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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134870
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】中空組立体
(51)【国際特許分類】
   F16B 5/07 20060101AFI20230921BHJP
   F16B 21/07 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
F16B5/07 L
F16B21/07 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022039783
(22)【出願日】2022-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000108498
【氏名又は名称】タイガースポリマー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】畠山 淳
(72)【発明者】
【氏名】神戸 智弘
(72)【発明者】
【氏名】坂 昭人
【テーマコード(参考)】
3J001
3J037
【Fターム(参考)】
3J001FA05
3J001FA12
3J001GA06
3J001GB03
3J001HA04
3J001JD28
3J001KA12
3J001KA19
3J001KB04
3J037AA02
3J037BA02
3J037BB03
3J037BB04
3J037DA05
3J037DC01
(57)【要約】
【課題】 スナップフィットによる組立の際の位置決めをしやすくする
【解決手段】 中空組立体10は第1部材1と第2部材2が、複数の係止構造F1,・・によって一体化されてなる。係止構造F1は押込操作によって係止する。係止構造F1は、第1部材1に設けられた係止突起11と、第2部材に設けられた門型の係止枠12を有する。係止突起11は、第1方向の押込方向後側が係合面112とされており、門型の係止枠12はかんぬき部121を有していて、係止突起11とかんぬき部121は、押込操作の際に、第3方向D3に相対的に弾性変形し、一体化された際には、係合面112と、かんぬき部121が係合する。門型の係止枠12には、かんぬき部21の第2方向D2中央部から、第1方向D1に沿って第2部材2から遠ざかる方向に突出した突片13が設けられている。突片13の第2方向の幅Wは、かんぬき部121の第2方向の幅WGよりも小さい。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材と第2部材が、複数の係止構造によって一体化された中空組立体であって、
前記係止構造は押込操作によって係止する係止構造であって、
それぞれの係止構造において、
押込方向を第1方向とし、
係止構造近傍の中空組立体の壁部と平行で、かつ第1方向に直交する方向を第2方向とし、
第1方向と第2方向の両方に直交する方向を第3方向として、
係止構造は、第1部材に設けられた係止突起と、第2部材に設けられた門型の係止枠を有し、
係止突起は、第1方向の押込方向前側が傾斜面とされ、第1方向の押込方向後側が係合面とされており、
門型の係止枠はかんぬき部を有していて、
係止突起とかんぬき部は、押込操作の際に、第3方向に、相対的に弾性変形して、係止突起の傾斜面にかんぬき部が乗り上げるとともに、
一体化された際には、係止突起の係合面と、係止枠のかんぬき部が係合するように構成されており、
前記門型の係止枠には、かんぬき部の第2方向中央部から、第1方向に沿って第2部材から遠ざかる方向に突出した突片が設けられており、
突片の第2方向の幅は、かんぬき部の第2方向の幅よりも小さい幅とされている、
中空組立体。
【請求項2】
突片の第3方向の厚みが、かんぬき部の第3方向の厚みよりも薄くされた、
請求項1に記載の中空組立体。
【請求項3】
押込操作の際に前記係止枠が前記傾斜面と接触する側の面において、突片の先端が、かんぬき部よりも、第3方向の位置に関し、第1部材の壁部から遠い位置となるようにされた、
請求項1に記載の中空組立体。
【請求項4】
突片の第2方向の幅が、係止突起の第2方向の幅とほぼ同じである、
請求項1に記載の中空組立体。
【請求項5】
中空組立体は、請求項1に規定される係止突起と係止枠と突片を有する係止構造を、少なくとも4つ有しており、
