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特開2023-134869電解質膜-電極接合体用触媒層、電解質膜-電極接合体及びそれを用いた燃料電池
<図1>
  • 特開-電解質膜-電極接合体用触媒層、電解質膜-電極接合体及びそれを用いた燃料電池 図1
  • 特開-電解質膜-電極接合体用触媒層、電解質膜-電極接合体及びそれを用いた燃料電池 図2
  • 特開-電解質膜-電極接合体用触媒層、電解質膜-電極接合体及びそれを用いた燃料電池 図3
  • 特開-電解質膜-電極接合体用触媒層、電解質膜-電極接合体及びそれを用いた燃料電池 図4
  • 特開-電解質膜-電極接合体用触媒層、電解質膜-電極接合体及びそれを用いた燃料電池 図5
  • 特開-電解質膜-電極接合体用触媒層、電解質膜-電極接合体及びそれを用いた燃料電池 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134869
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】電解質膜-電極接合体用触媒層、電解質膜-電極接合体及びそれを用いた燃料電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/86 20060101AFI20230921BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20230921BHJP
【FI】
H01M4/86 H
H01M4/86 B
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022039781
(22)【出願日】2022-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 功彬
(72)【発明者】
【氏名】赤塚 拓也
(72)【発明者】
【氏名】玄番 美穂
(72)【発明者】
【氏名】引地 巧
【テーマコード(参考)】
5H018
5H126
【Fターム(参考)】
5H018AA06
5H018BB06
5H018BB08
5H018BB12
5H018DD05
5H018DD06
5H018EE02
5H018EE03
5H018EE04
5H018EE05
5H018EE08
5H018EE10
5H018EE12
5H018EE18
5H018HH01
5H018HH02
5H018HH04
5H018HH05
5H126BB06
(57)【要約】
【課題】本開示は、高いプロトン伝導性と高いガス拡散性を両立した高効率な触媒反応を可能とする電解質膜-電極接合体用触媒層を提供する。
【解決手段】本開示の電解質膜-電極接合体用触媒層は、導電性触媒担体材料と、少なくとも導電性触媒担体材料に担持された触媒と、導電性触媒担体材料よりもモード径が小さい親水性無機材料と、親水性無機材料を略均一に被覆するアイオノマと、を有する。親水性無機材料におけるアイオノマに被覆される部分の外表面積と親水性無機材料の全外表面積との比が、導電性触媒担体材料におけるアイオノマに被覆される部分の外表面積と導電性触媒担体材料の全外表面積との比よりも大きい。これにより、ガス拡散経路である間隙を閉塞させることなくプロトン伝導経路である連続性の高いアイオノマパスが形成され、高効率な触媒反応を可能とする電解質膜-電極接合体用触媒層を提供することができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性触媒担体材料と、少なくとも前記導電性触媒担体材料に担持された触媒と、前記導電性触媒担体材料よりもモード径が小さい親水性無機材料と、前記親水性無機材料を略均一に被覆するアイオノマと、を有し、
前記親水性無機材料における前記アイオノマに被覆される部分の外表面積と前記親水性無機材料の全外表面積との比が、前記導電性触媒担体材料における前記アイオノマに被覆される部分の外表面積と前記導電性触媒担体材料の全外表面積との比よりも大きいこと、を特徴とする、電解質膜-電極接合体用触媒層。
【請求項2】
前記親水性無機材料のモード径が、前記導電性触媒担体材料のモード径の22%以下である請求項1に記載の電解質膜-電極接合体用触媒層。
【請求項3】
前記親水性無機材料が導電性材料である、請求項1または2に記載の電解質膜-電極接合体用触媒層。
【請求項4】
前記導電性触媒担体材料が、モード径が1~50nmのメソ孔を有し、少なくとも前記メソ孔の内部に前記触媒を担持するメソポーラス材料である、請求項1から3のいずれか1項に記載の電解質膜-電極接合体用触媒層。
【請求項5】
電解質膜と、前記電解質膜の一方の主面に設けられたアノードと、前記電解質膜の他方の主面に設けられたカソードと、を備え、
前記カソードが、請求項1から4のいずれか1項に記載の電解質膜-電極接合体用触媒層を含む、電解質膜-電極接合体。
【請求項6】
