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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134879
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】位置検出装置及び情報処理システム
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/04883 20220101AFI20230921BHJP
   G06F 3/03 20060101ALI20230921BHJP
   G06F 3/0354 20130101ALI20230921BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20230921BHJP
   G06F 3/046 20060101ALN20230921BHJP
【FI】
G06F3/0488 130
G06F3/03 400A
G06F3/0354 453
G06F3/041 540
G06F3/046 B
G06F3/046 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022039796
(22)【出願日】2022-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000139403
【氏名又は名称】株式会社ワコム
(74)【代理人】
【識別番号】100091546
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 正美
(74)【代理人】
【識別番号】100206379
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 正
(72)【発明者】
【氏名】加藤 壮
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 僚
【テーマコード(参考)】
5B087
5E555
【Fターム(参考)】
5B087AA10
5B087AD02
5B087BC34
5E555AA13
5E555BA01
5E555BB01
5E555BC19
5E555CA11
5E555CB11
5E555CC19
5E555DB03
5E555DB43
5E555DC25
5E555EA09
5E555EA11
5E555EA14
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】 位置検出装置に関し、専用ドライバが不要で、表示デバイスの表示画面の一部分への情報入力でも、入力面の全面を使用でき、表示が歪むなどの不都合を生じさせないようにする。
【解決手段】 位置検出回路部507は、センサ部の入力面上における指示位置を絶対座標として検出する。相対座標計算部922は、位置検出回路部507からの絶対座標を順次に取得し、前回の絶対座標と今回の絶対座標との差分から入力面における指示体による指示位置を示す相対座標を計算する。出力絶対座標値計算部923は、表示画面に対応する出力絶対座標領域上に位置付けられる入力エリアに対して指示入力が行われたものとして、相対座標計算部922からの相対座標を用いて指示入力に応じた指示位置の出力絶対座標値を計算する。計算された出力絶対座標値は、出力部925を通じて出力する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に配列された複数の第1の電極と、前記第1の方向に対して交差する第2の方向に配列された複数の第2の電極とを積層して形成され、指示体からの位置指示信号を受信する所定面積の入力面を有するセンサ部と、
複数の前記第1の電極と複数の前記第2の電極とからの出力信号に基づいて、前記入力面上に対する前記指示体による指示入力に応じた指示位置を、前記入力面上の所定位置を原点とする絶対座標として検出する位置検出回路部と、
前記位置検出回路部からの前記絶対座標を順次に取得して、前回の絶対座標と今回の絶対座標との差分である相対座標を計算する相対座標計算部と、
表示デバイスの表示画面に対応する所定の出力絶対座標領域上に位置付けられるエリアであって、前記入力面に対応する入力エリアに対して、前記指示入力が行われたものとして、前記相対座標計算部からの前記相対座標を用いて前記指示入力に応じた指示位置の出力絶対座標値を算出する出力絶対座標値計算部と、
前記出力絶対座標値計算部で計算された前記出力絶対座標値を出力する出力部と
を備えることを特徴とする位置検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の位置検出装置であって、
前記指示体は、筆圧情報を検出して、これを前記位置指示信号に含めて送信することができるものであり、
複数の前記第1の電極と複数の前記第2の電極とからの出力信号に基づいて、前記指示体からの前記筆圧情報を検出する筆圧検出回路と、
前記位置検出回路からの前記絶対座標と前記筆圧検出回路からの前記筆圧情報とに基づいて、所定の入力操作が行われたと判別できた場合に、前記相対座標計算部からの前記相対座標に応じて、前記入力エリアの原点を対応付ける前記出力絶対座標領域上の位置を示す出力絶対座標値を変更する入力エリア移動処理部と
を備えることを特徴とする位置検出装置。
【請求項3】
請求項1に記載の位置検出装置であって、
前記センサ部の複数の第1の電極と複数の第2の電極とを順次に切り替えて、出力信号を前記位置検出回路部に供給するようにするためのタイミング信号を生成するタイミング信号生成部を備え、
前記タイミング信号生成部は、500Hzから1000Hzの周波数の前記タイミング信号を生成する
ことを特徴とする位置検出装置。
【請求項4】
請求項1に記載の位置検出装置であって、
自機が接続された情報処理装置より、外部の前記表示画面のアスペクト比の提供を受け付ける情報受付部と、
前記情報受付部を通じて受け付けた前記アスペクト比と、自機の前記入力面のアスペクト比に基づいて、前記出力絶対座標値計算部で算出された前記出力絶対座標値を調整するアスペクト比調整部と
を備え、
前記出力部は、前記アスペクト比調整部で調整された前記出力絶対座標値を出力する
ことを特徴とする位置検出装置。
【請求項5】
請求項1に記載の位置検出装置であって、
前記第1の電極と前記第2の電極とは、ループコイルの構成とされて、電磁誘導方式のセンサ部を構成し、
前記センサ部は、複数の前記第1の電極と複数の前記第2の電極から順次に選択した電極に電力を供給して磁界を発生させる送信期間と、電力の供給を停止し、複数の前記第1の電極と複数の前記第2の電極から順次に選択した電極を通じて外部からの磁界を受信する受信期間とを交互に設けるように制御される
ことを特徴とする位置検出装置。
【請求項6】
情報処理装置に対して、表示装置と、位置検出装置とを接続して構成する情報処理システムであって、
前記位置検出装置は、
第1の方向に配列された複数の第1の電極と、前記第1の方向に対して交差する第2の方向に配列された複数の第2の電極とを積層して形成され、指示体からの位置指示信号を受信する所定面積の入力面を有するセンサ部と、
複数の前記第1の電極と複数の前記第2の電極とからの出力信号に基づいて、前記入力面上に対する前記指示体による指示入力に応じた指示位置を、前記入力面上の所定位置を原点とする絶対座標として検出する位置検出回路部と、
前記位置検出回路部からの前記絶対座標を順次に取得して、前回の絶対座標と今回の絶対座標との差分である相対座標を計算する相対座標計算部と、
表示デバイスの表示画面に対応する所定の出力絶対座標領域上に位置付けられるエリアであって、前記入力面に対応する入力エリアに対して、前記指示入力が行われたものとして、前記相対座標計算部からの前記相対座標を用いて前記指示入力に応じた指示位置の出力絶対座標値を算出する出力絶対座標値計算部と、
前記出力絶対座標値計算部で計算された前記出力絶対座標値を前記情報処理装置に出力する出力部と
を備え、
前記情報処理装置は、
前記位置検出装置からの前記出力絶対座標値の入力を受け付ける入力部と、
前記入力部を通じて受け付ける前記出力絶対座標値に応じた画像を、前記表示装置の前記表示画面に表示するための画像データを形成し、前記表示装置に供給するようにする情報処理部と
を備えることを特徴とする情報処理システム。
【請求項7】
請求項6に記載の情報処理システムであって、
前記指示体は、筆圧情報を検出して、これを前記位置指示信号に含めて送信することができるものであり、
前記位置検出装置は、
複数の前記第1の電極と複数の前記第2の電極とからの出力信号に基づいて、前記指示体からの前記筆圧情報を検出する筆圧検出回路と、
前記位置検出回路からの前記絶対座標と前記筆圧検出回路からの前記筆圧情報とに基づいて、所定の入力操作が行われたと判別できた場合に、前記相対座標計算部からの前記相対座標に応じて、前記入力エリアの原点を対応付ける前記出力絶対座標領域上の位置を示す出力絶対座標値を変更する入力エリア移動処理部と
を備え、
前記情報処理装置の前記情報処理部は、
前記入力部を通じて受け付ける前記出力絶対座標値に応じて、前記表示装置の前記表示画面において、入力位置を示すカーソルの表示と前記入力エリアに対応する入力範囲表示エリアを示す表示との一方あるいは両方を行う
ことを特徴とする情報処理システム。
【請求項8】
請求項6に記載の情報処理システムであって、
前記位置検出装置は、
前記センサ部の複数の第1の電極と複数の第2の電極とを順次に切り替えて、出力信号を前記位置検出回路部に供給するようにするためのタイミング信号を生成するタイミング信号生成部を備え、
前記タイミング信号生成部は、500Hzから1000Hzの周波数の前記タイミング信号を生成するものであり、
前記情報処理装置の前記情報処理部は、
前記位置検出装置からの500Hzから1000Hzの周期で供給される前記出力絶対座標値を遅滞なく処理できるものである
ことを特徴とする情報処理システム。
【請求項9】
請求項6に記載の情報処理システムであって、
前記位置検出装置は、
自機が接続された情報処理装置より、外部の前記表示画面のアスペクト比の提供を受け付ける情報受付部と、
前記情報受付部を通じて受け付けた前記アスペクト比と、自機の前記入力面のアスペクト比に基づいて、前記出力絶対座標値計算部で算出された前記出力絶対座標値を調整するアスペクト比調整部と
を備え、
前記出力部は、前記アスペクト比調整部で調整された前記出力絶対座標値を出力するものであり
前記情報処理装置は、
自機に接続された前記表示装置の前記表示画面のアスペクト比を、自機に接続された前記位置検出装置に提供する情報提供部を備える
ことを特徴とする情報処理システム。
【請求項10】
請求項6に記載の情報処理システムであって、
前記位置検出装置は、
前記第1の電極と前記第2の電極とは、ループコイルの構成とされて、電磁誘導方式のセンサ部を構成し、
前記センサ部は、複数の前記第1の電極と複数の前記第2の電極から順次に選択した電極に電力を供給して磁界を発生させる送信期間と、電力の供給を停止し、複数の前記第1の電極と複数の前記第2の電極から順次に選択した電極を通じて外部からの磁界を受信する受信期間とを交互に設けるように制御されるものである
