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  • 特開-生体インピーダンス測定方法 図1
  • 特開-生体インピーダンス測定方法 図2
  • 特開-生体インピーダンス測定方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134906
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】生体インピーダンス測定方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/053 20210101AFI20230921BHJP
   A61B 5/304 20210101ALI20230921BHJP
   A61B 5/313 20210101ALI20230921BHJP
   A61B 5/296 20210101ALI20230921BHJP
【FI】
A61B5/053
A61B5/304
A61B5/313
A61B5/296
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022039833
(22)【出願日】2022-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】杉原 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】坂上 友介
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA04
4C127AA06
4C127EE01
4C127EE03
4C127LL08
(57)【要約】
【課題】ノイズの影響を低減して、生体インピーダンスを精度よく測定することができる生体インピーダンス測定方法を提供する。
【解決手段】
所定の筋肉部位31上の生体表面30に第1の電極10および第2の電極20を所定の間隔を開けて配置し、生体表面30下の筋肉部位31における生体インピーダンスを算出する生体インピーダンス測定方法において、接地電極Gがさらに生体表面30に配置され、接地電極Gの配置位置は、第1の電極10および第2の電極20が配置された筋肉部位31上と異なる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の筋肉部位上の生体表面に第1の電極および第2の電極を所定の間隔を開けて配置し、前記生体表面下の筋肉部位における生体インピーダンスを算出する生体インピーダンス測定方法において、
接地電極がさらに前記生体表面に配置され、
前記接地電極の配置位置は、前記第1の電極および前記第2の電極が配置された筋肉部位上と異なることを特徴とする、生体インピーダンス測定方法。
【請求項2】
所定の筋肉部位上の生体表面に第1の電極および第2の電極を所定の間隔を開けて配置し、前記生体表面下の筋肉部位における生体インピーダンスを算出する生体インピーダンス測定方法において、
接地電極がさらに前記生体表面に配置され、
前記接地電極の配置位置は、前記第1の電極および前記第2の電極が配置された筋肉部位上であり、前記第1の電極と前記第2の電極の間の距離よりも大きな距離が前記第1の電極および前記第2の電極のそれぞれととられていることを特徴とする、生体インピーダンス測定方法。
【請求項3】
前記第1の電極と前記接地電極の間の電気経路および前記第2の電極と前記接地電極の間の電気経路は、心臓を通らないことを特徴とする、請求項1もしくは2に記載の生体インピーダンス測定方法。
【請求項4】
前記接地電極の配置位置は、筋肉上ではないことを特徴とする、請求項1もしくは3に記載の生体インピーダンス測定方法。
【請求項5】
前記接地電極の配置位置は、生体の末端部であることを特徴とする、請求項4に記載の生体インピーダンス測定方法。
【請求項6】
前記接地電極の配置位置は、手首もしくは足首であることを特徴とする、請求項4に記載の生体インピーダンス測定方法。
【請求項7】
前記接地電極の配置位置は、耳たぶであることを特徴とする、請求項4に記載の生体インピーダンス測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体内のインピーダンスを測定することにより、特定の筋肉の疲労などを評価する生体インピーダンス測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2つの電極を生体表面に間隔を空けて配置して、生体表面下の筋肉部位における生体インピーダンスを測定する方法が、知られている。
【0003】