請求項5に記載の電解質膜-電極接合体を備える、燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電解質膜-電極接合体用触媒層、電解質膜-電極接合体及びそれを用いた燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、メソ孔内に触媒が担持されたメソポーラス材料がアイオノマによって被覆される触媒層を開示する。この触媒層は、メソポーラス材料と、メソポーラス材料のメソ孔内に担持された触媒と、触媒非担持カーボンと、メソポーラス材料、触媒および触媒非担持カーボンを被覆するアイオノマとを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-181838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、高いプロトン伝導性と優れたガス拡散性を両立することで、燃料電池の電解質膜-電極接合体に用いた場合に、高効率な発電性能を持つ電解質膜-電極接合体用触媒層を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示における電解質膜-電極接合体用触媒層は、導電性触媒担体材料と、少なくとも導電性触媒担体材料に担持された触媒と、導電性触媒担体材料よりもモード径が小さい親水性無機材料と、親水性無機材料を略均一に被覆するアイオノマと、を有する。
【0006】
そして、親水性無機材料におけるアイオノマに被覆される部分の外表面積と親水性無機材料の全外表面積との比が、導電性触媒担体材料におけるアイオノマに被覆される部分の外表面積と導電性触媒担体材料の全外表面積との比よりも大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示における電解質膜-電極接合体用触媒層は、間隙を閉塞させることなく連続性の高いアイオノマパスを形成することでプロトン伝導性とガス拡散性を向上させることができる。そのため、燃料電池の電解質膜-電極接合体に用いた場合に、発電効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1における電解質膜-電極接合体を備えた燃料電池セルの断面を示す模式図
図2】実施の形態1における電解質膜-電極接合体用触媒層の一部の断面を拡大した模式図
図3】実施の形態1における電解質膜-電極接合体用触媒層に用いた親水性無機材料に対するアイオノマの被覆状態を示す模式図
図4】実施の形態1における電解質膜-電極接合体用触媒層の製造方法を示すフローチャート
図5】球を最密充填した構造を説明するための模式図
図6】実施の形態1における電解質膜-電極接合体用触媒層のメソポーラス材料とアイオノマの位置関係を説明するための模式図
【発明を実施するための形態】
【0009】
(本開示の基礎となった知見等)
発明者らが本開示に想到するに至った当時、水素と酸素を反応させて発電し発電時に水のみを生成することから脱炭素社会の実現に必要なキーデバイスとして燃料電池が注目されていた。
【0010】
燃料電池の発電効率向上のためには、電圧損失の大きなカソードの損失軽減が課題であり、カソードでの発電反応に必要なプロトン(H)および酸素(O)をカソードの触媒層内に効率的に供給し、反応点である触媒に効率的に到達させることが必要となる。
【0011】
カソードの触媒層において、プロトンはプロトン交換性高分子樹脂であるアイオノマを経由して伝導し、酸素は触媒層内の間隙を拡散によって伝導することが知られている。
【0012】
このため、カソードの触媒層において、アイオノマ量を増大させた際には、プロトン伝導性が向上するものの触媒層内の間隙をアイオノマが閉塞してしまうことで酸素拡散性が減少し、逆に、アイオノマ量を減少させた際には、間隙の閉塞は解消されて酸素拡散性は向上するもののアイオノマ量が不足することでプロトン伝導経路であるアイオノマパスの断絶が発生し、伝導性が減少するという、相反する公知の課題があった。
【0013】
そこで、発明者らは、これらの相反する課題を解決するために、アイオノマが親水性無機材料表面との親和性が高く、アイオノマが親水性無機材料表面に吸着しやすい性質を利用して、これをアイオノマパスの骨格として用いることで間隙を閉塞することなく連続的なアイオノマパスを形成させる技術を着想し、本開示の主題を形成するに至った。
【0014】
そこで、本開示は、高いプロトン伝導性と優れたガス拡散性を両立することで、燃料電池の電解質膜-電極接合体に用いた場合に、発電効率を向上できる、電解質膜-電極接合体用触媒層、電解質膜-電極接合体及びそれを用いた燃料電池を提供する。
【0015】
以下、図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が必要以上に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0016】
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0017】