第1の係止構造と第2の係止構造は、中空組立体において互いに対向する第1の面と第2の面にそれぞれ配置されるとともに、第1の係止構造の第3方向と、第2の係止構造の第3方向とが略平行とされ、
第3の係止構造と第4の係止構造は、中空組立体において互いに対向する第3の面と第4の面にそれぞれ配置されるとともに、第3の係止構造の第3方向と、第4の係止構造の第3方向とが略平行とされ、
第1の係止構造の第3方向と、第3の係止構造の第3方向とが略直交する、
請求項1に記載の中空組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空組立体、特に押込操作によって係止する複数の係止構造によって組立一体化された中空組立体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂により、ケースや箱、ダクトなどの中空部材を製造する際に、これら部材を、例えば、箱と蓋、あるいは、2つの半割れダクトのように、2つに分けて射出成形等によって成形し、成形された部品を組み立てて中空部材、すなわち、中空組立体を得ることがある。分割された2部材を一体化するにあたり、いわゆるスナップフィットと呼ばれる、押込操作によって係止する係止構造を利用した一体化が行われることがある。スナップフィットを利用すると、溶着や接着といった特別な工程を経ずに、部材が一体化できる。
【0003】
例えば、特許文献1には、ダクト本体から突出形成されたレゾネータ接続部に、レゾネータをスナップフィット機構によって連結して、レゾネータが一体化された外気導入ダクトである中空組立体を得ることが開示されている。また、特許文献2には、係合凸部と係合片を有するスナップフィット構造において、係合片の掛り部に、側部に隣接したスリットを形成し、係合片を外れにくくする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-211622号公報
【特許文献2】特開2014-001825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スナップフィットを利用した中空組立体を、自動車のエアクリーナやバッテリー冷却ダクトやバッテリーケースといった、比較的大型の中空組立体に応用する場合には、複数のスナップフィット係止構造を使って、一体化を図ることが多い。
【0006】
しかしながら、複数のスナップフィット係止構造により一体化される中空組立体を組立てる場合は、分割されて成形された部材同士を、互いに正確に位置決めしたうえでスナップフィット部を押込む操作を行うことが要求される。位置合わせが不十分であると、一部のスナップフィットが係合して部材が一体化されるにもかかわらず、一部のスナップフィットが外れたり食い違ったりして係合不能となってしまい、その周囲の部材の接合部に隙間ができてしまって、製造不良となってしまうことがある。特に、スナップフィットの数が多かったり、部材が大きかったりすると、このような問題が生じやすい。
【0007】
本発明の目的は、スナップフィットによる組立の際の位置決めがしやすい中空組立体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者は、鋭意検討の結果、スナップフィット構造において係止突起が係止するかんぬき部に、かんぬき部よりも幅が狭い突片をかんぬき部の中央部から突出形成すると、組立の際の位置決めがしやすくなることを知見し、本発明を完成させた。
【0009】
本発明は、第1部材と第2部材が、複数の係止構造によって一体化された中空組立体であって、前記係止構造は押込操作によって係止する係止構造であって、それぞれの係止構造において、押込方向を第1方向とし、係止構造近傍の中空組立体の壁部と平行で、かつ第1方向に直交する方向を第2方向とし、第1方向と第2方向の両方に直交する方向を第3方向として、係止構造は、第1部材に設けられた係止突起と、第2部材に設けられた門型の係止枠を有し、係止突起は、第1方向の押込方向前側が傾斜面とされ、第1方向の押込方向後側が係合面とされており、門型の係止枠はかんぬき部を有していて、係止突起とかんぬき部は、押込操作の際に、第3方向に、相対的に弾性変形して、係止突起の傾斜面にかんぬき部が乗り上げるとともに、一体化された際には、係止突起の係合面と、係止枠のかんぬき部が係合するように構成されており、前記門型の係止枠には、かんぬき部の第2方向中央部から、第1方向に沿って第2部材から遠ざかる方向に突出した突片が設けられており、突片の第2方向の幅は、かんぬき部の第2方向の幅よりも小さい幅とされている、中空組立体である(第1発明)。
