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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134868
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】OFケーブルの端末処理方法
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/06 20060101AFI20230921BHJP
   H02G 15/23 20060101ALI20230921BHJP
   H01B 13/012 20060101ALI20230921BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20230921BHJP
   H01B 9/06 20060101ALN20230921BHJP
【FI】
H02G1/06
H02G15/23
H01B13/012 A
H01B13/00 541
H01B9/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022039780
(22)【出願日】2022-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000141060
【氏名又は名称】株式会社関電工
(74)【代理人】
【識別番号】100094617
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 正浩
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 立雄
(72)【発明者】
【氏名】土橋 勝彦
【テーマコード(参考)】
5G352
【Fターム(参考)】
5G352CA09
5G352CD01
(57)【要約】
【課題】OFケーブルの端部から絶縁油が流れ出ている事態の発生を阻止した状態で、火器を使用せず種々の施工を行うことを実現することにより、使用済みのOFケーブルの端部における漏油を確実に防止した、OFケーブルの端末処理方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係るOFケーブルの端末処理方法は、OFケーブルの端部において、OFケーブルの油通路を閉鎖する工程と、OFケーブルの端部に耐油ゴム製のキャップを装着する工程と、から成る。OFケーブルの油通路を閉鎖する工程は、油通路に耐油ゴム製の円錐台形のくさび部材を打ち込む手段を用いる。OFケーブルの端部に耐油ゴム製のキャップを装着する工程は、OFケーブルに耐油テープを巻き付け、この耐油テープにキャップの開口部を宛がい、キャップの開口部の周縁をバンドで締め付ける手段を用いる。更に、キャップに対して金属製キャップを装着し、耐油テープを巻き付けて固定する。また、金属製キャップに対して、外傷に強いテープを巻き付けて固定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
OFケーブルの端部において、OFケーブルの油通路を閉鎖する工程と、OFケーブルの端部に耐油ゴム製のキャップを装着する工程と、から成ることを特徴とする、OFケーブルの端末処理方法。
【請求項2】
OFケーブルの油通路を閉鎖する工程は、油通路に耐油ゴム製の円錐台形のくさび部材を打ち込む手段を用いる、請求項1に記載のOFケーブルの端末処理方法。
【請求項3】
パイプ状の遮蔽層を有するOFケーブルにおいて、ケーブルコアとパイプ状の遮蔽層の間に存在する空間から絶縁油が漏れ出る場合には、その空間にウェスと油凝固剤を詰む工程を追加した、請求項1または2に記載のOFケーブルの端末処理方法。
【請求項4】
OFケーブルにステンレスバンド等を巻き付けて絞り込む工程を追加した、請求項1乃至3のいずれかに記載のOFケーブルの端末処理方法。
【請求項5】
OFケーブルにステンレスバンド等を巻き付けて絞り込む工程は、OFケーブルの遮蔽層にステンレスバンド等を巻き付けて絞り込むものである請求項4に記載のOFケーブルの端末処理方法。
【請求項6】
OFケーブルの端部に耐油ゴム製のキャップを装着する工程は、キャップの開口部の内径とほぼ一致する厚みになるようにOFケーブルに耐油テープを巻き付け、この耐油テープにキャップの開口部を宛がい、キャップの開口部の周縁を耐油テープの位置でバンドで締め付ける手段を用いる請求項1に記載のOFケーブルの端末処理方法。
【請求項7】
