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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134954
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 17/00 20060101AFI20230921BHJP
   B23Q 1/58 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
B23Q17/00 A
B23Q1/58 Z
B23Q17/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022039911
(22)【出願日】2022-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】100125737
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 昭博
(72)【発明者】
【氏名】森 雅彦
【テーマコード(参考)】
3C029
3C048
【Fターム(参考)】
3C029EE02
3C029FF04
3C048BC01
3C048DD01
(57)【要約】
【課題】動作端スイッチの調整が作業者にとって実行しやすい工作機械を提供すること。
【解決手段】所定の作業を行う流体圧シリンダと、前記流体圧シリンダの動作を検出する動作端スイッチと、所定の動作を実行する各駆動装置をプログラムに従って駆動制御する制御装置とを有し、前記制御装置による駆動制御は、前記動作端スイッチの検出による動作エラーの判定に従って前記駆動装置を駆動停止状態にする通常モードと、前記駆動停止状態を維持しつつ該当する前記流体圧シリンダに対する流体圧の供給を可能にする調整モードとを備える工作機械。
【選択図】図8

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の作業を行う流体圧シリンダと、
前記流体圧シリンダの動作を検出する動作端スイッチと、
所定の動作を実行する各駆動装置をプログラムに従って駆動制御する制御装置とを有し、
前記制御装置による駆動制御は、前記動作端スイッチの検出による動作エラーの判定に従って前記駆動装置を駆動停止状態にする通常モードと、前記駆動停止状態を維持しつつ該当する前記流体圧シリンダに対する流体圧の供給を可能にする調整モードとを備える工作機械。
【請求項2】
前記動作端スイッチは、前記流体圧シリンダが伸縮した伸長状態と収縮状態とを検出する動作端に設けられた動作端スイッチである請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
タッチパネル式のモニタを備えた操作盤を有し、前記モニタには前記動作エラー表示とともに、前記制御装置に対して調整モードへの切換信号を送信するための切換ボタンを含む操作画面が表示される請求項1または請求項2に記載の工作機械。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体圧シリンダに対して取り付けられる動作端スイッチの調整を行うための調整モード機能を備えた工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械には所定の機能を果たすためにアクチュエータが使用されている。そのアクチュエータは、その動作が検出センサによって検出され、その検出信号によって動作の実行が確認されることにより、工作機械の自動制御が可能になる。アクチュエータによる所定動作を確認するためには検出センサによる正確な検出が必要である。そこで、例えば下記特許文献1には、電動アクチュエータの動作ロッドを自動的にメカリミット(ストローク端)まで伸長および短縮させ、リミットスイッチの信号によりポテンショメータの検出位置を読込んで自動調整する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-240598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来例のように電動アクチュエータであれば自動調整が可能である一方で、エアシリンダや油圧シリンダのような流体圧シリンダは自動調整ができない。そのため、流体圧シリンダの場合には、ストローク端を検出することにより、その動作確認が行われている。流体圧シリンダに対して近接スイッチなどの動作端スイッチが設置され、ピストンの位置検出によって正常な伸長状態あるいは収縮状態の確認が行われている。従って、流体圧シリンダに対する動作端スイッチの取り付け位置が正確であることが求められる。しかし、これまで工作機械内に組み込まれた動作端スイッチは作業者にとって調整作業が行い難いものであった。