【0010】
第1発明において、好ましくは、突片の第3方向の厚みが、かんぬき部の第3方向の厚みよりも薄くされる(第2発明)。また、第1発明において、好ましくは、押込操作の際に前記係止枠が前記傾斜面と接触する側の面において、突片の先端が、かんぬき部よりも、第3方向の位置に関し、第1部材の壁部から遠い位置となるようにされる(第3発明)。また、第1発明において、好ましくは、突片の第2方向の幅が、係止突起の第2方向の幅とほぼ同じである(第4発明)。
【0011】
また、本発明は、中空組立体は、第1発明に規定される係止突起と係止枠と突片を有する係止構造を、少なくとも4つ有しており、第1の係止構造と第2の係止構造は、中空組立体において互いに対向する第1の面と第2の面にそれぞれ配置されるとともに、第1の係止構造の第3方向と、第2の係止構造の第3方向とが略平行とされ、第3の係止構造と第4の係止構造は、中空組立体において互いに対向する第3の面と第4の面にそれぞれ配置されるとともに、第3の係止構造の第3方向と、第4の係止構造の第3方向とが略平行とされ、第1の係止構造の第3方向と、第3の係止構造の第3方向とが略直交する、第1発明の中空組立体である(第5発明)。
【発明の効果】
【0012】
本発明の中空組立体(第1発明)によれば、スナップフィットによる組立の際の位置決めがしやすい。また、さらに、第2発明、第3発明、第4発明のようにした場合には、より、組立の際の位置決めがしやすくなる。
また、第5発明のようにした場合には、中空組立体の全体にわたって、複数のスナップフィット係止構造を一度に位置決めでき、特に、組立の際の位置決めがしやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態の中空組立体の構造を示す分解斜視図である。
図2】第1実施形態の中空組立体における係止構造の部分の分解斜視図である。
図3】第1実施形態の中空組立体における係止構造の部分の分解状態での正面図および断面図である。
図4】係止構造における、第1部材の係止突起付近の正面図および断面図である。
図5】係止構造における、第2部材の門型係止枠の付近の正面図および断面図である。
図6】第1実施形態の中空組立体における係止構造の部分の、押込操作のために位置決めした状態での正面図および断面図である。
図7】第1実施形態の中空組立体における係止構造の部分の、係止状態での正面図および断面図である。
図8】第1実施形態の中空組立体における複数の係止構造の配置および向きを示す図である。
図9】第1部材の係止突起付近の変形例を示す斜視図である。
図10】第2部材の門型係止枠付近の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下図面を参照しながら、自動車のエアクリーナのフィルタエレメントの一部となる中空組立体を例として、発明の実施形態について説明する。発明は以下に示す個別の実施形態に限定されるものではなく、その形態を変更して実施することもできる。
【0015】
図1は第1実施形態の中空組立体10の構造を示す分解斜視図である。中空組立体10は、第1部材1と第2部材2が一体化されて構成されている。本実施形態の中空組立体10は、エアクリーナのフィルタエレメントの枠体として機能する。このフィルタエレメントは板状である。第2部材2には、ひだ折りされたろ過材29が一体化されている。また、第2部材2に形成されたフランジ部28に、シール部材(図示せず)が取り付けられる。第1部材1と第2部材2が一体化されてできる中空組立体10は略直方体の箱状であり、箱の中空空間には、プレフィルタ30が配置される。すなわち、第1部材1は、プレフィルタ30の押さえ部材として機能する。
【0016】
第1部材1と第2部材2とは、複数の係止構造F1,F2,・・・F6によって、組立一体化されて、中空組立体10を構成する。係止構造F1,F2,・・・F6は押込操作によって係止する係止構造である。後述するように、それぞれの係止構造は、係止突起と係止枠を有する。必須ではないが、本実施形態では、図8に示すように、板状のフィルタエレメントが延在する方向に直交する方向(Z方向)に沿って見て、係止構造F1,F2,・・・F6は、直方体状の中空箱の周囲4面を取り囲むように配置されている。
【0017】
