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  • 特開-ストッパ構造および多関節ロボット 図1
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  • 特開-ストッパ構造および多関節ロボット 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134948
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】ストッパ構造および多関節ロボット
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/00 20060101AFI20230921BHJP
【FI】
B25J19/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022039899
(22)【出願日】2022-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】井田 信也
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS11
3C707BS12
3C707CT05
3C707CX09
3C707CY32
(57)【要約】
【課題】アームの動作範囲が広い軸等のスペースを十分に確保できない場合であっても設置可能であり、且つせん断荷重を好適に吸収することが可能なストッパ構造、およびそれを備えたロボットを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明にかかるストッパ構造の構成は、アーム120と機械要素(ベース110)との所定角度以上の回動を規制するストッパ構造100aであって、アームまたは機械要素の一方に形成された突起122と、アームまたは機械要素の他方に形成された穴116と、穴から一部が露出するように穴に挿入されるストッパ140とを含み、ストッパは、弾性樹脂からなるブロック150と、ブロックの表面のうち突起と接触する前面側に沿って配置される断面アングル形状の表層金属板160と、から構成されていることを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アームと機械要素との所定角度以上の回動を規制するストッパ構造であって、
前記アームまたは前記機械要素の一方に形成された突起と、
前記アームまたは前記機械要素の他方に形成された穴と、
前記穴から一部が露出するように前記穴に挿入されるストッパと
を含み、
前記ストッパは、
弾性樹脂からなるブロックと、
前記ブロックの表面のうち前記突起と接触する前面側に沿って配置される断面アングル形状の表層金属板と、
から構成されていることを特徴とするストッパ構造。
【請求項2】
前記ブロックは多角柱であることを特徴とする請求項1に記載のストッパ構造。
【請求項3】
前記ストッパを付勢して前記ストッパの前記穴からの脱落を防止する押さえ板をさらに含むことを特徴とする請求項1または2に記載のストッパ構造。
【請求項4】
前記機械要素は、多関節ロボットのベースもしくは他のアームであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のストッパ構造。
【請求項5】
請求項1に記載のストッパ構造を備えたことを特徴とする多関節ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アームと機械要素との所定角度以上の回動を規制するストッパ構造、およびそれを備えた多関節ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
工場等の生産現場では、ロボットアーム(マニピュレータとも称される)等の産業用ロボット(以下、多関節ロボットと称する)が用いられている。多関節ロボットのうち、特にワークに対する処理を行うものでは、ベースに対してアームが固定されていたり、複数のアームが関節(可動部)において連結されていたりしていて、アームを動作させることによってワークのピッキングや加工等の処理を行っている。
【0003】
例えば特許文献1には、「互いに相対運動する一対の相対動作部分の少なくとも一方に設けられ、前記一対の相対動作部分が衝突したときに該一対の相対動作部分の間に挟まれて前記相対運動を停止させるストッパ部材を備えたロボット用停止装置」が開示されている。詳細には特許文献1のロボット用停止装置のストッパ部材は、「硬度が異なる少なくとも2種類の部材が相互に固着された組合せ部材であり、ストッパ部材は、硬度が高い部材の両端面は、前記一対の相対動作部分のそれぞれに直に接触し、該一対の相対動作部分の衝突時の圧縮荷重を前記両端面で略垂直に受けるように組み合わされ」たものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-118114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、多関節ロボットの動作の高速化に伴い、アームとベースや、アーム同士が接触した際に生じる衝撃エネルギー(荷重)が増大している。例えば、多関節ロボットのJ1軸など動作角度が340°を超えるような広い動作範囲の軸では、ウレタン等の弾性体のゴムストッパでエネルギーを吸収しようとしても、スペース的に圧縮荷重方向に必要な厚み、幅を確保することが難しい。また、仮に限られたスペースに弾性体のみを配置したとしても、動的な荷重により、弾性体だけではせん断荷重を受けることができず、ストッパとして機能しない。
【0006】