OFケーブルの端部に装着した耐油ゴム製のキャップに対して、耐油コーキング剤を充填している金属製キャップを装着し、金属製キャップの開口部の周縁に耐油テープを巻き付けて固定する工程を追加した、請求項1または6に記載のOFケーブルの端末処理方法。
【請求項8】
OFケーブルの端部に装着した金属製キャップに対して、外傷に強いテープを巻き付けて固定する工程を追加した、請求項7に記載のOFケーブルの端末処理方法。
【請求項9】
OFケーブルの端部に巻き付けた外傷に強いテープに対して、トラフを被せる工程を追加した、請求項8に記載のOFケーブルの端末処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済みのOFケーブルの端部において、漏油を確実に防止することができる、OFケーブルの終端処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内部に絶縁油が充填されているOFケーブル(Oil filled Cable)は、通常は地中に埋設されており、当該OFケーブルの老朽化に伴って、地中から適宜撤去する作業が行われている。
【0003】
このOFケーブルの撤去作業は、地盤を数メートル掘削してOFケーブルを露出させ、当該露出しているOFケーブルを切断して撤去した後、地盤を再度埋め戻す作業を繰り返し行うことにより、対象区間におけるOFケーブルの撤去を順次進めていく手法が用いられている。このようなOFケーブルの撤去作業においては、例えば、掘削箇所に建物が建っていたりする等して掘削ができない箇所において、OFケーブルを部分的に地中に残置する場合がある。
【0004】
この場合、地盤を埋め戻す前に、切断したOFケーブルの端部からの漏油を防止するために、OFケーブルの端部に種々の一時的な簡易処理・加工が施されている。
【0005】
このOFケーブルが撤去できず残置される端末の最終的な処理・加工の一手段として、例えば、鉛工処理が行われている。鉛工処理作業は、鉛スズ合金であるハンダを火気を使って溶融し、端末部を成型する作業である。
【0006】
しかしながら、鉛工処理は非常に高度なスキルを要する特殊な作業であり、近年、鉛工処理を行うことができる技術者が少なくなってきている。このため、OFケーブルの撤去作業に従事する作業員を確保することが困難になっている。また、鉛工処理は作業に時間を要するため、1日あたりの施工数量が限られるという問題がある。
【0007】
更に、鉛工処理はハンダをバーナー等で溶かす作業を行うため、火気を使用する現場ならびに作業員の充分な安全性を確保する必要がある。
【0008】
そのため、OFケーブルの端末処理として、特許文献1に示す金属製キャップを端部に取り付ける手法や、特許文献2に示すカバー部材を端部に取り付ける手法も提案されている。
【0009】
具体的には、特許文献1に示す手法は、金属製キャップを切断端部に装着する工程と、切断端部と前記金属製キャップとの間の隙間に融着材料を挿入する工程と、前記融着材料を加熱溶融して前記切断端部と前記金属製キャップとを水密に接合する工程と、前記金属製キャップを前記切断端部に装着した後、前記金属製キャップの外周に外力を作用させ、前記金属製キャップを変形させることにより、該外力の作用部における前記隙間を狭める工程等を含んでいる。
【0010】
また、特許文献2に示す手法は、OFケーブル内の絶縁油を排出する工程と、OFケーブルの一端側に装着した圧縮金具を圧縮し、当該圧縮金具によって当該OFケーブルの一端側を封止する圧縮工程と、前記OFケーブルの一端側に、前記圧縮工程において圧縮した圧縮金具を覆うとともに当該一端側の周囲に空間を形成するカバー部材を取り付ける取付工程と、前記取付工程において取り付けたカバー部材内に樹脂材料を充填する充填工程等を含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第4613723号公報
【特許文献2】特許第6076836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記した特許文献1では、火器を使う従来の鉛工作業と同じであり、特許文献2では、OFケーブルの端部において、充填剤が充分に機能しない事態が生じたり、また、金属製キャップやカバー部材を取り付けても、僅かな隙間から絶縁油が徐々に漏れてしまう事態が生じていた。
【0013】
その要因となっているのは、下記の理由(1)・(2)により、現場ではOFケーブルの端部から絶縁油が常に流れ出ている状態において、施工せざるを得ない実情にある。