以下の説明において、図1に示したように、板状のフィルタエレメントの延在する方向をX方向およびY方向とし、フィルタエレメントの延在方向と直交する方向をZ方向とする。また、図2に示すように、それぞれの係止構造において、係止突起が係止枠に押込まれる押込方向を第1方向D1とし、係止構造近傍の中空組立体の壁部10,20と平行で、かつ第1方向D1に直交する方向を第2方向D2とし、第1方向D1と第2方向D2の両方に直交する方向を第3方向D3とする。本実施形態では、すべての係止構造において、第1方向D1は同じ方向である。また、本実施形態では、Z方向と第1方向D1は平行である。
【0018】
図2は、第1実施形態の中空組立体10における係止構造F1の部分の分解斜視図である。また、図3は、第1実施形態の中空組立体10における係止構造F1の部分の分解状態での正面図および断面図である。図4は、係止構造F1における、第1部材1の係止突起11付近の正面図および断面図である。図5は、係止構造F1における、第2部材2の門型係止枠12の付近の正面図および断面図である。
【0019】
係止構造F1は、第1部材1に設けられた係止突起11と、第2部材2に設けられた門型の係止枠12を有する。係止突起11は、第1方向の押込方向前側が傾斜面111とされ、第1方向の押込方向後側が係合面112とされている。例えば、係止突起11は、第1部材の壁面10から突出するよう形成される。
【0020】
門型の係止枠12はかんぬき部121を有している。すなわち、かんぬき部121とその両側の側部122,122によって、門型の係止枠12が構成される。本実施形態では、係止枠12は、第2部材2の周縁から第1方向D1に沿って張り出すように、壁部20と平行に設けられている。また、第2部材2の周縁と門型の係止枠12との間は、解放された窓12Hとなっている。
【0021】
係止突起11とかんぬき部121は、押込操作の際に、第3方向D3に、相対的に弾性変形する。第3方向D3への弾性変形は、係止突起11とかんぬき部121のいずれか一方のみが変形してもよいし、両方が変形してもよい。本実施形態では、第1部材の壁部10の弾性変形や、第2部材の壁部20の弾性変形、および、係止枠12の側部122,122の弾性変形によって、係止突起11とかんぬき部121の両方が、第3方向に相対的に弾性変形する。また、押込操作の際に、係止突起11の傾斜面111にかんぬき部121が乗り上げる。この乗り上げによって第3方向の弾性変形が促進され、押し込み操作がたやすくなる。
【0022】
押込操作が完了し、第1部材1と第2部材2が一体化された際には、係止突起11の係合面112と、係止枠12のかんぬき部121が係合するように構成されている(図5)。この時、係止突起11は係止窓12Hに入り込んで、係止突起11とかんぬき部121の第3方向の相対的な弾性変形が解消もしくは緩和される。係止突起11が係止窓12Hに入り込むと、かんぬき部121と係合面112が係止して、係止突起11と係止枠12が第1方向D1に離脱することが阻止される。係合がたやすく離脱しないよう、係合面112は、押込方向である第1方向D1に対し、70度以上、より好ましくは80度以上の角度をなすように設けられる。
【0023】
さらに、門型の係止枠12には、かんぬき部121の第2方向の中央部から、第1方向に沿って、第2部材から遠ざかる方向に突出した突片13が設けられている。突片13は棒状であってもよいが、本実施形態のように、板状であることが好ましい。突片13は、中空形状、例えば、筒状であってもよい。突片13は、第1方向に沿って第2部材から遠ざかる方向に突出するので、第1部材1と第2部材2を一体化する際には、押込操作の際に、突片13が、係止突起11を迎え入れて係止枠12に導くように働く。
【0024】
突片13の第2方向D2の幅Wは、かんぬき部121の第2方向D2の幅WGよりも小さい幅とされている。好ましくは、本実施形態のように、突片13の第2方向D2の幅Wは、係止突起11の第2方向D2の幅WTとほぼ同じ幅とされている。0.8WT<W<1.2WTであれば、ほぼ同じ幅であるといえる。
【0025】
また、必須ではないが、好ましくは、本実施形態のように、突片13の第3方向D3の厚みtが、かんぬき部121の第3方向D3の厚みTGよりも薄くされる。
【0026】
また、必須ではないが、好ましくは、本実施形態のように、押込操作の際に係止枠12や突起13が、係止突起11の傾斜面111と接触する側の面(仮に「内面」とする)において、第3方向の位置に関し、突片13の先端13aが、かんぬき部121よりも、第1部材1の壁部10から外側に、遠い位置となるようにされる。
【0027】
また、必須ではないが、好ましくは、本実施形態のように、中空組立体10は、上記したような係止突起11と係止枠12と突片13を有する係止構造F1を、少なくとも4つ有する。本実施形態では、図8に示すように、6つの係止構造F1、F2,・・・,F6が設けられている。図8は、第1実施形態の中空組立体10における複数の係止構造F1、F2,・・・,F6の配置および向きを示す図である。