例えば、特許文献1に係る方法では、生体表面に、少なくとも2つの電極を、所定の間隔を空けて配置する。2つの電極間に、第1外部抵抗を並列接続したときに生じる第1電圧V1、及び第2外部抵抗を並列接続したときに生じる第2電圧V2を測定する。第1電圧V1及び第2電圧V2の電圧比V1/V2に基づいて、生体表面下の筋肉部位における2つの電極間の生体インピーダンスを算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-157037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示すように、2つ以上の電極を生体表面に間隔を空けて配置して、生体表面下の筋肉部位における2つの電極間の生体インピーダンスを測定する場合、2つの電極に異なるノイズが重畳することを回避するために接地電極を準備することが一般的だが、その接地電極自体にノイズが重畳し、生体インピーダンスの測定精度が悪化することがある。
【0006】
本願発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、ノイズの影響を低減して、生体インピーダンスを精度よく測定することができる生体インピーダンス測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の生体インピーダンス測定方法は、所定の筋肉部位上の生体表面に第1の電極および第2の電極を所定の間隔を開けて配置し、前記生体表面下の筋肉部位における生体インピーダンスを算出する生体インピーダンス測定方法において、接地電極がさらに前記生体表面に配置され、前記接地電極の配置位置は、前記第1の電極および前記第2の電極が配置された筋肉部位上と異なることを特徴としている。
【0008】
本発明の生体インピーダンス測定方法では、接地電極の配置位置が第1の電極および第2の電極が配置された筋肉部位上と異なることにより、接地電極と第1の電極、第2の電極それぞれとの距離は第1の電極と第2の電極の距離よりも大きくとることができる。そのため、仮に2つの電極にそれぞれノイズが重畳したとしてもそれらを極力等しくして相殺させることができる。
【0009】
また、上記課題を解決するために、本発明の生体インピーダンス測定方法は、所定の筋肉部位上の生体表面に第1の電極および第2の電極を所定の間隔を開けて配置し、前記生体表面下の筋肉部位における生体インピーダンスを算出する生体インピーダンス測定方法において、接地電極がさらに前記生体表面に配置され、前記接地電極の配置位置は、前記第1の電極および前記第2の電極が配置された筋肉部位上であり、前記第1の電極と前記第2の電極の間の距離よりも大きな距離が前記第1の電極および前記第2の電極のそれぞれととられていることを特徴としている。
【0010】
本発明の生体インピーダンス測定方法では、接地電極の配置位置は第1の電極および第2の電極が配置された筋肉部位上であったとしても、2つの電極に重畳するノイズを極力等しくして相殺させることができる。
【0011】
また、前記第1の電極と前記接地電極の間の電気経路および前記第2の電極と前記接地電極の間の電気経路は、心臓を通らないことが好ましい。
【0012】
こうすることにより、心臓の鼓動起因のノイズが重畳することを防ぐことができる。
【0013】
また、前記接地電極の配置位置は、筋肉上ではないことが好ましい。たとえば、生体の末端部、手首もしくは足首、耳たぶなどが好ましい。
【0014】
こうすることにより、接地電極の配置位置にて信号が生じる可能性を極小化できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の生体インピーダンス測定方法によれば、ノイズの影響を低減して、生体インピーダンスを精度よく測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る生体インピーダンス測定方法を実施するための生体インピーダンス測定装置を模式的に示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る生体インピーダンス測定方法の等価回路図である。
図3】生体インピーダンスの測定におけるノイズの影響を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物あるいはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0018】
(生体インピーダンス測定装置)
本発明の一実施形態に係る生体インピーダンス測定方法を実施するための生体インピーダンス測定装置を図1に模式的に示す。生体インピーダンス測定装置1は、2つの電極10,20と、増幅器(電圧測定手段)40と、第1外部抵抗Rg1と、第2外部抵抗Rg2と、スイッチ(接続手段)SWと、を備える。
【0019】
各電極10,20は、銅やアルミニウム等のような、導電性の金属や、導電性、粘着性、生体適合性などが付与されたシリコンやポリマー基材などで形成されている。
【0020】
また、第3の電極として、基準電位とすべき接地電極Gが設けられている。接地電極15は各電極10,20と同様、銅やアルミニウム等のような、導電性の金属で形成されており、図1に示す実施例では、各電極10,20が右腕の上腕筋直上の生体表面30に配置されている状況において、接地電極Gは右手首に配置されている。すなわち、各電極10,20が配置されている筋肉上でなく、さらに筋肉でない部分に接地電極Gが配置されている。なお、本説明でいう筋肉とは、上腕二頭筋、広背筋など、生理学上個別に区分された筋組織のことを指す。