ことを特徴とする情報処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、電子ペンなどの指示体による指示位置などの情報を検出して、検出した情報を情報処理装置に供給する位置検出装置、当該位置検出装置用いて構成される情報処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子ペンなどの指示体による板状体上の指示位置を、当該板状体に内蔵した位置検出センサによって読み取って、PC(Personal Computer)本体などの情報処理装置に提供する位置検出装置が広く利用されている。当該位置検出装置は、一般にはペンタブレットや板タブレット、あるいは単にタブレットなどと呼ばれている。この明細書においても、以下においては、板状体の位置検出装置をタブレットと記載する。PCには、HID(Human Interface Device)準拠の標準ドライバが搭載されており、タブレットなどのコンピュータ周辺機器等を、当該PCに容易に接続して利用できるようにしている。なお、HIDは、コンピュータの周辺機器等のうち、マンマシンインタフェースを担当するものの総称であり、キーボード、タブレットやマウスなどのポインティングデバイス、種々のゲームコントローラ、各種の操作ボタンやつまみ、リモコンなどを意味する。
【0003】
後に記す特許文献1や特許文献2に開示されているように、タブレットは、指示体による位置検出センサ上の指示位置を絶対座標として検出し、これを出力する。このため、タブレット用のHID準拠の標準ドライバは、タブレットからの絶対座標を受け付けて処理するものとなる。絶対座標は、原点を設定し、そこからの距離によって位置を表すものである。図12は、タブレット1とPC2とディスプレイ3とからなる従来の情報処理システムを示す図である。例えば、図12(A)に示すように、タブレット1の入力面1NとPC2に接続されたディスプレイ3の表示画面3Dとが、合同又は相似の関係にあるときに、タブレット1からPC2に対して絶対座標により指示位置を通知する場合を考える。
【0004】
一般に、タブレット1の入力面1Nの全面は、PCに接続されたディスプレイ3の表示画面3Dの全面に対応付けられる。この場合、タブレット1の入力面1Nに描く絵・文字等と、これに応じてディスプレイ3の表示画面3Dに表示される絵・文字等とは、合同又は相似の関係が成立するようにできる。すなわち、入力位置と表示位置とが合致すると共に、入力情報の形状と表示情報の形状とが合致する。これにより、紙に手書きしている場合と同様の感覚で、タブレット1の入力面1Nを通じて描画した情報を、ディスプレイ3の表示画面3Dを通じて確認しながら、違和感なく描画入力できる。
【0005】
近年においては、表示画面が縦長や横長のディスプレイが用いられるよういになったり、PCに外付けディスプレイを追加し、複数のディスプレイの表示画面により1つの表示画面を形成したりすることも行われるようになった。例えば、図12(B)に示すように、PC2に接続されたディスプレイ3Aの表示画面3ADが、タブレット1の入力面1Nとは合同や相似の関係にはならない横長のものであったとする。この場合でも、タブレット1の入力面1Nの全面は、ディスプレイ3Aの表示画面3ADの全面に対応付けられる。このため、図12(B)に示すように、タブレット1の入力面1Nに大きく文字「A」を描画すると、ディスプレイ3Aの表示画面3ADは横長であるので表示される文字「A」は、横に間延びしたものとなってしまう場合がある。
【0006】
このように、タブレットから絶対座標による指示位置をPC本体に提供した場合、タブレットの入力面とPCに接続されたディスプレイの表示画面とが、合同又は相似でない場合には、違和感を生じさせてしまう場合がある。つまり、描画入力を行う使用者のイメージ通りに、タブレットの入力面に描くようにした絵・文字等をディスプレイの表示画面に表示できないことにより、描画入力を適切に行うことができなくなってしまう。そこで、相対座標により指示位置をPCに提供することが考えられる。相対座標は、ある特定の点(任意点)との相対的な関係で位置を示す座標のことであり、特許文献1では、単位時間の変化後の絶対座標から変化前の絶対座標を差し引いた値であると説明されている。すなわち、相対座標は、単位時間あたりの変化量として示すことができる。
【0007】
しかし、上述したように、タブレット用のHID準拠の標準ドライバは、タブレットからの絶対座標を受け付けて処理するものであるため、相対座標を受け付けて処理することはできない。このため、後に記す特許文献1に開示されているように、いわゆるマウス用のHID準拠の標準ドライバを使用することが考えられる。マウス用のHID準拠の標準ドライバは、マウスからの相対座標を取得して処理することができるものであるためである。しかし、マウス用のHID準拠の標準ドライバは、あくまでもマウス用であるために、タブレットを用いた入力システムでは重要な情報である、指示体である電子ペンにかかる筆圧情報を取得して処理することができない。
【0008】
そこで、相対座標の処理ができるタブレット用の専用ドライバを用いるようにすることも考えられる。しかし、安定に機能するタブレット用のHID準拠の標準ドライバが用意されているにもかかわらず、当該専用ドライバを例えばインターネット上の所定のサーバからダウンロードするなどして取得し、これをインストールして動作可能にしなければならない。専用ドライバのダウンロードとインストールを行うことは、コンピュータに慣れた使用者であれば問題なくても、コンピュータに不慣れな使用者にとっては面倒な作業となってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10-198490号公報
【特許文献2】特開平11-134101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
近年においては、デジタルトランスフォーメーションの影響もあり、PCに入力されたデータに対して、直接手書き入力によりデータを追加したい場合が増えてきている。図13は、手書き入力によりデータを追加したい場合の例を示す図である。例えば、PC2に予め入力されたデータである「確認事項」をディスプレイ3の表示画面3Dに表示して相手に提示し、当該相手が確認した場合に、確認したことの証拠を残すために、当該相手の氏名を手書き入力するようにしたい場合がある。従来は書面を通じて行われた処理でも、データをデジタル化することによりPCにより保存・管理ができ、必要に応じて印字出力もできるため便利である。
【0011】
しかし、イラスト用途も想定された従来のタブレットはサイズが大きく、これを設置するには広い占有スペースが必要である。また、サイズが大きな従来のタブレットは、筆記作業の都合上、卓上においてディスプレイと使用者の間の最も作業性の良い位置に置かざるを得ない。このため、キーボードやマウスを併用したい場合には、それらの周辺機器の置き場所が問題になってしまう。また、上述もしたように、一般に、タブレット1の入力面1Nの全面は、ディスプレイ3の表示画面3Dの全面に対応付けられる。このため、図13に示すように、表示画面3Dの右下に署名の入力範囲表示エリア(表示欄)Rを設けた場合には、タブレット1の入力面1Nにおいても、右下のごく限られた部分しか入力に用いることがでない。この場合には、小さな文字での入力を強いられてしまい、入力し難い。また、この場合、上述もしたように、表示画面3Dと入力面1Nとが合同又は相似の関係にないと、表示画像が不自然に歪んでしまい、違和感を生じさせる場合もある。
【0012】
これらのことから考えると、手書き入力の用途が、メモ書き、概略図や構成図などのいわゆるポンチ絵といった補助的な情報の入力や署名の入力である場合には、従来型のサイズの大きなタブレットは必要なく、小型のタブレットで十分である。しかし、タブレットを単に小型化しても、上述したように、タブレットの入力面の全面を、ディスプレイの表示画面の全面に対応付けた場合には、表示画像が歪んでしまう場合がある。また、図13を用いて説明したように、表示画面3Dの一部に入力情報を表示したい場合には、タブレット1の入力面1Nのごく一部しか入力に使えないため、細かな入力作業を行わなければならなくなり、かえって使い勝手が悪くなってしまう。
【0013】
以上のことに鑑み、この発明は、使い勝手のよい小型化したタブレット及び当該小型化したタブレットを用いた情報処理システムを提供するものである。特に、専用ドライバを必要とせず、表示画面の一部分への情報入力でも、入力面の全面を使用でき、しかも表示が歪むなどの不都合を生じさせないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、
第1の方向に配列された複数の第1の電極と、前記第1の方向に対して交差する第2の方向に配列された複数の第2の電極とを積層して形成され、指示体からの位置指示信号を受信する所定面積の入力面を有するセンサ部と、
複数の前記第1の電極と複数の前記第2の電極とからの出力信号に基づいて、前記入力面上に対する前記指示体による指示入力に応じた指示位置を、前記入力面上の所定位置を原点とする絶対座標として検出する位置検出回路部と、
前記位置検出回路部からの前記絶対座標を順次に取得して、前回の絶対座標と今回の絶対座標との差分である相対座標を計算する相対座標計算部と、
表示デバイスの表示画面に対応する所定の出力絶対座標領域上に位置付けられるエリアであって、前記入力面に対応する入力エリアに対して、前記指示入力が行われたものとして、前記相対座標計算部からの前記相対座標を用いて前記指示入力に応じた指示位置の出力絶対座標値を算出する出力絶対座標値計算部と、
前記出力絶対座標値計算部で計算された前記出力絶対座標値を出力する出力部と
を備えることを特徴とする位置検出装置を提供する。
【0015】
この位置検出装置によれば、センサ部の複数の第1の電極と複数の第2の電極とからの出力信号に基づいて、位置検出回路部がセンサ部の入力面上における指示体による指示位置を、絶対座標として検出する。相対座標計算部は、位置検出回路部からの絶対座標を順次に取得して、前回の絶対座標と今回の絶対座標との差分から入力面における指示体による指示位置を示す相対座標を計算する。
【0016】
出力絶対座標値計算部は、表示デバイスの表示画面に対応する所定の出力絶対座標領域上に位置付けられる入力エリアに対して、指示入力が行われたものとして、相対座標計算部からの前記相対座標を用いて前記指示入力に応じた指示位置の出力絶対座標値を算出する。当該入力エリアは、センサ部の入力面に対応するエリアである。出力部は、出力絶対座標値計算部で計算された現在の出力絶対座標値を出力する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施の形態のタブレットを用いて構成される情報処理システムの構成例を説明するための図である。
図2】実施の形態のタブレットで行われる座標変換処理について説明するための図である。
図3】実施の形態のタブレットで行われる出力絶対座標領域における入力エリアの移動処理について説明するための図である。
図4】実施の形態の情報処理システムで行われる入力処理とこれに応じた表示処理について説明するための図である。
図5】実施の形態のタブレットの構成例を説明するための図である。
図6】実施の形態のタブレットの位置検出回路の処理制御部の構成例を説明するためのブロック図である。
図7】タブレットの入力面とディスプレイの表示画面とでアスペクト比が大きく異なる場合の座標の調整について説明するための図である。
図8】実施の形態のタブレットで行われる処理を説明するためのフローチャートである。
図9図8に続くフローチャートである。
図10】実施の形態の情報処理システムで用いられるPC本体の概略構成を説明するためのブロック図である。
図11】実施の形態の情報処理システムのタブレットとマウスの併用について説明するための図である。
図12】タブレットとPCとディスプレイとからなる従来の情報処理システムを示す図である