(実施の形態1)
以下、図1図4を用いて、実施の形態1を説明する。
【0018】
[1-1.構成]
(燃料電池)
図1は、燃料電池の基本単位である燃料電池セル7の構成例を示している。図1に示す燃料電池セル7は、水素と酸素の供給を受けて発電する固体高分子電解質型燃料電池である。
【0019】
燃料電池セル7は、図1に示すように、アノードセパレータ5aと、カソードセパレータ5cと、アノードセパレータ5aとカソードセパレータ5cとの間に設けられた電解質
膜-電極接合体6と、を有する。
【0020】
アノードセパレータ5aにおける電解質膜-電極接合体6のアノード2aと当接する面には、燃料電池セル7に供給される水素をアノード2aへ流すための流路を有する。
【0021】
カソードセパレータ5cにおける電解質膜-電極接合体6のカソード2cと当接する面には、燃料電池セル7に供給される酸素をカソード2cへ流すための流路を有する。
【0022】
燃料電池セル7が厚み方向に複数積層される場合は、アノードセパレータ5aにおける流路が形成された面とは反対側の面が、アノードセパレータ5aと隣接する燃料電池セル7のカソードセパレータ5cにおける流路が形成された面とは反対側の面と、電気的に接続され、カソードセパレータ5cにおける流路が形成された面とは反対側の面が、カソードセパレータ5cと隣接する燃料電池セル7のアノードセパレータ5aにおける流路が形成された面とは反対側の面と、電気的に接続される。
【0023】
(電解質膜-電極接合体)
電解質膜-電極接合体6は、図1に示すように、電解質膜1と、アノード触媒層3aおよびアノードガス拡散層4aを含むアノード2aおよび、カソード触媒層3cおよびカソードガス拡散層4cを含むカソード2cとを備え、電解質膜1の両側を、アノード2aとカソード2cとによって挟み込む構成となっている。
【0024】
アノード触媒層3aは、電解質膜1の一方の主面に配置されている。カソード触媒層3cは、電解質膜1の他方の主面に配置されている。アノードガス拡散層4aは、アノード触媒層3aにおける電解質膜1側とは反対側に配置されている。カソードガス拡散層4cは、カソード触媒層3cにおける電解質膜1側とは反対側に配置されている。
【0025】
アノードガス拡散層4aにおけるアノード触媒層3a側とは反対側にはアノードセパレータ5aが配置され、カソードガス拡散層4cにおけるカソード触媒層3c側とは反対側にはカソードセパレータ5cが配置されている。
【0026】
(電解質膜)
電解質膜1は、アノード2aとカソード2cとの間のプロトン伝導を行うものであり、プトロン伝導性とガスバリア性とを併せ持つ必要がある。本実施の形態では、電解質膜1の材料に、パーフルオロスルホン酸樹脂膜を用いた。このパーフルオロスルホン酸樹脂膜は、プロトン伝導性が高く、燃料電池セル7の発電環境下でも安定に存在するため好ましい。
【0027】
(ガス拡散層)
アノードガス拡散層4aおよびカソードガス拡散層4cは、それぞれ集電作用とガス透過性と撥水性とを併せ持つ層である。アノードガス拡散層4aおよびカソードガス拡散層4cは、それぞれ基材およびコーティング層の2層を含む構成であっても良い。
【0028】
基材は、導電性、ならびに気体および液体の透過性に優れた材料であれば良い。本実施の形態では、基材の材料に、カーボンペーパーを用いた。
【0029】
コーティング層は、触媒層(アノード触媒層3a、カソード触媒層3c)と、基材との間に介在して、触媒層と基材との接触抵抗を下げ、液体の透過性(排水性)を向上するための層である。
【0030】
本実施の形態のコーティング層は、カーボンブラックなどの導電性材料およびポリテト
ラフルオロエチレン(PTFE)などの撥水性樹脂を主成分として形成される。
【0031】
(触媒層)
アノード触媒層3aは、アノード2aの電気化学反応を促進させる層であって、電解質膜1の一方の主面に配置されている。カソード触媒層3cは、カソード2cの電気化学反応を促進させる層であって、電解質膜1の他方の主面に配置されている。
【0032】
アノード触媒層3aは、導電性触媒担持材料と、導電性触媒担持材料に担持された触媒と、触媒を担持した導電性触媒担持材料の外表面の少なくとも一部を覆うプロトン伝導性のアイオノマとを有する。
【0033】
カソード触媒層3cは、図2に示すように、導電性触媒担体材料10と、少なくとも導電性触媒担体材料に担持された触媒12と、導電性触媒担体材料10よりもモード径の小さい親水性無機材料11と、親水性無機材料11を略均一に被覆するアイオノマ13とを有する。
【0034】
アイオノマ13は、アイオノマ13の長手方向のモード長さが100~200nm、アイオノマ13の短手方向のモード長さが40~80nmの紐状形状である。
【0035】
アイオノマ13は、図3に示すように、モード径が100nmの親水性無機材料11の周りを、100nm以下のモード厚みで被覆している状態であった。
【0036】