【0028】
係止構造が4つ以上設けられる実施形態においては、好ましくは、さらに、4つの係止構造のうち、第1の係止構造F1と第2の係止構造F2は、中空組立体10において互いに対向する第1の面101と第2の面102にそれぞれ配置されるとともに、第1の係止構造F1の第3方向D31と、第2の係止構造F2の第3方向D32とが略平行とされる。
また、さらに、第3の係止構造F3と第4の係止構造F4は、中空組立体10において互いに対向する第3の面103と第4の面104にそれぞれ配置されるとともに、第3の係止構造F3の第3方向D33と、第4の係止構造F4の第3方向D34とが略平行とされる。
【0029】
係止構造が4つ以上設けられる実施形態においては、好ましくは、さらに、第1の係止構造F1の第3方向D31と、第3の係止構造F3の第3方向D33とが略直交する。
以上のような構成によって、本実施形態では、第1の係止構造F1と第2の係止構造F2が互いに平行に設けられ、これらと直交する方向に、第3の係止構造F3と第4の係止構造F4が設けられることになる。中空組立体が、直方体状の箱状である場合には、Z方向(D1方向)から見た4辺に相当する4つの面に、それぞれ係止構造を配置すれば、このような構成が得られる。
【0030】
上記実施形態の中空組立体は、典型的には、以下のようにして製造できる。
まず、熱可塑性樹脂(例えばポリプロピレン樹脂)の射出成型を利用して、第1部材1および、第2部材2を製造する。次に、第1部材1と第2部材2を組み立てて、中空組立体10を得る。以下、組立工程(押込工程)について説明する。
【0031】
得られた第1部材1と第2部材2を、図1に示したような所定の位置と姿勢に配置する。この際、挟み込むべきプレフィルタ30なども配置しておく。この時、個々の係止構造F1,F2,・・・,F6は、図3に示したような位置に配置される。ここから押込操作を行って、第1部材1と第2部材2を一体化する。
【0032】
まず、図6に示すような位置まで、係止突起11の一部が突片13の内側に入り込むよう、第1部材と第2部材を配置する。図6は、押込操作のために位置決めした状態を示している。この位置を、以下「押込準備位置」と呼ぶ。押込準備位置では、係止突起11は、もっぱら突片13に接触し、係止突起11と係止枠12とはまだ係止状態とはならない。押込準備位置から、係止突起11を第1方向D1に沿って動かせば、係止突起11がうまく係止枠12の窓12Hに入り込む。
【0033】
必須ではないが、好ましくは、図6に示したように、押込準備位置で、係止突起11と突片13が軽く干渉し、両者が相対的に第3方向D3に弾性変形することが好ましい。押込準備位置では、係止突起11と係止枠12とはまだ係止していないので、第1部材1と第2部材2とを、たやすく、第3方向D3や第2方向D2に相対移動させることができる。
【0034】
第1部材1と第2部材2とを相対移動させ、押込準備位置をとることが可能なすべての係止構造を押込準備位置の位置にする。本実施形態では、6つの係止構造F1,F2,・・・,F6のすべてに突片13が設けられており、これら6つの係止構造F1,F2,・・・,F6のすべてを同時に押込準備位置にすることができる。
【0035】
図6のように、係止突起11と係止枠12、突片13が押込準備位置となると、あとは、それぞれの係止構造において第1方向D1に押込操作を行えば、図7のように、係止突起11が係止枠12の窓12Hに入り込んで、係止突起11の係止面112と係止枠12のかんぬき部121が係合し、接続一体化が完了する。すべての係止構造F1,F2,・・・,F6に対し、順次、もしくは同時に押込操作を行って係合させれば、第1部材1と第2部材2の一体化が完了し、中空組立体10が得られる。
【0036】
上記実施形態の中空組立体の作用および効果について説明する。
上記実施形態の中空組立体10では、押込操作により係合する係止突起11とかんぬき部121が設けられており、さらに、かんぬき部121の中央部から、押込み方向である第1方向D1に沿って第2部材から遠ざかる方向に突出した突片13が設けられていて、第2方向D2の幅に関し、突片13の幅Wは、かんぬき部121の幅WGよりも小さい幅とされている。そのため、スナップフィットの組立の際の押込操作時の位置決めがしやすくなる。
【0037】