【0014】
(1)事前にOFケーブル内の絶縁油を排出させる、所謂抜油の作業を行ったとしても、OFケーブルの端部から絶縁油が流れ出てしまう事態の発生を、現場において完全に阻止することは不可能である。
【0015】
(2)OFケーブルの端部が、現場における最高所位置となる場合、もしくは途中に上り傾斜がない急な下り傾斜管路布設で充分な脱油ができた最低所位置となる場合には、端部から絶縁油が流れ出る事態の発生は阻止できるものの、現実的には途中に上りや下りがあったり、高低差があまり生じていない現場での作業が多い。このような現場での作業においては、OFケーブルの端部から、多少の絶縁油が常に流れ出ている状態での作業となる。
【0016】
そこで、本発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、OFケーブルの端部から絶縁油が流れ出ている事態の発生を阻止した状態で、種々の施工を行うことを実現することにより、使用済みのOFケーブルの端部における漏油を防止した、OFケーブルの端末処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係るOFケーブルの端末処理方法は、OFケーブルの端部において、OFケーブルの油通路を閉鎖する工程と、OFケーブルの端部に耐油ゴム製のキャップを装着する工程と、から成ることで、上述した課題を解決した。
【0018】
本発明によれば、まず、OFケーブルの油通路を閉鎖する工程から作業を開始するので、現場において、OFケーブルの端部から絶縁油が流れ出ている事態の発生を阻止した状態で、その後の種々の施工を行うことを実現している。
【0019】
また、OFケーブルの端部に耐油ゴム製のキャップを装着することから、仮に閉鎖されている油通路以外の部分から絶縁油が滲み出た場合であっても、絶縁油をキャップ内に確実に留めることができる。
【0020】
更に、本発明に係るOFケーブルの端末処理方法において、OFケーブルの油通路を閉鎖する工程は、油通路に耐油ゴム製の円錐台形のくさび部材を打ち込む手段を用いることで、上述した課題を解決した。
【0021】
この工程により、OFケーブルの油通路をくさび部材により閉鎖し、油通路の端部から絶縁油が流れ出てしまう事態の発生を阻止できる。また、油通路に円錐台形のくさび部材を打ち込むことにより、径の異なる様々な油通路の閉鎖が容易となる。
【0022】
また、パイプ状の遮蔽層を有するOFケーブルにおいて、ケーブルコアとパイプ状の遮蔽層の間に存在する空間から絶縁油が漏れ出る場合には、その空間にウェスと油凝固剤を詰む工程を追加したことで、上述した課題を解決した。
【0023】
この工程により、ケーブルコアとパイプ状の遮蔽層の間に存在する空間からから絶縁油が漏れ出している場合にも、その流出を止めることができる。
【0024】
この様に、OFケーブルの油通路にくさび部材を打ち込んで閉鎖したり、ケーブルコアとパイプ状の遮蔽層の間に存在する空間にウェスと油凝固剤を詰め込んで、その空間を塞いでいる状態で、OFケーブルの端部に耐油ゴム製のキャップを装着することから、使用済みのOFケーブルの端部において、絶縁油が流れ出てしまう事態の発生を阻止している。また、ゴム製のキャップの装着も、より確実なものとなる。
【0025】
この他、本発明に係るOFケーブルの端末処理方法において、OFケーブルにステンレスバンド等を巻き付けて絞り込む工程を追加したことで、上述した課題を解決した。
【0026】
この工程により、閉鎖されている油通路以外の部分から、絶縁油が滲み出てしまう事態の発生も阻止できる。
【0027】
具体的には、ケーブルコアとパイプ状の遮蔽層の間に存在する空間に絶縁油が存在し、ウェスと油凝固剤を詰め込んでその空間を塞いでいる状態において、OFケーブルが柔らかい遮蔽層のケーブルの場合、OFケーブルの防食層の上からステンレスバンド等を巻き付けて絞り込むことにより、空間を塞いでいるウェスと油凝固剤から絶縁油が滲み出てしまう事態の発生を阻止しているのである。また、絶縁紙等に滲み込んでいる絶縁油の漏れ出しも、阻止することができる。
【0028】
また、OFケーブルにステンレスバンド等を巻き付けて絞り込む工程は、OFケーブルの遮蔽層にステンレスバンド等を巻き付けて絞り込むものであることで、上述した課題を解決した。
【0029】
例えば、OFケーブルが、ステンレスやアルミ等の硬い遮蔽層のケーブルで、油通路以外の部分から絶縁油が滲み出ている場合には、硬い遮蔽層をより強い力で絞り込む必要がある。
【0030】
