、このような追加層は、チップ7Aとチップ7Bとの両方に設けてもよいし、いずれか一方のみに設けてもよい。
【0124】
また、本実施形態では、チップ7Aとチップ7Bとで音響膜と圧電膜との厚さの比率を同一とし総厚みを異ならせることで、周波数差を実現しつつスプリアスを抑制する構成について例示したが、必ずしも層厚みを異ならせる必要はないのは勿論である。1つのフィルタでチップを分割して構成することで、先に述べたように共振子のレイアウトを調整することもできるし、例えば、2つのチップで電極材料や電極の層構成を異ならせたりして、耐電力を要する共振子のみ耐電力性をあげるようにしてもよい。また、2つのチップで実装基板への実装方法を異ならせることもできる。すなわち、一方のチップのみいわゆるウェハレベルパッケージとして、他方のチップは図2に示すように実装されていてもよい。一般的に樹脂で構成されるウェハレベルパッケージにはCu配線等を精度よくパターニングすることができるので、インダクタや容量を精度よく作りこむ必要のある共振子のみウェハレベルパッケージされるチップに作成してもよい。
【0125】
<弾性波フィルタの利用例>
以下、上述したフィルタ1を含む種々の電子部品及び電子機器をいくつか例示する。
【0126】
(分波器)
図9は、フィルタ1の利用例としての分波器101の構成を模式的に示す回路図である。この図の紙面左上に示された符号から理解されるように、この図では、櫛歯電極41が二叉のフォーク形状によって模式的に示され、反射器39は両端が屈曲した1本の線で表わされている。
【0127】
図示の分波器101は、より詳細には、デュプレクサとして構成されている。分波器101は、例えば、送信端子105からの送信信号をフィルタリングしてアンテナ端子103へ出力する送信フィルタ109と、アンテナ端子103からの受信信号をフィルタリングして1対の受信端子107に出力する受信フィルタ111とを有している。
【0128】
図示の例では、バンドパスフィルタとしてのフィルタ1が送信フィルタ109に利用されている。特に図示しないが、バンドパスフィルタとしてのフィルタ1は、送信フィルタ109に代えて、又は加えて、受信フィルタ111に利用されてもよい。
【0129】
分波器101は、例えば、送信フィルタ109を構成するチップ(ここではチップ7)と、受信フィルタ111を構成するチップとが同一の実装基板5に実装されて構成されてよい。この場合において、フィルタ1(ここでは送信フィルタ109)の一部と、他のフィルタ(ここでは受信フィルタ111)の一部又は全部とが同一のチップに設けられても構わない。又は、例えば、送信フィルタ109及び受信フィルタ111は、互いに別個に実装基板5及びチップを有しており(別個にパッケージされており)、不図示の回路基板に共に実装されていてもよい。
【0130】
上記の説明から理解されるように、アンテナ端子103、送信端子105及び/又は受信端子107は、チップ端子29(図6)と捉えられてもよいし、外部端子3(図1図3)と捉えられてもよいし、フィルタ1が実装される不図示の回路基板に設けられている端子と捉えられてもよい。基準電位部108が端子である場合に、当該端子についても同様である。例えば、図示の例においては、送信端子105は、(送信フィルタ109としてのフィルタ1にとって)入力用チップ端子29A又は入力用外部端子3Aと捉えられてよい。アンテナ端子103は、出力用チップ端子29B又は出力用外部端子3Bと捉えられてよい。基準電位部108は、基準電位用チップ端子29G又は基準電位用外部端子3Gと捉えられてよい。
【0131】
上記のように、図示の例では、送信フィルタ109は、フィルタ1によって構成されている。フィルタ1の構成については、既に述べたとおりである。なお、既述のように、直列共振子21S及び並列共振子21Pの数は適宜に設定されてよく、図9では、図3及び図6とは異なる数で直列共振子21S及び並列共振子21Pが示されている。
【0132】
受信フィルタ111は、図示の例では、共振子21と、多重モード型フィルタ(ダブルモード型フィルタを含むものとする。)113とを含んで構成されている。多重モード型フィルタ113は、弾性波の伝搬方向に配列された複数(図示の例では3つ)の励振電極37と、その両側に配置された1対の反射器39とを有している。
【0133】
(通信装置)
図10は、フィルタ1の利用例としての通信装置151の要部を示すブロック図である。通信装置151は、電波を利用した無線通信を行うものであり、例えば、上記の分波器101を含んでいる。
【0134】