親水性無機材料11におけるアイオノマ13に被覆される部分の外表面積と親水性無機材料11の全外表面積との比は0.6以上であった。導電性触媒担体材料10におけるアイオノマ13に被覆される部分の外表面積と導電性触媒担体材料10の全外表面積との比は0.6以下であった。
【0037】
(導電性触媒担体材料)
本実施の形態では、カソード触媒層3cの導電性触媒担体材料10に、図6に示すような、モード径が略500nmのメソポーラスカーボンからなるメソポーラス材料15を用いた。メソポーラス材料15は、触媒12を担持する前において、メソ孔16のモード径が10nm、メソ孔16の細孔容積が2.0cm/gであった。
【0038】
(触媒)
本実施の形態のカソード触媒層3cに用いた触媒12は、図2に示すように、導電性触媒担体材料10に担持されている。本実施の形態のカソード触媒層3cに用いた触媒12は、図6に示すように、メソポーラス材料15の少なくともメソ孔16の内部に担持されている。
【0039】
本実施の形態では、触媒活性、一酸化炭素等に対する耐被毒性、耐熱性等を向上させる観点から、カソード触媒層3cの触媒12の材料として、白金および白金と異なる金属を含む合金を用いた。カソード触媒層3cの触媒12は、白金の含有量が30~90原子%で、白金と異なる金属の含有量が10~70原子%であることが好ましい。本実施の形態において、カソード触媒層3cに用いた触媒12のモード径は、5nmであった。
【0040】
(親水性無機材料)
本実施の形態では、カソード触媒層3cの親水性無機材料11として、モード径が略100nmのNb-SnОを用いた。
【0041】
(アイオノマ)
カソード触媒層3cのアイオノマ13は、アノード2a側からカソード2c側へ電解質膜1を通過してきたプロトンを、カソード触媒層3c中の触媒12まで伝達する。
【0042】
本実施の形態のカソード触媒層3cのアイオノマ13は、図3に示すように、親水性無機材料11を略均一に被覆している。
【0043】
アイオノマ13は、プロトン(H)伝導性を持った高分子ポリマーであれば材料は限定されないが、本実施の形態では、アイオノマ13として、電解質膜1の電解質の材料と同じパーフルオロスルホン酸樹脂を用いる。このパーフルオロスルホン酸樹脂は、イオン交換性樹脂の中でもプロトン伝導性が高く、燃料電池の発電環境下でも安定して存在するため好適である。
【0044】
(触媒層の製造法)
本実施の形態では、電解質膜-電極接合体6のカソード触媒層3cを、以下の工程により作成した。
【0045】
図4は、本実施の形態の電解質膜-電極接合体6のカソード触媒層3cの製造方法を示すフローチャートである。
【0046】
(触媒層の製造法の第1の工程)
第1の工程では、疎水性溶媒中で親水性無機材料11にアイオノマ13を吸着させる。まず始めに、エタノールの比率が68wt%で、水の比率が29wt%で、アイオノマの比率が3wt%の組成になるように、水、エタノールおよび水とエタノールに分散させたアイオノマ溶液を混合した。次に、そのように混合した溶媒に対して、親水性無機材料11を入れて分散させた。
【0047】
この場合の分散方法としては、ボールミル、湿式微粒化装置または超音波分散装置などを用いることができる。アイオノマ13のスルホン酸基は、親水性無機材料11の表面の親水性官能基(ОH基、CООH基など)と強く相互作用して強く吸着する。
【0048】
この際、アイオノマ13が溶媒中に略均一に分散した状態よりも、アイオノマ13が親水性無機材料11の表面に吸着した状態の方が、熱力学的に安定であるため、アイオノマ13は、親水性無機材料11の表面に略均一に被覆した状態になる。
【0049】
(触媒層の製造法の第2の工程)
第2の工程では、触媒12を担持した導電性触媒担体材料10を、第1の工程で作成した混合分散液に添加し、混合分散させる(S02)。この場合の分散方法としては、ボールミル、湿式微粒化装置または超音波分散装置を用いることができる。
【0050】
本工程で作成した混合分散液において、親水性無機材料11の方が、触媒12を担持した導電性触媒担体材料10よりも親水性が高い。この時、親水性無機材料11に対するアイオノマ13の吸着力は、触媒12を担持した導電性触媒担体材料10に対する吸着力よりも高いため、アイオノマ13は、親水性無機材料11を優先的に被覆した状態になる。
【0051】
(触媒層の製造法の第3の工程)
第3の工程では、第2の工程で作成したインクを塗布(S03)し乾燥させることにより触媒層を形成する(S04)。
【0052】
この場合の塗布方法としては、電解質膜1の片面にインクを直接塗布する方法であっても、一旦、基材上にインクを塗布し乾燥させた後に、その基材上の乾燥したインクを電解
質膜1に転写する方法であってもよい。
【0053】
その結果、アイオノマ13に被覆された親水性無機材料11と、アイオノマ13と、触媒12を担持した導電性触媒担体材料10とが分散もしくは凝集した状態で存在し、親水性無機材料11の全外表面積に占めるアイオノマ13に被覆された部分の外表面積の割合が、導電性触媒担体材料10の全外表面積に占めるアイオノマ13に被覆された部分の外表面積の割合よりも大きな触媒層が得られる。