すなわち、突片13の幅Wは、かんぬき部121の幅WGよりも小さいため、作業者は、図3の組立前の状態から、図6に示した押込準備位置に至らせる際に、突片13と係止突起11が、第2方向D2に関し一致するようにして、位置決めすれば、おのずと、係止突起11が、係止枠12の窓12Hに対し第1方向D1に沿って並んだ位置に来ることになり、簡単に位置決めできる。
【0038】
この時、突片の幅Wが、かんぬき部121の幅WGよりも狭いため、D2方向の位置合わせが不十分な場合は、突片13と係止突起11が干渉しにくく、第1部材と第2部材の相対移動が自由に行える一方で、D2方向の位置合わせがうまくなされると、突片13の内側に係止突起11が入り込んで両者が軽く接触するようになり(図6)、正しい押込準備位置が維持されやすくなる。また、突片の幅Wが、かんぬき部121の幅WGよりも狭いことを利用すれば、指先で、係止突起11と突片13が直線状に並んだことを触って確認でき、正しい押込準備位置となったことが触覚で効率的に確認できる。かかる確認のため、突片の先端における幅が、かんぬき部121の幅WGよりも狭いことが好ましい。
【0039】
したがって、上記実施形態の中空組立体10では、突片13と係止突起11を利用して、それぞれの係止構造を、効率的に、正しい押込準備位置に導くことができる。そして、正しい押込準備位置にそれぞれの係止構造が導かれれば、あとは第1方向D1に押し込んで押込操作を完了させ、組立に失敗することなく、中空組立体10を得ることができる。
【0040】
必須ではないが、組立の際の位置決めをよりしやすくする観点からは、上記実施形態のように、突片13の第3方向の厚みtが、かんぬき部121の第3方向D3の厚みTGよりも薄くされることが好ましい。このようにされていると、突片13が第3方向D3に弾性変形しやすくなり、より軽い力で、突片13と係止突起11を押込準備位置に導きやすくなるからである。
【0041】
また、必須ではないが、組立の際の位置決めをよりしやすくする観点からは、上記実施形態のように、押込操作の際に係止枠12が傾斜面111と接触する側の面(内面側)において、突片13の先端13aが、かんぬき部121よりも、第3方向D3の位置に関し、第1部材1の壁部10から遠い位置となるようにされることが好ましい。このようにされていると、押込準備位置における、突片13と係止突起11の第3方向の相対的弾性変形量が小さくなり、より軽い力で、突片13と係止突起11を押込準備位置に導きやすくなるからである。
【0042】
また、必須ではないが、組立の際の位置決めをよりしやすくする観点からは、上記実施形態のように、突片13の第2方向の幅Wが、係止突起11の第2方向D2の幅WTとほぼ同じであることが好ましい。このようにされていると、指先で、突片13と係止突起11の第2方向の位置を比較、確認でき、両者が第2方向D2に正確に並んでいるかどうかを知って、突片13と係止突起11を押込準備位置に正確に導きやすくなるからである。このようにされていると、押込操作をした際に、係止突起11が、係止枠12の側部122に乗り上げてしまうことが予防しやすくなり、係合がより確実なものとなる。
【0043】
また、必須ではないが、上記実施形態のように、中空組立体に、4つ以上の係止構造を設け、それら係止構造を、対向する第1の面101と第2の面102に第1の係止構造F1と第2の係止構造F2を平行に配置し、対向する第3の面103と第4の面104に第3の係止構造F3と第4の係止構造F4を平行に配置し、第1の係止構造F1の第3方向D31と、第3の係止構造F3の第3方向D33とが略直交するように構成した場合には、例えば、第1の係止構造F1と第2の係止構造F2を正しい押込準備位置に導くと、自然に、第3の係止構造F3と第4の係止構造F4も正しい押込準備位置に導かれることになり、中空組立体の全体にわたって、複数のスナップフィット係止構造を一度に位置決めでき、特に、組立の際の位置決めがしやすくなる。
【0044】
発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の改変をして実施することができる。以下に発明の他の実施形態について説明するが、以下の説明においては、上記実施形態と異なる部分を中心に説明し、同様である部分についてはその詳細な説明を省略する。また、これら実施形態は、その一部を互いに組み合わせて、あるいは、その一部を置き換えて実施できる。
【0045】