通信装置151において、送信すべき情報を含む送信情報信号TISは、RF-IC(Radio Frequency Integrated Circuit)153によって変調及び周波数の引き上げ(搬送波周波数を有する高周波信号への変換)がなされて送信信号TSとされる。送信信号TSは、バンドパスフィルタ155によって送信用の通過帯以外の不要成分が除去され、増幅器157によって増幅されて分波器101(送信端子105)に入力される。そして、分波器101(送信フィルタ109)は、入力された送信信号TSから送信用の通過帯以外の不要成分を除去し、その除去後の送信信号TSをアンテナ端子103からアンテナ159に出力する。アンテナ159は、入力された電気信号(送信信号TS)を無線信号(電波)に変換して送信する。
【0135】
また、通信装置151において、アンテナ159によって受信された無線信号(電波)は、アンテナ159によって電気信号(受信信号RS)に変換されて分波器101(アンテナ端子103)に入力される。分波器101(受信フィルタ111)は、入力された受信信号RSから受信用の通過帯以外の不要成分を除去して受信端子107から増幅器161へ出力する。出力された受信信号RSは、増幅器161によって増幅され、バンドパスフィルタ163によって受信用の通過帯以外の不要成分が除去される。そして、受信信号RSは、RF-IC153によって周波数の引き下げ及び復調がなされて受信情報信号RISとされる。
【0136】
なお、送信情報信号TIS及び受信情報信号RISは、適宜な情報を含む低周波信号(ベースバンド信号)でよく、例えば、アナログの音声信号もしくはデジタル化された信号である。無線信号の通過帯は、適宜に設定されてよく、本実施形態では、比較的高周波の通過帯(例えば5GHz以上)も可能である。変調方式は、位相変調、振幅変調、周波数変調もしくはこれらのいずれか2つ以上の組み合わせのいずれであってもよい。回路方式は、図10では、ダイレクトコンバージョン方式を例示したが、それ以外の適宜なものとされてよく、例えば、ダブルスーパーヘテロダイン方式であってもよい。また、図10は、要部のみを模式的に示すものであり、適宜な位置にローパスフィルタやアイソレータ等が追加されてもよいし、また、増幅器等の位置が変更されてもよい。
【0137】
(複合フィルタ)
図11(a)は、フィルタ1の利用例としての複合フィルタ201の構成を模式的に示すブロック図である。
【0138】
複合フィルタ201は、例えば、入力端子203Aに入力された信号のうち所定の通過帯域の信号を出力端子203Bから出力するバンドパスフィルタとして構成されている。複合フィルタ201は、入力端子203Aと出力端子203Bとの間に直列に接続された広帯域フィルタ205と、バンドエリミネーションフィルタとしてのフィルタ1(以下、「フィルタ1E」というものとする。)とを有している。なお、広帯域フィルタ205及びフィルタ1Eの入力端子203A側から出力端子203B側への接続順は、図示の例とは逆であってもよい。
【0139】
広帯域フィルタ205は、弾性波フィルタであってもよいし、弾性波を利用しないフィルタであってもよい。後者としては、例えば、インダクタ(コイル)及びキャパシタ(コンデンサ)を含む並列共振回路を利用するもの、及び導体間に誘電体を配置した誘電体共振器を利用するもの(誘電体フィルタ)を挙げることができる。並列共振回路を利用するものとしては、例えば、セラミックからなる積層基板にインダクタ及びキャパシタとなる導体を配置したLTCC(Low Temperature Co-fired Ceramics)フィルタを挙げることができる。
【0140】
入力端子203A及び出力端子203Bは、図9に示した各種の端子と同様に、チップ端子29と捉えられてもよいし、外部端子3と捉えられてもよいし、広帯域フィルタ205及びフィルタ1が実装される不図示の回路基板に設けられた端子と捉えられてもよい。別の観点では、広帯域フィルタ205及びフィルタ1Eは、例えば、一部が同一のチップに構成されていてもよいし、互いに異なるチップに構成されて共にパッケージングされていてもよいし、互いに別個にパッケージングされて不図示の回路基板に実装されていてもよい。
【0141】
図11(b)は、広帯域フィルタ205及びフィルタ1Eのフィルタ特性を示す図であり、図4及び図5の下部のグラフと同様の図である。線LWは、広帯域フィルタ205の特性を示している。線LEは、フィルタ1Eの特性を示している。
【0142】
広帯域フィルタ205の通過帯域PBwは、例えば、フィルタ1Eの阻止帯域EBの帯域幅よりも広い。また、広帯域フィルタ205の通過帯域PBwの両側の減衰量の変化率(ここでは絶対値のみに着目する。以下、同様。)は、フィルタ1Eの阻止帯域EBの両側の減衰量の変化率よりも小さい(傾きが緩やかである。)。通常、この変化率が大きいほどフィルタの特性がよいとされる。阻止帯域EBは、通過帯域PBwに対してその低周波側に隣接している。
