(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134953
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】インクジェット印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/015 20060101AFI20230921BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
B41J2/015 101
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022039908
(22)【出願日】2022-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】中田 安美
(72)【発明者】
【氏名】山本 寛峰
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EA14
2C056EA26
2C056EB30
2C056EB38
2C056EB59
2C056EC07
2C056EC72
2C056FA02
2C057AF76
2C057AK08
2C057AL31
2C057AM01
2C057AM21
2C057AN01
(57)【要約】
【課題】インクの溶存酸素量が多くても高い印字安定性を確保できるコストの安いインクジェット印刷装置を提供する。
【解決手段】印刷を継続して実施していない時間を計測する不使用時間計測部43と、周囲の温度を計測する温度計測部44と、インクの消費量を計測するインク消費量計測部45と、不使用時間計測部の計測値と温度計測部44の計測値とインク消費量計測部45の計測値のそれぞれの値に基づいてインクジェットヘッド31の駆動周波数を変更するヘッド制御部46とを備え、不使用時間計測部43は、印刷を継続して実施していない時間を累積して計測し、インクを供給するインクボトルの交換に対応させて上記の時間を初期化する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷を継続して実施していない時間を計測する不使用時間計測部と、
周囲の温度を計測する温度計測部と、
インクの消費量を計測するインク消費量計測部と、
前記不使用時間計測部の計測値と前記温度計測部の計測値と前記インク消費量計測部の計測値のそれぞれの値に基づいてインクジェットヘッドの駆動周波数を変更するヘッド制御部と
を備えるインクジェット印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷装置において、印字安定性を高めるためには、インクの溶存酸素量を減らすことが必要である。インクの溶存酸素量が多いと、吐出時にインクが十分に圧縮されないために吐出性が低下し、ドット抜けや印字不良を発生させてしまう場合がある。
【0003】
そこで、インクの循環経路や補充経路に脱気手段を設ける方法が特許文献1に開示されている。また、インクの送液動作を繰り返す方法が特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-233952号公報
【特許文献2】特開2021-75006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の特許文献1,2に開示された方法では、インクジェット印刷装置を常に動作させておく必要があり、消費電力が大きくなる。又は、装置構成が複雑になる。つまり、従来の技術は、インクの溶存酸素量を減らすための構成が複雑になる。又は、消費電力が大きくなるという課題があった。
【0006】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであり、インクの溶存酸素量が多くても高い印字安定性を確保できるコストの安いインクジェット印刷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本願発明は、印刷を継続して実施していない時間を計測する不使用時間計測部と、周囲の温度を計測する温度計測部と、インクの消費量を計測するインク消費量計測部と、前記不使用時間計測部の計測値と前記温度計測部の計測値と前記インク消費量計測部の計測値のそれぞれの値に基づいてインクジェットヘッドの駆動周波数を変更するヘッド制御部とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、インクの溶存酸素量が多くても高い印字安定性を確保できるコストの安いインクジェット印刷装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るインクジェット印刷装置の概略構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すシャトルニットの概略構成を示す図である。