その為、硬い遮蔽層のOFケーブルの場合は、OFケーブルの防食層を剥いで、硬い遮蔽層にステンレスバンド等を直接巻き付けて絞り込むことにより、ウェスと油凝固剤から絶縁油が滲み出てしまう事態の発生を、より確実に阻止できるのである。また、絶縁紙等に滲み込んでいる絶縁油の漏れ出しも、より確実に阻止することができる。
【0031】
更に、本発明に係るOFケーブルの端末処理方法において、OFケーブルの端部に耐油ゴム製のキャップを装着する工程は、キャップの開口部の内径とほぼ一致する厚みになるようにOFケーブルに耐油テープを巻き付け、この耐油テープにキャップの開口部を宛がい、キャップの開口部の周縁を耐油テープの位置でバンドで締め付ける手段を用いることで、上述した課題を解決した。
【0032】
この工程により、OFケーブルの端部において、キャップの開口部の内径とほぼ一致する厚みを有する耐油テープの上に、キャップの開口部の内周面を当接できる。この状態で
キャップの開口部の周縁をバンドで締め付けるため、キャップの開口部の内周面が耐油テープに強く食い込んで、OFケーブルの端部を耐油ゴム製のキャップにより完全に閉鎖することができる。
【0033】
そのため、OFケーブルの端部において、仮に閉鎖されている油通路以外の部分から絶縁油が滲み出た場合であっても、絶縁油をキャップ内に確実に留めることができる。
【0034】
そして、耐油ゴム製のキャップがOFケーブルの端部に確実に固定されることから、この耐油ゴム製のキャップの天板で、油通路に打ち込んでいるくさび部材が抜けないように抑え込む役割も果たす構造となる。
【0035】
また、本発明に係るOFケーブルの端末処理方法において、OFケーブルの端部に装着した耐油ゴム製のキャップに対して、耐油コーキング剤を充填している金属製キャップを装着し、金属製キャップの開口部の周縁に耐油テープを巻き付けて固定する工程を追加したことで、上述した課題を解決した。
【0036】
この工程により、万が一耐油ゴム製のキャップから絶縁油が少々漏れる事態が生じたとしても、絶縁油が外部へ流出しないような構造としている。
【0037】
また、金属製キャップの開口部の周縁に耐油テープを巻き付けて固定することから、耐油ゴム製のキャップが紫外線の影響で劣化したり、地下水の影響で変質することもない。
【0038】
そのため、OFケーブルの寿命である30年以上の耐久性を備えることが可能となる。
【0039】
加えて、本発明に係るOFケーブルの端末処理方法において、OFケーブルの端部に装着した金属製キャップに対して、外傷に強いテープを巻き付けて固定する工程を追加したことで、上述した課題を解決した。
【0040】
この工程により、OFケーブルの端部における堅労性を維持でき、仮に数年後に掘削工事があった場合であっても、OFケーブルの端部に損傷を与える恐れがない。また、掘削工事において、仮にスコップ等が当たってしまったような場合にも、端部に損傷を与える恐れがない。
【0041】
また、本発明に係るOFケーブルの端末処理方法において、OFケーブルの端部に巻き付けた外傷に強いテープに対して、トラフを被せる工程を追加したことで、上述した課題を解決した。
【0042】
この工程により、掘削工事において、油圧式ショベルの刃先が当たってしまったような場合に、端部に損傷を与える前にOFケーブルの端部の存在を作業員に気付かせることができる。
【発明の効果】
【0043】
本発明に係るOFケーブルの端末処理方法によれば、OFケーブルの油通路を閉鎖する工程から作業を開始するので、現場において、OFケーブルの端部から絶縁油が流れ出ている事態の発生を阻止した状態で、耐油ゴム製のキャップを被せる等のその後の作業を実施することを実現している。また、その上に被せる金属製キャップの防御により、使用済みのOFケーブルの端部における漏油を、長期間に渡り確実に防止できる。
【0044】
また、OFケーブルの油通路を閉鎖している状態において、OFケーブルにステンレスバンド等を巻き付けて絞り込むことから、閉鎖されている油通路以外の部分から絶縁油が滲み出てしまう事態の発生も阻止できる。
【0045】
更に、仮に閉鎖されている油通路以外の部分から絶縁油が滲み出た場合であっても、絶縁油を耐油ゴム製のキャップ内に確実に留めることができる。加えて、耐油ゴム製のキャップに対して、耐油コーキング剤を充填している金属製キャップを装着するので、絶縁油が金属製キャップの外側に漏れ出てしまう事態の発生を確実に阻止できる。
【0046】
加えて、金属製キャップに外傷に強いテープを巻き付けたり、トラフを被せることから、OFケーブルの端部における堅労性も維持できる。
【0047】