図13】手書き入力によりデータを追加したい場合の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図を参照しながら、この発明による装置、システムの実施の形態について説明する。以下に説明する実施の形態のタブレット(位置検出装置)は、例えば、PCなどの情報処理装置に対して接続して利用するものであり、PCなどの情報処理装置の入力デバイスとして機能するものである。実施の形態のタブレットは、詳しくは後述もするが、例えば、メモ書き、概略図や構成図などのいわゆるポンチ絵といった補助的な情報や署名などの表示画面の一部の領域に情報を入力する場合に用いて好適な小型化されたものである。
【0019】
なお、タブレットには、種々の方式のものがあり、例えば、電磁誘導方式のものと、静電容量方式のものが広く利用されている。電磁誘導方式は、位置検出装置が、X軸方向とY軸方向とのそれぞれに複数のループコイル(電極)を配設したセンサ部を備える。当該センサ部の複数のループコイルに順次に電力を供給して磁界を発生させる送信期間と、電力の供給を停止し外部からの磁界を受信する受信期間とを交互に設ける。対応する電子ペンは、コイルとコンデンサとからなる共振回路を備え、当該センサ部からの磁界に応じて、当該コイルに電流が流れることにより信号を発生させ、この信号に筆圧情報を含めて位置検出センサに送信する。これを受信期間において位置検出装置が受信して、電子ペンによる指示位置と筆圧を検出する。
【0020】
静電容量方式は、位置検出装置が、X軸方向とY軸方向とのそれぞれに複数のライン電極(線状導体)を配設したセンサ部を備える。当該センサ部は、指や静電ペン(電子ペン)が近づけられることによって、ライン電極に生じる静電容量(電荷)の変化に応じて指示位置を検出する。なお、静電ペンには、単に導電性を有する棒状体のものと、バッテリで駆動され、信号を送出するもの(アクティブ静電ペン)がある。アクティブ静電ペンを用いるアクティブ静電結合方式の場合には、静電ペンは、これに搭載された発振回路からの信号に筆圧情報をも含めて送信し、これを位置検出装置で受信して、指示位置と筆圧を検出する。
【0021】
この発明の位置検出装置は、電磁誘導方式(EMR(Electro Magnetic Resonance)方式)のものとして構成することもできるし、アクティブ静電容量方式(AES(Active Electrostatic)方式)のものとして構成することもできる。以下においては説明を簡単にするため、この発明を電磁誘導方式の位置検出装置に適用した場合を例にして説明する。
【0022】
[情報処理システムの構成例]
図1は、実施の形態のタブレットを用いて構成される情報処理システムの構成例を説明するための図である。PC本体100に対して、ディスプレイ200と、キーボード300と、マウス400と、タブレット500といった周辺機器が接続されることにより、全体として情報処理システムが構成される。PC本体100、ディスプレイ200、キーボード300、マウス400のそれぞれは、市販されている一般的なものである。PC本体100には、後述もするように、周辺機器を接続するためのI/F(Inter face)や周辺機器を機能させるためのHID準拠の各種標準ドライバ(キーボードドライバ、マウスドライバ、タブレットドライバなど)が搭載されている。
【0023】
これにより、PC本体100は、自機に接続されたディスプレイ200の表示画面200Dに対して、種々の情報を表示したり、表示を消去したりするなどのことができる。また、PC本体100は、キーボード300を通じて情報の入力を受け付けて、受け付けた情報を表示したり、受け付けた情報に従って処理を実行したりすることができる。同様に、PC本体100は、マウス400からの指示入力を受け付けて、表示画面200Dに表示されているカーソルを移動したり、メニューから目的とする項目を選択する入力を受け付けて、選択された項目に対応する処理を実行したりすることができる。なお、この実施の形態においては、説明を簡単にするため、ディスプレイ200の表示画面200Dは、例えば、アスペクト比が16対9の26型(インチ)のものであるものとする。従って、表示画面200Dの縦幅は323.6mm、横幅は574.5mmとなる。
【0024】
タブレット500は、上述もしたように電磁誘導方式のものであり、電磁誘導方式の電子ペン600を用いた指示入力を受け付けて、当該指示入力に応じた座標情報をPC本体100に供給するものである。また、タブレット500は、小型化されたものである。電子ペン600による操作入力を受け付ける入力面(操作面)500Nが設けられた面の面積は、用紙サイズでいえば、例えば、A4サイズ、A5サイズ、A6サイズ、B5サイズ、B6サイズ、B7サイズといったごく小型のものである。なお、各用紙サイズは、(短辺×長辺)mmで示せば、A4サイズは(210×297)、A5サイズは(148×210)、A6サイズは(148×105)、B5サイズは(182×257)、B6サイズは(128×182)、B7サイズは(128×91)である。もちろん、タブレット500は、その他の種々のサイズのものとして構成することができる。このように小型サイズのタブレットは、例えば、特願2021-95521に開示されているように、ごく薄型のものとして、簡単な構成で実現することが可能である。
【0025】
この実施の形態のタブレット500の入力面500Nは、6インチサイズであり、これはB7サイズ程度のものである。このため、タブレット500を使用しないときには、机上の右端側に避けておいたり、PC本体100の上に載せておいたりするなど、何処にでもおくことが可能であり、置き場所に困ることがない。また、タブレット500を使用するときには、例えば、キーボード上などを含む、使用者の右手の少し前方などの電子ペン600によって筆記入力しやすい場所に配置して、筆記入力を行うことができる。
【0026】
小型のタブレット500は、上述もしたように、例えば、メモ書き、概略図や構成図などのいわゆるポンチ絵、あるいは、署名といった、ディスプレイ200の表示画面200Dの一部分に表示させるような補助的な情報の入力に適した小型化されたものである。具体的に、図1に示すように、ディスプレイ200の表示画面200Dの右下端部に署名の入力範囲表示エリアArを設ける場合を考える。この場合に、タブレット500の入力面500Nの全面を用いて、署名の筆記入力を受け付けて、これに応じた表示を表示画面200Dの署名の入力範囲表示エリアArに表示できる。
【0027】
このように、タブレット500は、従来からあるイラスト用途のサイズが大きなものではなく、小型化されたもの(入力面500Nの面積がB7サイズ程度のもの)である。また、タブレット500は、入力面500Nの全面がディスプレイ200の表示画面200Dの全面に対応するものではない。表示画面200Dの目的とする一部分に入力面500Nに対応する入力範囲表示エリアArを設け、入力面500Nの全面を通じて受け付けた入力操作に応じた入力情報を、当該入力範囲表示エリアArに表示することができるようにしている。
【0028】
更に、この実施の形態のタブレット500は、入力面500Nを通じて受け付けた入力操作に応じた入力情報を、当該入力範囲表示エリアArに表示した場合に歪んだりすることがないように、相対座標を用いた処理を可能にする。しかし、HID準拠のタブレットドライバでは、上述もしたように相対座標は扱えないため、HID準拠の標準タブレットドライバを用いることができるように工夫している。すなわち、タブレット500は、相対座標を用いた処理を可能にするが、専用ドライバを必要とせず、HID準拠の標準タブレットドライバを用いて、PC本体100に簡単に接続して利用できるものである。
【0029】
[タブレット500で行われる座標変換処理]
図2は、実施の形態のタブレット500で行われる座標変換処理について説明するための図である。図2においては、PC本体100に対して、下側に示す入力デバイスであるタブレット500が接続されると共に、上側に示す表示デバイスであるディスプレイ200が接続された状態を示している。この実施の形態では、上述もしたように、ディスプレイ200の表示画面200Dのサイズは、26型(26インチ)のものであり、タブレット500の入力面500Nは、例えばB7サイズのものである。従って、表示画面200Dと入力面500Nとは、大きさもアスペクト比も同じではなく、合同又は相似の関係にない。
【0030】
タブレット500の入力面500Nは、左上端部(左角部)を原点NP(0,0)とし、右下端部(右角部)を最大値NP(Xmax,Ymax)とする絶対座標領域である。例えばこの実施の形態のタブレット500では、Xmaxは12236,Ymaxは9059である。しかし、詳しくは後述するが、タブレット500においては、入力面500Nを通じて入力される入力情報については、前回の絶対座標から今回の絶対座標を減算することにより得られる相対座標により把握する。すなわち、入力情報は、前回の絶対座標からの変化量として把握する。
【0031】
また、この実施の形態の情報処理システムにおいては、従来の情報処理システムのように、タブレット500の入力面500Nの全面、または一部分をディスプレイ200の表示画面200Dの全面に対応付けるものではない。図1を用いて説明したように、タブレット500の入力面500Nの全面を、ディスプレイ200の表示画面200Dの一部分に対応付けるようにして、使用者からの筆記入力(位置指示入力)を受け付けることができるようにしている。
【0032】
すなわち、図2の下側に示すように、タブレット500においては、点線の大きな四角形で示したように、仮想的な出力絶対座標領域VIを設けるようにする。この出力絶対座標領域VIは、ディスプレイ200の表示画面200Dに対応付ける仮想的な領域である。出力絶対座標領域VIは、図2に示すように、左上端部(左角部)を原点VP(0,0)とし、右下端部(右角部)を最大値VP(Xmax,Ymax)となる。この実施例では、NP(Xmax,Ymax)とVP(Xmax,Ymax)は同値としたが、VP(Xmax,Ymax)の方がNP(Xmax,Ymax)よりも大きくしてもよいし、入力データに対する間引きが行われるが、小さくしても動作可能である。この分解能は、一般的なモニターの解像度よりも、十分に大きな値となる。VIの座標値は、PC本体100に渡された後、PC本体100内で表示画面200Dの解像度に合わせた座標値に変換され、描画データとして出力される。
【0033】
タブレット500では、図2において点線の大きな四角形で示した仮想的な出力絶対座標領域VI上で、入力面500Nに対応する入力エリアNrを移動させて、任意の位置に位置付ける。出力絶対座標領域VI上で任意の位置に位置付けた入力エリアNrが、図2の表示画面200Dにおいて点線の四角形で示したように、ディスプレイ200の表示画面200D上における情報の入力範囲表示エリアArに対応する。出力絶対座標領域VIは、ディスプレイ200の表示画面200Dに対応付ける領域であり、PC本体100に最初に通知される。ディスプレイ200の表示制御がされるためである。
【0034】
使用者は、タブレット500の入力面500Nに対して指示入力を行うことで、出力絶対座標領域VIの任意の位置に位置付けた入力エリアNrに対して、入力面500Nを通じて指示入力を行うことができる。タブレット500は、入力面500Nに対する指示入力を、検出した前回の絶対座標から今回の絶対座標の差分値である相対座標として把握する。さらに、タブレット500は、把握した相対座標を、出力絶対座標領域VI上に位置付けられた入力エリアNrの位置に応じて、出力絶対座標OAに変換し、これをPC本体100に対して出力する。