【0005】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、動作端スイッチの調整が作業者にとって実行しやすい工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る工作機械は、所定の作業を行う流体圧シリンダと、前記流体圧シリンダの動作を検出する動作端スイッチと、所定の動作を実行する各駆動装置をプログラムに従って駆動制御する制御装置とを有し、前記制御装置による駆動制御は、前記動作端スイッチの検出による動作エラーの判定に従って前記駆動装置を駆動停止状態にする通常モードと、前記駆動停止状態を維持しつつ該当する前記流体圧シリンダに対する流体圧の供給を可能にする調整モードとを備える。
【発明の効果】
【0007】
前記構成によれば、動作端スイッチによる動作エラーが確認された場合には、調整モードの切り換えによって、駆動装置について駆動停止状態を維持しつつ該当する流体圧シリンダに対する流体圧の供給が行われるため、流体圧を受けて動作した流体圧シリンダに対し、作業者は動作端スイッチの調整を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】工作機械の一実施形態について複合加工機の主要な構造を示した斜視図である。
図2】工作機械の一実施形態について複合加工機の主要な構造を示した側面図である。
図3】自動工具交換装置およびワーク自動搬送装置を加えた工作機械の一実施形態(複合加工機)を示す側面図である。
図4】工作機械の一実施形態である複合加工機を示した外観斜視図である。
図5】複合加工機内の前後シフタを示したエアシリンダの収縮時の斜視図である。
図6】複合加工機内の前後シフタを示したエアシリンダの伸長時の斜視図である。
図7】モード切換画面を示した図である。
図8】調整モードを実行する調整プログラムのフローチャートを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る工作機械の一実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。図1および図2は、本実施形態の工作機械の主要な構造を示した斜視図および側面図である。この工作機械は、把持したワークWに回転を与えるワーク主軸装置3,4と、ワークWの加工に対応した複数の工具(タレット工具)Taを有するタレット装置5,6とがそれぞれ左右対称に構成された対向2軸旋盤であり、加えて機体中央に、旋盤では難しい加工を実行するための工具主軸装置2が設けられている複合加工機1である。
【0010】
ワーク主軸装置3,4は、円筒形状の主軸台12にスピンドルが回転自在に組み込まれ、そこに加工対象であるワークWを把持および解放するチャック機構11が組み付けられている。そうしたワーク主軸装置3,4は、ベッド7の前側を主軸の中心線と平行なZ軸方向に摺動する主軸スライド13上に搭載され、把持したワークWを同軸方向に位置決めすることができるようになっている。
【0011】
タレット装置5,6は、刃物台である円盤状のタレット15に複数の工具Taが円周方向に等間隔で取り付けられ、割出し用サーボモータ16の回転制御によって、任意の工具Taを円周上の加工位置に旋回割出しできるよう構成されている。タレット装置5,6は、工具Taを加工位置へと位置決めできるように、タレット15をZ軸に直交するXY平面上であって、水平方向および鉛直方向に対して45度の角度をもったYL軸方向とXL軸方向に移動するよう構成されている。
【0012】
次に、工具主軸装置2は、主軸ヘッド17内に主軸用サーボモータや工具スピンドルが内蔵され、その下端部に設けられた工具装着部に対して、自動工具交換装置8(図3参照)に収められた様々な工具(主軸ヘッド工具)Tbの取り換えが行われるものである。主軸ヘッド17は、主軸スライド18に対して旋回可能に取り付けられ、更に機体前後のY軸方向と上下のX軸方向へと移動した位置決めが可能な構造を有している。
【0013】
ここで、図4は、複合加工機1全体の外観斜視図である。複合加工機1は、工具主軸装置2、ワーク主軸装置3,4およびタレット装置5,6のほか、自動工具交換装置8やワーク自動搬送装置9が機体カバー50によって覆われている。機体カバー50には正面扉51,52が設けられ、その奥にワーク主軸装置3,4などによる加工室が構成されている。更に、機体カバー50の正面には、正面扉51,52に挟まれた機体正面中央部分に操作盤60が取り付けられている。
【0014】