【0054】
[1-2.動作]
以上のように構成されたカソード触媒層3cをカソード2cに有する電解質膜-電極接合体6について、以下その動作、作用を、電解質膜1がプロトン伝導性の膜で構成された電解質膜-電極接合体6を備えたプロトン交換型の燃料電池セル7を例に説明する。
【0055】
図1に基づいて、燃料電池セル7の運転方法、作用を説明する。
【0056】
燃料電池セル7の運転は、燃料電池セル7の温度を60℃に保ち、アノードセパレータ5aとアノード2aとの間の流路に露点が60℃の水素を100cc/minの流量で供給するとともに、カソードセパレータ5cとカソード2cとの間の流路に露点が60℃の空気を300cc/minの流量で供給して、アノードセパレータ5aとカソードセパレータ5cとを、外部回路で電気的に接続することにより行った。このとき、燃料電池セル7の電気化学反応により外部回路に10Aの電流が流れた。
【0057】
次に、運転中の燃料電池セル7内での物質の移動と電気化学反応について説明する。アノードセパレータ5aとアノード2a(アノードガス拡散層4a)との間の流路の流路に供給された水素は、アノードガス拡散層4aを透過し、アノード触媒層3a内の触媒へ到達する。
【0058】
このとき、アノード触媒層3a内の触媒では、(化1)に示す水素がプロトン(H)と電子とに解離する酸化反応が起こる。
【0059】
【化1】
【0060】
アノード触媒層3a内の触媒によって、水素から解離したプロトン(H)は、アノード触媒層3a内のアイオノマを通って電解質膜1に到達した後に、電解質膜1をアノード触媒層3a側からカソード触媒層3c側へ透過する。電解質膜1をアノード触媒層3a側からカソード触媒層3c側へ透過したプロトン(H)は、カソード触媒層3cのアイオノマ13または水を通って、カソード触媒層3c内の触媒12へ到達する。
【0061】
一方、アノード触媒層3a内の触媒によって水素から解離した電子は、アノード触媒層3aとアノードガス拡散層4aとアノードセパレータ5aと外部回路とカソードセパレータ5cとカソードガス拡散層4cとカソード触媒層3cを、この順に通って、カソード触媒層3c内の触媒12へ到達する。
【0062】
また、カソードセパレータ5cとカソード2c(カソードガス拡散層4c)との間の流路に供給された空気中の酸素は、カソードガス拡散層4cを透過して、カソード触媒層3c内の触媒12へ到達する。
【0063】
このとき、カソード触媒層3c内の触媒12では、(化2)に示す、プロトン(H
と酸素(O)と電子が結びついて水が生成される還元反応が起こり、その還元反応により水が生成される。
【0064】
【化2】
【0065】
燃料電池セル7の発電性能を向上させるためには、水素がアノード触媒層3a内の触媒に、酸素がカソード触媒層3cの触媒12に、それぞれ到達することに加えて、アノード触媒層3a内の触媒によって、水素から解離したプロトン(H)が、カソード触媒層3c内の触媒12へ効率的に輸送されることが必要である。
【0066】
電解質膜1がプロトン伝導性の膜で構成された電解質膜-電極接合体6を備えたプロトン交換型の燃料電池セル7の場合、特にカソード触媒層3cにおける電圧損失が大きいことが知られており、カソード触媒層3c内の触媒12へ酸素とプロトンが効率的に供給される構造が望ましい。
【0067】
図2に示すように、本実施の形態の電解質膜-電極接合体6のカソード触媒層3cにおいて、プロトン伝導を担うアイオノマ13は、親水性無機材料11を略均一に被覆するように配置されており、ファンデルワールス力によって連なった形状をとる。
【0068】
これによって、アイオノマパスの連続性が向上して導電性触媒担体材料10への連続的なプロトン供給経路が形成されることで、カソード触媒層3cのプロトン伝導性が向上する。
【0069】
また、導電性触媒担体材料10よりもモード径の小さい親水性無機材料11をアイオノマ13が優先的に被覆する構成になっていない場合と比較して、十分なプロトン伝導性を得るために必要なアイオノマ13の量を、減少させることができることから、酸素の拡散経路となる間隙14をアイオノマ13が閉塞することが少なくなるので、カソード触媒層3cのガス拡散性を向上させることができる。
【0070】
本実施の形態の電解質膜-電極接合体6のカソード触媒層3cに用いた親水性無機材料11が導電性材料であれば、親水性無機材料11が導電性材料でない場合と比較して、カソード触媒層3cにおける電子伝導パスが増大するために、カソード触媒層3cの抵抗が減少し、電気伝導性を向上させることができる。
【0071】
ところで、図5に示すように、半径rの球体aを六方最密充填させた場合に、近接する四つの球体aの中心を結ぶと、一片の長さが2rの正四面体になる。正四面体の重心と正四面体の頂点の距離は約1.22rと算出されることから、半径rの球体aを六方最密充填させた場合の近接する四つの球体a間の間隙に配置できる球の最大の半径は約0.22rである。
【0072】