【0035】
これにより、PC本体100では、タブレット500からの出力絶対座標OAに基づいて、HID準拠のタブレットドライバが機能する。すなわち、PC本体100は、表示画面200Dに対応する出力絶対座標領域VI上の位置を示す出力絶対座標値に基づいて、描画データを形成し、これをディスプレイ200に対して出力する。これにより、ディスプレイ200の表示画面200Dの任意の位置に位置付けられた入力範囲表示エリアArに、タブレット500の入力面500Nを通じて入力した情報に応じた画像を描画表示できる。
【0036】
このように、この実施の形態のタブレット500は、入力面500Nの全面を用いて入力した情報を、ディスプレイ200の表示画面200Dの目的とする部分(表示画面200Dの一部分である入力範囲表示エリアAr)に表示することができる。以下においては、タブレット500の入力面500Nに対応する入力エリアNrの出力絶対座標領域上における移動処理と、タブレット500を用いた情報の入力とディスプレイ200の表示画面200Dへの表示について具体的に説明する。
【0037】
[出力絶対座標領域における入力エリアの移動処理]
図3は、実施の形態のタブレット500で行われる出力絶対座標領域VIにおける入力エリアNrの移動処理について説明するための図である。ここでは、説明を簡単にするため、出力絶対座標領域VIは、横900×縦500の領域であるものとし、タブレット500の入力面500Nは、横250×縦150の領域であるものとして説明する。なお、これらの数値は説明を具体的にするための一例であり、一般にはもっと大きな値となる。
【0038】
図3に示す例では、タブレット500に電源が投入された直後の初期状態にある時には、タブレット500の入力面500Nに対応する入力エリアNrは、出力絶対座標領域VIの左上端部に位置づけられているものとする。従って、図3(A)に示すように、出力絶対座標領域VIの原点VP(0,0)と、入力エリアNrの原点P0(0,0)は一致しているものとする。このように、入力エリアNrが、出力絶対座標領域VIの左上端部に位置づけられている状態から、入力エリアNrを出力絶対座標領域VIの右下端部に移動することを考える。入力エリアNrの移動処理は、以下に説明するように、電子ペン600を検出してから非検出となるまでの、ホバリング移動および筆記移動の双方を含む直線距離と、非検出移動操作に応じて行われる。
【0039】
<ホバリングまたは筆記移動:領域内のペン先移動(点線矢印H1)>
使用者は、まず、図3(B)に示すように、電子ペン600のペン先をタブレット500の入力面500Nの左上端部の位置S1に検出させて開始点を指示する。次に、使用者は、電子ペン600のペン先を浮かせ、筆圧が掛からない状態であるが、タブレット500では電子ペン600のペン先の位置を認識できるいわゆるホバリング状態にする、もしくはペン先を接触させ(筆圧を掛け)、いわゆる筆記状態にする。これらの状態で、図3(B)において点線矢印H1が示すように、電子ペン600のペン先を入力面500Nの右下端部の位置E1に移動してからペン先を非検出状態にし、終了点を指示する。この場合、入力面500N上の位置S1の絶対座標が(30,20)で、位置E1の絶対座標が(230,120)であるとする。
【0040】
このように、開始位置と終了位置とをペン先を検出させて指示するが、その間をホバリング移動する操作を、入力エリアNr内でのペン先の移動を指示する操作とする。この場合、図3(B)の右側に示すように、位置S1(30,20)から位置E1(230,120)までの移動であるので、位置E1から位置S1を減算した差分Δ(200,100)だけ、入力エリアNr内のペン先の移動を指示する操作となる。
【0041】
<非検出移動:領域の移動(点線矢印M1)>
次に、使用者は、電子ペン600のペン先を入力面500Nから遠ざけて、タブレット500では検出できない状態(筆記状態やホバリング状態ではない状態)にする。この状態のまま電子ペン600を、図3(B)と図3(C)の間の点線矢印M1が示すように、入力面500Nの左上端部に移動させる。この場合、図3(C)に示す入力面500N上の位置S2は、図3(B)に示した入力面500N上の位置S1と同じ位置であるとする。ここまでの操作により、入力エリアNrは、電子ペン600のペン先の移動指示に応じて移動されることになる。従って、移動後の入力エリアNrの出力絶対座標領域VI上の新たな原点位置P1は、現在の入力エリアの出力絶対座標領域VI上の原点P0(0,0)に対して、相対座標となる差分Δ(200,100)を加算した位置になる。
【0042】
具体的に、移動後の入力エリアNrの出力絶対座標領域VI上の新たな原点位置P1は、図3(A)に示すように、(200,100)となる。すると、この場合の位置S2のタブレット上(入力面500N上)の座標は(30,20)であるが、出力絶対座標領域VI上の座標は(230,120)となる。また、この場合の位置E2のタブレット上(入力面500N上)の座標は(230,120)であるが、出力絶対座標領域VI上の座標は(430,220)となる。
【0043】
<ホバリングまたは筆記移動:領域内のペン先移動(点線矢印H2)>
使用者は、図3(C)に示すように、再度、図3(B)に示した操作と同様の操作を繰り返す。すなわち、使用者は、電子ペン600のペン先をタブレット500の入力面500Nの左上端部の位置S2に検出させ開始点を指示する。次に、使用者は、電子ペン600のペン先を浮かせてホバリング状態にする、もしくはペン先を接触させ(筆圧を掛け)、いわゆる筆記状態にする。これらの状態で、図3(C)において点線矢印H2が示すように、電子ペン600のペン先を入力面500Nの右下端部の位置E2に移動して入力面500Nにペン先を非検出状態にさせて終了点を指示する。ここでも、入力面500N上の位置S2の絶対座標が(30,20)で、位置E2の絶対座標が(230,120)であるとする。従って、図3(C)の右側に示すように、位置S2(30,20)から位置E2(230,120)までの移動であるので、位置E2から位置S2を減算した差分Δ(200,100)だけ、入力エリアNr内のペン先の移動を指示する操作となる。
【0044】
<非検出移動:領域の移動(点線矢印M2)>
次に、使用者は、電子ペン600のペン先を入力面500Nから遠ざけて、タブレット500では検出できない状態にして、図3(C)と図3(D)の間の点線矢印M2が示すように、入力面500Nの左上端部に移動させる。この場合、図3(D)に示す入力面500N上の位置S3は、図3(B)、(C)に示した入力面500N上の位置S1、S2と同じ位置であるとする。ここまでの操作により、入力エリアNrは、更に、電子ペン600のペン先の移動指示に応じて移動されることになる。従って、移動後の入力エリアNrの出力絶対座標領域VI上の新たな原点位置P2は、現在の入力エリアの出力絶対座標領域VI上の原点P1(200,100)に対して、相対座標となる差分Δ(200,100)を加算した位置になる。
【0045】
具体的に、移動後の入力エリアNrの出力絶対座標領域VI上の新たな原点位置P2は、図3(A)に示すように、(400,200)となる。すると、この時の位置S3のタブレット上(入力面500N上)の座標は(30,20)であるが、出力絶対座標領域VI上の座標は(430,220)となる。また、位置E2の出力絶対座標領域VI上の座標は(630,320)となる。
【0046】
<ホバリングまたは筆記移動:領域内のペン先移動(点線矢印H3)>
使用者は、図3(D)に示すように、再度、図3(B)、(C)に示した操作と同様の操作を繰り返す。すなわち、使用者は、電子ペン600のペン先をタブレット500の入力面500Nの左上端部の位置S3に検出させ開始点を指示する。次に、使用者は、電子ペン600のペン先を浮かせてホバリング状態にする、もしくはペン先を接触させ(筆圧を掛け)、いわゆる筆記状態にする。これらの状態で、図3(D)において点線矢印H3が示すように、電子ペン600のペン先を入力面500Nの右下端部の位置E3に移動して入力面500Nにペン先を非検出状態にさせて終了点を指示する。ここでも、入力面500N上の位置S3の絶対座標が(30,20)で、位置E3の絶対座標が(230,120)であるとする。従って、図3(D)の右側に示すように、位置S3(30,20)から位置E3(230,120)までの移動であるので、位置E3から位置S3を減算した差分Δ(200,100)だけ、入力エリアNr内のペン先の移動を指示する操作となる。
【0047】
<この例の場合の最後の非検出移動:領域の移動(図示せず)>
最後に、図示しないが、使用者は、電子ペン600のペン先を入力面500Nから遠ざけて、タブレット500では検出できない状態にして、入力面500Nの左上端部に移動させる。ここまでの操作により、入力エリアNrは、更に、電子ペン600のペン先の移動指示に応じて移動される。従って、移動後の入力エリアNrの出力絶対座標領域VI上の新たな原点位置P3は、現在の入力エリアの出力絶対座標領域VI上の原点P2(400,200)に対して、相対座標となる差分Δ(200,100)を加算した位置になる。具体的に、移動後の入力エリアNrの出力絶対座標領域VI上の新たな原点位置P3は、図3(A)に示すように、(600,300)となる。なお、この場合に、電子ペン600のペン先の指示位置の座標が、タブレット上(入力面500N上)の(30,20)であったとすると、出力絶対座標領域VI上の座標は(630,320)となる。
【0048】
このようにして、タブレット500の入力面500Nに対応する入力エリアNrを出力絶対座標領域VIの右下端部に位置付けることができる。タブレット500におけるこのような処理に応じて、タブレット500からは、現在の出力絶対座標値に入力面500Nにおける今回の相対座標値(差分Δ)を加算した新たな出力絶対座標値が出力され、PC100に供給される。この場合、電子ペン600の移動は、筆圧を伴わないホバリング移動であるので、筆跡の入力とはならない。
【0049】
従って、PC100は、タブレット500からの出力絶対座標値に基づいて、ディスプレイ200の表示画面200Dに表示させるカーソル位置を順次に変える。PC100は、最終的には表示画面200Dの絶対座標が(600,300)の位置の近傍にカーソルを表示することになる。これにより、表示画面200D上において、入力エリアNrに対応する入力範囲表示エリアArを移動させることができることになる。上述もしたように、出力絶対座標領域VIは、ディスプレイ200の表示画面200Dに対応付ける領域であるためである。
【0050】
[入力面500Nを通じた情報の入力と表示画面200Dへの表示]
図4は、実施の形態の情報処理システムで行われる入力処理とこれに応じた表示処理について説明するための図である。図4に示す例においては、説明を簡単にするため、出力絶対座標領域VIが対応付けられるディスプレイ200の表示画面200Dは、横900画素×縦500画素の領域であるものとする。また、図4に示す例においても、タブレット500の入力面500Nは、横250画素×縦150画素の領域であるものとする。
【0051】
また、図4に示す例は、図3を用いて説明した出力絶対座標領域VI上における入力エリアNrの移動処理によって、入力エリアNrに対応する入力範囲表示エリアArが表示画面200Dの右下端部に位置付けられているものとする。従って、表示画面200Dの右下端部に位置付けられた入力範囲表示エリアArの原点APは、図3を用いて説明した入力エリアNrと同様に、(600,300)である。すなわち、図3を用いて説明した出力絶対座標領域VIと入力エリアNrの関係は、そのままディスプレイ200の表示画面200Dと入力範囲表示エリアArの関係として成立している。