【
図3】
図3は、インクの溶存酸素量と放置時間の関係を模式的に示す図である。
【
図4】
図4は、1系統(1色)のインクの経路を模式的に示す図である。
【
図5】
図5は、
図1に示すインクジェット印刷装置の概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。以下に示す実施形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係るインクジェット印刷装置の概略構成を示す斜視図である。
図1は、大型基材を多数枚印刷するフラットベッド型のインクジェット印刷装置の例を示す。なお、以下に示す実施形態の説明では、
図1に示す矢印で示す上下左右前後を、インクジェット印刷装置1における上下左右前後方向とする。
【0012】
図1に示すように、インクジェット印刷装置1は、シャトルベースユニット2と、フラットベッドユニット3と、シャトルユニット4とを備える。
【0013】
シャトルベースユニット2は、シャトルユニット4を支持するとともに、前後方向(副走査方向)にシャトルユニット4を移動させるものである。シャトルベースユニット2は、具体的には、架台部11と、副走査駆動モータ23(
図4)とを備える。
【0014】
架台部11は、矩形枠状に形成され、シャトルユニット4を支持するものである。架台部11の左右の枠上には、前後方向に延びる副走査駆動ガイド13A,13Bがそれぞれ形成されている。副走査駆動ガイド13A,13Bは、シャトルユニット4を前後方向に移動するようにガイドするものである。副走査駆動モータ23は、シャトルユニット4を前後方向に移動させるものである。
【0015】
フラットベッドユニット3は、建材や化粧パネル等の印刷媒体15を支持するものである。フラットベッドユニット3は、シャトルベースユニット2の架台部11の内側に形成された直方体形状の凹部内に配置されている。フラットベッドユニット3は、印刷媒体15が載置される水平面である媒体載置面3aを有している。フラットベッドユニット3は、図示を省略した油圧駆動機構等からなる昇降機構を有し、これにより媒体載置面3aの高さを調整できるように構成されている。
【0016】
シャトルユニット4は、印刷媒体15に対して印刷処理を施すものである。
図2は、シャトルユニット4の概略構成を示す図である。シャトルユニット4は、
図2に示すように、筐体21、主走査駆動ガイド22、主走査駆動モータ41(
図4)、ヘッド昇降ガイド24、ヘッドユニット26、キャッピングユニット66、及び吸引部28等を備えている。
【0017】
筐体21は、ヘッドユニット26などの各部を収納するものである。筐体21は、フラットベッドユニット3を左右方向に跨ぐような門型に形成されている。筐体21は、シャトルベースユニット2の架台部11に支持され、副走査駆動ガイド13A,13Bに沿って移動可能に構成されている。
【0018】
主走査駆動ガイド22は、ヘッドユニット26を左右方向(主走査方向)に移動するようにガイドするものである。主走査駆動ガイド22は、左右方向に延びる長尺状の部材によって形成されている。ヘッドユニット26は、主走査駆動モータ41によって左右方向に移動する。
【0019】
ヘッド昇降ガイド24は、ヘッドユニット26を上下方向に移動するようにガイドするものである。ヘッド昇降ガイド24は、上下方向に細長い形状の部材から形成されている。ヘッド昇降ガイド24は、ヘッドユニット26とともに主走査駆動ガイド22に沿って左右方向に移動可能に構成されている。ヘッドユニット26は、図示を省略しているヘッド昇降モータによって上下方向に昇降する。
【0020】
ヘッドユニット26は、上記のように主走査駆動ガイド22に沿って左右方向に移動しながら、印刷媒体にインクを吐出することによって印刷処理を施すものである。ヘッドユニット26は、
図2に示すように、4つのインクジェットヘッド31を有している。
【0021】
4つのインクジェットヘッド31のそれぞれは、色毎のインクを貯蔵するインクボトル50(
図4)とチューブ60(
図4)を介して接続される。インクの色は、例えば、K色インク(ブラック)、C色インク(シアン)、M色インク(マゼンダ)、及びY色インク(イエロー)の4色である。
【0022】
インクボトル50は、インクカートリッジとも称される。インクの補充は、ボトル又はカートリッジを新しいものに交換することで行われる。