すなわち、J1軸など広い動作範囲の軸では、弾性体の衝撃吸収の利点を生かした構造のストッパ構造が難しかった。また、運動エネルギーが大きくなる前傾姿勢のようなイナーシャが大きい姿勢では、ストッパ部やアームなどの構造部材の保護のため速度を落とす必要があった。
【0007】
また特許文献1のストッパ部材では、圧縮荷重を吸収することができるものの、それ以外の荷重、例えばせん断荷重を吸収することができない。特許文献1では、ストッパ部材はベースの両側に設けられていると記載されている。しかしながら、アームの動作範囲が広い軸では、ストッパ部材を配置するスペースが十分に存在しないと、特許文献1のようにベースに隣接するようにストッパ部材を配置することが困難な場合も考えられる。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑み、アームの動作範囲が広い軸等のスペースを十分に確保できない場合であっても設置可能であり、且つせん断荷重を好適に吸収することが可能なストッパ構造、およびそれを備えた多関節ロボットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明にかかるストッパ構造の代表的な構成は、アームと機械要素との所定角度以上の回動を規制するストッパ構造であって、アームまたは機械要素の一方に形成された突起と、アームまたは機械要素の他方に形成された穴と、穴から一部が露出するように穴に挿入されるストッパとを含み、ストッパは、弾性樹脂からなるブロックと、ブロックの表面のうち突起と接触する前面側に沿って配置される断面アングル形状の表層金属板と、から構成されていることを特徴とする。
【0010】
上記ブロックは多角柱であるとよい。また上記機械要素は、多関節ロボットのベースもしくは他のアームであるとよい。
【0011】
上記ストッパを付勢してストッパの穴からの脱落を防止する押さえ板をさらに含むとよい。
【0012】
上記課題を解決するために、本発明にかかる多関節ロボットの代表的な構成は、上記記載のストッパ構造を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、アームの動作範囲が広い軸等のスペースを十分に確保できない場合であっても設置可能であり、且つせん断荷重を好適に吸収することが可能なストッパ構造、およびそれを備えた多関節ロボットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態にかかるストッパ構造を備える多関節ロボットのJ1軸を説明する斜視図である。
図2図1に示すストッパ構造を分解した状態を説明する図である。
図3図1に示す多関節ロボットの上面図および側面図である。
図4図3(a)のA-A断面図である。
図5図3(b)のB-B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0016】
上記説明した本実施形態においては、本発明にかかるストッパ構造を多関節ロボットのJ1軸に適用した例を用いて説明する。すなわち図1図5に示すストッパ構造は、多関節ロボットのJ1軸のアーム(機械要素)とベース(機械要素)との所定角度以上の回動を規制するストッパ構造であって、前記アームに形成された突起と、前記ベースに形成された穴と、前記穴から一部が露出するように前記穴に挿入されるストッパと含み、前記ストッパは、弾性樹脂からなるブロックと、前記ブロックの表面のうち前記突起と接触する前面側に沿って配置される断面アングル形状の表層金属板と、から構成されていることを特徴とするストッパ構造である。
【0017】
図1は、本実施形態にかかるストッパ構造100aを備える多関節ロボット(以下「ロボット100」という)のJ1軸を説明する斜視図である。図2は、図1に示すストッパ構造100aを分解した状態を説明する図である。ロボット100は5軸や6軸などの多関節ロボットであるが、J2軸以降は発明の説明に不要であるため記載を省略している。以下の実施形態では、図面を参照しながらロボット100について詳述しつつ、本実施形態のストッパ構造100aについても併せて説明する。
【0018】
なお本実施形態では、機械要素としてベース110を例示するが、本発明はこれに限定するものではなく、本発明にかかるストッパ構造を多関節ロボットのJ2軸-J5軸、J6軸など他の関節に適用しても良い。その場合、関節の一方のアームにストッパを設け、他方のアーム(機械要素)に穴を設けてストッパを挿入すればよい。また本実施形態では、アーム120に突起を設け、ベース110にストッパを配置した例を示しているが、逆にベース110に突起を設け、アーム120にストッパを配置してもよい。
【0019】
図1および図2に示すように本実施形態のロボットは、ベース110(機械要素)、アーム120を含んで構成される。ベース110は、本実施形態のロボット100を台座等(不図示)に固定する部材である。アーム120は、ベース110に軸支されていて、ベース110に対して回動する。
【0020】
図3は、図1に示すロボット100の上面図および側面図である。図3(a)は、図2に示すロボット100の上面図である。図3(b)は、図2に示すロボット100の側面図である。図4は、図3(a)のA-A断面図である。
【0021】
図3および図4に示すように本実施形態のロボット100は、ベース110に対するアーム120の「所定角度(図5参照。例えば170°)以上の回動」を規制するストッパ構造100aを備えている。本実施形態のストッパ構造100aは、アーム120に形成された突起122と、機械要素であるベース110に形成された穴116と、穴116から一部が露出するように穴116に挿入されるストッパ140とを含んで構成される。
【0022】
突起122は、アーム120の外周120aから半径方向外側に突出するように形成されている。図1図3では、突起122が初期位置(ストッパ構造100aの反対側の位置)にある状態を例示している。