【0052】
この場合に、タブレット500の入力面500Nの全面を用いて、大きく文字「A」を筆記入力する場合を考える。使用者は、まず、図4(B)に示すように、電子ペン600のペン先をタブレット500の入力面500Nの上端中央部の位置D1に接触させ(筆圧を掛けて)開始点を指示する。次に、使用者は、電子ペン600のペン先を入力面500Nに接触させたまま(筆圧を掛けたまま)、入力面500Nの左下端部の位置D2に移動させて、電子ペン600のペン先を入力面500Nから離す。この場合、位置D1の入力面500N上の絶対座標が(130,20)で、位置D2の入力面500N上の絶対座標が(50,130)であるとする。
【0053】
このように、開始位置にペン先を接触させて、ペン先を接触させたまま終了位置まで移動する操作は、筆記入力操作となる。この場合、図4(B)の右側に示すように、位置D1(130,20)から位置D2(50,130)までの筆記入力であるので、位置D2から位置D1を減算した差分Δ(-80,110)が位置D1から位置D2までの変化分(相対座標)となる。ここまでは、タブレット500の入力面500N上の操作と処理である。しかし、入力面500Nに対応する入力エリアNrは、図3を用いて説明したように、出力絶対座標領域VIの右下端部に位置付けられている。
【0054】
これに対応して、図4(A)に示すように、出力絶対座標領域VIが対応付けられる表示画面200D上では、入力エリアNrに対応する入力範囲表示エリアArが右下端部に位置付けられる。このため、入力面500N上で行われた筆記入力操作を、出力絶対座標領域VI上の操作に変換する必要がある。そこで、まず、入力面500N上の位置D1を出力絶対座標領域VI上の位置OD1に変換する。位置OD1は、図4(B)の右側に示すように、出力絶対座標領域VI上の入力エリアNrの原点P3(600,300)に、入力面500N上の位置D1(130,20)を加算することにより求められ、位置OD1は(730,430)となる。
【0055】
次に、入力面500N上の位置D2を出力絶対座標領域VI上の位置OD2に変換する。位置OD2は、図4(B)の右側に示すように、出力絶対座標領域VI上の位置OD1に対して、入力面500N上の位置D1から位置D2への変分、すなわち、位置D2から位置D1を減算した差分Δ(相対座標)を加算すればよい。従って、出力絶対座標領域VI上の位置OD2は、(650,430)となる。このようにして求めた出力絶対座標値がOD1(730,320)、OD2(650,430)が、筆圧情報と共にPC100に対して出力され、表示画面200Dの入力範囲表示エリアArに、当該筆記入力に応じた描画表示がなされる。
【0056】
同様に、図4(C)、(D)に示すように、タブレット500の入力面500Nに対して、電子ペン600を用いて筆記入力を行うことにより、筆記入力に応じた入力面500N上における相対座標が求められる。また、図3を用いて説明した入力エリアNrの移動処理に応じて、入力面500Nに対応する入力エリアNrの出力絶対座標領域VI上の絶対座標が把握されている。このため、筆記入力に応じた相対座標と、入力エリアNrの出力絶対座標領域VI上の絶対座標とに基づいて、出力絶対座標が求められ、筆圧情報と共にPC100に対して出力され、表示画面200Dの入力範囲表示エリアArに、当該筆記入力に応じた描画表示がされる。
【0057】
図4(B)、(C)、(D)の筆記入力を行うことにより、図4(A)に示すように、PC100は、タブレット500からの出力絶対座標値と筆圧情報に基づいて、ディスプレイ200の表示画面200Dの入力範囲表示エリアArに描画表示が行われる。この例の場合には、図4(A)に示すように、ディスプレイ200の表示画面200Dの右下端部の入力範囲表示エリアArに文字「A」が描画表示される。この場合、上述もしたように、タブレット500の入力面500Nにおける操作入力は、相対座標として把握される。
【0058】
タブレット500の入力面500Nにおける操作入力は、前回の絶対座標から今回の絶対座標を減算することにより得られる差分(変化分)として把握される相対座標によって把握される。しかし、入力面500Nに対する操作入力は、出力絶対座標値に変換されて、PC本体100に供給され、HID準拠のタブレットドライバによって処理が可能となる。これにより、表示画面200Dの入力範囲表示エリアArにおいても、入力面500Nにおいて、相対座標として把握された操作入力に応じて描画表示が可能になり、入力画像に対して表示画像が歪んでしまうといった不都合を生じされることもない。
【0059】
[タブレット500の構成例]
<タブレット500の全体構成>
次に、図1図4を用いて説明したように機能するタブレット500の構成例について説明する。図5は、実施の形態の電磁誘導方式のタブレット500の構成例を説明するための図である。図5の左上に示す電子ペン600は、電磁誘導方式のものであり、信号送受信用のコイルLと、可変容量コンデンサである筆圧検出部Cvと、共振コンデンサCf等が並列に接続されることにより構成された共振回路を備える。
【0060】
タブレット500は、X軸方向ループコイル群510Xと、Y軸方向ループコイル群510Yとが、間に絶縁層を設けて積層されて形成されたセンサ部(位置検出センサ)510を備える。X軸ループコイル群510XのループコイルX1、X2、…、X40及びY軸ループコイル群510YのループコイルY1、Y2、…、Y30のそれぞれは、1ターンの場合もあれば、2ターン以上の複数ターンの場合もある。このようなセンサ部510が、タブレット筐体内に配設され、同様にタブレット筐体内に配設される位置検出回路501に接続されることにより、全体として板状体のタブレット500を構成している。
【0061】
位置検出回路501は、発振器502と、電流ドライバ503と、選択回路504と、切り替え接続回路505と、受信アンプ506と、位置検出用回路507と、筆圧検出用回路508と、処理制御部509とからなる。図5に示すように、センサ部510のX軸方向ループコイル群510X及びY軸方向ループコイル群510Yが、選択回路504に接続される。選択回路504は、処理制御部509の制御に応じて、2つのループコイル群510X,510Yのうちの一のループコイルを順次選択する。処理制御部509は、詳しくは後述するが、選択回路504におけるループコイルの選択と、切り替え接続回路505の切り替えとを制御すると共に、位置検出用回路507及び筆圧検出用回路508での処理タイミングを制御する。
【0062】
発振器502は、周波数f0の交流信号を発生させる。発振器502は、発生させた交流信号を、電流ドライバ503と筆圧検出用回路508に供給する。電流ドライバ503は、発振器502から供給された交流信号を電流に変換して切り替え接続回路505へ送出する。切り替え接続回路505は、処理制御部509からの制御により、選択回路504によって選択されたループコイルが接続される接続先(送信側端子T、受信側端子R)を切り替える。この接続先のうち、送信側端子Tには電流ドライバ503が、受信側端子Rには受信アンプ506が、それぞれ接続されている。
【0063】
切り替え接続回路505は、送信期間においては送信側端子T側に切り替えられ、受信期間においては受信側端子R側に切り替えられる。これにより、送信期間においては、送信側端子Tを通じて電流ドライバ503からの電流の供給を受けたループコイルが磁界を発生させて、電子ペン600に送信し、電子ペン600の共振回路に作用する。この場合、電子ペン600の共振回路は、位置指示信号(電波)を発生させて、センサ部510側に送信する。
【0064】
一方、受信期間においては、選択回路504により選択されたループコイルが、受信側端子Rを通じて受信アンプ506に接続される。当該ループコイルが電子ペン600からの磁界の作用を受けている場合には、当該ループコイルには誘導電圧が発生し、この誘導電圧が、選択回路504及び切り替え接続回路505を介して受信アンプ506に送られる。受信アンプ506は、ループコイルから供給された誘導電圧を増幅し、位置検出用回路507及び筆圧検出用回路508へ送出する。
【0065】
すなわち、X軸方向ループコイル群510X及びY軸方向ループコイル群510Yの各ループコイルには、電子ペン600から送信される電波によって誘導電圧が発生する。このため、位置検出用回路507は、ループコイルに発生した誘導電圧(受信信号)を検波し、その検波出力信号をデジタル信号に変換し、処理制御部509に出力する。処理制御部509は、位置検出用回路507からのデジタル信号、すなわち、各ループコイルに発生した誘導電圧の電圧値のレベルに基づいて電子ペン600のX軸方向及びY軸方向の指示位置の座標値を算出する。
【0066】
一方、筆圧検出用回路508は、受信アンプ506の出力信号を発振器502からの交流信号で同期検波して、それらの間の位相差(周波数偏移)に応じたレベルの信号を得る。この場合に、当該位相差(周波数偏移)に応じた信号をデジタル信号に変換して処理制御部509に出力する。処理制御部509は、筆圧検出用回路508からのデジタル信号、すなわち、送信した電波と受信した電波との位相差(周波数偏移)に応じた信号のレベルに基づいて、電子ペン600に印加されている筆圧を検出する。
【0067】
このように位置検出回路501は、信号の送信期間と受信期間とを切り替え、送信期間においては、電子ペン600に対して駆動電力を供給して駆動させ、受信期間においては、電子ペン600からの信号を受信して、指示位置と筆圧を検出する。この位置検出回路501は、回路基板の構成とされている。これにより、センサ部510のケーブル部を、当該回路基板の構成とされた位置検出回路501に接続することによって、タブレット500が実現できる。
【0068】
<位置検出回路501の処理制御部509の構成例>
図6は、実施の形態のタブレット500の位置検出回路501の処理制御部509の構成例を説明するためのブロック図である。図6に示すように、処理制御部509は、CPU(Central Processing Unit)901、ROM(Read only Memory)902、RAM(Random Access Memory)903、不揮発性メモリ904を備えて構成される制御部910を備える。
【0069】
タイミング信号生成部905は、発振回路等を備え、制御部910の制御の下、上述もしたように、選択回路504、切り替え接続回路505、位置検出用回路507、筆圧検出用回路508のそれぞれに供給するタイミング信号を生成する。タイミング信号生成部905は、例えば、センサ部510を構成するX軸方向ループコイル群510Xと、Y軸方向ループコイル群501Yとは、500Hzから1000Hzの周波数でサンプリングするタイミング信号を生成する。これに対応して、タイミング信号生成部905は、各部に供給するタイミング信号を生成する。タイミング信号生成部905で生成されたタイミング信号は、制御ポート906、907、908、909を通じて、目的とする回路部に供給される。
【0070】
また、入力ポート911は、位置検出用回路507からのデジタル信号を受け付けて、制御部910に供給する。これにより、制御部910は、位置検出用回路507からのデジタル信号に応じて、入力面500Nにおける指示位置を検出できる。また、入力ポート912は、筆圧検出用回路508からのデジタル信号を受け付けて、制御部910に供給する。これにより、制御部910は、筆圧検出用回路508からのデジタル信号に応じて、入力面500Nに接触させることにより電子ペン600に掛けられた筆圧を検出できる。
【0071】