【0023】
インクジェットヘッド31は、ピエゾの往復運動によりインクを吐出する。ピエゾの駆動周波数が高いほど単位時間当たりの往復運動の回数が増えることになる。同時に、インクに与える単位時間の圧力差も増加し、インクから気泡が生じるキャビテーションが発生し易くなる。
【0024】
キャビテーションは、インクの溶存酸素量が多いほど生じ易い。キャビテーションが発生すると、インクの直進性が損なわれ、気泡がダンビング効果を生じさせてインクが吐出できなくなる場合がある。
【0025】
インクの溶存酸素量とは、インクにどれだけの濃度で酸素が溶存しているかを表す量である。溶存酸素量は、隔膜電極法、ウインクラー法、ウインクラーアジ化ナトリウム変法、比色法等によって測定することができる。
【0026】
図3は、インクの溶存酸素量と放置時間の関係を模式的に示す図である。
図3の横軸は放置時間(H)、縦軸は溶存酸素量(ml/L)である。この特性のパラメータは環境温度である。環境温度とは、インクジェット印刷装置1が配置される周囲の温度である。
【0027】
放置時間は数百時間程度の時間幅である。溶存酸素量は、水性インクの場合、好ましい量は3ml/L程度以下であり、全く脱気されていないインクの場合は15ml/L程度である。
【0028】
図3に示すように、インクの溶存酸素量は、放置時間の経過に伴って増加する特性を示す。この特性は、複数の環境温度ごとに用意される。
【0029】
キャビテーションの発生を考慮すると、気泡の発生し難い溶存酸素量の少ないインク程より高い駆動周波数で、安定的に連続吐出が可能である。また、溶存酸素量が多くても気泡が発生し難い低い駆動周波数であれば、インクの安定的な連続吐出が可能である。
【0030】
なお、インクの放置時間は、インクボトル50からインクジェットヘッド31に至る経路上の位置によって異なる場合がある。
【0031】
図4は、1系統(1色)のインクの経路を模式的に示す図である。
図4に示すように、インクジェットヘッド31は、チューブ60を介してインクボトル50と接続される。インクジェット印刷装置1は、
図4に示す経路を例えば4つ備える。
【0032】
図4は、1回の印刷ジョブで消費されるインクの量が、その経路上で蓄えられるインクの量よりも小さい場合に、経路上の位置によってインクの放置時間が異なる例を模式的に示す。放置時間の長さをハッチングの濃さで表す。
【0033】
インクボトル50は、例えばアルミパウチ容器で構成される。アルミパウチ容器のアルミの空気透過性は、ほぼゼロである。
【0034】
脱気されたインクがその容器に充填されれば、放置時間が長くなってもインクボトル50内のインクの溶存酸素量は増加しない。よって、インクボトル50内のインクは、時間が経過しても溶存酸素量が増加しないのでハッチング無し(白)で表す。つまり、インクボトル50内のインクは環境に放置されていないので、そのインクの放置時間はゼロである。
【0035】
一方、チューブ60は、通常、樹脂製であり空気を透過する。よって、チューブ60内のインクの溶存酸素量は、放置時間の経過に応じて増加する(
図3)。
【0036】
インクボトル50側の所定の範囲のチューブ61内のインクの放置時間は、例えば120時間以上168時間以下である。経路の中間部分のチューブ62のインクの放置時間は、例えば168時間以上216時間以下である。インクジェットヘッド31側の所定の範囲のチューブ63とインクジェットヘッド31内のインクの放置時間は、例えば216時間以上である。
【0037】
インクボトル50からのインクの移動量は、インクの消費量(ドロップ数)に連動するので、インクジェットヘッド31の駆動周波数をカウントすれば得られる。その移動量と放置時間を対応付けることで、経路上の位置毎のインクの溶存酸素量を知ることができる。
【0038】
本実施形態では、このインクの溶存酸素量とインクジェットヘッド31の駆動周波数との関係に着目してインクジェットヘッド31の駆動周波数を変更するヘッド制御部を備える。
【0039】
図5は、インクジェット印刷装置1の概略構成を示すブロック図である。
図5は、本実施形態の説明に必要な構成のみを示すブロック図である。例えば、インクをインクジェットヘッド31に供給する供給ポンプ、インクジェットヘッド31の吐出面をメンテナンスするメンテナンス部等の表記は省略している。
【0040】
図5に示すように、インクジェット印刷装置1は、印刷ジョブ受信部10、主制御部30、シャトルベースユニット2、及びシャトルユニット4等を備える。
【0041】