このことから、親水性無機材料11のモード径が導電性触媒担体材料10のモード径の22%以下であった場合に、六方最密充填された導電性触媒担体材料10間に生じる間隙に、親水性無機材料11を配置可能となり、間隙14のモード径が小さくなる。
【0073】
電解質膜-電極接合体6のカソード触媒層3c内の間隙14のモード径が小さくなった場合に、カソード触媒層3cの間隙14とカソードガス拡散層4cの間隙とのモード径の
差が大きくなる。
【0074】
これによって、カソード触媒層3cとカソードガス拡散層4cとの水毛管圧差が大きくなり、カソード触媒層3cからカソードガス拡散層4cへ、カソード触媒層3cのガス拡散阻害要因である間隙14内の水を排出する力が大きくなることで排水性が向上し、カソード触媒層3cのガス拡散性が向上する。
【0075】
図6に示すように、導電性触媒担体材料10が内部にメソ孔16を持ったメソポーラス材料15であり、触媒12がメソ孔16内に担持されている場合は、触媒12とアイオノマ13が接触することが抑制される。
【0076】
アイオノマ13は、アイオノマ13の最も短手方向のモード径が50nm以上であることから、モード径が50nm未満のメソ孔16に触媒12が担持されている場合は、アイオノマ13がメソ孔16に浸入することができず、アイオノマ13が触媒12に接触することが抑制される。
【0077】
アイオノマ13が触媒12に接触すると、触媒12の触媒活性が低下することが知られているが、アイオノマ13が触媒12に接触することを抑制することによって、カソード触媒層3cの触媒12の活性低下を抑制することができる。
【0078】
[1-3.効果等]
以上のように、本実施の形態において、電解質膜-電極接合体6のカソード触媒層3cは、導電性触媒担体材料10と、少なくとも導電性触媒担体材料10に担持された触媒12と、導電性触媒担体材料10よりもモード径が小さい親水性無機材料11と、親水性無機材料11を略均一に被覆するアイオノマ13と、を有する。
【0079】
そして、親水性無機材料11におけるアイオノマ13に被覆される部分の外表面積と親水性無機材料11の全外表面積との比が、導電性触媒担体材料10におけるアイオノマ13に被覆される部分の外表面積と導電性触媒担体材料10の全外表面積との比よりも大きいことを特徴とする。
【0080】
これにより、カソード触媒層3cは、間隙14を閉塞させることなく連続性の高いアイオノマパスを形成することができるため、カソード触媒層3cのプロトン伝導性とガス拡散性を向上させることができる。これによって高効率な触媒反応を可能とする電解質膜-電極接合体6用のカソード触媒層3cを提供できる。
【0081】
また、本実施の形態のように、電解質膜-電極接合体6のカソード触媒層3cは、親水性無機材料11のモード径が、導電性触媒担体材料10のモード径の22%以下であってもよい。
【0082】
これにより、導電性触媒担体材料10間に形成されるアイオノマパスの長さが短くなることに加え、触媒層厚みが減少することで、さらにプロトン伝導性が向上する。また、間隙14内の水によるガス拡散性阻害の発生頻度が減少し、カソード触媒層3cのガス拡散性が、さらに向上する。その結果、さらに高効率な触媒反応を可能とする電解質膜-電極接合体6用のカソード触媒層3cを提供できる。
【0083】
また、本実施の形態のように、電解質膜-電極接合体6のカソード触媒層3cは、親水性無機材料11が導電性材料であってもよい。
【0084】
これにより、カソード触媒層3c内の電子伝導パスが増大して電気伝導性が向上する。
その結果、プロトン伝導性向上、ガス拡散性向上の効果に加えて、電気伝導性も向上できるので、さらに高効率な触媒反応を可能とする電解質膜-電極接合体6用のカソード触媒層3cを提供できる。
【0085】
また、本実施の形態のように、電解質膜-電極接合体6のカソード触媒層3cは、導電性触媒担体材料10が、モード径が1~50nmのメソ孔16を有し、少なくともメソ孔16の内部に触媒12を担持するメソポーラス材料15であってもよい。
【0086】
これにより、モード径が数十nmであるアイオノマ13とメソ孔16内に担持された触媒12の接触が抑制される。この結果、プロトン伝導性向上、ガス拡散性向上の効果に加えて、アイオノマ13と触媒12の接触による触媒活性の低下を抑制することができるので、さらに高効率な触媒反応を可能とする電解質膜-電極接合体6用のカソード触媒層3cを提供できる。
【0087】
本実施の形態において、電解質膜-電極接合体6は、電解質膜1と、電解質膜1の一方の主面に設けられたアノード2aと、電解質膜1の他方の主面に設けられたカソード2cと、を備え、カソード2cが、本実施の形態のカソード触媒層3cを含む。これにより、高効率な触媒反応を可能とする電解質膜-電極接合体6を提供できる。
【0088】
本実施の形態において、燃料電池セル7は、本実施の形態の電解質膜-電極接合体6を備える。これにより、燃料電池セル7は、発電効率を向上することができる。
【0089】
(他の実施の形態)