初期化処理部921は、タブレット500に電源が投入された直後の初期化のタイミングで、出力絶対座標領域VI上に入力面500Nに対応する入力エリアNrを位置付けるために、入力エリアNrの原点Pを対応付ける出力絶対座標値を設定する。具体的には、図3を用いて説明したように、入力エリアNrの原点Pを出力絶対座標領域VIの原点VPに位置付ける場合には、入力エリアの原点Pを対応付ける出力絶対座標値は、出力絶対座標領域VIの原点VP(0,0)となる。
【0072】
また、タブレット500に電源を投入し、使用した後に、最後に入力エリアNrを位置付けた出力絶対座標領域VI上の位置を示す出力絶対座標値が、いわゆるラストメモリ機能により、制御部910の不揮発性メモリ904に残るようにしておいたとする。この場合、初期化処理部921は、入力エリアの原点Pを対応付ける出力絶対座標値は、不揮発性メモリ904に記憶保持されている出力絶対座標値となる。例えば、図3に示した入力エリアNrの原点が出力絶対座標領域のP3に位置づけられ、出力絶対座標値(600,300)が、不揮発性メモリ904に記憶保持されていたとする。この場合には、初期化処理部921は、入力エリアの原点Pを対応付ける出力絶対座標値を、記憶保持されている出力絶対座標値(600,300)とし、入力エリアNrを出力絶対座標領域VIの右下端部に位置付けた状態から処理を開始させることができる。
【0073】
相対座標計算部922は、位置検出用回路507からのデジタルデータに基づいて、制御部910で特定される入力面500N上の絶対座標を順次に取得する。相対座標計算部922は、取得した絶対座標に基づいて、前回の絶対座標と今回の絶対座標との差分から入力面500Nにおける電子ペン600による指示位置を示す相対座標を計算する。図3
図4を用いて説明したように、前回取得した絶対座標と今回取得した絶対座標に基づいて、差分Δを算出するのが相対座標計算部922の機能である。
【0074】
出力絶対座標値計算部923は、タブレット500の入力面500Nに行われた指示入力を、ディスプレイ200の表示画面200Dに対応する出力絶対座標領域VI上に位置付けられた入力エリアNrに対して行われたものとして、出力絶対座標値を算出する。すなわち、相対座標計算部からの前記相対座標を利用して指示入力に応じた指示位置の出力絶対座標値を算出する。
【0075】
具体的には、図4を用いて説明したように、出力絶対座標領域VI上の入力エリアNrにおける筆記開始位置に対応する出力絶対座標値を算出する場合には、次のようにする。この場合は、出力絶対座標領域VI上の入力エリアNrの原点(前回の出力絶対座標値)に対して、入力エリアNr(入力面500Nに対応)上の接触位置を示す絶対座標を加算する。これにより、出力絶対座標領域VI上の入力エリアNrにおける筆記開始位置に対応する出力絶対座標値が算出できる。
【0076】
また、図4を用いて説明したように、出力絶対座標領域VI上の入力エリアNrにおける筆記終了位置に対応する出力絶対座標値を算出する場合には、次のようにする。この場合は、出力絶対座標領域VI上の入力エリアNrの前回の出力絶対座標値(この例の場合は、筆記開始位置)に対して、入力エリアNr(入力面500Nに対応)上の筆記終了位置の絶対座標から筆記開始位置の絶対座標を減算した相対座標を加算する。
【0077】
このようにして、出力絶対座標値計算部923は、タブレット500の入力面500Nに対して行われた指示入力を、出力絶対座標領域VIに位置付けられた入力エリアNrに対して行われたものとして、当該指示入力に応じた出力絶対座標値を計算する。なお、図4においては、説明を簡単にするため筆記開始点と筆記終了点とが分かっている場合に、それに対応する出力絶対座標値を計算するものとして説明した。しかし、実際には、センサ部510を構成するX軸方向ループコイル群510Xと、Y軸方向ループコイル群501Yとは、500Hzから1000Hzの周波数の前記タイミング信号によりサンプリングされる。このため、指示入力を細かくサンプリングすることができ、精度よく指示入力に応じた出力絶対座標値を計算できる。
【0078】
入力エリア移動処理部924は、制御部910からの入力面500Nの指示位置を示す絶対座標と、制御部910からの筆圧情報とに基づいて、出力絶対座標領域VI上において、入力エリアNrを移動させる処理を行う。すなわち、入力エリア移動処理部924は、図3を用いて説明したように、開始点の指示、ホバリングまたは筆記移動、終了点の指示、非検出移動といった一連の操作が行われた場合に機能する。具体的に、入力エリア移動処理部924は、図3を用いて説明したように、所定の操作が行われた場合に、相対座標計算部922からの相対座標に応じて、入力エリアの原点を対応付ける出力絶対座標領域VI上の位置を示す出力絶対座標値を変更する処理を行う。
【0079】
入出力I/F925は、PC本体100との接続を可能し、PC本体100からの情報を受け付けて、自機において処理可能な形式の情報に変換し、これを制御部910に供給する。また、入出力I/F925は、PC本体100に供給する情報を送信する形式に情報に変換し、これをPC本体100に供給する。自機からPC本体100に供給する情報は、上述した出力絶対座標値や筆圧情報だけでなく、自機の解像度などの機能情報などについても、入出力I/F925を通じてPC本体100に供給される。また、PC本体100から供給される情報には、PC本体100に接続されているディスプレイ200の表示画面200Dのアスペクト比などの情報がある。
【0080】
上述したように、この実施の形態のタブレット500は、タブレット500に対する入力情報は、相対座標として把握し、PC本体100には、絶対座標に変換して出力する。このため、タブレット500の入力面500Nとディスプレイ200の表示画面200Dとのアスペクト比が大きく異ならない場合には、入力情報に応じた描画像が大きく異なることはない。しかし、タブレット500の入力面500Nとディスプレイ200の表示画面200Dとのアスペクト比が大きく異なる場合には、入力情報に応じた描画像が異なってしまう場合がある。このため、アスペクト比調整部926は、PC本体100からのディスプレイ200の表示画面200Dのアスペクト比を示す情報の提供を受けて、PC本体100への出力絶対座標値を調整する処理を行う。
【0081】
図7は、タブレット500の入力面500Nとディスプレイ200の表示画面200Dとでアスペクト比が大きく異なる場合の座標の調整について説明するための図である。図7(A)に示すように、コンピュータ本体100に接続されたディスプレイ700の表示画面700Dのアスペクト比が4:3で、タブレット500の入力面500Nのアスペクト比が4:3であったとする。この場合、両者のアスペクト比が同一であるので、タブレット500の入力面500Nを通じて筆記入力に応じた描画像は、その形状が変化することなくディスプレイ700の表示画面700Dに表示することができる。
【0082】
しかしながら、図7(B)に示すように、コンピュータ本体100に接続されたディスプレイ800の表示画面800Dのアスペクト比が16:9で、タブレット500の入力面500Nのアスペクト比が4:3であったとする。この場合、両者のアスペクト比は異なっており、タブレット500の入力面500Nを通じて筆記入力した情報に応じて表示画面800Dに表示される描画像は、水平方向(横方向)には伸長されて間延びし、垂直方向には圧縮されてつぶれた表示になってしまう。
【0083】
上述もしたように、PC本体100は、タブレット500に対して、自機に接続されたディスプレイの表示画面のアスペクト比を通知することができる。また、タブレット500は、自機の入力面500Nのアスペクト比を例えば制御部910のROM902や不揮発性メモリ904で把握している。そこで、アスペクト比調整部926は、図7(C)に示すように、自己の入力面500Nのアスペクト比と、PC本体100から通知を受けたディスプレイ800の表示画面80Dのアスペクト比とに基づいて、出力データの調整を行う。
【0084】
アスペクト比調整部926は、自己の入力面500Nのアスペクト比と、表示画面800Dのアスペクト比とから、水平方向の圧縮伸長率と垂直方向の圧縮伸長率とを特定する。水平方向の圧縮伸長率は、水平方向にどれだけ伸びたり縮んだりするのかを示す情報であり、垂直方向の圧縮伸長率は、垂直方向にどれだけ伸びたり縮んだりするのかを示す情報である。アスペクト比調整部926は、特定した水平方向の圧縮伸長率と垂直方向の圧縮伸長率に基づいて、出力データである出力絶対座標値を調整する。これにより、当該出力データがPC本体100において処理されて、当該出力データに応じた描画像がディスプレイ800の表示画面800Dに表示された場合に、間延びしたり、つぶれたりすることが無いようにされる。
【0085】
なお、図5図6では記載を省略したが、処理制御部509には、電源のオン/オフボタンやその他の機能キーなどが設けられた操作部が接続されている。操作部の電源のオン/オフボタンにより、電源がオンにされた場合には、図示しない電源の供給回路より各部に電源が供給されてタブレット500は動作状態となる。また、操作部の電源のオン/オフボタンにより、電源がオフにされた場合には、図示しない電源の供給回路からの各部への電源の供給が停止されて、タブレット500は非動作状態となる。
【0086】
[タブレットで行われる処理のまとめ]
図8図9は、実施の形態のタブレット500で行われる処理を説明するためのフローチャートである。図8図9に示す処理は、例えば、タブレット500に電源が投入された場合に、処理制御部509の制御部910において行われる処理である。電源が投入されると、制御部910は、まず、初期化処理部921を制御し、初期化処理を実行する(ステップS101)。ステップS101の処理は、タブレット500の入力面500Nに対応する入力エリアNrを、ディスプレイ200の表示画面200Dに対応させる出力絶対座標領域VI上に位置付ける処理である。PC本体100への出力絶対座標領域VIの最大値VP(Xmax,Ymax)の通知もこのタイミングで行う。通常、初期化処理部921は、入力エリアの原点Pを、出力絶対座標領域VIの原点や、もしくは出力絶対座標領域VIの中心点や、または前回の電源が落とされる直前に位置付けられていた位置であって、不揮発性メモリ904に記憶保持されている対応する出力絶対座標値が示す位置に位置付けたりする。
【0087】
この後、制御部910は、タイミング信号生成部905を制御し、各部に供給するタイミング信号を生成して、制御ポート906、907、908,909を通じて各部に供給する。これにより、センサ部510上に電子ペン600を用いて指示操作が行われた場合には、センサ部510上の指示位置の絶対座標及び筆圧を検出・取得したか否かを判別することになる(ステップS102)。このステップS102の処理は、図5に示した位置検出用回路507と処理制御部509の制御部910と、筆圧を伴う場合は筆圧検出用回路508と処理制御部509の制御部910とが機能して行う。指示位置の検出がなされない場合は、ステップS110の終了操作の判別に移行する。
【0088】
ステップS102の判別処理において、指示位置が検出されたと判別した場合には、制御部910は、相対座標計算部922を制御して、順次に取得される絶対座標を用い、前回の絶対座標から今回の絶対座標を減算して相対座標を計算する処理を行う(ステップS103)。また、制御部910は、出力絶対座標値計算部923を制御して、指示入力に応じた絶対座標値を計算し、この時点で入力エリアNrの入力可能な範囲を確定する(ステップS104)。この入力エリアNrの入力可能な範囲は、後述する図9のステップS108で、位置検出センサ上の指示位置の絶対座標が未検出となるまで変化しない。ステップS104では、入力エリアNrの出力絶対座標領域VI上の位置と、計算されている場合には前回の出力絶対座標値と、相対座標計算部922からの今回の相対座標を用いて、出力絶対座標値を順次に計算し、出力絶対座標領域VI上にプロットして行く。このことは、相対座標を使って、タブレットの絶対座標領域とは異なる出力絶対座標領域を構築して行くことになる。