【0143】
図11(c)は、複合フィルタ201のフィルタ特性を示す図であり、図11(b)と同様の図である。
【0144】
この図に示されているように、複合フィルタ201のフィルタ特性は、広帯域フィルタ205のフィルタ特性において、通過帯域PBwの低周波側における減衰量の変化率を大きくしたようなものとなる。当該変化率は、フィルタ1Eの阻止帯域EBの高周波側における変化率と概ね同等である。このように、フィルタ1Eと、他のフィルタとを組み合わせることによって、例えば、通過帯域が比較的広く、かつ通過帯域の端部における減衰量の変化率を大きくしたフィルタ特性を得ることができる。
【0145】
なお、図示の例では、通過帯域PBwの低周波側に隣接する阻止帯域EBを有するフィルタ1Eを設けたが、当該フィルタ1Eに代えて、又は加えて、通過帯域PBwの高周波側に隣接する阻止帯域EBを有するフィルタ1Eを設けてもよい。通過帯域PBwと阻止帯域EBとは、端部の周波数が一致していてもよいし、離れていてもよいし、重複していてもよく、また、端部の周波数差(隣接の程度)も適宜に設定されてよい。複合フィルタ201は、例えば、分波器101における送信フィルタ109及び/又は受信フィルタ111に利用されてもよいし、通信装置151のバンドパスフィルタ155及び/又は163に利用されてもよい。
【0146】
本開示に係る技術は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
【0147】
フィルタがラダー型共振子フィルタである場合において、2以上のチップに分配される複数の共振子は、直列共振子及び並列共振子に限定されない。例えば、複数の直列共振子は、原則的には、互いに同一の共振周波数を有している。ただし、フィルタ特性を向上させるために、直列共振子同士で共振周波数が若干ずれるように調整されることがある。このような場合において、共振周波数が互いにずれている複数の直列共振子が、膜厚の絶対値が互いに異なる複数のチップに分配されてもよい。複数の並列共振子についても同様である。
【0148】
膜厚の絶対値が互いに異なる複数のチップを有するフィルタは、ラダー型共振子フィルタに限定されない。例えば、図9では、共振子21と、多重モード型フィルタ113とを有する受信フィルタ111を示した。この共振子21と、多重モード型フィルタ113とが、2つのチップに分配されてもよい。また、例えば、フィルタは、図3に示したラダー型共振子フィルタにおいて、並列共振子に代えてインダクタを設けたものであってもよい。そして、複数の直列共振子が膜厚の絶対値が互いに異なる複数のチップに分配されてよい。
【0149】
フィルタのパッケージは、実施形態に示した構成以外の種々の構成を有してよい。例えば、各チップは、箱状のカバーが励振電極37を覆うように固着基板27に被せられる構成(いわゆるウェハレベルパッケージ型の弾性波チップ)とされてもよい。そして、チップは、カバーの天面を実装基板5に向けて実装されてよい。
【0150】
実施形態では、支持基板53、多層膜55及び圧電膜57は、同等の広さを有しているものとして図示された。ただし、これらは互いに広さが異なっていてもよい。例えば、圧電膜57の面積が多層膜55の面積よりも小さくされて多層膜55の上面の一部が露出していてもよい。また、例えば、多層膜55(及び圧電膜57)の面積が支持基板53の面積よりも小さくされて支持基板53の上面の一部が露出していてもよい。なお、このような場合において、チップ端子29は、圧電膜57上ではなく、多層膜55又は支持基板53の上面に位置していてもよい。
【0151】
複数のフィルタを含む分波器は、デュプレクサに限定されない。例えば、分波器(マルチプレクサ)は、3つのフィルタを含むトリプレクサであってもよいし、4つのフィルタを含むクアッドプレクサであってもよい。技術分野によっては、マルチプレクサの語は、狭義の意味に用いられることがある。例えば、マルチプレクサの語は、2以上の信号を混合して出力するデバイスのみを指す用語として用いられることがある。本開示においては、マルチプレクサの語は、広義に用いられ、例えば、信号を混合する機能は有していなくてもよい。
【符号の説明】
【0152】
1…弾性波フィルタ、7A…第1チップ、7B…第2チップ、37…励振電極、53…支持基板、57…圧電膜、59…音響膜。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13