図3は、自動工具交換装置8およびワーク自動搬送装置9を加えた複合加工機1を示す側面図である。ガントリ式のワーク自動搬送装置9は、機体カバー50から上方に突き出すようにして設けられ、把持したワークWを機体内部で移動させるようものである。ワーク自動搬送装置9は、ワークWを把持するロボットハンド21を備え、そのロボットハンド21を3軸方向に移動させる駆動部が構成されている。また、自動工具交換装置8は、機体前面から前方に突き出したマガジンカバー55内にツールマガジン25が設けられている。そして、複合加工機1は、工具主軸装置2、ワーク主軸装置3,4、タレット装置5,6、自動工具交換装置8およびワーク自動搬送装置9が、不図示の制御装置によって加工プログラムなどに従った所定の駆動制御が行われる。
【0015】
自動工具交換装置8は、ツールマガジン25の工具Tbを吊下げ姿勢のまま工具主軸装置2に対する工具交換位置まで搬送するシフト機構が設けられ、その工具交換位置ではシフト機構と工具主軸装置2との間で工具Tbを交換するツールチェンジャ26が設けられている。ところで、複合加工機1にはエアシリンダや油圧シリンダの流体圧シリンダが複数組み込まれており、その伸縮動作によって一定の機能が果たされている。そうした流体圧シリンダの一つとして、自動工具交換装置8のシフト機構に設けられたものを挙げることができる。
【0016】
自動工具交換装置8のツールマガジン25では、天板27に対し割出し用モータによって回転するローラチェーンが設けられ、そこに一列に取り付けられた複数の工具Tbのうち、任意の工具Tbが中央の割出し位置においてシフト機構と移し換えが行われるよう構成されている。図5および図6は、シフト機構のうちエアシリンダを使用した前後シフタを示した斜視図であり、そのエアシリンダにおける収縮時と伸長時の状態が示されている。
【0017】
前後シフタ30は、エアシリンダ31が支持ブロック38を介して天板27に固定され、ピストンロッド315の先端には、割出しされた工具Tbを把持するクランプ部材32が設けられている。前後シフタ30には、エアシリンダ31と平行な2本のガイドロッド33が支持ブロック38を貫通している。2本のガイドロッド33は、一端がクランプ部材32に固定され、他端がプレート34に固定されている。従って、クランプ部材32は、エアシリンダ31の伸縮によって前後方向に移動し、ガイドロッド33によって移動時の姿勢が維持されるようになっている。
【0018】
エアシリンダ31は、図5に示す収縮した状態と図6に示す伸長した状態とで、それぞれ工具Tbの移し換えを行うための正確な位置決めが必要である。そこで、一方のガイドロッド33にはストッパ335にドッグ38が取り付けられ、両方のストローク端に近接スイッチなどによる動作端スイッチ35,36が取り付けられている。よって、複合加工機1では、制御装置による工具主軸装置2に対する工具交換指令に従い、エアシリンダ31に対するエア圧供給が行われる。そして、シフト機構では、図6に示すようにエアシリンダ31が伸長状態になったことが近接スイッチ36によって検出され、その検出信号に基づいて前後シフタ30から不図示の上下シフタに工具Tbが移し換えられる。
【0019】
このように流体圧シリンダには動作端スイッチ35,36が動作確認を行うために設けられているが、その取り付け位置にズレが生じてしまっていた場合には制御信号と検出結果が一致しないことによって動作エラーが発せられる。つまり、エアシリンダ31が動作した後のドッグ38に動作端スイッチ35又は36の位置が合っていなければ、シグナルタワーのランプが点灯し、あるいは操作盤60のモニタに警報表示が行われる。そして、作業者には、そうした警報表示に基づいて位置ズレしている動作端スイッチ35,36などに対する調整作業を行う必要が生じる。
【0020】
しかし、自動加工機である複合加工機1は、例えば警報表示の後10秒程度でエアシリンダ31に対するエア圧供給が停止し、また全体の駆動も停止する。その状態で作業者がピストンロッド315を動作端に正確に移動させ、動作端スイッチ35,36の位置調整をすることは困難である。そこで、本実施形態の複合加工機1には調整モード機構が設けられている。調整モードとは、エアシリンダ31を含む複合加工機1に組み込まれた流体圧シリンダに対して調整作業が必要な場合に、動作エラーに該当する流体圧シリンダのみを選択して動作を可能にするものである。
【0021】
図7は、モード切換画面を示した図である。通常の加工プログラムに従ってワークWの加工が進められる中、通常モードであればエアシリンダ31における動作エラーが発生した場合に、図7(A)に示すように警報表示が行われてエア圧供給が停止する。すなわち、操作盤60のモニタ61には、前後シフタ30のエアシリンダ31に関して動作エラーが発生したことが表示される。また、タッチパネル式のモニタ61には同時に、調整モードに切り換える調整モード切換指令を制御装置に送信するための切換ボタン63が表示される。