【0089】
この後、制御部910は、図4を用いて説明したように、センサ部510を通じて受け付けた指示入力は、筆圧を伴う筆記入力あるいは描画処理か否かを判別する(ステップS105)。ステップS105の判別処理において、センサ部510に対する指示入力は、筆跡入力あるいは描画処理であると判別したとする。この場合、制御部910は、出力絶対座標値計算部923からの出力絶対座標値と取得した筆圧とを対応付けて、入出力I/F925を通じて、PC本体100に出力する処理を行う(ステップS106)。
【0090】
一方、ステップS105の判別処理において、センサ部510に対する指示入力は、筆跡入力あるいは描画処理ではないと判別したとする。この場合、制御部910入力エリア移動処理部924を制御し、図3を用いて説明したように、センサ部510を通じて受け付けた指示入力は、ホバリング移動指示であると判別し、制御部910は、出力絶対座標値計算部923からの出力絶対座標値を、入出力I/F925を通じて、PC本体100に出力する処理を行う(ステップS107)。
【0091】
ステップS106とステップS107の処理の後には、図9の処理に進み、位置検出センサ上の指示位置の絶対座標が未検出か否かを判別する(ステップS108)。ステップS108の判別処理において、位置検出センサ上の指示位置の絶対座標が未検出である判別した場合、制御部910の制御の下、入力エリア移動処理部924は、出力絶対座標領域VI上における入力エリアNrの位置を移動させる処理を行う(ステップS109)。ただしこの時点では、入力エリアNrの範囲はまだ未確定である。
【0092】
ステップS102の判別処理において、指示位置の絶対座標及び筆圧は検出されていないと判別された場合またはステップS109の処理の後においては、制御部910は、電源をオフにする終了操作が行われたか否かを判別する(ステップS110)。ステップS110の判別処理において、終了操作は行われていないと判別したときには、制御部910は、図8のステップS102からの処理を繰り返すようにし、さらなる指示入力の受け付けを行う処理を継続させる。また、ステップS110の判別処理において、終了操作が行われたと判別したときには、制御部910は、所定の終了処理を実行し(ステップS111)、この図8に示す処理を終了する。
【0093】
なお、ステップS111で行われる所定の終了処理は、必要情報を不揮発性メモリ904に保存するなどに、次に電源立ち上げ時に不都合が生じないようにする種々の処理を行って、電源を落とす処理となる。従って、例えば、ラストメモリ機能が用いられている場合には、現在の入力エリアNrの原点の出力絶対座標領域VI上の位置(出力絶対座標値)を不揮発性メモリ904に格納するなどの処理も、ステップS111の終了処理に含まれる。
【0094】
このように、この図8に示す処理を実行することにより、図2図4を用いて説明したように、表示画面200D上の一部の部分に入力範囲表示エリアArを設ける。この入力範囲表示エリアArに、タブレット500の入力面500Nの全面を用いて種々の情報を入力することができるようにしている。
【0095】
[PC本体の構成例]
図10は、実施の形態の情報処理システムで用いられるPC本体の概略構成を説明するためのブロック図である。図10を用いて、タブレット500が接続されるPC本体の構成例について簡単に説明する。PC本体100は、制御部101を備える。制御部101は、CPU、ROM、RAM、不揮発性メモリなどがバスを通じて接続されてマイクロプロセッサの構成とされたものであり、種々のプログラムを実行してPC本体100の各部を制御する機能を実現する。
【0096】
記憶装置102は、例えば、SSD(Solid State Drive)などの記録媒体とそのドライバとからなるものであり、制御部101の制御の元、記録媒体へのデータの書き込み、読み出し、削除、変更などを行う機能を有する。マッピングメモリ103は、タブレット500からの出力絶対座標値を表示画面200Dの座標に割り当てて、描画データを形成するためのマッピングデータを記憶保持する。
【0097】
アスペクト比通知部104は、制御部101の制御の下、自機に接続されたディスプレイ200の表示画面200Dのアスペクト比を通知するための通知情報を形成し、後述のタブレットI/F113を通じてタブレット500に通知する処理を行う。キーボードI/F111はキーボード300の接続を可能にし、キーボード300との間での情報の送受を可能にする。マウスI/F112はマウスの接続を可能にし、マウス400との間での情報の送受を可能にする。タブレットI/F113は、タブレット500の接続を可能にし、タブレット500との間で情報の送受を可能にする。また、ディスプレイI/F114は、ディスプレイ200の接続を可能にし、ディスプレイ200との間で情報の送受を可能にする。
【0098】
キーボード情報処理部121は、キーボード300からの情報を受け付けて処理する部分であり、制御部101で実行されるHID準拠の標準のキーボードドライバがその機能を実現する。しかし、図10では、説明を簡単にするため、キーボード情報処理部121を二重線の四角形の1つのブロックとして示している。マウス情報処理部122は、マウス400からの情報を受け付けて処理する部分であり、制御部101で実行されるHID準拠の標準のマウスドライバがその機能を実現する。しかし、図10では、説明を簡単にするため、マウス情報処理部122を二重線の四角形の1つのブロックとして示している。
【0099】
また、タブレット情報処理部123は、タブレット500からの出力絶対座標値や筆圧情報などを受け付けて処理する部分であり、制御部101で実行されるHID準拠の標準のタブレットドライバがその機能を実現する。しかし、図10では、説明を簡単にするため、キーボード情報処理部121を二重線の四角形の1つのブロックとして示している。タブレット情報処理部123は、タブレットI/F113を通じて受け付けた出力絶対座標値や筆圧情報、更には、マッピングメモリ103のマッピングデータを用いて、表示画面200Dに情報を表示するための描画データを形成する。形成した描画データは、ディスプレイI/F114を通じてディスプレイ200に供給され描画処理に用いられる。すなわち、PC本体100は、タブレット500からの筆圧情報をも考慮した描画処理が可能なものである。
【0100】
このように、PC本体100は、一般的なものでよく、HID準拠の標準のタブレットドライバが搭載されていれば、タブレット500を入力デバイスとして接続して、これを利用することができる。PC本体100には、上述もしたように、タブレット500において、サンプリング周波数が、500Hzから1000Hzのタイミング信号が用いられて、指示位置の検出がされ、これが出力絶対座標値に変換されて供給される。PC本体100は、従来のタブレットよりも高いサンプリング周波数が用いられたタブレット500からの出力絶対座標値についても、遅滞なく処理できる能力を備えたものである。
【0101】
[実施の形態の効果]
上述した実施の形態のタブレット500は、極めて小型のタブレットとして実現されるものである。タブレット500は、専用のドライバを必要とせず、HID準拠のタブレットドライバが搭載されているPC等の情報処理装置に簡単に接続して、すぐに利用を開始することができる。しかも、表示画面の一部分への情報の入力でも、タブレット500の入力面500Nの全面を使用して入力することができる。また、タブレット500の入力面に対する操作入力は、相対座標として把握されるので、表示画面に表示した場合の歪みなどの発生を低減させることができる。
【0102】
また、タブレット500は、接続されるPCなどの情報処理装置より、ディスプレイの表示画面のアスペクト比の提供を受けることで、自機の表示面のアスペクト比との違いから生じる歪みなどの不都合を生じさせないように、調整を行う用にすることもできる。また、タブレット500は、小型であるため、キーボードやマウスといった周辺機器と共用される場合であっても、置き場所に困るなどのこともない。タブレット500は、使用者が使い易い位置に設置して使用することができる。
【0103】
[変形例]
<入力エリアの移動モードと描画モードの切り替え>
上述した実施の形態のタブレット500では、ペン先が検出された時点で入力エリアの範囲が確定し、非検出となるまでの直線距離を、入力エリアの移動指示として処理し、筆圧を伴う指示入力を筆記入力として処理するようにした。しかし、これに限るものではない。例えば、筆記入力とは別に、ペン先がタブレット500に触れることによる開始点の指示、ペン先のホバリング移動、ペン先がタブレット500に触れることによる終了点の指示、ペン先の非検出移動といった一連の操作を、入力エリアの移動指示として処理し、筆圧を伴う指示入力を筆記入力として処理するようにしてもよい。または、例えば、タブレット500にモード切り替えボタンを設けておき、このモード切り替えボタンへの操作により、入力エリアの移動指示モードと筆記指示モードとを切り替えるようにしてもよい。モード切り替えボタンは、例えば、図6に示した処理制御部509に対して接続される。これにより、処理制御部509は、モード切り替えボタンの押下操作に応じて、自機を入力エリアの移動指示モードと筆記指示モードとに切り替えることができるようになる。
【0104】
そして、入力エリアの移動指示モードの時には、開始点と終了点の間を、筆圧を掛けて移動する指示入力を行っても、図3を用いて説明したように、終了点から開始点までの差分Δを移動指示情報として、入力エリアの移動を行うようにすればよい。従って、入力エリアの移動指示モードの時には、筆圧情報は、PC本体100には提供されないモードとなる。また、筆記指示モードの時には、上述した実施の形態のタブレット500の場合と同様に、入力面では絶対座標の差分Δである相対座標により指示入力が変化量として把握される。しかし、PC本体100へは出力絶対座標値に変換して提供することで、PC本体100のHID準拠の標準のタブレットドライバによって処理可能な情報となり、筆記入力に応じた描画を行うことができる。
【0105】
<PC本体100とタブレット500との情報の送受>
なお、上述した実施の形態では、タブレット500からPC本体100へは、出力絶対座標値と筆圧情報とが送信されるものとして説明した。また、PC本体100からタブレット500へは、ディスプレイ200の表示画面200Dのアスペクト比を通知できるものとして説明した。しかし、これに限るものではない。従来と同様に、タブレット500からPC本体100へは、タブレット500の解像度などの必要情報を提供するなどのことも行われる。なお、解像度は、ビットマップ画像における画素の密度を示す数値である。換言すれば、解像度は、画像を表現する格子の細かさであり、一般に1インチをいくつに分けるかによって数字で表されるものである。
【0106】
<PC本体100以外の情報処理装置>
また、タブレット500は、PC本体100だけでなく、例えば、ノートPC、タブレットPC、スマートフォンなどといった、入力デバイスとしてタブレットの接続が必要になる種々の情報処理装置に接続可能である。
【0107】
<サイズのへの対応>