以上のように、本出題において開示する技術の例示として、実施の形態1を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加などを行った実施の形態にも適用できる。また、上記実施の形態1で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。
【0090】
そこで、以下、他の実施の形態を例示する。
【0091】
実施の形態1では、電解質膜-電極接合体6の電解質膜1として、パーフルオロスルホン酸樹脂膜を用いた。電解質膜1は、プロトン伝導性とガスバリア性とを併せ持つものであればよい。したがって、電解質膜1の材料は、パーフルオロスルホン酸樹脂膜に限定されない。
【0092】
電解質膜1の材料としては、例えば、イオン交換性フッ素系樹脂膜、またはイオン交換性炭化水素系樹脂膜が例示される。
【0093】
また、電解質膜-電極接合体6の電解質膜1に用いられるイオン交換樹脂のイオン交換容量は、0.9~2.0ミリ当量/g乾燥樹脂であることが好ましい。
【0094】
電解質膜-電極接合体6の電解質膜1に用いられるイオン交換樹脂のイオン交換容量が0.9ミリ当量/g乾燥樹脂以上であると、高いプロトン伝導性を得易く、電解質膜-電極接合体6の電解質膜1に用いられるイオン交換樹脂のイオン交換容量が2.0ミリ当量/g乾燥樹脂以下であると、含水による樹脂の膨潤が抑制され、電解質膜1の寸法変化が抑えられるため好ましい。
【0095】
また、電解質膜-電極接合体6の電解質膜1の膜厚は、5μm以上50μm以下であることが好ましい。電解質膜-電極接合体6の電解質膜1の膜厚が5μm以上であると、高いガスバリア性を得られ、電解質膜-電極接合体6の電解質膜1の膜厚が50μm以下で
あると、高いプロトン伝導性を得られる。
【0096】
実施の形態1では、電解質膜-電極接合体6のアノードガス拡散層4aおよびカソードガス拡散層4cとして、カーボンペーパーからなる基材とコーティング層の2層を含む構成のものを用いた。アノードガス拡散層4aおよびカソードガス拡散層4cは、集電作用とガス透過性と撥水性とを併せ持つ層であればよい。したがって、アノードガス拡散層4aおよびカソードガス拡散層4cは、カーボンペーパーからなる基材とコーティング層の2層を含む構成のものに限定されない。
【0097】
電解質膜-電極接合体6のアノードガス拡散層4aおよびカソードガス拡散層4cに用いる基材は、導電性、ならびに気体および液体の透過性に優れた材料であれば良く、例えば、カーボンペーパー、炭素繊維クロス、炭素繊維フェルト等の多孔質性材料が例示される。
【0098】
電解質膜-電極接合体6のアノードガス拡散層4aおよびカソードガス拡散層4cに用いるコーティング層は、触媒層(アノード触媒層3a、カソード触媒層3c)と、基材との間に介在して、触媒層と基材との接触抵抗を下げ、液体の透過性(排水性)を向上するための層である。
【0099】
電解質膜-電極接合体6のアノードガス拡散層4aおよびカソードガス拡散層4cに用いるコーティング層は、カーボンブラックなどの導電性材料およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの撥水性樹脂を主成分として形成される。
【0100】
実施の形態1では、電解質膜-電極接合体6のカソード触媒層3cの導電性触媒担体材料10としてメソポーラス材料15を用い、メソポーラス材料15としてメソポーラスカーボンを用いたが、導電性触媒担体材料10は、触媒12を担持可能な導電性材料であればよい。
【0101】
電解質膜-電極接合体6のカソード触媒層3cの導電性触媒担体材料10として、例えば、ケッチェンブラック(登録商標)やアセチレンブラック、バルカン(登録商標)といった炭素系材料、AuやNiなどの金属材料、チタン、スズ、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、アルミニウム、シリコン等の金属酸化物材料、およびそれらの複合体材料が挙げられる。
【0102】
電解質膜-電極接合体6のカソード触媒層3cの導電性触媒担体材料10に用いるメソポーラス材料15は、メソポーラス材料15が触媒12を担持する前において、メソ孔16のモード径が1~50nmで、メソ孔16の細孔容積が1.0~3.0cm/gであってもよい。
【0103】
メソ孔16の細孔容積が1.0cm/g以上のメソポーラス材料15であれば、メソポーラス材料15のメソ孔16の内部に多くの触媒12を担持でき、メソ孔16の細孔容積が3.0cm/g以下のメソポーラス材料15であれば、メソポーラス材料15の構造体としての強度が高まる。
【0104】
また、電解質膜-電極接合体6のカソード触媒層3cの導電性触媒担体材料10に用いるメソポーラス材料15は、メソポーラス材料15のモード径が200~1000nmとなるように構成されていてもよい。
【0105】
モード径が200nm以上のメソポーラス材料15であれば、アイオノマ13がメソ孔16内に侵入する領域が、メソ孔16の細孔容積に対して小さくなるので、アイオノマ1