この他、本発明に係るOFケーブルの端末処理方法によれば、火気を用いないため、作業の安全性の向上と、作業効率の向上を図ることができるという効果も奏する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】OFケーブルの端末処理方法における、各工程を明示した説明図である。
図2】端末処理の対象となる3芯OFケーブルの断面図である。
図3】端末処理の対象となる単芯OFケーブルの断面図である。
図4】OFケーブルの油通路を閉鎖する工程を示すもので、(a)は油通路にくさび部材を打ち込む前の状態を示す斜視図、(b)は油通路にくさび部材を打ち込んでいる状態を示す斜視図、(c)は油通路から突出しているくさび部材の後端部側を切断する状態を示す斜視図である。
図5】OFケーブルの端部にキャップを装着する工程を示すもので、(d)はOFケーブルの端部に耐油テープを巻き付ける前の状態を示す斜視図、(e)はOFケーブルの端部に耐油テープを巻き付け、キャップを宛がう状態を示す斜視図、(f)はキャップの開口部の周縁をバンドで締め付けた状態を示す斜視図である。
図6】OFケーブルの端部に金属製キャップを装着する工程を示すもので、(g)は耐油コーキング剤を充填している金属製キャップをキャップに装着する状態を示す斜視図、(h)は、装着した金属製キャップに耐油テープ等を巻き付ける前の状態を示す斜視図、(i)は装着した金属製キャップに耐油テープを巻き付けた状態を示す斜視図である。
図7】OFケーブルの端部にテープを巻き付けて固定する工程とトラフを被せる工程を示すもので、(j)はOFケーブルの端部に外傷に強いテープ等を巻き付けて固定した状態を示す斜視図、(k)はOFケーブルの端部にトラフを逆さにして被せた状態を示す斜視図である。
図8】OFケーブルにステンレスバンド等を巻き付けて絞り込む工程において、単芯OFケーブルブルの防食層にステンレスバンド等を巻き付けて絞り込んでいる状態を示す斜視図である。
図9】OFケーブルにステンレスバンド等を巻き付けて絞り込む工程において、単芯OFケーブルブルの防食層を剥いで、硬いパイプ状の遮蔽層にステンレスバンド等を巻き付けて絞り込んでいる状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下に、図面を参照しながら、OFケーブルの端末処理方法の好適な実施の形態を、詳細に説明する。
【0050】
本発明に係るOFケーブルの端末処理方法は、図1に示すように、OFケーブルの油通路を閉鎖する工程Aと、OFケーブルの端部に耐油ゴム製のキャップを装着する工程Bと、OFケーブルの端部に金属製キャップを装着する工程Cと、OFケーブルの端部にテープを巻き付けて固定する工程Dと、OFケーブルの端部にトラフを被せる工程E等から成る。
【0051】
上記の工程の内、本発明の最大の特徴は、OFケーブルの油通路を閉鎖する工程Aと、OFケーブルの端部に耐油ゴム製のキャップを装着する工程Bにある。
【0052】
両工程により、現場において、OFケーブルの端部から絶縁油が流れ出ている事態の発生を阻止した状態で、その後の作業を実施することを実現しているのである。また、仮に閉鎖されている油通路以外の部分から絶縁油が滲み出た場合であっても、絶縁油を耐油ゴム製のキャップ内に確実に留めることができるのである。
【0053】
本発明に係るOFケーブルの端末処理方法は、OFケーブルの油通路を閉鎖する工程Aを備えているが、油通路以外の部分から絶縁油が滲み出ている場合には、必要に応じて、図1に示すように、OFケーブルの所定の空間内に油の凝固剤とウエスを詰め込む工程a1と、OFケーブルにステンレスバンドを巻き付けて絞り込む工程a2を、適宜行うものとする。
【0054】
本発明に係るOFケーブルの端末処理の対象となる、OFケーブル100の種類としては、例えば、図2に示す3本の油通路101が存在している3芯OFケーブル100や、図3に示す単独の油通路101が存在している単芯OFケーブル100等が存在している。
【0055】
3芯OFケーブル100は、図2に示すように、絶縁紙102を有する3本の導体103が配置され、その周囲に3本の油通路101が配置されている。導体103の周囲には、絶縁紙102が配置され、ケーブルコア109を形成している。3カ所に存在しているケーブルコア109と油通路101は、介在紙104に内包され、介在紙104の外側に遮蔽層105と防食層106が配置されている。
【0056】
単芯OFケーブル100は、図3に示すように、中心に油通路101が存在し、その周囲に、導体103と絶縁紙102が配置され、ケーブルコア109を形成している。また、ケーブルコア109の周囲には、遮蔽層105・補強帯107・防食層106が配置されている。