【0022】
作業者によって切換ボタン63が押されることにより、複合加工機1が調整モードに切り換えられる。図8は、調整モードを実行する調整プログラムのフローチャートを示した図である。調整モードでは、複合加工機1全体の駆動が停止している中、エア圧供給回路の電磁切換バルブに対して制御が行われ、動作エラーに該当するエアシリンダ31に対してエア圧が供給される(S101)。エアシリンダ31に対するエア圧供給は、動作エラーが発生したときの駆動制御が再現される。すなわち、エアシリンダ31に対する伸長動作あるいは収縮動作に従って電磁切換バルブの切り換えが制御される。
【0023】
エアシリンダ31における調整作業は、マガジンカバー55の上面にある天井蓋56を開けて行われる。よって、前述したように警報後のエアシリンダ31にエア圧が10秒程度供給されたとしても、その短い間に調整作業を行うことはできなかった。また、通常モードの複合加工機1は、天井蓋56のような開閉部が開くとインターロックが機能してしまう。この点、調整モードでは動作エラーに該当する流体圧シリンダに限って動作が維持できるようになっている。従って、エアシリンダ31に対するエア圧供給が継続され、例えば図6に示す伸長状態が維持される。
【0024】
作業者は、天井蓋56を開けて図6に示す動作端スイッチ35に対して微調整が行われる。動作端スイッチ35は、ブラケット37に取り付けられ、そのブラケット37が2本のボルトによって天板27に固定されている。ブラケット37は、ボルトの貫通孔が長孔になっており、そのボルトを緩めることによりブラケット37をストローク方向にずらし、動作端スイッチ35がドッグ38に合うようにした位置決め作業が行われる。
【0025】
図7(A)に示すモード切換画面の操作によって調整モードへと移った後は、モニタ61は、図7(B)に示す通常モードへのモード切換画面になる。すなわち、調整プログラムでは調整モードの終了が確認されている(S102)。そこには通常モードに切り換えるための切換ボタン65があり、操作されない限り(S102:NO)調整モードのままエアシリンダ31に対するエア圧供給が継続される(S101)。そして、調整作業が終了して作業者によって切換ボタン65が押されると(S102:YES)、エアシリンダ31に対するエア圧供給が停止し(S103)、通常モードに戻され(S104)、この調整モード切換が終了する。
【0026】
よって、本実施形態によれば、複合加工機1が調整モード機能を有するので、エアシリンダ31など流体圧シリンダについて動作エラーが検出された場合の調整作業が適切に行えるようになる。すなわち、複合加工機1全体の駆動が停止している通常モードから、動作エラーに該当するエアシリンダ31に対してのみ所定の動作制御を行う調整モードが実行されることにより、作業者はエアシリンダ31を伸縮させる必要がなくなり、時間にも余裕をもって調整作業を行うことができる。
【0027】
また、本実施形態によれば、図7(A)に示すモード切換画面によって作業者は動作エラーが生じた流体圧シリンダを把握することができ、簡単な操作によって調整モードへの切り換えが可能になる。そして、特に図7(A)に示す画面には、詳細情報ボタン67が設けられており、このボタンを押すことによりエ動作ラーに該当する流体圧シリンダの位置が示された画面が表示される。具体的には、動作エラーに該当する流体圧シリンダの位置に応じて、モニタ61に複合加工機1の正面図、平面図、側面図または背面図が表示され、そこに設置位置に矢印が表示されるなど、機内の構造に詳しくない作業者であっても簡単に対応できるようになっている。
【0028】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、一例として複合加工機1を説明したが、調整作業が必要な流体圧シリンダを備える工作機械のであれば該当する。
また、前記実施形態では、エアシリンダ31を例にして示したが流体圧シリンダは油圧シリンダであってもよい。
また、前記実施形態ではエアシリンダ31の伸長時の動作端を検出する場合を説明したが、収縮した場合も同様にして調整モードが実行される。
【符号の説明】
【0029】
1…複合加工機 2…工具主軸装置 3,4…ワーク主軸装置 5,6…タレット装置 8…自動工具交換装置 9…ワーク自動搬送装置 30…前後シフタ 31…エアシリンダ 32…クランプ部材 33…ガイドロッド 35,36…動作端スイッチ 38…ドッグ 60…操作盤 61…モニタ 63,65…切換ボタン

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8