3による被毒の影響を受ける触媒12の割合が小さくなる。このため、カソード触媒層3cの導電性触媒担体材料10に用いるメソポーラス材料15のモード径を200nm以上とすることで、触媒活性を向上させることができると考えられる。
【0106】
また、モード径が1000nm以下のメソポーラス材料15であれば、メソポーラス材料15のメソ孔16の内部に担持された触媒12にまで反応ガス(酸素)が供給され易くなる。
【0107】
実施の形態1では、電解質膜-電極接合体6のカソード触媒層3cの触媒12として、白金および白金と異なる金属を含む合金を用いた。
【0108】
電解質膜-電極接合体6のカソード触媒層3cの触媒12の材料としては、プロトン(H)と酸素(O)と電子が結びついて水が生成される還元反応を起こす触媒作用を有するのであれば特に限定されない。電解質膜-電極接合体6のアノード触媒層3aの触媒の材料としては、水素がプロトン(H)と電子とに解離する酸化反応が起こす触媒作用を有するのであれば特に限定されない。
【0109】
カソード触媒層3cの触媒12としては、例えば、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、タングステン(W)、鉛(Pb)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、バナジウム(V)、モリブデン(Mo)、ガリウム(Ga)及びアルミニウム(Al)等の金属、これら金属の混合物、合金等が挙げられる。
【0110】
それらの中でも、触媒活性、一酸化炭素等に対する耐被毒性、耐熱性等を向上させる観点から、カソード触媒層3cの触媒12としては、白金、白金を含む混合物又は合金が好ましい。
【0111】
カソード触媒層3cの触媒12が合金からなる場合は、合金の組成は、合金化する金属の種類にもよるが、白金の含有量を30~90原子%とし、その他の金属の含有量を10~70原子%とすることができる。
【0112】
カソード触媒層3cの触媒12のモード径は、特に限定されない。しかし、触媒利用率及び導電性触媒担体材料10での担持性の向上の観点から、カソード触媒層3cの触媒12のモード径は、好ましくは1~30nmである。カソード触媒層3cの導電性触媒担体材料10としてメソポーラス材料15を用いて、メソポーラス材料15メソ孔16の内部に触媒12を担持させる場合には、カソード触媒層3cの触媒12のモード径が、メソポーラス材料15メソ孔16のモード径よりも小さいモード径であることが好ましい。
【0113】
実施の形態1では、電解質膜-電極接合体6のカソード触媒層3cの親水性無機材料11として、Nb-SnОを用いた。電解質膜-電極接合体6のカソード触媒層3cの親水性無機材料11の材料としては、燃料電池セル7の動作環境で安定な親水性の高い無機材料であればよく、特に限定されない。
【0114】
電解質膜-電極接合体6のカソード触媒層3cの親水性無機材料11の材料としては、例えば、アルミナ(AlО)やチタニア(TiО)、シリカ(SiО)などの金属酸化物、および、これらの材料で表面加工された混合物などが挙げられる。
【0115】
実施の形態1では、電解質膜1がプロトン伝導性膜で、本開示の電解質膜-電極接合体用触媒層をカソード触媒層3cに用いたプロトン交換型の燃料電池セル7を説明したが、
水酸化物イオン伝導性膜を電解質膜に用いた水酸化物イオン交換型の燃料電池セルでは、本開示の電解質膜-電極接合体用触媒層をアノード触媒層に用いることが好ましい。
【0116】
水酸化物イオン伝導性膜を電解質膜に用いた燃料電池セルでは、水素が供給されるアノード触媒層において、(化3)に示す反応が起こり、酸素が供給されるカソード触媒層において、(化4)に示す反応が起こる。
【0117】
【化3】
【0118】
【化4】
【0119】
水酸化物イオン伝導性膜を電解質膜に用いた燃料電池セルでは、アノード触媒層において、水が生成されるため、アノード触媒層において、生成した水を効率よく排水することが求められ、アノード触媒層の排水性向上が性能向上に必要となるが、本開示の電解質膜-電極接合体用触媒層をアノード触媒層に用いることにより、アノード触媒層が優れた排水性と高い導電性を持つことから燃料電池セルの性能を向上させることができる。
【0120】
なお、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本開示は、優れた排水性と高い導電性を持つ電解質膜-電極接合体用触媒層を提供することができ、燃料電池の触媒層に適用可能である。
【符号の説明】
【0122】
1 電解質膜
2a アノード
2c カソード
3a アノード触媒層
3c カソード触媒層
4a アノードガス拡散層
4c カソードガス拡散層
5a アノードセパレータ
5c カソードセパレータ
6 電解質膜-電極接合体
7 燃料電池セル
10 導電性触媒担体材料
11 親水性無機材料
12 触媒
13 アイオノマ
14 間隙
15 メソポーラス材料
16 メソ孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6