【0057】
単芯OFケーブル100においては、図3に示すように、ケーブルコア109と金属被である遮蔽層105の間に所定の空間110が存在し、この空間110内にも絶縁油が充填されている。遮蔽層105は、ステンレス被やアルミ被等を用いて、パイプ状に形成されている。
【0058】
いずれのOFケーブル100も、本発明の端末処理の対象となるが、便宜上、基本的な端末処理工程A・B・C・D等を3芯OFケーブル100を例として、また、必要に応じて行う処理工程a1・a2を単芯OFケーブル100を例として説明する。
【0059】
(OFケーブルの油通路を閉鎖する工程)
OFケーブル100の油通路101を閉鎖する工程Aは、図4(a)(b)に示すように、油通路101に円錐台形のくさび部材1を打ち込む手段を用いる。
【0060】
円錐台形のくさび部材1は、所定の長さを備えており、加硫ゴム等の耐油ゴムにより形成されている。
【0061】
そして、図4(b)に示すように、くさび部材1の先端部側をOFケーブル100の油通路101に挿入し、くさび部材1の後端部側をハンマー2等を用いて打ち込むのである。
【0062】
次に、図4(c)に示すように、油通路101から突出しているくさび部材1の後端部側を、好ましい長さとなるように切断する。
【0063】
上記の作業により、OFケーブル100の油通路101をくさび部材1により閉鎖するが、OFケーブル100の油通路101以外の部分から絶縁油が滲み出ている場合には、必要に応じて、図1に示すように、OFケーブル100の所定の空間内に油の凝固剤とウエスを詰め込む工程a1と、OFケーブルにステンレスバンドを巻き付けて絞り込む工程a2を、適宜行うものとする。
【0064】
(油の凝固剤とウエスを詰め込む工程)
具体的には、図3に示すように、単芯OFケーブル100のケーブルコア109と遮蔽層105の間に所定の空間110が存在し、この空間110内に充填されている絶縁油が漏れ出しているような場合に、この空間110内に油の凝固剤とウエスを詰め込むのである。
【0065】
尚、3芯OFケーブル100においても、ケーブルコア109と遮蔽層105の間に所定の空間110が存在する場合には、その空間110内に油の凝固剤とウエスを詰め込んでも良い。
【0066】
(ステンレスバンドを巻き付けて絞り込む工程)
このOFケーブル100にステンレスバンド10等を巻き付けて絞り込む工程a2は、例えば、図3に示す単芯OFケーブル100において、ケーブルコア109と遮蔽層105の間に存在する空間110内に油の凝固剤とウエスを詰め込んで、油漏れを止める対応を施しているが、この油漏れを確実に防止するために、更に図8に示すように、単芯OFケーブル100の周囲にステンレスバンド10等を巻き付けて絞り込むのである。
【0067】
また、柔らかい遮蔽層105の鉛被ケーブルで、油通路101以外の部分から絶縁油が滲み出ている場合にも、鉛被ケーブルの防食層106の上からステンレスバンド10等を巻き付けて絞り込むと良い。この時、複数本のステンレスバンド10等を巻き付けると、その絞り込みの効果が充分に発揮されることとなる。
【0068】
更に、図3に示す単芯OFケーブル100において、ステンレスやアルミ等の硬いパイプ状の遮蔽層105のケーブルで、油通路101以外の部分から絶縁油が滲み出ている場合には、硬い遮蔽層105をより強い力で絞り込む必要がある。
【0069】
その為、硬い遮蔽層105のOFケーブルの場合は、図9に示すように、OFケーブルの防食層106を剥いで、遮蔽層105にステンレスバンド10等を直接巻き付けて絞り込むと良い。尚、ステンレスバンド10等の絞り込みの作業は、例えば、油圧式の絞め機を使用すると良い。
【0070】
上記したOFケーブル100にステンレスバンド10等を巻き付けて絞り込む工程a2により、例えば、単芯OFケーブル100のケーブルコア109と遮蔽層105の間に存在している所定の空間110内に充填されている絶縁油の漏れ出しや、絶縁紙102に滲み込んでいる絶縁油の漏れ出しといった、油通路101以外の部分からの絶縁油の滲み出しを、必要に応じて防止するのである。
【0071】
また、3芯OFケーブル100においても、絶縁紙102に滲み込んでいる絶縁油の漏れ出し等の、油通路101以外の部分からの絶縁油の滲み出しを、必要に応じて防止するのである。
【0072】
(OFケーブルの端部に耐油ゴム製のキャップを装着する工程)