【0021】
(生体インピーダンス測定方法)
本実施形態の生体インピーダンス測定装置を用いた生体インピーダンス測定方法を図1および図2を用いて説明する。
【0022】
先ず、2つの電極10,20を、生体表面30に、所定の間隔を空けて配置する。図1では、2つの電極10,20を上腕部の表面に貼り付けた例を示す。
【0023】
2つの電極10,20間に生じる電圧を、増幅器40で増幅して測定する。ここで、2つの電極10,20間に、第1外部抵抗Rg1と、第2外部抵抗Rg2とが、並列に配置されている。そして、スイッチSWによって、2つの電極10,20間に、第1外部抵抗Rg1が並列接続された状態と、第2外部抵抗Rg2が並列接続された状態とに、切り替えられる。
【0024】
図2は、生体インピーダンス測定方法の等価回路図を示す。Vbは、2つの電極10,20間の生体表面30下にある筋肉部位(上腕筋)31における筋電位を示す。筋電位Vbは、上腕部を運動したとき、すなわち上腕筋31に負荷をかけたときに発生する。
【0025】
Rb1及びRb2は、それぞれ、筋電位Vbを発生する信号源Sと、2つの電極10,20間の生体インピーダンスを示す。また、Rinは、増幅器40の入力抵抗を示す。2つの電極10,20間に生じた電圧は、増幅器40で増幅されて、出力電圧Voutとして計測される。GNDは、グランドを示し、接地電極Gが設けられていることを示す。
【0026】
2つの電極10,20間に、第1外部抵抗Rg1を並列接続したときに生じる第1電圧V1は、式[数1]で与えられる。
【0027】
【数1】
【0028】
2つの電極10,20間に、第2外部抵抗Rg2を並列接続したときに生じる第2電圧V2は、式[数2]で与えられる。
【0029】
【数2】
【0030】
式[数1],[数2]によれば、生体表面30下にある筋肉部位(上腕筋)31における2つの電極10、20間の生体インピーダンスZb(=Rb1+Rb2)は、以下の式[数3]より求められる。
【0031】
【数3】
【0032】
式「数3」によれば、生体表面30下にある筋肉部位(上腕筋)31における2つの電極10,20間の生体インピーダンスZbは、第1電圧V1と第2電圧V2との電圧比V1/V2に基づいて、算出される。
【0033】
このように、本実施形態に係る生体インピーダンス測定装置1による生体インピーダンス測定方法では、2つの電極10,20を生体表面30に所定の間隔を空けて配置して、生体表面30下にある筋肉部位(上腕筋)31における2つの電極10,20間の生体インピーダンスZbを測定する。
【0034】
この生体インピーダンスZbの測定を通じて、たとえば筋肉部位31における筋疲労を評価してもよい。
【0035】
ここで、生体インピーダンスZbの測定のために求めるパラメータである筋電位Vb起因の第1電圧V1および第2電圧V2は、数十uV~数mVと非常に小さい値である。そのため、生体インピーダンスZbの測定時にノイズが重畳してしまうとそのノイズに測定値が簡単に埋もれてしまう。
【0036】
一方、仮に各電極10,20に体外からのノイズが重畳したとしても、基準電位となる接地電極Gを配置することにより、そのノイズを相殺することができる可能性がある。具体的には、図3の模式図における、電極10に重畳するノイズN1と電極20に重畳するノイズN2とが同等のノイズであれば、ノイズN1が加味された電極10と接地電極Gの間の電位V1GとノイズN2が加味された電極20と接地電極Gの間の電位V2Gとの差分により、両ノイズが相殺される形となって電極10と電極20の間の電位V12にはノイズ成分が無い状態で求められる。
【0037】
このようにノイズN1とノイズN2とを同等のノイズとするためには、電極10と電極20の距離に比べて電極10と接地電極Gの距離、および電極20と接地電極Gの距離が充分に長いこと、また、接地電極G自体がノイズ発生源上に配置されていないことが求められる。
【0038】
接地電極Gの具体的な配置位置は手足の指先(いわゆる生体の末端部)、手首、足首、耳たぶといった筋肉上でない部分であって、生体インピーダンスを測定する部位から極力遠い位置に配置されることが好ましい。ただし、接地電極Gと各電極10,20の経路が心臓を通ってしまうと、心臓の鼓動起因のノイズが重畳するため好ましくなく、上記経路が心臓を通らないことが望ましい。
【0039】
一方、仮に各電極10,20と同じ筋肉部位に接地電極Gも配置する場合であっても、少なくとも電極10と電極20の距離に比べて電極10と接地電極Gの距離、および電極20と接地電極Gの距離が長くなるよう接地電極Gが配置されることにより、ノイズN1とノイズN2とが同等となる状況に近づけることができる。
【0040】
以上の生体インピーダンス測定方法により、ノイズの影響を低減して、生体インピーダンスを精度よく測定することが可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 生体インピーダンス測定装置
10 電極
20 電極
30 生体表面
31 筋肉部位
40 増幅器
G 接地電極
図1
図2
図3