印刷ジョブ受信部10は、外部から印刷ジョブを受信する。印刷ジョブは、例えばパーソナルコンピュータ(図示せず)が備えるプリンタードライバーで生成される。印刷ジョブには、印刷媒体15の表面に印刷される画像情報が含まれる。画像情報は、PDF(Portable Document Format)形式やXPS(XML Paper Specification)形式等のページ記述言語(PDL;Page Description Language)で記述される。
【0042】
主制御部30は、シャトルユニット4を前後方向(副走査方向)と左右方向(主走査方向)に移動させて、印刷媒体15の表面上に画像情報を印刷する制御を行う。
【0043】
シャトルベースユニット2は、副走査駆動モータ23と、副走査駆動モータ制御部27とを備える。
【0044】
副走査駆動モータ23は、シャトルユニット4を前後方向に移動させる。
【0045】
副走査駆動モータ制御部27は、主制御部30からの指令に基づいてシャトルユニット4を前後方向に移動させる移動量を制御する。
【0046】
シャトルユニット4は、主走査駆動モータ41、主走査駆動モータ制御部42、不使用時間計測部43、温度計測部44、インク消費量計測部45、及びヘッド制御部46等を備える。
【0047】
主走査駆動モータ41は、シャトルユニット4の内部のヘッドユニット26を左右方向に移動させる。
【0048】
主走査駆動モータ制御部42は、主制御部30からの指令に基づいてヘッドユニット26を左右方向に移動させる移動量を制御する。
【0049】
不使用時間計測部43は、インクジェット印刷装置1が印刷を継続して実施していない不使用時間を計測する。不使用時間は、計時のためのクロック信号をカウントすることで計測され、不使用時間を累積して計測し、インクを供給するインクボトル50の交換に対応させて初期化される時間である。また、不使用時間と、上記の「放置時間」とは同義である。
【0050】
ここで交換に対応させてとは、インクボトル50の交換後の最初の印刷ジョブによって、インクボトル50からチューブ61内に移動したインクの不使用時間をリセットすることを意味する。リセットされた不使用時間が0のインクよりもインクジェットヘッド31側のインクの不使用時間は、リセットされずに累積して計測される。
【0051】
温度計測部44は、インクジェット印刷装置1の周囲の温度を計測する。温度は、例えばサーミスタ等の温度に対する抵抗値の変化から計測することができる。温度の計測と不使用時間の計測は、極めて少ない消費電力で計測することが可能である。よって、それらの計測は、印刷の実施不実施に関わらず常に行われる。
【0052】
インク消費量計測部45は、インクの消費量を計測する。インクの消費量は、インクジェットヘッド31の吐出面をクリーニングしてメンテナンスする際に消費するインクも含む。インクの消費量は、インクジェットヘッド31の駆動周波数を数える(カウント)ことで計測することができる。よって、計測するは、算出すると言い換えてもよい。
【0053】
ヘッド制御部46は、不使用時間計測部43の計測値と温度計測部44の計測値とインク消費量計測部45の計測値のそれぞれの値に基づいてインクジェットヘッド31の駆動周波数を制御する。ヘッド制御部46は、不使用時間が長くなると駆動周波数を低くする。これにより、インクの溶存酸素量が多くても高い印字安定性を確保できるコストの安いインクジェット印刷装置を提供することができる。
【0054】
つまり、不使用時間が短い場合は、インクの溶存酸素量が少ないのでインクジェットヘッド31の駆動周波数が高くてもキャビテーションが発生しない。また、不使用時間が長い場合は、インクの溶存酸素量が多いのでインクジェットヘッド31の駆動周波数を低くしてキャビテーションの発生を抑制する。
【0055】
表1に、放置時間と印刷方式の対応関係の例を示す。左から1列目の「放置時間」は、上記の「不使用時間」のことである。
【0056】
【0057】
不使用時間が120時間未満の場合は、インクの溶解酸素量が少ないのでインクジェットヘッド31の駆動周波数が高くてもキャビテーションが発生しない。この場合は、シャトルユニット4が前方向と後ろ方向の双方向に移動する際に、高い駆動周波数での印刷を実施する。高い駆動周波数は例えば10kHzである。よって、この場合のインクジェット印刷装置1の生産性は「最高」である。
【0058】
不使用時間が120時間以上168時間未満の場合は、シャトルユニット4が前方向に移動する際(片方向)に、高い駆動周波数での印刷を実施する。なお、シャトルユニット4が後ろ方向に移動する際は、この例では印刷を実施しない。よって、この場合のインクジェット印刷装置1の生産性は最高より低い「高」である。
【0059】