OFケーブル100の端部に耐油ゴム製のキャップ3を装着する工程Bは、まず、図5(d)(e)に示すように、キャップ3の開口部の内径とほぼ一致する厚みになるように、OFケーブル100に耐油テープ4を巻き付ける。
【0073】
そして、図5(e)(f)に示すように、巻き付けた耐油テープ4に耐油ゴム製のキャップ3の開口部を宛がい、キャップ3の開口部の周縁を耐油テープの位置でバンド5で締め付ける。その結果、耐油ゴム製のキャップ3の開口部の内周面が耐油テープ4に強く食い込んで、OFケーブル100の端部を耐油ゴム製のキャップ3により完全に閉鎖することができる。
【0074】
キャップ3は、加硫ゴム等の耐油ゴムにより形成されている。また、全てのOFケーブル100のサイズに合わせて多数の耐油ゴム製のキャップ3を製作するとそのコストが高騰することから、3種類から5種類程度のサイズのキャップ3を用意し、巻き付ける耐油テープ4の厚みにより調整するものとする。耐油ゴム製のキャップ3の開口部の周縁を締め付けるバンド5としては、例えば、ステンレスバンド10等を用いる。
【0075】
耐油ゴム製のキャップ3は、くさび部材1により閉鎖されている油通路101以外の部分から絶縁油が滲み出た場合に、絶縁油をキャップ3内に確実に留めて、絶縁油が外に漏れることを防止する目的を有しているが、滲み出る絶縁油の量が多いと予想されるときは、OFケーブル100の複数カ所に耐油テープ4を巻き付け、複数のバンド5により耐油ゴム製のキャップ3の開口部の周縁を締め付けると良い。
【0076】
また、OFケーブル100の端部に耐油ゴム製のキャップ3を装着した際、油通路101から突出しているくさび部材1の後端部側を、キャップ3の内壁により押さえ付けた状態にしており、油通路101に打ち込んでいるくさび部材1の抜け落ちを防止して、より確実に絶縁油の漏れ出しを防止することができる。
【0077】
具体的には、耐油ゴム製のキャップ3の天板の内側に金属製等の硬いプレートを備えており、この金属製のプレートがくさび部材1に当接して、油通路101を閉鎖しているくさび部材1が抜けない様に抑え付ける構造としている。
【0078】
(OFケーブルの端部に金属製キャップを装着する工程)
OFケーブル100の端部に装着した耐油ゴム製のキャップ3に対して、金属製キャップ6を装着する工程Cは、まず、図6(g)に示すように、耐油コーキング剤7を充填している金属製キャップ6を、耐油ゴム製のキャップ3に装着する。
【0079】
そして、図6(h)(i)に示すように、金属製キャップ6の開口部の周縁に耐油テープ4を巻き付けて、キャップ3に金属製キャップ6を固定する。
【0080】
(OFケーブルの端部にテープを巻き付けて固定する工程)
OFケーブル100の端部にテープを巻き付けて固定する工程Dは、耐油テープ4による金属製キャップ6の固定が不十充分な場合に、自己融着テープで固定する措置である。
【0081】
具体的には、図6(i)・図7(j)に示すように、OFケーブル100の端部に装着した金属製キャップ6に対して、外傷に強く、防水性も備えたシリコーン自己融着テープ(8)を巻き付けて固定するものである。
【0082】
(OFケーブルの端部にトラフを被せる工程)
OFケーブル100の端部にトラフを被せる工程Eは、図7(k)に示すように、OFケーブル100の端部に巻き付けた外傷に強いテープ8に対して、トラフ9を逆さにして被せるものである。
【産業上の利用可能性】
【0083】
以上のように、本発明に係るOFケーブルの端末処理方法は、内部に絶縁油が残っている状態のOFケーブルの端末処理方法として有用であり、特に、埋設されて地中に残置されるOFケーブルの端末の処理に適している。
【符号の説明】
【0084】
A…OFケーブルの油通路を閉鎖する工程
a1…油の凝固剤とウエスを詰め込む工程
a2…ステンレスバンドを巻き付けて絞り込む工程
B…OFケーブルの端部に耐油ゴム製のキャップを装着する工程
C…OFケーブルの端部に金属製キャップを装着する工程
D…OFケーブルの端部にテープを巻き付けて固定する工程
E…OFケーブルの端部にトラフを被せる工程

100…OFケーブル
101…油通路
102…絶縁紙
103…導体
104…介在紙
105…遮蔽層
106…防食層
107…補強帯
109…ケーブルコア
110…空間

1…くさび部材
2…ハンマー
3…耐油ゴム製のキャップ
4…耐油テープ
5…バンド
6…金属製キャップ
7…耐油コーキング剤
8…外傷に強いテープ
9…トラフ
10…ステンレスバンド
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
図9