第1部材において係止突起11が設けられる部分の具体的構造は変更可能である。例えば、図9は、第1部材1の係止突起11付近の変形例を示す斜視図である。図9(a)に示すように、係止突起11が設けられる付近の第1部材の壁部10に、スリット10S,10Sを設けて、係止突起11が第3方向D3に弾性変形しやすくなるように構成してもよい。また、図9(b)に示すように、係止突起11が設けられる付近の第1部材の壁部10から舌片状に係止片11tを第2部材に向けて突出させ、係止片11tの先端部に係止突起11を設けるようにしてもよい。また、係止突起11そのものに、押込み方向のガイドとなるような溝や凸条を設けてもよい。こうした実施形態であっても、上記第1実施形態と同様に、スナップフィットの組立の際の押込操作時の位置決めがしやすくなる。
【0046】
また、第2部材2において係止枠12や突片13が設けられる部分の具体的構造は変更可能である。例えば、図10は、第2部材2の門型係止枠12付近の変形例を示す斜視図である。図10の実施形態では、かんぬき部121が、第2部材の壁部20から、第3方向D3にオフセットした位置に設けられ、第1方向D1に沿って見て、門型の係止枠が形成されている。かんぬき部121と対向する部分とその第1方向で下側の部分で壁部20が切りかかれて、窓20Hとされている。そして、かんぬき部121の第2方向D2の中央部から、第1方向に沿って、第2部材から遠ざかり第1部材に向かう方向に、突片13が突出形成されている。
【0047】
図10に示した形態の第2部材は、典型的には、図9(b)に示した形態の第1部材と組み合わされ、同様に、スナップフィットの組立の際の押込操作時の位置決めがしやすくなる。
【0048】
また、突片13の幅(第2方向D2方向の幅)は、第1方向D1にわたって、一定であってもよいが、変化してもよい。特に、突片13の幅が、先細り状に、先端に向かうにしたがって幅が狭くなるよう、テーパ状にされていてもよい。突片13に幅は、第1方向D1のいずれかの位置において、係止突起11の幅WTと同じになることが特に好ましい。
【0049】
また、突片13の厚み(第3方向D3方向の厚み)は、第1方向D1にわたって、一定であってもよいが、変化してもよい。特に、突片13の厚みが、先細り状に、先端に向かうにしたがって厚みが薄くなるよう、テーパ状にされていてもよい。先端に向かうにしたがって突片13の厚みが薄くなっていると、押込操作に先立って押込準備位置が取りやすくなる。
【0050】
また、門型の係止枠の構成については、図示は省略するが、平板状の壁部20の周縁部に、窓12H(20H)を開けて、窓12H(20H)と壁部の周縁の間の部分をかんぬき部として、この部分を門型の係止枠12とみなすこともできる。このような形態であっても、かんぬき部の中央部から突片13を突出形成すれば、同様の効果が得られる。
【0051】
また、上記実施形態の説明では、第1部材と第2部材の両方に壁部10,20が設けられていたが、壁部が、第1部材と第2部材の一方のみに設けられていてもよい。例えば、直方体状の中空組立体の辺部で第1部材と第2部材が接合される場合、壁部が、第1部材と第2部材の一方のみに設けられることになる。
【0052】
また、上記実施形態の説明では、係止構造が6つ設けられた中空組立体10の例を示したが、係止構造の数は、4つでもよく、3つもしくは2つ、あるいは1つであってもよい。かんぬき部121よりも幅の狭い突片13をかんぬき部の中央部に設けたことによって、係止突起11との第2方向D2の位置合わせがしやすくなる効果は、突片13を設けた係止構造の数が3つ以下であっても発揮される。
【0053】
また、上記実施形態の説明では、中空組立体10が、自動車のエンジンのエアクリーナに使用されるフィルタエレメントの枠体に利用される例を示したが、中空組立体の具体的用途は限定されない。中空組立体は、例えば、エアーダクトや、レゾネータ、エアクリーナケースなどの、自動車の内燃機関の吸気系の部品に利用できる。また、中空組立体は、例えば、電気自動車やハイブリッド自動車において、車載バッテリーやパワーモジュールを冷却するための冷却風の導風ダクトや、バッテリーケース、回路基板ケースなどの中空部品に利用できる。また、中空組立体は、空気清浄機や空調機器の、導風ダクトやチャンバーにも利用できる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の中空組立体はケースなどに使用でき、組立がしやすく産業上の利用価値が高い。
【符号の説明】
【0055】
1 第1部材
11 係止突起
111 傾斜面
112 係止面
2 第2部材
12 係止枠
121 かんぬき部
13 突片
D1 第1方向
D2 第2方向
D3 第3方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10