不使用時間が168時間以上216時間未満の場合は、インクの溶解酸素量が少し増加し、インクジェットヘッド31の駆動周波数が高いとキャビテーションが発生する場合がある。そこで、シャトルユニット4が前方向と後ろ方向の双方向に移動する際に、駆動周波数を下げて印刷を実施する。この場合のインクジェット印刷装置1の生産性は高より低い「中」である。この場合の駆動周波数は例えば5KHzである。
【0060】
不使用時間が216時間以上の場合は、更にインクから気泡が生じるキャビテーションが発生し易いので、シャトルユニット4が前方向に移動する際(片方向)に、低い駆動周波数での印刷を実施する。シャトルユニット4が後ろ方向に移動する際は、この例では印刷を実施しない。よって、この場合のインクジェット印刷装置1の生産性は最も低い「低」である。
【0061】
このようにヘッド制御部46は、不使用時間に対応させて、インクジェットヘッド31が往復移動する際に、双方向印刷を行うか又は片方向印刷を行うかを切り替える。これにより、印字安定性を確保しながら生産性を高めることができる。
【0062】
なお、表1では温度の表記を省略している。駆動周波数と印刷方式の変更は、温度計測部44の計測結果を考慮して実行される。
【0063】
つまり、不使用時間、印刷方式、及びヘッド駆動周波数のテーブル(表1)は、温度(温度計測部44の計測結果)をパラメータにして複数が用意されている。
【0064】
以上説明したように本実施形態に係るインクジェット印刷装置1は、印刷を継続して実施していない時間を計測する不使用時間計測部43と、周囲の温度を計測する温度計測部44と、インクの消費量を計測するインク消費量計測部45と、不使用時間計測部の計測値と温度計測部の計測値とインク消費量計測部45の計測値のそれぞれの値に基づいてインクジェットヘッド31の駆動周波数を変更するヘッド制御部46とを備える。これにより、インクの溶存酸素量が多くても高い印字安定性を確保できるコストの安いインクジェット印刷装置を提供することが可能になる。
【0065】
また、インクジェット印刷装置1は、印刷装置を使用しない時間と環境温度から、経路(上記の例ではインクジェットヘッド31内)にあるインクの溶存酸素量の状態を把握し、好ましいインクに入れ替わるまで、そのインクに応じた印刷方式(印刷モード)を搭載する。その結果、印刷装置を長時間使用しなかった場合でも高い印刷安定性を確保することができ、不使用時間による印刷コストへの影響を少なくすることが可能となる。
【0066】
本発明は、上述の実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階でその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。
【0067】
例えば、表1において、駆動周波数を「高」と「低」の2段階の例を示したが、本発明はこの例に限定されない。駆動周波数は、インクの溶解酸素量に対応させて2段階以上の多段階で変更するようにしても構わない。また、上記の実施形態は、フラットベッド型のインクジェット印刷装置の例を示したが、本発明は、印刷用紙を印刷する一般的なインクジェット印刷装置にそのまま適用することも可能である。
【0068】
このように、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用が可能であることはもちろんである。
【0069】
[付記]
本出願は、以下の発明を開示する。
【0070】
[付記1]
印刷を継続して実施していない時間を計測する不使用時間計測部と、
周囲の温度を計測する温度計測部と、
インクの消費量を計測するインク消費量計測部と、
前記不使用時間計測部の計測値と前記温度計測部の計測値と前記インク消費量計測部の計測値のそれぞれの値に基づいてインクジェットヘッドの駆動周波数を変更するヘッド制御部と
を備えるインクジェット印刷装置。
【0071】
[付記2]
前記不使用時間計測部は、
前記時間を累積して計測し、前記インクを供給するインクボトルの交換に対応させて前記時間を初期化する
付記1に記載のインクジェット印刷装置。
【0072】
[付記3]
前記ヘッド制御部は、
前記時間が長くなると前記駆動周波数を低くする
付記1又は2に記載のインクジェット印刷装置。
【0073】
[付記4]
前記ヘッド制御部は、
前記時間の長さに対応させて、前記インクジェットヘッドが往復移動する際に、双方向印刷を行うか又は片方向印刷を行うかを切り替える
付記1乃至3の何れかに記載のインクジェット印刷装置。
【符号の説明】
【0074】
1 インクジェット印刷装置
2 シャトルベースユニット
3 フラットベットユニット
31 インクジェットヘッド
4 シャトルユニット
43 不使用時間計測部
44 温度計測部
45 インク消費量計測部
46 ヘッド制御部