【0023】
ベース110は、本体部112と、本体部112から上方(突起122に届く方向)に張り出した取付部114とを含んで構成されている。なお本実施形態では、取付部114がベース110の一部を構成する場合を例示したが、これに限定するものではなく、取付部114をベース110と別体にしてボルト固定としてもよい。
【0024】
取付部114はブロック150の背面側(アーム120に対する反対側)を支持する背当てである。ベース110には、ストッパ140が挿入される上下方向の穴116(突起122の回転方向と直交する方向の穴)が形成されている。穴116は取付部114のアーム120側にあり、約半分は取付部114を穿っていて、残りの約半分は取付部114よりもアーム120側に張り出している。
【0025】
ストッパ140は、弾性樹脂からなるブロック150と、断面アングル形状の表層金属板160とから構成される。表層金属板160は、ブロック150の表面のうち、突起122と接触する前面側(すなわちアーム120側)に沿って配置される。表層金属板160はブロック150の背面側を覆っておらず、ブロック150と取付部114の間には表層金属板160が介在していない。
【0026】
ブロック150は、例えば穴116に対するブロック150の挿入方向から平面視した状態において前面側が凸状に形成された略三角柱形状を有する多角柱であり、表層金属板160を沿わせたストッパ140全体も多角柱となっている。また穴116も、ストッパ140の形状に合わせた外形形状となっている。これにより、接触した突起122からせん断荷重がかかった際にストッパ140において回転方向のモーメント力が発生しても、表層金属板160とブロック150との変形によりかかるモーメント力によるストッパ140の回転を好適に防ぐことが可能となる。なお本実施形態では略三角柱(詳細に観察すれば、三角柱の角を落した六角柱)のブロック150を例示しているが、これに限定するものではなく、ブロック150を三角柱以外の多角柱としてもよい。
【0027】
また図2に示すように本実施形態ではストッパ構造100aは、ストッパを付勢してストッパ140が穴116から脱落することを防止する押さえ板170を更に含む。押さえ板170は、図4に示すようにロボット100の穴116にストッパ140が挿入された後に、ねじ180によって取付部114に取り付けられる。
【0028】
図5は、図3(b)のB-B断面図である。図5(a)は、図1に示す突起122がストッパ140とは反対側(初期位置)に位置する場合を例示している。図5(b)は、図1に示す突起122がストッパ140側(規制位置)に位置する場合を例示している。本実施形態のロボット100ではアーム120は、図5(a)に示す所定角度内で回動可能であり図5(b)に示すように突起122がストッパ140と接触することによって所定角度外への回動が規制される。
【0029】
詳細には、アーム120が所定角度を越えて回動しようとして突起122がストッパ140と接触したとき、接触した突起122の荷重方向は、回転の円(アーム120の外周120a)の接線方向である。すると突起122が接触したストッパ140には、せん断方向の荷重(物体を平行にずらす方向の力。以下、せん断荷重を称する)が作用する。
【0030】
ここで本実施形態のストッパ140のようにブロック150のうち突起122と接触する前面側に表層金属板160が配置されていることにより、せん断荷重がかかると、ストッパ140は、表層金属板160が弾性変形または塑性変形することによって衝撃を吸収することができる。そして表層金属板160の内側にブロック150が配置されていることにより、表層金属板160の塑性変形に伴ってブロック150も変形するため、接触時にかかったせん断荷重をより効率的に吸収することが可能となる。すなわちアーム120の運動エネルギーを、表層金属板160の塑性変形のエネルギーとブロック150の弾性変形のエネルギーによって吸収する。
【0031】
仮にストッパ140が表面金属板160を備えず弾性樹脂のブロック150のみによって構成される場合、せん断荷重によってブロック150がちぎれるように破損してしまい、接触時の衝撃を吸収することができない。また単に弾性樹脂からなるストッパを用いる場合、高い衝撃吸収性能を得るためにはストッパの厚みや幅を大きくする必要がある。これに対し本実施形態のロボット100によれば、ブロック150および表層金属板160からなるストッパ140が高い荷重吸収性能を有するため、弾性樹脂のみからなるストッパを用いる場合に比して体積を小さくすることができる。したがって、アーム120の動作範囲が広い軸等であってもスペースの制約を受けることなくストッパ140を配置することが可能となる。
【0032】
そして上記構成によれば、高い衝撃吸収性能を有することから、J1軸など動作角度が340°を超えるような広い動作範囲の軸において、運動エネルギーが大きくなる前傾姿勢のようなイナーシャが大きい姿勢であっても、十分に衝撃を吸収することができる。このためストッパ部保護のために速度を落とす必要がなくなり、高速に動作させることが可能となる。
【0033】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、アームと機械要素との所定角度以上の回動を規制するストッパ構造、およびそれを備えた多関節ロボットとして利用することができる。
【符号の説明】
【0035】
100…ロボット、100a…ストッパ構造、110…ベース、112…本体部、114…取付部、116…穴、120…アーム、120a…外周、122…突起、140…ストッパ、150…ブロック、160…表層金属板、170…押さえ板、180…ねじ
図1
図2
図3
図4
図5