また、上述した実施の形態では、ディスプレイ200の表示画面200Dは、例えば、21インチの横長(アスペクト比16:9)のものとし、タブレット500の入力面500Nは、例えばA5版サイズのものとして説明した。しかし、これに限るものではない。表示画面や入力面のサイズは、種々のサイズとすることができる。タブレット500の入力面500Nのサイズに応じて、入力エリアNrや入力範囲表示エリアArのサイズを決めることができる。また、情報処理装置に接続されたディスプレイの表示画面のサイズに応じて、出力絶対座標領域の大きさ(サイズ)を決めるようにしてもよい。
【0108】
<タブレット500とマウス400の併用>
図11は、タブレット500とマウス400の併用について説明するための図である。ポインティングデバイスとしてマウスとタブレットとを備える従来の情報処理システムの場合、マウスも、タブレットも、画面上の目的とする位置を指示することができるといった基本的な機能は同じである。従って、従来の情報処理システムのPC本体部では、マウスによる指示位置も、タブレットを通じた電子ペンによる指示位置も、ポインティングデバイスによる指示位置として区別することなく管理する。このため、表示画面上に表示されたアイコンを、マウスによる指示操作によっても、また、タブレットを通じた電子ペンによる指示操作によっても、選択できる。
【0109】
上述した実施の形態の情報処理システム(以下、単に実施の形態の情報処理システムと記載する。)もまた、図1を用いて説明したように、PC本体100には、ポインティングデバイスとして、マウス400とタブレット500とが接続されている。従って、実施の形態の情報処理システムにおいても、本来は、マウス400を用いても、また、タブレット500の入力面500N上を電子ペン600で指示することによっても、ディスプレイ200の表示画面200D上の任意の位置を指示できる。
【0110】
しかし、実施の形態の情報処理システムの場合には、上述したように、タブレット500及び電子ペン600を用いた入力操作は、図11に示すように、ディスプレイ200の表示画面200D上に位置付けた入力範囲表示エリアArに対するものとなるようにしている。すなわち、入力範囲表示エリアArは、図3を用いて説明したように、仮想的な出力絶対座標領域VI上で、入力面500Nに対応する入力エリアNrを移動させて、任意の位置に位置付けた場合の入力エリアNrに対応している。このため、マウス400による位置指示と、タブレット500を通じて電子ペン600を用いた位置指示とは、PC本体100におけるカーソルCSの管理が異なる座標系として取り扱われている。
【0111】
ここでは、実施の形態の情報処理システムを利用し、図11に示すように、タブレット500を通じて電子ペン600により、表示画面200Dの入力範囲表示エリアArに例えば署名を筆記入力する場合を考える。署名として例えば「和込太郎」の筆記入力の途中であって、図11に示すように、電子ペン600のペン先が位置Pにある時に、筆記入力した署名の一部または全部を描き直したいと考えたとする。この場合、表示画面200Dの上端側に表示されたツールバーBrの消しゴムボタンESを選択する操作を行うことにより、描画モードにある状態から消しゴムモード(消去モード)に遷移させ、電子ペン600で消去したい部分を指示して消去を行うことになる。
【0112】
上述もしたように、実施の形態の情報処理システムにおいて、電子ペン600による位置指示が可能な領域は、表示画面200Dにおける入力範囲表示エリアAr内だけである。このため、電子ペン600により消しゴムボタンESを選択するためには、図3を用いて説明した入力エリアNr(入力範囲表示エリアArに対応)を移動させる操作を行って、図11の矢印AW1が示すように、入力範囲表示エリアArを消しゴムボタンESを含む位置まで移動させる。入力範囲表示エリアAr内に消しゴムボタンESが含まれることによって、電子ペン600により消しゴムボタンESの選択が可能になり、消しゴムボタンESが選択されることにより、PC本体100は、動作状態を消しゴムモードに遷移させる。
【0113】
この場合、消したい文字が入力された場所は、表示画面200Dの右下端部である。このため、図3を用いて説明した入力エリアNr(入力範囲表示エリアArに対応)を移動させる操作を行って、図11の矢印AW2が示すように、消しゴムボタンESを含む位置にある入力範囲表示エリアArを、再度、表示画面200Dの右下端部に移動させる操作を行う。これにより、初めて電子ペン600を用いて、入力済みの文字「和込」の一部または全部の消去が可能になる。
【0114】
この後、入力した文字「和込」の一部または全部を消去した後においては、再度、矢印AW1が示すように、入力範囲表示エリアArを消しゴムボタンESを含む位置まで移動させる。次に、消しゴムボタンを電子ペン600により選択して消しゴムモードを解除し、描画モードに遷移させる。更に、再度、矢印AW2が示すように、入力範囲表示エリアArを表示画面200Dの右下端部まで移動させ、表示画面200Dの右下端部への署名の筆記入力のやり直しが可能になる。このように、タブレット500に対する電子ペン600による指示操作に応じて、消しゴムモードと描画モードとを切り替えるためには、入力範囲表示エリアArをいちいち移動させなければならず、操作の煩に堪えない。
【0115】
そこで、図11に示すように、マウスカーソルCSを、マウス400を用いて消しゴムボタンESの表示位置まで移動させ、マウスの左クリック操作により、消しゴムボタンESを選択することにより消しゴムモードに遷移させることができる。消しゴムモードを終了させるには、再度、マウス400を用いてマウスカーソルCSを消しゴムボタンESの表示位置に位置付けて、マウス400を左クリック操作すればよい。
【0116】
しかし、通常行われている、タブレット500を相対座標制御のデバイスとして、マウスとして扱う場合には、PC本体100においては、マウス400による指示位置も、タブレット500に対して電子ペン600を検出させることにより指示した指示位置も区別することなく管理している。このため、マウス400を用いて位置を指示すると、その位置が最終的な指示位置になってしまい、PC本体100においては、表示画面200D内に位置付けた入力範囲表示エリアAr内の最終指示位置である位置Pが把握できない状態になる。これでは、タブレット500と電子ペン600を用いて、入力範囲表示エリアAr内への指示入力が再開できない。そこで、PC本体100において、マウスカーソルCSと電子ペン600による指示位置を別々に管理できるようにする。
【0117】
具体的には、タブレット500処理制御部509の例えば不揮発性メモリ904に、少なくとも直前の入力エリアNr(入力範囲表示エリアArに対応)の原点の出力絶対座標領域VIにおける絶対座標値を保持しておく。これにより、電子ペン600によりタブレット500の入力面500Nに対して操作を行った場合には、保持されている直前の入力エリアNrの原点を基準にして、入力操作に応じた相対座標を算出し、これを出力絶対座標に変換して出力する。これにより、直前の入力エリアNr(入力範囲表示エリアArに対応)に対して、継続して筆記入力を行える。
【0118】
すなわち、マウス400を用いては、マウスカーソルCSを表示画面200Dのどの位置にも位置付けて指示入力を行うことができる。更に、電子ペン600を用いては、タブレット500を通じて、必ず使用者によって表示画面200Dの所定の位置に位置付けられた入力範囲表示エリアArに対して筆記入力を行うことができる。なお、不揮発性メモリ904に直前の入力エリアNr(入力範囲表示エリアArに対応)の原点の出力絶対座標領域VIにおける絶対座標値だけでなく、最後の指示位置に応じた絶対座標値を保持しておくようにしてもよい。この場合には、筆記入力を再開した場合に、最後の指示位置を基準とした相対座標を求め、出力絶対座標値に変換できる。
【0119】
<その他の変形例>
また、上述した実施の形態のタブレット500では、電源がオンにされた場合を初期化のタイミングとして説明したが、これに限るものではない。例えば、タブレット500にリセットボタンが設けられている場合には、リセットボタンが押下操作された場合も初期化のタイミングとすることができる。すなわち、初期化のタイミングは、種々の設定が可能である。
【0120】
[その他]
上述した実施の形態の説明からも分かるように、請求項のセンサ部の機能は、実施の形態のタブレット500のセンサ部510が実現し、請求項の位置検出回路は、タブレット500の位置検出用回路507と処理制御部509とが実現している。また、請求項の相対座標計算部の機能は、タブレット500の処理制御部509の相対座標計算部922が実現、請求項の出力絶対座標値計算部の機能は、タブレット500の処理制御部509の出力絶対座標値計算部923が実現している。また、請求項の出力部の機能は、タブレット500の処理制御部509の入出力I/F925が実現している。
【0121】
また、請求項の筆圧検出回路は、タブレット500の筆圧検出用回路508と処理制御部509とが実現し、請求項の入力エリア移動処理部の機能は、タブレット500の処理制御部509の入力エリア移動処理部924が実現している。また、請求項のタイミング信号生成部の機能は、タブレット500の処理制御部509のタイミング信号生成部905が実現している。また、請求項の情報受付部の機能は、タブレット500の処理制御部509の入出力I/F925が実現している。
【0122】
また、請求項の情報処理装置の入力部の機能は、実施の形態のPC本体100のタブレットI/F113が実現し、請求項の情報処理装置の情報処理部の機能は、PC本体100のタブレット情報処理部123が実現している。また、請求項の情報処理装置の情報提供部の機能は、PC本体100のアスペクト比通知部及びタブレットI/F113が実現している。また、請求項の位置検出装置の情報受付部の機能は、タブレット500の入出力I/F925が実現し、請求項の位置検出装置のアスペクト比調整部の機能は、タブレット500の処理制御部509のアスペクト比調整部926が実現している。
【符号の説明】
【0123】
100…PC本体、101…制御部、102…記憶装置、103…マッピングメモリ、104…アスペクト比通知部、111…キーボードI/F、112…マウスI/F、113…タブレットI/F、114…ディスプレイI/F、121…キーボード情報処理部、122…マウス情報処理部、123…タブレット情報処理部、200、700、800…ディスプレイ、200D、700D、800D…表示画面、Ar…入力範囲表示エリア、300…キーボード、400…マウス、500…タブレット、500N…入力面、Nr…入力エリア、501…位置検出回路、502…発振器、503…電流ドライバ、504…選択回路、505…切り替え接続回路、506…受信アンプ、507…位置検出用回路、508…筆圧検出用回路、509…処理制御部、510…センサ部(位置検出センサ)、901…CPU、902…ROM、903…RAM、904…不揮発性メモリ、905…タイミング信号生成部、906…制御ポート、907…制御ポート、908…制御ポート、909…制御ポート、910…制御部、911…入力ポート、912…入力ポート、921…初期化処理部、922…相対座標計算部、923…出力絶対座標値計算部、924…入力エリア移動処理部、925…入出力I/F、926さロアスペクト比調整部、600…電子ペン、L…コイル、Cf…コンデンサ、Cv…可変容量コンデンサ、VI…出力絶対座標領域、VP…出力絶対座標領域の原点、NP…入力面の原点、P、P0~P3…入力エリアの原点、AP…入力範囲表示エリアの原点
図1
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